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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】渦抑止システム及び浮遊体
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/66 20060101AFI20220121BHJP
   F04D 13/16 20060101ALI20220121BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20220121BHJP
   E03F 5/22 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
F04D29/66 F
F04D13/16 W
B63B35/00 Z
E03F5/22
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2017127520
(22)【出願日】2017-06-29
(65)【公開番号】P2019011689
(43)【公開日】2019-01-24
【審査請求日】2020-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】能見 基彦
(72)【発明者】
【氏名】大渕 真志
(72)【発明者】
【氏名】石井 正治
(72)【発明者】
【氏名】清水 修
(72)【発明者】
【氏名】中塩 雄二
(72)【発明者】
【氏名】江藤 文宣
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-153000(JP,A)
【文献】実開昭52-147906(JP,U)
【文献】特開2014-206105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/66
F04D 13/16
B63B 35/00
E03F 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に浮かぶ浮遊体と、
前記浮遊体を移動させる移動手段であって、ポンプの吸込水槽に発生した空気吸込渦へ当該移動手段の力によって前記吸込水槽の水上を移動させる移動手段と、
を備える渦抑止システム。
【請求項2】
前記移動手段は、
前記浮遊体が接続されているワイヤーと、
前記ワイヤーを牽引可能な牽引機構と、
を備える請求項1に記載の渦抑止システム。
【請求項3】
前記ワイヤーは複数あり、
前記牽引機構は複数あり、
前記牽引機構それぞれは、対応する前記ワイヤーを巻き上げ可能である
請求項2に記載の渦抑止システム。
【請求項4】
前記牽引機構のうち少なくとも一つは、前記吸込水槽の周りのポンプ床に設置されており、
前記移動手段は、一端が前記浮遊体に連結されており且つ他端が前記複数のワイヤーの結節点に接続されている連結部材を備える
請求項3に記載の渦抑止システム。
【請求項5】
前記牽引機構のうち少なくとも一つは、前記吸込水槽の周りのポンプ床に設置されており、
前記牽引機構のうち少なくとも一つは、前記ポンプの揚水管の外側に固定されている
請求項3または4に記載の渦抑止システム。
【請求項6】
前記移動手段は、
前記ポンプの揚水管の外周に沿って固定された第1のレールと、
前記第1のレールに沿って周回可能であり且つ前記ワイヤーを通す滑車と、
前記吸込水槽の周りのポンプ床を移動する移動部材と、
を更に備え、
前記牽引機構として第1の牽引機構と第2の牽引機構を有し、
前記第1の牽引機構は、前記移動部材に設けられ且つ前記ワイヤーの一端を巻き上げる動力を有し、
前記第2の牽引機構は、前記移動部材に設けられ且つ前記ワイヤーの他端を巻き上げる動力を有する
請求項2から5のいずれか一項に記載の渦抑止システム。
【請求項7】
前記移動手段は、
一点が前記浮遊体に接続されたワイヤーと、
前記ポンプの揚水管の外周に沿って固定された第1のレールと、
前記第1のレールに沿って周回可能であり且つ前記ワイヤーを通す第1の滑車と、
前記吸込水槽の周りのポンプ床に設置され且つ前記ポンプの揚水管を中心とする略円環上に設けられている第2のレールと、
前記第2のレール上を移動する移動車と、
前記移動車に設けられ且つ前記ワイヤーを通す第2の滑車と、
を備える請求項1に記載の渦抑止システム。
【請求項8】
前記第2の滑車は、前記ワイヤーを巻き上げる動力を有する
請求項7に記載の渦抑止システム。
【請求項9】
前記浮遊体に設けられ且つ音を検知する音検知部と、
前記検知された音が、前記空気吸込渦に特有の音であるか否か判定し、前記空気吸込渦に特有の音である場合、前記検知された音が大きくなる方向に前記浮遊体を移動するよう前記移動手段を制御するコントローラと、
を更に備える請求項1から8のいずれか一項に記載の渦抑止システム。
【請求項10】
前記空気吸込渦を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置によって撮像された画像から前記空気吸込渦の位置を検出し、検出された位置に前記浮遊体を移動させるように、前記移動手段を制御するコントローラと、
を備える請求項1から9のいずれか一項に記載の渦抑止システム。
【請求項11】
前記移動手段は、
ワイヤーと、
