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特許7012002デバイス製造装置、及びデバイス製造システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】デバイス製造装置、及びデバイス製造システム
(51)【国際特許分類】
   F04B 37/16 20060101AFI20220120BHJP
   C23C 14/54 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
F04B37/16 D
C23C14/54 B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018222234
(22)【出願日】2018-11-28
(65)【公開番号】P2019183828
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-04-27
(31)【優先権主張番号】10-2018-0044505
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 康信
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-227618(JP,A)
【文献】特開2013-060853(JP,A)
【文献】特開2012-067633(JP,A)
【文献】特開2000-009036(JP,A)
【文献】特開2016-009724(JP,A)
【文献】特開2013-199942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 37/16
C23C 14/54
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイス製造装置であって、
第1のチャンバーと、
第2のチャンバーと、
それぞれ前記第1のチャンバーを排気する第1のポンプと第2のポンプとを含む第1のポンプ部と、
前記第2のチャンバーを排気する第3のポンプを含む第2のポンプ部と、
前記第1のポンプ部に接続され、前記第1のポンプに電力または冷媒を供給する第1のポンプ作動部と、
前記第1のポンプ部に接続され、前記第2のポンプに電力または冷媒を供給し、かつ、第2のポンプ部に接続され、前記第3のポンプに電力または冷媒を供給する第2のポンプ作動部と、を備える
ことを特徴とするデバイス製造装置。
【請求項2】
前記第2のポンプ部は、第4のポンプをさらに含み、
前記第1のポンプ作動部が、第2のポンプ部に接続され、前記第4のポンプに電力または冷媒を供給する請求項1に記載のデバイス製造装置。
【請求項3】
前記第1のチャンバーと前記第2のチャンバーとが、第3のチャンバーを介して、接続される請求項1または請求項2に記載のデバイス製造装置。
【請求項4】
前記第1のチャンバーと前記第2のチャンバーは、有機材料を蒸着するための蒸着室であり、
前記第3のチャンバーは、基板またはマスクを搬送するための搬送室である請求項3に記載のデバイス製造装置。
【請求項5】
デバイス製造装置であって、
第1のチャンバーと、
第2のチャンバーと、
それぞれ前記第1のチャンバーを排気する第1のポンプと第2のポンプとを含む第1のポンプ部と、
それぞれ前記第2のチャンバーを排気する第3のポンプと第4のポンプとを含む第2のポンプ部と、
前記第1のポンプ部に接続され、前記第1のポンプに電力または冷媒を供給する第1のポンプ作動部と、
前記第1のポンプ部に接続され、前記第2のポンプに電力または冷媒を供給し、かつ、第2のポンプ部に接続され、前記第3のポンプに電力または冷媒を供給する第2のポンプ作動部と、
前記第2のポンプ部に接続され、前記第4のポンプに電力または冷媒を供給する第3のポンプ作動部と、を備える
ことを特徴とするデバイス製造装置。
【請求項6】
第3のチャンバーと、
それぞれ前記第3のチャンバーを排気する第5のポンプと第6のポンプとを含む第3のポンプ部と、をさらに備え、
前記第3のポンプ作動部が、第3のポンプ部に接続され、前記第5のポンプに電力または冷媒を供給し、
前記第1のポンプ作動部が、第3のポンプ部に接続され、前記第6のポンプに電力または冷媒を供給する請求項5に記載のデバイス製造装置。
【請求項7】
前記第1のチャンバーと前記第2のチャンバーとが、前記第3のチャンバーを介して、接続される請求項6に記載のデバイス製造装置。
【請求項8】
前記第1のチャンバー及び前記第2のチャンバーは、使用前後のマスクが収納されるマスクストックチャンバーであり、
前記第3のチャンバーは、基板またはマスクを搬送するための搬送室である請求項7に記載のデバイス製造装置。
【請求項9】
ポンプ作動部は接続されたポンプに電を供給す請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のデバイス製造装置。
【請求項10】
前記ポンプは、冷凍機を有するクライオポンプを含み、
前記ポンプ作動部は、冷媒を圧縮して前記冷凍機に供給するためのコンプレッサーである請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のデバイス製造装置。
【請求項11】
デバイス製造システムであって、
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のデバイス製造装置と、
前記デバイス製造装置を制御するための制御部を含むデバイス製造システム。
【請求項12】
前記制御部は、前記デバイス製造装置の複数のポンプ作動部の動作を制御する請求項11に記載のデバイス製造システム。
【請求項13】
前記制御部は、前記デバイス製造装置の複数のチャンバー内の圧力が同等になるように、前記デバイス製造装置の複数のポンプ作動部を制御する請求項11または請求項12に記載のデバイス製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプとポンプ作動部を含む真空装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、フラットパネル表示装置として有機EL表示装置が脚光を浴びている。有機EL表示装置は自発光ディスプレイであり、応答速度、視野角、薄型化などの特性が液晶パネルディスプレイより優れており、モニタ、テレビ、スマートフォンに代表される各種携帯端末などで既存の液晶パネルディスプレイを速いスピードで代替している。また、自動車用ディスプレイ等にも、その応用分野を広げている。
【0003】
