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特許7013442レーザー焼結粉末用のポリアリールエーテルを含むポリアミドブレンド
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  • 特許-レーザー焼結粉末用のポリアリールエーテルを含むポリアミドブレンド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】レーザー焼結粉末用のポリアリールエーテルを含むポリアミドブレンド
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/314 20170101AFI20220124BHJP
   C08L 71/10 20060101ALI20220124BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20220124BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20220124BHJP
   C08J 3/12 20060101ALN20220124BHJP
【FI】
B29C64/314
C08L71/10
C08L77/00
B29C64/153
C08J3/12 A CEZ
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019504892
(86)(22)【出願日】2017-07-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-03
(86)【国際出願番号】 EP2017068534
(87)【国際公開番号】W WO2018019730
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-07-09
(31)【優先権主張番号】16181973.5
(32)【優先日】2016-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】クローケ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】マイアー,トマス
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/081009(WO,A1)
【文献】特開2003-119375(JP,A)
【文献】特開2010-006057(JP,A)
【文献】特表2017-530218(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104140668(CN,A)
【文献】特表2016-505409(JP,A)
【文献】国際公開第2012/041793(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/112283(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
C08L 71/00、77/00
B33Y 70/00
C08J 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結粉末(SP)の選択的レーザー焼結によって成形体を製造する方法であって、焼結粉末(SP)が、次の成分:
(A)-NH-(CH-NH-単位(式中、mは、4、5、6、7、または8である)、-CO-(CH-NH-単位(式中、nは、3、4、5、6、または7である)、および-CO-(CH-CO-単位(式中、oは、2、3、4、5、または6である)からなる群から選択される少なくとも1つの単位を含む少なくとも1種の半結晶性ポリアミドと、
(B)少なくとも1種のナイロン6I/6Tと、
(C)少なくとも1種のポリアリールエーテルと
を含み、成分(C)が、一般式(I)
【化1】
[式中、
t、qは、それぞれ独立に、0、1、2、または3であり、
Q、T、Yは、それぞれ独立に、化学結合、または-O-、-S-、-SO-、S=O、C=O、-N=N-、および-CR-から選択される基であり、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、またはC~C12-アルキル、C~C12-アルコキシ、もしくはC~C18-アリール基であり、Q、T、およびYの少なくとも1つは、-SO-であり、
Ar、Arは、それぞれ独立に、6~18個の炭素原子を有するアリーレン基である]
の単位を含むポリアリールエーテルである、方法。
【請求項2】
焼結粉末(SP)が、各場合において成分(A)、(B)、および(C)の質量百分率の総計に対して、成分(A)を20質量%~90質量%の範囲で、成分(B)を5質量%~40質量%の範囲で、成分(C)を5質量%~40質量%の範囲で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
焼結粉末(SP)が、
10~30μmの範囲のD10、
25~70μmの範囲のD50、および
50~150μmの範囲のD90
を有し、焼結粉末(SP)の粒径が、レーザー回折によって求められる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
焼結粉末(SP)が、180~270℃の範囲の溶融温度(T)を有し、溶融温度(T )が、動的示差熱量測定によって求められる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
焼結粉末(SP)が、120~190℃の範囲の結晶化温度(T)を有し、結晶化温度(T )が、動的示差熱量測定によって求められる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
焼結粉末(SP)が、焼結ウィンドウ(WSP)を有し、焼結ウィンドウ(WSP)が、溶融開始温度(T 開始)と結晶化開始温度(T 開始)の差であり、焼結ウィンドウ(WSP)が、18~45Kの範囲である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
成分(A)、(B)、および(C)を-210~-195℃の範囲の温度で粉砕することにより焼結粉末(SP)を製造する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
成分(A)が、PA6、PA6.6、PA6.10、PA6.12、PA6.36、PA6/6.6、PA6/6I6T、PA6/6l、およびPA6/6Tからなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
成分(C)が、PSU、PESU、およびPPSUからなる群から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
焼結粉末(SP)が、成核防止剤、安定剤、末端基官能化剤、および染料からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる成形体。
【請求項12】
次の成分:
(A)-NH-(CH-NH-単位(式中、mは、4、5、6、7、または8である)、-CO-(CH-NH-単位(式中、nは、3、4、5、6、または7である)、および-CO-(CH-CO-単位(式中、oは、2、3、4、5、または6である)からなる群から選択される少なくとも1つの単位を含む少なくとも1種の半結晶性ポリアミド、
(B)少なくとも1種のナイロン6I/6T、
(C)少なくとも1種のポリアリールエーテル
を含む焼結粉末(SP)において少なくとも1種のポリアリールエーテルを、成分(A)と(B)の混合物の焼結ウィンドウ(WAB)に比べて焼結粉末(SP)の焼結ウィンドウ(WSP)を広くするために使用する方法であって、各場合における焼結ウィンドウ(WSP、WAB)が溶融開始温度(T 開始)と結晶化開始温度(T 開始)の差であり、
ポリアリールエーテルが、一般式(I)
【化2】
[式中、
t、qは、それぞれ独立に、0、1、2、または3であり、
Q、T、Yは、それぞれ独立に、化学結合、または-O-、-S-、-SO -、S=O、C=O、-N=N-、および-CR -から選択される基であり、R およびR は、それぞれ独立に、水素原子、またはC ~C 12 -アルキル、C ~C 12 -アルコキシ、もしくはC ~C 18 -アリール基であり、Q、T、およびYの少なくとも1つは、-SO -であり、
Ar、Ar は、それぞれ独立に、6~18個の炭素原子を有するアリーレン基である]
の単位を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結粉末(SP)の選択的レーザー焼結によって成形体を製造する方法に関する。焼結粉末(SP)は、少なくとも1種の半結晶性ポリアミドと、少なくとも1種のナイロン6I/6Tと、少なくとも1種のポリアリールエーテルとを含む。本発明はさらに、本発明の方法によって得ることができる成形体、ならびに、焼結粉末(SP)においてポリアリールエーテルを、焼結粉末(SP)の焼結ウィンドウ(WSP)を広くするために使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試作品の速やかな提供は、昨今では頻繁に発生する課題である。この、いわゆる「速やかな試作品製作」に特に適する1つの方法は、選択的レーザー焼結(SLS)である。これは、チャンバーの中のポリマー粉末を、選択的にレーザービームに曝露するものである。粉末は溶融し、溶融した粒子は、癒着し、再び凝固する。プラスチック粉末の適用と、その後のレーザーへの曝露を繰り返すことで、三次元成形体の模型製作は容易になる。
