(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】搬送装置および積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220121BHJP
【FI】
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2018051386
(22)【出願日】2018-03-19
【審査請求日】2020-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2017087491
(32)【優先日】2017-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】堀口 司
(72)【発明者】
【氏名】松本 周三
(72)【発明者】
【氏名】井上 寛文
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-131993(JP,A)
【文献】特開平06-071760(JP,A)
【文献】特開2001-264742(JP,A)
【文献】特開平08-290843(JP,A)
【文献】特開2008-056393(JP,A)
【文献】特開2007-062321(JP,A)
【文献】特開2003-062912(JP,A)
【文献】特開2015-040914(JP,A)
【文献】中国実用新案第201637971(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0190995(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B29C 65/78
G02F 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚葉シート状部材を搬送するための搬送装置であって、
枚葉シート状部材を載置する第1部材と、
枚葉シート状部材を載置して位置調整するためのアライメントステージと、
枚葉シート状部材を載置して第1の搬送方向に搬送するための第1のベルト状部材と、
第1部材に載置された枚葉シート状部材に対してその上面側から吸引し、枚葉シート状部材を吸引力により保持した状態でアライメントステージ上へ移動させ、吸引停止することにより枚葉シート状部材をアライメントステージに載置する第1の移載機であって、枚葉シート状部材を吸引力により保持しつつ、その面内にて外側へと拡張する力を枚葉シート状部材に作用させ得る第1の移載機と、
アライメントステージに載置された枚葉シート状部材の位置情報を確認する位置確認装置と、
位置確認装置によって生成された枚葉シート状部材の位置データに基づいて、該枚葉シート状部材を載置したアライメントステージの動きを制御し、これによって枚葉シート状部材を位置調整する制御部と、
アライメントステージに載置されて位置調整された枚葉シート状部材に対してその上面側から吸引し、枚葉シート状部材を吸引力により保持した状態で第1のベルト状部材上へ移動させ、吸引停止することにより枚葉シート状部材を第1のベルト状部材に載置する第2の移載機とを含む、搬送装置。
【請求項2】
第1の移載機が、周囲雰囲気を吸引可能で、かつ枚葉シート状部材と接触するパッド部を有する複数の吸引パッドであって、所定の面内にて外側へと相互に拡張移動可能な吸引パッドを含む、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
第2の移載機が、周囲雰囲気を吸引可能で、かつ枚葉シート状部材と接触するパッド部を有する複数の吸引パッドを含む、請求項1または2に記載の搬送装置。
【請求項4】
第1の移載機と第2の移載機とが別個または共通の移載機である、請求項1から3のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項5】
位置確認装置が、アライメントステージに載置された枚葉シート状部材を撮像して、枚葉シート状部材の位置データを生成する、請求項1から4のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項6】
制御部が、撮像装置によって生成された枚葉シート状部材の画像データから枚葉シート状部材の端部を認識し、該端部に基づいて、枚葉シート状部材を載置したアライメントステージの動きを制御する、請求項1から5のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項7】
制御部によって制御されるアライメントステージの動きが、水平面内での平行移動および/または回転を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項8】
第1部材が、枚葉シート状部材を載置してアライメントステージ方向に搬送するための第2のベルト状部材である、請求項1から7のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項9】
第1の枚葉シート状部材と第2の枚葉シート状部材とを有する積層体の製造方法であって、
請求項1から8のいずれか1項に記載の搬送装置を用いて第1の枚葉シート状部材を搬送すること、および
該第1の枚葉シート状部材と第2の枚葉シート状部材とを貼合すること
を含む、積層体の製造方法。
【請求項10】
枚葉シート状部材と長尺状部材とを有する積層体の製造方法であって、
請求項1から8のいずれか1項に記載の搬送装置を用いて枚葉シート状部材を搬送すること、および
該枚葉シート状部材と長尺状部材とを貼合すること
を含む、積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枚葉シート状部材を搬送するための搬送装置および積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