一端が前記ワイヤー内の一点に接続され且つ他端が前記浮遊体に連結された連結構造物と、
前記ワイヤーを移動させるモータと、
を備える請求項1に記載の渦抑止システム。




【請求項12】
前記移動手段は、
前記吸込水槽の周りにある一方のポンプ床を移動する移動部材と、
前記移動部材に設けられたロボットアームであって、当該ロボットアームの端部が前記浮遊体に連結されたロボットアームと、
を備える請求項1に記載の渦抑止システム。
【請求項13】
前記ポンプの揚水管の外周に設置されたレールを更に備え、
前記移動手段は、一端が前記浮遊体に連結され且つ他端が前記レールに沿って移動可能に当該レールに接続されているロボットアームである
請求項1に記載の渦抑止システム。
【請求項14】
前記移動手段は、前記浮遊体に接続されているガントリークレーン構造体である
請求項1に記載の渦抑止システム。
【請求項15】
ポンプの吸込水槽の水上を移動する浮遊体であって、
水に浮く浮力部材と、
前記浮力部材に設けられ且つ音を検知する音検知部と、
前記吸込水槽の水上を、前記浮力部材を移動させる移動手段と、
前記検知された音が、空気吸込渦に特有の音であるか否か判定し、前記空気吸込渦に特有の音である場合、前記検知された音が大きくなる方向に前記浮力部材を移動するよう前記移動手段を制御するコントローラと、
を備える浮遊体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦抑止システム及び浮遊体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプの吸込水槽では、空気吸込渦が発生することが知られている。非特許文献1にあるように、表面取水には空気吸込渦が発生する危険性があり、空気吸込渦が発生して空気がポンプの揚水管内に流入すると、管路の流れにエアハンマー、セルフプライミングなどの振動現象が発生し、取水効果が著しく低下する。
【0003】
また、被特許文献2では、排水機場ポンプ設備改修工事においてポンプ排水量の見直しに当たり、上流側に位置する遊水池まで含めたポンプ吸込槽の流れ解析を行い、渦対策形状の最適化の検討が行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】萩原能男、「空気吸込み渦に関する研究」、土木学会論文報告書、第215号、1973年7月
【文献】江藤文宣、趙令家、大和田典彦、「排水機場更新工事における流れ解析の適用(糠田排水機場ポンプ設備改修工事におけるポンプ吸込槽渦対策)」、エバラ時報、NO.240(2013-7)、P.22-26
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポンプ吸込水槽では、安定なポンプ運転に悪影響を発生させる色々な渦が発生する。特に二相状態となる空気吸込渦は、ポンプに振動や騒音を発生させ、その防止、抑制は重要である。これまで水中構造物の付設や、ベルマウス部の形状の改善で対応してきたが、個別対応となり抜本的な方法は見いだされてはいないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされ、空気吸込渦が発生した場合に、空気吸込渦を縮小または消滅させることを可能とする渦抑止システム及び浮遊体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る渦抑止システムは、水に浮かぶ浮遊体と、前記浮遊体をポンプの吸込水槽に発生した空気吸込渦へ前記吸込水槽の水上を移動させる移動手段と、を備える。
【0008】
この構成によれば、浮遊体を空気吸込渦を覆う位置に移動させることにより、空気吸込渦への空気の流入を断ち切ることができるので、空気吸込渦を低減または消滅させることができる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る渦抑止システムは、第1の態様に係る渦抑止システムであって、前記移動手段は、前記浮遊体が接続されているワイヤーと、前記ワイヤーを牽引可能な牽引機構と、を備える。
【0010】
この構成によれば、ワイヤーを牽引することにより、浮遊体を空気吸込渦を覆う位置に移動させることができる。
【0011】
本発明の第3の態様に係る渦抑止システムは、第2の態様に係る渦抑止システムであって、前記ワイヤーは複数あり、前記牽引機構は複数あり、前記牽引機構それぞれは、対応する前記ワイヤーを巻き上げ可能である。
【0012】
この構成によれば、複数の牽引機構が対応するワイヤーに張力を与え、且つ浮遊体までの長さをそれぞれ調節することにより、牽引機構の位置を頂点とする線分または多角形内の任意の位置に浮遊体を移動させることができる。
【0013】
本発明の第4の態様に係る渦抑止システムは、第3の態様に係る渦抑止システムであって、前記牽引機構のうち少なくとも一つは、前記吸込水槽の周りのポンプ床に設置されており、前記移動手段は、一端が前記浮遊体に連結されており且つ他端が前記複数のワイヤーの結節点に接続されている連結部材を備える。
【0014】
この構成によれば、連結部材は結節点から浮遊体までの高さを調節することができる。
【0015】
本発明の第5の態様に係るポンプは、第3または4の態様に係る渦抑止システムであって、前記牽引機構のうち少なくとも一つは、前記吸込水槽の周りのポンプ床に設置されており、前記牽引機構のうち少なくとも一つは、前記ポンプの揚水管の外側に固定されている。
