(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】ポリマーレーザー焼結粉末の機械的強化のためのカオリン
(51)【国際特許分類】
B29C 64/153 20170101AFI20220124BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20220124BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220124BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20220124BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20220124BHJP
【FI】
B29C64/153
B29C64/268
B33Y10/00
B33Y70/00
B33Y80/00
(21)【出願番号】P 2018544055
(86)(22)【出願日】2017-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2017053481
(87)【国際公開番号】W WO2017140764
(87)【国際公開日】2017-08-24
【審査請求日】2020-02-14
(32)【優先日】2016-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ローヴァッサー,ルート
(72)【発明者】
【氏名】オスターマン,ライナー
(72)【発明者】
【氏名】グラムリヒ,ジモン
(72)【発明者】
【氏名】クローケ,フィリップ
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/165258(WO,A1)
【文献】特表2002-512645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40,67/00-67/08
67/24-69/02,73/00-73/34
B29D 1/00-29/10,33/00,99/00
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結粉末(SP)の選択的レーザー焼結によって成形体を製造する方法であって、前記焼結粉末(SP)が、少なくとも1種のポリアミド(P)、及び前記焼結粉末(SP)の全質量に基づき5質量%~50質量%の範囲の少なくとも1種のアルミノシリケートを含み、前記少なくとも1種のアルミノシリケートが2.5~4.5μmの範囲のD50を有し、且つD50値がレーザー回析によって決定され、且つ前記少なくとも1種のアルミノシリケートがカオリンである方法。
【請求項2】
前記少なくとも1種のポリアミド(P)が、PA4、PA6、PA7、PA8、PA9、PA11、PA12、PA46、PA66、PA69、PA610、PA612、PA613、PA1212、PA1313、PA6T、PA MXD6、PA6l、PA6-3-T、PA6/6T、PA6/66、PA66/6、PA6/12、PA66/6/610、PA6l/6T、PA PACM12、PA6l/6T/PACM、PA12/MACMI、PA12/MACMT、PA PDA-T及び上記ポリアミドの2種以上から構成されるコポリアミドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種のポリアミド(P)が、PA12、PA6、PA66、PA6/66、PA66/6及びPA610からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種のアルミノシリケートが、
0.5~1.5μmの範囲のD10、
2.5~4.5μmの範囲のD50及び
8~15μmの範囲のD90を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種のアルミノシリケートが焼成されたシート状シリケートである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種のアルミノシリケートがアミノ官能化されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記焼結粉末(SP)が、前記焼結粉末(SP)の全質量に基づき0.1質量%~10質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種の添加剤(A)が、抗核形成剤、安定剤、末端基官能化剤及び染料からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1種のポリアミド(P)が前記少なくとも1種のアルミノシリケートを含み、前記ポリアミド(P)が連続相を形成し、前記少なくとも1種のアルミノシリケートが分散相を形成し、且つ前記少なくとも1種のアルミノシリケートが2.5~4.5μmの範囲のD50を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
焼結粉末(SP)を製造する方法であって、以下の工程:
i) 少なくとも1種のポリアミド(P)を、少なくとも1種のアルミノシリケート及び任意に少なくとも1種の添加剤(A)と混合し、前記少なくとも1種のアルミノシリケートが2.5~4.5μmのD50を有し、少なくとも1種のポリアミド(P)、少なくとも1種のアルミノシリケート及び任意に少なくとも1種のさらなる添加剤(A)を含む混合物を得る工程であって、前記少なくとも1種のアルミノシリケートが2.5~4.5μmの範囲のD50を有する工程、
ii) 工程i)で得られた前記混合物を粉砕し、焼結粉末(SP)を得る工程、
を含む方法。
【請求項11】
工程ii)が以下の工程:
iia) 工程i)で得られた前記混合物を粉砕してポリアミド粉末を得る工程、
iib) 工程iia)で得られた前記ポリアミド粉末を自由流動助剤と混合して前記焼結粉末(SP)を得る工程、
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
焼結粉末(SP)であって、前記焼結粉末(SP)が少なくとも1種のポリアミド(P)、及び前記焼結粉末(SP)の全質量に基づき10質量%~50質量%の範囲の少なくとも1種のアルミノシリケートを含み、前記少なくとも1種のアルミノシリケートが2.5~4.5μmの範囲のD50を有し、前記少なくとも1種のポリアミド(P)が前記少なくとも1種のアルミノシリケートを含み、且つ前記少なくとも1種のポリアミド(P)が連続相を形成し、前記少なくとも1種のアルミノシリケートが分散相を形成する、焼結粉末(SP)。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結粉末(SP)の選択的レーザー焼結によって成形体を製造する方法に関する。焼結粉末(SP)は、少なくとも1種のポリアミド(P)、及び5質量%~50質量%の範囲の、好ましくは10質量%~50質量%の範囲の少なくとも1種のアルミノシリケートを含む。少なくとも1種のアルミノシリケートは、2.5~4.5μmの範囲のD50を有する。本発明はさらに、本発明の方法によって得ることができる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
プロトタイプの迅速な提供は、近年頻繁に課せられる課題である。このいわゆる「ラピッドプロトタイピング(rapid prototyping)」に特に適している1つの方法は、選択的レーザー焼結である。これは、チャンバー内でポリマー粉末をレーザービームに選択的に暴露することを含む。粉末は溶融し、溶融した粒子が融合して再凝固する。ポリマー粉末の繰り返し施与とその後に続くレーザーへの暴露で、三次元成形体のモデル化が可能となる。
【0003】
粉末状ポリマーから成形体を製造するためのレーザー焼結の方法は、特許明細書US6136948及びWO96/06881に詳細に記載されている。
【0004】
特に注目されるのは、強化した成形体を製造する方法である。この目的のための様々な方法が先行技術において記載されている。
【0005】
US2013/0052453は、選択的レーザー焼結法における成形体製造のための熱可塑性粉末状組成物を記載している。この熱可塑性粉末状組成物は、充填剤及びブロックコポリマーを含む。ブロックコポリマーは、可撓性ブロックと剛性ブロックとを含む。充填剤として様々な材料が開示されている。好ましい充填剤は、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムである。充填剤のD50は<20μmである。