枚葉シート状部材は、吸着部材、プリント配線基板及び光学部材等、様々な分野で使用されている。例えば、プリント配線基板及び光学部材等の精密機器に用いる枚葉シート状部材においては、枚葉シート状部材の積層、貼合せの際に、位置合わせを行う必要がある。
また、近年においては、薄型の枚葉シート状部材が多用されており、薄型の枚葉シート状部材は、特に、シワ、カールが生じやすい。枚葉シート状部材にシワ、カールなどが生じると、位置合わせの精度を高めることが困難となるだけでなく、作業効率が悪くなり、製品の歩留まりに悪影響が生じるおそれがある。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2012-242750号公報)には、光学フィルム等の薄いシート状のものを、気泡及び異物の巻き込みがなく、撓み及びシワを発生させることなく、基板上に貼付することができるフィルム貼付装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたフィルム貼付装置は、例えば、フィルムの保持部材同士を隔離することによってフィルムに張力を生じさせる。また、特許文献1は保持部材として例えば、静電チャック、真空吸着力を用いることが開示されている。
しかし、静電チャックは、シート状部材が平坦でなければ被吸着物を安定して保持できないことがある。例えば、シワ、撓みが生じたシート状部材は、安定して保持できないことがあり、シワの生じやすい薄型のシート状部材等には、静電チャックは適さないことがある。
また、真空吸着力を用いると、真空装置を要するなど装置が複雑となる。その上、シート状部材の端部までは十分な吸着力が得られず気泡を生じやすい場合もある。さらに、シート状部材に対する吸着力が強くなる傾向があり、薄型のシート状部材等への使用には適さないことがある。
【0006】
ここで、プリント配線基板及び光学部材等の精密機器に用いる枚葉シート状部材においては、上述のように、枚葉シート状部材の積層及び貼合せの際に位置合わせを行う必要があり、位置合わせの精度を高め、より効率的に位置合わせを行うことが求められている。
さらに、上述のように、近年においては、枚葉シート状部材の厚さが薄くなっている。例えば、光学積層体に用いる枚葉シート状部材においては、厚さが50~300μmのものがあり、カールおよびシワが生じやすく、枚葉シート状部材の位置合わせを容易に行えず、その上、枚葉シート状部材の角度、位置合わせの精度を出せない場合がある。
【0007】
従って、本発明は、枚葉シート状部材を平坦な状態で搬送でき、また、枚葉シート状部材へのシワ、カールの発生を抑制でき、枚葉シート状部材を伸ばすことができ、枚葉シート状部材に存在し得るシワを伸ばすことができ、枚葉シート状部材の位置合わせを容易に行え、その上、高精度に位置合わせを行うことができる搬送装置を提供する。さらに、本発明は、このような搬送装置を用いて枚葉シート状部材を搬送することを含む、積層体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下を含む。
[1]枚葉シート状部材を搬送するための搬送装置であって、
枚葉シート状部材を載置する第1部材と、
枚葉シート状部材を載置して位置調整するためのアライメントステージと、
枚葉シート状部材を載置して第1の搬送方向に搬送するための第1のベルト状部材と、
第1部材に載置された枚葉シート状部材に対してその上面側から吸引し、枚葉シート状部材を吸引力により保持した状態でアライメントステージ上へ移動させ、吸引停止することにより枚葉シート状部材をアライメントステージに載置する第1の移載機であって、枚葉シート状部材を吸引力により保持しつつ、その面内にて外側へと拡張する力を枚葉シート状部材に作用させ得る第1の移載機と、
アライメントステージに載置された枚葉シート状部材の位置情報を確認する位置確認装置と、
位置確認装置によって生成された枚葉シート状部材の位置データに基づいて、該枚葉シート状部材を載置したアライメントステージの動きを制御し、これによって枚葉シート状部材を位置調整する制御部と、
アライメントステージに載置されて位置調整された枚葉シート状部材に対してその上面側から吸引し、枚葉シート状部材を吸引力により保持した状態で第1のベルト状部材上へ移動させ、吸引停止することにより枚葉シート状部材を第1のベルト状部材に載置する第2の移載機とを含む、搬送装置。
[2]第1の移載機が、周囲雰囲気を吸引可能で、かつ枚葉シート状部材と接触するパッド部を有する複数の吸引パッドであって、所定の面内にて外側へと相互に拡張移動可能な吸引パッドを含む、[1]に記載の搬送装置。
[3]第2の移載機が、周囲雰囲気を吸引可能で、かつ枚葉シート状部材と接触するパッド部を有する複数の吸引パッドを含む、[1]または[2]に記載の搬送装置。
[4]第1の移載機と第2の移載機とが別個または共通の移載機である、[1]から[3]のいずれか1に記載の搬送装置。
[5]位置確認装置が、アライメントステージに載置された枚葉シート状部材を撮像して、枚葉シート状部材の位置データを生成する、[1]から[4]のいずれか1に記載の搬送装置。
[6]制御部が、撮像装置によって生成された枚葉シート状部材の画像データから枚葉シート状部材の端部を認識し、該端部に基づいて、枚葉シート状部材を載置したアライメントステージの動きを制御する、[1]から[5]のいずれか1に記載の搬送装置。
[7]制御部によって制御されるアライメントステージの動きが、水平面内での平行移動および/または回転を含む、[1]から[6]のいずれか1に記載の搬送装置。
[8]第1部材が、枚葉シート状部材を載置してアライメントステージ方向に搬送するための第2のベルト状部材である、[1]から[7]のいずれか1に記載の搬送装置。