【0016】
この構成によれば、局所的な領域内の任意の位置に浮遊体を移動させることができる。
【0017】
本発明の第6の態様に係る渦抑止システムは、第2から5のいずれかの態様に係る渦抑止システムであって、前記移動手段は、前記ポンプの揚水管の外周に沿って固定された第1のレールと、前記第1のレールに沿って周回可能であり且つ前記ワイヤーを通す滑車と、前記吸込水槽の周りのポンプ床を移動する移動部材と、を更に備え、前記牽引機構として第1の牽引機構と第2の牽引機構を有し、前記第1の牽引機構は、前記移動部材に設けられ且つ前記ワイヤーの一端を巻き上げる動力を有し、前記第2の牽引機構は、前記移動部材に設けられ且つ前記ワイヤーの他端を巻き上げる動力を有する。
【0018】
この構成によれば、内視鏡を揚水管の内部に進入させて揚水管の内部を観察することができる。
【0019】
本発明の第7の態様に係る渦抑止システムは、第1の態様に係る渦抑止システムであって、前記移動手段は、一点が前記浮遊体に接続されたワイヤーと、前記ポンプの揚水管の外周に沿って固定された第1のレールと、前記第1のレールに沿って周回可能であり且つ前記ワイヤーを通す第1の滑車と、前記吸込水槽の周りのポンプ床に設置され且つ前記ポンプの揚水管を中心とする略円環上に設けられている第2のレールと、前記第2のレール上を移動する移動車と、前記移動車に設けられ且つ前記ワイヤーを通す第2の滑車と、を備える。
【0020】
この構成によれば、第2の滑車を回転させることにより、ワイヤーが回動するので、これに伴いワイヤーに一点で固定されている浮遊体が移動する。また、移動車が第2のレールを移動するのに伴って、ワイヤーが移動するので、これに伴いワイヤーに一点で固定されている浮遊体が移動する。
【0021】
本発明の第8の態様に係る渦抑止システムは、第7の態様に係る渦抑止システムであって、前記第2の滑車は、前記ワイヤーを巻き上げる動力を有する。
【0022】
この構成によれば、自動でワイヤーを巻き上げることにより、自動で浮遊体を移動させることができる。
【0023】
本発明の第9の態様に係る渦抑止システムは、第1から8のいずれかの態様に係る渦抑止システムであって、前記浮遊体に設けられ且つ音を検知する音検知部と、前記検知された音が、前記空気吸込渦に特有の音であるか否か判定し、前記空気吸込渦に特有の音である場合、前記検知された音が大きくなる方向に前記浮遊体を移動するよう前記移動手段を制御するコントローラと、を更に備える。
【0024】
この構成によれば、浮遊体を自動で空気吸込渦を覆う位置に移動させることにより、空気吸込渦への空気の流入を断ち切ることができるので、手間無く空気吸込渦を低減または消滅させることができる。
【0025】
本発明の第10の態様に係る渦抑止システムは、第1の態様に係る渦抑止システムであって、前記空気吸込渦を撮像する撮像装置と、前記撮像装置によって撮像された画像から前記空気吸込渦の位置を検出し、検出された位置に前記浮遊体を移動させるように、前記移動手段を制御するコントローラと、を備える。
【0026】
この構成によれば、浮遊体を自動で空気吸込渦を覆う位置へ移動させることにより、空気の流入を断ち切ることができるので、手間無く空気吸込渦を縮小または消滅させることができる。
【0027】
本発明の第11の態様に係る渦抑止システムは、第10の態様に係る渦抑止システムであって、ワイヤーと、一端が前記ワイヤー内の一点に接続され且つ他端が前記浮遊体に連結された連結構造物と、前記ワイヤーを移動させる移動機構と、を備える。
【0028】
この構成によれば、移動機構がワイヤーを移動させるのに伴って、ワイヤーに連結された浮遊体が移動する。
【0029】
本発明の第12の態様に係る渦抑止システムは、第1の態様に係る渦抑止システムであって、前記移動手段は、前記吸込水槽の周りにある一方のポンプ床を移動する移動部材と、前記移動部材に設けられたロボットアームであって、当該ロボットアームの端部が前記浮遊体に連結されたロボットアームと、を備える。
【0030】
この構成によれば、ロボットアームを動かすことにより、浮遊体を移動させることができる。
【0031】
本発明の第13の態様に係る渦抑止システムは、第1の態様に係る渦抑止システムであって、前記ポンプの揚水管の外周に設置されたレールを更に備え、前記移動手段は、一端が前記浮遊体に連結され且つ他端が前記レールに沿って移動可能に当該レールに接続されているロボットアームである。
【0032】
この構成によれば、ロボットアームがポンプの揚水管の外側を周回することができる。これにより、ロボットアームを動かすことに加えて、ロボットアームがポンプの揚水管の外側を周回できるので、浮遊体を任意の位置に移動させることができる。
【0033】
本発明の第14の態様に係る渦抑止システムは、第1の態様に係る渦抑止システムであって、前記移動手段は、前記浮遊体に接続されているガントリークレーン構造体である。
【0034】
この構成によれば、浮遊体を移動することができる。
【0035】
本発明の第15の態様に係る浮遊体は、ポンプの吸込水槽の水上を移動する浮遊体であって、水に浮く浮力部材と、前記浮力部材に設けられ且つ音を検知する音検知部と、前記吸込水槽の水上を、前記浮力部材を移動させる移動手段と、前記検知された音が、空気吸込渦に特有の音であるか否か判定し、前記空気吸込渦に特有の音である場合、前記検知された音が大きくなる方向に前記浮力部材を移動するよう前記移動手段を制御するコントローラと、を備える。
