(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/22 20100101AFI20220119BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20220119BHJP
H01L 33/58 20100101ALI20220119BHJP
【FI】
H01L33/22
H01L33/50
H01L33/58
(21)【出願番号】P 2020031496
(22)【出願日】2020-02-27
(62)【分割の表示】P 2015090419の分割
【原出願日】2015-04-27
【審査請求日】2020-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】市川 将嗣
(72)【発明者】
【氏名】島津 武仁
【審査官】大和田 有軌
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-084516(JP,A)
【文献】特開2007-051053(JP,A)
【文献】特表2010-510671(JP,A)
【文献】特開2009-193975(JP,A)
【文献】特開2014-139998(JP,A)
【文献】特開2011-122067(JP,A)
【文献】特開2015-029079(JP,A)
【文献】特開2012-223792(JP,A)
【文献】特開2012-114231(JP,A)
【文献】特開2010-165996(JP,A)
【文献】特開2009-111102(JP,A)
【文献】特開2007-324608(JP,A)
【文献】特開2007-302799(JP,A)
【文献】特開2007-302501(JP,A)
【文献】特開2007-281203(JP,A)
【文献】特開2007-204354(JP,A)
【文献】特開2006-210916(JP,A)
【文献】特開2005-057266(JP,A)
【文献】特開2002-176200(JP,A)
【文献】特開2002-141556(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0225149(US,A1)
【文献】特許第6668608(JP,B2)
【文献】特許第6387780(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光取出面が粗面であり、n側電極およびp側電極を含み、前記n側電極および前記p側電極が設けられた面とは反対側の面を前記光取出面とする半導体発光素子と、
前記半導体発光素子の光取出面上に設けられた樹脂層と、
前記樹脂層の上面側に設けられた光学部材と、を備え、
前記樹脂層は、前記光学部材近傍に金属元素を含んで構成され、
前記半導体発光素子の側面は前記樹脂層から露出しており、
前記光学部材は、第1光学部材と前記第1光学部材と接合する第2光学部材とを含み、
前記第1光学部材は樹脂板であ
り、
前記第1光学部材は、前記樹脂層の上面に設けられ、前記第2光学部材は前記第1光学部材の前記樹脂層が設けられた面とは反対側の面に設けられ、
前記第1光学部材は、前記樹脂層近傍に前記金属元素を含み、
前記半導体発光素子の前記光取出面は、半導体層または成長基板であることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記樹脂層において、前記金属元素の濃度は前記半導体発光素子側よりも前記光学部材側が高いことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記金属元素は、Al、Ti、Ni、Ta又はCrを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記樹脂層は、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂又はエポキシ樹脂を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の発光装置。
【請求項5】
前記樹脂層は、前記光学部材近傍に前記金属元素が酸化された金属酸化物を含
み、
前記第1光学部材は、前記樹脂層近傍に前記金属元素が酸化された金属酸化物を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の発光装置。
【請求項6】
前記金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化タンタル、又は酸化クロムのいずれかであることを特徴とする請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記光学部材と前記金属酸化物の屈折率差が0.3未満であることを特徴とする請求項5または請求項
6のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項8】
前記粗面の算術平均粗さが50nmを超えることを特徴とする請求項1から請求項
7のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項9】
前記樹脂層と対向する前記
第1光学部材の表面の算術平均粗さが1nm以下である、請求項1から
8のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項10】
前記第2光学部材は蛍光体板であることを特徴とする請求項1から請求項
9のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項11】
前記蛍光体板は、蛍光体と、前記蛍光体とは化学機械研磨法による研磨レートが異なる無機材料とを含むことを特徴とする請求項
10に記載の発光装置。
【請求項12】
前記半導体発光素子は、n型半導体層、活性層、及びp型半導体層をこの順に備え、
