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特許7012484汚泥評価システム及び汚泥評価指標取得システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】汚泥評価システム及び汚泥評価指標取得システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20220121BHJP
   G01N 15/04 20060101ALI20220121BHJP
   G01N 33/18 20060101ALI20220121BHJP
   C02F 3/12 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
G01N21/27 A
G01N15/04 B
G01N33/18 A
C02F3/12 P
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2017156032
(22)【出願日】2017-08-10
(65)【公開番号】P2019035623
(43)【公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】598073604
【氏名又は名称】築野ライスファインケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】副島 孝一
(72)【発明者】
【氏名】徳本 大
(72)【発明者】
【氏名】栗山 寛子
(72)【発明者】
【氏名】山上 伸一
(72)【発明者】
【氏名】入戸野 太郎
(72)【発明者】
【氏名】築野 富美
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-202101(JP,A)
【文献】特開2011-203118(JP,A)
【文献】特開2003-080236(JP,A)
【文献】特開平08-309399(JP,A)
【文献】特開平03-081645(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0103504(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を評価するための指標を取得する汚泥評価指標取得システムであって、
鉛直方向に長尺で前記汚泥を収容するための容器と、
前記容器内の前記汚泥を撮像するための撮像装置と、
前記容器を挟んで前記撮像装置とは反対側に配置された第1照明装置と、
前記容器に対して前記第1照明装置とは反対側に配置された第2照明装置と、
少なくとも前記第2照明装置をONにした状態で第1時点において前記撮像装置により取得した第1画像、および、前記第1照明装置をONにして前記第2照明装置をOFFにした状態で前記第1時点から汚泥沈降時間Δt経過後の第2時点において前記撮像装置で取得した第2画像を取得するように前記第1照明装置、前記第2照明装置および前記撮像装置を制御するコントローラと、
を備える汚泥評価指標取得システム。
【請求項2】
請求項1に記載の汚泥評価指標取得システムと、
前記第1画像又は前記第2画像に基づいて前記汚泥の性状を評価するための評価部と、
を備えたことを特徴とする汚泥評価システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記第1画像に二値化処理を施して二値データを生成するための画像処理部を含み、
前記評価部は、汚泥評価に関する汚泥評価情報と前記二値データとに基づき前記汚泥の性状を少なくとも2段階に評価するように構成される
ことを特徴とする請求項2に記載の汚泥評価システム。
【請求項4】
前記評価部は、前記第2画像に基づき前記汚泥中における沈殿層と上水層との界面位置を判別して得られた検量結果に基づいて前記汚泥の性状を評価する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の汚泥評価システム。
【請求項5】
前記容器の容積が1L以上である
ことを特徴とする請求項2乃至4の何れか一項に記載の汚泥評価システム。
【請求項6】
前記評価部は、前記第1画像におけるフロックの占有率と、予め統計的に得られた既知の前記第2時点における沈殿層の比率とを比較することにより前記汚泥の性状を評価するように構成される
ことを特徴とする請求項2乃至5の何れか一項に記載の汚泥評価システム。
【請求項7】
汚泥槽と前記容器の一端とに連結された第1流路と、
前記第1流路に配置され前記第1流路を開閉可能に構成された第1バルブと、
前記容器の他端に連結された第2流路と、
前記第2流路に配置され前記第2流路を開閉可能に構成された第2バルブと、をさらに備えることを特徴とする請求項2乃至6の何れか一項に記載の汚泥評価システム。
【請求項8】
前記コントローラは、
前記第2バルブを閉、前記第1バルブを開として前記容器内に前記汚泥を流入させた後に前記第1バルブを閉じ、
前記第1時点で前記第2照明装置をONにして前記第1画像を取得し、
前記第2時点で前記第1照明装置のみONにして前記第2画像を取得し、
前記第1時点で前記第1照明装置のみONにして前記容器内の前記汚泥の第3画像を取得し、
前記第2時点で前記第2照明装置をONにして前記容器内の前記汚泥の第4画像を取得する、ように構成される
ことを特徴とする請求項7に記載の汚泥評価システム。
【請求項9】
一端が前記第1流路における前記第1バルブと前記容器との間に連結され、他端が給水部に連結された第3流路と、
前記第3流路に配置され前記第3流路を開閉可能に構成された第3バルブと、
を備えたことを特徴とする請求項8に記載の汚泥評価システム。
【請求項10】
前記評価部による前記評価結果を報知する報知部をさらに備える
ことを特徴とする請求項2乃至9の何れか一項に記載の汚泥評価システム。
【請求項11】
前記二値化処理又は前記汚泥評価に関する各種パラメータ値を入力可能な入力部をさらに備える
ことを特徴とする請求項3乃至10の何れか一項に記載の汚泥評価システム。
【請求項12】
前記汚泥の性状は、前記汚泥の沈降性、色又は酸素含有量の少なくとも一つを含む
ことを特徴とする請求項2乃至11の何れか一項に記載の汚泥評価システム。
【請求項13】