【0036】
この構成によれば、浮遊体を空気吸込渦を覆う位置に移動させることにより、空気吸込渦への空気の流入を断ち切ることができるので、空気吸込渦を低減または消滅させることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の一態様によれば、浮遊体を空気吸込渦を覆う位置に移動させることにより、空気吸込渦への空気の流入を断ち切ることができるので、空気吸込渦を低減または消滅させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】第1の実施形態に係る浮遊体の概略構成を示す模式図である。
図2】第1の実施形態に係る浮遊体の概略構成を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態に係る浮遊体の動作について説明するための第1の図である。
図4】第1の実施形態に係る浮遊体の動作について説明するための第2の図である。
図5】第2の実施形態に係る渦抑止システムの概略構成を示す斜視図である。
図6】第3の実施形態に係る渦抑止システムの概略構成を示す斜視図である。
図7】第4の実施形態に係る渦抑止システムの概略構成を示す斜視図である。
図8】第5の実施形態に係る渦抑止システムの概略構成を示す斜視図である。
図9】第6の実施形態に係る渦抑止システムの概略構成を示す斜視図である。
図10】第6の実施形態の変形例に係る渦抑止システムの概略構成を示す平面図である。
図11】第7の実施形態に係る渦抑止システムの概略構成を示す平面図である。
図12】第8の実施形態に係る渦抑止システムの概略構成を示す平面図である。
図13】第9の実施形態に係る渦抑止システムの概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、各実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示の理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0040】
(第1の実施形態)
まず図1及び図2を用いて、第1の実施形態に係る浮遊体の概略構成について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る浮遊体の概略構成を示す模式図である。図2は、第1の実施形態に係る浮遊体の概略構成を示すブロック図である。第1の実施形態に係る浮遊体1は、ポンプの吸込水槽の水上を移動する。図1に示すように、浮遊体1は、水に浮く浮力部材11と、浮力部材11に設けられ且つ音を検知する音検知部12と、吸込水槽の水上を、浮力部材11を移動させる移動手段13とを備える。ここで浮力部材11は例えばビート板のように板状であり水より密度が小さい。また移動手段13は一例として水中用のスクリュープロペラである。また、浮力部材11は、多角形あるいは円形形状が望ましいが、任意の形状でよい。また浮力部材11は、代表寸法で例えば0.5~1mである。
【0041】
図2に示すように、浮遊体1は、更に、記憶部14と、コントローラ15とを備える。コントローラ15は、音検知部12、移動手段13及び記憶部14に接続されている。記憶部14には、空気吸込渦に特有の騒音の既存のデータベース、あるいはポンプ機場で空気吸込渦の発生時の騒音を録音及び解析したデータのいずれかが記憶されている。
【0042】
ここで空気吸込渦の発生時に特有の音が発生するので、音により空気吸込渦の発生を検知するのが容易である。そこで本実施形態に係るコントローラ15は、記憶部14を参照して、音検知部12によって検知された音が、空気吸込渦に特有の音であるか否か判定する。例えば、コントローラ15は、検知された音のデータを、既存のデータベースの音のデータと比較して、空気吸込渦に特有の音であるか否か判定する。また例えば、コントローラ15は、検知された音を解析し、当該解析したデータと、記憶部14に記憶されたデータとを比較して、空気吸込渦に特有の音であるか否か判定する。
【0043】
コントローラ15は、検知された音が空気吸込渦に特有の音である場合、検知された音が大きくなる方向に浮力部材11を移動するよう移動手段13を制御する。
【0044】
続いて図3及び図4を用いて浮遊体1の動作について説明する。図3は、第1の実施形態に係る浮遊体の動作について説明するための第1の図である。図4は、第1の実施形態に係る浮遊体の動作について説明するための第2の図である。図3及び図4はポンプ機場におけるポンプとポンプの吸込水槽を横から見た図である。図3では、ポンプの吸込水槽には水WTが溜まっており、ポンプの揚水管PTから水面にかけて空気吸込渦が発生している。
【0045】
このとき、コントローラ15は、移動手段13を制御して、吸込水槽の水上を浮遊体1を吸込水槽に発生した空気吸込渦VT(具体的には、空気吸込渦VTを覆う位置)へ移動させる。これにより、浮遊体1を自動で空気吸込渦VTを覆う位置に移動させることにより、空気吸込渦VTへの空気の流入を断ち切ることができるので、手間無く空気吸込渦VTを低減または消滅させることができる。また空気吸込渦VTの検出後に、十分短時間で発生位置に浮遊体を移動させて空気吸込渦VTを破壊することができるので、空気吸込渦の連続発生を防止することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、移動手段13は一例として浮遊体1に搭載された水中用のスクリュープロペラであるとして説明したが、これに限ったものではなく、浮遊体1に搭載された水中ジェット推進機構、あるいは浮遊体1の水上部に設置された空気用回転プロペラなど任意の推進機構が適用可能である。
