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特許7011611内視鏡用コーティング組成物、内視鏡用潤滑性部材、内視鏡用潤滑性部材の製造方法、内視鏡用可撓管、及び内視鏡
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】内視鏡用コーティング組成物、内視鏡用潤滑性部材、内視鏡用潤滑性部材の製造方法、内視鏡用可撓管、及び内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/008 20060101AFI20220203BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20220203BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20220203BHJP
   C10M 103/02 20060101ALI20220203BHJP
   C10M 103/00 20060101ALI20220203BHJP
   C10M 103/06 20060101ALI20220203BHJP
   C10M 107/38 20060101ALI20220203BHJP
   C10M 107/44 20060101ALI20220203BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20220203BHJP
   C10N 20/06 20060101ALN20220203BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20220203BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20220203BHJP
   C10N 40/00 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
A61B1/008 512
A61B1/00 710
A61B1/00 713
G02B23/24 A
C10M103/02 Z
C10M103/02 A
C10M103/02
C10M103/00 A
C10M103/06 C
C10M107/38
C10M107/44
C10N10:12
C10N20:06 Z
C10N30:04
C10N30:06
C10N40:00 Z
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2019012504
(22)【出願日】2019-01-28
(65)【公開番号】P2020116336
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】特許業務法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】永井 貴康
(72)【発明者】
【氏名】中井 義博
(72)【発明者】
【氏名】奥 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 和博
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/098336(WO,A1)
【文献】特開2004-208962(JP,A)
【文献】特開2014-196466(JP,A)
【文献】特開2014-012809(JP,A)
【文献】特開2004-329539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/008
A61B 1/00
G02B 23/24
C10M 103/02
C10M 103/00
C10M 103/06
C10M 107/38
C10M 107/44
C10N 10/12
C10N 20/06
C10N 30/04
C10N 30/06
C10N 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体潤滑剤と、高分子化合物である含窒素分散剤と、熱硬化性樹脂と、溶媒とを含有する内視鏡用コーティング組成物。
【請求項2】
前記分散剤が、アミン化合物及びアンモニウム化合物の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の内視鏡用コーティング組成物。
【請求項3】
前記分散剤が脂肪族アンモニオ基を有する、請求項1又は2に記載の内視鏡用コーティング組成物。
【請求項4】
前記分散剤が分岐構造を有する高分子化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の内視鏡用コーティング組成物。
【請求項5】
前記分散剤がポリエーテル構造、ポリエステル構造、及びポリウレタン構造の少なくとも1種の構造を有する化合物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の内視鏡用コーティング組成物。
【請求項6】
前記分散剤の分子量が5000~50000である、請求項1~5のいずれか1項に記載の内視鏡用コーティング組成物。
【請求項7】
熱硬化性樹脂がポリアミドイミド樹脂を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の内視鏡用コーティング組成物。
【請求項8】
前記ポリアミドイミド樹脂が、ポリアミドイミドの構成成分として下記式(1)で表される構造単位を含む、請求項7に記載の内視鏡用コーティング組成物。
【化1】
式中、Arは芳香族環を有する2価の基を示す。
【請求項9】
前記式(1)のArが、フェニレン、ジフェニルメタン構造、ジフェニルプロパン構造、ジフェニルエーテル構造、ジフェニルスルホン構造、ジフェニルアミン構造、ビフェニル構造、又はナフタレン構造を示す、請求項8に記載の内視鏡用コーティング組成物。
【請求項10】
前記式(1)のArが、フェニレン、ジフェニルメタン構造、ジフェニルプロパン構造、ジフェニルエーテル構造、又はジフェニルアミン構造を示す、請求項9に記載の内視鏡用コーティング組成物。
【請求項11】
前記ポリアミドイミドの重量平均分子量が10000~100000である、請求項7~10のいずれか1項に記載の内視鏡用コーティング組成物。
【請求項12】
前記固体潤滑剤が無機粒子を含み、該無機粒子がグラファイト、フッ素化黒鉛、カーボンナノチューブ、窒化硼素、二硫化モリブデン、有機モリブデン、及び二硫化タングステンの少なくとも1種を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の内視鏡用コーティング組成物。
【請求項13】
前記無機粒子の粒子径が0.2~4.0μmである、請求項12に記載の内視鏡用コーティング組成物。
【請求項14】
前記無機粒子の粒子径が0.3~1.5μmである、請求項13に記載の内視鏡用コーティング組成物。
【請求項15】