前記半導体発光素子の光取出面は前記n型半導体層であり、
前記n型半導体層の前記光取出面に前記第1光学部材が設けられる請求項1から11のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項13】
前記樹脂層の前記上面は、前記光取出面の粗面よりも平坦である、請求項1から12のいずれか1つに記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の発光モジュール(以下「従来の発光装置」ともいう。)は、半導体発光素子の発光面に凹凸が設けられており、半導体発光素子の発光面と光波長変換部材とを樹脂等の接着剤層により固着している(例えば、
図4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の発光装置においては、半導体発光素子と光波長変換部材とを固着する際に、半導体発光素子の端部から樹脂が垂れる、あるいははみ出ることにより、光の損失につながるおそれがある。したがって、従来の発光装置は光の損失をさらに低減できる余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係る発光装置の製造方法は、光取出面が粗面である半導体発光素子を準備する工程と、半導体発光素子の光取出面上に樹脂を塗布し、硬化して樹脂層を形成する工程と、第1金属膜が下面に形成された光学部材を準備する工程と、樹脂層の上面に第2金属膜を形成する工程と、第1金属膜と記第2金属膜とを向かい合わせて荷重することにより原子拡散接合する工程と、を含む。
【0006】
また、本発明の一実施形態に係る発光装置は、光取出面が粗面である半導体発光素子と、半導体発光素子の光取出面上に設けられた樹脂層と、樹脂層の上面側に設けられた光学部材と、を備える。特に、樹脂層は、光学部材近傍に金属元素を含んで構成され、半導体発光素子の側面は樹脂層から露出している。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る発光装置の製造方法によれば、光の損失を低減した発光装置を生産性良く製造することができる。
【0008】
また、本発明に係る発光装置によれば、光の損失を低減した発光装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る発光装置を説明するための概略断面図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態に係る発光装置を説明するための概略断面図である。
【
図4】
図4は、第3実施形態に係る発光装置を説明するための概略断面図である。
【
図5】
図5は、第4実施形態に係る発光装置を説明するための概略断面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための概略断面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための概略断面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための概略断面図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための概略断面図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための概略断面図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための概略断面図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための概略断面図である。
【
図13】
図13は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための概略断面図である。
【
図14】
図14は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための概略断面図である。
【
図15】
図15は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための概略断面図である。
【
図16】
図16は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明を以下に限定するものではない。また、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。さらに、同一の名称、符号については、原則として同一もしくは同質の部材を示しており、重複した説明は適宜省略する。また、半導体発光素子10に用いられる各部材については少なくとも1つあればよく、複数個あってもよいものとする。
【0011】
<第1実施形態>
図1に、本実施形態に係る発光装置100を示す。発光装置100は、光取出面が粗面である半導体発光素子10と、半導体発光素子10の光取出面上に設けられた樹脂層20と、樹脂層20の上面側に設けられた光学部材30と、を備える。特に、樹脂層20は、光学部材30近傍に金属元素21を含んで構成され、半導体発光素子10の側面は樹脂層20から露出している。
【0012】
これにより、光の損失を低減した発光装置とすることができる。この点について、以下に詳細に説明する。
【0013】
まず、従来の発光装置では、半導体発光素子と光学部材とを接着剤を用いて接着するため、接着面の端部から接着剤が垂れる、あるいははみ出るおそれがある。なお、ここでいう接着剤とは、例えば未硬化の樹脂である。つまり、半導体発光素子と光学部材とを接着剤を挟んで押圧するため、接着剤が溢れて半導体発光素子の側面に付着するおそれがある。半導体発光素子の側面に接着剤が付着するとそこに光がとどまり、光取り出し効率の低下につながる可能性がある。また、接着剤と光学部材とが異なる屈折率である場合には、屈折率の相違からフレネル反射により光の一部が反射して光の取り出し効率が低下するおそれがある。
