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特許7011056光電変換素子、撮像素子、光センサ、化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】光電変換素子、撮像素子、光センサ、化合物
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/42 20060101AFI20220119BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20220119BHJP
   H01L 27/30 20060101ALI20220119BHJP
   C07D 495/04 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
H01L31/08 T
H01L27/146 E
H01L27/30
C07D495/04 105A
C07D495/04 CSP
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020522143
(86)(22)【出願日】2019-05-23
(86)【国際出願番号】 JP2019020499
(87)【国際公開番号】W WO2019230562
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2018105215
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018221440
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】益子 智之
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 知昭
(72)【発明者】
【氏名】福▲崎▼ 英治
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/051007(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0346016(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0111651(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/42-51/48
H01L 27/30
C07D 495/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性膜、光電変換膜、及び透明導電性膜をこの順で有する光電変換素子であって、
前記光電変換膜が、式(1)で表される化合物を含む、光電変換素子。
【化1】

式(1)中、Arは、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基を表す。Rは、水素原子又は置換基を表す。Xは、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、S(=O)、S(=O)、NRc1、SiRc2c3、又はCRc4c5を表す。Rc1~Rc5は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Zは、CRc6又は窒素原子を表す。Rc6は、水素原子又は置換基を表す。Lは、炭素原子、ケイ素原子、又はゲルマニウム原子を表す。Ra1及びRa2は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Ra1及びRa2は、互いに結合して環を形成してもよい。Bは、置換基を有してもよい芳香環を表す。Yは、式(1-1)で表される基、又は式(1-2)で表される基を表す。Aは、少なくとも2つの炭素原子を含む環を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、=NRZ1、又は=CRZ2Z3を表す。RZ1は、水素原子又は置換基を表す。RZ2及びRZ3は、それぞれ独立に、シアノ基、又は-COORZ4を表す。RZ4は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は、置換基を有していてもよいヘテロアリール基を表す。Rb1及びRb2は、それぞれ独立に、シアノ基又は-COORc7を表す。Rc7は、アルキル基又はアリール基を表す。*は、結合位置を表す。
ただし、Ra1及びRa2の両方が、水素原子及びメチル基からなる群から選ばれる場合、前記式(1)で表される化合物は下記条件(1a)又は下記条件(1b)を満たす。
条件(1a):Arが、式(1-3)で表される基を表す。
条件(1b):Bが、アルキル基、シリル基、及び式(1-3)で表される基からなる群から選ばれる置換基を有する芳香環を表す。
【化2】

式(1-3)中、Bは、置換基を有してもよい芳香環を表す。Rd1は、水素原子、又は、アルキル基、シリル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シアノ基、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、及びアルキニル基からなる群から選ばれる置換基を表す。Rd1とBが有する置換基とは、互いに結合して非芳香環を形成してもよい。*は、結合位置を表す。
ただし、Bが置換基を有していてもよいベンゼン環を表す場合、Rd1は、アルキル基、シリル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シアノ基、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、及びアルキニル基からなる群から選ばれる置換基を表す。
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物が、式(2)で表される化合物である、請求項1に記載の光電変換素子。
【化3】

式(2)中、Arは、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基を表す。Aは、少なくとも2つの炭素原子を含む環を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Xは、硫黄原子、酸素原子、又はセレン原子を表す。Ra5及びRa6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。Ra5及びRa6は、互いに結合して環を形成してもよい。Bは、置換基を有してもよい芳香環を表す。
ただし、Ra5及びRa6の両方が、水素原子及びメチル基からなる群から選ばれる場合、前記式(2)で表される化合物は下記条件(2a)又は下記条件(2b)を満たす。
条件(2a):Arが、前記式(1-3)で表される基を表す。
条件(2b):Bが、アルキル基、シリル基、及び前記式(1-3)で表される基からなる群から選ばれる置換基を有する芳香環を表す。
【請求項3】
a5及びRa6は、それぞれ独立に、炭素数3以上のアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す、請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記式(2)で表される化合物が、式(2A)で表される化合物である、請求項2又は3に記載の光電変換素子。
【化4】

式(2A)中、Arは、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基を表す。Aは、少なくとも2つの炭素原子を含む環を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Xは、硫黄原子、酸素原子、又はセレン原子を表す。Ra7及びRa8は、それぞれ独立に、アリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。Lは、単結合又は2価の連結基を表す。Bは、置換基を有してもよい芳香環を表す。
【請求項5】
前記式(2)で表される化合物が、式(3)で表される化合物である、請求項2に記載の光電変換素子。
【化5】

式(3)中、Arは、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基を表す。R~R10は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表す。Ra5及びRa6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。Ra5及びRa6は、互いに結合して環を形成してもよい。
ただし、Ra5及びRa6の両方が、水素原子及びメチル基からなる群から選ばれる場合、前記式(3)で表される化合物は下記条件(3a)又は下記条件(3b)を満たす。
条件(3a):Arが、前記式(1-3)で表される基を表す。
条件(3b):R~Rのうち少なくとも1つが、アルキル基、シリル基、及び前記式(1-3)で表される基からなる群から選ばれる基を表す。
【請求項6】
a5及びRa6は、それぞれ独立に、炭素数3以上のアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す、請求項5に記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記式(3)で表される化合物が、式(3A)で表される化合物である、請求項5又は6に記載の光電変換素子。
【化6】

式(3A)中、Arは、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基を表す。R~R10は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表す。Ra9及びRa10は、それぞれ独立に、アリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。Lは、単結合又は2価の連結基を表す。
【請求項8】
が置換基を有する芳香環を表し、
が有する置換基及びArのうち少なくとも1つが、式(4A)で表される基、式(4B)で表される基、又は式(5)で表される基を表す、請求項2~4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【化7】

式(4A)中、Re1~Re4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Re1~Re4は、互いに結合して環を形成してもよい。Rf1は、アルキル基、シアノ基、又はハロゲン原子を表す。
【化8】

式(4B)中、T~Tは、それぞれ独立に、CRe12又は窒素原子を表す。Re12は、水素原子又は置換基を表す。Rf2は、アルキル基、シアノ基、又はハロゲン原子を表す。
ただし、T~Tのうち少なくとも1つは窒素原子を表す。
なお、式(4B)中にRe12が複数存在する場合、Re12は、互いに同一であっても異なっていてもよく、また、Re12同士が互いに結合して環を形成してもよい。
【化9】

式(5)中、Re5~Re11は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Re5~Re11は、互いに結合して環を形成してもよい。
【請求項9】
前記式(4A)で表される基中のRe1~Re4のうち少なくとも1つが置換基を表す、請求項8に記載の光電変換素子。
【請求項10】
Arが、前記式(4A)で表される基、前記式(4B)で表される基、又は前記式(5)で表される基を表し、且つ、Bが有する置換基のうち少なくとも1つが、前記式(4A)で表される基、又は前記式(4B)で表される基を表す、請求項8又は9に記載の光電変換素子。
【請求項11】
Ar及びR~Rのうち少なくとも1つが、式(4A)で表される基、式(4B)で表される基、又は式(5)で表される基を表す、請求項5~7のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【化10】

式(4A)中、Re1~Re4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Re1~Re4は、互いに結合して環を形成してもよい。Rf1は、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。
【化11】

式(4B)中、T~Tは、それぞれ独立に、CRe12又は窒素原子を表す。Re12は、水素原子又は置換基を表す。Rf2は、アルキル基、シアノ基、又はハロゲン原子を表す。
ただし、T~Tのうち少なくとも1つは窒素原子を表す。
なお、式(4B)中にRe12が複数存在する場合、Re12は、互いに同一であっても異なっていてもよく、また、Re12同士が互いに結合して環を形成してもよい。
【化12】

式(5)中、Re5~Re11は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Re5~Re11は、互いに結合して環を形成してもよい。
【請求項12】
前記式(4A)で表される基中のRe1~Re4のうち少なくとも1つが置換基を表す、請求項11に記載の光電変換素子。
【請求項13】
Arが、前記式(4A)で表される基、前記式(4B)で表される基、又は前記式(5)で表される基を表し、且つ、R~Rのうち少なくとも1つが、前記式(4A)で表される基、又は前記式(4B)で表される基を表す、請求項11又は12に記載の光電変換素子。
【請求項14】
前記光電変換膜が、更にn型有機半導体を含み、
前記光電変換膜が、前記式(1)で表される化合物と前記n型有機半導体とが混合された状態で形成されるバルクへテロ構造を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項15】
前記n型有機半導体が、フラーレン及びその誘導体からなる群より選択されるフラーレン類を含む、請求項14に記載の光電変換素子。
【請求項16】
前記導電性膜と前記透明導電性膜との間に、前記光電変換膜の他に1種以上の中間層を有する、請求項1~15のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の光電変換素子を有する、撮像素子。
【請求項18】
更に、前記光電変換素子が受光する光とは異なる波長の光を受光する他の光電変換素子を有する、請求項17に記載の撮像素子。
【請求項19】
前記光電変換素子と、前記他の光電変換素子とが積層されており、
入射光の内の少なくとも一部が前記光電変換素子を透過した後に、前記他の光電変換素子で受光される、請求項18に記載の撮像素子。
【請求項20】
前記光電変換素子が緑色光電変換素子であり、
前記他の光電変換素子が、青色光電変換素子及び赤色光電変換素子を含む、請求項18又は19に記載の撮像素子。
【請求項21】
請求項1~16のいずれか1項に記載の光電変換素子を有する、光センサ。
【請求項22】
式(1)で表される化合物。
【化13】

式(1)中、Arは、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基を表す。Rは、水素原子又は置換基を表す。Xは、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、S(=O)、S(=O)、NRc1、SiRc2c3、又はCRc4c5を表す。Rc1~Rc5は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Zは、CRc6又は窒素原子を表す。Rc6は、水素原子又は置換基を表す。Lは、炭素原子、ケイ素原子、又はゲルマニウム原子を表す。Ra1及びRa2は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Ra1及びRa2は、互いに結合して環を形成してもよい。Bは、置換基を有してもよい芳香環を表す。Yは、式(1-1)で表される基、又は式(1-2)で表される基を表す。Aは、少なくとも2つの炭素原子を含む環を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、=NRZ1、又は=CRZ2Z3を表す。RZ1は、水素原子又は置換基を表す。RZ2及びRZ3は、それぞれ独立に、シアノ基、又は-COORZ4を表す。RZ4は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は、置換基を有していてもよいヘテロアリール基を表す。Rb1及びRb2は、それぞれ独立に、シアノ基又は-COORc7を表す。Rc7は、アルキル基又はアリール基を表す。*は、結合位置を表す。
ただし、Ra1及びRa2の両方が、水素原子及びメチル基からなる群から選ばれる場合、前記式(1)で表される化合物は下記条件(1a)又は下記条件(1b)を満たす。
条件(1a):Arが、式(1-3)で表される基を表す。
条件(1b):Bが、アルキル基、シリル基、及び式(1-3)で表される基からなる群から選ばれる置換基を有する芳香環を表す。
【化14】

