(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】ループ型ヒートパイプ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20220120BHJP
【FI】
F28D15/02 101L
F28D15/02 106Z
F28D15/02 L
(21)【出願番号】P 2017254686
(22)【出願日】2017-12-28
【審査請求日】2020-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091672
【氏名又は名称】岡本 啓三
(74)【代理人】
【識別番号】100180459
【氏名又は名称】二階堂 裕
(72)【発明者】
【氏名】木曽 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】倉嶋 信幸
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/087451(WO,A1)
【文献】特開2002-231868(JP,A)
【文献】特開2000-274972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属層を積層した構造からなり、
作動流体を気化させる蒸発器と、
前記気化した作動流体を液化する凝縮器と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する蒸気管と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管と
を有するループ型ヒートパイプであって、
前記ループ型ヒートパイプの最外層に配置された第1金属層の外側表面に、前記外側表面から内側表面側に窪む第1の溝部が形成され、
前記第1金属層は、前記ループ型ヒートパイプの内部に形成された流路の管壁の一部を構成し、
前記流路と接する前記第1金属層の前記内側表面において、前記第1の溝部が形成された領域に対応する面には、前記第1の溝部と平行かつ第1の溝部とは重ならない位置に第3の溝部が形成されていることを特徴とするループ型ヒートパイプ。
【請求項2】
前記第1金属層とは反対側の最外層に配置された第2金属層の外側表面において、前記第1の溝部が形成された領域と重なる位置に第2の溝部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項3】
前記第2金属層は、前記ループ型ヒートパイプの内部に形成された流路の管壁の一部を構成し、
前記流路と接する前記第2金属層の内側表面において、前記第2の溝部が形成された領域に対応する面には、前記第2の溝部と平行かつ第2の溝部とは重ならない第4の溝部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項4】
前記第1の溝部は前記蒸気管または液管に形成されていることを特徴とする請求項1乃至
3の何れか一項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項5】
前記第1の溝部が形成された領域において、前記第1の溝部が内側となり、かつ、曲げ線方向が前記第1の溝部に対して平行となるように折り曲げられていることを特徴とする請求項1乃至
4の何れか一項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項6】
ループ型ヒートパイプの製造方法であって、
複数の金属層を用意する工程と、
前記複数の金属層を積層することにより、蒸発器、凝縮器、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する蒸気管、及び前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管を形成する工程と、
積層された前記複数の金属層のうちで最表面に配置される第1金属層の外側表面に、前記外側表面から内側表面側に窪む第1の溝部を形成する工程と、
前記第1金属層の前記内側表面において、前記第1の溝部が形成された領域に対応する面の、前記第1の溝部と平行かつ第1の溝部とは重ならない位置に、第3の溝部を形成する工程と、を有し、
前記第1金属層は、前記ループ型ヒートパイプの内部に形成された流路の管壁の一部を構成し、前記第1金属層の内側表面は前記流路と接することを特徴とするループ型ヒートパイプの製造方法。
【請求項7】
前記第1の溝部が形成された領域において、前記第1の溝部が内側となり、かつ、曲げ線方向が前記第1の溝部に対して平行となるように折り曲げる工程を有することを特徴とする請求項
6に記載のループ型ヒートパイプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ループ型ヒートパイプ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートホン、タブレット、又はノートPCなどのモバイル機器は、性能向上と小型/薄型化が進み、単位面積当たりの発熱量が増加している。
【0003】
このようなモバイル機器では、送風用ファンや水冷用ポンプを組み込むことができないため、熱伝導率の高い金属シートを用いて冷却を行っている。
【0004】