前記固体潤滑剤が有機粒子を含み、該有機粒子がフッ素樹脂及びメラミンシアヌレートの少なくとも1種を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の内視鏡用コーティング組成物。
【請求項16】
前記有機粒子の粒子径が1~30μmである、請求項15に記載の内視鏡用コーティング組成物。
【請求項17】
前記有機粒子の粒子径が1~15μmである、請求項16に記載の内視鏡用コーティング組成物。
【請求項18】
前記溶媒が、N-メチル2-ピロリドン、キシレン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンの少なくとも1種を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の内視鏡用コーティング組成物。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の内視鏡用コーティング組成物によりコーティング処理された内視鏡用潤滑性部材。
【請求項20】
前記内視鏡用潤滑性部材が内視鏡用潤滑性ワイヤーである、請求項19に記載の内視鏡用潤滑性部材。
【請求項21】
請求項1~18のいずれか1項に記載の内視鏡用コーティング組成物を内視鏡用部材の表面に塗布することを含む、内視鏡用潤滑性部材の製造方法。
【請求項22】
請求項19又は20に記載の内視鏡用潤滑性部材を含む内視鏡用可撓管。
【請求項23】
請求項22に記載の内視鏡用可撓管を備えた内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用コーティング剤、内視鏡用潤滑性部材、内視鏡用潤滑性部材の製造方法、内視鏡用可撓管、及び内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、患者の体腔内を観察する医療用機器であり、処置具を備え、体腔内に挿入した状態で各種処置ができるように構成されているものもある。
内視鏡は、観察視野方向を任意の方向に可変できるように、挿入部の先端側に、湾曲可能な湾曲部を備えている。この湾曲部は、例えば、ステンレス等の金属素線を束ねた撚り線からなるワイヤーを内視鏡挿入部に挿通し、手元の操作部を制御してこのワイヤーを引っ張ることにより湾曲部が所望の方向に曲げられる。このワイヤーは、内視鏡挿入部の内壁に設けられたワイヤーガイドに挿通されて内視鏡挿入部の内壁に固定される。ワイヤーを用いた湾曲部の操作自体は一般的な内視鏡が備える機能であり、例えば特許文献1及び2等に開示されている。湾曲部におけるワイヤーとワイヤーガイドの一般的な構成として、例えば特許文献1の図2等を参照することができる。
【0003】
湾曲部の曲げ操作により、上記のワイヤーとワイヤーガイドとの間には摩擦が生じ、これに伴うワイヤーの摩耗が問題となる。この摩耗低減のためにワイヤー表面には通常、無機粒子又は有機粒子からなる固体潤滑剤を用いたコーティング処理が施される(例えば特許文献2)。
固体潤滑剤によるコーティング処理は、一般的に、固体潤滑剤を媒体中に分散させたコーティング組成物(コーティング剤)を調製し、これをスプレー等により被コーティング部材表面に塗布することにより行われる。このコーティング組成物には媒体として溶媒が用いられ、通常はバインダーとして樹脂が配合される。また、塗布によるコーティングの他、特許文献3には、高分子材料からなる被コーティング部材を溶解する溶媒を、被コーティング部材表面に作用させ、固体潤滑剤を被コーティング部材の表面に一体的に結合させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/034021号
【文献】特開2004-208962号公報
【文献】特開平7-155281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固体潤滑剤によるコーティングを、媒体中に固体潤滑剤を分散させたコーティング組成物を用いて行う場合、コーティング組成物には固体潤滑剤粒子の高度な分散安定性が求められる。コーティング組成物中の固体潤滑剤が経時的に凝集したり沈降したりすると、目的の潤滑性コーティングを安定的に行うことが困難となる。
【0006】
本発明は、固体潤滑剤の分散安定性に優れ、被コーティング部材の潤滑性を安定的に、十分に高めることができる、内視鏡用部材への適用に好適なコーティング組成物を提供することを課題とする。また本発明は、上記コーティング組成物によりコーティング処理を施した、内視鏡用部材として好適な潤滑性部材とその製造方法、並びに、この潤滑性部材を用いた内視鏡用可撓管及び内視鏡を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、固体潤滑剤を分散してなるコーティング組成物において、含窒素化合物である分散剤(以下、含窒素分散剤という。)を配合し、さらに、バインダーとして熱硬化性樹脂を組み合わせることにより、固体潤滑剤の分散安定性を格段に高めることができること、また、このコーティング組成物を用いてコーティング処理を施すことにより、被コーティング部材に優れた潤滑性を付与できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を重ね、完成されるに至ったものである。
【0008】
本発明の上記課題は下記の手段により解決された。
〔1〕
固体潤滑剤と、含窒素分散剤と、熱硬化性樹脂と、溶媒とを含有する内視鏡用コーティング組成物。
〔2〕
上記分散剤が、アミン化合物及びアンモニウム化合物の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の内視鏡用コーティング組成物。
〔3〕
上記分散剤が脂肪族アンモニオ基を有する、〔1〕又は〔2〕に記載の内視鏡用コーティング組成物。
〔4〕
上記分散剤が分岐構造を有する高分子化合物である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の内視鏡用コーティング組成物。
〔5〕
上記分散剤がポリエーテル構造、ポリエステル構造、及びポリウレタン構造の少なくとも1種の構造を有する化合物である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の内視鏡用コーティング組成物。
〔6〕
上記分散剤の分子量が5000~50000である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の内視鏡用コーティング組成物。
〔7〕
熱硬化性樹脂がポリアミドイミド樹脂を含む、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の内視鏡用コーティング組成物。
〔8〕
上記ポリアミドイミド樹脂が、ポリアミドイミドの構成成分として下記式(1)で表される構造単位を含む、〔7〕に記載の内視鏡用コーティング組成物。
【化1】

式中、Arは芳香族環を有する2価の基を示す。
〔9〕
上記式(1)のArが、フェニレン、ジフェニルメタン構造、ジフェニルプロパン構造、ジフェニルエーテル構造、ジフェニルスルホン構造、ジフェニルアミン構造、ビフェニル構造、又はナフタレン構造を示す、〔8〕に記載の内視鏡用コーティング組成物。