式(1-3)中、Bは、置換基を有してもよい芳香環を表す。Rd1は、水素原子、又は、アルキル基、シリル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シアノ基、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、及びアルキニル基からなる群から選ばれる置換基を表す。Rd1とBが有する置換基とは、互いに結合して非芳香環を形成してもよい。*は、結合位置を表す。
ただし、Bが置換基を有していてもよいベンゼン環を表す場合、Rd1は、アルキル基、シリル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シアノ基、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、及びアルキニル基からなる群から選ばれる置換基を表す。
【請求項23】
前記式(1)で表される化合物が、式(3)で表される化合物である、請求項22に記載の化合物。
【化15】

式(3)中、Arは、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基を表す。R~R10は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表す。Ra5及びRa6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。Ra5及びRa6は、互いに結合して環を形成してもよい。
ただし、Ra5及びRa6の両方が、水素原子及びメチル基からなる群から選ばれる場合、前記式(3)で表される化合物は下記条件(3a)又は下記条件(3b)を満たす。
条件(3a):Arが、前記式(1-3)で表される基を表す。
条件(3b):R~Rのうち少なくとも1つが、アルキル基、シリル基、及び前記式(1-3)で表される基からなる群から選ばれる基を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子、撮像素子、光センサ、及び化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光電変換膜を有する素子(例えば、撮像素子)の開発が進んでいる。
光電変換膜を使用した光電変換素子に関しては、例えば、特許文献1において、所定の化合物を含む光電変換膜を有する光電変換素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-82483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
撮像素子の態様の一つとして、受光する光の種類が異なる光電変換素子を複数積層する積層型の撮像素子が挙げられる。この撮像素子内に光が入射してくる場合、入射側に配置された光電変換素子で入射光の一部が吸収されて、透過した光が更に奥に配置される光電変換素子で吸収される。このような撮像素子においては、各光電変換素子の吸収ピークの半値幅が狭いほうが、色分離がしやすく好ましい。
本発明者らは、特許文献1に記載の光電変換素子の特性について検討したところ、光電変換素子内の光電変換膜の吸収ピークの半値幅は広く、更なる改良が必要であることを知見した。更に、上記光電変換素子の耐熱性についても、より一層改善する必要があることを明らかとした。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、吸収ピークの半値幅が狭い光電変換膜を有し、且つ、耐熱性に優れる光電変換素子を提供することを課題とする。
また、本発明は、撮像素子及び光センサを提供することも課題とする。
また、本発明は、新規化合物を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、所定の構造を有する化合物を光電変換膜に用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
〔1〕 導電性膜、光電変換膜、及び透明導電性膜をこの順で有する光電変換素子であって、上記光電変換膜が、後述する式(1)で表される化合物を含む、光電変換素子。
〔2〕 上記式(1)で表される化合物が、後述する式(2)で表される化合物である、〔1〕に記載の光電変換素子。
〔3〕 Ra5及びRa6は、それぞれ独立に、炭素数3以上のアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す、〔2〕に記載の光電変換素子。
〔4〕 上記式(2)で表される化合物が、後述する式(2A)で表される化合物である、〔2〕又は〔3〕に記載の光電変換素子。
〔5〕 上記式(2)で表される化合物が、後述する式(3)で表される化合物である、〔2〕に記載の光電変換素子。
〔6〕 Ra5及びRa6は、それぞれ独立に、炭素数3以上のアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す、〔5〕に記載の光電変換素子。
〔7〕 上記式(3)で表される化合物が、後述する式(3A)で表される化合物である、〔5〕又は〔6〕に記載の光電変換素子。
〔8〕 Bが置換基を有する芳香環を表し、
が有する置換基及びArのうち少なくとも1つが、後述する式(4A)で表される基、後述する式(4B)で表される基、又は後述する式(5)で表される基を表す、〔2〕~〔4〕のいずれかに記載の光電変換素子。
〔9〕 上記式(4A)で表される基中のRe1~Re4のうち少なくとも1つが置換基を表す、〔8〕に記載の光電変換素子。
〔10〕 Arが、上記式(4A)で表される基、上記式(4B)で表される基、又は上記式(5)で表される基を表し、且つ、Bが有する置換基のうち少なくとも1つが、上記式(4A)で表される基、又は上記式(4B)で表される基を表す、〔8〕又は〔9〕に記載の光電変換素子。
〔11〕 Ar及びR~Rのうち少なくとも1つが、後述する式(4A)で表される基、後述する式(4B)で表される基、又は後述する式(5)で表される基を表す、〔5〕~〔7〕のいずれかに記載の光電変換素子。
〔12〕 上記式(4A)で表される基中のRe1~Re4のうち少なくとも1つが置換基を表す、〔11〕に記載の光電変換素子。
〔13〕 Arが、上記式(4A)で表される基、上記式(4B)で表される基、又は上記式(5)で表される基を表し、且つ、R~Rのうち少なくとも1つが、上記式(4A)で表される基、又は上記式(4B)で表される基を表す、〔11〕又は〔12〕に記載の光電変換素子。
〔14〕 上記光電変換膜が、更にn型有機半導体を含み、
上記光電変換膜が、上記式(1)で表される化合物と上記n型有機半導体とが混合された状態で形成されるバルクへテロ構造を有する、〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の光電変換素子。
〔15〕 上記n型有機半導体が、フラーレン及びその誘導体からなる群より選択されるフラーレン類を含む、〔14〕に記載の光電変換素子。
〔16〕 上記導電性膜と上記透明導電性膜との間に、上記光電変換膜の他に1種以上の中間層を有する、〔1〕~〔15〕のいずれかに記載の光電変換素子。
〔17〕 〔1〕~〔16〕のいずれかに記載の光電変換素子を有する、撮像素子。
〔18〕 更に、上記光電変換素子が受光する光とは異なる波長の光を受光する他の光電変換素子を有する、〔17〕に記載の撮像素子。
〔19〕 上記光電変換素子と、上記他の光電変換素子とが積層されており、
入射光の内の少なくとも一部が上記光電変換素子を透過した後に、上記他の光電変換素子で受光される、〔18〕に記載の撮像素子。
〔20〕 上記光電変換素子が緑色光電変換素子であり、
上記他の光電変換素子が、青色光電変換素子及び赤色光電変換素子を含む、〔18〕又は〔19〕に記載の撮像素子。
〔21〕 〔1〕~〔16〕のいずれかに記載の光電変換素子を有する、光センサ。
〔22〕 後述する式(1)で表される化合物。
〔23〕 上記式(1)で表される化合物が、後述する式(3)で表される化合物である、〔22〕に記載の化合物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吸収ピークの半値幅が狭い光電変換膜を有し、且つ、耐熱性に優れる光電変換素子を提供できる。
また、本発明によれば、撮像素子、及び光センサを提供できる。
また、本発明によれば、新規化合物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】光電変換素子の一構成例を示す断面模式図である。
図2】光電変換素子の一構成例を示す断面模式図である。
図3】撮像素子の一実施形態の断面模式図である。
図4】実施例化合物(D-6)のH NMRスペクトル(400MHz、CDCl)である。
図5】実施例化合物(D-2)のH NMRスペクトル(400MHz、CDCl)である。
図6】実施例化合物(D-4)のH NMRスペクトル(400MHz、CDCl)である。
図7】実施例化合物(D-7)のH NMRスペクトル(400MHz、CDCl)である。
図8】実施例化合物(D-8)のH NMRスペクトル(400MHz、CDCl)である。
図9】実施例化合物(D-9)のH NMRスペクトル(400MHz、CDCl)である。
図10】実施例化合物(D-12)のH NMRスペクトル(400MHz、CDCl)である。
図11】実施例化合物(D-13)のH NMRスペクトル(400MHz、CDCl)である。
図12】実施例化合物(D-15)のH NMRスペクトル(400MHz、CDCl)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔光電変換素子〕
以下に、本発明の光電変換素子の好適実施形態について説明する。
なお、本明細書において、置換又は無置換を明記していない置換基等については、目的とする効果を損なわない範囲で、その基に更に置換基(例えば、後述する置換基W)が置換していてもよい。例えば、「アルキル基」という表記は、置換基(例えば、後述する置換基W)が置換していてもよいアルキル基を意味する。
また、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
本明細書において、水素原子は、軽水素原子(通常の水素原子)であってもよいし、重水素原子(二重水素原子等)であってもよい。
【0012】
本発明の光電変換素子の特徴点としては、光電変換膜に含まれる、後述する式(1)で表される化合物(以下、「特定化合物」ともいう。)中に嵩高い置換基を導入している点が挙げられる。より具体的には、式(1)中のRa1及びRa2の位置、Arの位置、及びBの位置から選ばれる少なくともいずれかの位置に嵩高い置換基を導入することにより、特定化合物自体の構造をねじらせて、光電変換膜中における特定化合物同士の会合を抑制している。この結果として、光電変換膜は、その吸収ピークの半値幅が狭くなり、また、光電変換素子は、耐熱性に優れると推測される。
【0013】
図1に、本発明の光電変換素子の一実施形態の断面模式図を示す。
図1に示す光電変換素子10aは、下部電極として機能する導電性膜(以下、下部電極とも記す)11と、電子ブロッキング膜16Aと、後述する特定化合物を含む光電変換膜12と、上部電極として機能する透明導電性膜(以下、上部電極とも記す)15とがこの順に積層された構成を有する。
図2に別の光電変換素子の構成例を示す。図2に示す光電変換素子10bは、下部電極11上に、電子ブロッキング膜16Aと、光電変換膜12と、正孔ブロッキング膜16Bと、上部電極15とがこの順に積層された構成を有する。なお、図1及び図2中の電子ブロッキング膜16A、光電変換膜12、及び正孔ブロッキング膜16Bの積層順は、用途及び特性に応じて、適宜変更してもよい。
【0014】
光電変換素子10a(又は10b)では、上部電極15を介して光電変換膜12に光が入射されることが好ましい。
また、光電変換素子10a(又は10b)を使用する場合には、電圧を印加できる。この場合、下部電極11と上部電極15とが一対の電極をなし、この一対の電極間に、1×10-5~1×10V/cmの電圧を印加することが好ましい。性能及び消費電力の点から、印加される電圧としては、1×10-4~1×10V/cmがより好ましく、1×10-3~5×10V/cmが更に好ましい。
なお、電圧印加方法については、図1及び図2において、電子ブロッキング膜16A側が陰極となり、光電変換膜12側が陽極となるように印加することが好ましい。光電変換素子10a(又は10b)を光センサとして使用した場合、また、撮像素子に組み込んだ場合も、同様の方法により電圧を印加できる。
後段で、詳述するように、光電変換素子10a(又は10b)は撮像素子用途に好適に適用できる。
【0015】
以下に、本発明の光電変換素子を構成する各層の形態について詳述する。
【0016】
<光電変換膜>
光電変換膜は、光電変換材料として特定化合物を含む膜である。この化合物を使用することにより、吸収ピークの半値幅が狭い光電変換膜を有し、且つ、耐熱性に優れる光電変換素子が得られる。
