(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】有機発光素子用インク組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/32 20140101AFI20220204BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20220204BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220204BHJP
C07D 305/06 20060101ALI20220204BHJP
C08F 12/34 20060101ALI20220204BHJP
C08G 65/18 20060101ALI20220204BHJP
C07C 217/94 20060101ALN20220204BHJP
【FI】
C09D11/32
H05B33/10
H05B33/14 A
C07D305/06
C08F12/34
C08G65/18
C07C217/94
(21)【出願番号】P 2020529476
(86)(22)【出願日】2019-08-23
(86)【国際出願番号】 KR2019010789
(87)【国際公開番号】W WO2020045904
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2020-05-29
(31)【優先権主張番号】10-2018-0103831
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ミ・キョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヨン・ジュン
【審査官】岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0093995(KR,A)
【文献】特開2010-170829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D11
H05B33
C07D305
C08F12
C08G65
C07C217
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物、
下記化学式A~Hのうちのいずれか1つで表されるpドーピング物質、
下記化学式2で表される化合物、および
沸点が180℃以上である溶媒を含む、
有機発光素子用インク組成物:
【化1】
上記化学式1中、
LおよびL
1~L
4は、それぞれ独立して、置換された又は非置換の炭素数6~60のアリーレンであり、
Ar
1およびAr
2は、それぞれ独立して、置換された又は非置換の炭素数6~60のアリール;または置換された又は非置換のN、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換された又は非置換の炭素数1~60のアルキル、置換された又は非置換の炭素数1~60のアルコキシ、置換された又は非置換の炭素数6~60のアリール、またはN、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
Y
1~Y
4は、それぞれ独立して、水素、または-X-Aであるものの、ただし、Y
1~Y
4のうちの2以上が-X-Aであり、
Xは、OまたはSであり、
Aは、熱または光によって架橋可能な官能基であり、
n1およびn4は、それぞれ0~4の整数であり、
n2およびn3は、それぞれ0~3の整数であり、
【化25】
【化26】
【化27】
【化2】
上記化学式2中、
Rは、炭素数3~60のアルキル;炭素数3~60のアルケニル;または炭素数3~60のアルキルで置換されたフェニルであり、
nは、4~20の整数である。
【請求項2】
Aは、下記で構成される群から選択されるいずれか一つである、請求項1に記載のインク組成物:
【化3】
前記中、
T
1は水素;または置換された又は非置換の炭素数1~6のアルキルであり、
T
2~T
4は、それぞれ独立して、置換された又は非置換の炭素数1~6のアルキルである。
【請求項3】
上記化学式1は、下記化学式1-1~1-4のうちのいずれか一つで表される、請求項1に記載のインク組成物:
【化4】
【化5】
上記化学式1-1~1-4中、
R
1~R
4、n1~n4、Ar
1、Ar
2およびLは請求項1の化学式1で定義したとおりであり、
X
1~X
4は、それぞれ独立して、OまたはSであり、
A
1~A
4は、それぞれ独立して、熱または光によって架橋可能な官能基であり、
R
21~R
26は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換された又は非置換の炭素数1~60のアルキル、置換された又は非置換の炭素数1~60のアルコキシ、置換された又は非置換の炭素数6~60のアリール、またはN、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
p1およびp2は、それぞれ0~5の整数であり、
p3およびp4は、それぞれ0~4の整数であり、
p5およびp6は、それぞれ0~7の整数である。
【請求項4】
Lは、下記化学式1-Aまたは1-Bである、請求項1~3のいずれか一項に記載のインク組成物:
【化6】
上記化学式1-Aおよび1-B中、
R
11~R
13は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換された又は非置換の炭素数1~60のアルキル、置換された又は非置換の炭素数1~60のアルコキシ、置換された又は非置換の炭素数6~60のアリール、またはN、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
m1~m3は、それぞれ0~4の整数である。
【請求項5】
上記化学式1で表される化合物は、下記で構成される群から選択されるいずれか一つである、請求項1に記載のインク組成物:
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
。
【請求項6】
Rは、炭素数10~20のアルキル;炭素数10~20のアルケニル;または炭素数10~20のアルキルで置換されたフェニルである、請求項1~5のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項7】
上記化学式2で表される化合物は、前記インク組成物総重量に対して0.05~1重量%で含まれる、請求項1~6のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項8】
前記溶媒は、脂肪族エステル、芳香族エステル、脂肪族エーテル、芳香族エーテル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、またはグリコールエーテルである、請求項1~
7のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項9】
