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特許7011073ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体の製造方法、及びそのグラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体の製造方法、及びそのグラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/16 20060101AFI20220119BHJP
   C08F 279/02 20060101ALI20220119BHJP
   C08L 55/02 20060101ALI20220119BHJP
   C08L 25/12 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
C08J3/16 CEQ
C08F279/02
C08L55/02
C08L25/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020542102
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 KR2019013802
(87)【国際公開番号】W WO2020122407
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2020-08-03
(31)【優先権主張番号】10-2018-0161808
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0129090
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ミン・スク
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ヴィン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ミン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ヒョン・イ
(72)【発明者】
【氏名】スジョン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ファン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】チャンホン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジェウォン・ヘオ
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-106835(JP,A)
【文献】特開平05-320221(JP,A)
【文献】特表2015-521230(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0322255(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0142126(KR,A)
【文献】特表2008-521965(JP,A)
【文献】国際公開第2018/084408(WO,A1)
【文献】特開2007-056172(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0039395(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J3/00-3/28,99/00
C08F2/00-297/08
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分含量30~65重量%の共役ジエンゴムラテックス50~70重量%に、芳香族ビニル化合物20~40重量%及びビニルシアン化合物1~20重量%をグラフト重合させてグラフト共重合体ラテックスを製造するステップと、
製造されたグラフト共重合体ラテックス100重量部(固形分基準)に対して酸凝集剤0.10~0.80重量部を投入して凝集させる第1凝集ステップと、
第1凝集ステップの後、塩凝集剤0.96~1.85重量部を投入して凝集させる第2凝集ステップとを含み、
前記酸凝集剤と塩凝集剤の総和は1.66~2.20重量部であることを特徴とする、ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体の製造方法。
【請求項2】
前記酸凝集剤は、硫酸、塩酸、ギ酸及び酢酸からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記塩凝集剤は、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム及び塩化アルミニウムからなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体の製造方法。
【請求項4】
第1凝集ステップは、酸凝集剤を75~85℃で投入し、温度5~10℃を5~35分かけて昇温させることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体の製造方法。
【請求項5】
第2凝集ステップは、塩凝集剤を80~95℃で投入し、温度5~10℃を5~35分かけて昇温させることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記グラフト共重合体ラテックスを製造するステップは、共役ジエンゴムラテックス、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の合計100重量部に、イオン交換水70~200重量部、開始剤0.1~2重量部、乳化剤0.1~2重量部及び分子量調節剤0.05~1.5重量部を投入して重合反応させた後、重合転化率93~99重量%で重合反応を終了することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体の製造方法。