しかし、発熱量がさらに増えると金属シートだけでは十分な放熱を行うことができない。そこで、発熱部品の熱を吸収する蒸発器と、熱を放熱する凝縮器とを管でループ状に接続し、内部に作動流体を封入したループ型ヒートパイプが開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-287577号公報
【文献】WO2015/087451号公報
【文献】特開2016-95108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ループ型ヒートパイプを電子機器に収容する際に、蒸発器と凝縮器との間で高さ位置を変える必要がある場合は、蒸発器と凝縮器とを接続する管を曲げ加工する必要がある。
【0007】
管の内部は小さな矩形状の空洞になっている。このため、管を曲げ加工すると、曲げ方向の内側の管壁に圧縮応力が発生し、内側の管壁が管内部に押されて移動する。また、曲げの外側の管壁に引張り応力が発生し、外側の管壁が管内部に引っ張られて移動する。これにより、管が閉塞してしまい、ループ型ヒートパイプとして機能しなくなる。
【0008】
ループ型ヒートパイプ及びその製造方法において、蒸発器と凝縮器とを接続する管を曲げ加工しても管が閉塞しない新規な構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下の開示の一観点によれば、複数の金属層を積層した構造からなり、作動流体を気化させる蒸発器と、前記気化した作動流体を液化する凝縮器と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する蒸気管と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管とを有するループ型ヒートパイプであって、前記ループ型ヒートパイプの最外層に配置された第1金属層の外側表面に、前記外側表面から内側表面側に窪む第1の溝部が形成され、前記第1金属層は、前記ループ型ヒートパイプの内部に形成された流路の管壁の一部を構成し、前記流路と接する前記第1金属層の前記内側表面において、前記第1の溝部が形成された領域に対応する面には、前記第1の溝部と平行かつ第1の溝部とは重ならない位置に第3の溝部が形成されているループ型ヒートパイプが提供される。
【発明の効果】
【0011】
以下の開示によれば、ループ型ヒートパイプの蒸気管及び液管は曲げ加工される曲げ加工領域を有する。そして、曲げ加工領域における蒸気管及び液管の曲げ方向の内側になる各管壁の外面に、曲げ方向と交差する方向に溝部が形成されている。
【0012】
このため、蒸気管及び液管を曲げ加工すると、曲げ方向の内側の管壁の外面に配置された溝部が曲げ応力で押されて閉口し、溝部の対向する側壁が接触又は接近して切込部となる。
【0013】
これにより、曲げ加工領域の内側の管壁での圧縮応力による変形が緩和され、内側の管壁が管内部に曲げ応力で押されて移動する量が減少する。よって、蒸気管及び液管を曲げ加工しても管が閉塞することがなく、十分な断面積を有する流路を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(a)及び(b)は本願発明者の検討で使用したループ型ヒートパイプの斜視図及び断面図である。
【
図2】
図2は第1実施形態のループ型ヒートパイプを示す平面図である。
【
図3】
図3(a)は
図2のループ型ヒートパイプの蒸気管のX1-X1に沿った部分断面図、
図3(b)は
図3(a)の蒸気管を曲げ加工した様子を示す部分断面図である。
【
図4】
図4は
図2のループ型ヒートパイプの蒸気管のX2-X2に沿った部分断面図である。
【
図5】
図5は
図2のループ型ヒートパイプの液管のX3-X3に沿った部分断面図である。
【
図6】
図6(a)及び(b)は第1実施形態のループ型ヒートパイプの製造方法を示す断面図及び側面図(その1)である。
【
図7】
図7(a)及び(b)は第1実施形態のループ型ヒートパイプの製造方法を示す断面図及び側面図(その2)である。
【
図8】
図8(a)は第2実施形態のループ型ヒートパイプの蒸気管の溝部を示す部分断面図、
図8(b)は
図8(a)の蒸気管を曲げ加工した様子を示す部分断面図である。
【
図9】
図9は第2実施形態のループ型ヒートパイプの製造方法を示す断面図である。
【
図10】
図10(a)は第3実施形態のループ型ヒートパイプの蒸気管の溝部を示す部分断面図、
図10(b)は
図10(a)の蒸気管を曲げ加工した様子を示す部分断面図である。
【
図11】
図11は第3実施形態のループ型ヒートパイプの製造方法を示す断面図である。
【
図12】
図12は実施形態のループ型ヒートパイプの第1の適用例を示す断面図である。
【
図13】
図13は実施形態のループ型ヒートパイプの第2の適用例を示す断面図である。
【
図14】
図14は実施形態のループ型ヒートパイプの第3の適用例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0016】
実施形態の説明の前に、本願発明者が行った検討結果について説明する。
【0017】
図1(a)に示すように、ループ型ヒートパイプは、電子機器に収容されるものであり、蒸発器100と凝縮器200とを備えている。蒸発器100及び凝縮器200には蒸気管300と液管400とが接続されており、これにより、作動流体が流れる流路が形成されている。
【0018】
