(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】マルチコアファイバ、光伝送システム及び光伝送方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/02 20060101AFI20220121BHJP
H04B 10/2581 20130101ALI20220121BHJP
H04J 14/04 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
G02B6/02 481
H04B10/2581
H04J14/04
(21)【出願番号】P 2018034591
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2019-06-20
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武笠 和則
【合議体】
【審判長】山村 浩
【審判官】加々美 一恵
【審判官】吉野 三寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-098832(JP,A)
【文献】特開2016-033627(JP,A)
【文献】米国特許第9151887(US,B2)
【文献】特開2016-224134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコア部と、
前記複数のコア部の外周に形成されたクラッド部と、
を備え、
長手方向に垂直な断面において、前記複数のコア部は、三角格子状に配列しており、
前記複数のコア部は、所定の波長帯において、それぞれ1以上の伝搬モードで光を伝搬可能であり、
前記複数のコア部のうち最も距離が近いコア部同士は、
同じ伝搬モードにおける伝搬屈折率が互いに異なり、
かつ
伝搬モードの数が互いに異なり、前記複数のコア部の伝搬モードの数は、LP01モードの1、LP01モードとLP11モードの2、およびLP01モードとLP11モードとを含む3以上の3種類であることを特徴とするマルチコアファイバ。
【請求項2】
請求項1に記載のマルチコアファイバと、
前記マルチコアファイバ
の一つ
のコア部に
、前記コア部の少なくとも一つの伝搬モードで伝搬するように信号光を入力する光送信装置と、
前記マルチコアファイバを伝搬した前記信号光を受信する光受信装置と、
を備えることを特徴とする光伝送システム。
【請求項3】
前記光送信装置は、少なくとも前記マルチコアファイバの前記最も距離が近いコア部のそれぞれに、それぞれのコア部の異なる伝搬モードで伝搬するように信号光を入力することを特徴とする請求項2に記載の光伝送システム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の光伝送システムを用いた光伝送方法であって、
要求される伝送容量に応じて、信号光を伝搬させる伝搬モードの数を変更し、
各コア部の低次の伝搬モードから優先的に使用して信号光を伝搬させる
ことを特徴とする光伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコアファイバ、光伝送システム及び光伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マルチコアファイバにモード多重の技術を適用することで、空間多重数及び空間多重密度を増大させる検討が盛んに行われてきた(非特許文献1、2)。モード多重とは、1個のコア部において複数の伝搬モードで光を伝搬させることである。例えば、非特許文献2では、19コアのマルチコアファイバに6モードのモード多重を適用することで、空間多重数を100以上としたことが報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】K. Mukasa et al, “Multi-core Few-mode optical fibers with large Aeff”, ECOC 2012, P1-08 (2012)
【文献】T. Sakamoto et al., “Low-loss and Low-DMD Few-mode Multi-core Fiber with Highest Core Multiplicity Factor” OFC 2016, paper Th5A.2, (2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マルチコアファイバにおいては、異なるコア部間での光のクロストークが問題となる。モード多重を行う場合、高次の伝搬モードほどクロストークが大きくなるので、マルチコアファイバの設計に際しては、最も高次の伝搬モードに対して、クロストークが許容量以下となるようにコア部間の距離(ピッチ)を設定している。
