(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20220207BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20220207BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20220207BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/318 B
C23C16/455
(21)【出願番号】P 2020051056
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】高野 智
(72)【発明者】
【氏名】松井 俊
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-139451(JP,A)
【文献】特開2020-017708(JP,A)
【文献】特開2020-012136(JP,A)
【文献】特開2019-207965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/318
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載置される基板載置台と、
前記基板載置台の上方側から前記基板の面上に吸着阻害ガスを供給する吸着阻害ガス供給部と、
前記基板載置台の上方側から前記基板の面上に原料ガスを供給する原料ガス供給部と
、
前記吸着阻害ガス供給部の両側方にて前記基板載置台の上方側から前記基板の面上に不活性ガスを供給する第1不活性ガス供給部と、
を備え、
前記吸着阻害ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D1が、前記原料ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D2よりも大きく構成され
、前記第1不活性ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離P1が、前記D1よりも小さく構成されている基板処理装置。
【請求項2】
基板が載置される基板載置台と、
前記基板載置台の上方側から前記基板の面上に吸着阻害ガスを供給する吸着阻害ガス供給部と、
前記基板載置台の上方側から前記基板の面上に原料ガスを供給する原料ガス供給部と、
前記原料ガス供給部の両側方にて前記基板載置台の上方側から前記基板の面上に不活性ガスを供給する第2不活性ガス供給部
と、
を備え
、
前記吸着阻害ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D1が、前記原料ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D2よりも大きく構成され、前記第2不活性ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離P2が、前記D2よりも小さく構成されている基板処理装置。
【請求項3】
基板が載置される基板載置台と、
前記基板載置台の上方側から前記基板の面上に吸着阻害ガスを供給する吸着阻害ガス供給部と、
前記基板載置台の上方側から前記基板の面上に原料ガスを供給する原料ガス供給部と、
前記吸着阻害ガス供給部を昇降させ
る昇降部
と、
を備え、
前記吸着阻害ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D1が、前記原料ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D2よりも大きくなるように前記吸着阻害ガス供給部を昇降させる基板処理装置。
【請求項4】
表面に凹部が形成された前記基板に対する前記吸着阻害ガスの供給と、前記基板に対する前記原料ガスの供給と、を含むサイクルを所定回数行う成膜処理を行わせるように前記吸着阻害ガス供給部および前記原料ガス供給部を制御するとともに、前記成膜処理の実施期間中に前記距離D1を変化させるように前記昇降部を制御可能な制御部をさらに有する請求項
3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
表面に凹部が形成された前記基板に対する前記吸着阻害ガスの供給と、前記基板に対する前記原料ガスの供給と、を含むサイクルを所定回数行う成膜処理を行わせるように前記吸着阻害ガス供給部および前記原料ガス供給部を制御するとともに、前記成膜処理の実施期間中に前記距離D1を増加させるように前記昇降部を制御可能な制御部をさらに有する請求項
3に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記基板の表面に形成された凹部の深さ、および、開口広さのうちいずれかの条件に応じて、前記距離D1の大きさを決定するように前記昇降部を制御可能な制御部をさらに有する請求項
3に記載の基板処理装置。
【請求項7】
基板が載置される基板載置台と、
前記基板載置台の上方側から前記基板の面上に吸着阻害ガスを供給する吸着阻害ガス供給部と、
前記基板載置台の上方側から前記基板の面上に原料ガスを供給する原料ガス供給部と、
を備え、
前記吸着阻害ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D1が、前記原料ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D2よりも大きく構成されており、
表面に凹部が形成された前記基板に対する前記吸着阻害ガスの供給と、前記基板に対する前記原料ガスの供給と、を含むサイクルを所定回数行わせ、前記凹部内の埋め込みが所定の条件まで進行すると、前記吸着阻害ガスの供給を停止させ、前記原料ガスの供給を継続させるように、前記吸着阻害ガス供給部および前記原料ガス供給部を制御する制御部
と、を有す
る基板処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記吸着阻害ガスの供給を停止し、前記原料ガスの供給を継続する際に、前記吸着阻害ガス供給部から不活性ガスを供給させるように、前記吸着阻害ガス供給部を制御する請求項
7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
基板載置台上へ基板を載置する工程と、
前記基板載置台の上方側に設けられた吸着阻害ガス供給部から前記基板の面上に吸着阻害ガスを供給する工程と、前記基板載置台の上方側に設けられた原料ガス供給部から前記基板の面上に原料ガスを供給する工程と、
前記吸着阻害ガス供給部の両側方で、前記基板載置台の上方側に設けられた第1不活性ガス供給部から前記基板の面上に不活性ガスを供給する工程と、を含む成膜工程と、を有し、
前記成膜工程を、前記吸着阻害ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D1が、前記原料ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D2よりも大きくなっている状態
かつ前記第1不活性ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離P1が、前記D1よりも小さくなっている状態で実施する半導体装置の製造方法。
【請求項10】
基板載置台上へ基板を載置する工程と、
前記基板載置台の上方側に設けられた吸着阻害ガス供給部から前記基板の面上に吸着阻害ガスを供給する工程と、前記基板載置台の上方側に設けられた原料ガス供給部から前記基板の面上に原料ガスを供給する工程と、前記原料ガス供給部の両側方で、前記基板載置台の上方側に設けられた第2不活性ガス供給部から前記基板の面上に不活性ガスを供給する工程と、
を含む成膜工程と、を有し、
前記成膜工程を、前記吸着阻害ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D1が、前記原料ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D2よりも大きくなっている状態かつ前記第2不活性ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離P2が、前記D2よりも小さくなっている状態で実施する半導体装置の製造方法。
【請求項11】
基板載置台上へ基板を載置する工程と、
前記基板載置台の上方側に設けられた吸着阻害ガス供給部から前記基板の面上に吸着阻害ガスを供給する工程と、前記基板載置台の上方側に設けられた原料ガス供給部から前記基板の面上に原料ガスを供給する工程と、を含む成膜工程と、を有し、