【0014】
一方、本実施形態の発光装置100では、半導体発光素子10の側面が樹脂層20から露出しているため、光学部材30に光を入射させやすくなり光の損失を低減することができる。
【0015】
以上の理由により、本実施形態に係る発光装置100によると、光の損失を低減した発光装置とすることができる。
【0016】
以下、
図1に基づいて発光装置100における主な構成要素について説明する。
【0017】
(半導体発光素子10)
半導体発光素子10は、半導体層12と、n側電極13a及びp側電極13bと、を備えている。
図1に示されている半導体発光素子10は、光取出面側から、n型半導体層12a、活性層12b、及びp型半導体層12cがこの順に積層されて構成されている。これらの層はいずれも、好ましくはGaN、GaAs、InGaN、AlGaN、AlN、AlInGaP、GaP、SiC、及びZnOなどから成る群より選択される一種又は二種以上から成る。特に、これらの層としては、一般式がIn
XAl
YGa
1-X-YN(0≦X、0≦Y、X+Y<1)で表わされるGaN系化合物を用いるのが好ましい。n型半導体層12aはn側電極13aと接続され、p型半導体層12cはp側電極13bと接続される。なお、半導体発光素子10は、サファイアなどの成長基板11を備えていてもよい。好ましくは後述するように半導体層12を光取り出し面とすることが好ましい。これにより、成長基板11での光の吸収を抑制することができ、光の取出し効率を向上させることができる。
【0018】
また、n型半導体層12a、活性層12b及びp型半導体層12cはそれぞれ、単層構造でもよいし、又は組成及び膜厚の異なる二以上の層から成る積層構造、もしくは超格子構造等としてもよい。特に、活性層12bは、量子効果が生ずる薄膜を含む単一量子井戸構造又は多重量子井戸構造であることが好ましい。これらの量子井戸構造において、井戸層はInを含む窒化物半導体であることが好ましい。
【0019】
図1に示すように、この半導体発光素子10の光取出面は、n型半導体層12aにおける活性層12bと接していない側の面である。半導体発光素子10では光取出面を粗面にしている。ここでいう光取出面とは、樹脂層20が形成される面である。このようにすると、光取り出し効率が向上し、光出力が増大する。なお、光取出面が粗面であるかどうかは、光取出面が樹脂層20と光学部材30との接合面よりも粗いか否かによって判断される。
【0020】
粗面は、寸法及び形状が一定でない凹部又は凸部が形成されて成るものであってよいし、あるいは寸法及び形状が一定である凹部又は凸部がランダムに又は規則的に配置されて成るものであってよい。光取出面は好ましくは、算術平均粗さRaが50nmを超えるような粗面であり、より好ましくは150nmを超えるような粗面である。算術平均粗さRaはJISB0601-2001に準拠して測定することができる。
【0021】
n側電極13aとp側電極13bとは、
図1中、半導体層12の下側に、互いに電気的に接続しないよう、所定距離離間させている。すなわち、n側電極13aとp側電極13bは、それぞれが独立するように設けられている。n側電極13a及びp側電極13bは、一般的な発光素子と同様に、金属電極材料から成るものとすることができ、金属電極材料は、例えば、Au、Cu、Ni、Ti、Al、Pt、Cr及びRhなどから成る群より選択される少なくとも一つ、又はその合金である。ITO等の導電性酸化物を含んでもよい。n側電極13a及びp側電極13bはそれぞれ、単層、又は多層膜として形成されていてよい。n側電極13a及びp側電極13bは、例えば、Cu単層又はCu/Ni積層膜を下層とし、Au又はAuSn合金を上層とする多層膜としてよい。n側電極13a及びp側電極13bはそれぞれ、スパッタリング又は蒸着などにより形成することができる。
【0022】
p側電極13bは、p型半導体層12cに電流を面内均一に拡散するための全面電極13cを介して、p型半導体層12cと接続されるのが好ましい。そのため、全面電極13cは、p型半導体層12cと電気的に良好に接続できるオーミック電極であるのが好ましい。なお、この全面電極13cは半導体層にて発光した光を光取出面に向けて反射させる反射層としても機能する。したがって、この全面電極13cは少なくとも活性層12bで発光する光の波長に対して良好な反射率を有するもので形成するのが好ましい。そのような全面電極13cは、例えば、光の反射率の高いAg、又はその合金からなる単層膜であることが好ましく、あるいは前記Ag又はその合金の膜が最下層であり、Ni及び/又はTi等からなる膜が設けられた多層膜であることが好ましい。
【0023】
特に、全面電極13cとしてAgを用いる場合、全面電極13cを覆うカバー電極13dを設けるのが好ましい。加えて、カバー電極13dは、全面電極13cの上面及び側面を被覆して、全面電極13cを遮蔽している。すなわち、カバー電極13dは、全面電極13cの材料、特にAgのマイグレーションを防止するためのバリア層として機能する。カバー電極13dは、例えば、Ti、Au、W、Al、及びCu等から成る群より選択される少なくとも一つの金属、又はその合金から成る。カバー電極13dは、単層膜又は多層膜であってよい。具体的には、カバー電極13dは、AlCu合金、又はAlCuSi合金等から成る単層膜であってよく、あるいはそのような膜を含む多層膜であってよい。全面電極13cとカバー電極13dはそれぞれ、スパッタリング又は蒸着などにより形成することができる。
【0024】
