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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】移動体位置測位システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/30 20120101AFI20220124BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20220124BHJP
【FI】
G06Q50/30
G06Q50/10 ZJT
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017053249
(22)【出願日】2017-03-17
(65)【公開番号】P2018156444
(43)【公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-02-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度,国立研究開発法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/ソーシャル・ビッグデータ利活用・基盤技術の研究開発 課題A ソーシャル・ ビッグデータ利活用アプリケーションの研究開発」,産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504202472
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100205084
【弁理士】
【氏名又は名称】吉浦 洋一
(72)【発明者】
【氏名】相原 健郎
【審査官】上嶋 裕樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-097824(JP,A)
【文献】特開2014-189356(JP,A)
【文献】特開2004-032037(JP,A)
【文献】特開2016-065792(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0197484(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106355892(CN,A)
【文献】特開2016-177381(JP,A)
【文献】特開2015-204005(JP,A)
【文献】特開2014-002575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスである移動体に設置した近距離無線通信装置と,移動体の近傍にいる利用者が利用する可搬型通信端末とを用いる移動体位置測位システムであって,
前記可搬型通信端末は,
前記近距離無線通信装置から近距離無線通信により発信された装置識別情報または移動体識別情報を検出する識別情報検出処理部と,
前記可搬型通信端末における位置測位装置を用いて前記可搬型通信端末の位置情報を検出する位置情報検出処理部と,
前記装置識別情報または移動体識別情報と,前記位置情報とをコンピュータに送信する検出情報送信処理部と,を有しており,
前記コンピュータは,
前記可搬型通信端末から前記装置識別情報または移動体識別情報と前記位置情報とを受け付ける検出情報受付処理部と,
前記装置識別情報または移動体識別情報と前記位置情報とを記憶する検出情報記憶部と,を有しており,
前記検出情報受付処理部は,
前記可搬型通信端末から受け付けた位置情報について,移動体が走行可能な道路の位置情報の範囲内にある位置情報を採用し,前記検出情報記憶部に記憶する,
ことを特徴とする移動体位置測位システム。
【請求項2】
前記可搬型通信端末は,さらに,
前記移動体の位置情報の問い合わせ要求の操作を受け付けると,前記可搬型通信端末における位置測位装置を用いて前記可搬型通信端末の位置情報を検出し,前記問い合わせ要求と前記位置情報とを前記コンピュータに送信する移動体情報要求処理部と,
前記問い合わせ要求に対応する前記移動体の位置情報を前記コンピュータから受け取り,表示処理を行う移動体情報表示処理部と,を有しており,
前記コンピュータは,さらに,
前記可搬型通信端末からの問い合わせ要求と位置情報とを受け付け,前記位置情報に対応する移動体を前記検出情報記憶部に基づいて特定し,前記特定した移動体の情報を前記可搬型通信端末に送信する移動体情報問い合わせ処理部と,を有する,
ことを特徴とする請求項1に記載の移動体位置測位システム。
【請求項3】
移動体に設置した近距離無線通信装置と,移動体の近傍にいる利用者が利用する可搬型通信端末とを用いる移動体位置測位システムであって,
前記可搬型通信端末は,
前記近距離無線通信装置から近距離無線通信により発信された装置識別情報または移動体識別情報を検出する識別情報検出処理部と,
前記可搬型通信端末における位置測位装置を用いて前記可搬型通信端末の位置情報を検出する位置情報検出処理部と,
前記装置識別情報または移動体識別情報と,前記位置情報とをコンピュータに送信する検出情報送信処理部と,
移動体の位置情報の問い合わせ要求の操作を受け付けると,前記可搬型通信端末における位置測位装置を用いて前記可搬型通信端末の位置情報を検出し,前記問い合わせ要求と前記位置情報とを前記コンピュータに送信する移動体情報要求処理部と,
前記問い合わせ要求に対応する移動体の位置情報を前記コンピュータから受け取り,表示処理を行う移動体情報表示処理部と,を有しており,
前記コンピュータは,
前記可搬型通信端末から前記装置識別情報または移動体識別情報と前記位置情報とを受け付ける検出情報受付処理部と,
前記装置識別情報または移動体識別情報と前記位置情報とを記憶する検出情報記憶部と,
前記可搬型通信端末からの問い合わせ要求と位置情報とを受け付け,前記受け付けた位置情報を用いて,前記問い合わせ要求に対応する移動体の位置情報を前記可搬型通信端末に送信する移動体情報問い合わせ処理部と,を有しており,
前記可搬型通信端末において,前記移動体の表示処理がオンになっている場合には,前記検出した装置識別情報または移動体識別情報と,前記位置測位装置を用いて前記可搬型通信端末の位置情報とを前記コンピュータに送信する処理をオンにする,またはオフにできない,
ことを特徴とする移動体位置測位システム。
【請求項4】
バスである移動体の近傍にいる利用者が利用する可搬型通信端末を用いる移動体位置測位システムであって,
前記移動体位置測位システムは,
前記可搬型通信端末から,前記移動体に設置した近距離無線通信装置から近距離無線通信により検出した装置識別情報または移動体識別情報と,前記可搬型通信端末の位置測位装置を用いて検出した位置情報とを受け付ける検出情報受付処理部と,
