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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】熱電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 35/32 20060101AFI20220121BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
H01L35/32 A
H02N11/00 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020517985
(86)(22)【出願日】2019-08-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 KR2019010376
(87)【国際公開番号】W WO2020040479
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2020-03-27
(31)【優先権主張番号】10-2018-0097692
(32)【優先日】2018-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】チョル・ヒ・パク
【審査官】田邊 顕人
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-526930(JP,A)
【文献】特開2009-099686(JP,A)
【文献】特開平07-321379(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0139204(US,A1)
【文献】特開2000-286462(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0174955(US,A1)
【文献】特開2012-195441(JP,A)
【文献】特開2003-234515(JP,A)
【文献】特開2016-174114(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110589(WO,A1)
【文献】特開2017-135278(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1493797(KR,B1)
【文献】国際公開第2003/105244(WO,A1)
【文献】特表2007-500951(JP,A)
【文献】特開2011-035305(JP,A)
【文献】特表2016-503642(JP,A)
【文献】特開2018-013471(JP,A)
【文献】特開平06-310765(JP,A)
【文献】特開2015-115590(JP,A)
【文献】特開2017-034135(JP,A)
【文献】特開平06-069550(JP,A)
【文献】特開2017-188574(JP,A)
【文献】国際公開第2011/019077(WO,A1)
【文献】特開2009-081286(JP,A)
【文献】特表2009-526401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 35/32
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝達部材と冷却部材との間に位置する複数の熱電素子と、
前記熱伝達部材と前記複数の熱電素子との間および前記冷却部材と前記複数の熱電素子との間にそれぞれ位置する第1電極層および第2電極層とを含み、
前記複数の熱電素子は、P型熱電素子およびN型熱電素子を含み、互いに隣接したP型熱電素子とN型熱電素子の高さが互いに異なり、
互いに隣接した前記P型熱電素子と前記N型熱電素子にかけて形成された前記第1電極層および前記第2電極層のうちから選択された一つの電極層は、少なくとも二つの折曲部を有し、
前記P型熱電素子の高さが前記N型熱電素子の高さよりも低く、
前記P型熱電素子のみと垂直方向に重なるように位置するダミー金属層をさらに含む、
熱電モジュール。
【請求項2】
前記電極層は、互いに隣接した前記P型熱電素子の上端面と前記N型熱電素子の上端面に同時に配置される、請求項1に記載の熱電モジュール。
【請求項3】
互いに隣接した前記P型熱電素子と前記N型熱電素子にかけて形成された前記電極層の厚さは均一である、請求項2に記載の熱電モジュール。