【0006】
US2013/0012643は同様に、ポリマーと充填剤とを含む粉末状組成物を記載している。充填剤は、ポリマーによって覆われている。3~100μmの範囲のD50を有するガラス粒子が充填剤として記載されている。好ましくは、充填剤は20~60μmのD50を有する。粉末状組成物は、成形体製造のための選択的レーザー焼結法において同様に使用することができる。
【0007】
EP2543701は同様に、成形体製造のための選択的レーザー焼結法において使用することができる粉末状組成物を記載している。粉末状組成物は、ポリマー及び被覆された充填剤を含む。様々な材料が充填剤として、特にセラミック及び金属が記載されている。
【0008】
J.H.Kooらは、「Polyamide nanocomposites for selective laser sintering」、2006年1月31日(2006-01-31)、XP055291856、DOI:10.2514/6.2015-1353の「Polyamide nanocomposites for selective laser sintering」で、ナイロン11又はナイロン12及びナノ粒子を含むポリアミド組成物を開示している。試験したナノ粒子は、モンモリロナイト、シリカゲル及びカーボンナノファイバーである。ナノ粒子は押出機を用いてポリアミドに混合される。ナイロン11又はナイロン12に配合されたモンモリロナイトは、nm範囲の粒子径を有する。J.H.Kooらはまた、「Polyamide nanocomposites for selective laser sintering」、2006年1月31日(2006-01-31)、XP055291856、DOI:10.2514/6.2015-1353の「Polyamide nanocomposites for selective laser sintering」で、選択的レーザー焼結の実験を開示している。この目的のために、ナイロン11及びモンモリロナイトを含むポリアミド組成物と、ナイロン11及びカーボンナノファイバーを含むポリアミド組成物とが、焼結粉末を得るために極低温粉砕に付される。その後続いて、これらのポリアミド組成物を選択的レーザー焼結の方式で試験する。ここで、選択的レーザー焼結という方式において、カーボンナノファイバー含有ポリアミド組成物のみが、成形体に加工することが可能なことが見出されている。モンモリロナイト含有ポリアミド組成物を用いた選択的レーザー焼結によって成形体を製造することは不可能であった。なぜなら、得られた焼結粉末は加工できなかったからである。
【0009】
Ansari D.M.らは、「Correlation of mechanical properties of clay filled polyamide mouldings with chromatographically measured surface energies」、Polymer、Elsevier Science Publishers B.V.、GB、Bd.45、No.11、2004年5月1日(2004-05-01)、第3663~3670ページ、XP004506671、ISSN:0032-3861、DOI:10.1016/J.Polymer.2004.03.045で、逆ガスクロマトグラフィー用の、アルミノシリケートで充填したナイロン6組成物を開示している。さらに、ナイロン6組成物の機械的性質に対するアルミノシリケートの影響を調べている。ここで、カオリンなどのアルミノシリケートの使用は、耐衝撃性及びノッチ付き耐衝撃性の低下をもたらすことが見出されている。
【0010】
選択的レーザー焼結による成形体製造のための先行技術に記載された粉末状組成物の欠点は、得られる成形体の機械的強化が比較的低いことが多く、得られる成形体が同時に脆くなることである。さらに、先行技術に記載されている充填剤は、硬度が過剰であることが多く、そのため粉末状組成物の粉砕が困難になるだけか、又は実質的に不可能となる。さらに、先行技術で使用される充填剤は造核作用を有することが多く、これは粉末状組成物の焼結窓(sintering window)の低減をもたらす。焼結窓の減少は、成形体の製造中に成形体の反りを頻繁に生じる結果となるので不利である。この反りは、成形体の使用又はさらなる処理を実質的に不可能にする。成形体の製造中であっても、反りは非常に深刻となる可能性があり、さらなる層の施与が不可能となるため、製造プロセスを停止させなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】US6136948
【文献】WO96/06881
【文献】US2013/0052453
【文献】US2013/0012643
【文献】EP2543701
【非特許文献】
【0012】
【文献】J.H.Kooら、「Polyamide nanocomposites for selective laser sintering」、2006年1月31日(2006-01-31)、XP055291856、DOI:10.2514/6.2015-1353の「Polyamide nanocomposites for selective laser sintering」
【文献】Ansari D.M.ら、「Correlation of mechanical properties of clay filled polyamide mouldings with chromatographically measured surface energies」、Polymer、Elsevier Science Publishers B.V.、GB、Bd.45、No.11、2004年5月1日(2004-05-01)、第3663~3670ページ、XP004506671、ISSN:0032-3861、DOI:10.1016/J.Polymer.2004.03.045
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
よって本発明の目的は、先行技術に記載された方法の前述の欠点を、あるとしてもより低い程度でのみ有する、選択的レーザー焼結によって成形体を製造する方法を提供することである。該方法は、簡易で安価な様態で実施できるべきであり、得ることができる成形体は機械的に強化され、同時に脆化が最小の程度でなければならない。さらに、得られる成形体は、改善された機械的特性、特に改善された耐衝撃性及びノッチ付き耐衝撃性を有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、焼結粉末(SP)の選択的レーザー焼結によって成形体を製造する方法であって、その焼結粉末(SP)が、少なくとも1種のポリアミド(P)、及びその焼結粉末(SP)の全質量に基づき5質量%~50質量%の範囲の、好ましくは10質量%~50質量%の範囲の少なくとも1種のアルミノシリケートを含み、前記少なくとも1種のアルミノシリケートが2.5~4.5μmの範囲のD50を有する方法によって達成される。
【0015】
驚くべきことに、少なくとも1種のポリアミド(P)及び10質量%~50質量%の範囲の少なくとも1種のアルミノシリケートを含む焼結粉末(SP)の選択的レーザー焼結によって製造された成形体は、特に良好に強化され、同時に脆くならないことが見出された。強化は、本発明によって製造された成形体が、10質量%~50質量%の少なくとも1種のアルミノシリケートを含めずに少なくとも1種のポリアミド(P)から製造された成形体と比較して、弾性率が増加し破壊点伸びがより増大していることから特に明確に説明される。本発明によって製造された成形体の脆化が、10質量%~50質量%の少なくとも1種のアルミノシリケートを含めずに少なくとも1種のポリアミド(P)から製造された成形体と比較して低いことは、本発明によって製造された成形体が、10質量%~50質量%の少なくとも1種のアルミノシリケートを含めずに少なくとも1種のポリアミド(P)から製造された成形体と比較して、破壊点伸びがより増大し、耐衝撃性がより増大し、ノッチ付き耐衝撃性を有することで特に明白である。
【0016】
さらに、本発明によって製造された成形体は、より高い耐熱変形性を有する。
【0017】
