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特許7012866重合体の製造方法、及び重合体を製造するフロー式反応システム
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  • 特許-重合体の製造方法、及び重合体を製造するフロー式反応システム 図1
  • 特許-重合体の製造方法、及び重合体を製造するフロー式反応システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-20
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】重合体の製造方法、及び重合体を製造するフロー式反応システム
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/01 20060101AFI20220121BHJP
   C08F 2/00 20060101ALI20220121BHJP
   C08F 4/44 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
C08F2/01
C08F2/00 Z
C08F4/44
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020548344
(86)(22)【出願日】2019-09-09
(86)【国際出願番号】 JP2019035317
(87)【国際公開番号】W WO2020066561
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2018181794
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】特許業務法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】和田 健二
(72)【発明者】
【氏名】松本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】原田 圭
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/163823(WO,A1)
【文献】特開2018-127619(JP,A)
【文献】特開2016-102107(JP,A)
【文献】特開2016-046011(JP,A)
【文献】特開2014-012827(JP,A)
【文献】国際公開第2016/003146(WO,A1)
【文献】特開2017-066276(JP,A)
【文献】特開2014-108977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/01
C08F 2/00
C08F 4/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロー式反応によりアニオン重合反応を行う重合体の製造方法であって、
該製造方法は、
アニオン重合性モノマーと炭化水素溶媒とを含む液Aと、アニオン重合開始剤と炭化水素溶媒とを含む液Bと、非炭化水素溶媒を含む液Cと、重合停止剤とをそれぞれ異なる流路に導入して各液を各流路内に流通させ、
前記液Aと前記液Bとを合流し、この合流部の下流で、前記液Aと前記液Bとの合流液MABと前記液Cとを合流し、前記合流液MABと前記液Cとの合流液MABCが反応流路内を下流へと流通中に前記アニオン重合性モノマーをアニオン重合し、該反応流路内を流通する重合反応液と前記重合停止剤とを合流して重合反応を停止することにより重合体を得ることを含み、
前記合流液MABと前記液Cとの合流により、前記合流液MABCの溶媒の極性を、前記合流液MABの溶媒の極性よりも高くし、
前記合流液MAB中のモノマー転化率が5.0モル%以下の状態において、前記合流液MABと前記液Cとを合流する、重合体の製造方法。
【請求項2】
前記の液Aが流通する流路の等価直径及び前記の液Bが流通する流路の等価直径を、いずれも1~10mmとする、請求項1記載の重合体の製造方法。
【請求項3】
前記合流液MABと前記液Cとの合流により、前記合流液MABCの溶媒中に占める非炭化水素溶媒の質量割合を、前記合流液MABの溶媒中に占める非炭化水素溶媒の質量割合の1.5倍以上とする、請求項1又は2記載の重合体の製造方法。
【請求項4】
前記非炭化水素溶媒としてエーテル溶媒を用いる、請求項1~3のいずれか1項記載の重合体の製造方法。
【請求項5】
前記液MABCが流通する前記反応流路の長さを3~50mとする、請求項1~4のいずれか1項記載の重合体の製造方法。
【請求項6】
前記液Aと前記液Bとの合流部に連結する、前記液Aが流通する流路の数と前記液Bが流通する流路の数の合計を3~10本とする、請求項1~5のいずれか1項記載の重合体の製造方法。
【請求項7】
前記アニオン重合開始剤として、有機リチウム化合物及び有機マグネシウム化合物の少なくとも1種を用いる、請求項1~6のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項8】
前記アニオン重合開始剤としてアルキルリチウムを用いる、請求項1~7のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項9】
前記アニオン重合開始剤としてn-ブチルリチウムを用いる、請求項1~8のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項10】
前記液Bが炭化水素溶媒として芳香族炭化水素及び飽和炭化水素の少なくとも1種を含有する、請求項1~9のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項11】
前記アニオン重合性モノマーが、ビニル芳香族炭化水素、アクリルモノマー、メタクリルモノマーから選ばれる1種又は2種以上である、請求項1~10のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項12】
前記炭化水素溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デカリン、及びテトラリンの少なくとも1種を用いる、請求項1~11のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項13】
前記非炭化水素溶媒として、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、メチルターシャリーブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素、酢酸tert-ブチル、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、及びテトラメチルプロピレンジアミンの少なくとも1種を用いる、請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
アニオン重合反応により重合体を製造するフロー式反応システムであって、
アニオン重合性モノマーと炭化水素溶媒とを含む液Aが流通する第1流路と、アニオン重合開始剤と炭化水素溶媒とを含む液Bが流通する第2流路と、非炭化水素溶媒を含む液Cが流通する第3流路と、重合停止剤が流通する第4流路と、第1流路と第2流路が合流する第1合流部と、第1合流部の下流に接続されたプレ反応管と、該プレ反応管と第3流路とが合流する第2合流部と、第2合流部の下流に接続された反応管と、該反応管と第4流路とが合流する第3合流部と、第3合流部の下流に接続された配管とを有し、
第1合流部で合流した前記液Aと前記液Bとの合流液MABの溶媒の極性よりも、第2合流部で合流した前記合流液MABと前記液Cとの合流液MABCの溶媒の極性を高くし、
前記合流液MAB中のモノマー転化率が5.0モル%以下の状態において、前記合流液MABと前記液Cとを第2合流部で合流する、フロー式反応システム。
【請求項15】
前記アニオン重合性モノマーが、ビニル芳香族炭化水素、アクリルモノマー、メタクリルモノマーから選ばれる1種又は2種以上である、請求項14記載のフロー式反応システム。
