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特許7011142発光装置、発光装置用パッケージ及び発光装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】発光装置、発光装置用パッケージ及び発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/60 20100101AFI20220119BHJP
   H01L 33/62 20100101ALI20220119BHJP
   C25D 5/12 20060101ALI20220119BHJP
   C25D 7/12 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
H01L33/60
H01L33/62
C25D5/12
C25D7/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2016192944
(22)【出願日】2016-09-30
(65)【公開番号】P2018056457
(43)【公開日】2018-04-05
【審査請求日】2019-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【復代理人】
【識別番号】100221589
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 俊博
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 保夫
【審査官】淺見 一喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-089830(JP,A)
【文献】特開2012-074501(JP,A)
【文献】特開2012-222191(JP,A)
【文献】特開2012-212850(JP,A)
【文献】特開2015-030892(JP,A)
【文献】特開平01-132072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
C25D 5/12
C25D 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
結晶質の金属である母材と、前記母材上に設けられた非晶質のNiP合金である非晶質層と、前記非晶質層上に設けられたAg含有層と、を備え、前記発光素子から出射された光を反射する光反射材と、
を有し、
前記Ag含有層と前記非晶質層の間に下地層を有し、
前記下地層が、非晶質層側からPd、Auの順に積層されており、
前記非晶質層、前記下地層、前記Ag含有層がこの順で積層されており、
前記NiP合金中のPの割合が11wt%以上15wt%以下であり、
前記Ag含有層は、厚みが0.05μm以上1μm以下であり、光沢度が1.6以上である発光装置。
【請求項2】
前記発光素子と前記光反射材を接続するワイヤをさらに有し、前記ワイヤの材料はAu、Ag、Ag合金のいずれか1種である請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記光反射材の上面に前記Ag含有層を有し、前記光反射材の上面に発光素子が実装されている請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記光反射材が前記Ag含有層が露出されるように埋め込まれている樹脂成形体を備える、請求項1からのいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記光反射材が略平板状であって屈曲部を有さない、請求項1からのいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
光反射材を準備する工程と、
前記光反射材を備えるパッケージを準備する工程と、
前記パッケージに発光素子を実装する工程を備え、
前記光反射材を準備する工程は、母材を準備し、前記母材に非晶質のNiPである非晶質層をめっきで形成し、前記非晶質層の上にPd、Auの順に積層されてなる下地層をめっきで形成し、前記下地層の上にAg含有層をめっきで形成することを含み、
前記非晶質層、前記下地層、前記Ag含有層をこの順で積層し、
前記非晶質層を、前記NiP中のPの割合が11wt%以上15wt%以下となるように形成し、
前記Ag含有層を、0.05μm以上1μm以下の厚みで、且つ光沢度が1.6以上となるように形成する、発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記非晶質層、NiPめっき液を用いて形成する請求項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記非晶質層は、電解めっきで形成する請求項またはに記載の発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記母材は圧延で形成される、請求項からのいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項10】
