(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-15
(54)【発明の名称】光ケーブル監視システム
(51)【国際特許分類】
G01M 11/00 20060101AFI20220207BHJP
【FI】
G01M11/00 R
(21)【出願番号】P 2017216392
(22)【出願日】2017-11-09
【審査請求日】2020-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 佳広
(72)【発明者】
【氏名】大貫 渉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 香菜子
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/101001(WO,A1)
【文献】特開2002-071510(JP,A)
【文献】特開2010-216865(JP,A)
【文献】特開2001-124855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00 - G01M 11/02
H04B 10/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の光ファイバを内蔵した光ケーブルの健全性を監視する光ケーブル監視システムであって、
前記各光ファイバを伝送される通信光の一部を取り出して光強度を測定し、測定した光強度を基に通信光の光強度を求める光パワーモニタ、及び、前記光パワーモニタの測定結果を基に前記各光ファイバの異常発生の有無を判定する異常判定部、及び、前記異常判定部が異常が発生したと判定したときにアラート信号を発するアラート信号発生部を有する通信光検出装置と、
前記通信光検出装置から
前記アラート信号を受信する監視装置と、を備え
、
前記通信光検出装置は、前記光パワーモニタで求めた各光ファイバの通信光の光強度のデータを送信する送信部を有し、
前記監視装置は、前記通信光検出装置から受信した各光ファイバの通信光の光強度のデータ及び異常が発生している前記光ファイバの本数または配置情報を基に、異常発生の原因を推定する異常発生原因推定部を有する、
光ケーブル監視システム。
【請求項2】
複数本の光ファイバを内蔵した光ケーブルの健全性を監視する光ケーブル監視システムであって、
前記各光ファイバを伝送される通信光の一部を取り出して光強度を測定し、測定した光強度を基に通信光の光強度を求める光パワーモニタ、及び、前記光パワーモニタの測定結果を基に前記各光ファイバの異常発生の有無を判定する異常判定部、及び、前記異常判定部が異常が発生したと判定したときにアラート信号を発するアラート信号発生部を有する通信光検出装置と、
測定対象となる前記光ファイバに光パルスを入射し、前記光ファイバからの戻り光を測定するOTDR装置と、
前記通信光検出装置から
前記アラート信号を受信したとき、異常が発生した前記光ケーブルに含まれる前記光ファイバについて、前記OTDR装置による戻り光の測定を行わせるOTDR制御部を有する監視装置と、を備え
、
前記通信光検出装置は、前記光パワーモニタで求めた各光ファイバの通信光の光強度のデータを送信する送信部を有し、
前記監視装置は、前記通信光検出装置から受信した各光ファイバの通信光の光強度のデータ及び異常が発生している前記光ファイバの本数または配置情報を基に、異常発生の原因を推定する異常発生原因推定部を有する、
光ケーブル監視システム。
【請求項3】
前記監視装置は、前記OTDR制御部による測定結果を基に、前記光ケーブルの長手方向における異常発生位置を特定する異常発生位置特定部を有する、
請求項2に記載の光ケーブル監視システム。
【請求項4】
前記監視装置は、前記異常発生位置特定部で特定した異常発生位置を基に、地図上での異常発生位置を特定する地図上位置特定部を有する、
請求項3に記載の光ケーブル監視システム。
【請求項5】
前記光ケーブルは、前記OTDR装置による測定を行うための前記光ファイバである監視用光ファイバを有し、
前記OTDR制御部は、前記通信光検出装置からアラート信号を受信したとき、異常が発生した前記光ケーブルに含まれる前記監視用光ファイバについて、前記OTDR装置による戻り光の測定を行わせる、
請求項2乃至4の何れか1項に記載の光ケーブル監視システム。
【請求項6】
前記光ケーブルは、3本以上の前記監視用光ファイバを有し、
3本以上の前記監視用光ファイバは、前記光ケーブルの周方向に離間して配置されている、
と共に、前記光ケーブルの最も外周側に配置されている、
請求項5に記載の光ケーブル監視システム。
【請求項7】
前記OTDR制御部は、所定の時間間隔毎に、監視対象となる全ての前記光ケーブルについて、前記OTDR装置による測定を行わせる定期検査制御を行う、
請求項2乃至
6の何れか1項に記載の光ケーブル監視システム。
【請求項8】
前記通信光検出装置は、通信光の一部を漏洩される漏光部を有し、
前記光パワーモニタは、前記漏光部で漏洩される漏洩光を受光する受光素子と、前記受光素子の電流信号を電圧信号に変換しかつ増幅する増幅回路と、増幅回路の出力電圧を基に、通信光の光強度を演算する演算部と、を有する、
請求項2乃至
7の何れか1項に記載の光ケーブル監視システム。
【請求項9】
前記通信光検出装置は、前記通信光検出装置内の温度を検出する温度センサを有し、
前記光パワーモニタの前記演算部は、前記温度センサで検出した温度に基づき、通信光の光強度を補正する温度補正部を有する、
請求項
8に記載の光ケーブル監視システム。
【請求項10】
前記演算部は、温度に対する傾き補正係数k及びバイアス補正係数bを予め設定した温度補正マップを有し、
前記温度補正部は、前記温度補正マップを参照して、前記温度センサで検出した温度に対応する傾き補正係数k及びバイアス補正係数bを求め、下式
L=Lm×k-b
但し、L :補正後の通信光の光強度
Lm:補正前の通信光の光強度
により、通信光の光強度を補正する、
請求項
9に記載の光ケーブル監視システム。
【請求項11】
複数本の光ファイバを内蔵した光ケーブルの健全性を監視する光ケーブル監視システムであって、
