(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】搬送装置、乾燥装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 29/24 20060101AFI20220120BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220120BHJP
B65H 29/04 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
B65H29/24 C
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B65H29/04
B41J2/01 125
(21)【出願番号】P 2018037613
(22)【出願日】2018-03-02
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】小川 雅人
【審査官】飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-106207(JP,A)
【文献】特開2000-019795(JP,A)
【文献】特開2017-171502(JP,A)
【文献】実開昭52-008025(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 29/20-29/30
G03G 15/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を搬送する搬送ドラムと、
前記搬送ドラムから受け渡された前記シート材を吸着させて搬送する搬送ベルトとを有する搬送装置であって、
前記搬送ベルトに前記シート材の先端が突き当たる突き当て部を設け
、
前記搬送ベルトは、前記シート材をシート材乾燥部へ搬送するものであって、
前記搬送ベルトは、メッシュベルトであることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
シート材を搬送する搬送ドラムと、
前記搬送ドラムから受け渡された前記シート材を吸着させて搬送する搬送ベルトとを有する搬送装置であって、
前記搬送ベルトに前記シート材の先端が突き当たる突き当て部を設け、
前記搬送ベルトは、前記シート材をシート材乾燥部へ搬送するものであって、
前記搬送ベルトの前記搬送ドラムから前記シート材が受け渡される受け渡し領域に配置され、前記搬送ベルトの通気部から搬送ベルト上のシート材を吸引して前記シート材を前記搬送ベルトに吸着させる第一吸引手段と、
前記搬送ベルトのシート材乾燥部がシート材を乾燥する乾燥領域に配置され、前記通気部から搬送ベルト上のシート材を吸引して前記シート材を前記搬送ベルトに吸着させる第二吸引手段とを備えたことを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項1に記載の搬送装置において
、
前記搬送ベルトの前記搬送ドラムから前記シート材が受け渡される受け渡し領域に配置され、前記搬送ベルトの通気部から搬送ベルト上のシート材を吸引して前記シート材を前記搬送ベルトに吸着させる第一吸引手段と、
前記搬送ベルトのシート材乾燥部がシート材を乾燥する乾燥領域に配置され、前記通気部から搬送ベルト上のシート材を吸引して前記シート材を前記搬送ベルトに吸着させる第二吸引手段とを備えたことを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の搬送装置において、
前記第一吸引手段は、前記搬送ベルトの内周面に対向配置された複数の送風手段で構成されており、
前記第二吸引手段は、前記搬送ベルトの内部空間を負圧状態にする負圧手段で構成されていることを特徴とする搬送装置
。
【請求項5】
請求項1
乃至4いずれか一項に記載の搬送装置において、
前記突き当て部は、前記搬送ベルトの幅方向に複数並べて設けられていることを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項1
乃至5いずれか一項に記載の搬送装置において、
前記搬送ドラムから前記搬送ベルトへ受け渡された前記シート材の先端に対し、シート材搬送方向下流側近傍に前記突き当て部が位置するように、前記搬送ベルトの回転を制御する制御手段を設けたことを特徴とする搬送装置。
【請求項7】
請求項
6に記載の搬送装置において、
前記搬送ベルトのベルト長を、前記シート材の搬送間隔の整数倍としたことを特徴とする搬送装置
。
【請求項8】
搬送装置と、
前記搬送装置による搬送中のシート材を乾燥させる乾燥機構とを備えた乾燥装置において、
前記搬送装置として、請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の搬送装置を用いたことを特徴とする乾燥装置。
【請求項9】
搬送装置と、
前記搬送装置による搬送中のシート材を乾燥させる乾燥機構とを備えた乾燥装置において、
前記搬送装置は、シート材を搬送する搬送ドラムと、前記搬送ドラムから受け渡された前記シート材を吸着させて搬送する搬送ベルトとを有し、
前記搬送ベルトに前記シート材の先端が突き当たる突き当て部を設けたことを特徴とする乾燥装置。
【請求項10】
シート材に液体を吐出させる液体吐出手段と、
前記シート材を搬送する搬送装置とを備えた画像形成装置において、
前記搬送装置として、請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の搬送装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置、乾燥装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、シート材を搬送する搬送ドラムと、搬送ドラムから受け渡されたシート材を吸着させて搬送する搬送ベルトとを有する搬送装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、上記搬送装置として、表面にインクが付着したシート材を搬送ドラムから受け取り、インク乾燥ユニットへシート材を搬送する搬送ベルトを備えたものが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、搬送ドラムから搬送ベルトへのシート材受け渡し時にシート材が搬送ベルト上をシート搬送方向に滑って規定の位置からずれ、規定の紙間が維持されないおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、シート材を搬送する搬送ドラムと、前記搬送ドラムから受け渡されたシート材を吸着させて搬送する搬送ベルトとを有する搬送装置であって、前記搬送ベルトに前記シート材の先端が突き当たる突き当て部を設け、前記搬送ベルトは、前記シート材をシート材乾燥部へ搬送するものであって、前記搬送ベルトは、メッシュベルトであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、規定の紙間を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態におけるインクジェット記録装置の概略構成を示す模式図。