【請求項16】
前記炭化水素溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デカリン、及びテトラリンの少なくとも1種を用いる、請求項14又は15記載のフロー式反応システム。
【請求項17】
前記非炭化水素溶媒として、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、メチルターシャリーブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素、酢酸tert-ブチル、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、及びテトラメチルプロピレンジアミンの少なくとも1種を用いる、請求項16記載のフロー式反応システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体の製造方法に関する。また本発明は、重合体の製造に用いるフロー式反応システムに関する。
【背景技術】
【0002】
リビングアニオン重合は、単分散ポリマー、ブロック共重合体、末端官能基化ポリマー、多分岐ポリマー、環状ポリマー等の特殊構造の重合体の合成において、精密な重合反応を実現可能な方法として知られている。
リビングアニオン重合は、通常はバッチ方式で行われる。しかし、リビングアニオン重合をバッチ方式で行う場合、重合時の発熱を除熱することにより、副反応である連鎖移動反応や停止反応を抑制する必要があり、極低温下で重合反応が行われる。例えば、アニオン重合性モノマー及びアニオン重合開始剤を-78℃以下に冷却しながら混合して重合反応が行われる。そのため、バッチ方式によるリビングアニオン重合の実施には超低温冷却設備が必要となり、大量生産には適さない。
また、バッチ方式によるリビングアニオン重合は、機械的撹拌下で行われる。そのため、反応系にモノマーや重合開始剤の局部的なムラが生じやすい。したがって、バッチ方式によるリビングアニオン重合では、得られる重合体の分散度、モノマー転化率等の向上には制約があった。
【0003】
他方、マイクロリアクター等のフロー式反応装置を用いて分子量分布の狭いポリマーをリビングアニオン重合により連続的に得る方法も知られている。例えば、特許文献1には、フロー式反応によりα-アルキルスチレンモノマーをアニオン重合するに当たり、まず、モノマーと開始剤とを混合した原料溶液を一定の高温に調整してモノマーを活性化し、次いで、この原料溶液を流路に流通させながら重合可能な特定温度範囲へと急速冷却して重合させること、これにより、高分子量で、かつ分子量分布がより単分散化された重合体が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-183217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の重合方法によれば、得られる重合体の高分子量化と分子量分布の単分散化において優れた効果が得られる。しかし、重合体製造の工業的な実用化の観点から本発明者らが検討を進めた結果、特許文献1記載の重合方法では、モノマー転化率に劣る場合があり、重合体の製造効率、再現性等の観点でいまだ十分といえる状況にはないこと、また、条件を最適化しても得られる重合体の単分散性のさらなる向上には限界があることがわかってきた。
そこで本発明は、フロー式反応を用いたリビングアニオン重合において、分子量分布が高度に単分散化された重合体を、優れたモノマー転化率で得ることができる重合体の製造方法を提供することを課題とする。また本発明は、上記製造方法の実施に好適なフロー式反応システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は下記の手段により解決された。
〔1〕
フロー式反応によりアニオン重合反応を行う重合体の製造方法であって、
上記製造方法は、
アニオン重合性モノマーと非極性溶媒とを含む液Aと、アニオン重合開始剤と非極性溶媒とを含む液Bと、極性溶媒を含む液Cと、重合停止剤とをそれぞれ異なる流路に導入して各液を各流路内に流通させ、
上記液Aと上記液Bとを合流し、この合流部の下流で、上記液Aと上記液Bとの合流液MABと上記液Cとを合流し、上記合流液MABと上記液Cとの合流液MABCが反応流路内を下流へと流通中に上記アニオン重合性モノマーをアニオン重合し、反応流路内を流通する重合反応液と上記重合停止剤とを合流して重合反応を停止することにより重合体を得ることを含み、
上記合流液MABと上記液Cとの合流により、上記液MABCの溶媒の極性を、上記液MABの溶媒の極性よりも高くする、重合体の製造方法。
〔2〕
上記の液Aが流通する流路の等価直径及び上記の液Bが流通する流路の等価直径を、いずれも1~10mmとする、〔1〕記載の重合体の製造方法。
〔3〕
上記合流液MAB中のモノマー転化率が5.0モル%以下の状態において、上記合流液MABと上記液Cとを合流する、〔1〕又は〔2〕記載の重合体の製造方法。
〔4〕
上記合流液MABと上記液Cとの合流により、上記合流液MABCの溶媒中に占める極性溶媒の質量割合を、上記合流液MABの溶媒中に占める極性溶媒の質量割合の1.5倍以上とする、〔1〕~〔3〕のいずれか記載の重合体の製造方法。
〔5〕
上記極性溶媒としてエーテル溶媒を用いる、〔1〕~〔4〕のいずれか記載の重合体の製造方法。
〔6〕
上記液MABCが流通する上記反応流路の長さを3~50mとする、〔1〕~〔5〕のいずれか記載の重合体の製造方法。
〔7〕
上記液Aと上記液Bとの合流部に連結する、上記液Aが流通する流路の数と上記液Bが流通する流路の数の合計を3~10本とする、〔1〕~〔6〕のいずれか記載の重合体の製造方法。
〔8〕
上記アニオン重合開始剤として、有機リチウム化合物及び有機マグネシウム化合物の少なくとも1種を用いる、〔1〕~〔7〕のいずれか記載の製造方法。
〔9〕
上記アニオン重合開始剤としてアルキルリチウムを用いる、〔1〕~〔8〕のいずれか記載の製造方法。
〔10〕
上記アニオン重合開始剤としてn-ブチルリチウムを用いる、〔1〕~〔9〕のいずれか記載の製造方法。
〔11〕
上記液Bが非極性溶媒として芳香族炭化水素及び飽和炭化水素の少なくとも1種を含有する、〔1〕~〔10〕のいずれか記載の製造方法。
〔12〕
アニオン重合反応により重合体を製造するフロー式反応システムであって、
アニオン重合性モノマーと非極性溶媒とを含む液Aが流通する第1流路と、アニオン重合開始剤と非極性溶媒とを含む液Bが流通する第2流路と、極性溶媒を含む液Cが流通する第3流路と、重合停止剤が流通する第4流路と、第1流路と第2流路が合流する第1合流部と、第1合流部の下流に接続されたプレ反応管と、このプレ反応管と第3流路とが合流する第2合流部と、第2合流部の下流に接続された反応管と、この反応管と第4流路とが合流する第3合流部と、第3合流部の下流に接続された配管とを有し、
第1合流部で合流した上記液Aと上記液Bとの合流液MABの溶媒の極性よりも、第2合流部で合流した上記合流液MABと上記液Cとの合流液MABCの溶媒の極性を高くする、フロー式反応システム。
【0007】
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において流路、合流部、ミキサー等の管内断面サイズ(等価直径)について説明する場合、流路同士の連結部分、流路と合流部との連結部分、流路とミキサーとの連結部分は除いたサイズである。すなわち、上記各連結部分のサイズは、連結部分の中を上流から下流へと流体が流れるように、連結チューブ等を用いて適宜に調整される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、分子量分布についても高度に単分散化された重合体を、優れたモノマー転化率で得ることができる。また本発明のフロー式反応システムは、これを用いて上記製造方法を実施することにより、分子量分布についても高度に単分散化された重合体を、優れたモノマー転化率で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のフロー式反応システムの一実施形態の概略を示す説明図である。