前記各光ファイバを伝送される通信光の一部を取り出して光強度を測定し、測定した光強度を基に通信光の光強度を求める光パワーモニタ、及び、前記光パワーモニタで求めた各光ファイバの通信光の光強度のデータを送信する送信部を有する通信光検出装置と、
前記通信光検出装置から受信した各光ファイバの通信光の光強度のデータ
及び異常が発生している前記光ファイバの本数または配置情報を基に、異常発生の原因を推定する異常発生原因推定部を有する監視装置と、を備えた、
光ケーブル監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ケーブル監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)装置を用いて光ファイバの損失を測定し、破断等の異常が発生した位置を検出する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、データセンタ等の局舎間を接続する光ケーブルの健全性を常時監視したいという要求がある。しかし、データセンタ等の局舎間を接続する光ケーブルは、例えば100本と多数の光ファイバを内蔵している。もしOTDR装置を用いて常時監視しようとすると、光ファイバを1本1本切り替えながら監視(測定)していくことになり、必ず監視されていない時間帯が存在する。その監視されていない時間帯が無視できるほど短ければ良いが、破断等の異常が発生した箇所を精度よく特定しようとすると、1本の光ファイバの監視に数分程度の測定時間がかかってしまう。そのため、異常が発生してからその異常を検出するまでの時間が非常に長くなる。このように、全芯の常時監視をOTDR装置のみで行うことは現実的ではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、光ケーブルの健全性を常時監視できる光ケーブル監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数本の光ファイバを内蔵した光ケーブルの健全性を監視する光ケーブル監視システムであって、前記各光ファイバを伝送される通信光の一部を取り出して光強度を測定し、測定した光強度を基に通信光の光強度を求める光パワーモニタ、及び、前記光パワーモニタの測定結果を基に前記各光ファイバの異常発生の有無を判定する異常判定部、及び、前記異常判定部が異常が発生したと判定したときにアラート信号を発するアラート信号発生部を有する通信光検出装置と、前記通信光検出装置からアラート信号を受信する監視装置と、を備えた、光ケーブル監視システムを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光ケーブルの健全性を常時監視できる光ケーブル監視システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る光ケーブル監視システムの概略構成図である。
【
図2】OTDR装置や通信光検出装置等をラックに収容した際の模式図である。
【
図3】光ケーブルの長手方向に対して垂直な断面を示す断面図である。
【
図4】(a)は、
図1の光ケーブル監視システムにおける光配線を説明する説明図であり、(b)は、本発明の一変形例に係る光ケーブル監視システムにおける光配線を説明する説明図である。
【
図5】通信光検出装置において通信光の一部を取り出す構造を説明する説明図である。
【
図8】監視装置における制御フローを示すフロー図である。
【
図9】表示制御部によりモニタ上に表示される表示画面の一例を示す図である。
【
図10】(a)はOTDR波形表示画面の一例を示す図であり、(b)はマップ表示画面の一例を示す図である。
【
図11】(a),(b)は、故障原因対応策表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0010】
(光ケーブル監視装置の全体構成)
図1は、本実施の形態に係る光ケーブル監視システムの概略構成図である。
図2は、OTDR装置や通信光検出装置等をラックに収容した際の模式図である。
図3は、光ケーブルの長手方向に対して垂直な断面を示す断面図である。
【0011】
光ケーブル監視システム1は、複数本の光ファイバ2aを内蔵した光ケーブル2の健全性を監視するものである。光ケーブル2は、データセンタ等の局舎間を接続するものであり、その長さは例えば最大で80km程度である。光ケーブル2は、例えば100本の光ファイバ2aを内蔵している。光ファイバ2aとしては、長距離伝送に好適なシングルモード光ファイバを用いるとよい。
【0012】
光ケーブル2としては、例えば、
図3に示すようなスペーサ型光ケーブルを用いることができる。
図3の例では、光ケーブル2は、外周に螺旋状のスロット22が複数形成されたスペーサ21を有し、各スロット22内に、複数本(例えば4本)の光ファイバ2aを並列配置したテープ状光ファイバ23が複数積層され収容されている。スペーサ21の中心軸位置には、テンションメンバ24が設けられ、スペーサ21の周囲には、止水テープ25とシース26とが順次設けられている。なお、光ケーブル2は、スペーサ型のものに限定されない。
【0013】
本実施の形態では、光ケーブル2の光ファイバ2aの一部を、監視用光ファイバ2bとしても用いている。本実施の形態では、監視用光ファイバ2bは、通常の通信用途にも使用される。ところで、光ケーブル2の周方向において監視用光ファイバ2bが偏って配置されると、異常が検出されにくくなるおそれがある。そのため、光ケーブル2は、3本以上の監視用光ファイバ2bを有し、3本以上の監視用光ファイバ2bは、光ケーブル2の周方向に略等間隔に離間して配置されていることが望ましい。また、光ケーブル2の外周側の光ファイバ2aほど異常が発生しやすいことから、監視用光ファイバ2bは、できるだけ光ケーブル2の外周側に配置されることが望ましい。
図3の例では、破線円で示されるように、最も外周側に配置されるテープ状光ファイバ23に含まれる光ファイバ2aのうち、周方向に略等間隔に配置されている4本の光ファイバ2aを、監視用光ファイバ2bとして用いた。
【0014】