[9]第1の枚葉シート状部材と第2の枚葉シート状部材とを有する積層体の製造方法であって、
[1]から[8]のいずれか1に記載の搬送装置を用いて第1の枚葉シート状部材を搬送すること、および
該第1の枚葉シート状部材と第2の枚葉シート状部材とを貼合すること
を含む、積層体の製造方法。
[10]枚葉シート状部材と長尺状部材とを有する積層体の製造方法であって、
[1]から[8]のいずれか1に記載の搬送装置を用いて枚葉シート状部材を搬送すること、および
該枚葉シート状部材と長尺状部材とを貼合すること
を含む、積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、枚葉シート状部材を平坦な状態で搬送でき、また、枚葉シート状部材へのシワの発生を抑制でき、枚葉シート状部材に存在し得るシワを伸ばすことができる搬送装置であり、枚葉シート状部材の角度、位置合わせを容易におよび高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の搬送装置の概略を示す側面図である。
【
図2】本発明の搬送装置の概略を示す上面図である。
【
図3】本発明の一態様における搬送装置の概略を示す上面図である。
【
図4】本発明に係る移載機と枚葉シート状部材の関係を示す概略側面図である。
【
図5】本発明の一態様において、移載機における吸引パットと枚葉シート状部材との関係を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によると、枚葉シート状部材を搬送するための搬送装置であって、
枚葉シート状部材を載置する第1部材と、
枚葉シート状部材を載置して位置調整するためのアライメントステージと、
枚葉シート状部材を載置して第1の搬送方向に搬送するための第1のベルト状部材と、
第1部材に載置された枚葉シート状部材に対してその上面側から吸引し、枚葉シート状部材を吸引力により保持した状態でアライメントステージ上へ移動させ、吸引停止することにより枚葉シート状部材をアライメントステージに載置する第1の移載機であって、枚葉シート状部材を吸引力により保持しつつ、その面内にて外側へと拡張する力を枚葉シート状部材に作用させ得る第1の移載機と、
アライメントステージに載置された枚葉シート状部材の位置情報を確認する位置確認装置と
位置確認装置によって生成された枚葉シート状部材の位置データに基づいて、該枚葉シート状部材を載置したアライメントステージの動きを制御し、これによって枚葉シート状部材を位置調整する制御部と、
アライメントステージに載置されて位置調整された枚葉シート状部材に対してその上面側から吸引し、枚葉シート状部材を吸引力により保持した状態で第1のベルト状部材上へ移動させ、吸引停止することにより枚葉シート状部材を第1のベルト状部材に載置する第2の移載機とを含む、搬送装置が提供される。
【0012】
以下、本発明による、枚葉シート状部材を搬送するための搬送装置について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本発明の一態様における搬送装置の概略を示す側面図である。
図2は、本発明の一態様における搬送装置の概略を示す上面図である。
図3は、ある態様における搬送装置の概略を示す上面図である。
図1および
図2において、1は搬送装置、10は枚葉シート状部材、21は第1部材、30はアライメントステージ、41は第1のベルト状部材、51は第1の移載機、52は第2の移載機、60は位置確認装置、70は制御部、71はクロスローラーリング(
図2)、破線は枚葉シート状部材の移動方向の一例であり、例えば、搬送装置1は、破線の矢印方向および逆方向に沿って移動し得る。アライメントステージ30における両矢印は、アライメントステージの稼動方向の一例であり、移載機51および52における両矢印は移載機の稼動方向の一例である。
また、
図3において、
図1について説明した符号に加え、符号22は第2のベルト状部材である。
本発明の搬送装置1は制御部70を有し、該制御部70は、例えば、アライメントステージ30に内蔵されてもよい。
【0014】
(枚葉シート状部材)
本発明の搬送装置において搬送できる枚葉シート状部材10は、例えば、吸着部材、プリント配線基板及び光学部材等が挙げられ、薄く、カール、シワ等が生じやすい部材に対して好適に利用できる。ある態様においては、枚葉シート状部材は、光学部材であり、例えば、厚さ50~500μmのものである。枚葉シート状部材の寸法は、例えば、幅30cm~150cm、長さ30cm~300cmである。
光学部材は、例えば、位相差フィルム、偏光フィルム、反射防止フィルム、視野角向上フィルム、輝度向上フィルムなどから選択される少なくとも1の光学フィルムを有することができる。光学部材は、これらの光学フィルムの単層構造であってもよく、上記のような光学フィルムを含む、複数のフィルムを積層した複層構造であってもよい。
本発明の搬送装置であれば、例えば、厚さ120μm以下のシート状部材、および厚さ120μm以下の多層構造を有する部材のように、カール、シワ、折れ等が生じやすい構成の(積層)部材に対して、安定した搬送が可能である。例えば、偏光フィルムを有する多層構造のシート状部材などであっても、このような顕著な効果を得ることができる。
【0015】
(第1部材)
枚葉シート状部材10を載置する第1部材21は、例えば、ストッカー等、枚葉シート状部材10を複数層積層して載置できるものであってもよく、ベルト状部材などであってもよい。
ある態様において、第1部材21は、枚葉シート状部材10を載置してアライメントステージ方向に搬送するための第2のベルト状部材22であることができる(例えば、
図3参照)。
このように、第1部材21、例えば第2のベルト状部材22は、第1のベルト状部材41よりも上流側に配置される。
【0016】
