(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】発泡成形用液晶ポリマー組成物、発泡成形体の製造方法、および発泡成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 9/12 20060101AFI20220119BHJP
C08K 7/00 20060101ALI20220119BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
C08J9/12
C08K7/00
C08L67/00
(21)【出願番号】P 2018551681
(86)(22)【出願日】2017-11-16
(86)【国際出願番号】 JP2017041270
(87)【国際公開番号】W WO2018092845
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-09-11
(31)【優先権主張番号】P 2016225039
(32)【優先日】2016-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】坂井 大雅
(72)【発明者】
【氏名】前田 光男
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-170432(JP,A)
【文献】特開2003-138054(JP,A)
【文献】特開平08-015953(JP,A)
【文献】特開2009-000964(JP,A)
【文献】特開2013-185044(JP,A)
【文献】特開2015-010117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/12
C08K 7/00
C08L 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界流体を発泡剤とする発泡成形のための液晶ポリマー組成物であって、
液晶ポリマーと、鱗片状無機フィラーとを含有し、
前記液晶ポリマーが、液晶性芳香族ポリエステル樹脂であり、
前記鱗片状無機フィラーの含有量は、前記液晶ポリマー組成物100質量部に対して1質量部以上20質量部以下であり、繊維状無機フィラーを含有しない、発泡成形用液晶ポリマー組成物。
【請求項2】
請求項
1に記載の発泡成形用液晶ポリマー組成物と、超臨界流体と、を含む混合物を溶融混練する工程と、
溶融混練された前記混合物の圧力および温度の少なくとも一方を前記超臨界流体の臨界点を下回るまで下げ、前記混合物を発泡成形する工程と、を含む発泡成形体の製造方法。
【請求項3】
前記混合物中の前記発泡剤の含有量は、前記発泡成形用液晶ポリマー組成物100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下である請求項
2に記載の発泡成形体の製造方法。
【請求項4】
請求項
1に記載の発泡成形用液晶ポリマー組成物から成形され、かつ下記式(1)で表される軽量化率が20%以上90%以下である、発泡成形体。
軽量化率(%)=100×(dB-dA)/dB …(1)
(式(1)中、dBは前記発泡成形用液晶ポリマー組成物の真密度(g/cm
3)、dAは前記発泡成形体の見掛け密度(g/cm
3)を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形用液晶ポリマー組成物、発泡成形体の製造方法、および発泡成形体に関する。
本願は、2016年11月18日に、日本に出願された特願2016-225039号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックは金属と比較して軽量であることから、電気電子部品や自動車部品、雑貨等様々な用途分野において広範に採用されている。また、プラスチックの更なる軽量化の要望が高まる中、樹脂製品を低比重化、軽量化する手法として化学発泡剤を用いる手法や、加熱等により樹脂を発泡させる手法が知られている。
特許文献1、2には、超臨界流体を用いて発泡成形された液晶ポリエステル樹脂の発泡成形体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-185044号公報
【文献】特開2003-138054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の液晶ポリエステルの発泡成形体の軽量化率は十分に高くなく、さらなる軽量化が求められていている。
また、最近では、樹脂を用いた発泡成形体の用途は多岐にわたり、軽量化に加え、他の物性も要求される場合がある。例えば自動車の各部品に用いられる場合には、発泡成形体の軽量化に加え、振動減衰性も要求される。しかしながら、発泡成形体の軽量化と振動減衰性とはトレードオフの関係にあり、軽量化を高めると振動減衰性が低下する傾向がある。
すなわち、十分に軽量化され、さらに十分な振動減衰性を有する発泡成形体に用いられる発泡成形用液晶ポリマー組成物が望まれている。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、軽量かつ振動減衰性に優れた発泡成形体に用いられる発泡成形用液晶ポリマー組成物、発泡成形体の製造方法および発泡成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を含む。
[1]超臨界流体を発泡剤とする発泡成形のための液晶ポリマー組成物であって、液晶ポリマーと、鱗片状無機フィラーとを含有し、前記鱗片状無機フィラーの含有量は、前記液晶ポリマー組成物100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下である発泡成形用液晶ポリマー組成物。
[2]前記液晶ポリマーが、液晶性芳香族ポリエステル樹脂である[1]に記載の発泡成形用液晶ポリマー組成物。
[3][1]または[2]に記載の発泡成形用液晶ポリマー組成物と、超臨界流体と、を含む混合物を溶融混練する工程と、溶融混練された前記混合物の圧力および温度の少なくとも一方を前記超臨界流体の臨界点を下回るまで下げ、前記混合物を発泡成形する工程と、を含む発泡成形体の製造方法。
[4]前記混合物中の前記超臨界流体の含有量は、前記発泡成形用液晶ポリマー組成物100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下である[3]に記載の発泡成形体の製造方法。
[5][1]または[2]に記載の発泡成形用液晶ポリマー組成物から成形され、かつ下記式(1)で表される軽量化率が20%以上90%以下である、発泡成形体。
軽量化率(%)=100×(dB-dA)/dB …(1)
(式(1)中、dBは前記発泡成形用液晶ポリマー組成物の真密度(g/cm3)、dAは前記発泡成形体の見掛け密度(g/cm3)を表す。)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、軽量かつ振動減衰性に優れた発泡成形体に用いられる発泡成形用液晶ポリマー組成物、発泡成形体の製造方法および発泡成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態である発泡成形体の一例の断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態である発泡成形体の製造に用いられる射出成形機の模式図である。
