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特許7012411コア母材の延伸方法、光ファイバ母材の製造方法、及び光ファイバの製造方法
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  • 特許-コア母材の延伸方法、光ファイバ母材の製造方法、及び光ファイバの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】コア母材の延伸方法、光ファイバ母材の製造方法、及び光ファイバの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/012 20060101AFI20220204BHJP
   C03B 37/027 20060101ALI20220204BHJP
【FI】
C03B37/012 Z
C03B37/027
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018068588
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019178030
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】敷島 真也
【審査官】松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-100132(JP,A)
【文献】特開2013-234089(JP,A)
【文献】特開2012-171814(JP,A)
【文献】特開2000-063138(JP,A)
【文献】特開2001-215344(JP,A)
【文献】特開2003-012337(JP,A)
【文献】特開平02-212328(JP,A)
【文献】特開2005-060143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 8/00- 8/04
C03B 37/00-37/16
G02B 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを製造するためのコア母材の延伸方法であって、
コア部と、前記コア部の外周に形成されたクラッド部とを有し、ステップ型の屈折率分布を有するコア母材の長手方向における複数の箇所において、前記屈折率分布と、前記コア部の直径に対する前記クラッド部の外径の比と、を測定する工程と、
前記光ファイバのコア半径をaとして、前記屈折率分布における前記クラッド部に対する前記コア部の比屈折率差Δと、前記比との測定結果に基づいて、前記光ファイバのカットオフ波長に比例する(2a)×(2Δ)1/2が長手方向で略一定になるように、前記クラッド部の外径を調整しながら前記コア母材を長手方向に延伸する工程と、
を含み、
前記複数の箇所のうち基準とする基準箇所と、前記基準箇所での前記クラッド部の外径とを事前に設定しておき、
前記基準箇所での前記比屈折率差Δをn、前記比をmとして、前記複数の箇所のうち前記基準箇所以外の箇所を延伸する場合は、当該箇所における前記比屈折率差Δをn、前記比をmとすると、前記基準箇所における延伸後の外径に(n/n-1/2×(m/m)を乗算した外径となるように、前記クラッド部の外径を調整し、
前記基準箇所を延伸する場合は、前記事前に設定した外径となるように前記クラッド部の外径を調整する
コア母材の延伸方法。
【請求項2】
請求項1に記載の延伸方法によって延伸されたコア母材を用いて光ファイバ母材を製造することを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の製造方法によって製造された光ファイバ母材を用いて光ファイバを製造することを特徴とする光ファイバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア母材の延伸方法、光ファイバ母材の製造方法、及び光ファイバの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、光ファイバは光ファイバ母材を線引きすることによって製造される。光ファイバ母材は、製造する光ファイバと同様に、コア部とコア部の外周に形成されたクラッド部とを備えている。光ファイバ母材を線引きすることによって、長手方向に垂直な断面形状が光ファイバ母材と相似形状の光ファイバが製造される。光ファイバ母材を製造する方法として、コア部と、コア部の外周に形成されたクラッド部とを備えるコア母材を用いる方法がある。コア母材のクラッド部は、光ファイバ母材のクラッド部の一部に相当する。コア母材のクラッド部の外周にさらにクラッド部を形成することによって、所望のクラッド部を備える光ファイバが製造される。
【0003】
コア母材において、屈折率分布や、コア部の直径に対するクラッド部の外径の比(以下、適宜クラッド/コア比と記載する)が、コア母材の長手方向で変動していると、このコア母材を用いて製造される光ファイバのカットオフ波長も長手方向で変動するという問題がある。そこで、光ファイバのカットオフ波長を長手方向で一定にするための技術が開示されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-060143号公報
