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  • 特許-カバーレイフィルム及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】カバーレイフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20220121BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20220121BHJP
   C09J 7/10 20180101ALI20220121BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
H05K3/28 F
B32B7/02
C09J7/10
C09J175/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017052361
(22)【出願日】2017-03-17
(65)【公開番号】P2018157056
(43)【公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】竹山 さなえ
(72)【発明者】
【氏名】野村 直宏
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 喬規
【審査官】赤穂 州一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-207656(JP,A)
【文献】特開2006-261444(JP,A)
【文献】国際公開第2015/046032(WO,A1)
【文献】特開2009-084507(JP,A)
【文献】特開2010-199405(JP,A)
【文献】特開2016-192531(JP,A)
【文献】特開2015-153867(JP,A)
【文献】特開2016-189392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/28
B32B 1/00 - 43/00
C09J 1/00 -201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体フィルムの片面に、第1の絶縁性層、第2の絶縁性層、熱硬化性接着剤層、が順に積層されてなり、前記第1の絶縁性層が難燃性樹脂を含有しており、前記第2の絶縁性層が樹脂成分として高延伸性樹脂のみを含有して、難燃性樹脂を含有しておらず、
前記支持体フィルムを除いた、前記第1の絶縁性層、前記第2の絶縁性層、前記熱硬化性接着剤層からなる積層体の引張伸度が100%以上であり、
前記支持体フィルムの上に、前記第1の絶縁性層が、溶剤可溶性ポリイミドの塗布により形成されてなり、前記第1の絶縁性層の上に、前記第2の絶縁性層が、溶剤可溶性ポリイミドの塗布により形成されてなり、
前記第1の絶縁性層の膜厚が、前記第2の絶縁性層の膜厚より薄いことを特徴とするカバーレイフィルム。
【請求項2】
前記第1の絶縁性層が、難燃性樹脂と高延伸性樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載のカバーレイフィルム。
【請求項3】
前記第1の絶縁性層中に含有される素材の合計を100重量%としたとき、難燃剤が5~60重量%含有されることを特徴とする請求項1または2に記載のカバーレイフィルム。
【請求項4】
前記第2の絶縁性層の単層での引張伸度が100%以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のカバーレイフィルム。
【請求項5】
前記第2の絶縁性層中に含有される素材の合計を100重量%としたとき、難燃剤が5~60重量%含有されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のカバーレイフィルム。
【請求項6】
前記熱硬化性接着剤層が、ポリウレタン樹脂とエポキシ樹脂とを含有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のカバーレイフィルム。
【請求項7】
前記ポリウレタン樹脂が、リン含有ポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項6に記載のカバーレイフィルム。
【請求項8】
前記第1の絶縁性層、前記第2の絶縁性層、前記熱硬化性接着剤層の少なくともいずれか一層が、光吸収剤を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のカバーレイフィルム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のカバーレイフィルムが、FPC保護の部材として使用されてなる携帯電話。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載のカバーレイフィルムが、FPC保護の部材として使用されてなる電子機器。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか1項に記載のカバーレイフィルムの製造方法であって、