汚泥を評価するための指標を取得する汚泥評価指標取得方法であって、
鉛直方向に長尺で前記汚泥を収容するための容器と、
前記容器内の前記汚泥を撮像するための撮像装置と、
前記容器を挟んで前記撮像装置とは反対側に配置された第1照明装置と、
前記容器に対して前記第1照明装置とは反対側に配置された第2照明装置と、
前記第1照明装置、前記第2照明装置および前記撮像装置を制御するコントローラと、に基づき、
少なくとも前記第2照明装置をONにした状態で第1時点において前記撮像装置により第1画像を取得し、前記第1時点から汚泥沈降時間Δt経過後の第2時点において前記第1照明装置をONにして前記第2照明装置をOFFにした状態で前記撮像装置により第2画像を取得する
ことを特徴とする汚泥評価指標取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は汚泥評価システム及び汚泥評価指標取得システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水処理槽(曝気槽、沈殿槽など)から採取した汚泥水を撮像して得た画像から該汚泥水の状態を評価する汚泥状態評価装置が知られている。
例えば、特許文献1に記載の評価装置は、評価流路に通した汚泥を顕微鏡で位相差観察することにより、汚泥の性状を自動評価するように構成される。
また、特許文献2では、汚泥の検体中に生じるフロックを破砕したり、微細フロックを凝縮させたりすることでフロックの凝集性を求めるように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/0301381A1号公報
【文献】特開平7-128216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に開示される汚泥評価装置では、汚泥を細管に通して観察するため、実際の汚泥色や沈降性を完全に再現しているとはいえない虞がある。また、特許文献2では汚泥の凝集フロックを、該フロックの破砕や振動を加えることで形成しているため、実際のフロックとは異なる状態のフロックが生じる虞があるという問題があった。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、実状に則した汚泥の性状を評価するための指標を自動的に取得可能な構成を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る汚泥評価指標取得システムは、
汚泥を評価するための指標を取得する汚泥評価指標取得システムであって、
鉛直方向に長尺で前記汚泥を収容するための容器と、
前記容器内の前記汚泥を撮像するための撮像装置と、
前記容器を挟んで前記撮像装置とは反対側に配置された第1照明装置と、
前記容器に対して前記第1照明装置とは反対側に配置された第2照明装置と、
少なくとも前記第2照明装置をONにした状態で第1時点において前記撮像装置により取得した第1画像、および、前記第1照明装置をONにして前記第2照明装置をOFFにした状態で前記第1時点から汚泥沈降時間Δt経過後の第2時点において前記撮像装置で取得した第2画像を取得するように前記第1照明装置、前記第2照明装置および前記撮像装置を制御するコントローラと、を備える。
【0007】
容器内の汚泥は、時間の経過とともに容器内の下側に形成される沈殿層と、容器内の上側に形成される上水層とに分離され、これらの層間の界面位置の高さによってその性状の少なくとも一つが評価され得る。
この点、上記(1)の構成によれば、容器が鉛直方向に長尺な縦長な形状に構成されるため、上下方向に分離される沈殿層と上水層との界面位置が視覚的に判別し易い状態で現れる。また、コントローラが、第1照明装置、第2照明装置および撮像装置の動作を切り替えて制御することで、第1時点における第1画像及び第2時点における第2画像を自動的に取得することができる。これにより、撮像装置による撮像で得られた第1画像又は第2画像の画像データに基づき、汚泥の性状を評価するための指標を自動的に取得可能な構成を得ることができる。
【0008】
(2)本発明の少なくとも一実施形態に係る汚泥評価システムは、
上記(1)に記載の汚泥評価指標取得システムと、
前記第1画像又は前記第2画像に基づいて前記汚泥の性状を評価するための評価部と、
を備える。
【0009】
上記(2)の構成によれば、容器内への汚泥の流入後の第1時点で撮像された第1画像、及び、第1時点から汚泥沈降時間Δt経過後の第2時点で撮像された第2画像に基づいて評価部が汚泥の性状を評価することができる。これにより、容器内に収容された実際の汚泥の状況に基づき、例えば、汚泥評価の都度、作業員が現場で汚泥を直接評価する労力を低減することができるとともに、属人的な評価結果のばらつきを抑制して評価結果の標準化を図ることができる。また、第1画像に基づいて評価部が汚泥を評価する場合、容器内に汚泥を流入させた後、汚泥沈降時間Δt経過前の第1時点で汚泥の性状を評価できるので、汚泥の流入から汚泥沈降時間Δt経過後でなければ評価し得なかった従来の汚泥評価システムに比べて汚泥評価に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0010】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記コントローラは、前記第1画像に二値化処理を施して二値データを生成するための画像処理部を含み、
前記評価部は、汚泥評価に関する汚泥評価情報と前記二値データとに基づき前記汚泥の性状を少なくとも2段階に評価するように構成される。
【0011】
上記(3)の構成によれば、画像処理部が第1画像の二値データを生成し、生成された二値データと汚泥評価情報とに基づき評価部が汚泥の性状を2段階以上に評価することができる。よって、実務上、有意な評価結果を取得可能な汚泥評価システムを得ることができる。
ここで、「汚泥評価情報」は、例えば、汚泥の良否を判断する際の基準とされる各種パラメータ(例えば、色味、二値データにおける一方の値の占有率又は沈降性等)や、該パラメータの値に対応した汚泥の段階的な良否判定に関する閾値情報等を含んでいてもよい。
【0012】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)の構成において、