【文献】特開平2-212328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、屈折率分布やクラッド/コア比が、コア母材の長手方向で変動していると、このコア母材を用いて製造される光ファイバのカットオフ波長も長手方向で変動するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、製造する光ファイバのカットオフ波長の長手方向での変動を抑制できるコア母材の延伸方法、光ファイバ母材の製造方法、及び光ファイバの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係るコア母材の延伸方法は、光ファイバを製造するためのコア母材の延伸方法であって、コア部と、前記コア部の外周に形成されたクラッド部とを有するコア母材の長手方向における複数の箇所において、屈折率分布と、前記コア部の直径に対する前記クラッド部の外径の比と、を測定する工程と、前記屈折率分布と、前記比との測定結果に基づいて、前記光ファイバのカットオフ波長が長手方向で略一定になるように、前記クラッド部の外径を調整しながら前記コア母材を長手方向に延伸する工程と、を含む。
【0008】
本発明の一態様に係るコア母材の延伸方法は、前記屈折率分布を表すパラメータである前記クラッド部に対する前記コア部の比屈折率差と、前記比と、の測定結果に基づいて、前記クラッド部の外径を調整することを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係るコア母材の延伸方法は、前記複数の箇所のうち基準とする基準箇所の前記比屈折率差をn、前記比をmとして、前記複数の箇所のうち前記基準箇所以外の箇所を延伸する場合は、当該箇所における前記比屈折率差をn、前記比をmとすると、前記基準箇所における延伸後の外径に(n/n-1/2×(m/m)を乗算した外径となるように、前記クラッド部の外径を調整することを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る光ファイバ母材の製造方法は、前記延伸方法によって延伸されたコア母材を用いて光ファイバ母材を製造することを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る光ファイバの製造方法は、前記製造方法によって製造された光ファイバ母材を用いて光ファイバを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれは、製造する光ファイバのカットオフ波長の長手方向での変動を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係る光ファイバの製造フローを示す図である。
図2図2は、コア母材を示す模式図である。
図3図3は、延伸装置の構成を示す模式図である。
図4図4は、延伸装置による延伸を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一又は対応する構成要素には適宜同一の符号を付している。また、本明細書で特に定義しない用語についてはITU-T G.650.1における定義、測定方法に従うものとする。また、コア部の直径は、適宜コア径と記載し、クラッド部の外径は、適宜クラッド径と記載する。
【0015】
図1は、実施形態に係る光ファイバの製造フローを示す図である。はじめに、ステップS101において、コア母材を準備する準備工程を行う。つづいて、ステップS102において、準備したコア母材の特性を測定する測定工程を行う。つづいて、ステップS103において、特性を測定したコア母材を延伸する延伸工程を行う。つづいて、ステップS104において、延伸したコア母材を用いて光ファイバ母材を作製する光ファイバ母材作製工程を行う。つづいて、ステップS105において、作製した光ファイバ母材を用いて光ファイバを作製する光ファイバ作製工程を行う。
【0016】
以下、各工程について具体的に説明する。図2は、準備するコア母材を示す模式図である。コア母材の準備方法は、特に限定されないが、本実施形態では、コア母材1は、VAD(Vapor Axial Deposition)法を用いて作製された円柱状のガラス体であり、コア部1aと、クラッド部1bと、出発材1cと、を備えている。
【0017】
コア部1aは、たとえば、屈折率を高めるドーパントであるゲルマニウム(Ge)などを添加した石英系ガラスからなる円柱形状のものである。クラッド部1bは、コア部1aの外周に形成されており、コア部1aよりも屈折率が低いガラス材料からなり、たとえば屈折率を変化させるドーパントを含まない純石英ガラスからなる。
【0018】
出発材1cは、VAD法を実行する際に、コア部1aとクラッド部1bとなるスートを堆積させるための部材であり、たとえば純石英ガラスからなる円柱形状のものである。コア母材1は、VAD法によって、出発材1cにコア部1aとクラッド部1bとなるスートを堆積させ、スートを脱水し、ガラス化することによって作製できる。
【0019】
つづいて、測定工程について説明する。測定工程においては、コア母材1の長手方向における複数の箇所において、屈折率分布と、コア部1aのコア径に対するクラッド部1bの外径の比であるクラッド/コア比と、を測定する。これらの測定項目は、公知のプリフォームアナライザなどにより測定できる。本実施形態では、コア母材1の屈折率分布はステップ型である。したがって、コア母材1の屈折率分布は、クラッド部1bに対するコア部1aの比屈折率差Δをパラメータとして表すことができる。また、測定する箇所については、長手方向の中央又は中央付近の箇所を含み、長手方向において等間隔とすることが好ましい。