前記装置識別情報または移動体識別情報と前記位置情報とを記憶する検出情報記憶部と,を有しており,
前記検出情報受付処理部は,
前記可搬型通信端末から受け付けた位置情報について,移動体が走行可能な道路の位置情報の範囲内にある位置情報を採用し,前記検出情報記憶部に記憶する,
ことを特徴とする移動体位置測位システム。
【請求項5】
移動体の近傍にいる利用者が利用する可搬型通信端末を用いて,前記移動体の位置情報を所定のコンピュータに送る移動体位置測位システムであって,
前記移動体位置測位システムは,
前記移動体に設置した近距離無線通信装置から近距離無線通信により発信された装置識別情報または移動体識別情報を検出する識別情報検出処理部と,
前記可搬型通信端末における位置測位装置を用いて前記可搬型通信端末の位置情報を検出する位置情報検出処理部と,
前記装置識別情報または移動体識別情報と,前記位置情報とをあらかじめ定められたコンピュータに送信する検出情報送信処理部と,
移動体の位置情報の問い合わせ要求の操作を受け付けると,前記可搬型通信端末における位置測位装置を用いて前記可搬型通信端末の位置情報を検出し,前記問い合わせ要求と前記位置情報とを前記コンピュータに送信する移動体情報要求処理部と,
前記問い合わせ要求に対応する移動体の位置情報を前記コンピュータから受け取り,表示処理を行う移動体情報表示処理部と,を有しており,
前記可搬型通信端末において,前記移動体の表示処理がオンになっている場合には,前記検出した装置識別情報または移動体識別情報と,前記位置測位装置を用いて前記可搬型通信端末の位置情報とを前記コンピュータに送信する処理をオンにする,またはオフにできない,
ことを特徴とする移動体位置測位システム。
【請求項6】
コンピュータを,
バスである移動体の近傍にいる利用者が利用する可搬型通信端末から,前記移動体に設置した近距離無線通信装置から近距離無線通信により検出した装置識別情報または移動体識別情報と,前記可搬型通信端末の位置測位装置を用いて検出した位置情報とを受け付け,所定の記憶装置に記憶させる検出情報受付処理部,
として機能させるプログラムであって,
前記検出情報受付処理部は,
前記可搬型通信端末から受け付けた位置情報について,移動体が走行可能な道路の位置情報の範囲内にある位置情報を採用し,前記所定の記憶装置に記憶させる,
ことを特徴とするプログラム。
【請求項7】
可搬型通信端末を,
移動体に設置した近距離無線通信装置から近距離無線通信により発信された装置識別情報または移動体識別情報を検出する識別情報検出処理部,
前記可搬型通信端末における位置測位装置を用いて前記可搬型通信端末の位置情報を検出する位置情報検出処理部,
前記装置識別情報または移動体識別情報と,前記位置情報とをあらかじめ定められたコンピュータに送信する検出情報送信処理部,
移動体の位置情報の問い合わせ要求の操作を受け付けると,前記可搬型通信端末における位置測位装置を用いて前記可搬型通信端末の位置情報を検出し,前記問い合わせ要求と前記位置情報とを前記コンピュータに送信する移動体情報要求処理部,
前記問い合わせ要求に対応する移動体の位置情報を前記コンピュータから受け取り,表示処理を行う移動体情報表示処理部,として機能させるアプリケーションプログラムであって,
前記移動体の表示処理がオンになっている場合には,前記検出した装置識別情報または移動体識別情報と,前記位置測位装置を用いて前記可搬型通信端末の位置情報とを前記コンピュータに送信する処理をオンにする,またはオフにできない,
ことを特徴とするアプリケーションプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,バス,タクシー,トラック,電車などの移動体の位置を測位する移動体位置測位システムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばバス,タクシー,トラック,電車などの移動体を利用しようとする者は,その移動体が現在どの位置にあるのかを知りたい場合が多い。そのため,移動体の現在の位置を測位し,その乗客などに対して移動体の位置を提供するいくつかのロケーションシステムが考えられている。
【0003】
第1の方法としては,たとえば,バスのロケーションシステムがある。これは,バスにGPSレシーバーと通信装置とを設置し,GPSによって測位したバスの位置情報を,通信装置を介して所定のサーバに送信する。そしてサーバは,バス停にバスの位置情報を送信し,バスを待っている乗客に知らせている(非特許文献1)。また,バスの位置情報を所定のウェブサイトから閲覧可能とすることで,バス停で待たずともウェブサイトを介して,バスの位置情報の提供を行っている(非特許文献1)。
【0004】
また第2の方法として,バスのナンバープレートなどの個体識別情報を認識するカメラなどの装置を道路に設置し,通過したバスの個体識別情報を読み取り,読み取った個体識別情報と装置の識別情報とを所定のサーバに送信する方法がある。この場合,装置の識別情報に基づいて,当該バスがどの位置を通過したかを特定している(非特許文献2乃至非特許文献4)。
【0005】
さらに第3の方法として,バスの車内とバス停にそれぞれビーコン装置を設置し,バスの利用者や乗務員が所持する無線通信端末がビーコン信号を受信した場合に,バスの車内のビーコン信号と,バス停のビーコン信号の双方の情報をネットワーク経由で運行管理サーバに送信することで,バスがどのバス停にいるのかを知らせるシステムがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-157273号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】内閣府宇宙開発戦略推進事務局,”GPSで現在地を示して不便を解消。東京都交通局の「バスロケシステム」|利用者向け情報|みちびき(準天頂衛星システム:QZSS)公式サイト-内閣府”,[online],インターネット<URL:http://qzss.go.jp/usage/userreport/to-bus_1508114.html>
【文献】池田達治ほか,”車両ナンバ読取システムの開発”,[online],インターネット<URL:http://nissin.jp/technical/technicalreport/pdf/2010-135/2010-135-06.pdf>
【文献】加藤武彦ほか,”自動ナンバープレート読取装置の開発”,[online],インターネット<URL:http://www.sei.co.jp/technology/tr/bn181/pdf/sei10732.pdf>
【文献】株式会社リネイル,”ナンバー認識システム NACS”,[online],インターネット<URL:http://www.reneil.jp/nacs.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