【請求項7】
前記グラフト共重合体ラテックスを製造するステップは、共役ジエン化合物100重量部に、イオン交換水30~100重量部、乳化剤0.5~3重量部、電解質0.01~0.5重量部、分子量調節剤0.1~0.5重量部及び開始剤0.1~1重量部を投入し、重合して共役ジエンゴムラテックスを製造するステップを含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体の製造方法。
【請求項8】
前記ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体の製造方法は、凝集ステップの後、脱水及び乾燥ステップを含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体の製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されるビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体20~40重量%、及び芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体60~80重量%を含むことを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物の製造方法
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ハンターLabカラーメーターを用いて250℃で15分間放置後に測定したb値(b value)が9以下であることを特徴とする、請求項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D523に準拠して光沢度測定機器(Gloss meter)により45°の角度で測定した光沢度が90以上であることを特徴とする、請求項又は1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂組成物は、含水率1重量%以下である熱可塑性樹脂組成物粉体を、大気中の酸素と接触可能な状態のアルミニウムホイルに入れて190℃の熱風オーブンに放置し、炭化が始まる時間を測定するスコーチテストによるスコーチタイム(scorch time)が60分以上であることを特徴とする、請求項~1のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2018年12月14日付の韓国特許出願第10-2018-0161808号及びこれを2019年10月17日付で再出願された韓国特許出願第10-2019-0129090号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、グラフト共重合体の製造方法、及びそのグラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物に関し、より詳細には、共役ジエンゴムラテックスに芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物をグラフト重合させたグラフト共重合体ラテックスに対して、酸凝集剤で凝集した後、再び塩凝集剤で凝集することで、凝集効率に優れながらも、光沢度、色相及び加工特性に優れる効果を有するグラフト共重合体の製造方法、及びそのグラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体に代表されるアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(以下、「ABS系共重合体」という)は、耐衝撃性、機械的強度、成形性、光沢度などの物性が良好であるため、電気部品、電子部品、事務用機器、自動車部品などの様々な分野で広範囲に使用されている。
【0004】
一般に、共役ジエン系ゴムラテックスに芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物単量体を乳化重合でグラフトさせてABS系共重合体を製造する場合、塊状重合で製造されたABS系共重合体と比較して、良好な物性バランスを示し、優れた光沢などを有する利点があるため、ABS系共重合体は、主に乳化重合によって製造される。
【0005】
また、乳化重合により製造されるABS系共重合体ラテックスは、体積の減少、様々な活用性及び取り扱いの容易性のために粉体に加工されることが好ましく、一般的にABS系樹脂ラテックスを凝集、熟成、脱水及び乾燥させてABS系樹脂粉体を収得することができる。
【0006】
前記乳化重合により製造されたABS系共重合体ラテックスの凝集は、乳化重合に使用された乳化剤によって安定化されたラテックス粒子を、様々な凝集剤を使用して化学的に凝集させることができ、前記凝集剤は、酸(acid)又は金属塩を使用することができる。酸を用いたラテックスの凝集は、残留酸によってABS系樹脂の熱安定性が低下し、熱成形工程中にガス発生量が多く、樹脂の黄色度が高いという欠点があった。また、金属塩を用いたラテックスの凝集は、相対的にガス発生量及び黄色度は低いが、生産性が低いという問題があった。
【0007】