以下、特定化合物について詳述する。
なお、式(1)中、Rが結合する炭素原子とそれに隣接する炭素原子とで構成されるC=C二重結合に基づいて区別され得る幾何異性体について、式(1)はそのいずれをも含む。つまり、上記C=C二重結合に基づいて区別されるシス体とトランス体とは、いずれも式(1)に含まれる。
【0017】
【化1】
【0018】
式(1)中、Arは、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基を表す。
アリール基中の炭素数は特に制限されないが、6~30が好ましく、6~18がより好ましく、6~12が更に好ましい。アリール基は、単環構造であっても、2つ以上の環が縮環した縮環構造(縮合環構造)であってもよい。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、又はアントリル基が好ましく、フェニル基、又はナフチル基がより好ましい。
アリール基が有し得る置換基としては後述する置換基Wが挙げられ、例えば、アルキル基が挙げられる。
アリール基は、置換基を複数種類有していてもよい。
アリール基が置換基を有する場合、アリール基が有する置換基の数は特に制限されないが、光電変換膜の吸収ピークの半値幅がより狭くなる点、及び/又は光電変換素子の耐熱性がより優れる点(以後、単に「本発明の効果がより優れる点」ともいう。)で、1~5が好ましい。なお、アリール基がフェニル基を表す場合、フェニル基が有する置換基の数は、本発明の効果がより優れる点で、2~5がより好ましい。
【0019】
ヘテロアリール基(1価の芳香族複素環基)中の炭素数は特に制限されないが、3~30が好ましく、3~18がより好ましい。
ヘテロアリール基は、炭素原子、及び水素原子以外にヘテロ原子を有する。ヘテロ原子としては、例えば、硫黄原子、酸素原子、窒素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子が挙げられ、硫黄原子、酸素原子、又は窒素原子が好ましい。
ヘテロアリール基が有するヘテロ原子の数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~4がより好ましく、1~2が更に好ましい。
ヘテロアリール基の環員数は特に制限されないが、3~8が好ましく、5~7がより好ましく、5~6が更に好ましい。なお、ヘテロアリール基は、単環構造であっても、2個以上の環が縮環した縮環構造であってもよい。縮環構造の場合、ヘテロ原子を有さない芳香族炭化水素環(例えば、ベンゼン環)が含まれていてもよい。
ヘテロアリール基としては、例えば、フリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、プテリジニル基、ピラジニル基、キノキサリニル基、ピリミジニル基、キナゾリル基、ピリダジニル基、シンノリニル基、フタラジニル基、トリアジニル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、インダゾリル基、イソオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、ピロリル基、インドリル基、イミダゾピリジニル基、及びカルバゾリル基が挙げられる。
なかでも、フリル基、チエニル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、又はカルバゾリル基が好ましい。
【0020】
ヘテロアリール基が有し得る置換基としては、上述のアリール基が有し得る置換基が同様に挙げられる。
ヘテロアリール基が置換基を有する場合、ヘテロアリール基が有する置換基の数は特に制限されないが、1~5が好ましい。
【0021】
Arとしては、本発明の効果がより優れる点で、なかでも、後述する式(1-3)で表される基が好ましい。
【0022】
は、水素原子又は置換基を表す。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、R1は水素原子が好ましい。
上記置換基の定義は、後述する置換基Wと同義である。置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基が挙げられる。
【0023】
は、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、S(=O)、S(=O)、NRc1、SiRc2c3、又はCRc4c5を表す。
c1~Rc5は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基の定義は、後述する置換基Wと同義である。なかでも、置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基が挙げられる。
としては、本発明の効果がより優れる点で、硫黄原子、酸素原子、又はセレン原子が好ましい。
【0024】
は、CRc6(=CRc6-)、又は窒素原子(=N-)を表す。Rc6は、水素原子又は置換基を表す。置換基の定義は、後述する置換基Wと同義である。なかでも、置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基が挙げられる。
としては、本発明の効果がより優れる点で、CRc6が好ましい。
c6としては、水素原子が好ましい。
【0025】
は、炭素原子、ケイ素原子、又はゲルマニウム原子を表す。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、炭素原子が好ましい。
【0026】
は、置換基を有してもよい芳香環を表す。
芳香環は、単環であっても、多環であってもよい。
芳香環としては、芳香族炭化水素環、及び芳香族複素環が挙げられる。芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、及びフェナントレン環が挙げられる。芳香族複素環としては、例えば、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、及びオキサゾール環が挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、芳香族炭化水素環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
置換基の定義は、後述する置換基Wと同義であり、例えば、アルキル基、シリル基、アリール基、及びヘテロアリール基が挙げられる。これらの基は、更に置換基を有していてもよい。
【0027】
上記アルキル基の炭素数としては、1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が更に好ましい。
【0028】
上記シリル基としては、例えば、-Si(R)(R)(R)で表される基が好ましい。R~Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。R~Rで表される置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。炭素数は、1~4が好ましく、1がより好ましい。)、アリール基、及びヘテロアリール基が挙げられる。これらの基は、更に置換基を有していてもよい。
なお、R~Rで表されるアリール基及びヘテロアリール基としては、Arで表されるアリール基及びヘテロアリール基で例示した基が挙げられる。
【0029】
上記アリール基及びヘテロアリール基としては、Arで表されるアリール基及びヘテロアリール基で例示した基が挙げられる。
【0030】
が有する上記置換基としては、本発明の効果がより優れる点で、なかでも、アルキル基、シリル基、又は後述する式(1-3)で表される基がより好ましく、後述する式(1-3)で表される基が更に好ましい。
【0031】
は、式(1-1)で表される基、又は式(1-2)で表される基を表す。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、式(1-1)で表される基が好ましい。式(1-1)、及び式(1-2)中の*は、結合位置を表す。
は、少なくとも2つの炭素原子を含む環を表す。なお、2つの炭素原子とは、式(1-1)中に明示されるカルボニル基中の炭素原子と、上記カルボニル基の炭素原子に隣接する、式(1-1)中に明示された炭素原子とを意図し、いずれの炭素原子もAを構成する原子である。
また、上記環は、環を構成する炭素原子が、他のカルボニル炭素(>C=O)、又はチオカルボニル炭素(>C=S)で置換されていてもよい。なお、ここでいう他のカルボニル炭素(>C=O)とは、環を構成する炭素原子が、式(1-1)中に明示されるカルボニル炭素以外に有しているカルボニル炭素を意図する。
【0032】
の炭素数は、3~30が好ましく、3~20がより好ましく、3~15が更に好ましい。なお、上記炭素数は、式中に明示される2個の炭素原子を含む数である。
は、ヘテロ原子を有していてもよく、例えば、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子が挙げられ、窒素原子、硫黄原子、又は酸素原子が好ましく、酸素原子がより好ましい。
中のヘテロ原子の数は、0~10が好ましく、0~5がより好ましく、0~2が更に好ましい。なお、上記ヘテロ原子の数は、Aで表される環を構成する炭素原子がカルボニル炭素(>C=O)又はチオカルボニル炭素(>C=S)で置換されることにより環に導入されているヘテロ原子(なお、ここでいうカルボニル炭素(>C=O)は、式(1-1)中に明示されているカルボニル炭素を含む意図である)の数、及びAの置換基が有するヘテロ原子の数を含まない数である。
は置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子(好ましくは塩素原子)、アルキル基(直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。炭素数は、1~10が好ましく、1~6がより好ましい。)、アリール基(炭素数は、6~18が好ましく、6~12がより好ましい。)、ヘテロアリール基(炭素数は、5~18が好ましく、5~6がより好ましい。)、又はシリル基(例えば、アルキルシリル基が挙げられる。アルキルシリル基中のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。またその炭素数は、1~4が好ましく、1がより好ましい。)が好ましい。
は、芳香族性を示してもよく、示さなくてもよい。
は、単環構造でもよく、縮環構造でもよいが、5員環、6員環、又は、5員環及び6員環の少なくともいずれかを含む縮合環であるのが好ましい。上記縮合環を形成する環の数は、1~4が好ましく、1~3がより好ましい。
【0033】
で表される環としては、通常、酸性核(具体的には、メロシアニン色素で酸性核)として用いられるものが好ましく、その具体例としては以下が挙げられる。
(a)1,3-ジカルボニル核:例えば、1,3-インダンジオン核、1,3-シクロヘキサンジオン、5,5-ジメチル-1,3-シクロヘキサンジオン、及び1,3-ジオキサン-4,6-ジオン等。
(b)ピラゾリノン核:例えば、1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、及び1-(2-ベンゾチアゾリル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン等。
(c)イソオキサゾリノン核:例えば、3-フェニル-2-イソオキサゾリン-5-オン、及び3-メチル-2-イソオキサゾリン-5-オン等。
(d)オキシインドール核:例えば、1-アルキル-2,3-ジヒドロ-2-オキシインドール等。
(e)2,4,6-トリオキソヘキサヒドロピリミジン核:例えば、バルビツール酸、又は2-チオバルビツール酸、及び、その誘導体等。誘導体としては、例えば、1-メチル、1-エチル等の1-アルキル体、1,3-ジメチル、1,3-ジエチル、及び1,3-ジブチル等の1,3-ジアルキル体、1,3-ジフェニル、1,3-ジ(p-クロロフェニル)、及び1,3-ジ(p-エトキシカルボニルフェニル)等の1,3-ジアリール体、1-エチル-3-フェニル等の1-アルキル-1-アリール体、並びに、1,3-ジ(2-ピリジル)等の1,3-ジヘテロアリール体等が挙げられる。
(f)2-チオ-2,4-チアゾリジンジオン核:例えば、ローダニン、及びその誘導体等。誘導体としては、例えば、3-メチルローダニン、3-エチルローダニン、及び3-アリルローダニン等の3-アルキルローダニン、3-フェニルローダニン等の3-アリールローダニン、並びに、3-(2-ピリジル)ローダニン等の3-ヘテロアリールローダニン等が挙げられる。
(g)2-チオ-2,4-オキサゾリジンジオン核(2-チオ-2,4-(3H,5H)-オキサゾールジオン核):例えば、3-エチル-2-チオ-2,4-オキサゾリジンジオン等。