【
図3】線状部材が網目状になっている搬送ベルトを示す斜視図。
【
図6】カムフォロワのカム突起部が、カム面に当接した状態を示す図。
【
図7】カムフォロワのカム突起部が、カム面の頂部付近にきた状態を示す図
【
図8】普通紙が受け渡し胴から搬送ベルトへ受け渡される様子を示す図。
【
図9】厚紙が受け渡し胴から搬送ベルトへ受け渡される様子を示す図。
【
図10】本実施形態における受け渡し胴から搬送ベルトへ受け渡される様子を示す図。
【
図12】突き当て突起と受け渡し胴の用紙グリッパとの位置関係を示す斜視図。
【
図13】突き当て突起を線状部材が網目状になっている搬送ベルトに取り付けた様子を示す斜視図。
【
図14】突き当て突起をベルト幅方向に3個以上設けた例について示す図。
【
図15】突き当て突起をベルト幅方向に長くした例について示す図。
【
図16】搬送ベルトの駆動制御について説明する図。
【
図19】第二吸引部における吸引用チャンバーの内部構造を示す断面図。
【
図21】第一吸引部の用紙搬送方向に沿って切断したときの断面図。
【
図22】第一吸引部を用紙搬送方向に直交する断面に沿って切断したときの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
【0009】
[全体説明]
図1は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の概略構成を示す模式図である。
本実施形態のインクジェット記録装置1は、主に、給紙部100、画像形成部200、乾燥部300、排紙部400から構成されている。インクジェット記録装置1においては、給紙部100から給紙されるシート材としての記録材である用紙Pに対し、画像形成部200で画像形成用の液体であるインクにより画像を形成する。そして、用紙上に付着したインクを乾燥部300において乾燥させた後、用紙を排紙部400から排紙する。
【0010】
[給紙部]
給紙部100は、主に、複数の用紙Pが積載される給紙トレイ110と、給紙トレイ110から用紙を1枚ずつ分離して送り出す給送装置120と、用紙を画像形成部200へ送り込むレジストローラ対130とから構成されている。給送装置120には、ローラやコロを用いた装置や、エア吸引を利用した装置など、あらゆる給送装置を用いることが可能である。給送装置120により給紙トレイ110から送り出された用紙は、その先端がレジストローラ対130に到達した後、レジストローラ対130が所定のタイミングで駆動することにより、画像形成部200へ給紙される。なお、本実施形態において、給紙部100は、画像形成部200へ用紙Pを送り出すものであれば、その構成に制限はない。
【0011】
[画像形成部]
画像形成部200は、主に、給紙された用紙Pを受け取る受け取り胴201と、受け取り胴201によって搬送された用紙Pを外周面に担持して搬送する用紙担持ドラム210と、用紙担持ドラム210に担持された用紙Pに向けてインクを吐出するインク吐出部220と、用紙担持ドラム210によって搬送された用紙Pを乾燥部300へ受け渡す受け渡し胴202とから構成されている。
【0012】
給紙部100から画像形成部200へ搬送されてきた用紙Pは、受け取り胴201の表面に設けられた用紙グリッパによって先端が把持され、受け取り胴201の表面移動に伴って搬送される。受け取り胴201により搬送された用紙は、用紙担持ドラム210との対向位置で用紙担持ドラム210へ受け渡される。
【0013】
用紙担持ドラム210の表面にも用紙グリッパが設けられており、用紙の先端が用紙グリッパによって把持される。また、用紙担持ドラム210の表面には、複数の吸引孔が分散して形成されており、各吸引孔には吸引装置211によって用紙担持ドラム210の内側へ向かう吸い込み気流が発生する。受け取り胴201から用紙担持ドラム210へ受け渡された用紙Pは、用紙グリッパによって先端が把持されるとともに、吸い込み気流によって用紙担持ドラム210の表面に吸着して、用紙担持ドラム210の表面移動に伴って搬送される。
【0014】
本実施形態のインク吐出部220は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色のインクを吐出して画像を形成するものであり、インクごとに個別の液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220Kを備えている。液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220Kは、液体を吐出するものであれば、その構成に制限はなく、あらゆる構成のものを採用することができる。必要に応じて、白色、金色、銀色などの特殊なインクを吐出する液体吐出ヘッドを設けたり、表面コート液などの画像を構成しない液体を吐出する液体吐出ヘッドを設けたりしてもよい。
【0015】
インク吐出部220の液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220Kは、画像情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。用紙担持ドラム210に担持された用紙Pがインク吐出部220との対向領域を通過する際に、液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220Kから各色インクが吐出され、当該画像情報に応じた画像が形成される。なお、本実施形態において、画像形成部200は、用紙P上に液体を付着させて画像を形成するであれば、その構成に制限はない。
【0016】
[乾燥部]