【請求項4】
前記第1電極層および前記第2電極層のうちから選択された他の一つの電極層は、前記P型熱電素子と隣接した前記N型熱電素子でない、他のN型熱電素子の下端面と前記P型熱電素子の下端面にかけて一つの平面上に形成される、請求項2または3に記載の熱電モジュール。
【請求項5】
前記複数の熱電素子の外部に配置され、前記複数の熱電素子を基準に互いに異なる一側に位置する第1基板および第2基板をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の熱電モジュール。
【請求項6】
前記第1基板および前記第2基板のうちの少なくとも一つは、アルミナを含む、請求項5に記載の熱電モジュール。
【請求項7】
前記第1基板および前記第2基板のうちから選択された一つの基板は、前記少なくとも二つの折曲部を有する電極層に対応するように少なくとも二つの折曲部を有する、請求項6に記載の熱電モジュール。
【請求項8】
前記P型熱電素子と前記N型熱電素子の水平方向の長さが互いに異なる、請求項1から7のいずれか一項に記載の熱電モジュール。
【請求項9】
前記P型熱電素子の長さが前記N型熱電素子の長さよりも長い、請求項8に記載の熱電モジュール。
【請求項10】
前記P型熱電素子と前記N型熱電素子のうちの高さが高い熱電素子上端面に配置された第1電極層または第2電極層と熱伝達部材との間に絶縁体をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の熱電モジュール。
【請求項11】
前記P型熱電素子と前記N型熱電素子のうちの高さが高い熱電素子上端面に配置された第1電極層または第2電極層と熱伝達部材との間および前記ダミー金属層上端面に接合している絶縁体をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の熱電モジュール。
【請求項12】
前記ダミー金属層は、前記P型熱電素子と前記N型熱電素子のうちの高さが低い熱電素子の下に位置する、請求項1から10のいずれか一項に記載の熱電モジュール。
【請求項13】
前記ダミー金属層は、上部ダミー金属層と下部ダミー金属層を含み、前記上部ダミー金属層と前記下部ダミー金属層との間に、前記P型熱電素子と前記N型熱電素子のうちの高さが低い熱電素子が位置する、請求項1から10のいずれか一項に記載の熱電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互引用
本出願は、2018年8月21日付韓国特許出願第10-2018-0097692号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み含まれる。
【0002】
本発明は、熱電モジュールに関し、より具体的に発電効率および高温信頼性を向上させる熱電モジュールに関する。
【背景技術】
【0003】
熱電素子は、熱エネルギーを電気エネルギーに、電気エネルギーを熱エネルギーに直接変換することに使用される素子であり、熱電特性を有する素材を活用した技術であって、エネルギー節減という時代の要求によく応じる技術である。これは自動車、宇宙航空、半導体、バイオ、光学、コンピュータ、発電、家電製品など産業全般で広範囲に活用されている。
【0004】
具体的に、材料の両端に温度差が発生すると熱依存性を有する電子またはホールのようなキャリアの濃度差が発生し、これによって熱電現象が現れる。このような熱電現象は、電気的エネルギーを生産する熱電発電と、反対に電気供給により両端の温度差を誘発する熱電冷却/加熱に区分される。
【0005】
熱電モジュールは、ホールが移動して熱エネルギーを移動させるP型熱電素子と、電子が移動して熱エネルギーを移動させるn型熱電素子とからなるP-N熱電素子の一対が基本単位になることができる。そして、このような熱電モジュールは、P型熱電素子とN型熱電素子との間を連結する電極を備えることができる。また、熱電モジュールは、熱電素子の外部に配置されて電極などの構成要素を外部と電気的に絶縁させ、外部の物理的または化学的要素から熱電モジュールを保護するために基板を備えることができる。
【0006】
一般に熱電モジュール製造時に容易に熱電素子を作るために、P型熱電素子とN型熱電素子の高さを類似するように形成する。これは熱電素子製造過程で電極と熱電素材間の接合過程中に高温高圧の加圧過程が行われるが、この時、素材と電極の高さを合わせれば工程が容易になるためである。
【0007】