【0003】
粉状ポリマーから成形体を製造する選択的レーザー焼結の方法は、特許明細書US6,136,948およびWO96/06881に詳細に記載されている。
【0004】
選択的レーザー焼結における特に重要な因子は、焼結粉末の焼結ウィンドウである。焼結ウィンドウは、レーザー焼結操作の際の成分の反りを軽減するために、可能な限り広くすべきである。さらに、焼結粉末の再利用性も、特に重要である。先行技術は、選択的レーザー焼結において使用する種々の焼結粉末を記載している。
【0005】
WO2009/114715は、少なくとも20質量%のポリアミドポリマーを含む、選択的レーザー焼結用の焼結粉末を記載している。このポリアミド粉末は、分岐ポリアミドを含み、分岐ポリアミドは、3つ以上のカルボン酸基を有するポリカルボン酸から出発して製造されている。
【0006】
WO2011/124278は、PA11のPA1010との、PA11のPA1012との、PA12のPA1012との、PA12のPA1212との、またはPA12のPA1013との共沈物を含む焼結粉末を記載している。
【0007】
EP1443073は、選択的レーザー焼結法のための焼結粉末を記載している。こうした焼結粉末は、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン10,12、ナイロン6、またはナイロン6,6と、流動助剤とを含む。
【0008】
US2015/0259530は、選択的レーザー焼結用の焼結粉末中に使用することのできる半結晶性ポリマーおよび二次的材料を記載している。ポリエーテルエーテルケトンまたはポリエーテルケトンケトンを半結晶性ポリマーとして、ポリエーテルイミドを二次的材料として使用することが好ましい。
【0009】
US2014/0141166は、3Dプリンティング法においてフィラメントとして使用することのできるポリアミドブレンドを記載している。このポリアミドブレンドは、半結晶性ポリアミドとして、たとえば、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,9、ナイロン6,10、ナイロン7、ナイロン11、ナイロン12、またはこれらの混合物と、非晶質ポリアミドとして、好ましくはナイロン6/3Tとを含み、非晶質ポリアミドが、ポリアミドブレンド中に30質量%~70質量%の範囲で存在する。
【0010】
焼結粉末の焼結ウィンドウのサイズが、純粋なポリアミドまたは純粋な半結晶性ポリマーの焼結ウィンドウに比べて、往々にして縮小されることも、選択的レーザー焼結による成形体の製造について先行技術に記載されている焼結粉末の短所である。焼結ウィンドウのサイズが縮小されると、選択的レーザー焼結による製造の際、成形体に頻繁に反りが生じることになるため、不利益である。この反りによって、成形体の使用またはさらなる加工処理は、事実上不可能になる。反りは、成形体の製造中でさえ、さらなる層の適用が不可能になり、したがって製造工程を中断しなければならないほど激しくなる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】US6,136,948
【文献】WO96/06881
【文献】WO2009/114715
【文献】WO2011/124278
【文献】EP1443073
【文献】US2015/0259530
【文献】US2014/0141166
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、先行技術に記載されている方法の前述の短所が、存在したとしてもより少ない程度でしかない、選択的レーザー焼結による成形体の製造方法を提供することである。本方法は、いたって単純であり、実施に費用がかからないものになっている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、焼結粉末(SP)の選択的レーザー焼結によって成形体を製造する方法であって、焼結粉末(SP)が、次の成分:
(A)-NH-(CH-NH-単位(式中、mは、4、5、6、7、または8である)、-CO-(CH-NH-単位(式中、nは、3、4、5、6、または7である)、および-CO-(CH-CO-単位(式中、oは、2、3、4、5、または6である)からなる群から選択される少なくとも1つの単位を含む少なくとも1種の半結晶性ポリアミドと、
(B)少なくとも1種のナイロン6I/6Tと、
(C)少なくとも1種のポリアリールエーテルと
を含み、成分(C)が、一般式(I)
【化1】
[式中、
t、qは、それぞれ独立に、0、1、2、または3であり、
Q、T、Yは、それぞれ独立に、化学結合、または-O-、-S-、-SO-、S=O、C=O、-N=N-、および-CR-から選択される基であり、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、またはC~C12-アルキル、C~C12-アルコキシ、もしくはC~C18-アリール基であり、Q、T、およびYの少なくとも1つは、-SO-であり、
Ar、Arは、それぞれ独立に、6~18個の炭素原子を有するアリーレン基である]
の単位を含むポリアリールエーテルである、方法によって実現される。
【0014】
本発明はまた、焼結粉末(SP)の選択的レーザー焼結によって成形体を製造する方法であって、焼結粉末(SP)が、次の成分:
(A)-NH-(CH-NH-単位(式中、mは、4、5、6、7、または8である)、-CO-(CH-NH-単位(式中、nは、3、4、5、6、または7である)、および-CO-(CH-CO-単位(式中、oは、2、3、4、5、または6である)からなる群から選択される少なくとも1つの単位を含む少なくとも1種の半結晶性ポリアミドと、
(B)少なくとも1種のナイロン6I/6Tと、
(C)少なくとも1種のポリアリールエーテルと
を含む方法を提供する。
【0015】
驚いたことに、本発明の方法において使用する焼結粉末(SP)は、本焼結粉末(SP)の選択的レーザー焼結によって製造された成形体において、反りが存在したとしても明確に軽減されるほど、焼結ウィンドウ(WSP‘)が広がっていることが見出された。その上、本発明に従って製造された成形体は、破断点伸びも高くなっている。加えて、本発明の方法において使用する焼結粉末(SP)の再利用性は、熱エージング後でさえ高い。これは、成形体を製造する際に溶融しない焼結粉末(SP)を減らすことができるということである。焼結粉末(SP)は、数回のレーザー焼結サイクルの後でさえ、初回の焼結サイクルと同様に有利な焼結特性を有する。
【0016】
さらに、本発明の焼結粉末(SP)の選択的レーザー焼結によって得られた成形体は、70℃、相対湿度62%で336時間貯蔵した後の吸湿量も、成分(A)と(B)の混合物の選択的レーザー焼結によって製造された成形体に比べてより少ない。結果として、本発明に従って製造された成形体の機械的性質も、特に、状態調節された状況において、成分(A)と(B)の混合物だけから製造された、状態調節された状況にある成形体に比べて改善される。
【0017】
さらに、本発明に従って使用される焼結粉末(SP)は、成分(A)と(B)の混合物より高いガラス転移温度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1に加熱運転(H)および冷却運転(C)を含むDSC線図を例として示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による方法について、以下でより詳細に説明する。
【0020】
選択的レーザー焼結
選択的レーザー焼結の方法は、たとえば、US6,136,948およびWO96/06881から、当業者にそれ自体が知られている。
【0021】
レーザー焼結では、焼結性粉末の第1の層が粉体床に配置され、短い間、レーザービームに局部的に曝露される。焼結性粉末の、レーザービームに曝露された部分だけが、選択的に溶融する(選択的レーザー焼結)。溶融した焼結性粉末は、癒着し、したがって、曝露された領域において均一な溶融物を形成する。その領域は、その後再び冷却し、均一な溶融物は、再凝固する。次いで、粉体床は、第1の層の層厚さだけ下げられ、焼結性粉末の第2の層が適用され、選択的にレーザー曝露および溶融を受ける。これによって、焼結性粉末の上部の第2の層が下部の第1の層とまず接合され、第2の層内の焼結性粉末の粒子も、溶融によって互いに接合される。粉体床を下げること、焼結性粉末の適用、および焼結性粉末の溶融を繰り返すことにより、三次元成形体を製造することが可能である。ある特定の場所のレーザービームへの選択的曝露により、たとえば空洞を有する成形体を製造することも可能になる。溶融していない焼結性粉末それ自体が支持体材料として働くため、追加の支持体材料は必要ない。
【0022】