(h)チアナフテノン核:例えば、3(2H)-チアナフテノン-1,1-ジオキサイド等。
(i)2-チオ-2,5-チアゾリジンジオン核:例えば、3-エチル-2-チオ-2,5-チアゾリジンジオン等。
(j)2,4-チアゾリジンジオン核:例えば、2,4-チアゾリジンジオン、3-エチル-2,4-チアゾリジンジオン、及び3-フェニル-2,4-チアゾリジンジオン等。
(k)チアゾリン-4-オン核:例えば、4-チアゾリノン、及び2-エチル-4-チアゾリノン等。
(l)2,4-イミダゾリジンジオン(ヒダントイン)核:例えば、2,4-イミダゾリジンジオン、及び3-エチル-2,4-イミダゾリジンジオン等。
(m)2-チオ-2,4-イミダゾリジンジオン(2-チオヒダントイン)核:例えば、2-チオ-2,4-イミダゾリジンジオン、及び3-エチル-2-チオ-2,4-イミダゾリジンジオン等。
(n)イミダゾリン-5-オン核:例えば、2-プロピルメルカプト-2-イミダゾリン-5-オン等。
(o)3,5-ピラゾリジンジオン核:例えば、1,2-ジフェニル-3,5-ピラゾリジンジオン、及び1,2-ジメチル-3,5-ピラゾリジンジオン等。
(p)ベンゾチオフェン-3(2H)-オン核:例えば、ベンゾチオフェン-3(2H)-オン、オキソベンゾチオフェン-3(2H)-オン、及びジオキソベンゾチオフェンー3(2H)-オン等。
(q)インダノン核:例えば、1-インダノン、3-フェニル-1-インダノン、3-メチル-1-インダノン、3,3-ジフェニル-1-インダノン、及び3,3-ジメチル-1-インダノン等。
(r)ベンゾフラン-3-(2H)-オン核:例えば、ベンゾフラン-3-(2H)-オン等。
(s)2,2-ジヒドロフェナレン-1,3-ジオン核等。
【0034】
式(1-1)中、Zは、酸素原子、硫黄原子、=NRZ1、又は=CRZ2Z3を表す。
Z1は、水素原子又は置換基を表す。RZ2及びRZ3は、それぞれ独立に、シアノ基、又は-COORZ4を表す。
Z4は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は、置換基を有していてもよいヘテロアリール基を表す。
は、酸素原子が好ましい。
【0035】
b1及びRb2は、それぞれ独立に、シアノ基又は-COORc7を表す。
c7は、アルキル基又はアリール基を表す。
【0036】
a1及びRa2は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基の定義は、後述する置換基Wと同義である。なかでも、置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基が挙げられる。
【0037】
上記アルキル基としては、本発明の効果がより優れる点で、炭素数3以上のアルキル基が好ましい。炭素数の上限は特に制限されないが、例えば、10以下が挙げられる。
上記アルキル基としては、炭素数3以上の2級アルキル基がより好ましい。なお、2級アルキル基とは、2級炭素原子を有するアルキル基を意味する。
炭素数3以上の2級アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、ペンタン-2-イル基、ペンタン-3-イル基、及び3-メチル-2-ペンチル基が挙げられる。
【0038】
上記アリール基としては、Arで表されるアリール基で例示した基が挙げられる。
【0039】
上記ヘテロアリール基としては、Arで表されるヘテロアリール基で例示した基が挙げられる。
【0040】
a1及びRa2は、互いに結合して環を形成してもよい。より具体的には、Ra1及びRa2は、単結合又は2価の連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
2価の連結基としては、例えば、-O-、-S-、アルキレン基、シリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、及びイミノ基等が挙げられる。
a1及びRa2が互いに結合して形成される環としては、芳香環(芳香族炭化水素環、又は芳香族複素環)、及び非芳香環が挙げられる。
芳香環としては、例えば、ベンゼン環、及びフルオレン環が挙げられる。
【0041】
なお、Ra1及びRa2が、互いに結合して環を形成する場合、特定化合物は以下の式(1A)で表される化合物であることが好ましい。
【0042】
【化2】
【0043】
式(1A)中、Ar、R、X、Z、L、B、及びYの定義は、式(1)中のAr、R、X、Z、L、B、及びYの定義と同義であり、好適態様も同じである。
a3及びRa4は、それぞれ独立に、アリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。なお、Ra3及びRa4で表されるアリーレン基又はヘテロアリーレン基は、置換基(例えば置換基Wとして例示する基)を有していてもよい。
上記アリーレン基としては、フェニレン基がより好ましい。
上記ヘテロアリーレン基(2価の芳香族複素環基)中の炭素数は特に制限されないが、3~30が好ましく、3~18がより好ましい。
上記ヘテロアリーレン基は、炭素原子、及び水素原子以外にヘテロ原子を有する。ヘテロ原子としては、例えば、硫黄原子、酸素原子、窒素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子が挙げられ、硫黄原子、酸素原子、又は窒素原子が好ましい。
ヘテロアリーレン基が有するヘテロ原子の数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~4がより好ましく、1~2が更に好ましい。
ヘテロアリーレン基の環員数は特に制限されないが、5~8が好ましく、5~7がより好ましく、5~6が更に好ましい。なお、ヘテロアリーレン基は、単環構造であっても、2個以上の環が縮環した縮環構造であってもよい。縮環構造の場合、ヘテロ原子を有さない芳香族炭化水素環(例えば、ベンゼン環)が含まれていてもよい。
【0044】
は、単結合又は2価の連結基を表す。
2価の連結基としては、例えば、-O-、-S-、アルキレン基、シリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、及びイミノ基等が挙げられる。
【0045】
上述した式(1)において、Ra1及びRa2の両方が、水素原子及びメチル基からなる群から選ばれる場合、上記式(1)で表される化合物は下記条件(1a)又は下記条件(1b)を満たす。
条件(1a):Arが、後述する式(1-3)で表される基を表す。
条件(1b):Bが、アルキル基、シリル基、及び、後述する式(1-3)で表される基からなる群から選ばれる置換基を有する芳香環を表す。
【0046】
以下に、上述した式(1-3)で表される基を示す。
【0047】
【化3】
【0048】
式(1-3)中、Bは、置換基を有してもよい芳香環を表す。
で表される置換基を有してもよい芳香環の定義は、上述したBで表される置換基を有してもよい芳香環の定義と同義であり、好適態様も同じである。
【0049】
d1は、水素原子、又は、アルキル基、シリル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シアノ基、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、及びアルキニル基からなる群から選ばれる置換基を表す。
【0050】
d1で表されるアルキル基の炭素数としては、1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が更に好ましい。
d1で表されるシリル基としては、上述したBで表される置換基を有してもよい芳香環の置換基として説明したシリル基が挙げられる。
d1で表されるアルコキシ基の炭素数としては、1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が更に好ましい。
d1で表されるアルキルチオ基の炭素数としては、1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が更に好ましい。
d1で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、ヨウ素原子、臭素原子、及び塩素原子が挙げられる。
d1で表されるアリール基としては、Arで表されるアリール基で例示した基が挙げられる。
d1で表されるヘテロアリール基としては、Arで表されるヘテロアリール基で例示した基が挙げられる。
d1で表されるアルケニル基の炭素数としては、2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3が更に好ましい。
d1で表されるアルキニル基の炭素数としては、2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3が更に好ましい。
【0051】
ただし、Bが置換基を有していてもよいベンゼン環を表す場合、Rd1は、水素原子以外の基を表す。つまり、Bが置換基を有していてもよいベンゼン環を表す場合、Rd1は、アルキル基、シリル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シアノ基、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、及びアルキニル基からなる群から選ばれる置換基を表し、なかでも、アルキル基又はハロゲン原子が好ましく、アルキル基がより好ましい。
なお、Rd1で表される置換基は、更に置換基(置換基としては置換基Wに例示した基(例えば、フッ素原子等のハロゲン原子)が挙げられる。)を有していてもよい。
【0052】
d1とBが有する置換基とは、互いに結合して非芳香環を形成してもよい。
*は、結合位置を表す。
【0053】
式(1-3)で表される基としては、本発明の効果がより優れる点で、なかでも、後述する式(4A)で表される基、後述する式(4B)で表される基、又は後述する式(5)で表される基が好ましい。
【0054】
【化4】
【0055】
式(4A)中、Re1~Re4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
本発明の効果がより優れる点で、Re1~Re4のうち少なくとも1つが置換基を表すことが好ましく、Re1~Re4のうち少なくとも2つが置換基を表すことがより好ましい。
置換基の定義は、後述する置換基Wと同義である。置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シリル基、ハロゲン原子、及びシアノ基等が挙げられる。なお、これらの基は、更に置換基(例えば、フッ素原子等のハロゲン原子が挙げられる。)を有していてもよい。
e1~Re4で表されるアルキル基の炭素数としては、1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が更に好ましい。
e1~Re4で表されるアリール基としては、Arで表されるアリール基で例示した基が挙げられる。
e1~Re4で表されるヘテロアリール基としては、Arで表されるヘテロアリール基で例示した基が挙げられる。
e1~Re4で表されるシリル基としては、上述したBで表される置換基を有してもよい芳香環の置換基として説明したシリル基が挙げられる。
e1~Re4で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、ヨウ素原子、臭素原子、及び塩素原子が挙げられる。
また、Re1~Re4は、互いに結合して環を形成してもよい。Re1~Re4が互いに結合して形成される環としては、芳香環(芳香族炭化水素環、又は芳香族複素環)、及び非芳香環が挙げられる。
【0056】
f1は、アルキル基、シアノ基、又はハロゲン原子を表し、なかでも、アルキル基がより好ましい。
f1で表されるアルキル基の炭素数としては、1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が更に好ましい。なお、上記アルキル基は、更に置換基(例えば、フッ素原子等のハロゲン原子が挙げられる。)を有していてもよい。
f1で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0057】
【化5】
【0058】
式(4B)中、T~Tは、それぞれ独立に、CRe12(=CRe12-)又は窒素原子(=N-)を表す。Re12は、水素原子又は置換基を表す。ただし、T~Tのうち少なくとも1つは窒素原子を表す。
【0059】
本発明の効果がより優れる点で、T~Tの少なくとも1つがCRe12を表し、且つ、Re12の少なくとも1つが置換基を表すことが好ましく、T~Tのうち少なくとも2つがCRe12を表し、且つ、Re12の少なくとも2つが置換基を表すことがより好ましい。
置換基の定義は、後述する置換基Wと同義である。置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シリル基、ハロゲン原子、及びシアノ基等が挙げられる。なお、これらの基は、更に置換基(例えば、フッ素原子等のハロゲン原子が挙げられる。)を有していてもよい。
