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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-19
(45)【発行日】2022-01-27
(54)【発明の名称】マイクロニードルアレイデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20220120BHJP
【FI】
A61M37/00 520
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020553954
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2019042461
(87)【国際公開番号】W WO2020090845
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2018204829
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】吉田 淳哉
(72)【発明者】
【氏名】下野 浩貴
(72)【発明者】
【氏名】小林 優香
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-523139(JP,A)
【文献】国際公開第2016/129184(WO,A1)
【文献】特開2011-167486(JP,A)
【文献】特開2018-191783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート部、および、シート部の上面に存在する複数の針部、を有するマイクロニードルアレイと、
前記シート部の針部を有する面の反対側の面を押圧する押圧部材とを、
備えるマイクロニードルアレイデバイスであって、
前記シート部の厚みが0.1~0.6mmであり、
前記マイクロニードルアレイのシート部を押圧する前記押圧部材の押圧面の面積Aと、前記マイクロニードルアレイの針部が存在する領域の面積Bとが、0.3≦A/B≦0.75を満たし、
前記マイクロニードルアレイのシート部を押圧する前記押圧部材の押圧面が一つであり、
前記マイクロニードルアレイの針部が存在する領域の面が一つである、
前記マイクロニードルアレイデバイス。
【請求項2】
前記マイクロニードルアレイが、水溶性ポリマーから形成される、請求項1に記載のマイクロニードルアレイデバイス。
【請求項3】
前記押圧面の面積Aが、30mm以上250mm以下であり、かつ前記針部が存在する領域の面積Bが、100mm以上400mm以下である、請求項1または2に記載のマイクロニードルアレイデバイス。
【請求項4】
前記押圧面が平面である、請求項1から3の何れか一項に記載のマイクロニードルアレイデバイス。
【請求項5】
前記押圧面が円形である、請求項1から4の何れか一項に記載のマイクロニードルアレイデバイス。
【請求項6】
前記押圧面が多角形である、請求項1から4の何れか一項に記載のマイクロニードルアレイデバイス。
【請求項7】
前記押圧部材と前記シート部が接着している、請求項1から6の何れか一項に記載のマイクロニードルアレイデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート部および複数の針部を有するマイクロニードルアレイと、上記シート部の針部を有する面の反対側の面を押圧する押圧部材とを、備えるマイクロニードルアレイデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
生体表面、即ち、皮膚や粘膜などから薬物を投与する方法としては、液状物質または粉状物質を付着させる方法が、従来から知られている。しかしながら、これらの物質の付着領域は、皮膚の表面に限られるため、発汗または異物の接触などによって、付着している薬物が除去される場合があり、適量の薬物を投与することは困難であった。また、このような薬物の拡散による浸透を利用した方法では、薬物の吸収は、角質のバリア層により阻まれ、充分な薬効を得ることは困難であった。特に、近年注目されるバイオ医薬品においては、浸透によるバリア層の突破は非常に困難となるため、注射による投与が選択されていた。しかし注射による投与は、医療従事者の手が必要で、更に苦痛や感染リスクも伴う。このような背景から、薬物を含有する高アスペクト比の微小針(針状凸部)が形成されたマイクロニードルアレイを用いて、微小針によって角質バリア層を貫通して、苦痛を伴わずに薬物を皮膚内に注入する方法が注目されている。
【0003】
特許文献1には、支持部と、この支持部表面に複数の針を設けて形成された針アレイ領域とを備えたマイクロニードルチップであって、上記支持部はその裏面から上記針アレイ領域が形成された表面に向けて湾曲した曲面形状を有するマイクロニードルチップが記載されている。
特許文献2には、マイクロニードルを皮膚に穿刺し、貼付するためのバネ式アプリケータであって、マイクロニードルを設置するための支持台としてインゴット状の保持部材を有し、バネが保持部材を押し出すように設置されていることを特徴とする、バネ式アプリケータが記載されている。
特許文献3には、マイクロニードルを皮膚に穿刺するためのマイクロニードル用アプリケータであって、マイクロニードルとテープを設置するための支持台としての補助具を有することを特徴とするアプリケータが記載されている。特許文献3の実施例においては、ロードセルにプランジャー(直径5mm)を設置し、その先端に直径12mmPP板(0.8mm厚)を取り付け、更にその先にPGA製マイクロニードル(直径10mm、2mm厚、98本)を設置したことが記載されている(特許文献3の段落0023および図2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許6074889号公報
【文献】特開2013-27492号公報
【文献】国際公開WO2011/89907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のマイクロニードルチップにおいては、針の支持部が曲面形状となっているため、曲面下部の針が刺さりにくいという問題があり、また検査後に支持部を曲面化する工程があるため、最終状態での針形状検査ができないという問題もある。特許文献2に記載のバネ式アプリケータにおいては、マイクロニードルアレイの押圧部が、マイクロニードルアレイの針部よりも大面積の平面形状である。特許文献2の構成において、押圧部の外周に力が集中し、最も強い力がかかる部分が針領域から外れることにより、針を皮膚内に十分に穿刺できないという問題がある。特許文献3においては、押圧部材の押圧面の面積が、マイクロニードルアレイの針部が存在する領域の面積よりも小さい態様が記載されているが、上記の押圧面の面積と、針部が存在する領域の面積との関係が、針部の溶解性に与える影響については不明であった。
【0006】
マイクロニードルアレイは、注射投与の代替として近年注目されているが、注射と同等の薬効を得ることは困難であった。特にヒトを想定した大動物の場合には、マウスやラットのような小動物に対して表皮が厚く、マイクロニードルアレイの針部を皮内の十分深くまで穿刺することが困難で、十分に針を溶解することができないため、十分な薬効を得ることができなかった。本発明の課題は、針部を十分に溶解することができるマイクロニードルアレイデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、押圧部材の押圧面の面積Aと、マイクロニードルアレイの針部が存在する領域の面積Bとの比率を所定の範囲内とし、かつシート部の厚みを所定の範囲内にすることによって針を十分に溶解できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1) シート部、および、シート部の上面に存在する複数の針部、を有するマイクロニードルアレイと、
上記シート部の針部を有する面の反対側の面を押圧する押圧部材とを、
備えるマイクロニードルアレイデバイスであって、
上記シート部の厚みが0.1~0.6mmであり、
上記マイクロニードルアレイのシート部を押圧する上記押圧部材の押圧面の面積Aと、上記マイクロニードルアレイの針部が存在する領域の面積Bとが、0.3≦A/B≦0.75を満たす、
上記マイクロニードルアレイデバイス。
(2) 上記マイクロニードルアレイが、水溶性ポリマーから形成される、(1)に記載のマイクロニードルアレイデバイス。
(3) 上記押圧面の面積Aが、30mm以上250mm以下であり、かつ上記針部が存在する領域の面積Bが、100mm以上400mm以下である、(1)または(2)に記載のマイクロニードルアレイデバイス。
(4) 上記押圧面が平面である、(1)から(3)の何れか一に記載のマイクロニードルアレイデバイス。
(5) 上記押圧面が円形である、(1)から(4)の何れか一に記載のマイクロニードルアレイデバイス。
(6) 上記押圧面が多角形である、(1)から(4)の何れか一に記載のマイクロニードルアレイデバイス。
(7) 上記押圧部材と上記シート部が接着している、(1)から(6)の何れか一に記載のマイクロニードルアレイデバイス。
【発明の効果】
【0009】
本発明のマイクロニードルアレイデバイスによれば、針部を十分に溶解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、針状凸部を有する経皮吸収シートの斜視図である。
図2図2は、別の形状の針状凸部を有する経皮吸収シートの斜視図である。
図3図3は、図1および図2に示す経皮吸収シートの針状凸部の断面図である。
図4図4は、別の形状の針状凸部を有する経皮吸収シートの斜視図である。
図5図5は、別の形状の針状凸部を有する経皮吸収シートの斜視図である。
図6図6は、図4および図5に示す経皮吸収シートの針状凸部の断面図である。
図7図7は、モールドの製造方法の工程図である。
図8図8は、別の形状のモールドの製造方法の工程図である。
図9図9は、別の形状のモールドの製造方法の工程図である。
図10図10は、モールドの部分拡大図である。
図11図11は、モールドの部分拡大図である。
図12図12は、経皮吸収シートの製造方法のフロー図である。
図13図13は、薬液をモールドの針状凹部に充填する工程を示す概略図である。
図14図14は、ノズルの先端を示す斜視図である。
図15図15は、別のノズルの先端を示す斜視図である。
図16図16は、充填中のノズルの先端とモールドとの部分拡大図である。
図17図17は、走査中のノズルの先端とモールドとの部分拡大図である。
図18図18は、薬液充填装置の概略構成図である。
図19図19は、ノズル内の液圧と薬剤を含む溶解液の供給との関係を示す説明図である。
図20図20は、経皮吸収シートの製造工程の一部を示す概略図である。
