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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-21
(45)【発行日】2022-01-31
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/24 20060101AFI20220124BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20220124BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20220124BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220124BHJP
   C08K 5/19 20060101ALI20220124BHJP
   C08K 5/23 20060101ALI20220124BHJP
   C08K 5/55 20060101ALI20220124BHJP
   C08L 33/08 20060101ALI20220124BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20220124BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220124BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220124BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220124BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20220124BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
H05B33/24
B32B7/023
B32B9/00 Z
B32B27/30 Z
C08K5/19
C08K5/23
C08K5/55
C08L33/08
G02B5/30
G09F9/00 313
G09F9/30 365
H01L27/32
H05B33/02
H05B33/14 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020523668
(86)(22)【出願日】2019-05-30
(86)【国際出願番号】 JP2019021557
(87)【国際公開番号】W WO2019235355
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2020-12-02
(31)【優先権主張番号】P 2018107095
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】武藤 正兼
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0001600(US,A1)
【文献】特開2015-207377(JP,A)
【文献】特開2018-053167(JP,A)
【文献】特開2011-165664(JP,A)
【文献】特開2016-216637(JP,A)
【文献】特開2015-197492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00-33/28
H01L 51/50
H01L 27/32
G02B 5/30
G09F 9/00
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視認側から、
異方性光吸収層と、
赤色光、緑色光、及び、青色光を少なくとも発光する自発光型表示素子と、を含む表示装置であって、
前記自発光型表示素子が、マイクロキャビティ構造を有し、
前記異方性光吸収層が、二色性物質及び液晶性化合物を含む組成物を用いて形成され、
前記二色性物質の極大吸収波長が400~500nmであり、
前記異方性光吸収層が、式(1)の要件、及び、式(2)の要件を満たす、表示装置。
式(1) 1.50<Amax(60)/A(0)
式(2) 1.00≦Amax(60)/Amin(60)≦1.20
前記Amax(60)は、前記異方性光吸収層の法線方向から極角60°の全方位角において、前記極大吸収波長での前記異方性光吸収層の吸光度を測定した際に、最も吸光度の高い値を表す。
前記Amin(60)は、前記異方性光吸収層の法線方向から極角60°の全方位角において、前記極大吸収波長での前記異方性光吸収層の吸光度を測定した際に、最も吸光度の低い値を表す。
前記A(0)は、前記異方性光吸収層の法線方向において、前記極大吸収波長での前記異方性光吸収層の吸光度を測定した際の吸光度を表す。
【請求項2】
前記二色性物質が重合性基を有する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記液晶性化合物が重合性基を有する、請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記二色性物質が、エチレン性不飽和結合を含む重合性基、及び、芳香族環を有し、
前記液晶性化合物が、エチレン性不飽和結合を含む重合性基、及び、芳香族環を有し、
前記異方性光吸収層が、式(3)の要件を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載の表示装置。
式(3) 0.85<P1/P2≦1.00
前記P1は、前記異方性光吸収層の厚み方向に対して垂直な2つの表面のうち一方の表面におけるP値及び他方の表面におけるP値のうち、小さい方のP値を表す。
前記P2は、前記異方性光吸収層の厚み方向に対して垂直な2つの表面のうち一方の表面におけるP値及び他方の表面におけるP値のうち、大きい方のP値を表す。
前記P値は、I(1)/I(2)で表される値であり、前記I(1)は赤外全反射吸収スペクトル測定による前記エチレン性不飽和結合の面内変角振動由来のピーク強度を表し、前記I(2)は赤外全反射吸収スペクトル測定による前記芳香族環の不飽和結合の伸縮振動由来のピーク強度を表す。
ただし、前記異方性光吸収層の厚み方向に対して垂直な2つの表面のうち一方の表面におけるP値及び他方の面におけるP値が同じ値の場合、P1/P2は1.00とする。
【請求項5】
前記組成物が重合開始剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記重合開始剤が、オキシムエステル化合物、及び、アシルホスフィン化合物からなる群から選択される少なくとも1種以上である、請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記自発光型表示素子よりも視認側に、偏光子、及び、λ/4板を含み、
視認側から前記偏光子、前記λ/4板、及び、前記異方性光吸収層の順に配置されるか、又は、視認側から前記偏光子、前記異方性光吸収層、及び、前記λ/4板の順に配置される、請求項1~6のいずれか1項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平面型の表示装置を構成する表示素子として、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)に代表される自発光型表示素子が注目を集めている。
なかでも、特許文献1に示すように、マイクロキャビティ構造を有する自発光型表示素子は、輝度及び色純度が優れる。なお、マイクロキャビティ構造とは、有機材料の上下電極(即ち、アノード電極及びカソード電極)間の光路長を、取り出したい光のスペクトルのピーク波長に合致させることで、所定の波長の光のみを共振させ、他の波長の光を弱める構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-109775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、上述した表示装置においては、発光面に対する法線方向(以下、「正面方向」ともいう。)から視認した場合と、発光面に対して斜めの方向(即ち、法線方向から所定の角度だけ傾斜した方向。以下、「斜め方向」ともいう。)から視認した場合とで、色相が変化しないことが望まれている。
しかしながら、マイクロキャビティ構造を有する自発光型表示素子においては、上記問題が顕著に表れる。特に、斜め方向から視認した際に、色味を帯びる場合が多かった。
なお、表示装置においては、いずれの方位角から視認する際にも、色味を帯びることが抑制されるのが望まれている。
【0005】
本発明は、正面方向から白表示を視認した際に色味が観察しづらく、かつ、斜め方向から白表示を視認した際にいずれの方位角においても色味が観察しづらい表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に対して発明者らが鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0007】
(1) 視認側から、
異方性光吸収層と、
赤色光、緑色光、及び、青色光を少なくとも発光する自発光型表示素子と、を含む表示装置であって、
自発光型表示素子が、マイクロキャビティ構造を有し、
異方性光吸収層が、二色性物質及び液晶性化合物を含む組成物を用いて形成され、
二色性物質の極大吸収波長が400~500nmであり、
異方性光吸収層が、後述する式(1)の要件、及び、後述する式(2)の要件を満たす、表示装置。
(2) 二色性物質が重合性基を有する、(1)に記載の表示装置。
(3) 液晶性化合物が重合性基を有する、(1)又は(2)に記載の表示装置。