【
図3】実施例において、曲げ弾性率の測定に用いた試験片の切り出し位置を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<発泡成形用液晶ポリマー組成物>
本発明の一実施形態である発泡成形用液晶ポリマー組成物は、超臨界流体を発泡剤とする発泡成形に用いられる液晶ポリマー組成物であって、液晶ポリマーと、鱗片状無機フィラーとを含有し、前記鱗片状無機フィラーの含有量が、前記液晶ポリマー樹脂組成物100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることを特徴とする。
【0010】
本実施形態の発泡成形用液晶ポリマー組成物は、発泡層からなる内層と、非発泡層からなる外層とを備える発泡成形体の成形に好適に用いることができる。また、高い軽量化率を有する発泡成形体の成形に好適に用いることができる。
本発明の一実施形態である発泡成形用液晶ポリマー組成物から成形した発泡成形体の一例の断面図を
図1に示す。
図1中、発泡成形体1は、発泡層からなる内層3と、非発泡層からなる外層2および外層4と、を備える。発泡層3は、超臨界流体を発泡剤とすることにより形成された発泡層である。
本明細書において、前記非発泡層は「スキン層」、前記発泡層は「コア層」ということがある。
【0011】
本実施形態の発泡成形用液晶ポリマー組成物は、鱗片状無機フィラーを特定量含有することにより、発泡成形したとき、非発泡層である外層にダメージを与えずに、発泡層である内層を形成することができ、かつ、均質な発泡と高い軽量化を実現することができる。
発泡成形用液晶ポリマー組成物に無機フィラーが含まれると、前記無機フィラーが起点となり発泡するため発泡成形体における発泡を均質化することができる。しかしながら、繊維状無機フィラーの含有量が多いと、非発泡層を貫通して繊維状無機フィラーが露出するため、発泡層である内層からのガス抜けが生じ、発泡成形体の軽量化率を高くすることができないという問題がある。
これに対し、本実施形態の発泡成形用液晶ポリマー組成物は、鱗片状無機フィラーを特定量含有し、繊維状無機フィラーの含有量が低い、または含有しないことにより、非発泡層に繊維状無機フィラーが露出することに起因するガス抜けを防止でき、さらに均質に発泡することができるため、発泡層である内層を良好に形成することができる。
すなわち、1つの側面として、実施形態の発泡成形用液晶ポリマー組成物は、超臨界流体を発泡剤とする発泡成形のための液晶ポリマー組成物であって、
液晶ポリマーと、鱗片状無機フィラーとを含有し、
さらに所望により繊維状無機フィラーを含有してもよく、
鱗片状無機フィラーの含有量が、前記液晶ポリマー樹脂組成物100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であり、
前記繊維状無機フィラーの含有量が、前記液晶ポリマー樹脂組成物100質量部に対して、0質量部以上5質量部以下である、発泡成形用液晶ポリマー組成物である。
別の側面として、本実施形態の発泡成形用液晶ポリマー組成物は、超臨界流体を発泡剤とする発泡成形に用いられる液晶ポリマー組成物であって、液晶ポリマーと、鱗片状無機フィラーとを含有し、
かつ繊維状無機フィラーを含有せず、
鱗片状無機フィラーの含有量が、前記液晶ポリマー樹脂組成物100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下である、発泡成形用液晶ポリマー組成物である。
【0012】
本実施形態の発泡成形用液晶ポリマー組成物が含有する液晶ポリマーは、液晶性芳香族ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0013】
(液晶性芳香族ポリエステル樹脂)
液晶性芳香族ポリエステル樹脂(以下、液晶芳香族ポリエステルということがある)は、溶融時に光学異方性を示す芳香族ポリエステルである。液晶性芳香族ポリエステルの典型的な例としては、下式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ということがある)を有することが好ましく、繰返し単位(1)と、下式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ということがある)と、下式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ということがある)とを有することがより好ましい:
(1)-O-Ar1-CO-
(2)-CO-Ar2-CO-
(3)-X-Ar3-Y-
(4)-Ar4-Z-Ar5-
式中、Ar1はフェニレン基、ナフチレン基またはビフェニリレン基を表し;Ar2およびAr3はそれぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基または上式(4)で表される基を表し;XおよびYはそれぞれ独立に、酸素原子またはイミノ基(-NH-)を表し;Ar4およびAr5はそれぞれ独立に、フェニレン基またはナフチレン基を表し;Zは酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基またはアルキリデン基を表し;Ar1、Ar2またはAr3に係る水素原子はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。
【0014】
前記ハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子を例示することができる。前記アルキル基としては、炭素数が1~10のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基およびn-デシル基が挙げられる。前記アリール基としては、炭素数6~20のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、1-ナフチル基および2-ナフチル基が挙げられる。前記水素原子がこれらの基で置換されている場合、Ar1、Ar2およびAr3中の置換基の数は、それぞれ独立に、2個以下であり、好ましくは1個以下である。
【0015】
前記Zのアルキリデン基としては、炭素数1~10のアルキリデン基が好ましく、例えば、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、n-ブチリデン基および2-エチルヘキシリデン基が挙げられる。
【0016】
繰返し単位(1)は、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(1)としては、p-ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位(すなわち、Ar1がp-フェニレン基)、または6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する繰返し単位(すなわち、Ar1が2,6-ナフチレン基)が好ましい。
【0017】