焼結粉末(SP)が、良好な配合性及び粉砕性を有することも有利である。さらに、その焼結粉末(SP)の焼結窓(W)は一般に維持され、従来技術に記載された粉末状組成物の場合に頻繁であるように、低減しない。
【0018】
本発明によって製造された成形体はさらに、10質量%~50質量%の少なくとも1種のアルミノシリケートを含めずに少なくとも1種のポリアミド(P)からのみ製造された成形体よりも少ない反りを有する。
【0019】
成形体の製造において、未溶融の焼結粉末(SP)を再利用することも可能である。複数のレーザー焼結循環の後でさえも、本発明の焼結粉末(SP)は、最初の焼結循環中のものと同様に有利な焼結特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】加熱工程(H)及び冷却工程(C)を含むDSC図
【0021】
本発明による方法を、以下にさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
選択的レーザー焼結
選択的レーザー焼結という方法は、例えばUS6136948及びWO96/06881から、それ自体当業者に既知である。
【0023】
レーザー焼結では、焼結可能な粉末の第一層を粉末床に配置し、レーザービームに局所的に短時間暴露する。レーザー光線に暴露した焼結可能な粉末の一部分のみが選択的に溶融する(選択的レーザー焼結)。溶融した焼結可能な粉末は融合し、それによって暴露領域で均質な溶融物を形成する。その後続いてこの領域は再び冷えて、焼結可能な粉末が再凝固する。次いで、粉末床を第一層の層の厚さで低下させ、焼結可能な粉末の第二の層を施与し、選択的に暴露してレーザーで溶融する。これにより、焼結可能な粉末の上の第二層が低い方の第一層と結合する。第二の層内の焼結可能な粉末の粒子も溶融により互いに結合する。粉末床の低下、焼結可能な粉末の施与及び焼結可能な粉末の溶融を繰り返すことにより、三次元の成形品を製造することが可能になる。レーザービームを或る位置に選択的に暴露することにより、例えば空洞も有する成形体を製造することが可能になる。未溶融の焼結可能な粉末自体が支持材料として作用するので、追加の支持材料は必要ではない。
【0024】
当業者に既知でレーザーへの暴露によって溶融可能なすべての粉末が、選択的レーザー焼結における焼結可能な粉末として適切である。本発明によれば、選択的レーザー焼結における焼結可能な粉末は、焼結粉末(SP)である。
【0025】
従って、本発明の文脈において、「焼結可能な粉末」及び「焼結粉末(SP)」という用語は、同義語として使用することができ、その場合同じ意味を有する。
【0026】
選択的レーザー焼結のための適切なレーザーは、当業者に既知であり、例えばファイバレーザー、Nd:YAGレーザー(ネオジムでドープしたイットリウムアルミニウムガーネットレーザー)及び二酸化炭素レーザーが含まれる。
【0027】
選択的レーザー焼結法において特に重要なのは、「焼結窓(W)」と呼ばれる焼結可能な粉末の溶融範囲である。焼結可能な粉末が本発明の焼結粉末(SP)である場合、焼結窓(W)は本発明の文脈において、焼結粉末(SP)の「焼結窓(WSP)」と言う。焼結可能な粉末が焼結粉末(SP)中に存在する少なくとも1種のポリアミド(P)である場合、焼結窓(W)は本発明の文脈において、少なくとも1種のポリアミド(P)の「焼結窓(WP)」と言う。
【0028】
焼結可能な粉末の焼結窓(W)は、例えば示差走査熱量測定、DSCによって決定することができる。
【0029】
示差走査熱量測定では、試料の温度、すなわち本例では焼結可能な粉末の試料の温度及び標準の温度が、時間と共に直線的に変化する。この目的のために、試料と標準に熱を供給し/試料と標準から熱を除去する。試料を標準と同じ温度に保つために必要な熱量Qを決定する。標準に供給/標準から除去する熱量QRが標準値となる。
【0030】
試料が吸熱相変化を受ける場合、試料を標準と同じ温度に保つために、追加の熱量Qを供給しなければならない。発熱相変化が起こる場合、試料を標準と同じ温度に保つために、熱量Qを除去しなければならない。この測定は、試料に供給する/試料から除去する熱量Qが温度Tの関数としてプロットされるDSC図をもたらす。
【0031】
測定は、典型的には、最初に加熱工程(H)を実施することを含む。すなわち、試料及び標準を直線的に加熱する。試料の溶融中(固相/液相変化)に、試料を標準と同じ温度に保つために追加の熱量Qを供給しなければならない。そしてDSC図に、溶融ピークと呼ばれるピークが観察される。
【0032】
加熱工程(H)の後、典型的には冷却工程(C)が測定される。これは、試料及び標準を直線的に冷却すること、すなわち、試料及び標準から熱を除去することを含む。結晶化/凝固の過程で熱が放出されるので、試料の結晶化/凝固(液体/固相変化)の間に、より大きい量の熱Qを除去して試料を標準と同じ温度に保たなければならない。そして冷却工程(C)のDSC図に、結晶化ピークと呼ばれるピークが溶融ピークの反対の方向に観察される。
【0033】
加熱工程(H)及び冷却工程(C)を含むそのようなDSC図は、
図1の例のように表される。DSC図は、溶融の開始温度(T
M
開始)及び結晶化の開始温度(T
C
開始)を決定するために使用することができる。
【0034】
溶融の開始温度(TM
開始)を決定するために、溶融ピーク未満の温度にある加熱工程(H)のベースラインに対して接線を引く。第2の接線を、溶融ピークの最大での温度未満の温度にある溶融ピークの第1の変曲点に対して引く。2つの接線は、それらが交差するまで外挿する。温度軸に対する交点の垂直外挿は、溶融の開始温度(TM
開始)を示す。
【0035】
結晶化の開始温度(TC
開始)を決定するために、結晶化ピークより高い温度にある冷却工程(C)のベースラインに対して接線を引く。第2の接線は、結晶化ピークの最小点での温度より高い温度にある結晶化ピークの変曲点に対して引く。2つの接線は、それらが交差するまで外挿する。温度軸に対する交点の垂直外挿は、結晶化の開始温度(TC
開始)を示す。
【0036】
焼結窓(W)は、溶融の開始温度(TM
開始)と結晶化の開始温度(TC
開始)の差である。よって:
W= TM
開始 - TC
開始
である。
【0037】
本発明の文脈において、「焼結窓(W)」「焼結窓の寸法(W)」及び「溶融の開始温度(TM
開始)と結晶化の開始温度(TC
開始)との間の差」という用語は同じ意味を有し、同義語として使用する。
【0038】
焼結粉末(SP)の焼結窓(WSP)の決定及び少なくとも1種のポリアミド(P)の焼結窓(WP)の決定は、上記のように行う。この場合、焼結粉末(SP)の焼結窓(WSP)の決定に使用する試料は、焼結粉末(SP)であり、少なくとも1種のポリアミド(P)の焼結窓(WP)の決定に使用する試料は、少なくとも1種のポリアミド(P)である。
【0039】
焼結粉末(SP)
本発明によれば、焼結粉末(SP)は、少なくとも1種のポリアミド、及び焼結粉末(SP)の全質量に基づき、10質量%~50質量%の範囲の少なくとも1種のアルミノシリケートを含む。
【0040】
焼結粉末(SP)は、焼結粉末(SP)の全質量に基づき、10質量%~50質量%の範囲の、好ましくは10質量%~45質量%の範囲の、特に好ましくは10質量%~40質量%の範囲の少なくとも1種のアルミノシリケートを含む。
【0041】
焼結粉末(SP)は例えば、焼結粉末(SP)の全質量に基づき、50質量%~90質量%の範囲の、好ましくは55質量%~90質量%の範囲の、特に好ましくは60質量%~90質量%の範囲の少なくとも1種のポリアミド(P)を含む。
【0042】
さらに、焼結粉末(SP)は、少なくとも1種の添加剤(A)を含んでよい。適切な添加剤は当業者に既知の添加剤である。適切な添加剤(A)は、例えば、抗核形成剤、安定剤、末端基官能化剤及び染料からなる群から選択される。
【0043】
よって本発明はまた、少なくとも1種の添加剤(A)が、抗核形成剤、安定剤、末端基官能化剤及び染料からなる群から選択される方法を提供する。
【0044】
適切な抗核形成剤は例えば、ニグロシン、ニュートラルレッド及びリチウムクロリドである。適切な安定剤は例えば、フェノール、ホスファイト及び銅安定剤である。適切な末端基官能化剤は例えば、テレフタル酸及びプロピオン酸である。適切な染料は例えば、カーボンブラックである。
【0045】
焼結粉末(SP)は例えば、焼結粉末(SP)の全質量に基づき、0.1質量%~10質量%の範囲の少なくとも1種類の添加剤(A)を含んでよい。好ましくは、焼結粉末(SP)は、いずれの場合も焼結粉末(SP)の全質量に基づき、0.5質量%~8質量%の範囲の、特に好ましくは1質量%~5質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)を含む。
