(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】感圧センサの製造方法、及び感圧センサの製造装置
(51)【国際特許分類】
G01L 1/20 20060101AFI20220120BHJP
H01H 11/00 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
G01L1/20 A
H01H11/00 Z
H01H11/00 F
(21)【出願番号】P 2017241622
(22)【出願日】2017-12-18
【審査請求日】2020-07-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉田 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】阿部 正浩
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/194030(WO,A1)
【文献】特開2017-062153(JP,A)
【文献】特開2017-052272(JP,A)
【文献】特開平06-344423(JP,A)
【文献】特開平09-218330(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0169513(US,A1)
【文献】特開平09-254297(JP,A)
【文献】特開平07-024898(JP,A)
【文献】特表2002-527266(JP,A)
【文献】特表2011-514650(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0328815(US,A1)
【文献】米国特許第04484586(US,A)
【文献】国際公開第97/01429(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00-1/26,5/00-5/28,25/00,
H01H 11/00,13/00,
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の口金と該口金内に配置された心金とを備え、前記口金と前記心金とに挟まれた円環状の吐出口を有すると共に、前記心金の外周面に螺旋状の複数の溝が形成されている押出機を用い、
弾性絶縁体材料を押し出しつつ、前記心金の内部から2つ以上の前記溝に弾性導電体材料を供給することで、前記弾性絶縁体材料と前記弾性導電体材料とを同時に押出成形し、
長手方向に沿って中空部を有し弾性絶縁体からなる筒状体と、前記筒状体の前記中空部の内周面に沿って螺旋状に設けられ、前記内周面から内方に突出する弾性導電体からなる2つ以上の導電リブと、を有する感圧センサを形成する、
感圧センサの製造方法。
【請求項2】
筒状の口金と該口金内に配置された心金とを備え、前記口金と前記心金とに挟まれた円環状の吐出口を有し、前記吐出口から弾性絶縁体材料を吐出することで、長手方向に沿って中空部を有し弾性絶縁体からなる筒状体を押出成形可能な感圧センサの製造装置であって、
前記心金は、その外周面に形成された螺旋状の複数の溝と、前記心金の内部から2つ以上の前記溝に弾性導電体材料を供給するための弾性導電体材料用流路と、を有する、
感圧センサの製造装置。
【請求項3】
前記複数の溝のうち少なくとも1つには、前記弾性導電体材料用流路が連通されていない、
請求項2に記載の感圧センサの製造装置。
【請求項4】
前記口金の内周面に、螺旋状の外側溝が形成されている、
請求項2または3に記載の感圧センサの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧センサの製造方法、感圧センサの製造装置、及び感圧センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部からの圧力によって電極線同士が接触することによりスイッチ機能を果たす感圧センサが自動車のスライドドア等に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
感圧センサでは、中空部を有する筒状の弾性絶縁体と、この弾性絶縁体の内周面に互いに離間して螺旋状に配置された複数の電極線とを備えている。電極線の螺旋ピッチを適宜調整することにより、どの方向から押圧力を加えても電極線同士を接触させることが可能となり、全方向検知が可能となる。