繰返し単位(2)は、芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(2)としては、テレフタル酸に由来する繰返し単位(すなわち、Ar2がp-フェニレン基)、イソフタル酸に由来する繰返し単位(すなわち、Ar2がm-フェニレン基)、または2,6-ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位(すなわち、Ar2が2,6-ナフチレン基)が好ましい。
【0018】
繰返し単位(3)は、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシルアミンまたは芳香族ジアミンに由来する繰返し単位である。繰返し単位(3)としては、ヒドロキノン、p-アミノフェノールもしくはp-フェニレンジアミンに由来する繰返し単位(すなわち、Ar3がp-フェニレン基)、または4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニルもしくは4,4’-ジアミノビフェニルに由来する繰返し単位(すなわち、Ar3が4,4’-ビフェニリレン基)が好ましい。
なお、本明細書において「由来」とは、原料モノマーが重合するために化学構造が変化し、その他の構造変化を生じないことを意味する。
【0019】
本発明に係る液晶性芳香族ポリエステルが、繰返し単位(1)、(2)および(3)のそれぞれで表される繰り返し単位を含む場合、繰返し単位(1)の含有量は、液晶性芳香族ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量(モル数)に対して、30モル%以上、好ましくは30~80モル%、より好ましくは40~70モル%、さらに好ましくは45~65モル%であり;繰返し単位(2)の含有量は、35モル%以下、好ましくは10~35モル%、より好ましくは15~30モル%、さらに好ましくは17.5~27.5モル%であり;繰返し単位(3)の含有量は、35モル%以下、好ましくは10~35モル%、より好ましくは15~30モル%、さらに好ましくは17.5~27.5モル%である。但し、繰返し単位(1)、繰返し単位(2)および繰返し単位(3)の合計量は100モル%を超えない。
繰返し単位(1)の含有量が多いほど、液晶性芳香族ポリエステルの溶融流動性や耐熱性や強度・剛性が向上する傾向があるが、80モル%を超えると、溶融温度や溶融粘度が高くなる傾向があり、成形に必要な温度が高くなる傾向がある。
繰返し単位(2)の含有量と繰返し単位(3)の含有量とのモル比は、0.9/1~1/0.9、好ましくは0.95/1~1/0.95、より好ましくは0.98/1~1/0.98である。
【0020】
本発明に係る液晶性芳香族ポリエステルは、繰返し単位(1)~(3)を、それぞれ独立に、2種以上有してもよい。液晶性芳香族ポリエステルは、さらに繰返し単位(1)~(3)以外の繰返し単位を有してもよく、その含有量は、全繰返し単位の合計量(モル数)に対して、10モル%以下、好ましくは5モル%以下である。
【0021】
溶融粘度の低い液晶性芳香族ポリエステルを得る観点から、繰返し単位(3)のXおよびYのそれぞれが酸素原子であること(すなわち、芳香族ジオールに由来する繰返し単位であること)が好ましく、XおよびYのそれぞれが酸素原子である繰返し単位のみを繰返し単位(3)として有する液晶性芳香族ポリエステルがより好ましい。
【0022】
本発明に係る液晶性芳香族ポリエステルは、その流動開始温度が、好ましくは280℃以上、より好ましくは290℃以上、さらに好ましくは295℃以上であり、また、好ましくは380℃以下、より好ましくは350℃以下である。すなわち、前記液晶性芳香族ポリエステルの流動開始温度は、280℃以上380℃以下が好ましく、290℃以上380℃以下がより好ましく、295℃以上350℃以下がさらに好ましい。
流動開始温度が高いほど、耐熱性や耐水性が向上し易いが、あまり高いと、溶融させるために高温を要し、成形時に熱劣化しやすくなったり、溶融時の粘度が高くなり、流動性が低下したりする。すなわち、流動開始温度が上記範囲内であると、耐熱性や耐水性が向上し易く、成形時の熱劣化や溶融時の粘度上昇や流動性の低下を防ぐことができる。
【0023】
なお、この「流動開始温度」は、フロー温度または流動温度とも呼ばれ、内径1mm、長さ10mmのノズルを持つ毛細管レオメータを用い、9.8MPaの荷重下において、昇温速度4℃/分で液晶性芳香族ポリエステルの加熱溶融体をノズルから押し出すときに、溶融粘度が4800Pa・s(48000ポアズ)を示す温度であり、液晶性芳香族ポリエステルの分子量の目安となるものである(例えば、小出直之編「液晶ポリマー-合成・成形・応用-」第95~105頁、(株)シーエムシー出版、1987年6月5日発行を参照)。
【0024】
液晶性芳香族ポリエステルは市販のものをそのまま使用してもよいし、公知の方法で製造してもよい。
液晶性芳香族ポリエステルの製造方法としては、例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミンおよび芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを重合(重縮合)させることにより、液晶性芳香族ポリエステルを製造する方法が挙げられる。
【0025】
また、例えば、複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させてなるもの、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミンおよび芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを重合させることにより、液晶性芳香族ポリエステルを製造する方法が挙げられる。
【0026】
さらに、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルと芳香族ヒドロキシカルボン酸とを重合させることにより、液晶性芳香族ポリエステルを製造する方法が挙げられる。
【0027】
液晶性芳香族ポリエステルの2,6-ナフチレン基を含む繰返し単位の含有量は、例えば、重縮合を行う際のモノマーの仕込み比を変更することにより制御することができる。
例えば、繰返し単位(1)を与えるモノマー、すなわち所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸と、繰返し単位(2)を与えるモノマー、すなわち所定の芳香族ジカルボン酸と、繰返し単位(3)を与えるモノマー、すなわち所定の芳香族ジオールとを、2,6-ナフチレン基を有するモノマーの合計量、すなわち6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸および2,6-ナフタレンジオールの合計量が、全モノマーの合計量(モル数)に対して、40~75モル%になるように調製して、重合(重縮合)させることにより、製造することができる。
【0028】
このとき、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸および芳香族ジオールは、互いに独立に、その一部または全部に代えて、その重合可能な誘導体を用いてもよい。 芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシル基をアルコキシカルボニル基またはアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの、カルボキシル基をハロホルミル基に変換してなるもの、カルボキシル基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるものが挙げられる。