図1,2に示すように、光ケーブル監視システム1は、融着パネル3と、WDM(Wavelength Division Multiplexing)カプラユニット4と、OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)装置5と、通信光検出装置6と、コントロールユニット7と、監視装置8と、モニタ9と、を備えている。融着パネル3と、WDMカプラユニット4と、OTDR装置5と、通信光検出装置6と、コントロールユニット7とは、ラック10に取り付けられ、データセンタ等の局舎内に配置されている。監視装置8は、ラック10を配置した局舎内に配置されてもよいし、局舎外に配置されてもよい。
【0015】
融着パネル3には、光ケーブル2の各光ファイバ2aの一端が融着により光学的に接続されている。また、融着パネル3は、装置間光配線11を介して通信光検出装置6に光学的に接続されている。融着パネル3と通信光検出装置6間の装置間光配線11のうち、監視用光ファイバ2bと光学的に接続されている装置間光配線11aの途中には、WDMカプラユニット4が挿入されている。WDMカプラユニット4には、OTDR装置5から延びる装置間光配線11bが接続されている。
【0016】
図1及び
図4(a)に示すように、WDMカプラユニット4内には複数のWDMカプラ41が備えられている。各WDMカプラ41は、融着パネル3と通信光検出装置6間の装置間光配線11aに挿入され、OTDR装置5から延びる装置間光配線11bを、融着パネル3側の装置間光配線11aに光学的に接続する。換言すれば、融着パネル3から延びる装置間光配線11aが、WDMカプラ41により、OTDR装置5側に延びる装置間光配線11bと、通信光検出装置6側に延びる装置間光配線11aとに分岐されている。これにより、監視用光ファイバ2bを通常の通信用途として使用しつつも、OTDR装置5と監視用光ファイバ2bとを光学的に接続することが可能となり、OTDR装置5による監視用光ファイバ2bの測定(後述する異常発生位置の検出)が可能となっている。
【0017】
図4(a)の例では、光ケーブル2により第1局舎31と第2局舎32とが接続されており、OTDR装置5や通信光検出装置6を含むラック10(
図2参照)は、第1局舎31内に設けられている。また、第2局舎3内には、通信光検出装置6が設けられている。本実施の形態では、監視用光ファイバ2bを通常の通信用途にも用いるため、監視用光ファイバ2bには、第2局舎32内において、OTDR装置5による測定時に入射される監視光(光パルス)をカットするフィルタ33が設けられる。
【0018】
ここでは、監視用光ファイバ2bを通常の通信用途にも用いる場合について説明したが、これに限らず、通信用途に使用されない監視専用の監視用光ファイバ2bを光ケーブル2に内蔵するようにしてもよい。この場合、
図4(b)に示すように、WDMカプラユニット4を省略して、OTDR装置5から延びる装置間光配線11bと、監視用光ファイバ2bとを、融着パネル3にて接続すればよく、また、監視光をカットするフィルタ33も省略可能となる。これにより、よりシンプルなシステム構成とすることが可能となり、コストの削減も可能になる。
【0019】
図1,2に戻り、通信光検出装置6は、各光ファイバ2aを伝送する通信光の光強度を検出するものである。通信光検出装置6には、所内(第1局舎31内)の各設備へと延びる局舎内光配線12が接続されている。つまり、光ケーブル2に含まれる監視用でない各光ファイバ2aの一端は、融着パネル3、装置間光配線11、通信光検出装置6、及び局舎内光配線12を介して、所内の各設備に光学的に接続される。また、光ケーブル2に含まれる監視用光ファイバ2bの一端は、融着パネル3、装置間光配線11a、WDMカプラユニット4、装置間光配線11a、通信光検出装置6、及び局舎内光配線12を介して、所内の各設備に光学的に接続される。通信光検出装置6は、LANケーブル等の通信ケーブル13を介して、検出した各光ファイバ2aにおける通信光の光強度のデータをコントロールユニット7に送信可能に構成されている。
【0020】
また、通信光検出装置6は、各光ファイバ2aの通信光の光強度を監視し、異常が発生した際に、アラート信号を送信するように構成されている。アラート信号は、コントロールユニット7を介して監視装置8に送信される。通信光検出装置6の詳細については、後述する。
【0021】
コントロールユニット7は、通信光検出装置6で検出した光強度のデータを集約し、当該集約した光強度のデータを、LANケーブル等の通信ケーブル14を介して、監視装置8に送信するものである。
図1,2では1台の通信光検出装置6を用いる場合を示しているが、複数の通信光検出装置6を用い、複数の通信光検出装置6をコントロールユニット7に接続することで、各通信光検出装置6で検出した光強度のデータをコントロールユニット7に集約するように構成してもよい。なお、コントロールユニット7を省略し、通信光検出装置6から直接監視装置8に光強度のデータを送信するように構成してもよい。
【0022】
OTDR装置5は、監視光としての光パルスを発生させる光源部51と、測定対象となる光ファイバ2a(ここでは監視用光ファイバ2b)を選択するファイバセレクタ52と、を有している。OTDR装置5は、ファイバセレクタ52で選択された監視用光ファイバ2bに光パルスを入射し、監視用光ファイバ2bからの戻り光(後方散乱光及び反射光)の光強度を測定する。測定した戻り光の光強度のデータは、LANケーブル等の通信ケーブル15を介して、監視装置8に送信される。
【0023】
なお、コントロールユニット7にOTDR装置5を制御する機能をもたせ、監視装置8との通信をコントロールユニット7に集約してもよい。これにより、通信ケーブル15を省略できると共に、OTDR装置5において通信機能を省略することが可能となり、さらなる低コスト化が可能になる。
【0024】
監視装置8は、通信光検出装置6から受信した光強度のデータやアラート信号を基に、光ケーブル2に含まれる各光ファイバ2aの健全性を監視し、かつ、異常発生時にOTDR装置5を制御して異常発生位置を特定するものである。監視装置8には、モニタ9が接続されており、光強度のデータや異常発生位置等がモニタ9に表示されるようになっている。監視装置8は、例えば、通信機能を有するサーバ等のコンピュータからなる。監視装置8の詳細、およびモニタ9に表示される表示画面については、後述する。