第2のベルト状部材22が枚葉シート状部材10を搬送する場合、第1のベルト状部材41における枚葉シート状部材10を搬送する方向と平行となるように、第2のベルト状部材の搬送方向を設けてもよい。
ある態様においては、枚葉シート状部材の光学軸などに応じて、第1のベルト状部材41における枚葉シート状部材10を搬送する方向に対して任意の方向、例えば、第1のベルト状部材41の搬送方向に対して15°~90°の角度で交差するように、第2のベルト状部材22の搬送方向を設けてもよい。
ある態様においては、第2のベルト状部材22の搬送方向は、第1のベルト状部材41における枚葉シート状部材10を搬送する方向に対して垂直となるように(90°の角度で交差するように)設けてもよい。
本発明の搬送装置であれば、任意の角度で第2のベルト状部材22の搬送方向を設けた場合においても、枚葉シート状部材10の位置合わせを高精度に行える。例えば、光学軸を有する枚葉シート状部材10であっても、本発明の搬送装置は、連続的に枚葉シート状部材10を搬送でき、シート伸ばし、例えば、枚葉シート状部材10のシワ、歪みを除去でき、より高精度に枚葉シート状部材10の角度、位置合わせを行える。その上、枚葉シート状部材10の位置合わせから第1のベルト状部材41へと枚葉シート状部材10を搬送するまでの時間を短縮できる。
【0017】
(第1の移載機)
本発明の搬送装置は、第1の移載機51を有する。この第1の移載機51は、第1部材21に載置された枚葉シート状部材10に対してその上面側から吸引し、枚葉シート状部材10を吸引力により保持した状態でアライメントステージ30上へ移動させ、吸引停止することにより枚葉シート状部材10を開放し、アライメントステージ30に載置する。第1の移載機51は、枚葉シート状部材を吸引力により保持しつつ、その面内にて外側へと拡張する力を枚葉シート状部材に作用させ得る。
本発明における移載機51は、枚葉シート状部材を均一な力で伸ばし、搬送できる。
【0018】
ある態様において、第1の移載機51は、搬送する枚葉シート状部材10の上面に対置する位置から、枚葉シート状部材10を吸引する。例えば、厚さ300μm程度の枚葉シート状部材10の場合、枚葉シート状部材10を平坦な状態で吸引するために、第1の移載機51と枚葉シート状部材10との間隔を0~5mmの範囲に設定し、枚葉シート状部材10を吸引し得る。このような位置から吸引を行うことで、より効果的に枚葉シート状部材を平坦な状態で搬送でき、シワの発生を抑制できる。
また、枚葉シート状部材10を吸引力で保持する場合、枚葉シート状部材10の厚さが50~500μmである場合、吸引力は0.1~50kPaの範囲、例えば1~20kPaの範囲内である。このような範囲内の吸引力で、周囲雰囲気を吸引することにより、枚葉シート状部材10を吸引でき、枚葉シート状部材10の破損を抑制でき、シワ、カール等の発生も抑制できる。また、薄型の枚葉シート状部材10においても、効率的に搬送できる。
【0019】
第1の移載機51は、枚葉シート状部材10を吸引力により保持しつつ、その面内にて外側へと拡張する力を枚葉シート状部材10に作用させ得る。
第1の移載機51は、その面内にて外側へと拡張する力を枚葉シート状部材10に作用させることにより、枚葉シート状部材10のシワを伸ばし、枚葉シート状部材10の歪みを除去でき、平坦化を行うことができる。さらに、搬送中に枚葉シート状部材10がカールすること、軸方向、例えば光学軸がずれた状態で搬送されることを抑制できるので、枚葉シート状部材10の位置合わせをより高精度に、短時間に行うことができる。
【0020】
ある態様においては、第1の移載機51は、枚葉シート状部材10の任意の位置、例えば、各辺に沿う位置、中心部等において、その面内にて外側へと拡張する力を枚葉シート状部材10に作用させることができる。例えば、枚葉シート状部材に弛みが生じることを抑制するために、枚葉シート状部材10の四隅に加えて、例えば、各辺に沿う任意の位置、枚葉シート状部材10中心部等において、その面内にて外側へと拡張する力を枚葉シート状部材10に作用させることができる。
【0021】
このように、枚葉シート状部材10の任意の位置で、その面内にて外側へと拡張する力を枚葉シート状部材10に作用させることができるので、搬送する枚葉シート状部材10の厚さなどに応じて、枚葉シート状部材10のシート伸ばしを効果的に行える。ある態様においては、枚葉シート状部材10の四隅と、各辺の中心付近に、外側へと拡張する力を枚葉シート状部材に作用させることができる。なお、搬送する枚葉シート状部材10に応じて、外側へと拡張する力を作用させる位置を適宜調整できる。
例えば、枚葉シート状部材10の四隅に加え、枚葉シート状部材の厚さ、物性などに応じて、複数の吸着パッドを用いて、外側へと拡張する力を枚葉シート状部材に作用させることにより、非常に薄型(例えば、厚さ120μm以下)の枚葉シート状部材であっても、シワ、撓み、折れを防止できる。
例えば、枚葉シート状部材10の四隅に加え、複数の吸着パッドを用いて、シワを伸ばした状態で吸着保持した枚葉シート状部材10を搬送し、枚葉シート状部材10をアライメントステージ30の面内で平坦に載置することができる。
このような態様で枚葉シート状部材を搬送すると、例えば、非常に薄型の枚葉シート状部材であっても、シワ、撓み、折れを防止できるだけでなく、高速で枚葉シート状部材の搬送及び載置を行え、作業効率を大きく向上できる。
【0022】
ある態様において、枚葉シート状部材10に作用させる外側へ拡張する力は、枚葉シート状部材10に捻じれ、弛み、シワが生じない大きさを示す。例えば、後述のように、第1の移載機51が吸引パットを有する場合、枚葉シート状部材10の状態に応じて、吸引パット毎に拡張させる力を相違させてもよく、同程度の力が作用するように、吸引パットにおける吸引力を調整してもよい。例えば、光学軸を有する枚葉シート状部材10を搬送する場合、反りが生じないように枚葉シート状部材10を搬送できる。