【0029】
芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジオールのようなヒドロキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシル基をアシル化してアシルオキシル基に変換してなるものが挙げられる。
【0030】
また、本実施形態の発泡成形用液晶ポリマー組成物に係る液晶性芳香族ポリエステルは、構成する繰返し単位に対応する原料モノマーを溶融重合させ、得られた重合物(プレポリマー)を固相重合させることにより、製造することが好ましい。これにより、耐熱性や耐水性、強度が高い液晶性芳香族ポリエステルを操作性良く製造することができる。
【0031】
また、溶融重合は触媒の存在下に行ってもよく、触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属化合物や、N,N-ジメチルアミノピリジン、N-メチルイミダゾール等の含窒素複素環式化合物が挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましく用いられる。
【0032】
本実施形態の発泡成形用液晶ポリマー組成物に係る液晶ポリマーの含有量は、前記発泡成形用液晶ポリマー組成物100質量部に対して、80質量部以上99質量部以下が好ましく、90質量部以上97質量部以下がより好ましい。
【0033】
(鱗片状無機フィラー)
本明細書において「鱗片状フィラー」とは、平均厚みが0.01~50μmであり、この厚みに対してアスペクト比(アスペクト比=平均粒径/平均厚み)が3~10000である鱗片状の無機質フィラーを意味する。
鱗片状無機フィラーとしては、例えば、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、硫酸バリウムおよび炭酸カルシウムが挙げられる。マイカは、白雲母であってもよいし、金雲母であってもよいし、フッ素金雲母であってもよいし、四ケイ素雲母であってもよい。これらの中で、タルクまたはマイカを好ましく使用することができる。
【0034】
鱗片状無機フィラーを用いることにより、非発泡層である外層にダメージを与えずに、発泡層である内層を形成することができる。
【0035】
本実施形態の発泡成形用液晶ポリマー組成物に含まれる鱗片状無機フィラーの含有量は、前記発泡成形用液晶ポリマー組成物100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であり、2質量部以上18質量部以下が好ましく、3質量部以上17質量部以下がより好ましく、3質量部以上10質量部以下が特に好ましい。鱗片状無機フィラーの含有量が上記の範囲であることにより、非発泡層にダメージを与えずに、良好に発泡させることができる。
【0036】
(繊維状無機フィラー)
本実施形態の発泡成形用液晶ポリマー組成物には、繊維状無機フィラーが含まれてもよい。繊維状無機フィラーとしては、数平均繊維径が15μm以上25μm以下であることが好ましく、16μm以上24μm以下であることがより好ましい。繊維状充填材は、一種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。繊維状無機フィラーの例としては、ガラス繊維;パン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等のセラミック繊維;ステンレス繊維等の金属繊維が挙げられる。また、前記繊維状無機フィラーの例としては、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、炭化ケイ素ウイスカー等のウイスカーも挙げられる。
【0037】
発泡成形用液晶ポリマー組成物に含まれる繊維状無機フィラーの含有量は、前記発泡成形用液晶ポリマー組成物100質量部に対して、0質量部以上5質量部以下であってもよく、0質量部以上3質量部以下であってもよく、0質量部以上1質量部以下であってもよく、含まれなくてもよい。繊維状無機フィラーの含有量が上記の範囲であることにより、非発泡層に繊維状無機フィラーが露出することに起因するガス抜けを防止でき、発泡層である内層を良好に形成することができる。
【0038】
(その他の成分)
本実施形態の発泡成形用液晶ポリマー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、上述の液晶性芳香族ポリエステル樹脂および鱗片状無機フィラーの他にさらに他の成分(添加剤)を少なくとも1種含んでもよい。
すなわち本実施形態の発泡成形用液晶ポリマー組成物は、1つの側面として、上述の液晶性芳香族ポリエステル樹脂、鱗片状無機フィラー、ならびに所望により繊維状無機フィラーおよび添加剤からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0039】
例えば添加剤として、フッ素樹脂や金属石鹸類等の離型剤、酸化チタン等顔料、染料等の着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤等を成分として加えてもよい。これらの添加剤の含有量は、発泡成形用液晶ポリマー組成物100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
【0040】
<発泡成形体の製造方法>
本発明の一実施形態である発泡成形体の製造方法は、上述した発泡成形用液晶ポリマー組成物と、超臨界流体と、を含む混合物を溶融混練する工程と、溶融混練された前記混合物の圧力および温度の少なくとも一方を前記超臨界流体の臨界点を下回るまで下げることで、前記混合物を発泡成形する工程と、を含む。
【0041】
発泡成形用液晶ポリマー組成物は、発泡成形体の製造方法における取り扱いを容易にするため、押出機を用いて溶融混練し、ペレット化しておくことが好ましい。また、予め溶融混練することにより、鱗片状無機フィラーを発泡成形用液晶ポリマー組成物内に均一に分散させることができる。
【0042】
溶融混練された発泡成形用液晶ポリマー組成物は通常、溶融成形される。溶融成形する方法としては、射出成形法、Tダイ法やインフレーション法等の押出成形法、ブロー成形法、真空成形法およびプレス成形が挙げられる。中でも押出成形法および射出成形法が好ましく、射出成形法がより好ましい。
【0043】
押出成形するための押出機としては、シリンダーと、シリンダー内に配置された少なくとも1本のスクリューと、シリンダーに設けられた少なくとも1箇所の供給口とを有するものが、好ましく用いられ、さらにシリンダーに設けられた少なくとも1箇所のベント部を有するものが、より好ましく用いられる。
【0044】
超臨界流体は、前記発泡成形用液晶ポリマー組成物を発泡させるための発泡剤として作用する。超臨界流体は、前記発泡成形用液晶ポリマー組成物との反応性がなく、また、常温常圧下(例えば、温度23℃、大気圧で気体であることが好ましい。
【0045】
ここで「超臨界流体」とは、特定の温度および圧力(臨界点)以上の条件下において物質が示す、気体、液体および固体のいずれでもない物質の状態を示す用語である。特定の温度および圧力である臨界点は、物質の種類によって定まる。