前記第1の絶縁性層の膜厚が、前記第2の絶縁性層の膜厚より薄くなるように、前記支持体フィルムの上に、前記第1の絶縁性層を、溶剤可溶性ポリイミドの塗布により形成し、前記第1の絶縁性層の上に、前記第2の絶縁性層を、溶剤可溶性ポリイミドの塗布により形成することを特徴とするカバーレイフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーレイフィルムに関する。さらに詳細には、基材を製造する工程での加工適性、及び貼合の作業性が良好でフレキシブルプリント基板(以下、FPCと呼ぶ)の凹凸や段差への追従性に優れた薄膜のカバーレイフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの携帯用の電子機器においては、筐体の外形寸法を小さく、薄く抑えて持ち運び易くするために、プリント基板の上に電子部品を集積させている。さらに、筐体の外形寸法を小さくするため、プリント基板を複数に分割し、分割されたプリント基板間の接続配線に可撓性を有するFPCを使用することにより、プリント基板を折畳む、あるいは、スライドさせることが行われている。
【0003】
また、近年の携帯情報端末(スマートフォンやタブレット等)は、これまでの携帯電話よりもより多くの電力を消費するため、電池の保ちが悪くなっている。そのため、なるべく電池の容積及び容量を大きくする必要があり、電池以外の部材、部品の小型化、薄型化が強く求められ、例えば、カバーレイフィルムを貼合したFPC全体の薄型化が求められている。さらに近年では遮光性、意匠性が重視されるようになり、カバーレイフィルムの着色化が求められている。
【0004】
従来、FPC全体の薄型化の目的で使用されるカバーレイフィルムとしては、薄いポリイミドフィルムに接着剤を塗布したものが使われている(特許文献1)。しかし、薄いポリイミドフィルムは製造工程での加工適性が劣り、FPCに貼り付けるときに作業性に劣るという問題があった。
また、従来のカバーレイフィルムでは、厚みを薄くすることが困難なことに起因して柔軟性に欠けるため、FPCの段差への追従性が十分でなく、隙間ができてしまい、加熱工程での膨れ等の不具合の発生原因となっていた。そのため、カバーレイフィルムを貼り合わせたFPC全体の十分な薄型化は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-135067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の背景技術に鑑みて、薄膜であってもFPCの製造時の加工適性、作業性が良好で、FPCの段差への追従性に優れたカバーレイフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
カバーレイフィルムをFPCに貼合する時の作業性を良好にするため、本発明のカバーレイフィルムでは、支持体フィルムの片面に、絶縁性層と熱硬化性接着剤層とが順次積層されている。また、FPCに接着剤層を介して本発明のカバーレイフィルムを重ねて熱圧着させた後、支持体フィルムを剥がすことによって、カバーレイフィルムを、支持体フィルムからFPCに積層転写することができる。
また、過酷な屈曲動作に耐え、FPCへの追従性を良好にするため、本発明では、絶縁性層と接着剤層からなる積層体の引張伸度を高くする。
【0008】
また、本発明は、上記の問題点を解決するために、支持体フィルムの片面に、第1の絶縁性層、第2の絶縁性層、熱硬化性接着剤層、が順に積層されてなり、前記第1の絶縁性層が難燃性樹脂を含有し、前記支持体フィルムを除いた、前記第1の絶縁性層、前記第2の絶縁性層、前記熱硬化性接着剤層からなる積層体の引張伸度が100%以上であることを特徴とするカバーレイフィルムを提供する。
【0009】
前記第1の絶縁性層が、難燃性樹脂と高延伸性樹脂を含有してもよい。
【0010】
前記第1の絶縁性層の膜厚が、前記第2の絶縁性層の膜厚より薄くてもよい。
【0011】
前記第1の絶縁性層中に含有される素材の合計を100重量%としたとき、難燃剤が5~60重量%含有されてもよい。
【0012】
前記第2の絶縁性層の単層での引張伸度が100%以上であってもよい。
【0013】
前記第2の絶縁性層中に含有される素材の合計を100重量%としたとき、難燃剤が5~60重量%含有されてもよい。
【0014】
前記熱硬化性接着剤層が、ポリウレタン樹脂とエポキシ樹脂とを含有してもよい。
前記ポリウレタン樹脂が、リン含有ポリウレタン樹脂であってもよい。
【0015】
前記第1の絶縁性層、前記第2の絶縁性層、前記熱硬化性接着剤層の少なくともいずれか一層が、光吸収剤を含んでもよい。
【0016】
また、本発明は、上記のカバーレイフィルムが、FPC保護の部材として使用されてなる携帯電話を提供する。
また、本発明は、上記のカバーレイフィルムが、FPC保護の部材として使用されてなる電子機器を提供する。
【発明の効果】
【0017】
上記の本発明のカバーレイフィルムによれば、段差を有する配線板等を被覆した場合に隙間なく追従し、後のはんだリフロー工程やめっき工程などの工程において、膨れやめっき液の浸透による不具合が発生することの無い、薄膜カバーレイフィルムが製造できる。
また、絶縁性層又は接着剤層が光吸収材を含有することにより、カバーレイフィルムの片面側に特定の着色が可能となる。
【0018】