【0005】
一方、空間多重の高密度化のために、コア部間のピッチをより一層狭くしたい、すなわち狭ピッチ化したいという要求がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、コア部間のピッチを狭くでき、モード多重が可能なマルチコアファイバ、並びにこれを用いた光伝送システム及び光伝送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係るマルチコアファイバは、複数のコア部と、前記複数のコア部の外周に形成されたクラッド部と、を備え、前記複数のコア部は、所定の波長帯において、それぞれ1以上の伝搬モードで光を伝搬可能であり、前記複数のコア部のうち最も距離が近いコア部同士は、伝搬モードの数が互いに異なることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係るマルチコアファイバは、前記複数のコア部の伝搬モードの数は、1、2又は3であることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係るマルチコアファイバは、前記伝搬モードは、LP01モードとLP11モードとを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係るマルチコアファイバは、前記最も距離が近いコア部同士で、同じ伝搬モードにおける伝搬屈折率が互いに異なることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係るマルチコアファイバは、長手方向に垂直な断面において、前記複数のコア部は、三角格子状に配列していることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係るマルチコアファイバは、長手方向に垂直な断面において、前記複数のコア部は、円環状に配列していることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係るマルチコアファイバは、長手方向に垂直な断面において、前記複数のコア部は、正方格子状に配列していることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る光伝送システムは、前記マルチコアファイバと、前記マルチコアファイバの少なくとも一つにコア部の少なくとも一つの伝搬モードで伝搬するように信号光を入力する光送信装置と、前記マルチコアファイバを伝搬した前記信号光を受信する光受信装置と、を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る光伝送システムは、前記光送信装置は、少なくとも前記マルチコアファイバの前記最も距離が近いコア部のそれぞれに、それぞれのコア部の異なる伝搬モードで伝搬するように信号光を入力することを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る光伝送方法は、前記光伝送システムを用いた光伝送方法であって、要求される伝送容量に応じて、信号光を伝搬させる伝搬モードの数を変更し、各コア部の低次の伝搬モードから優先的に使用して信号光を伝搬させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれは、コア部間のピッチを狭くでき、モード多重が可能なマルチコアファイバを実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るマルチコアファイバの模式的断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態2に係るマルチコアファイバの模式的断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態3に係るマルチコアファイバの模式的断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態4に係るマルチコアファイバの模式的断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態5に係る光伝送システムの模式的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一又は対応する構成要素には適宜同一の符号を付している。また、本明細書で特に定義しない用語についてはITU-T G.650.1における定義、測定方法に従うものとする。