【0023】
第1の移載機51は、第1部材21に載置された枚葉シート状部材10に対してその上面側から吸引し、枚葉シート状部材10を吸引力により保持した状態でアライメントステージ30上へ移動させる。ある態様においては、第1の移載機51は、周囲雰囲気を吸引可能で、かつ枚葉シート状部材10と接触するパッド部を有する複数の吸引パッドであって、所定の面内にて外側へと相互に拡張移動可能な吸引パッドを含む。
【0024】
例えば、
図4は、本発明の一態様における、移載機と枚葉シート状部材の関係を示す概略側面図であり、
図5は、本発明の一態様における、移載機側から観察した、吸引パットと枚葉シート状部材との関係を示す概略平面図である。
図4および
図5において、符号51は第1の移載機(52は第2の移載機)であり、符号81は吸引パットであり、
図5における矢印は、外側へと拡張する力を示す。
ある態様において、例えば、
図5に示すように、外側へと拡張する力を、吸引パットの部位毎に変化させてもよい。これにより、より効果的に枚葉シート状部材を伸ばすことができ、シワ、歪みを除去できる。
【0025】
吸引パット81を有することで、枚葉シート状部材10を吸引力により保持しつつ、その面内にて外側へと拡張する力を枚葉シート状部材10に効果的に作用させることができる。さらに、例えば、薄型の枚葉シート状部材10を吸引し保持する間、枚葉シート状部材10の破損、カールの発生、捻れを抑制できる。また、複数個の吸引パットを有することにより、吸引パット毎に吸引力を変化させることができ、例えば、シワの生じた部位に対して重点的に外側へと拡張する力を作用させることができる。また、枚葉シート状部材10をより平坦な状態で搬送できる。
【0026】
ある態様において、第1の移載機51がパット部、例えば、吸引パット81を有することにより、本発明の搬送装置は、より効果的に枚葉シート状部材10を平坦な状態で搬送でき、また、枚葉シート状部材へのシワ、カールの発生を抑制でき、枚葉シート状部材を伸ばすことができ、枚葉シート状部材10に存在し得るシワを伸ばすことができる。アライメントステージに搬送する際に、このような効果が得られるので、本発明に係るアライメントステージを用いて、枚葉シート状部材の位置合わせを容易に行え、その上、高精度に位置合わせを行うことができる。
このような態様においても、上記範囲内の吸引力を適用できる。
【0027】
吸引パットの形状は特に限定されない。例えば、吸引パットの吸引部における形状は、矩形、楕円形、円形等があり、吸引力を均等に付与し安定した保持力をより効果的に保つことができるので、例えば円形である。
このような態様において、吸引パットの吸引部の寸法は、例えば、5~80mmの直径を有する。
吸引パットの素材は、例えば可撓性を有する素材であり、可撓性部材は、枚葉シート状部材を破損させることがなく、効果的にシワを伸ばすことができる。例えば、ニトリルゴム、シリコンゴム、天然ゴム及びフッ素ゴム等を含む吸引パットである。
【0028】
ある態様においては、第1の移載機51は、例えば、水平面内での平行移動および/または回転できる。例えば、第1部材からアライメントステージ30へと枚葉シート状部材10を搬送する際に、予め第1のベルト状部材41の搬送方向に沿うよう、軸方向、例えば光学軸方向を修正した枚葉シート状部材10を、アライメントステージ30に載置してもよい。これにより、アライメントステージにおける位置調整をより効率的に行える。
【0029】
(アライメントステージ)
本発明の搬送装置1は、枚葉シート状部材10を載置して位置調整するためのアライメントステージ30を有する。また、アライメントステージ30に載置された枚葉シート状部材10の位置情報を確認する位置確認装置60と、位置確認装置60によって生成された枚葉シート状部材10の位置データに基づいて、該枚葉シート状部材10を載置したアライメントステージ30の動きを制御し、これによって枚葉シート状部材10を位置調整する制御部70とを有する。
【0030】
本発明の搬送装置においては、第1の移載機51により搬送された枚葉シート状部材10、例えばシート伸ばしがされた枚葉シート状部材10の位置合わせを、アライメントステージ30で行える。第1の移載機51により、枚葉シート状部材10がシート伸ばしされた状態で搬送されるので、例えば、薄型の枚葉シート状部材10の角度、位置合わせを、アライメントステージ30においてより高精度に行える。
【0031】
また、枚葉シート状部材10をアライメントステージ30上に載置して位置合わせを行えるので、薄型の枚葉シート状部材10であっても、安定した状態で位置合わせを行えるので、高精度に角度、位置合わせを行える。
【0032】
ある態様においては、アライメントステージ30は、枚葉シート状部材10に対してその下面側から吸引し、枚葉シート状部材を吸引力によりアライメントステージ上に保持する複数の吸引孔を備える。吸引孔を用いて、枚葉シート状部材10を吸引力によりアライメントステージ30上に保持することで、制御部70により枚葉シート状部材の載置位置を微修正する間に、枚葉シート状部材10がずれることを抑制でき、また、シワ、カール、折れ等の発生を抑制できる。
吸引力は、第1の移載機51からアライメントステージ30に枚葉シート状部材10が載置された後、枚葉シート状部材10の載置位置を微修正する間に作用してもよい。また、第2の移載機52を介して枚葉シート状部材10が搬送されるまで、吸引力は作用してもよい。
【0033】
アライメントステージ30における吸引力は、例えば0.01~50kPaであり、ある態様では0.1~20kPaである。このような範囲で吸引力を設定することにより、移載機(51,52)とアライメントステージ30との間で、枚葉シート状部材10の移動を効率よく行え、また、枚葉シート状部材10のカール、シワ、折れ等の発生をより効果的に抑制できる。