なお本明細書では、「超臨界流体」とは、上記超臨界流体の性質を示す物質を意味する。すなわち、本明細書における超臨界流体は、気体状態と液体状態との中間の性質を示し、溶融した樹脂内への浸透力(溶解力)も液体状態に比べて強く、均一に溶融樹脂内に分散することができる性質を有する物質を意味する。
また、1つの側面として、「超臨界流体」とは、特定の温度または圧力(臨界点)以上の条件下におかれた物質を意味する。
【0046】
本実施形態に係る超臨界流体としては、例えば、二酸化炭素、窒素、ヘリウム等の不活性ガスや、空気、酸素、水素等を用いることができる。例示したこれらの中でも、窒素は、臨界点が温度:-147℃、圧力:3.4MPaであるため、常温(25℃)は臨界温度以上である。従って、圧力を制御するのみで超臨界流体を調製することが可能であるため取り扱いが容易であり、特に好ましい。
【0047】
超臨界流体の使用量は、発泡成形用液晶ポリマー組成物100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましい。発泡剤としての超臨界流体が0.01質量部以上であると、発泡による十分な軽量化効果が得られる。また、10質量部以下の場合、発泡したセルが肥大化を抑制し、発泡体の機械強度の低下を防止できる。
【0048】
[溶融混練]
図2は本発明の一実施形態である発泡成形体を製造するために用いられる射出成形機の模式図である。
この射出成形機30は、上述の発泡成形用液晶ポリマー成物と発泡剤を用いて所定形状の発泡成型体を製造する機械であり、本体11と、金型12と、発泡剤を構成する超臨界流体を本体11内に導入するための超臨界流体の導入装置21と、を有している。
【0049】
導入装置21は、上述した超臨界流体の原料ガスが充填されているガスボンベ211と、ガスボンベ211からの原料ガスを臨界圧力まで昇圧する昇圧機212と、臨界圧力まで昇圧された原料ガス(超臨界流体)のシリンダー111内への導入量を制御する制御バルブ213とを備える。昇圧機212において原料ガスを断熱圧縮することにより原料ガスは加熱されるが、到達温度が臨界温度に満たない場合には、必要に応じて、ガスボンベ211からの原料ガスを臨界温度まで昇温する昇温機を用いる。
【0050】
次に、この射出成形機30を用いた発泡成形体の製造方法について説明する。
まず、上述の発泡成形用液晶ポリマー組成物をホッパー113からシリンダー111内に投入し、シリンダー111内で加熱混練することで発泡成形用液晶ポリマー組成物を溶融させる。一方、ガスボンベ211を開き、原料ガスを昇圧機212で臨界点以上に昇圧、昇温する。得られる超臨界流体を、制御バルブ213を開くことにより、シリンダー111内に導入し、溶融させた発泡成形用液晶ポリマー組成物に含浸させ、前記発泡成形用液晶ポリマー組成物と前記超臨界流体との混合物を溶融混練する。この際、シリンダー内の温度、圧力は超臨界流体に係る物質の臨界点以上とする。
【0051】
[発泡成形]
上述の溶融混練した発泡成形用液晶ポリマー組成物および超臨界流体との混合物(以下、溶融樹脂ということがある)をスクリュー112により移動させ、シリンダー111内から金型12に注入する。この際、溶融樹脂の金型12内への注入が終了するまでは、溶融樹脂に含まれる超臨界流体の超臨界状態を維持するため、金型12を型締し、またカウンタープレッシャーをかけておいてもよい。
【0052】
シリンダー111内の超臨界流体を含む溶融樹脂は、スクリュー112によりシリンダー111内から、加熱ヒーター等で所望温度に調温された金型12内に注入・保持される工程で、温度が低下する。さらに、臨界圧力以上であった圧力が常圧に近づき、超臨界状態の原料ガス(超臨界流体)が気体状態に変遷する。すなわち、溶融樹脂中に分散している超臨界状態の原料ガスが、超臨界状態から気体に変化することにより、体積が膨張し、発泡成形体が得られる。そして、金型12内の樹脂を冷却し固化させた後、所定の冷却時間経過後に金型12から成形品を取り出す。以上の操作により、射出成形による発泡成形体を得ることができる。
なお、非発泡層は、樹脂が発泡する前に金型表面にて冷却され、樹脂が固化することにより形成され、発泡層は樹脂が固化する前、超臨界流体が気化することにより発泡し形成される。
【0053】
本実施形態の発泡成形体の製造方法では、厚みが1.5mm以上10mm以下となるような薄肉の発泡成形体も好適に製造することが可能である。
【0054】
<発泡成形体>
本発明は、前記発泡成形用液晶ポリマー組成物から成形された発泡成形体であって、下記式(1)で表される軽量化率が20%以上90%以下であることを特徴とする、発泡成形体を提供する。
軽量化率(%)=100×(dB-dA)/dB …(1)
(式(1)中、dBは前記発泡成形用液晶ポリマー組成物の真密度(g/cm3)、dAは前記発泡成形体の見掛け密度(g/cm3)を表す。)
【0055】
前記発泡成形体は、好ましくは発泡層である内層と、非発泡層である外層とを有する。本発明の一実施形態である発泡成形体の一例の断面図を
図1に示す。
図1中、発泡成形体1は、発泡層からなる内層3と、非発泡層からなる外層2、外層4と、を備える。発泡層3は、常温常圧下(温度23℃、大気圧)で気体である超臨界流体を発泡剤とすることにより形成された発泡層である。
【0056】
本明細書において、発泡成形体における「非発泡層」とは、発泡層に比較して独立気泡構造が少ない層を意味する。非発泡層は、通常、発泡成形体の表層から1000μm以下に存在する。
「独立気泡構造」とは、気泡が連続しておらず、それぞれ独立して並んだ構造であり、気体や液体が通過できないである構造を意味する。
【0057】
本実施形態の発泡成形体は、発泡層3と非発泡層2、4とで共振する周波数が異なるため、振動を減衰することができる。つまり、本実施形態の発泡成形体は、発泡層3と非発泡層2、4とを備えることにより、軽量化と振動減衰性を両立できる。
【0058】
本実施形態において、下記式(1)で表される軽量化率は20%以上90%以下である。より好ましくは30%以上90%以下、さらに好ましくは40%以上90%以下である。別の側面として、軽量化率は26~60%であってもよい。
軽量化率が上述の範囲内であると、従来の方法で製造される発泡成形体よりも軽量化と振動減衰性のバランスに優れた発泡成形体を得ることができる。
【0059】
本実施形態において、「軽量化率」とは、数式(1)に基づいて求めた値を意味する。
軽量化率(%)=100×(dB-dA)/dB …(1)
[数式(1)中、dBは発泡成形用液晶ポリマー成物の見掛け密度(g/cm3)、dAは発泡成形体の見掛け密度(g/cm3)を表す。]
【0060】
上記式(1)中、液晶性芳香族ポリエステル樹脂組成物の真密度は、液晶性芳香族ポリエステル樹脂組成物からなるペレットを発泡させることなく溶融成形した成形体から、所定のサイズに切り出した試験片(例えば、幅:13mm、長さ:125mm、厚さ:2~4mmの試験片)を基準サンプルとし、この基準サンプルを200℃で5時間乾燥させ、乾燥後の重量と寸法測定から得られる体積と、から算出できる。
発泡成形体の見掛け密度は、発泡成形体から所定のサイズに切り出した試験片(例えば、幅:13mm、長さ:125mm、厚さ:2~4mmの試験片)を200℃で5時間乾燥させ、乾燥後の重量と寸法測定から得られる体積と、から算出できる。