半導体発光素子10としては、電極を有する側の露出した表面が、n側電極13aとp側電極13bを除いて保護層14で被覆されているのが好ましい。前記した構成の半導体発光素子10の場合、保護層14は、具体的には、半導体層12の表面及びカバー電極13dの表面と、n側電極13aの周縁と、p側電極13bの周縁に形成される。保護層14は、例えば、Si、Ti、Ta、Nb、Zr、及びMg等の酸化物、Si窒化物、AlN等の窒化物、ならびにフッ化マグネシウムMgF2等から成る群より選択される少なくとも一つで形成するのが好ましい。なお、ここでいうSi、Ti、Ta、Nb、Zr、及びMg等の酸化物としては、例えばSiO2、TiO2、Ta2O5、Nb2O5、ZrO2、又はMgOを用いることができ、Si窒化物としては、例えばSi3N4を用いることができる。これらの材料を用いる場合、保護層14は、スパッタリング又は蒸着などによって形成することができる。
【0025】
(樹脂層20)
樹脂層20は、半導体発光素子10の光取出面上に設けられる。樹脂層20は、光取出面の粗面を覆い、当該粗面が樹脂層20の上面に現れない厚さで形成するのが好ましい。樹脂層20の厚さは、例えば、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは0.1μm以上5μm以下とする。前述の下限値以上にすることで光取出面の全域を確実に覆うことができ、前述の上限値以下にすることで平坦化が容易となり、光の横抜けを防止することができる。ここでいう厚さとは、半導体発光素子10の光取出面における最上端から樹脂層20の上面までの最短距離をさす。なお、樹脂層20の上面は少なくとも粗面よりも平坦な面とする。
【0026】
樹脂層20は、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂又はエポキシ樹脂を含んで構成することができ、好ましくはシリコーン樹脂を用いる。シリコーン樹脂は、耐光性が強く、樹脂材料のなかでも低屈折率の樹脂材料であるため、樹脂層20における全反射を抑制することができる。
【0027】
半導体発光素子10の側面は樹脂層20から露出している。つまり、半導体発光素子10の全側面には樹脂層20が設けられていない。半導体発光素子10の側面に樹脂層20が形成されると、そこに光がとどまり光の損失につながるおそれがあるところ、樹脂層20から半導体発光素子10の側面を露出させることにより、これを抑制することができる。樹脂層20は、光取出面の外周よりも外側の領域において、半導体発光素子10の上端よりも上方に設けられるのが好ましい。つまり、断面図において、半導体発光素子10の外周よりも外側の領域においては半導体発光素子10の上端よりも下方に樹脂層20が形成されていないことが好ましい。こうすることで、半導体発光素子10からの光が光学部材30に光が入りやすくなる。
【0028】
樹脂層20は、
図2に示すように、光学部材30近傍に金属元素21を含んで構成されている。好ましくは、樹脂層20は、光学部材30近傍に金属酸化物を含んでいる。これにより、光学部材30の屈折率と樹脂層20の屈折率との間の屈折率を有する領域が形成されるので、樹脂層20と光学部材30の屈折率が異なる場合に、樹脂層20と光学部材30との界面におけるフレネル反射を抑制できると期待できる。特に、光学部材30の屈折率が樹脂層20の屈折率よりも高い場合にフレネル反射が生じやすいが、このような場合に、樹脂層20よりも屈折率が高い金属酸化物(例えば粒子状に分散)が含有されると、樹脂層20の一部が光学部材30の屈折率に近くなるためフレネル反射を抑制できると考えられる。例えば、樹脂層20としてシリコーン樹脂(屈折率n=約1.5)を用い、光学部材30としてガラス中にYAGを保持したYAG板(屈折率n=約1.8)を用いる場合に、界面近傍にAl
2O
3(屈折率n=約1.7)を含む領域を設ける。これにより、屈折率のグラデーションができ、フレネル反射の抑制が期待できる。
【0029】
樹脂層20における金属元素21は、例えば、樹脂層20の上面(光出射面)と光学部材30の下面とを原子拡散接合することにより設けることができる。原子拡散接合とは、接合対象である部材の表面それぞれに超高真空中で、例えば、Al等の薄い金属膜を形成し、それらの金属膜を真空中で重ね合わせて接合する方法である。なお、ここでいう接合対象である部材の表面とは、接合後に接合面となる表面をさす。超高真空中で樹脂層20と光学部材30とにそれぞれ金属膜を形成し、金属膜同士を接合することで、金属元素21が樹脂に拡散及び酸化し、樹脂層20の光学部材30近傍に金属酸化物を含む領域を形成することができると考えられる。
【0030】
金属元素21としては、Al、Ti、Ni、Ta又はCrを含むことができる。中でも、光学損失の低下、樹脂との密着力の向上、各部材との屈折率差等を考慮すると、Alを用いるのが好ましい。また、樹脂層20の光学部材30近傍に前述の金属元素21が酸化された金属酸化物を含むことができる。つまり、樹脂層20の光学部材30近傍に、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化タンタル、又は酸化クロムを含むことができる。本実施形態では、樹脂層20の屈折率は金属酸化物の屈折率よりも低く、金属元素21を含む領域における屈折率は光学部材30の屈折率よりも低い。これにより、樹脂層20の屈折率と光学部材30の屈折率との間の屈折率の材料を含む領域を設けることができると考えられる。
【0031】
樹脂層20において、金属元素21の濃度は半導体発光素子10側よりも光学部材30側を高くすることができる。これにより、樹脂層20と光学部材30との界面におけるフレネル反射を抑制できると考えられる。また、樹脂層20は、光学部材30側から半導体発光素子10側に向かうにつれて濃度が低くなるようにするのが好ましい。これにより屈折率のグラデーションができるため、フレネル反射を抑制できると考えられる。
【0032】
(光学部材30)