前記成膜工程を、前記吸着阻害ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D1が、前記原料ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D2よりも大きくなっている状態となるように前記吸着阻害ガス供給部を昇降させて前記距離D1を変化させて実施する半導体装置の製造方法。
【請求項12】
基板載置台上へ基板を載置する工程と、
前記基板載置台の上方側に設けられた吸着阻害ガス供給部から前記基板の面上に吸着阻害ガスを供給する工程と、前記基板載置台の上方側に設けられた原料ガス供給部から前記基板の面上に原料ガスを供給する工程と、を含む成膜工程と、を有し、
前記成膜工程を、前記吸着阻害ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D1が、前記原料ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D2よりも大きくなっている状態で実施し、前記基板の表面に形成された凹部内の埋め込みが所定の条件まで進行すると、前記吸着阻害ガスの供給を停止させ、前記原料ガスの供給を継続させるように実施する半導体装置の製造方法。
【請求項13】
基板処理装置の基板載置台上へ基板を載置する手順と、
前記基板載置台の上方側に設けられた吸着阻害ガス供給部から前記基板の面上に吸着阻害ガスを供給する手順と、前記基板載置台の上方側に設けられた原料ガス供給部から前記基板の面上に原料ガスを供給する手順と、
前記吸着阻害ガス供給部の両側方で、前記基板載置台の上方側に設けられた第1不活性ガス供給部から前記基板の面上に不活性ガスを供給する手順と、を含む成膜手順を、前記吸着阻害ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D1が、前記原料ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D2よりも大きくなっている状態
かつ前記第1不活性ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離P1が、前記D1よりも小さくなっている状態で、コンピュータにより前記基板処理装置に実施させるプログラム。
【請求項14】
基板処理装置の基板載置台上へ基板を載置する手順と、
前記基板載置台の上方側に設けられた吸着阻害ガス供給部から前記基板の面上に吸着阻害ガスを供給する手順と、前記基板載置台の上方側に設けられた原料ガス供給部から前記基板の面上に原料ガスを供給する手順と、前記原料ガス供給部の両側方で、前記基板載置台の上方側に設けられた第2不活性ガス供給部から前記基板の面上に不活性ガスを供給する手順と、を含む成膜手順を、前記吸着阻害ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D1が、前記原料ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D2よりも大きくなっている状態かつ前記第2不活性ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離P2が、前記D2よりも小さくなっている状態で、コンピュータにより前記基板処理装置に実施させるプログラム。
【請求項15】
基板処理装置の基板載置台上へ基板を載置する手順と、
前記基板載置台の上方側に設けられた吸着阻害ガス供給部から前記基板の面上に吸着阻害ガスを供給する手順と、前記基板載置台の上方側に設けられた原料ガス供給部から前記基板の面上に原料ガスを供給する手順と、を含む成膜手順を、前記吸着阻害ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D1が、前記原料ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D2よりも大きくなっている状態となるように前記吸着阻害ガス供給部を昇降させて前記距離D1を変化させて、コンピュータにより前記基板処理装置に実施させるプログラム。
【請求項16】
基板処理装置の基板載置台上へ基板を載置する手順と、
前記基板載置台の上方側に設けられた吸着阻害ガス供給部から前記基板の面上に吸着阻害ガスを供給する手順と、前記基板載置台の上方側に設けられた原料ガス供給部から前記基板の面上に原料ガスを供給する手順と、を含む成膜手順を、前記吸着阻害ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D1が、前記原料ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D2よりも大きくなっている状態とし、前記基板の表面に形成された凹部内の埋め込みが所定の条件まで進行すると、前記吸着阻害ガスの供給を停止させ、前記原料ガスの供給を継続させる手順と、をコンピュータにより前記基板処理装置に実施させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板上に膜を形成する処理が行われることがある(例えば特許文献1参照)。この場合に、基板の表面に設けられた凹部内を埋め込むように膜を形成する処理が行われることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板の凹部内を埋め込むように膜を形成することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
基板が載置される基板載置台と、
前記基板載置台の上方側から前記基板の面上に吸着阻害ガスを供給する吸着阻害ガス供給部と、
前記基板載置台の上方側から前記基板の面上に原料ガスを供給する原料ガス供給部と、
を備え、
前記吸着阻害ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D1が、前記原料ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D2よりも大きくなっている基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板の凹部内を埋め込むように膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の第1態様に係る基板処理装置の要部の概略構成例を示す概念図である。
【
図2】本開示の第1態様に係る基板処理装置の要部の詳細構成例を示す図であり、
図2(a)は、
図1のA-A断面を示す側断面図であり、
図2(b)は、
図1のB-B断面を示す側断面図である。
【
図3】本開示の第1態様に係る基板処理装置の要部の詳細構成例を示す図であり、
図1のC-C断面を示す側断面図である。
【
図4】本開示の第1態様に係る成膜方法の一例の一連の工程を示した図であり、
図4(a)は、吸着阻害基形成工程の一例を示した図であり、
図4(b)は、原料ガス吸着工程の一例を示した図であり、
図4(c)は、反応ガスによる改質工程の一例を示した図である。
【
図5】本開示の第2態様に係る基板処理装置の要部の概略構成の一例を示す概念図である。
【
図6】本開示の他の態様に係る基板処理装置の要部の概略構成の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の第1態様>
以下に、本開示の第1態様について説明する。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
まず、
図1、
図2(a)、
図2(b)、
図3を用いて基板処理装置の構成について説明する。本態様に係る基板処理装置は、処理対象となる基板に対して一枚ずつ処理を行う枚葉式の基板処理装置として構成されている。処理対象となる基板としては、例えば、半導体装置(半導体デバイス)が作り込まれる半導体ウエハ基板(以下、単に「ウエハ」という。)が挙げられる。
【0010】
(処理容器)
本態様で説明する基板処理装置100は、図示しない処理容器を備えている。処理容器は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)等の金属材料により密閉容器として構成されている。また、処理容器の側面には、図示しない基板搬入出口が設けられており、その基板搬入出口を介してウエハ200が搬送されるようになっている。さらに、処理容器には、図示しない真空ポンプや圧力制御器等のガス排気系が接続されており、そのガス排気系を用いて処理容器内を所定圧力に調整し得るようになっている。
【0011】
(基板載置台)