以上のことから、本発明によれば、配線板等を被覆した後のはんだリフロー工程などの加熱工程において、膨れやめっき液の浸透による不具合が発生することを低減できる、柔軟性に富み薄型であり、且つ、過酷な屈曲動作が繰返し行われてもFPC保護性能の低下が生じない、屈曲特性に優れたカバーレイフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のカバーレイフィルムの実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0021】
図1に示すように、支持体フィルム11の片面に、第1の絶縁性層12、第2の絶縁性層13、熱硬化性接着剤層14が順に積層されている。第1の絶縁性層12、第2の絶縁性層13、熱硬化性接着剤層14からなる積層体15は、支持体フィルム11から一体的に剥離して、FPC等に貼り合わせることが可能である。
本実施形態のカバーレイフィルム10は、被着体であるFPC等に貼り合わせたときに、外表面が誘電体であって、FPCの配線や回路部品等を電気絶縁的に保護することができる。また、本実施形態のカバーレイフィルムは、屈曲動作に対する屈曲特性を向上させるため、全体の厚みを薄くすることができる。
【0022】
(支持体フィルム)
本実施形態のカバーレイフィルム10に使用する支持体フィルム11の基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルム、ナイロン等のポリアミドフィルム、その他の樹脂フィルム等が挙げられる。これらの支持体フィルムは、マスキングフィルムとして使用可能なフィルムであってもよい。
支持体フィルム11の基材が、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの、基材自体にある程度の剥離性を有している場合には、支持体フィルム11の上に、剥離処理を施さなくて、直接に、積層体15を積層してもよいし、積層体15を支持体フィルム11から剥離し易くするための剥離処理を、支持体フィルム11の表面に施してもよい。
【0023】
また、上記の支持体フィルム11として用いる基材フィルムが、剥離性を有していない場合には、アミノアルキッド樹脂やシリコーン樹脂等の剥離剤を塗布した後、加熱乾燥することにより、剥離処理が施される。本実施形態のカバーレイフィルム10がFPCに用いられる場合、この剥離剤には、シリコーン樹脂を使用しないことが望ましい。シリコーン樹脂を剥離剤として用いると、支持体フィルム11の表面に接触した絶縁性層12,13の表面に、シリコーン樹脂の一部が移行し、さらに積層体15の内部を通じて熱硬化性接着剤層14の表面まで移行する恐れがある。この熱硬化性接着剤層14の表面に移行したシリコーン樹脂が、熱硬化性接着剤層14の接着力を弱めたりする恐れがある。
【0024】
支持体フィルム11の厚みは、FPCに被覆して使用する際の積層体15の全体の厚みからは除外されるので、特に限定されないが、通常12~150μm程度である。支持体フィルム11を用いることにより、絶縁性層12,13や熱硬化性接着剤層14を形成するときの加工性、FPCへの貼合時の作業性を向上させることができる。
【0025】
支持体フィルム11の色は、無色(無着色)でも有色でもよい。支持体フィルム11に着色する場合は、支持体フィルム11を除いた、積層体15の色に対してコントラストの大きい色であることが好ましい。例えば、積層体15が黒色などの暗色である場合は、支持体フィルム11は白色、黄色などの明色であることが好ましい。これにより、支持体フィルム11から積層体15を剥離する等の取扱い性や、支持体フィルム11が剥離されているか否かの確認性を向上することができる。支持体フィルム11の着色は、公知の顔料、染料などを用いて行うことができる。支持体フィルム11として、例えば、厚みが30μm以上60μm以下の白色のPETフィルムが挙げられる。
【0026】
(絶縁性層)
カバーレイフィルム10の絶縁性層12,13は、誘電体の薄膜樹脂層等からなる絶縁性層である。絶縁性層12,13の素材としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂、スチレン系樹脂等が挙げられるが、中でもポリイミド樹脂が最も好ましい。溶剤可溶性ポリイミドを用いて形成されたポリイミドフィルムの薄膜樹脂フィルムは、ポリイミド樹脂の特徴である高い機械的強度、耐熱性、絶縁性、耐溶剤性を有し、260℃程度までは化学的に安定であるとされているので、絶縁性層12,13として好適である。
【0027】
ポリイミドとしては、ポリアミック酸を加熱することによる脱水縮合反応で生じる熱硬化型ポリイミドと、非脱水縮合型である溶剤に可溶な溶剤可溶性ポリイミドがある。
一般的なポリイミドフィルムの製造方法は、極性溶媒中でジアミンとカルボン酸二無水物を反応させることによりイミド前駆体であるポリアミック酸を合成し、ポリアミック酸を脱水環化によりポリイミドに変換するものである。しかし、このイミド化する工程における加熱処理の温度は、200℃~300℃の温度範囲が好ましいとされ、この温度より加熱温度が低い場合は、イミド化が進まない可能性があるため好ましくなく、上記温度より加熱温度が高い場合は、化合物の熱分解が生じるおそれがあるため好ましくない。
【0028】