【0020】
本発明者は、モード多重を行うマルチコアファイバにおける狭ピッチ化について鋭意検討したところ、従来のマルチコアファイバでは、複数のコア部の伝搬モード数を全て同じにしているので、最も近いコア部同士において、クロストークが問題となる伝搬モード同士は同じ次数であった。同じ次数の伝搬モード同士では、クロストークがより大きくなるので、狭ピッチ化を妨げる要因となる。
【0021】
そこで、本発明者は、鋭意検討の結果、最も距離が近いコア部同士の伝搬モードの数を互いに異なるものとすることに想到した。最も距離が近いコア部同士の伝搬モードの数を互いに異なるものとすれば、クロストークが問題となる伝搬モードは互いに異なる次数となる。異なる次数の伝搬モード間のクロストークは、同じ次数の伝搬モード間のクロストークよりも小さい。したがって、許容量のクロストークを実現する場合には、より狭ピッチにできる。
【0022】
しかも、最も距離が近いコア部同士の伝搬モードの数を互いに異なるものとするということは、最も距離が近いコア部同士で、同じ伝搬モードにおける伝搬屈折率(実効屈折率ともいう)が互いに異なることとなる。その結果、同じ次数の伝搬モード間のクロストークは小さくなるので、異なる次数の伝搬モード間のクロストークはさらに小さくなる。その結果、より狭ピッチ化が可能となる。
【0023】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な模式的断面図である。マルチコアファイバ10は、複数、具体的には7個のコア部として、1個のコア部11a、3個のコア部11b、3個のコア部11cを備えている。また、マルチコアファイバ10は、コア部11a、11b、11cの外周に形成されたクラッド部12を備えている。
【0024】
コア部11a、11b、11cとクラッド部12とは、いずれも石英系ガラスからなる。クラッド部12は、コア部11a、11b、11cの最大屈折率よりも低い屈折率を有する。例えば、コア部11a、11b、11cは、屈折率を高めるドーパントであるGeが添加された石英ガラスからなる。一方、クラッド部12は、屈折率調整用のドーパントを含まない純石英ガラスからなる。
【0025】
コア部11aは、クラッド部12の略中心軸に沿って配置されている。コア部11b、11cは、コア部11aの周りに交互に配置され、正六角形状を成している。また、コア部11aとこれに最も近いコア部11bとコア部11cとは、正三角形を成すように三角格子状に配置されている。この配置は、六方最密状とも言える。また、3個のコア部11b、3個のコア部11cは、いずれも正三角形を成している。
【0026】
この配置において、コア部11aに最も近いコア部は、3個のコア部11b及び3個のコア部11cである。また、或るコア部11bに最も近いコア部は、コア部11a及び2個のコア部11bである。また、或るコア部11cに最も近いコア部は、コア部11a及び2個のコア部11bである。これらの最も近いコア部同士の距離(ピッチ)はいずれもd1である。また、コア部11b同士のピッチ及びコア部11c同士のピッチは、いずれもd2である。ここで、d2=√3×d1である。
【0027】
コア部11a、11b、11cは、所定の波長帯において、それぞれ1以上の伝搬モードで光を伝搬可能である。ここで、コア部が或る伝搬モードで光を伝搬可能とは、その伝搬モードにおける伝搬屈折率が、クラッド部の屈折率よりも大きいことを意味する。また、所定の波長帯は、光ファイバ通信にて使用される波長帯であり、以下では使用波長帯と記載する。使用波長帯は、例えば1520nm~1620nmである。
【0028】
具体的には、コア部11aは、使用波長帯の光を基底伝搬モードであるLP01モードで伝搬する。すなわち、コア部11aは、伝搬モードの数が1であり、シングルモード伝搬を行うことができるシングルモードコア部である。また、コア部11bは、使用波長帯の光を基底伝搬モードであるLP01モードと、第1高次伝搬モードであるLP11モードとで伝搬する。すなわち、コア部11bは、伝搬モードの数が2であり、2モード伝搬を行うことができる2モードコア部である。また、コア部11cは、使用波長帯の光を基底伝搬モードであるLP01モードと、第1高次伝搬モードであるLP11モードと、第2高次伝搬モードであるLP21モードと、で伝搬する。すなわち、コア部11cは、伝搬モードの数が3であり、3モード伝搬を行うことができる3モードコア部である。
【0029】