【0020】
つづいて、延伸工程について説明する。図3は、延伸工程を実行するための延伸装置の構成を示す模式図である。この延伸装置10は、たとえばカーボンからなる円筒状のヒータ11aを備えた延伸加熱炉11と、コア母材1を支持し、昇降させるための昇降機構12a、12bと、延伸したコア母材1の外径を測定するレーザ方式の外径測定器13と、延伸加熱炉11、昇降機構12a、12b、及び外径測定器13を制御する制御部14とを備える。
【0021】
延伸を行う前に、コア母材1の、長手方向における出発材1cとは反対側の端部に、石英ガラスからなる支持棒1dを溶着する。
【0022】
つづいて、円筒状のヒータ11aがコア母材1を囲むように、延伸加熱炉11にコア母材1を配置する。つづいて、支持棒1d、出発材1c、をそれぞれ昇降機構12a、12bに備えた把持チャックによって把持し、コア母材1を支持する。
【0023】
つづいて、制御部14は、ヒータ11aを所定の温度に制御するとともに、昇降機構12aを下降させて支持棒1dを下方に引き下げるとともに、延伸加熱炉11を上昇させる。これにより、コア母材1が加熱延伸され、延伸したコア母材1が作製される。このとき、延伸加熱炉11内の周方向での温度分布の不均一による影響を緩和するため、昇降機構12a、12bによってコア母材1を回転させながら、支持棒1dを下方に引き下げてもよい。なお、外径測定器13は、延伸したコア母材1の外径を測定し、その測定データを制御部14に送信する。延伸工程については後に詳述する。
【0024】
つづいて、光ファイバ母材作製工程について説明する。光ファイバ母材作製工程では、延伸工程によって延伸したコア母材1を用いて光ファイバ母材を作製する。具体的には、OVD(Outside Vapor Deposition)法によって、延伸したコア母材1にスートを堆積させ、スートを脱水し、ガラス化することによって光ファイバ母材を作製する。スートをガラス化した部分は、延伸したコア母材1のクラッド部1bと一体化し、クラッド部1bとともに光ファイバ母材のクラッド部を構成する。なお、光ファイバ母材作製工程は、OVD法を用いたものに限られず、たとえば延伸したコア母材1を、クラッド部1bと同じ材料からなるガラス管に挿入し、両者を加熱一体化する方法を用いてもよい。この場合、ガラス管がクラッド部1bと一体化し、クラッド部1bとともに光ファイバ母材のクラッド部を構成する。
【0025】
つづいて、光ファイバ作製工程について説明する。光ファイバ作製工程では、公知の線引き装置を用いて光ファイバ母材を線引きすることによって、光ファイバを作製する。このように作製した光ファイバのカットオフ波長λcは、λc=n1×(2πa/2.405)×(2Δ)1/2 表される。ここで、n1はコア部の屈折率、2aは光ファイバのコア径である。
【0026】
つぎに、延伸工程について詳述する。本実施形態では、コア母材1における比屈折率差Δと、クラッド/コア比との測定結果に基づいて、作製する光ファイバのカットオフ波長が長手方向で略一定になるように外径を調整しながら、コア母材1を長手方向に延伸する。具体的には、制御部14は、外径測定器13aの測定データに基づいて、作製する光ファイバのカットオフ波長が長手方向で略一定になるように、ヒータ11aの温度や支持棒1dの引き下げ速度や延伸加熱炉11の上昇速度をフィードバック制御し、延伸時のクラッド部1bの外径を調整する。
【0027】
作製する光ファイバのカットオフ波長は、上述した式で表されるので、光ファイバ母材作製工程で作製するクラッド部の厚さと、光ファイバのクラッド径とが予めわかれば、コア母材1における比屈折率差Δと、クラッド/コア比との測定結果から、作製する光ファイバの比屈折率Δとコア径とがわかる。すなわち、製作するその光ファイバのカットオフ波長を予測することができる。このように、作製する光ファイバのカットオフ波長が長手方向で略一定になるように、延伸した部分のクラッド部1bの外径を調整すれば、クラッド径が一定になるようにコア母材1を延伸した場合よりも、作製した光ファイバにおけるカットオフ波長の長手方向での変動が抑制される。なお、カットオフ波長が長手方向で略一定であるとは、カットオフ波長が長手方向で完全に一定である場合だけでなく、その一定値から、光ファイバの仕様等によって定まる許容誤差(例えば±5%以内)の範囲内にある場合も含む。
【0028】
延伸時にクラッド部1bの外径を調整する場合には、以下のように行うことが好ましい。すなわち、まず、測定工程において測定を行った複数の箇所のうち、調整の基準とする基準箇所を定める。この基準箇所における測定結果である比屈折率差Δをn、クラッド/コア比をmとする。基準箇所は、所定の外径になるように延伸する。この所定の外径は、光ファイバ母材作製工程で作製するクラッド部の厚さなどを勘案して設定される。
【0029】
そして、測定を行った複数の箇所のうち、基準箇所以外の測定箇所における測定結果である比屈折率差Δをn、クラッド/コア比をmとする。このとき、その測定箇所を延伸する場合は、当該測定箇所における比屈折率差Δをn、クラッド/コア比をmとすると、基準箇所における延伸後の外径に(n/n-1/2×(m/m)を乗算した外径となるように調整する。たとえば、或る測定箇所における比屈折率差Δが基準箇所における比屈折率差Δよりも大きいときには基準箇所における延伸後の外径よりも小さい外径に延伸することとなる。同様に、或る測定箇所におけるクラッド/コア比が基準箇所におけるクラッド/コア比よりも大きいときには基準箇所における延伸後の外径よりも大きい外径に延伸することとなる。また、或る2つの測定箇所の間の箇所を延伸する場合は、2つの測定箇所における比屈折率差Δ及びクラッド/コア比によって補完した値を用いることができる。これにより、光ファイバのカットオフ波長を長手方向で略一定にできる。