前記溶媒は、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールn-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、3-フェノキシトルエン、ジベンジルエーテル、ビス(メトキシメチル)ベンゼン、イソアミルベンゾエート、イソアミルオクタノエート、デシルベンゼン、1-メトキシナフタレン、フェネチルオクタノエート、1,3-ジメトキシベンゼン、エチル4-メトキシベンゾエート、ヘキシルベンゾエート、1-エチルナフタレン、シクロヘキシルベンゼン、オクチルベンゼン、2-エチルナフタレン、ベンジルブチレート、p-アニスアルデヒドジメチルアセタール、3-フェニル-1-プロパノール、p-プロピルアニソール、エチルベンゾエート、ブチルフェニルエーテル、3,4-ジメチルアニソール、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジブチルオキサレート、または3-フェノキシベンジルアルコールである、請求項1~
7のいずれか一項に記載のインク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年8月31日付の韓国特許出願第10-2018-0103831号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、インクジェット工程に適用できる有機発光素子用インク組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、有機発光現象とは、有機物質を利用して電気エネルギーを光エネルギーに転換させる現象をいう。有機発光現象を利用する有機発光素子は、広い視野角、優れたコントラスト、速い応答時間を有し、輝度、駆動電圧および応答速度特性に優れて多くの研究が進められている。
【0004】
有機発光素子は、一般的に正極と負極および前記正極と負極との間に有機物層を含む構造を有する。前記有機物層は、有機発光素子の効率と安全性を高めるために、それぞれ異なる物質から構成された多層の構造からなる場合が多く、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などからなる。このような有機発光素子の構造において、2つの電極の間に電圧をかけると、正極からは正孔が、負極からは電子が有機物層に注入され、注入された正孔と電子が接した時、エキシトン(exciton)が形成され、このエキシトンが再び基底状態に落ちる時、光が出る。
【0005】
一方、最近では工程費用節減のために既存の蒸着工程の代わりに溶液工程、特にインクジェット工程を利用した有機発光素子が開発されている。初期にはすべての有機発光素子層を溶液工程でコーティングして有機発光素子を開発しようとしたが、現在の技術では限界があり、層構造形態でHIL、HTL、EMLだけを溶液工程で進行し、以後の工程は、既存の蒸着工程を活用するハイブリッド(hybrid)工程を研究中である。
【0006】
インクジェット工程に使用されるインク組成物は、吐出特性が良好でなければならないので、高沸点の溶媒を使用しなければならない。沸点が低い溶媒を使用する場合には、インクジェットヘッドのノズル部が詰まるおそれがあり、初期のジェッティング性が不良であるかまたは蛇行が生じるおそれがある。また、インク組成物が吐出される空間であるbank内にインクを満たし、乾燥したとき、インク膜がbank内に段差なく平坦に満たされなければならないし、インク膜表面が滑らかでなければならない。しかし、溶媒に対する材料の溶解度が良くない場合、または材料と溶媒とが混ざり合わない場合、溶媒が急速に乾燥する過程(例えば、真空乾燥)で、析出が起こるかまたは表面特性(膜イメージ)が悪くなる。前記問題を解決するために、インク組成物に含まれる機能性物質に応じて使用される溶媒を適切に選択しなければならないが、溶媒の選択だけでは膜イメージと膜の平坦度を全て解決し難い場合が多い。
【0007】
そこで、本発明では後述するように、機能性物質と溶媒以外にさらに添加剤を使用することにより、前記問題を解決する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国特開第10-2000-0051826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、インクジェット工程に適用できる有機発光素子用インク組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、下記化学式1で表される化合物、下記化学式2で表される化合物、および溶媒を含む、有機発光素子用インク組成物を提供する:
【化1】
上記化学式1中、
LおよびL
1~L
4は、それぞれ独立して、置換された又は非置換の炭素数6~60のアリーレンであり、
Ar
1およびAr
2は、それぞれ独立して、置換された又は非置換の炭素数6~60のアリール;または置換された又は非置換のN、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換された又は非置換の炭素数1~60のアルキル、置換された又は非置換の炭素数1~60のアルコキシ、置換された又は非置換の炭素数6~60のアリール、またはN、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
Y
1~Y
4は、それぞれ独立して、水素、または-X-Aであるものの、ただし、Y
1~Y
4のうちの2以上が-X-Aであり、
Xは、OまたはSであり、
Aは、熱または光によって架橋可能な官能基であり、
n1およびn4は、それぞれ0~4の整数であり、
n2およびn3は、それぞれ0~3の整数であり、
【化2】
上記化学式2中、
Rは、炭素数3~60のアルキル;炭素数3~60のアルケニル;または炭素数3~60のアルキルで置換されたフェニルであり、
nは、4~20の整数である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る有機発光素子形成用インク組成物は、インクジェット工程でインク膜の形成後に乾燥したとき、表面が滑らかでかつ平坦な膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実験例によりピクセルにインクを吐き出す方法を図式的に示す図である。
【
図2】本発明の実験例により膜イメージがO.Kと評価されているものの例を示す図である。
【
図3】本発明の実験例により膜イメージがN.Gと評価されているものの例を示す図である。
【
図4】本発明の実験例による膜の平坦度の測定方法を図式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の理解を助けるためにより詳しく説明する。
【0014】
(用語の定義)
本明細書において、
【化3】
は、他の置換基に連結される結合を意味する。
【0015】
本明細書において、‘置換された又は非置換の’という用語は、重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミノ基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アラルキル基;アラルケニル基;アルキルアリール基;アルキルアミン基;アラルキルアミン基;ヘテロアリールアミン基;アリールアミン基;アリールホスフィン基;またはN、OおよびS原子のうちの1個以上を含むヘテロ環基からなる群より選択された1個以上の置換基で置換されているかまたは非置換であり、あるいは前記例示された置換基のうちの2以上の置換基が連結された置換基で置換された又は非置換であることを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であってもよい。すなわち、ビフェニル基は、アリール基であってもよく、2個のフェニル基が連結された置換基と解釈されてもよい。