〔10〕
上記式(1)のArが、フェニレン、ジフェニルメタン構造、ジフェニルプロパン構造、ジフェニルエーテル構造、又はジフェニルアミン構造を示す、〔9〕に記載の内視鏡用コーティング組成物。
〔11〕
上記ポリアミドイミドの重量平均分子量が10000~100000である、〔7〕~〔10〕のいずれかに記載のいずれか1項に記載の内視鏡用コーティング組成物。
〔12〕
上記固体潤滑剤が無機粒子を含み、この無機粒子がグラファイト、フッ素化黒鉛、カーボンナノチューブ、窒化硼素、二硫化モリブデン、有機モリブデン、及び二硫化タングステンの少なくとも1種を含む、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の内視鏡用コーティング組成物。
〔13〕
上記無機粒子の粒子径が0.2~4.0μmである、〔12〕に記載の内視鏡用コーティング組成物。
〔14〕
上記無機粒子の粒子径が0.3~1.5μmである、〔13〕に記載の内視鏡用コーティング組成物。
〔15〕
上記固体潤滑剤が有機粒子を含み、この有機粒子がフッ素樹脂及びメラミンシアヌレートの少なくとも1種を含む、〔1〕~〔14〕のいずれかに記載の内視鏡用コーティング組成物。
〔16〕
上記有機粒子の粒子径が1~30μmである、〔15〕に記載の内視鏡用コーティング組成物。
〔17〕
上記有機粒子の粒子径が1~15μmである、〔16〕に記載の内視鏡用コーティング組成物。
〔18〕
上記溶媒が、N-メチル2-ピロリドン、キシレン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンの少なくとも1種を含む、〔1〕~〔17〕のいずれかに記載の内視鏡用コーティング組成物。
〔19〕
〔1〕~〔18〕のいずれかに記載の内視鏡用コーティング組成物によりコーティング処理された内視鏡用潤滑性部材。
〔20〕
上記内視鏡用潤滑性部材が内視鏡用潤滑性ワイヤーである、〔19〕に記載の内視鏡用潤滑性部材。
〔21〕
〔1〕~〔18〕のいずれかに記載の内視鏡用コーティング組成物を内視鏡用部材の表面に塗布することを含む、内視鏡用潤滑性部材の製造方法。
〔22〕
〔19〕又は〔20〕に記載の内視鏡用潤滑性部材を含む内視鏡用可撓管。
〔23〕
〔22〕に記載の内視鏡用可撓管を備えた内視鏡。
【0009】
本明細書において置換ないし無置換を明記していない構造については、所望の効果を奏する範囲で、その構造に任意の置換基を有していてもよい意味である。
本明細書において「~」で表される数値範囲は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の内視鏡用コーティング組成物は、固体潤滑剤の分散安定性に優れ、これを用いて被コーティング部材表面をコーティングすることにより、被コーティング部材の潤滑性を安定的に、十分に高めることができる。また、本発明の内視鏡用潤滑性部材は、潤滑性に優れ、優れた耐摩耗性を示す。また、本発明の内視鏡用潤滑性部材の製造方法によれば、潤滑性が十分に高められた内視鏡用潤滑性部材を安定して得ることができる。また、本発明の内視鏡用可撓管及び内視鏡は、本発明の内視鏡用潤滑性部材が組み込まれており、この潤滑性部材の摩耗を効果的に低減でき耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】電子内視鏡の一実施形態の構成を示す外観図である。
図2】実施例における摩耗耐久性試験の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[内視鏡用コーティング組成物]
本発明の内視鏡用コーティング組成物(以下、本発明の組成物とも称す。)は、固体潤滑剤と、含窒素分散剤と、熱硬化性樹脂と、溶媒とを含有する。
【0013】
<固体潤滑剤>
本発明の組成物に含まれる固体潤滑剤は、固体潤滑剤として一般に使用されているものを広く適用することができる。したがって、本発明に用いる固体潤滑剤は無機粒子でもよく、有機粒子でもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。固体潤滑剤における「固体」とは、25℃において固体状であることを意味する。
無機粒子からなる固体潤滑剤の材料としては、例えば、グラファイト、フッ素化黒鉛、カーボンナノチューブ、窒化硼素、二硫化モリブデン、有機モリブデン、及び二硫化タングステンを挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。なお、本発明において「有機モリブデン」は、モリブデンが主体の固体潤滑剤であるため、便宜上、無機粒子に分類する。
固体潤滑剤が無機粒子の場合、その粒子径を例えば0.2~4.0μmとすることができ、0.2~3.5μmが好ましく、0.3~2.0μmがより好ましく、0.3~1.5μmがさらに好ましく、0.35~1.3μmが特に好ましい。本発明ないし明細書において粒子径は体積基準平均粒子径を意味する。
【0014】
有機粒子からなる固体潤滑剤の材料としては、例えば、フッ素樹脂及びメラミンシアヌレートを挙げることができる。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)等を挙げることができ、なかでもPTFEが好適である。
固体潤滑剤が有機粒子の場合、その粒子径を1~30μmとすることができ、1~25μmが好ましく、1~20μmがさらに好ましく、1~15μmがさらに好ましく、1.5~12μmがさらに好ましく、2~8μmとすることも好ましい。
【0015】
本発明の組成物は、固体潤滑剤として少なくとも無機粒子を含むことが好ましい。また、本発明の組成物が固体潤滑剤として無機粒子と有機粒子とを含有する場合、両粒子の含有量の質量比は、[無機粒子]/[有機粒子]>1が好ましく、[無機粒子]/[有機粒子]>1.5がより好ましく、[無機粒子]/[有機粒子]>1.7がさらに好ましい。
【0016】
本発明の組成物中、固体潤滑剤の含有量は10~50質量%が好ましく、15~45質量%がより好ましく、25~40質量%がさらに好ましく、26~35質量%が特に好ましい。
【0017】
<含窒素分散剤>
本発明の組成物に含まれる含窒素分散剤は、固体潤滑剤に作用し、固体潤滑剤の媒体中への分散性を高める。含窒素分散剤は、窒素原子を有する基において固体潤滑剤に効率的に吸着することができ、残部において媒体と親和的に相互作用し、固体潤滑剤の分散剤として効果的に機能するものと推定される。
本発明の組成物に用いる含窒素分散剤は、アミン化合物及びアンモニウム化合物の少なくとも1種を含むことが好ましく、アミン化合物及びアンモニウム化合物の少なくとも1種であることがより好ましい。上記アミン化合物は脂肪族アミン化合物(アミノ基の窒素原子が脂肪族基に結合している(芳香族基に結合していない)アミノ基(脂肪族アミノ基)を有する化合物)が好ましい。また、アンモニウム化合物は脂肪族アンモニウム化合物(アンモニオ基の窒素原子が脂肪族基に結合している(芳香族基に結合していない)アンモニオ基(脂肪族アンモニオ基)を有する化合物)が好ましい。なかでも上記含窒素分散剤は、分散安定性の観点からアンモニウム化合物を含むことが好ましく、アンモニウム化合物であることがより好ましい。