図21図21は、第1実施形態のポリマー層形成液供給工程を説明する図である。
図22図22は、ポリマー層形成液供給工程の好ましくない例を説明する図である。
図23図23は、モールドへのポリマー層形成液の塗布方法を説明する図である。
図24図24は、モールドへのポリマー層形成液の別の塗布方法を説明する図である。
図25図25は、型枠の形状によるポリマー層形成液の収縮を説明する図である。
図26図26は、ポリマー層形成液の塗布形状による収縮を説明する図である。
図27図27は、型枠の他の形状によるポリマー層形成液の収縮を説明する図である。
図28図28は、別の形状の型枠によるポリマー層形成液供給工程を説明する図である。
図29図29は、実施例で用いた原版の平面図および断面図である。
図30図30は、アプリケーターのレバー部材を引き上げた状態を示す正面図である。
図31図31は、アプリケーターのレバー部材を解除して第2ピストンを打ち出した状態を示す正面図である。
図32図32は、アプリケーターの分解斜視図である。
図33図33は、アプリケーターの溝部とスロープとを示す平面図である。
図34図34は、アプリケーターの環状突起と爪部とを示す一部拡大断面図である。
図35図35は、アプリケーターの爪状部材を示す斜視図である。
図36図36は、マイクロニードルアレイユニットの斜視図である。
図37図37は、図36のマイクロニードルアレイユニットのI-I線に沿う断面図である。
図38図38は、マイクロニードルアレイを穿刺する工程を示す、マイクロニードルアレイユニットの斜視図である。
図39図39は、実施例における針部(針部径12.8mm、針部面積122mmの場合)と押圧部の関係を示す図である。
図40図40は、穿刺溶解後のマイクロニードルアレイの溶解針長を算出した結果を示す。
図41図41は、穿刺溶解後のマイクロニードルアレイの溶解後針残長の外/内比を算出した結果を示す。
図42図42は、穿刺溶解後のマイクロニードルアレイの溶解針長を算出した結果を示す。
図43図43は、穿刺溶解後のマイクロニードルアレイの溶解後針残長の外/内比を算出した結果を示す。
図44図44は、溶解量から薬物含有量全体に占める投与された薬物の比率を算出し、針全数で平均化した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のマイクロニードルアレイデバイスは、
シート部、および、シート部の上面に存在する複数の針部、を有するマイクロニードルアレイと、
上記針部を穿刺する際に、上記シート部の針部を有する面の反対側の面を押圧する押圧部材とを、
備えるマイクロニードルアレイデバイスである。
【0012】
(マイクロニードルアレイ)
本発明におけるマイクロニードルアレイについて説明する。図1図2は、マイクロニードルアレイ100の一部拡大図である針状凸部110(微小針、マイクロニードルとも称する)を示している。
【0013】
マイクロニードルアレイ100は、皮膚に貼付することにより、皮膚内に薬物を供給する。図1に示すように、マイクロニードルアレイ100は、先細り形状のニードル部112と、ニードル部112に接続された錐台部114と、錐台部114に接続された平板形状のシート部116とを有している。先細り形状のニードル部112と錐台部114とにより針状凸部110が構成される。
【0014】
シート部116の表面には複数個の錐台部114が形成される(図1においては一つの錐台部114のみ表示)。錐台部114の2つの端面のうち面積の広い端面(下面)がシート部116と接続される。錐台部114の2つの端面のうち面積の狭い端面(上面)がニードル部112と接続される。つまり、錐台部114の2つの端面のうち、シート部116と離れる方向にある端面の面積が小さくなっている。ニードル部112の面積の広い面が、錐台部114の面積の狭い端面と接続されているので、ニードル部112は錐台部114と離れる方向に漸次先細り形状となっている。
【0015】
図1において、錐台部114は円錐台の形状を有し、ニードル部112は円錐の形状を有している。ニードル部112の皮膚への挿入の程度に応じて、ニードル部112の先端の形状を、0.01μm以上50μm以下の曲率半径の曲面や、平坦面等に適宜変更することができる。
【0016】
図2は、別の形状を有する針状凸部110を示している。図2においては、錐台部114は四角錐台の形状を有し、ニードル部112は四角錐の形状を有している。
【0017】
図3は、図1図2に示されるマイクロニードルアレイ100の断面図である。図3に示されるように、マイクロニードルアレイ100は所定量の薬物を含む薬物層120と、ポリマー層122とにより構成されている。ここで、所定量の薬物を含むとは、体表に穿刺した際に薬効を発揮する量の薬物を含むことを意味する。薬物を含む薬物層120は針状凸部110の先端(ニードル部112の先端)に形成されている。薬物層120を針状凸部110の先端に形成することにより、皮膚内に効率よく薬物を送達することができる。以下、「所定量の薬物を含む」を「薬物を含む」と必要に応じて称する。
【0018】
ニードル部112の薬物層120を除く部分には、ポリマー層122が形成されている。錐台部114はポリマー層122により構成されている。シート部116はポリマー層122により構成されている。ニードル部112、錐台部114、およびシート部116を構成する薬物層120およびポリマー層122の配分は、適宜設定することができる。
【0019】
シート部116の厚さTは、0.1mm以上0.6mm以下の範囲であり、好ましくは0.2mm以上0.5mm以下の範囲である。
錐台部114とシート部116との接する部分(錐台部の下面)の幅W1は、100μm以上1500μm以下の範囲であり、好ましくは100μm以上1000μm以下の範囲である。錐台部114とニードル部112との接する部分(錐台部の上面)の幅W2は、100μm以上1500μm以下の範囲であり、好ましくは100μm以上1000μm以下の範囲である。幅W1と幅W2は、上記の数値範囲内で、W1>W2を満たすものとする。
【0020】
針状凸部110の高さHは、100μm以上2000μm以下の範囲であり、好ましくは200μm以上1500μm以下の範囲である。また、ニードル部112の高さH1と錐台部114の高さH2との比であるH1/H2について、H1/H2は1以上10以下の範囲であり、好ましくは1.5以上8以下の範囲である。また、錐台部114の高さH2は10μm以上1000μm以下の範囲であることが好ましい。
【0021】
錐台部114の側面とシート部116の表面に平行な面とのなす角度αは、10°以上60°以下の範囲であり、好ましくは20°以上50°以下の範囲である。また、ニードル部112の側面と錐台部114の上面とのなす角度βは、45°以上85°以下の範囲であり、好ましくは60°以上80°以下の範囲である。
【0022】
角度βは角度α以上であることが好ましい。皮膚に対して針状凸部110を挿入しやすくなるからである。
【0023】
図4図5は別の形状を有する針状凸部110を示している。図1図4とに示されるマイクロニードルアレイ100と、図2図5とに示されるマイクロニードルアレイ100は、錐台部114の形状が同一で、ニードル部112の形状がそれぞれ異なっている。図4図5に示されるニードル部112は、先細り形状の針状部112Aと筒状の胴体部112Bとを有している。針状部112Aの底面と胴体部112Bの端面とが接続されている。胴体部112Bの端面のうち針状部112Aと接続されていない端面と錐台部114の上面とが接続される。
【0024】
図4に示される針状部112Aは円錐の形状を有し、胴体部112Bは円柱の形状を有している。図5に示される針状部112Aは四角錐の形状を有し、胴体部112Bは四角柱の形状を有している。
【0025】
ニードル部112は胴体部112Bを有しているので、ニードル部112は錐台部114と離れる方向に一定の幅を有する形状となる。ニードル部112の針状部112Aは、胴体部112Bから離れる方向に漸次先細りの形状を有している。筒状の胴体部112Bは、対向する2つの端面の面積がほぼ同一である。ニードル部112は全体として先細りの形状を有している。ニードル部112の皮膚への挿入の程度に応じて、ニードル部112の先端の形状を0.01μm以上50μm以下の曲率半径の曲面や、平坦面等に適宜変更することができる。
【0026】
図6は、図4図5に示されるマイクロニードルアレイ100の断面図である。図6に示されるように、マイクロニードルアレイ100は薬物を含む薬物層120と、ポリマー層122とにより構成されている。薬物を含む薬物層120は針状凸部110の先端(ニードル部112の先端)に形成されている。薬物層120を針状凸部110の先端に形成することにより、皮膚内に効率よく薬物を供給することができる。
【0027】
ニードル部112の薬物層120を除く部分には、ポリマー層122が形成されている。錐台部114はポリマー層122により構成されている。シート部116はポリマー層122により構成されている。ニードル部112、錐台部114、およびシート部116を構成する薬物層120およびポリマー層122の配分は、適宜設定することができる。
【0028】
シート部116の厚さT、錐台部114の下面の幅W1、錐台部114の上面の幅W2、針状凸部110の高さH、および錐台部114の高さH2を、図3に示すマイクロニードルアレイ100と同様の長さにすることができる。ニードル部112の高さH1(H1A+H1B)と錐台部114の高さH2との比であるH1/H2について、図3に示すマイクロニードルアレイ100と同様の比にすることができる。
【0029】
針状部112Aの高さH1Aと胴体部112Bの高さH1Bの比であるH1B/H1Aについて、H1B/H1Aは0.1以上4以下の範囲であり、好ましくは0.3以上2以下の範囲である。
【0030】
錐台部114の側面とシート部116の表面に平行な面とのなす角度αは、10°以上60°以下の範囲であり、好ましくは20°以上50°以下の範囲である。また、針状部112Aの側面と胴体部112Bの端面に平行な面とのなす角度βは、45°以上85°以下の範囲であり、好ましくは60°以上80°以下の範囲である。
【0031】
角度βは角度α以上であることが好ましい。皮膚に対して針状凸部110を挿入しやすくなるからである。
【0032】
本実施の形態では、図1,2,4,5に示すニードル部112を有するマイクロニードルアレイ100を示したが、マイクロニードルアレイ100はこれらの形状に限定されない。
【0033】
(モールド)
図7は、モールド(型)の作製の工程図である。
図7(A)に示すように、マイクロニードルアレイを製造するためのモールドを作製するための原版を先ず作製する。