当業者に知られ、レーザーへの曝露により溶融可能なすべての粉末が、選択的レーザー焼結における焼結性粉末として適する。本発明によれば、選択的レーザー焼結において使用する焼結性粉末は、焼結粉末(SP)である。
【0023】
したがって、本発明との関連において、用語「焼結性粉末」および「焼結粉末(SP)」は、同義語として使用される場合があり、その場合、これらの用語は、同じ意味を有する。
【0024】
選択的レーザー焼結に適するレーザーは、当業者に知られており、たとえば、ファイバレーザー、Nd:YAGレーザー(ネオジムでドープしたイットリウムアルミニウムガーネットレーザー)、および二酸化炭素レーザーがある。
【0025】
選択的レーザー焼結法において特に重要なのは、「焼結ウィンドウ(W)」と呼ばれる、焼結性粉末の溶融範囲である。焼結性粉末が本発明の焼結粉末(SP)であるとき、本発明との関連において、焼結ウィンドウ(W)を、焼結粉末(SP)の「焼結ウィンドウ(WSP)」と呼ぶ。焼結性粉末が、焼結粉末(SP)中に存在する成分(A)と(B)の混合物である場合、本発明との関連において、焼結ウィンドウ(W)を、成分(A)と(B)の混合物の「焼結ウィンドウ(WAB)」と呼ぶ。
【0026】
焼結性粉末の焼結ウィンドウ(W)は、たとえば、示差走査熱量測定、すなわちDSCによって求めることができる。
【0027】
示差走査熱量測定では、試料、すなわち、本事例では焼結性粉末の試料の温度、および基準物の温度を時間と共に線形に変化させる。この目的のために、試料および基準物に熱が供給され/これらから熱が移される。試料を基準物と同じ温度に保つのに必要な熱Qの量を求める。基準物に供給され/基準物から移される熱Qの量を、基準値とする。
【0028】
試料が吸熱相変態を経れば、試料を基準物と同じ温度に保つために追加の量の熱Qを供給する必要がある。発熱相変態が起これば、試料を基準物と同じ温度に保つために熱Qの量を移動させる必要がある。測定から、試料に供給され/試料から移される熱Qの量が温度Tに対してプロットされている、DSC線図が得られる。
【0029】
測定は通常、加熱運転(H)を冒頭に行うことを含み、すなわち、試料および基準物は、線形に加熱される。試料が溶融(固相/液相相変態)する間は、追加の量の熱Qを供給して、試料を基準物と同じ温度に保つ必要がある。次いで、DSC線図において、溶融ピークと呼ばれるピークが観察される。
【0030】
加熱運転(H)の後、通常は冷却運転(C)が測定される。これは、試料および基準物を線形に冷却することを含み、すなわち、試料および基準物から熱が移される。試料が結晶化/凝固(液相/固相変態)する間は、結晶化/凝固の過程で熱が放たれるため、より多い量の熱Qを移動させて、試料を基準物と同じ温度に保つ必要がある。次いで、冷却運転(C)のDSC線図において、溶融ピークと逆の方向に、結晶化ピークと呼ばれるピークが観察される。
【0031】
本発明においては、加熱運転の間の加熱は、通常は20K/分の加熱速度で実施される。冷却運転の間の冷却は、本発明においては、通常20K/分の冷却速度で実施される。
【0032】
加熱運転(H)および冷却運転(C)を含むDSC線図を、図1に例として示す。DSC線図を使用して、溶融開始温度(T 開始)および結晶化開始温度(T 開始)を求めることができる。
【0033】
溶融開始温度(T 開始)を求めるには、溶融ピークより低い温度の箇所において、加熱運転(H)のベースラインに対して接線を引く。溶融ピークの極大点の温度より低い温度の箇所において、溶融ピークの屈曲の最初の点に対して、第2の接線を引く。2本の接線を、これらが交わるまで外挿する。交点を温度軸まで垂直に外挿することで、溶融開始温度(T 開始)が示される。
【0034】
結晶化開始温度(T 開始)を求めるには、結晶化ピークより高い温度の箇所において、冷却運転(C)のベースラインに対して接線を引く。結晶化ピークの極小点の温度より高い温度の箇所において、結晶化ピークの屈曲の点に対して、第2の接線を引く。2本の接線を、これらが交わるまで外挿する。交点を温度軸まで垂直に外挿することで、結晶化開始温度(T 開始)が示される。
【0035】
焼結ウィンドウ(W)は、溶融開始温度(T 開始)と結晶化開始温度(T 開始)の差である。すなわち、
W=T 開始-T 開始
となる。
【0036】
本発明との関連において、用語「焼結ウィンドウ(W)」、「焼結ウィンドウ(W)のサイズ」、および「溶融開始温度(T 開始)と結晶化開始温度(T 開始)の差」は、同じ意味を有し、同義に使用される。
【0037】
焼結粉末(SP)の焼結ウィンドウ(WSP)の決定、および成分(A)と(B)の混合物の焼結ウィンドウ(WAB)の決定は、上述のとおりに実施される。そこで、焼結粉末(SP)の焼結ウィンドウ(WSP)の決定に使用される試料は、焼結粉末(SP)である。成分(A)と(B)の混合物の焼結ウィンドウ(WAB)は、焼結粉末(SP)中に存在する成分(A)と(B)の混合物(ブレンド)を試料として使用して決定される。
【0038】
焼結粉末(SP)
本発明によれば、焼結粉末(SP)は、成分(A)としての少なくとも1種の半結晶性ポリアミドと、成分(B)としての少なくとも1種のナイロン6I/6Tと、成分(C)としての少なくとも1種のポリアリールエーテルとを含む。
【0039】
本発明との関連において、用語「成分(A)」と「少なくとも1種の半結晶性ポリアミド」は、同義に使用され、したがって、同じ意味を有する。
【0040】
用語「成分(B)」と「少なくとも1種のナイロン6I/6T」、および用語「成分(C)」と「少なくとも1種のポリアリールエーテル」にも、同じことが当てはまる。これらの用語も、本発明との関連において、同様にそれぞれ同義に使用され、したがって、同じ意味を有する。
【0041】
焼結粉末(SP)は、成分(A)、(B)、および(C)を、所望のいずれかの量で含む場合がある。
【0042】
たとえば、焼結粉末は、各場合において成分(A)、(B)、および(C)の質量百分率の総計に対して、好ましくは、焼結粉末(SP)の総質量に対して、成分(A)を20質量%~90質量%の範囲で、成分(B)を5質量%~40質量%の範囲で、成分(C)を5質量%~40質量%の範囲で含む。
【0043】
好ましくは、焼結粉末(SP)は、各場合において成分(A)、(B)、および(C)の質量百分率の総計に対して、好ましくは、焼結粉末(SP)の総質量に対して、成分(A)を45質量%~80質量%の範囲で、成分(B)を10質量%~25質量%の範囲で、成分(C)を10質量%~30質量%の範囲で含む。
【0044】
より好ましくは、焼結粉末は、各場合において成分(A)、(B)、および(C)の質量百分率の総計に対して、好ましくは、焼結粉末(SP)の総質量に対して、成分(A)を53質量%~73質量%の範囲で、成分(B)を12質量%~22質量%の範囲で、成分(C)を15質量%~25質量%の範囲で含む。
【0045】
したがって、本発明は、焼結粉末(SP)が、各場合において成分(A)、(B)、および(C)の質量百分率の総計に対して、成分(A)を20質量%~90質量%の範囲で、成分(B)を5質量%~40質量%の範囲で、成分(C)を5質量%~40質量%の範囲で含む方法も提供する。
【0046】
焼結粉末(SP)は、成核防止剤(antinucleating agent)、安定剤、末端基官能化剤(end group functionalizers)、および染料からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む場合もある。
【0047】
したがって、本発明は、焼結粉末(SP)が、成核防止剤、安定剤、末端基官能化剤、および染料からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む方法も提供する。
【0048】
適切な成核防止剤の一例は、塩化リチウムである。適切な安定剤は、たとえば、フェノール類、ホスフィット、および銅安定剤である。適切な末端基官能化剤は、たとえば、テレフタル酸、アジピン酸、およびプロピオン酸である。好ましい染料は、たとえば、カーボンブラック、ニュートラルレッド、無機黒色染料、および有機黒色染料からなる群から選択される。
【0049】
少なくとも1種の添加剤は、安定剤および染料からなる群から選択されることがより好ましい。
【0050】
フェノール類は、安定剤として特に好ましい。
【0051】
したがって、少なくとも1種の添加剤は、フェノール類、カーボンブラック、無機黒色染料、および有機黒色染料からなる群から選択されることが特に好ましい。
【0052】
カーボンブラックは、当業者に知られており、たとえば、EvonikからSpezialschwarz4という商品名で、EvonikからPrintex Uという商品名で、EvonikからPrintex140という商品名で、EvonikからSpezialschwarz350という商品名で、またはEvonikからSpezialschwarz100という商品名で入手可能である。
【0053】
好ましい無機黒色染料は、たとえば、BASF SEからSicopal Black K0090という商品名で、またはBASF SEからSicopal Black K0095という商品名で入手可能である。
【0054】
好ましい有機黒色染料の一例は、ニグロシンである。
【0055】
