(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】光変調デバイス
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20220125BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20220125BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20220125BHJP
G02F 1/1347 20060101ALI20220125BHJP
G02F 1/01 20060101ALI20220125BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/13363
G02F1/1333 500
G02F1/1347
G02F1/01 A
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2019556618
(86)(22)【出願日】2018-04-30
(86)【国際出願番号】 KR2018005021
(87)【国際公開番号】W WO2018199720
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2019-10-18
(31)【優先権主張番号】10-2017-0054964
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0003783
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0003784
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0003785
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0003786
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0003787
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0003788
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0003789
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0004305
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リム、ウン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ナム フン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ジュン スン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン ホン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヒュン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ギム、ミン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、キュン キ
(72)【発明者】
【氏名】ムン、イン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】オー、ドン ヒュン
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-148548(JP,A)
【文献】特開昭59-224826(JP,A)
【文献】特開2017-067821(JP,A)
【文献】実開昭60-021720(JP,U)
【文献】国際公開第2016/010134(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106488839(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0062012(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0028594(KR,A)
【文献】特表平06-504146(JP,A)
【文献】米国特許第05608567(US,A)
【文献】特開昭58-143305(JP,A)
【文献】米国特許第04586790(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/13363
G02F 1/1333
G02F 1/1347
G02F 1/01
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置されている第1および第2高分子フィルム基板と、
前記第1および第2高分子フィルム基板の間に光変調層を有する光変調フィルム層と
を含み、
前記第1および第2高分子フィルム基板は、それぞれ、550nm波長の光に対する面内位相差が4,000nm以上であり、
前記第1および第2高分子フィルム基板は延伸高分子フィルムであり、
前記第1および第2高分子フィルム基板の第1方向は、TD(Transverse direction)方向であり、
前記第1および第2高分子フィルム基板の第2方向は、MD(Machine Direction)方向であり、
前記第1および第2高分子フィルム基板は、前記第1高分子フィルム基板の前記第1方向と前記第2高分子フィルム基板の前記第1方向とのなす角度が0度~10度の範囲内となるように配置されて、
前記第1および第2高分子フィルム基板は、それぞれ、前記第2方向における熱膨張係数CTE2と前記第1方向における熱膨張係数CTE1との比率CTE2/CTE1が1.5以上であり、
前記第2方向における前記熱膨張係数CTE2が50~150ppm/℃の範囲内であ
り、
前記第1および第2高分子フィルム基板は、それぞれ、前記第2方向における弾性率YM2と前記第1方向における弾性率YM1との比率YM1/YM2が1.5以上であり、
前記第1方向における前記弾性率YM1が2~10GPaの範囲内であり、
前記第1および第2高分子フィルム基板は、それぞれ、前記第2方向における最大応力MS2と前記第1方向における最大応力MS1との比率MS1/MS2が1.5以上であり、
前記第1方向における前記最大応力MS1が150~250MPaの範囲内である、
光変調デバイス。
【請求項2】
前記第1および第2高分子フィルム基板は、それぞれ、一面に電極層が形成された電極フィルム基板であり、
前記各電極層が対向するように前記第1および第2高分子フィルム基板が配置されている、
請求項1に記載の光変調デバイス。
【請求項3】
前記第1および第2高分子フィルム基板は、ポリエステルフィルム基板である、
請求項1または2に記載の光変調デバイス。
【請求項4】
前記第1および第2高分子フィルム基板のそれぞれの前記第1方向における伸び率が15%以上である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項5】
前記第1および第2高分子フィルム基板はそれぞれ、前記第1方向における伸び率E1と前記第1方向と垂直をなす前記第2方向における伸び率E2との比率E1/E2が3以上である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項6】
第1および第2高分子フィルム基板のそれぞれは、前記第1方向および前記第2方向の両方と40度~50度の範囲内の角度をなす第3方向における伸び率E3が、前記第1方向における伸び率E1に比べて大きく、
前記第3方向における前記伸び率E3と前記第2方向における伸び率E2との比率E3/E2が5以上である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項7】
前記光変調フィルム層の少なくとも一側に配置された偏光子をさらに含む、
請求項1から
6のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項8】
前記偏光子の透過軸と前記第1および第2高分子フィルム基板の前記第1方向とのなす角度が0度~10度または80度~100度の範囲内である、
請求項
7に記載の光変調デバイス。
【請求項9】
光変調フィルム層を2層含み、
前記各光変調フィルム層に含まれるすべての前記第1および第2高分子フィルム基板の前記第1方向がなす角度が、0度~10度の範囲内にある、
請求項1から
8のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項10】
前記光変調層は、液晶層、電気変色物質層、光変色物質層または電気泳動物質層、分散粒子配向層またはゲストホスト液晶層である、
請求項1から
9のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項11】
左眼用レンズと
右眼用レンズと、
前記左眼用レンズと前記右眼用レンズを支持するフレームと
を含む
アイウェアであって、
前記左眼用レンズおよび前記右眼用レンズは、それぞれ、請求項1から1
0のいずれか一項に記載の光変調デバイスを含む
アイウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、光変調デバイスに関する。
【0002】
本出願は、2017年4月28日付けの韓国特許出願第10-2017-0054964号、2018年1月11月付けの韓国特許出願第10-2018-0003783号、韓国特許出願第10-2018-0003784号、韓国特許出願第10-2018-0003785号、韓国特許出願第10-2018-0003786号、韓国特許出願第10-2018-0003787号、韓国特許出願第10-2018-0003788号、韓国特許出願第10-2018-0003789号、2018年1月12日付けの韓国特許出願第10-2018-0004305号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
対向する2つの基板の間に液晶化合物などを含む光変調層を位置させた光変調デバイスは、多様な用途に使用されている。
【0004】
例えば、特許文献1(ヨーロッパ公開特許第0022311号)には、液晶ホスト物質(Liquid Crystal Host material)と二色性染料ゲスト(dichroic dye guest)の混合物を適用したいわゆるGHセル(Guest host cell)を光変調層として使用した透過率可変装置が知られている。
【0005】
このようなデバイスにおいて前記基板としては、主に光学的等方性に優れ、寸法安定性などが良好なガラス基板が使用されてきた。
【0006】
光変調デバイスの用途が、ディスプレイ装置に限定されず、アイウェアやサンルーフなどのスマートウィンドウなどに拡大され、デバイスの形態も、平面に限定されず、フォールディング(Folding)形態など多様なデザインが適用され、いわゆるフレキシブルデバイスなどの必要性も提起されて、光変調デバイスの基板としてガラス基板の代わりに高分子フィルム基板を適用しようとする試みがある。
【0007】