しかし、このような場合、互いに異なる水準の電気伝導度、ゼーベック特性および熱伝導度などを示すP型熱電素子とN型熱電素子を共に用いた時に現れ得る性能低下によって、熱電素材の性能を極大化することができず、これによって熱電素子の相対的な性能低下で現れる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、熱電素子の特性によりP型熱電素子とN型熱電素子の高さを異なるように形成した熱電モジュールを提供することにある。
【0009】
しかし、本発明の実施例が解決しようとする課題は、前述した課題に限定されず、本発明に含まれている技術的な思想の範囲で多様に拡張可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施例による熱電モジュールは、熱伝達部材と冷却部材との間に位置する複数の熱電素子、そして前記熱伝達部材と前記複数の熱電素子との間および前記冷却部材と前記複数の熱電素子との間にそれぞれ位置する第1電極層および第2電極層を含み、前記複数の熱電素子は、P型熱電素子およびN型熱電素子を含み、互いに隣接したP型熱電素子とN型熱電素子の高さが互いに異なり、互いに隣接した前記P型熱電素子と前記N型熱電素子にかけて形成された前記第1電極層および前記第2電極層のうちから選択された一つの電極層は、少なくとも二つの折曲部を有する。
【0011】
前記電極層は、互いに隣接した前記P型熱電素子の上端面と前記N型熱電素子の上端面に同時に配置されてもよい。
【0012】
互いに隣接した前記P型熱電素子と前記N型熱電素子にかけて形成された前記電極層の厚さは均一であってもよい。
【0013】
前記第1電極層および前記第2電極層のうちから選択された他の一つの電極層は、前記P型熱電素子と隣接した前記N型熱電素子でない、他のN型熱電素子の下端面と前記P型熱電素子の下端面にかけて一つの平面上に形成されてもよい。
【0014】
前記P型熱電素子の高さが前記N型熱電素子の高さよりも低くてもよい。
前記熱電モジュールは、前記複数の熱電素子の外部に配置され、前記複数の熱電素子を基準に互いに異なる一側に位置する第1基板および第2基板をさらに含むことができる。
【0015】
前記第1基板および前記第2基板のうちの少なくとも一つは、アルミナを含むことができる。
【0016】
前記第1基板および前記第2基板のうちから選択された一つの基板は、前記少なくとも二つの折曲部を有する電極層に対応するように少なくとも二つの折曲部を有することができる。
【0017】
前記P型熱電素子と前記N型熱電素子の水平方向の長さが互いに異なっていてもよい。
前記P型熱電素子の長さが前記N型熱電素子の長さよりも長くてもよい。
【0018】
前記熱電モジュールは、前記P型熱電素子と前記N型熱電素子のうちの高さが高い熱電素子上端面に接合している絶縁体をさらに含むことができる。
【0019】
前記熱電モジュールは、前記P型熱電素子と前記N型熱電素子のうちの高さが低い熱電素子と垂直方向に重なるように位置するダミー金属層をさらに含むことができる。
【0020】
前記熱電モジュールは、前記P型熱電素子と前記N型熱電素子のうちの高さが高い熱電素子上端面および前記ダミー金属層上端面に接合している絶縁体をさらに含むことができる。
【0021】
前記ダミー金属層は、前記P型熱電素子と前記N型熱電素子のうちの高さが低い熱電素子の下に位置してもよい。
【0022】
前記ダミー金属層は、上部ダミー金属層と下部ダミー金属層を含み、前記上部ダミー金属層と前記下部ダミー金属層との間に、前記P型熱電素子と前記N型熱電素子のうちの高さが低い熱電素子が位置してもよい。
【発明の効果】
【0023】
実施例によれば、熱電素子の性能を極大化するために、熱電素子の特性を考慮して互いに異なる高さを有する熱電素子を形成し、このような熱電素子構造を実現するために、P型熱電素子とN型熱電素子を電気的に連結させる電極がP型熱電素子とN型熱電素子との間で曲がったり折れた部分を有するようにして熱電モジュールの発電効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施例による熱電モジュールを概略的に示す断面図である。
図2図1の実施例で素子接合時の加圧工程を説明する断面図である。
図3a図1の実施例による熱電モジュールの電極構造を示すための斜視図である。
図3b図1の実施例による熱電モジュールの電極構造を示すための斜視図である。
図4】本発明の他の一実施例による熱電モジュールに含まれている絶縁コーティング層を示す斜視図である。