発熱部品の上に蒸発器100が固定され、発熱部品の熱により作動流体の蒸気が生成される。蒸気は、蒸気管300を通って凝縮器200に導かれ、凝縮器200で液化する。また、液体が液管400を通って蒸発器100に戻される。このようにして、発熱部品の熱が凝縮器200に移動して外部に放熱される。
【0019】
ループ型ヒートパイプは、複数の平らな銅層をエッチング加工し、それらの銅層を積層して接合することにより製造されるため、同一平面構造を有する。
【0020】
このため、電子機器内の発熱部品の上にループ型ヒートパイプの蒸発器100を固定すると、蒸発器100と凝縮器200とは同じ高さ位置に配置される。
【0021】
しかし、ループ型ヒートパイプの凝縮器200を電子機器の筐体の側板や天板の開口部に配置して外部に熱を放熱する必要がある場合は、蒸発器100と凝縮器200とを接続する蒸気管300及び液管400を曲げ加工する必要がある。
【0022】
ループ型ヒートパイプの蒸気管300及び液管400の内部の流路は、断面視において小さな矩形状の空洞になっている。このため、
図1(b)に示すように、蒸気管300及び液管400を曲げ加工すると、曲げ方向の内側の管壁P1で圧縮応力が発生し、曲げ方向の外側の管壁P2で引張り応力が発生する。
【0023】
これにより、蒸気管300及び液管400の曲げ加工された管壁P1と管壁P2とが管内部に曲げ応力で押されて移動して接触するため、蒸気管300及び液管400が閉塞してしまい、ループ型ヒートパイプとして機能しなくなる。
【0024】
以下に説明する実施形態のループ型ヒートパイプ及びその製造方法では、前述した課題を解消することができる。
【0025】
(第1実施形態)
図2は第1実施形態のループ型ヒートパイプの全体の様子を模式的に示す平面図である。
図3~
図5は
図2のループ型ヒートパイプの蒸気管及び液管を説明するための図である。
図6及び
図7は第1実施形態のループ型ヒートパイプの製造方法を説明するための図である。
【0026】
図2に示すように、実施形態のループ型ヒートパイプ1は、発熱部品が発する熱によって作動流体を気化させる蒸発器10と、気化した作動流体を液化させる凝縮器20とを備えている。さらに、ループ型ヒートパイプ1は、蒸発器10と凝縮器20とを接続する蒸気管30と、蒸発器10と凝縮器20とを接続する液管40とを備えている。
【0027】
このようにして、蒸気管30及び液管40によって作動流体が流れるループ状の流路が形成される。凝縮器20には紆曲状の流路Fが配置されており、その流路Fが蒸気管30及び液管40にそれぞれ繋がっている。
【0028】
発熱部品の上にループ型ヒートパイプ1の蒸発器10に固定され、発熱部品から発する熱により作動流体の蒸気が生成される。発熱部品は、例えば、CPUチップなどの半導体チップである。
【0029】
作動流体が蒸発するときの気化熱により発熱部品の温度を下げる。そして、蒸気は蒸気管30を通って凝縮器20に導かれ、蒸発器10で得た熱を凝縮器20で放熱することによって液化する。
【0030】
このようにして、発熱部品が発した熱が凝縮器20に移動され、外部に放熱される。凝縮器20で液化した作動流体は、液管40を通って蒸発器10に戻される。作動流体としては、例えば、アンモニア、水、フロン又はアルコールなどの蒸気圧の高い流体が使用される。
【0031】
前述したように、
図2のループ型ヒートパイプ1の凝縮器20を電子機器の筐体の側板や天板の開口部に配置して外部に熱を放熱する必要がある場合は、蒸発器10と凝縮器20とを接続する蒸気管30及び液管40を曲げ加工する必要がある。
【0032】
図2のループ型ヒートパイプ1は曲げ加工される前の状態であり、後に曲げ加工される曲げ加工領域Rを有する。
【0033】
そして、
図2に示すように、第1実施形態のループ型ヒートパイプ1では、蒸気管30及び液管40を曲げ加工する際に管が閉塞しないように、曲げ加工領域Rの蒸気管30及び液管40の各外面に複数の第1の溝部G1が並んで形成されている。第1の溝部G1は蒸気管30及び液管40の幅方向に線状に延びて形成される。
【0034】
図3(a)は、
図2のループ型ヒートパイプ1の蒸気管30のX1-X1に沿った部分断面図である。蒸気管30の内部は、幅方向の断面視において小さな矩形状の空洞となっている。
図3(a)には、
図2の蒸気管30の上面側の管壁P1と下面側の管壁P2とが示されている。
【0035】
図3(a)に示すように、第1実施形態では、曲げ加工領域Rにおける蒸気管30の曲げ方向Wの内側になる管壁P1の外面に、複数の第1の溝部G1が並んで形成されている。第1の溝部G1は、曲げ方向Wと交差する方向に線状に延びて形成される。曲げ方向Wと交差する方向は、蒸気管30の幅方向(
図2)と同じ方向である。
【0036】
好適には、第1の溝部G1は曲げ方向Wと直交する方向に配置されるが、交差角度は直角から多少ずれていていてもよく、曲げ方向Wと交差していればよい。
【0037】
蒸気管30の管壁P1の厚さTは例えば0.1mm程度であり、第1の溝部G1の深さDは例えば50μm程度に設定される。また、複数の第1の溝部G1が並んで配置される曲げ加工領域Rの長さLは1mm程度である。
【0038】
特に図示しないが、
図2の液管40においても、
図3(a)の蒸気管30と同様に、曲げ加工領域Rにおける曲げ方向の内側になる管壁の外面に、複数の第1の溝部G1が並んで形成されている。
【0039】
