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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】横軸ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/046 20060101AFI20220124BHJP
【FI】
F04D29/046 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018047538
(22)【出願日】2018-03-15
(65)【公開番号】P2019157787
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】金子 浩之
(72)【発明者】
【氏名】豊田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】中塩 雄二
(72)【発明者】
【氏名】杉山 憲一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 宗俊
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-127226(JP,A)
【文献】実開昭51-143035(JP,U)
【文献】特開2013-148138(JP,A)
【文献】特開2014-016134(JP,A)
【文献】特開2012-137074(JP,A)
【文献】特開昭58-166122(JP,A)
【文献】実開昭60-010885(JP,U)
【文献】特開平08-014264(JP,A)
【文献】特開2011-112221(JP,A)
【文献】特開2000-46045(JP,A)
【文献】特開2005-140193(JP,A)
【文献】特許第6633318(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16
F04D 17/00-19/02
F04D 21/00-25/16
F04D 29/00-35/00
F16C 17/00-17/26
F16C 21/00-27/08
F16C 33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に延びる回転軸、前記回転軸に固定された羽根車、前記羽根車が収容されるポンプケーシング、及び、前記ポンプケーシング内に設けられて前記回転軸に対してすべり接触する水中軸受、を備える横軸ポンプのメンテナンス方法であって、
前記水中軸受を回転させることにより、前記回転軸とすべり接触するすべり面の領域を変更することを特徴とする、横軸ポンプのメンテナンス方法。
【請求項2】
前記水中軸受は、互いのすべり面が周方向において異なるように画定された第1軸受部材と第2軸受部材とからなる、請求項1に記載の横軸ポンプのメンテナンス方法。
【請求項3】
前記ポンプケーシング内の前記水中軸受の支持は、前記ポンプケーシングに固定される第1軸受ケーシング部材と、前記水中軸受と接触する第2軸受ケーシング部材と、を有する軸受ケーシングによりなされ、
前記第1軸受ケーシング部材により前記第2軸受ケーシング部材を第1回転位置と当該第1回転位置とは異なる第2回転位置とに固定することで、前記回転軸とすべり接触するすべり面の領域を変更することを特徴とする、請求項1または2に記載の横軸ポンプのメンテナンス方法。
【請求項4】
前記第2軸受ケーシング部材は位置調節機構を更に備え、前記位置調整機構により鉛直方向の位置を調節することで、前記回転軸とすべり接触するすべり面の領域を変更することを特徴とする、請求項3に記載の横軸ポンプのメンテナンス方法。
【請求項5】
前記軸受ケーシングは、軸支持機構を更に備え、前記軸支持機構により前記回転軸を持ち上げて支持することを特徴とする、請求項3又は4に記載の横軸ポンプのメンテナンス方法。
【請求項6】
前記水中軸受は、前記回転軸の軸方向に離隔した第1軸受、及び第2軸受を備え、前記
第2軸受の内径を、前記第1軸受の内径よりも小さいものとし、前記第1軸受を、前記回転軸の第1部位にすべり接触させ、前記第2軸受を、前記回転軸の前記第1部位よりも端部に近い第2部位にすべり接触させて配置することを特徴とする、請求項1から5の何れか1項に記載の横軸ポンプのメンテナンス方法。