【0034】
また、アライメントステージ30は、第1の移載機51同様、枚葉シート状部材10を吸引力により保持しつつ、枚葉シート状部材上に生じたシワ、カールまたは歪みを除去するように、その面内にて外側へと拡張する力を枚葉シート状部材10に作用させてもよい。吸引力による外側へと拡張する力は、アライメントステージ上に配置される複数の吸引孔において、アライメントステージ30の水平面内における枚葉シート状部材10の配置場所に応じて、その吸引のタイミングを変えることによって発生させることができる。例えば、枚葉シート状部材10の中央部に位置する吸引孔から先に吸引し、他の吸引孔からの吸引を枚葉シート状部材10の外周部にむかって順次施すことにより、枚葉シート状部材10に対し外側へ拡張する様に力を生じさせることができる。これにより、さらに良好に、および、より効果的に枚葉シート状部材10に生じたシワ、カールまたは歪みを除去できる。
【0035】
本発明に係るアライメントステージ30は、以下の位置確認装置60と制御部70により、枚葉シート状部材10の角度、位置合わせを高精度に行える。
【0036】
(位置確認装置)
位置確認装置60は、アライメントステージ30に載置された枚葉シート状部材10の位置情報を確認する装置である。
例えば、
図1に示されるように、位置確認装置60は、アライメントステージ30に載置された枚葉シート状部材10の位置情報を確認できる任意の位置に配置でき、また、位置情報を確認する手段に応じて、任意の位置に配置できる。
例えば、搬送する枚葉シート状部材の種類、構造に応じて、位置確認装置60の位置確認手段を選択できる。また、要求される角度、位置合わせの精度に応じて、本発明の搬送装置は、複数の位置確認装置60を有してもよい。
【0037】
ある態様においては、アライメントステージ30に載置された枚葉シート状部材10の位置情報を確認する位置確認装置60は、例えば、アライメントステージ30に載置された枚葉シート状部材10を撮像して、枚葉シート状部材10の位置データ、例えば画像データを生成し、位置確認する。
位置確認装置60は、枚葉シート状部材10の端部、例えば端辺の位置情報を確認できる。
ある態様においては、枚葉シート状部材10における少なくとも一辺の位置を確認してもよく、枚葉シート状部材の軸配置などに応じて、軸方向に沿う少なくとも一辺の位置を確認してもよく、および、少なくとも隣接する二辺の位置を確認してもよい。
また、枚葉シート状部材の隅部の少なくとも1つの位置情報を確認してもよい。ある態様においては、位置確認装置60は、例えば、少なくとも枚葉シート状部材10における2つの隅部の位置、例えば、枚葉シート状部材10の対角線上に位置する隅部の位置を確認することで、より高精度に位置情報を取得できる。
【0038】
このように、本発明においては、位置確認装置60を用いて、枚葉シート状部材10の位置情報を確認することにより、枚葉シート状部材10の角度、位置合わせを高精度に行え、例えば、軸方向を高精度に合わせることができる。
また、本発明の搬送装置においては、第1の移載機51により枚葉シート状部材10を搬送し、本発明に係るアライメントステージ30を有することにより、枚葉シート状部材10にアライメントマークを付さなくとも角度、位置合わせを高精度に行える。このため、例えば、積層体の製造に要する工程を簡略化でき、タクトタイムを減少できる。もちろん、所望により、枚葉シート状部材10にアライメントマークを付してもよい。
【0039】
ある態様において、位置確認装置60は、アライメントステージ30に載置された枚葉シート状部材10を撮像して、枚葉シート状部材10の位置データを生成する。このような位置確認装置60として、半導体素子が含まれる。例えば、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等、このようなイメージセンサを内蔵する、ビデオカメラ、デジタルカメラ、検出器などが挙げられる。
このような位置確認装置60は、枚葉シート状部材10と接触することなく位置確認を行えるので、薄型の枚葉シート状部材10の破損、カール、傷の発生等を防止できる。また、枚葉シート状部材10に接触すること無く位置確認を行えるので、例えば、枚葉シート状部材10が光学特性を有する場合、位置確認時に光学特性を損ねることがない。
【0040】
本発明の搬送装置においては、第1の移載機により搬送された枚葉シート状部材10は、シート伸ばしがされた状態でアライメントステージ30に搬送されるので、このような非接触式の位置確認装置60であっても、枚葉シート状部材の端辺等の位置を正確に確認できる。また、薄型の枚葉シート状部材の角度、位置合わせを、アライメントステージにおいてより高精度に行える。
【0041】
ある態様において、位置確認装置60は、物理的に枚葉シート状部材10にプローブを接触させるプローブ装置であってもよい。例えば、搬送する枚葉シート状部材10に応じて、プローブ装置を選択できる。例えば、対象物(枚葉シート状部材10)にコシがある場合、プローブ接触型の位置確認装置60であってもよい。また、光電センサを用いて、枚葉シート状部材10の位置確認を行ってもよい。
【0042】
(制御部)
本発明の搬送装置1は、位置確認装置60により、生成された枚葉シート状部材10の位置データに基づいて、該枚葉シート状部材10を載置したアライメントステージ30の動きを制御し、これによって枚葉シート状部材10を位置調整する制御部を有する。
【0043】
制御部70は、予め記録された基準から、枚葉シート状部材10の位置ずれを補正できる。予め記録された基準は、目的に応じて適宜設定でき、例えば、端辺の位置情報、少なくとも1辺の位置情報などを基準として設定できる。
【0044】