したがって、ABS系共重合体ラテックスを効率的に凝集させながら、色相に優れたABS系共重合体の製造方法の開発が必要であるのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国登録特許第10-0463482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の従来技術の問題点を解決するために、本発明は、共役ジエンゴムラテックスに芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物をグラフト重合させたグラフト共重合体ラテックス100重量部(固形分基準)に対して、酸凝集剤0.10~0.80重量部を投入して凝集させる第1凝集ステップと;第1凝集ステップの後、塩凝集剤0.96~1.85重量部を投入して凝集させる第2凝集ステップと;を含み、前記酸凝集剤と塩凝集剤の総重量を1.66~2.20重量部に調節して、凝集効率に優れながら光沢度が高く、ハンターLabカラーメーターを用いて測定したb値(b value)、及び250℃で15分間、射出機で滞留後に測定したb値(b value)が低くて色相に優れながらも、加熱減量が低く、スコーチタイムが長いため加工特性に優れたグラフト共重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、固形分含量30~65重量%の共役ジエンゴムラテックス50~70重量%に芳香族ビニル化合物20~40重量%及びビニルシアン化合物1~20重量%をグラフト重合させてグラフト共重合体ラテックスを製造するステップと;製造されたグラフト共重合体ラテックス100重量部(固形分基準)に対して、酸凝集剤0.10~0.80重量部を投入して凝集させる第1凝集ステップと;第1凝集ステップの後、塩凝集剤0.96~1.85重量部を投入して凝集させる第2凝集ステップと;を含み、前記酸凝集剤と塩凝集剤の総和は1.66~2.20重量部であることを特徴とするビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体の製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、上記の製造方法によって製造されたビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体を提供する。
【0013】
また、本発明は、上記の製造方法によるビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体20~40重量%、及び芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体60~80重量%を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、共役ジエンゴムラテックスに芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物をグラフト重合させたグラフト共重合体ラテックスを、酸凝集剤0.10~0.80重量部で凝集させた後、再び塩凝集剤0.96~1.85重量部で凝集させ、前記酸凝集剤と塩凝集剤の総和が1.66~2.20重量部である場合に、凝集効率に優れながら光沢度が高く、ハンターLabカラーメーターを用いて測定したb値、及び250℃で15分間放置後に測定したb値が低くて色相に優れ、加熱減量が低く、スコーチタイムが長いため加工特性に優れるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは、ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体ラテックスを酸凝集剤で凝集させた後、再び塩凝集剤で凝集させ、前記酸凝集剤と塩凝集剤を特定の含量で使用する場合に、光沢度、色相及び加工特性に優れるという効果を確認し、これに基づいてさらに研究に邁進して本発明を完成した。
【0016】
本発明によるビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体の製造方法を詳細に説明すると、次の通りである。
【0017】
本発明のビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体の製造方法は、固形分含量30~65重量%の共役ジエンゴムラテックス50~70重量%に芳香族ビニル化合物20~40重量%及びビニルシアン化合物1~20重量%をグラフト重合させてグラフト共重合体ラテックスを製造するステップと;製造されたグラフト共重合体ラテックス100重量部(固形分基準)に対して、酸凝集剤0.10~0.80重量部を投入して凝集させる第1凝集ステップと;第1凝集ステップの後、塩凝集剤0.96~1.85重量部を投入して凝集させる第2凝集ステップと;を含み、前記酸凝集剤と塩凝集剤の重量の総和は1.66~2.20重量部であることを特徴とし、この場合に、凝集効率に優れ、ハンターLabカラーメーターを用いて測定したb値、及び250℃で15分間放置後に測定したb値が低く、光沢度が高いため、色相に優れるという効果がある。
【0018】
本発明の製造方法をステップ別に説明すると、次の通りである。
【0019】
共役ジエンゴムラテックスの準備ステップ
前記共役ジエンゴムラテックスの製造方法は、一例として、共役ジエン化合物100重量部に、イオン交換水30~100重量部、乳化剤0.5~3重量部、電解質0.01~0.5重量部、分子量調節剤0.1~0.5重量部、及び開始剤0.1~1重量部を投入し、重合して共役ジエンゴムラテックスを製造するステップを含むことができ、この場合に、耐衝撃性に優れるという効果がある。
【0020】
他の例として、共役ジエンゴムラテックスの製造方法は、共役ジエン化合物100重量部に、イオン交換水40~70重量部、乳化剤1~2.5重量部、電解質0.05~0.3重量部、分子量調節剤0.2~0.4重量部、及び開始剤0.3~0.8重量部を投入し、重合して共役ジエンゴムラテックスを製造するステップを含むことができ、この場合に、耐衝撃性に優れるという効果がある。
【0021】
具体的な一例として、前記共役ジエンゴムラテックスの製造方法は、共役ジエン化合物100重量部のうち75~90重量部にイオン交換水30~100重量部、乳化剤0.3~2重量部、電解質0.01~0.5重量部、分子量調節剤0.1~0.5重量部及び開始剤0.05~0.5重量部を投入して1次重合するステップと;前記1次重合ステップの後、重合転化率35~45%の時点で開始剤0.05~0.5重量部を投入し、共役ジエン化合物10~25重量部を連続投入し、2次重合するステップと;前記2次重合ステップの後、重合転化率70~80%の時点で乳化剤0.2~1重量部を投入し、3次重合するステップと;前記3次重合ステップの後、重合転化率93~99重量%で重合を終了するステップと;を含むことができ、この場合に、耐衝撃性に優れるという効果がある。