図5】本発明の他の一実施例による熱電モジュールに含まれている絶縁性基板構造を示す斜視図である。
図6】本発明の他の一実施例による熱電モジュールを概略的に示す断面図である。
図7図6の実施例による熱電モジュールで電極構造を示すための斜視図である。
図8】本発明の他の一実施例による熱電モジュールに含まれている絶縁コーティング層を示す斜視図である。
図9】本発明の他の一実施例による熱電モジュールに含まれているダミー金属層と絶縁性基板構造を示す斜視図である。
図10】本発明の他の一実施例による熱電モジュールに含まれているダミー金属層を示す断面図である。
図11】本発明の他の一実施例による熱電モジュールに含まれている上下部ダミー金属層を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付した図面を参照して本発明の多様な実施例について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。本発明は、多様な異なる形態に実現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0026】
また、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」という時、これは特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0027】
また、明細書全体において、「平面状」という時、これは対象部分を上方から見た時を意味し、「断面状」という時、これは対象部分を垂直に切断した断面を側方から見た時を意味する。
【0028】
図1は本発明の一実施例による熱電モジュールを概略的に示す断面図である。
図1を参照すると、本発明の一実施例による熱電モジュールは、熱伝達部材100、熱伝達部材100と対応する冷却部材200、熱伝達部材100と冷却部材200との間に位置する複数の熱電素子160、260を含む。この時、熱電素子160、260の酸化を防止するために熱電素子自体をコーティングしたり、複数の熱電素子160、260、熱伝達部材100および冷却部材200は全て真空構造物内に位置することができる。
【0029】
本実施例で複数の熱電素子160、260が互いに電気的に連結され得るように第1、2電極層140、240が形成されている。図示していないが、モジュール電極により外部端子と連結されて電気的な信号を伝達することができる。本実施例による熱電モジュールは、熱伝達部材100と熱電素子160、260との間および冷却部材200と熱電素子160、260との間のうちの少なくとも一つに位置する熱伝導層105、205をさらに含むことによって、熱伝達部材100と熱電素子160、260との密着性および冷却部材200と熱電素子160、260との密着性を高め、熱伝達効率を高めることができる。
【0030】
熱電モジュールは、熱伝達部材100と冷却部材200との間の温度差を利用して発電したり電気供給により冷却/加熱される。前述した熱伝導層105、205は、より具体的に、熱伝達部材100と第1基板110との間および冷却部材200と第2基板210との間に位置することができる。熱伝導層105、205は、熱伝達部材100からの熱を熱電素子160、260に伝達したり冷却部材200に放熱させると同時に、外部からの衝撃や振動および熱電モジュール構成要素の熱膨張によるマウンティング負荷増加を緩和することができる。熱伝導層105、205は、黒鉛シート、サーマルグリース(thermal grease)およびサーマルパッド(thermal pad)のうちの少なくとも一つを含むことができる。
【0031】
本発明の実施例による熱電素子集合体は、第1基板110、第2基板210、複数の電極層140、240および複数の熱電素子160、260を含む。
【0032】
第1、2基板110、210は、板状で形成され、絶縁性を有することができ、熱電素子集合体の外側部に配置されて熱電素子160、260など熱電モジュールを構成する多様な素子を保護し、熱電素子集合体と外部との間に電気的絶縁性を維持させることができる。第1、2基板110、210は、アルミナ基板であってもよい。第1、2基板110、210を代替して絶縁層コーティングをすることもできる。
【0033】