(4) 二色性物質が、エチレン性不飽和結合を含む重合性基、及び、芳香族環を有し、
液晶性化合物が、エチレン性不飽和結合を含む重合性基、及び、芳香族環を有し、
異方性光吸収層が、後述する式(3)の要件を満たす、(1)~(3)のいずれかに記載の表示装置。
(5) 組成物が重合開始剤をさらに含む、(1)~(4)のいずれかに記載の表示装置。
(6) 重合開始剤が、オキシムエステル化合物、及び、アシルホスフィン化合物からなる群から選択される少なくとも1種以上である、(5)に記載の表示装置。
(7) 自発光型表示素子よりも視認側に、偏光子、及び、λ/4板を含み、
視認側から偏光子、λ/4板、及び、異方性光吸収層の順に配置されるか、又は、視認側から偏光子、異方性光吸収層、及び、λ/4板の順に配置される、(1)~(6)のいずれかに記載の表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、正面方向から白表示を視認した際に色味が観察しづらく、かつ、斜め方向から白表示を視認した際にいずれの方位角においても色味が観察しづらい表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の表示装置の第1実施形態の模式的な断面図である。
図2】極角及び方位角の定義を説明するための図である。
図3】本発明の表示装置の第2実施形態の例を示す模式的な断面図である。
図4】本発明の表示装置の第3実施形態の例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。まず、本明細書で用いられる用語について説明する。
【0011】
本発明において、Re(λ)及びRth(λ)は、それぞれ波長λにおける面内のレタデーション及び厚み方向のレタデーションを表す。特に記載がないときは、波長λは、550nmとする。
本発明において、Re(λ)及びRth(λ)はAxoScan OPMF-1(オプトサイエンス社製)において、波長λで測定した値である。AxoScanにて平均屈折率((nx+ny+nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
遅相軸方向(°)
Re(λ)=R0(λ)
Rth(λ)=((nx+ny)/2-nz)×d
が算出される。
なお、R0(λ)は、AxoScan OPMF-1で算出される数値として表示されるものであるが、Re(λ)を意味している。
【0012】
AxoScanにて用いられる平均屈折率は、アッベ屈折計(NAR-4T、アタゴ(株)製)を使用し、光源にナトリウムランプ(λ=589nm)を用いて測定する。また、波長依存性を測定する場合は、多波長アッベ屈折計DR-M2(アタゴ(株)製)にて、干渉フィルターとの組み合わせで測定できる。
また、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、及び、各種光学フィルムのカタログの値を使用できる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)。
【0013】
本明細書において、角度(例えば「90°」等の角度)、及び、その関係(例えば「直交」、「平行」、及び「45°で交差」等)については、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、許容される誤差の範囲は、厳密な角度±10°の範囲内であること等を意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。
【0014】
本明細書において、青色光は波長400~500nmの光を示し、緑色光は波長500nm超600nm以下の光を示し、赤色光は波長600nm超700nm以下の光を示す。
【0015】
本発明の表示装置の特徴点の一つとしては、後述する式(1)の要件及び式(2)の要件を満たす異方性光吸収層を用いる点が挙げられる。
まず、マイクロキャビティ構造を有する自発光型表示素子では、発光面に対する法線方向(正面方向)において特に輝度及び色純度が向上する。一方で、正面方向と斜め方向とでは共振の条件が異なるため、斜め方向に出射される光が短波長側にシフトし、結果として、正面方向と斜め方向との間で色相の変化が発生する。そのため、例えば、赤色光、緑色光、及び、青色光を出射させることで白色光の照射を実現する自発光型表示素子では、正面方向において白色光が観察されるのに対して、斜め方向では青色側にシフトした光が観察される。
それに対して、まず、異方性光吸収層は、青色光の範囲に極大吸収波長を有する二色性物質を含む。そして、異方性光吸収層は、式(1)の要件で表されるように、正面方向よりも斜め方向(極角60°方向)において、青色光(波長400~500nm)における吸光度が大きい。つまり、異方性光吸収層に対して、斜め方向に進行する青色光は、正面方向に進行する青色光よりも、より吸収される。上述したように、マイクロキャビティ構造を有する自発光型表示素子から出射される光のうち、斜め方向に出射される光は青色側にシフトするが、この光が異方性光吸収層に入射すると青色光が吸収され、結果として異方性光吸収層を通過する光は白色光となる。すなわち、観察者が本発明の表示装置を斜め方向から視認した際にも、観察者は白色光を観測できる。
また、異方性光吸収層は、式(2)の要件で表されるように、斜め方向(極角60°方向)の全方位角において測定される吸光度の最小値に対する吸光度の最大値の比が小さい。つまり、異方性光吸収層においては、斜め方向の全方位角間における、吸光度の差が小さい。そのため、観察者が本発明の表示装置を斜め方向のいずれの方位角で観察した際にも、白色光を観測できる。
【0016】
<<第1実施形態>>
図1に、本発明の表示装置の第1実施形態の模式的な断面図を示す。
図1に示すように、表示装置10Aは、自発光型表示素子12と、異方性光吸収層14とを含む。なお、図1において、観察者は白抜き矢印方向から観察する。従って、表示装置10Aは、視認側から、異方性光吸収層14と、自発光型表示素子12とをこの順で含む。
以下、表示装置を構成する各部材について詳述する。
【0017】
<自発光型表示素子>
自発光型表示素子は、赤色光、緑色光、及び、青色光を少なくとも発光する表示素子である。自発光型表示素子としては、上記各色の光を発光できればその種類は特に制限されないが、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)が好ましい。有機EL素子は、トップエミッション型の有機EL素子でもよいし、ボトムエミッション型の有機EL素子でもよい。
自発光型表示素子は、マイクロキャビティ構造を有する。マイクロキャビティ構造とは、上述したように、有機材料の上下電極間の光路長を、取り出したい光のスペクトルのピーク波長に合致させることで、所定の波長の光のみを共振させ、他の波長の光を弱める構造である。より具体的には、有機EL素子より発光される赤色光、緑色光、及び、青色光の各ピーク波長に、有機EL素子の上下の電極間の光路長を合わせることで、電極間において光を繰り返し反射させて、ピーク波長の光のみを共振させて強調するとともに、ピーク波長から外れた光を減衰させる効果(マイクロキャビティ効果)を生じる構造である。
マイクロキャビティ構造とは、上記効果が得られる構造であればよく、公知の構造が採用される。
【0018】
<異方性光吸収層>
異方性光吸収層は、自発光型表示素子上に配置される層であり、式(1)の要件及び式(2)の要件を満たす層である。
式(1) 1.50<Amax(60)/A(0)
式(2) 1.00≦Amax(60)/Amin(60)≦1.20
【0019】
なお、本明細書においては、図2に示すような座標系を採用し、異方性光吸収層14の平面(主面。厚み方向に対して垂直な面)をxy平面とし、ベクトルv1とz軸の成す角θを極角と定義し、ベクトルv1のxy平面への投射とy軸とのなす角φを方位角と定義する。従って、後述するように、極角60°とは図2中のθが60°である角度を意味し、極角60°の全方位角とは図2中のθが60°である場合におけるφが0~360°の範囲を意味する。
【0020】
まず、Amax(60)は、異方性光吸収層の法線方向から極角60°の全方位角において、後述する二色性物質の極大吸収波長での異方性光吸収層の吸光度を測定した際に、最も吸光度の高い値を表す。
Amin(60)は、異方性光吸収層の法線方向から極角60°の全方位角において、後述する二色性物質の極大吸収波長での異方性光吸収層の吸光度を測定した際に、最も吸光度の低い値を表す。
A(0)は、異方性光吸収層の法線方向において、後述する二色性物質の極大吸収波長での異方性光吸収層の吸光度を測定した際の吸光度を表す。
上記吸光度の測定方法として、分光光度計(島津製作所株式会社製 UV-3150)(方式:ダブルビーム法、波長範囲:2nmステップで380~680nm)を用いて、各波長における異方性光吸収層の法線方向および極角60°での全方位角での吸光度を測定し、極大吸収波長での吸光度を求める。
【0021】
異方性光吸収層は、白表示の表示装置を斜め方向から視認した際に色味がより観察しづらい点から、式(1-1)の要件を満たすことが好ましく、式(1-2)の要件を満たすことがより好ましい。
式(1-1) 1.70<Amax(60)/A(0)
式(1-2) 1.80<Amax(60)/A(0)
なお、Amax(60)/A(0)の上限値は特に制限されないが、10000以下の場合が多く、100以下の場合がより多い。
また、異方性光吸収層は、白表示の表示装置を斜め方向から視認した際にいずれの方位角においても色味がより観察しづらい点から、式(2-1)の要件を満たすことが好ましく、式(2-2)の要件を満たすことがより好ましい。
式(2-1) 1.00≦Amax(60)/Amin(60)≦1.10