第1の方法の場合,バスなどの移動体にGPS装置と通信装置の双方を設置する必要がある。移動体による交通事業者にとっては,初期コストが高く,通信コストなどのランニングコストの負担も大きい。とくに,地方のバス路線などでは利用者の少ない路線も多く,交通事業者にとって初期コストの負担が大きいものは導入が困難であった。
【0009】
第2の方法においても,移動体のロケーションシステムを目的として設置する場合には初期コストが高くなる。そして,装置を設置した場所を移動体が通過したことを検出できるのみで,それ以外の場所を移動体が移動している場合には,その位置情報を把握することはできない。また,地方のバス路線などでは,幹線道路ではない道路がバスの運行ルートになっていることも多く,コストのかかる装置が設置されていない可能性がある。その場合には,移動体の位置情報を把握できない。
【0010】
さらに第3の方法は,バスにGPS装置,通信装置を設置するコストが増加すること,そして,バスに設置したGPS機能の精度が悪い場合に,バスが停留所に近づいているか到着しているかを正確に判断することが困難であることを前提とし,バスおよびバス停のそれぞれに設置したビーコン装置からのビーコン信号を受信することで,GPS装置を用いないで,上記問題点の解決を図ったバスロケーションのシステムである。
【0011】
第3の方法の場合,バスとバス停の双方にそれぞれビーコン装置を設置する必要があるので,バス停が多い路線の場合には,GPS装置を用いた場合ほどではないにしても,相応の初期コストを要する。また,バス停がなく,バス路線の任意の箇所で乗降が可能なバス路線には適用することができない。さらに,バスがバス停に近づかないと,バスの位置を検出することができないので,乗車を希望するバスに乗り遅れないためには,一つ前のバス停にバスが到着した時点など,自らが乗車するバス停にバスが到着する前に行くなど,その行動を開始しなければならない。これは,バスの現在位置を知ることができずに推測のみで行動を開始することを意味する。しかし,たとえば積雪の多い地域では,雪による交通事情の悪化から頻繁に渋滞などが発生し,バスの到着が遅延することなどもあり,一つ前のバス停にバスが到着しても,自らが乗車するバス停にすぐにバスが到着するとは限らず,無駄な待機時間をバス停で過ごさなければならなくなるなど,利用者の利便性の観点から問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は上記課題に鑑み,本発明の移動体位置測位システムを発明した。
【0013】
第1の発明は,バスである移動体に設置した近距離無線通信装置と,移動体の近傍にいる利用者が利用する可搬型通信端末とを用いる移動体位置測位システムであって,前記可搬型通信端末は,前記近距離無線通信装置から近距離無線通信により発信された装置識別情報または移動体識別情報を検出する識別情報検出処理部と,前記可搬型通信端末における位置測位装置を用いて前記可搬型通信端末の位置情報を検出する位置情報検出処理部と,前記装置識別情報または移動体識別情報と,前記位置情報とをコンピュータに送信する検出情報送信処理部と,を有しており,前記コンピュータは,前記可搬型通信端末から前記装置識別情報または移動体識別情報と前記位置情報とを受け付ける検出情報受付処理部と,前記装置識別情報または移動体識別情報と前記位置情報とを記憶する検出情報記憶部と,を有しており,前記検出情報受付処理部は,前記可搬型通信端末から受け付けた位置情報について,移動体が走行可能な道路の位置情報の範囲内にある位置情報を採用し,前記検出情報記憶部に記憶する,移動体位置測位システムである。
【0014】
本発明のように構成することで,移動体には事業者などが管理するコンピュータとの間の通信を行う通信装置を備えることはなく,近距離の無線通信を行う近距離無線通信装置を設置するだけで,移動体の位置情報を事業者のコンピュータで管理することができる。これによって,事業者のコスト的負担を軽減することができる。また,可搬型通信端末の利用者が移動体に乗車していれば,移動体がバス停などの所定位置にいない場合であっても,常に移動体の位置情報を把握することもできる。
【0015】
上述の発明において,前記可搬型通信端末は,さらに,前記移動体の位置情報の問い合わせ要求の操作を受け付けると,前記可搬型通信端末における位置測位装置を用いて前記可搬型通信端末の位置情報を検出し,前記問い合わせ要求と前記位置情報とを前記コンピュータに送信する移動体情報要求処理部と,前記問い合わせ要求に対応する前記移動体の位置情報を前記コンピュータから受け取り,表示処理を行う移動体情報表示処理部と,を有しており,前記コンピュータは,さらに,前記可搬型通信端末からの問い合わせ要求と位置情報とを受け付け,前記位置情報に対応する移動体を前記検出情報記憶部に基づいて特定し,前記特定した移動体の情報を前記可搬型通信端末に送信する移動体情報問い合わせ処理部と,を有する,移動体位置測位システムのように構成することができる。
【0016】
本発明のように構成することで,可搬型通信端末の利用者は,自らの周囲にある移動体の位置情報を知ることができる。
【0017】
第3の発明は,移動体に設置した近距離無線通信装置と,移動体の近傍にいる利用者が利用する可搬型通信端末とを用いる移動体位置測位システムであって,前記可搬型通信端末は,前記近距離無線通信装置から近距離無線通信により発信された装置識別情報または移動体識別情報を検出する識別情報検出処理部と,前記可搬型通信端末における位置測位装置を用いて前記可搬型通信端末の位置情報を検出する位置情報検出処理部と,前記装置識別情報または移動体識別情報と,前記位置情報とをコンピュータに送信する検出情報送信処理部と,移動体の位置情報の問い合わせ要求の操作を受け付けると,前記可搬型通信端末における位置測位装置を用いて前記可搬型通信端末の位置情報を検出し,前記問い合わせ要求と前記位置情報とを前記コンピュータに送信する移動体情報要求処理部と,前記問い合わせ要求に対応する移動体の位置情報を前記コンピュータから受け取り,表示処理を行う移動体情報表示処理部と,を有しており,前記コンピュータは,前記可搬型通信端末から前記装置識別情報または移動体識別情報と前記位置情報とを受け付ける検出情報受付処理部と,前記装置識別情報または移動体識別情報と前記位置情報とを記憶する検出情報記憶部と,前記可搬型通信端末からの問い合わせ要求と位置情報とを受け付け,前記受け付けた位置情報を用いて,前記問い合わせ要求に対応する移動体の位置情報を前記可搬型通信端末に送信する移動体情報問い合わせ処理部と,を有しており,前記可搬型通信端末において,前記移動体の表示処理がオンになっている場合には,前記検出した装置識別情報または移動体識別情報と,前記位置測位装置を用いて前記可搬型通信端末の位置情報とを前記コンピュータに送信する処理をオンにする,またはオフにできない,移動体位置測位システムである。