高分子フィルム基板を適用する場合には、ガラス基板と類似した特性を確保するために、できるだけ光学的に等方性であり、いわゆるMD(Machine Direction)およびTD(transverse direction)方向における物性の差異が小さいフィルム基板を適用することが有利であると知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願は、光変調デバイスに関する。本出願では、光学的および機械的に非等方性である高分子フィルムを基板として適用して、機械的物性と光学的物性が共に優れた光変調デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書において角度を定義する用語のうち垂直、平行、直交または水平などは、目的とする効果を損傷させない範囲においての実質的な垂直、平行、直交または水平を意味し、前記垂直、平行、直交または水平の範囲は、製造誤差(error)または偏差(variation)等の誤差を含むものである。例えば、前記それぞれの場合は、約±15度以内の誤差、約±10度以内の誤差または約±5度以内の誤差を含むことができる。
【0010】
本明細書で言及する物性のうち測定温度が当該物性に影響を及ぼす場合、特に別途規定しない限り、前記物性は、常温で測定した物性である。
【0011】
本明細書で用語「常温」は、特に加温されるか、または減温されない状態における温度であって、約10℃~30℃の範囲内のいずれか一つの温度、例えば、約15℃以上、18℃以上、20℃以上または約23℃以上であり、且つ、約27℃以下の温度を意味する。また、特に別途規定しない限り、本明細書で言及する温度の単位は、℃である。
【0012】
本明細書で言及する位相差および屈折率は、特に別途規定しない限り、約550nm波長の光に対する屈折率を意味する。
【0013】
特に別途規定しない限り、本明細書で言及する任意の2つの方向がなす角度は、前記2つの方向がなす鋭角または鈍角のうち鋭角であるか、または時計回りの方向または反時計回りの方向に測定された角度のうち小さい角度であってもよい。したがって、特に別途規定しない限り、本明細書で言及する角度は、正数である。ただし、場合によって、時計回りの方向または反時計回りの方向に測定された角度間の測定方向を表示するために、前記時計回りの方向に測定された角度および反時計回りの方向に測定された角度のうちいずれか一つの角度を正数で表記し、他の一つの角度を負数で表記することもできる。
【0014】
本明細書でアクティブ液晶層または光変調層に含まれる液晶化合物は、液晶分子、液晶ホスト(二色性染料ゲストとともに含まれる場合)または単に液晶と呼称されることもできる。
【0015】
本出願は、光変調デバイスに関する。用語「光変調デバイス」は、少なくとも2つ以上の異なる光の状態の間をスイッチングし得るデバイスを意味する。前記で異なる光の状態は、少なくとも透過率および/または反射率が異なる状態を意味する。
【0016】
前記光変調デバイスが具現することができる状態の例としては、透過、遮断、高反射および/または低反射モード状態がある。
【0017】
一例において、前記光変調デバイスは、少なくとも前記透過および遮断モード状態の間をスイッチングし得るデバイスであるか、あるいは、前記高反射および低反射モード状態の間をスイッチングし得るデバイスであってもよい。
【0018】
前記透過モード状態における光変調装置の透過率が少なくとも20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上または80%以上程度であってもよい。また、前記遮断モード状態における光変調装置の透過率は、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下または5%以下であってもよい。透過モードで透過率は、高いほど有利であり、遮断モードでは、透過率が低いほど有利であるので、前記透過モード状態における透過率の上限と遮断モード状態における透過率の下限は、特に制限されず、一例において、前記透過モード状態における透過率の上限は、約100%であり、遮断モード状態における透過率の下限は、約0%であってもよい。
【0019】
なお、一例において、前記透過モード状態と遮断モード状態との間をスイッチングし得る光変調デバイスにおいて前記透過モード状態における透過率と遮断モード状態における透過率との差異(透過モード-遮断モード)は、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上または40%以上であってもよく、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下または45%以下であってもよい。
【0020】
前記言及された透過率は、例えば、直進光透過率であってもよい。直進光透過率は、前記デバイスに入射した光に対する前記入射方向と同一方向に透過した光の比率の百分率である。例えば、前記デバイスがフィルムまたはシート形態であれば、前記フィルムまたはシート表面の法線方向に並ぶ方向に入射した光のうちやはり前記法線方向に並ぶ方向に前記デバイスを透過した光の百分率を前記透過率として定義することができる。
【0021】
前記高反射モード状態における光変調装置の反射率は、少なくとも10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上または40%以上程度であってもよい。また、前記低反射モード状態において光変調装置の反射率は、20%以下、15%以下、10%以下または5%以下であってもよい。高反射モードで反射率は、高いほど有利であり、低反射モードでは、反射率が低いほど有利であるので、前記高反射モード状態における反射率の上限と低反射モード状態における反射率の下限は、特に制限されず、一例において、前記高反射モード状態における反射率は、60%以下、55%以下または50%以下であってもよく、低反射モード状態における反射率の下限は、約0%であってもよい。
【0022】
なお、一例において、前記低反射モード状態と高反射モード状態との間をスイッチングし得る光変調デバイスにおいて前記高反射モード状態における反射率と低反射モード状態における反射率との差異(高反射モード-低反射モード)は、5%以上、10%以上15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上または40%以上であってもよく、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下または45%以下であってもよい。
【0023】
前記言及された透過率および反射率は、それぞれ、可視光領域、例えば、約400~700nmまたは約380~780nmの範囲内のいずれか一つの波長に対する透過率または反射率であるか、前記可視光領域の全体に対する透過率または反射率であるか、前記可視光領域の全体に対する透過率または反射率のうち最大または最小透過率または反射率であるか、または、前記可視光領域内の透過率の平均値または反射率の平均値であってもよい。
【0024】
本出願の光変調デバイスは、前記透過モード、遮断モード、高反射モードおよび低反射モード状態から選択されたいずれか一つの状態および他の一つの状態の少なくとも2つ以上の状態の間をスイッチングし得るように設計することができる。必要に応じて、前記状態以外に他の状態、例えば、前記透過モードおよび遮断モード状態の中間透過率の状態、前記高反射モードおよび低反射モード状態の中間反射率の状態などを含むその他第3の状態またはそれ以上の状態も具現することができる。
【0025】
前記のような光変調デバイスのスイッチングは、外部信号の印加、例えば、電圧信号の印加の有無によって調節することができる。例えば、電圧のような外部信号の印加がない状態で光変調デバイスは、前記記述した状態のうちいずれか一つの状態を維持しつつ、電圧が印加されると、他の状態にスイッチングされ得る。印加される電圧の強さ、周波数および/または形態を変更することにより、また、モードの状態を変更したり、あるいは、前記第3の他のモード状態を具現することもできる。
【0026】
本出願の光変調デバイスは、基本的に対向配置された2つの基板と、前記基板の間に位置する光変調層を有する光変調フィルム層とを含むことができる。以下、便宜上、前記対向配置された2つの基板のうちいずれか一つの基板を第1基板と呼称し、他の基板を第2基板と呼称する。
【0027】
図1は、本出願の例示的な光変調フィルム層の断面図であり、前記光変調フィルム層は、対向配置されている第1および第2基板11、13と、前記第1および第2高分子フィルム基板の間に存在する光変調層12とを含むことができる。
【0028】
本出願の光変調デバイスでは、前記基板として高分子フィルム基板を適用する。前記光変調デバイスの基板は、ガラス層を含まなくてもよい。本出願では、光学的に大きい非等方性を有し、また、機械的物性の側面においても非等方性である高分子フィルム基板を特定の関係で配置することにより、いわゆるレインボー現象などの光学的欠陥がなく、機械的物性に優れたデバイスを構成することができる。このような結果は、優れた光学的物性を確保するためには、光学的に等方性である基板が適用されなければならず、機械的物性が等方性である基板が、デバイスの寸法安定性など機械的物性の側面において有利であるという従来技術の常識に反する結果である。
【0029】
本明細書で前記光学的および機械的物性の側面において非等方性である高分子フィルム基板は、非対称基板または非対称高分子フィルム基板と呼称され得る。前記で高分子フィルム基板が光学的に非等方性というのは、前述した面内位相差を有する場合であり、機械的物性の側面において非等方性というのは、後述する物性を有する場合である。
【0030】
以下、本明細書で言及する高分子フィルム基板の物性は、前記高分子フィルム基板自体の物性であるか、あるいは、前記高分子フィルム基板の一面に電極層が形成された状態における物性であってもよい。この際、前記電極層は、前記高分子フィルム基板が光学デバイスに含まれている状態で形成されている電極層であってもよい。
【0031】
本明細書で言及する各高分子フィルム基板の物性の測定は、本明細書の実施例の項目に記述した方式によって測定する。
【0032】
一例において、前記第1および第2高分子フィルム基板の面内位相差は、それぞれ、約4,000nm以上であってもよい。
【0033】
本明細書で面内位相差(Rin)は、下記数式1で計算された値を意味する。
【0034】
[数式1]
Rin=d×(nx-ny)
【0035】
数式1で、Rinは、面内位相差であり、dは、高分子フィルム基板の厚さであり、nxは、高分子フィルム基板の遅相軸方向の屈折率であり、nyは、進相軸方向の屈折率であって、前記遅相軸方向と直交する面内方向の屈折率である。
【0036】
前記第1および第2高分子フィルム基板の面内位相差は、それぞれ、4,000nm以上、5,000nm以上、6,000nm以上、7,000nm以上、8,000nm以上、9,000nm以上、10,000nm以上、11,000nm以上、12,000nm以上、13,000nm以上、14,000nm以上または15,000nm以上程度であってもよい。また、前記第1および第2高分子フィルム基板のそれぞれの面内位相差は、約50,000nm以下、約40,000nm以下、約30,000nm以下、20,000nm以下、18,000nm以下、16,000nm以下、15,000nm以下または12,000nm以下程度であってもよい。
【0037】
前記のような大きい位相差を有する高分子フィルムとしては、いわゆる高延伸PET(poly(ethylene terephthalate))フィルムまたはSRF(Super Retardation Film)等と知られているフィルムが代表的に知られている。したがって、本出願で前記高分子フィルム基板は、例えば、ポリエステルフィルム基板であってもよい。
【0038】