蒸気管30及び液管40に形成される第1の溝部G1は、蒸気管30及び液管40を曲げ加工する際に曲げ応力による管壁P1の管内部への変形を緩和させるために設けられる。蒸気管30及び液管40の曲げ加工の角度に応じて、第1の溝部G1の深さ、本数、配置ピッチなどが調整される。
【0040】
このようにして、曲げ加工領域Rにおける蒸気管30及び液管40の曲げ方向Wの内側になる各管壁P1の外面に、曲げ方向Wと交差する方向に第1の溝部G1が形成されている。
【0041】
図4は、
図2のループ型ヒートパイプ1の蒸気管30のX2-X2に沿った部分断面図である。
図4に示すように、
図2のループ型ヒートパイプ1の蒸気管30は、6層の金属層51~56が積層されて形成される。6層の金属層51~56を積層することにより、蒸発器10、凝縮器20、蒸気管30及び液管40が同時に構築される。
【0042】
6層の金属層51~56は、例えば、熱伝導性に優れた銅層から形成され、拡散接合により相互に接合される。
【0043】
1層目の金属層51は、
図2のループ型ヒートパイプ1の平面形状で形成される。また、2層目~5層目の金属層52~55は、開口部(52a,53a,54a,55a)が形成された状態で積層される。
【0044】
蒸気管30では、2層目~5層目の金属層52~55の開口部52a~55aが重なって連通することで作動流体の流路Fが構築される。蒸気管30の流路Fは断面視において矩形状で形成される。例えば、流路Fの幅は4mm程度であり、高さは0.4mm程度である。
【0045】
また、6層目の金属層56はループ型ヒートパイプ1の平面形状で形成される。6層目の金属層56の上面に前述した第1の溝部G1が形成されている。
【0046】
このように、最上の6層目の金属層56の外側表面に第1の溝部G1が形成されている。ループ型ヒートパイプの最外層に配置された6層目の金属層56が第1の金属層の一例である。
【0047】
最上の6層目の金属層56は、ループ型ヒートパイプ1の内部に形成された流路の管壁の一部を構成し、流路と接する金属層56の内側表面において、第1の溝部G1が形成された領域に対応する面は平滑な面である。
【0048】
図5は、
図2のループ型ヒートパイプ1の液管40のX3-X3に沿った断面図である。
図5に示すように、ループ型ヒートパイプ1の液管40内には多孔質体42が構築されている。多孔質体42は、液管40に沿って蒸発器10まで延びており、多孔質体42に生じる毛細管力によって液管40内の液相の作動流体が蒸発器10まで誘導される。
【0049】
図5に示すように、第2層目の金属層52から第5層目の金属層55には、厚み方向に貫通する複数の孔(52b,53b,54b,55b)がそれぞれ形成されている。これらの孔52b~55bは平面視で互いにずれて重なって連通しており、これによって多孔質体42の微細な気孔流路が構築される。
【0050】
多孔質体42の気孔流路は多孔質体42内に3次元的に延びており、作動流体が毛細管力でその気孔流路内で3次元的に浸透していく。
【0051】
このように、作動液体を蒸発器10に戻す液管40に毛細管力を発生させる構造を採用することにより、ループ型ヒートパイプ1が装着される電子機器が傾いたりしても、安定して熱輸送を行うことができる。
【0052】
また、蒸発器10から液管40に蒸気が逆流しようとしても、多孔質体42によって作動液体に作用する毛細管力によって蒸気を押し戻すことができ、蒸気の逆流を防止することができる。
【0053】
図2に戻って説明すると、この多孔質体42は、蒸発器10内にも設けられており、蒸発器10内の多孔質体42の気孔流路が蒸気管30に連通して繋がっている。
【0054】
このように、ループ型ヒートパイプ1は、複数の金属層を積層した構造からなる。
【0055】
次に、前述した
図2のループ型ヒートパイプ1の蒸気管30及び液管40を曲げ加工する態様について説明する。
【0056】
図3(b)には、
図3(a)のループ型ヒートパイプ1の蒸気管30が曲げ加工領域Rで曲げ加工された様子が示されている。前述したように、
図3(a)の曲げ加工前の蒸気管30では、曲げ方向Wの内側の蒸気管30の管壁P1の外面に複数の第1の溝部G1が形成されている。
【0057】
このため、
図3(b)に示すように、
図3(a)の蒸気管30を曲げ方向Wに曲げ加工すると、曲げ方向Wの内側の管壁P1の外面に配置された複数の第1の溝部G1が曲げ応力で押されて閉口し、第1の溝部G1の対向する側壁が接触又は接近した状態となる。
【0058】
このとき、曲げ加工された蒸気管30は、曲げ加工領域Rの内側の管壁P1の外面に第1の溝部G1が閉口した切込部C1が配置された状態となる。切込部C1は、第1の溝部G1の対向する側壁が接触又は接近して形成される。
【0059】
図3(b)の例では、切込部C1は、第1の溝部G1の頂点(開口端)同士が接触し、内部に空洞が残されるように形成される。
【0060】
これにより、蒸気管30の曲げ加工領域Rの内側の管壁P1での圧縮応力による管内部への変形が緩和され、蒸気管30の管壁P1が管内部に曲げ応力で押されて移動する量が減少する。よって、蒸気管30を曲げ加工しても蒸気管30が閉塞することがなく、十分な断面積を有する流路を確保することができる。
【0061】
また、蒸気管30が曲げ加工されても、曲げ加工領域Rの蒸気管30の内面は凹凸のなない平滑な曲面となるため、流路での作動液体の流体抵抗が増加することもない。