図2】本発明のフロー式反応システムの別の実施形態の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[フロー式反応システム]
本発明の重合体の製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう。)に用いるフロー式反応システムの一実施形態を、図面を用いて説明する。なお、本発明は、本発明で規定する事項以外は、図面に示された形態に何ら限定されるものではない。
図1は、本発明の製造方法に用いるフロー式反応システムの一例を示す概略図である。図1に示すフロー式反応システム(100)は、アニオン重合性モノマーと非極性溶媒とを含む液(以下、「液A」ともいう。)を導入する導入口(I)を備えたアニオン重合性モノマー供給流路(1)、アニオン重合開始剤と非極性溶媒とを含む液(以下、「液B」ともいう。)を導入する導入口(II)を備えたアニオン重合開始剤供給流路(2)、極性溶媒を含む液(以下、「液C」ともいう。)を導入する導入口(III)を備えた極性溶媒供給流路(3)、重合停止剤を導入する導入口(IV)を備えた重合停止剤供給流路(4)、上記アニオン重合性モノマー供給流路(1)と上記アニオン重合開始剤供給流路(2)とが合流する合流部(J1)、この合流部(J1)の下流側端部に連結するプレ反応管(5)、このプレ反応管(5)と上記極性溶媒供給流路(3)とが合流する合流部(J2)、この合流部(J2)の下流側末端部に連結する反応管(6)、この反応管(6)と上記重合停止剤供給流路(4)とが合流する合流部(J3)、この合流部(J3)の下流側端部に連結する配管(7)を備える。
【0011】
図1の実施形態において、少なくとも合流部(J1)、この合流部(J1)の下流から合流部(J3)までの間、及び、合流部(J3)、合流部(J3)に続く配管(7)の一部は、恒温槽(R1)内に配設され、アニオン重合反応と重合停止反応における液温が-100℃~40℃(好ましくは-80℃~30℃、より好ましくは-50℃~20℃)となるように制御されていることが好ましい。
また、導入口(I)、(II)、(III)及び(IV)にはそれぞれ、通常はシリンジポンプ等の送液ポンプ(図示していない)が接続され、このポンプを作動することにより、液A、液B、液C及び重合停止剤が各流路内を流通する形態とすることができる。
【0012】
本明細書において「上流」及び「下流」とは、液体が流れる方向に対して用いられ、液体が導入される側(図1においては導入口(I)、(II)、(III)及び(IV)側)が上流であり、その逆側が下流となる。
図1の実施形態の各構成についてより詳細に説明する。
【0013】
<アニオン重合性モノマー供給流路(1)>
アニオン重合性モノマー供給流路(1)は、導入口(I)から導入された液Aを、上記合流部(J1)へと供給する流路である。アニオン重合性モノマー供給流路(1)は、その等価直径を1~10mmとすることが好ましい。アニオン重合性モノマー供給流路(1)の等価直径を1mm以上とすることにより、流速をある程度速めても系内圧力の過度な上昇を抑えることができ、重合体の生産性をより高めることができる。また、アニオン重合性モノマー供給流路(1)の等価直径を10mm以下とすることにより、合流部(J1)導入時の液温を、正確に制御することができる。アニオン重合性モノマー供給流路(1)の等価直径は、1~8mmがより好ましく、1~6mmがさらに好ましい。
上記「等価直径」(equivalent diameter)は、相当(直)径とも呼ばれ、機械工学の分野で用いられる用語である。任意の管内断面形状の配管ないし流路に対し等価な円管を想定するとき、その等価円管の管内断面の直径を等価直径という。等価直径(deq)は、A:配管の管内断面積、p:配管のぬれぶち長さ(内周長)を用いて、deq=4A/pと定義される。円管に適用した場合、この等価直径は円管の管内断面の直径に一致する。等価直径は等価円管のデータを基に、その配管の流動あるいは熱伝達特性を推定するのに用いられ、現象の空間的スケール(代表的長さ)を表す。等価直径は、管内断面が一辺aの正四角形管ではdeq=4a/4a=a、一辺aの正三角形管ではdeq=a/31/2、流路高さhの平行平板間の流れではdeq=2hとなる(例えば、(社)日本機械学会編「機械工学事典」1997年、丸善(株)参照)。
【0014】
アニオン重合性モノマー供給流路(1)の長さに特に制限はなく、例えば、長さが10cm~15m程度(好ましくは、30cm~10m)のチューブにより構成することができる。
チューブの材質に特に制限はなく、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、テフロン(登録商標)、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ステンレス、銅又は銅合金、ニッケル又はニッケル合金、チタン又はチタン合金、石英ガラス、ライムソーダガラスなどが挙げられる。可撓性、耐薬品性の観点から、チューブの材質は、PFA、テフロン(登録商標)、ステンレス、ニッケル合金又はチタンが好ましい。
【0015】
上記導入口(I)から液Aを導入する流速に特に制限はなく、流路の等価直径、液Bの濃度、液Bの導入流量等を考慮し、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、1~4000mL/minが好ましく、5~3000mL/minがより好ましく、50~3000mL/minがさらに好ましい。液Aの導入流量を上記範囲内とすることにより、合流部における混合効率が高まり得られる重合体をより単分散化でき、かつ、圧力損失の懸念も低下する。液Aを導入する流速は、5~2000mL/minとしてもよく、10~1000mL/minとしてもよく、20~800mL/minとすることもでき、40~600mL/minとすることもできる。
【0016】
-アニオン重合性モノマーと非極性溶媒とを含む液A-
アニオン重合性モノマー供給流路(1)内を流通させる液Aは、通常は、非極性溶媒を含む溶媒中にアニオン重合性モノマーを溶解してなる溶液である。本発明において「非極性溶媒」とは、炭化水素溶媒を意味する。液Aに含まれる非極性溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デカリン、テトラリン、これらの誘導体などが挙げられる。
液Aに含まれる非極性溶媒は芳香族炭化水素及び飽和炭化水素の少なくとも1種を含むことが好ましい。この場合、非極性溶媒に占める、芳香族炭化水素及び飽和炭化水素の合計の割合は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。非極性溶媒は芳香族炭化水素及び飽和炭化水素の少なくとも1種であることが特に好ましい。この芳香族炭化水素はトルエン及びキシレンの少なくとも1種が好ましく、より好ましくはトルエンである。上記飽和炭化水素はヘキサン、ヘプタン及びシクロヘキサンの少なくとも1種が好ましく、より好ましくはヘキサンである。液Bに含まれる非極性溶媒は、より好ましくはトルエン及びヘキサンの少なくとも1種である。
液Aは非極性溶媒を含有していれば、さらに極性溶媒を含有してもよい。本発明において「極性溶媒」とは、炭素原子以外で、かつ水素原子以外の原子(ヘテロ原子、例えば酸素原子、硫黄原子、窒素原子など)を構成原子として有する溶媒(非炭化水素溶媒)である。液Aが極性溶媒を含む場合、用いるモノマーの種類に応じて適宜に選択すればよく、例えば、エーテル溶媒(直鎖、分岐鎖、環状のエーテル溶媒)などが挙げられる。エーテル溶媒の具体例として、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、メチルターシャリーブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、これらの誘導体などを挙げることができる。
なお、エーテル溶媒以外にも、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素、酢酸tert-ブチル、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルプロピレンジアミンなどの極性溶媒を用いることができる。