前記評価部は、前記第2画像に基づき前記汚泥中における沈殿層と上水層との界面位置を判別して得られた検量結果に基づいて前記汚泥の性状を評価するように構成される。
【0013】
上記(4)の構成によれば、評価部が、第2画像に基づき、汚泥中における沈殿層と上水層との界面位置を判別することができる。従って、撮像装置で取得した画像データに基づき汚泥の性状(例えば、沈降性)を評価することができる。
【0014】
(5)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(4)の何れか一つの構成において、
前記容器の容積が1L以上である。
【0015】
上記(5)の構成によれば、汚泥状態がより実状に則した状態で汚泥の性状を評価することができる。従って、汚泥のサンプルを、例えば、皿状の容器や1L未満の試験管等に採取して評価する場合に比べて、フロックの形成具合や沈降性等をより正確に評価することができる。
【0016】
(6)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(5)の何れか一つの構成において、
前記評価部は、前記第1画像におけるフロックの占有率と、予め統計的に得られた既知の前記第2時点における沈殿層の比率とを比較することにより前記汚泥の性状を評価するように構成される。
【0017】
上記(6)の構成によれば、評価部による評価結果を一定の質に維持することができる。これにより、例えば、作業員の経験や勘に基づく従来の評価結果と比較して、異なる担当者による評価結果のばらつきを低減して、より一層高精度に評価結果の標準化を図ることができる。
【0018】
(7)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(6)の何れか一つの構成において、
汚泥槽と前記容器の一端とに連結された第1流路と、
前記第1流路に配置され前記第1流路を開閉可能に構成された第1バルブと、
前記容器の他端に連結された第2流路と、
前記第2流路に配置され前記第2流路を開閉可能に構成された第2バルブと、をさらに備える。
【0019】
上記(7)の構成によれば、第1バルブを開閉することで汚泥槽から第1流路を通って容器内に汚泥を流入させることができる。また、第2バルブを開閉することで、容器内から汚泥を排出することができる。従って、汚泥を評価するタイミングで第1バルブ及び/又は第2バルブを開閉することにより、評価対象とする汚泥を実状に則した状態で容器内に流入させたり、容器内から汚泥を排出したりすることができる。よって、汚泥評価の精度の向上が図られる。
【0020】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)の構成において、
前記コントローラは、
前記第2バルブを閉、前記第1バルブを開として前記容器内に前記汚泥を流入させた後に前記第1バルブを閉じ、
前記第1時点で前記第2照明装置をONにして前記第1画像を取得し、
前記第2時点で前記第1照明装置のみONにして前記第2画像を取得し、
前記第1時点で前記第1照明装置のみONにして前記容器内の前記汚泥の第3画像を取得し、
前記第2時点で前記第2照明装置をONにして前記容器内の前記汚泥の第4画像を取得する、ように構成される。
【0021】
上記(8)の構成によれば、第1時点における第1画像及び第3画像と、第2時点における第2画像及び第4画像とを自動的に取得することができる。そして、これらの画像の少なくとも一つに基づき、評価部が汚泥の性状を評価することができる。さらに、汚泥流入後の各時点における画像のサンプルを収集してデータを蓄積することにより、評価精度の向上が可能となる。
【0022】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)の構成において、
一端が前記第1流路における前記第1バルブと前記容器との間に連結され、他端が給水部に連結された第3流路と、
前記第3流路に配置され前記第3流路を開閉可能に構成された第3バルブと、
を備える。
【0023】
上記(9)の構成によれば、撮像装置により取得した画像に基づく汚泥の評価後に、給水部から第3流路を通って供給される水を用いて容器内を洗浄することができる。これにより、次回の汚泥評価の際には容器内に今回の汚泥が残留しないから、異なる時点の汚泥の混入を抑制して汚泥評価の精度を向上させることができる。また、容器の洗浄により汚泥評価システムの耐久性の向上を図ることができる。
【0024】
(10)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(9)の何れか一つの構成において、
前記評価部による前記評価結果を報知する報知部をさらに備える。
【0025】
上記(10)の構成によれば、評価部による汚泥の評価結果を報知部により報知することができる。従って、汚泥の評価結果に基づいた適切な対応を作業者に促すことができる。
【0026】
(11)幾つかの実施形態では、上記(3)乃至(10)の何れか一つの構成において、
前記二値化処理又は前記汚泥評価に関する各種パラメータ値を入力可能な入力部をさらに備える。
【0027】
上記(11)の構成によれば、評価部による評価の感度又は精度を任意に設定することができる。これにより、評価対象とする汚泥の状態や気候等の周辺環境に応じて、汚泥を適切に評価できる汚泥評価システムを得ることができる。
【0028】
(12)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(11)の何れか一つの構成において、
前記汚泥の性状は、前記汚泥の沈降性、色又は酸素含有量の少なくとも一つを含む。
【0029】
上記(12)の構成によれば、泥の沈降性、色又は酸素含有量の少なくとも一つを評価可能な汚泥評価システムを得ることができる。
【0030】
(13)本発明の少なくとも一実施形態に係る汚泥評価指標取得方法は、
汚泥を評価するための指標を取得する汚泥評価指標取得方法であって、
鉛直方向に長尺で前記汚泥を収容するための容器と、
前記容器内の前記汚泥を撮像するための撮像装置と、
前記容器を挟んで前記撮像装置とは反対側に配置された第1照明装置と、
前記容器に対して前記第1照明装置とは反対側に配置された第2照明装置と、