なお、本実施形態では、空気吸込渦VTの検知方法として発生音で空気吸込渦VTを検知し、その発生音に浮遊体1が近づくということを基本原理として説明した。これに対し、空気吸込渦の発生時に、空気を吸込んだ揚水管PTの方から大きい異音が発生する場合もある。このように、空気吸込渦の発生場所を特定するのに、発生音だけでは精度不足や過誤が生じる場合がある。その場合、空気吸込渦の発生音を検知することを主としつつ、後述する第2の実施形態の図5に示すように、カメラによって取得された画像を解析することによって空気吸込渦VTの発生場所を特定することを併用することによって、空気吸込渦の発生場所を特定してもよい。あるいは、カメラによって取得された画像を解析することだけによって空気吸込渦VTの発生場所を特定してもよい。
【0047】
(第2の実施形態)
続いて、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、音を用いて浮遊体を移動させたが、第2の実施形態では、渦を撮像した画像から渦の位置を特定し、特定した渦の位置に浮遊体を移動するよう制御させる。また、第1の実施形態では、移動手段が水中用のスクリュープロペラであったが、第2の実施形態では、浮遊体に動力を搭載せず、吸込水槽の水上にワイヤーを設置し、ワイヤーに浮遊体を固定しておき、牽引機構がこのワイヤーを牽引することにより、浮遊体を移動させる。また、牽引機構が搭載された移動部材が、ポンプ床に設置されたレール上を移動するのに伴ってワイヤーも移動し、ワイヤーが移動するのに伴って浮遊体も移動する。
【0048】
図5は、第2の実施形態に係る渦抑止システムの概略構成を示す斜視図である。図5に示すように、渦抑止システムS2は、水に浮かぶ浮遊体1bを備える。浮遊体1bをポンプの吸込水槽TKに発生した空気吸込渦VTへ吸込水槽TKの水上を移動させる移動手段として以下の構成を有する。
【0049】
すなわち、移動手段は、吸込水槽TKの周りにあるポンプ床Fを移動する第1の移動部材MP1と、吸込水槽TKを挟んで前記第1の移動部材MP1と略平行にポンプ床Fを移動する第2の移動部材MP2とを備える。
本実施形態では一例として、第1の移動部材MP1は移動車であり、ポンプ床F1に設置されたレールRL1上を矢印A5の方向に移動することが可能である。また本実施形態では一例として、第2の移動部材MP2は移動車であり、ポンプ床Fに設置されたレールRL2上を矢印A6の方向に移動することが可能である。
【0050】
更に移動手段は、第1の滑車B1と、第1の滑車用の軸受BRと、第2の滑車B2と、正回転及び逆回転可能なモータMと、第1の滑車B1と第2の滑車B2に巻かれて矢印A3及びA4方向に移動可能なワイヤーWを備える。浮遊体1bは、連結部材CN及び連結ワイヤーCWを介してワイヤーW内の一箇所に固定されている。連結部材CN及び連結ワイヤーCWによって連結構造物として機能する。
【0051】
この構成により、モータMが正回転または逆回転することによって、第2の滑車B2が正回転または逆回転し、これに伴いワイヤーWが矢印A3の方向(y軸正方向)または矢印A4の方向(y軸負方向)に移動する。これに伴い、ワイヤーWに連結された浮遊体1bが矢印A3の方向(y軸正方向)または矢印A4の方向(y軸負方向)に移動する。
【0052】
また、第1の移動部材MP1がレールRL1上を矢印A5の方向に移動し、第2の移動部材MP2がレールRL2上を矢印A6の方向に移動し、これに伴ってワイヤーWがx方向に移動するので、浮遊体1bをx方向に移動させることができる。
【0053】
更に渦抑止システムS2は、空気吸込渦VTを撮像する撮像装置CDと、コントローラ15bとを備える。撮像装置CDは高いところに設置されており、上下方向(矢印A1の方向)及び水平方向(矢印A2の方向)に向きを変更可能である。これにより、吸込水槽TKの全体に渡って、空気吸込渦VTを観測することができる。なお、撮像装置(カメラ)は複数あってもよい。
【0054】
コントローラ15bは、撮像装置CDによって撮像された画像から空気吸込渦VTの位置を検出し、検出された位置に浮遊体1bを移動させるように、移動手段を制御する。具体的にはコントローラ15bは、第1の移動部材MP1、第2の移動部材MP2、モータMを制御する。
【0055】
この構成により、浮遊体1bを自動で空気吸込渦VTを覆う位置へ移動させることにより、空気の流入を断ち切ることができるので、手間無く空気吸込渦を縮小または消滅させることができる。
【0056】
なお、本実施形態では、移動部材は一例としてレール上を移動する移動車として説明したが、リニアモーターカーでもよく、タイヤ付き自動車であってもよく、移動できる移動部材であればよい。
【0057】
なお、本実施形態では一例として図5に示す索引方式について説明したが、これに限らず、ワイヤーWをx軸方向及びy軸方向に任意に移動させる、いかなる移動機構でもよい。
【0058】