【0062】
蒸気管30を曲げ加工する際に、液管40も同時に曲げ加工される。液管40においても同様な第1の溝部G1が形成されているため、液管40が閉塞することなく、十分な断面積を有する流路を確保することができる。
【0063】
次に、第1実施形態のループ型ヒートパイプの製造方法について説明する。
【0064】
まず、複数の金属層を用意する。好適には、
図6(a)に示すように、1層目から6層目までの6枚の金属層51~56を用意する。
【0065】
金属層51~56として、例えば、厚みが0.1mm程度の銅層が使用される。最下の第1層目の金属層51と、最上の6層目の金属層56とは、前述した
図2のループ型ヒートパイプ1の平面形状で形成される。
【0066】
2層目から5層目の金属層52~55には、開口部(52a,53a,54a,55a)が形成される。金属層52~55の開口部52a~55aは、前述したループ型ヒートパイプ1の蒸発部10、凝縮器20、蒸気管30及び液管40を構築するようにそれらに対応して形成される。
【0067】
また、前述した
図5で説明したように、液管40に対応する部分の2層目から5層目の金属層52~55には、多孔質体42を構築するための孔(52b,53b,54b,55b)がそれぞれ形成されている。
【0068】
さらに、6層目の金属層56の上面には、前述した
図2及び
図3(a)の蒸気管30及び液管40の第1の溝部G1が予め形成されている。このように、曲げ加工領域Rに対応する最上の金属層56の上面に、曲げ方向Wと交差する方向に第1の溝部G1が形成される。
【0069】
複数の金属層のうち、複数の金属層を積層する工程において最表面に配置される金属層の外側表面に第1の溝部G1を形成する。
【0070】
1層目の金属層51と6層目の金属層56は、
図2のループ型ヒートパイプ1の平面形状になるように金属層がパターニングされて形成される。
【0071】
また、第2層目から第5層目の金属層52~55の各開口部52a~55a、及び各孔52b~55b(
図5)においても、金属層がパターニングされて形成される。
【0072】
金属層の上にフォトリソグラフィによりレジストパターン層を形成し、レジストパターン層をマスクにして金属層がウェットエッチングにより貫通加工される。金属層の両面側からウェットエッチングして貫通加工してもよい。
【0073】
また、最上の金属層56の上面の第1の溝部G1は、レジストパターン層をマスクにして金属層の上面から厚みの途中までウェットエッチングすることにより形成される。
【0074】
金属層51~56が銅層である場合は、エッチング液として、塩化第二銅水溶液、又は塩化第二鉄水溶液などが使用される。
【0075】
あるいは、最上の金属層56の上面をレーザ加工することにより第1の溝部G1を形成してもよい。レーザとして、例えば、炭酸ガス(CO2)レーザが使用される。
【0076】
そして、上記した1層目~6層目の金属層51~56を積層し、900℃の温度で加熱しながらプレスすることによって、接合面に生じる原子の拡散を利用して接合する拡散接合により金属層51~56を相互に接合する。
【0077】
これにより、前述した
図2の蒸発器10、凝縮器20、蒸発器10と凝縮器20とを接続する蒸気管30、及び蒸発器10と凝縮器20とを接続する液管40を形成する。
【0078】
以上により、
図6(b)に示すように、同一平面構造のループ型ヒートパイプ1が製造される。
図6(b)のループ型ヒートパイプ1は前述した
図2の平面図のループ型ヒートパイプ1を蒸気管30側の横方向からみた側面図に相当する。
【0079】
次いで、
図7(a)に示すように、金型として、押え部材60と、ポンチ62とを用意する。そして、
図6(b)のループ型ヒートパイプ1を上下反転させ、第1の溝部G1(不図示)が形成された面を下側に向けた状態で、押え部材60の上にループ型ヒートパイプ1を配置する。
【0080】
このとき、ループ型ヒートパイプ1の蒸気管30及び液管40の第1の溝部G1が配置された曲げ加工領域Rが押え部材60の端部に配置される。
【0081】
さらに、ポンチ62によって、押え部材60からはみ出した領域のループ型ヒートパイプ1を下側に押圧して、蒸気管30及び液管40の曲げ加工領域Rで曲げ加工する。
【0082】
これにより、
図7(b)に示すように、ループ型ヒートパイプ1が曲げ加工領域Rで曲げ加工される。このとき、前述した
図3(b)のように、ループ型ヒートパイプ1の蒸気管30及び液管40が閉塞することなく、曲げ加工される。
【0083】
また、
図7(b)の部分拡大図に示すように、前述した
図3(b)と同様に、曲げ方向Wの内側の蒸気管30の管壁P1の外面に配置された第1の溝部G1が曲げ加工によって閉口して切込部C1となる。
【0084】
このように、第1の溝部G1が形成された領域において、第1の溝部G1が内側となり、かつ、曲げ線方向が第1の溝部G1に対して略平行となるように折り曲げられる。曲げ線方向は、蒸気管30及び液管40を曲げる際に外面に生じる曲げ線の方向であり、蒸気管30及び液管40の幅方向と同じ方向である。
【0085】
あるいは、特に図示しないが、金型として、断面視で上面に所定角度のV字状の凹部が形成された下型と、下型のV字状の凹部に嵌るV字状の突出部を備えた上型を使用してもよい。
【0086】