【0022】
本発明において、重合転化率は、重合終了時まで投入される単量体の総重量100%を基準として、測定時まで重合体に転化された単量体の重量%として定義することができ、前記重合転化率の測定方法は、このような定義に従って測定する重合転化率の測定方法であれば、特に制限されず、具体例として、製造されたラテックス1.5gを150℃の熱風乾燥機内で15分間乾燥させた後、重量を測定し、下記数式1を用いて総固形分含量(Total Solid Content;TSC)を求め、算出された総固形分含量を用いて下記数式2から算出することができる。このような数式2は、投入された単量体の総重量が100重量部であることを基準とする。
【0023】
[数式1]
総固形分含量(TSC;%)=(乾燥後の重量/乾燥前の重量)×100
【0024】
[数式2]
重合転化率(%)=[総固形分含量(TSC)×(投入された単量体、イオン交換水及び副原料を合わせた総重量)/100]-(単量体及びイオン交換水以外に投入された副原料の重量)
【0025】
前記数式2において、副原料は、開始剤、乳化剤、電解質及び分子量調節剤を指す。
【0026】
前記投入された単量体は共役ジエン化合物を指す。
【0027】
前記共役ジエン化合物は、一例として、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、及びイソプレンからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0028】
前記乳化剤は、一例として、アルキルアリールスルホネート、アルカリアルキル硫酸アルカリ金属塩、スルホン化アルキルエステル、脂肪酸の石鹸、及びロジン酸のアルカリ塩からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0029】
前記電解質は、一例として、KCl、NaCl、KHCO、NaHCO、KCO、NaCO、KHSO、NaHSO、K、Na、KPO、NaPO、KHPO及びNaHPOからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0030】
前記開始剤は、一例として、水溶性の過硫酸重合開始剤、脂溶性の重合開始剤、または酸化-還元系触媒系などを使用することができ、前記水溶性の過硫酸重合開始剤としては、一例として、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム及び過硫酸アンモニウムからなる群から選択された1種以上であってもよく、前記脂溶性の重合開始剤としては、一例として、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、t-ブチルヒドロペルオキシド、パラメタンヒドロペルオキシド及びベンゾイルペルオキシドからなる群から選択された1種以上であってもよく、酸化-還元系触媒としては、一例として、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、ナトリウムエチレンジアミンテトラアセテート、硫酸第一鉄、デキストロース、ピロリン酸ナトリウム及び亜硫酸ナトリウムからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0031】
前記共役ジエンゴムラテックスの製造時に、最も好ましくは過硫酸カリウムを使用することができる。
【0032】
前記分子量調節剤は、一例として、メルカプタン類系の分子量調節剤であってもよく、特に3級ドデシルメルカプタンが好ましい。
【0033】
本発明の共役ジエンゴムラテックスは、一例として、平均粒径1,800~5,000Å、好ましくは2,000~4,000Å、より好ましくは2,500~3,500Åであってもよく、この範囲内で、耐衝撃性に優れるという効果がある。
【0034】
本発明において、平均粒径は、共役ジエンゴムラテックスを総固形分含量(TSC)0.1%以下と薄く処理して試料を製造した後、ダイナミックレーザーライトスキャタリング法でNicompTM 380機器(米国、PSS・Nicomp社)を用いて測定することができる。
【0035】
グラフト共重合体ラテックスの製造ステップ
前記グラフト共重合体ラテックスを製造するステップは、一例として、固形分含量30~65重量%の共役ジエンゴムラテックス50~70重量%に芳香族ビニル化合物20~40重量%及びビニルシアン化合物1~20重量%をグラフト重合することができ、好ましくは、固形分含量30~65重量%の共役ジエンゴムラテックス55~65重量%に芳香族ビニル化合物25~35重量%及びビニルシアン化合物5~15重量%をグラフト重合することができ、この範囲内で、耐衝撃性、機械的強度及び成形性に優れるという効果がある。
【0036】
本発明において、固形分含量は、ラテックス内の水分を全て蒸発させたとき、残る有効成分の含量として定義され、アルミニウム皿に2.5gのラテックスを秤で測定した後、150℃の熱で5分間加熱して水分を全て蒸発させた後、重量を測定して下記数式3により求めることができる。
【0037】
[数式3]
固形分含量(重量%)=100-[(水分乾燥前のラテックスの重量(g)-水分乾燥後に残った粉体の重量(g))/水分乾燥前のラテックスの重量×100]
【0038】
前記グラフト共重合体ラテックスを製造するステップは、一例として、共役ジエンゴムラテックス、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の合計100重量部に、イオン交換水70~200重量部、開始剤0.1~2重量部、乳化剤0.1~2重量部及び分子量調節剤0.05~1.5重量部を投入して重合反応させた後、重合転化率93~99重量%で重合反応を終了することができる。
【0039】
本ステップにおいて、重合転化率は、前記共役ジエンゴムラテックスの準備ステップで詳述した重合転化率の定義及び測定方法に従うが、投入された単量体は、ゴムラテックスに含まれた共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を意味する。