この原版11の作製方法は2種類あり、1番目の方法は、Si基板上にフォトレジストを塗布した後、露光、現像を行う。そして、RIE(リアクティブイオンエッチング:Reactive Ion Etching)等によるエッチングを行うことにより、原版11の表面に、マイクロニードルアレイの針状凸部と同形状である複数の凸部12をアレイ状に作製する。尚、原版11の表面に凸部12を形成するためにRIE等のエッチングを行う際には、Si基板を回転させながら斜め方向からのエッチングを行うことにより、凸部12を形成することが可能である。
2番目の方法は、Ni等の金属基板に、ダイヤモンドバイト等の切削工具を用いた加工により、原版11の表面に複数の凸部12をアレイ状に作製する方法がある。
【0034】
次に、図7(B)に示すように、原版11を利用してモールド13を作製する。通常のモールド13の作製には、Ni電鋳などによる方法が用いられる。原版11は、先端が鋭角な円錐形または角錐形(例えば四角錐)の形状の凸部12を有しているため、モールド13に形状が正確に転写され、モールド13を原版11から剥離することができる。しかも安価に製造することが可能な4つの方法が考えられる。
【0035】
1番目の方法は、原版11にPDMS(ポリジメチルシロキサン:polydimethylsiloxane、例えば、ダウ・コーニング社製シルガード184)に硬化剤を添加したシリコーン樹脂を流し込み、100℃で加熱処理し硬化した後に、原版11からモールド13を剥離する方法である。2番目の方法は、紫外線を照射することにより硬化するUV硬化樹脂を原版11に流し込み、窒素雰囲気中で紫外線を照射した後に、原版11からモールド13を剥離する方法である。3番目の方法は、ポリスチレンやPMMA(ポリメチルメタクリレート:polymethyl methacrylate)等のプラスチック樹脂を有機溶剤に溶解させたものを剥離剤の塗布された原版11に流し込み、乾燥させることにより有機溶剤を揮発させて硬化させた後に、原版11からモールド13を剥離する方法である。4番目の方法は、Ni電鋳により反転品を作製する方法である。
【0036】
これにより、原版11の凸部12の反転形状である針状凹部15を2次元で配列したモールド13が作製される。このようにして作製されたモールド13を図7(C)に示す。尚、上記4つのいずれの方法においてもモールド13は、何度でも容易に作製することが可能である。
【0037】
モールド自身に段差部を有する場合は、原版に段差部を設けることで、その反転形状であるモールドを作製することができる。図8は、針状凹部15が形成された領域の周囲に、針状凹部15が形成された領域より高い段差部74を有するモールド73の作製の工程図である。
【0038】
段差部を有さないモールドを形成する場合と同様に、図8(A)に示すように、段差部74を有するモールド73を作製するための原版71を作製する。原版71には、凸部12が形成された領域よりも低い段差部75が形成されている。原版の作製は、図7と同様の方法により行うことができる。
【0039】
次に、図8(B)に示すように、原版71を利用してモールド73を作製する。モールド73の作製も図7と同様の方法により行うことができる。これにより、図8(C)に示すように、原版71の凸部12および段差部75の反転形状である、針状凹部15を2次元で配列し、その周囲に段差部74を有するモールド73が作製される。
【0040】
また、図9は、針状凹部15が形成された領域の周囲に、針状凹部15が形成された領域より低い段差部84を有するモールド83の作製の工程図である。
【0041】
図7および図8と同様に、図9(A)に示すように、段差部84を有するモールド83を作製するための原版81を作製する。原版81には、凸部12が形成された領域よりも高い段差部85が形成されている。
【0042】
次に図9(B)に示すように、原版81を利用してモールド83を作製する。これにより、図9(C)に示すように、原版81の凸部12および段差部85の反転形状である、針状凹部15を2次元で配列し、その周囲に段差部85を有するモールド83が作製される。なお、原版の作製方法、モールドの作製方法は、図7および図8と同様の方法により行うことができる。
【0043】
図10は、モールド13の針状凹部15の部分拡大図である。なお、モールド73、83の針状凹部15も同様の構成である。針状凹部15は、モールド13の表面から深さ方向に狭くなるテーパ状の入口部15Aと、深さ方向に先細りの先端凹部15Bとを備えている。入口部15Aのテーパの角度α1は、マイクロニードルアレイの錐台部の側面とシート部とで構成される角度αと基本的に一致する。また、先端凹部15Bのテーパの角度β1は、ニードル部の側面と錐台部の上面とで構成される角度βと基本的に一致する。
【0044】
図11は、マイクロニードルアレイの製造方法を行う上で、より好ましいモールド複合体18の態様を示したものである。図11に示すように、モールド複合体18は、針状凹部15の先端に貫通孔15Cが形成されたモールド13と、モールド13の貫通孔15Cの側に貼り合わされ、気体は透過するが液体は透過しない材料で形成された気体透過シート19と、で構成される。貫通孔15Cにより、針状凹部15の先端は気体透過シート19を介して大気と連通する。針状凹部15の先端とは、モールド13の深さ方向に先細りになっている側を意味し、薬液、ポリマー層形成液が充填される側と反対側を意味する。
【0045】
このようなモールド複合体18を使用することで、針状凹部15に充填される経皮吸収材料溶液は透過せず、針状凹部15に存在する空気のみを針状凹部15から貫通孔15Cを介して抜くことができる。針状凹部15の形状を経皮吸収材料に転写する際の転写性が良くなり、よりシャープな針状凸部を形成することができる。
【0046】
貫通孔15Cの径D(直径)としては、1~50μmの範囲が好ましい。この範囲とすることで、空気の抜けが容易となり、また、マイクロニードルアレイの針状凸部の先端部をシャープな形状とすることができる。気体は透過するが液体は透過しない材料で形成された気体透過シート19としては、例えばポアフロン(商標、住友電気工業株式会社)を好適に使用できる。
【0047】
モールド13に用いる材料としては、樹脂系の素材または金属製の素材を用いることができる。中でも樹脂系の素材であることが好ましく、気体透過性の高い素材であることが更に好ましい。気体透過性の代表である酸素透過性は、1×10-12(mL/s・m・Pa)より大きいことが好ましく、1×10-10(mL/s・m・Pa)より大きいことがさらに好ましい。気体透過性を上記範囲とすることにより、モールド13の針状凹部15に存在する空気をモールド13側から追い出すことができる。欠陥の少ないマイクロニードルアレイを製造することができる。このような材料として、樹脂系の素材としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート:polyethylene terephthalate)、PMMA(ポリメチルメタクリレート:polymethyl methacrylate)PS(ポリスチレン:polystyrene)、PE(ポリエチレン:polyethylene)、POM(ポリアセタール:polyacetal、ポリオキシメチレン:polyoxymethylene)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン:polytetrafluoroethylene)、UV(ultraviolet)硬化樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂などの一般的なエンジニアリングプラスチックを用いることができる。また、金属製の素材としては、Ni、Cu、Cr、Mo、W、Ir、Tr、Fe、Co、MgO、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、α-酸化アルミニウム,ステンレスおよびその合金を挙げることができる。また、後述するように、モールド13は、ポリマー層形成液供給工程において、段差部でポリマー層形成液を固定する必要があるため、撥水性とぬれ性を制御した材料を用いることが好ましい。例えば、モールドとポリマー層形成液との接触角が90°を超え90°に近いことが好ましい。
【0048】
(ポリマー溶解液)
本発明におけるマイクロニードルアレイは、ポリマー溶解液を用いて形成することができる、好ましくは水溶性ポリマーを用いて形成される。
ポリマー溶解液について説明する。本明細書では、所定量の薬物を含有するポリマー溶解液を、薬物を含むポリマー溶解液または薬物を含む溶解液と必要に応じて称している。また、所定量の薬物を含むポリマー溶解液を薬液と称している。所定量の薬物を含むか否かは、体表に穿刺した際に薬効を発揮できるか否かで判断される。したがって、所定量の薬物を含むとは、体表に穿刺した際に薬効を発揮する量の薬物を含むことを意味する。
【0049】
ポリマー溶解液に用いられるポリマーの素材としては、水溶性ポリマーを用いることが好ましい。このような水溶性ポリマーとしては、グルコース、マルトース、プルラン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルデンプンなどの糖類、ゼラチンなどのタンパク質を使用することができる。また、ポリ乳酸、乳酸・グリコール酸共重合体などの生分解性ポリマーを使用してもよい。これらの中でもゼラチン系の素材は多くの基材と密着性をもち、ゲル化する材料としても強固なゲル強度を持つため、後述する剥離工程において、基材と密着させることができ、モールドから基材を用いてポリマーシートを剥離することができるので、好適に利用することができる。濃度は材料によっても異なるが、ポリマー層122を形成するポリマー溶解液中に樹脂ポリマーが10~50質量%含まれる濃度とすることが好ましい。また、溶解に用いる溶媒は、温水以外であっても揮発性を有するものであればよく、メチルエチルケトン(MEK:methyl ethyl ketone)、アルコールなどを用いることができる。そして、ポリマー樹脂の溶解液中には、用途に応じて体内に供給するための薬物を共に溶解させることが可能である。薬物層120を形成する薬物を含むポリマー溶解液のポリマー濃度(薬物自体がポリマーである場合は薬物を除いたポリマーの濃度)としては、0~30質量%含まれることが好ましい。
【0050】
ポリマー溶解液の調製方法としては、水溶性ポリマー(ゼラチンなど)を用いる場合は、水溶性粉体を水に溶解し、溶解後に薬物を添加してもよいし、薬物が溶解した液体に水溶性ポリマーの粉体を入れて溶かしても良い。水に溶解しにくい場合、加温して溶解してもよい。温度は高分子材料の種類により、適宜選択可能であるが、約60℃以下の温度で加温することが好ましい。ポリマー樹脂の溶解液の粘度は、薬物層120を形成する薬物を含む溶解液では100Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは10Pa・s以下とすることが好ましい。ポリマー層122を形成する溶解液では2000Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1000Pa・s以下とすることが好ましい。ポリマー樹脂の溶解液の粘度を適切に調整することにより、モールドの針状凹部に容易に溶解液を注入することができる。例えば、ポリマー樹脂の溶解液の粘度は、細管式粘度計、落球式粘度計、回転式粘度計または振動式粘度計で測定することができる。