【0004】
従来の感圧センサの製造方法では、スペーサ(ダミー線)と複数の電極線とを撚り合わせ、その周囲に弾性絶縁体を被覆した後に、スペーサを引き抜いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の感圧センサの製造方法では、スペーサを製造する工程やスペーサを引き抜く工程が必須となっており、製造に手間がかかるという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、製造の容易な感圧センサの製造方法、感圧センサの製造装置、及び感圧センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、筒状の口金と該口金内に配置された心金とを備え、前記口金と前記心金とに挟まれた円環状の吐出口を有すると共に、前記心金の外周面に螺旋状の複数の溝が形成されている押出機を用い、弾性絶縁体材料を押し出しつつ、前記心金の内部から2つ以上の前記溝に弾性導電体材料を供給することで、前記弾性絶縁体材料と前記弾性導電体材料とを同時に押出成形し、長手方向に沿って中空部を有し弾性絶縁体からなる筒状体と、前記筒状体の前記中空部の内周面に沿って螺旋状に設けられ、前記内周面から内方に突出する弾性導電体からなる2つ以上の導電リブと、を有する感圧センサを形成する、感圧センサの製造方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、筒状の口金と該口金内に配置された心金とを備え、前記口金と前記心金とに挟まれた円環状の吐出口を有し、前記吐出口から弾性絶縁体材料を吐出することで、長手方向に沿って中空部を有し弾性絶縁体からなる筒状体を押出成形可能な感圧センサの製造装置であって、前記心金は、その外周面に形成された螺旋状の複数の溝と、前記心金の内部から2つ以上の前記溝に弾性導電体材料を供給するための弾性導電体材料用流路と、を有する、感圧センサの製造装置を提供する。
【0010】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、長手方向に沿って中空部を有し弾性絶縁体からなる筒状体と、前記筒状体の前記中空部の内周面に沿って螺旋状に設けられ、前記内周面から内方に突出する複数の螺旋リブと、を備え、前記螺旋リブは、弾性導電体からなる2つ以上の導電リブと、弾性絶縁体からなる1つ以上の絶縁リブと、を含む、感圧センサを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、製造の容易な感圧センサの製造方法、感圧センサの製造装置、及び感圧センサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る感圧センサの製造方法で製造する感圧センサを示す図であり、(a)は長手方向に垂直な断面を示す断面図、(b)は斜視図である。
【
図2】(a),(b)は、外部から押圧力が加えられた際の感圧センサの断面図である。
【
図3】感圧センサの製造装置を示す図であり、(a)は断面図、(b)はそのA-A線断面図である。
【
図4】心金の側面を示すと共に材料の流れ示した説明図である。
【
図5】(a),(b)は、本発明の一変形例に係る感圧センサの断面図である。
【
図6】(a),(b)は、本発明の一変形例に係る感圧センサの断面図である。
【
図7】(a)は、本発明の一変形例に係る感圧センサの製造装置の断面図、(b)は、(a)の感圧センサの製造装置で製造される本発明の一変形例に係る感圧センサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0014】
(感圧センサ1の説明)
図1は、本実施の形態に係る感圧センサの製造方法で製造する感圧センサを示す図であり、(a)は長手方向に垂直な断面を示す断面図、(b)は斜視図である。
【0015】
図1(a),(b)に示すように、感圧センサ1は、長手方向に沿って中空部2aを有する円筒状(外部から押圧力が加えられていない状態において円筒状)に形成された筒状体2と、筒状体2の中空部2aの内周面2bに沿って螺旋状に設けられ、内周面2bから内方(筒状体2の径方向における内方)に突出する複数の螺旋リブ3と、を備えている。
【0016】