上記のように、極めて高い位相差を有するフィルムは、当業界に公知となっており、このようなフィルムは、光学的に大きい非等方性はもちろん、製造過程においての高延伸などにより機械的物性も大きい非対称性を示す。当業界に公知となった前記高分子フィルム基板の代表的な例としては、PET(poly(ethylene terephthalate))フィルムなどのようなポリエステルフィルムであり、例えば、Toyobo社で供給される商品名SRF(Super Retardation Film)系のフィルムがある。
【0039】
一例において、前記それぞれの高分子フィルム基板は、面内の任意の第1方向における伸び率E1と前記第1方向と垂直をなす第2方向における伸び率E2との比率E1/E2が3以上であってもよい。前記比率E1/E2は、他の例において、約3.5以上、4以上、4.5以上、5以上、5.5以上、6以上または6.5以上であってもよい。前記比率E1/E2は、他の例において、約20以下、18以下、16以下、14以下、12以下、10以下、8以下または7.5以下であってもよい。
【0040】
本明細書で使用する用語「高分子フィルム基板の第1方向、第2方向および第3方向」は、前記フィルム基板の面内の任意の方向である。例えば、高分子フィルム基板が延伸高分子フィルム基板である場合に、前記面内の方向は、前記高分子フィルム基板のMD(Machine Direction)およびTD(transverse direction)方向により形成される面内の方向であってもよい。一例において、本明細書で記述する第1方向は、高分子フィルム基板の遅相軸および進相軸方向のうちいずれか一つの方向であり、第2方向は、遅相軸および進相軸方向のうち他の一つの方向であってもよい。他の例において、前記第1方向は、高分子フィルム基板が延伸高分子フィルム基板である場合に、MD(Machine Direction)およびTD(transverse direction)方向のうちいずれか一つの方向であり、第2方向は、MD(Machine Direction)およびTD(transverse direction)方向のうち他の一つの方向であってもよい。
【0041】
一例において、本明細書で言及する高分子フィルム基板の第1方向は、前記TD方向または遅相軸方向であってもよい。
【0042】
前記で第1および第2高分子フィルム基板のそれぞれの前記第1方向(例えば、前述した遅相軸方向またはTD方向)における伸び率が15%以上または20%以上であってもよい。前記伸び率は、他の例において、約25%以上、30%以上、35%以上または40%以上であってもよく、約60%以下、55%以下、50%以下または45%以下であってもよい。
【0043】
一例において、前記第1および第2高分子フィルム基板のそれぞれは、前記第1および第2方向とそれぞれ40度~50度の範囲内の角度または約45度をなす第3方向における伸び率E3が、前記第1方向における伸び率E1に比べて大きく、前記第3方向における伸び率E3と前記第2方向における伸び率E2との比率E3/E2が5以上であってもよい。
【0044】
前記比率E3/E2は、他の例において、5.5以上、6以上、6.5以上、7以上、7.5以上、8以上または8.5以上であってもよく、約20以下、18以下、16以下、14以下、12以下または10以下であってもよい。
【0045】
第1および第2高分子フィルム基板のそれぞれの前記第3方向における伸び率が30%以上であってもよい。前記伸び率は、他の例において、約35%以上、40%以上、45%以上、50%以上または55%以上であってもよく、約80%以下、75%以下、70%以下または65%以下であってもよい。
【0046】
前記第1および第2高分子フィルム基板は、それぞれ、前記第2方向における熱膨張係数CTE2と前記第1方向における熱膨張係数CTE1との比率CTE2/CTE1が1.5以上であってもよい。前記熱膨張係数CTE1、CTE2は、それぞれ、40℃~80℃の温度範囲内で確認される値である。前記比率CTE2/CTE1は、他の例において、約2以上、約2.5以上、3以上または3.5以上であるか、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下または4以下であってもよい。
【0047】
前記第2方向における熱膨張係数CTE2は、5~150ppm/℃の範囲内であってもよい。前記熱膨張係数は、約10ppm/℃以上、15ppm/℃以上、20ppm/℃以上、25ppm/℃以上、30ppm/℃以上、35ppm/℃以上、40ppm/℃以上、45ppm/℃以上、50ppm/℃以上、約55ppm/℃以上、60ppm/℃以上、65ppm/℃以上、70ppm/℃以上、75ppm/℃以上または80ppm/℃以上であるか、140ppm/℃以下、130ppm/℃以下、120ppm/℃以下、100ppm/℃以下、95ppm/℃以下、90ppm/℃以下、85ppm/℃以下、80ppm/℃以下、40ppm/℃以下、30ppm/℃以下または25ppm/℃以下であってもよい。
【0048】
前記第1および第2高分子フィルム基板は、それぞれ、前記第2方向における弾性率YM2と前記第1方向における弾性率YM1との比率YM1/YM2が1.5以上であってもよい。前記比率YM1/YM2は、他の例において、約2以上であるか、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下または2.5以下であってもよい。
【0049】
前記第1方向における弾性率YM1は、約2~10GPaの範囲内であってもよい。前記弾性率YM1は、他の例において、約2.5GPa以上、3GPa以上、3.5GPa以上、4GPa以上、4.5GPa以上、5GPa以上または5.5GPa以上であるか、約9.5GPa以下、9GPa以下、8.5GPa以下、8GPa以下、7.5GPa以下、7GPa以下、6.5GPa以下または6GPa以下であってもよい。
【0050】
前記弾性率は、いわゆるヤング率(Young's modulus)であり、後述する実施例の方式によって測定する。
【0051】
前記第1および第2高分子フィルム基板は、それぞれ、前記第2方向における最大応力MS2と前記第1方向における最大応力MS1との比率MS1/MS2が1.5以上であってもよい。前記比率MS1/MS2は、他の例において、約2以上であるか、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下または2.5以下であってもよい。
【0052】
前記第1方向(例えば、前述した遅相軸方向またはTD方向)における最大応力MS1は、約80~300MPaの範囲内であってもよい。前記最大応力MS1は、他の例において、約90MPa以上、約100MPa以上、約110MPa以上、約120MPa以上、約130MPa以上、約140MPa以上、約150MPa以上、約155MPa以上、160MPa以上、165MPa以上、170MPa以上、175MPa以上または180MPa以上であるか、約300MPa以下、約290MPa以下、約280MPa以下、約270MPa以下、約260MPa以下、約250MPa以下、約245MPa以下、240MPa以下、235MPa以下、230MPa以下、225MPa以下、220MPa以下、215MPa以下、210MPa以下、205MPa以下、200MPa以下、195MPa以下または190MPa以下であってもよい。
【0053】
本出願の光変調デバイスにおいて前記第1高分子フィルム基板の第1方向と前記第2高分子フィルム基板の第1方向とのなす角度の絶対値は、0度~10度または0度~5度の範囲内であるか、あるいは、前記第1方向は、略互いに水平であってもよい。前記第1方向は、前述したように、高分子フィルム基板の遅相軸方向またはTD方向であってもよい。
【0054】
本出願では、上記のように、光学的および機械的物性が非対称性である高分子フィルム基板を前記のような特定の関係を有するように配置してデバイスを構成することにより、光学的物性および機械的物性を良好に具現することができる。
【0055】
このような効果が具現される理由は、明確ではないが、少なくとも2つの高分子フィルム基板が有する大きい非対称性を類似に調節し、さらに前記両者の非対称を特定の軸を基準として対称を成すように配置することにより、等方性構造のフィルムの適用時に比べて、さらに優れた光学的および機械的物性のバランスが確保されるからであると推測される。
【0056】
前述したように、前記のような大きい光学的および機械的非対称性を有する高分子フィルムの代表的な例は、いわゆる高延伸ポリエステルフィルム等と知られた延伸PET(polyethyleneterephtalate)フィルムであり、このようなフィルムは、当業界で容易に入手することができる。
【0057】
通常、延伸PETフィルムは、PET系樹脂を溶融/押出で製膜し、延伸して製造した1層以上の一軸延伸フィルムまたは製膜後に縦および横延伸して製造した1層以上の二軸延伸フィルムである。
【0058】
PET系樹脂は、通常、反復単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートからなる樹脂を意味し、他のジカルボン酸成分とジオール成分を含むこともできる。他のジカルボン酸成分としては、特に限定されるものではないが、例えばイソフタル酸、p-ベータ-オキシエトキシ安息香酸、4,4'-ジカルボキシジフェニル、4,4'-ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4-カルボキシフェニル)エタン、アジピン酸、セバシン酸および/または1,4-ジカルボキシシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0059】
他のジオール成分としては、特に限定されるものではないが、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよび/またはポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
【0060】
前記ジカルボン酸成分やジオール成分は、必要に応じて2種以上を組み合わせて使用することができる。また、p-オキシ安息香酸などのオキシカルボン酸を併用することもできる。また、他の共重合成分として、少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合およびカルボネート結合などを含有するジカルボン酸成分、またはジオール成分が使用されることもできる。
【0061】
PET系樹脂の製造方法としては、テレフタル酸、エチレングリコールおよび/または必要に応じて他のジカルボン酸または他のジオールを直接重縮合させる方法、テレフタル酸のジアルキルエステルおよびエチレングリコールおよび/または必要に応じて他のジカルボン酸のジアルキルエステルまたは他のジオールをエステル交換反応させた後に重縮合させる方法、およびテレフタル酸および/または必要に応じて他のジカルボン酸のエチレングリコールエステルおよび/または必要に応じて他のジオールエステルを重縮合させる方法などが採用される。
【0062】
それぞれの重合反応には、アンチモン系、チタン系、ゲルマニウム系またはアルミニウム系化合物を含む重合触媒、または、前記複合化合物を含む重合触媒が使用できる。
【0063】
重合反応条件は、使用される単量体、触媒、反応装置および目的とする樹脂物性によって適宜選択することができ、特に制限されるものではないが、例えば反応温度は、通常、約150℃~約300℃、約200℃~約300℃または約260℃~約300℃である。また、反応圧力は、通常、大気圧~約2.7Paであり、反応の後半には、減圧側であってもよい。
【0064】