なお、発泡成形体が発泡層と非発泡層を有する場合は、試験片としては、非発泡層、発泡層、非発泡層がこの順で構成されている部分を任意に切り出せばよい。
【0061】
本実施形態においては、発泡剤である超臨界流体の使用量を変更することにより、得られる発泡成形体の軽量化率を上述の範囲内に制御することができる。
【0062】
また、得られた発泡成形体をその後成形加工(二次加工)することとしてもよく、発泡と同時に成形して発泡成形体を得ることとしてもよい。生産性よく成形体を得ることができるため、発泡と同時に成形して発泡成形体を得る方が好ましい。
【0063】
本発明の発泡成形体は、一般に液晶ポリエステル樹脂が適用し得るあらゆる用途に適用可能である。例えば、自動車分野としては、自動車内装材用射出成形体として、天井材用射出成形体、ホイールハウスカバー用射出成形体、トランクルーム内張用射出成形体、インパネ表皮材用射出成形体、ハンドルカバー用射出成形体、アームレスト用射出成形体、ヘッドレスト用射出成形体、シートベルトカバー用射出成形体、シフトレバーブーツ用射出成形体、コンソールボックス用射出成形体、ホーンパッド用射出成形体、ノブ用射出成形体、エアバッグカバー用射出成形体、各種トリム用射出成形体、各種ピラー用射出成形体、ドアロックベゼル用射出成形体、グラブボックス用射出成形体、デフロスタノズル用射出成形体、スカッフプレート用射出成形体、ステアリングホイール用射出成形体、ステアリングコラムカバー用射出成形体等が挙げられる。自動車外装材用射出成形体としては、バンパー用射出成形体、スポイラー用射出成形体、マッドガード用射出成形体、サイドモール用射出成形体等が挙げられる。その他の自動車部品用射出成形体としては、自動車ヘッドランプ用射出成形体、グラスランチャンネル用射出成形体、ウェザーストリップ用射出成形体、ドレーンホース用射出成形体、ウィンドウォッシャーチューブ用射出成形体等のホース用射出成形体、チューブ類用射出成形体、ラックアンドピニオンブーツ用射出成形体、ガスケット用射出成形体等が挙げられる。具体的には、EGIチューブ、アームレストインサート、アームレストガイド、アームレストベース、アウタードアハンドル、アッシュトレイパネル、アッシュトレイランプハウジング、アッパーガーニッシュ、アンテナインナーチューブ、イグニッションコイルケース、イグニッションコイルボビン、インサイドドアロックノブ、インストゥルメントパネルコア、インタークーラータンク、インナーロックノブ、ウィンドウガラススライダー、ウィンドウピボット、ウィンドウモール、ウィンドウレギュレーターハンドル、ウィンドウレギュレーターハンドルノブ、ウォーターポンプインペラー、ウォッシャーノズル、ウォッシャーモーターハウジング、エアースポイラー、エアーダクト、エアーダクトインテーク、エアーベンチレーションフィン、エアコンアクチュエーター、エアコントロールバルブ、エアコンマグネットクラッチボビン、エアコン調節ツマミ、エアフローメーターハウジング、エアレギュレーター、エクストラクトグリル、エンブレム、オイルクリーナーケース、オイルレベルゲージ、オイル制動バルブ、ガソリンチャンバー、ガソリンフロート、ガソリン噴射ノズル、キャニスター、キャブレター、キャブレターバルブ、クーラーシロッコファン、クーラーバキュームポンプ、クーリングファン、クラッチオイルリザーバー、グローブドアアウター、グローブボックス、グローブボックスノブ、グローブボックスリッド、コンデンサーケース、コンプレッサーバルブ、コンミュテーター、サーキットボード、サージタンク、サーモスタットハウジング、サイドブレーキワイヤープロテクター、サイドミラーステイ、サイドミラーハウジング、サイドモール、サイドルーバー、サイレンサー、サイレントギア、サンバイザーシャフト、サンバイザーブラケット、サンバイザーホルダー、サンルーフフレーム、シートベルトスルーアンカー、シートベルトタングプレート、シートベルトバックル、シートベルトリトラクターギア、ジェネレーターカバー、ジェネレーターコイルボビン、ジェネレーターブッシュ、シフトアームコーティング、シフトレバーノブ、ジャンクションボックス、シリンダーヘッドカバー、スイッチ、スイッチベース、スターターインターバルギア、スターターコイルボビン、スターターレバー、ステアリングコラムカバー、ステアリングボールジョイント、ステアリングホーンパッド、スピードセンサー、スピードメーターコントロール、スピードメータードリブンギア、スポイラー、スラストワッシャー、スリーブベアリング、センタークラスター、ソレノイドバルブ、タイミングベルトカバー、チェンジレバーカバー、ディストリビューターキャップ、ディストリビューターポイントブッシュ、ディストリビューター絶縁端子、テールゲート、ドア、ドアサイドモール、ドアトリム、ドアラッチカバー、トランクリアエプロン、トランクロアーバックフィニシャー、トランスミッションカバー、トランスミッションケース、トランスミッションブッシュ、トルコンスラストワッシャー、バキュームコントローラー、バックホーンハウジング、ハッチバックスライドブラケット、バランスシャフトギア、パワーウィンドウスイッチ基板ケース、パワーシートギアハウジング、パワーステアリングタンク、バンパー、バンパークリップ、バンパーモール、ヒーターコアタンク、ヒーターバルブ、ピストンバルブ、ヒューズボックス、ピラーガーニッシュ、ピラールーバー、フェンダー、フューエルインジェクター、フューエルインジェクターコネクター、フューエルインジェクターノズルカバー、フューエルストレーナー、フューエルセジメンタルケース、フューエルチェックバルブ、フューエルフィラーキャップ、フューエルフィルターハウジング、フューエルリッド、ブラシホルダー、ブレーキオイルフロート、ブレーキオイルリザーバー、ブレーキリザーバーキャップ、フロントエンドバンパー、フロントフェンダー、ヘッドレストガイド、ヘリカルギアー、ホイールキャップセンター、ホイールセンターハブキャップ、ホイールフルキャップ、ボンネットクリップ、ボンネットフードルーパー、マスターシリンダーピストン、メーターコネクター、メーターパネル、メーターフード、モーターギア、モールクリップ、ライセンスプレート、ライセンスプレートポケット、ラジエーターグリル、ラジエータータンク、ランプソケット、ランプリフレクター、リアシェルフ、リアエンドバンパー、リアシェルフサイド、リッドアウター、リッドクラスター、リッドクラスター、リトラクタブルヘッドランプカバー、リレーケース、リレーターミナルベースケースコイルボビン、ルーフサイドレールガーニッシュ、ルーフレール、ルームミラーステイ、レギュレーターケース、レギュレーターハンドル、レゾネーター、ワイパーアームヘッド、ワイパーアームヘッドカバー、ワイパーモーターインシュレーター、ワイパーレバー、ワイヤーハーネスコネクター、安全ベルト機構部品、回転センサー、各種スイッチ基板、電気配線用バンドクリップ、電動ミラーベース、内装クリップ、排ガスバルブ、排ガスポンプサイドシール、等が挙げられる。
その他、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶ディスプレイ、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品、電子レンジ部品、音響・音声機器部品、照明部品、エアコン部品、オフィスコンピューター関連部品、電話・FAX関連部品、および複写機関連部品等が挙げられる。