本実施形態のカバーレイフィルム10では、絶縁性層12,13の可撓性をより向上させることを意図して、絶縁性層12,13の合計の厚みが10μm以下の極めて薄いポリイミドフィルムを使用することができる。使用するポリイミドフィルムの厚みが、約7μmよりも薄い場合には、強度上の補強材として用いる支持体フィルム11の片面に、薄いポリイミドフィルムを積層して形成するのが好ましい。例えば、ポリアミック酸を含む塗布液を支持体フィルム11の片面に流延し、加熱して、ポリイミドを成膜することができる。
【0029】
ところが、ポリイミドフィルム自体には、加熱温度200℃~250℃での加熱処理に対する耐熱性を有しているが、支持体フィルム11として、価格と耐熱温度性能との兼ね合いから、汎用の耐熱性樹脂フィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム等の耐熱性が高くないフィルムを使用する場合には、従来のイミド前駆体であるポリアミック酸からポリイミドを形成する方法を採用することができない。
溶剤可溶性ポリイミドは、そのポリイミドのイミド化が完結していて、且つ溶剤に可溶であるため、溶剤に溶解させた塗布液を塗布した後、200℃未満の低温で溶剤を揮発させることにより、成膜することができる。このため、絶縁性層12,13は、支持体フィルム11の片面の上に、非脱水縮合型である溶剤可溶性ポリイミドの塗布液を塗布した後、温度を200℃未満の加熱温度で乾燥させて、ポリイミド樹脂の薄膜フィルムを形成することが好ましい。こうすることによって、汎用の耐熱性樹脂フィルムからなる支持体フィルム11の片面の上に、厚みが1~10μmの極めて薄いポリイミドフィルムを積層することができる。熱硬化性接着剤層14と同様に、塗布(コーティング)によって絶縁性層12,13を形成することにより、支持体フィルム11をその長手方向に沿って搬送しながら、その上に絶縁性層12,13、熱硬化性接着剤層14等を連続的に形成することができるので、ロールtoロールでの生産も可能であり、加工性、生産性に優れる。
【0030】
本実施形態の絶縁性層12,13に使用可能な、非脱水縮合型である溶剤可溶性ポリイミドは、特には限定されないが、市販されている溶剤可溶性ポリイミドの塗布液を使用することが可能である。市販の溶剤可溶性ポリイミドの塗布液としては、具体的には、ソルピー6,6-PI(ソルピー工業)、Q-IP-0895D(ピーアイ技研)、PIQ(日立化成工業)、SPI-200N(新日鉄化学)、リカコートSN-20、リカコートPN-20(新日本理化)などを挙げることができる。溶剤可溶性ポリイミドの塗布液を、支持体フィルム11の上に塗布する方法は、特に制限されず、例えば、ダイコーター、ナイフコーター、リップコーター等のコーターにて塗布することが可能である。
【0031】
本実施形態の絶縁性層12,13の合計の厚み(例えば、ポリイミドフィルムの厚み)は、1~10μmであることが好ましい。ポリイミドフィルムの厚みを0.8μm未満に製膜するのは、製膜された膜の機械的な強度が弱いことから技術的に困難である。また、ポリイミドフィルム等の絶縁性層12,13の厚みが10μmを越えると、薄型で、かつ優れた屈曲性能を有する積層体15を得ることが困難となる。また、絶縁性層12,13の合計の厚みが、約7μmよりも薄い場合には、ロールに巻き取る時のテンション調整が難しいため、強度上の補強材として支持体フィルム11を用いることが好ましい。
【0032】
また、本実施形態の絶縁性層12,13で使用可能なポリイミドフィルムの水蒸気透過度は、500g/m・day以上であることが好ましい。これよりも水蒸気透過度が低い場合には、FPCを被覆した後の、はんだリフローのような加熱工程において、各層の残留溶剤や接着剤からのアウトガス、フィルム中の水分が急激に熱せられることによって発生する水蒸気により各層間が剥離してしまう可能性がある。水蒸気透過度には特に上限を設けないが、同じ材料を使用する限り、水蒸気透過度は厚みに反比例するので、厚みを薄くして水蒸気透過度を上げる場合には、上述した厚みの範囲に収まることが好ましい。
【0033】
(高延伸性樹脂)
また、本実施形態の絶縁性層12,13は、FPCの段差に対する追従性を向上するため、引張伸度が大きいことが好ましい。一方又は両方の絶縁性層12,13の単層での引張伸度が100%以上であることが好ましく、また、250%以下が好ましい。ここで、引張伸度とは、フィルムが定速引張りにより切断した時点の伸びを%で表したものであるが、この引張伸度が、大きいほど、引張力に対して柔軟なフィルムである。このため、前記積層体15が十分な柔軟性を有し、FPCの凹凸や段差への優れた追従性を発現するためには、前記の引張伸度が100%以上であることが好ましい。
引張伸度の高い絶縁性層12,13は、高延伸性樹脂を含む層として構成することができる。引張伸度の高い絶縁性層12,13をポリイミドフィルムから構成する場合、例えば炭素数が3個以上の脂肪族ユニットを、芳香族ユニット間に有する、高延伸性のポリイミド材料を用いることが好ましい。さらに脂肪族ユニットは、炭素数が1~10程度のアルキレン基を有するポリアルキレンオキシ基を含むことが好ましい。
【0034】
第2の絶縁性層13の単層での引張伸度が100%以上であることが好ましく、また、250%以下が好ましい。積層体15をFPC等に貼り合わせたときに熱硬化性接着剤層14側となる第2の絶縁性層13は、高延伸性樹脂を含有することが好ましい。第2の絶縁性層13が、樹脂成分として高延伸性樹脂のみを含有してもよい。第2の絶縁性層13が、難燃性樹脂を含有しなくてもよい。第2の絶縁性層13が、高延伸性樹脂と難燃性樹脂を含有してもよい。高延伸性樹脂は、難燃性樹脂より引張伸度が高い樹脂であることが好ましい。