結晶質の金属である母材と、前記母材上に設けられた非晶質のNiP合金である非晶質層と、前記非晶質層上に設けられたAg含有層と、を備える光反射材と、
前記光反射材を支持する基体と、
を有し、
前記Ag含有層と前記非晶質層の間に下地層を有し、
前記下地層が、非晶質層側からPd、Auの順に積層されており、
前記非晶質層、前記下地層、前記Ag含有層がこの順で積層されており、
前記NiP合金中のPの割合が11wt%以上15wt%以下であり、
前記Ag含有層は、厚みが、0.05μm以上1μm以下であり、光沢度が1.6以上である、発光装置用パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、Ag含有層を有する光反射材を備える発光装置と製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子(以下、単に「発光素子」とも称する)を用いた発光装置において、発光素子からの光に対して高い反射率を有する銀(Ag)を表面に設けたパッケージが数多く採用されている。(例えば、特許文献1、2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許4367457号
【文献】特開2013-236005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
Agは高い光反射率を有し、発光装置の光反射部材として好適な材料である一方、高価である。しかし、このAgの量を削減してコストを低減するために、Agの層を薄く(例えば1μm以下)とすると、図8の比較例に示すように、光反射率が低下するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明の一実施形態は、発光素子と、結晶質の金属である母材と、前記母材上に設けられた非晶質の金属である非晶質層と、前記非晶質層上に設けられたAg含有層と、を備え、前記発光素子から出射された光を反射する光反射材と、を有する発光装置である。
また、光反射材を準備する工程と、光反射材を備えるパッケージを準備する工程と、パッケージに発光素子を実装する工程を備え、光反射材を準備する工程は、母材を準備し、母材に非晶質の金属である非晶質層をめっきで形成し、非晶質層の上にAg含有層をめっきで形成することを含む、発光装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
このような構成によれば、光取り出し効率の良い発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】一実施形態の発光装置を説明するための概略平面図である。
図1B】一実施形態の発光装置を説明するための概略断面図である。
図2図1A及び1Bの光反射材の構成を説明する概略拡大断面図である。
図3A】別の一実施形態の発光装置を説明するための概略斜視図である。
図3B】別の一実施形態の発光装置を説明するための概略断面図である。
図4A】別の一実施形態の発光装置の製造方法を説明するための概略断面図である。
図4B】別の一実施形態の発光装置の製造方法を説明するための概略断面図である。
図4C】別の一実施形態の発光装置の製造方法を説明するための概略断面図である。
図4D】別の一実施形態の発光装置の製造方法を説明するための概略断面図である。
図5】本発明の一実施形態に関わる実施例の発光装置と比較例の発光装置の構造と測定結果を示す表である。
図6】本発明の一実施形態に関わる実施例の光反射材の断面を示すFIB-SEMによる断面観察写真である。
図7】本発明の一実施形態に関わる実施例の比較例の発光装置の光反射材の断面を示すFIB-SEMによる断面観察写真である。
図8】本発明の一実施形態に関わる実施例の発光装置と比較例の発光装置の構造と予想される測定結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施するための形態を、以下に図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するための発光装置及び発光装置の製造方法を例示するものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる例示にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。
【0009】
図1A及び1Bに、実施形態1に関わる発光装置100の構造を示す。
本実施形態の発光装置100は、平面視において矩形である発光素子2と、Ag含有層を表面に備える一対の板状の光反射材1と、光反射材1の一部が埋め込まれた樹脂成形体3と、を備える。
【0010】
本実施形態の光反射材1は、図2の断面図に示すように、Cu合金である母材1aと、母材1a上に設けられたNiPである非晶質層1bと、非晶質層1b上に設けられたPd層である第1下地層1c1、Au層である第2下地層1c2と、下地層上に設けられたAg含有層1dを有する。このAg含有層1dの厚みは例えば、約0.05μm~約1.0μmである。