筒状体2は、弾性絶縁体からなる。筒状体2に用いる弾性絶縁体としては、圧縮永久歪が小さく、柔軟性、耐寒性、耐水性、耐薬品性、耐候性などの優れたものを用いることが望ましい。具体的には、弾性絶縁体としては、例えばエチレン‐プロピレン‐ジエン共重合体を架橋したゴム系組成物や、架橋工程が不要なオレフィン系やスチレン系熱可塑性エラストマー組成物などを好適に用いることができる。筒状体2の外径は、例えば4mmである。
【0017】
本実施の形態では、螺旋リブ3は、弾性導電体からなる2つ以上の導電リブ31と、弾性絶縁体からなる1つ以上の絶縁リブ32と、を含んでいる。ここでは、導電リブ31を4つ、絶縁リブ32を8つ有する場合を説明するが、導電リブ31や絶縁リブ32の数はこれに限定されない。
【0018】
また、本実施の形態では、螺旋リブ3は、断面視で略半円形状となるように形成されている。詳細は後述するが、絶縁リブ32の断面形状を略半円形状とすることで、外部から押圧力が加えられた際に、絶縁リブ32が導電リブ31をガイドする役割を果たしやすくなり、導電リブ31同士が接触し易くなる。なお、螺旋リブ3の断面形状は略半円形状に限定されず、適宜変更可能である。螺旋リブ3の数及び形状は、後述する心金12の溝121(
図3,4参照)の数及び形状によって変えることができる。
【0019】
導電リブ31は、筒状体の長手方向に対して垂直な方向に対向して設けられるとよい。これは、外部から押圧力を加えられた際に導電リブ31同士を接触し易くするためである。ここでは、周方向に等間隔に12個の螺旋リブ3を設け、そのうち周方向に等間隔に配置された4つの螺旋リブ3を導電リブ31とし、他の螺旋リブ3を絶縁リブ32とした。この例では、周方向に隣り合う導電リブ31の間に、それぞれ2つの絶縁リブ32が配置される。また、導電リブ31は、筒状体2の周方向における90度回転対象の位置に配置されている。
【0020】
また、この感圧センサ1では、隣り合う螺旋リブ3の間(隣り合う導電リブ31と絶縁リブ32との間、及び隣り合う絶縁リブ32の間)には、隙間2cが形成されている。これにより、外部から加えられる押圧力が小さい場合であっても、感圧センサ1が変形し易くなり、感度向上に寄与する。
【0021】
絶縁リブ32に用いる弾性絶縁体は、筒状体2と同じものからなる。換言すれば、絶縁リブ32は、筒状体2に用いている弾性絶縁体の一部が、筒状体2の内周面2bから径方向内方に突出したものである。
【0022】
導電リブ31に用いる弾性導電体としては、弾性絶縁体と同様に、圧縮永久歪が小さく、柔軟性、耐寒性、耐水性、耐薬品性、耐候性などの優れ、かつ、導電率が高く弾性絶縁体への密着性が高いものが用いられる。弾性導電体としては、筒状体2に用いている弾性絶縁体にカーボンブラック等の導電性充填剤を配合したものを用いることがより好ましい。つまり、導電リブ31に用いる弾性導電体と、筒状体2や絶縁リブ32に用いる弾性絶縁体とは、主成分が同じ材料を用いることが望ましい。具体的には、弾性導電体としては、例えばエチレン‐プロピレン‐ジエン共重合を架橋したゴム系組成物や、架橋工程が不要なオレフィン系やスチレン系熱可塑性エラストマー組成物に、カーボンブラック等の導電性充填剤を配合したものを用いるとよい。
【0023】
図2(a)に示すように、外部から押圧力が加えられると、筒状体2が弾性変形し、導電リブ31同士が接触する。感圧センサ1では、押圧力が加えられた後、押圧力がなくなると、速やかに復元されることが望まれる。本実施の形態では、外部から押圧力が加えられると弾性を有する絶縁リブ32も一緒に変形する(潰れる)ことになるため、この絶縁リブ32が復元力を向上させ、感圧センサ1を速やかに復元する役割を果たす。
【0024】
また、
図2(b)に示すように、導電リブ31の対向方向と若干傾いた方向に押圧力が加えられた場合に、絶縁リブ32が、導電リブ31をガイドする役割を果たし、対向する導電リブ31同士が接触し易くなる。換言すれば、絶縁リブ32は、導電リブ31同士が接触しない原因となる中空部2aの空きスペースを埋め、外部から押圧力が加えられた際に対向する導電リブ31同士を接触し易くする役割を果たす。
【0025】
さらに、詳細は後述するが、絶縁リブ32は、導電リブ31(螺旋リブ3)の螺旋ピッチを調整する役割も兼ねている。なお、導電リブ31の螺旋ピッチとは、導電リブ31が、任意の周方向位置から、筒状体2の内周面2bを1周して同じ周方向位置に戻る位置までの、筒状体2の長手方向に沿った長さをいう。螺旋ピッチの調整の詳細については、後述する。