【0016】
本明細書において、カルボニル基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~40であることが好ましい。具体的には、下記のような構造の基であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【化4】
【0017】
本明細書において、エステル基は、カルボキシル基の酸素が、炭素数1~25の直鎖、分枝鎖もしくは環鎖アルキル基、または炭素数6~25のアリール基で置換されていてもよい。具体的には、下記構造式の基であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【化5】
【0018】
本明細書において、イミド基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~25であることが好ましい。具体的には、下記のような構造の基であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【化6】
【0019】
本明細書において、シリル基は、具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本明細書において、ホウ素基は、具体的には、トリメチルホウ素基、トリエチルホウ素基、t-ブチルジメチルホウ素基、トリフェニルホウ素基、フェニルホウ素基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
本明細書において、ハロゲン基の例としては、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素がある。
【0022】
本明細書において、前記アルキル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1~40であることが好ましい。一実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~20である。他の一実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~10である。さらに他の一実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~6である。アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
本明細書において、前記アルケニル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、2~40であることが好ましい。一実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~20である。他の一実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~10である。さらに他の一実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~6である。具体的な例としては、ビニル、1-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、1,3-ブタジエニル、アリル、1-フェニルビニル-1-イル、2-フェニルビニル-1-イル、2,2-ジフェニルビニル-1-イル、2-フェニル-2-(ナフチル-1-イル)ビニル-1-イル、2,2-ビス(ジフェニル-1-イル)ビニル-1-イル、スチルベニル基、スチレニル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
本明細書において、シクロアルキル基は特に限定されないが、炭素数3~60であることが好ましく、一実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~30である。他の一実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~20である。さらに他の一実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~6である。具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、3-メチルシクロペンチル、2,3-ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、2,3-ジメチルシクロヘキシル、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
本明細書において、アリール基は特に限定されないが、炭素数6~60であることが好ましく、単環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6~30である。他の一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6~20である。前記単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などであってもよいが、これらに限定されるものではない。前記多環式アリール基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本明細書において、フルオレニル基は置換されていてもよく、置換基2個が互いに結合してスピロ構造を形成してもよい。前記フルオレニル基が置換される場合、
【化7】
などであってもよい。ただし、これらに限定されるものではない。
【0027】
本明細書において、ヘテロ環基は、ヘテロ元素としてO、N、Si、およびSのうちの1個以上を含むヘテロ環基であって、炭素数は特に限定されないが、炭素数2~60であることが好ましい。ヘテロ環基の例としては、チオフェン基、フラニル基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾル基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基、アクリジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、キノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリル基、インドール基、カルバゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラニル基、フェナントロリン基(phenanthroline)、イソオキサゾリル基、チアジアゾリル基、フェノチアジニル基、およびジベンゾフラニル基などがあるが、これらにのみに限定されるものではない。