【0018】
本発明の移動体位置測位システムにおいては,移動体には事業者が管理するコンピュータとの通信手段を備えず,利用者が利用する可搬型通信端末の通信機能を利用している。そのため,利用者は,本来,自らが負担をしなくてもよい移動体の位置情報,識別情報などを事業者のコンピュータに送る処理をその可搬型通信端末で行っていることとなり,事業者に代わって通信料を負担することとなる。単に利用者が可搬型通信端末の位置情報を検出し,それらの情報を事業者のコンピュータに送信する機能のみを有する場合には,利用者にとって何らのメリットがなく,本発明の移動体位置測位システムの利用が促進されない。しかし,一つのアプリケーションプログラムとして,上述の2つの処理を一体化することによって,利用者は,移動体の位置情報を表示させることができる代わりに,移動体の位置情報を事業者サーバに送信する負担を行うことを受け入れやすくなる。そのため,本発明の移動体位置測位システムの利用の促進を図ることが期待できる。
【0019】
第1の発明は,本発明のように構成することでも同様の技術的効果を達成することができる。すなわち,第4の発明は,バスである移動体の近傍にいる利用者が利用する可搬型通信端末を用いる移動体位置測位システムであって,前記移動体位置測位システムは,前記可搬型通信端末から,前記移動体に設置した近距離無線通信装置から近距離無線通信により検出した装置識別情報または移動体識別情報と,前記可搬型通信端末の位置測位装置を用いて検出した位置情報とを受け付ける検出情報受付処理部と,前記装置識別情報または移動体識別情報と前記位置情報とを記憶する検出情報記憶部と,を有しており,前記検出情報受付処理部は,前記可搬型通信端末から受け付けた位置情報について,移動体が走行可能な道路の位置情報の範囲内にある位置情報を採用し,前記検出情報記憶部に記憶する,移動体位置測位システムである。
【0020】
第3の発明は,本発明のように構成することでも同様の技術的効果を達成することができる。すなわち,第5の発明は,移動体の近傍にいる利用者が利用する可搬型通信端末を用いて,前記移動体の位置情報を所定のコンピュータに送る移動体位置測位システムであって,前記移動体位置測位システムは,前記移動体に設置した近距離無線通信装置から近距離無線通信により発信された装置識別情報または移動体識別情報を検出する識別情報検出処理部と,前記可搬型通信端末における位置測位装置を用いて前記可搬型通信端末の位置情報を検出する位置情報検出処理部と,前記装置識別情報または移動体識別情報と,前記位置情報とをあらかじめ定められたコンピュータに送信する検出情報送信処理部と,移動体の位置情報の問い合わせ要求の操作を受け付けると,前記可搬型通信端末における位置測位装置を用いて前記可搬型通信端末の位置情報を検出し,前記問い合わせ要求と前記位置情報とを前記コンピュータに送信する移動体情報要求処理部と,前記問い合わせ要求に対応する移動体の位置情報を前記コンピュータから受け取り,表示処理を行う移動体情報表示処理部と,を有しており,前記可搬型通信端末において,前記移動体の表示処理がオンになっている場合には,前記検出した装置識別情報または移動体識別情報と,前記位置測位装置を用いて前記可搬型通信端末の位置情報とを前記コンピュータに送信する処理をオンにする,またはオフにできない,移動体位置測位システムである。
【0021】
第1の発明は,本発明のように構成することでも同様の技術的効果を達成することができる。すなわち,第6の発明は,コンピュータを,バスである移動体の近傍にいる利用者が利用する可搬型通信端末から,前記移動体に設置した近距離無線通信装置から近距離無線通信により検出した装置識別情報または移動体識別情報と,前記可搬型通信端末の位置測位装置を用いて検出した位置情報とを受け付け,所定の記憶装置に記憶させる検出情報受付処理部,として機能させるプログラムであって,前記検出情報受付処理部は,前記可搬型通信端末から受け付けた位置情報について,移動体が走行可能な道路の位置情報の範囲内にある位置情報を採用し,前記所定の記憶装置に記憶させる,プログラムである。
【0022】
本発明のアプリケーションプログラムを可搬型通信端末で実行させることで,第3の発明における可搬型通信端末を実現できる。すなわち,可搬型通信端末を,移動体に設置した近距離無線通信装置から近距離無線通信により発信された装置識別情報または移動体識別情報を検出する識別情報検出処理部,前記可搬型通信端末における位置測位装置を用いて前記可搬型通信端末の位置情報を検出する位置情報検出処理部,前記装置識別情報または移動体識別情報と,前記位置情報とをあらかじめ定められたコンピュータに送信する検出情報送信処理部,移動体の位置情報の問い合わせ要求の操作を受け付けると,前記可搬型通信端末における位置測位装置を用いて前記可搬型通信端末の位置情報を検出し,前記問い合わせ要求と前記位置情報とを前記コンピュータに送信する移動体情報要求処理部,前記問い合わせ要求に対応する移動体の位置情報を前記コンピュータから受け取り,表示処理を行う移動体情報表示処理部,として機能させるアプリケーションプログラムであって,前記移動体の表示処理がオンになっている場合には,前記検出した装置識別情報または移動体識別情報と,前記位置測位装置を用いて前記可搬型通信端末の位置情報とを前記コンピュータに送信する処理をオンにする,またはオフにできない,アプリケーションプログラムである。
【発明の効果】
【0026】
本発明では,バスなどの移動体に近距離無線通信装置を設置するのみで,移動体の近傍にいる利用者の可搬型通信端末の位置を測位して,それを移動体の位置情報として情報提供を行うことができるので,事業者のコスト的負担を減らすことができる。また,移動体がバス停などの所定位置にいない場合であっても,常に移動体の位置が把握可能となり,利便性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の移動体位置測位システムのイメージ図である。
図2】本発明の移動体位置測位システムのシステムの構成の一例を模式的に示す概念図である。
図3】本発明の移動体位置測位システムで用いるコンピュータのハードウェア構成の一例を模式的に示す概念図である。
図4】本発明の移動体位置測位システムにおける移動体の位置情報の取得処理を示すフローチャートである。
図5】本発明の移動体位置測位システムにおける移動体の位置情報の表示処理を示すフローチャートである。
図6】可搬型通信端末において移動体の位置情報を表示する場合の一例を模式的に示す図である。
図7】実施例4における移動体位置測位システムのイメージ図である。
図8】実施例4における移動体位置測位システムのシステム構成の一例を模式的に示す概念図である。
図9】実施例5における移動体位置測位システムのイメージ図である。