焼結粉末(SP)は、たとえば、少なくとも1種の添加剤を、各場合において焼結粉末(SP)の総質量に対して、0.1質量%~10質量%の範囲で、好ましくは、0.2質量%~5質量%の範囲で、特に好ましくは、0.3質量%~2.5質量%の範囲で含む場合がある。
【0056】
成分(A)、(B)、(C)、および任意に、少なくとも1種の添加剤の質量百分率の総計は、通常、合計100質量パーセントとなる。
【0057】
焼結粉末(SP)は、粒子を含む。そうした粒子は、たとえば、10~250μmの範囲、好ましくは15~200μmの範囲、より好ましくは20~120μmの範囲、特に好ましくは20~110μmの範囲の大きさを有する。
【0058】
本発明の焼結粉末(SP)は、たとえば、
10~30μmの範囲のD10、
25~70μmの範囲のD50、および
50~150μmの範囲のD90
を有する。
【0059】
本発明の焼結粉末(SP)は、
20~30μmの範囲のD10、
40~60μmの範囲のD50、および
80~110μmの範囲のD90
を有することが好ましい。
【0060】
したがって、本発明は、焼結粉末(SP)が、
10~30μmの範囲のD10、
25~70μmの範囲のD50、および
50~150μmの範囲のD90
を有する方法も提供する。
【0061】
本発明との関連において、「D10」は、粒子の総体積に対して10体積%の粒子がD10より小さいかまたはこれと同等であり、粒子の総体積に対して90体積%の粒子がD10より大きい粒径を意味すると理解される。類推によって、「D50」は、粒子の総体積に対して50体積%の粒子がD50より小さいかまたはこれと同等であり、粒子の総体積に対して50体積%の粒子がD50より大きい粒径を意味すると理解される。これに対応して、「D90」は、粒子の総体積に対して90体積%の粒子がD90より小さいかまたはこれと同等であり、粒子の総体積に対して10体積%の粒子がD90より大きい粒径を意味すると理解される。
【0062】
粒径を求めるには、焼結粉末(SP)を、圧縮空気を使用して乾燥状態で浮遊させるか、または溶媒、たとえば水やエタノールに懸濁させ、この浮遊物または懸濁液を分析する。D10、D50、およびD90値は、Malvern Master Sizer 3000を使用してレーザー回折によって求められる。評価は、フラウンホーファーの回折による。
【0063】
焼結粉末(SP)は、通常、180~270℃の範囲の溶融温度(T)を有する。焼結粉末(SP)の溶融温度(T)は、185~260℃の範囲、特に好ましくは190~245℃の範囲であることが好ましい。
【0064】
したがって、本発明は、焼結粉末(SP)が、180~270℃の範囲の溶融温度(T)を有する方法も提供する。
【0065】
溶融温度(T)は、本発明においては、示差走査熱量測定(DSC)によって求められる。上述のとおり、加熱運転(H)および冷却運転(C)を測定することが通例である。これにより、図1に例として示すとおりのDSC線図が得られる。そこで、溶融温度(T)は、DSC線図の加熱運転(H)の溶融ピークが極大を示す温度を意味すると理解される。すなわち、溶融温度(T)は、溶融開始温度(T 開始)とは異なる。通常、溶融温度(T)は、溶融開始温度(T 開始)より高い。
【0066】
焼結粉末(SP)はまた、通常、120~190℃の範囲の結晶化温度(T)を有する。焼結粉末(SP)の結晶化温度(T)は、130~180℃の範囲、特に好ましくは140~180℃の範囲であることが好ましい。
【0067】
したがって、本発明は、焼結粉末(SP)が、120~190℃の範囲の結晶化温度(T)を有する方法も提供する。
【0068】
結晶化温度(T)は、本発明においては、示差走査熱量測定(DSC)によって求められる。上述のとおり、これは通例、加熱運転(H)および冷却運転(C)を測定するものである。これにより、図1に例として示すとおりのDSC線図が得られる。そこで、結晶化温度(T)は、DSC曲線の結晶化ピークの極小点の温度である。すなわち、結晶化温度(T)は、結晶化開始温度(T 開始)とは異なる。結晶化温度(T)は通常、結晶化開始温度(T 開始)より低い。
【0069】
焼結粉末(SP)はまた、通常、ガラス転移温度(T)を有する。焼結粉末(SP)のガラス転移温度(T)は、たとえば、20~150℃の範囲、好ましくは50~100℃の範囲、特に好ましくは70~80℃の範囲である。
【0070】
焼結粉末(SP)のガラス転移温度(T)は、示差走査熱量測定によって求められる。求めるには、本発明によれば、焼結粉末(SP)の試料(出発質量約8.5g)について、まずは第1の加熱運転(H1)、次いで冷却運転(C)、引き続いて第2の加熱運転(H2)を測定する。第1の加熱運転(H1)および第2の加熱運転(H2)における加熱速度は、20K/分であり、冷却運転(C)における冷却速度も、同様に20K/分である。DSC線図において、焼結粉末(SP)のガラス転移の領域には、第2の加熱運転(H2)の際に段が得られる。焼結粉末(SP)のガラス転移温度(T)は、DSC線図における段の高さの半分の箇所の温度に相当する。ガラス転移温度を求めるこの過程は、当業者に知られている。
【0071】
焼結粉末(SP)はまた、通常、焼結ウィンドウ(WSP)を有する。焼結ウィンドウ(WSP)は、上述のとおり、溶融開始温度(T 開始)と結晶化開始温度(T 開始)の差である。溶融開始温度(T 開始)および結晶化開始温度(T 開始)は、上述のとおりに求められる。
【0072】
焼結粉末(SP)の焼結ウィンドウ(WSP)は、好ましくは18~45K(ケルビン)の範囲、より好ましくは21~40Kの範囲、特に好ましくは21~35Kの範囲である。
【0073】
したがって、本発明は、焼結粉末(SP)が、焼結ウィンドウ(WSP)を有し、焼結ウィンドウ(WSP)が、溶融開始温度(T 開始)と結晶化開始温度(T 開始)の差であり、焼結ウィンドウ(WSP)が、18~45Kの範囲である、方法も提供する。
【0074】
焼結粉末(SP)は、当業者に知られているいずれかの方法によって製造することができる。焼結粉末(SP)は、成分(A)、(B)、(C)、および任意に、少なくとも1種の添加剤を粉砕することにより製造されるのが好ましい。
【0075】
粉砕による焼結粉末(SP)の製造は、当業者に知られているいずれかの方法によって行うことができる。たとえば、成分(A)、(B)、(C)、および任意に、少なくとも1種の添加剤を、ミルに導入し、その中で粉砕する。
【0076】
適切なミルには、当業者に知られているすべてのミル、たとえば、分級ミル、対向ジェットミル、ハンマーミル、ボールミル、振動ミル、またはローターミルが含まれる。
【0077】
ミルにおける粉砕も、同様に、当業者に知られているいずれかの方法によって実施することができる。たとえば、粉砕は、不活性ガス中で、および/または液体窒素で冷却しながら行われる場合がある。液体窒素での冷却が好ましい。
【0078】
粉砕温度は、望みどおりである。粉砕は、液体窒素の温度、たとえば、-210~-195℃の範囲の温度で実施することが好ましい。
【0079】
したがって、本発明は、成分(A)、(B)、および(C)を-210~-195℃の範囲の温度で粉砕することにより焼結粉末(SP)を製造する方法も提供する。
【0080】
成分(A)、成分(B)、成分(C)、および任意に、少なくとも1種の添加剤は、当業者に知られているいずれかの方法によってミルに導入することができる。たとえば、成分(A)、成分(B)、成分(C)、および任意に、少なくとも1種の添加剤は、ミルに別々に導入され、その中で粉砕される、したがって、相互に混合される場合がある。また、本発明によれば、成分(A)、成分(B)、成分(C)、および任意に、少なくとも1種の添加剤を、相互に配合し、次いでミルに導入することも可能であり、好ましい。
【0081】
配合する方法は、当業者にそれ自体として知られている。たとえば、成分(A)、成分(B)、成分(C)、および任意に、少なくとも1種の添加剤を、押出機において配合し、次いで、そこから押し出し、ミルに導入することができる。
【0082】
成分(A)
成分(A)は、少なくとも1種の半結晶性ポリアミドである。
【0083】
本発明によれば、「少なくとも1種の半結晶性ポリアミド」とは、厳密に1種の半結晶性ポリアミド、または2種以上の半結晶性ポリアミドの混合物のいずれかを意味する。
【0084】
本発明との関連において、「半結晶性」とは、ポリアミドが、各場合においてISO11357-4:2014に従って示差走査熱量測定(DSC)によって測定した融解エンタルピーΔH2(A)が、45J/gより大きい、好ましくは50J/gより大きい、特に好ましくは55J/gより大きいことを意味する。
【0085】
本発明の成分(A)はまた、各場合においてISO11357-4:2014に従って示差走査熱量測定(DSC)によって測定した融解エンタルピーΔH2(A)が、200J/g未満、より好ましくは150J/g未満、特に好ましくは100J/g未満であることが好ましい。
【0086】
本発明によれば、成分(A)は、-NH-(CH-NH-単位(式中、mは、4、5、6、7、または8である)、-CO-(CH-NH-単位(式中、nは、3、4、5、6、または7である)、および-CO-(CH-CO-単位(式中、oは、2、3、4、5、または6である)からなる群から選択される少なくとも1つの単位を含む。
【0087】