【0046】
よって本発明はまた、焼結粉末(SP)が、焼結粉末(SP)の全質量に基づき0.1質量%~10質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)さらに含む方法を提供する。
【0047】
少なくとも1種のアルミノシリケート、少なくとも1種のポリアミド(P)及び任意に少なくとも1種の添加剤(A)の質量パーセンテージの総合計は、典型的には加算すると100%である。
【0048】
焼結粉末(SP)は、当業者に既知の任意の方式によって製造することができる。焼結粉末(SP)は、好ましくは、粉砕又は沈殿によって製造する。
【0049】
粉砕による焼結粉末(SP)の製造は、当業者に既知の任意の方式によって行うことができる。例えば、少なくとも1種のポリアミド(P)、少なくとも1種のアルミノシリケート及び任意に少なくとも1種の添加剤(A)をミルに導入し、その中で粉砕する。
【0050】
適切なミルには、当業者に既知のすべてのミル、例えば分級ミル、対向ジェットミル、ピンミル、ハンマーミル、ボールミル、振動ミル又はローターミルが含まれる。
【0051】
ミル中での粉砕は同様に、当業者に既知の任意の方法によって行うことができ、例えば粉砕は、不活性ガス下で、及び/又は液体窒素による冷却下で行うことができる。液体窒素下での冷却が好ましい。
【0052】
粉砕温度は所望される温度である。粉砕は液体窒素温度、例えば-210~-195℃の範囲の温度で行うことが好ましい。
【0053】
少なくとも1種のポリアミド(P)、少なくとも1種のアルミノシリケート及び任意に少なくとも1種の添加剤(A)は、当業者に既知の任意の方式によってミルに導入することができる。例えば、少なくとも1種のポリアミド(P)、少なくとも1種のアルミノシリケート及び任意に少なくとも1種の添加剤(A)をミル中に別々に導入し、粉砕してその中で互いに混合することができる。また、本発明によれば、少なくとも1種のポリアミド(P)、少なくとも1種のアルミノシリケート及び任意に少なくとも1種の添加剤(A)を最初に一緒に配合し、それからミル中に導入することも可能であり好ましい。
【0054】
特に好ましい実施形態において、焼結粉末(SP)の製造は、以下の工程:
i) 少なくとも1種のポリアミド(P)を、少なくとも1種のアルミノシリケート及び任意に少なくとも1種の添加剤(A)と混合し、その少なくとも1種のアルミノシリケートが2.5~4.5μmのD50を有し、少なくとも1種のポリアミド(P)、少なくとも1種のアルミノシリケート及び任意に少なくとも1種のさらなる添加剤(A)を含む混合物を得る工程であって、その少なくとも1種のアルミノシリケートが2.5~4.5μmの範囲のD50を有する工程、
ii) 工程i)で得られた混合物を粉砕して焼結粉末(SP)を得る工程
を含む。
【0055】
さらに特に好ましい実施形態において、焼結粉末(SP)の製造は、以下の工程:
i) 少なくとも1種のポリアミド(P)を、少なくとも1つのシート状アルミノシリケート及び任意に少なくとも1種の添加剤(A)と混合し、そのアルミノシリケートが2.5~4.5μmのD50を有し、少なくとも1種のポリアミド(P)、少なくとも1種のアルミノシリケート及び任意に少なくとも1種の添加剤(A)を含む混合物を得る工程であって、そのアルミノシリケートが2.5~4.5μmの範囲のD50を有する工程、
iia) 工程i)で得られた混合物を粉砕してポリアミド粉末を得る工程、
iib) 工程iia)で得られたポリアミド粉末を自由流動助剤と混合して焼結粉末(SP)を得る工程、
を含む。
【0056】
適切な自由流動助剤は例えば、シリカ又はアルミナである。好ましい自由流動助剤はアルミナである。適切なアルミナの例は、Evonik社製のAeroxide(登録商標)Alu Cである。
【0057】
焼結粉末(SP)が自由流動助剤を含む場合、自由流動助剤は好ましくは本方法の工程iib)で添加する。焼結粉末(SP)は、いずれの場合も焼結粉末(SP)及び自由流動助剤の全質量に基づき、一般に0.1質量%~1質量%の、好ましくは0.2質量%~0.8質量%の、より好ましくは0.3質量%~0.6質量%の自由流動助剤を含む。
【0058】
上記の焼結粉末(SP)を製造する方法に関しては、ポリアミド(P)、添加剤(A)及びアルミノシリケートに関して上記及び下記に記載する詳細及び好ましい例が、対応して適用可能である。同じことが、少なくとも1種のポリアミド(P)の少なくとも1種のアルミノシリケート及び添加剤(A)に対する定量比にも適用される。
【0059】
よって本発明はまた、以下の工程:
i) 少なくとも1種のポリアミド(P)を、少なくとも1種のアルミノシリケート及び任意に少なくとも1種の添加剤(A)と混合し、その少なくとも1種のアルミノシリケートが2.5~4.5μmのD50を有し、少なくとも1種のポリアミド(P)、少なくとも1種のアルミノシリケート及び任意に少なくとも1種のさらなる添加剤(A)を含む混合物を得る工程であって、その少なくとも1種のアルミノシリケートが2.5~4.5μmの範囲のD50を有する工程、
ii) 工程i)で得られた混合物を粉砕して焼結粉末(SP)を得る工程、
を含む焼結粉末(SP)の製造方法を提供する。
【0060】
本発明はさらに、焼結粉末(SP)を製造する方法であって、工程ii)が以下の工程:
iia) 工程i)で得られた混合物を粉砕してポリアミド粉末を得る工程、
iib) 工程iia)で得られたポリアミド粉末を自由流動助剤と混合して焼結粉末(SP)を得る工程、
を含む方法を提供する。
【0061】
本発明はさらに、上記の方法によって得ることができる焼結粉末(SP)を提供する。
【0062】
特に好ましい実施形態では、少なくとも1種のアルミノシリケートがポリアミド(P)中に存在する。この実施形態では、少なくとも1種のポリアミド(P)が分散媒(連続相)を形成し、少なくとも1種のアルミノシリケートが分散相(内部相)を形成する。この実施形態においても、少なくとも1種のアルミノシリケートは2.5~4.5μmの範囲のD50を有することが好ましく、少なくとも1種のアルミノシリケートに関する以下の詳細及び好ましい例が、対応して適用可能である。
【0063】
配合(混合用)の方法は、当業者にはそれ自体既知である。例えば、少なくとも1種のポリアミド(P)、少なくとも1種のアルミノシリケート及び任意に少なくとも1種の添加剤(A)を押出機中で配合し、次いでそれから押出してミルに導入することができる。
【0064】
焼結粉末(SP)を沈殿によって製造する場合、典型的には、少なくとも1種のポリアミド(P)を溶媒(S)と混合し、任意に加熱しながらポリアミド(P)を溶媒(S)中に溶解し、ポリアミド溶液(PS)を得る。ポリアミド(P)は、溶媒(S)中に部分的に又は完全に溶解してよい。ポリアミド(P)は、溶媒(S)中に完全に溶解させることが好ましい。よって溶媒(S)中に完全に溶解したポリアミド(P)を含むポリアミド溶液(PS)を得ることが好ましい。
【0065】
少なくとも1種のアルミノシリケートを、少なくとも1種のポリアミド(P)と溶媒(S)との混合物に添加する。少なくとも1種のアルミノシリケートを添加する時点は重要ではないが、添加は一般に焼結粉末(SP)の沈殿に先行する。ポリアミド(P)を溶媒(S)と混合する前に、少なくとも1種のアルミノシリケートを溶媒(S)に添加することができる。同様に、少なくとも1種のポリアミド(P)が溶媒(S)中に溶解する前に、少なくとも1種のアルミノシリケートを少なくとも1種のポリアミド(P)と溶媒(S)との混合物に添加することも可能である。さらに、少なくとも1種のアルミノシリケートをポリアミド溶液(PS)に添加することも同様に可能である。
【0066】
少なくとも1種のアルミノシリケートは、少なくとも1種のポリアミド(P)と溶媒(S)との混合物中に懸濁した形態で存在する。
【0067】
少なくとも1種のアルミノシリケートはこの場合、分散された相(分散相)である。溶媒(S)又は少なくとも1種のポリアミド(P)が溶媒(S)中に溶解している場合、ポリアミド溶液(PS)は分散媒(連続相)である。
【0068】
その後続いて、少なくとも1種のアルミノシリケートを含むポリアミド溶液(PS)から焼結粉末(SP)を沈殿させることができる。
【0069】