【0028】
本明細書において、アラルキル基、アラルケニル基、アルキルアリール基、アリールアミン基中のアリール基は、上述したアリール基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アラルキル基、アルキルアリール基、アルキルアミン基中のアルキル基は、上述したアルキル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロアリールアミン中のヘテロアリールは、上述したヘテロ環基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アラルケニル基中のアルケニル基は、上述したアルケニル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アリーレンは、2価の基であることを除けば、上述したアリール基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロアリーレンは、2価の基であることを除けば、上述したヘテロ環基に関する説明が適用可能である。本明細書において、炭化水素環は1価の基ではなく、2個の置換基が結合して形成したことを除けば、上述したアリール基またはシクロアルキル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロ環は1価の基ではなく、2個の置換基が結合して形成したことを除けば、上述したヘテロ環基に関する説明が適用可能である。
【0029】
(化学式1で表される化合物)
上記化学式1で表される化合物は、有機発光素子中の機能層を構成する物質であって、化合物中に酸素(O)または硫黄(S)原子を含むことによって、熱処理またはUV処理によって完全に硬化した安定な薄膜を形成することができる。また、溶媒との親和性が高く、溶媒選択性(orthogonality)を有し、前記化合物を含む有機物層以外に他の層を溶液工程で形成する時に使用する溶媒に対して耐性を有して、他の層への移動を防止することができる。また、これを含む有機発光素子は、低い駆動電圧、高い発光効率および高い寿命特性を有することができる。
【0030】
好ましくは、Aは、下記で構成される群から選択されるいずれか一つである:
【化8】
上記中、
T
1は、水素;または置換された又は非置換の炭素数1~6のアルキルであり、
T
2~T
4は、それぞれ独立して、置換された又は非置換の炭素数1~6のアルキルである。
【0031】
好ましくは、上記化学式1は、下記化学式1-1~1-4のうちのいずれか一つで表される:
【化9】
【化10】
上記化学式1-1~1-4中、
R
1~R
4、n1~n4、Ar
1、Ar
2およびLは上記化学式1で定義したとおりであり、
X
1~X
4は、それぞれ独立して、OまたはSであり、
A
1~A
4は、それぞれ独立して、熱または光によって架橋可能な官能基であり、
R
21~R
26は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換された又は非置換の炭素数1~60のアルキル、置換された又は非置換の炭素数1~60のアルコキシ、置換された又は非置換の炭素数6~60のアリール、またはN、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
p1およびp2は、それぞれ0~5の整数であり、
p3およびp4は、それぞれ0~4の整数であり、
p5およびp6は、それぞれ0~7の整数である。
【0032】
好ましくは、Lは下記化学式1-Aまたは1-Bである:
【化11】
上記化学式1-Aおよび1-B中、
R
11~R
13は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換された又は非置換の炭素数1~60のアルキル、置換された又は非置換の炭素数1~60のアルコキシ、置換された又は非置換の炭素数6~60のアリール、またはN、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
m1~m3は、それぞれ0~4の整数である。
【0033】
上記化学式1で表される化合物の代表的な例は下記のとおりである:
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
一方、上記化学式1で表される化合物は、下記反応式1のような方法で製造することができる。
【化30】
上記反応式1中、X’を除いた残りの定義は先に定義した通りであり、X’はハロゲンであり、好ましくはブロモ、またはクロロである。上記反応式1はアミン置換反応であって、パラジウム触媒と塩基の存在下で行うことが好ましく、アミン置換反応のための反応基は当業界で知られたものにより変更可能である。前記製造方法は、後述する製造例でより具体化され得る。
【0053】
一方、本発明に係るコーティング組成物は、上記化学式1で表される化合物以外にpドーピング物質をさらに含む。前記pドーピング物質とは、ホスト物質がp半導体特性を有する物質を意味する。p半導体特性とは、HOMO(highest occupied molecular orbital)エネルギー準位で正孔の注入を受けたり輸送したりする特性、すなわち、正孔の伝導度が大きい物質の特性を意味する。
【0054】
好ましくは、前記pドーピング物質は、下記化学式A~Hのうちのいずれか一つで表される。
【0055】
【0056】
好ましくは、前記pドーピング物質の含有量は、上記化学式1で表される化合物に対して0重量%~50重量%である。
【0057】
(化学式2で表される化合物)
上記化学式1で表される化合物を用いる溶液工程で機能層を形成することができるが、最近では溶液工程中でもインクジェットプリンティング(inkjet printing)工程が最も多く検討されている。インクジェットプリンティング工程は微細なドロップ(drop)(液滴)を吐出するため、材料の消耗量を最小化できるだけでなく、精密パターンが可能であるという利点がある。
【0058】
インクジェット工程では、インクをピクセル部に吐出した後、溶媒を乾燥して意図した機能層を形成することになるが、この過程において表面が滑らかでありながらも(膜イメージに優れ)、ピクセル内の段差が少ない平坦な膜(膜の平坦度に優れ)を形成し難い。すなわち、あるインクはピクセル内の段差が少なく現れるなどの膜の平坦度は優れているが、膜表面の粗さ(roughness)が大きく現れたり、析出などの問題が発生したりして膜イメージが不良であるか、逆に膜イメージは優れているが、インク膜がbank壁面に這い上がるか、またはピクセル部中央が膨らむなどの膜の平坦度が不良である場合もある。すなわち、2つの条件を全て満足する溶媒を探すのに非常に難しい場合が多い。
【0059】
しかし、本発明においては上記化学式1で表される化合物をインクジェット工程に適用する場合にも、上述した問題が発生しないように上記化学式2で表される化合物をさらに含む。
【0060】
理論的に限定されるわけではないが、上記化学式2で表される化合物は、親水性基と疎水性基を同時に有しているため、上記化学式1で表される化合物が真空乾燥する過程で溶媒と材料との相互作用を調節して乾燥した後、平坦な層が生成されるようになる。
【0061】