重合反応は、ジオール、アルキル化合物または水などの離脱反応物を揮発させることにより進行される。
【0065】
重合装置は、反応槽が一つに完結されるものであってもよく、または複数の反応槽を連結したものであってもよい。この場合、通常、重合度によって反応物は反応槽の間を移送されながら重合される。また、重合の後半に、横型反応装置を備え、加熱/混練しつつ揮発させる方法も採用することができる。
【0066】
重合終了後の樹脂は、溶融状態で反応槽や横型反応装置から放出された後、冷却ドラムや冷却ベルトなどで冷却・粉砕されたフレーク状の形態で、または押出器に導入されてひも形状に押出された後にカットされたペレット状の形態で得られる。また、必要に応じて固相重合を行って、分子量を向上させるか、または低分子量の成分を減少させることもできる。PET系樹脂に含まれ得る低分子量の成分としては、環状の三量体成分が挙げられるが、このような環状の三量体成分の樹脂中においての含有量は、通常、5000ppm以下または3000ppm以下に調節される。
【0067】
PET系樹脂の分子量は、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒に樹脂を溶解させ、30℃で測定した極限粘度で示したとき、通常、0.45~1.0dL/g、0.50~10dL/gまたは0.52~0.80dL/gの範囲である。
【0068】
また、PET系樹脂は、必要に応じて添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば潤滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤および耐衝撃性改良剤などが挙げられる。その添加量は、光学物性に悪影響を及ぼさない範囲とすることが好ましい。
【0069】
PET系樹脂は、このような添加剤の配合のために、および後述するフィルム成形のために、通常、押出器により組み立てられたペレット形状で用いられる。ペレットのサイズや形状は、特に制限されるものではないが、通常、高さ、直径がいずれも5mm以下である円周状、球状または扁平球状である。このようにして得られるPET系樹脂は、フィルム状に成形し、延伸処理することにより、透明で且つ均質の機械的強度が高いPETフィルムとすることができる。その製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば下記に記載する方法が採用される。
【0070】
乾燥させたPET樹脂からなるペレットを溶融押出装置に供給し、融点以上で加熱して溶融させる。次に、溶融した樹脂をダイから押出、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度となるように、急冷固化させて、実質的に非結晶状態の未延伸フィルムを得る。この溶融温度は、使用されるPET系樹脂の融点や押出器によって定められるものであり、特に制限されるものではないが、通常、250℃~350℃である。また、フィルムの平面性を向上させるためには、フィルムと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法または液体塗布密着法が好ましく採用される。静電印加密着法とは、通常、フィルムの上面側にフィルムの流れと直交する方向に線状電極を設置し、該電極に約5~10kVの直流電圧を印加することにより、フィルムに正電荷を提供して、回転冷却ドラムとフィルムとの密着性を向上させる方法である。また、液体塗布密着法とは、回転冷却ドラム表面の全体または一部(例えば、フィルムの両端部と接触する部分のみ)に液体を均一に塗布することにより、回転冷却ドラムとフィルムとの密着性を向上させる方法である。必要に応じて両者を併用することもできる。使用されるPET系樹脂は、必要に応じて2種以上の樹脂、構造や組成が異なる樹脂を混合することもできる。例えば、ブロッキング防止剤としての粒状充填材、紫外線吸収剤または帯電防止剤などが配合されたペレットと、無配合のペレットを混合して利用することなどが挙げられる。
【0071】
また、押出させるフィルムの積層数は、必要に応じて2層以上とすることもできる。例えば、ブロッキング防止剤としての粒状充填材を配合したペレットと無配合のペレットを用意し、他の押出器から同じダイに供給して、「充填材配合/無配合/充填材配合」の2種の3層からなるフィルムを押出させることなどが挙げられる。
【0072】
前記未延伸フィルムは、ガラス転移温度以上の温度で通常、まず押出方向に縦延伸される。延伸温度は、通常、70℃~150℃、80~130℃または90~120℃である。また、延伸倍率は、通常、1.1~6倍または2~5.5倍である。延伸は、1回済み、または必要に応じて複数回に分けて行うこともできる。
【0073】
このようにして得られる縦延伸フィルムは、以後に熱処理を行うことができる。次に、必要に応じて弛緩処理を行うこともできる。この熱処理温度は、通常、150℃~250℃、180~245℃または200~230℃である。また、熱処理時間は、通常、1~600秒間または1~300秒間または1~60秒間である。
【0074】
弛緩処理の温度は、通常、90~200℃または120~180℃である。また、弛緩量は、通常、0.1~20%または2~5%である。この弛緩処理の温度および弛緩量は、弛緩処理後のPETフィルムの150℃での熱収縮率が2%以下となるように、弛緩量および弛緩処理時の温度を設定することができる。
【0075】
一軸延伸および二軸延伸フィルムを得る場合、通常、縦延伸処理後に、または必要に応じて熱処理または弛緩処理を経た後に、テンターにより横延伸が行われる。この延伸温度は、通常、70℃~150℃、80℃~130℃または90℃~120℃である。また、延伸倍率は、通常、1.1~6倍または2~5.5倍である。その後、熱処理および必要に応じて弛緩処理を行うことができる。熱処理温度は、通常、150℃~250℃または180℃~245℃または200~230℃である。熱処理時間は、通常、1~600秒間、1~300秒間または1~60秒間である。
【0076】
弛緩処理の温度は、通常、100~230℃、110~210℃または120~180℃である。また、弛緩量は、通常、01~20%、1~10%または2~5%である。この弛緩処理の温度および弛緩量は、弛緩処理後のPETフィルムの150℃での熱収縮率が2%以下となるように、その弛緩量および弛緩処理時の温度を設定することができる。
【0077】
一軸延伸および二軸延伸処理においては、横延伸後、ボーイングと代表されるような配向主軸の変形を緩和させるために、再度熱処理を行うか、または延伸処理を行うことができる。ボーイングによる配向主軸の延伸方向に対する変形の最大値は、通常、45度以内、30度以内または15度以内である。また、ここで、延伸方向とは、縦延伸または横延伸における延伸が大きい方向をいう。
【0078】
PETフィルムの二軸延伸では、通常、横延伸倍率の場合が縦延伸倍率より若干大きく行われ、この場合、延伸方向とは、前記フィルムの長さ方向に対して垂直方向をいう。また、一軸延伸では、通常、上記したように、横方向に延伸され、この場合、延伸方向とは、同一に長さ方向に対して垂直方向をいう。
【0079】
また、配向主軸とは、延伸PETフィルム上の任意の点での分子配向方向をいう。また、配向主軸の延伸方向に対する変形とは、配向主軸と延伸方向との角度差をいう。また、その最大値とは、長さ方向に対して垂直方向上での値の最大値をいう。
【0080】
前記配向主軸の確認方向は、公知となっており、例えば、位相差フィルム・光学材料検査装置RETS(大塚電子株式会社製造)または分子配向計MOA(王子計測機器株式会社製造)を利用して測定することができる。
【0081】
本出願で使用される延伸PETフィルムには、防眩性(ヘイズ)が付与されているものであってもよい。防眩性を付与する方法は、特に限定されるものではないが、例えば前記原料樹脂中に無機微粒子または有機微粒子を混合してフィルム化する方法、前記フィルムの製造方法に準じて、一方に無機微粒子または有機微粒子が混合された層を有する未延伸フィルムから延伸フィルム化する方法、または延伸PETフィルムの一方に、無機微粒子または有機微粒子を硬化性バインダー樹脂に混合してなる塗布液をコートし、バインダー樹脂を硬化して防眩層を設ける方法などが採用される。
【0082】
防眩性を付与するための無機微粒子としては、特に限定されるものではないが、例えばシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、アルミノシリケート、アルミナ-シリカ複合酸化物、カオリン、タルク、雲母、炭酸カルシウムおよびリン酸カルシウムなどが挙げられる。また、有機微粒子としては、特に限定されるものではないが、例えば架橋ポリアクリル酸粒子、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリメチルメタクリレート粒子、シリコン樹脂粒子およびポリイミド粒子などが挙げられる。このようにして得られる防眩性が付与された延伸PETフィルムのヘイズ値は、6~45%の範囲内であってもよい。
【0083】
前記防眩性が付与された延伸PETフィルム上には、導電層、ハードコート層および低反射層などの機能層をさらに積層することができる。また、前記防眩層を構成する樹脂組成物として、これらののうちいずれか一つの機能を兼ね備える樹脂組成物を選択することもできる。
【0084】
前記ヘイズ値は、例えば、JIS K 7136に準拠して、ヘイズ・透過率計HM-150(株式会社村上色彩技術研究所製造)を利用して測定することができる。ヘイズ値の測定においては、フィルムの反りを防止するために、例えば光学的に透明な粘着剤を利用して防眩性の付与面が表面となるようにフィルム面をガラス基板に接合させた測定サンプルを利用することができる。
【0085】
本出願で使用される延伸PETフィルムには、本出願の効果を妨害しない限り、前記防眩層など以外の機能層を一方の面または両面に積層することができる。積層される機能層には、例えば導電層、ハードコート層、平滑化層、易滑化層、ブロッキング防止層および易接着層などが挙げられる。
【0086】
前記説明したPETフィルムの製造方法は、本出願の高分子フィルム基板を得るための一つの例示的な方法であり、本出願で適用可能な高分子フィルム基板は、前記記述した物性を有する場合、いずれの種類の市販品も使用できる。
【0087】
一例において、前記高分子フィルム基板は、一面に電極層が形成されているフィルム基板であってもよい。このようなフィルム基板は、電極フィルム基板と呼称され得る。前述した位相差や機械的物性などは、前記電極層が形成されていない高分子フィルム基板に関するものであるか、または、前記電極フィルム基板に関するものであってもよい。
【0088】
電極フィルム基板である場合に、前記高分子フィルム基板の少なくとも一面には、それぞれ、電極層が形成されており、前記各電極層が対向するように第1および第2高分子フィルム基板が配置されていてもよい。
【0089】
前記電極層としては、公知の透明電極層が適用され得るが、例えば、いわゆる導電性高分子層、導電性金属層、導電性ナノワイヤー層またはITO(Indium Tin Oxide)等の金属酸化物層が前記電極層として使用できる。その他にも、透明電極層を形成できる多様な素材および形成方法が公知となっており、これを制限なしに適用することができる。
【0090】
また、前記高分子フィルム基板の一面には配向膜が形成されていてもよく、例えば、電極フィルム基板である場合に、前記電極層の上部に配向膜が形成されていてもよい。配向膜としては、公知の配向膜が形成され得、所望のモードによって適用され得る配向膜の種類は、公知となっている。
【0091】