前記第1照明装置、前記第2照明装置および前記撮像装置を制御するコントローラと、に基づき、
少なくとも前記第2照明装置をONにした状態で第1時点において前記撮像装置により第1画像を取得し、前記第1時点から汚泥沈降時間Δt経過後の第2時点において前記第1照明装置をONにして前記第2照明装置をOFFにした状態で前記撮像装置により第2画像を取得する。
【0031】
上記(13)の方法によれば、上下方向に分離される沈殿層と上水層との界面位置が視覚的に判別し易い状態で現れる。また、コントローラが、第1照明装置、第2照明装置および撮像装置の動作を切り替えて制御することにより、第1時点における第1画像及び第2時点における第2画像を自動的に取得することができる。これにより、撮像装置による撮像で得られた第1画像又は第2画像の画像データに基づき、汚泥の性状を評価するための指標を自動的に取得することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、実状に則した汚泥の性状を評価するための指標を自動的に取得可能な構成を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】一実施形態に係る汚泥評価システムの構成を概略的に示す図である。
図2】一実施形態における汚泥評価システムにおいて取得される画像を示す図であり、(a)は第3画像、(b)は第1画像、(c)は第2画像、(d)は第4画像を示す。
図3】一実施形態における制御系の構成を示すブロック図である。
図4】一実施形態における第1画像を二値化処理する過程を示す概略図である。
図5図4のグレースケール画像と二値化画像との対応イメージを沈降性別に示す図である。
図6】一実施形態における第1画像中のフロック占有率と、既知の汚泥評価情報との対応を示すグラフである。
図7】一実施形態における汚泥評価指標取得工程を示すフローチャートである。
図8】一実施形態における汚泥評価工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態に係る汚泥評価指標取得システム1の構成を概略的に示す図である。図1に示したように、本発明の少なくとも一実施形態に係る汚泥評価指標取得システム1は、汚泥を評価するための指標を取得する汚泥評価指標取得システムであって、鉛直方向に長尺で汚泥を収容するための容器11と、容器11内の汚泥を撮像するための撮像装置12と、容器11を挟んで撮像装置12とは反対側に配置された第1照明装置13と、容器11に対して第1照明装置13とは反対側に配置された第2照明装置14と、少なくとも第2照明装置14をONにした状態で第1時点において撮像装置12により取得した第3画像43、および、第1照明装置13をONにして第2照明装置14をOFFにした状態で第1時点から汚泥沈降時間Δt経過後の第2時点において撮像装置12で取得した第2画像42を取得するように第1照明装置13、第2照明装置14および撮像装置12を制御するコントローラ30と、を備えている。
【0036】
容器11は、透明部材で形成された筒状体であり、内部に流入した汚泥を外側から観察できるようになっている。幾つかの実施形態では、円筒状の透明配管の一部を容器11として用いてもよい。
【0037】
撮像装置12は、例えば、レンズ12Aを通して入射した容器11からの入射光をCCD(charge-coupled device)又はCMOS(complementary metal oxide semiconductor)等のイメージセンサでデジタル画像に変換し、変換された画像データをコントローラ30に送信するように構成され得る。幾つかの実施形態において、撮像装置12は、カラー画像を取得可能に構成されていてもよい。
【0038】
第1照明装置13(バックライト)は、撮像装置12からみて容器11の背面側を照射し得るように配置される。幾つかの実施形態において、第1照明装置13は、容器11の形状に応じて該容器11と同様に鉛直方向に長尺に形成されていてもよい。また、幾つかの実施形態において、第1照明装置13は、撮像装置12から見て容器11の背面側に隠れ、該第1照明装置13から照射された光が直接的に撮像装置12に入射しないように配置されていてもよい。第1照明装置13としては、例えばLED(light emitting diode)を採用してもよい。
【0039】
第2照明装置14(正面ライト)は、撮像装置12の上方、下方、又は側方に配置されていてもよい。幾つかの実施形態において、汚泥評価指標取得システム1は、複数の第2照明装置14を備えていてもよい。例えば、撮像装置12に対して対称に、上方と下方、又は、右側と左側、等にそれぞれ配置された2つ又はそれ以上の第2照明装置14が配設されていてもよい。第2照明装置14としては、例えばLED(light emitting diode)を採用してもよい。
【0040】
上記の第1照明装置13、第2照明装置14それぞれのON/OFFを切り替えることにより、汚泥評価指標取得システム1は、例えば、撮像装置12から見て、容器11の背面側のみ照射した状態(第1照明装置13をON、第2照明装置14をOFFとした場合。例えば、図2(a)及び図2(c)参照)、容器11の正面側のみ照射した状態(第1照明装置13をOFF、第2照明装置13をONとした場合。例えば、図2(b)及び図2(d)参照)、或いは、容器11の背面側と正面側とを何れも照射した状態(第1照明装置13をON、第2照明装置14をONとした場合。図示略)をそれぞれ所望に切り替えることができるようになっている。
【0041】
例えば、図2(a)は、容器11に汚泥を流入させた後の第1時点において撮像装置12で撮像した第3画像43(後述)を示す。この第3画像43は、第1照明装置13のみをON(第2照明装置14をOFF)として撮像したものであり、流入後の汚泥が懸濁状態のままであるため、第1照明装置13から照射された光は透明な容器11を透過せず、容器11が暗く撮像される。
上記の第1時点は、例えば、容器11への汚泥の流入直後であってもよい。なお、本明細書において、汚泥の流入直後とは、汚泥中に形成されるフロックに関して、容器11への汚泥の流入後にフロックの沈降による影響を無視できる程度の経過時間の範囲内(例えば、1分以内等)をいうものとする。
【0042】