【0026】
(感圧センサの製造装置)
図3は、感圧センサの製造装置を示す図であり、(a)は断面図、(b)はそのA-A線断面図である。
図4は、心金の側面を示すと共に材料の流れ示した説明図である。感圧センサの製造装置10は、押出成形により感圧センサ1を製造する押出機である。本実施の形態に係る感圧センサの製造装置10は、弾性絶縁体と弾性導電体を同時に押し出す2層同時押出を可能とするものである。
【0027】
図3(a),(b)及び
図4に示すように、感圧センサの製造装置10は、筒状の口金11と該口金11内に配置された心金12とを備えている。口金11と心金12との間は、溶融した弾性絶縁体材料の流路13となっている。弾性絶縁体材料は、弾性絶縁体が熱により溶融し液状となったものである。図示していないが、口金11には、流路13と連通し、流路13に弾性絶縁体材料を供給するための供給路が設けられている。
【0028】
感圧センサの製造装置10は、口金11と心金12とに挟まれた円環状の吐出口14を有している。感圧センサの製造装置10では、口金11の吐出側の開口は吐出側から見て円形状となっており、心金12の吐出側の端部は略円柱状に形成されている。また、口金11の吐出側の端面と、心金12の吐出側の端面とは、略一致している。感圧センサの製造装置10では、この円環状の吐出口14から弾性絶縁体材料を吐出することで、長手方向に沿って中空部2aを有する筒状体2を押出成形可能となっている。
【0029】
口金11は、吐出口14から所定距離の内径が一定となっている。この内径が一定の部分を定径部11aと呼称する。定径部11aの吐出口14と反対側には、定径部11aから離れるほど内径が大きくなるテーパ部11bが一体に設けられている。
【0030】
心金12は、口金11の定径部11aに収容され外径が略一定である円柱状の柱状部12aと、柱状部12aの吐出口14と反対側に一体に設けられ、柱状部12aから離れるほど外径が大きくなるテーパ部12bと、を有している。
【0031】
また、心金12は、その柱状部12aの外周面に形成された螺旋状の複数の溝121と、心金12の内部から2つ以上の溝121に弾性導電体材料を供給するための弾性導電体材料用流路122と、を有している。弾性導電体材料は、弾性導電体が熱により溶融し液状となったもの、または弾性絶縁体が熱により溶融し液状となったものに導電性充填剤を配合したものである。
【0032】
溝121に供給された弾性導電体と、流路13から供給された弾性絶縁体とを十分に溶着(融着)させるためには、両者を接触した状態で一定時間保持する必要がある。よって、溝121を形成する領域の長さ、すなわち柱状部12aの長さは、溝121に供給された弾性導電体と流路13から供給された弾性絶縁体とが成形時の熱により十分に溶着(融着)される長さに調整される。
【0033】
材料が流動し易いように、溝121の底面は丸みを帯びた形状に形成されることが望ましい。より材料の流動性を高めるために、溝121の断面形状は、略半円形状や略半楕円形状とすることが望ましい。なお、ここでいう溝121の断面形状とは、柱状部12aを円柱状と仮定した場合における、溝121を形成することによる欠損部分の形状であり、溝121の長手方向に垂直な断面形状である。
【0034】
感圧センサの製造装置10では、口金11の近傍を流れる材料(弾性絶縁体材料)は、吐出口14側に向けて真っ直ぐ流れようとする。他方、溝121に導入された材料(弾性導電体材料及び弾性絶縁体材料)は、溝121に沿って螺旋状に流れようとする。その結果、真っ直ぐ流れようとする材料の流れが、螺旋状に流れようとする材料の影響を受け、吐出口14から材料が周方向に回転されながら吐出されることになる(
図4参照)。なお、ここでいう周方向とは、吐出される感圧センサ1(筒状体2)の周方向である。
【0035】
つまり、心金12の先端部(柱状部12a)の外周面に螺旋状の溝121を形成することで、材料が回転されながら吐出される。その結果、筒状体2の中空部2aの内周面2bに沿って螺旋状に設けられた螺旋リブ3を形成することが可能になる。吐出される際の材料の回転方向と螺旋リブ3の螺旋の方向は同じ方向となる。
【0036】