コア部11aは、シングルモード伝搬を行うことができるように屈折率分布が最適化されている。コア部11bは、2モード伝搬を行うことができるように屈折率分布が最適化されている。コア部11cは、3モード伝搬を行うことができるように屈折率分布が最適化されている。したがって、コア部11a、11b、11cでは、同じLP01モードであっても伝搬屈折率が互いに異なる。同様に、コア部11b、11cでは、同じLP11モードであっても伝搬屈折率が互いに異なる。
【0030】
なお、これらのシングルモードコア部、2モードコア部、又は3モードコア部の屈折率分布については、ステップインデックス型、W型、W-seg型、トレンチ型などの公知の屈折率分布を特に限定なく使用することができる。
【0031】
ここで、上述したように、コア部11aに最も近いコア部はコア部11b及びコア部11cである。また、コア部11bに最も近いコア部はコア部11a及びコア部11bである。また、コア部11cに最も近いコア部はコア部11a及びコア部11bである。すなわち、マルチコアファイバ10では、最も距離が近いコア部同士は、伝搬モードの数が互いに異なる。
【0032】
このとき、コア部11aのLP01モードとコア部11bのLP11モードとの間のクロストーク(以下、LP01-LP11間クロストークなどと記載する)は、異なる次数間のクロストークであり、非常に小さい。したがって、コア部11aとコア部11bとの間では、同じ次数のモード間のクロストークであるLP01-LP01間クロストークが問題となる。
【0033】
しかし、上述したように、コア部11a、11bでは、同じLP01モードであっても伝搬屈折率が互いに異なる。その結果、LP01-LP01間クロストークも、例えば2個のコア部11aが距離d1で配置されている場合の、当該2個のコア部11a間のLP01-LP01間クロストークと比較して小さい。
【0034】
また、コア部11aとコア部11cとの間のクロストークにおいて、LP01-LP11間クロストーク及びLP01-LP21間クロストークは、異なる次数間のクロストークであり、非常に小さい。したがって、コア部11aとコア部11cとの間では、同じ次数のモード間のクロストークであるLP01-LP01間クロストークが問題となる。しかし、上述したように、コア部11a、11cでは、同じLP01モードであっても伝搬屈折率が互いに異なるので、コア部11a、11bの場合と同様に、LP01-LP01間クロストークは比較的小さい。
【0035】
また、コア部11bとコア部11cとの間のクロストークにおいて、LP01-LP11間クロストーク、LP01-LP21間クロストーク、LP11-LP21間クロストークは、異なる次数間のクロストークであり、非常に小さい。したがって、コア部11bとコア部11cとの間では、同じ次数のモード間のクロストークであるLP01-LP01間クロストーク及びLP11-LP11間クロストークが問題となる。しかし、上述したように、コア部11b、11cでは、同じLP01モード、LP11モードであっても伝搬屈折率が互いに異なるので、LP01-LP01間クロストーク及びLP11-LP11間クロストークは比較的小さい。
【0036】
なお、同じ屈折率分布のコア部11b同士、11c同士では、同じ次数のモードの伝搬屈折率は等しい。しかしながら、コア部11b同士、11c同士は、最も近いコア部同士の√3倍だけピッチが離間している。クロストークはコア部間のピッチの増加に伴って急激に減少するので、コア部11b同士、11c同士における同じ次数のモード間のクロストークはあまり問題とならない。
【0037】
以上説明したように、マルチコアファイバ10は、最も距離が近いコア部同士の伝搬モードの数が互いに異なることによって、狭ピッチ化が可能であり、かつモード多重が可能である。したがって、マルチコアファイバ10は、狭ピッチ化により細径化が可能であり、空間多重の高密度化や、マルチコアファイバ10の占有体積の削減を可能とする。
【0038】
(実施形態2)
図2は、実施形態2に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な模式的断面図である。マルチコアファイバ10Aは、複数、具体的には19個のコア部として、7個のコア部11a、6個のコア部11b、6個のコア部11cを備えている。また、マルチコアファイバ10Aは、コア部11a、11b、11cの外周に形成されたクラッド部12を備えている。
【0039】
コア部11a、11b、11cとクラッド部12との構成材料、屈折率分布及び伝搬モードについては、マルチコアファイバ10における対応する要素を同じであるので、説明を省略する。
【0040】