e12で表されるアルキル基の炭素数としては、1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が更に好ましい。
e12で表されるアリール基としては、Arで表されるアリール基で例示した基が挙げられる。
e12で表されるヘテロアリール基としては、Arで表されるヘテロアリール基で例示した基が挙げられる。
e12で表されるシリル基としては、上述したBで表される置換基を有してもよい芳香環の置換基として説明したシリル基が挙げられる。
e12で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、ヨウ素原子、臭素原子、及び塩素原子が挙げられる。
また、式(4B)中にRe12が複数存在する場合、Re12は、互いに同一であっても異なっていてもよく、また、Re12同士が互いに結合して環を形成してもよい。Re12同士が互いに結合して形成される環としては、芳香環(芳香族炭化水素環、又は芳香族複素環)、及び非芳香環が挙げられる。
【0060】
f2は、アルキル基、シアノ基、又はハロゲン原子を表す。
f2で表されるアルキル基の炭素数としては、1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が更に好ましい。なお、上記アルキル基は、更に置換基(例えば、フッ素原子等のハロゲン原子が挙げられる。)を有していてもよい。
f2で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0061】
【化6】
【0062】
式(5)中、Re5~Re11は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
e5~Re11で表される置換基の定義は、後述する置換基Wと同義である。置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、及びシアノ基等が挙げられる。なお、これらの基は、更に置換基を有していてもよい。
e5~Re11で表されるアルキル基としては、Re1~Re4で表されるアルキル基で例示した基が挙げられる。
e5~Re11で表されるアリール基としては、Arで表されるアリール基で例示した基が挙げられる。
e5~Re11で表されるヘテロアリール基としては、Arで表されるヘテロアリール基で例示した基が挙げられる。
e5~Re11で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、ヨウ素原子、臭素原子、及び塩素原子が挙げられる。
また、Re5~Re11は、互いに結合して環を形成してもよい。Re5~Re11が互いに結合して形成される環としては、芳香環(芳香族炭化水素環、又は芳香族複素環)、及び非芳香環が挙げられる。
e5~Re11としては、なかでも、水素原子、アルキル基、又はハロゲン原子が好ましい。
【0063】
上述した式(1)において、本発明の効果がより優れる点で、Bが置換基を有する芳香環を表し、Bが有する置換基及びArのうち少なくとも1つが、上述した式(4A)で表される基、上述した式(4B)で表される基、又は上述した式(5)で表される基を表すことが好ましく、Arが、上述した式(4A)で表される基、上述した式(4B)で表される基、又は上述した式(5)で表される基を表し、且つ、Bが有する置換基のうち少なくとも1つが、上述した式(4A)で表される基、又は上述した式(4B)で表される基を表すことがより好ましい。
【0064】
本発明の効果がより優れる点で、特定化合物は、式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0065】
【化7】
【0066】
式(2)中、Ar、R、B、及びAの定義は、式(1)中のAr、R、B、及びAの定義と同義であり、好適態様も同じである。
は、水素原子又は置換基を表す。
で表される置換基の定義は、Rで表される置換基の定義と同義であり、好適態様も同じである。
【0067】
は、硫黄原子、酸素原子、又はセレン原子を表し、硫黄原子が好ましい。
a5及びRa6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表す。
a5及びRa6で表されるアルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基の定義は、式(1)中のRa1及びRa2で表されるアルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基の定義と同義であり、好適態様も同じである。
上述した式(2)において、Ra5及びRa6の両方が、水素原子及びメチル基からなる群から選ばれる場合、上記式(2)で表される化合物は下記条件(2a)又は下記条件(2b)を満たす。
条件(2a):Arが、式(1-3)で表される基を表す。
条件(2b):Bが、アルキル基、シリル基、及び式(1-3)で表される基からなる群から選ばれる置換基を有する芳香環を表す。
なお、式(1-3)で表される基は、上述した通りである。
【0068】
また、Ra5及びRa6は、互いに結合して環を形成してもよい。より具体的には、Ra5及びRa6は、単結合又は2価の連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
2価の連結基としては、例えば、-O-、-S-、アルキレン基、シリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、及びイミノ基等が挙げられる。
a5及びRa6が互いに結合して形成される環としては、芳香環(芳香族炭化水素環、又は芳香族複素環)、及び非芳香環が挙げられる。
芳香環としては、例えば、ベンゼン環、及びフルオレン環が挙げられる。
【0069】
なお、Ra5及びRa6が、互いに結合して環を形成する場合、式(2)で表される化合物は、以下の式(2A)で表される化合物であることが好ましい。
【0070】
【化8】
【0071】
式(2A)中、Ar、R、R、X、B、及びAの定義は、式(2)中のAr、R、R、X、B、及びAの定義と同義であり、好適態様も同じである。
a7及びRa8は、それぞれ独立に、アリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。
a7及びRa8で表されるアリーレン基又はヘテロアリーレン基の定義は、式(1A)中のRa3及びRa4で表されるアリーレン基又はヘテロアリーレン基の定義と同義であり、好適態様も同じである。
【0072】
は、単結合又は2価の連結基を表す。
で表される2価の連結基の定義は、式(1A)中のLで表される2価の連結基の定義と同義であり、好適態様も同じである。
【0073】
本発明の効果がより優れる点で、上記式(2)及び上記式(2A)中、Bが置換基を有する芳香環を表し、Bが有する置換基及びArのうち少なくとも1つが、上述した式(4A)で表される基、上述した式(4B)で表される基、又は上述した式(5)で表される基を表すことが好ましく、Arが、上述した式(4A)で表される基、上述した式(4B)で表される基、又は上述した式(5)で表される基を表し、且つ、Bが有する置換基のうち少なくとも1つが、上述した式(4A)で表される基、又は上述した式(4B)で表される基を表すことがより好ましい。
【0074】
本発明の効果がより優れる点で、式(2)で表される化合物は、式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0075】
【化9】
【0076】
式(3)中、Ar、R、R、Ra5、及びRa6の定義は、式(2)中のAr、R、R、Ra5、及びRa6の定義と同義であり、好適態様も同じである。
【0077】
~R10は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表す。
~R10で表される置換基の定義は、式(1)中のBで表される置換基を有してもよい芳香環の置換基の定義と同義である。
とR、RとR、RとR10は、それぞれ独立に、互いに結合して環を形成してもよい。形成される環の種類は、芳香環(芳香族炭化水素環又は芳香族複素環)、及び非芳香環が挙げられる。芳香環としては、例えば、ベンゼン環、及びフルオレン環が挙げられる。
【0078】
上述した式(3)において、Ra5及びRa6の両方が、水素原子及びメチル基からなる群から選ばれる場合、上記式(3)で表される化合物は下記条件(3a)又は下記条件(3b)を満たす。
条件(3a):Arが、式(1-3)で表される基を表す。
条件(3b):Bが、アルキル基、シリル基、及び式(1-3)で表される基からなる群から選ばれる置換基を有する芳香環を表す。
なお、式(1-3)で表される基は、上述した通りである。
【0079】
また、Ra5及びRa6は、互いに結合して環を形成してもよい。より具体的には、Ra5及びRa6は、単結合又は2価の連結基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
2価の連結基としては、例えば、-O-、-S-、アルキレン基、シリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、及びイミノ基等が挙げられる。
a5及びRa6が互いに結合して形成される環としては、芳香環(芳香族炭化水素環、又は芳香族複素環)、及び非芳香環が挙げられる。
芳香環としては、例えば、ベンゼン環、及びフルオレン環が挙げられる。
【0080】
なお、Ra5及びRa6が、互いに結合して環を形成する場合、式(3)で表される化合物は、以下の式(3A)で表される化合物であることが好ましい。
【0081】
【化10】
【0082】
式(3A)中、Ar及びR~R10の定義は、式(3)中のAr及びR~R10の定義と同義であり、好適態様も同じである。
a9及びRa10は、それぞれ独立に、アリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。
a9及びRa10で表されるアリーレン基又はヘテロアリーレン基の定義は、式(1A)中のRa3及びRa4で表されるアリーレン基又はヘテロアリーレン基の定義と同義であり、好適態様も同じである。
【0083】
は、単結合又は2価の連結基を表す。
で表される2価の連結基の定義は、式(1A)中のLで表される2価の連結基の定義と同義であり、好適態様も同じである。
【0084】
とR、RとR、RとR10は、それぞれ独立に、互いに結合して環を形成してもよい。形成される環の種類は、芳香環(芳香族炭化水素環又は芳香族複素環)、及び非芳香環が挙げられる。芳香環としては、例えば、ベンゼン環、及びフルオレン環が挙げられる。
【0085】
本発明の効果がより優れる点で、式(3)及び式(3A)中、Ar及びR~Rのうち少なくとも1つが、上述した式(4A)で表される基、上述した式(4B)で表される基、又は上述した式(5)で表される基を表すことが好ましく、Arが、上述した式(4A)で表される基、上述した式(4B)で表される基、又は上述した式(5)で表される基を表し、且つ、R~Rのうち少なくとも1つが、上述した式(4A)で表される基、又は上述した式(4B)で表される基を表すことがより好ましい。
【0086】
上述した特定化合物は、本発明の効果がより優れる点で、下記〔1〕及び下記〔2〕のいずれかに該当することが好ましい。
〔1〕特定化合物が、式(3)で表される化合物であって、化合物中のArが、上述した式(4A)で表される基、上述した式(4B)で表される基、又は式(5)で表される基を表し、且つ、R~Rのうち少なくとも1つが上述した式(4A)で表される基、又は上述した式(4B)で表される基を表す。
〔2〕特定化合物が、式(3A)で表される化合物である。
【0087】
(置換基W)
本明細書における置換基Wについて記載する。
置換基Wとしては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等)、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、及びトリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、及びビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基といってもよい。ヘテロアリール基を含む)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、及びボロン酸基(-B(OH))が挙げられる。
また、置換基Wは、更に置換基Wで置換されていてもよい。例えば、アルキル基にハロゲン原子が置換していてもよい。
【0088】
以下に、特定化合物を例示するが、本発明における特定化合物はこれに制限されない。
【0089】
【化11】
【0090】
【化12】
【0091】
【化13】