前述したように、本出願で光変調フィルム層に含まれる光変調層は、外部信号の印加の有無によって光の透過度、反射度および/またはヘイズなどを可変することができる機能性層である。このような光変調層は、本明細書でアクティブ光変調層と呼称され得る。
【0092】
本明細書で外部信号とは、光変調層内に含まれる物質、例えば光変調物質の挙動に影響を与えることができる外部のすべての要因、例えば外部電圧などを意味する。したがって、外部信号がない状態とは、外部電圧などの印加がない状態を意味する。
【0093】
本出願で光変調層の種類は、前記記述した機能を有するものであれば、特に制限されず、公知の光変調層が適用され得る。前記光変調層は、例えば、液晶層、電気変色物質層、光変色物質層、電気泳動物質層または分散粒子配向層であってもよい。以下、前記例示した光変調層について具体的な例を取って説明するが、光変調層の構成が下記に制限されるものではなく、光変調層と関連して公知された内容を本出願に制限なしに適用することができる。
【0094】
液晶層は、液晶化合物を含む層である。本明細書で用語「液晶層」の範囲には、液晶化合物を含んでいる層がすべて含まれ、例えば後述するように、液晶化合物(液晶ホスト)と二色性染料を含むいわゆるゲストホスト層も、本明細書で規定する液晶層の一種である。前記液晶層は、アクティブ液晶層であってもよく、したがって、前記液晶化合物は、外部信号の印加の有無によって配向方向が変わるように液晶層内に存在することができる。液晶化合物としては、外部信号の印加によってその配向方向が変更され得るものであれば、すべての種類の液晶化合物が使用できる。例えば、液晶化合物としては、スメクチック(smectic)液晶化合物、ネマチック(nematic)液晶化合物またはコレステリック(cholesteric)液晶化合物などが使用できる。また、外部信号の印加によってその配向方向が変更され得るように、液晶化合物は、例えば重合性基または架橋性基を有しない化合物であってもよい。
【0095】
液晶層は、誘電率異方性が正数または負数である液晶化合物を含むことができる。液晶の誘電率異方性の絶対値は、本出願の目的を考慮して適宜選択され得る。用語「誘電率異方性△ε」は、液晶の水平誘電率ε//と垂直誘電率ε⊥との差ε//-ε⊥を意味する。本明細書で用語「水平誘電率ε//」は、液晶分子の配向子と印加電圧による電場の方向が実質的に水平となるように電圧を印加した状態で前記電場の方向に沿って測定した誘電率値を意味し、「垂直誘電率ε⊥」は、液晶分子の配向子と印加電圧による電場の方向が実質的に垂直となるように電圧を印加した状態で前記電場の方向に沿って測定した誘電率値を意味する。
【0096】
液晶層の駆動モードは、例えば、DS(Dynamic Scattering)モード、ECB(Electrically Controllable Birefringence)モード、IPS(In-Plane Switching)モード、FFS(Fringe-Field Wwitching)モード、OCB(Optially Compensated Bend)モード、VA(Vertical Alignment)モード、MVA(Multi-domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、HAN(Hybrid Aligned Nematic)モード、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モードなどが挙げられる。
【0097】
一例において、液晶層は、高分子ネットワーク液晶層(Polymer Network Liquid Crystal Layer)であってもよい。前記高分子ネットワーク液晶層は、いわゆる高分子分散型液晶層(Polymer Dispersed Liquid Crystal Layer)や高分子安定化液晶層(Polymer Stablized Liquid Crystal Layer)等を含む上位概念である。高分子ネットワーク液晶層は、例えば、高分子ネットワークおよび前記高分子ネットワークと相分離した状態で分散している液晶化合物を含む液晶領域を含むことができる。前記で液晶化合物は、高分子ネットワーク内に配向がスイッチング可能に存在することができる。前記高分子ネットワークは、重合性または架橋性化合物を含む前駆物質のポリマーネットワークであってもよく、前記重合性または架橋性化合物は、重合された状態または架橋された状態で高分子ネットワークを形成することができる。前記重合性または架橋性化合物としては、例えば(メタ)アクリロイル基を有する化合物が使用できるが、これに制限されるものではない。
【0098】
他の一例において、液晶層は、画素孤立型液晶層(PILC)であってもよい。画素孤立型液晶層は、画素別にセルのギャップを維持するための隔壁構造が導入された液晶層を意味する。画素孤立型液晶層は、外部により印加される信号によって整列方向が変換され得る液晶化合物を含むことができる。画素孤立型液晶層も、このような液晶化合物の整列状態を利用して光透過度を調節することができる。
【0099】
電気変色物質層は、例えば、電気化学的酸化還元反応により電気変色物質の光透過度が変わる現象を利用する。電気変色物質は、電気的信号が印加されない状態で色を帯びず、電気的信号が印加された状態で色を帯びることになり得るので、光透過度を調節することができる。
【0100】
光変色物質層は、例えば、特定波長の光が照射される場合、光変色物質の結合状態が変わって色が(可逆的に)変わる現象を利用して光透過度を可変することができる。一般的に、光変色物質は、紫外線に露出すると、着色され、可視光線を照射すると、本来のうすい色を帯びるが、これに制限されるものではない。
【0101】
電気泳動物質層は、例えば、媒質液体と電気泳動物質の組合せにより光透過度を可変することができる。一例において、電気泳動物質としては、正(+)または負(-)の電荷を呈し、色を有する粒子が使用でき、前記電気泳動物質層の上下部に存在する二つの電極に印加される電圧によって電気泳動粒子が回転するか、極性が異なる電極の近くに移動する方式で光透過度を調節して、所望の色相を表現することができるが、これに制限されるものではない。
【0102】
分散粒子配向層は、例えば、ナノサイズの棒状粒子の薄膜積層体が液晶に浮遊している構造を含む。分散粒子配向層は、例えば、外部信号が印加されない状態で浮遊粒子が整列されない状態で存在して光を遮断および吸収し、外部信号が印加された状態で浮遊粒子が整列して光を通過させることができるが、これに制限されるものではない。
【0103】
光変調層は、光透過度可変特性を調節するという側面から、二色性染料をさらに含むことができる。本明細書で用語「染料」とは、可視光領域、例えば、400nm~700 nm波長の範囲内で少なくとも一部または全体範囲内の光を集中的に吸収および/または変形させることができる物質を意味し、用語「二色性染料」は、前記可視光領域の少なくとも一部または全体範囲で光の異方性吸収が可能な物質を意味する。このような染料としては、例えば、アゾ染料またはアントラキノン染料などと公知となっているが、これに制限されるものではない。
【0104】
一例において、前記光変調層は、液晶および二色性染料を含む液晶層であって、いわゆるゲストホスト液晶層(Guest host liquid crystal cell)であってもよい。用語「GHLC層」は、液晶の配列により二色性染料が共に配列されて、二色性染料の整列方向と前記整列方向の垂直な方向に対してそれぞれ非等方性光吸収特性を示す機能性層を意味する。例えば、二色性染料は、光の吸収率が偏光方向によって変わる物質であって、長軸方向に偏光された光の吸収率が大きい場合、p型染料と呼称し、短軸方向に偏光された光の吸収率が大きい場合、n型染料と呼称することができる。一例において、p型染料が使用される場合、染料の長軸方向に振動する偏光は吸収され、染料の短軸方向に振動する偏光は吸収が少ないため、透過させることができる。以下、特別な言及がない限り、二色性染料は、p型染料であると仮定する。
【0105】
ゲストホスト液晶層を光変調層として含む光変調フィルム層は、アクティブ型偏光子(Active Polarizer)として機能することができる。本明細書で用語「アクティブ型偏光子(Active Polarizer)」は、外部信号の印加によって非等方性光吸収を調節できる機能性素子を意味する。このようなアクティブ型偏光子は、後述するパッシブ型偏光子が外部信号の印加と関係がなく、一定の光吸収または光反射特性を有するものと区別され得る。前記ゲストホスト液晶層は、液晶および二色性染料の配列を調節することにより、前記二色性染料の配列方向に平行な方向の偏光および垂直な方向の偏光に対する非等方性光吸収を調節することができる。液晶および二色性染料の配列は、磁場または電場のような外部信号の印加によって調節され得るので、ゲストホスト液晶層は、外部信号の印加によって非等方性光吸収を調節することができる。
【0106】
光変調層の厚さは、それぞれ、本出願の目的を考慮して適宜選択され得る。一例において、前記光変調層の厚さは、約0.01μm以上、0.1μm以上、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上または10μm以上であってもよい。このように厚さを制御することにより、モード状態による透過率または反射率の差異が大きいデバイスを具現することができる。前記厚さは、厚いほど高い透過率および/または反射率の差異を具現することができ、特に制限されるものではないが、一般的に約30μm以下、25μm以下、20μm以下または15μm以下であってもよい。
【0107】
本出願の一実施例によって前記光変調層が液晶層である場合に、前記光変調層の特定の状態における光軸と前記高分子フィルム基板の第1方向(例えば、前述した遅相軸方向またはTD方向)の配置を調整することにより、光学的特性をさらに改善することができる。
【0108】
本出願で前記のような形態の光変調フィルム層を具現する方式は、基板として前述した高分子フィルム基板を前記言及した方式で配置すること以外には、公知の方式が適用され得る。
【0109】
したがって、前記光変調フィルム層は、公知の構成、例えば、前述した基板、光変調層、電極層にさらに基板間の間隔を維持するスペーサーやシーラントなども含むことができる。
【0110】
本出願の光変調デバイスは、前記言及した光変調フィルム層を基本的に含み、必要に応じて更なる他の構成を含むこともできる。すなわち、駆動モードによっては、前記光変調フィルム層単独でも前述した透過、遮断、高反射および/または低反射モードの具現およびそれら間のスイッチングが可能であるが、このようなモードの具現またはスイッチングを容易にするために、更なる構成を含むことも可能である。
【0111】
例えば、前記デバイスは、前記光変調フィルム層の少なくとも一側に配置された偏光子(パッシブ偏光子)をさらに含むことができる。
図2は、前記構造の例として、第1および第2高分子フィルム基板11、13の間に位置する光変調層12を有する光変調フィルム層の一側に偏光子14が配置された形態を示す。
【0112】
このような場合に、前記パッシブ偏光子の透過軸、吸収軸あるいは反射軸と前記高分子フィルム基板の第1方向(例えば、前述した遅相軸方向またはTD方向)とのなす角度は、0度~10度、0度~5度または略0度であるか、80度~100度の範囲内、85度~95度の範囲内または略90度であってもよい。前記角度は、前記透過軸、吸収軸または反射軸と前記第1方向(例えば、前述した遅相軸方向またはTD方向)とのなす角度のうち鋭角である。このような配置を通じて光学的および機械的物性をさらに改善することができる。
【0113】