本実施形態の樹脂成形体3は、平面視において横長である形状であり、その側面に光反射材1が底面に露出された横長の凹部を有する。樹脂成形体3の外面には、一対の板状の光反射材1の一部が外部端子部として露出し、外部端子部は樹脂成形体3の下面に沿って折り曲げられている。
そして、これらの部材を被覆するよう樹脂成形体の凹部内に充填された封止部材5を有している。封止部材5は蛍光体を含有した透光性樹脂である。
【0011】
上述のような構成を有する本実施形態の発光装置の光反射材1は、Ag含有層1dの厚みによらず、高い光反射率を有する。そのため、光取り出し効率の高い発光装置とすることができる。その理由は以下のとおりである。母材や下地層上にめっきで設けられるAg含有層等の金属層は、一般的に母材や下地層上のめっき結晶構造の影響を受ける。つまり、母材や下地層が結晶構造を有している場合、その上に設けられる金属層はその結晶構造の影響を受け、いわゆるエピタキシャル成長を行うことになる。発明者は、この母材等から引き継がれる結晶構造がAg含有層、特に厚みが1μm以下のAg含有層の光反射率に悪影響を及ぼすことを見出し、本実施形態の発明に至った。本実施形態の光反射材1は、母材1aとAg含有層1dの間にこの母材等の結晶構造の影響を低減できる非晶質層1bを有している。非晶質層1bを設けることより、母材1a上にめっきで設けられるAg含有層1dが母材1aの結晶構造から受ける影響を低減または排除できるため、緻密で欠陥が少なく微細なAg本来の結晶構造を有し、光反射率が高いAg含有層1dを形成することができる。これにより、Ag含有層1dの厚みを薄くしても光反射率の高い光反射材1を得ることができ、光取り出し効率の高い発光装置100とすることができる。
【0012】
光反射材1
光反射材1は、発光素子2からの光を反射する部材であり、Ag含有層1dを表面に有しており、発光素子2または後述する波長変換部材からの発光を反射するよう、発光装置100に設けられる。
【0013】
光反射材1は、発光素子2から出射された光を反射可能であれば、どのような形で発光装置100に用いられていてもよい。例えば、本実施形態のように、発光素子2の下方に設けられてもよいし、発光素子2を取り囲むリフレクタ形状に設けられてもよい。また、光反射材1は、本実施形態のような板状のリードフレームであってもよく、絶縁性の基体上に形成された配線であってもよい。また、光反射材1は、発光素子2を載置する載置部材、放熱を行う放熱部材、発光素子2と電気的に接続される導電部材としての機能を兼ねていてもよい。このため、光反射材1は、その機能に応じて、放熱性、導電性やワイヤボンディング性に優れていることが好ましい。
【0014】
本実施形態においては、図3A及び図3Bに示すように、光反射材1は平面視において略長方形の一対の平板状に形成されている。さらに、発光素子2が載置される載置部材、該発光素子が2本のワイヤ6によって電気的に接続される正負の導電部材としての役割を有している。
【0015】
本実施形態の光反射材1は、図2に示すように、非晶質層1bと、第1下地層である1c1と、第2下地層1c2と、Ag含有層1dが、光反射材1の母材1a上にこの順に設けられている。言い換えると、母材1aを中心にくるむように、上面、底面、及び側面においてそれぞれこの順に設けられている。
【0016】
Ag含有層1d
Ag含有層1dは、光反射材1の表面に設けられる。Ag含有層1dの厚みは、約0.05μm~約1.0μmであることが好ましい。Ag含有層1dの厚みが0.05μmより薄くなると、光反射率が極端に低下し、光反射材1の表面の材料として用いるメリットが少なくなる。また、1.0μmより厚くなると材料コストが増加するためである。また、材料コスト及びワイヤボンディング性などの組立信頼性の観点および硫化防止の観点では、Ag含有層1dの厚みは、約0.1μm~約0.5μmとすることが好ましい。光反射率を高めるためには、約0.2μm~約0.5μmとすることが好ましい。下地層1c1,1c2からの拡散を防止するためには0.5μm~1.0μmとすることが好ましい。
【0017】
光反射材1の表面は、可視光領域の波長の光に対する反射率が70%以上、特に好ましくは80%以上の反射率であることが好ましい。これにより、光取り出し効率を向上させることができる。また、高光沢であることが好ましく、光沢度は、0.5以上、より好ましくは1.0以上、更に好ましくは1.6以上である。ここで示される光沢度は、日本電色工業製 微小面色差計VSR 300Aを用い、45°照射、垂直受光で得られる数字である。
【0018】
Ag含有層1dの材料としては、Ag単体、AgとAu、Pt、Rh、Pd、Os、Ru、Sn、In、Zn、Teなどの合金などを用いることができる。Ag合金である場合には、銀の割合はおよそ70%~99%であることが好ましい。
【0019】