第1、2電極層140、240は、第1、2基板110、210上に位置し、電気伝導性を有して電流が流れることができるようにする。第1、2電極層140、240は、第1、2基板110、210の少なくとも一表面が露出されるように形成されて、熱電素子160、260が実装されてもよい。少なくとも二つの熱電素子160、260が第1電極層140または第2電極層240上に実装されてもよく、第1電極層140および第2電極層240は、これら二つの熱電素子160、260の間に電流が流れることができる経路を提供する。第1基板110の上面、第2基板210の下面に、蒸着、スパッタリング、直接圧着、プリンティングなどの方法で第1、2電極層140、240が形成されてもよく、第1基板110に形成された第1電極層140と第2基板210に形成された第2電極層240との間に熱電素子160、260が配置されてもよい。
【0034】
第1、2電極層140、240は、伝導性物質で形成されてもよく、例えば銅、金、銀、ニッケル、アルミニウム、クロム、錫、インジウム、亜鉛などを含む群から選択される少なくとも1種の金属またはこれら金属を含む合金で形成されてもよい。
【0035】
第1電極層140と第1基板110との間および第2電極層240と第2基板210との間にはそれぞれこれらの間の堅固な接合のための第1、2接合層130、230が位置することができる。接合層130、230は、Pb、Al、Ni、Sn、Cu、Ti、Mo、Al、Agおよびこれらの合金のような金属物質を用いて形成されてもよい。
【0036】
熱電素子160、260と第1電極層140との間および/または熱電素子160、260と第2電極層240との間には拡散防止層、素材接合層、保護層などの機能層を含む補助層150、250が位置することができる。
【0037】
熱電素子160、260は、熱電材料、つまり、熱電半導体で構成されてもよい。熱電半導体には、カルコゲナイド系、スクッテルダイト系、シリサイド系、クラスレート系、ハーフホイスラー系など多様な種類の熱電材料が含まれてもよい。例えば、BiTe系物質、PbTe系物質などの熱電材料を適切にドーピングして用いることができる。
【0038】
熱電素子160、260は、N型熱電素子260とP型熱電素子160を含み、N型熱電素子260は電子が移動して熱エネルギーを移動させることができ、P型熱電素子160はホールが移動して熱エネルギーを移動させることができる。熱電素子160、260は、N型熱電素子260とP型熱電素子160が対をなして一つの基本単位を構成することができる。N型熱電素子260および/またはP型熱電素子160は、二つ以上備わることによって、多数の対をなすことができる。また、このようなN型熱電素子260とP型熱電素子160は交互に配列されることによって多数のN型熱電素子260-P型熱電素子260の対を形成することもできる。
【0039】
N型熱電素子260とP型熱電素子160は、第1、2電極層140、240を通じて電気的に連結されてもよい。例えば、一つの第1電極層140を基準に、N型熱電素子260は第1電極層140の一端に接合され、P型熱電素子160は第1電極層140の他の一端に接合されてもよい。
【0040】
本実施例によれば、互いに異なる水準の電気伝導度、ゼーベック特性および熱伝導度などを示すP型熱電素子とN型熱電素子を共に用いた時に現れ得る性能低下を減らし、熱電モジュールの発電効率を向上させるために、P型熱電素子160とN型熱電素子260の高さを互いに異なるように形成する。例えば、高さが低い熱電素子が高さが高い熱電素子の80%以下の高さを有することができる。
【0041】
このような熱電素子構造を実現するために、図1に示すように、P型熱電素子とN型熱電素子を電気的に直列連結させる電極がP型熱電素子とN型熱電素子の間で曲がったり折れた部分を有することができる。具体的に、P型熱電素子160の高さがN型熱電素子260の高さよりも低いが、第2電極層240は互いに隣接したP型熱電素子160とN型熱電素子260にかけて連続的に形成されつつ、P型熱電素子160の上端面とN型熱電素子260の上端面に同時に配置される。第2電極層240がN型熱電素子260上端面からP型熱電素子160の上端面へ乗り越える時、高さの差により第2電極層240はN型熱電素子260の角部付近で1度折曲し、再びP型熱電素子160の角部付近で1度折曲してもよい。この時、互いに隣接したP型熱電素子160とN型熱電素子260にかけて形成された第2電極層240の厚さは均一であってもよい。
【0042】