【0092】
【化14】
【0093】
【化15】
【0094】
【化16】


【0095】
【化17】
【0096】
【化18】
【0097】
【化19】
【0098】
特定化合物は、撮像素子、光センサ、又は光電池に用いる光電変換膜の材料として特に有用である。なお、通常、特定化合物は、光電変換膜内でp型有機半導体として機能する場合が多い。また、特定化合物は、着色材料、液晶材料、有機半導体材料、電荷輸送材料、医薬材料、及び蛍光診断薬材料としても使用できる。
【0099】
特定化合物は、p型有機半導体として使用する際の安定性とn型有機半導体とのエネルギー準位のマッチングの点で、単独膜でのイオン化ポテンシャルが-5.0~-6.0eVである化合物であるのが好ましい。
【0100】
特定化合物の極大吸収波長は特に制限されないが、本発明の光電変換素子中の光電変換膜が緑色光を受光(吸収)して光電変換する有機光電変換膜として好適に用いられる点で、510~570nmの範囲にあるのが好ましく、520~560nmの範囲にあるのがより好ましい。
特定化合物の吸収半値幅は特に制限されないが、本発明の光電変換素子中の光電変換膜が緑色光を受光(吸収)して光電変換する有機光電変換膜として好適に用いられる点で、100nm未満が好ましく、95nm未満がより好ましく、90nm未満が更に好ましい。下限は特に制限されないが、60nm以上の場合が多い。
なお、上記極大吸収波長、及び吸収半値幅は、特定化合物の膜(例えば、特定化合物の蒸着膜)の状態で測定した値である。
【0101】
光電変換膜の極大吸収波長は特に制限されないが、本発明の光電変換素子中の光電変換膜が緑色光を受光(吸収)して光電変換する有機光電変換膜として好適に用いられる点で510~570nmの範囲にあるのが好ましく、520~560nmの範囲にあるのがより好ましい。
【0102】
<n型有機半導体>
光電変換膜は、上述した特定化合物以外の他の成分として、n型有機半導体を含むのが好ましい。
n型有機半導体は、アクセプタ性有機半導体材料(化合物)であり、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。更に詳しくは、n型有機半導体は、2つの有機化合物を接触させて用いた場合に電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機半導体は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。
n型有機半導体としては、例えば、フラーレン及びその誘導体からなる群より選択されるフラーレン類、縮合芳香族炭素環化合物(例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、及びフルオランテン誘導体);窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子の少なくとも1つを有する5~7員環のヘテロ環化合物(例えば、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、及びチアゾール等);ポリアリーレン化合物;フルオレン化合物;シクロペンタジエン化合物;シリル化合物;1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸無水物;1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸無水物イミド誘導体、オキサジアゾール誘導体;アントラキノジメタン誘導体;ジフェニルキノン誘導体;バソクプロイン、バソフェナントロリン、及びこれらの誘導体;トリアゾール化合物;ジスチリルアリーレン誘導体;含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体;シロール化合物、並びに、特開2006-100767号公報の段落[0056]~[0057]に記載の化合物が挙げられる。
【0103】
なかでも、n型有機半導体(化合物)としては、フラーレン及びその誘導体からなる群より選択されるフラーレン類を含むのが好ましい。
フラーレンとしては、例えば、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC80、フラーレンC82、フラーレンC84、フラーレンC90、フラーレンC96、フラーレンC240、フラーレンC540、及び、ミックスドフラーレンが挙げられる。
フラーレン誘導体は、例えば、上記フラーレンに置換基が付加した化合物が挙げられる。置換基としては、アルキル基、アリール基、又は、複素環基が好ましい。フラーレン誘導体としては、特開2007-123707号公報に記載の化合物が好ましい。
【0104】
なお、n型有機半導体として、有機色素を用いてもよい。例えば、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素(ゼロメチンメロシアニン(シンプルメロシアニン)を含む)、ロダシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ジオキサン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、サブフタロシアニン色素、及び金属錯体色素が挙げられる。
【0105】
n型有機半導体の分子量は、200~1200が好ましく、200~900がより好ましい。
【0106】
本発明の光電変換素子中の光電変換膜が緑色光を受光(吸収)して光電変換する有機光電変換膜として好適に用いられる点で、n型有機半導体は無色、又は特定化合物に近い吸収極大波長、及び/又は吸収波形を持つことが望ましく、具体的な数値としては、n型有機半導体の吸収極大波長が400nm以下、又は500~600nmの範囲にあることが好ましい。
【0107】
光電変換膜は、特定化合物とn型有機半導体とが混合された状態で形成されるバルクヘテロ構造を有するのが好ましい。バルクヘテロ構造は、光電変換膜内で、特定化合物とn型有機半導体とが混合、分散している層である。バルクヘテロ構造を有する光電変換膜は、湿式法、及び乾式法のいずれでも形成できる。なお、バルクへテロ構造については、特開2005-303266号公報の段落[0013]~[0014]等において詳細に説明されている。
【0108】
光電変換素子の応答性の点から、特定化合物とn型有機半導体との合計の含有量に対する特定化合物の含有量(=特定化合物の単層換算での膜厚/(特定化合物の単層換算での膜厚+n型有機半導体の単層換算での膜厚)×100)は、20~80体積%が好ましく、40~80体積%がより好ましい。
なお、光電変換膜は、実質的に、特定化合物とn型有機半導体とから構成されるのが好ましい。実質的とは、光電変換膜全質量に対して、特定化合物、及びn型有機半導体の合計含有量が95質量%以上であることを意図する。
【0109】
なお、光電変換膜中に含まれるn型有機半導体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、光電変換膜は、特定化合物及びn型有機半導体に加えて、さらにp型有機半導体を含んでいてもよい。p型有機半導体としては、例えば、下記に示すものが挙げられる。
なお、ここでいうp型有機半導体とは、特定化合物とは異なる化合物であるp型有機半導体を意図する。なお、光電変換膜中にp型有機半導体を含む場合、1種でもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0110】
<p型有機半導体>
p型有機半導体とは、ドナー性有機半導体材料(化合物)であり、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。更に詳しくは、p型有機半導体とは、2つの有機化合物を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。
p型有機半導体としては、例えば、トリアリールアミン化合物(例えば、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン(TPD)、4,4’-ビス[N-(ナフチル)-N-フェニル-アミノ]ビフェニル(α-NPD)、特開2011-228614号公報の段落[0128]~[0148]に記載の化合物、特開2011-176259号公報の段落[0052]~[0063]に記載の化合物、特開2011-225544号公報の段落[0119]~[0158]に記載の化合物、特開2015-153910号公報の[0044]~[0051]に記載の化合物、及び、特開2012-94660号公報の段落[0086]~[0090]に記載の化合物等)、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物(例えば、チエノチオフェン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ベンゾジチオフェン誘導体、ジチエノチオフェン誘導体、[1]ベンゾチエノ[3,2-b]チオフェン(BTBT)誘導体、チエノ[3,2-f:4,5-f´]ビス[1]ベンゾチオフェン(TBBT)誘導体、特開2018-14474号の段落[0031]~[0036]に記載の化合物、WO2016-194630号の段落[0043]~[0045]に記載の化合物、WO2017-159684号の段落[0025]~[0037]、[0099]~[0109]に記載の化合物等)、シアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、縮合芳香族炭素環化合物(例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ペンタセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、及び、フルオランテン誘導体)、ポルフィリン化合物、フタロシアニン化合物、トリアゾール化合物、オキサジアゾール化合物、イミダゾール化合物、ポリアリールアルカン化合物、ピラゾロン化合物、アミノ置換カルコン化合物、オキサゾール化合物、フルオレノン化合物、シラザン化合物、並びに、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等が挙げられる。
p型有機半導体としては、n型有機半導体よりもイオン化ポテンシャルが小さいものが挙げられ、この条件を満たせば、n型有機半導体として例示した有機色素を使用し得る。
以下に、p型半導体化合物として使用し得る化合物を例示する。
【0111】
【化20】
【0112】
【化21】
【0113】
【化22】
【0114】
特定化合物を含む光電変換膜は非発光性膜であり、有機電界発光素子(OLED:Organic Light Emitting Diode)とは異なる特徴を有する。非発光性膜とは発光量子効率が1%以下の膜を意図し、発光量子効率は0.5%以下が好ましく、0.1%以下がより好ましい。
【0115】
<成膜方法>
光電変換膜は、主に、乾式成膜法により成膜できる。乾式成膜法としては、例えば、蒸着法(特に、真空蒸着法)、スパッタ法、イオンプレーティング法、及びMBE(Molecular Beam Epitaxy)法等の物理気相成長法、並びに、プラズマ重合等のCVD(Chemical Vapor Deposition)法が挙げられる。なかでも、真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法により光電変換膜を成膜する場合、真空度、及び蒸着温度等の製造条件は常法に従って設定できる。
【0116】
光電変換膜の厚みは、10~1000nmが好ましく、50~800nmがより好ましく、50~500nmが更に好ましく、50~300nmが特に好ましい。
【0117】
<電極>
電極(上部電極(透明導電性膜)15と下部電極(導電性膜)11)は、導電性材料から構成される。導電性材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、及びこれらの混合物等が挙げられる。
上部電極15から光が入射されるため、上部電極15は検知したい光に対し透明であるのが好ましい。上部電極15を構成する材料としては、例えば、アンチモン、又はフッ素等をドープした酸化錫(ATO:Antimony Tin Oxide、FTO:Fluorine doped Tin Oxide)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO:Indium Tin Oxide)、及び酸化亜鉛インジウム(IZO:Indium zinc oxide)等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム、及びニッケル等の金属薄膜;これらの金属と導電性金属酸化物との混合物、又は積層物;並びに、ポリアニリン、ポリチオフェン、及びポリピロール等の有機導電性材料等が挙げられる。なかでも、高導電性、及び透明性等の点から、導電性金属酸化物が好ましい。
【0118】
通常、導電性膜をある範囲より薄くすると、急激な抵抗値の増加をもたらすが、本実施形態にかかる光電変換素子を組み込んだ固体撮像素子では、シート抵抗は、好ましくは100~10000Ω/□でよく、薄膜化できる膜厚の範囲の自由度は大きい。また、上部電極(透明導電性膜)15は厚みが薄いほど吸収する光の量は少なくなり、一般に光透過率が増す。光透過率の増加は、光電変換膜での光吸収を増大させ、光電変換能を増大させるため、好ましい。薄膜化に伴う、リーク電流の抑制、薄膜の抵抗値の増大、及び透過率の増加を考慮すると、上部電極15の膜厚は、5~100nmが好ましく、5~20nmがより好ましい。
【0119】