光学部材30は、前記したように、樹脂層20の上面側に設けられる。光学部材30は、樹脂層20の光出射面から出射された光に所定の作用を及ぼす機能を有する。そのような光学部材30として、例えば、蛍光体含有板、サファイア基板、GaN基板、ガラス及び樹脂板が挙げられるがこれに限定されるものではない。光学部材30の材料は、半導体発光素子10からの光に対して透光性を有する限り、特に限定されない。また、光学部材30は、レンズとすることもできる。
【0033】
光学部材30として蛍光体含有板を用いる場合、光学部材30には蛍光体が含まれる。蛍光体は、半導体発光素子10から取り出した光の少なくとも一部を吸収し、その波長を変換して、異なる波長の光を発する。半導体発光素子10からの光の色と蛍光体からの光の色とを組み合わせた色が、発光装置から発せられる光の色となるので、所望の色調の光が得られるように蛍光体等が選択される。蛍光体は、一般的に用いられる酸化物、窒化物、及び酸窒化物等から成る群より選択される少なくとも一つであってよい。そのような蛍光体として、例えば、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)をCe等で賦活したYAG系蛍光体、ならびにEu及びCe等のランタノイド系元素で賦活した窒化物系蛍光体及び酸窒化物系蛍光体等が挙げられる。蛍光体板は、蛍光体と一体に焼結して形成されたガラス等の無機材料から成るものであってよい。
【0034】
光学部材30としてサファイア基板を用いる場合、サファイアを平板状部材として使用してよく、光学部材30としてGaN基板を用いる場合、GaN基板を平板状部材として使用してよい。これらの基板を樹脂層20上に接合すると、発光装置100の光伝播層の厚さを増加させることができる。それにより、発光装置100内での光多重反射の反射回数を低減することができ、光閉じ込め及び光吸収を抑制することができる。光学部材30の屈折率は、樹脂層20における金属酸化物の屈折率と同程度であるか、同一とするのが好ましい。例えば、光学部材30の屈折率差が0.3以上になると、より多くの光が吸収される傾向にあるので、光の取り出し効率を向上させることが困難となる場合がある。
【0035】
光学部材30をレンズとする場合、レンズは、サファイア、GaN、ガラス、又は樹脂などで形成されたものであってよい。光学部材30としてレンズを用いることにより、光を屈折させて、集束又は拡散させることができる。レンズは凸レンズとすることも、凹レンズとすることもできる。
【0036】
以上に説明した構成の発光装置100は、n側電極13a及びn型半導体層12aから注入された電子と、p側電極13b及びp型半導体層12cから注入された正孔とが、活性層12bで再結合することにより発光することができる。半導体発光素子10は光取出面を有しており、ここから発光した光を取り出すことができる。半導体発光素子10の光取出面から取り出された光は樹脂層20内を伝播し、反対側の樹脂層20の光出射面から出射される。光出射面から出射された光は光学部材30に入射した後、発光装置100外に出射される。
【0037】
〔発光装置100の製造方法〕
次に、
図1及び
図6~
図16を参照して本実施形態に係る発光装置100の製造方法(以下、単に「製造方法」ということもある。)について説明する。本実施形態に係る製造方法は、光取出面が粗面である半導体発光素子10を準備する工程と、半導体発光素子10の光取出面上に樹脂を塗布し、硬化して樹脂層20を形成する工程と、第1金属膜41が下面に形成された光学部材30を準備する工程と、樹脂層20の上面に第2金属膜42を形成する工程と、第1金属膜41と第2金属膜42とを向かい合わせて荷重することにより原子拡散接合する工程と、を含む。
【0038】
これにより、樹脂垂れ等による光の損失を抑制した発光装置を生産性良く製造することができる。以下に詳細に説明する。
【0039】
従来の発光装置の製造方法では、半導体発光素子と光学部材とを接着剤を挟んで押圧するため、接着剤が溢れて半導体発光素子の側面に付着するおそれがある。なお、ここでいう接着剤とは例えば未硬化の樹脂である。しかしながら本実施形態によれば、半導体発光素子10の光取出面に樹脂を形成して硬化させた後に、樹脂層20と光学部材30とを原子拡散接合により接合している。これにより、押圧しても接合時の樹脂垂れ等が起こることがないため、半導体発光素子10の側面への付着を抑制できる。また、原子拡散接合の接合面は平坦である必要があるため、研磨等により接合面を平坦化する必要がある。しかしながら、本実施形態では樹脂を用いることで樹脂層20の上面を平坦に形成することが容易にできるため、接合面を平坦化する工程が不要となり、生産性が向上する。なお、ここでいう樹脂層20の上面とは、光学部材30と接合される面をさす。
【0040】
本実施形態においては半導体発光素子10を準備する工程において、支持基板60貼合工程と、成長基板11剥離工程と、研磨工程と、粗面化工程と、を行う。また、原子拡散接合する工程に続けて、支持基板60剥離工程と、複数の発光装置100に個片化する工程と、を行う。ここで、
図6~
図10は半導体発光素子10を準備する工程を図示している。また、
図11~
図14は樹脂層20を形成する工程から原子拡散接合する工程までを図示している。さらに、
図15は支持基板60剥離工程を図示し、
図16は発光装置100に個片化する工程を図示している。以下、
図1とともにこれら
図6~
図16を適宜参照して製造方法のより詳細で、好適な実施形態について順に説明する。
【0041】
(半導体発光素子10準備工程)
まず、光取出面が粗面である半導体発光素子10を準備する。詳細には、
図6に示すように、成長基板11上にn型半導体層12a、活性層12b、p型半導体層12cをこの順で積層し、これに所定の電極を形成する。このとき、