図2(b)は、容器11に汚泥を流入させた後の第1時点において撮像装置12で撮像した第1画像41を示す。この第1画像41は、第2照明装置14のみをON(第1照明装置13をOFF)として撮像したものであり、流入後の懸濁状態のままの汚泥がカラー画像で撮像される。
【0043】
図2(c)は、第1時点から汚泥沈降時間Δt経過後の第2時点において撮像装置12で撮像した第2画像42を示す。この第2画像42は、第1照明装置13のみをON(第2照明装置14をOFF)として撮像したものであり、沈降した汚泥で形成された沈殿層51と、上水層52と、これらの境界である界面位置53とが撮像される。
上記汚泥沈降時間Δtは、例えば、第1時点から30分としてもよい。
【0044】
そして、図2(d)は、第2時点において撮像装置12で撮像した第4画像44を示す。この第4画像44は、第2照明装置14のみをON(第1照明装置13をOFF)として撮像したものであり、沈殿層51、上水層52及び界面位置53がカラー画像で撮像される。第4画像44は、汚泥(沈殿層51又は上水層52)の色味を鮮明に撮像し得る一方、第3画像43と比較して沈殿層51と上水層52とのコントラストは弱く撮像される。
【0045】
ここで、一実施形態におけるコントローラ30について詳しく説明する。
図3は、一実施形態における制御系の構成を示すブロック図である。
図3に非限定的に例示するように、コントローラ30は、例えば、コンピュータであり、各種処理を実行する演算部としてのCPU31、該CPU31が実行する各種プログラムの展開領域や演算領域等のワーク領域として機能するRAM(Random Access Memory)32、各プログラムやテーブル等のデータを記憶するための記憶部としてのROM(Read Only Memory)33の他、通信ネットワークに接続するための通信インターフェース34、及び外部記憶装置(例えば、大容量記憶装置としてのHD70等)が装着されるアクセス部(図示略)等を備えていてもよい。これらは全て、バス37を介して電気的に接続される。ROM33には、例えば、撮像装置12により取得した画像に基づき汚泥評価に用いる指標を取得するための汚泥評価指標取得プログラム38、汚泥を評価するための汚泥評価プログラム39、及び、その他の一般的な画像処理を行うための画像処理プログラム40等が格納されていてもよい。また、コントローラ30は、例えば、キーボードやマウス又はタッチパネル等からなる入力部35、及び、データを表示する液晶表示装置等からなる表示部36等を備えていてもよい。更に、コントローラ30には、上述した撮像装置12、第1照明装置13、第2照明装置14及び後述する第1バルブ18、第2バルブ19、第3バルブ20及び第4バルブ21が接続されていてもよい。
【0046】
図4は、一実施形態における第1画像を二値化処理する過程を示す概略図である。
図4に非限定的に例示するように、幾つかの実施形態では、第1画像41のうち、短時間の汚泥沈降の影響の少ない底部近傍から二値化用(解析用)の画像を抽出してトリミング画像60を取得してもよい。また、幾つかの実施形態では、抽出したトリミング画像60をグレースケール化してグレースケール画像61を取得してもよい。そして、グレースケール画像61に二値化処理を施して二値化画像62を取得してもよい。トリミング画像60から一旦グレースケール画像61を得るように構成すれば、後述するフロックの占有率(二値化画像62中に占める白色部分の割合)の検出精度が向上する。なお、占有率を大まかに把握したい場合等は、グレースケール化を省略してカラー画像(トリミング画像60)を直接的に二値化処理して二値化画像62を取得してもよい。二値化画像62では、第1画像41又はグレースケール画像61内の各画素を、画素値(例えば、明度、彩度等)が所定の閾値以上か該閾値未満かにより2色(例えば、白と黒)の何れかで描写する。
【0047】
ここで、汚泥性状と、汚泥の性状評価に用いられる指標とについて説明する。
汚泥(汚泥水)においては、フロックと呼ばれる浮遊汚泥の小塊が形成される。一般に、大きなフロックが形成される汚泥は沈降速度が速く(沈降性が高い)、汚泥性状は良質とされる。また、沈降汚泥の沈殿層51と、上澄みである上水層52との境界面(界面位置53)が明瞭に現れる汚泥は活性が高いとされる。経時によっても消えずに残存する泡は粘性を有し、該粘性は活性汚泥の微生物叢(糸状菌)が変化することで起こるとされる。そして、多量の泡は、汚泥処理システム(水処理システム)の過負荷、排水の高濃度化、或いは、酸素不足(曝気不足)をもたらし、透視度不良や臭気発生の原因となる。
上記のような汚泥の性状を評価する場合、汚泥流入から30分経過した時点でのSV30という指標が用いられる。具体的に、SV30は、容器11に汚泥を流入してから30分経過後における、汚泥の液面高さに対する沈殿層51と上水層52との界面位置53の高さの割合を示す。このSV30により、汚泥の性状(例えば、沈降性)を評価できるが、評価の都度、沈殿層51が形成されるまで待機しなければならないという問題がある。
そこで、本発明者らは、第1画像41に基づく二値化画像62に占める白色(白が汚泥、黒が液)の占有率(汚泥流入直後の二値化画像62に占める白色の占有率:SV0)と、SV30との相関を見出し、これを用いて汚泥流入直後(第1時点)における汚泥性状の評価を可能としたものである。
【0048】
図5は、図4のグレースケール画像61と二値化画像62との対応イメージを汚泥の沈降性の程度に応じてグループ分けして示す図である。図5に示すように、SV30を用いた汚泥評価では、SV30がそれぞれ、0~35%であれば汚泥性状が良好、36~70%で可、71~100%が不良、とされる。
図6は、一実施形態における第1画像41中のフロック占有率(縦軸:%)と、既知の汚泥評価情報(汚泥性状が良好(0~35%)、可(36~70%)、不良(71~100%)とされるSV30の値)との対応を示すグラフである。
図6から分かるように、第1時点で取得した第1画像41に基づく二値化画像62におけるフロック(白色)の占有率(縦軸)から、例えば、30分経過後のSV30がA,B,Cの何れのグループに属するかを推定することができる。各グループA,B及びCは、それぞれ既知の画像から数値情報を取り出して統計的に分散状態を判別することで、所謂箱ひげ図が作成されている。A~Cにおいて、各ボックスには中央値から上25%、下25%の計50%のデータが含まれる。本発明者らによれば、図6に示す全てのグループA,B及びCにおいて統計的に有意差(p<0.01)が確認されたものである。