さらに、心金12の内部から、弾性導電体材料用流路122を介して2つ以上の溝121に弾性導電体材料を供給することで、弾性絶縁体材料と弾性導電体材料とが同時に押出成形されることになり、螺旋リブ3の一部が導電リブ31となる。弾性導電体材料用流路122は、心金12の内部に形成された中空部122aと、中空部122aから分岐した複数の分岐路122bと、を有している。各分岐路122bの中空部122aと反対側の端部は、溝121の始端(吐出口14と反対側の端)に形成された導出口122cにそれぞれ連通されている。
【0037】
弾性導電体材料が供給されない溝121には、流路13から供給された弾性絶縁体材料が入り込み、これにより絶縁リブ32が形成されることになる。よって、絶縁リブ32を形成するためには、複数の溝121のうち少なくとも1つには、弾性導電体材料用流路122が連通されていないとよい。
【0038】
螺旋リブ3(導電リブ31)の螺旋ピッチは、吐出口14から吐出される材料の回転度合いによって決定される。この回転度合いは、溝121に入り込み螺旋状に流れようとする材料と、溝121に入り込まず真っ直ぐ流れようとする材料との割合(体積比)、及び、溝121の角度(溝121の螺旋ピッチ)により調整することが可能である。例えば、溝121の断面積を大きくして螺旋リブ3の断面積を大きくしたり、吐出口14の幅(口金11と心金12との間隔)を狭くして筒状体2を薄くしたりすることで、吐出口14から吐出される材料の回転速度を速めて、螺旋リブ3(導電リブ31)の螺旋ピッチを小さくすることができる。
【0039】
つまり、感圧センサの製造装置10では、溝121の断面積と角度、及び吐出口14の幅を適宜調整することで、螺旋リブ3の螺旋ピッチを調整することが可能である。よって、用途等に応じて、螺旋リブ3(導電リブ31)が所望の螺旋ピッチとなるように、溝121の断面積と角度、及び吐出口14の幅を適宜調整するとよい。
【0040】
(感圧センサの製造方法)
本実施の形態に係る感圧センサの製造方法は、
図3,4で説明した感圧センサの製造装置10を用い、弾性絶縁体材料を押し出しつつ、心金12の内部から2つ以上の溝121に弾性導電体材料を供給することで、弾性絶縁体材料と弾性導電体材料とを同時に押出成形する。換言すれば、本実施の形態に係る感圧センサの製造方法では、弾性絶縁体を外層、弾性導電体を内層として同時に押出成形する。また、螺旋状の溝121を流れる材料の影響により、吐出口14から材料が回転しつつ押し出されるようにする。
【0041】
内層となる弾性導電体材料の流路は溝121内に限定され、さらに材料が回転しつつ吐出されるので、筒状体2の内周面2に沿う螺旋状の導電リブ31が形成されることになる。その結果、長手方向に沿って中空部2aを有し弾性絶縁体からなる筒状体2と、筒状体2の中空部2aの内周面2bに沿って螺旋状に設けられ、内周面2bから内方に突出する弾性導電体からなる2つ以上の導電リブ31と、を有する
図1の感圧センサ1が製造される。
【0042】
(変形例)
図5(a)に示す感圧センサ1aのように、導電リブ31に金属線4が通線されていてもよい。金属線4としては、銅等の良導電性の金属からなる単線や、複数の素線を互いに撚り合わせた撚線を用いることができる。
図5(a)では、一例として、7本の素線を撚り合わせた撚線を金属線4として用いる場合を示している。また、金属線4としては、銅箔をポリエステルなどからなる糸に巻き付けた銅箔糸を用いることもできる。さらに、金属線4は、耐熱性を高める目的で表面をスズ、ニッケル、銀、亜鉛などのメッキが施されていてもよい。金属線4を通線する方法は特に限定するものではないが、例えば、弾性導電体材料用流路122から弾性導電体材料と共に金属線4を導出させ、金属線4を溝121に沿わせつつ吐出口14へと導くようにすればよい。
【0043】
また、
図5(b)に示す感圧センサ1bのように、筒状体2の外周に、筒状体2を保護するための保護層(外層)5を形成してもよい。保護層5は、筒状体2を保護して感圧センサ1bの強度を高める役割を果たすと共に、他部材への接着性を高める役割を果たす。感圧センサ1bでは、一般に、中空部2a内への水分の侵入を防ぐために、ポリアミドやポリウレタン等の樹脂を用いて端末の封止を行う。このような封止用の樹脂と筒状体2とは接着性が十分でない場合、筒状体2に直接封止を行うと水密性が確保できないおそれがある。筒状体2の外周に、筒状体2の樹脂及び封止用の樹脂に対して接着性の良好な保護層5を形成することにより、封止用の樹脂の剥がれを抑制し、水密性を確保することが可能になる。
【0044】