【0025】
このように、本実施の形態では、通信光検出装置6により光ケーブル2に含まれる各光ファイバ2aの常時監視を行い、異常発生時にOTDR装置5を用いた異常発生位置の特定を自動で行っている。通信光検出装置6を用いるのみでは異常発生位置の特定が出来ず、またOTDR装置5を用いるのみではコストや精度等の問題で常時監視が困難であったが、本実施の形態では、これら通信光検出装置6とOTDR装置5の両方を組み合わせることにより、光ケーブル2の健全性を常時監視でき、かつ、異常発生位置を精度良く特定可能な光ケーブル監視システム1を低コストで実現している。以下、各部の詳細について説明する。
【0026】
(通信光検出装置6の説明)
通信光検出装置6は、光パワーモニタ61と、異常判定部62と、アラート信号発生部63と、送信部64と、を有している。
【0027】
光パワーモニタ61は、各光ファイバ2aを伝送される通信光の一部を取り出して光強度を測定し、測定した光強度を基に通信光の光強度を求めるものである。光パワーモニタ61は、増幅用のアナログ回路と、信号処理用のデジタル処理回路とを組み合わせて構成されている。通信光の一部を取り出す構造、及び光パワーモニタ61の詳細については後述する。
【0028】
異常判定部62は、光パワーモニタ61の測定結果を基に各光ファイバ2aの異常発生の有無を判定するものである。異常判定部62は、例えば、光パワーモニタ61で求めた通信光の光強度が所定の下限閾値以下であるとき(あるいは通信光の光強度が下限閾値以下の状態が所定時間継続したとき)、光ファイバ2aに異常が発生したと判定する。
【0029】
アラート信号発生部63は、異常判定部62が異常発生と判定したときにアラート信号を発するものである。送信部64は、光パワーモニタ61で求めた各光ファイバ2aの通信光の光強度のデータ、及びアラート信号発生部63で生成されたアラート信号を、コントロールユニット7に(コントロールユニット7を介して監視装置8に)送信するものである。異常判定部62、アラート信号発生部63、及び送信部64は、CPU等の演算素子、メモリ、ソフトウェア、インターフェイス等を適宜組み合わせて実現されている。
【0030】
なお、本実施の形態では、通信光検出装置6に異常判定部62やアラート信号発生部63を搭載しているが、異常判定部62やアラート信号発生部63は、監視装置8に搭載されていてもよい。すなわち、監視装置8は、通信光検出装置6から受信した光強度のデータを基に、異常発生の判定を行うように構成されていてもよい。
【0031】
(通信光の一部を取り出す構造の説明)
図5は、通信光検出装置6において通信光の一部を取り出す構造を説明する説明図である。
図5に示すように、通信光検出装置6は、通信光の一部を漏洩される漏光部65を有している。漏光部65は、装置間光配線11aと局舎内光配線12の一方に光学的に接続された第1光ファイバ65aと、装置間光配線11aと局舎内光配線12の他方に光学的に接続された第2光ファイバ65bとの接続部に設けられている。第1光ファイバ65aの端部は、第1フェルール66aに収容されている。第1光ファイバ65aの端面は、第1フェルール66aの先端面と共に研磨されている。また、第2光ファイバ65bの端部は、第2フェルール66bに収容されている。第2光ファイバ65bの端面は、第2フェルール66bの先端面と共に研磨されている。
【0032】
両フェルール66a,66bの間には、光ファイバ65cが内蔵されたフェルールである接合体68が配置されている。接合体88は、割スリーブ67内に挿入されている。第1フェルール66aは、割スリーブ67の一方の端部から割スリーブ67内に挿入されており、第1光ファイバ65aの端面と光ファイバ65cの端面とが突き合わせ接続されている。同様に、第2フェルール66bは、割スリーブ67の他方の端部から割スリーブ67内に挿入されており、第2光ファイバ65bの端面と光ファイバ65cの端面とが突き合わせ接続されている。割スリーブ67は、中空円筒体に軸方向に沿ってスリット67aを設けることで断面C字状に形成されている。両フェルール66a,66b及び接合体68は、通信光を透過しかつ散乱させるジルコニアセラミックス等からなる。本実施の形態では、割スリーブ67もジルコニアセラミックス、あるいは金属等の部材からなる。
【0033】
接合体68は、接合体68の外表面から光ファイバ65cを横断するように形成された光検知用溝68bを有している。光検知用溝68bは、ブレードによるダイシング、あるいはエッチングなどの加工手段により形成される。受光素子611は、光検知用溝68bと対向するように配置される。
【0034】
光検知用溝68bは、その内部が真空であってもよいが、光ファイバ65cのコアよりも屈折率が低い屈折率を有する樹脂68aが充填されていることが好ましい。この樹脂68aは、液状のものを使用しても良いし、熱硬化性や紫外線(UV)硬化性の樹脂、あるいは接着剤で、硬化後の屈折率が光ファイバ65cのコアの屈折率よりも低いものを使用してもよい。また、光検知用溝68bに充填される樹脂68aは、光ファイバ65cのコアよりも屈折率が低く、かつ、光ファイバ65cのクラッドよりも屈折率が低い屈折率を有することがより好ましい。
【0035】
漏光部65では、両光ファイバ65a,65bを介して伝送される通信光の一部が、光検知用溝68bにて漏洩する、漏洩した通信光の一部である漏洩光は、光パワーモニタ61の受光素子611により受光される。
【0036】
なお、
図5で説明した構成はあくまで一例であり、通信光の一部を漏洩させるための構成は、図示のものに限定されない。さらに、通信光の一部を取り出す構造として漏光部65を用いることも必須ではなく、例えば、タップ(カプラ)を用いて通信光の一部(例えば1%程度)を分岐させ、分岐させた通信光の一部を受光素子611で受光するように構成することもできる。
【0037】
(光パワーモニタ61の説明)
図6は、光パワーモニタ61の概略構成図である。
図6に示すように、光パワーモニタ61は、漏光部65で漏洩される漏洩光を受光する受光素子611と、受光素子611の電流信号を電圧信号に変換しかつ増幅する増幅回路612と、増幅回路612の出力電圧Voutをデジタル信号に変換するADコンバータ613と、デジタル信号に変換された出力電圧Voutを基に、通信光の光強度を演算する演算部614と、を有している。受光素子611は、PD(Photo Diode)からなる。