【0018】
上記アミン化合物(好ましくは脂肪族アミン化合物)は、無置換アミノ基(-NH)、第一級アミノ基(-NHR、Rは置換基)、及び第二級アミノ基(-NR、R及びRは置換基)の少なくともいずれかの基を有している。上記アミン化合物(好ましくは脂肪族アミン化合物)は第一級アミノ基と第二級アミノ基の少なくとも1種を有することが好ましい。
上記アミン化合物において、上記アミノ基はカルボニル基と結合してカルバモイル基を形成していてもよい。また、上記アミノ基を構成する窒素原子はイミド基(イソシアヌレート構造を含む)を形成していてもよい。また、上記アミノ基を構成する窒素原子は環構成原子として存在していることも好ましい。
【0019】
上記アンモニウム化合物(好ましくは脂肪族アンモニウム化合物)は、無置換アンモニオ基(-NH )、第一級アンモニオ基(-NH、Rは置換基)、第二級アンモニオ基(-NHR2+、R及びRは置換基)、第三級アンモニオ基(-NR3+、R、R及びRは置換基)の少なくともいずれかの基を有している。上記アンモニウム化合物(好ましくは脂肪族アンモニウム化合物)は第三級アンモニオ基を有することが好ましい。上記アンモニウム化合物はカチオンの形態でもよく、また、対イオンを有する塩の形態であってもよい。
【0020】
上記含窒素分散剤は、1分子中に上記のアミノ基とアンモニオ基の両基を有していてもよい。すなわち、「アミン化合物とアンモニウム化合物の少なくとも1種」とは、含窒素分散剤が1分子中にアミノ基とアンモニオ基の両基を有している形態を包含する意味である。
【0021】
上記含窒素分散剤は通常は高分子化合物であり、分岐構造を有する高分子化合物であることが好ましい。このような高分子化合物として、例えば、グラフトポリマー、スターポリマー、ハイパーブランチポリマー、デンドリマー等の形態を挙げることができる。
また、上記含窒素分散剤は、ポリエーテル構造、ポリエステル構造、及びポリウレタン構造の少なくとも1種の構造を有することが好ましい。
上記含窒素分散剤が高分子化合物の場合、その分子量は5000~50000が好ましい。含窒素分散剤がポリマーの場合、上記分子量は重量平均分子量を意味する。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってポリスチレン換算の分子量として計測することができる。このとき、GPC装置HLC-8220(東ソー(株)社製)を用い、カラムはG3000HXL+G2000HXLを用い、23℃で流量は1mL/minで、RIで検出することとする。溶離液としては、THF(テトラヒドロフラン)を用いることとする。
【0022】
本発明の組成物に用い得る含窒素分散剤は、常法により合成することができ、また商業的に入手することができる。商業的に入手可能な含窒素分散剤として、例えば、DISPERBYK-2013、DISPERBYK-2155、DISPERBYK-168(いずれも商品名、ビックケミー社製)等を挙げることができる。
【0023】
本発明の組成物中、上記含窒素分散剤の含有量は、0.1~20質量%が好ましく、0.2~15質量%がより好ましく、0.5~10質量%がさらに好ましく、0.6~8質量%が特に好ましい。
【0024】
<熱硬化性樹脂>
本発明の組成物は熱硬化性樹脂を含有する。この熱硬化性樹脂はバインダーとして機能する。熱硬化性樹脂を用いることにより、本発明の組成物により処理した被コーティング部材の摩耗耐久性を、高度に高めることができる。
熱硬化性樹脂に特に制限はない。例えば、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂(組成物中でポリアミック酸として存在するものを含む)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂等を挙げることができる。なかでも熱硬化性樹脂はポリアミドイミド樹脂を含むことが好ましく、熱硬化性樹脂がポリアミドイミド樹脂であることがより好ましい。
【0025】
上記ポリアミドイミド樹脂は、ポリアミドイミドの構成成分として下記式(1)で表される構造単位を含むことが好ましい。
【0026】
【化2】
【0027】
式中、Arは芳香族環を有する2価の基を示す。
Arは、フェニレン、ジフェニルメタン構造(-フェニレン-CH-フェニレン-)、ジフェニルプロパン構造(-フェニレン-C-フェニレン-)、ジフェニルエーテル構造(-フェニレン-O-フェニレン-)、ジフェニルスルホン構造(-フェニレン-SO-フェニレン-)、ジフェニルアミン構造(-フェニレン-NH-フェニレン-)、ビフェニル構造(-フェニレン-フェニレン-)、又はナフタレン構造であることが好ましく、フェニレン、ジフェニルメタン構造、ジフェニルプロパン構造、ジフェニルエーテル構造、又はジフェニルアミン構造であることがより好ましい。
【0028】
上記ポリアミドイミド中の、上記式(1)で表される構造単位の含有量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。上記ポリアミドイミドは上記式(1)で表される構造単位からなる形態であることも好ましい。
【0029】
上記ポリアミドイミドは、重量平均分子量が10000~100000であることが好ましい。
【0030】
本発明の組成物中、上記熱硬化性樹脂の含有量は、0.5~20質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましく、2~10質量%がさらに好ましく、3~8質量%が特に好ましい。
【0031】
本発明の組成物は、上記固体潤滑剤の含有量100質量部に対し、上記含窒素分散剤の含有量が0.5~50質量部であることが好ましく、1~30質量部がより好ましく、1~20質量部がさらに好ましく、2~15質量部がさらに好ましい。
また、上記固体潤滑剤の含有量100質量部に対し、上記熱硬化性樹脂の含有量が1~50質量部であることが好ましく、5~40質量部がより好ましく、10~30質量部がさらに好ましい。
また、本発明の組成物は、上記熱硬化性樹脂の含有量100質量部に対し、上記含窒素分散剤の含有量が10~100質量部であることが好ましく、12~95質量部がより好ましく、15~80質量部がさらに好ましく、20~70質量部がさらに好ましい。
【0032】
<溶媒>
本発明の組成物は、固体潤滑剤の分散媒体として溶媒を含有する。この溶媒は分散媒体として機能すれば特に制限されない。溶媒として好ましくは有機溶媒が用いられる。
本発明の組成物に用い得る溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、キシレン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等を挙げることができる。すなわち本発明の組成物に用いる溶媒は、これらの溶媒の1種、又は2種以上を組合せて含むことが好ましい。