図6を参照して具体的に説明すると、成長基板11上にn型半導体層12a、活性層12b及びp型半導体層12cが順次積層される。これに続けて、フォトリソグラフィとエッチングとを行い、p型半導体層12c、活性層12b、及びn型半導体層12aの一部を除去し、n側電極13aを形成する位置でn型半導体層12aを露出させるとともに、分離溝を形成する。そして、露出したn型半導体層12aの底面にn側電極13aを形成する。p側電極13bは、p型半導体層12c上の所定の位置に形成する。なお、保護層14もこの工程で設けるのが好ましい。成長基板11としては、サファイア基板などを好適に用いることができる。また、この時点で半導体発光素子10の諸特性を測定しておくのが好ましい。こうすることで、光学部材30として蛍光体板を用いる際に、半導体発光素子10からの光の波長に合わせた蛍光体板を選択することができる。
【0042】
次いで、
図7に示すように、n側電極13aとp側電極13bを形成した側に、接着樹脂50等を用いて支持基板60を貼り合せる。支持基板60としては、例えば、サファイアを用いることができる。接着樹脂50は、好ましくは、ウエット処理(ウエットエッチング)で除去でき、高い温度に対して、また酸及びアルカリに対して高い耐性を有するものである。そのような樹脂としては、例えばポリイミド系樹脂が挙げられる。なお、
図6ではn型半導体層12a側が下になるように図示しているが、
図7~16では
図6から180度回転させて便宜的にn型半導体層12a側が上になるように図示している。
【0043】
次に、
図8に示すように、半導体層12から成長基板11を剥離する。成長基板11は、成長基板11側からn型半導体層12aを形成する材料(例えばGaNなど)が吸収する波長のレーザを照射する方法(レーザリフトオフ(LLO))により剥離してよい。本実施形態に係る発光装置100は成長基板11を有しない構成であるので成長基板11の側面から出射される光(青色発光ダイオード(LED)の場合はブルーライト)による色むらの影響への対策が不要になる。なお、半導体発光素子10として、成長基板11を粗面化した半導体発光素子10を用いる場合は、この工程は不要となる。
【0044】
次に、
図9に示すように、成長基板11の剥離により露出した半導体層12の剥離面を研磨する。本実施形態において、研磨は、形成した分離溝にて半導体層12を分離するために実施される。研磨は、研磨により分離溝の底が除去されるように実施される。かかる研磨は、例えば化学機械研磨(CMP)法により、あるいは機械研磨又は研削により行うことができる。良好な平坦面を得ることができるという理由から、CMP法が好ましい。なお、製造した発光装置100を紫外LEDとして用いる場合はこの研磨工程において紫外線を吸収してしまうn型半導体層12aの成長初期の層を除去するのが好ましい。なお、研磨は必須ではない。研磨を実施することで粗面化工程において一定の精度で粗面を形成することができ、配光を制御しやすくなるが、剥離面が比較的平坦な面である場合は研磨を実施しなくともよい。また、基板剥離工程と粗面化工程を分けることで一定の精度で粗面を形成することができるため好ましいが、成長基板11を除去した面が粗面であれば、研磨及び粗面化工程を経ずに基板除去面に直接樹脂層20を形成することもできる。
【0045】
また、前記した成長基板11剥離工程を終えた段階では、隣り合う半導体発光素子10同士の間が接着樹脂50で繋がっているが、分離が必要な場合は、この研磨工程を終えた後に分離してよい。ハンドリング性を考慮すると、原子拡散接合する工程よりも後の工程までは隣り合う半導体発光素子10同士の間が接着樹脂50で繋がっているのが好ましい。分離はドライエッチングやウエットエッチングによって行うことができる。以上の各工程を行った場合、後記する粗面化工程において、研磨した剥離面を粗面化することになる。
【0046】
次に、
図10に示すように、半導体発光素子10の光取出面を粗面化する。なお、本実施形態では平坦化された光取出面に対して所定の処理を行うが、成長基板11を粗面化することもできる。なお、ここでいう光取出面とは研磨された半導体層12の剥離面をさす。所定の処理は、例えば、アルカリ溶液を用いたウエット処理(ウエットエッチング)などである。この処理により、半導体発光素子10の光取出面を自己組織的に荒らすことができる。なお、粗面化処理はこれらに限定されるものではなく、例えば、グラインダ及び/又はポリッシャを用いた処理であってよい。あるいは、フォトリソグラフィ及びエッチング等により、ドットパターン又はラインアンドスペースパターンを形成する工程であってよい。あるいはまた、ドットパターン又はラインアンドスペースパターンの形成と、ウエット処理又はドライ処理とを併用する工程であってよい。以上の工程により、支持基板60上に複数の半導体発光素子10が設けられたウエハを準備することができる。
【0047】
(樹脂層20形成工程)
次に、
図11に示すように、半導体発光素子10の光取出面上に樹脂を塗布し、硬化して樹脂層20を形成する。樹脂は、公知の方法により塗布することができる。例えば、スピンコート法やスプレー塗布法等を用いることができるが、好ましくはスピンコート法により形成する。これにより、樹脂の上面を平坦に形成しやすくなり、生産性を向上させることができる。
【0048】
次に、樹脂を所定の温度および時間で加熱して硬化させて樹脂層20を形成する。樹脂を硬化する温度は材料により異なるが、例えばシリコーン樹脂の場合は、150℃以上200℃以下が好ましい。こうすることで、熱により半導体発光素子10の特性が損なわれるのを抑制することができる。なお、一般的に原子拡散接合を好適に行うためには、接合面が平坦であることを要する。接合面の平坦性が不十分であると、原子拡散接合してもその界面にボイド(つまり、屈折率の低い空気の層)が生じ、ボイドで光の全反射等が生じて、光の取出し効率が低下する。しかしながら、本実施形態では、接合面の一方の部材として樹脂を用いている。これにより、原子拡散接合のために通常必要であると考えられているほどの平坦性がなくとも(例えば算術平均粗さが1nm以上であっても)、ボイドの発生を抑制しやすくなり、樹脂層20と光学部材30との接合面を平坦な面としやすくなる。なお、算術平均粗さRaはJISB0601-2001に準拠して測定することができる。