好ましくは、成分(A)は、-NH-(CH-NH-単位(式中、mは、5、6、または7である)、-CO-(CH-NH-単位(式中、nは、4、5、または6である)、および-CO-(CH-CO-単位(式中、oは、3、4、または5である)からなる群から選択される少なくとも1つの単位を含む。
【0088】
特に好ましくは、成分(A)は、-NH-(CH-NH-単位、-CO-(CH-NH-単位、および-CO-(CH-CO-単位からなる群から選択される少なくとも1つの単位を含む。
【0089】
成分(A)が、-CO-(CH-NH-単位からなる群から選択される少なくとも1つの単位を含む場合、そうした単位は、5~9個の環員を有するラクタム、好ましくは、6~8個の環員を有するラクタム、特に好ましくは、7個の環員を有するラクタム由来である。
【0090】
ラクタムは、当業者に知られている。ラクタムは、本発明によれば、一般には、環式アミドを意味すると理解される。本発明によれば、ラクタムは、環中に4~8個の炭素原子、好ましくは5~7個の炭素原子、特に好ましくは6個の炭素原子を有する。
【0091】
たとえば、ラクタムは、ブチロ-4-ラクタム(γ-ラクタム、γ-ブチロラクタム)、2-ピペリジノン(δ-ラクタム、δ-バレロラクタム)、ヘキサノ-6-ラクタム(ε-ラクタム、ε-カプロラクタム)、ヘプタノ-7-ラクタム(ζ-ラクタム、ζ-ヘプタノラクタム)、およびオクタノ-8-ラクタム(η-ラクタム、η-オクタノラクタム)からなる群から選択される。
【0092】
好ましくは、ラクタムは、2-ピペリジノン(δ-ラクタム、δ-バレロラクタム)、ヘキサノ-6-ラクタム(ε-ラクタム、ε-カプロラクタム)、およびヘプタノ-7-ラクタム(ζ-ラクタム、ζ-ヘプタノラクタム)からなる群から選択される。特に好ましいのは、ε-カプロラクタムである。
【0093】
成分(A)が、-NH-(CH-NH-単位からなる群から選択される少なくとも1つの単位を含む場合、そうした単位は、ジアミン由来である。したがって、その場合、成分(A)は、ジアミンを反応させる、好ましくは、ジアミンをジカルボン酸と反応させることにより得られる。
【0094】
適切なジアミンは、4~8個の炭素原子、好ましくは5~7個の炭素原子、特に好ましくは6個の炭素原子を含む。
【0095】
この種のジアミンは、たとえば、1,4-ジアミノブタン(ブタン-1,4-ジアミン、テトラメチレンジアミン、プトレシン)、1,5-ジアミノペンタン(ペンタメチレンジアミン、ペンタン-1,5-ジアミン、カダベリン)、1,6-ジアミノヘキサン(ヘキサメチレンジアミン、ヘキサン-1,6-ジアミン)、1,7-ジアミノヘプタン、および1,8-ジアミノオクタンからなる群から選択される。1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、および1,7-ジアミノヘプタンからなる群から選択されるジアミンが好ましい。1,6-ジアミノヘキサンが特に好ましい。
【0096】
成分(A)が、-CO-(CH-CO-単位からなる群から選択される少なくとも1つの単位を含む場合、そうした単位は通常、ジカルボン酸由来である。したがって、その場合、成分(A)は、ジカルボン酸を反応させる、好ましくは、ジカルボン酸をジアミンと反応させることにより得た。
【0097】
この場合、ジカルボン酸は、4~8個の炭素原子、好ましくは5~7個の炭素原子、特に好ましくは6個の炭素原子を含む。
【0098】
そうしたジカルボン酸は、たとえば、ブタンニ酸(コハク酸)、ペンタン二酸(グルタル酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、ヘプタン二酸(ピメリン酸)、およびオクタン二酸(スベリン酸)からなる群から選択される。好ましくは、ジカルボン酸は、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、およびヘプタン二酸からなる群から選択され、ヘキサン二酸が特に好ましい。
【0099】
成分(A)は、これ以外の単位をさらに含む場合もある。たとえば、カプリロラクタムおよび/またはラウロラクタムなどの、10~13個の環員を有するラクタム由来の単位。
【0100】
加えて、成分(A)は、9~36個の炭素原子、好ましくは9~12個の炭素原子、より好ましくは9~10個の炭素原子を有するジカルボン酸アルカン(脂肪族ジカルボン酸)から導かれる単位を含む場合もある。芳香族ジカルボン酸も適する。
【0101】
ジカルボン酸の例としては、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸に加え、テレフタル酸および/またはイソフタル酸が挙げられる。
【0102】
成分(A)は、たとえば、m-キシリレンジアミン、ジ(4-アミノフェニル)メタン、ジ(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)プロパンおよび2,2-ジ(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、および/または1,5-ジアミノ-2-メチルペンタンから導かれる単位を含むことも可能である。
【0103】
以下の非網羅的な一覧は、本発明の焼結粉末(SP)中に使用するのに好ましい成分(A)および存在するモノマーを含む。
【0104】
ABポリマー:
PA4 ピロリドン
PA6 ε-カプロラクタム
PA7 エナントラクタム
PA8 カプリロラクタム
【0105】
AA/BBポリマー:
PA46 テトラメチレンジアミン、アジピン酸
PA66 ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸
PA69 ヘキサメチレンジアミン、アゼライン酸
PA610 ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸
PA612 ヘキサメチレンジアミン、デカンジカルボン酸
PA613 ヘキサメチレンジアミン、ウンデカンジカルボン酸
PA6T ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PAMXD6 m-キシリレンジアミン、アジピン酸
PA6/6I (PA6を参照されたい)、ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸
PA6/6T (PA6およびPA6Tを参照されたい)
PA6/66 (PA6およびPA66を参照されたい)
PA6/12 (PA6を参照されたい)、ラウリロラクタム
PA66/6/610 (PA66、PA6、およびPA610を参照されたい)
PA6I/6T/PACM PA6I/6Tおよびジアミノジシクロヘキシルメタンとして
PA6/6I6T (PA6およびPA6Tを参照されたい)、ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸
【0106】
したがって、成分(A)は、PA6、PA6.6、PA6.10、PA6.12、PA6.36、PA6/6.6、PA6/6I6T、PA6/6T、およびPA6/6Iからなる群から選択されることが好ましい。
【0107】
特に好ましくは、成分(A)は、PA6、PA6.10、PA6.6/6、PA6/6T、およびPA6.6からなる群から選択される。より好ましくは、成分(A)は、PA6およびPA6/6.6からなる群から選択される。最も好ましくは、成分(A)は、PA6である。
【0108】
したがって、本発明は、成分(A)が、PA6、PA6.6、PA6.10、PA6.12、PA6.36、PA6/6.6、PA6/6I6T、PA6/6T、およびPA6/6Iからなる群から選択される方法も提供する。
【0109】
成分(A)は、一般に、70~350mL/g、好ましくは70~240mL/gの粘度数を有する。本発明によれば、粘度数は、ISO307に従って、成分(A)の0.5質量%溶液から、25℃の96質量%硫酸中で求められる。
【0110】
成分(A)は、500~2000000g/molの範囲、より好ましくは5000~500000g/molの範囲、特に好ましくは10000~100000g/molの範囲の重量平均分子量(M)を有することが好ましい。重量平均分子量(M)は、ASTM D4001に従って求められる。
【0111】
成分(A)は通常、溶融温度(T)を有する。成分(A)の溶融温度(T)は、たとえば、70~300℃の範囲、好ましくは220~295℃の範囲である。成分(A)の溶融温度(T)は、示差走査熱量測定によって、焼結粉末(SP)の溶融温度(T)について上述のとおりに求められる。
【0112】
成分(A)は通常、ガラス転移温度(T)も有する。成分(A)のガラス転移温度(T)は、たとえば、0~110℃の範囲、好ましくは40~105℃の範囲である。
【0113】
成分(A)のガラス転移温度(T)は、示差走査熱量測定によって求められる。求めるには、本発明によれば、成分(A)の試料(出発質量約8.5g)について、まずは第1の加熱運転(H1)、次いで冷却運転(C)、引き続いて第2の加熱運転(H2)を測定する。第1の加熱運転(H1)および第2の加熱運転(H2)における加熱速度は、20K/分であり、冷却運転(C)における冷却速度も、同様に20K/分である。DSC線図において、成分(A)のガラス転移の領域には、第2の加熱運転(H2)の際に段が得られる。成分(A)のガラス転移温度(T)は、DSC線図における段の高さの半分の箇所の温度に相当する。ガラス転移温度を求めるこの過程は、当業者に知られている。