これとは逆に、P型熱電素子160の下端面とN型熱電素子260の下端面に位置する第1電極層140は、互いに隣接したP型熱電素子160の下端面とN型熱電素子260の下端面にかけて連続的に形成されつつ、P型熱電素子160の下端面とN型熱電素子260の下端面の高さとが同一であるため、第1電極層140は一つの平面上に形成されてもよい。P型熱電素子160を基準に図1で左側に隣接したN型熱電素子260方向に第2電極層240が連続的に形成されているならば、右側に隣接したN型熱電素子260方向に第1電極層140は連続的に形成されてもよい。
【0043】
P型およびN型熱電素子の高さを共に減らすようになると、総抵抗が減少し、出力が大きく増加し、出力密度の利得も大きくなり得る。しかし、温度差の形成が難しく、結果的に熱電素子効率が低くなり得る。しかし、本実施例によれば、P型熱電素子とN型熱電素子の高さを互いに異なるようにして熱伝達効率が高くなるように素子を作製することによって出力密度と素子効率、素材消耗率および素子価格の側面から有利な素子デザインを実現することができる。具体的に、N型熱電素材の場合、電気伝導度(Electrical conductivity)が大きいため、素材が長くても抵抗が小さく、熱伝導度(Thermal conductivity)も大きいため、大きい高さを有することで温度差が大きく発生する。しかし、P型熱電素材の場合、電気伝導度が小さいため、高さが低いことでN型熱電素材と抵抗水準が類似になり、総抵抗減少に大きく有利になり、熱伝導度も小さいため、高さが低くても熱電特性を実現するための温度差が大きく発生することができる。
【0044】
前述したとおり、P型熱電素子160とN型熱電素子260の特性を考慮して各熱電素子の高さを互いに異なるように形成するだけでなく、最大出力形成のために熱電素子の長さも互いに異なるように形成することができる。ここで長さとは、水平方向への長さ、つまり、第1電極層140が互いに隣接したP型熱電素子160とN型熱電素子260にかけて連続的に形成される時、P型熱電素子160からN型熱電素子260まで第1電極層140が形成される方向に沿って定義される長さをいう。P型熱電素子160の長さはN型熱電素子260の長さよりも長くてもよい。
【0045】
図2図1の実施例で素子接合時の加圧工程を説明する断面図である。
図2を参照すると、本発明の一実施例による熱電モジュールを製造する時、前述したとおり、P型熱電素子160とN型熱電素子260の高さの差により熱電素子と電極の接合に困難がある。このような問題を解消するために、本実施例による熱電モジュール製造時、図2に示したとおり、一方向に突出した複数の突起1100を有する枠1000を用いて高温加圧工程を行うことができる。ここで、枠1000は、高さが低いP型熱電素子160に対応するように複数の突起1100を有することができ、突起1100は、高温加圧工程時にP型熱電素子160の上端面に位置する第2電極層240を直接加圧することができる。
【0046】
図3図1の実施例による熱電モジュールで電極構造を示すための斜視図である。図3aは第1電極層140の上に熱電素子160、260が実装された様子を示し、図3bは実装された熱電素子160、260の上に第2電極層240まで形成された様子を示す斜視図である。
【0047】
図3aおよび図3bを参照すると、N型熱電素子260とP型熱電素子160が対をなして一つの基本単位が、複数個形成されて基本単位が連結された構造の一例を示している。図3bに示された矢印のように電流が生成されて流れることができる。図3aおよび図3bに示す熱電素子160、260の連結構造は一つの例示に過ぎず、基本単位が連結された構造は多様に変形され得る。
【0048】
図4は本発明の他の一実施例による熱電モジュールに含まれている絶縁コーティング層を示す斜視図である。
【0049】
図4を参照すると、第1電極層140および第2電極層240上に絶縁コーティング層135、235が形成されて図1で説明した第1基板110と第2基板210を代替することができる。絶縁コーティング層135、235は絶縁体であり、絶縁コーティング層135、235は熱電モジュール外部の熱源/冷却部材への漏洩電流形成を抑制することができる。
【0050】
図5は本発明の他の一実施例による熱電モジュールに含まれている絶縁性基板構造を示す斜視図である。
【0051】
図5を参照すると、本実施例による第2基板210は、図1で説明した第2基板210とは異なり、板状型でなく、折曲構造を有する。言い換えると、折曲構造を有する第2電極層240上に形成された第2基板210も二つの折曲部を有しつつ、第2電極層240に密着するように形成されてもよい。図5で説明の便宜上、P型熱電素子160上端の第2電極層240の上にのみ第2基板210を示したが、第2基板210が延長されてN型熱電素子260上端の第2電極層240の上も第2基板210で覆われてもよい。