乾燥部300は、主に、画像形成部200で用紙P上に付着したインクを乾燥させるための乾燥機構301と、画像形成部200から搬送されてくる用紙Pを搬送する搬送機構302とから構成されている。画像形成部200から搬送されてきた用紙Pは、搬送機構302に受け取られた後、乾燥機構301を通過するように搬送され、排紙部400へ受け渡される。乾燥機構301を通過する際、用紙P上のインクには乾燥処理が施され、これによりインク中の水分等の液分が蒸発し、用紙P上にインクが固着するとともに、用紙Pのカールが抑制される。
【0017】
[排紙部]
排紙部400は、主に、複数の用紙Pが積載される排紙トレイ410から構成されている。乾燥部300から搬送されてくる用紙Pは、排紙トレイ410上に順次積み重ねられて保持される。なお、本実施形態において、排紙部400は、用紙Pを排紙するものであれば、その構成に制限はない。
【0018】
[その他の機能部]
本実施形態のインクジェット記録装置1は、給紙部100、画像形成部200、乾燥部300、排紙部400から構成されているが、他の機能部を適宜追加してもよい。例えば、給紙部100と画像形成部200との間に画像形成の前処理を行う前処理部を追加したり、乾燥部300と排紙部400との間に画像形成の後処理を行う後処理部を追加したりすることができる。
【0019】
前処理部としては、例えば、インクと反応して滲みを抑制するための処理液を用紙Pに塗布する処理液塗布処理を行うものなどが挙げられるが、前処理の内容については特に制限はない。また、後処理部としては、例えば、画像形成部200で画像が形成された用紙を反転させて再び画像形成部200へ送って用紙の両面に画像を形成するための用紙反転搬送処理や、画像が形成された複数枚の用紙を綴じる処理などが挙げられるが、後処理の内容についても特に制限はない。
【0020】
なお、本実施形態では、印刷装置を、インクジェット記録装置の例で説明しているが、「印刷装置」は、シート材の被乾燥面に向けて液体を吐出する液体吐出ヘッドを備え、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではなく、例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するものも含まれる。シート材は、材質を限定されるものではなく、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど、液体が一時的でも付着可能なものであればよく、例えば、フィルム製品、衣料用等の布製品、壁紙や床材等の建材、皮革製品などに使用されるものであってもよい。また、「印刷装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液等の用途で用いることができる。
また、「印刷装置」は、液体吐出ヘッドとシート材とが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0021】
また、「液体吐出ヘッド」とは、吐出孔(ノズル)から液体を吐出・噴射する機能部品である。液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどの吐出エネルギー発生手段を使用することができるが、使用する吐出エネルギー発生手段が限定されるものではない。
【0022】
また、インクジェット記録装置1は、反転搬送機構500を備えている。用紙の両面に画像を記録するときは、乾燥機構301を通過した用紙を反転搬送機構500へ搬送する。反転搬送機構500に搬送された用紙は、スイッチバックして、レジストローラ対130へ再送される。そして、用紙の搬送方向先端が、レジストローラ対130に到達した後、レジストローラ対が所定のタイミングで駆動することにより、インク吐出部220へ再送され、用紙のもう一方の面に画像が形成される。
【0023】
本実施形態においては、所定枚数以上、用紙の両面に画像を形成する場合は、インターリーフ搬送制御で、用紙の両面に画像を形成する。インターリーフ搬送制御は、用紙の片面に画像を連続して形成し、これらを反転搬送機構500に搬送し、片面に画像が形成された用紙のインク吐出部220への搬送と、給紙部100からインク吐出部220への用紙の搬送とを交互に行う搬送制御である。かかる制御を行うことで、用紙の両面に画像を所定枚数以上行う場合の生産性の低下を抑制することができる。
【0024】
[乾燥部の詳細]
次に、本実施形態における乾燥部300の詳細について説明する。
図2は、本実施形態における乾燥部300を示す正面図である。
【0025】
本実施形態の乾燥部300における乾燥機構301は、主に、搬送機構302によって搬送される用紙Pに向けて温風を吹きつける複数の温風ブロワ301aと、温風ブロワ301aにより送風される送風領域の周囲を壁部材で囲って形成される乾燥チャンバー301bとから構成されている。乾燥チャンバー301bは、その壁部材の少なくとも一部が断熱材で形成されており、乾燥チャンバー301bの内部温度が下がりにくいように構成されている。複数の温風ブロワ301aは、用紙搬送方向に並んで配置されている。乾燥機構301では、乾燥チャンバー301bの内部空間へ搬送されてくる用紙Pの画像面に対し、温風を吹き付けることで用紙Pの画像面上のインクを乾燥させる。
【0026】
また、乾燥部300としては、複数の輻射ヒータを配置して、輻射ヒータの輻射熱により用紙Pの画像面上のインクを乾燥させてもよい。
【0027】
本実施形態の搬送機構302は、主に、ベルト搬送機構320と、吸引機構330とから構成されている。ベルト搬送機構320は、2つの支持ローラ322,323に掛け渡された無端状の搬送ベルト325の表面上に用紙Pを担持して、搬送ベルト325の表面移動に伴って用紙Pを搬送する。用紙搬送方向に対して直交する方向(幅方向)における搬送ベルト325の長さは、搬送される用紙Pの幅方向長さ以上に設定されている。
【0028】
搬送ベルト325は、主に2つの支持ローラ322,323のうちの少なくとも一方が駆動することにより図中矢印の向きに走行して表面が移動する。本実施形態の搬送ベルト325は、その表面に複数の微小な貫通孔(吸引孔)が分散して開口した通気構造をもつ吸引ベルトであり、用紙を担持するベルト部分(第一支持ローラ322から第二支持ローラ323に向けて移動するベルト部分)の内周面側には、吸引機構330が設けられている。
【0029】
シート材である用紙を搬送する搬送ベルト325は、通気可能な構成であればよく、例えば、
図3に示すように線状部材が網目状になっている搬送ベルト325を用いてもよよいし、多孔質状部材であってよい。
【0030】