(第3の実施形態)
続いて、第3の実施形態について説明する。図6は、第3の実施形態に係る渦抑止システムの概略構成を示す斜視図である。図6に示すように、渦抑止システムS3は、水に浮かぶ浮遊体1bを備える。渦抑止システムS3は、浮遊体1bを移動させる移動手段として、浮遊体1bに接続されており且つ港湾のガントリークレーンを模したガントリークレーン構造体を備える。ここで、ガントリークレーン構造体は、吸込水槽TKの上を横断するガーダーGDと、ガーダーGD上を矢印A9の方向に移動可能なトロリTRと、トロリTRと浮遊体1bとを連結する連結部材VNとを備える。
【0059】
この構成により、トロリTRが、ガーダーGD上を矢印A9の方向に移動し、これに伴って矢印A10の方向に浮遊体1bを移動させることができる。
【0060】
また、ガーダーGDはレールRL1の側に車輪(不図示)を有し、ポンプ床F1に設置されたレールRL1上を矢印A7の方向に移動することが可能である。ガーダーGDはレールRL2の側に車輪(不図示)を有し、ポンプ床Fに設置されたレールRL2上を矢印A8の方向に移動することが可能である。
【0061】
(第4の実施形態)
続いて、第4の実施形態について説明する。図7は、第4の実施形態に係る渦抑止システムの概略構成を示す斜視図である。図7に示すように、渦抑止システムS4は、水に浮かぶ浮遊体1bを備える。渦抑止システムS4は、浮遊体1bを移動させる移動手段として、吸込水槽の周りにある一方のポンプ床を移動する移動部材MP3と、移動部材MP3に設けられたロボットアームAM1であって当該ロボットアームAM1の端部が浮遊体1bに連結されたロボットアームAM1と、を備える。これにより、ロボットアームAM1を動かすことにより、浮遊体1bを移動させることができる。
【0062】
本実施形態では、移動部材MP3は一例として移動車であり、ポンプ床Fに設置されたレールRL1上を矢印A11の方向に移動することが可能である。これにより、移動部材MP3を移動させることにより、それに伴ってロボットアームAM1が動き、その結果、浮遊体1bを移動させることができる。
【0063】
(第5の実施形態)
続いて、第5の実施形態について説明する。図8は、第5の実施形態に係る渦抑止システムの概略構成を示す斜視図である。図8に示すように、渦抑止システムS5は、ポンプの揚水管PTの外周に設置されたレールR1を備える。また、渦抑止システムS5は、水に浮かぶ浮遊体1bと、浮遊体1bを移動させる移動手段としてのロボットアームAM2を備える。ロボットアームAM2は、一端が浮遊体1bに連結され且つ他端がレールR1に沿って移動可能に当該レールR1に接続されている。ロボットアームAM2は、一つの関節を有している。
【0064】
この構成により、ロボットアームAM2が矢印A12に示すように、ポンプの揚水管PTの外側を周回することができる。また、ロボットアームAM2の関節を延ばしたり縮めたりすることができる。これにより、浮遊体1bを任意の位置に移動させることができる。
【0065】
また、渦抑止システムS5は、水に浮かぶ浮遊体1cと、浮遊体1cを移動させる移動手段としてのロボットアームAM3を備える。ロボットアームAM3は、一端が浮遊体1cに連結され且つ他端がレールR1にそって移動可能に当該レールR1に接続されている。ロボットアームAM3は、一つの関節を有している。
【0066】
この構成により、ロボットアームAM3が矢印A13に示すように、ポンプの揚水管PTの外側を周回することができる。また、ロボットアームAM3の関節を延ばしたり縮めたりすることができる。これにより、ロボットアームAM3を動かすことに加えて、ロボットアームAM3がポンプの揚水管PTの外側を周回できるので、浮遊体1cを任意の位置に移動させることができる。
【0067】
(第6の実施形態)
続いて、第6の実施形態について説明する。図9は、第6の実施形態に係る渦抑止システムの概略構成を示す斜視図である。図9に示すように、渦抑止システムS6は、連結部材CNと、浮遊体1bに連結部材CNを介して接続されワイヤーW11と、ポンプ床Fに設置され且つワイヤーW11を牽引可能な牽引機構TW1とを備える。
【0068】
更に、渦抑止システムS6は、浮遊体1bに連結部材CNを介して接続されたワイヤーW12と、ポンプ床Fに設置され且つワイヤーW12を牽引可能な牽引機構TW2とを備える。
【0069】
更に、渦抑止システムS6は、浮遊体1bに連結部材CNを介して接続されたワイヤーW13と、ポンプの揚水管PTの外側に固定され且つワイヤーW13を牽引可能な牽引機構TW3とを備える。
【0070】
連結部材CNは、3本のワイヤーW11、W12、W13の結節点と、水面に浮かんだ浮遊体1bとの間の高さを調節する。このように、三つの牽引機構TW1、TW2、TW3がワイヤーW11、W12、W13に張力を与え、且つ浮遊体1bまでの長さをそれぞれ調節することにより、浮遊体1bを破線で囲まれた三角形の領域R11内の任意の位置に移動させることができる。
【0071】
なお、牽引機構TW3は、ポンプの揚水管PTの外側に固定されているものとして、説明したが、これに限らず、ポンプ床Fに設置されていてもよい。
【0072】