図10】実施例5における移動体位置測位システムのシステム構成の一例を模式的に示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の移動体位置測位システム1の全体のイメージ図の一例を図1に示す。また,移動体位置測位システム1のシステム構成の一例を図2に,移動体位置測位システム1で用いるコンピュータのハードウェア構成の一例を図3に示す。
【0029】
移動体位置測位システム1は,バス,タクシー,トラック,電車などの移動体による事業を行う事業者が利用する事業者サーバ2と,移動体に設置された近距離無線通信装置3と,移動体を利用する利用者が操作する可搬型通信端末4とを用いる。可搬型通信端末4としては,スマートフォン,タブレット型コンピュータ,ラップトップ型コンピュータなど各種の通信機能を有するコンピュータが該当する。
【0030】
移動体位置測位システム1における事業者サーバ2,可搬型通信端末4はコンピュータによって実現される。コンピュータは,プログラムの演算処理を実行するCPUなどの演算装置70と,情報を記憶するRAMやハードディスクなどの記憶装置71と,ディスプレイなどの表示装置72と,情報の入力を行う入力装置73と,演算装置70の処理結果や記憶装置71に記憶する情報などの各種情報を,近距離無線通信以外の通信方式(たとえばインターネットやVPNなどの通信方式)により通信をする通信装置74とを有している。なお,コンピュータがタッチパネルディスプレイを備えている場合には表示装置72と入力装置73とが一体的に構成されていてもよい。タッチパネルディスプレイは,可搬型通信端末4などで利用されることが多いが,それに限定するものではない。
【0031】
タッチパネルディスプレイは,そのディスプレイ上で,直接,所定の入力デバイス(タッチパネル用のペンなど)や指などによって入力を行える点で,表示装置72と入力装置73の機能が一体化した装置である。
【0032】
移動体位置測位システム1の事業者サーバ2は一台のコンピュータによって実現されていてもよいが,その機能が複数のコンピュータによって実現されていてもよい。この場合のコンピュータとして,たとえばクラウドサーバであってもよい。
【0033】
さらに,本発明の移動体位置測位システム1における各手段は,その機能が論理的に区別されているのみであって,物理上あるいは事実上は同一の領域を為していても良い。
【0034】
移動体の車内または車外の所定箇所には近距離無線通信装置3が取り付けられており,当該近距離無線通信装置3を識別するための装置識別情報を発信する。近距離無線通信装置3としては,数メートルから十メートル程度の範囲で無線通信が可能な装置であればよく,たとえば赤外線通信(IrDA),Bluetooth(登録商標),Zigbeeなどの通信規格を用いることができるが,それに限定するものではない。近距離無線通信装置3として,たとえばビーコン装置を用いることができる。
【0035】
移動体に設置された近距離無線通信装置3は,少なくともその移動体が運行をしている間は近距離無線通信を行い,識別情報の発信をすることが好ましい。また近距離無線通信装置3は,常に識別情報の発信を継続していてもよいし,定期的(たとえば1秒ごと,10秒ごとなど)に識別情報の発信をしてもよい。
【0036】
可搬型通信端末4は移動体の利用者(移動体の運転手を含む)が利用する通信端末であって,可搬型通信端末4は,移動体に設置された近距離無線通信装置3との間で近距離無線通信を行う近距離無線通信装置42,GPSや携帯電話の基地局,無線LANなどによる位置測位装置43とを備えている。また可搬型通信端末4にはそこで起動するアプリケーションプログラムとして移動体情報処理部41を備えている。なお,可搬型通信端末4は移動体に乗降する乗客やその周辺にいる人ではなく,移動体の運転手が所持していてもよい。移動体の運転手は常に移動体に乗車しているので,移動体の位置情報が常に把握可能となる。可搬型通信端末4の利用者は,移動体の近傍にいればよい。移動体の近傍としては,たとえば移動体に乗車していたり,移動体が走行する道路付近にいる場合があるが,それに限定するものではない。近距離無線通信装置3による近距離無線通信の通信圏内である必要はある。
【0037】
可搬型通信端末4における近距離無線通信装置42は,移動体に設置された近距離無線通信装置3と近距離無線通信が可能であり,移動体の近距離無線通信装置3から発信された装置識別情報を検出する。近距離無線通信装置42は,移動体の近距離無線通信装置3の通信圏内に入ると,自動的に通信の接続を確立し,近距離無線通信を可能とせしめる。位置測位装置43はGPSによる位置情報のほか,携帯電話の基地局,無線LANなどによる位置情報を用いて,可搬型通信端末4の位置情報を測位する。位置情報としては,緯度経度により表示されていることが好ましいが,それに限定されるものではない。
【0038】
移動体情報処理部41は可搬型通信端末4において機能するアプリケーションプログラムであって,識別情報検出処理部411と位置情報検出処理部412と検出情報送信処理部413と移動体情報要求処理部414と移動体情報表示処理部415とを備える。
【0039】
識別情報検出処理部411は,可搬型通信端末4の近距離無線通信装置42で,移動体に設置された近距離無線通信装置3からの装置識別情報を受信したことを検出する。
【0040】
位置情報検出処理部412は,識別情報検出処理部411において移動体に設置された近距離無線通信装置3からの装置識別情報を検出すると,位置測位装置43を用いて当該可搬型通信端末4の位置情報と日時情報とを検出する。また,識別情報検出処理部411において近距離無線通信装置3からの装置識別情報を検出している間,あらかじめ定められた間隔,たとえば1秒ごとに位置測位装置43を用いて当該可搬型通信端末4の位置情報を検出する。
【0041】
検出情報送信処理部413は,識別情報検出処理部411において受信した装置識別情報と,位置情報検出処理部412で検出した位置情報と,装置識別情報または位置情報を検出した日時情報とを,可搬型通信端末4における通信装置74を介して事業者サーバ2に送信する。
【0042】
移動体情報要求処理部414は,可搬型通信端末4において,可搬型通信端末4の利用者の周辺の移動体の位置情報の問い合わせ要求操作が行われたことを受け付けると,位置測位装置43を用いて,当該可搬型通信端末4の位置情報を検出する。また,検出した可搬型通信端末4の位置情報と,移動体の位置情報の問い合わせ要求とを,可搬型通信端末4の通信装置74を介して事業者サーバ2に送信する。
【0043】
移動体情報表示処理部415は,可搬型通信端末4の利用者の周辺の移動体の情報を,事業者サーバ2から可搬型通信端末4の通信装置74を介して受け付け,可搬型通信端末4の表示装置72において表示を行わせる。この場合の表示の一例を図6に示す。
【0044】