【0030】
なお、基準箇所として、コア母材1における長手方向の中央又は中央付近の測定箇所を選択することが好ましい。その理由は、コア母材1における長手方向の中央又は中央付近は、製造条件が最も安定するためである。したがって、この箇所を基準箇所とすることで、延伸の際のクラッド径の調整の幅を小さくすることができる。
【0031】
(実施例、比較例)
以下、本発明の実施例及び比較例について説明する。まず、VAD法を用いて作製された、同一の特性を有するコア母材を2本準備した。そして、準備したコア母材の長手方向における一方の端部の近傍の箇所(A点とする)と他方の端部の近傍の箇所(B点とする)とを測定箇所とし、プリフォームアナライザによって測定を行った。その結果、2本のコア母材は、いずれも、以下の特性を有していた。すなわち、A点でのコア径は10mmであり、クラッド径は40mmであった。すなわち、クラッド/コア径は4.0であった。また、A点での比屈折率差Δは0.3%であった。一方、B点でのコア径は10.5mmであり、クラッド径は40mmであった。すなわち、クラッド/コア径は3.809であった。また、B点での比屈折率差Δは0.31%であった。すなわち、2本のコア母材は、いずれも、比屈折率差Δとクラッド/コア径とが、長手方向で変動しているものであった。
【0032】
(比較例)
比較例として、2本のコア母材の一方を、図3に示すような構成の延伸装置を用いて、クラッド径が長手方向で一定になるように調整しながら延伸し、延伸したコア母材を、プリフォームアナライザによって測定した。その結果、延伸前のコア母材のA点に対応する箇所でのコア径は5mmであり、クラッド径は20mmであった。また、延伸前のコア母材のB点に対応する箇所でのコア径は5.25mmであり、クラッド径は20mmであった。
【0033】
つづいて、OVD法によって、延伸したコア母材のクラッド径よりもクラッド径が60mmだけ大きくなるようにクラッド部を形成した光ファイバ母材を作製し、その外径を測定した。延伸前のコア母材のA点に対応する箇所でのクラッド径は80mmであり、延伸前のコア母材のB点に対応する箇所でのクラッド径は80mmであった。
【0034】
この光ファイバ母材から光ファイバを線引きし、そのカットオフ波長を22m法にて測定した。すると、カットオフ波長は、延伸前のコア母材のA点に対応する箇所でのカットオフ波長を基準とすると、延伸前のコア母材のB点に対応する箇所でのカットオフ波長が6.7%だけ長くなるように、変動していた。
【0035】
(実施例)
一方、実施例として、2本のコア母材のもう一方を、以下のように延伸した。まず、上述したように、コア母材のA点において、クラッド/コア径は4.0であり、比屈折率差Δは0.3%であった。一方、B点において、クラッド/コア径は3.8095であり、比屈折率差Δは0.31%であった。このとき、A点を基準箇所して、B点に対して上述した式を適用すると、(n/n-1/2×(m/m)=(0.31/0.3)-1/2×(3.809/4)=0.9367である。そこで、図3に示すような構成の延伸装置を用いて、コア母材を、A点では延伸後のクラッド径が20mmになるように、B点では、20mmに0.9367を乗算して、クラッド径が20mm×0.9367=18.73mmになるように、クラッド径を調整しながら延伸を行った。なお、A点とB点との間の箇所は、上記2点のクラッド径の値を線形補完した値のクラッド径となるように調整しながら延伸を行った。
【0036】
つづいて、延伸したコア母材のクラッド径よりもクラッド径が60mmだけ大きくなるようにクラッド部を形成した光ファイバ母材を作製した。そして、この光ファイバ母材から光ファイバを線引きし、そのカットオフ波長を22m法にて測定した。すると、延伸前のコア母材のA点に対応する箇所でのカットオフ波長を基準とすると、延伸前のコア母材のB点に対応する箇所でのカットオフ波長の変動は3.3%であり、比較例の場合よりも小さくなった。
【0037】
なお、上記実施形態では、比屈折率差Δを、コア母材1の屈折率分布を表すパラメータとして用いているが、屈折率分布を表す他のパラメータを用いてもよい。たとえば、屈折率分布を表すパラメータとして、ゲルマニウムの濃度を用いてもよい。また、本実施形態では、光ファイバのカットオフ波長が長手方向で略一定になるようにコア母材1を延伸しているので、延伸したコア母材1の外径は長手方向で変動している可能性がある。この場合、延伸したコア母材1の外径が長手方向で一定になるように外周を研削してもよい。これにより、光ファイバのカットオフ波長の長手方向での変動をより一層抑制でき、一定性が向上する。
【0038】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 コア母材
1a コア部
1b クラッド部
1c 出発材
1d 支持棒
10 延伸装置
11 延伸加熱炉
11a ヒータ
12a、12b 昇降機構
13 外径測定器
14 制御部
図1
図2
図3
図4