【0049】
なお、樹脂層20を形成する工程の後に、支持基板60上に設けられ接着樹脂50で繋がった複数の半導体発光素子10を、接着樹脂50と支持基板60を切断することで複数の半導体発光素子10が完全に分離した状態としてもよい。これにより、
図4に示す発光装置のように、半導体発光素子10の上面の面積と異なる面積の光学部材30を接合しやすくなる。分離は、例えば、スクライブ又はダイシングによって行うことができる。
【0050】
(光学部材30準備工程)
次に、
図12に示すように、第1金属膜41が下面に形成された光学部材30を準備する。なお、
図12においては、便宜的に第1金属膜41を一定の膜厚で図示している。光学部材30の樹脂層20と接合される表面が平坦面でない場合は、第1金属膜41を形成する前に平坦化しておくのが好ましい。ここでいう、光学部材30の樹脂層20と接合される表面とは光学部材30の下面をさす。光学部材30の下面が十分に平坦である場合は、下面を平坦化する処理は必要ない。なお、光学部材30の下面の算術平均粗さRaは1nm以下であるのが好ましく、したがって平坦化処理を実施する場合にはRaが1nm以下となるように実施するのが好ましい。光学部材30の上面は粗面化処理又は平坦化処理に付されていてよく、あるいはそれらの処理に付されていなくてもよい。光学部材30の上面が粗面化されていれば光の全反射等を抑制することができるため、光の取り出し効率を向上させることが可能である。なお、第1金属膜41を形成する前の光学部材30は、いつ準備してもよい。例えば、半導体発光素子10を準備する工程の前に準備しておくこともできる。第1金属膜41は半導体発光素子10を準備する工程の前に形成することもできるが、超高真空を維持する必要があることから第2金属膜42を形成する際にまとめて成膜装置内に搬入して形成するのが好ましい。
【0051】
第1金属膜41は超高真空中で形成される。第1金属膜41を形成する方法は、比較的短い時間で形成可能なスパッタ法を用いるのが好ましいが、スパッタ法以外にも、真空蒸着法により形成してもよい。
【0052】
第1金属膜41は、光の吸収を抑制できる程度に薄く形成する。例えば、第1金属膜41は、好ましくは成膜速度換算で0.05nm以上5nm以下、より好ましくは成膜速度換算で0.05nm以上1nm以下の膜厚で形成することができる。前記下限値以上の膜厚で形成することで、原子拡散接合により確実に樹脂層20と光学部材30とを接合することができ、前記上限値以下の範囲にすることで金属膜における光の吸収を抑制することができる。なお、本明細書でいう「成膜速度換算」について以下に説明する。まず、一平面を有する基台上に所定の時間だけ反応させることにより第1金属膜41を形成する。次に、実際に行った反応時間と実際に得られた第1金属膜41の膜厚との関係に基づいて、所望の膜厚の第1金属膜41を得るためにはどのくらいの時間の反応が必要かを決定する。そして、実際にその時間だけ反応させた場合は、その反応時間に対応する所望の膜厚の第1金属膜41が得られるものを成膜速度換算で形成した膜厚と想定している。つまり、反応時間から想定される膜厚を成膜速度換算で形成した膜厚としている。前述の範囲は、1原子よりも小さな値も含んでいるが、この場合は第1金属膜41が膜になっておらず島状に形成されている。したがって、実際の膜厚が前述の膜厚範囲に含まれていなくても、成膜速度換算で前述の膜厚範囲で形成されていれば本発明の範囲内とする。なお、ここでは第1金属膜41を用いて説明しているが、第2金属膜42についても同様である。
【0053】
(第2金属膜42形成工程)
次に、
図13に示すように樹脂層20の上面に第2金属膜42を形成する。
図13においては、便宜的に第2金属膜42を一定の膜厚で図示している。第2金属膜42は第1金属膜41と同様の方法により形成することができる。なお、第2金属膜42の膜厚は第1金属膜41と同じ膜厚にすることもできるが、異なる膜厚にすることもできる。なお、光学部材30への第1金属膜41の形成と樹脂層20への第2金属膜42の形成は、光学部材30と樹脂層20が設けられた半導体発光素子10とをともに成膜装置内に搬入し、第1金属膜41と第2金属膜42とを形成するのが好ましい。このとき第1金属膜41と第2金属膜42とを順に形成してもよいし、同時に形成してもよい。これにより、不純物の混入や化学反応が起こるのを抑制することができる。
【0054】
(原子拡散接合工程)
次に、
図14に示すように、第1金属膜41と第2金属膜42とを向かい合わせて荷重することにより原子拡散接合する。具体的には、光学部材30の下面に設けられた第1金属膜41と樹脂層20の上面に設けられた第2金属膜42とを原子拡散接合法により接合する。このプロセスにより、半導体発光素子10/樹脂層20/光学部材30という構成を有する発光装置100を得ることができる。なお、本実施形態においては接合する部材の一方に樹脂を用いているため硬化後も柔らかい。このため、樹脂層20の原子拡散接合のために通常必要であると考えられているほどの平坦性がなくとも、第1金属膜41と第2金属膜42とを荷重することで接合できる。
【0055】
(支持基板60剥離工程)
次に、
図15に示すように、光学部材30が接合された半導体発光素子10から、接着樹脂50とともに支持基板60を剥離する。支持基板60の剥離は、用いた接着樹脂50に応じて適切な方法により行うことができる。なお、支持基板60剥離工程は製造プロセスにおいて他のタイミングで行うこともできるが、製造途中の半導体発光素子10の強度及びハンドリング性を考慮すると、原子拡散接合工程の後であって個片化工程の前に行うのが好ましい。
【0056】
(個片化工程)
次に、
図16に示すように、ウエハを複数の発光装置100に個片化する。個片化はスクライブやダイシングによって行うことができる。半導体発光素子10のチップ化が例えば光学部材30を接合する工程の前に実施されている場合は、発光装置に個片化する工程においては、光学部材30のみが分離されることとなる。