Ag含有層1dは、光反射材1の全ての表面に設けられている必要はない。つまり、光反射材1の表面の少なくとも一部がAg含有層1dであればよい。例えば、図1で示した基体3の凹部の底面に露出していない、すなわち、光反射材1のうち、樹脂成形体3の側壁部の内部に埋設された埋設部や、樹脂成形体3の外部に露出した外部端子部、発光装置の底面側に露出した実装部には、その表面にAg含有層1dが設けられていなくてもよい。このように光反射材1の一部にAg含有層1dを設けるためには、成膜する際にレジストや保護テープなどでAg含有層1dを形成しない部分をマスクで保護すること等によって行うことができる。
Ag含有層1dは、本実施形態のように光反射材1の上面とその上面と向かい合う底面との両方に設けられていてもよく、ある面のみに設けられ他の面には設けられていなくてもよい。また、一つ面の中で一部のみに設けられてもよい。また、Ag含有層1dは、設けられている全領域にわたって同等の厚みであってもよく、厚みが異なっていてもよい。厚みを異ならせることにより、より効果的にコストを低減することができる。例えば、Ag含有層1dが光反射材1の上面と底面とに設けられ、一方の面での厚みが他方よりも厚くてもよい。発光素子2が搭載される上面や発光素子2の近傍の部分に厚いAg含有層1dを設けることが光取り出し効率向上の観点から好ましい。これにより、Ag等の材料の量を減らし、コストを低減することができる。
【0020】
母材1a
光反射材1は、Ag含有層1dがその上に積層される母材1aを備える。
【0021】
本実施形態においては、母材1aは、光反射材1のおおまかな形状を決定する材料として用いられる。
【0022】
母材1aの材料としては、Cu、Fe、これらの合金、あるいはクラッド材(例えばCu/FeNi/Cuの積層)等を好適に用いることができる。Cuやその合金は、放熱性に優れているため、好ましく用いることができる。特に、板状のCu及びCu合金は、機械的特性、電気的特性、加工性等の面においても優れており、好ましい。クラッド材は、線膨張係数を低く抑えることができるため、発光装置100の信頼性が高まり、好ましい。
【0023】
母材1aを構成する金属は結晶質を有する。金属や合金は結晶質であることが一般的である。このような金属である母材1aは、熱処理等、例えば圧延で成形される際の加熱のために、結晶構造に欠陥を有していることがある。このような欠陥を有する結晶構造を備える母材の上にめっきでAg含有層1dを形成した場合、Ag含有層1dがこの欠陥を含む結晶構造を引き継いで成長してしまうため、Ag含有層1dの結晶にも欠陥が生じ、光反射率が低くなってしまう。しかし、上述のように母材1aとAg含有層1dの間に非晶質層1bを設けることで、このような問題を解決することができる。
【0024】
母材1aの厚みや形状等については、発光装置100の形状等に応じて種々選択することができる。例えば、板状、塊状、膜状等の形状であることができる。更には、セラミック等に印刷等で設けられる配線パターンであってもよく、形成された配線パターンにCuやその合金をめっきしたものであってもよい。
【0025】
非晶質層1b
本実施形態の光反射材1は、結晶質の母材1aとAg含有層1dの間に非晶質層1bを有する。
【0026】
非晶質層1bの厚みは、例えば、約0.05μm~約10μmが好ましく、約0.05μm~約5μmがより好ましい。厚みを約0.05μm以上とすることにより、母材1aからのAgへの拡散を効果的に低減することができる。約10μm以下、好ましくは約5μm以下の厚みとすることにより、原材料や製造コストが低減できる。
非晶質層1bの材料としては、例えば、NiP、NiS、NiB、NiWP合金を用いることができる。なかでも、容易に製造可能なNiP合金を用いることが好ましい。NiP合金中のPの量を11wt%以上とすることで非晶質のNiP合金とすることができる。非晶質層1b中のPの割合は、例えば約11wt%~約25wt%程度とすることが好ましく、約12wt%~約15wt%程度とすることがより好ましい。Pの量が増えると層がもろくなる傾向があり、光反射材1の加工がしづらくなるためである。
【0027】
下地層1c
Ag含有層1dと非晶質層1bとの間には、種々の目的で、別の材料の下地層1cを備えることができる。本実施形態においては、第1下地層1c1と第2下地層1c2が設けられている。
【0028】
Ag含有層1dの直下に設けられる下地層1c(第2下地層1c2)としては、Agと密着性が高く、Agに比べて硫黄成分と反応しにくい金属を用いることが好ましい。具体的にはAu、Au合金が好ましく、特に、Auが好ましい。
【0029】
非晶質層1bの直上に設けられる下地層1c(第1下地層1c1)としては、例えば、Pd、Pd合金等が好ましい。
Cuを含む材料を母材1aとする場合、母材1aの上にNiP合金である非晶質層1bを設け、その上にPdの第1下地層1c1、Auの第2下地層1c2層を順に積層させることが好ましい。このような構成とすることで、母材1aのCuが、Ag含有層1d中に拡散するのを抑制するとともに、Ag含有層1dの密着性やワイヤボンディング性を高めることができる。
【0030】
下地層1cは、硫化防止と拡散防止の役割の両方を兼ねる層としてもよい。これにより、コストを低減することができる。例えば、Auは硫黄成分と反応しにくく、拡散防止の効果も高いため、好ましく用いることができる。