この場合は、下型と上型との間に第1の溝部G1を上側に向けてループ型ヒートパイプ1を配置し、上型で下型を押圧することにより、蒸気管30及び液管40がV字状の凹部に対応して曲げ加工される。
【0087】
また、蒸発器10と凝縮器20とを水平方向に配置した状態で高さ位置を変える場合は、ループ型ヒートパイプ1の蒸気管30及び液管40の2箇所を曲げ加工する金型が使用される。
【0088】
金型を使用するプレス加工により、ループ型ヒートパイプ1の蒸発器10及び凝縮器20が所要の位置に配置されるように蒸気管30及び液管40を曲げ加工することができる。
【0089】
(第2実施形態)
図8は第2実施形態のループ型ヒートパイプの蒸気管に形成される溝の様子を説明するための図、
図9は第2実施形態のループ型ヒートパイプの製造方法を説明するための図である。
【0090】
第2実施形態では、第1実施形態と同一要素及び製造方法の同一工程の詳しい説明は省略する。
【0091】
第2実施形態のループ型ヒートパイプでは、
図8(a)に示すように、第1実施形態の
図3(a)の蒸気管30において、蒸気管30の曲げ方向Wの外側の管壁P2の外面にも、曲げ方向Wと交差する方向に線状に延びる複数の第2の溝部G2が並んで形成されている。また、
図2のループ型ヒートパイプ1の液管40においても、同様に、第2の溝部G2が追加で形成される。
【0092】
第1の溝部G1及び第2の溝部G2は、蒸気管30及び液管40の各幅方向に横断するように形成されている。
【0093】
このように、第2実施形態では、曲げ加工領域Rにおける蒸気管30及び液管40の曲げ方向Wの外側になる各管壁P2の外面に、曲げ方向Wと交差する方向に第2の溝部G2が追加で形成されている。
【0094】
前述した
図4の最下の金属層51の外側表面において、第1の溝部G1が形成された領域と重なる位置に第2の溝部G2が形成されている。
図4の最下の金属層51が第1金属層とは反対側の最外層に配置された第2金属層の一例である。
【0095】
図4の最下の金属層51は、ループ型ヒートパイプの内部に形成された流路の管壁の一部を構成し、流路と接する金属層51の内側表面において、第2の溝部G2が形成された領域に対応する面は平滑な面である。
【0096】
このため、
図8(b)に示すように、
図8(a)の蒸気管30を曲げ方向Wに曲げ加工すると、第1実施形態と同様に、蒸気管30の曲げ方向Wの内側の管壁P1の外面に配置された複数の第1の溝部G1が閉口する。そして、第1溝部G1の対向する側壁が接触又は接近して、切込部C1となる。
【0097】
また同時に、蒸気管30の曲げ方向Wの外側の管壁P2の外面に配置された複数の第2の溝部G2が開口し、第2の溝部G2の幅方向に延びて広がって第1の凹部H1となる。第1の凹部H1の幅は第2の溝部G2の幅よりも広くなり、第1の凹部H1の深さは第2の溝部G2の深さよりも浅くなる。
【0098】
これにより、蒸気管30の曲げ方向Wの内側の管壁P1での圧縮応力が緩和され、蒸気管30の曲げ方向の内側の管壁P1が管内部に曲げ応力で押されて移動する量が減少する。
【0099】
換言すれば、曲げ方向の外側の管壁P2が、第2の溝部G2が形成されていない場合に比べ少ない応力で引張方向に変形可能となるため、それに伴い曲げの内側の管壁P1にかかる応力が減少し、管壁P1の変形が緩和される。
【0100】
さらに、第2実施形態では、蒸気管30の曲げ方向Wの外側の管壁P2での引張り応力による管内部への変形が緩和され、蒸気管30の曲げ方向Wの外側の管壁P2が管内部に曲げ応力で押されて移動する量が減少する。
【0101】
これにより、蒸気管30を曲げ加工しても、蒸気管30が閉塞することがなく、十分な断面積を有する流路を確保することができる。
【0102】
また、蒸気管30が曲げ加工されても、曲げ加工領域Rの蒸気管30の内面は凹凸のない平滑な曲面となるため、流路での作動流体の流体抵抗が増加することもない。
【0103】
蒸気管30を曲げ加工する際に、液管40も同時に曲げ加工される。液管40においても同様な第1の溝部G1及び第2の溝部G2が形成されているため、液管40が閉塞することなく、十分な断面積を有する流路を確保することができる。
【0104】
第2実施形態では、蒸気管30及び液管40の曲げ方向の内側及び外側の両方の管壁P1,P2において管内部に曲げ応力で押されて移動する量が減少するため、第1実施形態よりも曲げ加工領域Rでの流路の断面積を大きく確保することができる。
【0105】
次に、第2実施形態のループ型ヒートパイプの製造方法について説明する。
図9に示すように、前述した第1実施形態の製造方法の
図6(a)において、第1層目の金属層51の下面に前述した
図8(a)の管壁P2の外面に配置された第2溝部G2が追加で形成される。
【0106】
このように、曲げ加工領域Rに対応する最下の金属層51の下面に、曲げ方向Wと交差する方向に第2の溝部G2が追加で形成される。
【0107】
この状態で、第1層目から第6層目の金属層51~56を積層して接合し、前述した
図7(a)及び(b)と同じ工程を遂行することにより、第2実施形態のループ型ヒートパイプが製造される。
【0108】
(第3実施形態)
図10は第3実施形態のループ型ヒートパイプの蒸気管に形成される溝の態様を説明するための図、
図11は第3実施形態のループ型ヒートパイプの製造方法を説明するための図である。第3実施形態では、第1、第2実施形態と同一要素及び製造方法の同一工程の詳しい説明は省略する。
【0109】