【0040】
他の例として、前記グラフト共重合体ラテックスを製造するステップは、共役ジエンゴムラテックス、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の合計100重量部に、イオン交換水100~170重量部、開始剤0.3~1重量部、乳化剤0.5~1.5重量部及び分子量調節剤0.1~1.0重量部を投入して重合反応させた後、重合転化率95~98重量%で重合反応を終了することができる。
【0041】
具体的な一例として、前記グラフト共重合体ラテックスを製造するステップは、共役ジエンゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の合計100重量部を基準として、固形分含量30~65重量%の共役ジエンゴムラテックス50~70重量%及びイオン交換水60~150重量部に、別途の混合装置で混合された芳香族ビニル化合物20~40重量%、ビニルシアン化合物1~20重量%、イオン交換水10~50重量部、開始剤0.09~1.5重量部、乳化剤0.1~2重量部及び分子量調節剤0.05~1.5重量部を含む混合溶液を65~75℃で2~4時間投入した後、開始剤0.01~0.5重量部を投入し、30分~90分かけて75~80℃に昇温させた後、重合転化率93~99重量%でグラフト重合を終了することができ、この場合に、耐衝撃性、機械的強度及び成形性に優れるという効果がある。
【0042】
前記共役ジエンゴムラテックスは、一例として、固形分含量が30~65重量%、好ましくは40~60重量%、より好ましくは55~60重量%であってもよく、この場合に、重合反応が均一に進行するという効果がある。
【0043】
前記芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、ρ-メチルスチレン、m-メチルスチレン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、t-ブチルスチレン、ο-ブロモスチレン、ρ-ブロモスチレン、m-ブロモスチレン、ο-クロロスチレン、ρ-クロロスチレン、m-クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、フルオロスチレン及びビニルナフタレンからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0044】
前記ビニルシアン化合物は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、またはこれらの混合物であってもよい。
【0045】
前記乳化剤、開始剤及び分子量調節剤は、一例として、前記共役ジエンゴムラテックスの準備ステップで使用された範囲内で使用することができる。
【0046】
本発明で具体的に言及していない電解質などのその他の添加物は、必要に応じて適宜選択することができ、ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体ラテックスの製造に通常適用される範囲であれば、特に制限されない。
【0047】
上述した記載以外に、グラフト共重合体の製造方法における反応時間、反応温度、圧力、反応物の投入時点などのその他の反応条件は、本発明の属する技術分野で通用されている範囲内であれば、特に制限されず、必要に応じて適宜選択して行うことができる。
【0048】
グラフト共重合体ラテックスの凝集ステップ
前記で製造されたグラフト共重合体ラテックスは、凝集剤によって凝集されてグラフト共重合体スラリーを形成する。
【0049】
前記凝集ステップは、一例として、製造されたグラフト共重合体ラテックス100重量部(固形分基準)に対して、酸凝集剤0.10~0.80重量部を投入して凝集させる第1凝集ステップと;第1凝集ステップの後、塩凝集剤0.96~1.85重量部を投入して凝集させる第2凝集ステップと;を含み、前記酸凝集剤と塩凝集剤の総和は1.66~2.20重量部であってもよく、この場合に、凝集効率に優れながら光沢度が高く、ハンターLabカラーメーターを用いて測定したb値、及び250℃で15分間放置後に測定したb値が低くて色相に優れ、加熱減量が低く、スコーチタイムが長いため加工特性に優れるという効果がある。
【0050】
前記第1凝集ステップは、一例として、グラフト共重合体ラテックスに酸凝集剤を75~85℃で投入した後、温度5~10℃を5~35分かけて昇温させるステップであってもよく、好ましくは、酸凝集剤を78~82℃で投入した後、6~8℃を10~30分かけて昇温させるステップであってもよく、この場合に、凝集が均一に行われ、凝集効率に優れるという効果がある。
【0051】
前記第2凝集ステップは、一例として、塩凝集剤を80~95℃で投入し、5~10℃を5~35分かけて昇温させることができ、好ましくは、塩凝集剤を84~90℃で投入し、温度6~8℃を10~30分かけて昇温させることができ、この場合に、凝集が均一に行われ、凝集効率に優れ、熟成するという効果がある。
【0052】
具体例として、前記第1凝集ステップが終わった温度と、前記第2凝集ステップが始まる温度とは同一であり得る。
【0053】
前記第1凝集ステップ及び第2凝集ステップは、一例として、撹拌速度5~450rpm、または10~400rpm、好ましくは30~300rpm、より好ましくは30~100rpmの条件下で行われてもよいが、これに制限されるものではない。前記撹拌速度の範囲内で、生産性に優れ、凝集効率が高く、かつ物性バランスに優れるという効果がある。
【0054】
前記酸凝集剤は、グラフト共重合体ラテックス100重量部(固形分基準)に対して、一例として、0.10~0.80重量部、好ましくは0.15~0.75重量部、より好ましくは0.20~0.70重量部、さらに好ましくは0.20~0.50重量部、または0.50~0.70重量部を含んで凝集させることができ、この範囲内で、凝集効率に優れながら光沢度が高く、ハンターLabカラーメーターを用いて測定したb値、及び250℃で15分間、射出機で放置後に測定したb値が低くて色相に優れ、加熱減量が低く、スコーチタイムが長いため加工特性に優れるという効果がある。
