(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】真空蒸着装置用の蒸着源
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
C23C14/24 A
(21)【出願番号】P 2018079026
(22)【出願日】2018-04-17
【審査請求日】2021-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】北沢 僚也
(72)【発明者】
【氏名】中村 寿充
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 宏之
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-291589(JP,A)
【文献】特表2007-524763(JP,A)
【文献】特開平07-157868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバ内に配置されて被蒸着物に対して蒸着するための真空蒸着装置用の蒸着源であって、
蒸着物質を収容する導電性の収容箱と、電源を有して収容箱への通電による発熱で収容箱内の蒸着物質を昇華または気化させる給電回路と、被蒸着物に対向する収容箱の部分に突設されて昇華または気化した蒸着物質を噴射する噴射ノズルとを備えるものにおいて、
噴射ノズルが突設された収容箱の部分に通電する給電回路は、電流の入力位置及び出力位置の異なる複数のもので構成されることを特徴とする真空蒸着装置用の蒸着源。
【請求項2】
請求項1記載の真空蒸着装置用の蒸着源であって、前記収容箱が、一面を開口した箱部と、
前記噴射ノズルが突設された収容箱の部分を構成して箱部の開口を着脱自在に閉塞する蓋部とを有するものにおいて、
箱部と蓋部との間に両者を電気的に縁切りする絶縁シールが介在され、箱
部に少なくとも1個の前記給電回路が接続されていることを特徴とする真空蒸着装置用の蒸着源。
【請求項3】
前記箱部または前記蓋部の少なくとも一方に、その板厚方向またはこれに直交する方向にくぼむくぼみ部が局所的に形成されていることを特徴とする請求項2記載の真空蒸着装置用の蒸着源。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の真空蒸着装置用の蒸着源であって、前記噴射ノズルが突設された前記収容箱の部分が鉛直方向上側に位置する姿勢で設置されるものにおいて、
前記収容箱の底壁は、互いに向かい合う側面からその中央領域に向けて鉛直方向下方に夫々傾斜する傾斜面を有することを特徴とする真空蒸着装置用の蒸着源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空蒸着装置用の蒸着源に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の蒸着源を備えた真空蒸着装置は例えば特許文献1で知られている。このものでは、被蒸着物を矩形のガラス基板(以下、「基板」という)、基板の蒸着源に対する相対移動方向をX軸方向、X軸方向に直交する基板の幅方向をY軸方向として、蒸着源が蒸着物質を収容する収容箱を有する。被蒸着物に対向する収容箱の部分には、その外方に突出させて、昇華または気化した蒸着物質を噴射する筒状の噴射ノズルがY軸方向に間隔を存して複数本列設されている。そして、真空雰囲気の真空チャンバ内で、収容箱に組み付けたシースヒータやハロゲンヒータ等の加熱手段で蒸発物質を加熱して昇華または気化させ、この昇華または気化した蒸着物質を各噴射ノズルから噴射させ、蒸着源に対してX軸方向に相対移動する基板に付着、堆積させて所定の薄膜が成膜される。この場合、蒸着源と基板との間に、この基板に対する蒸着物質の付着範囲を制限するマスクプレートを介在させて所定のパターンで基板に成膜することも従来から知られている。
【0003】
一方、他形態に係る蒸着源として、内部に蒸着物質が収容されるタンク部(収容部)と、このタンク部上に配置され、一方向にのびる所定の幅で開口するスリット状の第1開口部を有するノズル部と、少なくとも前記第1開口部を露出させる第2開口部を有してタンク部及びノズル部の外壁を覆うように設けられた断熱部とを備え、タンク部とノズル部とを導電性材料で形成して単一の電源からの通電により発熱させるようにしたものが例えば特許文献2で知られている(例えば
図3,4参照)。
【0004】