沈殿は、当業者に既知の方式によって行うことができる。例えば、焼結粉末(SP)は、少なくとも1種のアルミノシリケートを含むポリアミド溶液(PS)の冷却によって、少なくとも1種のアルミノシリケートを含むポリアミド溶液(PS)からの溶媒(S)の蒸留によって、又は少なくとも1種のアルミノシリケートを含むポリアミド溶液(PS)への沈殿剤(PR)の添加によって、沈殿させることができる。好ましくは、焼結粉末(SP)は少なくとも1種のアルミノシリケートを含むポリアミド溶液(PS)を冷却することによって沈殿させる。
【0070】
使用する溶媒(S)は、厳密に1種の溶媒でよい。同様に、溶媒(S)として2種以上の溶媒を使用することも可能である。適切な溶媒(S)は、例えば、アルコール、ラクタム及びケトンからなる群から選択される。溶媒(S)は、好ましくは、アルコール及びラクタムからなる群から選択される。
【0071】
本発明によれば、「ラクタム」は一般に、環内に3~12個の炭素原子を、好ましくは4~6個の炭素原子を有する環状アミドを意味すると理解される。適切なラクタムは、例えばプロピオ-3-ラクタム(β-ラクタム;β-プロピオラクタム)、ブチロ-4-ラクタム(γ-ラクタム;γ-ブチロラクタム)、2-ピペリジノン(δ-ラクタム;δ-バレロラクタム)、ヘキサノ-6-ラクタム(ε-ラクタム;ε-カプロラクタム)、ヘプタノ-7-ラクタム(ζ-ラクタム;ζ-ヘプタノラクタム)、オクタノ-8-ラクタム(η-ラクタム;η-オクタノラクタム)、ノナノ-9-ラクタム(θ-ラクタム;θ-ノナノラクタム)、デカノ-10-ラクタム(ω-デカノラクタム)、ウンデカノ-11-ラクタム(ω-ウンデカノラクタム)及びドデカノ-12-ラクタム(ω-ドデカノラクタム)からなる群から選択される。
【0072】
ラクタムは、非置換又は少なくとも一置換されていてよい。少なくとも一置換のラクタムを用いる場合、その窒素原子及び/又はその環炭素原子は、C1~C10-アルキル、C5~C6-シクロアルキル、及びC5~C10-アリールからなる群から互いに独立して選択される1個、2個又はそれ以上の置換基を有してよい。
【0073】
適切なC1~C10-アルキル置換基は、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル及びtert-ブチルである。適切なC5~C6-シクロアルキル置換基は、例えばシクロヘキシルである。好ましいC5~C10-アリール置換基は、フェニル及びアントラニルである。
【0074】
非置換のラクタムの使用が好ましく、γ-ラクタム(γ-ブチロラクタム)、δ-ラクタム(δ-バレロラクタム)及びε-ラクタム(ε-カプロラクタム)が好ましい。δ-ラクタム(δ-バレロラクタム)及びε-ラクタム(ε-カプロラクタム)が特に好ましく、ε-カプロラクタムが特に好ましい。
【0075】
溶媒(S)は、いずれの場合も溶媒(S)の全質量に基づき、好ましくは少なくとも20質量%のラクタム、より好ましくは少なくとも25質量%のラクタム、特に好ましくは少なくとも30質量%のラクタム、最も好ましくは少なくとも40質量%のラクタムを含む。
【0076】
さらに、溶媒(S)がラクタムからなることが最も好ましい。
【0077】
また、溶媒(S)が、いずれの場合も溶媒(S)の全質量に基づき、80質量%未満の水、より好ましくは75質量%未満の水、特に好ましくは70質量%未満の水、最も好ましくは60質量%未満の水を含むことが好ましい。
【0078】
溶媒(S)の水含量の下限は、いずれの場合も溶媒(S)の全質量に基づき、一般に0質量%~0.5質量%の範囲、好ましくは0質量%~0.3質量%の範囲、より好ましくは0質量%~0.1質量%の範囲である。
【0079】
少なくとも1種のポリアミド(P)は、任意の所望の温度で溶媒(S)に溶解させてよい。少なくとも1種のポリアミド(P)は、好ましくは加熱して溶媒(S)中に溶解させる。溶解温度は、例えば80℃~200℃の範囲、好ましくは90℃~190℃の範囲、特に好ましくは120℃~180℃の範囲である。
【0080】
焼結粉末(SP)を、少なくとも1種のアルミノシリケートを含むポリアミド溶液(PS)から冷却によって沈殿させる場合、少なくとも1種のアルミノシリケートを含むポリアミド溶液(PS)は当業者に既知の任意の方式で冷却することができる。ポリアミド溶液(PS)は任意の温度に冷却することができる。好ましくは、ポリアミド溶液(PS)は、20~80℃の範囲の、より好ましくは20~75℃の範囲の温度に冷却する。
【0081】
少なくとも1種のアルミノシリケートを含むポリアミド溶液(PS)を冷却する温度が、ポリアミド(P)が溶媒(S)中に溶解する温度未満であることは理解されるであろう。
【0082】
少なくとも1種のアルミノシリケートを含むポリアミド溶液(PS)の冷却によって焼結粉末(SP)を沈殿させる場合、特に微細な焼結粉末粒子を得るために、ポリアミド溶液(PS)を例えば冷却中に撹拌することができる。
【0083】
本発明によれば、焼結粉末(SP)は、少なくとも1種のポリアミド(P)及び少なくとも1種のアルミノシリケート、及び任意に少なくとも1種の添加剤(A)を含む。焼結粉末(SP)は、少なくとも1種のポリアミド(P)並びに少なくとも1種のアルミノシリケート、及び任意に少なくとも1種の添加剤(A)を含んでよい。同様に、少なくとも1種のアルミノシリケートを、少なくとも1種のポリアミド(P)及び任意に添加剤(A)で、少なくとも部分的に被覆することが可能である。
【0084】
焼結粉末(SP)は粒子を含む。これらの粒子は例えば、10~250μmの範囲の、好ましくは15~200μmの範囲の、より好ましくは20~120μmの範囲の、特に好ましくは20~100μmの範囲の寸法を有する。
【0085】
本発明の焼結粉末(SP)は一般に、
10~30μmの範囲のD10、
25~70μmの範囲のD50及び
50~150μmの範囲のD90を有する。
【0086】
好ましい実施形態では、焼結粉末(SP)は、
20~300μmの範囲のD10、
40~60μmの範囲のD50及び
80~100μmの範囲のD90を有する。
【0087】
本発明の文脈において、「D10」はこの関連において、粒子の全体積に基づき10体積%の粒子がD10より小さい又は同等であり、且つ粒子の全体積に基づき90体積%の粒子がD10より大きい粒子径を意味すると理解される。類似して、「D50」は、粒子の全体積に基づき50体積%の粒子がD50より小さい又は同等であり、且つ粒子の全体積に基づき50体積%の粒子がD50より大きい粒子径を意味すると理解される。類似して、「D90」は、粒子の全体積に基づき90体積%の粒子がD90より小さい又は同等であり、且つ粒子の全体積に基づき10体積%の粒子がD90より大きい粒子径を意味すると理解される。
【0088】
粒子径を決定するために、焼結粉末(SP)は、圧縮空気を使用した乾燥状態で、又は溶媒、例えば水若しくはエタノール中で懸濁させてこの懸濁液を分析する。D10、D50及びD90値の決定は、Malvern Mastersizer 3000を使用するレーザー回折による。評価はフラウンホーファ(Fraunhofer)回析により行う。
【0089】
ポリアミド(P)
本発明の文脈において、「少なくとも1種のポリアミド(P)」は、厳密に1種のポリアミド(P)又は2種以上のポリアミド(P)の混合物のいずれかを意味すると理解されるべきである。
【0090】
適切なポリアミド(P)は、一般に、70~350mL/gの、好ましくは70~240mL/gの粘度数を有する。本発明によれば、粘度数は、ISO307に従って25℃における96質量%硫酸中のポリアミド(P)の0.5質量%溶液から決定する。
【0091】
好ましいポリアミド(P)は、半結晶性ポリアミドである。適切なポリアミド(P)は、500~2000000g/molの範囲の、好ましくは5000~500000g/molの範囲の、より好ましくは10000~100000g/molの範囲の質量平均分子量(MW)を有する。質量平均分子量(Mw)は、ASTM D4001に従って決定する。
【0092】
適切なポリアミド(P)は例えば、7~13環員を有するラクタムから誘導されるポリアミド(P)である。適切なポリアミド(P)には、ジカルボン酸とジアミンとの反応によって得られるポリアミド(P)がさらに含まれる。
【0093】
ラクタムから誘導されるポリアミド(P)の例には、ポリカプロラクタム、ポリカプリロラクタム及び/又はポリラウロラクタムから誘導されるポリアミドが含まれる。
【0094】