【0031】
上記の非晶質層1b、Ag含有層1d及び下地層1cなどの層は、めっきにより形成する。光反射材1が母材1aを有している場合には、めっきをする前に、母材1aの前処理を行うのが好ましい。前処理としては、希硫酸、希硝酸、希塩酸等の酸処理や、水酸化ナトリウムなどのアルカリ処理が挙げられ、これらを1回又は数回、同じ処理又は異なる処理を組み合わせて行うことができる。前処理を数回行う場合は、各処理後に純水を用いて流水洗浄するのが好ましい。母材1aがCuやCuを含む合金からなる金属板の場合、希硫酸が好ましく、FeやFeを含む合金からなる金属板の場合、希塩酸が好ましい。
【0032】
非晶質層1bの材料がNiP合金である場合、非晶質層1bはNiPめっき液を用いて形成することができる。
【0033】
めっきの方法としては、電解めっきまたは無電解めっきを用いることができる。なかでも電解めっきは層の形成の速度が速く、量産性を高めることができるため、好ましい。
【0034】
Ag含有層1dを電解めっきで形成する際には、Se系光沢剤、Sb系光沢剤、S系光沢剤、有機系光沢剤等の光沢剤を併用することで、光沢度を向上させることができる。光沢剤を多く用いると、Ag含有層1dの中にこれら光沢剤の成分が取り込まれ、耐食性を悪化させる要因となることがあるが、本実施形態では、Ag含有層1dをめっき形成する前に下地層1cを形成し、その膜質を制御することで光沢剤の使用を少なくしても光沢度を高い範囲とすることができる。これにより、高い光沢度を有しつつ、耐食性にも優れた光反射材1を得る事ができる。
【0035】
また、光反射材1の光反射率を高めるため、母材1aの平坦度は、なるべく高いことが好ましい。例えば、表面粗さRaが0.5μm以下とすることが好ましい。これにより、母材1aの上に設ける下地層1cおよびAg含有層1dの平坦度を高めることができ、光を反射するAg含有層1dの厚みが0.1μm~0.5μmと非常に薄くしても、光反射材1の光反射率を良好に高めることができる。母材1aの平坦度は、圧延処理、物理研磨、化学研磨等の処理を行うことで高めることができる。
【0036】
光反射材1の形状は、例えば、図3A及び3Bに示すように、略平板状で、屈曲部を有さないことが好ましい。これにより、光反射材1の信頼性を高めることができる。非晶質層1bは通常の金属層より脆い場合が多いため、非晶質層1bを備える光反射材1を屈曲させると、Ag含有層1dが破壊される、またはAg含有層1dにクラックが発生するおそれがある。これによって、光反射材1の母材の酸化や硫化等が発生し、発光装置100の信頼性が低下するおそれがある。しかし、光反射材1を略平板状とし、屈曲部を有さない形状として発光装置100に用いることで、発光装置100の信頼性が低下するおそれを低減することができる。
【0037】
発光素子2
発光素子2は、発光素子2から出射された光が光反射材1に反射される位置に設けられる。本実施形態においては、光反射材1を底面に露出させる樹脂成形体3の凹部内に設けられている。
発光素子2は、任意の波長の半導体発光素子を選択することができる。例えば、青色、緑色発光の発光素子2としては、InGaN、GaN、AlGaN等の窒化物系半導体やGaPを用いたものを用いることができる。また、赤色の発光素子としては、GaAlAs、AlInGaPなどを用いることができる。さらに、これ以外の材料からなる発光素子2を用いることもできる。用いる発光素子2の組成や発光色、大きさや、個数などは目的に応じて適宜選択することができる。
【0038】
発光装置100が波長変換部材を備える場合には、その波長変換部材を効率良く励起できる短波長が発光可能な窒化物半導体が好適に挙げられる。半導体層の材料やその混晶比によって発光波長を種々選択することができる。また、可視光領域の光だけでなく、紫外線や赤外線を出力する発光素子2とすることができる。
【0039】
発光素子2は、光反射材1上に実装することが好ましい。これにより、発光装置100の光取出し効率を向上させることができる。
【0040】
発光素子2は、導電部材と電気的に接続される正負の電極を有している。これらの正負の電極は一面側に設けられていてもよく、発光素子2の上下両面に設けられていてもよい。導電部材との接続は、後述の接合部材4とワイヤ6によってなされてもよく、フリップチップ実装によってなされてもよい。
【0041】
光反射材1のAg含有層1d上に発光素子2を実装した場合には、光取出し効率を向上させることができるため、好ましい。
【0042】
発光素子2への給電のためには、上述の接合部材4を導電性として発光素子2の電極と接合させるほか、ワイヤ6を用いることもできる。ワイヤ6は、複数の発光素子2の間をつなぐように接続することもできる。また、図1A及び1Bに示すように、それぞれの発光素子2ごとにリードを接続するように設けることもできる。
【0043】
基体3
本実施形態の発光装置100は、少なくとも光反射材1を備えるパッケージを有する。これらのパッケージは、光反射材1のほか、基体3を備えることができる。
【0044】
本実施形態の発光装置100は、基体3を有することができる。基体3は、例えば、光反射材1を支持ないし保持するための部材である。