【請求項7】
前記水中軸受は、前記回転軸の軸方向に離隔した第1軸受、及び第2軸受を備え、前記第1軸受を、前記回転軸の第1部位にすべり接触させ、前記第2軸受を、前記回転軸の前記第1部位よりも端部に近い第2部位にすべり接触させるとともに、前記第2軸受を、前記第1軸受よりも高い位置に固定することを特徴とする、請求項1から5の何れか1項に記載の横軸ポンプのメンテナンス方法。
【請求項8】
前記水中軸受の外周面は軸方向に沿って傾斜したテーパ形状とし、前記第2軸受ケーシング部材の内周面をテーパ形状とし、両者のテーパ形状を対応させて前記水中軸受を前記第2軸受ケーシングに挿入することで、両者間の隙間を小さくすることを特徴とする、請求項2から4の何れか1項に記載の横軸ポンプのメンテナンス方法。
【請求項9】
前記第2軸受ケーシング部材は外周面に、周方向に離間して複数の凹部を設け、前記第1軸受ケーシングを、前記複数の凹部のうち少なくとも1つの凹部と係合させることで、前記第2軸受ケーシングを固定することを特徴とする、請求項2から4の何れか1項に記載の横軸ポンプのメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横軸ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、河川水などの液体を移送するために横軸ポンプが使用されている。横軸ポンプとしては、横軸斜流ポンプ、及び軸流ポンプ等が知られている。横軸ポンプの羽根車は、ポンプケーシング内を水平方向に延びる回転軸に固定される。この回転軸は、大気部に設けられた外軸受(転がり軸受)と、ポンプケーシング内に設けられた水中軸受とにより回転可能に支持される。水中軸受は、移送される液体に接するため、滑り軸受が採用されるのが一般的である。水中軸受の潤滑は、一般に、移送される液体による自己潤滑か、または外部から注入される潤滑剤(例えば、グリスなど)による。
【0003】
外部から潤滑剤を供給する水中軸受では潤滑剤の補給が定期的に必要となり、ランニングコストが増加する。また、移送した水を農業用または飲料用等に用いる場合、移送する液体に潤滑剤が混入されることは好ましくない。一方、自己潤滑による水中軸受けとして、特許文献1には、水潤滑によるセラミックス軸受が開示されている。セラミックス軸受は、耐摩耗性に優れ、且つ、グリスなどの潤滑油を使用しなくてもよいという点で優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-182769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
横軸ポンプは、液体を吸い上げてサイホンを形成しながら運転される。横軸ポンプの運転時には、小水量運転、空気吸い込み渦、及び、軸封部の漏れ等による空気の吸い込みによりサイホンが破壊され、ポンプ内の液体が排出される「落水」が生じる場合がある。水中軸受が自己潤滑の場合、落水時には空運転となる結果、水中軸受が過熱状態となる。この状態で液体が再移送されると、水中軸受が急激に冷却されるため、特にセラミックス製の軸受の場合は、熱衝撃(ヒートショック)により割れを生ずるおそれがある。また、横軸ポンプの構造上、回転軸を軸支する軸受は片荷重となるため、セラミックス軸受の下側だけに荷重が加わり、脆性材料であるセラミックスが割れてしまうおそれがある。
【0006】
さらに、液体を移送する際、移送される液体中に含まれる泥やごみなどの異物が軸受内に侵入すると、回転軸が回転するときの摩擦抵抗が大きくなって水中軸受の損傷を招いてしまう。特に、横軸ポンプでは、主に水中軸受の下側に荷重が加わり、異物が侵入するとすべり面が磨り減ってしまう。また、横軸ポンプでは、軸受内に侵入した異物は自由落下によっては外部に排出されないため、一旦軸受内に異物が侵入すると、異物が内部に留まることが懸念される。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、移送される液体を用いて潤滑される水中軸受を備える横軸ポンプにおいて、水中軸受の高寿命化を図ることができる横軸ポンプを提供することを目的の1つとする。また、本発明は、メンテナンス作業が容易である横軸ポンプのメンテナンス方法を提供することを目的の1つとする。さらに、本発明は、横軸ポンプにおけるランニングコストを低下することを目的の1つとする。
することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(形態1)形態1によれば、横軸ポンプが提案される。前記横軸ポンプは、水平方向に延びる回転軸と、前記回転軸に固定された羽根車と、前記羽根車が収容されるポンプケーシングと、前記回転軸に対してすべり接触する水中軸受と、前記ポンプケーシング内で前記水中軸受を支持する軸受ケーシングと、を備え、前記軸受ケーシングは、前記ポンプケーシングに固定される第1軸受ケーシング部材、及び前記水中軸受と接触する第2軸受ケーシング部材を有し、前記第1軸受ケーシング部材は、前記第2軸受ケーシング部材を第1回転位置と当該第1回転位置とは異なる第2回転位置とで固定可能である。形態1によれば、第2軸受ケーシング部材の固定位置を第1回転位置と第2回転位置とで変更することができる。これにより、回転軸と接触する水中軸受のすべり面の領域を変更することができ、水中軸受の高寿命化を図ることができる。
【0009】
(形態2)形態2によれば、形態1による横軸ポンプにおいて、前記水中軸受は、周方向における第1領域のすべり面を画定する第1軸受部材と、周方向における前記第1領域とは異なる第2領域のすべり面を画定する第2軸受部材と、を有する。
【0010】
(形態3)形態3によれば、形態1又は2による横軸ポンプにおいて、前記第2軸受ケーシング部材の鉛直方向の位置を調節可能な位置調節機構を更に備える。形態3によれば、水中軸受の位置を調節することができ、回転軸が傾斜することを抑制できる。
【0011】
(形態4)形態4によれば、形態1から3の何れか1つによる横軸ポンプにおいて、前記軸受ケーシングは、前記回転軸を持ち上げて支持する軸支持機構を更に備える。形態6によれば、水中軸受を回転させる場合などに、軸支持機構によって回転軸を持ち上げることができる。
【0012】
(形態5)形態5によれば、形態1から4の何れか1つによる横軸ポンプにおいて、前記水中軸受は、前記回転軸の軸方向に離隔した第1軸受、及び第2軸受を備えている。
【0013】
(形態6)形態6によれば、形態5による横軸ポンプにおいて、前記第1軸受は、前記回転軸の第1部位にすべり接触し、前記第2軸受は、前記回転軸の前記第1部位よりも端部に近い第2部位にすべり接触し、前記第2軸受の内径は、前記第1軸受の内径よりも小さい。
【0014】
(形態7)形態7によれば、形態5による横軸ポンプにおいて、前記第1軸受は、前記回転軸の第1部位にすべり接触し、前記第2軸受は、前記回転軸の前記第1部位よりも端部に近い第2部位にすべり接触し、前記第2軸受は、前記第1軸受よりも高い位置に固定される。
【0015】
(形態8)形態8によれば、形態1から7の何れか1つによる横軸ポンプにおいて、前記水中軸受は、前記回転軸とすべり接触する軸受本体と、前記軸受本体の外周面を覆う軸受シェルと、を有する。
【0016】
(形態9)形態9によれば、形態1から8の何れか1つによる横軸ポンプにおいて、前記水中軸受の外周面は、軸方向に沿って傾斜したテーパ形状である。
【0017】
(形態10)形態10によれば、形態1から9の何れか1つによる横軸ポンプにおいて、前記水中軸受のすべり面は、直径に対する軸方向長さの割合が、1.5以下である。
【0018】
(形態11)形態11によれば、形態1から10の何れか1つによる横軸ポンプにおいて
、前記第2軸受ケーシング部材は、回転対称な形状である。
【0019】
(形態12)形態12によれば、形態1から11の何れか1つによる横軸ポンプにおいて、前記第2軸受ケーシング部材の外周面には、周方向に離間して複数の凹部が設けられており、前記第1軸受ケーシングは、前記複数の凹部のうち少なくとも1つの凹部と係合可能な凸部を有する。
【0020】
(形態13)形態13によれば、形態1から12の何れか1つによる横軸ポンプにおいて、前記水中軸受が樹脂材料から形成されている。
【0021】