有機EL表示装置の素子は、2つの向かい合う電極(カソード電極、アノード電極)の間に発光を起こす有機物層が形成された基本構造を持つ。有機ELディスプレイ素子の有機物層と電極金属層は、真空チャンバー内で、画素パターンが形成されたマスクを介して基板に蒸着物質を蒸着することで製造される。
【0004】
有機EL表示装置の製造ラインでは、有機物層及び電極金属層の蒸着が行われる成膜室の他にも、バッファー室、旋回室、搬送室、マスクストックチャンバーなどのチャンバーの内部空間を真空状態に維持するためにポンプを用いる。特に、高真空状態を維持するためにはクライオポンプが使用される。
【0005】
クライオポンプは、極低温板にチャンバー内の気体分子を凝縮または吸着させて捕集することにより、排気するポンプであって、極低温板を維持するための冷凍機を含む。クライオポンプの冷凍機には、冷媒を圧縮させるためのコンプレッサーが接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-9036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1(特開2000-9036号公報)には、複数のクライオポンプが一つのコンプレッサーに接続される技術が開示されている。しかし、コンプレッサーが故障した場合には、すべてのクライオポンプが機能しなくなり、チャンバー内の排気ができなくなる問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためのものであり、処理空間内の排気を安定して行うための真空装置、真空システム、これを用いたデバイス製造装置、デバイス製造システム、及びデバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様による真空装置は、複数の処理空間を排気するための真空装置であって、各々が前記複数の処理空間のいずれか一つを排気する複数のポンプ部と、各々が前記複数のポンプ部の少なくとも一つに接続され、ポンプを作動させる複数のポンプ作動部とを含み、前記複数のポンプ部の少なくとも一つは、互いに異なる2つ以上のポンプ作動部に接続され、前記互いに異なる2つ以上のポンプ作動部の少なくとも一つは、互いに異なる2つ以上のポンプ部に接続される。
【0010】
本発明の第2態様による真空装置は、複数の処理空間を排気するための真空装置であって、各々が前記複数の処理空間のいずれか一つを排気する複数のポンプ部と、各々が前記複数のポンプ部の少なくとも一つに接続され、ポンプを作動させる複数のポンプ作動部とを含み、前記複数の処理空間のうち第1処理空間を排気するためのポンプ部は、第1ポンプと第2ポンプとを含み、前記第1ポンプと前記第2ポンプのいずれか一つは、前記複数のポンプ作動部のうち第1ポンプ作動部に接続され、前記第1ポンプと前記第2ポンプのうち他の一つは、第2ポンプ作動部に接続され、前記複数の処理空間のうち第2処理空間を排気するためのポンプ部は、第3ポンプを含み、前記第3ポンプは、前記第2ポンプ作動部に接続される。
【0011】
本発明の第3態様による真空装置は、複数の処理空間を排気するための真空装置であって、各々が前記複数の処理空間のいずれか一つを排気する複数のポンプ部と、各々が前記複数のポンプの少なくとも一つに接続され、ポンプを作動させる複数のポンプ作動部とを含み、前記複数の処理空間のうち第1処理空間を排気するためのポンプ部は、第1ポンプと第2ポンプとを含み、前記第1ポンプと前記第2ポンプのいずれか一つは、前記複数のポンプ作動部のうち第1ポンプ作動部に接続され、前記第1ポンプと前記第2ポンプのうち他の一つは、第2ポンプ作動部に接続され、前記複数の処理空間のうち第2処理空間を排気するためのポンプ部は、第3ポンプと第4ポンプとを含み、前記第3ポンプ及び前記第4ポンプのいずれか一つは、前記第2ポンプ作動部に接続され、前記第3ポンプ及び前記第4ポンプのうち他の一つは、第3ポンプ作動部に接続される。
【0012】
本発明の第4態様による真空システムは、複数の処理空間を排気するための真空システムであって、本発明の第1態様~第3態様のいずれかによる真空装置と、前記真空装置を制御するための制御部とを含む。
【0013】
本発明の第5態様によるデバイス製造装置は、複数のチャンバーと、各々が前記複数のチャンバーのいずれかに設けられる複数のポンプ部と、各々が前記複数のポンプ部の少なくとも一つに接続され、ポンプを作動させる複数のポンプ作動部とを含み、前記複数のポンプ部の少なくとも一つは、互いに異なる2つ以上のポンプ作動部に接続され、前記互いに異なる2つ以上のポンプ作動部の少なくとも一つは、互いに異なる2つ以上のポンプ部に接続される。
【0014】
本発明の第6態様によるデバイス製造装置は、第1のチャンバーと、第2のチャンバーと、それぞれ前記第1のチャンバーを排気する第1のポンプと第2のポンプとを含む第1のポンプ部と、前記第2のチャンバーを排気する第3のポンプを含む第2のポンプ部と、前記第1のポンプ部に接続され、前記第1のポンプに電力または冷媒を供給する第1のポンプ作動部と、前記第1のポンプ部に接続され、前記第2のポンプに電力または冷媒を供給し、かつ、第2のポンプ部に接続され、前記第3のポンプに電力または冷媒を供給する第2のポンプ作動部と、を備える。

【0015】
本発明の第7態様によるデバイス製造装置は、第1のチャンバーと、第2のチャンバーと、それぞれ前記第1のチャンバーを排気する第1のポンプと第2のポンプとを含む第1のポンプ部と、それぞれ前記第2のチャンバーを排気する第3のポンプと第4のポンプとを含む第2のポンプ部と、前記第1のポンプ部に接続され、前記第1のポンプに電力または冷媒を供給する第1のポンプ作動部と、前記第1のポンプ部に接続され、前記第2のポンプに電力または冷媒を供給し、かつ、第2のポンプ部に接続され、前記第3のポンプに電力または冷媒を供給する第2のポンプ作動部と、前記第2のポンプ部に接続され、前記第4のポンプに電力または冷媒を供給する第3のポンプ作動部と、を備える。
【0016】
本発明の第8態様によるデバイス製造システムは、本発明の第5態様~第7態様のいずれかによるデバイス製造装置と、前記デバイス製造装置を制御するための制御部を含む。
【0017】