【0049】
次に、図7を参照し、汚泥評価指標取得システム1によって第1画像41、第2画像42、第3画像43及び第4画像44を取得する処理について説明する。
図7は、一実施形態における汚泥評価指標取得工程を示すフローチャートである。
図7に非限定的に例示する処理は、例えば、CPU31がROM33から汚泥評価指標取得プログラム38を読み出して実行し、入力部35からの入力や、予め設定された時刻(或いは日時)になったことをトリガとしてコントローラ30から送信されるサンプリング指令に基づき開始される。
図7に示すように、処理が開始されると、コントローラ30により、第1バルブ18を開いて容器11内に汚泥を流入させる処理が実行される(ステップS1)。その際、幾つかの実施形態では、処理の開始後に、先ず容器11からの排水用の第2バルブ19とエア抜き用の第4バルブ21とを開にして所定時間(容器11内の排水に要する時間)経過した後、第2バルブ19を閉、汚泥流入用の第1バルブ18と上記第4バルブ21とを開として汚泥槽10内の汚泥を容器11内に流入させてもよい。また、この状態でコントローラ30は、所定時間(容器11内への汚泥の流入完了までに要する時間)経過した後、第1バルブ18、第2バルブ19及び第4バルブ21を閉として容器11内に汚泥を閉じ込めてもよい。
続いて、コントローラ30は、流入後の第1時点(流入直後)において、第1照明装置13をON,第2照明装置14をOFFとして(ステップS2)、撮像装置12により第3画像43を取得する(ステップS3)。続いて、コントローラ30は、第1時点において、第1照明装置13をOFF,第2照明装置14をONとして(ステップS4)、撮像装置12により第1画像41を取得する(ステップS5)。その後、コントローラ30は、30分待機(ステップS6)した後の第2時点において、第1照明装置13をON,第2照明装置14をOFF(ステップS7)として第2画像42を取得する(ステップS8)。続いて、コントローラ30は、第2時点において、第1照明装置13をOFF,第2照明装置14をON(ステップS9)として第4画像44を取得する(ステップS10)。その後、コントローラ30は、エア噛みが検出されたか否かの判断を行い(ステップS11)、検出された場合(ステップS11:Yes)は汚泥を排出(ステップS14)した後、再度ステップS1に移行する。一方、エア噛みを検出しない場合(ステップS11:No)は、汚泥を排出(S12)して容器11を洗浄し、次のサンプリングまで待機する(ステップS13)。なお、汚泥を排出する際、コントローラ30は、第2バルブ19及び第4バルブ21を開として所定時間(容器11内の排水に要する時間)経過した後、これらの第2バルブ19及び第4バルブ21を閉としてもよい。また、容器11からの汚泥の排水とともに容器11内を洗浄する場合、コントローラ30は、第2バルブ19、第4バルブ21及び洗浄水流入用の第3バルブ20を開として所定時間(容器11内の洗浄に要する時間)経過した後、これらの第2バルブ19、第3バルブ20及び第4バルブ21を閉としてもよい。さらに、コントローラ30は、容器11内の汚泥が排水された後に第2バルブ19を閉、第3バルブ20及び第4バルブ21を開として容器11内に洗浄水を貯留してもよく、必要に応じて(容器11内の汚れの程度に応じて)容器11内に洗浄水を貯留しては排水する工程を1回又は複数回繰り返すように構成されていてもよい。
【0050】
上述したように、容器11内の汚泥は、時間の経過とともに容器11内の下側に形成される沈殿層51と、容器11内の上側に形成される上水層52とに分離され、これらの層間の界面位置53の高さによってその性状の少なくとも一つが評価され得る。
この点、上記の構成によれば、容器11が鉛直方向に長尺な縦長な形状に構成されるため、上下方向に分離される沈殿層51と上水層52との界面位置53が視覚的に判別し易い状態で現れる。また、コントローラ30が、第1照明装置13、第2照明装置14および撮像装置12の動作を切り替えて制御することで、第1時点における第1画像41及び第2時点における第2画像42を自動的に取得することができる。これにより、撮像装置12による撮像で得られた第1画像41又は第2画像42の画像データに基づき、汚泥の性状を評価するための指標を自動的に取得可能な構成を得ることができる。
【0051】
本発明の少なくとも一実施形態に係る汚泥評価システム3は、上記の汚泥評価指標取得システム1と、第1画像41又は第2画像42に基づいて汚泥の性状を評価するための評価部39と、を備えていてもよい。
図8は、一実施形態における汚泥評価工程を示すフローチャートである。
図8に非限定的に例示するように、例えば、CPU31がROM33から汚泥評価プログラム39を読み出して実行することで汚泥評価処理が開始される。この処理の実行中に撮像装置12によって第1画像41が取得されると(ステップS21)、コントローラ30は、取得した第1画像41から二値化画像62を取得するための処理を実行する。幾つかの実施形態では、第1画像41を一旦グレースケール化してグレースケール画像61を取得し(ステップS22)、得られたグレースケール画像61に二値化処理を施すことで二値化画像62を取得してもよい(ステップS23)。他の実施形態では、例えば、ステップS21を省略して第1画像41から直接的に二値化画像62を取得するように構成してもよい。その後、コントローラ30は、取得した二値化画像62内に含まれる全画素に占める白色部分(フロックに相当)の画素の割合を算出して白色占有率を取得する(ステップS24)。そして、コントローラ30は、ステップS24で取得した白色占有率を、例えば、図6に非限定的に例示するグラフの縦軸に当てはめ、A,B,C何れのグループに該当するかを判断することで汚泥評価を行い(ステップS25)、処理を終了する。幾つかの実施形態では、ステップS5で取得した評価結果を報知部36によって報知するように構成されていてもよい。
また、幾つかの実施形態では、汚泥評価処理の実行中に撮像装置12によって第2画像42が取得された場合、コントローラ30は、この第2画像42に基づき、例えば、沈殿層51と上水層52とを含む汚泥水の液面高さに占める沈殿層51の高さ(即ち、界面位置53の高さ)から、汚泥の沈降性等の汚泥性状評価を行うように構成されていてもよい。