処理容器の内部には、ウエハ200が載置される基板載置台210が設けられている。基板載置台210は、平面視において例えば円板状に形成され、その上面(基板載置面)に複数枚のウエハ200が円周方向に均等な間隔で載置されるように構成されている。また、基板載置台210は、加熱源として図示しないヒータを内包しており、そのヒータを用いてウエハ200の温度を所定温度に維持し得るようになっている。基板載置台210は、基板載置台210の平面視における中心位置を回転軸として、図示しない回転機構によって回転駆動されるように構成されている。基板載置台210を回転駆動する回転機構は、例えば、基板載置台210を回転可能に支持する回転軸受や、電動モータに代表される駆動源等を備えて構成される。なお、図例では5枚のウエハ200が載置されるように構成された場合を示しているが、これに限られることはなく、載置枚数は適宜設定されたものであればよい。例えば、載置枚数が多ければ処理スループットの向上が期待でき、載置枚数が少なければ基板載置台210の大型化を抑制できる。基板載置台210における基板載置面は、ウエハ200と直接触れるため、例えば石英やアルミナ等の材質で形成することが望ましい。
【0012】
(カートリッジヘッド)
基板載置台210の上方側には、基板載置台210上のウエハ200に対するガス供給機構としてのカートリッジヘッド230が設けられている。カートリッジヘッド230は、基板載置台210の中心位置近傍に配された中央支持部230aと、その中央支持部230aから基板載置台210の外周側に向けて放射状に延びる複数のカートリッジ部230b,230c,230dと、を備えて構成されている。具体的には、カートリッジヘッド230は、カートリッジ部230b,230c,230d,230b,230c,230dの順に、中央支持部230aを中心とした円周に沿って略均等間隔で配列した、計6つのカートリッジ部を備えている。各カートリッジ部230b,230c,230dは、それぞれ、基板載置台210上のウエハ200の外周端を超えて、さらにその外周側まで延びている。
【0013】
各カートリッジ部230b,230c,230dの設置数は、
図1では中央支持部230aを中心とした円周方向に均等にそれぞれ2つずつ、計6つ設けられている場合を示しているが、これに限られることはない。ウエハ200に対して供給するガス種の数や処理スループット等を考慮して適宜設定されたものであればよい。
【0014】
また、本態様において、各カートリッジ部230b,230c,230dは、中央支持部230aから基板載置台210の外周側に向けて帯状に延びるように構成されている。つまり、各カートリッジ部230b,230c,230dは、基板載置台210の外周側に向けて長手方向が配された略矩形状の平面形状を有している。ただし、各カートリッジ部230b,230c,230dの平面形状は、必ずしも略矩形状である必要はない。例えば、後述する基板載置台210とカートリッジヘッド230の相対移動の際における内外周の周速差とガス供給量との関係を考慮して、外周側に向けて拡がる扇形状としても構わない。いずれの平面形状の場合においても、各カートリッジ部230b,230c,230dの長手方向サイズは、ウエハ200の最大径よりも大きく形成されているものとする。
【0015】
(カートリッジ部)
カートリッジヘッド230が備える各カートリッジ部230b,230c,230dの構成について、
図2(a)、
図2(b)、
図3を用いて詳しく説明する。
【0016】
図2(a)は、カートリッジ部230bの詳細構成例を示す図であり、
図1のA-A断面を示す側断面図である。
【0017】
カートリッジ部230bは、吸着阻害ガス供給部232b(以下、「ガス供給部232b」という。)を有している。ガス供給部232bは、基板載置台210の上方側からウエハ200の面上に吸着阻害ガスを供給するように構成されている。ガス供給部232bは、吸着阻害ガスの貫通孔である吸着阻害ガス供給孔233b(以下、「ガス供給孔233b」という。)を有している。また、ガス供給孔233bの下端部には、吸着阻害ガス供給口222b(以下、「ガス供給口222b」という。)が設けられている。本明細書では、ガス供給部232bに設けられたガス供給口222bとウエハ200の表面との距離を距離D1とする。
【0018】
さらに、カートリッジ部230bは、ガス供給部232bの両側方に、一対の吸着阻害ガス排気部240b(以下、「ガス排気部240b」という。)を有している。ガス排気部240bは、ガス供給部232bの両側方にて吸着阻害ガスを排気するように構成されている。ガス排気部240bは、吸着阻害ガスの貫通孔である吸着阻害ガス排気孔238b(以下、「ガス排気孔238b」という。)を有している。
【0019】
さらに、カートリッジ部230bは、一対のガス排気部240bの両側方に、一対の第1不活性ガス供給部234b(以下、「ガス供給部234b」という。)を有している。ガス供給部234bは、ガス供給部232bの両側方にて基板載置台210の上方側からウエハ200の面上に不活性ガスを供給するように構成されている。ガス供給部234bは、不活性ガスの貫通孔である第1不活性ガス供給孔235b(以下、「ガス供給孔235b」という。)有している。また、ガス供給孔235bの下端部には、第1不活性ガス供給口225b(以下、「ガス供給口225b」という。)が設けられている。本明細書では、ガス供給部234bに設けられたガス供給口225bとウエハ200の表面との距離を距離P1とする。
【0020】
さらに、カートリッジ部230bは、ガス排気部240bとガス供給部234bとの間に、それぞれ第1不活性ガス排気部239b(以下、「ガス排気部239b」という。)を有している。ガス排気部239bは不活性ガスを排気するように構成されている。ガス排気部239bは、不活性ガスの貫通孔である第1不活性ガス排気孔237b(以下、「ガス排気孔237b」という。)を有している。
【0021】
図2(b)は、カートリッジ部230cの詳細構成例を示す図であり、
図1のB-B断面を示す側断面図である。
【0022】
カートリッジ部230cは、原料ガス供給部232c(以下、「ガス供給部232c」という。)を有している。ガス供給部232cは、基板載置台210の上方側からウエハ200の面上に原料ガスを供給するように構成されている。ガス供給部232cは、原料ガスの貫通孔である原料ガス供給孔233c(以下、「ガス供給孔233c」という。)を有している。また、ガス供給孔233cの下端部には、原料ガス供給口222c(以下、「ガス供給口222c」という。)が設けられている。本明細書では、ガス供給部232cに設けられたガス供給口222cとウエハ200の表面との距離を距離D2とする。
【0023】
さらに、カートリッジ部230cは、ガス供給部232cの両側方に、一対の原料ガス排気部240c(以下、「ガス排気部240c」という。)を有している。ガス排気部240cは、ガス供給部232cの両側方にて原料ガスを排気するように構成されている。ガス排気部240cは、原料ガスの貫通孔である原料ガス排気孔238c(以下、「ガス排気孔238c」という。)を有している。
【0024】
さらに、カートリッジ部230cは、一対のガス排気部240cの両側方に、一対の第2不活性ガス供給部234c(以下、「ガス供給部234c」という。)を有している。ガス供給部234cは、ガス供給部232cの両側方にて基板載置台210の上方側からウエハ200の面上に不活性ガスを供給するように構成されている。ガス供給部234cは、不活性ガスの貫通孔である第2不活性ガス供給孔235c(以下、「ガス供給孔235c」という。)を有している。また、ガス供給孔235cの下端部には、第2不活性ガス供給口225c(以下、「ガス供給口225c」という。)が設けられている。本明細書では、ガス供給部234cに設けられたガス供給口225cとウエハ200の表面との距離を距離P2とする。
【0025】
さらに、カートリッジ部230cは、ガス排気部240cとガス供給部234cとの間に、それぞれ第2不活性ガス排気部239c(以下、「ガス排気部239c」という。)を有している。ガス排気部239cは不活性ガスを排気するように構成されている。ガス排気部239cは、不活性ガスの貫通孔である第2不活性ガス排気孔237c(以下、「ガス排気孔237c」という。)を有している。
【0026】
図3は、カートリッジ部230dの詳細構成例を示す図であり、
図1のC-C断面を示す側断面図である。
【0027】