ここで、例えばメンテナンス性や構造の簡素化を考慮して、上記特許文献1のような構造を持つ蒸着源にも上記特許文献2記載の技術を適用すること、即ち、噴射ノズルを含む収容箱をカーボン等の導電性材料で形成し、単一の電源からの通電により収納箱自体を加熱し、蒸着物質を昇華または気化させて各噴射ノズルから噴射させることが考えられる。然し、これでは、収容箱に温度むらが生じることが判明した。例えば、各噴射ノズル相互の間だけでなく、いずれかの噴射ノズルにてその先端部と基端部との間に温度むらが発生している場合、昇華または気化した蒸着物質が噴射ノズル内を通って外部に飛散していくときにその一部が噴射ノズルの内壁面に衝突するが、比較的温度が低い内壁面に衝突した蒸着物質が再凝固して堆積したのでは、ノズル詰まりを招来する。また、蒸着物質が設置される収容箱の底部に温度むらが発生している場合、比較的温度が低い部分の蒸着物質が何時までも昇華または気化しないのでは、蒸着物質が残留してしまい、蒸着物質が無駄になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-77193号公報
【文献】特開2011-60865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の知見を基になされたものであり、通電により収納箱自体を加熱するときに、収容箱に温度むらが発生することを可及的に抑制できるようにした真空蒸着装置用の蒸着源を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、真空チャンバ内に配置されて被蒸着物に対して蒸着するための本発明の真空蒸着装置用の蒸着源は、蒸着物質を収容する導電性の収容箱と、電源を有して収容箱への通電による発熱で収容箱内の蒸着物質を昇華または気化させる給電回路と、被蒸着物に対向する収容箱の部分に突設されて昇華または気化した蒸着物質を噴射する噴射ノズルとを備え、噴射ノズルが突設された収容箱の部分に通電する給電回路は、電流の入力位置及び出力位置の異なる複数のもので構成されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、抵抗を持つ導体としての収容箱に各給電回路により通電する(例えば直流電流を流す)と、そのときに生じるジュール効果で収容箱が発熱する。このとき、収容箱に対する各給電回路の入力位置及び出力位置や、各給電回路からの通電電流値を適宜設定すれば、噴射ノズルを含め収容箱を流れる電流の分布が適宜調整されて、収容箱に温度むらが発生することを可及的に抑制できる。
【0009】
本発明において、収容箱が、一面を開口した箱部と、前記噴射ノズルが突設された収容箱の部分を構成してこの箱部の開口を着脱自在に閉塞する蓋部とを有する場合、箱部と蓋部との間に両者を電気的に縁切りする絶縁シールが介在され、箱部に少なくとも1個の前記給電回路が接続されていることが好ましい。この場合、例えば蓋部にて、電源を有する給電回路が複数接続されていてもよい。これによれば、箱部と蓋部とを電気的に縁切りした上で、箱部と蓋部毎に電流の分布が適宜調整して温度むらが発生することを抑制でき、そのため、温度むらの発生に起因するノズル詰まりや蒸着物質の残留を防止でき、有利である。
【0010】
また、本発明において、前記箱部または前記蓋部の少なくとも一方に、その板厚方向またはこれに直交する方向にくぼむくぼみ部が局所的に形成されていることが好ましい。これによれば、くぼみ部が形成された箇所ではその断面積が小さくなることで抵抗が大きくなり、発熱量を局所的に増加させることができるため、これを比較的温度が低い部分に採用すれば、より一層温度むらが発生することを抑制でき、有利である。
【0011】
ところで、一般の真空蒸着装置用の蒸着源は、噴射ノズルが突設された収容箱の部分が鉛直方向上側に位置する姿勢で真空チャンバ内に設置される。このとき、収容箱の底壁が、互いに向かい合う側面からその中央領域に向けて鉛直方向下方に夫々傾斜する傾斜面を有していれば、例えば、蒸着物質の加熱時、金属材料のように液相を経て気相に転移するものであれば、液相になったものが傾斜面を伝って収容箱の中央領域に集められる。そして、いずれかの給電回路による通電でこの中央領域における発熱量を局所的に増加させておけば、最後まで蒸着物質を確実に気化させることができ、有利である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)は、本発明の実施形態の蒸着源を備える真空蒸着装置を説明する、一部を断面視とした部分斜視図、(b)は、真空蒸着装置を正面側からみた部分断面図。
【
図2】(a)は、
図1のIIa―IIa線に沿う断面図、(b)は、蓋部の箱部側から視た底面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、被成膜物を矩形の輪郭を持つ所定厚さのガラス基板(以下、「基板Sw」という)とし、基板Swの片面に所定の薄膜を成膜する場合を例に本発明の真空蒸着装置用の蒸着源DSの実施形態を説明する。以下においては、「上」、「下」といった方向を指す用語は、
図1に示す蒸着源の姿勢を基準とする。
【0014】