コア部11aのうちの1個はクラッド部12の略中心軸に沿って配置されている。また、コア部11a、11b、11cは、最も近い3つのコア部が正三角形を成すように三角格子状に配置されている。また、コア部11a、11b、11cは、コア部11a同士、コア部11b同士、コア部11c同士が最も近くならないように配置されている。すなわち、コア部11aに最も近いコア部はコア部11b及びコア部11cである。また、コア部11bに最も近いコア部はコア部11a及びコア部11cである。また、コア部11cに最も近いコア部はコア部11a及びコア部11bである。すなわち、マルチコアファイバ10Aにおいても、最も距離が近いコア部同士は、伝搬モードの数が互いに異なる。
【0041】
このように、マルチコアファイバ10Aは、最も距離が近いコア部同士の伝搬モードの数が互いに異なることによって、マルチコアファイバ10と同様に狭ピッチ化が可能であり、かつモード多重が可能である。したがって、マルチコアファイバ10Aは、空間多重の高密度化や、占有体積の削減を可能とする。しかも、マルチコアファイバ10Aは、コア部11a、11b、11cを19個有するので、より大容量の光伝送が可能になる。
【0042】
なお、実施形態1、2の変形例として、マルチコアファイバ10、10Aの構成から、シングルモードコア部であるコア部11aを削除することによって、マルチコアファイバを構成してもよい。この場合、製造すべきコア部の種類が2モードコア部及び3モードコア部であるコア部11b、11cの2種類でよいので、製造性の点で好ましい。また、さらなる変形例としては、マルチコアファイバ10、10Aの構成において、コア部11aを削除し、かつコア部11cをコア部11aに置き換えることによって、シングルモードコア部と2モードコア部とでマルチコアファイバを構成してもよい。
【0043】
(実施形態3)
図3は、実施形態3に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な模式的断面図である。マルチコアファイバ10Bは、複数、具体的には8個のコア部として、4個のコア部11b、4個のコア部11cを備えている。また、マルチコアファイバ10Bは、コア部11b、11cの外周に形成されたクラッド部12を備えている。
【0044】
コア部11b、11cとクラッド部12との構成材料、屈折率分布及び伝搬モードについては、マルチコアファイバ10における対応する要素を同じであるので、説明を省略する。
【0045】
コア部11b、11cは、交互に円環状に配列している。また、コア部11b、11cは、正八角形状に配列しているとも言える。その結果、コア部11bに最も距離が近いコア部はコア部11cであり、コア部11cに最も距離が近いコア部はコア部11bである。このように、マルチコアファイバ10Bは、最も距離が近いコア部同士の伝搬モードの数が互いに異なることによって、マルチコアファイバ10と同様に狭ピッチ化が可能であり、かつモード多重が可能である。したがって、マルチコアファイバ10Bは、空間多重の高密度化や、占有体積の削減を可能とする。
【0046】
(実施形態4)
図4は、実施形態4に係るマルチコアファイバの長手方向における模式的断面図である。マルチコアファイバ10Cは、複数、具体的には9個のコア部として、4個のコア部11b、5個のコア部11cを備えている。また、マルチコアファイバ10Cは、コア部11b、11cの外周に形成されたクラッド部12を備えている。
【0047】
コア部11b、11cとクラッド部12との構成材料、屈折率分布及び伝搬モードについては、マルチコアファイバ10における対応する要素を同じであるので、説明を省略する。
【0048】
コア部11b、11cは、交互に正方格子状に配列している。その結果、コア部11bに最も距離が近いコア部はコア部11cであり、コア部11cに最も距離が近いコア部はコア部11bである。このように、マルチコアファイバ10Cは、最も距離が近いコア部同士の伝搬モードの数が互いに異なることによって、マルチコアファイバ10と同様に狭ピッチ化が可能であり、かつモード多重が可能である。したがって、マルチコアファイバ10Cは、空間多重の高密度化や、占有体積の削減を可能とする。
【0049】
さらには、本発明に係るマルチコアファイバにおけるコア部の配列は、最も距離が近いコア部同士の伝搬モードの数が互いに異なるような配列であれば、上記の三角格子状、円環状、正方格子状に限らず、様々な配列とできる。
【0050】
また、本発明に係るマルチコアファイバは、VAD(Vapor Axial Deposition)法、OVD(Outside Vapor Deposition)法、スタックアンドドロー法、穿孔法、粉体成形法などの公知の方法を適宜組み合わせて製造することができる。
【0051】
(実施形態5)