(形態14)形態14によれば、水平方向に延びる回転軸、前記回転軸に固定された羽根車、前記羽根車が収容されるポンプケーシング、及び、前記ポンプケーシング内に設けられて前記回転軸に対してすべり接触する水中軸受、を備える横軸ポンプのメンテナンス方法が提案される。前記メンテナンス方法は、前記水中軸受を回転させることにより、前記回転軸とすべり接触するすべり面の領域を変更することを特徴とする。形態15によれば、回転軸と接触する水中軸受のすべり面の領域を変更することができ、水中軸受の高寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係る横軸斜流ポンプを示す側断面図である。
図2図1に示した主軸の先端部の拡大側断面図である。
図3】軸受ケーシングの第2軸受ケーシング部材と、水中軸受と、の一例を示す図である。
図4】実施形態の軸受ケーシング及び水中軸受を模式的に示す斜視図である。
図5】変形例1による水中軸受を模式的に示す図である。
図6】変形例2による水中軸受周辺を軸方向から示す図である。
図7】変形例3による主軸の先端部の拡大側断面図である。
図8】変形例4による主軸の先端部の拡大側断面図である。
図9】変形例4の別の例による主軸の先端部の拡大側断面図である。
図10】変形例4の更に別の例による主軸の先端部の拡大側断面図である。
図11】変形例5による水中軸受40を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。なお、以下で説明する実施形態では、本発明の横軸ポンプの一例として横軸斜流ポンプが説明されるが、本発明は横軸軸流ポンプにも適用することができる。
【0024】
図1は、本実施形態に係る横軸斜流ポンプを示す側断面図である。図示のように、横軸斜流ポンプ10は、ポンプケーシングとして、湾曲した管路を有する吸込ケーシング12と、吸込ケーシング12の下流側にフランジ接続される管状の吐出ケーシング14とを有する。また、横軸斜流ポンプ10は、略水平方向に延在する主軸11(回転軸の一例に相当する)を有する。主軸11は、吸込ケーシング12を貫通し、吐出ケーシング14の内部まで延在する。主軸11と吸込ケーシング12との隙間は、軸封部13により液密に封止される。
【0025】
主軸11の先端側は、吐出ケーシング14内に配置される水中軸受40によって回転可能に支持される。水中軸受40は、軸受ケーシング30により保持される。軸受ケーシング30は、複数の案内羽根18を介して吐出ケーシング14に固定された内部ケーシング(内筒)38内に、図示しないリブ等によって固定される。
【0026】
主軸11には、インペラ(羽根車)17がキー15によって固定される。これにより、主軸11の回転に伴ってインペラ17が回転する。インペラ17と内部ケーシング38により、水中軸受40を収容する空間である水中軸受室19が形成される。
【0027】
主軸11の後端側は、主軸11を回転させるためのエンジンやモータ等の原動機の軸継手20に接続される。また、軸継手20と軸封部13との間には、吸込ケーシング12の外部において主軸11を回転可能に支持する外部軸受22が設けられる。
【0028】
図2は、図1に示した主軸11の先端部の拡大側断面図である。図2に示すように、主軸11の外周面には、水中軸受40の内周面(すべり面)に対してすべり接触する円筒状のスリーブ11aが固定される。スリーブ11aの外周面と、水中軸受40の内周面との間には、非常に小さい隙間(クリアランス)が設けられる。ただし、主軸11には、スリーブ11aが設けられていなくてもよい。スリーブ11aは、主軸11が水中軸受40に直接摺動することによる主軸11の損傷を防止するための付加的な部材である。スリーブ11aは、例えばステンレス鋼等の金属から構成される。また、スリーブ11aの外周面には、炭化タングステン又は炭化クロムを主構成物とする物質からなる膜が製膜されていてもよい。一例として、ステンレス鋼の外周面に、肉盛溶接、自溶性合金、または、溶射(特に、高速フレーム溶射(HVOF、HVAFなど))を用いて成膜を施すことができる。さらに、スリーブ11aは、セラミックス、超硬合金、及びサーメットのいずれかで構成されていてもよい。
【0029】