【0045】
樹脂成形体
本実施形態の発光装置100は、基体として樹脂成形体3を備える。樹脂成形体3は、一対の光反射材1を一体的に保持する樹脂を基材とする部材である。樹脂成形体3の平面視形状は、図1及び図2に示すような横長の外形の他、四角形、多角形、更にそれらを組み合わせたような形状とすることができる。発光装置100の樹脂成形体3が凹部を有する場合、凹部の側壁部は、その内側面は図1Bに示すような底面に対して傾斜した角度で設けるほか、略垂直な角度であってもよく、段差面を有していてもよい。また、その高さや開口部の形状等についても、目的や用途に応じて適宜選択することができる。凹部の内部には光反射材1が設けられることが好ましく、本実施形態のように底面部のほか、側壁部に光反射材を備えてもよい。
【0046】
樹脂成形体3の基材としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を用いることができ、特に、熱硬化性樹脂を用いるのが好ましい。熱硬化性樹脂としては、封止部材5に用いられる樹脂に比してガス透過性の低い樹脂が好ましく、具体的にはエポキシ樹脂組成物、シリコーン樹脂組成物、シリコーン変性エポキシ樹脂などの変性エポキシ樹脂組成物、エポキシ変性シリコーン樹脂などの変性シリコーン樹脂組成物、ポリイミド樹脂組成物、変性ポリイミド樹脂組成物、ウレタン樹脂、変性ウレタン樹脂組成物などをあげることができる。このような樹脂成形体3の基材に、充填材(フィラー)としてTiO、SiO、Al、MgO、MgCO、CaCO、Mg(OH)、Ca(OH)などの微粒子などを混入させることで光の透過率を調整し、発光素子からの光の約60%以上を反射するよう、より好ましくは約90%を反射するようにするのが好ましい。
【0047】
なお、基体3は、上記のような樹脂を基材とするものに限られず、セラミックやガラスや金属等の無機物で形成されてもよい。これにより、劣化等が少なく、信頼性の高い発光装置10とすることができる。
【0048】
接合部材4
接合部材4は、発光素子2を発光装置100に固定し実装する部材である。好ましい材料としては、導電性の接合部材4としては、銀、金、パラジウムなどの導電性ペーストや、Au-Sn、Sn-Ag-Cuなどの共晶はんだ材料、低融点金属等のろう材、Cu、Ag、Au粒子や皮膜を用いた同材料間の接合等を用いることができる。絶縁性の接合部材4としては、エポキシ樹脂組成物、シリコーン樹脂組成物、ポリイミド樹脂組成物やその変性樹脂、ハイブリッド樹脂等を用いることができる。これらの樹脂を用いる場合は、発光素子2からの光や熱による劣化を考慮して、発光素子2の実装面にAl膜やAg膜などの反射率の高い金属層や誘電体反射膜を設けることができる。
【0049】
封止部材5
本実施形態の発光装置100は、封止部材5を備えていてもよい。封止部材5を発光素子2、光反射材1、ワイヤ6や保護膜等の部材を被覆するよう設けることで、被覆した部材を塵芥や水分、更には外力などから保護することができ、発光装置100の信頼性を高めることができる。特に、保護膜を形成した後に封止部材5を保護膜上に設けることで、保護膜を保護することができるため、信頼性が高まり好ましい。
【0050】
封止部材5は、発光素子2からの光を透過可能な透光性を有し、且つ、それらによって劣化しにくい耐光性を有するものが好ましい。具体的な材料としては、シリコーン樹脂組成物、変性シリコーン樹脂組成物、変性エポキシ樹脂組成物、フッ素樹脂組成物など、発光素子からの光を透過可能な透光性を有する絶縁樹脂組成物を挙げることができる。特にジメチルシリコーン、フェニル含有量の少ないフェニルシリコーン、フッ素系シリコーン樹脂などシロキサン骨格をベースに持つ樹脂を少なくとも1種以上含むハイブリッド樹脂等も用いることができる。
【0051】
封止部材5の形成方法は、封止部材5が樹脂である場合、ポッティング(滴下)法、圧縮成型法、印刷法、トランスファモールド法、ジェットディスペンス法、スプレー塗布などを用いることができる。図1A及び1Bのような凹部を有する基体3の場合は、ポッティング法が好ましく、平板状の基体3を用いる場合は、圧縮成型法やトランスファモールド法が好ましい。
【0052】
封止部材5は、図1Bに示すように、樹脂成形体3の凹部内を充填するよう設けることができる。
【0053】
封止部材5の外表面の形状については、発光装置100に求められる配光特性などに応じて種々選択することができる。例えば、上面を凸状レンズ形状、凹状レンズ形状、フレネルレンズ形状、粗面などとすることで、発光装置の指向特性や光取出し効率を調整することができる。
【0054】
封止部材5には、着色剤、光拡散剤、光反射材、各種フィラー、波長変換部材などを含有させることもできる。
【0055】
波長変換部材は、発光素子2の光を波長変換させる材料である。発光素子2からの発光が青色光の場合、波長変換部材としては、アルミニウム酸化物系蛍光体の一種であるイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(以下、「YAG:Ce」と呼ぶ。)が好適に用いられる。YAG:Ce蛍光体は、発光素子からの青色系の光を一部吸収して補色となる黄色系の光を発するため、白色系の混色光を発する高出力な発光装置100を、比較的簡単に形成することができる。