なお、本実施形態では、ワイヤー及び牽引機構がそれぞれ三つあるとして説明したが、これに限ったものではない。図10を用いて、ワイヤー及び牽引機構がそれぞれ四つある場合について説明する。図10は、第6の実施形態の変形例に係る渦抑止システムの概略構成を示す平面図である。図10に示すように、変形例に係る渦抑止システムS6bは、ワイヤー及び牽引機構を四つ備える。各牽引機構TW1~TW4は、吸込水槽の脇のポンプ床Fに設置され、対応するワイヤーW11~W14を牽引可能である。
【0073】
この構成により、四つの牽引機構TW1~TW4がワイヤーW11~W14に張力を与え、且つ浮遊体1bまでの長さをそれぞれ調節することにより、浮遊体1bを破線で囲まれた四角形の領域R12内の任意の位置に移動させることができる。
【0074】
なお、ワイヤー及び牽引機構の数は、二つでもよいし、五つ以上であってもよい。すなわち、浮遊体1bが接続されているワイヤーは複数あり、ワイヤーを牽引可能な牽引機構は複数あり、牽引機構それぞれは、対応するワイヤーを巻き上げ可能であってもよい。
この構成により、複数の牽引機構が対応するワイヤーに張力を与え、且つ浮遊体1bまでの長さをそれぞれ調節することにより、牽引機構の位置を頂点とする線分または多角形内の任意の位置に浮遊体1bを移動させることができる。
【0075】
このとき、牽引機構のうち少なくとも一つは、吸込水槽の周りのポンプ床に設置されていてもよい。そして、連結部材CNは、一端が浮遊体1bに連結されており且つ他端が複数のワイヤーの結節点に接続されていてもよい。この構成により、連結部材CNは結節点から浮遊体1bまでの高さを調節することができる。
【0076】
また、牽引機構のうち少なくとも一つは、吸込水槽の周りのポンプ床に設置されており、牽引機構のうち少なくとも一つは、ポンプの揚水管PTの外側に固定されていてもよい。この構成により、図9に示すように、局所的な領域内の任意の位置に浮遊体1bを移動させることができる。
【0077】
(第7の実施形態)
続いて、第7の実施形態について説明する。図11は、第7の実施形態に係る渦抑止システムの概略構成を示す平面図である。第7の実施形態に係る渦抑止システムS7は、第6の実施形態に係る渦抑止システムS6に比べて、更に、浮遊体1cが追加され、この浮遊体1cを移動させる移動手段として、ワイヤーW14、W15、W16と、対応する牽引機構TW4、TW5、TW6が追加された構成になっている。
【0078】
ワイヤーW14は、浮遊体1cに連結部材(不図示)を介して接続されている。牽引機構TW4は、ポンプ床Fに設置され且つワイヤーW14を牽引可能である。
またワイヤーW15は、浮遊体1cに連結部材(不図示)を介して接続されている。牽引機構TW5は、ポンプ床Fに設置され且つワイヤーW15を牽引可能である。
またワイヤーW16は、浮遊体1cに連結部材(不図示)を介して接続されている。牽引機構TW6は、ポンプの揚水管PTの外側に固定され且つワイヤーW16を牽引可能である。
【0079】
この構成により、三つの牽引機構TW4~TW6がワイヤーW14~W16に張力を与え、且つ浮遊体1cまでの長さをそれぞれ調節することにより、浮遊体1cを破線で囲まれた三角形の領域R14内の任意の位置に移動させることができる。
また第6の実施形態と同様に、三つの牽引機構TW1~TW3がワイヤーW11~W13に張力を与え、且つ浮遊体1bまでの長さをそれぞれ調節することにより、浮遊体1bを破線で囲まれた三角形の領域R13内の任意の位置に移動させることができる。
【0080】
(第8の実施形態)
続いて、第8の実施形態について説明する。図12は、第8の実施形態に係る渦抑止システムの概略構成を示す平面図である。図12に示すように、渦抑止システムS8は、浮遊体1b、1cを備え、移動手段として以下の構成を有する。すなわち、渦抑止システムS8は、一点が浮遊体1bに連結部材(図示せず)を介して接続されたワイヤーW21と、ポンプの揚水管PTの外周に沿って固定された第1のレールR2とを備える。ここでポンプの揚水管PTは、吸込水槽TKに設けられている。
更に渦抑止システムS8は、第1のレールR2に沿って周回可能であり且つワイヤーW21を通す第1の滑車BK1と、吸込水槽TKの周りのポンプ床Fに設置され且つポンプの揚水管PTを中心とする略円環上に設けられている第2のレールRL3とを備える。
【0081】
更に渦抑止システムS8は、第2のレールRL3上を移動する移動車MP4を備える。ここで、本実施形態に係る移動車MP4は一例として、第2のレールRL3上を移動する動力を有しており、例えば、動力付きのトロッコである。更に渦抑止システムS8は、移動車MP4に設けられ且つワイヤーW21を通す第2の滑車BK2を備える。
【0082】
この構成より、第2の滑車BK2を回転させることにより、ワイヤーW21が回動するので、これに伴いワイヤーW21に一点で固定されている浮遊体1bが移動する。また、移動車MP4が第2のレールRL3を移動するのに伴って、ワイヤーW21が移動するので、これに伴いワイヤーW21に一点で固定されている浮遊体1bが移動する。
【0083】
ここで、第2の滑車BK2は、ワイヤーW21を巻き上げる動力を有する動力付滑車である。この構成により、自動でワイヤーW21を巻き上げることにより、自動で浮遊体1bを移動させることができる。
【0084】
同様にして、渦抑止システムS8は、一点が浮遊体1cに連結部材(図示せず)を介して接続されたワイヤーW22を備える。
更に渦抑止システムS8は、第1のレールR2に沿って周回可能であり且つワイヤーW22を通す第1の滑車BK3を備える。