【0033】
本発明の組成物中、上記溶媒の含有量は、固体潤滑剤の分散媒として機能でき、また熱硬化性樹脂とともに組成物を形成できれば特に制限されない。例えは、組成物中の溶媒含有量を10~90質量%とすることができ、20~80質量%とすることが好ましく、40~70質量%がさらに好ましい。
【0034】
本発明の組成物は上述した成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で常用の各種添加剤を、適宜に含有させることができる。このような添加剤としては、例えば、可塑剤、着色剤、消泡剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0035】
<内視鏡用コーティング組成物の調製>
本発明の組成物は、上記各成分を、ホモジナイザー等を用いて均一に混合して得ることができる。
なお、本発明において「組成物」とは、各成分が組成物中に均一に存在している形態の他、本発明の効果を損なわない範囲で成分の一部が偏在して存在する形態を包含する意味である。
【0036】
本発明の組成物は、内視鏡に用いる各種部材(内視鏡用部材)に潤滑性を付与するためのコーティング剤として好適に用いることができる。例えば、内視鏡挿入部の湾曲部を所望の方向に曲げるために内視鏡挿入部に挿通されるワイヤーの表面に適用することができる。これにより、ワイヤーとワイヤーガイドとの間の摩擦を効果的に軽減することができ、ワイヤーの摩耗耐久性を高めることができる。また、内視鏡用可撓管の樹脂被覆層表面に適用することもできる。
【0037】
[内視鏡用潤滑性部材]
本発明の内視鏡用潤滑性部材(以下、「本発明の潤滑性部材」とも称す。)は、本発明の組成物によりコーティング処理が施された内視鏡用部材である。本発明の組成物によるコーティング処理の方法に特に制限はない。例えば、被コーティング部材の表面に本発明の組成物を塗布し、次いで乾燥して溶媒を除去することにより、被コーティング部材表面を固体潤滑剤によりコーティングすることができる。上記塗布は、スプレー法、浸漬法、ハケ又はローラーによる塗布法、バー塗布法等により行うことができる。
本発明の潤滑性部材は、内視鏡用潤滑性ワイヤーであることが好ましい。この潤滑性ワイヤーは、上述のように、内視鏡挿入部に挿通されるワイヤーの表面に本発明の組成物を適用することにより得ることができる。
【0038】
[内視鏡用可撓管及び内視鏡]
本発明の内視鏡の好ましい形態について、電子内視鏡を例に説明する。電子内視鏡は、内視鏡用可撓管が組み込まれ(以下、内視鏡用可撓管を単に「可撓管」と称することがある)、この可撓管を体腔内に挿入して体腔内を観察等する医療機器として用いられる。図1に示した例において、電子内視鏡2は、体腔内に挿入される挿入部3と、挿入部3の基端部分に連設された本体操作部5と、プロセッサ装置や光源装置に接続されるユニバーサルコード6とを備えている。挿入部3は、本体操作部5に連設される可撓管3aと、そこに連設される湾曲部3b(アングル部3b)と、その先端に連設され、体腔内撮影用の撮像装置(図示せず)が内蔵された先端部3cとから構成される。挿入部3の大半の長さを占める可撓管3aは、そのほぼ全長にわたって可撓性を有し、特に体腔等の内部に挿入される部位はより可撓性に富む構造となっている。湾曲部3bは上述した通り、挿入部3内に挿通されワイヤーガイドにより湾曲部3b内壁に固定されたワイヤーを引っ張ることにより、所望の方向に湾曲させることができる構成となっている。
【0039】
本発明の内視鏡用可撓管は、本発明の潤滑性部材を備える。本発明の内視鏡用可撓管が備える潤滑性部材としては、上述のようにワイヤー、樹脂被覆層等を挙げることができる。
【実施例
【0040】
以下に、本発明について実施例を通じてさらに詳細に説明するが、本発明がこれらにより限定して解釈されるものではない。
【0041】
[調製例1-1] 内視鏡用コーティング組成物の調製-1
ホモジナイザー容器中に、100.0gのポリアミドイミド樹脂(日立化成製、商品名:HPC-6000-26、熱硬化性樹脂、重量平均分子量40000、固形分濃度:26質量%、このポリアミドイミドは式(1)の構造単位(Arがジフェニルメタン構造)からなる。)と、160.0gのNMP(富士フイルム和光純薬社製)と、75.0gのp-キシレン(富士フイルム和光純薬社製)と、15.0gの含窒素分散剤(ビックケミー社製、商品名:DISPERBYK-2013。脂肪族基に結合した、第三級アンモニオ基及びイミド基を有し、また分岐鎖としてポリエーテル構造を有する分岐状ポリマー。重量平均分子量:約10000~約20000の間)を入れ、1000rpmで5分間撹拌することにより混合した。
続いて150.0gの二硫化モリブデン(ダイゾー社製、商品名:Aパウダー、粒子径0.63μm)を添加し、3000rpmで30分間撹拌することにより混合し、実施例1のコーティング組成物を得た。
【0042】
[調製例1-2] 内視鏡用潤滑性部材の調製-1
ステンレス(SUS)ワイヤー(φ0.5mm)の表面全体に、実施例1のコーティング組成物をスプレー塗布した。次いで230℃で60分間乾燥し、実施例1の内視鏡用潤滑性ワイヤーを作製した。この内視鏡用潤滑性ワイヤーにおいて、コーティング層の膜厚は23μmであった。この膜厚は、マイクロメーターを用いて不作為に5カ所の膜厚を測定し、5つの測定値の平均値である。
【0043】
[調製例2-1] 内視鏡用コーティング組成物の調製-2
ホモジナイザー容器中に、100.0gのポリアミドイミド樹脂(日立化成製、商品名:HPC-6000-26)と、160.0gのNMP(富士フイルム和光純薬社製)と、75.0gのp-キシレン(富士フイルム和光純薬社製)と、15.0gの分散剤(ビックケミー社製、商品名:DISPERBYK-2013)を入れ、1000rpmで5分間撹拌することにより混合した。
続いて100.0gの二硫化モリブデン(ダイゾー社製、商品名:M-5パウダー、粒子径0.45μm)と、50.0gのPTFE粒子(喜多村社製、商品名:KTL-2N、粒子径3.0μm)を添加し、3000rpmで30分間撹拌することにより混合し、実施例2のコーティング組成物を得た。
【0044】
[調製例2-2] 内視鏡用潤滑性部材の調製-2
ステンレス(SUS)ワイヤー(φ0.5mm)の表面全体に、実施例2のコーティング組成物をスプレー塗布した。次いで230℃で60分間乾燥し、実施例2の内視鏡用潤滑性ワイヤーを作製した。この内視鏡用潤滑性ワイヤーにおいて、コーティング層の膜厚は25μmであった。
【0045】
[調製例3-1] 内視鏡用コーティング組成物の調製-3
調製例2-1において、100.0gの二硫化モリブデン(ダイゾー社製、商品名:M-5パウダー)に代えて、100.0gの二硫化モリブデン(ダイゾー社製、商品名:Aパウダー)を用いたこと以外は、実施例2のコーティング組成物と同様にして実施例3のコーティング組成物を得た。
【0046】
[調製例3-2] 内視鏡用潤滑性部材の調製-3