液Aに含まれるすべての溶媒に占める非極性溶媒の割合は、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上が特に好ましい。この割合は80質量%以上でもよく、90質量%以上でもよく、液Aに含まれる溶媒のすべてが非極性溶媒であることも好ましい。
【0017】
液A中のアニオン重合性モノマーに特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ビニル芳香族炭化水素、アクリルモノマー、メタクリルモノマー、共役ジエンなどが挙げられる。
【0018】
上記ビニル芳香族炭化水素としては、例えば、スチレン、スチレン誘導体(p-ジメチルシリルスチレン、(p-ビニルフェニル)メチルスルフィド、p-ヘキシニルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルジメチルシロキシスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、p-tert-ブトキシスチレン、p-tert-ブトキシ-α-メチルスチレン、m-tert-ブトキシスチレン、p-(1-エトキシエトキシ)スチレンなど)、ビニルナフタレン、2-tert-ブトキシ-6-ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1-ジフェニルエチレンなどが挙げられる。
【0019】
上記アクリルモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、エポキシアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチレングリコールテトラアクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジアクリロキシプロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレートトリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。
また、上記メタクリルモノマーとしては、上記のアクリルモノマーとして例示したモノマーのアクリロイル基を、メタクリロイル基にした構造のモノマーを挙げることができる。
【0020】
上記共役ジエンとしては、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-シクロヘキサジエンなどが挙げられる。
上記モノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
液A中のアニオン重合性モノマーの含有量に特に制限はなく、液B中の開始剤濃度、液Bの導入流量、目的とする重合体の分子量等を考慮し、適宜に調整されるものである。液A中のアニオン重合性モノマーの含有量は、例えば1~100質量%とすることができ、3~70質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましく、10~40質量%がさらに好ましい。
また、粘度、反応熱の除熱の観点から、液A中のアニオン重合性モノマーのモル濃度は、0.5~10M(mol/L)が好ましく、0.5~5Mがより好ましい。
【0022】
<アニオン重合開始剤供給流路(2)>
アニオン重合開始剤供給流路(2)は、導入口(II)から導入された液Bを、上記合流部(J1)へと供給する流路である。アニオン重合開始剤供給流路(2)は、その等価直径を1~10mmとすることが好ましい。アニオン重合開始剤供給流路(2)の等価直径を1mm以上とすることにより、流速をある程度上げても系内圧力の過度な上昇を抑えることができ、重合体の生産性をより高めることができる。また、アニオン重合開始剤供給流路(2)の等価直径を10mm以下とすることにより、合流部(J1)導入時の液温を、適切に制御することができる。アニオン重合開始剤供給流路(2)の等価直径は、1~8mmがより好ましく、1~6mmがさらに好ましい。
【0023】
アニオン重合開始剤供給流路(2)の長さに特に制限はなく、例えば、長さが10cm~15m程度(好ましくは、30cm~10m)のチューブにより構成することができる。
チューブの材質に特に制限はなく、上記アニオン重合性モノマー供給流路(1)で例示した材質のチューブを用いることができる。
【0024】
上記導入口(II)から液Bを導入する流速は、10mL/minよりも速く且つ2000mL/min以下(すなわち10mL/min超2000mL/min以下)とすることが好ましい。液Bの流速を上記範囲内とすることにより、合流部における混合効率が高まり得られる重合体をより単分散化することができ、かつ、圧力損失の懸念も低下する。液Bの導入流量は11~2000mL/minとすることが好ましい。また、液Bの導入流量は12~1000mL/minとしてもよく、12~600mL/minとしてもよく、12~300mL/minとすることもできる。
また、導入口(II)から液Bを導入する流速Bは、ポリマーの分子量制御の観点から、導入口(I)から液Aを導入する流速Aよりも遅いことが好ましい。流速Aと流速Bの比は、[流速A]/[流速B]=20/1~1.2/1が好ましく、[流速A]/[流速B]=10/1~1.3/1がより好ましい。なお、本明細書において流速の単位はmL/minである。
【0025】
-アニオン重合開始剤と非極性溶媒とを含む液B-
アニオン重合開始剤供給流路(2)内を流通させる液Bは、通常は、非極性溶媒を含む溶媒中にアニオン重合開始剤を溶解してなる溶液である。液Bに含まれる非極性溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デカリン、テトラリン、これらの誘導体などが挙げられる。
液Bに含まれる非極性溶媒は芳香族炭化水素及び飽和炭化水素の少なくとも1種を含むことが好ましい。この場合、非極性溶媒に占める、芳香族炭化水素及び飽和炭化水素の合計の割合は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。非極性溶媒は芳香族炭化水素及び飽和炭化水素の少なくとも1種であることが特に好ましい。この芳香族炭化水素はトルエン及びキシレンの少なくとも1種が好ましく、より好ましくはトルエンである。上記飽和炭化水素はヘキサン、ヘプタン及びシクロヘキサンの少なくとも1種が好ましく、より好ましくはヘキサンである。液Bに含まれる非極性溶媒は、より好ましくはトルエン及びヘキサンの少なくとも1種である。
液Bは非極性溶媒を含有していれば、さらに極性溶媒を含有してもよい。液Bが極性溶媒を含む場合、用いるアニオン重合開始剤の種類に応じて適宜に選択すればよく、例えば、エーテル溶媒(直鎖、分岐鎖、環状のエーテル溶媒)などが挙げられる。エーテル溶媒の具体例として、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、メチルターシャリーブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、これらの誘導体などを挙げることができる。
液Bに含まれるすべての溶媒に占める非極性溶媒の割合は、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上が特に好ましい。この割合は80質量%以上でもよく、90質量%以上でもよく、液Bに含まれる溶媒のすべてが非極性溶媒であることも好ましい。
【0026】
-アニオン重合開始剤-
液Bに用いるアニオン重合開始剤に特に制限はなく、通常のアニオン重合に用いられる開始剤を広く用いることができ、使用するモノマーの種類に応じて適宜に選択される。
上記重合方式が、リビング重合方式のアニオン重合である場合の重合開始剤としては、例えば、有機リチウム化合物及び有機マグネシウム化合物が挙げられる。
【0027】