【0051】
(薬物)
ポリマー溶解液に含有させる薬物は、薬物としての機能を有するものであれば限定されない。特に、ペプチド、タンパク質、核酸、多糖類、ワクチン、水溶性低分子化合物に属する医薬化合物、または化粧品成分から選択することが好ましい。
【0052】
(マイクロニードルアレイの製造方法)
マイクロニードルアレイの製造方法は、例えば、図12に示すように、薬液充填工程と、薬液乾燥工程と、ポリマー層形成液供給工程と、ポリマー層形成液乾燥工程と、剥離工程との少なくとも5つの工程をこの順で備えている。
【0053】
(薬液充填工程)
モールド13を用いたマイクロニードルアレイの製造方法について説明する。図13(A)に示すように、2次元配列された針状凹部15を有するモールド13が、基台20の上に配置される。モールド13には、5×5の2次元配列された、2組の複数の針状凹部15が形成されている。所定量の薬物を含むポリマー溶解液である薬液22を収容する送液タンク30と、送液タンク30に接続される配管32と、配管32の先端に接続されたノズル34と、を有する液供給装置36が準備される。薬液22はノズル34の先端から吐出される。
【0054】
図14はノズルの先端部の概略斜視図を示している。図14に示すように、ノズル34は、先端側に平坦面であるリップ部34Aと、スリット形状の開口部34Bと、リップ部34Aに沿って開口部34Bから離れる方向に広がる2つの傾斜面34Cと、を備えている。スリット形状の開口部34Bにより、例えば、1列を構成する複数の針状凹部15に同時に、薬液22を充填することが可能となる。開口部34Bの大きさ(長さと幅)は、一度に充填すべき針状凹部15の数に応じて適宜選択される。
開口部34Bの長さを長くすることで、より多くの針状凹部15に一度に薬液22を充填することができる。これにより生産性を向上させることが可能となる。
【0055】
図15は別のノズルの先端部の概略斜視図を示している。図15に示すように、ノズル34は、先端側に平坦面であるリップ部34Aと、2つのスリット形状の開口部34Bと、リップ部34Aに沿って開口部34Bから離れる方向に広がる2つの傾斜面34Cと、を備えている。2つの開口部34Bにより、例えば、2列を構成する複数の針状凹部15に同時に、薬物を含む薬液22を充填することが可能となる。
ノズル34に用いる材料としては、弾性のある素材または金属製の素材を用いることができる。例えば、テフロン(登録商標)、ステンレス鋼(SUS)、チタン等が挙げられる。
【0056】
図13(B)を参照して充填工程を説明する。図13(B)に示すように、ノズル34の開口部34Bが針状凹部15の上に位置調整される。薬液22を吐出するノズル34がモールド13に押し付けられ、ノズル34のリップ部34Aとモールド13の表面とは接触している。液供給装置36から薬液22がモールド13に供給され、ノズル34の開口部34Bから薬液22が針状凹部15に充填される。本実施形態では、1列を構成する複数の針状凹部15に薬液22が同時に充填される。ただし、これに限定されず、針状凹部15に一つずつ充填することができる。また、図15に示すノズル34を使用することで、複数列を構成する複数の針状凹部15に対し、複数列毎に薬液22を同時に充填することもできる。
モールド13が気体透過性を有する素材で構成される場合、モールド13の裏面から吸引することで薬液22を吸引でき、針状凹部15内への薬液22の充填を促進させることができる。
【0057】
図13(B)を参照して説明した充填工程に次いで図13(C)に示すように、ノズル34のリップ部34Aとモールド13の表面とを接触させながら、開口部34Bの長さ方向に対して垂直方向に液供給装置36を相対的に走査させている。ノズル34をモールド13の上を走査させ、薬液22が充填されていない針状凹部15にノズル34を移動させる。ノズル34の開口部34Bが針状凹部15の上に位置調整される。本実施の形態では、ノズル34を走査させる例で説明したが、モールド13を走査させてもよい。
【0058】
ノズル34のリップ部34Aとモールド13の表面とを接触させてノズル34をモールド13の上を走査させているので、ノズル34がモールド13の針状凹部15以外の表面に残る薬液22を掻き取ることができる。薬物を含む薬液22をモールド13の針状凹部15以外に残らないようにすることができる。また、本実施の形態では、ノズル34は、傾斜面34Cの長手方向が矢印で示す走査方向に対して直交する位置となるよう配置されている。したがって、ノズル34はモールド13の上をスムーズに走査させることができる。
【0059】
モールド13へのダメージを減らすことと、モールド13の圧縮による変形をできるだけ抑制するため、走査される際のノズル34のモールド13への押し付け程度を、制御することが好ましい。例えば、ノズル34のモールド13への押し付け力や、ノズル34のモールド13への押し込み距離を制御することが好ましい。また、薬液22がモールド13の針状凹部15以外に残らないようにするため、モールド13もしくはノズル34の少なくとも一方がフレキシブルな弾性変形する素材であることが望ましい。
【0060】
図13(B)の充填工程と、図13(C)の走査工程とを繰り返すことで、5×5の2次元配列された針状凹部15に薬液22が充填される。5×5の2次元配列された針状凹部15に薬液22が充填されると、隣接する5×5の2次元配列された針状凹部15に液供給装置36を移動し、図13(B)の充填工程と、図13(C)の走査工程とを繰り返す。隣接する5×5の2次元配列された針状凹部15にも薬液22が充填される。
【0061】
上述の充填工程と走査工程について、(1)ノズル34を走査させながら薬液22を針状凹部15に充填する態様でもよいし、(2)ノズル34の走査中に針状凹部15の上でノズル34を一旦静止して薬液22を充填し、充填後にノズル34を再度走査させる態様でもよい。充填工程と走査工程との間、ノズル34のリップ部34Aがモールド13の表面に押し付けられている。液供給装置36から吐出される薬液22の量は、充填されるモールド13の複数の針状凹部15の総体積と等しい量とすることが好ましい。薬液22をモールド13の針状凹部15以外の表面に残らないようにし、薬物のロスを低減することができる。
【0062】
図16は、薬液22を針状凹部15に充填しているときの、ノズル34の先端とモールド13との部分拡大図である。図16に示すように、ノズル34内に加圧力P1を加えることで、針状凹部15内へ薬液22を充填するのを促進することができる。さらに、針状凹部15内へ薬液22を充填する際、ノズル34をモールド13の表面に接触させる押し付け力P2を、ノズル34内の加圧力P1以上とすることが好ましい。押し付け力P2≧加圧力P1とすることにより、薬液22が針状凹部15からモールド13の表面に漏れ出すのを抑制することができる。
【0063】
図17は、ノズル34の移動中における、ノズル34の先端とモールド13との部分拡大図である。ノズル34をモールド13に対して相対的に走査される際、ノズル34をモールド13の表面に接触させる押し付け力P3を、充填中のノズル34をモールド13の表面に接触させる押し付け力P2より小さくすることが好ましい。モールド13へのダメージを減らし、モールド13の圧縮による変形を抑制するためである。
【0064】
ノズル34のリップ部34Aはモールド13の表面に対して平行であることが好ましい。ノズル34の取り付け部に関節駆動機構を設けることにより、ノズル34の姿勢を制御してもよい。
【0065】
モールド13の表面形状に合わせてZ軸方向にノズル34を駆動して、ノズル34のモールド13への押し付け力および/または押し込み距離を制御することが好ましい。図18は、押し付け力および/または押し込み距離を制御することができる薬液充填装置48の概略構成図である。薬液充填装置48は、薬液を貯留する送液タンク30と送液タンク30に取り付けられたノズル34とを有する液供給装置36と、送液タンク30とノズル34とをZ軸方向に駆動するZ軸駆動部50と、モールド13を載置するための吸引台52と、吸引台52をX軸方向に駆動するX軸駆動部54と、上記装置を支持する架台56と、制御システム58と、を有している。
【0066】
押し付け力を一定に制御する場合について説明する。所望の押し付け力となるZ座標までZ軸駆動部50によりノズル34をモールド13に近づける。モールド13に接触したノズル34をX軸駆動部54により走査させながら、押し付け力が一定となるようにZ軸座標を制御しつつ薬液22を吐出する。接触圧力測定の方式は特に限定はしないが、例えば、各種ロードセルを、例えば吸引台52の下に、または吸引台52に代えて用いることができる。ロードセルとは厚み方向に圧縮する力を測定できる測定器具を意味する。押し付け力は、モールド13に対して1~1000kPaの範囲内の任意の圧力で一定に制御可能であることが好ましい。
【0067】
押し込み距離を一定に制御する場合について説明する。ノズル34を接触する前に、モールド13の表面形状をあらかじめ測定する。モールド13に接触したノズル34をX軸駆動部54により走査させながら、モールド13の表面形状に対して所望の押し込み距離になるようにZ軸座標をオフセットさせた値をZ軸駆動部50にフィードバックしつつ薬液22を吐出する。
【0068】
形状測定の方式は特に限定はしないが、例えば、非接触式のレーザー変位計60などの光学測定機器、接触式の触針式段差計など、を用いることができる。さらに、ノズル34のスリット方向の姿勢をモールド13の表面形状に合わせて制御してもよい。押し込み距離は、モールド13の厚みに対して1~15%の範囲で制御されることが好ましい。モールド13の形状に合わせてノズル34とモールド13との距離を、Z軸駆動部50によりZ軸方向に制御しながら動作することで、圧縮変形率が均一化され、充填量精度を向上できる。
【0069】
押し付け力および押し込み距離の制御に関して、押し込み距離が小さい場合は押し付け力を制御することが好ましく、押し込み距離が大きい場合は、押し込み距離を直接制御することが好ましい。
【0070】