【0052】
図6は本発明の他の一実施例による熱電モジュールを概略的に示す断面図である。図7図6の実施例による熱電モジュールで電極構造を示すための斜視図である。
【0053】
図6および図7を参照すると、図1および図3で説明した実施例とほぼ同一であるが、本実施例による電池モジュールは、高さが低いP型熱電素子160と垂直方向に重なるように位置するダミー金属層300をさらに含む。ダミー金属層300は、第2基板210と第2電極層240との間に位置することができる。ダミー金属層300と第2電極層240との間に接合層310が形成されてもよい。接合層310は、第2電極層240にダミー金属層300を付着するためのものであり、Pb、Al、Ni、Sn、Cu、Ti、Mo、Al、Agおよびこれらの合金のような金属物質を用いて形成されてもよい。
【0054】
ダミー金属層300は、P型熱電素子160の個数と同一の個数で複数個が形成されたりP型熱電素子160の個数よりも少ない個数で形成されてもよい。出力を極大化するためには、抵抗は小さく、温度差は大きくなければならないが、ダミー金属層300を用いない場合に備えてダミー金属層300を用いる場合、折曲した電極構造の電気回路内にダミー金属層300が入らないため、総抵抗はそのままであるが、熱源から熱を伝達する熱流れ経路は追加される。したがって、ダミー金属層300を用いない時に備えて、最小化されている総抵抗を維持しつつも温度差を大きくして出力を極大化させることができる。
【0055】
図8は本発明の他の一実施例による熱電モジュールに含まれている絶縁コーティング層を示す斜視図である。
【0056】
図8を参照すると、第1電極層140および第2電極層240上に絶縁コーティング層135、235が形成されて図1で説明した第1基板110と第2基板210を代替することができる。ここで、絶縁コーティング層235は、ダミー金属層300の上にも形成されてもよい。絶縁コーティング層235は絶縁体であってもよい。
【0057】
図9は本発明の他の一実施例による熱電モジュールに含まれているダミー金属層と絶縁性基板構造を示す斜視図である。
【0058】
図9を参照すると、本実施例による第2基板210は、図1で説明した第2基板210とは異なり、板状型でなく、折曲構造を有する。言い換えると、折曲構造を有する第2電極層240上に形成された第2基板210も二つの折曲部を有し、第2電極層240に密着するように形成されてもよい。この時、ダミー金属層300は、第2基板210の上に形成されてもよい。
【0059】
図10は本発明の他の一実施例による熱電モジュールに含まれているダミー金属層を示す断面図である。図11は本発明の他の一実施例による熱電モジュールに含まれている上下部ダミー金属層を示す断面図である。
【0060】
図10を参照すると、図10の実施例は図6の変形例であり、ダミー金属層302は図6の実施例とは異なり、P型熱電素子162よりも熱伝達部材100に近く位置する。
【0061】
図11を参照すると、図11の実施例は図10の変形例であり、ダミー金属層は上部ダミー金属層306と下部ダミー金属層304を含み、上部ダミー金属層306と下部ダミー金属層304との間に高さが低いP型熱電素子164が位置する。
【0062】
図10および図11で説明した実施例は、ダミー金属層の種類、本図面には示されていないが接合素材の種類、隣接した構成要素との熱膨張係数マッチング、接合強度および接合特性、熱電素材を除いた他の構成要素の熱安定性などにより誘導され得る構造である。
【0063】
以上で本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるのではなく、特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の多様な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0064】
100:熱伝達部材
140:第1電極層
240:第2電極層
160、162、164:P型熱電素子
260:N型熱電素子
200:冷却部材
300、302:ダミー金属層
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11