ステンレス(SUS)ワイヤー(φ0.5mm)の表面全体に、実施例3のコーティング組成物をスプレー塗布した。次いで230℃で60分間乾燥し、実施例3の内視鏡用潤滑性ワイヤーを作製した。この内視鏡用潤滑性ワイヤーにおいて、コーティング層の膜厚は20μmであった。
【0047】
[調製例4-1] 内視鏡用コーティング組成物の調製-4
調製例2-1において、100.0gの二硫化モリブデン(ダイゾー社製、商品名:M-5パウダー)と50.0gのPTFE粒子(喜多村社製、商品名:KTL-2N)との組合せに代えて、125.0gの二硫化モリブデン(ダイゾー社製、商品名:Aパウダー)と25.0gのPTFE粒子(喜多村社製、KTL-2N)とを組み合わせて用いたこと以外は、実施例2のコーティング組成物と同様にして実施例4のコーティング組成物を得た。
【0048】
[調製例4-2] 内視鏡用潤滑性部材の調製-4
ステンレス(SUS)ワイヤー(φ0.5mm)の表面全体に、実施例4のコーティング組成物をスプレー塗布した。次いで230℃で60分間乾燥し、実施例4の内視鏡用潤滑性ワイヤーを作製した。この内視鏡用潤滑性ワイヤーにおいて、コーティング層の膜厚は24μmであった。
【0049】
[調製例5-1] 内視鏡用コーティング組成物の調製-5
調製例2-1において、100.0gの二硫化モリブデン(ダイゾー社製、商品名:M-5パウダー)と50.0gのPTFE粒子(喜多村社製、商品名:KTL-2N)との組合せに代えて、85.0gの二硫化モリブデン(ダイゾー社製、商品名:Aパウダー)と35.0gのPTFE粒子(喜多村社製、商品名:KTL-2N)とを組み合わせて用い、また、ポリアミドイミド樹脂(日立化成製、商品名:HPC-6000-26)の使用量100.0gを130gに変更したこと以外は、実施例2のコーティング組成物と同様にして実施例5のコーティング組成物を得た。
【0050】
[調製例5-2] 内視鏡用潤滑性部材の調製-5
ステンレス(SUS)ワイヤー(φ0.5mm)の表面全体に、実施例5のコーティング組成物をスプレー塗布した。次いで230℃で60分間乾燥し、実施例5の内視鏡用潤滑性ワイヤーを作製した。この内視鏡用潤滑性ワイヤーにおいて、コーティング層の膜厚は24μmであった。
【0051】
[調製例6-1] 内視鏡用コーティング組成物の調製-6
調製例2-1において、100.0gの二硫化モリブデン(ダイゾー社製、商品名:M-5パウダー)に代えて、100.0gの二硫化モリブデン(ダイゾー社製、商品名:Cパウダー、粒子径1.2μm)を用いたこと以外は、実施例2のコーティング組成物と同様にして実施例6のコーティング組成物を得た。
【0052】
[調製例6-2] 内視鏡用潤滑性部材の調製-6
ステンレス(SUS)ワイヤー(φ0.5mm)の表面全体に、実施例6のコーティング組成物をスプレー塗布した。次いで230℃で60分間乾燥し、実施例6の内視鏡用潤滑性ワイヤーを作製した。この内視鏡用潤滑性ワイヤーにおいて、コーティング層の膜厚は30μmであった。
【0053】
[調製例7-1] 内視鏡用コーティング組成物の調製-7
調製例2-1において、100.0gの二硫化モリブデン(ダイゾー社製、商品名:M-5パウダー)に代えて、100.0gの二硫化モリブデン(ダイゾー社製、商品名:Tパウダー、粒子径3.5μm)を用いたこと以外は、実施例2のコーティング組成物と同様にして実施例7のコーティング組成物を得た。
【0054】
[調製例7-2] 内視鏡用潤滑性部材の調製-7
ステンレス(SUS)ワイヤー(φ0.5mm)の表面全体に、実施例7のコーティング組成物をスプレー塗布した。次いで230℃で60分間乾燥し、実施例7の内視鏡用潤滑性ワイヤーを作製した。この内視鏡用潤滑性ワイヤーにおいて、コーティング層の膜厚は35μmであった。
【0055】
[調製例8-1] 内視鏡用コーティング組成物の調製-8
調製例7-1において、ポリアミドイミド樹脂(日立化成製、商品名:HPC-6000-26)の使用量100.0gを92.5gに変更し、また、分散剤(ビックケミー社製、商品名:DISPERBYK-2013)の使用量15.0gを22.5gに変更したこと以外は、実施例7のコーティング組成物と同様にして実施例8のコーティング組成物を得た。
【0056】
[調製例8-2] 内視鏡用潤滑性部材の調製-8
ステンレス(SUS)ワイヤー(φ0.5mm)の表面全体に、実施例8のコーティング組成物をスプレー塗布した。次いで230℃で60分間乾燥し、実施例8の内視鏡用潤滑性ワイヤーを作製した。この内視鏡用潤滑性ワイヤーにおいて、コーティング層の膜厚は30μmであった。
【0057】
[調製例9-1] 内視鏡用コーティング組成物の調製-9
調製例3-1において、50.0gのPTFE粒子(喜多村社製、商品名:KTL-2N)に代えて、50.0gのPTFE粒子(喜多村社製、商品名:KTL-10S、粒子径10μm)を用いたこと以外は、実施例3のコーティング組成物と同様にして実施例9のコーティング組成物を得た。
【0058】
[調製例9-2] 内視鏡用潤滑性部材の調製-9
ステンレス(SUS)ワイヤー(φ0.5mm)の表面全体に、実施例9のコーティング組成物をスプレー塗布した。次いで230℃で60分間乾燥し、実施例9の内視鏡用潤滑性ワイヤーを作製した。この内視鏡用潤滑性ワイヤーにおいて、コーティング層の膜厚は32μmであった。
【0059】
[調製例10-1] 内視鏡用コーティング組成物の調製-10
調製例3-1において、50.0gのPTFE粒子(喜多村社製、商品名:KTL-2N)に代えて、50.0gのPTFE粒子(喜多村社製、商品名:KTL-450、粒子径22μm)を用いたこと以外は、実施例3のコーティング組成物と同様にして実施例10のコーティング組成物を得た。
【0060】
[調製例10-2] 内視鏡用潤滑性部材の調製-10
ステンレス(SUS)ワイヤー(φ0.5mm)の表面全体に、実施例10のコーティング組成物をスプレー塗布した。次いで230℃で60分間乾燥し、実施例10の内視鏡用潤滑性ワイヤーを作製した。この内視鏡用潤滑性ワイヤーにおいて、コーティング層の膜厚は37μmであった。
【0061】
[調製例11-1] 内視鏡用コーティング組成物の調製-11
調製例3-1において、15.0gの分散剤(ビックケミー社製、商品名:DISPERBYK-2013)に代えて、15.0gの含窒素分散剤(ビックケミー社製、商品名:DISPERBYK-2155。分岐鎖としてポリウレタン構造を有し、このポリウレタン構造の末端にアミノ基を有する球状ポリマー。重量平均分子量:約20000)を用いたこと以外は、実施例3のコーティング組成物と同様にして実施例11のコーティング組成物を得た。
【0062】
[調製例11-2] 内視鏡用潤滑性部材の調製-11
ステンレス(SUS)ワイヤー(φ0.5mm)の表面全体に、実施例11のコーティング組成物をスプレー塗布した。次いで230℃で60分間乾燥し、実施例11の内視鏡用潤滑性ワイヤーを作製した。この内視鏡用潤滑性ワイヤーにおいて、コーティング層の膜厚は28μmであった。
【0063】
[調製例12-1] 内視鏡用コーティング組成物の調製-12