搬送ベルト325の用紙搬送方向上流側部分は、画像形成部200の受け渡し胴202に対向するように配置されている。受け渡し胴202によって搬送されてきた用紙Pは、その画像面の裏面が搬送ベルト325の表面に対面する形で搬送ベルト325へ受け渡され、搬送ベルト325の表面上に担持される。そして、搬送ベルト325の表面に担持された用紙Pは、搬送ベルト325の表面移動に伴って、第二支持ローラ323側へと搬送される。
【0031】
用紙担持ドラム210の外径は、受け取り胴201および受け渡し胴202の外径の3倍となっており、用紙担持ドラム210には、円周上の表面の3ヶ所に用紙Pの先端をくわえる用紙グリッパ210aが設けられている。また、受け取り胴201および受け渡し胴202の円周上の表面一ヶ所に用紙グリッパ201a,202aが設けられている。
【0032】
受け取り胴201の用紙グリッパ201aが用紙担持ドラム210との対向位置に位置するとき、用紙担持ドラム210の円周方向3ヶ所に設けられた用紙グリッパ210aのうちの一つが上記対向位置するように、受け取り胴201と用紙担持ドラム210との回転位相調整されている。また、同様に、受け渡し胴202の用紙グリッパ202aが用紙担持ドラム210との対向位置に位置するとき、用紙担持ドラム210の円周方向3ヶ所に設けられた用紙グリッパ210aのうちの一つが上記対向位置するように、受け渡し胴202と用紙担持ドラム210との回転位相調整されている。
【0033】
また、用紙担持ドラム210、受け取り胴201および受け渡し胴202にそれぞれ設けられた用紙グリッパ210a,201a,202aは、回転軸方向(用紙の幅方向)に所定の間隔を開けて複数設けられている。また、用紙担持ドラム210の用紙グリッパ210aは、受け取り胴201および受け渡し胴202の用紙グリッパ201a,202aに対して回転軸方向において異なる位置に設けられている。
【0034】
用紙担持ドラム210と受け取り胴201との対向位置において、用紙担持ドラム210の用紙グリッパ210aが、受け取り胴201の用紙グリッパ201aの間に入り込み、受け取り胴201の用紙グリッパ201aから用紙担持ドラム210の用紙グリッパ210aへ用紙先端のくわえ込みが変更される。その結果、受け取り胴201から用紙担持ドラム210へ用紙が受け渡される。
【0035】
また、同様に、用紙担持ドラム210と受け渡し胴202との対向位置において、用紙担持ドラム210の用紙グリッパ210aが、受け渡し胴202の用紙グリッパ202aの間に入り込み、用紙担持ドラム210の用紙グリッパ210aから受け渡し胴202の用紙グリッパ202aから用紙先端のくわえ込みが変更される。その結果、用紙担持ドラム210から受け渡し胴202へ用紙Pが受け渡される。
【0036】
受け渡し胴202の用紙グリッパ202aが、搬送ベルト325との対向位置(以下、ベルト対向位置Kという)に到達すると、用紙グリッパ202aの用紙先端のくわえ込みが解除される。これにより、用紙Pは、ベルト対向位置Kおいて、受け渡し胴202から搬送ベルト325に受け渡される。
【0037】
搬送ベルト325における用紙を担持するベルト部分(第一支持ローラ322から第二支持ローラ323に向けて移動するベルト部分)は、乾燥機構301の乾燥チャンバー313の内部を通るように配置されている。したがって、搬送ベルト325の表面上に担持された用紙Pは、搬送ベルト325の表面移動に伴って、乾燥機構301の乾燥チャンバー313の内部を通過し、その後、搬送ベルト325の表面から離れ、ガイド板や搬送ローラなどを介して排紙部400へと受け渡される。
【0038】
搬送ベルト325の外周面には、受け渡し胴202から搬送ベルト325へ受け渡された用紙Pの先端が突き当たる突き当て突起324が、搬送ベルト325の搬送方向に等間隔で配置されている。突き当て突起324の間隔は、用紙間隔(用紙の搬送方向長さ+紙間)に設定されている。また、搬送ベルト325の周長は、用紙間隔の整数倍となっている。
【0039】
吸引機構330は、搬送ベルト325の乾燥機構301と対向する領域よりも用紙搬送方向上流側の受け渡し胴202に対向する領域に設けられた第一吸引部340と、搬送ベルト325の乾燥機構301と対向する領域に設けられた第二吸引部350と有している。
【0040】
図4は、受け渡し胴202を軸方向一方側見た図であり、
図5は、
図4の矢印A方向から見た図である。なお、
図5は、受け渡し胴202のフランジ部材202bについては、図示を省略している。
図5に示すように、画像形成部200の側板200aには、くわえ込み解除手段たるカム260が取り付けられている。受け渡し胴202の用紙グリッパ202aのくわえ込みを解除するためのカムは、ベルト対向位置Kと、受け渡し胴202と用紙担持ドラム210との対向位置とに設けられている。
【0041】
また、複数の用紙グリッパ202aは、各用紙グリッパ202aに対応して設けられたグリッパ取り付け部材247にネジ止めされている。各グリッパ取り付け部材247は、回転軸242と一体で回転するように回転軸242に取り付けられている。この回転軸242の両側は、フランジ取り付け部材241に回転自在に支持されている。また、カムフォロワ243が、回転軸242と一体で回転するように、この回転軸242の両端に取り付けられている。
【0042】
また、回転軸242には、トーションスプリング244が取り付けられており、トーションスプリングの一端は、回転軸242に固定されたバネ受け部材245に取り付けられている。他端は、フランジ取り付け部材241を貫通して、
図4に示すカムフォロワ243のバネ受け穴243aに取り付けられており、図中矢印Fに示すように、カムフォロワ243を受け渡し胴202の中心側へ付勢している。また、カムフォロワ243には、カム260のカム面260aに当接するカム突起部243bが設けられている。
【0043】
次に、ベルト対向位置Kでの用紙グリッパ202aのくわえ込み解除について、
図6、
図7を用いて説明する。
図6は、カムフォロワ243のカム突起部243bが、カム面260aに当接した状態を示す図であり、
図7は、カムフォロワ243のカム突起部243bが、カム面の頂部付近にきた状態を示す図である。