また、前記偏光子を含む具体例において光変調層が水平配向状態で存在できる液晶層である場合に、前記光変調層の水平配向時の光軸は、前記第1および第2高分子フィルム基板の第1方向(例えば、遅相軸方向またはTD方向)と0度~10度、0度~5度または略0度であるか、80度~100度、85度~95度または略90度の角度をなすことができる。
【0114】
本明細書で用語「偏光子」は、自然光または非偏光を偏光に変化させる素子を意味する。また、パッシブ偏光子およびアクティブ偏光子の定義は、前記記述したものと同じである。一例において、前記偏光子は、線偏光子であってもよい。本明細書で線偏光子は、選択的に透過する光がいずれか一つの方向に振動する線偏光であり、選択的に吸収または反射する光が、前記線偏光の振動方向と直交する方向に振動する線偏光である場合を意味する。すなわち、前記線偏光子は、面方向に互いに直交する透過軸および吸収軸または反射軸を有することができる。
【0115】
前記偏光子は、吸収型偏光子または反射型偏光子であってもよい。前記吸収型偏光子としては、例えば、PVA(poly(vinyl alcohol))延伸フィルムなどのような高分子延伸フィルムにヨードを染着した偏光子または配向された状態で重合された液晶をホストとし、前記液晶の配向によって配列された二色性染料をゲストとするゲスト-ホスト型偏光子が使用できるが、これに制限されるものではない。
【0116】
前記反射型偏光子としては、例えば、いわゆるDBEF(Dual Brightness Enhancement Film)と公知となっている反射型偏光子やLLC(Lyotropic liquid crystal)のような液晶化合物をコートして形成される反射型偏光子が使用できるが、これに制限されるものではない。
【0117】
光変調デバイスは、前記光変調フィルム層の両方ともに前記偏光子が配置された構造であってもよい。このような場合に、前記両側に配置された偏光子の透過軸がなす角度は、85度~95度の範囲内または略垂直であってもよい。
【0118】
本出願の光変調デバイスは、前記光変調フィルム層を2つ以上含むことができる。この場合、前記光変調フィルム層のそれぞれは、2つの基板を含むことができるか、あるいは少なくとも一つの基板を共有することもできる。例えば、前記光変調デバイスは、順次積層された第1基板、第1光変調層、第2基板、第3基板、第2光変調層および第4基板の構造を有するか、順次積層された第1基板、第1光変調層、第2基板、第2光変調層および第3基板の構造を有することができる。このような場合に、前記構造において少なくとも2つの基板は、前述した非対称性の高分子フィルム基板であってもよく、すべての基板が前記非対称性の高分子フィルム基板であってもよい。一例において、すべての基板が前記非対称高分子フィルム基板である場合に、すべての高分子フィルム基板の第1方向(例えば、前述した遅相軸方向またはTD方向)がなす角度が、0度~10度の範囲内、0度~5度の範囲内または略0度であってもよい。
【0119】
図3は、本出願の一例による光変調デバイスを示す。前記光変調デバイスは、互いに順次重畳されて配置されている第1~第3高分子フィルム基板21、23、25と、前記第1および第2高分子フィルム基板21、23の間に位置する第1光変調層22と、前記第2および第3高分子フィルム基板23、25の間に位置する第2光変調層24とを含むことができる。
【0120】
本明細書で2以上の高分子フィルム基板が重畳されて配置されているというのは、いずれか一つの高分子フィルム基板を透過した光が他の高分子フィルム基板に入射することができることを意味する。
【0121】
前記第1~第3高分子フィルム基板のうち少なくとも2つ以上は、前述した非対称高分子フィルム基板であってもよく、全部が前記非対称高分子フィルム基板であってもよい。
【0122】
すべての基板が前記非対称高分子フィルム基板である場合に、前記第1および第3高分子フィルム基板それぞれの第1方向(例えば、前述した遅相軸方向またはTD方向)は、互いに0度~10度または0度~5度の範囲内の角度をなすか、あるいは互いに略水平であってもよい。
【0123】
また、前記第1および第3高分子フィルム基板の前記第1方向(例えば、前述した遅相軸方向またはTD方向)と第2高分子高分子基材フィルム基板の前記第1方向(例えば、前述した遅相軸方向またはTD方向)とのなす角度は、0度~10度、0度~5度または略0度であるか、80度~100度、85度~95度の範囲内であるか、または略90度であってもよい。
【0124】
図4は、本出願の他の実施例による光変調デバイスを例示的に示す。前記光変調デバイスは、互いに順次重畳されて配置されている第1~第4高分子フィルム基板31、33、34、36と、前記第1および第2高分子フィルム基板31、33の間に位置する第1光変調層32と、前記第3および第4高分子フィルム基板34、36の間に位置する第2光変調層35とを含むことができる。
【0125】
前記第1~第4高分子フィルム基板のうち少なくとも2つ以上、例えば全部は、前述した非対称高分子フィルム基板であってもよい。
【0126】
一例において、前記第2および第3高分子フィルム基板の前記第1方向(例えば、前述した遅相軸方向またはTD方向)は、互いに略0度~10度、0度~5度または0度となるように配置され得る。
【0127】
一例において、前記第1および第4高分子フィルム基板の前記第1方向(例えば、前述した遅相軸方向またはTD方向)と第2および第3高分子フィルム基板の前記第1方向(例えば、前述した遅相軸方向またはTD方向)とのなす角度は、略0度~10度、0度~5度または略0度であるか、略80度~100度、85度~95度の範囲内であるか、または略90度であってもよい。
【0128】
前記2つ以上の光変調フィルム層を含む光変調デバイスにおいて、前記第1および第2光変調層が具現することができる配向状態のうち水平配向状態があり得、このような場合に、前記第1および第2光変調層の水平配向時の光軸は、前記第1~第3高分子フィルム基板の前記第1方向と0度~10度の範囲内、0度~5度の範囲内であるか、または略0度であるか、80度~100度の範囲内であるか、85度~95度の範囲内であるか、または略90度の角度をなすことができる。
【0129】
また、前記4個の基板を含む光変調デバイスにおいても、前記第1および第2光変調層は、それぞれ水平配向状態で存在できる液晶層であってもよく、前記第1および第2光変調層の水平配向時の光軸は、第1~第4高分子フィルム基板の前記第1方向と0度~10度の範囲内、0度~5度の範囲内であるか、または略0度であるか、80度~100度の範囲内であるか、85度~95度の範囲内であるか、または略90度の角度をなすことができる。
【0130】
本明細書で用語「水平配向状態」は、光変調層の液晶化合物の配向子が液晶層の平面に対して略平行に配列された状態、例えば、0度~10度、0度~5度または約0度をなす配列状態を意味する。
【0131】
本明細書で用語「垂直配向状態」は、光変調層の液晶化合物の配向子が液晶層の平面に対して略垂直に配列された状態、例えば、約80度~100度または85度~95度または約90度をなす配列状態を意味する。
【0132】
本明細書で液晶分子または液晶化合物の配向子は、液晶層の光軸(Optical axis)または遅相軸(Slow axis)を意味する。前記液晶分子の配向子は、液晶分子が棒(rod)形状である場合、長軸方向を意味し、液晶分子が円板(discotic)形状である場合、円板平面の法線方向の軸を意味する。
【0133】
本出願の光変調デバイスは、第1および第2光変調層を含む場合、第1および第2光変調層間の水平配向時の光軸を調節することにより、左右視野角においてのコントラスト 比の差異を減少させることにより、優れた左右対称性を確保することができる。
【0134】
一例において、第1および第2光変調層は、それぞれ垂直配向および水平配向状態の間をスイッチングし得る液晶層であってもよく、水平配向状態で第1光変調層と第2光変調層の光軸は、約80度~100度の範囲内、約85度~95度範囲内または約90度であってもよい。
【0135】
一例において、
図5に示されたように、第1光変調層10は、水平配向時の光軸OAが横軸WAを基準として時計回りの方向に40度~50度の範囲内の角度をなすことができ、前記第2光変調層20の水平配向時の光軸OAは、前記光変調層横軸WAを基準として時計回りの方向に130度~140度の範囲内の角度をなすことができる。
【0136】
前記のような光変調層の光軸は、通常、配向膜の配向方向によって決定され、光変調層については、下記のような方式で測定することができる。まず、第1または第2光変調層を水平配向させた状態で前記光変調層の一面に吸収型線状偏光子を配置し、前記偏光子を360度回転させながら、透過率を測定して確認することができる。すなわち、前記状態で光変調層または吸収型線状偏光子側に光を照射しつつ、他の側で輝度(透過率)を測定することにより、光軸方向を確認することができる。例えば、前記偏光子を360度回転させる過程で透過率が最小となるとき、前記偏光子の吸収軸と垂直をなす角度または水平をなす角度を光軸の方向として規定することができる。
【0137】
本明細書で前記光変調層の横軸WAは、光変調層の長軸方向に平行な方向またはアイウェアまたはディスプレイ装置に適用されたとき、該アイウェアを着用した観察者またはディスプレイ装置を観察する観察者の両眼を連結する線に平行な方向を意味する。
【0138】
前記各実施例による光変調デバイスによれば、前記光変調層の両側には、それぞれ前述した配向膜が形成されていてもよい。一例において、前記配向膜は、垂直配向膜であってもよい。本出願の前記一実施例によって、前記光変調デバイスは、第1高分子フィルム基板、第1配向膜、光変調層、第2配向膜、第2高分子フィルム基板および偏光子を順に含むことができる。本出願の第2実施例によれば、前記光変調デバイスは、第1高分子フィルム基板、第1垂直配向膜、第1光変調層、第2垂直配向膜、第2高分子フィルム基板、第3垂直配向膜、第2光変調層、第4垂直配向膜および第3高分子フィルム基板を順に含むことができる。本出願の第3実施例によれば、前記光変調デバイスは、第1高分子フィルム基板、第1垂直配向膜、第1光変調層、第2垂直配向膜、第2高分子フィルム基板、第3高分子フィルム基板、第3垂直配向膜、第2光変調層、第4垂直配向膜および第4高分子フィルム基板を含むことができる。
【0139】
本出願の光変調デバイスは、電圧の非印加時および/または電圧の印加時の光変調層の配向方向を調節することにより、透過度、反射度またはヘイズを調節することができる。前記配向方向は、前記配向膜のプレチルト角およびプレチルト方向を調節することにより調節することができる。
【0140】
本明細書でプレチルトは、角度(angle)と方向(direction)を有することができる。前記プレチルト角度は、極角(Polar angle)と呼称することができ、前記プレチルト方向は、方位角(Azimuthal angle)と呼称することもできる。
【0141】
前記プレチルト角度は、液晶分子の配向子が配向膜と水平な面に対してなす角度または光変調層の表面法線方向となす角度を意味する。前記垂直配向膜のプレチルト角度は、液晶セルに電圧の非印加時の垂直配向状態を誘導することができる。
【0142】
一例において、前記第1~第4垂直配向膜は、プレチルト角が70度~89度の範囲内であってもよい。プレチルト角度が前記範囲内の場合、初期透過度に優れた光変調デバイスを提供することができる。前記プレチルト角は、一例において、約71度以上、72度以上、約73度以上または約74度以上であってもよく、約88.5度以下または約88度以下であってもよい。
【0143】