例えば、制御部70によって制御されるアライメントステージの動きは、水平面内での平行移動および/または回転を含む。例えば、クロスローラーリングなどにより、このような動きを得ることができる。
このような動きを制御部70が制御することで、本発明に係るアライメントステージ30に載置された枚葉シート状部材10をより高精度に位置合わせできる。
【0045】
ある態様において、制御部70は、撮像装置によって生成された枚葉シート状部材10の画像データから枚葉シート状部材10の端部を認識し、該端部に基づいて、枚葉シート状部材10を載置したアライメントステージ30の動きを制御する。
このような過程を経てアライメントステージの動きを制御することにより、より短時間かつ高精度に、枚葉シート状部材10の位置合わせを行える。また、枚葉シート状部材10と接触することなく位置確認および位置合わせを行えるので、例えば、薄型の枚葉シート状部材10であっても、枚葉シート状部材10の破損、カール、傷の発生等を防止できる。
【0046】
例えば、制御部70においては、枚葉シート状部材10を任意の角度、例えば、0~90°の範囲で回転させることができ、水平方向の移動は、0.1~30mmの範囲内で移動できる。このように、要求される態様に応じて制御部70は枚葉シート状部材10の角度、位置を調整できる。
ある態様において、基準となる位置に対して、水平面内における回転角度のずれは、0.01~0.05°の範囲内、例えば、0.03~0.05°の範囲内である。また、基準となる位置に対して、水平方向におけるずれ(XY)方向は、0.2~1.0mmの範囲内である。このように、高い精度で枚葉シート状部材10の角度、位置を調整できる。
【0047】
(第2の移載機)
本発明の搬送装置1は、
図1~
図3に示されるように、第2の移載機52を有してもよい。第2の移載機52は、アライメントステージ30に載置されて位置調整された枚葉シート状部材10に対してその上面側から吸引し、枚葉シート状部材10を吸引力により保持した状態で第1のベルト状部材上へ移動させ、吸引停止することにより枚葉シート状部材10を第1のベルト状部材41に載置する。
【0048】
ある態様において、第2の移載機52は、搬送する枚葉シート状部材10の上面に対置する位置から、枚葉シート状部材10を吸引する。また、第2の移載機52は、周囲雰囲気を吸引可能である。第2の移載機52は、枚葉シート状部材10を平坦な状態で搬送でき、シワの発生を抑制できる。また、枚葉シート状部材10を吸引力で保持する場合、枚葉シート状部材10の厚さが50~500μmである場合、吸引力は0.01~50kPaの範囲、例えば0.1~20kPaの範囲内である。このような範囲内の吸引力で吸引することにより、枚葉シート状部材10の破損を抑制でき、シワ、カールの発生も抑制できる。
第2の移載機52においては、アライメントステージ30において調整した軸方向がずれないよう、枚葉シート状部材10をより高精度に搬送できる必要があり、本発明の搬送装置であれば、このような要求を満たすことができる。
さらに、第1の移載機51と併用して、第2の移載機52を有することにより、それぞれ独立して枚葉シート状部材10を搬送できるので、タクトタイムを短縮できる。
ある態様において、第1の移載機の吸引力と、第2の移載機の吸引力は、同程度であり得る。
【0049】
第2の移載機52は、枚葉シート状部材10を吸引力により保持しつつ、その面内にて外側へと拡張する力を枚葉シート状部材に作用させてもよい。ある態様において、第2の移載機52は、その面内にて外側へと拡張する力を枚葉シート状部材10に作用させる。
このような外側へと拡張する力を作用させることにより、枚葉シート状部材10のシワ伸ばし、平坦化を行うことができ、さらに、搬送中に枚葉シート状部材10がカールすることを抑制できるので、例えば、後の貼合工程を効率よく進めることができる。また、アライメントステージ30において行った角度、位置合わせした枚葉シート状部材10の軸方向をずらすことなく、搬送できる。
【0050】
ある態様においては、第2の移載機52は、枚葉シート状部材10の四隅、ある態様では、枚葉シート状部材10の任意の位置、例えば、枚葉シート状部材10の四隅に加え、各辺に沿う位置、中心部等においても、その面内にて外側へと拡張する力を枚葉シート状部材10に作用させることができる。このように、枚葉シート状部材10の任意の位置でその面内にて外側へと拡張する力を枚葉シート状部材10に作用させることができるので、搬送するシートの状態に応じて、枚葉シート状部材10のシワ伸ばしを効果的に行える。なお、搬送する枚葉シート状部材10に応じて、外側へと拡張する力を作用させる位置を適宜調整できる。ある態様においては、第2の移載機52は、上述した第1の移載機51と同一の仕様であってもよく、同様の作用、効果を有し得る。
【0051】
ある態様において、外側へ拡張する力は、枚葉シート状部材10に捻じれ、弛み、シワが生じない大きさで作用する。例えば、第2の移載機52が吸引パットを有する場合、枚葉シート状部材10の形態等に応じて、吸引パット毎に拡張させる力を相違させてもよく、同程度の力が作用するように、吸引パットにおける吸引力を調整してもよい。
【0052】
ある態様においては、第2の移載機52は、周囲雰囲気を吸引可能で、かつ枚葉シート状部材と接触するパッド部を有する複数の吸引パッドを含む。例えば、所定の面内にて外側へと相互に拡張移動可能な吸引パッドを含む。
【0053】
吸引パットを有することで、枚葉シート状部材10を吸引力により保持しつつ、その面内にて外側へと拡張する力を枚葉シート状部材10に効果的に作用させることができる。さらに、例えば、薄型の枚葉シート状部材10を吸引し保持する間、枚葉シート状部材10の破損、カールの発生、捻れを抑制できる。また、複数個の吸引パットを有することにより、吸引パット毎に吸引力を変化させることができ、例えば、シワの生じた部位に対して重点的に外側へと拡張する力を作用させることができる。また、枚葉シート状部材10をより平坦な状態で搬送できる。