式(2-2) 1.00≦Amax(60)/Amin(60)≦1.05
【0022】
異方性光吸収層は、白表示の表示装置を正面方向から視認した際に色味がより観察しづらい点から、式(5-1)の要件を満たすことが好ましく、式(5-2)の要件を満たすことがより好ましい。
式(5-1) 0≦A(0)≦0.40
式(5-2) 0≦A(0)≦0.30
【0023】
また、異方性光吸収層は、白表示の表示装置を斜め方向から視認した際に色味がより観察しづらい点から、式(6-1)の要件を満たすことが好ましく、式(6-2)の要件を満たすことがより好ましい。
式(6-1) 0.25≦Amax(60)≦0.55
式(6-2) 0.30≦Amax(60)≦0.50
【0024】
後述するように、異方性光吸収層は、二色性物質及び液晶性化合物を含む組成物を用いて形成される。
二色性物質が、エチレン性不飽和結合を含む重合性基、及び、芳香族環を有し、液晶性化合物が、エチレン性不飽和結合を含む重合性基、及び、芳香族環を有する場合、異方性光吸収層が、式(3)の要件を満たすことが好ましい。
式(3) 0.85<P1/P2≦1.00
P1は、異方性光吸収層の厚み方向に対して垂直な2つの表面(2つの主面を意味し、言い換えれば、異方性光吸収層の厚み方向に対して直交する2つの表面)のうち一方の表面におけるP値及び他方の表面におけるP値のうち、小さい方のP値を表す。
P2は、異方性光吸収層の厚み方向に対して垂直な2つの表面のうち一方の表面におけるP値及び他方の表面におけるP値のうち、大きい方のP値を表す。
P値は、I(1)/I(2)で表される値であり、I(1)は赤外全反射吸収スペクトル測定によるエチレン性不飽和結合の面内変角振動由来のピーク強度を表し、I(2)は赤外全反射吸収スペクトル測定による芳香族環の不飽和結合の伸縮振動由来のピーク強度を表す。
ただし、異方性光吸収層の厚み方向に対して垂直な2つの表面のうち一方の表面におけるP値及び他方の表面におけるP値が同じ値の場合、P1/P2は1.00とする。
【0025】
上記P値は、赤外全反射吸収スペクトル測定において、芳香族環の不飽和結合の伸縮振動由来のピーク強度に対する、エチレン性不飽和結合の面内変角振動由来のピーク強度の比を表す。二色性物質及び液晶性化合物の硬化において、芳香族環の不飽和結合は反応しないが、エチレン性不飽和結合は消失する。従って、反応しない芳香族環の不飽和結合のピーク強度を相対基準としたP値を求めることによって、異方性光吸収層の一方の表面における重合度を算出できる。
P1/P2が上記式(3)の範囲内であれば、異方性光吸収層の2つの表面の両方において、重合が良好に進行していることを示し、異方性光吸収層の耐久性により優れる。
【0026】
P1及びP2のそれぞれの範囲は、異方性光吸収層の耐久性により優れる点で、0.3以下が好ましく、0.2以下がより好ましい。下限は、0が挙げられる。
【0027】
異方性光吸収層は、厚み方向に吸収軸を有することが好ましい。ここで厚み方向に吸収軸を有するとは、面内方向の吸光度よりも、厚み方向の吸光度が大きいことを意味する。
また、異方性光吸収層の吸収軸は、厚み方向と略平行であることが好ましい。言い換えれば、異方性光吸収層の吸収軸は、異方性光吸収層の表面(主面)に対して、垂直配向していることが好ましい。
ここで、「略平行」とは、吸収軸と、厚み方向とのなす角度が0~10°であることを意味する。
【0028】
なお、異方性光吸収層が厚み方向に吸収軸を有するためには、二色性物質を垂直配向させる方法が挙げられる。言い換えれば、二色性物質の長軸方向を異方性光吸収層の厚み方向に略平行となるように、二色性物質を配向させる方法が挙げられる。略平行の定義は、上述した通りである。
【0029】
異方性光吸収層は、二色性物質及び液晶性化合物を含む組成物を用いて形成される。
以下、組成物に含まれる成分について詳述する。
【0030】
(二色性物質)
二色性物質とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する物質をいう。
なお、二色性物質は、その分子形状から、棒状の二色性物質と、円盤状の二色性物質とが挙げられ、棒状の二色性物質が好ましい。
二色性物質の極大吸収波長は、400~500nmである。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、二色性物質の極大吸収波長は、440~480nmが好ましい。
二色性物質の極大吸収波長の測定方法としては、二色性物質を含むクロロホルム溶液(濃度:10mg/L)および二色性物質を含まないリファレンスを用意して、分光光度計(島津製作所株式会社製 UV-3150)(方式:ダブルビーム法、波長範囲:2nmステップで380~680nm)を用いて、二色性物質の吸収スペクトルを測定して、二色性物質の極性吸収波長を求める。
【0031】
二色性物質としては、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素、及び、アントラキノン色素が挙げられ、アゾ色素が好ましい。アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、及び、スチルベンアゾ色素が挙げられ、ビスアゾ色素、又は、トリスアゾ色素が好ましい。また、特開2018-53167号公報に記載の化合物も好ましい。
【0032】
二色性物質は、重合性基を有することが好ましい。二色性物質が重合性基を有することで、二色性物質の使用量が多い場合でも、異方性光吸収層の架橋度が低下せず、薄くても高い選択波長吸収性を示しつつ、耐久性に優れた異方性光吸収層を形成できる。
重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、スチリル基、p-(2-フェニルエテニル)フェニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、及び、メタクリロイルオキシ基等のエチレン性不飽和結合を有する重合性基、エポキシ基、並びに、オキセタニル基が挙げられる。
二色性物質は、芳香族環を有することが好ましい。芳香族環としては、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環が挙げられ、中でも、芳香族炭化水素環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
【0033】
アゾ色素としては、式(10)で表される化合物が好ましい。
式(10) A(-N=N-A-N=N-A
式(10)中、A及びAは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、又は、置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。Aは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、置換基を有していてもよいナフタレン-1,4-ジイル基、又は、置換基を有していてもよい2価の複素環基を表す。pは1~4の整数を表す。pが2以上の整数である場合、複数のAは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0034】
1価の複素環基としては、キノリン、チアゾール、ベンゾチアゾール、チエノチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、オキサゾール、及び、ベンゾオキサゾール等の複素環化合物から1個の水素原子を除いた基が挙げられる。
2価の複素環基としては、上記複素環化合物から2個の水素原子を除いた基が挙げられる。
【0035】
及びAにおけるフェニル基、ナフチル基、及び、1価の複素環基、並びに、Aにおける1,4-フェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基、及び、2価の複素環基が任意に有する置換基としては、メチル基、エチル基、及び、ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、及び、ブトキシ基等の炭素数1~4のアルコキシ基;トリフルオロメチル基等の炭素数1~4のフッ化アルキル基;シアノ基;ニトロ基;水酸基;塩素原子、及び、フッ素原子等のハロゲン原子;アミノ基、ジエチルアミノ基、及び、ピロリジノ基等の置換又は無置換アミノ基(置換アミノ基とは、炭素数1~6のアルキル基を1つ若しくは2つ有するアミノ基、又は、2つの置換アルキル基が互いに結合して炭素数2~8のアルカンジイル基を形成しているアミノ基を意味する。無置換アミノ基は、-NHである。)が挙げられる。
なお、炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、及び、ヘキシル基が挙げられる。炭素数2~8のアルカンジイル基としては、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、及び、オクタン-1,8-ジイル基が挙げられる。
【0036】
また、A及びAにおけるフェニル基、ナフチル基、及び、1価の複素環基が有する置換基として、重合性基を含む置換基が好ましい。
重合性基を含む置換基としては、式(11)で表される基が好ましい。
式(11) P-Sp-(L-A-L-*
Pは、重合性基を表す。重合性基の定義は、上述した通りである。
Spは、炭素数2~16のアルキレン基を表し、上記アルキレン基において隣接しない-CH-は-CO-、又は、-O-に置換されていてもよい。
及びLは、それぞれ独立に、単結合、-O-、-OCO-、-COO-、又は、-OCOO-を表す。
は、置換基を有していてもよい、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-ナフチレン基、又は、1,5-ナフチレン基を表す。