図5は、実施形態5に係る光伝送システムの模式的構成図である。この光伝送システム100は、光送信装置110と、光受信装置120と、実施形態1に係るマルチコアファイバ10とを備えている。
【0052】
光送信装置110は、半導体レーザなどの光源を有する16個の光送信器111-1~111-16と、光合波器112とを備えている。光送信器111-1~111-16は、使用波長帯に含まれる波長を有し、かつ変調信号にて変調された信号光をそれぞれ出力する。
【0053】
上述したように、マルチコアファイバ10において、1個のコア部11aの伝搬モード数は1であり、3個のコア部11bの伝搬モード数は2であり、3個のコア部11cの伝搬モード数は3である。すなわち、マルチコアファイバ10における伝搬モード数の合計は1+3×2+3×3=16である。
【0054】
光合波器112は、光送信器111-1~111-16から出力された16個の信号光のそれぞれを、マルチコアファイバ10のコア部11a、11b、11cのそれぞれの伝搬モードで伝搬するように入力する。これにより、コア部11a、11b、11cは、16個の信号光をそれぞれの伝搬モードで伝搬する。
【0055】
光受信装置120は、フォトダイオードなどの受光素子を有する16個の光受信器121-1~121-16と、光分波器122とを備えている。
【0056】
光分波器122は、コア部11a、11b、11cが伝送した16個の信号光を分波する。光受信器121-1~121-16は、それぞれ、分波された信号光のそれぞれを受信し、信号光に含まれる変調信号を復調する。
【0057】
この光伝送システム100は、実施形態1に係るマルチコアファイバ10を光伝送ファイバとして用いているので、空間多重の高密度化や、占有体積の削減の効果を享受できる。
【0058】
また、この光伝送システム100を用いて様々な伝送方法を実施することができる。例えば、光伝送システム100に要求される伝送容量に応じて、信号光を伝搬させる伝搬モードの数を変更してもよい。具体的には、光伝送システム100の運用開始時には、マルチコアファイバ10のコア部11a、11b、11cのそれぞれの低次の伝送モードであり、より安定して伝搬を行うことができるLP01モードから優先的に使用して信号光を伝搬させる。たとえば、コア部11aのみのLP01モードのみを使用してもよい。このとき、使用する伝搬モードに応じて光送信器111-1~111-16から選択的に光送信器を使用する。そして、光伝送システム100に要求される伝送容量が増加したら、光送信器111-1~111-16のうちで使用する光送信器を追加し、コア部11b、11cのLP01モードやより高次の伝搬モードも使用して信号光を伝搬させる。この場合も、より低次の伝搬モードから優先的に使用することが好ましい。
【0059】
また、この光伝送システム100において、マルチコアファイバ10のコア部11a、11b、11cのうち最も距離が近いコア部のそれぞれに、それぞれのコア部の異なる伝搬モードで伝搬するように信号光を入力してもよい。たとえば、コア部11aではLP01モードで伝搬するように信号光を入力し、コア部11bではLP11モードで伝搬するように信号光を入力し、コア部11cではLP21モードで伝搬するように信号光を入力する。これにより、クロストークをきわめて低減できる。
【0060】
また、例えばコア部11aではLP01モードで伝搬するように信号光を入力し、コア部11bではLP01モード及びLP11モードで伝搬するように信号光を入力し、コア部11cではLP01モード及びLP21モーとで伝搬するように信号光を入力してもよい。
【0061】
なお、上記実施形態では、コア部11a、11b、11cはそれぞれシングルモードコア部、2モードコア部、又は3モードコア部であり、伝搬モードがLP01モード、LP11モード、LP21モード等の比較的低次であり、伝搬モード数が少ないので、設計や製造がより容易である。ただし、本発明に係るマルチコアファイバはこれらに限らず、より高次の伝搬モードを含み、伝搬モード数が多いコア部を備えていてもよい。
【0062】
また、上記実施形態に係るマルチコアファイバに対して、コア部を識別するための公知のマーカを設けてもよい。このようなマーカは、例えばクラッド部内に、クラッド部とは屈折率が異なる領域を設けることによって実現できる。
【0063】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
10、10A、10B、10C マルチコアファイバ
11a、11b、11c コア部
12 クラッド部
100 光伝送システム
110 光送信装置
111-1~111-16 光送信器
112 光合波器
120 光受信装置
121-1~121-16 光受信器
122 光分波器