図6に示すように受け渡し胴202の回転によって、用紙グリッパ202aがベルト対向位置に近づいていくと、カムフォロワ243のカム突起部243bが、カム面260aに当接する。カム面260aは、受け渡し胴の回転方向において、凸曲面となっている。従って、カム面260aに当接したカム突起部243bが、受け渡し胴202の回転に伴いカム面260aを移動していく。そして、カム面260傾斜部に案内され、カム突起部243bが、トーションスプリング244の付勢力に抗して、受け渡し胴202の外側へ移動する。これにより、カムフォロワ243が、回転軸242とともに図中時計回りに回転し、回転軸242に取り付けられたグリッパ取り付け部材247とともに用紙グリッパ202aが図中時計回りに回動して、用紙グリッパ202aによる用紙のくわえ込みが解除される。このように、ベルト対向位置Kで用紙グリッパ202aによるくわえ込みが解除された用紙の先端は、搬送ベルト325へ落下する。
【0044】
図8は、普通紙が受け渡し胴202から搬送ベルト325へ受け渡される様子を示す図である。
図8(a)用紙グリッパ202aにより用紙先端のくわえ込みが解除されると、用紙の先端は、自重により搬送ベルトへ落下する。用紙の先端が搬送ベルトに接触すると、
図8(b)に示すように、第一吸引部340の吸引力により用紙先端部分が搬送ベルト325へ引き寄せられ、用紙の先端部分が搬送ベルト325に吸着し、用紙先端部分よりも用紙搬送上流側の撓み部分(受け渡し胴202から離れている部分)と用紙先端部分との境界がいわば座屈した形になる。そして、用紙の先端部分が搬送ベルト325に吸着した後、用紙の先端部分が搬送ベルト325とともに搬送される。
【0045】
図9は、厚紙が受け渡し胴202から搬送ベルト325へ受け渡される様子を示す図である。
図9(a)用紙グリッパ202aにより用紙先端のくわえ込みが解除されると、用紙の先端が自重により搬送ベルトへ落下する。厚紙においては用紙のコシが第一吸引部340の吸引力より強いため、用紙の先端が搬送ベルトに接触した後、用紙の先端部分が搬送ベルトに吸着せずに、搬送ベルト上を滑る。そして、用紙の先端側が搬送ベルト325に近づいたところで、用紙の先端部分が搬送ベルトに吸着し、用紙が搬送ベルトともに搬送される。このように、厚紙などのコシの強い用紙は、搬送ベルトに用紙の先端が接触した後、搬送ベルト上を滑ってしまうため、
図8(b)と
図9(b)とを比較してわかるように、厚紙のときの用紙の先端の位置が、普通紙のとき用紙先端の位置よりも用紙搬方向下流側に位置し、規定の位置(普通紙のとき用紙先端の位置)に対して位置がずれてしまう。
【0046】
このような位置ずれが生じてしまうと、反転搬送機構500と排紙部400との分岐部への到達タイミングがずれてしまい、本来搬送されるべき搬送先とは、異なる搬送先に搬送されるおそれがあり、搬送不良が生じるおそれがある。
【0047】
そこで、本実施形態においては、搬送ベルト325に突き当て突起324を設けている。
【0048】
図10は、本実施形態における受け渡し胴202から搬送ベルト325へ受け渡される様子を示す図である。
図10(a)に示すように、自重で搬送ベルトに落下した用紙の先端に対し下流側近傍に、突き当て突起324がくるように搬送制御されている。これにより、用紙の先端が自重で搬送ベルトに落下した後、用紙先端が搬送ベルト上を滑って搬送方向に移動しようとすると、用紙の先端が突き当て突起324に突き当たり、用紙方向の移動が規制される。これにより、厚紙等のコシの強い用紙を搬送ベルト上の規定の位置に位置させることができる。その結果、反転搬送機構500と排紙部400との分岐部への到達タイミングがずれなどの不具合が発生するのを抑制することができる。
【0049】
なお、搬送ベルトに落下した用紙の先端と突き当て突起324との隙間は、搬送不良などが生じない位置ずれ許容範囲内であればよい。
【0050】
図11は、突き当て突起324の一例について示す図であり、
図12は、突き当て突起324と受け渡し胴202の用紙グリッパ202aとの位置関係を示す斜視図である。
図11に示すように、突き当て突起324は、搬送ベルト325の幅方向に所定の間隔を2つ設けている。また、突き当て突起324は、搬送ベルト325の搬送方向に、用紙間隔(用紙の搬送方向長さ+紙間)を開けて設けられている。また、
図11に示すように、搬送ベルト325の繋ぎ目325aが紙間にくるように突き当て突起324が設けられている。これは、搬送ベルト325の繋ぎ目325a部分は、吸引機構330の吸引力作用しないため、この繋ぎ目325aに用紙が乗っかると用紙を吸引保持できないからである。
【0051】
また、突き当て突起324は、
図12に示すように受け渡し胴202の用紙グリッパ202aの間に位置するように設けられている。これにより、ベルト対向位置Kおいて、くわえ込み解除状態の用紙グリッパ202aが突き当て突起324に当たるのを防止することができる。
【0052】
また、突き当て突起324の大きさ(搬送方向長さ×幅方向長さ)は、
図13に示すように、搬送ベルト325の網目とほぼ同一となっている。また、搬送ベルト325の網目状のワイヤに縫いこむことで突き当て突起324を搬送ベルト325に固定している。
【0053】
製造誤差などにより、受け渡し胴202の用紙グリッパ202aがベルト対向位置Kおいて、用紙くわえ込みを解除するタイミングが、用紙幅方向で異なる場合がある。このように、用紙くわえ込みを解除するタイミングが、用紙幅方向で異なると、用紙の先端が搬送ベルトに接触するタイミングが用紙幅方向で異なる。その結果、用紙幅方向一端側と他端側とで、搬送ベルト上のすべり量が異なり、用紙スキューが発生するおそれがある。また、用紙スキューは、搬送ベルトの摺動抵抗が、用紙幅方向に異なる場合、搬送ベルト上の用紙すべり量が幅方向で異なり、スキューが発生するおそれもある。
【0054】
突き当て突起324が、搬送ベルト幅方向の中央にひとつだけの場合は、用紙の幅方向両側のすべりを規制することができない。その結果、用紙の先端が突き当て突起324に突き当たることで、用紙の搬送方向の位置は規制できるが、用紙スキューが生じるおそれがあった。
【0055】
しかし、搬送ベルト325の幅方向に所定の間隔を開けて突き当て突起324を2つ設けることで、用紙幅方向両側のすべりを、各突き当て突起324で良好に規制することができ、用紙の位置ずれを抑制できるとともに、用紙スキューも抑制でき好ましい。
【0056】
また、突き当て突起324を、搬送ベルトの搬送方向に3つ以上設けもよいし、
図15に示すように、突き当て突起324を、搬送ベルト325の搬送方向に長い形状にしてもよい。
図14、
図15に示す構成でも、用紙のスキューと、用紙の位置ずれを良好に抑制することができる。
【0057】