移動体情報処理部41は,可搬型通信端末4における一つのアプリケーションプログラムとして機能するとよいが,それに限定されるものではない。一つのアプリケーションプログラムの場合には,移動体情報処理部41が,移動体に設置された近距離無線通信装置3から可搬型通信端末4が装置識別情報を受信し,それを検出することで,可搬型通信端末4の位置情報を検出し,それを事業者サーバ2に送信する処理(識別情報検出処理部411,位置情報検出処理部412,検出情報送信処理部413の各処理)と,移動体の位置情報の問い合わせ要求とその位置情報の表示処理(移動体情報要求処理部414と移動体情報表示処理部415の各処理)との双方をアプリケーションプログラムで一体的に機能させる。
【0045】
本発明の移動体位置測位システム1においては,移動体には事業者サーバ2との通信手段を備えず,利用者が利用する可搬型通信端末4の通信装置74を利用している。そのため,利用者は,本来,自らが負担をしなくてもよい移動体の位置情報,識別情報などを事業者サーバ2に送る処理をその可搬型通信端末4で行っていることとなり,事業者に代わって通信料を負担することとなる。単に利用者が可搬型通信端末4の位置情報を検出し,それらの情報を事業者サーバ2に送信する機能のみを有する場合には,利用者にとって何らのメリットがなく,本発明の移動体位置測位システム1の利用が促進されない。しかし,一つのアプリケーションプログラムとして,上述の2つの処理を一体化することによって,利用者は,移動体の位置情報を表示させることができる代わりに,移動体の位置情報を事業者サーバ2に送信する負担を行うことを受け入れやすくなる。そのため,本発明の移動体位置測位システム1の利用の促進を図ることが期待できる。
【0046】
また,移動体情報処理部41は,移動体の位置情報を受け取り,その表示をさせる処理を可搬型通信端末4でオン(実行許可)としている場合には,移動体に設置された可搬型通信端末4から受け取った識別情報に基づいて可搬型通信端末4の位置情報を検出し,それを事業者サーバ2に送信する処理も自動的にオン(実行許可)に設定する,またはその機能をオフ(実行不許可)にすることができないように設定されていてもよい。このように構成することで,移動体の位置情報を知りたい利用者は,自らが位置情報の発信者となることも許容しやすくなる。この場合には,移動体情報処理部41が一つのアプリケーションプログラムとして構成されていてもよいし,異なるアプリケーションプログラムとして構成されていてもよい。
【0047】
事業者サーバ2は,検出情報受付処理部21と検出情報記憶部22と移動体情報記憶部23と移動体情報問い合わせ処理部24とを備える。
【0048】
検出情報受付処理部21は,可搬型通信端末4から送信された装置識別情報と位置情報と日時情報とを,事業者サーバ2の通信装置74を介して受け付ける。そして装置識別情報に対応する移動体識別情報を,後述する移動体情報記憶部23を参照することで特定する。そして特定した移動体識別情報と位置情報と日時情報とを検出情報記憶部22に記憶させる。
【0049】
検出情報記憶部22は,検出情報受付処理部21で受け付けた装置識別情報に対応する移動体識別情報と位置情報と日時情報とを対応付けて記憶する。
【0050】
移動体情報記憶部23は,装置識別情報に対応付けて,近距離無線通信装置3が設置された移動体の識別情報(移動体識別情報)を記憶する。なお,移動体情報記憶部23には,当該移動体が運行する路線を識別する路線識別情報を記憶していてもよい。
【0051】
移動体情報問い合わせ処理部24は,可搬型通信端末4から移動体の位置情報の問い合わせ要求と可搬型通信端末4の位置情報とを,事業者サーバ2の通信装置74を介して受け付けると,受け付けた可搬型通信端末4の位置情報から所定範囲内にある移動体の移動体識別情報を,検出情報記憶部22に記憶する位置情報に基づいて特定する。そして特定した移動体の情報を,問い合わせ要求を行った可搬型通信端末4に,事業者サーバ2の通信装置74を介して送信する。なお,可搬型通信端末4から問い合わせ要求のほかに,移動体の路線を識別する情報などを受け付けている場合には,移動体情報問い合わせ処理部24は,移動体情報記憶部23を参照して路線識別情報に基づいて絞込を行い,問い合わせ要求に対応する移動体の情報を特定すればよい。
【実施例1】
【0052】
つぎに本発明の移動体位置測位システム1の処理プロセスの一例を,図4および図5のフローチャートを用いて説明する。
【0053】
まず事業者サーバ2において移動体の位置情報を取得する処理を図4のフローチャートを用いて説明する。なお以下の説明においては移動体としてバス,近距離無線通信装置3としてビーコン装置を用いる場合を説明する。
【0054】
事業者サーバ2の移動体情報記憶部23には装置識別情報とバスを識別する移動体識別情報とが対応付けて記憶されている。また,バスには,装置識別情報を近距離無線通信により発信するビーコン装置があらかじめ取り付けられている。そして可搬型通信端末4はバスの乗客が所持しているとする。
【0055】
バスに設置されたビーコン装置は,近距離無線通信であるBluetoothによりあらかじめ定められた装置識別情報を発信している。装置識別情報は乗客がバスに乗車することで,乗客が利用する可搬型通信端末4の近距離無線通信装置42(Bluetooth機能)で受信し,それを識別情報検出処理部411が検出する(S100)。そして識別情報検出処理部411において,近距離無線装置42で装置識別情報を受信したことを検出すると,位置情報検出処理部412が位置測位装置43により,可搬型通信端末4の位置情報を検出する(S110)。
【0056】
可搬型通信端末4の位置情報を検出すると,検出情報送信処理部413は,装置識別情報と位置情報と日時情報とを,可搬型通信端末4の通信装置74を介して事業者サーバ2に送信する(S120)。
【0057】
なお,位置情報検出処理部412は,識別情報検出処理部411において,近距離無線通信により装置識別情報を受信していることを検出できなくなるまで,所定の間隔,たとえば1秒ごとに可搬型通信端末4の位置情報を位置測位装置43を用いて検出し,検出情報送信処理部413が,装置識別情報と位置情報と日時情報とを,可搬型通信端末4の通信装置74を介して事業者サーバ2に送信する。
【0058】
可搬型通信端末4から送信された装置識別情報と位置情報と日時情報とを,事業者サーバ2の通信装置74を介して受け付けた事業者サーバ2の検出情報受付処理部21は,装置識別情報に対応する移動体識別情報を移動体情報記憶部23を参照して特定する(S130)。そして特定した移動体識別情報と位置情報と日時情報とを対応付けて検出情報記憶部22に記憶させる(S140)。以上のようにすることで,事業者サーバ2でバスの位置情報を記憶,管理することができる。なお,検出情報記憶部22において,装置識別情報と位置情報と日時情報とを記憶するようにも構成でき,この場合,検出情報受付処理部21では受け付けた装置識別情報と位置情報と日時情報とを対応付けて記憶することとなる。