図10(a)に示すように、第3実施形態のループ型ヒートパイプでは、前述した第2実施形態の
図8(a)の蒸気管30において、蒸気管30の曲げ方向Wの内側の管壁P1の内面に、曲げ方向Wと交差する方向に線状に延びる複数の第3の溝部G3が追加で形成される。
【0110】
蒸気管30の管壁P1の内面の第3の溝部G3は、管壁P1の外面の複数の第1の溝部G1の間の領域に対応する部分に配置され、第1の溝部G1と第3の溝部G3とが互い違いに配置される。
【0111】
第1の溝部G1と第3の溝部G3とを互い違いに配置することにより、対応する同じ位置に配置する場合よりも管壁Pの残りの厚みを実質的に厚く確保できる。このため、蒸気管30の曲げ加工した後に一定の強度を確保することができる。
【0112】
このように、前述した
図4の流路と接する最上の金属層56(第1金属層)の内側表面において、第1の溝部G1が形成された領域に対応する面に、第1の溝部G1と平行かつ第1の溝部G1とは重ならない位置に第3の溝部G3が形成されている
また、
図10(a)に示すように、前述した第2実施形態の
図8(a)の蒸気管30において、蒸気管30の曲げ方向Wの外側の管壁P2の内面に、曲げ方向と交差する方向に線状に延びる複数の第4の溝部G4が追加で形成される。
【0113】
蒸気管30の管壁P2においても、外面の第2溝部G2と内面の第4の溝部G4とが互い違いになるように配置される。
【0114】
また、
図2のループ型ヒートパイプ1の液管40においても、同様に、第3の溝部G3と第4の溝部G4とが追加で形成される。
【0115】
このように、第3実施形態では、曲げ加工領域Rにおける蒸気管30及び液管40の曲げ方向Wの内側になる各管壁P1の内面に、曲げ方向Wと交差する方向に第3の溝部G3が追加で形成される。
【0116】
さらに、曲げ加工領域Rにおける蒸気管30及び液管40の曲げ方向Wの外側になる各管壁P2の内面に、前記曲げ方向と交差する方向に第4の溝部G4が追加で形成される。
【0117】
前述した
図4の流路と接する最下の金属層51(第2の金属層)の内側表面において、第2の溝部G2が形成された領域に対応する面に、第2の溝部G1と平行かつ第2の溝部G2とは重ならない第4の溝部G4が形成されている。
【0118】
このため、
図10(b)に示すように、
図10(a)の蒸気管30を曲げ方向Wに曲げ加工すると、第1実施形態と同様に、蒸気管30の曲げ方向Wの内側の管壁P1の外面に配置された複数の第1の溝部G1が閉口して、切込部C1となる。
【0119】
また同時に、蒸気管30の曲げ方向Wの内側の管壁P1の内面に配置された複数の第3の溝部G3が幅方向に延びて広がって、第2の凹部H2となる。
【0120】
これにより、蒸気管30の曲げ方向Wの内側の管壁P1での管内部への変形が緩和される。よって、蒸気管30の曲げ方向Wの内側の管壁P1が管内部に曲げ応力で押されて移動する量が第1、第2実施形態よりもさらに減少する。
【0121】
また、同じく
図10(b)に示すように、
図10(a)の蒸気管30を曲げ方向Wに曲げ加工すると、第2実施形態と同様に、蒸気管30の曲げ方向Wの外側の管壁P2の外面に配置された複数の第2の溝部G2が幅方向に広がって、第1の凹部H1となる。
【0122】
さらに、第3実施形態では、蒸気管30の曲げ方向Wの外側の管壁P2の内面に配置された複数の第4の溝部G4が幅方向に広がって、第3の凹部H3となる
これにより、蒸気管30の曲げ方向Wの外側の管壁P2での引張り方向への変形がしやすくなる。よって、蒸気管30の曲げ方向の外側の管壁P2が管内部に曲げ応力で押されて移動する量が第1、第2実施形態よりもさらに減少する。
【0123】
蒸気管30を曲げ加工する際に、液管40も同時に曲げ加工される。液管40においても、同様な第1~第4の溝部G1、G2,G3,G4が形成されているため、液管40が閉塞することなく、十分な断面積を有する流路を確保することができる。
【0124】
以上のように、第3実施形態では、蒸気管30の曲げ方向Wの内側の管壁P1の外面及び内面に第1の溝部G1及び第3の溝部G3をそれぞれ形成している。また、曲げ方向Wの外側の管壁P2の外面及び内面に第2の溝部G2及び第4の溝部G4をそれぞれ形成している。そして、液管40の曲げ加工領域Rの管壁にも同様な第1~第4の溝部G1~G4)が形成される。
【0125】
これにより、蒸気管30及び液管40を曲げ加工する際に、蒸気管30及び液管40の曲げ方向の内側及び外側の両者の管壁P1,P2において、管内部に曲げ応力で押されて移動する量が減少する。
【0126】
よって、第1、第2実施形態よりも、蒸気管30及び液管40の曲げ加工領域Rでの流路の断面積を大きく確保することができる。
【0127】
第3実施形態では、
図10(b)に示すように、蒸気管30を曲げ加工すると、蒸気管30の管壁P1の内面に第3の溝部G3の幅が広くなった第2の凹部H2が残るため、曲げ加工領域Rの管壁P1の内面は凹凸状の曲面となる。
【0128】
また、曲げ加工領域Rの管壁P2の内面においても、同様に、第3の凹部H3が残るため、凹凸状の曲面となる。
【0129】
このため、第1、第2実施形態よりも蒸気管30の曲げ加工領域Rでの作動流体の流体抵抗が多少大きくなる。
【0130】
しかし、本実施形態では、蒸気管30の管壁P1の内面から厚み方向に第2の凹部H2が形成されて凹凸状となっている。また、蒸気管30の管壁P2においても、同様に、内面から厚み方向に第3の凹部3が形成されて凹状となっている。