nは0~3の整数である。
【0037】
二色性物質の具体例としては、以下が例示される。
【0038】
【化1】
【0039】
【化2】
【0040】
組成物中における二色性物質の含有量は、組成物中の後述する液晶性化合物100質量部に対して、70~130質量部が好ましく、80~120質量部がより好ましい。
二色性物質は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。二色性物質が2種以上を用いられる場合、それらの合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0041】
(液晶性化合物)
液晶性化合物は、重合性基を有することが好ましい。つまり、組成物は、重合性液晶性化合物を含むことが好ましい。重合性基の定義は、二色性物質の欄で説明した通りである。
液晶性化合物は、芳香族環を有することが好ましい。芳香族環としては、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環が挙げられ、中でも、芳香族炭化水素環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
【0042】
重合性液晶性化合物としては、重合性基を有する低分子液晶性化合物、及び、重合性基を有する高分子液晶性化合物が挙げられる。
ここで、「低分子液晶性化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有さない液晶性化合物を意味する。また、「高分子液晶性化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有する液晶性化合物を意味する。
低分子液晶性化合物としては、例えば、特開2013-228706号公報に記載される化合物が挙げられる。
高分子液晶性化合物としては、例えば、特開2011-237513号公報に記載されるサーモトロピック液晶性高分子、及び、特開2015-107492号公報に記載される側鎖型液晶性化合物が挙げられる。
【0043】
低分子液晶性化合物としては、分子形状から、棒状液晶性化合物、及び、円盤状液晶性化合物に大別でき、二色性色素が棒状の形状を有する場合は、配向秩序度を高める点から、低分子液晶性化合物として棒状液晶性化合物が好ましい。
棒状液晶性化合物としては、式(20)で表される化合物が好ましい。
式(20) U-V-W-X-Y-X-Y-X-W-V-U
【0044】
式(20)中、X、X、及び、Xは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、又は、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基を表す。ただし、X、X、及び、Xのうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基である。シクロへキサン-1,4-ジイル基を構成する-CH-は、-O-、-S-、又は、-NR-に置き換わっていてもよい。Rは、炭素数1~6のアルキル基、又は、フェニル基を表す。
及びYは、それぞれ独立に、-CHCH-、-CHO-、-COO-、-OCOO-、単結合、-N=N-、-CR=CR-、-C≡C-、又は、-CR=N-を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
は、水素原子、又は、重合性基を表す。重合性基の定義は、上述した通りである。
は、重合性基を表す。重合性基の定義は、上述した通りである。
及びWは、それぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-、又は、-OCOO-を表す。
及びVは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルカンジイル基を表し、アルカンジイル基を構成する-CH-は、-O-、-S-、又は、-NH-に置き換わっていてもよい。
【0045】
、X及びXのうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基であることが好ましい。置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基は、無置換であることが好ましい。
置換基を有していてもよいシクロへキサン-1,4-ジイル基は、置換基を有していてもよいトランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基であることが好ましく、置換基を有していてもよいトランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基は無置換であることが好ましい。
【0046】
置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、又は、置換基を有していてもよいシクロへキサン-1,4-ジイル基が任意に有する置換基としては、メチル基、エチル基、及び、ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基、塩素原子、及び、フッ素原子等のハロゲン原子、並びに、シアノ基が挙げられる。
【0047】
としては、-CHCH-、-COO-、又は、単結合が好ましく、Yとしては、-CHCH-、又は、-CHO-が好ましい。
【0048】
としては、重合性基が好ましい。
及びUとしては、重合性基が好ましく、光重合性基がより好ましい。光重合性基を有する重合性液晶性化合物は、より低温条件下で重合できる。
【0049】
及びVで表されるアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基、及び、イコサン-1,20-ジイル基が挙げられる。
及びVとしては、炭素数2~12のアルカンジイル基が好ましく、炭素数6~12のアルカンジイル基がより好ましい。
置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルカンジイル基が任意に有する置換基としては、シアノ基、並びに、塩素原子、及び、フッ素原子等のハロゲン原子が挙げられる。
アルカンジイル基は、無置換であることが好ましく、無置換かつ直鎖状のアルカンジイル基であることがより好ましい。
【0050】
及びWとしては、それぞれ独立に、単結合、又は、-O-が好ましい。
【0051】
式(20)で表される化合物の具体例としては、特開2016-027387号公報の段落0053~0056に記載の式(1-1)~式(1-23)で表される化合物が挙げられる。
【0052】
式(20)で表される化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、2種以上の重合性液晶性化合物を組み合わせる場合には、少なくとも1種が式(20)で表される化合物であることが好ましく、2種以上が式(20)で表される化合物であることがより好ましい。
2種の重合性液晶性化合物を組み合わせる場合の混合比としては、1:99~50:50が好ましく、5:95~50:50がより好ましく、10:90~50:50がさらに好ましい。
【0053】
式(20)で表される化合物は、例えば、Lub et al. Recl.Trav.Chim.Pays-Bas,115, 321-328(1996)及び特許第4719156号等に記載の公知方法で製造できる。
【0054】
高分子液晶性化合物は、主鎖型液晶性化合物と側鎖型液晶性化合物とに大別でき、主鎖型液晶性化合物とは、高分子主鎖中に液晶性を示す構造を有する化合物であり、側鎖型液晶性化合物とは高分子側鎖部分に液晶性を示す構造を有する化合物である。得られる異方性光吸収層の配向秩序度が高く、組成物を調製する際に溶媒への溶解性に優れる点で、側鎖型液晶性化合物が好ましい。
【0055】
重合性の側鎖型液晶性化合物としては、(メタ)アクリル系樹脂が好ましく、式(21)で表される繰り返し単位を有する化合物がより好ましい。
【0056】
式(21):
【0057】
【化3】
【0058】
Spは、炭素数2~16のアルキレン基、又は、ポリアルキレンオキシ基を表し、上記アルキレン基において隣接しない-CH-は、-O-に置換されていてもよい。
上記ポリアルキレンオキシ基中のアルキレンの炭素数は、1~4が好ましく、2~3がより好ましい。
Spとしては、炭素数2~10のアルキレン基、又は、ポリアルキレンオキシ基が好ましく、ポリアルキレンオキシ基がより好ましい。Spがポリアルキレンオキシ基である場合、二色性物質の配向性がより向上し、本発明の効果がより優れる。
【0059】
Spは、単結合、又は、炭素数1~8のアルキレン基を表し、上記アルキレン基において隣接しない-CH-は、-O-に置換されていてもよい。
【0060】
及びLは、それぞれ独立に、単結合、-O-、-OCO-、-COO-、又は、-OCOO-を表し、単結合、-O-、-OCO-、又は、-COO-が好ましく、単結合、又は、-O-がより好ましい。
~Lは、それぞれ独立に、単結合、-OCO-、又は、-COO-を表し、単結合、又は、-COO-が好ましい。
~Lの少なくとも一つは、-OCO-、又は、-COO-であることが好ましい。
【0061】
~Aは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族基、又は、置換基を有していてもよい環状脂肪族基を表す。A~Aの少なくとも一つは、置換基を有していてもよい芳香族基であることが好ましい。
芳香族基としては、炭素数6~20の芳香族基が好ましく、炭素数6~14の芳香族基がより好ましく、炭素数6~10の芳香族基がさらに好ましい。芳香族基としては、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-ナフチレン基、1,5-ナフチレン基、及び、アントラセニレン基が挙げられる。