【0064】
本発明の別の側面は、
超臨界流体を発泡剤とする発泡成形のための液晶ポリマー組成物であって、
液晶ポリマーと、鱗片状無機フィラーとを含有し、
前記液晶ポリマーは、液晶性芳香族ポリエステル樹脂、
好ましくは、p-ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位(1)と、テレフタル酸に由来する繰返し単位およびイソフタル酸に由来する繰返し単位からなる群から選択される少なくとも1つである繰返し単位(2)と、4,4’-ジヒドロキシビフェニルに由来する繰返し単位(3)とを含む液晶性芳香族ポリエステル樹脂であり;
前記鱗片状フィラーは、タルクまたはマイカであり;
前記液晶ポリマーの含有量は、液晶性芳香族ポリエステル樹脂組成物100質量部に対して、80質量部以上99質量部以下、好ましくは90質量部以上97質量部以下であり;
前記鱗片状無機フィラーの含有量は、前記液晶ポリマー組成物100質量部に対して1質量部以上20質量部以下、好ましくは2質量部以上18質量部以下、より好ましくは3質量部以上17質量部以下、特に好ましくは3質量部以上10質量部以下である
発泡成形用液晶ポリマー組成物である。
【0065】
本発明のさらに別の側面は、
超臨界流体を発泡剤とする発泡成形のための液晶ポリマー組成物であって、
液晶ポリマーと、鱗片状無機フィラーとを含有し、
かつ繊維状無機フィラーは含有せず、
前記液晶ポリマーは、液晶性芳香族ポリエステル樹脂、
好ましくは繰返し単位(1)、繰り返し単位(2)および繰り返し単位(3)を有する液晶性芳香族ポリエステル樹脂であり;
前記鱗片状フィラーは、タルクまたはマイカであり;
前記液晶ポリマーの含有量は、液晶性芳香族ポリエステル樹脂組成物100質量部に対して、80質量部以上99質量部以下、好ましくは90質量部以上97質量部以下であり;
前記鱗片状無機フィラーの含有量は、前記液晶ポリマー組成物100質量部に対して1質量部以上20質量部以下、好ましくは2質量部以上18質量部以下、より好ましくは3質量部以上17質量部以下、特に好ましくは3質量部以上10質量部以下である
発泡成形用液晶ポリマー組成物である。
【0066】
本発明のさらに別の側面は、
前記発泡成形用液晶ポリマー組成物と、超臨界流体と、を含む混合物を溶融混練する工程と、
溶融混練された前記混合物の圧力および温度の少なくとも一方を前記超臨界流体の臨界点を下回るまで下げ、前記混合物を発泡成形する工程と、を含み;
前記超臨界流体が二酸化炭素、窒素、ヘリウム、空気、酸素または水素であり、好ましくは窒素であり;
前記混合物中の前記超臨界流体の含有量は、前記発泡成形用液晶ポリマー組成物100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下である、
発泡成形体の製造方法である。
【0067】
本発明のさらに別の側面は、
前記発泡成形用液晶ポリマー組成物から成形され、かつ前記式(1)で表される軽量化率が20%以上90%以下、より好ましくは30%以上90%以下、さらに好ましくは40%以上90%以下であり、または26%以上60%以下であってもよい、発泡成形体である。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0069】
[発泡成形用液晶ポリマー組成物の真密度の測定]
発泡成形用液晶ポリマー組成物からなるペレットを発泡させることなく溶融成形した成形体から、所定のサイズに切り出した試験片(幅:13mm、長さ:125mm、厚さ:2~4mmの試験片)を基準サンプルとした。
この基準サンプルを200℃で5時間以上乾燥し、乾燥後重量と、寸法測定から得られる体積と、から発泡成形用液晶ポリマー組成物の真密度を算出した。
【0070】
[発泡成形体の見掛け密度の測定]
発泡成形体から所定のサイズに切り出した試験片(幅:13mm、長さ:125mm、厚さ:2~4mmの試験片)を、発泡成形用液晶ポリマー組成物の真密度と同様の方法により、発泡成形品を200℃で5時間以上乾燥し、乾燥後重量と、寸法測定から得られる体積と、から算出した。
【0071】
[発泡成形体の軽量化率の測定]
発泡成形体の軽量化率は、下記式(1)に基づいて求めた。
軽量化率(%)=100×(dB-dA)/dB …(1)
(式(1)中、dBは前記発泡成形用液晶ポリマー組成物の真密度(g/cm3)、dAは前記発泡成形体の見掛け密度(g/cm3)を表す。)
【0072】
[発泡成形体の曲げ弾性率の測定]
発泡成形体の曲げ弾性率は、3点曲げ試験により求めた。
まず、
図3に示す、L1(長さ):360mm、L2(幅):250mm、L3(厚み):2~4mmの大型サイズの平板形状の発泡成形体を製造し、得られた発泡成形体から、L12(幅):13mm、L11(長さ):125mm、L13(厚み):2~4mmの試験片(基準サンプル)を切り出し、この試験片について、万能試験機(テンシロンRTG-1250、(株)エー・アンド・デイ社製)を用い、スパン間距離50mm、試験速度1mm/minの測定条件で実施したときの値を採用した。
【0073】
[発泡成形体の振動特性の測定]
発泡成形体の振動特性は、非拘束型制振複合はりの振動減衰特性試験方法(JIS K7391)に準拠して、中央加振法にて測定した。得られた発泡成形体から、上記[発泡成形体の曲げ弾性率の測定]で使用した試験片と同様の試験片である基準サンプル(
図4に示すL12(幅):13mm、L11(長さ):125mm、L13(厚み):2~4mmの試験片)を切り出し、この試験片について振動特性評価試験機((株)ONO SOKKI社製)を用いて測定し、損失係数を半値幅法により算出した。
【0074】
<製造例1(液晶性芳香族ポリエステルAの製造)>
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却器を備えた反応器に、パラヒドロキシ安息香酸 994.5g(7.2モル)、4,4’-ジヒドロキシビフェニル 446.9g(2.4モル)、テレフタル酸 299.0g(1.8モル)、イソフタル酸 99.7g(0.6モル)および無水酢酸1347.6g(13.2モル)を入れた。反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下、1-メチルイミダゾール0.18gを添加し、30分間かけて150℃まで昇温した後、その温度が保持されたまま30分間還流した。その後、1-メチルイミダゾール2.4gを添加した後、留出する副生酢酸、および未反応の無水酢酸を留去しながら反応器内の混合物を2時間50分かけて320℃まで昇温した。トルクの上昇が認められた時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。得られた固形分を、室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕した後、窒素雰囲気下、室温(23℃)から250℃まで1時間かけて昇温し、さらに、250℃から295℃まで5時間かけて昇温し、さらに、295℃で3時間保持することで、固相重合を行った。その後、冷却して液晶性芳香族ポリエステルAを得た。
【0075】
<製造例2(液晶性芳香族ポリエステルBの製造)>