カートリッジ部230dは、反応ガス供給部232d(以下、「ガス供給部232d」という。)を有している。ガス供給部232dは、基板載置台210の上方側からウエハ200の面上に反応ガスを供給するように構成されている。ガス供給部232dは、反応ガスの貫通孔である反応ガス供給孔233d(以下、「ガス供給孔233d」という。)を有している。また、ガス供給孔233dの下端部には、反応ガス供給口222d(以下、「ガス供給口222d」という。)が設けられている。本明細書では、ガス供給部232dに設けられたガス供給口222dとウエハ200の表面との距離を距離D3とする。
【0028】
さらに、カートリッジ部230dは、ガス供給部232dの両側方に、一対の反応ガス排気部240d(以下、「ガス排気部240d」という。)を有している。ガス排気部240dは、ガス供給部232dの両側方にて反応ガスを排気するように構成されている。ガス排気部240dは、反応ガスの貫通孔である反応ガス排気孔238d(以下、「ガス排気孔238d」という。)を有している。
【0029】
さらに、カートリッジ部230dは、一対のガス排気部240dの両側方に、一対の第3不活性ガス供給部234d(以下、「ガス供給部234d」という。)を有している。ガス供給部234dは、ガス供給部232dの両側方にて基板載置台210の上方側からウエハ200の面上に不活性ガスを供給するように構成されている。ガス供給部234dは、不活性ガスの貫通孔である第3不活性ガス供給孔235d(以下、「ガス供給孔235d」という。)を有している。また、ガス供給孔235dの下端部には、第3不活性ガス供給口225d(以下、「ガス供給口225d」という。)が設けられている。本明細書では、ガス供給部234dに設けられたガス供給口225dとウエハ200の表面との距離を距離P3とする。
【0030】
さらに、カートリッジ部230dは、ガス排気部240dとガス供給部234dとの間に、それぞれ第3不活性ガス排気部239d(以下、「ガス排気部239d」という。)を有している。ガス排気部239dは不活性ガスを排気するように構成されている。ガス排気部239dは、不活性ガスの貫通孔である第3不活性ガス排気孔237d(以下、「ガス排気孔237d」という。)を有している。
【0031】
ガス排気部239dは不活性ガスを排気するためのものである。ガス排気部239dは、カートリッジ基体231dに、不活性ガスの貫通孔である第3不活性ガス排気孔237d(以下、「ガス排気孔237d」という。)が設けられて構成されている。
【0032】
図2(a)および
図2(b)に示すように、距離D1は、距離D2よりも大きくなっている。また、
図2(a)に示すように、距離P1は、距離D1よりも小さくなっている。また、
図2(b)に示すように、距離P2は、距離D2よりも小さくなっている。
図3に示すように、距離P3は、距離D3よりも小さくなっている。
【0033】
(ガス供給系)
続いて、各カートリッジ部230b,230c,230dに接続されるガス供給系の構成について説明する。
【0034】
図2(a)に示すように、ガス供給部232bのガス供給孔233bには、吸着阻害ガス供給管241b(以下、「ガス供給管241b」という。)が接続されている。ガス供給管241bには、上流方向から順に、吸着阻害ガス供給源242b(以下、「ガス供給源242b」という。)、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)243b、および開閉弁であるバルブ244bが設けられている。主に、ガス供給管241b、MFC243b、バルブ244bにより、吸着阻害ガス供給系が構成される。吸着阻害ガス供給系に、ガス供給源242bを含めてもよい。このような構成により、吸着阻害ガス供給系は、ガス供給孔233bを通じて、基板載置台210の上方側からウエハ200の面上に吸着阻害ガスを供給する。吸着阻害ガスは、原料ガスのウエハ200への吸着を阻害するガスである。吸着阻害ガスとしては、例えば、四フッ化炭素(CF
4)ガスを用いることができる。
【0035】
また、各ガス供給部234bのガス供給孔235bのそれぞれには、第1不活性ガス供給管251b(以下、「ガス供給管251b」という。)の下流側が分岐して接続されている。ガス供給管251bには、上流方向から順に、不活性ガス供給源252(以下、「ガス供給源252」という。)、MFC253およびバルブ254が設けられている。ガス供給管251b、MFC253、バルブ254により、第1不活性ガス供給系が構成される。第1不活性ガス供給系に、ガス供給源252を含めてもよい。このような構成により、第1不活性ガス供給系は、ガス供給孔235bを通じて、基板載置台210の上方側からウエハ200の面上に不活性ガスを供給する。
【0036】
図2(b)に示すように、ガス供給部232cのガス供給孔233cには、原料ガス供給管241c(以下、「ガス供給管241c」という。)が接続されている。ガス供給管241cには、上流方向から順に、原料ガス供給源242c(以下、「ガス供給源242c」という。)、MFC243c、およびバルブ244cが設けられている。主に、ガス供給管241c、MFC243c、バルブ244cにより、原料ガス供給系が構成される。なお、原料ガス供給系に、ガス供給源242cを含めてもよい。このような構成により、原料ガス供給系は、ガス供給孔233cを通じて、基板載置台210の上方側からウエハ200の面上に原料ガスを供給する。原料ガスとしては、例えばジクロロシラン(SiH
2Cl
2、略称:DCS)ガスを用いることができる。
【0037】
また、各ガス供給部234cのガス供給孔235cのそれぞれには、第2不活性ガス供給管251c(以下、「ガス供給管251c」という。)の下流側が分岐して接続されている。ガス供給管251cには、上流方向から順に、ガス供給源252、MFC253およびバルブ254が設けられている。ガス供給管251c、MFC253、バルブ254により、第2不活性ガス供給系が構成される。なお、第2不活性ガス供給系に、ガス供給源252を含めてもよい。このような構成により、第2不活性ガス供給系は、ガス供給孔235cを通じて、基板載置台210の上方側からウエハ200の面上に不活性ガスを供給する。
【0038】
図3に示すように、ガス供給部232dのガス供給孔233dには、反応ガス供給管241d(以下、「ガス供給管241d」という。)が接続されている。ガス供給管241dには、上流方向から順に、反応ガス供給源242d(以下、「ガス供給源242d」という。)、MFC243d、およびバルブ244dが設けられている。主に、ガス供給管241d、MFC243d、バルブ244dにより、反応ガス供給系が構成される。なお、反応ガス供給系に、ガス供給源242dを含めてもよい。このような構成により、反応ガス供給系は、ガス供給孔233dを通じて、基板載置台210の上方側からウエハ200の面上に反応ガスを供給する。反応ガスとしては、例えばアンモニア(NH
3)ガスを用いることができる。
【0039】
また、各ガス供給部234dのガス供給孔235dのそれぞれには、第3不活性ガス供給管251d(以下、「ガス供給管251d」という。)の下流側が分岐して接続されている。ガス供給管251dには、上流方向から順に、ガス供給源252、MFC253およびバルブ254が設けられている。ガス供給管251d、MFC253、バルブ254により、第3不活性ガス供給系が構成される。なお、第3不活性ガス供給系に、ガス供給源252を含めてもよい。このような構成により、第3不活性ガス供給系は、ガス供給孔235dを通じて、基板載置台210の上方側からウエハ200の面上に不活性ガスを供給する。
【0040】
(ガス排気系)
続いて、各カートリッジ部230b,230c,230dに接続されるガス排気系の構成について説明する。
【0041】
図2(a)に示すように、各ガス排気部240bのガス排気孔238bのそれぞれには、吸着阻害ガス排気管261b(以下、「ガス排気管261b」という。)の上流側が分岐して接続されている。ガス排気管261bには、バルブ262が設けられている。また、バルブ262の下流側には、ガス供給部232bの下方空間を所定圧力に制御する圧力制御器263が設けられている。圧力制御器263の下流側には、真空ポンプ264が設けられている。主に、ガス排気管261b、バルブ262、圧力制御器263により、吸着阻害ガス排気系が構成される。なお、吸着阻害ガス排気系に、真空ポンプ264を含めてもよい。このような構成により、吸着阻害ガス排気系は、ガス排気孔238bを通じてウエハ200の面上に供給された吸着阻害ガスをウエハ200の上方側へ排気する。
【0042】