好ましくは、Rは、炭素数10~20のアルキル;炭素数10~20のアルケニル;または炭素数10~20のアルキルで置換されたフェニルである。
【0062】
上記化学式2で表される化合物は、直接製造するかまたは商業的に購入して使用することができ、代表的な例としては、Brij(登録商標)C10、Brij(登録商標)S10、Brij(登録商標)O10、IGEPAL(登録商標)CO-520、IGEPAL(登録商標)CO-630、Triton(登録商標)X-100、Triton(登録商標)X-114、Triton(登録商標)X-45などが挙げられる。
【0063】
一方、上記化学式2で表される化合物は、本発明に係るインク組成物総重量に対して0.05~1重量%で含まれることが好ましい。前記含有量が0.05重量%未満の場合には上記化学式2で表される化合物の添加による効果が微小であり、前記含有量が1重量%を超える場合には添加による効果が実質的に増加しないだけでなく、むしろ有機発光素子の発光効率や寿命を阻害する恐れがある。
【0064】
(溶媒)
本発明に使用される溶媒は、上記化学式1で表される化合物と上記化学式2で表される化合物を溶解させるもので、インクジェット工程に使用される溶媒である。また、上述したpドーピング物質が使用される場合には、これを共に溶解可能な溶媒である。
【0065】
インクジェット工程は、インクジェットヘッドを通して微細なインク滴を吐出するので、ヘッドでの吐出安定性(直進性、未吐出なし、初期ジェッティング良好など)が重要なので、ノズル部で溶液が乾燥しないように維持されることが重要である。ノズル部でインクが乾燥すると、ノズル部の目詰りやインクが曲がって吐出される(蛇行)問題などが発生するが、これを防止するため、一般的に高沸点の溶媒を使用する。
【0066】
好ましくは前記溶媒は、沸点(boiling point)が180℃であり、より好ましくは190℃以上であり、最も好ましくは200℃以上である。一方、前記沸点の上限は特に制限されないが、沸点が高すぎると溶媒を乾燥しにくいので、一例として400℃以下、好ましくは350℃以下である。
【0067】
前記溶媒は高沸点の溶媒で、かつ機能層材料を良好に溶解できるものであればすべて使用可能であり、単一溶媒または混合溶媒組成であってもよい。その中で以下の溶媒を含む場合、添加剤の効果が極大化され得るが、その例としては、脂肪族エステル、芳香族エステル、脂肪族エーテル、芳香族エーテル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、またはグリコールエーテルなどが挙げられる。
【0068】
好ましくは、前記溶媒は下記化学式3で表される:
【化34】
上記化学式3中、
R’は、水素、炭素数1~5のアルキル、または炭素数6~60のアリールであり、
R’’は、炭素数1~10のアルキル、炭素数1~10のアルコキシ、ヒドロキシ、または-COO-(炭素数1~10のアルキル)であり、
nは、1~6の整数である。
【0069】
上記化学式3で表される化合物は、グリコールエーテル系溶媒であって、表面張力が低くて平坦な層を形成するのに有利である。
【0070】
前記溶媒の代表的な例としては、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(triethylene glycol monobutyl ether)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(diethylene glycol dibutyl ether)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(tetraethylene glycol dimethyl ether)、テトラエチレングリコールn-ブチルエーテル(tetraethylene glycol n-butyl ether)、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(triethylene glycol monoisopropyl ether)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(diethylene glycol monohexyl ether)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(triethylene glycol monomethyl ether)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(diethylene glycol monobutyl ether acetate)、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(diethylene glycol monoisobutyl ether)、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル(dipropylene glycol n-butyl ether)などが挙げられる。
【0071】
それ以外にも、3-フェノキシトルエン(3-pheoxytoluene)、ジベンジルエーテル(dibenzyl ether)、ビス(メトキシメチル)ベンゼン(bis(methoxymethyl)benzene)、イソアミルベンゾエート(isoamylbenzoate)、イソアミルオクタノエート(isoamyl octanoate)、デシルベンゼン(decylbenzene)、1-メトキシナフタレン(1-methoxynaphthalene)、フェネチルオクタノエート(phenethyl octanoate)、1,3-ジメトキシベンゼン(1,3-dimethoxybenzene)、エチル4-メトキシベンゾエート(ethyl 4-methoxybenzoate)、ヘキシルベンゾエート(hexyl benzoate)、1-エチルナフタレン(1-ethylnaphthalene)、シクロヘキシルベンゼン(cyclohexylbenzene)、オクチルベンゼン(octylbenzene)、2-エチルナフタレン(2-ethylnaphthalene)、ベンジルブチレート(benzyl butyrate)、p-アニスアルデヒドジメチルアセタール(p-anisaldehyde dimethyl acetal)、3-フェニル-1-プロパノール(3-phenyl-1-propanol)、p-プロピルアニソール(p-propylanisole)、エチルベンゾエート(ethyl benzoate)、ブチルフェニルエーテル(butyl phenyl ether)、3,4-ジメチルアニソール(3,4-dimethylanisole)、エチレングリコールモノベンジルエーテル(ethylene glycol monobenzyl ether)、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(diethylene glycol monophenyl ether)、ジブチルオキサレート(dibutyl oxalate)、3-フェノキシベンジルアルコール(3-phenoxybenzyl alcohol)などがある。
【0072】
(インク組成物)