【0035】
(難燃性樹脂)
積層体15の難燃性を確保するため、一方又は両方の絶縁性層12,13が、難燃性樹脂を含有することができる。難燃性樹脂としては、高分子の樹脂成分自体が難燃性を有する樹脂が選択され、ポリイミド樹脂であることが好ましい。難燃性のポリイミド樹脂としては、ソマール(株)製のスピクセリア(登録商標)、宇部興産(株)製のユピア(登録商標)、東洋紡(株)製のバイロマックス(登録商標)等を用いることができる。難燃性のポリイミド樹脂は、溶剤可溶性ポリイミドであってもよい。難燃性の高い絶縁性層12,13をポリイミドフィルムから構成する場合、例えば炭素数が3個以上の脂肪族ユニットを芳香族ユニット間に有せず、芳香族ユニット間が単結合又は炭素数が2個未満の脂肪族ユニットにより連結された、難燃性のポリイミド材料を用いることが好ましい。炭素数が2個未満の脂肪族ユニットが、炭素原子を含まないエーテル結合(-O-)等の連結基であってもよい。
【0036】
積層体15をFPC等に貼り合わせたときに最外層となる第1の絶縁性層12は、難燃性樹脂を含有することが好ましい。第1の絶縁性層12が、樹脂成分として難燃性樹脂のみを含有してもよい。第1の絶縁性層12が、高延伸性樹脂を含有しなくてもよい。第1の絶縁性層12が、難燃性樹脂と高延伸性樹脂を含有してもよい。難燃性樹脂は、高延伸性樹脂より難燃性が高い樹脂であることが好ましい。
【0037】
(難燃剤)
積層体15の難燃性をより良好にするため、一方又は両方の絶縁性層12,13が、難燃剤を含有することができる。難燃剤としては、金属水酸化物系、アンチモン系、赤燐系等の無機系難燃剤、ハロゲン系(塩素系、臭素系など)、リン系、グアニジン系等の有機系難燃剤が挙げられる。ポリイミド等の絶縁性樹脂との分散性に優れる点では、リン系、臭素系等の有機系難燃剤が好ましい。リン系難燃剤としては、脂肪族リン酸エステル、芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、ビスフェノールリン酸エステル、含ハロゲンリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、ホスファゼン化合物等が挙げられる。
【0038】
難燃剤が樹脂と反応しない添加型の難燃剤である場合、難燃剤の添加量によっては、絶縁性層12,13の引張伸度が低下するおそれがある。このため、積層体15をFPC等に貼り合わせたときに最外層となる第1の絶縁性層12が難燃剤を含有し、第2の絶縁性層13が、第1の絶縁性層12より低濃度の難燃剤を含むか、又は、第2の絶縁性層13が難燃剤を含まないことが好ましい。また、第1の絶縁性層12が塗布により形成される場合は、追従性の観点から、第1の絶縁性層12の厚みが、第2の絶縁性層13の厚みより薄いことが好ましい。第1の絶縁性層12の厚みとしては、0.5~5μmが好ましく、1~4μmがさらに好ましい。第2の絶縁性層13の厚みとしては、1~10μmが好ましく、2~10μmであることが更に好ましい。
【0039】
絶縁性層12,13に含まれる樹脂と難燃剤との比率は適宜設定できる。第1の絶縁性層12では、第1の絶縁性層12中に含有される素材の合計を100重量%としたとき、難燃剤の割合が60重量%以下であることが好ましい。第1の絶縁性層12が難燃剤を含有しなくてもよく、含有する場合の難燃剤の割合は5重量%以上60重量%以下であることが好ましく、5重量%以上30重量%以下であることがさらに好ましい。
第2の絶縁性層13では、第2の絶縁性層13中に含有される素材の合計を100重量%としたとき、難燃剤の割合が下限を5重量%以上とすることができ、上限は60重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがさらに好ましい。第2の絶縁性層13が難燃剤を含有しなくてもよく、含有する場合の難燃剤の割合は下限を5重量%以上とすることができ、上限は60重量%以下であることが好ましく、30重量%以下がさらに好ましい。難燃剤が絶縁性層の厚み方向に濃度分布を有してもよい。
第1の絶縁性層12と第2の絶縁性層13との間は、樹脂や添加剤の組成等の相違により界面を示す場合もあり、組成等の連続的な変化により、明瞭な界面を示さない場合もある。樹脂成分の効果として、伸度と難燃性を損ねない程度に、フィラー等の添加剤を絶縁性層12,13に用いてもよい。
【0040】
(熱硬化性接着剤層)
カバーレイフィルム10の積層体15をFPCに貼り合わせるために用いられる接着剤層として、熱硬化性接着剤層14が好ましい。熱硬化性接着剤層14に使用される熱硬化性接着剤は、電気絶縁性の接着剤層であればよく、具体例として、アクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤、シリコーン系接着剤等の、一般的に使用されている熱硬化型接着剤が挙げられる。さらに、リン系、臭素系等の難燃剤などを混ぜて難燃性を持たせた熱硬化型接着剤が好適に使用されるが、特に限定されない。ポリウレタンの原料となるポリオール化合物又はポリイソシアネート化合物としてリン含有の化合物を用いて、樹脂の分子構造中にリンを含有するポリウレタン樹脂を、熱硬化性接着剤として用いることもできる。熱硬化性接着剤層14が、ポリウレタン樹脂とエポキシ樹脂とを含有することが好ましく、ポリウレタン樹脂が、リン含有ポリウレタン樹脂であることがより好ましい。