水中軸受40は、主軸11(スリーブ11a)とすべり接触する円筒状の軸受本体41と、軸受本体41の外周面を覆う円筒状の軸受シェル42と、を有する。軸受シェル42は、水中軸受40の剛性を確保するために設けられており、例えばステンレス等の金属から形成される。軸受本体41が軸受シェル42によって覆われることによって、水中軸受40の剛性が向上し、軸受本体41のすべり面を形成する製造工程を容易にすることができる。ただし、水中軸受40は、軸受シェル42を有さなくてもよい。
【0030】
軸受本体41は、セラミック、又は例えば特開2013-194769号公報に開示されているような、フッ素樹脂、芳香族ポリエーテルケトン、炭素繊維、及び不可避不純物を含む樹脂材料から構成される。また、軸受本体41のすべり面は、例えば特開2015-21551号公報に開示されているような、PTFEが30%の面積率を有し、炭素繊維が4%の面積率を有し、芳香族ポリエーテルケトンおよび不可避不純物が残りの面積を占めるように構成されていてもよい。さらに、軸受本体41のすべり面は、例えば特開2015-21551号公報に開示されているような、PPSが23%の面積率を有し、炭素繊維が2%の面積率を有し、PTFEおよび不可避不純物が残りの面積を占めるように構成されていてもよい。また、水中軸受40は、すべり面の直径D0に対する、すべり面の軸方向の長さL0の割合(Ra=L0/D0)が、1.5以下であることが好ましい(図3参照)。
【0031】
水中軸受40は、軸受ケーシング30によって支持されている。軸受ケーシング30は、内部ケーシング38および案内羽根18を介して吐出ケーシング14に固定される第1軸受ケーシング部材31と、水中軸受40の外周面と接触する第2軸受ケーシング部材32と、を有する。なお、図2では、第1軸受ケーシング部材31と内部ケーシング38との固定については図示を省略している。第1軸受ケーシング部材31、及び第2軸受ケーシング部材32は、例えばステンレスなどの剛性の高い金属から形成される。
【0032】
図3は、軸受ケーシングの第2軸受ケーシング部材と、水中軸受と、の一例を示す図である。第2軸受ケーシング部材32は、略円筒形状であり、端部に内周側に突出した突出
部32bを有する。第2軸受ケーシング部材32は、内側に水中軸受40が挿入されることによって水中軸受40を支持する。水中軸受40は、一端40bが第2軸受ケーシング部材32の突出部32bと接触することにより、第2軸受ケーシング部材32内で位置決めされる。なお、水中軸受40の他端40aには、水中軸受40を把持するための取っ手が設けられてもよいし、取っ手を取り付けるためのネジ孔などの取付部が設けられてもよい。上記したように、実施形態の水中軸受40は、外周面に軸受シェル42を有するため、第2軸受ケーシング部材32内に水中軸受40を挿入するとき、及び第2軸受ケーシング部材32から水中軸受40を外すときに、水中軸受40が変形することを抑制できる。
【0033】
第2軸受ケーシング部材32は、複数の回転位置で固定可能に構成されている。図4は、実施形態の軸受ケーシング及び水中軸受を模式的に示す斜視図である。実施形態の第2軸受ケーシング部材32は、外周面に周方向に離間して複数の凹部32aが設けられている。一例として、凹部32aは、45°毎、60°毎、180°毎に設けられる。また、一例として、凹部32aの壁面には、ネジ溝が形成される。そして、第1軸受ケーシング部材31は、係合部(例えばボルト)31aを凹部32aに係合させることにより、第2軸受ケーシング部材32を固定する。これにより、第1軸受ケーシング部材31は、凹部32aが設けられている角度毎の複数の回転位置で第2軸受ケーシング部材32を固定することができる。一例として凹部32aが180°毎に設けられている場合、第1軸受ケーシング部材31は、第2軸受ケーシング部材32を第1回転位置で固定することができるとともに、第2軸受ケーシング部材32を第1回転位置から180°回転させた第2回転位置で固定することができる。
【0034】
ここで、図4に示す例では、第1軸受ケーシング部材31は、水平方向から係合部31aを第2軸受ケーシング部材32の凹部32aに係合させて、第2軸受ケーシング部材32の両側面を係合部31aにより固定するものとしている。しかし、こうした例に限定されず、第1軸受ケーシング部材31は、周方向の少なくとも1カ所で第2軸受ケーシング部材32を固定するものとすればよい。また、第1軸受ケーシング部材31は、鉛直方向から係合部31aを第2軸受ケーシング部材32の凹部32aに係合させてもよい。また、第2軸受ケーシング部材32は、第1軸受ケーシング部材31の下端を支持する底面を有するなど、係合部31aによる係合にかかわらず第1軸受ケーシング部材31を支持してもよい。