【0085】
更に渦抑止システムS8は、第2のレールRL3上を移動する移動車MP5を備える。ここで、本実施形態に係る移動車MP5は一例として、第2のレールRL3上を移動する動力を有しており、例えば、動力付きのトロッコである。更に渦抑止システムS8は、移動車MP5に設けられ且つワイヤーW22を通す第2の滑車BK4を備える。
【0086】
この構成より、第2の滑車BK4を回転させることにより、ワイヤーW22が回動するので、これに伴いワイヤーW22に一点で固定されている浮遊体1cが移動する。また、移動車MP5が第2のレールRL3を移動するのに伴って、ワイヤーW22が移動するので、これに伴いワイヤーW22に一点で固定されている浮遊体1cが移動する。
【0087】
ここで、第2の滑車BK4は、ワイヤーW22を巻き上げる動力を有する動力付滑車である。この構成により、自動でワイヤーW22を巻き上げることができ、自動で浮遊体1cを移動させることができる。
【0088】
(第9の実施形態)
続いて、第9の実施形態について説明する。図13は、第9の実施形態に係る渦抑止システムの概略構成を示す平面図である。図13に示すように、渦抑止システムS9は、浮遊体1bを備え、移動手段として以下の構成を有する。すなわち、渦抑止システムS9は、ポンプの揚水管PTの外周に沿って固定された第1のレールR2と、第1のレールR2に沿って周回可能であり且つワイヤーを通す滑車BK5とを備える。ここでポンプの揚水管PTは、吸込水槽TKに設けられている。
【0089】
更に渦抑止システムS9は、吸込水槽TKの周りのポンプ床Fに設置された第2のレールRL4を備える。
更に渦抑止システムS9は、吸込水槽TKの周りのポンプ床を移動する移動部材MP6を備える。本実施形態では、移動部材MP6は一例として第2のレールRL4上を移動する移動車である。
【0090】
更に渦抑止システムS9は、牽引機構として、第1の牽引機構T1と第2の牽引機構T2を有する。第1の牽引機構T1は、移動部材MP6に設けられ且つワイヤーW31の一端を巻き上げる動力を有する。第2の牽引機構T2は、移動部材MP6に設けられ且つワイヤーW31の他端を巻き上げる動力を有する。第1の牽引機構T1及び第2の牽引機構T2によって、ワイヤーW31にはテンションが掛けられている。
【0091】
この構成により、第1の牽引機構T1がワイヤーW31の一端を巻き上げることにより、ワイヤーW31の一点に接続されている浮遊体1bを矢印A18の方向に移動させることができる。一方、第2の牽引機構T2がワイヤーW32の一端を巻き上げることにより、ワイヤーW31の一点に接続されている浮遊体1bを矢印A19の方向に移動させることができる。また、移動部材MP6が第2のレールRL4を移動するのに引っ張られて、滑車BK5が第1のレールR2上を回動するので、ワイヤーW31が矢印A20の方向に移動する。これに伴いワイヤーW21に一点で固定されている浮遊体1bも移動する。
【0092】
なお、各実施形態において、ガントリークレーン構造体またはロボットアームを、吸込水槽の周辺のポンプ床または揚水管に設置したが、これに限らず、吸込水槽の底部または側面に設置してもよい。
また、各実施形態において、牽引機構またはロボットアームを補助する動力付機構を、補助的に浮遊体に付設してもよい。
【0093】
また、各実施形態において、浮遊体の動力は電池駆動でも、有線による電力供給のいずれでもよい。電池駆動の場合、ポンプ停止時、あるいはポンプが運転していても空気吸込渦が発生しない時間帯に吸込水槽付設の充電装置から充電するのが望ましい。屋外の場合は充電に太陽電池を用いてもよい。太陽電池は、吸込水槽施設近傍及び/または浮遊体の上面に設置しても良い。
【0094】
音検知部12、撮像装置CD、及びコントローラ15、15bは、浮遊体に搭載しても良いし、吸込水槽施設の陸上(例えば、ポンプ床)または水中に設置してもよい。
【0095】
各実施形態において、音あるいは画像により空気吸込渦の発生を検出したが、これに限らず、音声及び画像の両方により空気吸込渦の発生を検出してもよい。
【0096】
以上、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1、1b、1c 浮遊体
11 浮力部材
12 音検知部
13 移動手段
14 記憶部
15、15b コントローラ
AM1、AM2、AM3 ロボットアーム
B1 第1の滑車
B2 第2の滑車
BK1 第1の滑車
BK2 第2の滑車
BK3 第1の滑車
BK4 第2の滑車
BK5 滑車
CD 撮像装置
CN 連結部材
F ポンプ床
GD ガーダー
M モータ
MP1 第1の移動部材
MP2 第2の移動部材
MP3 移動部材
MP4 移動車
MP5 移動車
MP6 移動部材
PR1、PR2 プーリー
PT 揚水管
R1 レール
R2 第1のレール
RL、RL2 レール
RL3、RL4 第2のレール
S2、S3、S4、S5、S6、S6b、S7、S8、S9 渦抑止システム
T1 第1の牽引機構
T2 第2の牽引機構
TK 吸込水槽
TW1、TW2、TW3、TW4、TW5、TW6 牽引機構
VN 連結部材
VT 空気吸込渦
W、W11~W16,W2、W21、W22、W31、W32 ワイヤー
WT 水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13