【0041】
熱硬化性接着剤層14の厚みは、例えば1~8μmが好ましい。熱硬化性接着剤層14は、例えば塗布により形成することができる。
熱硬化性接着剤層14の接着力は、特に制限を受けないが、その測定方法はJIS-C-6471「フレキシブルプリント配線板用銅張積層板試験方法」の8.1.1の方法A(90°方向引きはがし)で、5~30N/インチの範囲が好適である。接着力が5N/インチ未満では、例えば、FPCに貼り合わせた積層体15が熱や屈曲で剥がれたり浮いたりする場合がある。
【0042】
熱硬化性接着剤層14は、常温で感圧接着性を示す粘着剤ではなく、加熱加圧により接着性を示す接着剤層であると、繰り返しの屈曲に対して接着力が低下しにくくなり好ましい。FPCに対する加熱加圧接着の条件は、特に限定されるものではないが、例えば温度を160℃、加圧力を4.5MPaとして60分間熱プレスする条件が例示できる。
積層体15をFPCに対して加熱加圧する際、あらかじめ支持体フィルム11が積層体15から剥離除去されていてもよい。また、支持体フィルム11が積層体15に積層されたまま、FPCに対して加熱加圧することも可能である。この場合は、FPCに対する加熱加圧接着の処理後に、支持体フィルム11を積層体15から剥離除去してもよい。
【0043】
(アンカー層)
積層体15の基材となる絶縁性層12,13と、熱硬化性接着剤層14との間の密着力を向上するため、第2の絶縁性層13と熱硬化性接着剤層14との間に、アンカー層(図示せず)を設けてもよい。アンカー層は、熱硬化性接着剤層14の加熱加圧による接着温度が150~250℃であっても耐えられるために、耐熱性に優れた接着剤を用いることが好ましい。また、絶縁性層12,13及び熱硬化性接着剤層14に対する接着力に優れているアンカー層が好ましい。なお、密着力が十分な場合は、アンカー層を省略して、第2の絶縁性層13と熱硬化性接着剤層14とが直接接していてもよい。
【0044】
アンカー層に用いられる接着性樹脂組成物としては、好ましくは、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂が用いられる。また、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂などの熱硬化型であってもよい。
アンカー層の接着性樹脂組成物として特に好ましいのは、エポキシ基を有するポリエステル系樹脂組成物を架橋させる接着性樹脂組成物や、ポリウレタン系樹脂に硬化剤としてエポキシ樹脂を混ぜた接着性樹脂組成物である。このため、アンカー層は、ポリイミドフィルム等の薄膜からなる絶縁性層12,13よりも、硬い物性を有している。エポキシ基を有するポリエステル系樹脂組成物は、特に限定されるものではないが、例えば1分子に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(その未硬化樹脂)と、1分子に2個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸との反応等により得ることができる。エポキシ基を有するポリエステル系樹脂組成物の架橋は、エポキシ基と反応するエポキシ樹脂用の架橋剤を用いることができる。
【0045】
アンカー層の厚みは、0.05~1μm程度が好ましく、この程度の厚みであれば、熱硬化性接着剤層14との充分な密着力が得られる。アンカー層の厚みが、0.05μm以下の場合は、絶縁性層12,13と熱硬化性接着剤層14との密着力が低下する恐れがある。また、アンカー層の厚みが1μmを超えても、絶縁性層12,13と熱硬化性接着剤層14との密着力の増加には効果がなく、積層体15の厚みやコストが増大するので好ましくない。アンカー層は、例えば塗布により形成することができる。
【0046】
(光吸収剤)
FPCに貼り合わせた状態で積層体15に遮光性を付与し、または意匠性を向上させるため、積層体15を構成するいずれかの層に、光吸収材を含んでいてもよい。この目的で光吸収材を含むことができる層は、絶縁性層12,13の一方又は両方、熱硬化性接着剤層14、または絶縁性層12,13と熱硬化性接着剤層14との間に設けることのできる任意の層であり、例えば、絶縁性層12,13、例えば、熱硬化性接着剤層14、アンカー層等の少なくともいずれかの、1層又は2層以上が挙げられる。熱硬化性接着剤層14が光吸収剤を含有してもよく、溶剤可溶性ポリイミドから構成される絶縁性層12,13が光吸収剤を含有してもよい。光吸収剤を含む層(光吸収層)が、絶縁性層12,13または熱硬化性接着剤層14の少なくともいずれか一層以上を兼ねる場合、別に光吸収層を積層した場合に比べて、積層体15の厚み増加を抑制できるので好ましい。
【0047】
光吸収剤としては、非導電性カーボンブラック、黒鉛、アニリンブラック、シアニンブラック、チタンブラック、黒色酸化鉄、酸化クロム、酸化マンガンからなる群より選択される1種以上の黒色顔料又は着色顔料が挙げられる。光吸収剤の種類や配合量等は、光吸収層が電気絶縁性を保つように選択されることが好ましい。