【0054】
ある態様において、第2の移載機52がパット部、例えば、
図4および5で示されるような吸引パット81を有することにより、本発明の搬送装置は、より効果的に枚葉シート状部材10を平坦な状態で搬送できる。さらに、枚葉シート状部材へのシワ、カールの発生を抑制でき、枚葉シート状部材を伸ばすことができ、枚葉シート状部材10に存在し得るシワを伸ばすことができる。例えば、アライメントステージ30から第1のベルト状部材41に枚葉シート状部材10を搬送する際に、このような効果が得られる。このように、本発明の搬送装置であれば、本発明に係るアライメントステージ30を用いて、枚葉シート状部材の位置合わせを行ったのち、アライメントステージ30で得られた位置合わせの高い精度を保った状態で、第1のベルト状部材41に枚葉シート状部材10を搬送できる。
【0055】
吸引パットの形状は特に限定されない。例えば、吸引パットの吸引部における形状は、矩形、楕円形、円形等があり、吸引力を均等に付与し安定した保持力をより効果的に保つことができるので、例えば円形である。
このような態様において、吸引パットの吸引部の寸法は、例えば、5~80mmの直径を有する。
吸引パットの素材は、例えば可撓性を有する素材であり、可撓性部材であることにより、枚葉シート状部材を破損させることがなく、効果的にシワを伸ばすことができる。例えば、ニトリルゴム、シリコンゴム、天然ゴム及びフッ素ゴム等を含む吸引パットである。
【0056】
ある態様において、第1の移載機と第2の移載機とが別個または共通の移載機である。第1の移載機と第2の移載機とが別個の態様においては、例えば、
図2および
図3に示すように、本発明の搬送装置は、各々独立した第1の移載機51と第2の移載機52を有する。
一方、第1の移載機51と第2の移載機52とが共通の移載機である態様においては、例えば
図1に示すように、1つの移載機が第1の移載機と第2の移載機として作動する。この態様において、例えば、第1の移載機51としての搬送と、第2の移載機としての搬送とで、吸引力、回転の有無などの条件に違いを設ける場合、各移載機において適切な吸引力等を発揮できるように、コンピュータ制御などにより各種条件を調整できる。
【0057】
(第1のベルト状部材)
本発明の搬送装置1は、
図1、
図2および
図3に示すように、第1のベルト状部材41を有する。第1のベルト状部材41は、アライメントステージ30から搬送された枚葉シート状部材10を載置して、第1の搬送方向に搬送する。ある態様において、第1の搬送方向は、アライメントステージ30から、他の工程に向かって進む方向であり、例えば、貼合ロール方向であり得る。
【0058】
第1のベルト状部材41は、当該技術分野において公知のものを用いてもよい。
ある態様において、第1のベルト状部材41は、厚さ方向に貫通した孔を複数個有し、第1のベルト状部材に対して、枚葉シート状部材が載置される側と反対側に配置される吸引部を介して周囲雰囲気を吸引することにより、ベルト状部材の孔を通じた吸引力で枚葉シート状部材をベルト状部材に対して保持する態様である。
第1のベルト状部材41における吸引力は、枚葉シート状部材の少なくとも2つの領域において吸引力が相違するような範囲で設定してもよい。例えば、吸引力は、0.01~50kPaの範囲内であってもよく、上流側から下流側に向かって、0.02~50kPaの範囲内で吸引力が変化してもよい。
【0059】
(積層体の製造方法)
本発明の別の態様によると、第1の枚葉シート状部材と第2の枚葉シート状部材とを有する積層体の製造方法であって、上記本発明に係る搬送装置を用いて、第1の枚葉シート状部材を搬送すること、および該第1の枚葉シート状部材と第2の枚葉シート状部材とを貼合することを含む、積層体の製造方法が提供される。
別の態様においては、枚葉シート状部材と長尺状部材とを有する積層体の製造方法であって、上記本発明に係る搬送装置を用いて、枚葉シート状部材を搬送すること、および該枚葉シート状部材と長尺状部材とを貼合することを含む、積層体の製造方法が提供される。
【0060】
第1の枚葉シート状部材を、本発明の搬送装置を用いて搬送することにより、第1の枚葉シート状部材を伸ばした状態で搬送でき、シワを伸ばし、平坦にできる。さらに、第1の枚葉シート状部材のカール等に影響されることなく、角度、位置合わせを行え、第1の枚葉シート状部材と、第2の枚葉シート状部材との貼合を高精度に行える。
ある態様においては、第2の枚葉シート状部材および長尺状部材は、特に限定されず、例えば、セパレートフィルム、保護フィルム、光学部材であることができる。
本発明の製造方法によると、薄型(例えば、厚さ50~300μm)の枚葉シート状部材を、高い精度で角度、位置合わせを行え、貼合できるので、有する機能を発揮でき、歩留まりのよい積層体を製造できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、枚葉シート状部材を伸ばすことができ、平坦な状態で搬送でき、枚葉シート状部材の位置合わせを容易におよび高精度に行うことができる搬送装置を提供する。また、本発明の搬送装置は、枚葉シート状部材へのシワの発生、カールの発生を抑制でき、枚葉シート状部材に存在するシワを伸ばすことができる搬送装置である。さらに、本発明は、このような搬送装置を用いて枚葉シート状部材を搬送することを含む、積層体の製造方法を提供する。
【符号の説明】
【0062】
1 搬送装置
10 枚葉シート状部材
21 第1部材
22 第2のベルト状部材
30 アライメントステージ
41 第1のベルト状部材
51 第1の移載機
52 第2の移載機
60 位置確認装置
70 制御部
71 クロスローラーリング
81 吸引パット