下部電極11は、用途に応じて、透明性を持たせる場合と、逆に透明性を持たせず光を反射させる場合とがある。下部電極11を構成する材料としては、例えば、アンチモン、又はフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、及び酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル、チタン、タングステン、及びアルミ等の金属、これらの金属の酸化物、又は窒化物等の導電性化合物(一例として窒化チタン(TiN)を挙げる);これらの金属と導電性金属酸化物との混合物、又は積層物;並びに、ポリアニリン、ポリチオフェン、及びポリピロール等の有機導電性材料等が挙げられる。
【0120】
電極を形成する方法は特に制限されず、電極材料に応じて適宜選択できる。具体的には、印刷方式、及びコーティング方式等の湿式方式;真空蒸着法、スパッタ法、及びイオンプレーティング法等の物理的方式;並びに、CVD、及びプラズマCVD法等の化学的方式等が挙げられる。
電極の材料がITOの場合、電子ビーム法、スパッタ法、抵抗加熱蒸着法、化学反応法(ゾル-ゲル法等)、及び酸化インジウムスズの分散物の塗布等の方法が挙げられる。
【0121】
<電荷ブロッキング膜:電子ブロッキング膜、正孔ブロッキング膜>
本発明の光電変換素子は、導電性膜と透明導電性膜との間に、光電変換膜の他に1種以上の中間層を有しているのも好ましい。上記中間層としては、電荷ブロッキング膜が挙げられる。光電変換素子がこの膜を有することにより、得られる光電変換素子の特性(光電変換効率、及び応答性等)がより優れる。電荷ブロッキング膜としては、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜とが挙げられる。以下に、それぞれの膜について詳述する。
【0122】
(電子ブロッキング膜)
電子ブロッキング膜は、ドナー性有機半導体材料(化合物)であり、上述のp型有機半導体を使用できる。
また、電子ブロッキング膜として、高分子材料も使用できる。
高分子材料としては、例えば、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、及びジアセチレン等の重合体、並びに、その誘導体が挙げられる。
【0123】
なお、電子ブロッキング膜は、複数膜で構成してもよい。
電子ブロッキング膜は、無機材料で構成されていてもよい。一般的に、無機材料は有機材料よりも誘電率が大きいため、無機材料を電子ブロッキング膜に用いた場合に、光電変換膜に電圧が多くかかるようになり、光電変換効率が高くなる。電子ブロッキング膜となりうる無機材料としては、例えば、酸化カルシウム、酸化クロム、酸化クロム銅、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化ガリウム銅、酸化ストロンチウム銅、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化インジウム銅、酸化インジウム銀、及び酸化イリジウムが挙げられる。
【0124】
(正孔ブロッキング膜)
正孔ブロッキング膜は、アクセプター性有機半導体材料(化合物)であり、上述のn型半導体を利用できる。
【0125】
電荷ブロッキング膜の製造方法は特に制限されないが、乾式成膜法、及び湿式成膜法が挙げられる。乾式成膜法としては、蒸着法、及びスパッタ法が挙げられる。蒸着法は、物理蒸着(PVD:Physical Vapor Deposition)法、及び化学蒸着(CVD)法のいずれでもよく、真空蒸着法等の物理蒸着法が好ましい。湿式成膜法としては、例えば、インクジェット法、スプレー法、ノズルプリント法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、及びグラビアコート法が挙げられ、高精度パターニングの点からは、インクジェット法が好ましい。
【0126】
電荷ブロッキング膜(電子ブロッキング膜、及び正孔ブロッキング膜)の厚みは、それぞれ、3~200nmが好ましく、5~100nmがより好ましく、5~30nmが更に好ましい。
【0127】
<基板>
光電変換素子は、更に基板を有していてもよい。使用される基板の種類は特に制限されないが、半導体基板、ガラス基板、及びプラスチック基板が挙げられる。
なお、基板の位置は特に制限されないが、通常、基板上に導電性膜、光電変換膜、及び透明導電性膜をこの順で積層する。
【0128】
<封止層>
光電変換素子は、更に封止層を有していてもよい。光電変換材料は水分子等の劣化因子の存在で顕著にその性能が劣化してしまうことがある。そこで、水分子を浸透させない緻密な金属酸化物、金属窒化物、もしくは、金属窒化酸化物等のセラミクス、又はダイヤモンド状炭素(DLC:Diamond-like Carbon)等の封止層で光電変換膜全体を被覆して封止することで、上記劣化を防止できる。
なお、封止層としては、特開2011-082508号公報の段落[0210]~[0215]に記載に従って、材料の選択、及び製造を行ってもよい。
【0129】
〔撮像素子〕
光電変換素子の用途として、例えば、撮像素子が挙げられる。撮像素子とは、画像の光情報を電気信号に変換する素子であり、通常、複数の光電変換素子が同一平面状でマトリクス上に配置されており、各々の光電変換素子(画素)において光信号を電気信号に変換し、その電気信号を画素ごとに逐次撮像素子外に出力できるものをいう。そのために、画素ひとつあたり、一つ以上の光電変換素子、一つ以上のトランジスタから構成される。
図3は、本発明の一実施形態を説明するための撮像素子の概略構成を示す断面模式図である。この撮像素子は、デジタルカメラ、及びデジタルビデオカメラ等の撮像素子、電子内視鏡、並びに、携帯電話機等の撮像モジュール等に搭載される。
図3に示す撮像素子20aは、本発明の光電変換素子10aと、青色光電変換素子22と、赤色光電変換素子24とを含み、これらは光が入射する方向に沿って積層されている。光電変換素子10aは、上述したように、主に、緑色光を受光できる緑色光電変換素子として機能できる。
撮像素子20aは、いわゆる積層体型の色分離撮像素子である。光電変換素子10a、青色光電変換素子22、及び赤色光電変換素子24は、それぞれ検出する波長スペクトルが異なる。つまり、青色光電変換素子22、及び赤色光電変換素子24は、光電変換素子10aが受光(吸収)する光とは異なる波長の光を受光する光電変換素子に該当する。光電変換素子10aでは主に緑色光を受光でき、青色光電変換素子22では主に青色光を受光でき、赤色光電変換素子では主に赤色光を受光できる。
なお、緑色光とは波長500~600nmの範囲の光を、青色光とは波長400~500nmの範囲の光を、赤色光とは波長600~700nmの範囲の光を意図する。
撮像素子20aに矢印の方向から光が入射すると、まず、光電変換素子10aにおいて主に緑色光が吸収されるが、青色光、及び赤色光に関しては光電変換素子10aを透過する。光電変換素子10aを透過した光が青色光電変換素子22に進んだ際には、主に青色光が吸収されるが、赤色光に関しては青色光電変換素子22を透過する。その後、青色光電変換素子22を透過した光は、赤色光電変換素子24によって吸収される。このように積層型の色分離撮像素子である撮像素子20aにおいては、緑、青、及び赤の3つの受光部で1つの画素を構成でき、受光部の面積を大きく取れる。
特に、本発明の光電変換素子10aにおいては、上述したように、吸収ピークの半値幅が狭いため、青色光、及び赤色光の吸収が略生じず、青色光電変換素子22、及び赤色光電変換素子24での検出性に影響を与えにくい。
【0130】
青色光電変換素子22、及び、赤色光電変換素子24の構成は特に制限されない。
例えば、シリコンを用いて光吸収長の差により色を分離する構成の光電変換素子でもよい。より具体的な例としては、青色光電変換素子22と、赤色光電変換素子24とが、ともにシリコンからなっていてもよい。この場合、撮像素子20aに矢印の方向から入射した青色光と緑色光と赤色光とからなる光は、光電変換素子10aによって真ん中の波長の光である緑色光が主に受光され、残る青色光と赤色光とを色分離しやすくなる。青色光と赤色光とは、シリコンに対する光吸収長に差(シリコンに対する吸収係数の波長依存性)があり、青色光はシリコンの表面近傍で吸収されやすく、赤色光はシリコンの比較的深い位置まで侵入できる。このような光吸収長に差に基づき、より浅い位置に存在する青色光電変換素子22によって主に青色光が受光され、より深い位置に存在する赤色光電変換素子24によって主に赤色光が受光される。
また、青色光電変換素子22、及び、赤色光電変換素子24は、導電性膜、青色光又は赤色光に吸収極大を有する有機の光電変換膜、及び、透明導電成膜をこの順で有する構成の光電変換素子(青色光電変換素子22、又は、赤色光電変換素子24)でもよい。
【0131】
図3においては、光の入射側から本発明の光電変換素子、青色光電変換素子、及び赤色光電変換素子の順に配置されていたが、この態様には限定されず、他の配置順であってもよい。例えば、光の入射する側から青色光電変換素子、本発明の光電変換素子、及び赤色光電変換素子の順に配置されていてもよい。
【0132】
撮像素子として、上述のように、青色、緑色、及び赤色の三原色の光電変換素子を積み上げた構成を説明したが、2層(2色)、又は4層(4色)以上であってもかまわない。
たとえば、配列した青色光電変換素子22と赤色光電変換素子24の上に本発明の光電変換素子10aを配置する態様であってもよい。なお、必要に応じて、光の入射側に更に所定の波長の光を吸収するカラーフィルタを配置してもよい。
【0133】
撮像素子の形態は図3、及び上述の形態に限定されず、他の形態であってもよい。
例えば、同一面内位置に、本発明の光電変換素子、青色光電変換素子、及び赤色光電変換素子が配置された態様であってもよい。
【0134】
また、光電変換素子を単層で用いる構成であってもよい。例えば、本発明の光電変換素子10aのうえに、青、赤、緑のカラーフィルタを配置して色を分離する構成であってもよい。
【0135】
〔光センサ〕
光電変換素子の他の用途として、例えば、光電池、及び光センサが挙げられるが、本発明の光電変換素子は光センサとして用いるのが好ましい。光センサとしては、上記光電変換素子単独で用いてもよいし、上記光電変換素子を直線状に配したラインセンサ、又は平面上に配した2次元センサとして用いてもよい。
【実施例
【0136】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0137】
〔式(1)で表される化合物の合成例〕
以下、化合物(D-6)の合成例を一例として、式(1)で表される化合物の合成方法を示す。
【0138】
<化合物(D-6)の合成>
化合物(D-6)は、以下のスキームに従って、合成した。
【0139】
【化23】
【0140】
窒素雰囲気下、フラスコに2-アミノアセトフェノン(66.0g、489mmol)、5-ブロモチオフェン-2-カルボン酸エチル(115g、489mmol)、炭酸セシウム(239g、734mmol)、2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-3,6-ジメトキシ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニル(6.56g、12.2mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(5.6g,6.1mmol)、及びtert-アミルアルコール(490mL)を添加し、得られた反応液を80℃で3時間反応させた。反応液を放冷した後に、酢酸エチル(450mL)を添加し、セライトろ過した後、得られたろ液を濃縮することで粗体を得た。得られた粗体にヘキサン(300mL)添加し、生じた固体をろ過した。得られた固体をショートカラム(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=3/1)により精製した。得られた粗体にヘキサン(800mL)を添加し、室温で40分撹拌した後、ろ取し、化合物A-1(98g、収率69%)を得た。
【0141】
窒素雰囲気下、フラスコに化合物A-1(108g、373mmol)、テトラヒドロフラン(620mL)を入れ、-40℃に冷やした。次に、溶液に3.0Mメチルマグネシウムブロミド-ジエチルエーテル溶液(497mL、1492mmol)を30分かけて滴下した後、1.5時間反応させた。得られた反応液を、塩化アンモニウム水溶液(2L)と酢酸エチル(1.5L)の混合液に注ぎ、酢酸を用いてpH5に調整した。有機相を回収し、水相を酢酸エチルで1回抽出した後、集めた有機相を飽和食塩水で洗浄した。得られた溶液を硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過し、得られたろ液を濃縮することで粗体を得た。得られた粗体をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=9/1から7/3)で精製し、化合物A-2(54.6g、収率48%)を得た。
【0142】
フラスコに、化合物A-2(88g、290mmol)、エタノール(880mmol)、及び、30質量%塩酸(440mmol)を順次添加し、80℃で1.5時間撹拌した。得られた反応液を、水(2L)と酢酸エチル(2L)の混合液に注ぎ、有機相を回収した。水相を酢酸エチルで抽出した後、集めた有機相を飽和食塩水で洗浄した。得られた溶液を硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過し、得られたろ液を濃縮することで粗体を得た。得られた粗体にヘキサン(300mL)を添加し、50℃で2.5時間撹拌した。得られた固体をろ取し、化合物A-3(66.3g、収率80%)を得た。
【0143】
フラスコに、1-ナフチルボロン酸(6.88g、40mmol)、酢酸銅(3.63g、20mmol)、ピリジン(57mL)、及び、化合物A-3(5.75g、20mmol)を添加し、室温にて8時間反応させた。得られた反応液に、酢酸エチル(300mL)を添加した後、3N塩酸でpH1に調整した。有機相を回収し、水相を酢酸エチルで1回抽出した後、集めた有機相を飽和食塩水で洗浄した。得られた溶液を硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過し、得られたろ液を濃縮することで粗体を得た。得られた粗体をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=100/0から75/25)で精製し、化合物A-4(3.27g、収率40%)を得た。