図5に示したように、受光素子611は、光検知用溝68bと対向するように配置される。また、受光素子611、増幅回路612、ADコンバータ613、及び演算部614は、回路基板610に搭載されている。
【0038】
図7は、増幅回路612の一例を示す回路図である。
図7に示すように、増幅回路612は、受光素子611で発生した電流Iを増幅するPD増幅回路部612aと、PD増幅回路部612aと略同じ回路構成に形成されたリファレンス用増幅回路部612bと、PD増幅回路部612aの出力とリファレンス用増幅回路部612bの出力との差分を増幅する差動増幅回路部612cと、を有している。
図7において、R1~R10は抵抗、C1~C2はコンデンサ(容量素子)、X1~X4はオペアンプ、Q1~Q2はトランジスタ、V1~V3は電圧源をそれぞれ示している。
【0039】
受光素子611として用いるPDは、一般に、受光する光強度が比較的小さい領域において得られる電流Iの変動が、受光する光強度が比較的大きい領域において得られる電流Iの変動よりも小さく、受光する光強度と電流Iとの関係がリニアとなっていない。そこで、本実施の形態では、PD増幅回路部612aにおいて、オペアンプX2の帰還回路にトランジスタQ1を挿入している。トランジスタQ1では電流Iが小さいほど抵抗が大きくなり、電流Iが大きいほど抵抗が小さくなるため、オペアンプX2において、電流Iが小さいほどゲインが大きく、電流Iが大きいほどゲインが小さくなり、ログアンプと略同様の動作が得られる。その結果、受光素子611で受光した光強度と、オペアンプX2の出力電圧との関係がリニアに近づき、特に受光する光強度が低い領域において検出精度の向上を図ることが可能になる。なお、トランジスタQ1に代えて、ダイオードを用いることも可能である。
【0040】
リファレンス用増幅回路部612bは、PD増幅回路部612aと略同じ回路構成とされ、オペアンプX4の帰還回路にトランジスタQ2を挿入した回路構成とされる。オペアンプX4及びトランジスタQ2は、PD増幅回路部612aのオペアンプX2及びトランジスタQ1と同じ特性のものが用いられる。
【0041】
リファレンス用増幅回路部612bでは、受光素子611に代えて、電圧源V2と抵抗R8とにより一定のリファレンス電流Irを供給する電流源が構成されている。このリファレンス電流Irは、通常、検出可能とする受光素子611の電流Iの最小値(例えば10pA)に設定されるが、そのためには、抵抗R8として非常に抵抗値が大きいものを用いる必要があり、かつ、リファレンス電流Irの誤差は精度低下を招くため抵抗R8として抵抗値の誤差が非常に小さい高価な部品を用いる必要が生じる。詳細は後述するが、本実施の形態では、後述する演算部614において温度補正を行っているため、この補正時にリファレンス電流Irの影響による補正も可能であり、リファレンス電流Irを比較的自由に設定することが可能となっている。つまり、本実施の形態では、抵抗R8として比較的抵抗値が低い安価なものを使用し、コストの低減を図ることが可能となっている。
【0042】
差動増幅回路部612cでは、PD増幅回路部612aの出力とリファレンス用増幅回路部612bの出力との差分を増幅することにより、受光素子611での電流Iの変動(リファレンス電流Irに対する変動)に応じた電圧信号を出力する。ここでは、2つのオペアンプX1,X3を用いて2段階で増幅を行う場合を示しているが、増幅は1段階であっても、3段階以上であってもよい。差動増幅回路部612cの出力電圧Voutは、ADコンバータ613でデジタル信号に変換され、演算部614に入力される。
【0043】
演算部614は、増幅回路612の出力電圧Voutを基に、通信光の光強度を演算する測定光強度演算部614aを有している。測定光強度演算部614aは、出力電圧Voutと光強度との関係が予め設定された電圧-光強度換算マップ614bを有しており、この電圧-光強度換算マップ614bを参照して、出力電圧Voutに対応する光強度Lmを求める。演算部614は、CPU等の演算素子、メモリ、ソフトウェア、インターフェイス等を適宜組み合わせて実現されている。
【0044】
ところで、増幅回路612では、回路を構成する各素子の温度特性の影響により、周囲温度(つまり通信光検出装置6内の温度)が変動すると、出力電圧Voutが変動してしまい、この温度による変動が演算により得られる通信光の光強度の誤差の原因となってしまう。そこで、本実施の形態では、通信光の光強度の測定精度を向上すべく、演算部614に、温度補正を行う機能を追加している。
【0045】
具体的には、通信光検出装置6は、通信光検出装置6内の温度Tを検出する温度センサ615を有し、光パワーモニタ61の演算部614は、温度センサ615で検出した温度Tに基づき、通信光の光強度を補正する温度補正部614cを有している。温度センサ615としては、例えば回路基板610に搭載されたサーミスタを用いることができる。
【0046】
温度補正部614cは、温度Tに対する傾き補正係数k及びバイアス補正係数bを予め設定した温度補正マップ614dを有している。温度補正マップ614dの一例を表1に示す。表1では、温度Tに代えてサーミスタの出力電圧(サーミスタ電圧)をそのまま用いた場合について示している。表1に示すように、温度が低くなるほど(サーミスタ電圧が低くなるほど)傾き補正係数kが大きく、バイアス補正係数bが小さくなる。
【0047】
【0048】
温度補正部614cは、温度補正マップ614dを参照して、温度センサ615で検出した温度Tに対応する傾き補正係数k及びバイアス補正係数bを求め、下式(1)
L=Lm×k-b ・・・(1)
但し、L :補正後の通信光の光強度
Lm:補正前の通信光の光強度
により、通信光の光強度を補正する。ここで、式(1)におけるLmは、測定光強度演算部614aで求めた通信光の光強度である。
【0049】