適切なポリアミド(P)は、さらに、ω-アミノアルキルニトリルから得ることができるものを含む。好ましいω-アミノアルキルニトリルは、ナイロン-6をもたらすアミノカプロニトリルである。さらに、ジニトリルをジアミンと反応させることができる。ここでは、重合してナイロン-6,6をもたらすアジポニトリル及びヘキサメチレンジアミンが好ましい。ニトリルの重合は水の存在下で行われ、直接重合としても知られている。
【0095】
ジカルボン酸及びジアミンから得ることができるポリアミド(P)を使用する場合、6~36個の炭素原子を、好ましくは6~12個の炭素原子を、より好ましくは6~10個の炭素原子を有するジカルボキシアルカン(脂肪族ジカルボン酸)を用いてよい。芳香族ジカルボン酸も適している。
【0096】
ジカルボン酸の例には、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸及びテレフタル酸及び/又はイソフタル酸が含まれる。
【0097】
適切なジアミンには、例えば4~36個の炭素原子を有するアルカンジアミン、好ましくは6~12個の炭素原子を有するアルカンジアミン、特に6~8個の炭素原子を有するアルカンジアミン、及び芳香族ジアミン、例えばm-キシリレンジアミン、ジ(4-アミノフェニル)メタン、ジ(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ(4-アミノシクロヘキシル)プロパン及び1,5-ジアミノ-2-メチルペンタンが含まれる。
【0098】
好ましいポリアミド(P)は、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミド(polyhexamethylenesebacamide)及びポリカプロラクタム並びに、特に5質量%~95質量%のカプロラクタム単位の割合を有するコポリアミド6/66である。
【0099】
上記及び下記の2種以上のモノマーの共重合により得ることができるポリアミド(P)、又は任意の所望の混合比率での複数のポリアミド(P)の混合物も適している。特に好ましい混合物は、ナイロン-6,6と他のポリアミド(P)、特にナイロン-6/6,6との混合物である。
【0100】
よって適切なポリアミド(P)は、脂肪族、半芳香族又は芳香族ポリアミド(P)である。「脂肪族ポリアミド」という用語は、ポリアミド(P)が独占的に脂肪族モノマーから形成されていることを意味すると理解される。「半芳香族ポリアミド」という用語は、ポリアミド(P)が脂肪族及び芳香族モノマーの両方から形成されていることを意味すると理解される。「芳香族ポリアミド」という用語は、ポリアミド(P)が独占的に芳香族モノマーから形成されていることを意味すると理解される。
【0101】
以下の非包括的なリストは、本発明による方法への使用及び存在するモノマーに適した上記のポリアミド(P)及びさらなるポリアミド(P)を含む。
【0102】
ABポリマー:
PA4 ピロリドン
PA6 ε-カプロラクタム
PA7 エナントラクタム
PA8 カプリロラクタム
PA9 9-アミノペラルゴン酸
PA11 11-アミノウンデカン酸
PA12 ラウロラクタム
AA/BBポリマー:
PA46 テトラメチレンジアミン、アジピン酸
PA66 ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸
PA69 ヘキサメチレンジアミン、アゼライン酸
PA610 ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸
PA612 ヘキサメチレンジアミン、デカンジカルボン酸
PA613 ヘキサメチレンジアミン、ウンデカンジカルボン酸
PA1212 ドデカン-1,12-ジアミン、デカンジカルボン酸
PA1313 トリデカン-1,13-ジアミン、ウンデカンジカルボン酸
PA6T ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PA9T ノニルジアミン、テレフタル酸
PAMXD6 m-キシリレンジアミン、アジピン酸
PA6l ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸
PA6-3-T トリメチルヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PA6/6T (PA6及びPA6T参照)
PA6/66 (PA6及びPA66参照)
PA6/12 (PA6及びPA12参照)
PA66/6/610 (PA66、PA6及びPA610参照)
PA6I/6T (PA6I及びPA6T参照)
PA PACM 12 ジアミノジシクロヘキシルメタン、ラウロラクタム
PA6I/6T/PACM PA6I/6T及びジアミノジシクロヘキシルメタンとして
PA12/MACMI ラウロラクタム、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン、イソフタル酸
PA12/MACMT ラウロラクタム、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン、テレフタル酸
PA PDA-T フェニレンジアミン、テレフタル酸
【0103】
よって本発明は、少なくとも1種のポリアミド(P)が、PA4、PA6、PA7、PA8、PA9、PA11、PA12、PA46、PA66、PA69、PA610、PA612、PA613、PA1212、PA1313、PA6T、PA MXD6、PA6l、PA6-3-T、PA6/6T、PA6/66、PA66/6、PA6/12、PA66/6/610、PA6l/6T、PA PACM12、PA6l/6T/PACM、PA12/MACMI、PA12/MACMT、PA PDA-T及び上記ポリアミドの2種以上から構成されるコポリアミドからなる群から選択される方法を提供する。
【0104】
好ましくは、少なくとも1種のポリアミド(P)は、ナイロン-6(PA6)、ナイロン-6,6(PA66)、ナイロン-12(PA12)、ナイロン-6/6,6(PA6/66)、ナイロン-6,6/6(PA66/6)及びナイロン-6,10(PA610)からなる群から選択される少なくとも1種のポリアミドである。
【0105】
少なくとも1種のポリアミド(P)として、ナイロン-6(PA6)及び/又はナイロン-6,6(PA66)が特に好ましく、ナイロン-6(PA6)が特に好ましい。
【0106】
よって本発明は、少なくとも1種のポリアミド(P)が、PA12、PA6、PA66、PA6/66、PA66/6及びPA610からなる群から選択される方法を提供する。
【0107】
アルミノシリケート
本発明によれば、焼結粉末(SP)は、少なくとも1種のアルミノシリケートを含む。
【0108】
本発明の文脈において、「少なくとも1種のアルミノシリケート」は、厳密に1種のアルミノシリケート又は2種以上のアルミノシリケートの混合物のいずれかを意味すると理解される。好ましくは、本発明によれば、焼結粉末(SP)は、厳密に1種のアルミノシリケートを含む。
【0109】
アルミノシリケートは、それ自体当業者に既知である。アルミノシリケートは、Al2O3及びSiO2を含む化合物を言う。構造的には、アルミノシリケートの共通の要素は、ケイ素原子が酸素原子によって四面体配位され、アルミニウム原子が酸素原子によって八面体配位されることである。アルミノシリケートは、さらなる元素をさらに含むことができる。
【0110】
好ましくは、少なくとも1種のアルミノシリケートは、シート状シリケートである。シート状シリケートはそれ自体当業者に既知である。シート状シリケートでは、酸素原子によって四面体に配位されたケイ素原子が層状に配置される。
【0111】
より好ましくは、少なくとも1種のアルミノシリケートは焼成されている。特に好ましくは、少なくとも1種のアルミノシリケートは焼成されたシート状シリケートである。
【0112】
さらなる特に好ましい実施形態では、少なくとも1種のアルミノシリケートは焼成されていない。さらに、少なくとも1種のアルミノシリケートは、特に好ましくは焼成されていないシート状シリケートである。
【0113】
よって本発明はまた、少なくとも1種のアルミノシリケートがアミノ官能化されている方法を提供する。
【0114】
アルミノシリケートを焼成する方法は、それ自体当業者に既知である。典型的には、焼成する少なくとも1種のアルミノシリケートを、1000~1300℃の範囲の温度に、好ましくは1100~1200℃の範囲の温度に加熱する。
【0115】