また、各ガス排気部239bのガス排気孔237bのそれぞれには、第1不活性ガス排気管271b(以下、「ガス排気管271b」という。)の上流側が分岐して接続されている。ガス排気管271bには、バルブ272が設けられている。また、バルブ272の下流側には、ガス供給部234bの下方空間を所定圧力に制御する圧力制御器273が設けられている。さらに、圧力制御器273の下流側には、真空ポンプ274が設けられている。主に、ガス排気管271b、バルブ272、圧力制御器273により、第1不活性ガス排気系が構成される。なお、第1不活性ガス排気系に、真空ポンプ274を含めてもよい。このような構成により、第1不活性ガス排気系は、ガス排気孔237bを通じて、ウエハ200の面上に供給された不活性ガスをウエハ200の上方側へ排気する。
【0043】
図2(b)に示すように、各ガス排気部240cのガス排気孔238cのそれぞれには、原料ガス排気管261c(以下、「ガス排気管261c」という。)の上流側が分岐して接続されている。ガス排気管261cには、バルブ262が設けられている。また、バルブ262の下流側には、ガス供給部232cの下方空間を所定圧力に制御する圧力制御器263が設けられている。圧力制御器263の下流側には、真空ポンプ264が設けられている。主に、ガス排気管261c、バルブ262、圧力制御器263により、原料ガス排気系が構成される。なお、原料ガス排気系に、真空ポンプ274を含めてもよい。このような構成により、原料ガス排気系は、ガス排気孔238cを通じてウエハ200の面上に供給された原料ガスをウエハ200の上方側へ排気する。
【0044】
また、各ガス排気部239cのガス排気孔237cのそれぞれには、第2不活性ガス排気管271c(以下、「ガス排気管271c」という。)の上流側が分岐して接続されている。ガス排気管271cには、バルブ272が設けられている。また、バルブ272の下流側には、ガス供給部234cの下方空間を所定圧力に制御する圧力制御器273が設けられている。さらに、圧力制御器273の下流側には、真空ポンプ274が設けられている。主に、ガス排気管271c、バルブ272、圧力制御器273により、第2不活性ガス排気系が構成される。なお、第2不活性ガス排気系に、真空ポンプ274を含めてもよい。このような構成により、第2不活性ガス排気系は、ガス排気孔237cを通じて、ウエハ200の面上に供給された不活性ガスをウエハ200の上方側へ排気する。
【0045】
図3に示すように、各ガス排気部239dのガス排気孔238dのそれぞれには、反応ガス排気管261d(以下、「ガス排気管261d」という。)の上流側が分岐して接続されている。ガス排気管261dには、バルブ262が設けられている。また、バルブ262の下流側には、ガス供給部232dの下方空間を所定圧力に制御する圧力制御器263が設けられている。圧力制御器263の下流側には、真空ポンプ264が設けられている。主に、ガス排気管261d、バルブ262、圧力制御器263により、反応ガス排気系が構成される。なお、反応ガス排気系に、真空ポンプ274を含めてもよい。このような構成により、反応ガス排気系は、ガス排気孔238dを通じてウエハ200の面上に供給された反応ガスをウエハ200の上方側へ排気する。
【0046】
また、各ガス排気部239dのガス排気孔237dのそれぞれには、第3不活性ガス排気管271d(以下、「ガス排気管271d」という。)の上流側が分岐して接続されている。ガス排気管271dには、バルブ272が設けられている。また、バルブ272の下流側には、ガス供給部234dの下方空間を所定圧力に制御する圧力制御器273が設けられている。さらに、圧力制御器273の下流側には、真空ポンプ274が設けられている。主に、ガス排気管271d、バルブ272、圧力制御器273により、第3不活性ガス排気系が構成される。なお、第3不活性ガス排気系に、真空ポンプ274を含めてもよい。このような構成により、第3不活性ガス排気系は、ガス排気孔237dを通じて、ウエハ200の面上に供給された不活性ガスをウエハ200の上方側へ排気する。
【0047】
(コントローラ)
また
図1に示すように、基板処理装置100は、基板処理装置100の各部の動作を制御するコントローラ280を有している。コントローラ280は、演算部281および記憶部282を少なくとも有する。コントローラ280は、上述した各構成に接続され、上位コントローラや使用者の指示に応じて記憶部282からプログラムやレシピを呼び出し、その内容に応じて各構成の動作を制御する。具体的には、コントローラ280は、回転機構、ヒータ、高周波電源、整合器、MFC243b,243c,243d,253、バルブ244b,244c,244d,254,262,272、真空ポンプ264,274、昇降機構500等の動作を制御する。
【0048】
なお、コントローラ280は、専用のコンピュータとして構成してもよいし、汎用のコンピュータとして構成してもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)283を用意し、外部記憶装置283を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすることにより、本態様に係るコントローラ280を構成することができる。
【0049】
また、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置283を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置283を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。なお、記憶部282や外部記憶装置283は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶部282単体のみを含む場合、外部記憶装置283単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0050】
(2)基板処理工程
次に、半導体製造工程の一工程として、上述した構成の基板処理装置100を用いて、ウエハ200に対する処理を行う基板処理工程について説明する。
ここでは、基板処理工程として、ウエハ200上に薄膜を形成する場合を例に挙げる。特に、本態様においては、吸着阻害ガスとしてCF4ガスを用い、原料ガスとしてDCSガスを用い、反応ガスとしてNH3ガスを用いる。DCSガスとNH3ガスとを交互に供給してウエハ200上にシリコン窒化膜(SiN膜)を形成する例について説明する。
【0051】
以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作はコントローラ280により制御される。なお、本態様では、ウエハ200としてシリコン(Si)ウエハを使用し、ウエハ200の表面には、トレンチやホール等の凹部が形成されている。
【0052】
(基板搬入工程:S101)
基板処理装置100では、先ず、基板搬入工程(S101)として、処理容器の基板搬入出口を開いて、図示しないウエハ移載機を用いて処理容器内に複数枚(例えば5枚)のウエハ200を搬入して、基板載置台210上に並べて載置する。そして、ウエハ移載機を処理容器の外へ退避させ、基板搬入出口を閉じて処理容器内を密閉する。
【0053】
(圧力温度調整工程:S102)
基板搬入工程(S101)の後は、圧力温度調整工程(S102)を行う。圧力温度調整工程(S102)では、基板搬入工程(S101)で処理容器内を密閉した後に、処理容器に接続されているガス排気系を作動させて、処理容器内が所定圧力となるように制御する。所定圧力は、後述する成膜工程(S103)においてSiN膜を形成可能な処理圧力であり、例えばウエハ200に対して供給する原料ガスが自己分解しない程度の処理圧力である。具体的には、10~9000Paとする。この処理圧力は、後述する成膜工程(S103)においても維持される。
【0054】
また、圧力温度調整工程(S102)では、基板載置台210の内部に埋め込まれたヒータに電力を供給し、ウエハ200の表面が所定温度になるように制御する。この際、ヒータの温度は、図示しない温度センサにより検出された温度情報に基づいてヒータへの通電具合を制御することにより調整される。所定温度は、後述する成膜工程(S103)において、SiN膜を形成可能な処理温度であり、例えばウエハ200に対して供給する原料ガスが自己分解しない程度の処理温度である。具体的には、室温以上750℃以下、好ましくは室温以上650℃以下とする。この処理温度は、後述する成膜工程(S103)においても維持される。
【0055】
(成膜工程:S103)
圧力温度調整工程(S102)の後は、成膜工程(S103)を行う。成膜工程(S103)で行う基板処理装置100の処理動作は、大別すると、相対位置移動処理動作と、ガス供給排気処理動作とがある。これらの動作は同時並行的に行われる。
【0056】
先ず、相対位置移動処理動作について説明する。
【0057】