上記有機リチウム化合物としては、特に制限は無く、従来公知の有機リチウム化合物から適宜選択することができ、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム(n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、iso-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウムなど)、ペンチルリチウム、ヘキシルリチウム、メトキシメチルリチウム、エトキシメチルリチウム等のアルキルリチウム;α-メチルスチリルリチウム、1,1-ジフェニル3-メチルペントリルリチウム、3-メチル-1,1-ジフェニルペンチルリチウム等のベンジルリチウム;ビニルリチウム、アリルリチウム、プロペニルリチウム、ブテニルリチウム等のアルケニルリチウム;エチニルリチウム、ブチニルリチウム、ペンチニルリチウム、ヘキシニルリチウム等のアルキニルリチウム;ベンジルリチウム、フェニルエチルリチウム等のアラルキルリチウム;フェニルリチウム、ナフチルリチウム等のアリールリチウム;2-チエニルリチウム、4-ピリジルリチウム、2-キノリルリチウム等のヘテロ環リチウム;トリ(n-ブチル)マグネシウムリチウム、トリメチルマグネシウムリチウム等のアルキルリチウムマグネシウム錯体等が挙げられる。中でも、反応性が高く開始反応を高速化できる点で、アルキルリチウムがより好ましく、n-ブチルリチウムが特に好ましい。ブチルリチウムの中でもn-ブチルリチウムが好ましい理由として、溶液状態における安定性が高いことが挙げられる。例えばsec-ブチルリチウムを用いた場合、溶液に溶解せず、懸濁液の状態で徐々に沈殿が生じてしまい、重合体の工業的生産における品質安定性の点で問題が生じるおそれがある。また、tert-ブチルリチウムは引火性、発火性が非常に高く、工業的生産にはあまり適さない。上記有機リチウム化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
有機マグネシウム化合物としては、ジ-n-ブチルマグネシウム、ジ-tert-ブチルマグネシウム、ジ-sec-ブチルマグネシウム、n-ブチル-sec-ブチルマグネシウム、n-ブチル-エチルマグネシウム、ジ-n-アミルマグネシウム、ジベンジルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム等が挙げられる。
【0029】
液B中のアニオン重合開始剤の含有量に特に制限はなく、液Aのモノマー濃度、液Aの導入流量、目的の重合体の分子量等を考慮し、適宜に調整されるものである。液B中のアニオン重合開始剤の含有量は、通常は0.01~20質量%であり、0.01~15質量%がより好ましく、0.01~10質量%がさらに好ましく、0.05~10質量%がさらに好ましい。
また、ポリマーの分子量制御の観点から、液B中のアニオン重合開始剤のモル濃度は、0.004~1.6Mが好ましく、0.008~1.6Mがより好ましく、0.008~0.8Mがより好ましい。
【0030】
液Aと液Bの導入量は、合流部(J1)において両液が均質に混じり合ったと仮定した場合に、この混合液中において、アニオン重合性モノマーとアニオン重合開始剤の当量比が、アニオン重合開始剤1当量に対して、アニオン重合性モノマーが5~5000当量が好ましく、10~5000当量がより好ましく、10~1000当量が特に好ましい。なかでも当量比を上記特に好ましい範囲内とすることにより、理論値と事実上等しい分子量のポリマーを得ることができる点で有利である。すなわち、モノマーが重合性官能基を1つ有する化合物である場合、開始剤1モルに対して、モノマーの使用量が5~5000モルが好ましく、10~5000モルがより好ましく、10~1000モルが特に好ましい。
【0031】
<合流部(J1)>
アニオン重合性モノマー供給流路(1)内を流通する液Aと、アニオン重合開始剤供給流路(2)内を流通する液Bは、合流部(J1)で合流する。合流部(J1)はミキサーの役割を有し、アニオン重合性モノマー供給流路(1)とアニオン重合開始剤供給流路(2)とを1本の流路に合流し、合流部(J1)の下流側端部に連結するプレ反応管(5)へと合流液MABを送り出すことができれば特に制限されない。図1の実施形態においては、合流部(J1)としてT字型のコネクターを用いている。
合流部(J1)内の流路の等価直径は、混合性能をより良好とする観点から、0.2~10mmが好ましく、圧損をより抑制する観点から1~5mmがより好ましい。
【0032】
合流部(J1)の材質に特に制限はなく、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、テフロン(登録商標)、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ステンレス、銅又は銅合金、ニッケル又はニッケル合金、チタン又はチタン合金、石英ガラス、ライムソーダガラスなどの材質からなるものを用いることができる。
合流部(J1)には、市販されているミキサーを用いることができる。例えばミクログラス社製ミクログラスリアクター;CPCシステムス社製サイトス;山武社製YM-1、YM-2型ミキサー;島津GLC社製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ);GLサイエンス社製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ);Upchurch社製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ);;Upchurch社製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ);Valco社製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ);swagelok社製T字、クロスコネクタ等が挙げられ、いずれも本発明に使用することができる。
【0033】
<プレ反応管(5)>
液Aと液Bは、合流部(J1)で合流、混合された後、この合流液MABはプレ反応管(5)内を下流へと流通する。
プレ反応管(5)の形態に特に制限はなく、通常はチューブを用いる。プレ反応管(5)の好ましい材質は、上述したアニオン重合性モノマー供給流路(1)の好ましい材質と同じである。プレ反応管(5)内を流通する合流液MABの滞留時間は短い方がよい。
すなわち、プレ反応管内を流通中には、開始反応ないし成長反応(重合反応)を事実上生じさせないことが好ましい。好ましくは、プレ反応管の通過直後において(液Cとの合流地点において)、モノマー転化率を5%以下とすることが好ましく、4%以下とすることがより好ましく、3%以下とすることがより好ましく、2%以下とすることがさらに好ましい。プレ反応管内におけるモノマー転化率は低いほど好ましいが、通常は0.1%以上であり、0.2%以上とするのが実際的である。
プレ反応管(5)の等価直径は0.1~50mmであり、より好ましくは0.2~20mmであり、さらに好ましくは0.4~15mmであり、さらに好ましくは0.7~10mmであり、さらに好ましくは1~5mmである。また、プレ反応管(5)の長さは、通常、0.2~5mであり、0.4~3mが好ましく、0.6~2mがより好ましい。
【0034】
<極性溶媒供給流路(3)>
極性溶媒供給流路(3)は、導入口(III)から導入された液Cを、上記合流部(J2)へと供給する流路である。極性溶媒供給流路(3)の等価直径は、1~10mmがより好ましく、1~8mmがさらに好ましく、1~6mmがさらに好ましい。また、極性溶媒供給流路(3)の長さに特に制限はなく、例えば、長さが10cm~15m程度(好ましくは、30cm~10m)のチューブにより構成することができる。極性溶媒供給流路(3)の好ましい材質は、上述したアニオン重合性モノマー供給流路(1)の好ましい材質と同じである。
【0035】
-極性溶媒を含む液C-
極性溶媒供給流路(3)内を流通させる液Cは、極性溶媒を含有する。液Cに含まれる極性溶媒としては、例えば、エーテル溶媒(直鎖、分岐鎖、環状のエーテル溶媒)などが挙げられる。エーテル溶媒の具体例として、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、メチルターシャリーブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、これらの誘導体などを用いることができる。反応制御性、コスト等の観点から環状エーテル溶媒が好ましく、テトラヒドロフランがより好ましい。