調製例3-1において、15.0gの分散剤(ビックケミー社製、商品名:DISPERBYK-2013)に代えて、15.0gの含窒素分散剤(ビックケミー社製、商品名:DISPERBYK-168。イソシアヌレート構造、カルバモイル基(-NH-CO-)及びイミダゾリル基を有し、また分岐鎖としてポリエーテル構造を有する分岐状ポリマー。重量平均分子量:約10000~約20000の間。固形分30質量%)を用いたこと以外は、実施例3のコーティング組成物と同様にして実施例12のコーティング組成物を得た。
【0064】
[調製例12-2] 内視鏡用潤滑性部材の調製-12
ステンレス(SUS)ワイヤー(φ0.5mm)の表面全体に、実施例12のコーティング組成物をスプレー塗布した。次いで230℃で60分間乾燥し、実施例12の内視鏡用潤滑性ワイヤーを作製した。この内視鏡用潤滑性ワイヤーにおいて、コーティング層の膜厚は23μmであった。
【0065】
[調製例13-1] 内視鏡用コーティング組成物の調製-13
調製例3-1において、100.0gのポリアミドイミド樹脂(日立化成製、商品名:HPC-6000-26)に代えて、100.0gのポリイミド樹脂(ユミチカ社製、商品名:UイミドAR、ポリアミック酸、固形分濃度:18質量%、熱反応により熱硬化性ポリイミドになる)を用いたこと以外は、実施例3のコーティング組成物と同様にして実施例13のコーティング組成物を得た。
【0066】
[調製例13-2] 内視鏡用潤滑性部材の調製-13
ステンレス(SUS)ワイヤー(φ0.5mm)の表面全体に、実施例13のコーティング組成物をスプレー塗布した。次いで230℃で60分間乾燥し、実施例13の内視鏡用潤滑性ワイヤーを作製した。この内視鏡用潤滑性ワイヤーにおいて、コーティング層の膜厚は20μmであった。
【0067】
[調製例14-1] 内視鏡用コーティング組成物の調製-14
ホモジナイザー容器中に、30.1gのエポキシ樹脂Three Bond 2237J(スリーボンド製、1液型の熱硬化性エポキシ樹脂)と、304.9gのp-キシレン(富士フイルム和光純薬製)と、15.0gの分散剤(ビックケミー製、DISPERBYK-2013)とを入れ1000rpmで5分撹拌することにより混合した。
続いて100.0gの二硫化モリブデン(ダイゾー製、商品名:Aパウダー)と、50.0gのPTFE粒子(喜多村社製、商品名:KTL-2N)とを添加し、3000rpmで30分撹拌することにより混合し、実施例14のコーティング組成物を得た。
【0068】
[調製例14-2] 内視鏡用潤滑性部材の調製-14
ステンレス(SUS)ワイヤー(φ0.5mm)の表面全体に、実施例14のコーティング組成物をスプレー塗布した。次いで140℃で60分間乾燥し、実施例14の内視鏡用潤滑性ワイヤーを作製した。この内視鏡用潤滑性ワイヤーにおいて、コーティング層の膜厚は20μmであった。
【0069】
[調製例15-1] 内視鏡用コーティング組成物の調製-15
調製例2-1において、100.0gの二硫化モリブデン(ダイゾー社製、商品名:M-5パウダー)に代えて、100.0gのグラファイト粒子(富士黒鉛工業社製、商品名:RCG1Q、粒子径1.0μm)を用いたこと以外は、実施例2のコーティング組成物と同様にして実施例15のコーティング組成物を得た。
【0070】
[調製例15-2] 内視鏡用潤滑性部材の調製-15
ステンレス(SUS)ワイヤー(φ0.5mm)の表面全体に、実施例15のコーティング組成物をスプレー塗布した。次いで230℃で60分間乾燥し、実施例15の内視鏡用潤滑性ワイヤーを作製した。この内視鏡用潤滑性ワイヤーにおいて、コーティング層の膜厚は22μmであった。
【0071】
[調製例16-1] 内視鏡用コーティング組成物の調製-16
調製例3-1において、50.0gのPTFE粒子(喜多村社製、商品名:KTL-2N)に代えて、50.0gのメラミンイソシアヌレート粒子(日産化学工業社製、商品名:MC-6000、粒子径2.0μm)を用いたこと以外は、実施例3のコーティング組成物と同様にして実施例16のコーティング組成物を得た。
【0072】
[調製例16-2] 内視鏡用潤滑性部材の調製-16
ステンレス(SUS)ワイヤー(φ0.5mm)の表面全体に、実施例16のコーティング組成物をスプレー塗布した。次いで230℃で60分間乾燥し、実施例16の内視鏡用潤滑性ワイヤーを作製した。この内視鏡用潤滑性ワイヤーにおいて、コーティング層の膜厚は25μmであった。
【0073】
[比較調製例1-1] 内視鏡用コーティング組成物の調製-17
ホモジナイザー容器中に、115.0gのポリアミドイミド樹脂(日立化成製、商品名:HPC-6000-26)と、160.0gのNMP(富士フイルム和光純薬製)と、75.0gのp-キシレン(富士フイルム和光純薬製)とを入れ1000rpmで5分撹拌することにより混合した。
続いて150.0gの二硫化モリブデン(ダイゾー製、商品名:Aパウダー)を添加し、3000rpmで30分撹拌することにより混合し、比較例1のコーティング組成物を得た。
【0074】
[比較調製例1-2] 内視鏡用潤滑性部材の調製-17
ステンレス(SUS)ワイヤー(φ0.5mm)の表面全体に、比較例1のコーティング組成物をスプレー塗布した。次いで230℃で60分間乾燥し、比較例1の内視鏡用潤滑性ワイヤーを作製した。この内視鏡用潤滑性ワイヤーにおいて、コーティング層の膜厚は25μmであった。
【0075】
[比較調製例2-1] 内視鏡用コーティング組成物の調製-18
比較調製例1-1において、115.0gのポリアミドイミド樹脂(日立化成製、商品名:HPC-6000-26)に代えて、30.1gの非晶性ポリエステル樹脂(東洋紡社製、商品名:バイロン650、熱可塑性樹脂)を用いて、またNMPの配合量を244.9gとしたこと以外は、比較例1のコーティング組成物と同様にして比較例2のコーティング組成物を得た。
【0076】
[比較調製例2-2] 内視鏡用潤滑性部材の調製-18
ステンレス(SUS)ワイヤー(φ0.5mm)の表面全体に、比較例2のコーティング組成物をスプレー塗布した。次いで230℃で60分間乾燥し、比較例2の内視鏡用潤滑性ワイヤーを作製した。この内視鏡用潤滑性ワイヤーにおいて、コーティング層の膜厚は23μmであった。
【0077】
[比較調製例3-1] 内視鏡用コーティング組成物の調製-19
調製例1-1において、100.0gのポリアミドイミド樹脂(日立化成製、商品名:HPC-6000-26)に代えて、30.1gの非晶性ポリエステル樹脂(東洋紡社製、商品名:バイロン650、熱可塑性樹脂)を用いて、またNMPの配合量を229.9gとしたこと以外は、実施例1のコーティング組成物と同様にして比較例3のコーティング組成物を得た。
【0078】
[比較調製例3-2] 内視鏡用潤滑性部材の調製-19
ステンレス(SUS)ワイヤー(φ0.5mm)の表面全体に、比較例3のコーティング組成物をスプレー塗布した。次いで230℃で60分間乾燥し、比較例3の内視鏡用潤滑性ワイヤーを作製した。この内視鏡用潤滑性ワイヤーにおいて、コーティング層の膜厚は21μmであった。
【0079】
[比較調製例4-1] 内視鏡用コーティング組成物の調製-20