この動作では、図示しない回転機構によって基板載置台210を回転駆動することで、基板載置台210と、カートリッジヘッド230における各カートリッジ部230b,230c,230dとの相対位置移動を開始する。これにより、基板載置台210に載置された各ウエハ200は、カートリッジヘッド230における各カートリッジ部230b,230c,230dの下を順に通過することになる。
【0058】
次に、ガス供給排気処理動作について説明する。
【0059】
この動作では、カートリッジ部230bのガス供給口222bからは吸着阻害ガス(CF4ガス)が供給され、カートリッジ部230cのガス供給口222cからは原料ガス(DCSガス)が供給され、カートリッジ部230dのガス供給口222dからは反応ガス(NH3ガス)が供給される。供給されたこれらのガスは、真空ポンプ264を作動させつつバルブ262を開状態とすることで、ガス排気孔238b,238c,238dを介してウエハ200の上方へ排気される。またこの際、カートリッジ部230bのガス供給口225b、カートリッジ部230cのガス供給口225c、およびカートリッジ部230dのガス供給口225dのそれぞれから不活性ガス(N2ガス)が供給される。供給されたこれらの不活性ガスは、真空ポンプ274を作動させつつバルブ272を開状態とすることで、ガス排気孔237b,237c,237dを介してウエハ200の上方へ排気される。
【0060】
以上、相対位置移動処理動作とガス供給排気処理動作の2つの動作を同時並行的に行うことにより、ある一つのウエハ200に着目すると、ウエハ200に対して吸着阻害ガスを供給する工程(ステップA)、原料ガスを供給する工程(ステップB)、反応ガスを供給する工程(ステップC)を、それらの工程のウエハ200の表面をパージするステップを挟んでこの順に行うサイクルが、所定回数行われることになる。
【0061】
ステップAでは、ウエハ200の面上に対して、CF
4ガスが供給される。CF
4ガスが供給されると、ウエハ200の表面に露出したSiとCF
4ガスとが反応することにより、ウエハ200表面にはF終端(SiF終端)された吸着阻害層が形成される。上述したように、距離D1は、距離D2よりも大きくなっているので、ステップAでは、CF
4ガスが、ウエハ200に対して比較的低圧、例えば、後述するステップBで供給されるDCSガスの圧力よりも低い圧力で供給される。従って、CF
4ガスは、ウエハ200の凹部の底部側まで到達せず、ウエハ200の凹部の開口部側にのみ吸着する。その結果、吸着阻害層は、ウエハ200の凹部の開口部側にのみ形成される(
図4(a)参照)。なお、ウエハ200の面上に対するカートリッジ部230bの通過時間、すなわち、CF
4ガスの供給時間は、例えば、0.1~20秒(好ましくは0.1~9秒以下)となるように調整されている。
【0062】
なお、吸着阻害ガスのガス濃度は、少なくとも原料ガスの濃度よりも低くすることが好ましい。本開示では、この様なガス濃度の関係を低ガス濃度と呼ぶ。ガス濃度は、ガスの流量と圧力の少なくともいずれかに依存する。即ち、ガスの流量を減少、圧力の低下のいずれか若しくはその両方により、ガス濃度を低くすることができる。吸着阻害ガスを低ガス濃度で、ウエハ200に供給する。これにより、ウエハ200の凹部の開口部側で吸着阻害ガスが消費され、凹部の底部側には、吸着阻害ガスが届かずに、ウエハ200の凹部の開口部側のみに、吸着阻害層を形成することができる。ここで、吸着阻害ガスの消費とは、ウエハ200への吸着、即ち、凹部の開口部側の表面に、吸着阻害ガスの分子が、吸着することを意味する。なお、凹部の底部側に吸着する吸着阻害ガスは、後述の原料ガスが、凹部の底部側に吸着する量よりも少なくなる様な低ガス濃度とする。なお、吸着する分子は、吸着阻害ガス分子そのものや、吸着阻害ガス分子が一部分解した分子も含む。
【0063】
なお、ここでは、低ガス濃度とすることについて記したが、これに限るものでは無い。低ガス濃度の他に、ガスの流速を変化させることにより、低ガス濃度に類似の雰囲気としても良い。ガスの流速を低くすることで、凹部の底部側に到達する前に、開口部側でガスが消費される様になる。
【0064】
ステップBでは、ウエハ200の面上に対して、DCSガスが供給される。供給されたDCSガスは、ウエハ処理位置にあるウエハ200の面上に到達し、これにより、吸着阻害層が形成されていないウエハ200の表面に、塩素(Cl)を含むSi含有層が形成される(
図4(b)参照)。上述したように、距離D2は、距離D1よりも小さくなっているので、ステップBでは、DCSガスが、ウエハ200に対して比較的高圧で、例えば、上述のステップAで供給されるCF
4ガスの圧力よりも高い圧力で供給される。従って、DCSガスは、ウエハ200の凹部の開口部側から底部側まで到達する。しかしながら、ウエハ200の凹部の開口部側には吸着阻害層が形成されているので、DCSガスは、凹部の底部側にのみ吸着する。その結果、Si含有層は、ウエハ200の凹部の底部側にのみ形成される(
図4(b)参照)。このように、ステップBでは、吸着阻害層を有するウエハ200の表面(例えば凹部の開口部)へのSi含有層の形成を抑制しつつ、吸着阻害層を有さないウエハ200の表面(凹部内の底部)にSi含有層を選択的に形成することが可能である。このようなSi含有層の選択的な形成が可能となるのは、ウエハ200の凹部の開口部側に存在するF終端された吸着阻害層が、ウエハ200の凹部の開口部側へのSi含有層の形成(Siの吸着)を阻害する要因、すなわち、インヒビタ(inhibitor)として作用するためである。なお、ウエハ200の面上に対するカートリッジ部230cの通過時間、すなわち、DCSガスの供給時間は、例えば、0.1~20秒(好ましくは0.1~9秒以下)となるように調整されている。
【0065】
なお、原料ガスのガス濃度は、吸着阻害ガスの濃度よりも高くすることが好ましい。本開示では、この様なガス濃度の関係を高ガス濃度と呼ぶ。ガス濃度は、ガスの流量と圧力の少なくともいずれかに依存する。即ち、ガスの流量を増加、圧力の上昇のいずれか若しくは両方により、ガス濃度を高くすることができる。原料ガスを高ガス濃度で、ウエハ200に供給する。これにより、ウエハ200の凹部の開口部側で原料ガスの一部が消費されたとしても、凹部の底部側に到達する原料ガス分子を生じさせることが可能となる。なお、上述の様に、凹部の開口部側には、吸着阻害ガスが吸着した状態となっているので、凹部の開口部側で消費される原料ガスの量を低減でき、凹部の底部側に到達する原料ガスを増加させることが可能となる。
【0066】
なお、ここでは、高ガス濃度とすることについて記したが、これに限るものでは無い。高ガス濃度の他に、ガスの流速を変化させることにより、高ガス濃度に類似の雰囲気としても良い。ガスの流速を高くすることで、凹部の開口部側でガスが消費される前に、凹部の底部側にガスを到達させることが可能となる。
【0067】
ステップCでは、ウエハ200の面上に対して、NH
3ガスが供給される。供給されたNH
3ガスは、ウエハ処理位置にあるウエハ200の面上に到達し、これにより、ウエハ200の表面に形成されたSi含有層の少なくとも一部が窒化(改質)される。Si含有層が改質されることで、ウエハ200の表面に、SiおよびNを含む層、すなわちSiN層が形成される。上述したように、Si含有層は、ウエハ200の凹部の底部側にのみ形成されていることから、SiN層もウエハ200の凹部の底部側にのみ形成されることとなる(
図4(c)参照)。なお、ウエハ200の面上に対するカートリッジ部230dの通過時間、すなわち、NH
3ガスの供給時間は、例えば、0.1~20秒(好ましくは、0.1~9秒)となるように調整されている。
【0068】
相対位置移動処理動作と、ガス供給排気処理動作とを所定時間継続することにより、上述のサイクルを所定回数実施すると、ウエハ200上には、上述のSiN層が積層されてなる所望膜厚のSiN膜が形成される。この際、ウエハ200の表面に形成された凹部内は、底部から開口部に向けて徐々にSiN膜によって埋め込まれる(以下、本明細書において、このような埋め込み処理をボトムアップ成膜と呼ぶ場合がある。)。なお、サイクルの実施回数が増え、ウエハ200の表面に形成された凹部内のSiN膜の埋め込みが進むと、凹部内へのCF4ガスの供給によって、埋め込み処理の生産性が低下したり、埋め込み処理の進行が困難になったりする場合がある。それらの場合には、埋め込み処理の進行状況に応じて、CF4ガスの供給流量を減少させたり、CF4ガスの供給を停止したりするのが好ましい。CF4ガスの供給を停止する場合には、ガス供給部232bから不活性ガス(N2ガス)を供給させることが好ましい。
【0069】