突き当て突起324に用紙の先端を突き当てて受け渡し胴202から搬送ベルト325への受け渡し時の用紙先端のすべりを抑制するには、用紙の先端が搬送ベルト325に接触したとき、その手前に突き当て突起324がくるようにする必要がある。そのため、本実施形態では、次のようにして、搬送ベルト325の駆動を制御して用紙の先端が搬送ベルト325に接触したとき、その手前に突き当て突起324がくるようにしている。
【0058】
図16は、搬送ベルト325の駆動制御について説明する図である。
図16に示すように、用紙担持ドラム210と受け渡し胴202との対向位置に用紙グリッパ202aを検知するグリッパセンサ13と、搬送ベルト325と対向する所定の位置に突き当て突起324を検知する突起センサ12とが設けられている。搬送ベルト325を駆動する駆動モータ11を制御する制御部10は、グリッパセンサ13と突起センサ12との検知結果に基づいて、駆動モータ11を制御する。この
図16では、支持ローラ323に駆動モータ11の駆動力を入力しているが、支持ローラ322に駆動モータ11の駆動力を入力してもよい。
【0059】
図17は、搬送ベルト325の駆動制御のフロー図である。
まず、制御部10は、グリッパセンサ13が用紙グリッパ202aを検知(S1のYes)したら、タイマをスタートさせ時間計測を開始する(S2)。突起センサ12が突き当て突起324を検知(S3のYes)したらタイマを止めて時間計測を終了する(S4)。
【0060】
次に、制御部10は、計測時間(グリッパセンサ13が用紙グリッパ202aを検知してから突起センサ12が突き当て突起324を検知するまでの時間)と、規定の時間との差分値を算出する。上記規定時間は、用紙の先端が受け渡し胴202の用紙グリッパ202aにくわえ込まれから突起センサ12の検知位置に到達するまでの時間であり、次のようにして理論的に求めることができる。すなわち、
図16に示すように、グリッパセンサ13の位置から用紙の先端がリリースされるベルト対向位置Kまでの搬送距離をX1、ベルト対向位置Kから突起センサ12までの搬送距離X2、受け渡し胴202の搬送速度をV1,搬送ベルトの搬送速度をV2とすると、規定時間Tは、T=X1×V1+X2×V2となる。本実施形態では、受け渡し胴202の搬送速度V1と搬送ベルトの搬送速度V2は、同速度V0であるので、T=(X1+X2)×V0となる。
【0061】
計測時間が、規定時間(差分値0)のとき(S5のYes)は、用紙の先端が搬送ベルト325に接触したとき、その手前に突き当て突起324位置しているので、そのまま終了する。
【0062】
一方、計測時間が、規定時間よりも短い場合(S5のNo,S6のYes)は、所定時間、ベルト速度を遅くし(S7)、規定時間よりも長い場合(S5のNo,S6のNo)は、所定時間、ベルト速度を速める(S8)。そして、計測時間が、規定時間(差分値0)となるまで、上記フローを繰り返し行なう。ベルト速度を変化させる割り合いは、計測時間と規定時間との差分値から求める。一方、ベルト速度の変化の割合を一定とし、上記所定時間を差分値に基づいて変化させてもよい。
【0063】
図17に示した制御フローは、例えば、電源投入時などのタイミングで行なえばよい。搬送ベルト325の周長は、用紙間隔(突き当て突起32の間隔)の整数倍であり、搬送ベルトは一定の速度で回転する。よって、突き当て突起324が規定のタイミングでベルト対向位置にくるように制御した後は、突き当て突起324がベルト対向位置にくるタイミングがずれることがほぼない。このように、搬送ベルト325の周長は、用紙間隔(突き当て突起324の間隔)の整数倍とすることで、上記制御フロー実行後は、搬送ベルト325を一定の速度で回転させるという簡単な制御で、突き当て突起324が規定のタイミングでベルト対向位置にくるようにできる。なお、常に
図17に示した制御フローを実施して、突き当て突起324がベルト対向位置にくるタイミングがずれてないか確認してもよい。
【0064】
また、乾燥機構301を拡張するときも交換される搬送ベルト325の周長を、用紙間隔の整数倍とする。これにより、拡張前と同様なベルト駆動制御で、突き当て突起324が規定のタイミングでベルト対向位置にくるようにでき好ましい。
【0065】
図18は吸引機構330の概略斜視図である。
吸引機構330は、搬送ベルト325における用紙を担持するベルト部分の内周面に対向する吸引プレート361を備えている。吸引プレート361には、複数の吸引口361aが形成されている。また、吸引プレート361と搬送ベルト325との間には、搬送ベルト325の内周面から下支えする下支え部材としてのベルト支持ロッド349がベルト幅方向に所定の間隔を開けて5本設けられている。
【0066】
これらベルト支持ロッド349により搬送ベルト325が吸引プレート361の吸引口361aにより吸引されて吸引プレート361に吸着するのを抑制することができる。これにより、搬送ベルト325と吸引プレート361との間の通気構造部分(吸引プレート361の吸引口361aが形成されていない部分)が塞がれてしまうのを抑制することができる。これにより、搬送ベルト325の吸引孔の吸い込み気流の低下を抑制することができ、良好に搬送ベルト325に用紙を吸着させることができる。
【0067】
吸引プレート361の搬送ベルトと対向する側と反対側には、第一吸引部340の排気ダクト341と、第二吸引部350の吸引チャンバー355とが配置されている。排気ダクト341内には、複数の軸流ファン342が吸引プレート361と対向するように配置されている。
【0068】
第二吸引部350は、搬送ベルト325の内周面(裏面)によって囲まれたベルト内空間に配置される吸引チャンバー355と、ベルト内空間の外側に配置される減圧チャンバー353と、吸引チャンバー355及び減圧チャンバー353を連通させる接続通路としての連結ダクト354と、減圧チャンバー353及び吸引装置351を接続する吸引ダクト352とを有している。
【0069】
図19は、第二吸引部350における吸引チャンバー355の内部構造を示す断面図である。なお、
図19は、用紙搬送方向に直交する断面を示す模式図である。
第二吸引部350は、吸引装置351により吸引ダクト352を介して減圧チャンバー353内を吸引することで減圧チャンバー353内を負圧状態にし、減圧チャンバー353内の負圧によって、連結ダクト354を介して吸引チャンバー355内を吸引する。吸引チャンバー355内は、仕切板356によって、上チャンバー部341Aと下チャンバー部341Bとに、上下に区分けされている。上チャンバー部341Aと下チャンバー部341Bとは、仕切板356に形成されている第一連通口356aと第二連通口356bによって連通している。