本発明の第9態様によるデバイスの製造方法は、複数のチャンバーのうちいずれか一つのチャンバーに設置された複数のポンプに、互いに異なる2つのポンプ作動部から高圧冷媒を供給する工程と、前記複数のポンプで高圧冷媒を膨張させて前記一つのチャンバーを真空排気する工程と、前記一つのチャンバー内の圧力を測定する工程と、前記互いに異なる2つのポンプ作動部から前記複数のポンプに供給される冷媒の圧力を測定する工程と、前記互いに異なる2つのポンプ作動部のいずれか一つのポンプ作動部から供給される冷媒の圧力が所定の範囲から外れる場合、前記互いに異なる二つのポンプ作動部の他の一つのポンプ作動部の出力を調整することで、前記複数のポンプが接続された前記一つのチャンバー内の圧力を所定の範囲内に維持するように制御する工程とを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、処理空間内の排気を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、有機EL表示装置の製造ラインの一部の模式図である。
図2図2は、本発明の真空装置の模式図である。
図3図3は、本発明の第1実施例に係る真空システムの接続関係を示す図である。
図4図4は、本発明の第2実施例に係る真空システムの接続関係を示す図である。
図5図5は、本発明の第3実施例に係る真空システムの接続関係を示す図である。
図6図6は、本発明の第4実施例に係るデバイス製造システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態及び実施例を説明する。ただし、以下の実施形態及び実施例は、本発明の好ましい構成を例示的に表すものであり、本発明の範囲は、これらの構成に限定されない。また、以下の説明において、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理の流れ、製造条件、大きさ、材質、形状等は、特に特定的な記載がない限り、本発明の範囲をこれに限定しようとする趣旨ではない。
【0021】
<電子デバイス製造ライン>
図1は、電子デバイスの製造ラインの構成の一部を模式的に図示した平面図である。
【0022】
図1の製造ラインは、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられる。スマートフォン用の表示パネルの場合、例えば、フルサイズ(約1500mm×約1850mm)又はハーフカットサイズ(約1500mm×約925mm)の基板に有機ELの成膜を行った後、該基板を切り抜いて複数の小さなサイズのパネルに製作する。
【0023】
有機EL表示装置の製造ラインの成膜クラスタは、一般的に図1に示すように、基板10に対する処理(例えば、成膜)が行われる複数の成膜室11と、使用前後のマスクが収納される複数のマスクストックチャンバー12と、その中央に配置される搬送室13を具備する。
【0024】
搬送室13内には、複数の成膜室11(11a、11b、11c、11d)の間で基板10を搬送すると共に、成膜室11とマスクストックチャンバー12(12a、12b)との間でマスクを搬送する搬送ロボット14が設置される。搬送ロボット14は、例えば、多関節アームに、基板10を保持するロボットハンドが取り付けられた構造を有するロボットである。
【0025】
各成膜室11には、成膜装置(蒸着装置とも呼ぶ)が設置される。成膜装置では、蒸発源に収納された蒸着材料がヒーターによって加熱及び蒸発されて、マスクを介して基板上に蒸着される。搬送ロボット14との基板10の受け渡し、基板10とマスクの相対位置の調整(アライメント)、マスク上への基板10の固定、成膜(蒸着)などの一連の成膜プロセスは、成膜装置によって自動的に行われる。成膜装置は、二つのステージを有するデュアルステージ(Dual Stage)タイプであってもいい。デュアルステージタイプの成膜装置では、一つのステージに搬入された基板10に対して成膜が行われている間、他のステージに搬入された他の基板10に対してアライメントが行われる。
【0026】
マスクストックチャンバー12には、成膜室11での成膜工程に使われる新しいマスクと、使用済みのマスクとが、二つのカセットに分けて収納される。搬送ロボット14は、使用済みのマスクを成膜室11からマスクストックチャンバー12のカセットに搬送し、マスクストックチャンバー12の他のカセットに収納された新しいマスクを成膜室11に搬送する。
【0027】
有機EL表示装置の製造ラインの成膜クラスタには、基板10の流れ方向において上流側からの基板10を成膜クラスタに搬送するパス室15と、該成膜クラスタで成膜処理が完了した基板10を下流側の他の成膜クラスタに搬送するためのバッファー室16(16a、16b)が連結される。搬送室13の搬送ロボット14は、上流側のパス室15から基板10を受け取って、当該成膜クラスタ内の成膜室11の一つ(例えば、成膜室11a)に搬送する。また、搬送ロボット14は、当該成膜クラスタでの成膜処理が完了した基板10を複数の成膜室11の一つ(例えば、成膜室11b)から受け取って、下流側に連結されたバッファー室16(例えば、16b)に搬送する。
【0028】
バッファー室16(例えば、16a)とパス室15との間には、基板の方向を変える旋回室17が設置される。これにより、上流側の成膜クラスタと下流側の成膜クラスタで基板の向きが同じとなり、基板処理が容易になる。
【0029】
有機EL表示装置の製造ラインを構成する成膜室11、マスクストックチャンバー12、搬送室13、バッファー室16、旋回室17などのチャンバーは、有機EL表示パネルの製造過程で、高真空状態に維持される。このため、これらのチャンバーには、そのチャンバー内の空間を高真空に排気するためのポンプ、特に、クライオポンプが設けられる。パス室15にも真空排気用ポンプ(例えば、後述のラフ排気用ポンプ)が設置されるが、高真空排気用のクライオポンプは、設置されてもよく、設置されなくてもいい。
【0030】
図1を参照して、本発明の有機EL表示装置の製造ラインの構成について説明したが、本発明のデバイス製造ラインはこれに限定されず、他の種類のチャンバーを有してもよく、チャンバー間の配置が変わってもいい。
【0031】
以下、成膜室11を例に挙げて、成膜室11を真空排気するための真空装置および真空システムの構成について説明する。
【0032】
<真空装置及び真空システム>
図2は、真空装置(真空システム)が設置された成膜室11を模式的に示している。
【0033】
成膜室11内の下部には、蒸発源111が設けられ、上部には基板10を保持するための基板ホルダー112と、マスク18を保持するためのマスクホルダー113とが設けられる。また、搬送室13に面した成膜室11の側壁には、基板10又はマスク18が搬出入される搬出入用バルブ114が設けられる。
【0034】
成膜室11には、成膜室11内の処理空間を真空排気するための真空システムが設けられる。本発明の真空システムは、真空装置と制御部24とを含み、真空装置は、成膜室11に接続されて成膜室11の内部空間を高真空状態(例えば、~10-8Torr)に排気するためのクライオポンプ20と、成膜室11の内部空間を低真空状態(例えば、10-3Torr)に排気するためのラフ排気用ポンプ21と、クライオポンプ20に接続されたポンプ作動部22とを含む。