なお、エーテル溶媒以外にも、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N’-ジメチルプロピレン尿素、酢酸tert-ブチル、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルプロピレンジアミンなどの極性溶媒を用いることができる。
液C中の溶媒の含有量は90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。
液Cを構成する溶媒中に占める極性溶媒の割合は、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上が特に好ましい。この割合は80質量%以上でもよく、90質量%以上でもよく、液Cに含まれる溶媒のすべてが極性溶媒であることも好ましい。
【0036】
液Cが極性溶媒以外の成分を含む場合、極性溶媒を除いた残部は非極性溶媒であることが好ましい。この非極性溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デカリン、テトラリン、これらの誘導体などが挙げられる。液Cに含まれ得る非極性溶媒は、芳香族炭化水素を含むことが好ましい。この場合、非極性溶媒に占める芳香族炭化水素の割合は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。非極性溶媒は芳香族炭化水素であることが特に好ましい。この芳香族炭化水素はトルエン及びキシレンの少なくとも1種が好ましく、より好ましくはトルエンである。
【0037】
液C中の極性溶媒の濃度は、液A中の極性溶媒の濃度よりも高いことが好ましく、また液B中の極性溶媒の濃度よりも高いことが好ましい。本発明では、合流液MABと液Cとの合流液MABCの溶媒の極性を、合流液MABの溶媒の極性よりも高くする(すなわち、反応管内を流通する重合反応液の溶媒の極性を、プレ反応管内を流通する、液Aと液Bとの合流液の溶媒の極性よりも高くする)。ここで、「合流液MABCの溶媒の極性を、合流液MABの溶媒の極性よりも高くする」とは、合流液MABC中の極性溶媒の濃度を、合流液MAB中の極性溶媒の濃度よりも高くすることを意味する。これらの濃度は質量基準である。
合流液MABCの溶媒中に占める極性溶媒の割合(質量%)は、合流液MABの溶媒中に占める極性溶媒の割合(質量%)の1.5倍以上が好ましく、2倍以上とすることがより好ましい。
【0038】
<合流部(J2)>
プレ反応管(5)内を流通する合流液MABと、極性溶媒供給流路(3)内を流通する液Cとは、合流部(J2)で合流する。合流部(J2)はミキサーの役割を有し、プレ反応管(5)と極性溶媒供給流路(3)とを一本の流路に合流し、下流の反応管(6)へと合流した溶液を送り出すことができれば特に制限されない。図1の実施形態において、合流部(J2)はT字型のコネクターを用いている。
合流部(J2)内の流路の等価直径は、混合性能をより良好とする観点から、0.2~10mmが好ましく、圧損をより抑制する観点から1~10mmがより好ましい。
合流部(J2)の材質に特に制限はなく、上述した合流部(J1)で説明したのと同じ材質からなるものを用いることができる。また、合流部(J2)として採用しうるミキサーの具体例も、上記合流部(J1)として採用しうるミキサーの具体例と同じである。
この合流部(J2)において、液Cと合流した合流液MABCは溶媒の極性が瞬時に高められ、これが引き金となって開始反応が一斉に進行するものと考えられる。つまり、プレ反応管(5)においては重合反応を事実上生じさせずに、合流部(J2)において開始反応を一斉にスタートさせることができ、これに続く反応管(6)内における生長反応を経て、得られる重合体の単分散性を高度に高めることができると推定される。
【0039】
<反応管(6)>
合流液MABと液Cとが合流部(J2)で合流した後、この合流液MABCは反応流路である反応管(6)内へと流れ、反応管(6)内を下流へ流通中に、アニオン重合性モノマーがアニオン重合する(生長反応が進行する)。
反応管(6)の形態に特に制限はなく、通常はチューブを用いる。反応管(6)の好ましい材質は、上述したアニオン重合性モノマー供給流路(1)の好ましい材質と同じである。また、反応管(6)の等価直径と長さ、送液ポンプの流量設定等によって、アニオン重合の反応時間を調整することができる。反応管(6)内を流通する反応液の滞留時間は、所望する重合体の分子量に応じて適宜調節すればよい。通常は、反応管(6)の等価直径は0.1~50mmであり、より好ましくは0.2~20mmであり、さらに好ましくは0.4~15mmであり、さらに好ましくは0.7~10mmであり、さらに好ましくは1~5mmである。また、反応管(6)の長さは3~50mが好ましく、5~50mがより好ましい。
【0040】
<重合停止剤供給流路(4)>
重合停止剤供給流路(4)は、導入口(IV)から導入された重合停止剤を、上記合流部(J3)へと供給する流路である。重合停止剤供給流路(4)の等価直径は、1~10mmがより好ましく、1~8mmがさらに好ましく、1~6mmがさらに好ましい。また、重合停止剤供給流路(4)の長さに特に制限はなく、例えば、長さが10cm~15m程度(好ましくは、30cm~10m)のチューブにより構成することができる。重合停止剤供給流路(4)の好ましい材質は、上述したアニオン重合性モノマー供給流路(1)の好ましい材質と同じである。
【0041】
-重合停止剤-
重合停止剤としては、活性種であるアニオンを失活させる成分(重合停止成分)を含む液であれば特に制限はなく、重合停止成分としてアルコール及び酸性物質の少なくとも1種を含む、水溶液又は有機溶液(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、メチルターシャリーブチルエーテル、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、トルエン等を溶媒とする溶液)が挙げられる。また、重合停止成分としてハロゲン化アルキルやクロロシラン等の求電子剤を含む液を重合停止剤として用いることもできる。
重合停止成分としてのアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
【0042】
重合停止成分としての酸性物質としては、例えば、酢酸、塩酸等が挙げられる。
重合停止成分としてのハロゲン化アルキルとしては、例えば、アルキルブロマイド、アルキルヨージド等が挙げられる。
重合停止剤中に含まれるアルコール、酸性物質、求電子剤等の重合停止成分の量は、重合体溶液と合流した混合液中において、重合開始剤1モルに対して、1~100モルとするのが好ましい。
【0043】
導入口(IV)から重合停止剤を導入する際の流速は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、1~3000mL/minとすることができ、2~2000mL/minがより好ましく、4~2000mL/minがさらに好ましい。流速が上記範囲内であれば、迅速な混合が可能となり、かつ、圧力損失の懸念も低下する。重合停止剤を導入する際の流速は、5~2000mL/minとしてもよく、10~1000mL/minとしてもよく、20~800mL/minとすることもでき、40~600mL/minとすることもできる。
【0044】
<合流部(J3)>
反応管(6)内を流通しながらアニオン重合反応が進行している重合反応液と、重合停止剤供給流路(4)内を流通する重合停止剤とは、合流部(J3)で合流する。合流部(J3)はミキサーの役割を有し、反応管(6)と重合停止剤供給流路(4)とを一本の流路に合流し、下流の配管(7)へと合流した溶液を送り出すことができれば特に制限されない。図1の実施形態において、合流部(J3)はT字型のコネクターを用いている。
合流部(J3)内の流路の等価直径は、混合性能をより良好とする観点から、0.2~10mmが好ましく、圧損をより抑制する観点から1~10mmがより好ましい。
合流部(J3)の材質に特に制限はなく、上述した合流部(J1)で説明したのと同じ材質からなるものを用いることができる。また、合流部(J3)として採用しうるミキサーの具体例も、上記合流部(J1)として採用しうるミキサーの具体例と同じである。