図19は、ノズル内の液圧と薬物を含む溶解液の供給との関係を示す説明図である。図19に示すように薬液22の供給は、ノズル34が針状凹部15の上に位置する前から開始される。薬液22を針状凹部15に確実に充填するためである。5×5で構成される複数の針状凹部15への充填が完了するまで、薬液22はモールド13に連続して供給される。ノズル34が5列目の針状凹部15の上に位置する前に薬液22をモールド13に供給するのを停止する。薬液22が針状凹部15からあふれ出るのを防止できる。ノズル34内の液圧に関して、薬液22の供給が開始されると、ノズル34が針状凹部15に位置しない領域では高くなる。一方、ノズル34が針状凹部15の上に位置すると、薬液22が針状凹部15に充填され、ノズル34内の液圧が低くなる。液圧の変動が繰り返される。
【0071】
5×5で構成される複数の針状凹部15への充填が完了すると、ノズル34は、隣接する5×5で構成される複数の針状凹部15へ移動される。液供給に関して、隣接する5×5で構成される複数の針状凹部15へ移動する際、薬液22の供給を停止するのが好ましい。5列目の針状凹部15から次の1列目の針状凹部15までは距離がある。その間をノズル34が走査される間、薬液22を供給し続けると、ノズル34内の液圧が高くなりすぎる場合がある。その結果、ノズル34から薬液22がモールド13の針状凹部15以外に流れ出る場合があり、これを抑制するため薬液22の供給を停止するのが好ましい。
【0072】
薬液22の充填を行う際には、ノズル34の先端をクリーニングしてから使用することが好ましい。充填前にノズル34のリップ部34Aの表面に付着物があると、薬液22の充填量の精度が低下してしまうためである。クリーニングは、不織布によるワイプが一般的である。ワイプの際に、不織布を水や溶剤などで浸潤させると効果的にクリーニングできる。
【0073】
薬液22の充填後、ノズル34をモールド13から離す際に、モールド13の表面に薬液22が残留する可能性がある。針状凹部15への充填が完了後、ノズル34の開口部34Bから薬液22を吸引するサックバック制御を行うことで、吐出余剰分の薬液22を吸い上げ、モールド13の表面への液残りを低減することもできる。
【0074】
薬液充填工程について、図11に示すモールド13を利用し、貫通孔15C側から吸引して、薬液22を針状凹部15内に充填させることができる。
薬液22の針状凹部15への充填が完了すると、薬液乾燥工程、ポリマー層形成液供給工程、ポリマー層形成液乾燥工程、剥離工程へと進む。
図20(A)に示すように、薬液充填工程にてモールド13の針状凹部15に薬液22をノズル34から充填する。薬液充填工程は上述した方法で実施される。
【0075】
(薬液乾燥工程)
図20(B)に示すように、薬液乾燥工程では、薬液22を乾燥固化させることで、薬物を含む第1層120を針状凹部15内に形成する。
薬液乾燥工程は、モールド13の針状凹部15に充填された薬液22を乾燥し、針状凹部15の先端に局在させる工程である。薬液乾燥工程は、温度1℃以上10℃以下の環境下で行うことが好ましい。この範囲で行うことで、気泡欠陥発生を低減することができる。また、薬液乾燥工程の温湿度条件を制御して乾燥速度を最適化することにより、針状凹部15のモールド13の壁面に薬液22が固着することを低減することができ、薬液22が針状凹部15の先端に集まりながら乾燥が進む。
薬液乾燥工程における薬液22の乾燥は無風状態で行うことが好ましい。不均一な風が薬液22に直接当たると乾燥ムラが生じる。強く風が当たる部分は乾燥速度が上昇し、モールド13の壁面への薬液22の固着が発生し、針状凹部15の先端へ薬液22が局在化することを妨げる可能性があるからである。
【0076】
無風状態での乾燥を実現するため、例えば、風防を設置することが好ましい。風防は、モールド13に直接風が当たらないように設置される。風防として、蓋、庇、衝立、囲いなどの物理的障害物を設置する方法が簡便であるので好ましい。また、風防を設置する際は、モールド13の設置空間が密閉状態にならないように通気口等を確保することが好ましい。密閉状態にしてしまうと密閉空間の水蒸気が飽和し、薬液22の乾燥が進行しなくなる可能性がある。通気口は蒸気の出入りができれば好ましく、風防内の気流を安定化するには水蒸気透過性のフィルムなどで通気口を覆うことが更に好ましい。なお、乾燥時間は、針状凹部15の形状、針状凹部15の配置や数、薬物の種類、薬液22の充填量や濃度、などを考慮して適宜調整される。
無風状態とは、風が全くない状態に加えて、風速が0.5m/s以下である場合をいう。この範囲であれば、乾燥ムラがほとんど生じないからである。
薬液乾燥工程では、薬液22を乾燥させることにより固化し、薬液22を充填した際の状態よりも縮小させている。これにより、剥離工程において、モールド13の針状凹部15から薬物層120を容易に剥離することが可能となる。
【0077】
(ポリマー層形成液供給工程)
次に、図20(C)に示すように、所定量の薬物を含む薬物層120の上にポリマー層122を形成するポリマー溶解液であるポリマー層形成液24を供給し、ポリマー層形成液24を針状凹部15に充填する。ポリマー層形成液の供給は、ディスペンサーによる塗布、バー塗布やスピン塗布、スプレーなどによる塗布などを適用することができるがこれらに限定されない。以下、ポリマー層形成液24を塗布によりモールド13に供給する態様で説明する。薬物を含む薬物層120は乾燥により固化されているので、薬物層120に含まれる薬物がポリマー層形成液24に拡散することを抑制できる。
【0078】
図21は、ポリマー層形成液供給工程を説明する図である。第1実施形態のポリマー層形成液供給工程においては、針状凹部15が形成された領域16の周囲に型枠14を設置し、針状凹部15が形成された領域16より高い段差部を有するモールド13に、ポリマー層形成液24を塗布する。型枠14は、モールド13と分離可能に設置することができる。
【0079】
ポリマー層形成液供給工程においては、図21(A)に示すように、針状凹部15の周囲に設置された型枠14により形成された段差部以上の高さであり、かつ、上面から見て段差部以上の範囲に、ポリマー層形成液24を、塗布手段92により塗布する。ポリマー層形成液を型枠14以上の高さに塗布するとは、ポリマー層形成液24と型枠14とが接している部分のポリマー層形成液24の高さのことである。製造されたマイクロニードルアレイを剥離し易くするため、型枠14はポリマー層形成液を弾き易くする材質で形成されており、ポリマー層形成液24の塗布後、ポリマー層形成液24は、型枠14により弾かれ、表面張力により収縮する。収縮したポリマー層形成液24は、図21(B)に示すように、モールド13との接触位置が型枠14の段差部で固定される。型枠14で固定された状態で、ポリマー層形成液を乾燥することにより、マイクロニードルアレイのポリマー層122の形状(シート部116の形状)を安定して形成することができる。
【0080】
図22は、ポリマー層形成液供給工程の好ましくない例を説明する図である。図22(A)に示すように、ポリマー層形成液24を型枠14内であり、型枠14より低い高さで塗布する。塗布後、図22(B)に示すように、ポリマー層形成液24は、表面張力により針状凹部15が形成された領域16で収縮する。図22(B)は、ポリマー層形成液供給工程後であり、ポリマー層形成液乾燥工程により、さらにポリマー層形成液24の体積が収縮するため、マイクロニードルアレイのシート部116が安定して形成されない部分が生じてしまう。
【0081】
モールド13に設けられる型枠14の材質としては、上述したモールドの材質と同様のものを用いることができる。また、ポリマー層形成液とのぬれ性が良いほど、乾燥時の液面が均一で緩やかな局面とすることができ、ポリマー層形成液の液面形状の局所的な変化を防止することができる。本発明においては、ポリマー層形成液が型枠14に弾かれ、収縮することで、段差部で固定されるため、型枠を形成する材質はポリマー層形成液に対して撥水性を有する必要がある。したがって、型枠を形成する材質は、ポリマー層形成液に対し、撥水性とぬれ性を制御した材料であることが好ましく、型枠のポリマー層形成液に対する接触角が、90°を超え、90°に近いことが好ましい。型枠の材質として、ポリマー層形成液とのぬれ性の良い材料を用いることにより、ポリマー層形成液の塗布直後の形状を安定させることができ、泡の巻き込みを防止することができる。また、乾燥時の風や温度ムラなどの外乱に強く安定的な液面を固定することができる。一方、型枠を形成する材質とポリマー層形成液とのぬれ性が悪いと、塗布液の液面が曲率の高い液面となり、わずかな形状ムラでも大きな表面張力差が生じ、塗布液の形がくずれ、型枠からはじいてしまうため好ましくない。ぬれ性を向上させるためには、型枠の素材を親水性にする、ポリマー層形成液にタンパク質などの界面活性能を有する素材を添加することも有効な手段である。また、型枠14の設置は、薬液充填工程から設置してもよく、ポリマー層形成液供給工程の前に設置してもよい。
【0082】
型枠14の高さは、10μm以上5000μm以下であることが好ましい。ポリマー層形成液24を段差部で固定するためには、型枠14以上の高さで、かつ、型枠14以上の範囲でポリマー層形成液24を塗布する必要があるため、型枠14の高さをこの範囲とすることで、使用するポリマー層形成液の量を抑えることができる。したがって、乾燥時間を短縮することができる。また、型枠14の高さが10μmより低いと、ポリマー層形成液24が型枠14で固定されず、モールド13がポリマー層形成液を弾いてしまい、シート部116が形成されないなど、マイクロニードルアレイが製造できない場合がある。
【0083】
ポリマー層形成液供給工程における、塗布時のポリマー層形成液の厚みはモールド13の針状凹部15が形成された領域16から、型枠14の高さ以上であり、5000μm以下とすることが好ましい。型枠14の位置でポリマー層形成液を固定するためには、型枠14の高さ以上とする必要があり、塗布後のポリマー層形成液の塗布厚みが5000μmを超えると、乾燥に時間がかかるからである。また、乾燥負荷の低減、製造コストを下げるため、全体に液面を薄くしながら、ポリマー層を型枠に安定して固定するためには、型枠付近の膜厚を厚くし、中央付近の膜厚を薄くした膜厚分布としてもよい。
【0084】
ポリマー層形成液24を、モールド13に塗布する方法としては、図23に示すように、型枠14で周囲を囲まれた針状凹部15ごとに塗布してもよく、図24に示すように、型枠14を覆ってモールド13全面に塗布を行ってもよい。図23(A)に示すように、ポリマー層形成液24を型枠14ごとに塗布した場合、塗布後、図23(B)に示すように、型枠14でポリマー層形成液を固定することができる。型枠14ごとに塗布する方法としては、スリットコーターを使った間歇ストライプ塗布、ディスペンサー、インクジェット、凸版印刷、平版印刷、スクリーン印刷などの方式により行うことができる。
【0085】