【0070】
複数の連通口356a,356bは、用紙搬送方向に沿って長尺な長孔の貫通孔であり、本実施形態では、用紙Pの幅方向両端端部にそれぞれ対向する位置に開口している。本実施形態では、連通口356a,356bの数が2つである例について説明するが、3つ以上であってもよい。
【0071】
本実施形態において、吸引装置351により吸引すると、吸引ダクト352、減圧チャンバー353、連結ダクト354、下チャンバー部355Bが負圧となり仕切板356の複数の連通口356a,356bには、上チャンバー部355A内の空気を吸引する吸い込み気流が発生する。これにより、上チャンバー部355A内の空気(気体)が下チャンバー部355Bへ吸い込まれ、上チャンバー部355A内が負圧状態になる。
【0072】
上チャンバー部355Aが負圧状態となることで、吸引プレート361の吸引口361aには、吸引プレート361と搬送ベルト325との間の領域355A1の空気を吸引する吸い込み気流が発生する。これにより、吸引プレート361と搬送ベルト325との間の領域355A1が負圧状態となり、搬送ベルト325上の用紙Pを搬送ベルト325の吸引孔から吸引し、用紙Pを搬送ベルト325に吸着させる。
【0073】
本実施形態においては、第一連通口356aと第二連通口356bとの間の吸引能力の差を小さくするために、下チャンバー部341Bの内部に、複数の連通口356a,356bの各々から共通の連結ダクト354へ向かう各吸引流路間を仕切る仕切部材357を設けている。このような仕切部材357を設けることで、仕切られた各吸引流路の流路断面積(流路方向に対して直交する断面積)を調整することが可能となる。具体的には、例えば、吸引流路長が長い第二連通口356bの吸引流路の流路断面積を相対的に大きく調整することで、第一連通口356aと第二連通口356bとの間の流路抵抗の差を小さくでき、第一連通口356aと第二連通口356bとの間の吸引能力の差を小さくすることが可能である。
【0074】
また、本実施形態においては、
図18に示すように、連結ダクト354が複数の連通口356a,356bの開口している搬送方向範囲Lにわたって吸引チャンバー355に開口している。これにより、連結ダクト354が複数の連通口356a,356bの開口している搬送方向範囲Lの一部分のみで吸引チャンバー355に開口している場合よりも、用紙搬送方向における吸引ムラを低減することができる。特に、本実施形態のように連結ダクト354が吸引チャンバー355に開口する用紙搬送方向範囲と、複数の連通口356a,356bが開口している搬送方向範囲Lとをほぼ同じ範囲に設定するのが好ましい。
【0075】
次に、吸引機構330の第一吸引部340について説明する。
図20は、第一吸引部340の斜視図であり、
図21は、第一吸引部340の用紙搬送方向に沿って切断したときの断面図であり、
図22は、第一吸引部340を用紙搬送方向に直交する断面に沿って切断したときの断面図である。
第一吸引部340は、主に排気ダクト341と複数の軸流ファン342とで構成されている。
図20に示すように、搬送ベルト325の幅方向に5つの軸流ファン342が並べて配置された軸流ファン群が、用紙搬送方向に5つ並べて配置されている。すなわち、合計25個の軸流ファンが、搬送ベルト325の幅方向、用紙搬送方向に並べて配置されている。
【0076】
第一吸引部340では、複数の軸流ファン342によって、吸引プレート361の吸引口361aから排気ダクト341へ空気を吸引することにより、吸引プレート361と搬送ベルト325の間の空間を負圧状態にする。これにより、搬送ベルト325の吸引孔から用紙を吸引し、用紙を搬送ベルト325に吸引することができる。吸引口361aから排気ダクト341へ吸引された空気は、排気ダクト341を介して排気される。なお、排気ダクト341は必ずしも設ける必要はない。
【0077】
第一吸引部340においては、搬送ベルト325の内部空間に吸引手段(軸流ファン)を配置しているので、圧力損失が少なく、吸引力の弱い安価な軸流ファンお用いても、良好に用紙を搬送ベルトに吸着させることができる。これにより、消費電力を抑えることができ、かつ、安価に構成することができる。乾燥機構301と対向する箇所の吸引の構造を、第一吸引部と同様な構成とすると、軸流ファンなどの吸引手段が、乾燥機構301の熱の影響で破損してしまう。従って、乾燥機構301と対向する箇所においては、搬送ベルト325の内部空間に吸引手段を配置することができない。そのため、乾燥機構と対向する領域の第二吸引部350については、搬送ベルト325の内部空間には、負圧手段としての吸引チャンバーを配置し、搬送ベルト325の内部空間の外側で、吸引手段で吸引チャンバーから空気を吸引して負圧にすることで、用紙を搬送ベルトに吸着させる構成にした。これにより、吸引手段たる吸引装置351が、直接、乾燥機構の熱の影響を受けないようにでき、吸引装置が乾燥機構の熱の影響で破損してしまうのを抑制することができる。
【0078】
なお、乾燥機構と対向する領域外の受け渡し胴202から用紙が受け渡される受け渡し領域まで吸引チャンバーを延設させ、受け渡し領域も第二吸引部の吸引装置351で吸引する構成とした場合は、次の課題が生じる。すなわち、吸引チャンバーを受け渡し領域まで延設させることで、吸引チャンバーの容積が増大し、圧力損失が増大してしまう。その結果、搬送ベルトに用紙を良好に吸着させる吸引力を得るためには、吸引装置351としてハイパワーの吸引装置351を用いる必要がある。このようにハイパワーの吸引装置351は、高価であり、大きいため、装置のコストアップや装置の大型化に繋がってしまうという不具合が発生する。また、消費電力も大きくなってしまいランニングコストも高くなってしまう。
【0079】
従って、受け渡し胴202から用紙が受け渡される受け渡し領域においては、搬送ベルトの内部空間に吸引手段(軸流ファン)を配置して、直接吸引手段により搬送ベルトの吸引孔から空気を吸引することで、装置のコストアップや大型化、ランニングコスト高を抑制することができる。
【0080】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
用紙などのシート材を搬送する受け渡し胴202などの搬送ドラムと、搬送ドラムから受け渡されたシート材を吸着させて搬送する搬送ベルト325とを有する搬送装置であって、搬送ベルト325にシート材の先端が突き当たる突き当て突起324などの突き当て部を設けた。