調製例3-1において、100.0gのポリアミドイミド樹脂(日立化成製、商品名:HPC-6000-26)に代えて、30.1gの非晶性ポリエステル樹脂(東洋紡社製、商品名:バイロン650、熱可塑性樹脂)を用いて、またNMPの配合量を229.9gとしたこと以外は、実施例3のコーティング組成物と同様にして比較例4のコーティング組成物を得た。
【0080】
[比較調製例4-2] 内視鏡用潤滑性部材の調製-20
ステンレス(SUS)ワイヤー(φ0.5mm)の表面全体に、比較例4のコーティング組成物をスプレー塗布した。次いで230℃で60分間乾燥し、比較例4の内視鏡用潤滑性ワイヤーを作製した。この内視鏡用潤滑性ワイヤーにおいて、コーティング層の膜厚は22μmであった。
【0081】
[比較調製例5] 内視鏡用潤滑性部材の調製-21
ステンレス(SUS)ワイヤー(φ0.5mm)の表面全体に、非結晶性エステルポリウレタン(東洋紡社製、商品名:UR-1400、熱可塑性樹脂、固形分30質量%)をスプレー塗布し、100℃で60分間乾燥した。
続いてジメチルホルムアミドを塗布することにより表面を粘着質にして、二硫化モリブデン(ダイゾー製、商品名:Aパウダー)をこの粘着質表面に散布し、180℃で20分間乾燥した。付着していない二硫化モリブデンを除去し、比較例5の内視鏡用潤滑性ワイヤーを作製した。この内視鏡用潤滑性ワイヤーにおいて、コーティング層の膜厚は15μmであった。
【0082】
[比較調製例6-1] 内視鏡用コーティング組成物の調製-22
調製例3-1において、15.0gの分散剤(ビックケミー社製、商品名:DISPERBYK-2013)に代えて、15.0gの分散剤(ビックケミー社製、商品名:DISPERBYK-111、窒素原子を有さずリン酸基を有する分散剤)を用いたこと以外は、実施例3のコーティング組成物と同様にして比較例6のコーティング組成物を得た。
【0083】
[比較調製例6-2] 内視鏡用潤滑性部材の調製-22
ステンレス(SUS)ワイヤー(φ0.5mm)の表面全体に、比較例6のコーティング組成物をスプレー塗布した。次いで230℃で60分間乾燥し、比較例6の内視鏡用潤滑性ワイヤーを作製した。この内視鏡用潤滑性ワイヤーにおいて、コーティング層の膜厚は23μmであった。
【0084】
[比較調製例7-1] 内視鏡用コーティング組成物の調製-23
調製例3-1において、15.0gの分散剤(ビックケミー社製、商品名:DISPERBYK-2013)に代えて、15.0gの分散剤(花王社製、商品名:ホモゲノールL-18、窒素原子を有しないポリカルボン酸系分散剤、固形分40質量%)を用いたこと以外は、実施例3のコーティング組成物と同様にして比較例7のコーティング組成物を得た。
【0085】
[比較調製例7-2] 内視鏡用潤滑性部材の調製-23
ステンレス(SUS)ワイヤー(φ0.5mm)の表面全体に、比較例7のコーティング組成物をスプレー塗布した。次いで230℃で60分間乾燥し、比較例7の内視鏡用潤滑性ワイヤーを作製した。この内視鏡用潤滑性ワイヤーにおいて、コーティング層の膜厚は23μmであった。
【0086】
上記各調製例において固形分濃度を示していない原料は固形分濃度100質量%である。
【0087】
[試験例1] 分散安定性試験
上記各調製例及び比較調製例で調製したコーティング組成物の調製直後の粘度(I)を下記測定方法により測定した。次いで、各コーティング組成物を5℃で30日間静置した。その後、コーティング組成物を100rpmで30分間撹拌し、再度、粘度(II)を測定した。
【0088】
<粘度の測定方法>
HAAKE社製レオストレスRS6000を用いて、27℃、10Hzにおける動的な複素粘度の値を測定し、コーティング組成物の粘度とした。粘度の単位はPa・sである。
【0089】
得られた粘度を下記式に当てはめ粘度変化率(%)を算出し、この粘土変化率を下記評価基準に当てはめ分散安定性を評価した。

粘度変化率(%)=100×〔粘度(II)-粘度(I)〕/粘度(I)
【0090】
<粘度評価基準>
A:粘度変化率が10%未満、かつ、容器底面への固形物の堆積無し
B:粘度変化率が10%以上100%未満、かつ、容器底面への固形物の堆積無し
C:粘度変化率が100%以上、かつ、容器底面への固形物の堆積無し
D:粘度変化率が100%以上、かつ、容器底面への固形物の堆積有り
「容器底面への固形物の堆積有り」とは、5℃で30日間静置した後、容器からコーティング組成物を取り出した際に、容器底面に粘度1000Pa・s以上の粘性液体又は固体が残留することを意味する。
結果を下表に示す。
【0091】
[試験例2] 摩耗耐久性試験
図2に示す試験器具を用いて摩耗耐久性試験を実施した。図2に示すように、上記各調製例及び比較調製例で得た内視鏡用潤滑性ワイヤー(12)を、φ5mmのSUS棒(14)と滑車(13、15)に、角度(α)が100度になるように設置した。錘(16)により10Nの荷重をかけ、その状態を試験当初の状態とした。
次いでストローク(A)を10mm、速度100mm/minで錘を下側に引っ張り、その後、元の状態へと戻した。この操作を1往復として、この1往復の間にフォースゲージ(11)により測定される最大応力を、この1往復の間の荷重の測定値として記録した。
上記のストローク及び速度で1000往復させて、初期荷重(1往復~50往復の間の、フォースゲージの50の測定値の平均値から、試験当初の状態のフォースゲージの値を差し引いたもの)と、最終荷重(951往復~1000往復の間の、フォースゲージの50の測定値の平均値から、試験当初の状態のフォースゲージの値を差し引いたもの)を決定し、下記評価基準にあてはめ評価した。
【0092】
<初期荷重の評価基準>
A:0N以上1N未満
B:1N以上3N未満
C:3N以上
【0093】
<最終荷重の評価基準>
A:0N以上2N未満
B:2N以上5N未満
C:5N以上10N未満
結果を下表に示す。
【0094】
【表1-1】
【0095】
【表1-2】
【0096】
上記表に示されるように、分散剤を配合しない場合には、組成物は分散安定性に大きく劣り、またこの組成物によりコーティングしたワイヤーは摩耗耐久性に劣る結果となった(比較例1及び2)。また、含窒素分散剤を配合した場合でも、バインダーとして熱可塑性樹脂を用いた場合には、この組成物によりコーティングしたワイヤーは最終荷重が大きくなり摩耗耐久性に劣ることがわかる(比較例3及び4)。また、分散剤として、一般的な吸着性基として知られるリン酸基又はカルボキシ基を導入したものを用いた場合、組成物は分散安定性に劣り、またこの組成物によりコーティングしたワイヤーは摩耗耐久性にも劣る結果となった(比較例6及び7)。
これに対し、本発明で規定する各成分を組合せて含有するコーティング組成物は分散安定性に優れ、この組成物によりコーティングしたワイヤーは優れた摩耗耐久性を示した(実施例1~16)。
【符号の説明】
【0097】
2 電子内視鏡(内視鏡)
3 挿入部
3a 可撓管
3b 湾曲部(アングル部)
3c 先端部
5 本体操作部
6 ユニバーサルコード
11 フォースゲージ
12 潤滑性ワイヤー
13、15 滑車
16 錘
A ストローク(10mm)
α 角度(100度)
図1
図2