【0114】
成分(B)
本発明によれば、成分(B)は、少なくとも1種のナイロン6I/6Tである。
【0115】
本発明との関連において、「少なくとも1種のナイロン6I/6T」とは、厳密に1種のナイロン6I/6T、または2種以上のナイロン6I/6Tの混合物のいずれかを意味する。
【0116】
ナイロン6I/6Tは、ナイロン6Iとナイロン6Tのコポリマーである。
【0117】
成分(B)は、ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸、およびイソフタル酸から導かれる単位からなることが好ましい。
【0118】
言い換えれば、成分(B)は、すなわち、ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸、およびイソフタル酸から出発して製造されたコポリマーであることが好ましい。
【0119】
成分(B)は、ランダムコポリマーであることが好ましい。
【0120】
成分(B)として使用される少なくとも1種のナイロン6I/6Tは、所望のいずれの割合の6I単位と6T単位を含んでもよい。6I単位対6T単位のモル比は、1:1~3:1の範囲、より好ましくは、1.5:1~2.5:1の範囲、特に好ましくは、1.8:1~2.3:1の範囲であることが好ましい。
【0121】
成分(B)は、非晶質のコポリアミドである。
【0122】
本発明との関連において、「非晶質」とは、純粋な成分(B)が、ISO11357に従って測定した示差走査熱量測定(DSC)において融点をもたないことを意味する。
【0123】
成分(B)は、ガラス転移温度(T)を有する。成分(B)のガラス転移温度(T)は、通常、100~150℃の範囲、好ましくは115~135℃の範囲、特に好ましくは120~130℃の範囲である。成分(B)のガラス転移温度(T)は、示差走査熱量測定(dynamic scanning calorimetry)によって、成分(A)のガラス転移温度(T)の決定について上述のとおりに求められる。
【0124】
MVR(275℃/5kg)(メルトボリュームフローレート)は、好ましくは、50mL/10分~150mL/10分の範囲、より好ましくは、95mL/10分~105mL/10分の範囲である。
【0125】
成分(B)のゼロせん断速度粘度ηは、たとえば、770~3250Pasの範囲である。ゼロせん断速度粘度ηは、TA Instrumentsの「DHR-1」回転粘度計、ならびに直径25mmおよびプレート間隙1mmのプレート-プレート配置を用いて求められる。成分(B)の平衡化していない試料を、減圧下にて80℃で7日間乾燥させ、次いでこれを、角周波数範囲を500~0.5rad/sとする時間依存的な周波数掃引(シーケンステスト)を用いて分析する。次のさらなる分析パラメーターを使用する。すなわち、変形:1.0%、分析温度:240℃、分析時間:20分、試料準備後の予熱時間:1.5分。
【0126】
成分(B)は、好ましくは30~45mmol/kgの範囲、特に好ましくは35~42mmol/kgの範囲のアミノ末端基濃度(AEG)を有する。
【0127】
アミノ末端基濃度(AEG)を求めるには、1gの成分(B)を30mLのフェノール/メタノール混合物(フェノール:メタノールの体積比75:25)に溶解させ、次いで、0.2N塩酸水溶液を用いた電位差滴定に供する。
【0128】
成分(B)は、好ましくは60~155mmol/kgの範囲、特に好ましくは80~135mmol/kgの範囲のカルボキシル末端基濃度(CEG)を有する。
【0129】
カルボキシル末端基濃度(CEG)を求めるには、1gの成分(B)を30mLのベンジルアルコールに溶解させる。この後、0.05N水酸化カリウム水溶液を用いて120℃で目視滴定を行う。
【0130】
成分(C)
本発明によれば、成分(C)は、少なくとも1種のポリアリールエーテルを含む。
【0131】
本発明との関連において、「少なくとも1種のポリアリールエーテル」とは、厳密に1種のポリアリールエーテル、または2種以上のポリアリールエーテルの混合物のいずれかを意味する。
【0132】
ポリアリールエーテルは、ポリマー類として当業者に知られている。
【0133】
本発明に従って好まれるポリアリールエーテルは、一般式(I):
【化2】
[式中、記号t、q、Q、T、Y、Ar、およびArは、次のとおりに定義される:
t、qは、それぞれ独立に、0、1、2、または3であり、
Q、T、Yは、それぞれ独立に、化学結合、または-O-、-S-、-SO-、S=O、C=O、-N=N-、および-CR-から選択される基であり、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、またはC~C12-アルキル、C~C12-アルコキシ、もしくはC~C18-アリール基であり、Q、T、およびYの少なくとも1つは、-SO-であり、
Ar、Arは、それぞれ独立に、6~18個の炭素原子を有するアリーレン基である]
の単位を含む。
【0134】
したがって、本発明は、成分(C)が、一般式(I):
【化3】
[式中、
t、qは、それぞれ独立に、0、1、2、または3であり、
Q、T、Yは、それぞれ独立に、化学結合、または-O-、-S-、-SO-、S=O、C=O、-N=N-、および-CR-から選択される基であり、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、またはC~C12-アルキル、C~C12-アルコキシ、もしくはC~C18-アリール基であり、Q、T、およびYの少なくとも1つは、-SO-であり、
Ar、Arは、それぞれ独立に、6~18個の炭素原子を有するアリーレン基である]
の単位を含むポリアリールエーテルである、方法も提供する。
【0135】
上述の条件下で、Q、T、またはYが化学結合である場合、これにより、左側の近接した基と右側の近接した基が、化学結合を介して互いに直接接合されることになると理解される。
【0136】
しかし、式(I)におけるQ、T、およびYは、-O-および-SO-から独立に選択され、但し、Q、T、およびYからなる群の少なくとも1つは、-SO-であることが好ましい。こうしたポリアリールエーテルは、ポリアリールエーテルスルホンである。
【0137】
したがって、本発明は、成分(C)がポリアリールエーテルスルホンである方法も提供する。
【0138】
Q、T、またはYが、-CR-である場合、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、またはC~C12-アルキル、C~C12-アルコキシ、もしくはC~C18-アリール基である。
【0139】
好ましいC~C12-アルキル基は、1~12個の炭素原子を有する線状および分岐状の飽和アルキル基を含む。特に言及しておくべき基は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、2-または3-メチルペンチルなどのC~C-アルキル基、非分岐状ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ラウリルなどのより長鎖の基、およびその単分岐または多分岐類似体である。
【0140】
前述の使用可能なC~C12-アルコキシ基において有用なアルキル基には、1~12個の炭素原子を有する、これより上で定義したアルキル基が含まれる。好ましく使用可能なシクロアルキル基には、特に、C~C12-シクロアルキル基、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロプロピルメチル、シクロプロピルエチル、シクロプロピルプロピル、シクロブチルメチル、シクロブチルエチル、シクロペンチルエチル、-プロピル、-ブチル、-ペンチル、-ヘキシル、シクロヘキシルメチル、-ジメチル、および-トリメチルが含まれる。
【0141】
ArおよびArは、独立に、C~C18-アリーレン基である。Arは、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシナフタレン、特に2,7-ジヒドロキシナフタレン、および4,4’-ビスフェノールからなる群から選択されることが好ましい、緩やかな求電子攻撃を受けやすい、電子の豊富な芳香族物質から導かれることが好ましい。Arは、非置換C-またはC12-アリーレン基であることが好ましい。
【0142】
有用なC~C18-アリーレン基ArおよびArには、特に、フェニレン基、たとえば、1,2-、1,3-、および1,4-フェニレン、ナフチレン基、たとえば、1,6-、1,7-、2,6-、および2,7-ナフチレン、ならびにアントラセン、フェナントレン、およびナフタセンから導かれるアリーレン基が含まれる。
【0143】
式(I)の好ましい実施形態におけるArおよびArは、それぞれ独立に、1,4-フェニレン、1,3-フェニレン、ナフチレン、特に2,7-ジヒドロキシナフチレン、および4,4’-ビスフェニレンからなる群から選択されることが好ましい。
【0144】
好ましいポリアリールエーテルは、繰返し構造単位として、次の単位Ia~Ioの少なくとも1種を含むものである。
【0145】
【化4】
【0146】