増幅回路612において、リファレンス電流Irを、検出可能とする受光素子611の電流Iの最小値と異なる値に変更する場合には、傾き補正係数k及びバイアス補正係数bを、リファレンス電流Irの変更を考慮した値に設定し、リファレンス電流Irの変更に基づく補正も同時に行うようにしてもよい。得られた補正後の通信光の光強度Lは、異常判定部62に出力される。
【0050】
なお、ここでは、増幅回路612の出力電圧Voutを基に通信光の光強度を演算した後に、通信光の光強度の温度補正する場合について説明したが、これに限らず、増幅回路612の出力電圧Voutの温度補正を行った後に、補正後の出力電圧Voutを基に通信光の光強度を演算してもよい。
【0051】
(監視装置8の説明)
図1に戻り、監視装置8は、OTDR制御部81と、異常発生位置特定部82と、地図上位置特定部83と、異常発生原因推定部84と、を有している。これらOTDR制御部81、異常発生位置特定部82、地図上位置特定部83、及び異常発生原因推定部84は、CPU等の演算素子、メモリ、ハードディスクドライブ等の記憶装置、ソフトウェア、インターフェイス等を適宜組み合わせて実現されている。
【0052】
OTDR制御部81は、通信光検出装置6からアラート信号を受信したとき、異常が発生した光ケーブル2に含まれる監視用光ファイバ2bについて、OTDR装置5による戻り光の測定(以下、OTDR測定という)を行わせるものである。本実施の形態では、光ファイバ2aのポート番号と当該光ファイバ2aに異常が発生した際にOTDR測定を行う監視用光ファイバ2bとの関係を予め設定した監視用光ファイバテーブル85aが記憶部85に記憶されており、OTDR制御部81は、この監視用光ファイバテーブル85aを参照して、異常発生時にOTDR測定の対象となる監視用光ファイバ2bを決定する。例えば、本実施の形態では、1つの光ケーブル2に4本の監視用光ファイバテーブル81aが内蔵されているので、ある光ケーブル2の光ファイバ2aに異常が発生すると、当該異常が発生した光ケーブル2に含まれる4本の監視用光ファイバ2bをOTDR測定の対象とすることができる。
【0053】
OTDR制御部81は、アラート信号を受信したとき、OTDR装置5を起動させ、アラート信号を受信した日時、ポート番号、異常の種類等のアラート情報をアラート情報記憶部85bに記憶させると共に、監視用光ファイバテーブル85aを参照してOTDR測定の対象となる監視用光ファイバ2bを決定する。OTDR装置5が起動されると、OTDR制御部81は、ファイバセレクタ52を制御して測定対象の監視用光ファイバ2bを選択し、OTDR測定を実行する。OTDR測定の結果(戻り光の光強度のデータ)は、OTDR測定結果記憶部85cに記憶される。測定対象の監視用光ファイバ2bが複数存在する場合は、ファイバセレクタ52により監視用光ファイバ2bを順次切り替え、同様にOTDR測定を行う。
【0054】
また、OTDR制御部81は、所定の時間間隔毎に、監視対象となる全ての光ケーブル2について、OTDR装置5による測定を行わせる定期検査制御を行うように構成されてもよい。定期検査制御では、例えば1日毎に、全ての監視用光ファイバ2bについてOTDR測定を行い、異常発生の有無(損失が異常に高くなっている部分の有無等)を検査する。定期検査制御での測定結果は、OTDR測定結果記憶部85cに記憶される。
【0055】
異常発生位置特定部82は、OTDR制御部81による測定結果(OTDR測定結果記憶部85cに記憶された戻り光の光強度のデータ)を基に、光ケーブル2の長手方向における異常発生位置を特定する。ここでは、異常発生位置特定部82は、異常発生位置の光ケーブル2の端末からの距離を演算する。演算により得られた異常発生位置の光ケーブル2の端末からの距離は、演算結果記憶部85dに記憶される。
【0056】
地図上位置特定部83は、異常発生位置特定部82で特定した異常発生位置(光ケーブル2の端末からの距離)を基に、地図上での異常発生位置を特定するものである。本実施の形態では、予め、光ケーブル2の配線位置が書き込まれた地図データを地図データ記憶部85dに記憶させておき、この地図データを参照して、異常発生位置の光ケーブル2の端末からの距離に対応する地図上の位置を特定するように、地図上位置特定部83を構成した。地図上位置特定部83で特定した地図上での異常発生位置は、演算結果記憶部85dに記憶される。
【0057】
異常発生原因推定部84は、通信光検出装置6から受信した各光ファイバ2aの通信光の光強度のデータを基に、異常発生の原因を推定するものである。監視装置8は、記憶部85に、所定期間(例えば数日間)の各光ファイバ2aの通信光の光強度のデータを記憶させており、異常発生原因推定部84は、異常が発生した光ケーブル2に含まれる光ファイバ2aにおける異常発生前後の光強度の変化や、異常が発生している光ファイバ2aの本数または配置情報から、異常発生の原因を推定する。異常発生の状況(異常の内容)と異常発生の原因の一例を表2に示す。なお、表2に火事による断線との記載があるが、光ケーブル2は火事だけでは断線せず、火事により被覆が破損した状態で放水されることにより断線が発生する。また、表2における曲げ損失は、例えば、局舎内でのオペレーション作業時等に装置間光配線11や局舎内光配線12に負荷がかかることにより発生する。
【0058】
【0059】
異常発生原因推定部84は、ニューラルネットやサポートベクターマシンなどデータマイニング、機械学習の手法で異常発生の原因を判断するように構成されてもよい。異常の対応結果を入力することにより、次回の異常発生時にその結果をフィードバックすることで、対応方法の精度アップを図ることができる。また、異常発生原因推定部84は、通信検出装置1からアラート信号を受信していない場合についても、異常発生の原因を判断する(すなわち異常発生の有無を監視する)ように構成されていてもよい。この場合、通信光検出装置6と監視装置8とで2重の監視機構が構築されることになり、信頼性がより向上する。異常発生原因推定部84が推定した異常発生の原因は、演算結果記憶部85dに記憶される。
【0060】
異常発生原因推定部84は、推定した異常発生の原因と対応して、発生した異常に対する対応策(障害対応の指示)を抽出するように構成されてもよい。障害対応の指示は、予め異常発生の原因毎に設定され、記憶部85に記憶されているとよい。
【0061】
次に、監視装置8における制御フローを