本発明を限定することを望むものではないが、少なくとも1種のアルミノシリケート中に存在する結晶水は、焼成によって除去されると考えられる。また、少なくとも1種のアルミノシリケートが焼成されたシート状シリケートである場合、層構造は少なくとも部分的に破壊されるとも考えられる。
【0116】
本発明によれば、アルミノシリケートがアミノ官能化されていることも好ましい。アルミノシリケートをアミノ官能化する方法は、それ自体当業者に既知であり、例えば、Deeba M.Ansaria、Gareth J.Pricea:Correlation of mechanical properties of clay filled polyamide mouldings with chromatographically measured surface energies.Polymer 45(2004)3663-3670に記載されている。
【0117】
よって少なくとも1種のアルミノシリケートは、表面をアミノ官能化した焼成されたシート状シリケートであることが特に好ましい。
【0118】
よって本発明はまた、少なくとも1種のアルミノシリケートが焼成されたシート状シリケートである方法を提供する。
【0119】
少なくとも1種のアルミノシリケートは、任意の所望の形態で使用することができる。例えば、少なくとも1種のアルミノシリケートは純粋なアルミノシリケートの形態で使用することができるが、同様にアルミノシリケートを鉱物の形態で使用することも可能である。好ましくは、アルミノシリケートは鉱物の形態で使用する。適切なアルミノシリケートは例えば、長石、ゼオライト、ソーダライト、シリマナイト、アンドルサイト及びカオリンである。カオリンは好ましいアルミノシリケートである。
【0120】
よって本発明はまた、少なくとも1種のアルミノシリケートがカオリンである方法を提供する。
【0121】
カオリンは粘土岩の一つであり、本質的に鉱物カオリナイトを含む。カオリナイトの実験式は、Al2[(OH)4/Si2O5]である。カオリナイトはシート状シリケートである。カオリナイトと同様に、カオリンも典型的にさらなる化合物、例えば二酸化チタン、酸化ナトリウム及び酸化鉄を含む。本発明による好ましいカオリンは、カオリンの全質量に基づき、少なくとも98質量%のカオリナイトを含む。
【0122】
少なくとも1種のアルミノシリケートとして最も好ましいのは、その表面がアミノ官能化されている焼成されたカオリンである。
【0123】
本発明によれば、アルミノシリケートは2.5~4.5μmの範囲のD50を有する。
【0124】
典型的には、少なくとも1種のアルミノシリケートは、
0.5~1.5μmの範囲のD10、
2.5~4.5μmの範囲のD50及び
8~15μmの範囲のD90を有する。
【0125】
D10、D50及びD90値の決定に関しては、焼結粉末(SP)のD10、D50及びD90値について上述した詳細及び好ましい例が、対応して適用可能である。
【0126】
よって本発明はまた、少なくとも1種のアルミノシリケートが、
0.5~1.5μmの範囲のD10、
2.5~4.5μmの範囲のD50及び
8~15μmの範囲のD90を有する
方法を提供する。
【0127】
少なくとも1種のアルミノシリケートは、当業者に既知の任意の形状をとってよい。例えば、少なくとも1種のアルミノシリケートは、血小板形状であってもよく、又は微粒子形状であってもよい。好ましくは、少なくとも1種のアルミノシリケートは血小板形状である。
【0128】
本発明の文脈において、「血小板形状」とは、少なくとも1種のアルミノシリケートの粒子が、直径の厚さに対する比率を4:1~10:1の範囲で有することを意味すると理解される。
【0129】
好ましくは、少なくとも1種のアルミノシリケートは粒子形状であり、粒子は最大球形度を有し、すなわち最大真円度の形を有する。この尺度は球形度(SPHT)と呼ばれる。ここで、少なくとも1種のアルミノシリケートの粒子の球形度は、少なくとも1種のアルミノシリケートの粒子の表面積の、同体積の理想球の表面積に対する比率を示す。球形度は、例えばCamsizerを使用して、画像分析によって決定することができる。その方法は、当業者には既知である。
【0130】
特に好ましい焼結粉末(SP)において、少なくとも1種のポリアミド(P)は、少なくとも1種のアルミノシリケートを含む。この実施形態では、ポリアミドが分散媒を形成し、アルミノシリケートが分散相を形成する。粒子径を決定する、並びに焼結粉末(SP)中のポリアミド(P)中に分散して存在するシート状アルミノシリケートのD10、D50及びD90を決定する2つの手段がある。第一に、ポリアミド(P)中に分散するアルミノシリケートの粒子径を視覚的手段によって、例えば走査電子顕微鏡(SEM)によって決定することが可能である。さらに、適切な溶媒を用いて焼結粉末(SP)からポリアミド(P)を浸出させ、その後続いてMalvern Mastersizer 3000を使用するレーザー回折によって、評価はフラウンホーファ(Fraunhofer)回析により行って、残存するアルミノシリケートを測定することが可能である。ポリアミド(P)を浸出させるのに適した溶媒は、例えばギ酸、硫酸(例えば96%)、フェノール/メタノール混合物(75:25)及び/又はヘキサフルオロイソプロパノールである。
【0131】
本発明はさらに、焼結粉末(SP)の選択的レーザー焼結によって成形体を製造する方法を提供し、該方法において、少なくとも1種のポリアミド(P)が少なくとも1種のアルミノシリケートを含み、ポリアミド(P)が連続相を形成し、少なくとも1種のアルミノシリケートが分散相を形成し、且つ少なくとも1種のアルミノシリケートは2.5~4.5μmの範囲のD50を有する。
【0132】
本発明はさらに、焼結粉末(SP)が少なくとも1種のポリアミド(P)、及びその焼結粉末(SP)の全質量に基づき10質量%~50質量%の範囲の少なくとも1種のアルミノシリケートを含む焼結粉末(SP)を提供し、ここでその少なくとも1種のアルミノシリケートが2.5~4.5μmの範囲のD50を有し、その少なくとも1種のポリアミド(P)がその少なくとも1種のアルミノシリケートを含み、且つその少なくとも1種のポリアミド(P)が連続相を形成し、少なくとも1種のアルミノシリケートが分散相を形成する。
【0133】
成形体
本発明の成形体は、以下にさらに説明する選択的レーザー焼結という方法によって得られる。選択的暴露においてレーザーによって溶融した焼結粉末(SP)は、暴露後に再凝固し、それによって本発明の成形体を形成する。成形体は、凝固直後に粉末床から除去することができる。同様に、成形体を最初に冷却してから、その後にその成形体を粉末床から除去することが可能である。未溶融の付着した粒子は、既知の方式によって表面から除去することができる。成形体の表面処理方式には、例えば、振動粉砕又はバレル研磨、及びまたサンドブラスト、ガラスビーズブラスト又はマイクロビーズブラストが含まれる。
【0134】
また、得られた成形体をさらなる処理に付するか、又は例えば表面処理に付することも可能である。
【0135】
本発明の成形体は、少なくとも1種のポリアミド(P)、及びいずれの場合も成形体の全質量に基づき10質量%~50質量%の少なくとも1種類のアルミノシリケート、好ましくは10質量%~45質量%の、特に好ましくは10質量%~40質量%の少なくとも1種のアルミノシリケートを含む。本発明によれば、少なくとも1種のアルミノシリケートは、焼結粉末(SP)中に存在していた少なくとも1種のアルミノシリケート、及びポリアミド(P)は、焼結粉末(SP)中に存在していたポリアミド(P)である。
【0136】
焼結粉末(SP)が少なくとも1種の添加剤(A)を含む場合、成形体も焼結粉末(SP)中に存在していた少なくとも1種の添加剤(A)を含有する。
【0137】
焼結粉末(SP)をレーザーに暴露する結果として、少なくとも1種のポリアミド(P)、少なくとも1種のアルミノシリケート及び任意に少なくとも1種の添加物(A)が化学反応を起こし、その結果として変化した可能性があることは、当業者には明白であろう。この種類の反応は、当業者に既知である。
【0138】
好ましくは、少なくとも1種のポリアミド(P)、少なくとも1種のアルミノシリケート及び任意に少なくとも1種の添加剤(A)は、焼結粉末(SP)をレーザーへ暴露する結果としての化学反応は起こさない。代わりに、焼結粉末(SP)が単に溶融するのみである。
【0139】
よって本発明はまた、本発明の方法によって得られる成形体を提供する。