【0056】
ワイヤ6
ワイヤ6は発光素子2と光反射材1等の導電部材とを接続する。ワイヤ6の材料は、Au、Al、Cu等及びこれらの合金が好適に用いられる。また、コアの表面にコアと別の材料で被覆層を設けたもの、例えば、Cuのコアの表面にPdやPdAu合金等を被覆層として設けたものを用いることができる。なかでも、信頼性の高いAu、Ag、Ag合金のいずれか1種から選ばれることが好ましい。また、特に、光反射率の高いAgまたはAg合金であることが好ましい。この場合は特に、ワイヤ6は保護膜によって被覆されることが好ましい。これにより、Agを含むワイヤの硫化や断線を防止し、発光装置100の信頼性を高めることができる。
また、母材1aがCuであり、ワイヤ6がAgまたはAg合金である場合、その間に非晶質層1bを備えることによって、CuとAgでの間の局部電池の形成を抑制することができる。これにより、光反射材1またはワイヤ6の劣化のおそれを低減し、信頼性の高い発光装置100とすることができる。
【0057】
保護膜
発光装置100はさらに、保護膜を備えてもよい。保護膜は、光反射材1の表面に設けられたAg含有層1dを少なくとも被覆する、主として光反射材1の表面のAg含有層1dの変色または腐食を抑制する部材である。さらに、任意に、発光素子2、接合部材4、ワイヤ6、基体(樹脂成形体3)等の光反射材1以外の部材の表面、やAg含有層1dが設けられていない光反射材1の表面を被覆してもよい。
【0058】
本実施形態においては、保護膜は、Ag含有層1dまたは光反射材1の表面のみではなく、発光素子2、接合部材4、ワイヤ6、および樹脂成形体3等の表面に連続して設けられている。
【0059】
ワイヤ6が光反射材と接続される場合、ワイヤ6の表面にも保護膜が設けられることが好ましい。ワイヤ6がAgまたはAg合金である場合、保護膜はワイヤ6を被覆するよう設けられることが好ましい。これにより、Agを含むワイヤの硫化や断線を防止し、発光装置100の信頼性を高めることができる。
【0060】
本実施形態の保護膜は、原子層堆積法(以下、ALD(Atomic Layer Deposision)とも呼ぶ)によって形成されることが好ましい。ALD法によれば、非常に均一な保護膜を製膜することができるとともに、形成された保護膜が他の成膜方法で得られる保護膜に比較して緻密であるため、Ag含有層1dの硫化を非常に有効に防止することができる。
【0061】
保護膜の材料としては、Al、SiO、TiO、ZrO、ZnO、Nb、MgO、In、Ta、HfO、SeO、Y、SnO等の酸化物や、AlN、TiN、ZrN等の窒化物、ZnF、SrF等のフッ化物が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。或いは、積層させるようにしてもよい。
【0062】
なお、接合部材4と光反射材1との熱膨張率差により、発光素子2の周囲において保護膜にクラックが形成され、発光素子2の近傍のAg含有層1dが硫化するおそれがある。しかし、本実施形態のようにAg含有層1dの厚みを0.1μm~0.5μmと非常に薄くすることで硫化の進行が低減され、光反射材1の光反射率の低下を抑えることができる。
【0063】
発光装置100は、上記の他、種々の部材を備えることができる。例えば、保護素子としてツェナーダイオードを搭載することができる。
【0064】
第2実施形態の発光装置200は、図3A及び3Bに示すように、屈曲部を有さない平板状の光反射材1を備える。このような発光装置200は、下記のようにして製造できる。
まず、図4Aに示すように、光反射材1を準備する。具体的には、母材であるCuの金属板をパンチングして一対のリードを複数備えたリードフレームを形成する。次に、ウェットエッチングにより、リードフレームの所定の位置に段差を形成する。段差を形成した後に、母材の表面にNiPの非晶質層、PdおよびAuの下地層、Ag含有層を順にめっきで形成し、リードフレームを形成する。
【0065】
図4Bに示すように、このように得られた光反射材1に、トランスファモールド法で樹脂成形体3を形成する。樹脂成形体は、図4Bに示すように、一対のリードがそれぞれに凹部の底面に露出するように形成される。つまり、光反射材1はそれぞれの樹脂成形体の凹部の底面に露出されている。
【0066】
次に、図4Cに示すように、樹脂成形体3が形成されたリードフレーム1の素子載置領域に、接合部材を介して発光素子2を載置する。そして、発光素子2とリードフレームとをワイヤによって接続する。その後、それぞれの凹部内に封止部材5を設ける。
そして、図4Dに示すようなリードフレーム1と樹脂成形体3を、ダイシングソー等を用いて切断し、図3A及び図3Bに示すような個々の発光装置に個片化する。この切断により、発光装置200の外側面に光反射材1の断面が露出する。この断面においては、Cuの母材と、NiPの非晶質層、PdおよびAuの下地層、Ag含有層が露出している。