凹部内へのSiN膜の埋め込み処理が完了したら、ガス供給排気処理動作を終了する。その後、回転機構は、基板載置台210と、カートリッジヘッド230における各カートリッジ部230b,230c,230dとの相対位置移動を停止する。これにより、相対位置移動処理動作が終了する。
【0070】
(基板搬出工程:S104)
成膜工程(S103)の終了後、基板処理装置100は、基板搬出工程(S104)を行う。基板搬出工程(S104)では、上述した基板搬入工程(S101)と逆の手順にて、処理済みのウエハ200を処理容器外へ搬出する。
【0071】
(3)本態様の効果
本態様によれば、以下に示す一つまたは複数の効果を奏する。
【0072】
(a)本態様においては、
図2(a)および
図2(b)に示すように、距離D1は、距離D2よりも大きくなっている。従って、ステップAでは、吸着阻害ガス(CF
4ガス)が、ウエハ200に対して比較的低圧で供給される。これにより、CF
4ガスは、ウエハ200の凹部の底部側まで到達せず、ウエハ200の凹部の開口部側にのみ吸着する。その結果、吸着阻害層は、ウエハ200の凹部の開口部側にのみ形成される(
図4(a)参照)。
【0073】
上述したように、距離D2は、距離D1よりも小さくなっている。従って、ステップBでは、原料ガス(DCSガス)が、ウエハ200に対して比較的高圧で供給される。これにより、DCSガスは、ウエハ200の凹部の開口部側から底部側まで到達する。しかしながら、ウエハ200の凹部の開口部側には吸着阻害層が形成されているので、DCSガスは、凹部の底部側にのみ吸着する。その結果、Si含有層は、ウエハ200の凹部の底部側にのみ形成される(
図4(b)参照)。また、ステップCでは、反応ガス(NH
3ガス)は、Si含有層を窒化するので、SiN層は、ウエハ200の凹部の底部側にのみ形成される(
図4(c)参照)。
【0074】
以上のように、上述のサイクルにおいて、ウエハ200の凹部の底部から開口部に向けて徐々にSiN膜を埋め込み、ボトムアップ成膜を行わせることができる。その結果、ウエハ200の表面に形成された凹部内におけるSiN膜の埋め込み特性を向上させることができる。
【0075】
(b)本態様においては、
図2(a)に示すように、距離P1は、距離D1よりも小さくなっている。従って、不活性ガス(N
2ガス)は、CF
4ガスよりもウエハ200に対して高圧で供給される。これにより、ガス供給部234bの下方空間の圧力は、ガス供給部232bの下方空間の圧力よりも高圧になる。結果として、N
2ガスのエアシール効果が確実に発揮され、CF
4ガスが、カートリッジ部230bの下方空間から外方に漏れ出てしまうのを確実に抑制することができる。
【0076】
(c)本態様においては、
図2(b)に示すように、距離P2は、距離D2よりも小さくなっている。従って、不活性ガス(N
2ガス)は、DCSガスよりもウエハ200に対して高圧で供給される。これにより、カートリッジ部230cにおけるガス供給部234cの下方空間の圧力は、ガス供給部232cの下方空間の圧力よりも高圧になる。結果として、N
2ガスのエアシール効果が確実に発揮され、DCSガスが、カートリッジ部230cの下方空間から外方に漏れ出てしまうのを確実に抑制することができる。
【0077】
(d)本態様においては、
図3に示すように、距離P3は、距離D3よりも小さくなっている。従って、不活性ガス(N
2ガス)は、NH
3ガスよりもウエハ200に対して高圧で供給される。これにより、カートリッジ部230dにおけるガス供給部234cの下方空間の圧力は、ガス供給部232dの下方空間の圧力よりも高圧になる。結果として、N
2ガスのエアシール効果が確実に発揮され、NH
3ガスが、カートリッジ部230dの下方空間から外方に漏れ出てしまうのを確実に抑制することができる。
【0078】
<本開示の第2態様>
以下、
図5を用いて本開示の第2態様について説明する。
【0079】
上述したように、上述のサイクルの実施回数が増え、ウエハ200の表面に形成された凹部内のSiN膜の埋め込みが進むと、凹部内への吸着阻害ガス(CF4ガス)の供給によって、埋め込み処理の生産性が低下したり、埋め込み処理の進行が困難になったりする場合がある。本態様では、埋め込み処理の進行状況に応じて、CF4ガスの供給流量を減少させたり、CF4ガスの供給を停止したりするのではなく、距離D1の大きさを変化させることで、これらの課題を解決する。以下、本態様の詳細について説明する。
【0080】
本態様の基板処理装置100が上述の第1態様と異なる点は、
図5に示すように、カートリッジ部230bにガス供給部232bを昇降させる昇降部としての昇降機構500を設けた点である。以下、昇降機構500を用いた成膜処理の手順について説明する。
【0081】
ウエハ200の凹部内におけるSiN膜の埋め込み処理を行うには、上述のサイクルの初期段階において、原料ガス(DCSガス)をウエハ200の凹部の底部に吸着させる。そこで本態様では、サイクルの初期段階において、CF4ガスをウエハ200の凹部の底部付近に吸着させるため、ウエハ200に対しCF4ガスを比較的高圧で供給する。具体的には、上述のサイクルの初期段階において、昇降機構500を作動させガス供給部232bを低い位置に移動させ、距離D1を小さくする。ただし、距離D1の下限は、CF4ガスがウエハ200の凹部の底部に吸着しない距離にする。
【0082】
一方、上述のサイクルの中期段階や終期段階において、埋め込み処理が進んだ状態になっても、距離D1を小さいままにしておくと、凹部内埋め込むように形成されたSiN膜の表面にCF4ガスが吸着してしまい、それ以降、埋め込み処理が進まなくなってしまう。そこで本態様では、サイクルの中期段階や終期段階において、ウエハ200の凹部内のSiN膜の埋め込み処理の進行状況に応じて、CF4ガスを徐々にウエハ200の凹部の浅い位置に吸着させる。具体的には、サイクルの中期段階や終期段階において、昇降機構500を作動させ、SiN膜の埋め込み処理の進行状況に応じてガス供給部232bを徐々に高い位置に移動させ、距離D1を大きくする。
【0083】
このように、ウエハ200の凹部内のSiN膜の埋め込み処理の進行状況に応じて距離D1の大きさを調整することにより、サイクルの初期段階では、CF4ガスをウエハ200の凹部の底部付近に吸着させ、サイクルの中期段階や終期段階では、CF4ガスを徐々にウエハ200の凹部の浅い位置に吸着させる。結果として、吸着阻害ガスの供給流量を減少させたり、吸着阻害ガスの供給を停止したりすることなく、埋め込み処理を進行させることができる。
【0084】
また、昇降機構500を作動させて距離D1の大きさを調整するその他の効果として、ウエハ200の凹部の深さや開口の広さのうちのいずれかの条件に応じてウエハ200ごとに距離D1の大きさを決定できることが挙げられる。本態様によれば、予め、ウエハ200の凹部の深さや開口の広さに合わせて最適な距離D1を設定することにより、吸着阻害ガスの供給流量を減少させたり、吸着阻害ガスの供給を停止したりすることなく、埋め込み処理を進行させることができる。
【0085】
なお、本態様において、埋め込み処理の進行状況に応じて、CF4ガスの供給流量を減少させたり、CF4ガスの供給を停止したりしてもよい。CF4ガスの供給を停止する場合には、ガス供給部232bから不活性ガス(N2ガス)を供給させることが好ましい。ガス供給部232bからN2ガスを供給させる場合には、距離D1を小さくすることが好ましい。
【0086】
<本開示の他の態様>
以上、本開示の第1、第2態様を具体的に説明したが、本開示が上述の態様に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【0087】
上述の態様では、上述のサイクルを所定回数行うにあたり、吸着阻害ガス(CF4ガス)を同じ回数供給する例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、上述のサイクルを複数回行うにつき、CF4ガスを1回供給するようにしてもよい。この場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0088】
また、上述の態様では、基板載置台210が回転機構により回転駆動される場合を例に挙げて説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、基板載置台210とカートリッジヘッド230における各カートリッジ部230b,230c,230dの相対位置が移動されるのであれば、カートリッジヘッド230が回転機構により回転駆動されてもよい。この場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。カートリッジヘッド230が回転駆動される場合の方が、基板載置台210が回転駆動される上述の態様に比べて、ウエハ200に作用する慣性モーメントを抑制できるので、回転速度を大きくすることができる点で好ましい。但し、基板載置台210が回転駆動される上述の態様の方が、ガス配管等の構成を簡素化できる点で好ましい。