【0144】
窒素雰囲気下、フラスコに、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム-3.6Mトルエン溶液(19,4mL、70mmol)、及びテトラヒドロフラン(20mL)を添加し、-20℃に冷やした後、N-メチルピペラジン(7.77mL、70mmol)を滴下した。15分後、室温に上げ、さらに45分撹拌した。得られた反応液に、カリウムtert-ブトキシド(783mg、7.0mmol)を添加し、室温で15分撹拌した。得られた懸濁液を、-10℃にて化合物A-4(7.1g、17.2mmol)のテトラヒドロフラン(15mL)溶液に滴下し、1時間反応させた。得られた反応液を、酢酸エチルと1N水酸化ナトリウム水溶液の混合液に滴下し、有機相を回収した。水相を酢酸エチルで2回抽出した後、集めた有機相を水と飽和食塩水で洗浄した。得られた溶液を硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過し、得られたろ液を濃縮することで粗体を得た。得られた粗体をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=9/1から7/3)で精製し、化合物A-5(4.73g、収率75%)を得た。
【0145】
フラスコに、化合物A-5(4.7g、12.7mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(50mL)、及びN-ブロモスクシンイミド(2.7g、15.3mmol)を順次添加し、室温で4時間反応させた。得られた反応液を、水(500mL)で注ぎ、生じた固体をろ取した。得られた固体を酢酸エチルに溶解させ、水と飽和食塩水で洗浄した。得られた溶液を硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過し、得られたろ液を濃縮することで粗体を得た。得られた粗体をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=9/1から7/3)で精製し、化合物A-6(5.53g、収率97%)を得た。
【0146】
窒素雰囲気下、フラスコに、化合物A-6(5.5g、12.3mmol)、2,4,6-トリメチルフェニルボロン酸(6.0g、36.8mmol)、リン酸カリウム(13.0g、61.4mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-(2’,6’-ジメトキシビフェニル)[2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホナート(0.95g、1.22mmol)、テトラヒドロフラン(50mL)、及び、水(10mL)を添加し、90℃で2.5時間反応させた。得られた反応液に、酢酸エチルと水を添加し、有機相を回収した。水相を酢酸エチルで抽出した後、集めた有機相を水と飽和食塩水で洗浄した。得られた溶液を硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過し、得られたろ液を濃縮することで粗体を得た。得られた粗体をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=9/1から7/3)で精製し、化合物A-7(5.55g、収率93%)を得た。
【0147】
フラスコに、化合物A-7(5.5g、11.3mmol)、1,3-インダンジオン(1.8g、12.4mmol)、及び、n-ブタノール(70mL)を順次添加し、110℃で6時間反応させた。得られた反応液の溶媒を留去し、粗体を得た。得られた粗体を塩化ベンゼンに70℃で溶解させた後、室温に放冷した。得られた懸濁液にメタノールを塩化ベンゼンの2倍量添加し、生じた固体をろ取した。さらに、得られた固体を塩化メチレン・メタノール(1:2、300mL)から再結晶することで、化合物D-6(6.07g、収率87%)を得た。得られた化合物(D-6)は、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)、MS(Mass Spectrometry)により同定した。
H NMRスペクトル(400MHz、CDCl3)を図4に示す。
MS(ESI)m/z: 616.3([M+H]
【0148】
上記化合物(D-6)の合成方法を参照して、実施例に示す化合物(D-1)~(D-17)を合成した。
化合物(D-2)、(D-4)、(D-7)~(D-9)、(D-12)、(D-13)、及び(D-15)のH NMRスペクトル(400MHz、CDCl)を図5~12に各々示す。
以下に、化合物(D-1)~(D-17)、及び比較化合物(R-1)の構造を示す。
【0149】
【化24】
【0150】
【化25】
【0151】
〔各種評価〕
<蒸着膜の作製>
ガラス基板の温度を25℃に制御した状態で、真空蒸着法により得られた化合物(D-1~D-17、R-1)をそれぞれ蒸着して成膜し、ガラス基板上に厚みが100nmの蒸着膜を形成した。
【0152】
<蒸着膜の吸収波形の測定>
得られた蒸着膜の吸収形状を日立ハイテック社製、分光光度計U3310を用いて測定した。得られた吸収スペクトルの吸収極大波長、及び吸収極大の吸光度を1に規格化した場合における吸光度が0.5の幅(吸収半値幅)を表1に示す。
【0153】
<光電変換素子の作製>
得られた化合物を用いて図1の形態の光電変換素子を作製した。ここで、光電変換素子は、下部電極11、電子ブロッキング膜16A、光電変換膜12、及び上部電極15からなる。
具体的には、ガラス基板上に、アモルファス性ITOをスパッタ法により成膜して、下部電極11(厚み:30nm)を形成し、更に下部電極11上に下記の化合物(EB-1)を真空加熱蒸着法により成膜して、電子ブロッキング膜16A(厚み:30nm)を形成した。
更に、基板の温度を25℃に制御した状態で、電子ブロッキング膜16A上に化合物(D-1)とフラーレン(C60)とをそれぞれ単層換算で100nm、50nmとなるように真空蒸着法により共蒸着して成膜し、150nmのバルクヘテロ構造を有する光電変換膜12を形成した。
更に、光電変換膜12上に、アモルファス性ITOをスパッタ法により成膜して、上部電極15(透明導電性膜)(厚み:10nm)を形成した。上部電極15上に、真空蒸着法により封止層としてSiO膜を形成した後、その上にALCVD(Atomic Layer Chemical Vapor Deposition)法により酸化アルミニウム(Al)層を形成し、光電変換素子を作製した。
【0154】
【化26】
【0155】
同様にして、化合物(D-2)~(D-17)、及び(R-1)を用いて、光電変換素子を作製した。
【0156】
≪駆動の確認(光電変換効率(外部量子効率)の評価)≫
得られた各光電変換素子の駆動の確認をした。各光電変換素子に2.0×10V/cmの電界強度となるように電圧を印加した。その後、上部電極(透明導電性膜)側から光を照射して540nmでの光電変換効率(外部量子効率)を測定したところ、化合物(D-1)~(D-17)、及び(R-1)を用いて作製した光電変換素子はいずれも60%以上の光電変換効率を示し、光電変換素子として十分な外部量子効率を有することを確認した。外部量子効率は、オプテル製定エネルギー量子効率測定装置を用いて測定した。照射した光量は50μW/cmであった。
【0157】
≪耐熱性の評価≫
得られた各光電変換素子の耐熱性の評価を行った。具体的には、得られた各光電変換素子をホットプレート上、190℃で30分加熱した。加熱後の各光電変換素子に2.0×10V/cmの電界強度となるように電圧を印加し、上部電極(透明導電性膜)側から光を照射して540nmでの光電変換効率(外部量子効率)の測定を行った。外部量子効率は、オプテル製定エネルギー量子効率測定装置を用いて測定した。加熱前の光電変換効率を1とした場合の加熱後の光電変換効率の相対値で評価を行った。相対値が0.95以上のものをA、0.90以上0.95未満のものをB、0.90未満のものをCとして評価を行った。なお、実用上、B以上が好ましく、Aがより好ましい。結果を表1に示す。
【0158】
なお、表1中、「式(3)に該当」欄は、各化合物が式(3)で表される化合物に該当する場合は「A」、該当しない場合は「B」とする。
なお、表1中、「式(3A)に該当」欄は、各化合物が式(3A)で表される化合物に該当する場合は「A」、該当しない場合は「B」とする。
なお、表1中、「式(2A)に該当」欄は、各化合物が式(2A)で表される化合物に該当する場合は「A」、該当しない場合は「B」とする。
なお、表1中、「Ar」欄の「式(4A)、式(4B)、又は式(5)に該当」欄の「-」は、Arが式(4A)で表される基、式(4B)で表される基、及び式(5)で表される基のいずれにも該当しない場合を意図する。
なお、表1中、「R」欄の「式(4A)、式(4B)、又は式(5)に該当」欄の「-」は、Rが、式(4A)で表される基、式(4B)で表される基、及び式(5)で表される基のいずれにも該当しない場合を意図する。
なお、表1中、「R、R、R」欄の「式(4A)、式(4B)、又は式(5)に該当」欄の「-」は、R、R、及びRが、式(4A)で表される基、式(4B)で表される基、及び式(5)で表される基のいずれにも該当しない場合を意図する。
【0159】
【表1】
【0160】
表1に示すように、本発明の光電変換素子は比較例に対して、光電変換膜の吸収半値幅が狭く、光電変換素子の耐熱性がより優れることが確認された。
【0161】
また、化合物D-1、化合物D-2、及び化合物D-3の対比から、式(3)で表される化合物中のAr及びR~Rのうち少なくとも1つが式(5)で表される基を表す場合(化合物D-2が該当する。)、又は、式(3)で表される化合物中のAr及びR~Rのうち少なくとも1つが式(4A)で表される基を表し、且つ、式(4A)で表される基中のRe1~Re4のうち少なくとも1つ(好ましくは少なくとも2つ)が置換基を表す場合(化合物D-3が該当する。)、光電変換膜の吸収半値幅がより狭く、且つ、光電変換素子の耐熱性がより優れることが確認された。
【0162】
また、化合物D-1~化合物D-3と、化合物D-6、化合物D-8、化合物D-10~化合物D-15、及び化合物D-17との対比から、化合物が式(2)に該当し、更に上記化合物中のArが、式(4A)で表される基、式(4B)で表される基、又は式(5)で表される基を表し、且つBで表される芳香環が式(4A)で表される基又は式(4B)で表される基を置換基として有する場合(化合物D-6、化合物D-8、化合物D-11~化合物D-15、及び化合物D-17が該当する。)、光電変換膜の吸収半値幅がより狭いことが確認された。
また、化合物D-6及び化合物D-8の対比、及び化合物D-12及び化合物D-13の対比から、化合物が式(3)に該当する場合(化合物D-6、及び化合物D-12が該当する。)、光電変換素子の耐熱性がより優れることが確認された。
【0163】
更に、化合物D-1~化合物D-3と、化合物D-4、化合物D-5、化合物D-7、化合物D-9、及び化合物D-16の対比から、化合物が式(2A)又は式(3A)に該当する場合、光電変換膜の吸収半値幅がより狭いことが確認された(化合物D-4、化合物D-5、化合物D-7、化合物D-9、及び化合物D-16が該当する。)。更に、化合物D-4、化合物D-5、化合物D-7、化合物D-9、及び化合物D-16の対比から、なかでも、化合物が式(3A)に該当する場合(化合物D-4、化合物D-5、化合物D-9、及び化合物D-16)、光電変換素子の耐熱性がより優れることが確認された。
【0164】
上記実施例の結果から、化合物が下記〔1〕又は下記〔2〕のいずれかに該当する場合、光電変換膜の吸収半値幅がより狭く、光電変換素子の耐熱性がより優れることが確認された。
〔1〕特定化合物が、式(3)で表される化合物であって、化合物中のArが、式(4A)で表される基、式(4B)で表される基、又は式(5)で表される基を表し、且つ、R~Rのうち少なくとも1つが式(4A)で表される基、又は式(4B)で表される基、を表す(化合物D-6、化合物D-11、化合物D-12、化合物D-14、化合物D-15、及び化合物D-17が該当する。)。
〔2〕特定化合物が、式(3A)で表される化合物である(化合物D-4、化合物D-5、化合物D-9、及び化合物D-16が該当する。)。
【0165】
〔撮像素子の作製〕
化合物(D-1)~(D-17)を用いて、図3に示す形態と同様の撮像素子をそれぞれ作製した。
緑色光電変換素子として機能する上記光電変換素子は、上述した方法により作製した。
なお、青色光電変換素子、及び赤色光電変換素子は、特開2005-303266号公報に記載の参考にして作製した。
得られた撮像素子においては、本発明の光電変換素子中の光電変換膜の吸収ピークの半値幅が狭いため、青色光電変換素子及び赤色光電変換素子での受光がしやすく、色分離性能に優れていた。
【符号の説明】
【0166】
10a,10b 光電変換素子
11 導電性膜(下部電極)
12 光電変換膜
15 透明導電性膜(上部電極)
16A 電子ブロッキング膜
16B 正孔ブロッキング膜
20a 撮像素子
22 青色光電変換素子
24 赤色光電変換素子
図1
図2
図3
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図5
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図10
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図12