【0035】
クライオポンプ20は、成膜室11のチャンバー底面に設置された排気口115と高真空排気用バルブ116を介して成膜室11に接続される。
【0036】
クライオポンプ20は、極低温板にチャンバー内の気体分子を凝縮または吸着させて捕集することにより、成膜室11の内部空間を高真空に排気するポンプであって、極低温板(クライオパネルとも呼ばれる)と、極低温板の温度を下げるための冷凍機(不図示)とを含む。極低温板の表面には、凝縮された気体や水分を捕集するための多孔性層(不図示)が形成される。クライオポンプ20の冷凍機は、高圧に圧縮された冷媒(例えば、ヘリウム)を低圧に膨張させることで、極低温板の温度を所定の温度に下げる。
【0037】
成膜室11には、複数の(例えば、2つの)クライオポンプ20が設けられる。これにより、真空排気速度を高めて工程時間(Tact)を短縮することができ、成膜室11に接続された一つのクライオポンプ20による真空排気が正常に行われない場合であっても、他のクライオポンプ20により成膜室11内を高真空状態に維持することができる。
【0038】
ポンプ作動部22は、クライオポンプ20の冷媒として用いられるヘリウムを高圧に圧縮し、高圧のヘリウム冷媒をクライオポンプ20の冷凍機に提供する。ポンプ作動部22から高圧に圧縮された冷媒とクライオポンプ20の冷凍機で低圧に膨張された冷媒は、冷媒配管23を通してポンプ作動部22とクライオポンプ20との間を流れる。冷媒配管23には、冷媒の圧力を検出するための冷媒圧力センサ25が設置される。これにより、後述のように、ポンプ作動部22が十分な圧力で冷媒を圧縮しているか、すなわち、ポンプ作動部22が正常に動作するかを判断することができる。
【0039】
ラフ排気用ポンプ21は、成膜室11のチャンバー壁に設置されたラフ排気用バルブ118を介して、成膜室11に接続される。ラフ排気用ポンプ21は、クライオポンプ20が成膜室11の内部空間を高真空状態に排気する前に、成膜室11の内部空間を低真空状態に排気する。これにより、クライオポンプ20による高真空排気を行うことができる。ラフ排気用ポンプ21は、通常、ポンプ作動部が不要なロータリーポンプなどを用いるが、本発明はこれに限定されない。
【0040】
制御部24は、真空装置の真空排気動作を制御する。制御部24は、成膜室11の真空チャンバー内に設けられたチャンバー圧力センサ117によって測定されたチャンバー内の真空度、冷媒配管23に設置された冷媒圧力センサ25によって検知された冷媒圧力、クライオポンプ20の冷凍機に設置された温度センサによって検知された極低温板の温度などに基づいて、クライオポンプ20、これに接続されたポンプ作動部22及びラフ排気用ポンプ21などの動作を制御する。また、制御部24は、ポンプ作動部22内に含まれ
る構成としてもよい。
【0041】
以下、本発明の真空装置を用いて成膜室11の内部空間を真空排気する過程を説明する。
【0042】
真空排気が開始されると、成膜室11の内部空間を低真空状態にするためにラフ排気用ポンプ21が作動する。つまり、成膜室11のチャンバー壁に設置されたラフ排気用バルブ118が開かれ、ラフ排気用ポンプ21が作動して成膜室11内を所定の低真空状態に排気する。
【0043】
クライオポンプ20は、高真空排気用バルブ116が閉じた状態で作動し、クライオポンプ20の極低温板を所定の温度に冷却する。つまり、ポンプ作動部22で高圧に圧縮された冷媒ヘリウムがクライオポンプ20に供給され、クライオポンプ20の冷凍機で高圧の冷媒ヘリウムが低圧に断熱膨張しながら、極低温板を所定の極低温の温度に冷却させる。これにより、クライオポンプ20の内部は高真空雰囲気となる。
【0044】
低真空状態への排気と、上記クライオポンプ20の作動は、どちらが先に行われても良い。
【0045】
成膜室11内の圧力がラフ排気用ポンプ21によって所定の低真空圧力となり、クライオポンプ20の極低温板が所定の極低温に達して、クライオポンプ20の内部が高真空雰囲気となると、ラフ排気用バルブ118を閉じ、高真空排気用バルブ116を開き、排気口115を介して、成膜室11内にまだ残っている気体及び水分などを極低温板に凝縮/吸着させて捕集/固定することで、成膜室11の内部空間を所定の高真空雰囲気に排気する。つまり、低真空排気が行われた後にも成膜室11内に残っている気体や水分のうち、凝固点が比較的高いものは固体に凝縮させ、凝固点が低いものは、極低温板の表面上に設置された表面積が大きい多孔性物質の内部空間に閉じ込めておくことにより、成膜室11内に残っている気体や水分などを除去し、高真空状態に排気する。
【0046】
成膜室11の内部空間が所定の高真空状態になると、基板/マスクの搬出入のためのバルブ114が開かれ、同様に高真空に排気された搬送室13から基板またはマスクが成膜室11内に搬入される。成膜室11内に搬入された基板とマスクは、基板ホルダー112及びマスクホルダー113にそれぞれ保持され、図示しないアライメントシステムによって、基板とマスクの相対的な位置が調整される。
【0047】
基板とマスクの相対的な位置が高精度に調整された後、シャッター(図示せず)が開かれ、蒸発源111で加熱されて蒸発した有機材料または電極用金属材料がマスク18を介して基板10に蒸着される。
【0048】
<ポンプとポンプ作動部の接続構造>
図3乃至図5を参照して、本発明による真空装置/真空システムにおける、ポンプ(ポンプ部)とポンプ作動部との接続構造について説明する。
【0049】
本発明に係る真空装置/真空システムは、図3乃至図5に示すように、複数のポンプ部30、31、32などと、これらに接続された複数のポンプ作動部22a、22b、22cなどを含む。
【0050】
各々のポンプ部は、真空排気を行う処理空間を定義する各々のチャンバーに設けられ、一つ以上のポンプ(例えば、クライオポンプ)を含む。
【0051】
本発明に係る真空装置/真空システムにおいて、複数のチャンバーのうち少なくとも一つのチャンバーの内部空間を排気するためのポンプ部は、互いに異なる2つ以上のポンプ作動部に接続される。ポンプ作動部は、ポンプを作動させるために電力や圧縮冷媒等を供給する供給部である。ポンプがクライオポンプである場合には、コンプレッサーが用いられ、ロータリーポンプやターボ分子ポンプである場合には、電力源が用いられる。また、ポンプはこれらのポンプに限られず、供給部もポンプの種類に応じたものを用いればよい。
【0052】