また、図24(A)に示すように、モールド13全面に塗布を行った場合、ポリマー層形成液の量が多いと、図24(B)に示すように、ポリマー層形成液24が均一に塗布されたまま、ポリマー層形成液乾燥工程が行われる。この場合においても、次のポリマー層形成液乾燥工程において、ポリマー層122を安定して形成することができる。ポリマー層形成液24の量が少ない場合は、図24(C)に示すように、型枠14の内側(針状凹部15が形成された領域)に向かってポリマー層形成液24が収縮し、型枠14で固定されることで、安定した形状でマイクロニードルアレイの製造を行うことができる。均一に塗布する方法としては、スリットコート、スライドコート、ブレードコート、バーコート、ロールコート、グラビアコート、ディップコート、スプレーコートなど、一般的な塗工方法を用いることができる。
【0086】
図25~27は、型枠の形状によるポリマー層形成液の収縮を説明する図である。図25は、ポリマー層形成液24を円形状に塗布し、円形の型枠14を用いてポリマー層形成液24を塗布した図である(図25(A))。ポリマー層形成液24は、図25(B)に示すように、等方的に収縮するため、型枠14より広く塗布したポリマー層形成液24は、型枠14により形成された段差部の位置で固定することができる(図25(C))。
【0087】
図26は、円形の型枠14を用いて、ポリマー層形成液24を四角形状に塗布した図である(図26(A))。ポリマー層形成液24を四角形状に塗布した場合においても、円形の型枠14の段差部に向かって、等方的に収縮する(図26(B))。型枠14上にはじき残しはあるものの、型枠14により形成された段差部の位置で、ポリマー層形成液24を固定することができる(図26(C))。
【0088】
図27は、四角形状の型枠14を用いて、ポリマー層形成液24を円形状に塗布した図である(図27(A))。型枠14の形状が四角形状の場合、ポリマー層形成液24が等方的に収縮する際に、型枠14の四角形状の角部でポリマー層形成液24を固定することができ、型枠14からぬれ落ちてしまう場合がある(図27(B))。型枠14からぬれ落ちたポリマー層形成液24は、モールド上で、さらに収縮が進行し、針状凹部15が形成された部分にポリマー層が形成されず、マイクロニードルアレイが安定して形成されない場合がある(図27(C))。
【0089】
図24で示すように、モールド上にポリマー層形成液を均一に塗布するような場合であれば、型枠14の形状が四角形状であっても、ポリマー層形成液が型枠内にぬれ落ちることなく、ポリマー層形成液供給工程を行うことができる。型枠により形成された段差部で、ポリマー層形成液を固定するためには、型枠を設けることで形成される針状凹部が形成された領域の周囲の形状を、上面から見てすべての角が120°以上の角度で形成される六角形以上の多角形とすることが好ましく、さらに好ましくは、正六角形以上の多角形、または、円形とすることが好ましい。型枠の段差部の形状を上記の形状とすることで、ポリマー層形成液を塗布した際、モールドに設置した段差部分に働くポリマー層形成液の表面張力による収縮力を均一にすることができる。なお、「正多角形」とは、多角形を構成する各辺が等しいことが好ましいが、本発明の効果を有する範囲で変更が可能である。
【0090】
図28は、モールド13の針状凹部が形成された領域側から上側に向かって広がる方向にテーパ形状とした型枠17を用いたポリマー層形成液供給工程を説明する図である。テーパ形状を有する型枠17の場合においても、型枠17の上部側の領域以上の範囲で、ポリマー層形成液24を塗布し(図28(A))、その後、表面張力により収縮させることで、型枠17により形成された段差部でポリマー層形成液24を固定することができる(図28(B))。
【0091】
また、型枠17を、鉛直方向上側に広がる方向にテーパ形状とすることで、ポリマー層形成液24中に混入した泡の泡抜きの効果がある。ポリマー層形成液24中に混入した泡の泡抜きを行うことで、剥離工程における針状凸部の欠損、穿刺時における針状凸部の破損を防止することができる。
型枠17のテーパの角度θとしては、モールド13とのなす角度を、45°以上75°以下とすることが好ましい。
【0092】
(ポリマー層形成液乾燥工程)
図20に戻って、ポリマー層形成液供給工程後、図20(D)に示すように、ポリマー層形成液24を乾燥固化させることで、ポリマー層122を、薬物層120の上に形成する。薬物層120とポリマー層122とを有するポリマーシート1が製造される。
ポリマー層を型枠に安定的に固定するためには、段差部のポリマー層形成液を速く乾燥することが有効である。モールドに対し、垂直な乾燥風で、風速を上げ、高温で低湿度の乾燥風を用いて、段差部を乾燥固化させることが好ましい。
【0093】
ポリマー層形成液乾燥工程では、ポリマー層形成液24が乾燥により体積が縮小する。ポリマー層形成液24が乾燥中にモールド13に密着していれば体積の縮小はシートの膜厚方向に起こり、膜厚が薄くなる。
乾燥中にポリマー層形成液24がモールド13から剥離してしまうと、ポリマーシート1が面方向にも収縮するため歪んでしまったり、カールしたりする場合がある。針状凹部15内のポリマー層形成液24が十分に乾燥していない状態でポリマーシート1がモールド13から剥離してしまうと、ポリマーシート1の針状凸部の形状が折れたり、曲がったりする不良が発生しやすい。このため、乾燥中にポリマーシート1がモールド13から剥離しないことが好ましい。また、カールを抑制するためにポリマーシート1の裏面(針状凸部の形成される面と反対の面)に針状凸部のある表面と同程度に収縮する層を形成してもよい。例えば、裏面側にも表面側と同じポリマー溶解液を塗布し、カール抑制の効果を予め確認した膜厚となるように層形成する。
【0094】
(剥離工程)
ポリマーシート1をモールド13から剥離する方法は限定されるものではない。剥離の 際に針状凸部が曲がったり折れたりしないことが望まれる。具体的には、ポリマーシート1の上に、粘着性の粘着層が形成されているシート状の基材を付着させた後、端部から基材をめくるように剥離を行うことができる。また、ポリマーシート1の裏面に吸盤を設置し、エアーで吸引しながら垂直に引き上げる方法を適用することができる。ポリマーシート1をモールド13から剥離することにより、マイクロニードルアレイ100を製造する。
【0095】
(脱気工程)
薬液充填工程の前、および/またはポリマー層形成液供給工程の前に、薬液22および/またはポリマー層形成液24を脱気することが好ましい。脱気することにより、モールド13の針状凹部15に充填する前に、薬液22およびポリマー層形成液24に含まれる気泡を除去することができる。例えば、脱気工程では100μm~数mmの直径の気泡が除去される。
【0096】
脱気方法として、例えば、(1)薬液22を1~15分間減圧環境下に晒す方法、(2)薬液22を貯留する容器を5~10分間超音波振動させる方法、(3)薬液22を減圧環境下に晒しながら超音波を印加する方法、(4)薬液22の中にヘリウムガスを送り込むことで溶存気体をヘリウムに置換する方法、等が挙げられる。ポリマー層形成液24についても(1)~(4)の脱気方法を適用することができる。
【0097】
(押圧部材)
本発明のマイクロニードルアレイデバイスは、針部を穿刺する際に、シート部の針部を有する面の反対側の面を押圧する押圧部材を備えている。
【0098】
押圧部材は、マイクロニードルアレイの針部が存在する領域の中心または略中心に設置されることが好ましい。「押圧部材が、マイクロニードルアレイの針部が存在する領域の中心または略中心に設置される」とは、マイクロニードルアレイの針部が存在する領域の中心を、針配列外周の外接円の中心とし、押圧面(押圧部材が、マイクロニードルアレイの針部が存在する領域に接する面)の中心を、押圧面外周の外接円の中心としたときに、上記の両中心間の距離が、マイクロニードルアレイの針部が存在する領域の外接円直径の20%以内であることを意味する。
【0099】
本発明においては、マイクロニードルアレイのシート部を押圧する押圧部材の押圧面の面積Aと、マイクロニードルアレイの針部が存在する領域の面積Bとが、0.3≦A/B≦0.75を満たす。これにより、針部を十分に溶解することができるマイクロニードルアレイデバイスを提供することができる。
面積Aと面積Bとは、好ましくは0.40≦A/B≦0.75を満たし、より好ましくは0.40≦A/B≦0.70を満たし、さらに好ましくは0.40≦A/B≦0.60を満たす。
【0100】
押圧面の面積Aは、好ましくは30mm以上250mm以下であり、より好ましくは40mm以上240mm以下であり、さらに好ましくは50mm以上230mm以下である。
針部が存在する領域の面積Bは、好ましくは100mm以上400mm以下であり、より好ましくは110mm以上350mm以下であり、さらに好ましくは115mm以上320mm以下である。
【0101】
押圧面は平面であることが好ましい。押圧面の形状は特に限定されないが、円形または多角形とすることができる。
押圧部材の材料として、特に限定されないが、マイクロニードルアレイが皮膚に押圧される程度の硬度を有する材料であることが好ましい。マイクロニードルアレイが皮膚に押圧される程度の硬度を有する材料として、荷重により変形しにくい材料が好ましく、引張弾性率が500MPa以上である材料がより好ましく、引張弾性率が1000MPa以上である材料がさらに好ましい。穿刺器具70の材料として、具体的には、紙、板紙、プラスチック、木材、ガラス、金属等が挙げられる。経済性、廃棄のしやすさという観点から、押圧部材の材料として、紙、板紙、プラスチック、木材が好ましく、引張弾性率が500MPa以上または1000MPa以上である紙、板紙、プラスチック、木材がより好ましい。押圧部材は、例えば、材質によって圧縮成形、射出成形、鍛造、鋳造等の公知の製造技術によって作ることができる。
押圧部材の材料として、紙、板紙を選択する場合、硬質紙または硬質紙の上にポリエチレンやポリプロピレンなどのコーティングを片面(または両面)に施した多段層板紙を用いることができる。
押圧部材の材料として、プラスチックを選択する場合、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が好ましく、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート(PET)がより好ましい。硬質紙または硬質紙の上に酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のコーティングを片面(または両面)に施した多段層板紙を用いることができる。
マイクロニードルアレイデバイスにおいては、押圧部材とシート部は接着していることが好ましい。
【0102】
(穿刺条件について)
マイクロニードルアレイを皮膚に穿刺する際の条件としては、例えば0.1J~1.0J、好ましくは0.1J~0.5J、より好ましくは0.1J~0.4Jのエネルギーで皮膚に穿刺することができる。なお、マイクロニードルアレイを手で皮膚に穿刺する場合には、一般的には0.1~0.2Jのエネルギーで、マイクロニードルアレイは皮膚に穿刺される。1Jは、1N・mまたは1m・kg・s-2である。