このようにすれば、屈曲部を有さない平板状の光反射材1を有する発光装置200を製造することができる。
【実施例
【0067】
実施例として、図1A及び1Bに示す発光装置と実質的に同様の構造の発光装置を製造した。
【0068】
実施例1として、図6に示すように、Cuの母材101aの表面に、非晶質層101bとして厚み2μmのNiP合金層、下地層101cとして厚み0.07μmのPd層と厚み0.004μmのAu層、その上にAg含有層101dとして0.5μmのAg層を順に電解めっきにて形成した一対のリードフレームである光反射材101を用意した。
【0069】
実施例2として、図6に示すように、Cuの母材201aの表面に、非晶質層201bとして厚み1μmのNiP合金層、下地層201cとして厚み0.03μmのPdと厚み0.003μmのAu層、その上にAg含有層201dとして3.0μmのAg層を順に電解めっきにて形成した一対のリードフレームである光反射材201を用意した。
【0070】
NiPの非晶質層1bは、特開平5-78882に記載の電解めっき浴を参考にして
硫酸ニッケル=150g/L
塩化ニッケル=40g/L
クエン酸ナトリウム=147g/L
亜燐酸=82g/L
ほう酸=30g/L
pH3.0
の浴組成を用いて、液温60℃、電流密度5A/dm2でめっきして作成した。
【0071】
比較例として、実施例と同様の構造で、非晶質層1bの代わりにNi層1zを設けた発光装置を製造した。
【0072】
比較例1として、図7に示すように、Cuの母材81aの表面に、Ni層81zとして厚み2μmのNi層、下地層81cとして厚み0.03μmのPd層と厚み0.005μmのAu層、その上にAg含有層81dとして0.5μmのAg層を順に電解めっきにて形成した一対のリードフレームである光反射材を用意した。
【0073】
比較例2として、図7に示すように、Cuの母材91aの表面に、Ni層91zとして厚み1μmのNi層、下地層91cとして厚み0.03μmのPdと厚み0.005μmのAu層、その上にAg含有層91dとして3.0μmのAg層を順に電解めっきにて形成した一対のリードフレームである光反射材を用意した。
【0074】
このNi層は、
スルファミン酸ニッケル=450g/L
塩化ニッケル=10g/L
ほう酸=30g/L
pH4.0
の浴組成を用いて、液温55℃、電流密度5A/dm2でめっきして作成した。
【0075】
図7に示したように、FIB-SEMによる断面観察の結果、比較例のNi層では、結晶性の皮膜であることがわかる上、母材の結晶状態がAg含有層まで影響しているのがわかる。
【0076】
しかし、図6に示すように、実施例1および2では、NiP合金の中にPが均一に分散し、非晶質層であることは明らかである。また、Ag含有層101d、201dが母材101a、201aの結晶状態の影響をうけていない。
【0077】
さらに、X線回折装置による観察の結果、比較例のNi層では、結晶性めっき皮膜に見られるシャ-プな回折ピークが見られるのに対して、実施例のNiP合金層は、非晶質である証拠であるブロードな回折ピークを示した。
【0078】
次に、図1A及び1Bに示すような、このようなリードフレーム1が、それぞれ埋設された基体である樹脂成形体3を形成した。なお、発光装置100が個片化されるまでは、一対のリードフレーム1が複数連結された状態のリードフレーム1に、複数の樹脂成形体3が成形された集合体の状態で各工程を経るが、便宜上、図1A及び1Bに示す1つの発光装置100(単数)で説明する。
【0079】
本実施例の樹脂成形体3は、凹部を有しており、凹部の底面に光反射材1が露出されている。その光反射材1の上に、透光性の樹脂を接合部材4として、上面に正負の電極を備える平面視において矩形の発光素子2を載置し、接合した。その後、凹部内にYAG蛍光体を含有する透光性樹脂の封止樹脂を形成した。
【0080】
このように製造された発光装置について、全光束の測定を行った結果を図5に示す。
【0081】
図5に示すように、実施例1、2の発光装置は、Ag含有層101d、201dの厚みを問わずいずれも、高い全光束を示した。しかし、比較例の発光装置では、比較例1のようにAg含有層91dの厚みが薄い場合、低い全光束しか得られなかった。比較例2のようにAg含有層の厚みを厚くした場合には、高い全光束を得ることができた。
【0082】
図8に、本実施形態の光反射材1に利用可能な非晶質層、下地層及びAg含有層の組み合わせと、予想される光反射材の光沢度及び発光装置の全光束及び実施例2に対する相対比率を示す。
いずれの実施例によっても、Ag含有層の反射率が向上され、発光装置の光取り出し効率が向上することが期待できる。
【符号の説明】
【0083】
100、200…発光装置
1…光反射材
1a、101a、201b…母材
1b、101b、201b…非晶質層
101c、201c…下地層
1c1…第1下地層
1c2…第2下地層
1d、101d、201d…Ag含有層
2…発光素子
3…基体(樹脂成形体)
31…側壁部
32…底面部
4…接合部材
5…封止部材
6…ワイヤ
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8