これにより、当該ポンプ部に接続された互いに異なる2つ以上のポンプ作動部のいずれかが故障して、正常に動作しない場合にも、当該ポンプ部の動作が完全に止まってしまうことが回避され、そのチャンバーの内部空間が真空状態に維持されなくなる状況を回避することができる。
【0053】
また、1つのポンプ部に接続された互いに異なる2つ以上のポンプ作動部のうち少なくとも一つのポンプ作動部は、当該ポンプ部以外の他のポンプ部にも接続される。これにより、必要なポンプ作動部の数を減らすことができ、費用と消費電力を低減することができるだけでなく、製造ライン内の空間も効率的に使用することができる。
【0054】
本発明に係る真空システムの制御部24は、複数のポンプ作動部の動作を制御する。これにより、一つの制御部で全体のポンプ作動部を制御することができ、構成が簡素化する。
【0055】
以下、本発明の各実施例に係る真空装置/真空システムにおけるポンプ部とポンプ作動部との間の接続構造について説明する。
【0056】
(第1実施例)
本発明の第1実施例に係る真空装置/真空システムは、二つのチャンバー(第1チャンバー及び第2チャンバー)の内部空間を真空排気するためのものであって、図3の(a)に示すように、第1チャンバーCH1(例えば、成膜室11a)に接続され、その内部空間を排気するための第1ポンプ部30と、第2チャンバーCH2(例えば、成膜室11b)に接続され、その内部空間を排気するための第2ポンプ部31とを含む。
【0057】
第1ポンプ部30は、第1チャンバーCH1を高真空状態に排気するための第1ポンプ20aと第2ポンプ20bとを含み、第2ポンプ部31は、第2チャンバーを高真空状態に排気するための第3ポンプ20cを含む。チャンバーの内部空間を真空排気するためのポンプ部を何個のポンプで構成するかは、チャンバーの体積、真空排気の速度などを考慮して定めることができる。本発明の第1実施例に係る第1ポンプ乃至第3ポンプは、図2を参照して説明したクライオポンプであり得るが、本発明はこれに限られない。
【0058】
第1ポンプ20aは、第1ポンプ作動部22aに接続され、第1ポンプ作動部22aから高圧に圧縮された冷媒の供給を受ける。第2ポンプ20bは、第1ポンプ作動部22aとは異なる第2ポンプ作動部22bに接続される。これにより、第1チャンバーCH1を真空排気するための第1ポンプ部30のポンプ20a、20bは、互いに異なる2つのポンプ作動部22a、22bに接続される。
【0059】
従来の技術においては、一つのチャンバーを真空排気するための2つのクライオポンプが同じポンプ作動部に接続されていた。このため、当該ポンプ作動部が故障すると、当該チャンバーを真空排気するための全てのクライオポンプの動作が停止するので、当該チャンバーを高真空状態に維持することができなくなった。
【0060】
これに比べて、本発明においては、第1チャンバーCH1に接続された第1ポンプ部30に含まれている2つのポンプ20a、20bが互いに異なる2つのポンプ作動部22a、22bに接続されるので、いずれかのポンプ作動部が故障しても、他の一つのポンプ作動部の出力を上げることで、第1チャンバーCH1内の高真空状態を維持することができ、故障したポンプ作動部のメンテナンスを行うための準備ができるまでの時間を稼ぐことができる。
【0061】
第2ポンプ部31の第3ポンプ20cは、第2ポンプ作動部22bに接続され、第2ポンプ作動部22bから高圧に圧縮された冷媒の供給を受ける。
【0062】
第3ポンプ20cに高圧冷媒を供給するためのポンプ作動部を別途に設けずに、第1ポンプ部30の第2ポンプ20bに接続された第2ポンプ作動部22bを用いることで、つまり、第2ポンプ作動部22bを互いに異なる2つのポンプ20b、20cに接続することで、第1チャンバーCH1と第2チャンバーCH2を真空排気するために用いられるポンプ作動部の数を減らすことができる。
【0063】
図3の(b)に示すように、本発明の第1実施例の変形例では、第2チャンバーCH2を真空排気するための第2ポンプ部31が第3ポンプ20cの他に、第4ポンプ20dをさらに含む。第4ポンプ20dは、第1ポンプ作動部22aに接続される。
【0064】
これにより、例えば、第3ポンプ20cに高圧冷媒を供給する第2ポンプ作動部22bが故障しても、第4ポンプ20dに接続された第1ポンプ作動部22aの出力を上げることで、ポンプ作動部の数を増加させずに、第1チャンバーCH1及び第2チャンバーCH2内の高真空状態を維持することができる。
【0065】
本発明の第1実施例とその変形例において、制御部24は、第1ポンプ作動部22a及び第2ポンプ作動部22bと、第1ポンプ部30及び第2ポンプ部31との間の冷媒配管23に設置された冷媒圧力センサ25により検知された冷媒の圧力が所定の範囲から外れ、冷媒が十分な圧力で圧縮されない場合に、当該冷媒配管23に接続されたポンプ作動部が故障したと判定する。例えば、第1ポンプ作動部22aから第1ポンプ部30の第1ポンプ20aに高圧冷媒を供給するための冷媒配管23内の冷媒の圧力、または第1ポンプ作動部22aから第2ポンプ部31の第4ポンプ20dに供給される冷媒の圧力が所定の範囲を下回ると、第1ポンプ作動部22aが故障したと判定する。
【0066】
この場合、制御部24は、第1ポンプ部30の第2ポンプ20b及び第2ポンプ部31の第3ポンプ20cに接続された第2ポンプ作動部22bの出力を上げることで、第1チャンバーCH1と第2チャンバーCH2内の圧力を所定の高真空範囲内に維持することができる。
【0067】
本発明の第1実施例及びその変形例では、真空装置/真空システムを2つのポンプ部30、31と2つのポンプ作動部22a、22bとによって構成するので、上記特性を持ちながらも、ポンプ部内のポンプとポンプ作動部との間がシンプルな接続であり、メンテナンス時の配線関係が分かりやすくなる。また、1つの制御部24で二つのポンプ作動部22a、22bを制御することができるので、制御が簡素化する。
【0068】
本発明の第1実施例とその変形例は、例えば、図1に示した有機EL表示パネルの製造ラインにおいて、基板の流れの同じライン上に配置された二つの成膜室11a、11b、または他の二つの成膜室11c、11dをそれぞれ真空排気するための真空装置/真空システムに適用することができる。これについては、図6を参照して後述する。
【0069】
(第2実施例)
図4は、本発明の第2実施例に係る真空装置/真空システムの配置と接続構造を模式的に示している。
【0070】
本発明の第2実施例に係る真空装置/真空システムは、三つのチャンバー(第1チャンバーCH1、第2チャンバーCH2、第3チャンバーCH3)の内部空間を真空排気するためのものであって、第1チャンバーCH1(例えば、マスクストックチャンバー12a)の内部空間を真空排気するための第1ポンプ部30と、第2チャンバーCH2(例えば、搬送室13)の内部空間を真空排気するための第2ポンプ部31と、第3チャンバーCH3(例えば、マスクストックチャンバー12b)を真空排気するための第3ポンプ部32とを含む。