環状脂肪族基としては、炭素数3~10の環状脂肪族基が好ましく、炭素数4~8の環状脂肪族基がより好ましく、炭素数5~6の環状脂肪族基がさらに好ましい。環状脂肪族基としては、シクロペンチレン基、及び、シクロヘキシレン基が挙げられる。
芳香族基、及び、状脂肪族基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシ基、炭素数1~6のアルキルスルフィニル基、炭素数1~6のアルキルスルホニル基、炭素数1~6のフルオロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルスルファニル基、炭素数1~6のN-アルキルアミノ基、炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基、炭素数1~6のN-アルキルスルファモイル基、及び、炭素数2~12のN,N-ジアルキルスルファモイル基が挙げられる。
上記置換基は、さらに上記置換基を有していてもよい。
【0062】
Rは、重合性基を表す。重合性基の定義は上述した通りである。
重合性基としては、光重合させるのに適したラジカル重合性基、又は、カチオン重合性基が好ましく、取り扱い及び製造が容易な点から、アクリロイル基、メタクロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、又は、オキセタニル基が好ましい。
Xは水素原子又はメチル基を表し、水素原子が好ましい。
nは0又は1を表す。
【0063】
式(21)で表される繰り返し単位の具体例を以下に示す。以下で例示する繰り返し単位以外にも、特開2015-197492号公報に例示される繰り返し単位が挙げられる。
【0064】
【化4】
【0065】
【化5】
【0066】
式(21)で表される繰り返し単位を有する化合物は、既知の合成反応を組み合わせて合成できる。即ち、様々な文献(例えば、Methoden derOrganischen Chemie(Houben-Weyl編)、Some specific methods (Thieme-Verlag, Stuttgart著)、実験化学講座及び新実験化学講座)に記載の方法を参照して合成できる。また、合成方法としては、米国特許4683327号、同4983479号、同5622648号、同5770107号、国際特許(WO)95/022586号、同97/000600号、同98/047979号、及び、英国特許2297549号の各明細書の記載も参照できる。
【0067】
式(21)で表される繰り返し単位を有する化合物は、複数種の式(21)で表される繰り返し単位で構成されたコポリマーであってもよく、また、式(21)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含んだコポリマーでもよい。
こうした繰り返し単位の具体例としては、以下が挙げられる。以下で例示する繰り返し単位以外にも、特開2015-197492号公報に例示される繰り返し単位が挙げられる。
【0068】
【化6】
【0069】
【化7】
【0070】
組成物中における液晶性化合物の含有量は、組成物中の全固形分に対して、10~20質量%が好ましく、12~18質量%がより好ましい。
液晶性化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。液晶性化合物が2種以上を用いられる場合、それらの合計量が上記範囲であることが好ましい。
なお、固形分とは、組成物中の溶媒を除いた成分を意味する。上記成分の性状が液状であっても、固形分として計算する。
【0071】
組成物は、二色性物質及び液晶性化合物以外の成分を含んでいてもよい。
組成物は、垂直配向剤を含むことが好ましい。組成物が垂直配向剤を含むと、二色性物質及び液晶性化合物の配向をより垂直にでき、配向秩序度をより高くできる。
垂直配向剤としては、ボロン酸化合物、及び、オニウム塩が挙げられる。
【0072】
ボロン酸化合物としては、式(30)で表される化合物が好ましい。
【0073】
式(30)
【0074】
【化8】
【0075】
式(30)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換のアリール基、又は、置換若しくは無置換のヘテロ環基を表す。
は、(メタ)アクリル基を含む置換基を表す。
ボロン酸化合物の具体例としては、特開2008-225281号公報の段落0023~0032に記載の一般式(I)で表されるボロン酸化合物が挙げられる。
ボロン酸化合物としては、以下に例示する化合物も好ましい。
【0076】
【化9】
【0077】
オニウム塩としては、式(31)で表される化合物が好ましい。
【0078】
式(31)
【0079】
【化10】
【0080】
式(31)中、環Aは、含窒素複素環からなる第4級アンモニウムイオンを表す。Xは、アニオンを表す。Lは、2価の連結基を表す。Lは、単結合、又は、2価の連結基を表す。Yは、5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基を表す。Zは、2~20のアルキレン基を部分構造として有する2価の連結基を表す。P及びPは、それぞれ独立に、重合性エチレン性不飽和結合を有する一価の置換基を表す。
オニウム塩の具体例としては、特開2012-208397号公報の段落0052~0058号公報に記載のオニウム塩、特開2008-026730号公報の段落0024~0055に記載のオニウム塩、及び、特開2002-037777号公報に記載のオニウム塩が挙げられる。
【0081】
組成物中の垂直配向剤の含有量は、液晶性化合物全質量に対して、0.1~400質量%が好ましく、0.5~350質量%がより好ましい。
垂直配向剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。垂直配向剤が2種以上を用いられる場合、それらの合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0082】
組成物は、レベリング剤を含むことが好ましい。組成物がレベリング剤を含むと、異方性光吸収層の表面にかかる乾燥風による面状の荒れを抑制し、二色性物質がより均一に配向する。
レベリング剤は特に制限されず、フッ素原子を含むレベリング剤(フッ素系レベリング剤)、又は、ケイ素原子を含むレベリング剤(ケイ素系レベリング剤)が好ましく、フッ素系レベリング剤がより好ましい。
【0083】
フッ素系レベリング剤としては、脂肪酸の一部がフルオロアルキル基で置換された多価カルボン酸の脂肪酸エステル類、及び、フルオロ置換基を有するポリアクリレート類が挙げられる。特に、二色性物質及び液晶性化合物として棒状化合物を用いる場合、二色性物質及び液晶性化合物の垂直配向を促進する点から、式(40)で表される化合物由来の繰り返し単位を含むレベリング剤が好ましい。
【0084】
式(40)
【0085】
【化11】
【0086】
は、水素原子、ハロゲン原子、又は、メチル基を表す。
Lは、2価の連結基を表す。Lとしては、炭素数2~16のアルキレン基が好ましく、上記アルキレン基において隣接しない任意の-CH-は、-O-、-COO-、-CO-、又は、-CONH-に置換されていてもよい。
nは、1~18の整数を表す。
【0087】
式(40)で表される化合物由来の繰り返し単位を有するレベリング剤は、さらに他の繰り返し単位を含んでいてもよい。
他の繰り返し単位としては、式(41)で表される化合物由来の繰り返し単位が挙げられる。
【0088】
式(41)
【0089】
【化12】
【0090】
11は、水素原子、ハロゲン原子、又は、メチル基を表す。
Xは、酸素原子、硫黄原子、又は、-N(R13)-を表す。R13は、水素原子、又は、炭素数1~8のアルキル基を表す。
12は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。上記アルキル基の炭素数は、1~20が好ましい。上記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び、環状のいずれであってもよい。
また、上記アルキル基の有していてもよい置換基としては、ポリ(アルキレンオキシ)基、及び、重合性基が挙げられる。重合性基の定義は、上述した通りである。
【0091】
レベリング剤が、式(40)で表される化合物由来の繰り返し単位、及び、式(41)で表される化合物由来の繰り返し単位を含む場合、式(40)で表される化合物由来の繰り返し単位の含有量は、レベリング剤が含む全繰り返し単位に対して、10~90モル%が好ましく、15~95モル%がより好ましい。
レベリング剤が、式(40)で表される化合物由来の繰り返し単位、及び、式(41)で表される化合物由来の繰り返し単位を含む場合、式(41)で表される化合物由来の繰り返し単位の含有量は、レベリング剤が含む全繰り返し単位に対して、10~90モル%が好ましく、5~85モル%がより好ましい。
【0092】
また、レベリング剤としては、上述した式(40)で表される化合物由来の繰り返し単位に代えて、式(42)で表される化合物由来の繰り返し単位を含むレベリング剤も挙げられる。
【0093】
式(42)
【0094】
【化13】
【0095】
は、水素原子、ハロゲン原子、又は、メチル基を表す。
は、2価の連結基を表す。
nは、1~18の整数を表す。
【0096】
レベリング剤の具体例としては、特開2004-331812号公報の段落0046~0052に例示される化合物、及び、特開2008-257205号公報の段落0038~0052に記載の化合物が挙げられる。
【0097】
組成物中のレベリング剤の含有量は、液晶性化合物全質量に対して、10~80質量%が好ましく、20~60質量%がより好ましい。