一例において、前記第1垂直配向膜のプレチルト角度は、前記配向膜と水平な面を基準として時計回りの方向または反時計回りの方向に測定した角度であり、第2垂直配向膜のプレチルト角度は、それとは逆方向、すなわち第1垂直配向膜のプレチルト角度が時計回りの方向に測定された場合に、反時計回りの方向、または第1垂直配向膜のプレチルト角度が反時計回りの方向に測定された場合に、時計回りの方向に測定された角度であってもよい。
【0144】
また、前記第3垂直配向膜のプレチルト角度は、前記配向膜と水平な面を基準として時計回りの方向または反時計回りの方向に測定した角度であり、第4垂直配向膜のプレチルト角度は、それとは逆方向、すなわち第3垂直配向膜のプレチルト角度が時計回りの方向に測定された場合に、反時計回りの方向、または第3垂直配向膜のプレチルト角度が反時計回りの方向に測定された場合に、時計回りの方向に測定された角度であってもよい。
【0145】
前記プレチルト方向は、液晶分子の配向子が配向膜の水平な面に射影された方向を意味する。一例において、前記プレチルト方向は、前記射影された方向と前記横軸(WA)とのなす角度であってもよい。前記垂直配向膜のプレチルト方向は、液晶セルに電圧の印加時に水平配向状態の配向方向を誘導することができる
【0146】
前記第2または第3実施例によれば、前記第1および第2垂直配向膜のプレチルト方向と第3および第4垂直配向膜のプレチルト方向は、互いに交差してもよい。一例において、第1および第2垂直配向膜のプレチルト方向と第3および第4垂直配向膜のプレチルト方向は、互いに直交を、例えば、85度~95度または約90度をなすことができる。プレチルト方向が前記条件を満たす場合、電圧の印加時に遮光率に優れた光変調デバイスを提供することができる。
【0147】
一例において、前記第1および第2垂直配向膜のプレチルト方向と前記第3および第4垂直配向膜のプレチルト方向のうちいずれか一つの方向、例えば、前記第1および第2垂直配向膜のプレチルト方向は、光変調層の横軸WAを基準として時計回りの方向に40度~50度の範囲内の光軸OAを有し、他の一つの方向、例えば、前記第3および第4垂直配向膜のプレチルト方向は、前記光変調層の横軸WAを基準として時計回りの方向に130度~140度の範囲内の光軸OAを有することができる。このような関係を通じて左右視野角においてのコントラスト比の差異を減少させて、左右対称性に優れた光変調デバイスを提供することができる。
【0148】
前記言及したプレチルト角度および方向は、一例において、前記液晶層が垂直配向状態である場合に、各液晶層で測定されるプレチルト角および方向であってもよい。
【0149】
前記第1~第4垂直配向膜は、ラビング配向膜または光配向膜であってもよい。ラビング配向膜の場合、配向方向は、ラビング方向により定められ、光配向膜の場合は、照射される光の偏光方向などによって決定される。前記垂直配向膜のプレチルト角度およびプレチルト方向は、配向条件、例えばラビング配向時のラビング条件や圧力条件、あるいは光配向条件、例えば、光の偏光状態、光の照射角度、光の照射強さなどを適宜調節して具現することができる。
【0150】
例えば、垂直配向膜がラビング配向膜である場合に、前記プレチルト角度は、前記ラビング配向膜のラビング強さなどを制御して達成することができ、プレチルト方向は、前記ラビング配向膜のラビング方向を制御して達成することができ、このような達成方式は、公知の方式である。また、光配向膜の場合、配向膜材料、配向に適用される偏光の方向、状態または強さなどにより達成され得る。
【0151】
一例において、前記第1~第4垂直配向膜は、ラビング配向膜であってもよい。前記第1~第4垂直配向膜は、それぞれ、特有の配向方向を有することができる。
【0152】
例えば、前記第1および第2垂直配向膜のラビング方向は、互いに逆方向であって、約170度~190度をなすことができ、やはり第3および第4垂直配向膜のラビング方向は、互いに逆方向であって、約170度~190度をなすことができる。
【0153】
前記ラビング方向は、プレチルト角の測定を通じて確認することができるが、一般的に、液晶は、ラビング方向に沿って横になってプレチルト角を発生させるので、下記実施例で記載された方式でプレチルト角を測定することにより、前記ラビング方向の測定が可能になり得る。
【0154】
一例において、
図6に示されたように、前記第1垂直配向膜12のラビング配向の方向RAは、40度~50度であり、前記第2垂直配向膜14のラビング配向の方向RAは、220度~230度であり、前記第3垂直配向膜22のラビング配向の方向RAは、130度~140度であり、前記第4垂直配向膜24のラビング配向の方向RAは、310度~320度であってもよい。このような第1~第4垂直配向膜のラビング配向方向の関係を通じて垂直配向状態と水平配向状態間のスイッチングが効果的に行われ得る光変調デバイスを提供することができる。前記各ラビング配向の方向RAは、前記横軸WAを基準を基準として時計回りの方向または反時計回りの方向に測定された角度である。ただし、前記各ラビング配向の方向RAを測定する方向は、前記時計または反時計回りの方向のうちでいずれらか一つの方向のみを選択して測定する。
【0155】
例示的な光変調デバイスは、前記第1~第4配向膜の外側に配置された前述した電極層をさらに含むことができる。本明細書において、任意の構成の外側は、光変調層が存在する側の反対側を意味する。前記第1~第4配向膜の外側に配置された電極フィルムをそれぞれ第1~第4電極層と呼称することができる。
【0156】
前記電極層は、透明電極層を含むことができる。前記電極層は、光変調層の整列状態を切り替えることができるように光変調層に適切な電界を印加することができる。前記電界の方向は、垂直または水平方向、例えば、光変調層の厚さ方向または面方向であってもよい。
【0157】
本出願の光変調デバイスは、粘着剤をさらに含むことができる。例えば、前記光変調フィルム層および偏光子は、前記粘着剤により互いに結合された状態で存在することができる。他の実施例において、前記第1および第2光変調フィルム層は、前記粘着剤により互いに結合された状態で存在することができる。前記粘着剤としては、光学部材の付着に使用される粘着剤層を適宜選択して使用することができる。前記粘着剤の厚さは、本出願の目的を考慮して適宜選択され得る。
【0158】
本出願の光変調デバイスは、ハードコートフィルムをさらに含むことができる。前記ハードコートフィルムは、基材フィルムおよび前記基材フィルム上にハードコート層を含むことができる。ハードコートフィルムは、本出願の目的を考慮して公知のハードコートフィルムを適宜選択して使用することができる。前記ハードコートフィルムの厚さは、本出願の目的を考慮して適宜選択され得る。
【0159】
前記ハードコートフィルムは、前記光変調デバイスの外側に粘着剤を介して形成され得る。
【0160】
本出願の光変調デバイスは、反射防止フィルムをさらに含むことができる。前記反射防止フィルムは、基材フィルムおよび前記基材フィルム上に反射防止層を含むことができる。反射防止フィルムは、本出願の目的を考慮して公知の反射防止フィルムを適宜選択して使用することができる。前記反射防止フィルムの厚さは、本出願の目的を考慮して適宜選択され得る。
【0161】
本出願の光変調デバイスは、NIR(Near-Infrared)遮断(cut)機能の染料の層をさらに含むことができる。前記染料は、IRセンサーの主波長に該当する領域のIRを遮断して外光成分によるセンサー誤作動を排除するために添加され得る。前記染料は、前記第1~第4高分子フィルム基板の一面にコートされて形成されるか、または前記第1および第2光変調フィルム層を粘着剤または接着剤で結合しようとする場合、前記粘着剤または接着剤にも添加して使用ことができる。
【0162】
前記反射防止フィルムは、光変調デバイスの外側に粘着剤を介して形成され得る。
【0163】
前記のような光変調デバイスは、多様な用途に適用され得る。光変調デバイスが適用され得る用途には、ウィンドウまたはサンルーフなどのような建物、容器または車両などを含む密閉された空間の開口部やアイウェア(eyewear)等が例示できる。前記でアイウェアの範囲には、一般的なメガネ、サングラス、スポーツ用ゴーグルまたはヘルメットまたは増強現実体験用機器などのように観察者がレンズを通じて外部を観察することができるように形成されたすべてのアイウェアが含まれ得る。
【0164】
本出願の光変調デバイスが適用され得る代表的な用途には、アイウェアがある。最近、サングラス、スポーツ用ゴーグルや増強現実体験用機器などは、観察者の正面視線とは傾斜するようにレンズが装着される形態のアイウェアが市販されている。本出願の光変調デバイスは、前述したアイウェアにも効果的に適用され得る。
【0165】
本出願の光変調デバイスがアイウェアに適用される場合に、該アイウェアの構造は、特に制限されない。すなわち、公知のアイウェア構造の左眼用および/または右眼用レンズ内に前記光変調デバイスが装着されて適用され得る。
【0166】
例えば、前記アイウェアは、左眼用レンズと右眼用レンズと、前記左眼用レンズと右眼用レンズを支持するフレームとを含むことができる。
【0167】
図7は、前記アイウェアの例示的な模式図であって、前記フレーム82および左眼用と右眼用レンズ84を含むアイウェアの模式図であるが、本出願の光変調デバイスが適用され得るアイウェアの構造が
図7に制限されるものではない。
【0168】
前記アイウェアにおいて左眼用レンズおよび右眼用レンズは、それぞれ、前記光変調デバイスを含むことができる。このようなレンズは、前記光変調デバイスのみを含むか、以外に他の構成を含むこともできる。
【0169】
前記アイウェアは、その他の構成またはデザインは特に制限されず、公知の方式が適用され得る。
【発明の効果】
【0170】
本出願では、光学的および機械的にも非等方性である高分子フィルムを基板として適用して、機械的物性と光学的物性が共に優れた光変調デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【
図1】本出願の例示的な光変調デバイスの模式図である。
【
図2】本出願の例示的な光変調デバイスの模式図である。
【
図3】本出願の例示的な光変調デバイスの模式図である。
【
図4】本出願の例示的な光変調デバイスの模式図である。
【
図5】第1および第2光変調層の水平配向状態で光軸を示す。
【
図6】第1~第4垂直配向膜のプレチルト方向を示す。
【
図8】実施例および比較例に対する耐久性評価結果を示す。
【
図9】実施例および比較例に対する耐久性評価結果を示す。
【
図10】実施例の光変調デバイスの外観を観察した結果である。
【
図11】実施例の光変調デバイスの外観を観察した結果である。
【
図12】実施例の光変調デバイスの外観を観察した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0172】
以下、実施例を通じて本出願を具体的に説明するが、本出願の範囲が下記実施例により制限されるものではない。
【0173】
実施例または比較例で適用した高分子フィルム基板は、通常、基板に適用される等方性のフィルム基板であるPC(Polycarbonate)フィルム基板(PC基板、厚さ:100μm、製造社:Teijin、製品名:PFC100-D150)と、本出願による非対称基板であるPET(Polyethylene terephthalate)フィルム基板(SRF基板、厚さ:80μm、製造社:Toyobo、製品名:TA044)であり、下記物性は、それぞれのフィルム基板の一面に厚さ約20nmのITO(Indium Tin Oxide)膜が形成された状態においての測定結果である。
【0174】
1.高分子フィルム基板の位相差の評価