【0071】
第1ポンプ部30は、第1ポンプ20aと第2ポンプ20bとを含み、第2ポンプ部31は、第3ポンプ20cと第4ポンプ20dとを含み、第3ポンプ部32は、第5ポンプ20eと第6ポンプ20fとを含む。各ポンプ部に含まれるポンプの数は、そのポンプ部によって真空排気されるチャンバーの内部空間の体積、真空排気速度などによって変わり得る。例えば、第1ポンプ部30と第3ポンプ部32が、相対的に体積の小さいマスクストックチャンバー12a及びマスクストックチャンバー12bを真空排気する場合には、それぞれ1つのポンプだけで構成してもいい。
【0072】
本発明の第2実施例に係る真空装置/真空システムは、3つのポンプ部30、31、32に接続された3つのポンプ作動部22a、22b、22cを含む。
【0073】
図4に示すように、第1ポンプ部30の第1ポンプ20aは、第1ポンプ作動部22aに接続され、第2ポンプ20bは第2ポンプ作動部22bに接続される。第2ポンプ部31の第3ポンプ20cは、第2ポンプ作動部22bに接続され、第4ポンプ20dは第3ポンプ作動部22cに接続される。第3ポンプ部32の第5ポンプ20eは、第3ポンプ作動部22cに接続され、第6ポンプ20fは第1ポンプ作動部22aに接続される。
【0074】
これによって、第1実施例及びその変形例と同様に、3つのポンプ部のうち少なくとも一つのポンプ部は、互いに異なる2つ以上のポンプ作動部に接続される。すなわち、本発明の第2実施例では、3つのポンプ部それぞれは、互いに異なる2つのポンプ作動部(クライオポンプの場合はコンプレッサー)に接続される。これにより、一つのポンプ部に接続されたポンプ作動部のいずれかが故障しても、当該ポンプ部に接続された他のポンプ作動部の出力を調整して、当該ポンプ部が設置されているチャンバー内を高真空状態に維持することができる。
【0075】
例えば、第2ポンプ作動部22bが故障した場合、これに接続された第2ポンプ20b及び第3ポンプ20cが第1チャンバーCH1と第2チャンバーCH2をそれぞれ真空排気することができなくなるので、第1チャンバーCH1に接続された他のポンプである第1ポンプ20a、及び第2チャンバーCH2に接続された他のポンプである第4ポンプ20dによる真空排気量を増やすために、第1ポンプ20aに対する第1ポンプ作動部22aの出力、及び第4ポンプ20dに対する第3ポンプ作動部22cの出力をそれぞれ上げる。これにより、第2ポンプ作動部22bが故障しても、第1チャンバーCH1及び第2チャンバーCH2の内部空間を所定の高真空状態に維持することができる。
【0076】
同時に、第3チャンバーCH3を真空排気する第3ポンプ部32の第5ポンプ20e及び第6ポンプ20fの排気量を下げるために、第6ポンプ20fに対する第1ポンプ作動部22aの出力と、第5ポンプ20eに対する第3ポンプ作動部22cの出力を下げるこ
とで、第1チャンバーCH1乃至第3チャンバーCH3が同等な圧力に維持されるようにする。
【0077】
また、これにより、第2ポンプ作動部22bが故障した場合でも、第1チャンバーCH1乃至第3チャンバーCH3を同等な真空度に維持しながらも、第1ポンプ作動部22a及び第3ポンプ作動部22cに性能以上の負荷がかからないようにすることができ、第1ポンプ作動部22aと第3ポンプ作動部22cが過負荷になることを防止できる。
【0078】
このようなポンプ作動部の出力制御は、ポンプ作動部とポンプ部との間の冷媒配管に設けられた冷媒圧力センサ25により検知された冷媒の圧力に基づいて、制御部24によって行われる。
【0079】
このように、本発明の第2実施例の真空装置/真空システムによれば、ポンプ作動部の数の増加を抑制しながらも、いずれかのポンプ作動部が故障した場合、複数のチャンバーの内部空間を所定の範囲内の同等な圧力に維持することができる。
【0080】
(第3実施例)
図5は、本発明の第3実施例により、各々がn個(nは4以上の整数)のチャンバーを真空排気するn個のポンプ部とn個のポンプ作動部との接続構造を模式的に示している。
【0081】
本発明の第3実施例に係る真空装置/真空システムは、n個(nは4以上の整数)のチャンバーを真空排気するためのn個のポンプ部と、n個のポンプ部に接続されたn個のポンプ作動部とを含む。
【0082】
本発明の第3実施例において、第kチャンバーCHk(1≦k≦n-1)の内部空間を真空排気するための第kポンプ部は、第2k-1ポンプと第2kポンプとを含む。第2k-1ポンプは、第kポンプ作動部に接続され、第2kポンプは第k+1ポンプ作動部に接続される。n番目のチャンバーCHnの内部空間を真空排気するための第nポンプ部は、第2n-1ポンプ及び第2nポンプを含み、第2n-1ポンプは第nポンプ作動部に接続され、第2nポンプは第1ポンプ作動部に接続される。
【0083】
つまり、各ポンプ部には2つの異なるポンプ作動部が接続され、それぞれのポンプ作動部は、2つの異なるチャンバーの内部空間を真空排気するための2つの異なるポンプ部に接続される。
【0084】
これにより、ポンプ作動部の数の増加を抑制しながらも、いずれかのポンプ作動部が故障した場合に、当該ポンプ作動部に接続されたポンプ部が完全に動作を停止する問題を防止できる。
【0085】
また、第3実施例に係る真空システムの制御部24は、いずれかのポンプ作動部が故障しても、正常に動作している他のポンプ作動部の出力を第1及び第2実施例と同様に調整することで、各ポンプ部により真空排気されるすべてのチャンバー内の圧力が同等に維持されるように制御することができる。
【0086】
例えば、第kポンプ作動部が故障した場合、これに接続された第kポンプ部の第2k-1ポンプと、第k-1ポンプ部の第2k-2ポンプとが動作を止めるので、これらのポンプが設置された第k-1チャンバーCHk-1と第kチャンバーCHkの内部空間を所定の圧力範囲に維持するために、第k-1チャンバーに設けられた他のポンプである第2k-3ポンプと、第kチャンバーに設けられた他のポンプである第2kポンプの排気量を増やす。このために、第2k-3ポンプに対する第k-1ポンプ作動部の出力と、第2kポ
ンプに対する第k+1ポンプ作動部の出力を増加させる。
【0087】
また、第k-1ポンプ作動部と第k+1ポンプ作動部にかかる負荷がそれらのポンプ作動部の性能以上に大きくなることを防止するために、第k-1ポンプ作動部の第2k-4ポンプに対する出力と、第k+1ポンプ作動部の第2k+1ポンプに対する出力とを下げる。同様に、他の正常なポンプ作動部の各ポンプに対する出力を下げることで、第kポンプ作動部の故障によって一部のポンプの動作が止まっても、各チャンバー内の真空圧力が同等な状態に維持されるように制御することができる。