上記の条件で穿刺した後、例えば1N(ニュートン)~10N、好ましくは1.5N~8N、より好ましくは2N~7Nの力で1~30分間、マイクロニードルアレイを皮膚上に固定することが好ましい。
【0103】
本発明によれば、
シート部、および、シート部の上面に存在する複数の針部、を有するマイクロニードルアレイと、
上記シート部の針部を有する面の反対側の面を押圧する押圧部材とを、
備えるマイクロニードルアレイデバイスであって、
上記シート部の厚みが0.1~0.6mmであり、
上記マイクロニードルアレイのシート部を押圧する上記押圧部材の押圧面の面積Aと、上記マイクロニードルアレイの針部が存在する領域の面積Bとが、0.3≦A/B≦0.75を満たす、
上記マイクロニードルアレイデバイスを、
0.1~1.0J(好ましくは0.1J~0.5J、より好ましくは0.1J~0.4J)のエネルギーで皮膚に穿刺する工程;および
1N~10N(好ましくは1.5N~8N、より好ましくは2N~7N)の力で1~30分間、上記マイクロニードルアレイを皮膚上に固定する工程を含む、
マイクロニードルアレイの投与方法が提供される。
【0104】
(投与方法)
押圧部材は、一例としては、後記するアプリケーターの中に設けられた状態で使用することができる。押圧部材は、別の例としては、後記する指による穿刺のための容器と一緒に使用することもできる。
【0105】
<アプリケーター>
図30図32に示すように、アプリケーター210は、円筒形状の本体212と、本体212の上端部に螺合されることで着脱可能に取り付けられる略円筒形状の仮止部材220と、本体212の下端部に嵌合されることで着脱可能に取り付けられる円筒形状のホルダー230と、を備えている。なお、本体212(後述する第1ピストン216を含む)、仮止部材220、ホルダー230(後述する第2ピストン36を含む)は、軽量で摩擦係数が低い樹脂製(例えばポリテトラフルオロエチレン製)であることが好ましい。
【0106】
本体212の内部には、上から順に、付勢部材としてのコイルバネ214と、円柱状の第1ピストン216と、が設けられており、第1ピストン216は、コイルバネ214の付勢力によって本体212の下方へ打ち出されるようになっている。なお、第1ピストン216の外径は、本体212の内径とほぼ同一(本体12の内径-第1ピストン16の外径=0.02mm~0.06mm)とされており、コイルバネ14の外径は、本体12の内径よりも若干小さく形成されている。
また、第1ピストン216の上端部における軸心部には、レバー部材218の下端部が取り付けられている。すなわち、第1ピストン216の上端部における軸心部には、雌ネジ部としてのネジ穴部216Aが形成されており、レバー部材218の下端部には、雄ネジ部218Aが形成されている。
【0107】
レバー部材218の雄ネジ部218Aが第1ピストン216のネジ穴部216Aに螺合されることにより、レバー部材218の下端部に第1ピストン16が一体的に取り付けられている。このレバー部材218により、第1ピストン216がコイルバネ214の付勢力に抗して本体212の上方側へ引き上げられる構成になっている。
【0108】
図30に示されるように、本体212の周壁には、第1ピストン216の引き上げに伴って本体212の内部へ空気を取り入れ、第1ピストン216の打ち出しに伴って本体212の内部に存在する空気を排出する吸排気口212A、212Bが上下に離間して2個形成されている。
【0109】
図30図32に示されるように、仮止部材220は、第1ピストン216をコイルバネ214の付勢力に抗して引き上げた状態のレバー部材218を仮止めするようになっている。レバー部材218の上端部は、本体212の軸方向に対して直角に屈曲された操作部219とされている。そして、仮止部材220の周壁には、操作部219を除くレバー部材218を通すために軸心部に形成された貫通孔222と連通して、その操作部219を通すスリット部224が軸方向に沿って形成されている。
【0110】
図33に示されるように、仮止部材220の上端面で、かつスリット部224とは周方向に略90度ずれた位置には、操作部219を保持する断面略「V」字状又は断面半円形状の溝部226が径方向に延びるように形成されている。そして、仮止部材220の上端面で、かつ溝部226とスリット部224との間には、溝部226から外れた操作部219をスリット部224へ案内する下り傾斜面としてのスロープ228が形成されている。なお、図30図32では、スロープ228が片側に形成され、溝部26が両側に形成されている。
【0111】
図30図32に示されるように、仮止部材220の下端部には、貫通孔222を回転中心とする雄ネジ部221が一体に形成されており、本体212の上端部には、その雄ネジ部221が螺合される雌ネジ部213が形成されている。つまり、仮止部材220は、本体212から簡単に取り外すことができるように、螺合によって取り付けられるようになっており、その軸方向の長さが異なるものに交換可能になっている。
【0112】
図30図32に示されるように、本体212の下端部には、拡径部215が形成されており、その拡径部215の径方向内側にホルダー230の上端部が着脱可能に嵌合されるようになっている。つまり、拡径部215の内周面における下端部には、爪部215Aが周方向に亘って形成されており、ホルダー230の外周面における上端部には、その爪部215Aが嵌合する溝部231(図34も参照)が周方向に亘って形成されている。
【0113】
また、ホルダー230の内周面(詳細には、ホルダー230の上端面から全長の略2/3程度までの領域)には、周方向に沿った被係止部としての環状突起232が軸方向に複数並んで形成されている。そして、図34に示されるように、環状突起232のストッパー面としての下面232Aは、略軸方向を向く(好ましくは軸方向が法線方向となる)平面とされており、環状突起232の上面232Bは、軸心側(径方向内側)へ向かう下り傾斜面とされている。
【0114】
図30図32に示されるように、ホルダー230の内部には、第2ピストン236が設けられている。第2ピストン236は、上部側がホルダー230の内径とほぼ同じ外径を有する大径部236Aとされ、下部側が大径部236Aよりも小さい外径を有する小径部236Bとされた2段円柱形状に形成されている。そして、第2ピストン236の大径部236Aの上面には、環状突起232と共に規制手段240を構成する係止部としての爪部234を有する金属製(例えばステンレス製)の爪状部材233が設けられている。
【0115】
図35に示されるように、爪状部材233は、平板リング状の基部235の外周縁部から等間隔に斜め上方へ向けて一体に起立した複数(3個以上、例えば18個)の爪部234を有している。各爪部234は、少なくとも先端234Aが、第2ピストン236の下方への移動に伴い、環状突起232によって軸心側(径方向内側)へ押されることで、その軸心側へ向かって弾性変形可能になっている。
【0116】
図34に示されるように、この爪部234の先端234Aは、環状突起232の下面232Aに下方(第2ピストン236の打ち出し方向とは反対方向)から当たることにより、皮膚に当たった後の第2ピストン236の上方へのリバウンド(移動)を規制するようになっている。したがって、爪部234の先端234Aは、環状突起232の下面232Aに対して適切に当たるように、平坦面とされることが好ましい(図35参照)。
【0117】
図34に示されるように、基部235に対する爪部234の起立角度θ1は、一例として、θ1=76度とされている。また、環状突起232の下面232Aに対する上面232Bの傾斜角度θ2は、一例として、θ2=45度とされている。更に、環状突起232の径方向内側への張出量φは、一例として、φ=0.25mmとされており、環状突起232の軸方向の間隔Dは、一例として、D=0.4mmとされている。
【0118】
また、第2ピストン236の大径部236Aの上面中央には、基部235の軸心部に形成されている円形の貫通孔235Aの内径と同じ外径とされた円形の凸部237(図32参照)が突設されている。したがって、基部235は、その貫通孔235Aが、第2ピストン236の凸部237に嵌合された状態で、その上面に接着剤等によって接合されている。つまり、爪状部材233は、第2ピストン236の上面にセンタリングされて取り付けられている。
【0119】
第2ピストン236の小径部236Bの下面(皮膚と対向する面)には、マイクロニードルアレイが取り付けられている。
【0120】
図30および図31に示されるように、コイルバネ214の自由長をL1、縮められたときのコイルバネ214の全長をL2、第1ピストン216の移動量をXとしたとき、L1<L2+Xを満たすようになっている。つまり、図31に示されるように、第1ピストン216を打ち出した後、コイルバネ214の下端面から第1ピストン216の上端面が離間する構成になっており、コイルバネ214の下端面と第1ピストン216の上端面との間には隙間Sが形成される構成になっている。
【0121】
<指による穿刺のための容器>
図36に示されるように、マイクロニードルアレイユニット301は容器310を備える。容器310は、マイクロニードルアレイを収容するための収容部312と、収容部312と一体の変形部314と、収容部312と一体であって、屈曲部318により屈曲されるフランジ部316とを備える。
【0122】
容器310の収容部312および変形部314は、平面視で、円形状を有している。容器310のフランジ部316は、平面視で、レーストラック形状(2つの半円と直線とを組み合わせた形状)を有している。ただし、収容部312、変形部314、およびフランジ部316の形状は限定されない。フランジ部316が収容部312の周囲全体に設けられていてもよい。周囲全体とは、フランジ部316が収容部312の全周を囲うことを意味する。フランジ部316は収容部312の周囲全体に設ける必要はない。なお、フランジ部316は、皮膚に接触する面に接着剤を有することが好ましい。容器310は、フランジ部316の接着剤により皮膚に貼り付けられる。フランジ部316に接着剤を有しない場合であっても、皮膚に塗布した接着剤により、容器310は皮膚に貼り付けられる。また、別部材(医療用テープ)等を容器310の上から貼り付けることにより、容器310は皮膚に貼り付けられる。
【0123】
図37に示されるように、収容部312は、内壁に画定される内部空間、および開口312Aを有する。収容部312の開口312Aは、蓋部330により封止される。収容部312は、内壁に配置され内部空間に突出する突出部312Bを備える。
【0124】
変形部314は、開口312Aの反対側に配置され収容部312と一体である。変形部314は、例えば、マイクロニードルアレイ340と離間する頂点部314Aを有する凸形状である。変形部314の頂点部314Aは、変形部314の中でマイクロニードルアレイ340から最も離間された部分を意味し、凸形状とは、頂点部314Aが収容部312の内部空間に位置していないことを意味する。変形部314は、複数の頂点部314Aを有することができる。一体であるとは、収容部312と変形部314とが、連結されている状態を意味する。