【0055】
前記塩凝集剤は、グラフト共重合体ラテックス100重量部(固形分基準)に対して、一例として、0.96~1.85重量部、または0.96~1.80重量部、好ましくは1.00~1.80重量部、より好ましくは1.25~1.80重量部、さらに好ましくは1.30~1.50重量部を含んで凝集させることができ、この範囲内で、光沢度に優れ、加熱減量が低く、スコーチタイムが長いため、加工特性に優れるという効果がある。
【0056】
前記酸凝集剤と塩凝集剤の総和は、一例として、グラフト共重合体ラテックス100重量部(固形分基準)に対して、1.66~2.20重量部、または1.70~2.10重量部、好ましくは1.70~2.00重量部、より好ましくは1.75~2.00重量部を投入することができ、この範囲内で、凝集効率に優れながら光沢度が高く、ハンターLabカラーメーターを用いて測定したb値、及び250℃で15分間放置後に測定したb値が低くて色相に優れ、加熱減量が低く、スコーチタイムが長いため加工特性に優れるという効果がある。
【0057】
前記酸凝集剤は、一例として、硫酸、塩酸、ギ酸及び酢酸からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは硫酸であってもよく、この場合に、ハンターLabカラーメーターを用いて測定したb値、及び250℃で15分間放置後に測定したb値に優れるという効果がある。
【0058】
前記塩凝集剤は、一例として、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム及び塩化アルミニウムからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは硫酸マグネシウムであってもよく、この場合に、凝集効率が良好であり、光沢度に優れるという効果がある。
【0059】
前記酸凝集剤と塩凝集剤が水などの溶媒を含む場合、これらの重量は、溶媒を除いた重量を意味する。
【0060】
前記凝集ステップは、一例として、酸化防止剤、安定剤、またはこれらの混合物がさらに含まれてもよく、この場合に、押出後、物性バランスに優れるという効果がある。
【0061】
前記凝集されたグラフト共重合体ラテックスは、脱水及び乾燥してグラフト共重合体粉体として得ることができる。
【0062】
本発明において、粉体(powder)は、固体粒子が多数集合した状態にある物体を意味し、一例として、固体粒子が多数集合した状態にある、平均粒径が1~10,000μm、または10~2,000μmである物体であってもよい。
【0063】
本発明において、粉体の平均粒径は、DPケーキングテスト(DP caking test)で測定することができる。DPケーキングテストは、具体的に、10gの粉体を20kgの錘で10分間圧縮した後、ドイツのFritsch社の篩振動機(Analysette 3)に#8メッシュ(2380μm)から#625メッシュ(20μm)を積層し、#625メッシュを通過する粉体を採集できるステンレス材質の容器を#625メッシュの下段に設置した後、篩振動機に20分間振動を与えた後、メッシュに残っている粉体の粒度分布を確認し、粒度分布において、累積重量が50重量%を通過する粒子の直径を粉体の平均粒径とする。
【0064】
前記脱水及び乾燥させるステップは、当業界で通常用いられる方法であれば、特に制限されない。
【0065】
前記凝集後に収得されたスラリーを、一例として、遠心脱水機、圧搾式脱水機などを用いて脱水して、ウェットパウダー(wet powder)状態のグラフト共重合体を得ることができる。
【0066】
前記脱水は、一例として、1回以上、好ましくは1~3回、より好ましくは2~3回行うことが好ましく、この場合に、残留乳化剤の含量が低減されることで、光沢度などの表面特性が向上するという効果がある。
【0067】
前記脱水後に収得されたウェットパウダー(wet powder)状態のグラフト共重合体は、含水率が、一例として、40重量%以下、好ましくは10~40重量%、より好ましくは10~35重量%または10~30重量%であってもよく、この場合に、後工程である乾燥ステップでの効率が増加することで、生産性に優れるという利点がある。
【0068】
前記乾燥は、本発明の属する技術分野で通常行われている公知の乾燥工程であれば、特に制限されないが、一例として、ウェットパウダー(wet powder)状態のグラフト共重合体を、流動層乾燥機を用いてエアー(air)を供給して乾燥させた後、グラフト共重合体粉体を得ることができる。
【0069】
また、ウェットパウダー状態のグラフト共重合体を乾燥させて収得されたグラフト共重合体粉体は、含水率が、一例として、2重量%以下、好ましくは0.1~2重量%、より好ましくは0.1~1重量%であってもよく、この範囲内で、共重合体の生産性に優れ、機械的強度、耐熱性、表面光沢などの物性に優れるという利点がある。
【0070】
本発明において、含水率は、水分分析器を用いて測定することができ、具体的には、スイス所在のメトラー・トレド社の水分分析器により測定することができる。
【0071】
前記グラフト共重合体粉体は、一例として、芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体と溶融混練した後、押出させることができ、この場合に、耐衝撃性、耐化学性、成形加工性などに優れ、光沢性に優れ、ハンターLabカラーメーターを用いて測定したb値、及び250℃で15分間放置後に測定したb値が低いため、色相が美麗な熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。
【0072】
前記溶融混練及び押出ステップは、一例として、220~240℃及び250~400rpm下、好ましくは225~235℃及び300~400rpm下で行われてもよいが、これに制限されるものではない。