黒色顔料又は着色顔料からなる光吸収材は、いずれかの層中に0.1~30重量%で含有させるのが好ましい。黒色顔料又は着色顔料は、SEM観察による一次粒子の平均粒径が0.02~0.1μm程度であることが好ましい。光吸収層の厚みは、光吸収材の微粒子が表出しないよう、光吸収剤の粒径より厚いことが好ましい。
支持体フィルム11を除いた、積層体15の光透過率は、5%以下が好ましい。光透過率としては、可視光線透過率、全光線透過率等が挙げられる。
【0048】
光透過率を効果的に低下させ、遮光性を向上させるためには、光吸収材の中でも、カーボンブラックなどの黒色顔料が好ましい。黒色顔料としては、シリカ粒子などを黒の色材に浸漬させて表層部のみを黒色にしてもよいし、黒色の着色樹脂などから形成して全体にわたって黒色からなるようにしてもよい。また、黒色顔料は、真黒以外に灰色、黒っぽい茶色、又は黒っぽい緑色などの黒色に近似した色を呈する粒子を含み、光を反射しにくい暗色であれば使用することができる。
【0049】
(剥離フィルム)
カバーレイフィルム10は、熱硬化性接着剤層14を保護するため、熱硬化性接着剤層14の上に剥離フィルム19を貼り合わせることができる。剥離フィルム19の基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。これらの基材フィルムに、アミノアルキッド樹脂やシリコーン樹脂等の剥離剤を塗布した後、加熱乾燥することにより、剥離処理が施される。本実施形態のカバーレイフィルム10は、剥離フィルム19を除去した状態で、FPCに貼り合わされるので、この剥離剤には、シリコーン樹脂を使用しないことが望ましい。なぜならシリコーン樹脂を剥離剤として用いると、剥離フィルム19の表面に接触した熱硬化性接着剤層14の表面に、シリコーン樹脂の一部が移行し、熱硬化性接着剤層14の接着力を弱める恐れがあるためである。
剥離フィルム19の厚みは、FPCに被覆して使用する際の積層体15の全体の厚みからは除外されるので、特に限定されないが、通常12~150μm程度である。
【0050】
(カバーレイフィルム)
本実施形態のカバーレイフィルム10は、繰り返しての屈曲動作を受けるFPCに貼り合わせて使用することが可能な、屈曲特性に優れたカバーレイフィルムとして好適に用いることができる。また、本実施形態のカバーレイフィルムを貼り合わせたFPCは、携帯電話、ノート型パソコン、携帯端末、などの各種の電子機器に使用することができる。
本実施形態のカバーレイフィルム10の製造方法としては、支持体フィルム11の上に、絶縁性層12,13と熱硬化性接着剤層14を、支持体フィルム11に近い側から順次材料の塗布により積層する方法が挙げられる。更に、上述したように、熱硬化性接着剤層14の上に、剥離フィルム19を貼り合わせてもよい。
本実施形態のカバーレイフィルム10は、FPCが屈曲動作をする際には、積層体15の状態でFPCに貼り合わせて使用されることが好ましい。ここで、積層体15とは、カバーレイフィルム10が剥離フィルム19を有する場合には、カバーレイフィルム10から支持体フィルム11及び剥離フィルム19を除いた積層体であり、カバーレイフィルム10が剥離フィルム19を有しない場合には、支持体フィルム11を除いた積層体である。積層体15は、上述したアンカー層、光吸収層などを含んでもよい。
積層体15の全体の厚みは、30μm以下が好ましく、15μm以下が更に好ましく、例えば5~15μm、12μm以下が挙げられる。積層体15の引張伸度は、100%以上が好ましく、150%以上又は150%以下であってもよい。
【実施例
【0051】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0052】
(実施例1)
片面に剥離処理を施した、厚みが50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを、支持体フィルム11として用いた。
支持体フィルム11の片面に、難燃性ポリイミド樹脂(脂肪族ユニットを含まないポリイミド樹脂)からなり、リン系難燃剤を含まない溶剤可溶性ポリイミド樹脂の塗布液を、乾燥後の厚みが1μmになるように流延塗布、乾燥させて、第1の絶縁性層12を形成した。
第1の絶縁性層12の上に、高延伸性ポリイミド樹脂(ジアミンの中に脂肪族ユニットとして(CHCHCHCH-O-)10を含むポリイミド樹脂)からなり、難燃剤を含まず、乾燥後の引張伸度が170%の溶剤可溶性ポリイミド樹脂の塗布液を、乾燥後の厚みが3μmになるように流延塗布、乾燥させて、第2の絶縁性層13を形成した。
第2の絶縁性層13の上に、リン含有ポリウレタン樹脂溶液(東洋紡製:UR3575)100重量部に多官能エポキシ樹脂(東洋紡製:HY-30)2.4重量部、フュームドシリカ(日本アエロジル製:R972)4.7重量部を順次加えて撹拌してできた熱硬化性接着剤を、乾燥後の厚みが8μmとなるように塗布、乾燥させて、熱硬化性接着剤層14を形成し、実施例1のカバーレイフィルムを得た。
【0053】
(実施例2,3)
第1の絶縁性層12に含まれるポリイミド樹脂を、前記高延伸性ポリイミド樹脂及び前記難燃性ポリイミド樹脂の併用とし、樹脂の重量比を、実施例2では20:80、実施例3では50:50にする以外は、実施例1と同様にして、実施例2,3のカバーレイフィルムを得た。
【0054】
(実施例4)
第2の絶縁性層13を形成するための塗布液を、樹脂100重量部に対して20重量部のリン系難燃剤を含む溶剤可溶性ポリイミド樹脂の塗布液とする以外は、実施例3と同様にして、実施例4のカバーレイフィルムを得た。