レベリング剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。レベリング剤が2種以上を用いられる場合、それらの合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0098】
組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。
重合開始剤の種類は特に制限されず、光重合開始剤、及び、熱重合開始剤が挙げられ、光重合開始剤が好ましい。なお、重合開始剤は、ラジカル重合開始剤、及び、カチオン重合開始剤のいずれであってもよい。
重合開始剤としては、異方性光吸収層の耐久性がより優れる点で、オキシムエステル化合物、及び、アシルホスフィン化合物からなる群から選択される少なくとも1種以上であることが好ましい。
組成物が重合開始剤を含む場合、重合開始剤の含有量は、組成物中の上記二色性物質と上記液晶性化合物との合計100質量部に対し、0.01~30質量部が好ましく、0.1~15質量部がより好ましい。
重合開始剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合開始剤が2種以上を用いられる場合、それらの合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0099】
組成物は、作業性の点から、溶媒を含むことが好ましい。
溶媒としては、例えば、ケトン類、エーテル類、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン)、脂環式炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭素類、エステル類、アルコール類、セロソルブ類、セロソルブアセテート類、スルホキシド類、アミド類、及び、ヘテロ環化合物の有機溶媒、並びに、水が挙げられる。
組成物が溶媒を含む場合、溶媒の含有量は、液晶性組成物の全質量に対して、80~99質量%が好ましく、83~97質量%がより好ましい。
溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。溶媒が2種以上を用いられる場合、それらの合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0100】
上述した組成物を用いた異方性光吸収層の形成方法は特に制限されず、所定の基材上に上記組成物を塗布して塗膜を形成する工程(以下、「塗膜形成工程」ともいう。)と、塗膜に含まれる液晶性成分を配向させる工程(以下、「配向工程」ともいう。)と、塗膜に硬化処理を施す工程(以下、「硬化工程」ともいう。)をこの順に含む方法が挙げられる。
なお、液晶性成分とは、上述した液晶性化合物だけでなく、上述した二色性物質が液晶性を有している場合は、液晶性を有する二色性物質も含む成分である。
以下、上記各工程について詳述する。
【0101】
塗膜形成工程は、所定の基材上に組成物を塗布して塗膜を形成する工程である。
基材の種類は特に制限されず、透明支持体、及び、透明支持体上に配置された配向膜を有する積層体が挙げられる。
透明支持体を形成する材料としては、例えば、ポリカーボネート系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート(PET)、及び、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー;ポリスチレン、及び、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、及び、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー;ナイロン、及び、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー;イミド系ポリマー;スルホン系ポリマー;ポリエーテルスルホン系ポリマー;ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー;ポリフェニレンスルフィド系ポリマー;塩化ビニリデン系ポリマー;ビニルアルコール系ポリマー;ビニルブチラール系ポリマー;アリレート系ポリマー;ポリオキシメチレン系ポリマー;エポキシ系ポリマー;等が挙げられる。
また、透明支持体を形成する材料としては、熱可塑性ノルボルネン系樹脂も好ましい。熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス及びゼオノア、並びに、JSR(株)製のアートンが挙げられる。
また、透明支持体を形成する材料としては、トリアセチルセルロース(TAC)に代表される、セルロース系ポリマーも好ましい。
透明支持体の厚みは特に制限されず、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、10~80μmがさらに好ましい。
なお、本明細書において、「透明」とは、可視光の透過率が60%以上であることを示し、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
【0102】
配向膜は、一般的には、ポリマーを主成分とする。配向膜用ポリマーとしては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。利用されるポリマーは、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリイミド、又は、その誘導体が好ましい。
なお、配向膜としては、公知のラビング処理が施された膜が好ましい。
また、配向膜としては、光配向膜を用いてもよい。光配向膜は、光配向化合物に対して直線偏光又は非偏光照射を施すことにより製造できる。光配向化合物としては、光の作用により二量化及び異性化の少なくとも一方が生じる光反応性基を有する感光性化合物が好ましい。また、光反応性基が、桂皮酸誘導体、クマリン誘導体、カルコン誘導体、マレイミド誘導体、アゾベンゼン化合物、ポリイミド化合物、スチルベン化合物、及び、スピロピラン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の誘導体、又は、化合物の骨格を有することが好ましい。
配向膜の厚みは、0.01~10μmが好ましい。
【0103】
なお、上記では、基材として、透明支持体及び配向膜を含む積層体について述べたが、特にこの形態に制限されず、例えば、表面にラビング処理が施された透明支持体を用いてもよい。
【0104】
組成物の塗布方法としては、ロールコーティング法、グラビア印刷法、スピンコート法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スプレー法、及び、インクジェット法が挙げられる。
【0105】
配向工程は、塗膜に含まれる液晶性成分を配向させる工程である。
配向工程は、乾燥処理を有していてもよい。乾燥処理によって、溶媒等の成分を塗膜から除去できる。乾燥処理は、塗膜を室温下において所定時間放置する方法(例えば、自然乾燥)によって行われてもよいし、加熱及び/又は送風する方法によって行われてもよい。
ここで、液晶性組成物に含まれる液晶性成分は、上述した塗膜形成工程又は乾燥処理によって、配向する場合がある。
乾燥処理が塗膜に含まれる液晶性成分の液晶相への転移温度以上の温度により行われる場合には、後述する加熱処理は実施しなくてもよい。
塗膜に含まれる液晶性成分の液晶相への転移温度は、製造適性等の点から、10~250℃が好ましく、25~190℃がより好ましい。
【0106】
配向工程は、加熱処理を有することが好ましい。これにより、塗膜に含まれる液晶性成分を配向させることができる。
加熱処理の際の加熱温度は、製造適性等の点から、10~250℃が好ましく、25~190℃がより好ましい。また、加熱時間は、1~300秒間が好ましく、1~90秒間がより好ましい。
【0107】
配向工程は、加熱処理後に実施される冷却処理を有していてもよい。冷却処理は、加熱後の塗膜を室温(20~25℃)程度まで冷却する処理である。これにより、塗膜に含まれる液晶性成分の配向を固定できる。冷却手段としては、特に制限されず、公知の方法により実施できる。
【0108】
硬化工程は、例えば、加熱及び/又は光照射(露光)によって実施される。このなかでも、硬化工程は光照射によって実施されることが好ましい。
硬化に用いる光は、赤外線、可視光、及び、紫外線が挙げられ、紫外線が好ましい。なお、硬化時に加熱しながら紫外線を照射してもよいし、特定の波長のみを透過するフィルターを介して紫外線を照射してもよい。
光照射を行う際の露光量は特に制限されないが、10~2000mJ/cmが好ましく、異方性光吸収層の耐久性がより優れる点で、200~1000mJ/cmがより好ましい。
露光が加熱しながら行われる場合、露光時の加熱温度は、25~140℃が好ましい。
また、露光は、窒素雰囲気下で行われてもよい。
【0109】
本発明の表示装置の第1実施形態の製造方法は特に制限されず、上述した自発光型表示素子と異方性光吸収層とを積層する方法が挙げられる。
両者を積層する際には、自発光型表示素子と異方性光吸収層との間に貼合層を配置して、両者を貼り合わせてもよい。
貼合層は、自発光型表示素子と異方性光吸収層と貼り合わせられる物であれば、公知の各種の材料からなるものが利用可能である。例えば、貼り合わせる際には流動性を有し、その後、固体になる、接着剤からなる層(接着剤層)でも、貼り合わせる際にゲル状(ゴム状)の柔らかい固体で、その後もゲル状の状態が変化しない、粘着剤からなる層(粘着剤層)でも、接着剤と粘着剤との両方の特徴を持った材料からなる層でもよい。貼合層の具体例としては、光学透明接着剤、光学透明両面テープ、及び、紫外線硬化型樹脂が挙げられる。