保護層5としては、弾性を有し、強度及び耐摩耗性に優れたものを用いることが望ましく、例えば熱可塑性ポリウレタン等を用いることができる。
図3の感圧センサの製造装置10を用いて筒状体2と螺旋リブ3(導電リブ31及び絶縁リブ32)を形成した後、筒状体2の外周に押出成形により保護層5を形成することで、感圧センサ1bが得られる。
【0045】
また、本実施の形態では、導電リブ31の大きさ(断面積)と絶縁リブ32の大きさ(断面積)が同じである場合について説明したが、
図6(a)に示す感圧センサ1cのように、各導電リブ31の大きさ(断面積)を、各絶縁リブ32の大きさよりも大きくしてもよい。これにより、外部から押圧力が加わった際に、より導電リブ31同士が接触し易くなる。
【0046】
なお、
図6(a)では、導電リブ31における筒状体2の内周面2bからの突出長、及び周方向における幅の両方が、絶縁リブ32より大きい場合を示しているが、どちらか一方のみが大きくてもよい。導電リブ31や絶縁リブ32の大きさは、溝121の形状(幅や深さ)により適宜調整可能である。
【0047】
さらに、
図6(b)に示す感圧センサ1dのように、絶縁リブ32を省略してもよい。ただし、この場合、絶縁リブ32がないことで吐出時に十分な回転力が得られず、導電リブ31の螺旋ピッチが大きくなってしまうおそれがある。よって、吐出時に十分な回転力を確保し、導電リブ31の螺旋ピッチを小さくするためには、各導電リブ31の断面積をできるだけ大きくすることが望まれる。
【0048】
また、導電リブ31の螺旋ピッチをより小さくすることが要求される場合、吐出時の回転力をより強くするために、
図7(a)に示す感圧センサの製造装置10aのように、口金11の定径部11aの内周面に、螺旋状の外側溝111を形成してもよい。外側溝111の螺旋の方向(吐出側から見たとき吐出側に向かって外側溝111が回転している方向)は、心金12における溝121の螺旋の方向と同じ方向とされる。
【0049】
図7(b)は、感圧センサの製造装置10aにより製造される感圧センサ1eの断面図である。感圧センサ1eは、筒状体2の外周面に沿って螺旋状に設けられ、外周面から径方向外方に突出する複数の外側螺旋リブ6を有している。外側螺旋リブ6の螺旋の方向(任意の端部から見たとき当該端部側に向かって外側螺旋リブ6が回転している方向)は、螺旋リブ3の螺旋の方向と同じ方向である。外側螺旋リブ6を有することにより、例えばゴム材等からなるカバーに感圧センサ1eを挿入する際に、カバーとの接触面積が小さくなり、カバーへの感圧センサ1eの挿入が容易になる。また、筒状体2の外周に保護層5(
図5(b)参照)を設ける場合に、保護層5が外側螺旋リブ6の間に入り込み、アンカー効果により筒状体2と保護層5との密着性を向上させることが可能になる。
【0050】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る感圧センサの製造方法では、筒状の口金11と該口金11内に配置された心金12とを備え、口金11と心金12とに挟まれた円環状の吐出口14を有すると共に、心金12の外周面に螺旋状の複数の溝121が形成されている押出機としての感圧センサの製造装置10を用い、弾性絶縁体材料を押し出しつつ、心金12の内部から2つ以上の溝121に弾性導電体材料を供給することで、弾性絶縁体材料と弾性導電体材料とを同時に押出成形している。
【0051】
これにより、材料を回転させつつ吐出することができ、長手方向に沿って中空部2aを有し弾性絶縁体からなる筒状体2と、筒状体2の中空部2aの内周面2bに沿って螺旋状に設けられ、内周面2bから内方に突出する弾性導電体からなる2つ以上の導電リブ31と、を有する感圧センサ1を形成することが可能になる。
【0052】
スペーサ(ダミー線)を用いる従来方法では、スペーサを製造する工程や、押出成形後にスペーサを抜く工程が必須であり、製造に非常に手間がかかっていた。また、従来方法では、スペーサを引き抜く途中でスペーサが破断してしまったり、電極線に損傷が加わったりするため、短尺に切断してからスペーサを引き抜く必要があり、長尺な感圧センサを製造することは困難であった。さらに、スペーサを抜きやすくするために、スペーサに滑り性の良好な高価なフッ素系の樹脂等を用いる必要があるが、短尺に切断するためにスペーサを再利用することができず、コスト増大の要因となっていた。
【0053】