【0035】
このように第2軸受ケーシング部材32が複数の回転位置で固定可能であることにより、第2軸受ケーシング部材32に保持されている水中軸受40を周方向に回転させることができる。ここで、横軸斜流ポンプ10の構造上、水中軸受40には主軸11の下側だけに荷重が加わり、すべり面の下側の領域だけが摩耗する傾向がある。特に、樹脂材料から形成される水中軸受40は、割れが生じにくく自液による潤滑が可能であるものの、耐摩耗性が低い傾向がある。このため、横軸斜流ポンプ10をメンテナンスするときには、第2軸受ケーシング部材32、及び水中軸受40を回転させることにより、主軸11とすべり接触するすべり面の領域を変更する。これにより、水中軸受40における摩耗の程度が小さいすべり面を利用することができ、水中軸受40の高寿命化を図ることができる。また、横軸斜流ポンプ10のランニングコストを低下させることができる。
【0036】
(変形例1)
図5は、変形例1による水中軸受を模式的に示す図である。変形例1の水中軸受40は、軸方向に沿った分割面を有する2つ割りの部材43,44から構成される。つまり、部材43,44のそれぞれは、すべり面の180°の領域(第1領域、第2領域)を画定する。なお、2つ割りの部材43,44で構成した水中軸受40についても、軸受シェル42を設けてもよく、軸受シェル42によって剛性を容易に確保することができる。また、水中軸受40は、3つ以上の割り部材によって構成されてもよい。
【0037】
(変形例2)
図6は、変形例2による水中軸受周辺を軸方向から示す図である。変形例2による軸受ケーシング30は、第2軸受ケーシング部材32の鉛直方向の位置を調節可能な位置調節機構36を更に備えている。位置調節機構36によって水中軸受40の位置を調節することができ、水中軸受40のすべり面の摩耗の程度に応じて主軸11が傾斜することを抑制できる。位置調節機構36としては、公知の種々の機構を採用することができ、一例として、アジャスタボルト、又はアジャスタシムなどを使用することができる。また、位置調節機構36は、第2軸受ケーシング部材32の鉛直方向に位置を直接に調節してもよいし、第1軸受ケーシング部材31の鉛直方向の位置を調節することによって第2軸受ケーシング部材32の鉛直方向の位置を調節してもよい。
【0038】
(変形例3)
図7は、変形例3による主軸の先端部の拡大側断面図である。変形例3による軸受ケーシング30は、主軸11を持ち上げて支持する軸支持機構37を有し、その他の構成は実施形態の軸受ケーシング30と同一である。軸支持機構37は、第1軸受ケーシング部材31に設けられており、メンテナンスの際に、主軸11を持ち上げて支持することができる。軸支持機構37としては、公知の種々の機構を採用することができ、一例として、アジャスタボルト、又はスペーサなどを使用することができる。こうした軸支持機構37によって主軸11を持ち上げて支持することにより、第2軸受ケーシング部材32の回転作業や、水中軸受40の交換作業を容易に行うことができる。
【0039】
(変形例4)
図8は、変形例4による主軸の先端部の拡大側断面図である。変形例4による水中軸受け40は、軸方向に離隔した第1軸受46、第2軸受47、及び第3軸受48を有する。このように水中軸受40が軸方向に離隔した複数の軸受によって構成されることにより、水中軸受40と主軸11とのすべり接触する領域を増加することなく、水中軸受40全体の長さを大きくすることができ、主軸11の回転を安定させることができる。水中軸受40は、第1軸受46の軸方向長さL1と、第2軸受47の軸方向長さL2と、第3軸受48の軸方向長さL3と、の和(L1+L2+L3)の、径D0に対する割合が、1.5以下であることが好ましい。また、図8に示す例では、第1軸受46、第2軸受47、及び3軸受48のそれぞれは、第2軸受ケーシング部材32における部材33,34,35に別々に支持されるものとした。部材33,34,35は、第1軸受ケーシング部材31に対して、互いに独立して回転可能に構成されてもよい。ただし、第1軸受46、第2軸受47、第3軸受48は、一体の第2軸受ケーシング部材32に支持されるものとしてもよい。なお、図8では、水中軸受40は、軸方向に3つに離間して構成されるものとしたが、2つ、又は4つ以上に離間して構成されてもよい。