図8を用いて説明する。
図8に示すように、まず、ステップS1にて、監視装置8が、アラート信号を受信したか判定する。本実施の形態では、監視装置8のOTDR制御部81が、アラート信号を受信したかを判定する。ステップS1でNOと判定された場合、ステップS1に戻り判定を繰り返す。ステップS1でYESと判定された場合、ステップS2にて、OTDR制御部81が、OTDR装置5を起動し、ステップS3にて、監視用光ファイバテーブル85aを参照してOTDR測定の対象となる監視用光ファイバ2bを決定する。
【0062】
その後、ステップS4にて、ファイバセレクタ52を制御して、ステップS3で決定した監視用光ファイバ2bとOTDR装置5の光源部51とを光学的に接続し、ステップS5にて、OTDR測定を実行する。測定結果は、OTDR測定結果記憶部85cに記憶される。測定対象の監視用光ファイバ2bが複数ある場合には、各監視用光ファイバ2bについてステップS4,5を繰り返す。
【0063】
その後、ステップS6にて、異常発生位置特定部82が、ステップS5での測定結果を基に、光ケーブル2の長手方向における異常発生位置を特定し、演算結果記憶部85dに記憶する。その後、ステップS7にて、地図上位置特定部83が、地図データ記憶部85dに記憶させた地図データを参照して、地図上での異常発生位置を特定し、演算結果記憶部85dに記憶する。
【0064】
その後、ステップS8にて、異常発生原因推定部84が、通信光検出装置6から受信した各光ファイバ2aの通信光の光強度の変化や異常が発生している光ファイバ2aの本数または配置情報から、異常発生の原因を推定し、推定結果を演算結果記憶部85dに記憶し、処理を終了する。
【0065】
なお、本実施の形態では、アラート信号受信時には、必ずOTDR装置5による測定を実施しているが、OTDR装置5による測定を省略し、異常発生原因の推定のみを行えるようにすることも可能である。すなわち、
図8のステップS1にてアラート信号を受信したかを判定した後、すぐにステップS8に進み、異常が発生した光ケーブル2に含まれる光ファイバ2aにおける異常発生前後の光強度の変化や、異常が発生している光ファイバ2aの本数または配置情報から、異常発生の原因の推定を行うように監視装置8を構成することも可能である。
【0066】
(モニタ9への表示画面の説明)
監視装置8は、グラフィカルユーザインターフェイスを用い、アラート情報や異常発生位置等の情報をモニタ9上に表示する表示制御部86をさらに備えている。表示制御部86によりモニタ9上に表示される表示画面の一例を
図9に示す。
【0067】
図9に示すように、表示画面には、フォルダ表示エリア91とアラート表示エリア92が区画されている。フォルダ表示エリア91には、監視を行う光ケーブル2が配設されている地域のフォルダが表示されている。図示していないが、当該フォルダをダブルクリックすることにより、その地域で使用されている通信光検出装置6の情報や、各ポートの通信光の光強度のデータ(履歴)を閲覧することができる。
【0068】
アラート表示エリア92には、アラート情報記憶部85bに記憶されたアラート情報が表示される。ここでは、アラート情報として、異常が発生したポート番号(Error Port)、アラート信号を受信した日時(Date and time)、異常の種類(Error Contents)が表示されている。各アラート情報には、OTDR波形取得ボタン(リンク)93と故障原因対応策取得ボタン(リンク)94が設けられている。OTDR波形取得ボタン93をクリックすると、
図10(a)に示すように、対応するアラート信号を受信した際にOTDR測定を行いOTDR測定結果記憶部85cに記憶された測定結果がグラフ形式で表示されるOTDR波形表示画面が、モニタ9に表示される。図示していないが、OTDR波形表示画面では、異常発生時のOTDR測定の結果と併せて、定期検査制御で得た異常発生前のOTDR測定の結果も表示可能としてもよい。このOTDR波形表示画面には、マップ取得ボタン(リンク)95が配置されており、このマップ取得ボタン95をクリックすると、
図10(b)に示すように、演算結果記憶部85dに記憶された地図上での異常発生位置を表示するマップ表示画面が、モニタ9に表示される。
【0069】
図9の表示画面で故障原因対応策取得ボタン94をクリックすると、
図11(a),(b)に示すように、障害内容表示エリア96と、障害原因表示エリア97と、障害対応表示エリア98と、を有する故障原因対応策表示画面がモニタ9に表示される。障害内容表示エリア96には、異常が発生したポート番号(障害port)、演算結果記憶部85dに記憶されている異常発生位置の光ケーブル2の端末からの距離(障害場所)、異常の種類(障害の事象)、異常が発生した時間(障害時刻)がそれぞれ表示される。障害原因表示エリア97には、異常が発生したポートの数(例えば、複数あるいは1ポートなど)が「障害port」として表示され、異常の内容の詳細が「障害時間」として表示され、異常発生原因推定部が推定し演算結果記憶部85dに記憶されている異常発生の原因が「推定原因」として表示される。障害対応表示エリア98には、推定した異常発生の原因に対応した、障害対応の指示が「対応指示」として表示される。障害対応表示エリア98の「対応結果入力欄」には、対応指示と対応してコメントを自由に入力できるようになっている。なお、
図9~11で示した各表示画面は、あくまで一例であり、画面レイアウト、表示項目等は、適宜設定可能である。
【0070】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る光ケーブル監視システム1では、各光ファイバ2aを伝送される通信光の一部を取り出して光強度を測定し、測定した光強度を基に通信光の光強度を求める光パワーモニタ61、及び、光パワーモニタ61の測定結果を基に各光ファイバ2aの異常発生の有無を判定する異常判定部62、及び、異常判定部62が異常が発生したと判定したときにアラート信号を発するアラート信号発生部63を有する通信光検出装置6と、測定対象となる光ファイバ2aに光パルスを入射し、光ファイバ2aからの戻り光を測定するOTDR装置5と、通信光検出装置6からアラート信号を受信したとき、異常が発生した光ケーブル2に含まれる光ファイバ2aについて、OTDR装置5による戻り光の測定を行わせるOTDR制御部81を有する監視装置8と、を備えている。