収容部312と変形部314とを一体にする場合、収容部312と変形部314とを別成型し、収容部312と変形部314とを嵌合し、次いで溶着することにより実現できる。収容部312と変形部314とを一体にする場合、マイクロニードルアレイ340を収容部312に収容する前、または収容した後の何れでもよい。収容部312と変形部314とを一体にする場合、収容部312と変形部314とを一体成型することにより実現できる。ただし、これらの方法に限定されない。
【0125】
変形部314は、錐形状にでき、円錐形状でもよい。変形部314は、内部空間を有していてもよく、変形部314の内部空間と、収容部312の内部空間と連通することができる。収容部312は、開口312Aの反対の側において、変形部314により閉じられた構造になる。錐形状は、円錐形状または角錐形状を含み、錐台形状を含む。
【0126】
フランジ部316は、収容部312と一体であり、皮膚に接触する。フランジ部316は、収容部312の開口312Aの位置から外側に延び、さらに屈曲部318により、変形部314の側に屈曲される。フランジ部316は、収容部312の開口312Aを基準として、変形部314の頂点部314Aを超えた位置に配置される。フランジ部316は、マイクロニードルアレイ340のシート部に平行になるよう形成される。平行とは、平行、および略平行を含む。皮膚に接触することができれば、フランジ部316の形状は特に限定されない。収容部312とフランジ部316とを一体にする場合、収容部312と変形部314とを一体にする場合と同様の方法を適用することができる。
【0127】
図38に示されるように、容器310が皮膚の上で位置決めされる。収容部312の開口312Aが皮膚に向けて位置決めされ、マイクロニードルアレイの針部が皮膚に向けられる。変形部314に、開口312Aの方向の外力が、指350により加えられる。
【0128】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例
【0129】
<モールドの作製>
一辺40mmの平滑なNi板の表面に、図29に示すような、底面が800μmの直径D1で、210μmの高さH2の円錐台12B上に、380μmの直径D2で,910μmの高さH1の円錐12Aが形成された針状構造の凸部12を研削加工することで、原版11を作製した。この原版11の上に、シリコーンゴム(ダウ・コーニング社製SILASTIC-MDX4-4210)を1070μmの厚みで膜を形成し、膜面から原版11の円錐先端部50μmを突出させた状態で熱硬化させ、剥離した。これにより、約30μmの直径の貫通孔を有するシリコーンゴムの反転品を作製した。このシリコーンゴム反転品の、中央部に10列×10行の2次元配列された針状凹部が形成された、一辺30mmの平面部外を切り落としたものをモールドとして用いた。針状凹部の開口部が広い方をモールドの表面とし、30μmの直径の貫通孔(空気抜き孔)を有する面をモールドの裏面とした。
【0130】
<ポリマー溶解液(ポリマー層形成液)の調製>
コンドロイチン硫酸(マルハニチロ食品社製)を水で溶解し、40質量%の水溶液に調液したものを、ポリマー層形成液とした。調液後、3kPaの減圧環境下に4分間晒し、十分な脱気を行った。
【0131】
<ポリマー層形成液供給工程およびポリマー層形成液乾燥工程>
以下の工程は温度23℃、相対湿度35%RHの環境下で実施した。
水平な吸引台上に一辺15mmの気体透過性フィルム(住友電工社製ポアフロンFP-010)を置き、その上に表面が上になるようにモールドを設置した。モールド裏面方向からゲージ圧-90kPaの吸引圧で減圧して、気体透過性フィルムとモールドを吸引台に固定した。
【0132】
モールド上に、ステンレス製(SUS304)の型枠を置き、ポリマー層形成液を直接塗布した。ポリマー層形成液の塗布は、型枠に対して、型枠よりも半径として1mm大きい範囲で塗布を行った。型枠径は、型枠の直径であり、液面高さは、ポリマー層形成液の塗布厚みであり、型枠を設置することにより形成される段差部におけるモールド表面から液面までの高さを示す。型枠径は、17mmまたは25mmのものを用い、針状凹部の数はそれぞれ109個または292個にして実験を行った。また、型枠の高さを1000μmとして直接塗布した。
【0133】
上記により、針部面積122mm(針本数109本)のマイクロニードルアレイ(支持体の厚さは0.35mm)、および針部面積315mm(針本数292本)のマイクロニードルアレイ(支持体の厚さは0.35mm)を作製した。また、上記した支持体の厚さは0.35mmであるマイクロニードルアレイに、適切な厚さのPET板(ポリエチレンテレフタレート板)を両面テープで接着することにより、支持体の厚さが0.5mm、0.65mmまたは0.8mmであるマイクロニードルアレイを作製した。
これらのマイクロニードルアレイを用いて、以下の穿刺溶解試験1及び穿刺溶解試験2を行った。
【0134】
<穿刺溶解試験1>
家畜豚(LWD系)に対して、麻酔下で背面を除毛した後、マイクロニードルアレイを、本明細書中の上記<アプリケーター>において記載したアプリケーターを用いて、0.3Jのエネルギーで穿刺し、5Nの力で10分間固定した後、剥離した。アプリケーターとしては、以下の表1に示す押圧部の面積を有するものを使用した。図39に、針部(針部径12.8mm、針部面積122mmの場合)と押圧部の関係を示す。押圧部の外周(下図の丸印を付けた箇所)に力がかかる。
【0135】
また、摘出ブタ皮膚(ユカタン・マイクロ・ピッグ・スキンセット、日本チャールス・リバー社)に対して、脂肪層を除去した後、マイクロニードルアレイを、本明細書中の上記<アプリケーター>において記載したアプリケーターを用いて、0.3Jのエネルギーで穿刺し、5Nの力で10分間固定した後、剥離した。アプリケーターとしては、以下の表1に示す押圧部の面積を有するものを使用した。
【0136】
【表1】
【0137】
(穿刺溶解後のマイクロニードルアレイの残長測定)
剥離後のマイクロニードルアレイ上の針状凸部の残長を、実体顕微鏡を用いて計測した。
【0138】
(穿刺溶解後のマイクロニードルアレイの溶解針長算出)
穿刺溶解前のマイクロニードル針長-穿刺溶解後のマイクロニードルアレイの残長により算出し、針全数について平均し算出した。結果を図40および図42に示す。
【0139】
(穿刺溶解後のマイクロニードルアレイの溶解後針残長 外/内比算出)
最外周の穿刺溶解後のマイクロニードルアレイの残長の平均値/最外周以外の穿刺溶解後のマイクロニードルアレイの残長の平均値により算出した。結果を図41および図43に示す。
【0140】
(薬物投与率)
針中の薬物含有領域を以下の通り想定する。
針先端~430μm:60%、430μm~500μm:30%、500μm~575μm:8%、75μm~830μm:2%。
ここで、60%、30%、8%、2%とは、それぞれ薬物全体の60%、30%、8%、2%が、該当する領域に含有されていることを意味する。
図40および図41に示した結果に基づいて、針1本ごとに、針溶解量から薬物含有量全体に占める投与された薬物の比率を算出し、針全数で平均化した。結果を図44に示す。
【0141】
図40および図41の結果から、押圧部材の押圧面の面積Aと、マイクロニードルアレイの針部が存在する領域の面積Bとが、0.3≦A/B≦0.75を満たす場合に、針が十分に溶解できることが示された。
図44の結果から、押圧部材の押圧面の面積Aと、マイクロニードルアレイの針部が存在する領域の面積Bとが、0.3≦A/B≦0.75を満たす場合に、高い薬物投与率を達成できることが分かる。
図42および図43の結果から、シート部の厚みが0.1~0.6mmである場合に、針が十分に溶解できることが示された。
【0142】
<穿刺溶解試験2>
穿刺溶解試験1におけるアプリケーターの代わりに、図36図37および図38に示す容器を用いて、指でマイクロニードルアレイを穿刺した。
押圧部材を変形部314の頂点部314Aとマイクロニードルアレイ340の間に収容し、変形部314を指350などで押圧し、開口312Aの方向の外力を与える。これにより、変形部314は変形し、マイクロニードルアレイ340の他方面を、押圧することにより、マイクロニードルアレイ340は、突出部を通過し、収容部312から外部に押し出され、変形部314は変形された状態を維持し、マイクロニードルアレイ340が皮膚に押圧され、皮膚に穿刺される。
【0143】
穿刺溶解後のマイクロニードルアレイの溶解針長、及び穿刺溶解後のマイクロニードルアレイの溶解後針残長 外/内比を算出した結果を以下に示す。
【0144】
【表2】
【符号の説明】
【0145】
1 ポリマーシート
11、71、81 原版
12 凸部
13、73、83 モールド
14、17 型枠
15 針状凹部
15A 入口部
15B 先端凹部
15C 貫通孔
16 領域
18 モールド複合体
19 気体透過シート
20 基台
22 薬液
24 ポリマー層形成液
30 送液タンク
32 配管
34 ノズル
34A リップ部
34B 開口部
34C 傾斜面
36 液供給装置
48 薬液充填装置
50、54 軸駆動部
52 吸引台
56 架台
58 制御システム
60 変位計
74、75、84、85 段差部
92 塗布手段
100 経皮吸収シート
110 針状凸部
112 ニードル部
112A 針状部
112B 胴体部
114 錐台部
116 シート部
120 薬剤層
122 ポリマー層
210 アプリケーター
212 本体
212A 吸排気口
212B 吸排気口
213 雌ネジ部
214 コイルバネ(付勢部材)
215 拡径部
215A 爪部
216 第1ピストン
216A ネジ穴部
218 レバー部材
218A 雄ネジ部
219 操作部
220 仮止部材
221 雄ネジ部
222 貫通孔
224 スリット部
226 溝部
228 スロープ(傾斜面)
230 ホルダー
231 溝部
232 環状突起
232A 下面
232B 上面
233 爪状部材
234 爪部(係止部)
234A 先端
235 基部
235A 貫通孔
236 第2ピストン
236A 大径部
236B 小径部
237 凸部
240 規制手段
θ1 角度
θ2 角度
φ 張出量
D 間隔
S 隙間
301 マイクロニードルアレイユニット
310 容器
312 収容部
312A 開口
312B 突出部
314 変形部
314A 頂点部
316 フランジ部
318 屈曲部
330 蓋部
340 マイクロニードルアレイ
341 シート部
342 一方面
342A 外周面
344 針部
350 指
図1
図2
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