図1(a)及び(b)を参照して、Dmは、本実施形態の蒸着源DSを備える真空蒸着装置である。真空蒸着装置Dmは、真空チャンバ1を備え、真空チャンバ1には、特に図示して説明しないが、排気管を介して真空ポンプが接続され、所定圧力(真空度)に真空引きして保持できるようになっている。また、真空チャンバ1の上部には基板搬送装置2が設けられている。基板搬送装置2は、成膜面としての下面を開放した状態で基板Swを保持するキャリア21を有し、図外の駆動装置によってキャリア21、ひいては基板Swを真空チャンバ1内の一方向に所定速度で移動するようになっている。基板搬送装置2としては公知のものが利用できるため、これ以上の説明は省略する。また、以下においては、蒸着源DSに対する基板Swの相対移動方向をX軸方向、X軸方向に直交する基板Swの幅方向をY軸方向とする。
【0015】
基板搬送装置2によって搬送される基板Swと後述の蒸着源DSとの間には、板状のマスクプレート3が設けられている。本実施形態では、マスクプレート3は、基板Swと一体に取り付けられて基板Swと共に基板搬送装置2によって搬送されるようになっている。なお、マスクプレート3は、真空チャンバ1に予め固定配置しておくこともできる。マスクプレート3には、板厚方向に貫通する複数の開口31が形成され、これら開口31がない位置にて蒸着物質の基板Swに対する付着範囲が制限されることで所定のパターンで基板Swに成膜されるようになっている。マスクプレート3としては、インバー、アルミ、アルミナやステンレス等の金属製の他、ポリイミド等の樹脂製のものが用いられる。そして、真空チャンバ1の底面には、X軸方向に移動される基板Swに対向させて本実施形態の蒸着源DSが設けられている。
【0016】
図2も参照して、蒸着源DSは、蒸着物質4を収容する収容箱5を有する。収容箱5が、上面を開口した箱部51と、箱部51の上面開口を着脱自在に閉塞する板状の蓋部52とを有し、箱部51の底面に蒸着物質4が直接設置されるようになっている。この場合、箱部51と蓋部52は、カーボン等の導電性材料で形成され、箱部51と蓋部52の間には、両者を電気的に縁切りする絶縁シールとしての枠状の碍子53が介在されている(この場合、碍子53は収容箱5内を密閉する役割を果たすようになっている)。蒸着物質4としては、基板Swに成膜しようとする薄膜に応じて適宜選択(例えば、Ag、Li、MgやMoO
3)され、顆粒状またはタブレット状の固形のものが利用される。なお、特に図示して説明しないが、箱部51内には分散板が設けられ、昇華または気化した蒸着物質4を後述の各噴射ノズルから略均等な流量で噴射できるようになっている。
【0017】
蓋部52には、所定高さの筒体で構成される、昇華または気化させた蒸着物質4を噴射する噴射ノズル54がY軸方向に所定の間隔で(本実施形態では、6本)列設されている。なお、例えば基板Swに蒸着したときのY軸方向の膜厚分布や、マスクボケの発生などの問題を防止するために、各噴射ノズル54は、その孔軸が基板Swに平行に設置される蓋部52の上面に対して30度~60度の範囲内の所定角度で傾斜されていてもよい。また、蓋部52には、Y軸方向の両側面から外方に突出させて前後一対の端子部52a,52bが夫々形成され、各対の端子部52a,52bには、直流電源61,62からの正負の出力ケーブル61が夫々接続され、蓋部52を含めて給電回路Pc1,Pc2を構成するようになっている。
【0018】
上記実施形態では、各噴射ノズル54を含めて蓋部52に温度むらが発生しないように前後一対の端子部52a,52bを2個設けて2個の給電回路Pc1,Pc2で通電するようにしているが、これに限定されるものではなく、例えば、給電回路Pc1,Pc2により蓋部52に通電して実際の温度分布を予め実験的に求め、この求めたものから、例えば、端子部の位置(電流の入力位置及び出力位置)や、給電回路の数を適宜設定して、蓋部52を流れる電流の分布を調整することができる。他方で、電流の分布を調整するだけでは、例えば、蓋部52に突設した所定長さの各噴射ノズル54における温度むらの発生を抑制できない場合には、噴射ノズル54が突出された蓋部52の部分の板厚がその他の部分より薄くなるように、蓋部52下面の所定位置には板厚方向にくぼむくぼみ部55を凹設してもよい(
図2参照)。これによれば、くぼみ部が55形成された箇所ではその断面積が小さくなることで抵抗が大きくなり、発熱量を局所的に増加させることができる。
【0019】
他方、箱部51もまた、Y軸方向の両側面から外方に突出させて前後一対の端子部51aが形成され、一対の端子部51aには、直流電源63からの正負の出力ケーブル61が接続され、蓋部52のものとは異なる給電回路Pc3を構成するようになっている。この場合、上記同様、給電回路Pc3により箱部51に通電して実際の温度分布を予め実験的に求め、この求めたものから、端子部の位置(電流の入力位置及び出力位置)や、給電回路の数を適宜設定して、箱部51を流れる電流の分布を調整し、または、例えば、蒸着物質4が直接設置される箱部51の底壁に温度むらが発生しているような場合には、箱部51の底壁の断面積を局所的に小さくするようにしてもよい。なお、各直流電源61,62,63は真空チャンバ1外に設けられるものであり、それ自体は公知のものであるため、これ以上の説明は省略する。
【0020】