【0040】
図9は、変形例4の別の例による主軸の先端部の拡大側断面図である。水中軸受40が、軸方向に離隔した第1軸受46、第2軸受47、及び第3軸受48を有する場合、第1軸受46、第2軸受47、及び第3軸受48は、それぞれ異なる高さに支持されるものとしてもよい。具体的には、図9に示す例では、第3軸受48が最も高い位置に固定されており、第1軸受46が最も低い位置に固定されている。言い換えれば、主軸11の端部に近い領域を支持する軸受ほど、高い位置に固定されている。これにより、主軸11が傾くのを抑制することができ、水中軸受40の摩耗を低減することができる。
【0041】
図10は、変形例4の更に別の例による主軸の先端部の拡大側断面図である。水中軸受40が、軸方向に離隔した第1軸受46、第2軸受47、及び第3軸受48を有する場合、第1軸受46、第2軸受47、及び第3軸受48は、それぞれ異なる内径を有するものとしてもよい。具体的には、図10に示す例では、第3軸受48の内径D3が最も小さく
、第1軸受46の内径D1が最も大きい(D3<D2<D1)。言い換えれば、主軸11の端部に近い領域を支持する軸受ほど、内径が小さくなっている。これにより、図9に示す例と同様に、主軸11が傾くのを抑制することができ、水中軸受40の摩耗を低減することができる。
【0042】
(変形例5)
図11は、変形例5による水中軸受40を示す図である。変形例5による水中軸受40の外周面は、軸方向に傾斜したテーパ形状となっている。なお、水中軸受40のすべり面(内周面)については径が略一定である。また、図11に示す例では、軸受本体41については内径および外径が略一定であり、軸受シェル42の外周面がテーパ形状となっている。ただし、軸受本体41の外周面が軸方向に傾斜したテーパ形状とされてもよい。また、図11では示していないが、第2軸受ケーシング部材32の内周面は、水中軸受40の外周面に対応したテーパ形状とされる。こうした構成により、水中軸受40を第2軸受ケーシング部材32内に挿入したときの隙間を小さくすることができ、横軸斜流ポンプ10の運転時の振動を低減することができる。
【0043】
(その他の変形例)
上記した実施形態では、第2軸受ケーシング部材32は略円筒状であるものとした。しかし、第2軸受ケーシング部材32は、第1軸受ケーシング部材31に対して複数の回転位置で固定可能であればよく、円筒状以外の形状であってもよい。ただし、第2軸受ケーシング部材32が回転することを考慮すると、第2軸受ケーシング部材32は、軸方向から見て多角形形状であるなど、回転対称の形状であることが好ましいと考えられる。
【0044】
上記した実施形態では、第1軸受ケーシング部材31に対して第2軸受ケーシング部材32を回転させることにより、水中軸受40を回転させてメンテナンスするものとした。しかし、水中軸受40を単独で回転させて主軸11と接触するすべり面を変更させることによっても、実施形態と同一の効果を奏することができる。つまり、横軸斜流ポンプ10のメンテナンス方法は、水中軸受40を回転させることにより、主軸11とすべり接触する水中軸受40のすべり面の領域を変更することを含むものであればよい。
【0045】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、実施形態および変形例の任意の組み合わせが可能であり、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0046】
10…横軸斜流ポンプ
11…主軸(回転軸)
11a…スリーブ
17…インペラ(羽根車)
30…軸受ケーシング
31…第1軸受ケーシング部材
31a…係合部
32…第2軸受ケーシング部材
32a…凹部
40…水中軸受
41…軸受本体
42…軸受シェル
46…第1軸受
47…第2軸受
48…第3軸受
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11