【0045】
<配管(7)>
重合反応液と重合停止剤を含む混合溶液は、配管(7)内を流通しながら反応し、アニオンが失活して重合が停止する。
配管(7)はチューブにより構成することができ、その等価直径は、流通する液の液温をより精密に制御する観点から、1~50mmが好ましく、1~10mmがより好ましい。配管(7)の長さは、等価直径、流量、所望する重合体の分子量に合わせて適宜調整すればよく、1~20mとするのが好ましく、2~10mがより好ましい。配管(7)の好ましい材質は、上述したアニオン重合性モノマー供給流路(1)の好ましい材質と同じである。
配管(7)内を流通する液の液温は特に限定されないが、図1に示すように、少なくとも上流側を、反応管(6)内を流通する液の液温と同じにすることが好ましい。
配管(7)内を流通する液の流速は、重合停止剤供給流路(4)内を流通する液の流速と、反応管(6)内を流通する液の流速の合計値となる。
配管(7)の下流において液を採取することにより、目的の重合体を得ることができる。
【0046】
本発明の製造方法を実施するためのフロー式反応システムの別の実施形態を、図2を用いて説明する。図2の実施形態は、アニオン重合性モノマー供給流路(1)が途中で2つの流路に分岐していること以外は、図1の実施形態と同じである。図2の実施形態においては、アニオン重合性モノマー供給流路(1)は途中で2つの流路に分岐し、この分岐した2つの流路は、十字型のコネクターである合流部(J4)において、互いに対向する接続口から導入され、合流する。この実施形態において、液Bが流通するアニオン重合開始剤供給流路(2)は、合流部(J4)の、プレ反応管(5)の連結部位と対向する接続口に連結されている。このようにアニオン重合性モノマー供給流路(1)を分岐させることにより、合流部(J4)において、モノマーと開始剤とがより素早く、より均質に混合され、得られる重合体の分子量分布をより狭めることができ、より高度に単分散化した重合体を得ることが可能となる。かかる十字コネクターは、その内径が1~10mmであることが好ましい。
上記十字コネクターとして市販品を広く用いることができ、市販品として例えば、Upchurch社製クロスコネクター;swagelok社製ユニオン・クロス;EYELA社製4方ジョイント等を用いることができる。
【0047】
図2の実施形態において、アニオン重合性モノマー供給流路(1)は2つの流路に分岐されているが、3つ以上の流路に分岐させてもよく、かかる実施形態も本発明の実施形態として好ましい。また、アニオン重合性モノマー供給流路(1)を分岐させるとともに、あるいはアニオン重合性モノマー供給流路(1)を分岐させずに、アニオン重合開始剤供給流路(2)を分岐させ、合流部で合流させる形態としてもよく、かかる形態も本発明の実施形態に含まれる。なかでも、アニオン重合性モノマー供給流路(1)を2つ以上に分岐させ、且つ、アニオン重合開始剤供給流路(2)を分岐させずに、あるいはアニオン重合開始剤供給流路(2)を2つ以上に分岐させた形態を採用することが好ましい。アニオン重合性モノマー供給流路(1)の分岐数と、アニオン重合開始剤供給流路(2)の分岐数の関係は下記i)又はii)のように設計することがより好ましい。
i)アニオン重合性モノマー供給流路(1)の分岐数が2で、アニオン重合開始剤供給流路(2)が分岐を有しない形態。
ii)アニオン重合性モノマー供給流路(1)の分岐数が3以上で、アニオン重合開始剤供給流路(2)の分岐数が2以上であり、且つ、アニオン重合性モノマー供給流路(1)の分岐数がアニオン重合開始剤供給流路(2)の分岐数よりも多い形態。
【0048】
液Aと液Bとの合流部に連結する、液Aが流通する流路の数と液Bが流通する流路の数の合計は、3~10本であることが好ましく、3~8本であることがより好ましく、3~6本であることがさらに好ましく、3~5本であることがさらに好ましい。この場合において、アニオン重合性モノマー供給流路(1)の分岐数がアニオン重合開始剤供給流路(2)の分岐数よりも多いことが好ましい。
かかる本数の流路を接続可能な合流部は、接続する流路の数に応じた数の接続口を有するコネクターで構成することができる。例えば6方コネクターを用いれば、液Aが流通する流路の数と液Bが流通する流路の数の合計を5本とすることができ、残る1つの接続口を排出口とし、この排出口にプレ反応管を接続することができる。
本発明に用いうる、5方以上の接続口を有するコネクターとして、市販品を広く用いることができる。これら市販品の例として、EYELA社製6方ジョイント、杉山商事製六方ジョイント、Upchurch社製6-ポートマニホールド等を挙げることができる。
5方以上の接続口を有するコネクターは、その内径が1~10mmであることが好ましい。
【0049】
なお、上記では分岐を有する流路が有する導入口が1つであり、途中で流路が分岐する形態を説明したが、一の溶液に対する導入口を複数設けた形態としてもよく、かかる実施形態も本発明の実施形態に包含される。例えば、アニオン重合性モノマー供給流路(1)を複数本用意し、これら複数のアニオン重合性モノマー供給流路(1)を合流部で合流する形態とすることもできる。このことは、アニオン重合開始剤供給流路(2)についても同様である。
【0050】
図1及び2の実施形態において、重合反応液の、反応管6内の滞留時間(重合反応時間)は、15秒以上とすることが好ましく、20~1800秒とすることがより好ましく、20~600秒とすることがさらに好ましい。
【0051】
本発明の重合体の製造方法によれば、重合体を、優れたモノマー転化率で、かつ、分子量分布が高度に単分散化された状態で得ることができる。
【0052】
本発明をその好ましい実施形態と共に説明したが、本発明は、本発明で規定する事項以外は、上記実施形態に何ら限定されるものではない。また、以下に、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例
【0053】
[実施例1]
図2に示す構成のフロー式反応システム200を用いてアニオン重合反応により重合体を合成した。各部の詳細を下記に示す。
【0054】
送液ポンプ(図示せず):
導入口I、II、III及びIVのすべてに、株式会社GLサイエンス製PU716B又はPU718を設置して送液した。流量出口側にはパルスダンパーHPD-1、テスコム社製背圧弁(44-2361-24)、株式会社IBS社製リリーフバルブRHA(4MPa)を順次設置した。
【0055】
低温恒温槽(R1):
アイラ製マグネチックスターラー付低温恒温水槽PSL-2000を使用し、-25℃に設定した。
【0056】
アニオン重合性モノマー供給流路(1):
一本のSUSチューブをT字コネクターで2分割した構造とした。
より詳細には、外径1/16インチ、内径1.0mm、長さ10mのSUS316チューブにアップチャーチ社製T-コネクター(U-429、内径1.0mm)を接続し、さらにこのT-コネクターに、外径1/16インチ、内径1.0mm、長さ5cmのSUS316チューブを2本、互いに対向するように接続したものをアニオン重合性モノマー供給流路(1)とした。
【0057】
アニオン重合開始剤供給流路(2):
外径1/16インチ、内径1.0mm、長さ10mのSUS316チューブを用いた。
【0058】
合流部(J4)(十字コネクター):
アップチャーチ社製クロスコネクター(U-431、内径1.0mm)を用いた。
上記アニオン重合性モノマー供給流路(1)を構成する上記T字コネクターに互いに対向するように接続したSUS316チューブ2本を、上記クロスコネクターの4つの接続口のうち、互いに対向する2つの接続口にそれぞれ連結した。残り2つの接続口のうち1つに、上記アニオン重合開始剤供給流路(2)を連結し、さらに残りの接続口を、液を送り出す排出口(プレ反応管(5)との接続口)として用いた。
【0059】
プレ反応管(5):
外径1/8インチ、内径2.17mm、長さ1mのSUS316チューブを用いた。
【0060】
極性溶媒供給流路(3):
外径1/16インチ、内径1.0mm、長さ10mのSUS316チューブを用いた。
【0061】
合流部(J2)(T字コネクター):
swagelok社製ユニオンティー(SS-200-3、内径2.3mm)を用いた。