【0059】
なお,S100からS140の可搬型通信端末4の移動体情報処理部41における処理は,バックグラウンドで機能することが好ましいが,それに限定されない。
【0060】
つぎに,バス停などでバスを待っている利用者が本発明の移動体位置測位システム1を用いて,バスの位置情報を問い合わせる処理を,図5のフローチャートを用いて説明する。
【0061】
利用者は可搬型通信端末4で所定の操作を行うことで,移動体情報処理部41のアプリケーションプログラムを起動し,利用者の周辺にいるバスの位置情報の問い合わせ要求の操作を行う。その操作が行われたことは移動体情報要求処理部414で受け付け(S200),位置測位装置43を用いて,当該可搬型通信端末4の位置情報を検出する(S210)。そして,移動体情報要求処理部414は,検出した位置情報と,バスの位置情報の問い合わせ要求とを,可搬型通信端末4の通信装置74を介して事業者サーバ2に送る(S220)。
【0062】
可搬型通信端末4からのバスの位置情報の問い合わせ要求と位置情報とを,事業者サーバ2の通信装置74を介して事業者サーバ2の移動体情報問い合わせ処理部24で受け付けると(S230),移動体情報問い合わせ処理部24は,受け付けた可搬型通信端末4の位置情報に基づいて,そこから所定範囲内にあるバスの移動体識別情報を検出情報記憶部22を参照することで特定する。(S240)。移動体情報問い合わせ処理部24でこのような処理を実行することで,利用者の周辺にいるバスを特定することができる。
【0063】
そして移動体情報問い合わせ処理部24は,特定したバスの移動体識別情報とその位置情報とを含む情報を,事業者サーバ2の通信装置74を介して可搬型通信端末4に送信する(S250)。
【0064】
可搬型通信端末4の移動体情報処理部41における移動体情報表示処理部415は,可搬型通信端末4の通信装置74を介して事業者サーバ2から受け付けた,事業者サーバ2で特定したバスの移動体識別情報とその位置情報とを含む情報を地図情報に重畳し,その可搬型通信端末4の表示装置72で表示させる。これによって,図6のように,自らの周辺にあるバスの位置情報を知ることができる。また,位置情報のほか,バスの路線情報などが送られている場合には,たとえばバスを示すアイコンを選択することで,当該画面上でバスの路線情報などを表示可能としてもよい。
【実施例2】
【0065】
実施例1では移動体に設置した近距離無線通信装置3から装置識別情報を送信する場合を説明したが,近距離無線通信装置3から移動体識別情報を送信するように構成してもよい。この場合,事業者サーバ2に移動体情報記憶部23は設けずともよく,設ける場合には,移動体識別情報と路線識別情報とを対応付けて記憶させていてもよい。
【0066】
この場合,可搬型通信端末4の近距離無線通信装置42では,近距離無線通信装置3から送信された移動体識別情報を受信し,それを識別情報検出処理部411で検出する。そして位置情報検出処理部412が位置測位装置43を用いて,可搬型通信端末4の位置情報を検出する。検出情報送信処理部413は,移動体識別情報と位置情報と日時情報とを,可搬型通信端末4の通信装置74を介して事業者サーバ2に送信する。
【0067】
事業者サーバ2の検出情報受付処理部21は,可搬型通信端末4から移動体識別情報と位置情報と日時情報とを,事業者サーバ2の通信装置74を介して受け付けると,それらを検出情報記憶部22に記憶させる。
【0068】
以上のような処理を実行することで,事業者は,各移動体の位置情報を,実施例1の場合と同様に記憶し,管理することができる。可搬型通信端末4からの移動体の位置情報の問い合わせ処理については,実施例1と同様の処理で実現可能である。
【実施例3】
【0069】
本発明の移動体位置測位システム1では,移動体の利用者の可搬型通信端末4の位置測位装置43および通信装置74の通信機能を利用することで,事業者サーバ2に移動体の位置情報を送信している。そのため,本発明の移動体情報処理部41の機能を有する可搬型通信端末4を利用する利用者が移動体に複数いた場合,事業者サーバ2の検出情報受付処理部21では,それぞれの可搬型通信端末4から移動体の位置情報などを受信する。その場合,受け付けた位置情報をそのまま検出情報記憶部22に記憶させてしまうと,同一の移動体について,重複した情報,あるいは同じまたはほぼ同じ日時情報においても異なる位置情報が記憶されてしまう可能性がある。
【0070】
これは,それぞれの可搬型通信端末4の位置測位装置43による位置情報が必ずしも同一とはならない場合もあるためである。
【0071】
そこで本実施例の検出情報処理部では,同一の装置識別情報または移動体識別情報を可搬型通信端末4から受け付けた場合の処理を説明する。
【0072】
検出情報受付処理部21は,異なる可搬型通信端末4から装置識別情報または移動体識別情報を受け付けた場合,検出情報記憶部22における日時情報を参照して,一定時間(たとえば可搬型通信端末4が事業者サーバ2に位置情報などを送信するタイミングよりも短い間隔(1秒未満の間隔)の範囲内における,装置識別情報または移動体識別情報が同一である位置情報があるかを判定する。そして,一定時間の範囲内に,同一の移動体に対する位置情報であることを判定した場合には,それらの装置識別情報または移動体識別情報に対応する位置情報についての平均値の算出処理,同一である位置情報の数が多い位置情報を採用する処理,精度が高い位置情報を採用する処理などの重複処理を行う。そして重複処理の処理結果による位置情報を,検出情報記憶部22に記憶する位置情報とする。
【0073】
位置情報についての平均値の算出処理としては,同一の移動体に対する位置情報のうち,緯度,経度のそれぞれについて平均値を算出し,それを移動体の位置情報とする処理である。
【0074】
同一である位置情報の数が多い位置情報を採用する処理としては,位置情報を一定の範囲毎にグループ化し,そのグループ内にある位置情報の数が多いグループを特定する。そして,特定したグループにおける位置情報の平均値を算出することで,移動体の位置情報とする処理である。
【0075】
精度が高い位置情報を採用する処理としては,移動体がバスである場合,バスが走行可能な道路はあらかじめ定められているので,走行可能な道路の位置情報はあらかじめ設定されている。そのため,走行可能な道路の位置情報の範囲内にある可搬型通信端末4の位置情報を,精度が高い位置情報として判定し,その位置情報を採用することができる。
【0076】
重複処理としては上述に限られない。
【0077】
本実施例においては,位置測位装置43においてGPS衛星からの正確な日時情報(または時刻情報。本明細書において同様)を取得している。そのため,検出情報送信処理部413が事業者サーバ2に対して,日時情報として位置測位装置43からの正確な日時情報をあわせて送信することで,事業者サーバ2の検出情報受付処理部では,正確な日時情報を取得することができる。