上述した本発明に係るインク組成物は、有機発光素子の機能層の製造に使用することができる。前記インク組成物を用いて溶液工程で有機発光素子の機能層の製造に使用することができ、特にインクジェット工程を適用することができる。
【0073】
前記インクジェット工程は、上述した本発明に係るインク組成物を使用したことを除いては、当業界で使用される方法を使用することができる。一例として、前記インク組成物を吐出して膜を形成する段階と;前記インク膜を乾燥する段階とを含むことができる。また、上述した化学式1で表される化合物は、熱または光によって架橋可能な官能基を含んでいるため、前記段階以降に熱処理または光処理する段階をさらに含むことができる。
【0074】
一方、前記インク組成物で形成することができる機能層は、有機発光素子の正孔注入層、正孔調節(輸送)層および発光層でありうる。また、前記機能層を除いては、当業界で使用される有機発光素子の構成および製造方法を適用できるので、本明細書においては詳細な説明を省略する。
【0075】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を説明する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、本発明の内容を限定するものではない。
【0076】
[製造例]
製造例1:化合物1の製造
1)中間体1-1の製造
【化35】
【0077】
500ml丸底フラスコに2-ブロモ-9-フェニル-9H-フルオレン-9-オル(50g、148.3mmol、1.0eq)とフェノール(41.8g、444.9mmol、3.0eq)を入れ、メタンスルホン酸(200ml、0.74M)に溶かした。還流下で一晩攪拌した。その後、飽和NaHCO3水溶液で反応を終了させ、酢酸エチルで有機層を抽出した。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させた後、溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィーを用いて精製して、中間体化合物1-1を得た。
【0078】
【0079】
500ml丸底フラスコに中間体1-1(30g、63.9mmol、1.0eq)と炭酸セシウム(41.6g、127.8mmol、2.0eq)をDMF(120ml、0.5M)に溶かした後、50℃に昇温して攪拌した。その後、4-ビニルベンジルクロリド(9.15ml、9.75g、1.0eq)を入れ、60℃で攪拌した。常温まで冷却した後、水を入れて反応を終了させた後、酢酸エチルを用いて有機層を抽出した。有機層を分離して硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィーを用いて精製して、中間体化合物1-2を得た。
【0080】
【0081】
250ml丸底フラスコ中で中間体1-2(12.0g、20.49mmol、2.05eq)、N4,N4’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(3.36g、10.0mmol、1.0eq)、NaOtBu(3.36g、34.99mmol、3.5eq)、Pd(PtBu3)2(255mg、0.5mmol、0.05eq)をトルエン(100ml)に溶かした後、攪拌して窒素雰囲気下にて攪拌して反応させた。その後、反応が終了したら、水と酢酸エチルでワークアップ(work-up)し、有機層を分離して乾燥させた後、ろ過した。その後、溶媒を回転減圧蒸発器で除去した。得られたクルード(crude)物質をカラムクロマトグラフィーを用いて精製し溶媒を除去して、化合物1(白い固体)を得た。
1H NMR(500MHz):δ8.00-7.82(m、4H)、7.70-7.68(d、4H)、7.62-7.55(m、6H)、7.35-7.15(m、38H)、7.05-7.03(t、2H)、6.92-9.85(d、4H)、6.73-6.70(m、2H)、5.76-5.73(d、2H)、5.39-5.37(d、2H)、5.17(s、4H)
【0082】
製造例2:化合物2の製造
1)中間体2-1の製造
【化38】
【0083】
500ml丸底フラスコに4-(2-ブロモ-9-(4-(tert-ブチル)フェニル)-9H-フルオレン-9-イル)フェノール(50g、106.50mmol、1.0eq)、4-ブロモベンズアルデヒド(23.6g、127.8mmol、1.2eq)、炭酸カリウム(44.2g、319.50mmol、3.0eq)を入れ、ドライピリジン(200ml、0.5M)に溶かした。その後、酸化銅(II)(17.0g、213.0mmol、2eq)をゆっくり添加し、120℃に昇温して還流下で反応を進行させた。反応が終わったら、飽和NaHCO3水溶液で反応を終了させ、酢酸エチルで有機層を抽出した。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させた後、溶媒を除去して得られた粗生成物(crude)をジクロロメタンに溶かし、エタノールで沈殿させ、固体の中間体化合物2-1を得た。
【0084】
【0085】
メチルトリフェニルホスホニウムブロミド(12.46g、34.87mmol、2.0eq)が入った丸底フラスコに無水テトラヒドロフラン(50ml、0.2M)を入れ、アイスバスに丸底フラスコを浸漬した。カリウムtert-ブトキシド(3.9g、34.87mmol、2.0eq)を一度に入れてアイスバスで20分間攪拌した。中間体化合物2-1(10.0g、17.44mmol、1.0eq)をテトラヒドロフラン(30ml)に溶かした後、滴下漏斗を用いて徐々に混合物に添加した。その後、テトラヒドロフラン(10ml)を丸底フラスコと漏斗を洗浄しながら入れた。水(50ml)を入れて反応を終了させ、酢酸エチルで有機層を抽出した。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させた後、溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィーを用いて精製し、化合物2-2を得た。
【0086】
【0087】
250ml丸底フラスコ中で、中間体化合物2-2(10.0g、17.50mmol、2.05eq)、N4,N4’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(2.87g、8.53mmol、1.0eq)、NaOtBu(2.87g、29.86mmol、3.5eq)、Pd(PtBu3)2(218.0mg、0.43mmol、0.05eq)をトルエン(90ml)に溶かした後、窒素雰囲気下にて攪拌して反応させた。その後、反応が終了したら水と酢酸エチルでワークアップ(work-up)し、有機層を分離して乾燥させた後、ろ過した。以降、溶媒を回転減圧蒸発器で除去した。得られた粗生成(crude)物質をカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、溶媒を除去して、化合物2(白い固体)を得た。
1H NMR(500MHz):δ7.95-7.83(m、4H)、7.65-7.58(m、10H)、7.54-7.26(m、22H)、7.24-7.05(m、12H)、6.95-6.93(d、4H)、6.86-6.84(d、4H)、6.80-6.76(m、2H)、5.65-5.61(d、2H)、5.16-5.13(d、2H)、1.35(s、18H)