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却器を備えた反応器に、p-ヒドロキシ安息香酸 994.5g(7.2モル)、4,4'-ジヒドロキシビフェニル 446.9g(2.4モル)、テレフタル酸 239.2g(1.44モル)、イソフタル酸 159.5g(0.96モル)および無水酢酸 1347.6g(13.2モル)を入れた。反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下、1-メチルイミダゾール0.18gを添加し、30分間かけて150℃まで昇温し、温度を保持したまま30分間還流した。その後、1-メチルイミダゾール2.4gを添加した後、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら、2時間50分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められた時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。得られた固形分は、室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕した後、窒素雰囲気下、室温から220℃まで1時間かけて昇温し、220℃から240℃まで0.5時間かけて昇温し、240℃で10時間保持し、固相重合を進めた。冷却して液晶性芳香族ポリエステルBを得た。
【0076】
<実施例1>
液晶性芳香族ポリエステルAの粉末52.25質量部と、液晶性芳香族ポリエステルBの粉末42.75質量部と、(株)ヤマグチマイカ製のマイカ「AB-25S」(鱗片状フィラー:平均粒子径25μm)と、を混合し、(株)池貝製の2軸押出機「PCM-30」を用いて溶融混錬することにより、発泡成形用樹脂組成物からなるペレットを作製した。
このときの溶融混錬条件として、この2軸押出機のシリンダー設定温度を340℃とし、スクリュー回転速度を150rpmとした。ここでいうシリンダー設定温度とは、シリンダーの最下流部からシリンダー長の約2/3の部分までに設けられた加熱機器の設定温度の平均値を意味する。
上述の方法にて作製したペレットから、日本製鋼所(株)製の全電動成形機「J450AD」およびTREXEL.Inc製の超臨界流体製造ユニット「SCF SYSTEM」を用いて、平板(250mm×360mm×3mmt)形状の発泡成形体を作製した。このとき、設定温度360℃のシリンダー内で樹脂を加熱・計量する際に超臨界状態の窒素が導入され、設定温度120℃の金型に射出することで、金型中で超臨界状態の窒素が気体となった。
これにより、発泡層からなる内層と、非発泡層からなる外層とを備える発泡成形体を製造した。
【0077】
<実施例2>
液晶性芳香族ポリエステルAの粉末、液晶性芳香族ポリエステルBの粉末、およびマイカ((株)ヤマグチマイカ製、AB-25S)(鱗片状フィラー:平均粒子径25μm)の混合量を以下のとおり変更した以外は実施例1と同様の方法により、発泡層からなる内層と、非発泡層からなる外層とを備える発泡成形体を製造した。
液晶性芳香族ポリエステルAの粉末:49.5質量部
液晶性芳香族ポリエステルBの粉末:40.5質量部
マイカ:10質量部
【0078】
<実施例3>
液晶性芳香族ポリエステルAの粉末、液晶性芳香族ポリエステルBの粉末の混合量を以下のとおり変更し、さらに、マイカに変えて下記のタルクを用いた以外は実施例1と同様の方法により、発泡層からなる内層と、非発泡層からなる外層とを備える発泡成形体を製造した。
液晶性芳香族ポリエステルAの粉末:53.35質量部
液晶性芳香族ポリエステルBの粉末:43.65質量部
タルク(日本タルク(株)製、X-50)(鱗片状フィラー:平均粒子径22μm):3質量部
【0079】
<実施例4>
液晶性芳香族ポリエステルAの粉末、液晶性芳香族ポリエステルBの粉末の混合量を以下のとおり変更し、さらに、マイカに変えて下記のタルクを用いた以外は実施例1と同様の方法により、発泡層からなる内層と、非発泡層からなる外層とを備える発泡成形体を製造した。
液晶性芳香族ポリエステルAの粉末:52.25質量部
液晶性芳香族ポリエステルBの粉末:42.75質量部
タルク(日本タルク(株)製、X-50)(鱗片状フィラー:平均粒子径22μm):5質量部
【0080】
<実施例5>
液晶性芳香族ポリエステルAの粉末49.5質量部と、液晶性芳香族ポリエステルBの粉末40.5質量部と、日本タルク(株)製のタルク「X-50」10質量部と、を混合し、実施例1と同様の方法により、発泡層からなる内層と、非発泡層からなる外層とを備える平板(250mm×360mm×2mmt)形状の発泡成形体を製造した。
【0081】
<実施例6>
液晶性芳香族ポリエステルAの粉末49.5質量部と、液晶性芳香族ポリエステルBの粉末40.5質量部と、日本タルク(株)製のタルク「X-50」10質量部と、を混合し、実施例1と同様の方法により、発泡層からなる内層と、非発泡層からなる外層とを備える平板(250mm×360mm×3mmt)形状の発泡成形体を製造した。
【0082】
<比較例1>
液晶性芳香族ポリエステルAの粉末の配合量を55質量部、液晶性芳香族ポリエステルBの粉末の配合量を45質量部とし、液晶性芳香族ポリエステル樹脂100質量部のフィラーを含まない発泡成形用樹脂組成物を用いたこと以外は上記実施例1と同様の方法により発泡成形体を製造した。しかし、樹脂が発泡せず、発泡成形体を得ることができなかった。
【0083】
<比較例2>
液晶性芳香族ポリエステルAの粉末41.25質量部と、液晶性芳香族ポリエステルBの粉末33.75質量部と、日本タルク(株)製のタルク「X-50」25質量部と、を混合したこと以外は上記実施例1と同様の方法により、発泡成形体を製造した。
【0084】
<比較例3>
液晶性芳香族ポリエステルAの粉末41.25質量部と、液晶性芳香族ポリエステルBの粉末33.75質量部と、(株)ヤマグチマイカ製のマイカ「AB-25S」25質量部と、を混合したこと以外は上記実施例1と同様の方法により、発泡成形体を製造した。
【0085】
実施例1~6、比較例1~3の発泡成形体の比重、軽量化率、弾性率、損失係数を表1に記載する。
また、実施例1~6、比較例1~3で用いた発泡成形用樹脂組成物を、上述の方法にて作製したペレットを用い、超臨界流体を注入せずに射出成形により製造した非発泡の成形体(表1中、「非発泡状態」と記載)についての、比重、弾性率、損失係数を表1に記載する。
下記表1中、「LCP」は「液晶芳香族ポリエステル」を意味する。
【0086】
【0087】
上記結果に示した通り、本発明を適用した実施例1~6は、損失係数の値が非発泡の状態とほぼ同一の値のまま、高い軽量化率を達成することができた。即ち、本発明を適用した成形体は、振動減衰性を維持しつつ、軽量化することができた。
これに対し、本発明を適用しない比較例1~3は、発泡しない、または軽量化率が算出できないほど発泡が不十分であり、発泡成形体を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、軽量かつ振動減衰性に優れた発泡成形体に用いられる発泡成形用液晶ポリマー組成物、発泡成形体の製造方法および発泡成形体を提供することができるので、産業上極めて有用である。
【符号の説明】
【0089】
1…発泡成形体、2、4…非発泡層、3…発泡層、30…射出成形機、11…本体、12…金型、21…導入装置、211…ガスボンベ、212…昇圧機、213…制御バルブ