好ましい単位Ia~Ioに加えて、1つまたは複数の、ヒドロキノンを起源とする1,4-フェニレン単位が、レゾルシノールを起源とする1,3-フェニレン単位またはジヒドロキシナフタレンを起源とするナフチレン単位で置き換えられている単位も好ましい。
【0147】
特に好ましい一般式(I)の単位は、単位Ia、Ig、およびIkである。成分(C)が、一般式(I)の単位1種類、特に、Ia、Ig、およびIkから選択される単位からなっている場合も、特に好ましい。
【0148】
特に好ましい実施形態では、Ar=1,4-フェニレン、t=1、q=0であり、Tは、化学結合であり、Y=SOである。前述の繰返し単位からできる特に好ましいポリアリールエーテルスルホンは、ポリフェニレンスルホン(PPSU)(式Ig)と呼ばれる。
【0149】
別の特に好ましい実施形態では、Ar=1,4-フェニレン、t=1、q=0、T=C(CH、およびY=SOである。前述の繰返し単位からできる特に好ましいポリアリールエーテルスルホンは、ポリスルホン(PSU)(式Ia)と呼ばれる。
【0150】
別の特に好ましい実施形態では、Ar=1,4-フェニレン、t=1、q=0、T=Y=SOである。前述の繰返し単位からできる特に好ましいポリアリールエーテルスルホンは、ポリエーテルスルホン(PESU)(式Ik)と呼ばれる。
【0151】
したがって、成分(C)は、PSU、PESU、およびPPSUからなる群から選択されることが好ましい。
【0152】
したがって、本発明は、成分(C)が、PSU、PESU、およびPPSUからなる群から選択される方法も提供する。
【0153】
本発明との関連において、PPSU、PSU、PESUなどの略語は、DIN EN ISO1043-1と一致する(プラスチック-記号および略語-第1部:基本ポリマーおよびその特性(ISO1043-1:2001)、ドイツ語版EN ISO1043-1:2002)。
【0154】
成分(C)は、ジメチルアセトアミド溶媒中でのゲル浸透クロマトグラフィーによって、標準物質としての狭分布ポリメチルメタクリレートに対して求めた質量平均分子量Mが、10000~150000g/mol、特に15000~120000g/mol、より好ましくは18000~100000g/molであることが好ましい。
【0155】
成分(C)は、ジメチルアセトアミド溶媒中でのゲル浸透クロマトグラフィーによって、標準物質としての狭分布ポリメチルメタクリレートに対して求めた数平均分子量Mが、10000~35000g/molであることが好ましい。
【0156】
多分散性は、好ましくは1.9~7.5、より好ましくは2.1~4である。
【0157】
加えて、ニート形態の成分(C)は、350℃/1150s-1での見かけの溶融粘度が、100~1000Pa・s、好ましくは150~300Pa・s、特に好ましくは150~275Pa・sであることが好ましい。
【0158】
溶融粘度は、キャピラリーレオメーターによって求められる。見かけの粘度は、細管粘度計(Goettfert Rheograph 2003細管粘度計)において、長さ30mmの円形細管を用い、半径を0.5mmとし、ノズル入口角を180°とし、溶融物溜め容器の直径を12mmとし、予熱時間を5分として、せん断速度に応じて、350℃で求められる。報告する値は、1150s-1で求めたものである。
【0159】
上述のとおりの示差走査熱量測定(DSC)によって求められる、ポリアリールエーテルのガラス転移温度Tは、通常、160~270℃の範囲、好ましくは170~250℃の範囲、特に好ましくは180~230℃の範囲である。
【0160】
ガラス転移温度Tは、冷却の過程で成分(C)が凝固してガラス状固体が得られる温度を意味すると理解される。
【0161】
本発明のポリアリールエーテルは、通常は非晶質である。本発明との関連における「非晶質」とは、ポリアリールエーテルが溶融温度Tをもたないことを意味する。そうしたポリアリールエーテルは、ガラス転移温度Tだけを有する。ガラス転移温度Tにおいて、ポリアリールエーテルは、固体状態から溶融状態に変化する。
【0162】
したがって、本発明は、成分(C)が非晶質である方法も提供する。
【0163】
成形体
本発明によれば、これより上に記載した選択的レーザー焼結の方法によって、成形体が得られる。選択的曝露においてレーザーによって溶融した焼結粉末(SP)は、曝露後に再凝固し、そうして本発明の成形体を形成する。成形体は、溶融した焼結粉末(SP)が凝固した直後に、粉体床から取り出すことができる。同様に、まず成形体を冷却し、そこで初めて成形体を粉体床から取り出すことも可能である。付着している、まだ溶融していない焼結粉末(SP)の粒子は、既知の方法によって、表面から機械的に除去することができる。成形体の表面処理の方法には、たとえば、振動粉砕またはバレル研磨に加え、サンドブラスチング、ガラスビードブラスチング、またはマイクロビードブラスチングが含まれる。
【0164】
得られた成形体は、たとえば表面を処理するために、さらなる加工処理に供することも可能である。
【0165】
本発明の成形体は、たとえば、各場合において成形体の総質量に対して、成分(A)を20質量%~90質量%の範囲で、成分(B)を5質量%~40質量%の範囲で、成分(C)を5質量%~40質量%の範囲で含む。
【0166】
成形体は、好ましくは、各場合において成形体の総質量に対して、成分(A)を45質量%~80質量%の範囲で、成分(B)を10質量%~25質量%の範囲で、成分(C)を10質量%~30質量%の範囲で含む。
【0167】
成形体は、より好ましくは、各場合において成形体の総質量に対して、成分(A)を53質量%~73質量%の範囲で、成分(B)を12質量%~22質量%の範囲で、成分(C)を15質量%~25質量%の範囲で含む。
【0168】
本発明によれば、成分(A)は、焼結粉末(SP)中に存在していた成分(A)である。成分(B)も同様に、焼結粉末(SP)中に存在していた成分(B)であり、成分(C)も同様に焼結粉末(SP)中に存在していた成分(C)である。
【0169】
焼結粉末(SP)が少なくとも1種の添加剤を含んでいた場合、本発明に従って得られた成形体も、少なくとも1種の添加剤を含む。
【0170】
レーザーへの焼結粉末(SP)の曝露の結果として、成分(A)、成分(B)、成分(C)、および任意に、少なくとも1種の添加剤が化学反応に入り、結果として変化しかねないことは、当業者に明白となる。この種の反応は、当業者に知られている。
【0171】
成分(A)、成分(B)、成分(C)、および任意に、少なくとも1種の添加剤は、レーザーへの焼結粉末(SP)の曝露の結果としていかなる化学反応にも入らず、その代わりとして、ただ焼結粉末(SP)が溶融するに過ぎないことが好ましい。
【0172】
したがって、本発明は、本発明の方法によって得ることができる成形体も提供する。
【0173】
本発明の焼結粉末(SP)中に少なくとも1種のポリアリールエーテルを使用することで、焼結粉末(SP)の焼結ウィンドウ(WSP)は、成分(A)と(B)の混合物の焼結ウィンドウ(WAB)に比べて広くなる。
【0174】
したがって、本発明は、次の成分:
(A)-NH-(CH-NH-単位(式中、mは、4、5、6、7、または8である)、-CO-(CH-NH-単位(式中、nは、3、4、5、6、または7である)、および-CO-(CH-CO-単位(式中、oは、2、3、4、5、または6である)からなる群から選択される少なくとも1つの単位を含む少なくとも1種の半結晶性ポリアミド、
(B)少なくとも1種のナイロン6I/6T、
(C)少なくとも1種のポリアリールエーテル
を含む焼結粉末(SP)において少なくとも1種のポリアリールエーテルを、成分(A)と(B)の混合物の焼結ウィンドウ(WAB)に比べて焼結粉末(SP)の焼結ウィンドウ(WSP)を広くするために使用する方法であって、各場合における焼結ウィンドウ(WSP、WAB)が溶融開始温度(T 開始)と結晶化開始温度(T 開始)の差である、方法も提供する。
【0175】
たとえば、成分(A)と(B)の混合物の焼結ウィンドウ(WAB)は、15~40K(ケルビン)の範囲、より好ましくは20~35Kの範囲、特に好ましくは20~33Kの範囲である。
【0176】
焼結粉末(SP)ブレンドの焼結ウィンドウ(WSP)は、成分(A)と(B)の混合物の焼結ウィンドウ(WAB)と比較して、たとえば、1~8K、好ましくは1~5K、特に好ましくは1~3K広くなる。
【0177】
焼結粉末(SP)の焼結ウィンドウ(WSP)が、焼結粉末(SP)中に存在する成分(A)と(B)の混合物の焼結ウィンドウ(WAB)より広いことは明白となる。
【0178】
以下で、本発明について、実施例によって、それに限定することなく、詳細に説明する。
【実施例
【0179】
以下の成分を使用する。
- 半結晶性ポリアミド(成分(A)):
(P1)ナイロン6(Ultramid(登録商標)B27、BASF SE)
- 非晶質ポリアミド(成分(B)):
(AP1)ナイロン6I/6T(GrivoryG16、EMS)、6I:6Tのモル比は1.9:1
- 非晶質ポリマー(成分(C)):
(HP1)ポリスルホン(UltrasonS2010、BASF SE)
(HP2)スチレン-N-フェニルマレイミド-無水マレイン酸コポリマー(DenkaIP MS-NB、デンカ)
- 添加剤:
(A1)Irganox1098(N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド))、BASF SE)
(A2)ポリヒドロキシエーテル-熱可塑性-熱硬化性樹脂(Phenoxy Resin、InChem)
【0180】
表1に、使用した半結晶性ポリアミド(成分(A))の必須パラメーターを示し、表2に、使用した非晶質ポリアミド(成分(B))の必須パラメーターを示し、表3に、使用した非晶質ポリマー(成分(C))の必須パラメーターを示す。
【0181】
【表1】
【0182】
【表2】
【0183】
【表3】
【0184】
AEGは、アミノ末端基濃度を示す。これは、滴定によって求められる。アミノ末端基濃度(AEG)を求めるために、1gの成分(半結晶性ポリアミドまたは非晶質ポリアミド)を30mLのフェノール/メタノール混合物(フェノール:メタノールの体積比75:25)に溶解させ、次いで、0.2N塩酸水溶液を用いた電位差滴定に供した。
【0185】
CEGは、カルボキシル末端基濃度を示す。これは、滴定によって求められる。カルボキシル末端基濃度(CEG)を求めるために、1gの成分(半結晶性ポリアミドまたは非晶質ポリアミド)を30mLのベンジルアルコールに溶解させた。この後、0.05N水酸化カリウム水溶液を用いて120℃で目視滴定を行った。
【0186】
半結晶性ポリアミドの溶融温度(T)およびすべてのガラス転移温度(T)は、それぞれ示差走査熱量測定によって求めた。
【0187】
溶融温度(T)を求めるために、上述のとおり、20K/分の加熱速度での第1の加熱運転(H1)を測定した。そこで、溶融温度(T)は、加熱運転(H1)の溶融ピークの極大点の温度に相当した。
【0188】
ガラス転移温度(T)を求めるために、第1の加熱運転(H1)後、冷却運転(C)およびその後の第2の加熱運転(H2)を測定した。冷却運転は、20K/分の冷却速度で測定し、第1の加熱運転(H1)および第2の加熱運転(H2)は、20K/分の加熱速度で測定した。次いで、上述のとおり、第2の加熱運転(H2)の段の高さの半分の箇所において、ガラス転移温度(T)を求めた。
【0189】
ゼロせん断速度粘度ηは、TA Instrumentsの「DHR-1」回転粘度計、ならびに直径25mmおよびプレート間隙1mmのプレート-プレート配置を用いて求めた。平衡化していない試料を、減圧下にて80℃で7日間乾燥させ、次いでこれを、角周波数範囲を500~0.5rad/sとする時間依存的な周波数掃引(シーケンステスト)を用いて分析した。次のさらなる分析パラメーターを使用した。すなわち、変形:1.0%、分析温度:240℃、分析時間:20分、試料準備後の予熱時間:1.5分。
【0190】
密度は、DIN EN ISO1183-1:2013に従って求めた。
【0191】
メルトボリュームフローレート(MVR)は、DIN EN ISO1133-1:2011に従って求めた。
【0192】
粘度数は、ISO307、1157、1628に従って求めた。
【0193】
単一の非晶質ポリマーを含むブレンド
ブレンドを製造するために、表4において指定する成分を、DSMの15cm小型押出機(DSM-Micro15小型配合機)において、80rpm(毎分回転数)の速度で、260℃にて、3分間の混合時間にかけて、表4において指定する比で配合し、次いで押し出した。次いで、得られた押出品をミルで粉砕し、篩にかけて、粒径を200μm未満とした。
【0194】
得られたブレンドを特徴付けた。結果は、表5において見ることができる。
【0195】
【表4】
【0196】
【表5】
【0197】
溶融温度(T)は、上述のとおりに求めた。
【0198】
結晶化温度(T)は、示差走査熱量測定によって求めた。この目的のために、20K/分の加熱速度での第1の加熱運転(H)、次いで、20K/分の加熱速度での冷却運転(C)を測定した。結晶化温度(T)は、結晶化ピークの極値の箇所における温度である。
【0199】
複素せん断粘度の大きさは、プレート-プレート回転レオメーターによって、角周波数を0.5rad/sとし、温度を240℃として求めた。TA Instrumentsの「DHR-1」回転粘度計を使用し、直径を25mmとし、プレート間隙を1mmとした。平衡化していない試料を、減圧下にて80℃で7日間乾燥させ、次いでこれを、角周波数範囲を500~0.5rad/sとする時間依存的な周波数掃引(シーケンステスト)を用いて分析する。次のさらなる分析パラメーターを使用した。すなわち、変形:1.0%、分析時間:20分、試料準備後の予熱時間:1.5分。
【0200】
焼結ウィンドウ(W)は、上述のとおり、溶融開始温度(T 開始)と結晶化開始温度(T 開始)の差として求めた。
【0201】
ブレンドの熱酸化安定性を明らかにするために、新たに製造されたブレンド、ならびに酸素0.5%および195℃で16時間オーブンエージング後のブレンドの複素せん断粘度を求めた。貯蔵後(エージング後)粘度対貯蔵前(エージング前)粘度の比を求めた。粘度は、回転レオロジーによって、測定周波数0.5rad/s、温度240℃で測定される。
【0202】
表5における実施例から、ブレンドにおいて本発明の成分(A)、(B)、および(C)を使用することで、純粋な成分(A)より熱安定性が向上することを認めることができる。加えて、特に熱貯蔵後に、焼結ウィンドウの拡大も実現される。
【0203】
選択的レーザー焼結のための焼結粉末
焼結粉末を製造するために、表6において指定する成分を、二軸スクリュー押出機(MC26)において、300rpm(毎分回転数)の速度、10kg/hの押出量で、温度270℃にて、表6において指定する比で配合し、その後、押出品をペレット化した。そうして得られたペレット化された材料を粉砕して、粒径を20~100μmとした。
【0204】
得られた焼結粉末を、上述のとおりに特徴付けた。結果は、表7において見ることができる。
【0205】
【表6】
【0206】
【表7】
【0207】
実施例I8およびI10ならびに比較例C9からの焼結粉末は、エージング後に、明確に広くなった焼結ウィンドウを示す。同様に、エージング後対エージング前の粘度比が、比較例C5、C6、およびC7に優ることを特徴とした、エージング安定性の明確な向上も見られる。しかし、これより下で示すとおり、比較例C9による焼結粉末から製造された成形体の破断点伸び特性は、実施例I8およびI10による本発明の焼結粉末から製造された成形体の破断点伸び特性よりはるかに不良である。
【0208】
レーザー焼結実験
焼結粉末を、表8で指定する温度において、0.12mmの層厚さでキャビティーに導入した。引き続いて、焼結粉末を、表8で指定するレーザー出力および指定の点間隔でレーザーに曝露し、曝露中に試料にかかるレーザーの速度は、5m/sとした。点間隔は、レーザー間隔またはレーン間隔としても知られる。選択的レーザー焼結は通常、縞状に走査するものである。点間隔によって、縞の中央と中央の間、すなわち、2本の縞のためのレーザービームの2箇所の中央の間に距離が生じる。
【0209】
【表8】
【0210】
その後、得られる引張試験片(焼結片)の性質を明らかにした。得られる引張試験片(焼結片)は、減圧下にて80℃で336時間乾燥させた後、乾燥状態で試験した。結果を表9に示す。加えて、シャルピー片も製作し、これも同様に乾燥形態で試験した(ISO179-2/1eU:1997+Amd.1:2011に従う)。
【0211】
得られた焼結片の反りを、焼結片を平面上に凹面側を下にして置くことにより明らかにした。次いで、平面と焼結片の中央上部の縁との間の距離(a)を求めた。加えて、焼結片の中央の厚さ(d)も求めた。次いで、次式:
V=100・(a-d)/d
によって、%の反りを求めた。
【0212】
焼結片の寸法は、通常、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmとした。
【0213】
曲げ強さは、曲げ試験における最大応力に相当する。曲げ試験は、EN ISO178:2010+A1:2013に従う三点曲げ試験である。
【0214】
「良好」、すなわち、成分の反りが少ないことを意味する「2」、および「不適格」、すなわち、成分の反りが激しいことを意味する「5」によって、加工性を量的に評価した。
【0215】
引張強さ、引張弾性率、および破断点伸びは、ISO527-1:2012に従って明らかにした。
【0216】
得られた引張試験片(焼結片)の吸湿量は、(減圧下にて80℃で336時間貯蔵後の)乾燥状態、および(70℃、相対湿度62%で336時間貯蔵後の)状態調節された状況にある引張試験片を秤量することにより求めた。
【0217】
【表9】
【0218】
比較例C9による焼結粉末を用いて製造された成形体は、反りも少ないが、非常に小さい破断点伸びしか示さないことが明らかである。
【0219】
実施例I8およびI10による本発明の焼結粉末から製造された成形体は、反りが低減されているとともに、破断点伸びおよび耐衝撃性も向上している。
【0220】
本発明の焼結粉末(SP)を用いて製造された成形体では、わずか1.9質量%という、より少ない吸湿量になることが明らかである。理論計算は、焼結粉末(SP)が、吸湿しない種々の成分のポリアミドを20質量%含むとき、焼結粉末は、ポリアミド(C7)だけを含む焼結粉末の吸湿量の80%を示すという仮定に基づいているため、理論的な予想は、2.16質量%であった。
図1