【0088】
製造例3:化合物3の製造
1)中間体3-1の製造
【化41】
【0089】
250ml丸底フラスコに4-(2-ブロモ-9-(p-トリル)-9H-フルオレン-9-イル)フェノール(15g、35.1mmol、1.0eq)、炭酸カリウム(14.6g、105.3mmol、3eq)、ヨウ化銅(I)(334.3mg、1.76mmol、0.05eq)、1-ブチルイミダゾール(4.4g、35.1mmol、1.0eq)を入れ、トルエン(175ml)に溶かした。還流装置を設置した後、120℃で加熱し攪拌しながら反応を進行させた。反応が終了したら、飽和NaHCO3水溶液で反応を終了させ、水と酢酸エチルでワークアップ(work-up)した。有機層を分離してMgSO4で乾燥させた後、ろ過した。その後、溶媒を回転減圧蒸発器で除去し、得られた粗生成(crude)物質をカラムクロマトグラフィーを用いて精製して、中間体化合物3-1を得た。
【0090】
【0091】
250ml丸底フラスコ中で、中間体化合物3-1(10.0g、18.89mmol、2.05eq)、N4,N4’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(3.10g、9.21mmol、1.0eq)、NaOtBu(3.10g、32.24mmol、3.5eq)、Pd(PtBu3)2(235.1mg、0.46mmol、0.05eq)をトルエン(120ml)に溶かした後、窒素雰囲気下にて攪拌して反応させた。その後、反応が終了したら水と酢酸エチルでワークアップ(work-up)し、有機層を分離して乾燥させた後、ろ過した。その後、溶媒を回転減圧蒸発器で除去した。得られた粗生成(crude)物質をカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、溶媒を除去して、化合物3(白い固体)を得た。
1H NMR(500MHz):δ7.90-7.87(m、4H)、7.56-7.53(m、6H)、7.48-7.30(m、16H)、7.27(s、2H)、7.25-7.22(d、4H)、7.20-7.15(m、18H)、7.14-7.12(d、4H)、2.88(s、8H)、2.19(s、6H)
【0092】
製造例4:化合物4の製造
1)中間体4-1の製造
【化43】
【0093】
250ml丸底フラスコに4,4’-(2-ブロモ-9H-フルオレン-9,9-ジイル)ジフェノール(10g、23.3mmol、1.0eq)、炭酸カリウム(9.7g、69.9mmol、3eq)、ヨウ化銅(I)(220.4mg、1.17mmol、0.05eq)、1-ブチルイミダゾール(2.9g、23.3mmol、1.0eq)を入れ、トルエン(100ml)に溶かした。3-ブロモベンゼン(3.66g、23.3mmol、1.0eq)を添加した後、還流装置を設置し、120℃で加熱し攪拌しながら反応を進行させた。反応が終了したら、その後、飽和NaHCO3水溶液で反応を終了させ、水と酢酸エチルでワークアップ(work-up)した。有機層を分離してMgSO4で乾燥させた後、ろ過した。その後、溶媒を回転減圧蒸発器で除去した。得られた粗生成(crude)物質をカラムクロマトグラフィーを用いて精製して、中間体化合物4-1を得た。
【0094】
【0095】
250ml丸底フラスコに中間体4-1(10g、19.78mmol、1.0eq)、炭酸カリウム(8.20g、59.36mmol、3eq)、ヨウ化銅(I)(187.1mg、0.99mmol、0.05eq)、1-ブチルイミダゾール(2.42g、19.78mmol、1.0eq)を入れ、トルエン(100ml)に溶かした。3-ブロモビシクロ[4.2.0]オクタ-1(6),2,4-トリエン(3.98g、21.75mmol、1.1eq)を添加した後、還流装置を設置し、120℃で加熱し攪拌しながら反応を進行させた。反応が終了したら、その後、飽和NaHCO3水溶液で反応を終了させ、水と酢酸エチルでワークアップ(work-up)した。有機層を分離してMgSO4で乾燥させた後、ろ過した。その後、溶媒を回転減圧蒸発器で除去した。得られた粗生成(crude)物質を、カラムクロマトグラフィーを用いて精製して、中間体化合物4-2を得た。
【0096】
【0097】
250ml丸底フラスコ中で、中間体化合物36-2(10.0g、16.46mmol、2.05eq)、N4,N4’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(2.70g、8.03mmol、1.0eq)、NaOtBu(2.70g、28.10mmol、3.5eq)、Pd(PtBu3)2(205.2mg、0.40mmol、0.05eq)をトルエン(90ml)に溶かした後、窒素雰囲気下にて攪拌して反応させた。その後、反応が終了したら、水と酢酸エチルでワークアップ(work-up)し、有機層を分離して乾燥させた後、ろ過した。その後、溶媒を回転減圧蒸発器で除去した。得られた粗生成(crude)物質をカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、溶媒を除去して、化合物4(白い固体)を得た。
1H NMR(500MHz):δ7.88-7.85(m、4H)、7.57-7.55(m、6H)、7.52-7.30(m、20H)、7.27-7.15(m、18H)、7.07-6.90(m、16H)、2.85(s、8H)
【0098】
製造例5:化合物5の製造
1)中間体5-1の製造
【化46】
【0099】
250ml丸底フラスコに2-ブロモ-9H-フルオレン-9-オン(15g、57.9mmol、1.0eq)とフェノール(54.5g、579mmol、10.0eq)を入れ、メタンスルホン酸(70ml、0.8M)に溶かした。60℃で一晩攪拌した。その後、水を注いで反応を終了させ、次いで生じる沈殿物を水で洗浄し、ろ過した。得られたろ過物質を、少量の酢酸エチルに溶かし、ヘキサンに滴下し、沈殿過程を進行させた。ろ過して、白い固体の中間体化合物5-1を得た。
【0100】
【0101】
250ml丸底フラスコ中で、中間体5-1(10g、23.29mmol、1.0eq)、炭酸セシウム(9.1g、27.95mmol、1.2eq)をジメチルホルムアミド(50ml、0.47M)に溶かした後、100℃に昇温して攪拌した。その後、4-エチルヘキシルブロマイド(3.71ml、20.96mmol、0.9eq)をゆっくり入れ、攪拌した。反応が終了したら常温まで冷却した後、水を入れて反応を終了させた後、酢酸エチルを用いて有機層を抽出した。有機層を分離して硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィーを用いて精製して、中間体化合物5-2を得た。
【0102】
【0103】