高分子フィルム基板の面内位相差値(Rin)は、Agilent社のUV/VISスペクトロスコープ8453装備を利用して下記方法によって550nm波長の光に対して測定した。UV/VISスペクトロスコープに2枚の偏光子を透過軸が互いに直交するように設置し、前記2枚の偏光子の間に高分子フィルムの遅相軸が2枚の偏光子の透過軸とそれぞれ45度をなすように設置した後、波長による透過度を測定した。波長による透過度グラフにおいて各ピーク(peak)の位相遅延次数(Phase retardation order)を求める。具体的に、波長による透過度グラフにおいて波形は、下記数式Aを満たし、サイン(Sine)波形で最大ピーク(Tmax)条件は、下記数式Bを満たす。数式Aでλmaxである場合、数式AのTと数式BのTは同一であるので、数式を展開する。n+1、n+2およびn+3に対しても数式を展開し、nとn+1数式を整理してRを消去してnをλnおよびλn+1数式で整理すると、下記数式Cが導き出される。数式AのTと数式BのTが同一であることに基づいてnとλを知ることができるので、各λn、λn+1、λn+2およびλn+3に対してRを求める。4ポイントに対して波長によるR値の直線トレンドラインを求め、数式550nmに対するR値を算定する。直線トレンドラインの関数は、Y=ax+bであり、aおよびbは、定数である。前記関数のxに550nmを代入したときのY値が550nm波長の光に対するRin値である。
【0175】
[数式A]
T=sin2[(2πR/λ)]
【0176】
[数式B]
T=sin2[((2n+1)π/2)]
【0177】
[数式C]
n=(λn-3λn+1)/(2λn+1+1-2λn)
【0178】
前記でRは、面内位相差Rinを意味し、λは、波長を意味し、nは、サイン波形の頂点の次数を意味する。
【0179】
2.高分子フィルム基板の引張特性および熱膨張係数の評価
高分子フィルム基板の弾性率(Young's modulus)、伸び率(Elongation)および最大応力(Max.stress)は、UTM(Universal Testing Machine)装備(Instron 3342)を利用して、常温(25℃)で10mm/minの引張速度で力を加えて、規格によって引張強度(tensile strength)試験を進めて測定した。この場合、各試験片は、幅が約10mmであり、長さが約30mmとなるようにカットして製造し、前記長さ方向の両終端の各10mmずつをテーピングして装備に固定した後に評価を進めた。
【0180】
熱膨張係数は、TMA(Thermomechanical Analysis)装備(Metteler toledo社、SDTA840)を利用して、40℃から80℃に温度を10℃/分の速度で昇温させながら、長さ膨張試験を進めて規格によって測定した。測定時に試験片の測定方向の長さは、10mmとし、荷重を0.02Nに設定した。
【0181】
前記のような方式で測定した各フィルム基板に対する物性の評価結果は、下記表1の通りである。
【0182】
下記表1で、MDおよびTDは、それぞれ、延伸フィルムであるPC基板とSRF基板のMD(Machine Direction)およびTD(transverse direction)方向であり、45は、前記MDおよびTD方向の両方と45度をなす方向である。
【0183】
【0184】
実施例1
前記SRF基板を2つ使用して光変調デバイスを製造した。前記SRF基板(横:15cm、縦:5cm)のITO(Indium Tin Oxide)膜(電極層)上に配向膜を形成して、第1基板を製造した。配向膜としては、厚さ300nmのポリイミド系水平配向膜(SE-7492,Nissan)をラビング布でラビング処理したものを使用した。第1基板と同一に第2基板を製造した。前記第1および第2基板を相互の配向膜が対向するように対向配置し、それらの間に屈折率異方性△nが0.13である正の誘電率異方性を有する液晶化合物および二色性染料を含むGHLC混合物(MDA-16-1235、Merck)にキラルドーパント(S811、Merck)を約0.519重量%の濃度で配合した組成物を位置させた後に、周縁部を封止して、光変調フィルム層を製造した。前記で第1および第2基板のTD方向(遅相軸方向)は、それぞれ、第1基板配向膜のラビング軸を基準として0度となり、前記第1および第2配向膜のラビング方向は、互いに90度をなすようにした。得られた光変調層は、ねじれ角(twisted angle)が約270度であるSTNモード液晶層であり、セルギャップは12μmであった。前記光変調フィルム層を電圧の無印加時の直進光透過率が約28.0%であり、約15Vの電圧を印加した場合に、直進光透過率が約62.7%であって、透過および遮断モードの間をスイッチング可能なデバイスである。前記で透過率は、NDH5000SP(SECOS社製)装備を使用した透過率であって、約550nm波長の光に対する透過率である。
【0185】
比較例1
基板としてPC基板を適用したことを除いて、実施例1と同一に光変調デバイスを製造した。
【0186】
試験例1
前記実施例1および比較例1の光変調デバイスを使用して
図8および
図9に示された形態のアイウェア素子を製造し、前記素子をベンディングさせた状態で熱衝撃試験を進めた。熱衝撃試験は、前記アイウェアを約-40℃から90℃まで約16.25℃/分の昇温速度で温度を上げた後、10分間維持し、さらに約16.25℃/分の減温速度で90℃から-40℃の温度まで減温した後、10分間維持することを1サイクルとして、前記サイクルを500回繰り返す条件に置いた状態で進め、この試験は、曲率半径が約100R程度である曲げ治具に前記アイウェアを付着した状態で進めた。
図8は、実施例1の場合であり、
図9は、比較例1の場合であり、図面のように比較例1の場合、激しいクラックが観察された。
【0187】
比較例2
実施例1と同一に光変調フィルム層を製造するものの、第1および第2基板の第1方向(TD方向)が互いに90度となるようにした。この際、第1基板上の配向膜のラビング方向を基準として第1基板の第1方向は0度、第2基板の第1方向は90度となるようにした。
【0188】
比較例3
実施例1と同一に光変調フィルム層を製造するものの、第1および第2基板の第1方向(TD方向)が互いに90度となるようにした。この際、第1基板上の配向膜のラビング方向を基準として第1基板の第1方向は45度、第2基板の第1方向は135度となるようにした。
【0189】
試験例2
実施例1、比較例2および3のデバイスをそれぞれ60℃の温度および85%の相対湿度で保管しつつ、ボイド発生を評価し、その結果を下記表2に記載した。具体的に前記条件で保管しつつ、光変調層において目視で視認されるボイドが発生するか否かを評価した。一般的に、目視で視認されるボイドのサイズは、約10μm程度である。
【0190】
【0191】
表2の結果のように、比較例2および3の場合、初期投入された試料の全部で500時間内にボイドが観察されて、ボイド発生率が100%であり、最初にボイドが発生する時点もそれぞれ120時間および144時間以内であった。
【0192】
他方で、実施例1の場合、500時間以内にボイドが観察される場合はなく、最初にボイドが観察される時間も約504時間であった。
【0193】
実施例2
図4の構造の光変調デバイスを製造した。第1~第4高分子フィルム基板31、33、34、36として、前記SRF基板を使用した。前記SRF基板のITO膜上に垂直配向膜(HANCHEM社のPVM-11ポリイミド層)を形成し、光変調層としては、液晶および二色性染料を含むゲストホスト液晶層を用意するものの、前記液晶としては、HCCH社のHNG730200(ne:1.551、no:1.476、ε∥:9.6、ε⊥:9.6、TNI:100、△n:0.075、△ε:-5.7)を用意し、前記二色性染料としては、BASF社のX12を用意した。
【0194】
高分子フィルム基板のITO層上に前記垂直配向膜をバーコートでコートした後、120℃の温度で1時間の間焼成して、厚さ300nmの配向膜を得た。前記配向膜をラビング布でラビング処理して、第1高分子フィルム基板を製造した。次に、前記と同じ高分子フィルム基板のITO層上に高さが10μmであり、直径が15μmであるカラムスペーサーを250μmの間隔で配置し、ITO膜上に垂直配向膜をバーコートでコートした後、ラビング処理して、第2高分子フィルム基板を製造した。液晶2gに二色性染料を28mgを溶かした後、0.2μmのPP(polypropylene)材質のシリンジーフィルタを用いて浮遊物を除去した。第2高分子フィルム基板の配向膜の表面上の周縁部にシーラントをシールディスペンサー(seal dispenser)で描画した。前記第2高分子フィルムの基板の配向膜に液晶-染料混合液を吹き付けた後、第1光変調層を形成し、第1高分子フィルム基板を覆って、ラミネーションして、第1光変調層を製造した。この際、第1および第2基板の第1方向(TD方向、遅相軸方向)は、互いに平行をなし、第1基板と第2基板の配向膜のラビング方向が互いに180度をなすようにラミネーションした。同じ方法で
図4の第3基板34、第4基板36および第2光変調層35を形成して、第2光変調フィルム層を製造した。次に、第1光変調フィルム層と第2光変調フィルム層を相互の配向膜のラビング方向が互いに90度直交するように付着して、実施例2の光変調デバイスを製造した。
【0195】
前記第1および第2光変調層32、35の厚さ(セルギャップ)は、それぞれ、12μmである。前記製造された光変調デバイスにおいて、第1基板の第1方向(TD方向、遅相軸方向)を0度というとき、第2~第4基板の第1方向(TD方向、遅相軸方向)もやはり0度であり、第1光変調層の水平配向時の光軸は、0度、第2光変調層の水平配向時の光軸は、90度である。
【0196】
実施例3
実施例2において、第1基板の第1方向(TD方向、遅相軸方向)を0度というとき、第2および第3基板の第1方向(TD方向、遅相軸方向)が90度となるように配置したことを除いて、実施例1と同じ方法で光変調デバイスを製造した。
【0197】
実施例4
実施例2において第1光変調層の水平配向時の光軸が+45度となるように変更し、第2光変調層の水平配向時の光軸を-45度となるように変更したことを除いて、実施例1と同じ方法で光変調デバイスを製造した。
【0198】
試験例3
実施例2~4のデバイスに対して、正面(傾斜角0度)および視野角(傾斜角-23度)でレインボー特性および電気光学特性を評価し、その結果を図面と下記表3に記載した。
【0199】
図10および
図11は、それぞれ、実施例2~4に対して傾斜角でレインボー特性を観察した結果であり、図面のように、複数の光変調フィルム層を重複させた場合にも、レインボー現象など光学的欠陥は発生しなかった。
【0200】
電気光学特性は、光変調デバイスの第1~第4高分子フィルム基板の電極層のうち第1および第3高分子フィルム基板の電極層を一つの端子で連結し、第2および第3高分子フィルム基板の電極層を一つの端子で連結した後に、前記光変調デバイスをバックライトの上に載置し、2つの電極端子を関数発生器(function generator)の端子に連結し、0Vrmsから28Vrmsまで電圧を印加しつつ、フォトダイオードで輝度値を計測して、透過率を測定して評価した。バックライトの初期輝度値を計測して、百分率で換算して透過率値を記録した。
【0201】
コントラスト比CRは、電圧の無印加状態における透過率Tc対比28V電圧の印加時の透過率Tとの比率Tc/Tである。dC*は、Lab色座標の利用時にD65光源の色座標(a、b)=(0、0)を基準として、実際試料の計測時に色座標a′、b′の値に対する色差であり、SQRT(a′^+b′^2)の式で換算された色差指数を意味する。
【0202】