また、幾つかの実施形態では、汚泥評価処理の実行中に撮像装置12によって第3画像43が取得された場合、コントローラ30は、この第3画像43に基づき、例えば、容器11内の汚泥の色味等を評価することにより、例えば、汚泥の酸素含有率等の汚泥性状評価を行うように構成されていてもよい。
【0052】
上記の構成によれば、容器11内への汚泥の流入後の第1時点で撮像された第1画像41、及び、第1時点から汚泥沈降時間Δt経過後の第2時点で撮像された第2画像42に基づいて評価部39が汚泥の性状を評価することができる。これにより、容器11内に収容された実際の汚泥の状況に基づき、例えば、汚泥評価の都度、作業員が現場で汚泥を直接評価する労力を低減することができるとともに、属人的な評価結果のばらつきを抑制して評価結果の標準化を図ることができる。また、第1画像41に基づいて評価部39が汚泥を評価する場合、容器11内に汚泥を流入させた後、汚泥沈降時間Δt経過前の第1時点で汚泥の性状を評価できるので、汚泥の流入から汚泥沈降時間Δt経過後でなければ評価し得なかった従来の汚泥評価システムに比べて汚泥評価に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0053】
幾つかの実施形態において、コントローラ30は、第1画像41に二値化処理を施して二値データを生成するための画像処理部40を含み、評価部39は、汚泥評価に関する汚泥評価情報と二値データとに基づき汚泥の性状を少なくとも2段階に評価するように構成されてもよい。例えば、CPU31がROM33から画像処理プログラム40を読み出して実行することで画像処理部40が構成され、CPU31がROM33から汚泥評価プログラム39を読み出して実行することで評価部39が構成され得る。また、例えば、図6に示す非限定的な例では、汚泥の性状を良好(A:0~35%)、可(B:36~70%)、不良(C:71~100%)の3段階に評価する構成としているが、例えば、Aとそれ以外との2段階に評価したり、或いは、種々の汚泥性状に関して有意な任意の閾値を境にして評価を行ったりする構成としてもよい。
【0054】
上記の構成によれば、画像処理部40が第1画像41の二値データを生成し、生成された二値データと汚泥評価情報とに基づき評価部39が汚泥の性状を2段階以上に評価することができる。よって、実務上、有意な評価結果を取得可能な汚泥評価システム3を得ることができる。
ここで、「汚泥評価情報」は、例えば、汚泥の良否を判断する際の基準とされる各種パラメータ(例えば、色味、二値データにおける一方の値の占有率又は沈降性等)や、該パラメータの値に対応した汚泥の段階的な良否判定に関する閾値情報等を含んでいてもよい。
【0055】
幾つかの実施形態において、評価部39は、第2画像42に基づき汚泥中における沈殿層51と上水層52との界面位置53を判別して得られた検量結果に基づいて汚泥の性状を評価するように構成されてもよい。
【0056】
上記の構成によれば、評価部39が、第2画像42に基づき、汚泥中における沈殿層51と上水層52との界面位置53を判別することができる。従って、撮像装置12で取得した画像データに基づき汚泥の性状(例えば、沈降性)を評価することができる。
【0057】
幾つかの実施形態では、容器11の容積が1L以上であってもよい。この場合、容器11の容量を例えば3Lとしてもよい。このようにすれば、汚泥状態がより実状に則した状態で汚泥の性状を評価することができる。従って、汚泥のサンプルを、例えば、皿状の容器や1L未満の試験管等に採取して評価する場合に比べて、フロックの形成具合や沈降性等をより正確に評価することができる。
【0058】
幾つかの実施形態において、評価部39は、第3画像43におけるフロックの占有率(例えば、二値化画像62における白色占有率)と、予め統計的に得られた既知の第2時点における沈殿層51の比率とを比較することにより汚泥の性状を評価するように構成されてもよい(図6参照)。
【0059】
上記の構成によれば、評価部39による評価結果を一定の質に維持することができる。これにより、例えば、作業員の経験や勘に基づく従来の評価結果と比較して、異なる担当者による評価結果のばらつきを低減して、より一層高精度に評価結果の標準化を図ることができる。
【0060】
幾つかの実施形態において、汚泥評価システム3は、汚泥槽10と容器11の一端とに連結された第1流路15と、第1流路15に配置され該第1流路15を開閉可能に構成された第1バルブ18と、容器11の他端に連結された第2流路16と、第2流路16に配置され該第2流路16を開閉可能に構成された第2バルブ19と、をさらに備えていてもよい(図1参照)。
【0061】
上記の構成によれば、第1バルブ18を開閉することで汚泥槽10から第1流路15を通って容器11内に汚泥を流入させることができる。また、第2バルブ19を開閉することで、容器11内から汚泥を排出することができる。従って、汚泥を評価するタイミングで第1バルブ18及び/又は第2バルブ19を開閉することにより、評価対象とする汚泥を実状に則した状態で容器11内に流入させたり、容器11内から汚泥を排出したりすることができる。よって、汚泥評価の精度の向上が図られる。
【0062】
幾つかの実施形態において、コントローラ30は、第2バルブ19を閉、第1バルブ18を開として容器11内に汚泥を流入させた後に第1バルブ18を閉じ、第1時点で第2照明装置14をONにして第1画像41を取得し、第2時点で第1照明装置13のみONにして第2画像42を取得し、第1時点で第1照明装置13のみONにして容器11内の汚泥の第3画像43を取得し、第2時点で第2照明装置14をONにして容器11内の汚泥の第4画像44を取得するように構成されてもよい(図7参照)。
【0063】
上記の構成によれば、第1時点における第1画像41及び第3画像43と、第2時点における第2画像42及び第4画像44とを自動的に取得することができる。そして、これらの画像の少なくとも一つに基づき、評価部が汚泥の性状を評価することができる。さらに、汚泥流入後の各時点における画像のサンプルを収集してデータを蓄積することにより、評価精度の向上が可能となる。
【0064】