なお、貼合層で貼り合わせるのではなく、自発光型表示素子と異方性光吸収層とを積層して、枠体又は治具等で保持して、本発明の表示装置を構成してもよい。
【0110】
本発明の表示装置の第2実施形態は、表示素子、及び、異方性光吸収層以外の部材を含んでいてもよい。例えば、上述した、貼合層、及び、基材等が挙げられる。
【0111】
<<第2実施形態>>
図3に、本発明の表示装置の第2実施形態の模式的な断面図を示す。
図3に示すように、表示装置10Bは、自発光型表示素子12と、異方性光吸収層14、λ/4板16と、偏光子18とを含む。なお、図3において、観察者は偏光子18側から観察する。従って、表示装置10Bは、視認側から、偏光子18と、λ/4板16と、異方性光吸収層14と、自発光型表示素子12とをこの順で含む。
表示装置10Bは、λ/4板16及び偏光子18をさらに含む点以外は、上述した表示装置10Aと同様の構成を有する。
以下では、主に、λ/4板16及び偏光子18について詳述する。
【0112】
<λ/4板>
λ/4板とは、λ/4機能を有する板であり、具体的には、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(又は円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する板である。
λ/4板の具体例としては、例えば、米国特許出願公開2015/0277006号等に記載のλ/4板が挙げられる。
なお、λ/4板が単層構造である態様としては、具体的には、延伸ポリマーフィルム、及び、液晶性化合物を用いて形成された光学異方性層が挙げられる。
また、λ/4板が複層構造である態様としては、具体的には、λ/4板とλ/2板とを積層してなる広帯域λ/4板が挙げられる。
【0113】
λ/4板のRe(550)は特に制限されないが、λ/4板として有用である点で、110~160nmが好ましく、120~150nmがより好ましい。
【0114】
λ/4板は、逆波長分散性を示すのが好ましい。λ/4板が逆波長分散性を示すとは、特定波長(可視光範囲)における面内のレタデーション(Re)値を測定した際に、測定波長が大きくなるにつれてRe値が同等又は高くなるものをいう。
【0115】
<偏光子>
偏光子は、光を特定の直線偏光に変換する機能を有する部材(直線偏光子)であればよく、主に、吸収型偏光子を利用できる。
吸収型偏光子としては、ヨウ素系偏光子、二色性物質を利用したニ色性物質系偏光子、及び、ポリエン系偏光子が挙げられる。ヨウ素系偏光子及びニ色性物質系偏光子には、塗布型偏光子と延伸型偏光子とがあり、いずれも適用できるが、ポリビニルアルコールにヨウ素又は二色性物質を吸着させ、延伸して作製される偏光子が好ましい。
偏光子の吸収軸とλ/4板の遅相軸との関係は特に制限されないが、偏光子とλ/4板との積層物が円偏光板として好適に作用する点から、偏光子の吸収軸とλ/4板の遅相軸とのなす角は、45°±10°が好ましい。
【0116】
本発明の表示装置の第2実施形態においては、λ/4板及び偏光子をさらに含む。この2つの部材は、いわゆる円偏光板として機能できる。つまり、λ/4板及び偏光子を含む円偏光板を表示素子上に配置することにより、表示装置に反射防止機能を付与できる。
【0117】
本発明の表示装置の第2実施形態の製造方法は、上述した第1実施形態で説明した方法が挙げられる。
また、本発明の表示装置の第2実施形態は、自発光型表示素子、異方性光吸収層、λ/4板、及び、偏光子以外の部材を含んでいてもよい。例えば、上述した、貼合層、及び、基材等が挙げられる。
【0118】
<<第3実施形態>>
図4に、本発明の表示装置の第3実施形態の模式的な断面図を示す。
図4に示すように、表示装置10Cは、自発光型表示素子12と、λ/4板16と、異方性光吸収層14、偏光子18とを含む。なお、図4において、観察者は偏光子18側から観察する。従って、表示装置10Bは、視認側から、偏光子18と、異方性光吸収層14と、λ/4板16と、自発光型表示素子12とをこの順で含む。
表示装置10Cは、異方性光吸収層14及びλ/4板16の積層順以外は、表示装置10Bと同じ構成を有する。
表示装置10Cにおいては、異方性光吸収層14が、偏光子18とλ/4板16との間に配置されるが、偏光子18とλ/4板16とで達成される円偏光板の機能は表示装置10Cに付与される。
【0119】
本発明の表示装置の第3実施形態の製造方法は、上述した第1実施形態で説明した方法が挙げられる。
また、本発明の表示装置の第3実施形態は、自発光型表示素子、異方性光吸収層、λ/4板、及び、偏光子以外の部材を含んでいてもよい。例えば、上述した、貼合層、及び、基材等が挙げられる。
【実施例
【0120】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量及びその割合、並びに、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更できる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されない。
【0121】
<実施例1>
(配向膜の形成)
セルロースアセテートフィルム(富士フイルム製、フジタックTG40)を温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した。その後、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/mで塗布し、110℃に加熱し、(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、得られたフィルムを10秒間搬送した。次に、得られたフィルムに対して、バーコーターを用いて純水を3ml/m塗布した。次に、得られたフィルムに対して、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りとを3回繰り返した後に、フィルムを70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアセテートフィルムを作製した。
─────────────────────────────────
アルカリ溶液
─────────────────────────────────
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
界面活性剤(C1429O(CHCHO)20H) 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
─────────────────────────────────
【0122】
アルカリ鹸化処理したセルロースアセテートフィルム上に、下記の配向膜形成用組成物1を#12のバーを用いて塗布し、得られたフィルムを110℃にて2分間乾燥し、配向膜1を形成した。
─────────────────────────────────
配向膜形成用組成物1
─────────────────────────────────
下記変性ポリビニルアルコール 2.00質量部
水 74.08質量部
メタノール 23.76質量部
光重合開始剤(イルガキュア2959、BASF社製) 0.06質量部
─────────────────────────────────
【0123】
変性ポリビニルアルコール(下記式で表される化合物。式中、繰り返し単位に付された数値は、全繰り返し単位に対する、各繰り返し単位のモル比率を表す。)
【0124】
【化14】
【0125】
(異方性光吸収層の形成)
得られた配向膜1上に、バーコーターを用いて異方性光吸収層形成用組成物A1を塗布し、塗膜を形成した。塗膜を室温にて30秒間乾燥させた後、145℃まで加熱して20秒間保持し、塗膜を室温になるまで冷却した。次に、室温まで冷却した塗膜を紫外線照射(露光量:500mJ/cm、超高圧水銀ランプ使用)によって配向を固定化し、異方性光吸収層を有するフィルム1を製造した。異方性光吸収層の膜厚は、1.5μmであった。
【0126】
――――――――――――――――――――――――――――――
異方性光吸収層形成用組成物A1
――――――――――――――――――――――――――――――
液晶性化合物P-1 16.7質量部
化合物B1 16.7質量部
化合物E1 28.5質量部
化合物E2 28.5質量部
重合開始剤(BASF製、イルガキュア819) 0.15質量部
レベリング剤L1 6.95質量部
レベリング剤L2 2.49質量部
テトラヒドロフラン 11012質量部
シクロペンタノン 1943質量部
――――――――――――――――――――――――――――――
【0127】
液晶性化合物P-1(下記式で表される化合物。式中、繰り返し単位に付された数値は、全繰り返し単位に対する、各繰り返し単位のモル比率を表す。)
【0128】
【化15】
【0129】
化合物B1(下記式で表される化合物)
【0130】
【化16】
【0131】
化合物E1(下記式で表される化合物)
【0132】
【化17】
【0133】
化合物E2(下記式で表される化合物)
【0134】
【化18】
【0135】
レベリング剤L1(下記式で表される化合物。式中、繰り返し単位に付された数値は、全繰り返し単位に対する、各繰り返し単位のモル比率を表す。)
【0136】
【化19】
【0137】
レベリング剤L2(下記式で表される化合物。式中、繰り返し単位に付された数値は、全繰り返し単位に対する、各繰り返し単位のモル比率を表す。)
【0138】
【化20】
【0139】
(垂直配向性評価)
得られた異方性光吸収層の膜厚方向をz軸としたときに、偏光顕微鏡のポラライザの振動方向とアナライザの振動方向とが直交したクロスニコル(直交ニコル)の状態において、異方性光吸収層をクロスニコルの間に設置してz軸方向から観察した際の透過光強度を官能評価した。