【0131】
このため、管壁の内面から内部に突出する突出部を形成する構造に比べて作動流体の障壁が滑らかになるため、流体抵抗の上昇は少ない。
【0132】
次に、第3実施形態のループ型ヒートパイプの製造方法について説明する。
図11に示すように、前述した第2実施形態の製造方法の
図9において、第6層目の金属層56の下面に
図10(a)の曲げ方向Wの内側の管壁P1の内面に配置される第3の溝部G3が追加で形成される。
【0133】
また、前述した
図9において、第1層目の金属層51の上面に
図10の曲げ方向の外側の管壁P2の内面に配置される第4の溝部G4が追加で形成される。
【0134】
このように、曲げ加工領域Rに対応する最上の金属層56の下面に、曲げ方向Wと交差する方向に第3の溝部G3が追加で形成される。
【0135】
さらに、曲げ加工領域Rに対応する最下の金属層51の上面に、曲げ方向Wと交差する方向に第4の溝部G4が追加で形成される。
【0136】
図11の金属層56の内面の第3の溝部G3及び金属層51の内面の第4の溝部G4は、金属層51~56の接合部よりも内側にのみ形成されているため、管内部を流れる作動流体の密封性が保たれ、液漏れが発生することがない。
【0137】
この状態で、第1層目から第6層目の金属層51~56を積層して接合し、前述した
図7(a)及び(b)と同じ工程を遂行することにより、第3実施形態のループ型ヒートパイプが製造される。
【0138】
(実施形態のループ型ヒートパイプの適用例)
次に、曲げ加工されたループ型ヒートパイプを電子機器に適用する例について説明する。
図12には、実施形態のループ型ヒートパイプの第1の適用例が示されている。
図12に示すように、電子機器の基板5の上に、発熱部品の一例である半導体チップ70が搭載されている。
【0139】
また、半導体チップ70の横方向の基板5の上に電子部品72が搭載されている。電子部品72の高さは半導体チップ70の高さよりも高くなっている。
【0140】
このため、半導体チップ70の上にループ型ヒートパイプ1の蒸発器10を固定し、電子部品72側に凝縮器20を傾けずに水平に配置するには、蒸気管30及び液管40を上側に曲げ加工する必要がある。
【0141】
第1の適用例では、蒸発器10と凝縮器20とが水平方向に配置された状態で高さ位置を変えるため、蒸気管30及び液管40が2箇所で曲げ加工される。
【0142】
そして、半導体チップ70から発する熱が蒸発器10及び蒸気管30を通って凝縮器20から外部に放熱される。
【0143】
本実施形態のループ型ヒートパイプ1では、液管40及び蒸発器10に多孔質体42が配置されているため、蒸発器10と凝縮器20との間で高さ位置が異なっても、毛細管力によって作動流体を安定して輸送することができる。
【0144】
図13には、実施形態のループ型ヒートパイプの第2の適用例が示されている。
図13に示すように、第2の適用例では、電子機器の筐体6の側板6aの開口部6xの横に凝縮器20が配置される。
【0145】
このため、ループ型ヒートパイプ1の蒸気管30及び液管40が垂直方向に曲げ加工され、凝縮器20が垂直方向に立設して配置される。そして、ループ型ヒートパイプ1の蒸発器10が半導体チップ70の上に固定され、凝縮器20が筐体6の側板6aの開口部6xの内側近傍に配置される。
【0146】
第2の適用例では、半導体チップ70から発する熱が蒸発器10及び蒸気管30を通って凝縮器20に移動し、筐体6の側板6aの開口部6xから外部に放熱される。
【0147】
図14には、実施形態のループ型ヒートパイプの第3の適用例が示されている。
図14に示すように、第3の適用例では、電子機器の筐体6の天板6bの開口部6xの下に凝縮器20が配置される。
【0148】
このため、ループ型ヒートパイプ1の蒸気管30及び液管40が横U字状に曲げ加工され、凝縮器20が蒸発器10の上側に所定の間隔を空けて配置される。そして、ループ型ヒートパイプの蒸発器10が半導体チップ70の上に固定され、凝縮器20が筐体6の天板6bの開口部6xの下側近傍に配置される。
【0149】
第3の適用例では、半導体チップ70から発する熱が蒸発器10及び蒸気管30を通って凝縮器20に移動し、筐体6の天板6bの開口部6xから外部に放熱される。
【0150】
本実施形態では、前述したように、ループ型ヒートパイプ1の蒸気管30及び液管40を曲げ加工しても、蒸気管30及び液管40が閉塞しない。このため、電子機器内の異なる高さ位置にループ型ヒートパイプ1の蒸発器10及び凝縮器20を配置できるため、電子機器の設計の自由度を高めることができる。
【0151】
また、本実施形態のループ型ヒートパイプ1では、蒸気管30及び液管40に曲げ加工用の溝部が形成されているが、曲げ加工する必要がない場合は、同一平面構造の状態で使用してもよい。
【符号の説明】
【0152】
1…ループ型ヒートパイプ、5…基板、6…筐体、6a…側板、6b…天板、6x,51a~56a…開口部、10…蒸発器、20…凝縮器、30…蒸気管、40…液管、42…多孔質体、51~56…金属層、51b~56b…孔、60…押え部材、62…ポンチ、70…半導体チップ、72…電子部品、C1…切込部、F…流路、G1…第1の溝部、G2…第2の溝部、G3…第3の溝部、G4…第4の溝部、H1…第1の凹部、H2…第2の凹部、H3…第3の凹部、R…曲げ加工領域、P1,P2…管壁、W…曲げ方向。