上記蒸着源DSを用いて基板Sw表面に成膜するのに際しては、箱部51内に所定の蒸着物質4、例えばAgやMgといった金属材料を収容した後、碍子53を介在させた状態で蓋部52を取り付けて、その内部を密閉する。次に、真空チャンバ1を所定圧力まで真空引きすると、給電回路Pc1~Pc3の各直流電源61,62,63により箱部51と蓋部52に通電する。すると、抵抗を持つ導体としての箱部51に通電したときに生じるジュール効果で箱部51が発熱し、伝熱でその内部の蒸着物質4が所定温度(例えば800℃~1400℃)に加熱されて液相を経て気化する。このとき、箱部51と別の給電回路Pc1,Pc2から通電により蓋部52自体も発熱し、その通電電流を適宜設定することで、各噴射ノズル54を含めその全体が箱部51と同等で略均等な温度になる。そして、気化した蒸着物質が各噴射ノズル54から噴射され、マスクプレート3越しに基板Sw表面に付着、堆積し、所定のパターンで成膜される。
【0021】
以上の実施形態によれば、収容箱5の箱部51と蓋部52とに、複数の給電回路Pc1~Pc3から夫々通電することと、蓋部52だけでも複数の給電回路Pc1,Pc2から夫々通電して電流分布を調整していることと、くぼみ部55が形成された箇所にて発熱量を局所的に増加させることとが相俟って、箱部51と蓋部52毎に、ひいては収容箱5に温度むらが発生することを可及的に抑制でき、温度むらの発生に起因するノズル詰まりや蒸着物質の残留を確実に防止できる。
【0022】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術思想の範囲を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。上記実施形態では、収容箱5を箱部51と蓋部52とで構成し、碍子53を介在されて組み付けるものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、収容箱を一体ものとすることができる。この場合、複数の給電回路を収容箱に通電して実際の温度分布を予め実験的に求め、この求めたものから、端子部の位置(電流の入力位置及び出力位置)や、給電回路の数を適宜設定すればよい。また、上記実施形態では、各給電回路Pc1~Pc3の電源として直流電源61,62,63を用いるものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、所定周波数の交流電源を用いることもできる。
【0023】
また、上記実施形態では、給電回路Pc1~Pc3からの通電による発熱時、蓋部52下面の所定位置には板厚方向にくぼむくぼみ部55を凹設して局所的に発熱量を増加させるものを例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、
図3に示すように、変形例に係る蓋部520では、板厚方向に直交する方向(即ち、蓋部520の長手方向の側面からその内方に向け)くぼむ他のくぼみ部550を局所的に形成するようにしてもよい。また。くぼみ部は、箱部または蓋部の少なくとも一方に形成されていればよい。
【0024】
更に、上記実施形態では、箱部51として、蒸着物質4が直接設置される底壁が平坦な略直方体状のものを例に説明したが、これに限定されるものでない。例えば、図4に示すように、変形例に係る箱部510では、その底壁が、互いに向かい合う側面(例えば、箱部510の長手方向の側面)からその中央に向けて鉛直方向下方に夫々傾斜する傾斜面511で形成されている。これによれば、例えば、蒸着物質4の加熱時、金属材料のように液相を経て気相に転移するものであれば、液相になったものが傾斜面511を伝って箱部510の中央領域に集められる。そして、給電回路による通電でこの中央領域における発熱量を局所的に増加させておけば、最後まで蒸着物質4を確実に気化させることができ、有利である。
【0025】
また、上記実施形態では、被成膜物をガラス基板Swとし、基板搬送装置2によりガラス基板Swを一定の速度で搬送しながら成膜するものを例に説明したが、真空蒸着装置Dmの構成は、上記のものに限定されるものではない。例えば、被成膜物をシート状の基材とし、駆動ローラと巻取りローラとの間で一定の速度で基材を移動させながら基材の片面に成膜するような装置にも本発明は適用できる。また、真空チャンバ1内に基板Swとマスクプレート3を一体として固定し、蒸着源DSに公知の構造を持つ駆動手段を付設して、基板Swに対して蒸着源DSを相対移動させながら成膜することにも本発明は適用できる。即ち、基板Swと蒸着源DSを相対的に移動させれば、基板Swと蒸着源DSのいずれか、もしくは両方を移動させてもよい。更に、収容箱5に噴射ノズル54を一列で設けたものを例に説明したが、複数例設けることもできる。
【符号の説明】
【0026】
DS…真空蒸着装置用の蒸着源、Dm…真空蒸着装置、Sw…基板(被蒸着物)1…真空チャンバ、4…蒸着物質、5…収容箱、51、510…箱部、52、520…蓋部、53…碍子(絶縁シール)、55…くぼみ部、54…噴射ノズル、511…傾斜面、61~63…直流電源(電源)、Pc1~Pc3…給電回路。