250ml丸底フラスコに中間体5-2(10g、15.5mmol、1.0eq)、炭酸カリウム(6.4g、46.6mmol、3eq)、ヨウ化銅(I)(147.6mg、0.78mmol、0.05eq)、1-ブチルイミダゾール(1.9g、15.5mmol、1.0eq)を入れ、トルエン(77ml)に溶かした。還流装置を設置した後、120℃で加熱し攪拌しながら反応を進行させた。反応が終了したら、その後、飽和NaHCO3水溶液で反応を終了させ、水と酢酸エチルでワークアップ(work-up)した。有機層を分離してMgSO4で乾燥させた後、ろ過した。その後、溶媒を回転減圧蒸発器で除去した。得られた粗生成(crude)物質をカラムクロマトグラフィーを用いて精製して、中間体化合物5-3を得た。
【0104】
【0105】
250ml丸底フラスコ中で、中間体化合物5-3(10.0g、15.54mmol、2.05eq)、N4,N4’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(2.55g、7.58mmol、1.0eq)、NaOtBu(2.55g、26.53mmol、3.5eq)、Pd(PtBu3)2(194mg、0.38mmol、0.05eq)をトルエン(90ml)に溶かした後、窒素雰囲気下にて攪拌して反応させた。その後、反応が終了したら、水と酢酸エチルでワークアップ(work-up)し、有機層を分離して乾燥させた後、ろ過した。その後、溶媒を回転減圧蒸発器で除去した。得られた粗生成(crude)物質をカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、溶媒を除去して、化合物5(白い固体)を得た。
1H NMR(500MHz):δ7.90-7.85(m、4H)、7.55-7.52(m、6H)、7.48-7.26(m、22H)、7.24-7.05(m、10H)、6.95-6.93(d、4H)、6.86-6.84(d、4H)、3.98-3.97(m、2H)、3.73-3.70(m、2H)、2.90(s、8H)、1.70-1.67(m、2H)、1.55-1.52(m、4H)、1.32-1.25(m、12H)、0.95-0.92(t、6H)、0.90-0.88(t、6H)
【0106】
製造例6:化合物6の製造
1)中間体6-1の製造
【化50】
【0107】
250ml丸底フラスコに4-(2-ブロモ-9-(4-((2-エチルヘキシル)オキシ)フェニル)-9H-フルオレン-9-イル)フェノール(15g、27.7mmol、1.0eq)、炭酸カリウム(11.5g、83.1mmol、3eq)を入れ、DMF(150ml)に溶かした。3-(ブロモメチル)-3-エチルオキセタン(5.5g、30.5mmol、1.1eq)を添加した後、70℃で加熱攪拌して反応を進行させた。反応が終了したら、水と酢酸エチルでワークアップ(work-up)した。有機層を分離してMgSO4で乾燥させた後、ろ過した。その後、溶媒を回転減圧蒸発器で除去した。得られた粗生成(crude)物質をカラムクロマトグラフィーを用いて精製して、中間体化合物6-1を得た。
【0108】
【0109】
250ml丸底フラスコ中で、中間体化合物6-1(10.0g、15.63mmol、2.05eq)、N4,N4’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(2.56g、7.62mmol、1.0eq)、NaOtBu(2.56g、26.67mmol、3.5eq)、Pd(PtBu3)2(194.7mg、0.38mmol、0.05eq)をトルエン(100ml)に溶かした後、窒素雰囲気下にて攪拌して反応させた。その後、反応が終了したら、水と酢酸エチルでワークアップ(work-up)し、有機層を分離して乾燥させた後、ろ過した。その後、溶媒を回転減圧蒸発器で除去した。得られた粗生成(crude)物質をカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、溶媒を除去して、化合物6(白い固体)を得た。
1H NMR(500MHz):δ7.91-7.95(m、4H)、7.56-7.53(m、6H)、7.45-7.20(m、30H)、6.87-6.83(m、8H)、4.37-4.35(d、4H)、4.13-4.10(d、4H)、3.94-3.90(m、2H)、3.80(s、2H)、3.75-3.71(m、2H)、1.80-1.78(m、2H)、1.70-1.68(q、4H)、1.55-1.53(m、4H)、1.30-1.18(m、12H)、0.99-0.96(t、6H)、0.88-0.84(m、12H)
【0110】
[実施例]
実施例1
機能性物質として前記製造例1で製造した化合物1(1.6wt%)および下記化合物A(0.4wt%)、添加剤としてTritonX-45(0.1wt%)、および溶媒としてTEGBE(Triethylene glycol monobutyl ether;97.9wt%)を混合および攪拌してインク組成物を製造した。
【0111】
【0112】
実施例2~55および比較例1~20
インク組成物に含まれる各成分を下記表1~6のとおり使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で、インク組成物を製造した。一方、下記表1~6における溶媒の略字、化合物BおよびCは以下のとおりである。
TEGBE:Triethylene glycol monobutyl ether
6-MTN:6-methoxytetrahydronaphthalene
DEGDBE:Diethylene glycol dibutyl ether
tetEGDME:tetraethylene glycol dimethyl ether
【0113】
【0114】
[実験例]
前記実施例および比較例で製造したインク組成物に対して以下の実験を通してその特性を評価した。
1)溶解度:実施例および比較例で製造したインク組成物において、常温(23℃)でそれぞれ化学式1~6の化合物が、1.0wt%以上溶ける場合O.K、0.5wt%以下溶ける場合N.Gと評価した。
2)膜イメージ:実施例および比較例で製造したインク組成物をDimatix Materials Cartridge(Fujifilm社製)のheadに注入し、各ピクセルに9滴ずつインク滴を吐出した(
図1参照)。次いで、真空乾燥して溶媒を除去してインク膜を形成した。230℃のホットプレート(hot plate)で30分間熱処理してインク膜硬化を実施した。製造されたインク膜に対して膜イメージ(Optical microscopeで確認)で、ピクセル内に粒のような異物やきらきら光る異物、白い異物などが観察されない場合(
図2参照)O.K、観察される場合(
図3参照)N.Gと評価した。
3)Jetting特性:前記膜イメージ評価において、全ノズルが5分以上目詰まりなく全て吐出され、直進性のあるインクが吐出される場合O.K、未吐出があるか、または吐出時にインク滴が曲がって吐出される場合N.Gと評価した。
4)膜の平坦度:
図4に示すように、バンク(bank)に実施例および比較例で製造したインク組成物を吐出し、真空乾燥して溶媒を除去した後、インク膜特性(profile)を観察し(optical profilerで確認、Zygo装備使用)、この時、インクは50nm~80nmの厚さに形成した。次いで、(│Hedge-Hcenter│/Hcenter)値が0.25未満の場合はO.K、0.25以上の場合はN.Gと評価した。
【0115】
前記結果を下記表1~6に示す。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】