【0073】
前記溶融混練は、一例として、バンバリーミキサー、一軸押出機、二軸押出機、ニーダーなどを用いて行うことができ、特に限定されない。
【0074】
前記溶融混練時に、一例として、着色剤、熱安定剤、光安定剤、補強剤、充填剤、難燃剤、潤滑剤、可塑剤、帯電防止剤及び加工助剤からなる群から選択された添加剤1種以上を、0.1~10重量部、または0.1~5重量部の範囲内で投入することができる。
【0075】
また、本発明のビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、前記の製造方法により製造されることを特徴とし、この場合に、ハンターLabカラーメーターを用いて測定したb値、及び250℃で15分間放置後に測定したb値が低く、光沢度が高いため、色相に優れるという効果がある。
【0076】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前記ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体20~40重量%、好ましくは25~35重量%、及び芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体60~80重量%、好ましくは65~75重量%を含むことを特徴とし、この場合に、耐衝撃性、耐化学性、成形加工性及び光沢性に優れ、ハンターLabカラーメーターを用いて測定したb値、及び250℃で15分間放置後に測定したb値が低いため、色相が美麗であるという効果がある。
【0077】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、厚さ1/8インチ(3.2mm)である試片の光沢度を、ASTM D523に準拠して光沢度測定機器(Gloss meter)により45°の角度で測定した光沢度が90以上、または90~110、好ましくは92~102、より好ましくは96~100であってもよく、この範囲内で、物性バランス及び色相に優れるという効果がある。
【0078】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ハンターLabカラーメーターを用いて測定したb値が、3.6以下、好ましくは3.0~3.6、より好ましくは3.2~3.5であってもよく、この範囲内で、物性バランス及び色相に優れるという効果がある。
【0079】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、250℃で15分間放置後にハンターLabカラーメーターを用いて測定したb値が、9以下、好ましくは3~9、より好ましくは5~9、さらに好ましくは5~8であってもよく、この範囲内で、物性バランス及び色相に優れるという効果がある。
【0080】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、190℃でスコーチテスト(scorch test)によるスコーチタイム(scorch time)が、60分以上、または80分以上、好ましくは80~180分、より好ましくは80~150分であってもよく、この範囲内で、加工特性及び物性バランスに優れるという効果がある。
【0081】
本発明において、スコーチタイム(scorch time)は、金型で流れが止まり、ゴムが固まり始める時間であって、スコーチタイムが短いと、高温での成形中に未加硫配合物が加硫されて成形不良が発生する頻度が高くなる。
【0082】
本発明において、スコーチタイムは、含水率1重量%以下である熱可塑性樹脂組成物粉体を、大気中の酸素と接触可能な状態のアルミニウムホイルに入れて190℃の熱風オーブンに放置し、炭化が始まる時間を測定して、これをスコーチタイムとする。スコーチタイムが長いほど、熱安定性に優れるものと評価する。
【0083】
本発明において、含水率は、水分分析器を用いて測定することができ、具体的には、スイス所在のメトラー・トレド社の水分分析器により測定することができる。
【0084】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、加熱減量が0.8重量%以下、または0.1~0.8重量%、好ましくは0.1~0.6重量%、より好ましくは0.4~0.6重量%であってもよく、この範囲内で、加工特性及び物性バランスに優れるという効果がある。
【0085】
本発明において、加熱減量は、物質を一定の条件下で加熱する時に生じる重量の減少であって、窒素雰囲気下で、80℃から250℃まで昇温速度20℃/分で上昇後、250℃で60分間維持する条件で加熱し、加熱前後の樹脂の重量を測定して、下記数式4によって求めることができる。また、加熱前後の重量は、熱重量分析(TGA)によって測定することによって求めることができる。前記加熱減量が低いほど、加工特性に優れる。
【0086】
[数式4]
加熱減量(重量%)={(加熱前の重量-加熱後の重量)/加熱前の重量}×100
【0087】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【実施例
【0088】
下記の実施例及び比較例において使用した成分は、次の通りである。
*酸凝集剤:硫酸
*塩凝集剤:硫酸マグネシウム
【0089】
<共役ジエンゴムラテックスの製造>
窒素置換された重合反応器に、イオン交換水55重量部、単量体として、1,3-ブタジエン100重量部のうち85重量部、乳化剤として、C16~C18である脂肪酸金属塩1.5重量部、電解質として炭酸カリウム(KCO)0.15重量部、分子量調節剤として3級ドデシルメルカプタン(TDDM)0.3重量部、開始剤として過硫酸カリウム0.3重量部を一括投入し、反応温度70℃で重合反応させた。重合転化率35~45%で過硫酸カリウム0.3重量部を一括投入し、残量の1,3-ブタジエンを連続投入して反応させた。重合転化率70~80%まで反応させた後、ロジン酸鹸化物0.3重量部を一括投入して反応させた後、転化率93%で反応を終了して、共役ジエンゴムラテックスを製造した。
【0090】