上記プレ反応管(5)と極性溶媒供給流路(3)とを、上記ユニオンティーの3つの接続口のうち、互いに対向する2つの接続口にそれぞれ連結した。残りの接続口を、液を送り出す排出口(反応管(6)との接続口)として用いた。
【0062】
反応管(6):
上流側から下流側に向けて、(i)外径1/8インチ、内径2.17mm、長さ15mのSUS316チューブ、(ii)外径8mm、内径6mm、長さ20mのSUS316チューブの順にユニオンを用いて連結した。
【0063】
重合停止剤供給流路(4):
外径1/8インチ、内径2.17mm、長さ10mのSUS316チューブを用いた。
【0064】
合流部(J3)(T字コネクター):
swagelok社製ユニオンティー(SS-200-3、内径2.3mm)を用いた。
上記反応管(6)と上記重合停止剤供給流路(4)を、上記ユニオンティーの3つの接続口のうち、互いに対向する2つの接続口にそれぞれ連結した。残りの接続口を、液を送り出す排出口(配管(7)との接続口)として用いた。
【0065】
配管(7):
上流側から下流側に向けて、(i)外径1/8インチ、内径2.17mm、長さ2.5mのSUS316チューブ、(ii)外径1/8インチ、内径2.17mm、長さ0.5mのテフロンチューブ、の順にユニオンを用いて連結した。
【0066】
アニオン重合性モノマー供給流路(1)に導入する、モノマーを含む液A:
<p-メトキシスチレン/トルエン>
5LのSUSタンクに和光純薬製トルエン(脱酸素グレード)と和光純薬社製p-メトキシスチレン(特級グレード)を加え、3.5M-p-メトキシスチレン/トルエン溶液4Lを調製した。この溶液をモレキュラーシーブ3Aにより脱水し、液Aとした。
なお、本実施例において、「xM-y/z」との記載は、yを溶媒zに溶解した溶液であって、この溶液中のy濃度がxMであることを意味する。
【0067】
アニオン重合開始剤供給流路(2)に導入する、開始剤を含む液B:
<n-ブチルリチウム(nBuLi)/トルエン>
5LのSUSタンクに和光純薬製トルエン(脱酸素グレード)を加え0℃に冷却した。関東化学製nBuLi(1.6M-nBuLi/ヘキサン溶液)を加え、メントール/ビピリジンで滴定して、0.008M-nBuLi/トルエン溶液4Lを調製し、液Bとした。
【0068】
極性溶媒供給流路(3)に導入する、極性溶媒を含む液C:
和光純薬社製テトラヒドロフラン(THF)(脱酸素グレード)をモレキュラーシーブ3Aにより脱水し、液Cとした。
【0069】
重合停止剤供給流路(4)に導入する重合停止剤:
<メタノール(MeOH)/THF>
3LのSUSタンクに和光純薬製THF(脱酸素グレード)と和光純薬製MeOH(脱酸素グレード)を加え、0.5M-MeOH/THF溶液4Lを調製し、重合停止剤とした。
【0070】
送液条件:
液A(3.5M-p-メトキシスチレン/トルエン):100mL/min
液B(0.08M-nBuLi/トルエン):36.5mL/min
液C(THF):114mL/min
重合停止剤(0.5M-MeOH/THF):43.8mL/min
【0071】
合流部(J2)におけるモノマー転化率:
合流部(J2)に接続された極性溶媒供給流路(3)に代えて、合流部(J2)に重合停止剤供給流路(4)を接続し、合流部(J2)に重合停止剤を供給した。合流部(J2)の排出口(出口)から10mLを採取し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により分析した。モノマーのピーク面積と重合体のピーク面積の合計に対する重合体のピーク面積の割合を算出し、モノマー転化率とした。合流部(J2)におけるモノマー転化率(すなわち、プレ反応管(5)を通過直後の液MAB中のモノマー転化率)は1モル%であった。
【0072】
取り出し:
配管(7)出口から重合体を含む溶液10mLを採取し、分子量と分子量分布をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定した。その結果、数平均分子量(Mn)は14000、分子量分布(分散度、Mw/Mn)は1.04であった。また、採取した試料からモノマーは検出されず、モノマー転化率は100モル%であった。
本明細書においてGPCは下記の条件で測定した。
装置:HLC-8220GPC(東ソー社製)
検出器:示差屈折計(RI(Refractive Index)検出器)
プレカラム:TSKGUARDCOLUMN HXL-L 6mm×40mm(東ソー社製)
サンプル側カラム:以下3本を順に直結(全て東ソー社製)
・TSK-GEL GMHXL 7.8mm×300mm
・TSK-GEL G4000HXL 7.8mm×300mm
・TSK-GEL G2000HXL 7.8mm×300mm
リファレンス側カラム:TSK-GEL G1000HXL 7.8mm×300mm
恒温槽温度:40℃
移動層:THF
サンプル側移動層流量:1.0mL/分
リファレンス側移動層流量:1.0mL/分
試料濃度:0.1質量%
試料注入量:100μL
データ採取時間:試料注入後5分~45分
サンプリングピッチ:300msec
【0073】
[実施例2]
実施例1において、液の種類及び送液条件を下記の通り変更したこと以外は、実施例1と同様にして重合体を得た。
【0074】
液A(3.5M-t-ブトキシスチレン/(トルエン/THF=78/22(質量比))):60mL/min
液B(0.08M-nBuLi/トルエン):21.9mL/min
液C(THF):49mL/min
重合停止剤(0.5M-MeOH/THF):26.3mL/min
【0075】
得られた重合体の数平均分子量は18300、分子量分布(分散度、Mw/Mn)は1.04、モノマー転化率は100モル%であった。
合流部(J2)におけるモノマー転化率は1モル%であった。
【0076】
[実施例3]
実施例1において、液Cとして用いたTHFをジエチレングリコールジメチルエーテルに、プレ反応管(5)のSUS316チューブの長さを2.5mに変更した以外は、実施例1と同様にして重合体を得た。得られた重合体の数平均分子量は14200、分子量分布(分散度、Mw/Mn)は1.05、モノマー転化率は100モル%であった。
実施例3において、合流部(J2)におけるモノマー転化率は5モル%であった。
【0077】
[比較例1]
実施例1において、極性溶媒供給流路(3)内に液Cを送液しなかった(液Cの送液ポンプを作動させなかった)こと以外は、実施例1と同様にして重合体を得た。得られた重合体の数平均分子量は15000、分子量分布(分散度、Mw/Mn)は1.12であった。
【0078】
[比較例2]
実施例2において、極性溶媒供給流路(3)内に液Cを送液しなかった(液Cの送液ポンプを作動させなかった)こと以外は、実施例2と同様にして重合体を得た。得られた重合体の数平均分子量は19800、分子量分布(分散度、Mw/Mn)は1.10であった。
【0079】
[比較例3]
実施例1において、液Cとして用いたTHFをトルエンに変更したこと以外は、実施例1と同様にして重合体を得た。得られた重合体の数平均分子量は15200、分子量分布(分散度、Mw/Mn)は1.12であった。
【0080】
[比較例4]
実施例2において、液Aとして用いた3.5M-t-ブトキシスチレン/(トルエン/THF=78/22(質量比))を、3.5M-t-ブトキシスチレン/THFに代えたこと以外は、実施例2と同様にして重合体を得た。得られた重合体の数平均分子量は18500、分子量分布(分散度、Mw/Mn)は1.09であった。
比較例4において、合流部(J2)におけるモノマー転化率は19モル%であった。
【0081】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0082】
本願は、2018年9月27日に日本国で特許出願された特願2018-181794に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
【符号の説明】
【0083】
100、200 フロー式反応システム
I、II、III、IV 導入口
1 アニオン重合性モノマー供給流路
2 アニオン重合開始剤供給流路
3 極性溶媒供給流路
4 重合停止剤供給流路
5 プレ反応管
6 反応管
7 配管
J1、J2、J3、J4 合流部
R1 低温恒温槽
図1
図2