【0088】
本発明の第3実施例では、各ポンプ部が2つのポンプを含み、各ポンプ作動部が2つの異なるポンプに接続することと説明したが、本発明はこれに限らず、複数のポンプ部のうち少なくとも1つが2つのポンプを含み、その2つのポンプが互いに異なる2つのポンプ作動部に接続されればよい。また、当該2つの異なるポンプ作動部のうち少なくとも一つが、他の第3のポンプに接続されればよい。
【0089】
本発明の第3実施例では、4つ以上のn個のチャンバーを真空排気するためにn個のポンプ部をn個のポンプ作動部に関連付けて接続したので、一つの制御部によってn個のポンプ作動部を制御することができ、構成が簡素化する。
【0090】
ただし、本発明はこれに限定されず、4つ以上のn個のポンプ部を2つのポンプ部または3つのポンプ部のグループに分け、それぞれ2つのポンプ作動部または3つのポンプ作動部に第1実施例または第2実施例と同様な方式で接続することもできる。例えば、6つのチャンバーを6つのポンプ部と6つのポンプ作動部で真空排気する場合において、2つのポンプ部ずつ3つのグループに分けて、第1実施例またはその変形例と同様に、ポンプ部とポンプ作動部とを接続してもよく、3つのポンプ部ずつの2つのグループに分けて、第2実施例と同様に、ポンプ部とポンプ作動部とを接続してもいい。また、2つのポンプ部は、第1実施例またはその変形例と同様に接続し、3つのポンプ部は、第2実施例と同様に接続し、残りの一つのポンプ部は、一つのポンプ作動部にだけ接続しても良い。
【0091】
(第4実施例)
図6は、有機EL表示パネルの製造ラインにおいて、本発明の技術的思想を適用した、ポンプ部とポンプ作動部との間の接続構造を模式的に示している。
【0092】
本発明の第4実施例では、有機EL表示パネルの製造ラインを構成する複数のチャンバーを、各々が少なくとも2つのチャンバーを含む複数のグループに分けて、当該グループのチャンバーを真空排気するためのポンプ部とポンプ作動部を接続する。
【0093】
例えば、図6に示すように、第1成膜室11aと第2成膜室11bとを1つのグループとし、第3成膜室11cと第4成膜室11dとを、他の1つのグループとして、それぞれのグループにおいて、チャンバーを真空排気するためのポンプ部とポンプ作動部とを本発明の第1実施例の変形例と同様に接続する。
【0094】
このように、第1成膜室11aと第2成膜室11bとのグループと、第3成膜室11cと第4成膜室11dとのグループに別々の真空装置/真空システムを設置することで、何れか一方の真空装置/真空システム(例えば、ポンプ作動部)に故障が生じても、他の一方のグループによる基板の処理を止めることなく正常に行うことができる。
【0095】
有機EL表示パネルの製造ラインにおいて、上流側のバッファー室16a、旋回室17を経てパス室15に搬送された基板は、第1成膜室11aと第2成膜室11bとを通過しながら成膜処理が行われた後、下流側バッファー室16bに搬送されるか、或いは第3成
膜室11cと第4成膜室11dとを通過しながら成膜処理が行われた後、下流側バッファー室16bに搬送される2つの流れで処理される。
【0096】
ここで、例えば、第1成膜室11aを真空排気するためのポンプ部に接続されたポンプ作動部が故障した場合でも、本発明の第1実施例の変形例によって、ポンプ部とポンプ作動部とを接続することで、故障していないもう一つのポンプ作動部によって第1成膜室11a内の真空度を第2成膜室11bと同等な程度に維持することができる。したがって、第1成膜室11a内で成膜処理されていた基板を捨てることなく、基板に対する成膜処理を完了し、下流側に搬送することができる。しかし、上記もう一つのポンプ作動部だけで、長い間、二つの成膜室を真空排気することは、上記もう一つのポンプ作動部に負担になり得るので、適切なタイミングで当該ラインを通した基板の流れを止め、故障したポンプ作動部のメンテナンスを行うことになる。このように、メンテナンスのために、第1成膜室/第2成膜室を通過する基板の流れが止まった場合であっても、本発明の第4実施例に係る構成によれば、第3成膜室/第4成膜室を通過する基板の流れを止めず、基板の処理を継続的に行うことができる。これとは違って、もし第1成膜室と第3成膜室とを一つの真空装置/真空システムで排気する場合には、何れか一方の成膜室の真空装置のポンプ作動部が故障して、メンテナンスを行わなければならない場合には、両方の基板流れをすべて停止する必要があるため、全体の基板の処理ラインが止まることになる。
【0097】
本発明の第4実施例によれば、第1マスクストックチャンバー12a、搬送室13、第2マスクストックチャンバー12bは、本発明の第2実施例の真空装置/真空システムによって真空排気される。これにより、これらの3つのチャンバーを真空排気するための真空装置内のいずれかのポンプ作動部が故障しても、他のポンプ作動部の出力を調整することで、これらの3つのチャンバー内の真空度を同等な程度に維持することができる。ただし、本発明は、このような構成に限定されず、真空装置/真空システムは、他の配置構造を有することもできる。
【0098】
例えば、第1マスクストックチャンバー12aには、第1成膜室11a/第2成膜室11bを通過する基板の成膜に用いられるマスクが収納されるので、第1成膜室11a、第1マスクストックチャンバー12a、第2成膜室11bを本発明の第2実施例の真空装置/真空システムによって真空排気するように構成することもできる。同様に、第3成膜室11c、第2マスクストックチャンバー12b、第4成膜室11dを第2実施例に係る他の真空装置/真空システムによって排気するように構成することができる。この場合、搬送室13は、他の真空装置/真空システムによって排気するように構成することができる。特に、搬送室13の真空装置のポンプ作動部が故障すると、ライン全体が停止する問題が生じるので、搬送室13を真空排気するためのポンプ部を互いに異なる2つ以上のポンプ作動部に接続することが望ましい。
【0099】
これにより、第1マスクストックチャンバー12aを真空排気するためのポンプ部に接続されたポンプ作動部のいずれかが故障し、メンテナンスが行われても、第3成膜室11c/第4成膜室11dを通過する基板の流れは停止せずに、基板処理を継続することができる。
【0100】
図6に示した本発明の第4実施例では、従来技術のように、バッファー室16aと旋回室17を真空排気するためのポンプ部を一つのポンプ作動部に接続することにしたが、本発明はこれに限らず、本発明の第1実施例/変形例に基づいて真空装置/真空システムを構成してもいい。