前記製造された共役ジエンゴムラテックスの平均粒径は3,000Åであり、固形分含量は55~60重量%であった。
【0091】
<ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体(以下、「ABSグラフト共重合体」という)の製造>
窒素置換された重合反応器に、前記で製造された固形分含量55~60重量%の共役ジエンゴムラテックス60重量部及びイオン交換水100重量部に、別途の混合装置で混合されたアクリロニトリル10重量部、スチレン30重量部、イオン交換水25重量部、t-ブチルヒドロペルオキシド0.12重量部、ロジン酸カリウム0.9重量部及び3級ドデシルメルカプタン0.35重量部からなる混合溶液と、デキストロース0.054重量部、ピロリン酸ナトリウム0.004重量部及び硫酸第一鉄0.002重量部を共に70℃で3時間投入した。前記投入が終わった後、デキストロース0.05重量部、ピロリン酸ナトリウム0.03重量部、硫酸第一鉄0.001重量部及びt-ブチルヒドロペルオキシド0.05重量部を一括的に前記重合反応器に投入し、温度を80℃まで1時間かけて昇温させた後、反応を終結してABSグラフト共重合体ラテックスを製造した。このとき、重合転化率は97%であった。
【0092】
実施例1
前記で製造されたABSグラフト共重合体ラテックス100重量部(固形分基準)に、硫酸0.20重量部を80℃で投入した後、87℃まで20分かけて昇温して凝集させた後(第1凝集ステップ)、87℃で硫酸マグネシウム1.80重量部を投入した後、93℃まで15分かけて昇温して凝集させた(第2凝集ステップ)。凝集されたABSグラフト共重合体を脱水及び乾燥してABSグラフト共重合体粉体を製造した。前記製造されたABSグラフト共重合体粉体27重量部とアクリロニトリル-スチレン共重合体(LG化学、92HR)73重量部を混合機に入れて混合した後、押出機を用いて210℃で溶融混練した後、ペレット化し、これを、射出機を用いて物性測定のための試片を製造した。
【0093】
実施例2~6
実施例1において、硫酸及び硫酸マグネシウムの含量を下記表1のように変更した以外は、前記実施例1と同様に行った。
【0094】
比較例1
前記で製造されたABSグラフト共重合体ラテックス100重量部(固形分基準)に、硫酸2.0重量部を80℃で投入した後、93℃まで30分かけて昇温して凝集及び熟成させた後、凝集及び熟成したABSグラフト共重合体を脱水及び乾燥してABSグラフト共重合体粉体を製造した。前記製造されたABSグラフト共重合体粉体27重量部とアクリロニトリル-スチレン共重合体(LG化学、92HR)73重量部を混合機に入れて混合した後、押出機を用いて210℃で溶融混練した後、ペレット化し、これを、射出機を用いて物性測定のための試片を製造した。
【0095】
比較例2
比較例1において、硫酸2重量部の代わりに硫酸マグネシウム2重量部を投入した以外は、前記比較例1と同様に行った。
【0096】
比較例3
比較例1において、硫酸2重量部の代わりに硫酸1重量部及び硫酸マグネシウム1重量部を混合して投入した以外は、前記比較例1と同様に行った。
【0097】
比較例4~7
比較例1において、硫酸及び硫酸マグネシウムを下記表2の含量で混合して投入した以外は、前記比較例1と同様に行った。
【0098】
比較例8~17
実施例1において、硫酸及び硫酸マグネシウムの投入順序及び含量を下記表3のように変更して投入した以外は、前記実施例1と同様に行った。
【0099】
[試験例]
前記実施例1~6及び比較例1~17で製造された試片の特性を、下記の方法で測定し、その結果を下記の表1~表3に示す。
【0100】
測定方法
*光沢度:厚さ1/8インチ(3.2mm)である試片の光沢度を、ASTM D523に準拠して45°の角度で測定した。
*b値:ハンターLabカラーメーターを用いてb値を測定した。
*放置後のb値:250℃で15分間、射出機に放置させた後、ハンターLabカラーメーターを用いてb値(b value)を測定した。
*スコーチテスト(min.):含水率1重量%以下である熱可塑性樹脂組成物粉体を、大気中の酸素と接触可能な状態のアルミニウムホイルに入れて190℃の熱風オーブンに放置し、炭化が始まる時間を測定した。
*加熱減量(重量%):窒素雰囲気下で、80℃から250℃まで昇温速度20℃/分で上昇後、250℃で60分間維持する条件で加熱し、加熱前後の樹脂の重量を熱重量分析(TGA)により測定して、下記数式4によって計算した。
【0101】
[数式4]
加熱減量(重量%)={(加熱前の重量-加熱後の重量)/加熱前の重量}×100
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
前記表1~表3に示したように、本発明に係る実施例1~6は、光沢度が高く、ハンターLabカラーメーターを用いて測定したb値、及び250℃で15分間放置後に測定したb値が低いため、色相に優れるだけでなく、スコーチタイムが長く、加熱減量が低いため、加工特性に優れた。
【0106】
その一方で、酸凝集剤又は塩凝集剤を単独で含む比較例1、2、及び酸凝集剤と塩凝集剤を混合して一括投入した比較例3~7は、光沢度、ハンターLabカラーメーターを用いて測定したb値及び250℃で15分間放置後に測定したb値、スコーチタイム及び加熱減量が劣悪であった。
【0107】
また、塩凝集剤を投入して凝集させた後、酸凝集剤を投入した比較例8~12は、光沢度、ハンターLabカラーメーターを用いて測定したb値及び50℃で15分間放置後に測定したb値、スコーチタイムまたは加熱減量が劣悪であった。
【0108】
また、酸凝集剤を投入した後、塩凝集剤を投入して凝集させるが、凝集剤の総和が少量又は過量である比較例13、15、16;及び塩凝集剤が過量である比較例14は、光沢度、ハンターLabカラーメーターを用いて測定したb値、250℃で15分間放置後に測定したb値、スコーチタイムまたは加熱減量が劣悪であった。
【0109】
また、酸凝集剤が過量含まれた比較例17は、ハンターLabカラーメーターを用いて測定したb値及び加熱減量が劣悪であった。