【0140】
本発明を以下の実施例によって詳細に説明するが、これに限定するものではない。
【実施例】
【0141】
以下の成分を使用した:
- ポリアミド(P): (P1)Ultramid(登録商標)B22(ナイロン-6)、BASF SE社製
(P2)Ultramid(登録商標)B27(ナイロン-6)、BASF SE社製
(P3)Grivory G16(ナイロン-6I/6T)、EMS-Grivory社製
(P4)Ultramid(登録商標)C33(ナイロン6/66)、BASF SE社製
- アルミノシリケート: (B1)Translink445、BASF SE社製カオリン、d10=0.998μm、d50=3.353μm、d90=11.875μm、Malvern Mastersizerを用いたレーザー散乱によって決定
- 添加剤(A): (A1)ニグロシンUB434
(A2)テレフタル酸
(A3)Irganox1098(N,N‘-ヘキサン-1,6-ジイルビス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)))、BASF SE社製
(A4)Nylostab S-EED(1,3-ベンゼンジカルボキサミド,N,N‘-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)
(A5)Special black 4、Evonik社製カーボンブラック
焼結粉末(C1、I2、C3及びI4)の製造
焼結粉末の製造のために、表1に明記する成分を、表1に明記する比率で、速度200rpm、バレル温度240℃及び50kg/hのスループットで二軸スクリュー押出機(ZSK40)において配合し、その後続いて押出成形でペレット化した。このようにして得たペレット化材料を極低温粉砕に付して焼結粉末を得た。
【0142】
粉砕後、粉末を約0.5%の水含量(Brabender Messtechnik社製Aquatrac 3E、測定温度160℃、試料量3~5g)に乾燥させ、0.4質量%の自由流動助剤(Al2O3;Aeroxide(登録商標)Alu C、Evoxik社製)と混合した。
【0143】
【0144】
引張試験片の作製
焼結粉末C1及びI2を、引張試験片の作製に使用した。焼結粉末を、0.12mmの層厚さでキャビティ中に表2に明記する温度で導入した。その後続いて焼結粉末を、表2に明記するレーザーパワー出力と明記するポイント間隔で、暴露中の試料上のレーザー速度が5080mm/sのレーザーに暴露した。ポイント間隔は、レーザー間隔又はレーン間隔としても知られている。選択的レーザー焼結は、典型的には、縞状の走査を含む。ポイント間隔は、縞の中心間の距離、すなわち2つの縞のレーザービームの2つの中心間の距離を示す。
【0145】
得られた引張試験片を80℃で減圧下に14日間乾燥させた後、測定温度23℃、相対空気湿度50%で、ISO527-2:2012に従って引張試験を行った。弾性率を決定するための試験速度は1mm/分であった。他のパラメータの決定のために、5mm/分の試験速度を選択した。結果は同様に表2に示す。
【0146】
【0147】
表2に引用した実施例に基づくと、焼結粉末(SP)中に少なくとも1種のアルミノシリケートを使用すると、得られる成形体が強化されることが明らかである。なぜなら、それら成形体は、アルミノシリケートを含まない焼結粉末と比較して弾性率が増加し、引張破壊応力がより大きいからである。さらにそれら成形体は、より増大した破壊点伸びに反映されている低下した脆化を明瞭に示している。
【0148】
焼結粉末の熱酸化安定性
焼結粉末C3及びI4の熱酸化安定性を決定した。焼結粉末の熱酸化安定性を決定するために、新たに製造した焼結粉末の、並びに酸素0.5%及び195℃で16時間オーブン老化させた後の焼結粉末の粘度を決定した。保存後の粘度の保存前の粘度に対する比率を決定した。粘度は、回転レオロジーを用いて、240℃の温度で0.5rad/sの測定周波数で測定する。さらに、焼結窓Wを決定した。結果を表3に示す。
【0149】
【0150】
酸素0.5%及び195℃で16時間のオーブン老化は、選択的レーザー焼結処理中の典型的なキャビティ条件をシミュレートする。保管後の粘度の保管前の粘度に対する比率は、少なくとも1種のアルミノシリケートを焼結粉末(SP)に添加した結果、たったの1.3であるのに対し、少なくとも1種のアルミノシリケートを含まない焼結粉末の場合は3.1であることが明確に明らかである。これは、焼結粉末に対する熱酸化性損傷による分子量の増加に起因する粘度の上昇を、少なくとも1種のアルミノシリケートによって有意に低減させることが可能であることを示す。さらに、少なくとも1種のアルミノシリケートの使用により、焼結窓がわずかに増加し、焼結窓が同様に焼結特性に肯定的な効果を有する。
【0151】
焼結粉末(C5、I5、I6、I7、C8、I9及びI10)の製造
焼結粉末の製造のために、表5に明記する成分を、表5に明記する比率で、速度300rpm(分毎の回転数)及び10kg/hのスループットで270℃の温度で、又は(P4)を含む配合物については245℃の温度で、二軸スクリュー押出機(MC26)において配合し、その後続いて押出成形でペレット化した。このようにして得たペレット化材料を、20~100μmの粒子径に極低温粉砕した。粉砕後、粉末を約0.5%の水含量(Brabender Messtechnik社製Aquatrac 3E、測定温度160℃、試料量3~5g)に乾燥させ、0.4質量%の自由流動助剤(Al2O3;Aeroxide(登録商標)Alu C、Evoxik社製)と混合した。
【0152】
得られた焼結粉末を上記のように特徴付けた。さらに、嵩密度をDIN EN ISO 60に従って、及びタンピング後密度(tamped density)をDIN EN ISO 787-11に従って、タンピング後密度の嵩密度に対する比率としてのHausner係数と同様に決定した。さらに、上記でd10、d50及びd90として報告した粒径分布を、Malvern Mastersizerを用いて測定した。
【0153】
焼結粉末(SP)のアルミノシリケート含量は、灰化後に重量測定法によって測定した。
【0154】
結果を表6a及び6bに報告する。
【0155】
【0156】
【0157】
TM[℃]溶融ピーク温度・TC[℃]結晶化ピーク温度;いずれもDSCによって決定した。
【0158】
【0159】
引張試験片の作製
焼結粉末C5、I5、I6、I7、C8、I9及びI10を、引張試験片の作製に使用した。
【0160】
焼結粉末を、0.1mmの層厚さで、表7に明記するキャビティ温度でキャビティ中に導入した。その後続いて焼結粉末を、表7に明記するレーザーパワー出力と明記するポイント間隔で、暴露中の試料上のレーザー速度5m/sで、レーザーに暴露した。ポイント間隔は、レーザー間隔又はレーン間隔としても知られている。選択的レーザー焼結は、典型的には、縞状の走査を含む。ポイント間隔は、縞の中心間の距離、すなわち2つの縞のレーザービームの2つの中心間の距離を示す。
【0161】
【0162】
その後続いて、得られた引張試験片(焼結試験片)の特性を決定した。得られた引張試験片(焼結試験片)を、80℃で336時間、減圧下で乾燥させた後、乾燥状態で試験した。結果を表9に示す。さらに、シャルピー試験片を作製し、同様に乾燥条件下で試験した(ISO179-2/1eU:1997+Amd.1:2011に従った)。
【0163】
引張応力、引張弾性率及び破壊点伸びは、ISO 527-1:2012に従って決定した。
【0164】
熱変形温度(HDT)は、ISO 75-2:2013に従って、外繊維応力が1.8N/mm2である方式A又は外繊維応力が0.45N/mm2である方式Bのいずれかを使用して測定した。
【0165】
焼結粉末の加工性及び焼結試験片の反りは、表8に示す尺度を用いて定性的に評価した。
【0166】
【0167】
【0168】
本発明の焼結粉末から製造した成形体は反りが低度であり、従って本発明の焼結粉末は選択的レーザー焼結法において良好な使用性を有することが明らかである。
【0169】
さらに、機械的特性の顕著な利点、例えば、耐熱変形性、及び引張応力及び弾性率の上昇が明らかである。驚くべきことに、破壊点伸びの上昇及び耐衝撃性(ノッチ付き及びノッチなし)の上昇さえも観察される(I6及びI7)。
【0170】
I9及びI10はC8と比較して、アルミノシリケートが、低融点のPA6コポリマーをベースとする焼結粉末の粉砕性をより良好にし、機械的特性を改善させることを示している。