これによれば、搬送ドラムから搬送ベルトへのシート材を受け渡し時に、シート材の先端を突き当て部に突き当てることで、規定の位置にシート材を位置させることができ、規定の紙間を維持することができる。
【0081】
(態様2)
態様1において、突き当て突起324などの突き当て部は、搬送ベルト325の幅方向に複数並べて設けられている。
これによれば、実施形態で説明したように、用紙スキューと用紙の位置ズレとを抑制することができる。
【0082】
(態様3)
態様1または2において、受け渡し胴202などの搬送ドラムから搬送ベルト325へ受け渡された前記シート材の先端に対し、シート材搬送方向下流側近傍に前記突き当て部が位置するように、搬送ベルト325の回転を制御する制御部10などの制御手段を設けた。
これによれば、実施形態で説明したように、受け渡し胴202などの搬送ドラムから搬送ベルト325へ受け渡されたシート材の先端が、搬送ベルト325上を用紙搬送方向に滑り出した、シート材の先端を突き当て突起324などの突き当て部に突き当てて先端の移動を規制する。これにより、シート材を搬送不良などが生じない位置ずれ許容範囲内にシートを位置させることができ、位置ずれによる搬送不良が生じるのを抑制することができる。
【0083】
(態様4)
態様3において、搬送ベルト325のベルト長を、シート材の搬送間隔の整数倍とした。これにより、受け渡し胴202などの搬送ドラムから搬送ベルト325へ受け渡されたシート材の直前に突き当て突起324などの突き当て部が位置するように調整した後は、搬送ベルトを一定速度で回転させるだけで、受け渡し胴202などの搬送ドラムから搬送ベルト325へ受け渡されたシート材の直前に突き当て部を位置させることができる。これにより、簡単な制御で、受け渡し胴202などの搬送ドラムから搬送ベルト325へ受け渡されたシート材の直前に突き当て部を位置させることが可能となる。
【0084】
(態様5)
態様1乃至4において、搬送ベルト325は、シート材を乾燥機構301などのシート材乾燥部へ搬送するものであって、搬送ベルト325は、メッシュベルトである。
これによれば、搬送ベルトにシート材を良好に吸着させることができ、安定したシート搬送を実現することができる。
【0085】
(態様6)
態様1乃至5いずれかにおいて、搬送ベルト325は、シート材をシート材乾燥部へ搬送するものであって、搬送ベルト325の受け渡し胴202などの搬送ドラムからシート材が受け渡される受け渡し領域に配置され、搬送ベルト325の通気部から搬送ベルト上のシート材を吸引してシート材を搬送ベルトに吸着させる第一吸引部340などの第一吸引手段と、搬送ベルト325のシート材乾燥部がシート材を乾燥する乾燥領域に配置され、通気部から搬送ベルト上のシート材を吸引してシート材を搬送ベルトに吸着させる第二吸引部350などの第二吸引手段とを備えた。
これによれば、実施形態で説明したように、第二吸引部350などの第二吸引手段を、耐熱性を考慮した吸引手段にでき、第一吸引部340などの第一吸引手段を、耐熱性を考慮していない安価な吸引手段を用いることができ、装置の耐久性と装置のコストアップ抑制の両立を図ることができる。
【0086】
(態様7)
態様6において、第一吸引部340などの第一吸引手段は、搬送ベルト325の内周面に対向配置された複数の軸流ファン342などの送風手段で構成されており、第二吸引部350などの第二吸引手段は、搬送ベルト325の内部空間を負圧状態にする負圧手段(本実施形態では、吸引チャンバー355、減圧チャンバー353、連結ダクト354と、吸引ダクト352、吸引装置351などで構成)で構成されている。
これによれば、実施形態で説明したように、第一吸引部340などの第一吸引手段は、安価な構成で良好な吸引力を得ることができる。一方、第二吸引部350などの第二吸引手段は、搬送ベルト325の内周面に吸引手段を配置しないので、耐熱性に強く、シート材乾燥部の熱により第二吸引手段が破損するのを抑制することができる。
【0087】
(態様8)
搬送装置と、搬送装置による搬送中のシート材を乾燥させる乾燥機構301とを備えた乾燥部300などの乾燥装置において、搬送装置として、態様1乃至7のいずれかの搬送装置を用いた。
これによれば、用紙の位置ずれが生じることなく、規定の紙間で搬送することができる。
【0088】
(態様9)
シート材に液体を吐出させる液体吐出ヘッド220C,220M,220Y,220K等の液体吐出手段と、シート材を搬送する搬送装置とを備えたインクジェット記録装置1などの画像形成装置において、搬送装置として、態様1乃至7のいずれかの搬送装置を用いた。
これによれば、用紙の位置ずれが生じることなく、規定の紙間で搬送することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 :インクジェット記録装置
10 :制御部
11 :駆動モータ
12 :突起センサ
13 :グリッパセンサ
32 :突き当て突起
200 :画像形成部
200a :側板
201 :受け取り胴
201a :用紙グリッパ
202 :受け渡し胴
202a :用紙グリッパ
202b :フランジ部材
210 :用紙担持ドラム
210a :用紙グリッパ
211 :吸引装置
220 :インク吐出部
220C :液体吐出ヘッド
220K :液体吐出ヘッド
220M :液体吐出ヘッド
220Y :液体吐出ヘッド
241 :フランジ取り付け部材
242 :回転軸
243 :カムフォロワ
243a :バネ受け穴
243b :カム突起部
244 :トーションスプリング
245 :バネ受け部材
247 :グリッパ取り付け部材
260 :カム
260a :カム面
300 :乾燥部
301 :乾燥機構
301a :温風ブロワ
301b :乾燥チャンバー
302 :搬送機構
313 :乾燥チャンバー
320 :ベルト搬送機構
324 :突き当て突起
325 :搬送ベルト
325a :繋ぎ目
330 :吸引機構
340 :第一吸引部
341 :排気ダクト
341A :上チャンバー部
341B :下チャンバー部
342 :軸流ファン
349 :ベルト支持ロッド
350 :第二吸引部
351 :吸引装置
352 :吸引ダクト
353 :減圧チャンバー
354 :連結ダクト
355 :吸引チャンバー
355A :上チャンバー部
355B :下チャンバー部
356 :仕切板
356a :第一連通口
356b :第二連通口
357 :仕切部材
361 :吸引プレート
361a :吸引口
400 :排紙部
410 :排紙トレイ
500 :反転搬送機構
【先行技術文献】
【特許文献】
【0090】