【0078】
そこで,上述の重複処理の際に,複数の日時情報,位置情報を用いることで,移動体の位置推定精度を向上させることができる。また,移動体の位置情報の経時的変化を示す移動情報の推定精度を向上させることもできる。さらに,移動体の速度の推定も可能となる。
【0079】
さらに,位置推定精度,移動情報の推定精度を向上させることが可能となるので,各利用者における測位間隔を延ばすことが可能となる。その結果,電池消費や通信量の減少を実現することが可能となる。
【実施例4】
【0080】
実施例1乃至実施例3の異なる実施態様として,さらに,近距離無線通信装置5を移動体が乗客を乗降させる場所,たとえばバスの停留所やタクシー乗り場などに設置してもよい。この場合,その乗降場所にいる利用者の数を事業者サーバ2で記憶し,管理することが可能となる。本実施態様の移動体位置測位システム1のイメージを図7に,移動体位置測位システム1のシステム構成の一例を図8に示す。
【0081】
事業者サーバ2では,移動体に設置された近距離無線通信装置3の装置識別情報か,移動体以外の乗降場所,たとえばバス停に設置された近距離無線通信装置5の装置識別情報かを記憶する装置識別情報記憶部25を備える。また,近距離無線通信装置5の装置識別情報と乗降場所の情報とその乗降場所にいる人数の情報とは対応づけて記憶されている。
【0082】
バス停に近距離無線通信装置5を設置した場合,可搬型通信端末4を所持した利用者がバスに乗車するため,バス停の近傍で待っていると,可搬型通信端末4の近距離無線通信装置42は,近距離無線通信装置5が近距離無線通信により送信する装置識別情報を受信し,それを識別情報検出処理部411で検出する。
【0083】
そして位置情報検出処理部412が位置測位装置43を用いて,その可搬型通信端末4の位置情報を検出し,検出情報送信処理部413が装置識別情報と位置情報と日時情報とを,可搬型通信端末4の通信装置74を介して事業者サーバ2に送信する。
【0084】
事業者サーバ2の検出情報受付処理部21において,装置識別情報と位置情報と日時情報とを,事業者サーバ2の通信装置74を介して受け付けると,装置識別情報が移動体に設置された装置識別情報か,バス停に設置された装置識別情報かを,装置識別情報記憶部25に基づいて判定する。そして,移動体に設置された装置識別情報であると判定すると,上述の実施例1乃至実施例3と同様の処理を実行する。
【0085】
一方,移動体以外,たとえばバス停に設置された装置識別情報であることを判定すると,その装置識別情報に対応づけられた乗降場所を装置識別情報記憶部25を参照することで特定し,事業者サーバ2の装置識別情報記憶部25に,当該乗降場所にいる利用者の数を更新して記憶させる。これによって,事業者は,乗降場所ごとの利用者の数を把握することができる。
【0086】
また,可搬型通信端末4の位置情報検出処理部412は,識別情報検出処理部411において乗降場所に設置された近距離無線通信装置5の装置識別情報を受信している間はその乗降場所にいる可搬型通信端末4の位置情報を,バスなどの移動体に乗車した場合には移動体に設置された近距離無線通信装置3の装置識別情報を受信しその移動体にいる可搬型通信端末4の位置情報を,それぞれ事業者サーバ2に送信することとなるので,乗降場所にいるか,移動体にいるかが自動的に処理されて,その位置情報を管理することが可能となる。
【実施例5】
【0087】
実施例1乃至実施例4の異なる実施態様として,可搬型通信端末4の移動体情報処理部41における検出情報送信処理部413が,装置識別情報または移動体識別情報,位置情報,日時情報に加えて,さらに当該可搬型通信端末4または利用者の識別情報を送るように構成することもできる。この場合,検出情報記憶部22に,さらに対応づけて可搬型通信端末4または利用者の識別情報を記憶させるようにしてもよい。
【0088】
この場合,事業者サーバ2は,可搬型通信端末4または利用者の識別情報を受け付けることで,対応する可搬型通信端末4または利用者の識別情報の位置情報を,その問い合わせを行った者のコンピュータに送信する位置情報問い合わせ処理部26を備えてもよい。
【0089】
すなわち,位置情報の問い合わせを行いたい者,たとえば子供の位置情報を知りたい親は,子供に本発明の移動体位置測位システム1にかかる機能を備えた可搬型通信端末4を所持させる。そして,子供が所持する可搬型通信端末4は,上述の実施例1乃至実施例4のようにその移動体の中から,可搬型通信端末4の位置情報を送るとともに,可搬型通信端末4または利用者の識別情報をあわせて事業者サーバ2に送る。
【0090】
そして,親が子供の位置情報を知りたい場合,親が利用するコンピュータから所定の方法で移動体位置測位システム1の事業者サーバ2にアクセスし,子供の所持する可搬型通信端末4または子供の識別情報と,位置情報の問い合わせの要求を事業者サーバ2に送る。
【0091】
かかる要求を受け付けた事業者サーバ2の位置情報問い合わせ処理部26は,当該可搬型通信端末4または子供の識別情報に基づいて検出情報記憶部22を参照し,可搬型通信端末4または子供の位置情報を特定する。そして親が利用するコンピュータにその位置情報を送る。
【0092】
このような処理によって,移動体に乗車している子供などの家族の位置情報を知ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の移動体位置測位システム1を用いることで,バスなどの移動体に近距離無線通信装置3を設置するのみで,移動体の近傍にいる利用者の可搬型通信端末の位置を測位して,それを移動体の位置情報として情報提供を行うことができるので,交通事業者のコスト的負担を減らすことができる。また,移動体がバス停などの所定位置にいない場合であっても,常に移動体の位置が把握可能となり,利便性が高い。
【符号の説明】
【0094】
1:移動体位置測位システム
2:事業者サーバ
3:移動体に設置される近距離無線通信装置
4:可搬型通信端末
5:乗降場所に設置される近距離無線通信装置
21:検出情報受付処理部
22:検出情報記憶部
23:移動体情報記憶部
24:移動体情報問い合わせ処理部
25:装置識別情報記憶部
26:位置情報問い合わせ処理部
41:移動体情報処理部
42:可搬型通信端末の近距離無線通信装置
43:位置測位装置
70:演算装置
71:記憶装置
72:表示装置
73:入力装置
74:通信装置
411:識別情報検出処理部
412:位置情報検出処理部
413:検出情報送信処理部
414:移動体情報要求処理部
415:移動体情報表示処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10