【0089】
また、上述の態様では、基板載置台210の中心位置を回転軸として回転駆動される基板載置台210を例に説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、
図6に示すように、各ウエハ200が一列に配された基板載置台210を用いてもよい。すなわち、ウエハ200が各カートリッジ部230b,230c,230dの下を直線移動するように、一方向または往復して水平移動する基板載置台210を用いてもよい。この場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0090】
また、上述の態様では、ガス供給部234bを有するカートリッジ部230bを例に挙げて説明したが、本開示はこれに限定されいない。すなわち、ガス供給部234bを有さないカートリッジ部230bを用いてもよい。カートリッジ部230cについても同様に、ガス供給部234cを有さないカートリッジ部230cを用いてもよい。また、カートリッジ部230dについても同様に、ガス供給部234dを有さないカートリッジ部230dを用いてもよい。これらの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0091】
なお、各カートリッジ部230b,230c,230dのうちのカートリッジ部230dには、図示せぬ整合器および高周波電源が接続されていてもよい。その場合には、高周波電源、整合器でインピーダンスを調整することで、カートリッジ部230dの下方側空間にプラズマが生成される。この場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0092】
また、上述の態様では、吸着阻害ガスとしてCF4ガスを用いた例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、ハロゲンを含むガスや、ハロゲンのラジカルを含むガス、炭素元素を複数含むガス等を用いることができる。具体的には、上述のCF4、三フッ化塩素(ClF3)ガス、Cl2ガスをプラズマ等で活性化したガスがある。これらの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0093】
また、上述の態様では、吸着阻害ガスとして、無機系ガスを用いたが、有機系ガスを用いても良い。有機系ガスとしては、自己組織化単分子膜(self―assembled monolayer:SAM)を形成する材料が有る。このような材料としては、カルボン酸材料、ホスホン酸材料、チオール材料、シリルアミン材料、クロロシラン材料、オキシシラン材料がある。これらの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0094】
また、上述の態様では、ウエハ200に形成する膜として、SiN膜について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、Al、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)等の少なくとも1つ以上の元素を含む膜を形成しても良い。また、これら元素の少なくとも1つ以上を含む酸化膜、窒化膜、酸窒化膜、炭化膜、炭窒化膜、炭酸化膜、等を形成する処理装置にも適用することができる。これらの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0095】
<本開示の好ましい態様>
以下に、本開示の好ましい態様について付記する。
【0096】
[付記1]
本開示の一態様によれば、
基板が載置される基板載置台と、
前記基板載置台の上方側から前記基板の面上に吸着阻害ガスを供給する吸着阻害ガス供給部と、
前記基板載置台の上方側から前記基板の面上に原料ガスを供給する原料ガス供給部と、
を備え、
前記吸着阻害ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D1が、前記原料ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D2よりも大きくなっている基板処理装置が提供される。
【0097】
[付記2]
好ましくは、
前記吸着阻害ガス供給部の両側方にて前記基板載置台の上方側から前記基板の面上に不活性ガスを供給する第1不活性ガス供給部を備え、
前記第1不活性ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離P1が、前記D1よりも小さくなっている付記1に記載の基板処理装置が提供される。
【0098】
[付記3]
好ましくは、
前記原料ガス供給部の両側方にて前記基板載置台の上方側から前記基板の面上に不活性ガスを供給する第2不活性ガス供給部を備え、
前記第2不活性ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離P2が、前記D2よりも小さくなっている付記1または2に記載の基板処理装置が提供される。
【0099】
[付記4]
好ましくは、
前記吸着阻害ガス供給部を昇降させて前記距離D1を変化させる昇降部をさらに有する、付記1~3のいずれか1態様に記載の基板処理装置が提供される。
【0100】
[付記5]
好ましくは、
表面に凹部が形成された前記基板に対する吸着阻害ガスの供給と、前記基板に対する原料ガスの供給と、を含むサイクルを所定回数行う成膜処理を行わせるように前記吸着阻害ガス供給部および前記原料ガス供給部を制御するとともに、前記成膜処理の実施期間中に前記距離D1を変化させる(増加させる)ように前記昇降部を制御する制御部をさらに有する付記4に記載の基板処理装置が提供される。
【0101】
[付記6]
好ましくは、
前記基板の表面に形成された凹部の深さ、および、開口広さのうちいずれかの条件に応じて、前記距離D1の大きさを決定するように前記昇降部を制御する制御部をさらに有する付記4に記載の基板処理装置が提供される。
【0102】
[付記7]
好ましくは、
表面に凹部が形成された前記基板に対する吸着阻害ガスの供給と、前記基板に対する原料ガスの供給と、を含むサイクルを所定回数行わせ、前記凹部内の埋め込みが所定の条件まで進行すると、前記吸着阻害ガスの供給を停止させ、前記原料ガスの供給を継続させるように、前記吸着阻害ガス供給部および前記原料ガス供給部を制御する制御部を有する付記1~6のいずれか1態様に記載の基板処理装置が提供される。
【0103】
[付記8]
好ましくは、
前記制御部は、前記吸着阻害ガスの供給を停止し、前記原料ガスの供給を継続する際に、前記吸着阻害ガス供給部から不活性ガスを供給させるように、前記吸着阻害ガス供給部を制御する付記7に記載の基板処理装置が提供される。
【0104】
[付記9]
本開示の他の一態様によれば、
基板載置台上へ基板を載置する工程と、
前記基板載置台の上方側に設けられた吸着阻害ガス供給部から前記基板の面上に吸着阻害ガスを供給する工程と、前記基板載置台の上方側に設けられた原料ガス供給部から前記基板の面上に原料ガスを供給する工程と、を含む成膜工程と、を有し、
前記成膜工程を、前記吸着阻害ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D1が、前記原料ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D2よりも大きくなっている状態で実施する半導体装置の製造方法が提供される。
【0105】
[付記10]
本開示のまたさらに他の一態様によれば、
基板処理装置の基板載置台上へ基板を載置する手順と、
前記基板載置台の上方側に設けられた吸着阻害ガス供給部から前記基板の面上に吸着阻害ガスを供給する手順と、前記基板載置台の上方側に設けられた原料ガス供給部から前記基板の面上に原料ガスを供給する手順と、を含む成膜手順を、前記吸着阻害ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D1が、前記原料ガス供給部に設けられたガス供給口と前記基板との距離D2よりも大きくなっている状態で、コンピュータにより前記基板処理装置に実施させるプログラムが提供される。
【符号の説明】
【0106】
200…ウエハ、232b…吸着阻害ガス供給部、232c…原料ガス供給部、222b…吸着阻害ガス供給口、222b…吸着阻害ガス供給口、222c…原料ガス供給口