【0057】
(その他の工程)
なお、原子拡散接合する工程の後に、発光装置100を加熱する工程を含んでいてもよい。これにより、金属元素21の拡散及び酸化を促進することができる。このとき、加熱温度は、好ましくは50℃以上450℃以下、より好ましくは50℃以上200℃以下、さらに好ましくは100℃以上170℃以下とすることができる。前述の下限値以上とすることで拡散及び酸化を促進しやすくなり、前述の上限値以下とすることで樹脂20等の劣化を抑制することができる。
【0058】
以上に説明した本実施形態に係る製造方法によれば、樹脂垂れ等による光の損失を抑制した発光装置を生産性良く製造することができる。
【0059】
<第2実施形態>
図3に本実施形態に係る発光装置200の概略断面図を示す。発光装置200は、樹脂層20の上面側に、2つの光学部材30を積層している。発光装置200は、樹脂層20の上面に樹脂板(以下、「第1光学部材31」ともいう。)を接合し、さらにその上に平板状の蛍光体板(以下、「第2光学部材32」ともいう。)を接合している。この発光装置200によれば、樹脂層20に接合する対象物が平坦面を形成しにくい材料であっても接合することができる。例えば、ガラス等の無機材料中に蛍光体を含む蛍光体板のように、均質でない材料を用いて形成されている場合は、CMP法などによっても表面の算術平均粗さRaを1nm以下とするのは困難な場合がある。これは、材料中の成分によって研磨レートが異なるためである。本実施形態によれば、蛍光体板である第2光学部材32の下面に第1光学部材31を形成しているため、平坦面を形成することができ、接合が可能となる。
【0060】
本実施形態における第1光学部材31は、第2光学部材32の下面に樹脂を塗布して硬化することで形成することができる。なお、第1光学部材31に用いる樹脂の材料や塗布する方法については、樹脂層20と同様の構成を採用することができる。なお、本実施形態では、樹脂層20だけでなく第1光学部材31においても、金属元素21が拡散及び酸化すると考えられる。
【0061】
<第3実施形態>
図4に、本実施形態に係る発光装置300の概略断面図を示す。発光装置300は、樹脂層20の上面側に、光学部材30としてレンズを接合している。この発光装置300によれば、半導体発光素子10からの光をレンズによって集束又は拡散させることができる。
【0062】
<第4実施形態>
図5に、本実施形態に係る発光装置の概略断面図を示す。本実施形態に係る発光装置は、例えば、液晶ディスプレイのバックライト、フルカラー表示の屋外ディスプレイ、玩具、一般照明、及び光通信用の光源などとして用いられる発光装置の一態様である。以下の説明では、説明の便宜のため本実施形態に係る発光装置を「光源装置1000」という。
【0063】
図5に示すように、光源装置1000は、実装基板80に実装された発光装置100と、この発光装置100を封止する封止部材90と、を備えている。なお、
図5においては、
図1を参照して説明した発光装置100と同じ構成を採用しているが、第2実施形態又は第3実施形態に記載の発光装置を採用してもよいことは言うまでもない。
【0064】
実装基板80への発光装置100の実装は、発光装置100の電極(n側電極13a及びp側電極13b)を、バンプ70を介して実装基板80の配線81に接続することで行われる。
【0065】
実装基板80は、半導体発光素子10を実装させるために用いられている一般的なものであってよく、半導体発光素子10を実装できるものであれば特に限定されない。
【0066】
封止部材90は、例えば、エポキシ樹脂及びシリコーン樹脂などの樹脂材料、ならびにガラスなどの無機材料から選択される材料で形成してよい。封止方法は特に限定されるものではない。例えば、金型を用いた圧縮成形法又はトランスファー成形法を用いて、封止部材90を形成することができる。あるいは、実装基板80の任意の部分(例えば外縁)に土手を設け、適度な粘性を有する封止部材90の材料を滴下するポッティング法を用いることもできる。封止部材90は、発光装置100が発する光に対して透明であることが好ましく、必要に応じて、光拡散部材、熱伝導部材、又は発光波長を変換するための蛍光体などを含んでよい。バンプ70は、例えば、Auバンプ、半田バンプ、及びCuピラーバンプなどのめっきバンプ、Auスタッドバンプ、又は半田印刷などであってよい。
【0067】
以上に説明したように、本実施形態に係る光源装置1000は、各実施形態に記載した発光装置を備えている。これらの発光装置においては、半導体発光素子10の側面が樹脂層20から露出しているため、半導体発光素子10からの光が所望の領域以外に(例えば半導体発光素子10の側面等)向かうことで起こりうる光取出しの損失を低減することができる。そのため、これらの発光装置を用いた光源装置1000においてもまた、光の取り出し効率を向上させることができる。
【0068】
本明細書に記載された発光装置及びその製造方法は、可視光を発するLED、紫外線を発するLEDなどを備えた発光装置及びその製造方法に適用することができ、これらの発光装置は、照明装置、殺菌装置、自動車用ヘッドライト、ディスプレイ、及びサイン広告の機器などに用いることができる。
【符号の説明】
【0069】
100、200、300…発光装置
10…半導体発光素子
11…成長基板
12…半導体層
12a…n型半導体層
12b…活性層
12c…p型半導体層
13a…n側電極
13b…p側電極
13c…全面電極
13d…カバー電極
14…保護層
20…樹脂層
21…金属元素
30…光学部材
31…第1光学部材
32…第2光学部材
41…第1金属膜
42…第2金属膜
50…接着樹脂
60…支持基板
70…バンプ
80…実装基板
81…配線
90…封止部材
1000…光源装置(発光装置)