(実施例5)
第1の絶縁性層12を形成するための塗布液を、リン系難燃剤を含む溶剤可溶性ポリイミド樹脂の塗布液とする以外は、実施例4と同様にして、実施例5のカバーレイフィルムを得た。
【0055】
(実施例6)
第1の絶縁性層12に含まれるポリイミド樹脂を、前記高延伸性ポリイミド樹脂及び前記難燃性ポリイミド樹脂の併用とし、樹脂の重量比を、80:20にする以外は、実施例1と同様にして、実施例6のカバーレイフィルムを得た。
(実施例7)
第1の絶縁性層12の厚みを2μm、第2の絶縁性層13の厚みを5μm、熱硬化性接着剤層14の厚みを15μmにする以外は、実施例3と同様にして、実施例7のカバーレイフィルムを得た。
(実施例8)
第1の絶縁性層12の厚みを3μm、第2の絶縁性層13の厚みを1μmにする以外は、実施例3と同様にして、実施例8のカバーレイフィルムを得た。
【0056】
(比較例1)
第1の絶縁性層12に含まれるポリイミド樹脂を、前記高延伸性ポリイミド樹脂とする以外は、実施例1と同様にして、比較例1のカバーレイフィルムを得た。
(比較例2)
第1の絶縁性層12の膜厚を4μmとし、第2の絶縁性層13を積層しなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例2のカバーレイフィルムを得た。
【0057】
(引張伸度の測定方法)
IPC-TM-650 2.4.19に基づき、サンプルサイズを15mm幅、チャック間距離を100mm、測定速度を50mm/minで測定した(サンプル数N=5で測定を行い、その平均値を取った)。
積層体の引張伸度は、支持体フィルムを除いた積層体をサンプルとして測定した。
第2の絶縁性層の引張伸度は、支持体フィルムと同様な剥離フィルムの片面に、第2の絶縁性層を形成するための塗布液を塗布し、乾燥後に剥離フィルムを剥離除去して得られた第2の絶縁性層の単体をサンプルとして測定した。
【0058】
(追従性の評価方法)
厚みが12.5μmのポリイミドフィルム上に、厚み75μm、L/S=75μm/75μmの銅配線パタンを形成したテストパタンに、カバーレイフィルムの熱硬化接着剤面を重ね、温度140℃、速度1m/minで熱ラミネートによりラミネートした。支持体フィルム11を剥離した後、160℃、4.5MPa、65分の条件で熱プレスして、追従性の評価サンプルを得た。
得られたサンプルの断面を観察し、配線パタンに非常に良く追従し、且つ外観が良好な場合は「◎」、配線パタンに良く追従しており、外観がおおむね良好な場合は「○」、配線パタンに良く追従しているが配線エッジが薄くなっている場合は「△」、追従せずに配線パタンから浮いてしまっている場合や配線エッジ部分の塗膜が切れてしまっている場合を「×」とした。
【0059】
(難燃性の評価方法)
得られたカバーレイフィルムを、厚みが12.5μmのポリイミドフィルムに前述の方法(追従性の評価方法を参照)で熱プレスし、難燃性の評価用サンプルを得た。UL-94の薄手材料垂直燃焼試験(ASTM D4804)の方法に従って難燃性を評価し、炎が上がらないような難燃をする場合は「◎」、標線までの燃焼がない難燃をする場合は「○」、標線程度までの燃焼を示す場合は「△」、標線以上まで燃焼してしまい難燃性を有しない場合は「×」とした。
【0060】
(試験結果)
実施例1~8、及び比較例1について、上記の評価方法にて、カバーレイフィルムの評価を行い、得られた評価結果を表1に示した。
「第1の絶縁性層」の欄で、「比率」は、高延伸性ポリイミド樹脂及び難燃性ポリイミド樹脂の比率を意味する。「有無」は、難燃剤の有無を意味する。実施例5における難燃剤の割合は30重量%とした。「第2の絶縁性層」の欄で、「重量部」は、樹脂100重量部に対する難燃剤の重量部を意味する。「PI1」は、実施例1の第2の絶縁性層で用いた高延伸性ポリイミド樹脂を意味し、「PI2」は、実施例1の第1の絶縁性層で用いた難燃性ポリイミド樹脂を意味する。
「熱接着性接着剤層」の材料の欄で、「PU1」は、実施例1で用いた難燃性ポリウレタンを含む熱接着性接着剤を意味する。
積層体の厚みは、支持体フィルムを除いたカバーレイフィルム全体の厚みを意味し、「合計の厚み」は、支持体フィルムを含むカバーレイフィルム全体の厚みを意味する。
なお、絶縁性層12,13に難燃剤を添加する場合のリン系難燃剤としては、伏見製薬所製の商品名FP-110(ホスファゼン系難燃剤)を用いた。
【0061】
【表1】
【0062】
表1に示した評価結果によれば、積層体の引張伸度が100%以上の場合、追従性が良好になることがわかる。すなわち、比較例2のように、積層体の引張伸度が低い場合、段差に対する追従性が悪化した。第2の絶縁性層の引張伸度が低い場合、積層体の引張伸度も低下する傾向が見られた。
【0063】
また、第1の絶縁性層に難燃性樹脂を用いず、第2の絶縁性層に難燃剤を添加していない比較例1では、熱硬化性接着剤層に難燃性を持たせた熱硬化型接着剤を用いたものの、支持体フィルムを剥離したサンプルにおいて最外層となる第1の絶縁性層の難燃性が低いため、積層体全体としても難燃性が悪化した。
【符号の説明】
【0064】
10…カバーレイフィルム、11…支持体フィルム、12…第1の絶縁性層、13…第2の絶縁性層、14…熱硬化性接着剤層、15…積層体、19…剥離フィルム。
図1