幾つかの実施形態において、汚泥評価システム3は、一端が第1流路15における第1バルブ18と容器11との間に連結され、他端が給水部25に連結された第3流路17と、第3流路17に配置され該第3流路17を開閉可能に構成された第3バルブ20と、を備えていてもよい(図1参照)。
【0065】
上記の構成によれば、撮像装置12により取得した画像に基づく汚泥の評価後に、給水部25から第3流路17を通って供給される水を用いて容器11内を洗浄することができる。これにより、次回の汚泥評価の際には容器11内に今回の汚泥が残留しないから、異なる時点の汚泥の混入を抑制して汚泥評価の精度を向上させることができる。また、容器11の洗浄により汚泥評価システム3の耐久性の向上を図ることができる。
【0066】
幾つかの実施形態において、汚泥評価システム3は、評価部39による評価結果を報知する報知部36をさらに備えていてもよい(図1及び図3参照)。報知部36は、例えば、音、光又は動作等のアクションにより、表示部、スピーカ、駆動部等を駆動するように構成されていてもよい。
【0067】
上記のように報知部36を備えた構成によれば、評価部39による汚泥の評価結果を報知部36によって報知することができる。従って、汚泥の評価結果に基づいた適切な対応を作業者に促すことができる。
例えば、上述した撮像装置12やコントローラ30を用いて汚泥性状について継続して計測する際、何れかのパラメータの値や性状が前回までの計測結果と今回の計測結果とで大きく異なる場合(すなわち、大きな変化があった場合)等に、汚泥性状の好転又は悪化を知らせるための警報/アラームを発するように報知部36を制御するプログラムがROM33に格納されていてもよい。このようなプログラムは、例えば、汚泥におけるフロックの占有率が大きく変化した場合に適用し得る。すなわち、前回撮像時のフロック占有率と比較して今回のフロック占有率が、設定値(任意)から大きく外れた場合等に、その旨を報知部36から警報やアラームで報知することができる。この変化(数値の逸脱等)を知ることで、作業者は、例えば、容器11の上流側工程での異常や、原水、流入又は処理水の性状不良の有無を疑うことができる。また、撮像した画像を比較することで、撮像対象槽(汚泥の計測対象とする処理槽)の汚泥色や沈降状態から汚泥性状を判断し、設定値(任意)から大きく外れた場合に警報やアラームを発するプログラムを備えていてもよい。
なお、汚泥性状が大きく変化する場合に限らず、所定範囲内の性状(例えば、良好な状態等)を維持していることを報知部36から報知させるプログラムをシステム内に備えていてもよい。
【0068】
幾つかの実施形態において、汚泥評価システム3は、二値化処理又は汚泥評価に関する各種パラメータ値を入力可能な入力部35をさらに備えていてもよい(図3参照)。
【0069】
上記のように入力部35を備えた構成によれば、評価部39による評価の感度又は精度を任意に設定することができる。これにより、評価対象とする汚泥の状態や気候等の周辺環境に応じて、汚泥を適切に評価できる汚泥評価システム3を得ることができる。
【0070】
幾つかの実施形態において、汚泥の性状は、汚泥の沈降性、色又は酸素含有量の少なくとも一つを含んでもよい。このようにすれば、汚泥の沈降性、色又は酸素含有量の少なくとも一つを評価可能な汚泥評価システム3を得ることができる。
【0071】
本発明の少なくとも一実施形態に係る汚泥評価指標取得方法は、汚泥を評価するための指標を取得する汚泥評価指標取得方法であって、鉛直方向に長尺で汚泥を収容するための容器11と、容器11内の汚泥を撮像するための撮像装置12と、容器11を挟んで撮像装置12とは反対側に配置された第1照明装置13と、容器11に対して第1照明装置13とは反対側に配置された第2照明装置14と、第1照明装置13、第2照明装置14および撮像装置12を制御するコントローラ30と、に基づき、少なくとも第2照明装置14をONにした状態で第1時点において撮像装置12により第1画像41を取得し、第1時点から汚泥沈降時間Δt経過後の第2時点において第1照明装置13をONにして第2照明装置14をOFFにした状態で撮像装置12により第2画像42を取得する(図7参照)。
【0072】
上記の方法によれば、上下方向に分離される沈殿層51と上水層52との界面位置53が視覚的に判別し易い状態で現れる。また、コントローラ30が、第1照明装置13、第2照明装置14および撮像装置12の動作を切り替えて制御することにより、第1時点における第3画像43及び第2時点における第2画像42を自動的に取得することができる。これにより、撮像装置12による撮像で得られた第3画像43又は第2画像42の画像データに基づき、汚泥の性状を評価するための指標を自動的に取得することができる。
さらに、第3画像43と、第2画像42とに基づいて汚泥を評価することにより、何れか一方の画像のみに基づいて評価する場合に比べて、汚泥に関するより多くの性状を評価することができる。
【0073】
以上説明した幾つかの実施形態によれば、汚泥の実際の状況に基づき、汚泥評価に関する労力を低減でき、且つ、評価結果のばらつきを抑制できる汚泥評価システム3及び汚泥評価指標取得システム1を得ることができる。
【0074】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0075】
1 汚泥評価指標取得システム
3 汚泥評価システム
10 汚泥槽(処理槽)
11 容器
12 撮像装置
12A レンズ
13 第1照明装置
14 第2照明装置
15 第1流路
16 第2流路
17 第3流路
18 第1バルブ(汚泥入口バルブ)
19 第2バルブ(排水バルブ)
20 第3バルブ(洗浄水バルブ)
21 第4バルブ(エア抜きバルブ)
25 給水部
30 コントローラ
31 CPU
32 RAM
33 ROM
34 通信インターフェース
35 入力部
36 報知部
37 バス
38 汚泥評価指標取得プログラム
39 汚泥評価プログラム(評価部)
40 画像処理プログラム(画像処理部)
41 第1画像
42 第2画像
43 第3画像
44 第4画像
51 沈殿層
52 上水層
53 界面位置
60 トリミング画像
61 グレースケール画像
62 二値化画像
70 HD(記憶部/大容量記憶装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8