【0101】
また、パス室15は、他のチャンバーとは異なり、高真空を必要としないので、通常、クライオポンプを設置せずに、ラフ排気用ポンプのみを設置するので、パス室15に設け
られる真空装置/真空システムには、ポンプ作動部が含まれないが、パス室15にクライオポンプを設置してもよい。この場合、パス室15を他の二つのチャンバー(例えば、バッファー室16a、旋回室17)と共に、本発明の第2実施例に係る真空装置/真空システムで真空排気してもよく、他の一つのチャンバー(例えば、搬送室13)と共に、本発明の第1実施例による真空装置/真空システムで真空排気してもよい。
【0102】
本発明に係る真空装置/真空システムに用いられる各々のポンプ作動部は、そのポンプ作動部が接続されるポンプ部が設けられるチャンバーの内部空間の体積に応じて、異なる出力性能を有するように構成することができる。
【0103】
<真空排気方法及びこれを用いたデバイスの製造方法>
以下、本発明に係る真空装置/真空システムが用いられる有機EL表示パネルの製造ラインで、各チャンバーを真空排気する方法と、これを用いてデバイスを製造する方法について説明する。
【0104】
まず、製造ラインを構成する複数のチャンバーに設置された複数のポンプ部によって複数のチャンバーを真空排気する(S1)。この際、複数のチャンバーの真空排気は、同時に行われてもよく、順次または基板/マスクの製造ライン上の流れに合わせて決められた順番で行われてもいい。
【0105】
真空排気は、低真空排気段階と高真空排気段階の2段階で行われることができる。つまり、真空装置/真空システムに含まれているラフ排気用ポンプ21によって低真空の圧力まで排気し、続いて、高真空排気用ポンプであるクライオポンプ20を使用して高真空の圧力まで排気することができる。高真空排気段階は、一つのポンプ部に接続された2つの異なるポンプ作動部(第1ポンプ作動部と第2ポンプ作動部)で冷媒を高圧に圧縮する段階と、二つのポンプ作動部で圧縮された高圧冷媒を冷媒配管を通して対応するポンプ部の2つのクライオポンプにそれぞれ供給する段階と、2つのクライオポンプの冷凍機で高圧冷媒をそれぞれ断熱膨張させて冷媒の温度を極低温に下げる段階と、極低温に下げた冷媒を用いて、2つのクライオポンプの極低温板を所定の温度にそれぞれ冷却させる段階とを含む。
【0106】
複数のポンプ作動部それぞれまたは複数のポンプ作動部から複数のポンプ部に高圧冷媒を供給する各々の冷媒配管に設置された冷媒圧力センサ25によってポンプ作動部からポンプ部に供給される冷媒の圧力を測定する(S2)。
【0107】
複数のポンプ作動部のいずれかのポンプ作動部(例えば、第1ポンプ作動部)からこれに接続された2つの異なるポンプ部(第1ポンプ部および第nポンプ部)に供給される冷媒の圧力が所定の範囲から外れる場合、第1ポンプ作動部が接続された第1ポンプ部に接続された他のポンプ作動部である第2ポンプ作動部の第1ポンプ部に対する出力と、第1ポンプ作動部が接続された第nポンプ部に接続された他のポンプ作動部である第nポンプ作動部の第nポンプ部に対する出力を調整することで、第1ポンプ部が接続された第1チャンバーの圧力、及び第nポンプ部が接続された第nチャンバーの圧力を所定の範囲内に維持するように制御する(S3)。このようなポンプ作動部の出力制御は、制御部24によって行われる。
【0108】
同時に、第2ポンプ作動部に接続された他のポンプ部である第2ポンプ部に対する第2ポンプ作動部の出力と、第nポンプ作動部に接続された第nポンプ部に対する第nポンプ作動部の出力を調整して、第2ポンプ作動部の全体出力と第nポンプ作動部の全体出力がそれぞれのポンプ作動部の出力制限値を超えないように制御する。制御部24は、正常に動作している他のポンプ作動部の出力を調整することで、各チャンバー内の圧力が同等な
程度になるように制御する。
【0109】
これにより、複数のポンプ作動部の一つまたはそれ以上のポンプ作動部が故障した場合でも、複数のチャンバー内の圧力をデバイス製造工程に影響を与えない所定の範囲内で同等に維持することができる。
【0110】
以下、本発明に係る真空装置/真空システムが装着された成膜室11において、基板上に有機物層または電極の金属膜層を形成し、有機EL表示装置などのデバイスを製造する方法について説明する。
【0111】
まず、成膜室11に設けられたポンプ部に、互いに異なる2つ以上のポンプ作動部から高圧冷媒を供給し、ポンプ部内の2つ以上のポンプで高圧冷媒をそれぞれ断熱膨張させて、当該成膜室11を真空排気する。所望の高真空状態に排気された成膜室11内にマスクと基板を搬入する。マスクと基板の相対的な位置を調整する。相対位置が調整されたマスクを介して基板上に蒸発源から蒸発された蒸着材料を成膜する。搬入段階から成膜段階が行われる間、成膜室11内の圧力をチャンバー圧力センサ117によって測定する。測定されたチャンバー内の圧力が所定の範囲から外れる場合、その成膜室に設置されたポンプ部に接続された互いに異なる2つ以上のポンプ作動部から供給される冷媒の圧力を測定する。
【0112】
この中のいずれかのポンプ作動部から供給される冷媒の圧力が所定の範囲から外れる場合、当該ポンプ作動部による冷媒の圧縮動作を停止し、当該ポンプ部に接続された他のポンプ作動部の当該ポンプ部に対する出力と、当該他のポンプ作動部に接続された他のポンプ部に対する出力を調整し、当該成膜室と当該他のポンプ部によって真空排気される他の成膜室の圧力が所定の範囲内になるように制御する。
【0113】
このような方法により、成膜室に設置されたポンプ部に高圧冷媒を供給するための2つ以上の異なるポンプ作動部のいずれかが故障しても、成膜室内を所定の圧力範囲に維持することができるので、その成膜室での成膜工程を直ちに停止しなくても良く、メンテナンスのための準備が整うまで、成膜室での成膜処理を正常に行うことができる。
【0114】
前記した実施例は、本発明の一例を示したもので、本発明は、前記実施例の構成に限定されず、本技術思想の範囲内で適切に変形してもよい。
【符号の説明】
【0115】
11:成膜室(処理室)
12:マスクストックチャンバー
13:搬送室
14:搬送ロボット
15:パス室
16:バッファー室
20:クライオポンプ
20a、20b、20c、20d、20e、20f:第1ポンプ~第6ポンプ
21:ラフ排気用ポンプ
22:ポンプ作動部
22a、22b、22c:第1ポンプ作動部~第3ポンプ作動部
23:冷媒配管
24:制御部
25:冷媒圧力センサ
30:第1ポンプ部
31:第2ポンプ部
32:第3ポンプ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6