透過光強度は、z軸を回転軸として異方性光吸収層の方位角を360°回転させて評価した。光漏れがある場合、その方位軸に屈折率異方性があることを表し、光漏れがなければ、異方性光吸収層を構成している液晶性部位の配向が均一に垂直配向していることを表している。結果を表1に示す。
A: 全方位において透過光が全く観察できない(良好な垂直配向)
B: わずかに透過光が観察される方位がある(わずかに傾いた垂直配向)
C: 全方位でわずかに透過光が観察される(配向のわずかな乱れ)
D: 全方位で明らかな透過光が観察される。(配向の大きな乱れ)
【0140】
<実施例2>
異方性光吸収層形成用組成物A1において、化合物B1を下記化合物B2に代えた以外は、実施例1と同様の手順に従って、異方性光吸収層を有するフィルム2を作製した。垂直配向性評価の結果を表1に示す。
【0141】
化合物B2(下記式で表される化合物)
【0142】
【化21】
【0143】
<実施例3>
異方性光吸収層を有するフィルムの形成に際し、露光量を500mJ/cmから100mJ/cmとした以外は、実施例1と同様の手順に従って、異方性光吸収層を有するフィルム3を作製した。垂直配向性評価の結果を表1に示す。
【0144】
<実施例4>
異方性光吸収層形成用組成物A1において、光重合開始剤としてイルガキュア819の代わりにイルガキュア907(BASF製)を用いた以外は、実施例1と同様の手順に従って、異方性光吸収層を有するフィルム4を作製した。垂直配向性評価の結果を表1に示す。
【0145】
<実施例5>
異方性光吸収層形成用組成物A1において、化合物B1を下記化合物B4に代えた以外は、実施例1と同様の手順に従って、異方性光吸収層を有するフィルム5を作製した。垂直配向性評価の結果を表1に示す。
【0146】
化合物B4(下記式で表される化合物)
【化22】
【0147】
<実施例6>
異方性光吸収層形成用組成物A1において、液晶性化合物P-1を液晶性化合物P-2に代えた以外は、実施例1と同様の手順に従って、異方性光吸収層を有するフィルム6を作製した。垂直配向性評価の結果を表1に示す。
【0148】
液晶性化合物P-2(下記式で表される化合物。式中、繰り返し単位に付された数値は、全繰り返し単位に対する、各繰り返し単位のモル比率を表す。)
【0149】
【化23】
【0150】
<比較例1>
異方性光吸収層形成用組成物A1において、化合物B1を下記化合物B3に代えた以外は、実施例1と同様の手順に従って、異方性光吸収層を有するフィルム7を作製した。垂直配向性評価の結果を表1に示す。
【0151】
化合物B3(下記式で表される化合物)
【化24】
【0152】
<比較例2>
異方性光吸収層形成用組成物A1に代えて異方性光吸収層形成用組成物A2を用いた以外は、実施例1と同様の手順に従って、異方性光吸収層を有するフィルム8を作製した。垂直配向性評価の結果を表1に示す。
【0153】
――――――――――――――――――――――――――――――
異方性光吸収層形成用組成物A2
――――――――――――――――――――――――――――――
液晶性化合物P-1 22.3質量部
化合物B1 11.1質量部
化合物E1 28.5質量部
化合物E2 28.5質量部
重合開始剤(BASF製、イルガキュア819) 0.15質量部
レベリング剤L1 7.0質量部
レベリング剤L2 2.5質量部
テトラヒドロフラン 11012質量部
シクロペンタノン 1943質量部
――――――――――――――――――――――――――――――
【0154】
<比較例3>
異方性光吸収層形成用組成物A1に代えて異方性光吸収層形成用組成物A3を用いた以外は、実施例1と同様の手順に従って、異方性光吸収層を有するフィルム9を作製した。垂直配向性評価の結果を表1に示す。
【0155】
――――――――――――――――――――――――――――――
異方性光吸収層形成用組成物A3
――――――――――――――――――――――――――――――
液晶性化合物P-1 38.8質量部
化合物B1 38.8質量部
重合開始剤(BASF製、イルガキュア819) 0.36質量部
レベリング剤L1 16.2質量部
レベリング剤L2 5.8質量部
テトラヒドロフラン 11012質量部
シクロペンタノン 1943質量部
――――――――――――――――――――――――――――――
【0156】
<比較例4>
異方性光吸収層形成用組成物A1に代えて異方性光吸収層形成用組成物A4を用いた以外は、実施例1と同様の手順に従って、異方性光吸収層を有するフィルム10を作製した。垂直配向性評価の結果を表1に示す。
【0157】
――――――――――――――――――――――――――――――
異方性光吸収層形成用組成物A4
――――――――――――――――――――――――――――――
液晶性化合物P-1 18.4質量部
化合物B1 18.4質量部
化合物E1 31.5質量部
化合物E2 31.5質量部
重合開始剤(BASF製、イルガキュア819) 0.17質量部
テトラヒドロフラン 11012質量部
シクロペンタノン 1943質量部
――――――――――――――――――――――――――――――
【0158】
<評価>
(吸光度の異方性の測定)
作製した異方性光吸収層を有するフィルム1~10について、以下のようにして吸光度の異方性を測定した。
分光光度計(島津製作所株式会社製 UV-3150)を用いて、ダブルビーム法により2nmステップにて380~680nmの波長範囲で、極大吸収波長での3次元吸光度を測定した。ここでの3次元吸光度とは、異方性光吸収層の法線方向から極角60°の全方位角において、極大吸収波長での異方性光吸収層の吸光度を測定した際に、最も吸光度の高い値を示す方位角をx軸、異方性光吸収層の法線方向から極角60°の全方位角において、極大吸収波長での異方性光吸収層の吸光度を測定した際に、最も吸光度の低い値を示す方位角をy軸、異方性光吸収層の法線方向をz軸としたとき、入射する平行光に対する各々の方向の吸光度(Ax、Ay、Az)である。具体的には、測定光である直線偏光に対して、サンプルを回転させることで測定を行った。ここでAmax(60)=Ax(60)であり、Amin(60)=Ay(60)であり、A(0)=Azである。Amax(60)、Amin(60)、A(0)、Amax(60)/Amax(0)、および、Amax(60)/Amin(60)の値を表1に示す。
【0159】
(重合性エチレン性不飽和結合量の定量)
異方性光吸収層を有するフィルム1~10における厚さ方向に対して垂直な2つの表面のうち、異方性光吸収層の配向膜側とは反対側の表面に粘接着剤層を貼合した後、粘接着剤層を介して異方性光吸収層を仮支持体フィルムに貼り合せて、セルロースアセテートフィルムを剥離して、積層体サンプルR1~10を作製した。
得られた積層体サンプルR1~10、及び、転写前の異方性光吸収層1~10に対して、Nicolet6700(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)にて赤外全反射吸収スペクトルの測定を行い、得られた測定結果(エチレン性不飽和結合の面内変角振動(1408cm-1)由来のピーク強度I(1)と、芳香族環の不飽和結合の伸縮振動(1504cm-1)由来のピーク強度I(2)の値)から、P1(配向膜とは反対側の表面の値)およびP2(配向膜と接していた側の面)を算出し、その比を求めた。結果を表1に示す。
【0160】
(OLED(Organic Light Emitting Diode)パネルへの実装)
マイクロキャビティ構造を有するOLED表示素子として、Samsung製Galaxy Edge S8+からOLED表示素子を取り出し、その表示面に粘着剤を介して異方性光吸収層を有するフィルム1~10をそれぞれ貼合して、異方性光吸収層を有するOLED表示装置を作製した。得られたOLED表示装置を最大輝度白表示とし、正面方向を視認により評価した。結果を表1に示す。
A: ニュートラルな白である。
B: およそニュートラルな白である。
C: わずかに色味を帯びている。
D: 明確に色味を帯びている。
また、得られたOLED表示装置を最大輝度白表示とし、極角60°での全方位角にて視認した際に、最も評価が悪かった全方位角での評価結果を表1に示す。
【0161】
(耐久性評価)
60℃、90%RHの条件下にて、得られたフィルム1~10を500時間湿熱処理した後、Amax(60)/A(0)を測定し、湿熱処理前のAmax(60)/A(0)からの変化率{(|湿熱処理前のAmax(60)/A(0)-湿熱処理後のAmax(60)/A(0))|/湿熱処理前のAmax(60)/A(0)×100}を求めた。
A: 変化率が20%未満である。
B: 変化率が20%以上40%未満である。
C: 変化率が40%以上である。
【0162】
表1中、「λmax(nm)」欄は、二色性物質の極大吸収波長(nm)を表す。
「重合性基の有無」欄は、二色性物質及び液晶性化合物の両方が重合性基を有する場合を「A」、液晶性化合物は重合性基を有するが、二色性物質は重合性基を有さない場合を「B」、液晶性化合物は重合性基を有さないが、二色性物質が重合性基を有する場合を「C」とする。
【0163】
【表1】
【0164】
表1に示すように、本発明の表示装置においては、所定の効果が確認された。
特に、実施例1~4と5~6との比較より、二色性物質及び液晶性化合物の両方が重合性基を有する場合、耐久性により優れていた。
また、実施例1と4との比較より、重合開始剤として、オキシムエステル化合物を用いた場合、耐久性により優れていた。
【符号の説明】
【0165】
10A,10B,10C 表示装置
12 自発光型表示素子
14 異方性光吸収層
16 λ/4板
18 偏光子
図1
図2
図3
図4