本発明によれば、スペーサを用いずに感圧センサ1を製造することが可能になるため、感圧センサ1の製造が容易になり、製造コストを大幅に削減することが可能になる。また、本発明ではスペーサを用いないため、長さの制限がなく、例えば数10mといった長尺な感圧センサ1を容易に製造できる。
【0054】
本発明の感圧センサ1は、自動車用のスライドドア、バックドア、パワーウィンドウやエレベータドア、シャッター、自動ドア、車輌用ドア、ホームドアなどの挟み込み防止用途に広く適用可能である。
【0055】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0056】
[1]筒状の口金(11)と該口金(11)内に配置された心金(12)とを備え、前記口金(11)と前記心金(12)とに挟まれた円環状の吐出口(14)を有すると共に、前記心金(12)の外周面に螺旋状の複数の溝(121)が形成されている押出機を用い、弾性絶縁体材料を押し出しつつ、前記心金(12)の内部から2つ以上の前記溝(121)に弾性導電体材料を供給することで、前記弾性絶縁体材料と前記弾性導電体材料とを同時に押出成形し、長手方向に沿って中空部(2a)を有し弾性絶縁体からなる筒状体(2)と、前記筒状体(2)の前記中空部(2a)の内周面(2b)に沿って螺旋状に設けられ、前記内周面(2b)から内方に突出する弾性導電体からなる2つ以上の導電リブ(31)と、を有する感圧センサ(1)を形成する、感圧センサの製造方法。
【0057】
[2]筒状の口金(11)と該口金(11)内に配置された心金(12)とを備え、前記口金(11)と前記心金(12)とに挟まれた円環状の吐出口(14)を有し、前記吐出口(14)から弾性絶縁体材料を吐出することで、長手方向に沿って中空部(2)を有し弾性絶縁体からなる筒状体(2)を押出成形可能な感圧センサの製造装置(10)であって、前記心金(12)は、その外周面に形成された螺旋状の複数の溝(121)と、前記心金(12)の内部から2つ以上の前記溝(121)に弾性導電体材料を供給するための弾性導電体材料用流路(122)と、を有する、感圧センサの製造装置(10)。
【0058】
[3]前記複数の溝(121)のうち少なくとも1つには、前記弾性導電体材料用流路(122)が連通されていない、[2]に記載の感圧センサの製造装置(10)。
【0059】
[4]前記口金(11)の内周面に、螺旋状の外側溝(111)が形成されている、[2]または[3]に記載の感圧センサの製造装置(10)。
【0060】
[5]長手方向に沿って中空部(2)を有し弾性絶縁体からなる筒状体(2)と、前記筒状体(2)の前記中空部(2a)の内周面(2b)に沿って螺旋状に設けられ、前記内周面(2b)から内方に突出する複数の螺旋リブ(3)と、を備え、前記螺旋リブ(3)は、弾性導電体からなる2つ以上の導電リブ(31)と、弾性絶縁体からなる1つ以上の絶縁リブ(32)と、を含む、感圧センサ(1)。
【0061】
[6]前記導電リブ(31)が、前記筒状体(1)の長手方向に対して垂直な方向に対向して設けられており、前記筒状体(2)の周方向における前記導電リブ(31)の間に、1つ以上の前記絶縁リブ(32)が設けられている、[5]に記載の感圧センサ(1)。
【0062】
[7]前記導電リブ(31)に、金属線(4)が通線されている、[5]または[6]に記載の感圧センサ(1a)。
【0063】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0064】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では言及しなかったが、感圧センサの製造装置10において、弾性導電体材料の供給量を多くすると、弾性導電体の一部が筒状体2まで入り込む場合がある。このように、弾性導電体の一部が筒状体2まで入り込んでいてもよい。また、弾性導電体材料の供給量が少ないと、螺旋リブ3(導電リブ31)の先端部のみが弾性導電体で構成され、螺旋リブ3(導電リブ31)の基部(筒状体2に近い部分)が弾性絶縁体で構成されることになる。このように、導電リブ31の一部(基部)が、弾性絶縁体で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…感圧センサ
2…筒状体
2a…中空部
2b…内周面
3…螺旋リブ
31…導電リブ
32…絶縁リブ
10…感圧センサの製造装置
11…口金
12…心金
121…溝
122…弾性導電体材料用流路
14…吐出口