【0071】
通信光検出装置6とOTDR装置5とを併用することで、通信光検出装置6により全光ファイバ2aの光強度を常時監視して異常発生時に速やかにアラート信号を発することが可能になると共に、異常発生時にOTDR装置5によりOTDR測定を実行し、異常発生位置を速やかに特定することが可能になる。つまり、本実施の形態によれば、光ケーブル2の健全性を常時監視でき、さらに、異常発生位置を精度良く特定可能な光ケーブル監視システム1を実現できる。
【0072】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0073】
[1]複数本の光ファイバ(2a)を内蔵した光ケーブル(2)の健全性を監視する光ケーブル監視システム(1)であって、前記各光ファイバ(2a)を伝送される通信光の一部を取り出して光強度を測定し、測定した光強度を基に通信光の光強度を求める光パワーモニタ(61)、及び、前記光パワーモニタ(61)の測定結果を基に前記各光ファイバ(2a)の異常発生の有無を判定する異常判定部(62)、及び、前記異常判定部(62)が異常が発生したと判定したときにアラート信号を発するアラート信号発生部(63)を有する通信光検出装置(6)と、前記通信光検出装置(6)からアラート信号を受信する監視装置(8)と、を備えた、光ケーブル監視システム(1)。
【0074】
[2]複数本の光ファイバ(2a)を内蔵した光ケーブル(2)の健全性を監視する光ケーブル監視システム(1)であって、前記各光ファイバ(2a)を伝送される通信光の一部を取り出して光強度を測定し、測定した光強度を基に通信光の光強度を求める光パワーモニタ(61)、及び、前記光パワーモニタ(61)の測定結果を基に前記各光ファイバ(2a)の異常発生の有無を判定する異常判定部(62)、及び、前記異常判定部(62)が異常が発生したと判定したときにアラート信号を発するアラート信号発生部(63)を有する通信光検出装置(6)と、測定対象となる前記光ファイバ(2a)に光パルスを入射し、前記光ファイバ(2a)からの戻り光を測定するOTDR装置(5)と、前記通信光検出装置(6)からアラート信号を受信したとき、異常が発生した前記光ケーブル(2)に含まれる前記光ファイバ(2a)について、前記OTDR装置(5)による戻り光の測定を行わせるOTDR制御部(81)を有する監視装置(8)と、を備えた、光ケーブル監視システム(1)。
【0075】
[3]前記監視装置(8)は、前記OTDR制御部(81)による測定結果を基に、前記光ケーブル(2)の長手方向における異常発生位置を特定する異常発生位置特定部(82)を有する、[2]に記載の光ケーブル監視システム(1)。
【0076】
[4]前記監視装置(8)は、前記異常発生位置特定部(82)で特定した異常発生位置を基に、地図上での異常発生位置を特定する地図上位置特定部(83)を有する、[3]に記載の光ケーブル監視システム(1)。
【0077】
[5]前記光ケーブル(2)は、前記OTDR装置(5)による測定を行うための前記光ファイバ(2a)である監視用光ファイバ(2b)を有し、前記OTDR制御部(81)は、前記通信光検出装置(6)からアラート信号を受信したとき、異常が発生した前記光ケーブル(2)に含まれる前記監視用光ファイバ(2b)について、前記OTDR装置(5)による戻り光の測定を行わせる、[2]乃至[4]の何れか1項に記載の光ケーブル監視システム(2)。
【0078】
[6]前記光ケーブル(2)は、3本以上の前記監視用光ファイバ(2b)を有し、3本以上の前記監視用光ファイバ(2b)は、前記光ケーブル(2)の周方向に離間して配置されている、[5]に記載の光ケーブル監視システム(1)。
【0079】
[7]前記通信光検出装置(6)は、前記光パワーモニタ(61)で求めた各光ファイバの通信光の光強度のデータを送信する送信部(64)を有し、前記監視装置(8)は、前記通信光検出装置(6)から受信した各光ファイバ(2a)の通信光の光強度のデータを基に、異常発生の原因を推定する異常発生原因推定部(84)を有する、[2]乃至[6]の何れか1項に記載の光ケーブル監視システム(1)。
【0080】
[8]前記OTDR制御部(81)は、所定の時間間隔毎に、監視対象となる全ての前記光ケーブル(2a)について、前記OTDR装置(5)による測定を行わせる定期検査制御を行う、[2]乃至[7]の何れか1項に記載の光ケーブル監視システム(1)。
【0081】
[9]前記通信光検出装置(6)は、通信光の一部を漏洩される漏光部(65)を有し、前記光パワーモニタ61は、前記漏光部65で漏洩される漏洩光を受光する受光素子(611)と、前記受光素子(611)の電流信号を電圧信号に変換しかつ増幅する増幅回路(612)と、増幅回路(612)の出力電圧を基に、通信光の光強度を演算する演算部(614)と、を有する、[2]乃至[8]の何れか1項に記載の光ケーブル監視システム(1)。
【0082】
[10]前記通信光検出装置(6)は、前記通信光検出装置(6)内の温度を検出する温度センサ(615)を有し、前記光パワーモニタ(61)の前記演算部(614)は、前記温度センサ(615)で検出した温度に基づき、通信光の光強度を補正する温度補正部(614c)を有する、[9]に記載の光ケーブル監視システム(1)。
【0083】
[11]前記演算部(614)は、温度に対する傾き補正係数k及びバイアス補正係数bを予め設定した温度補正マップ(614d)を有し、前記温度補正部(614c)は、前記温度補正マップ(614d)を参照して、前記温度センサ(615)で検出した温度に対応する傾き補正係数k及びバイアス補正係数bを求め、下式
L=Lm×k-b
但し、L :補正後の通信光の光強度
Lm:補正前の通信光の光強度
により、通信光の光強度を補正する、[10]に記載の光ケーブル監視システム(1)。
【0084】
[12]複数本の光ファイバ(2a)を内蔵した光ケーブル(2)の健全性を監視する光ケーブル監視システム(1)であって、前記各光ファイバ(2a)を伝送される通信光の一部を取り出して光強度を測定し、測定した光強度を基に通信光の光強度を求める光パワーモニタ(61)、及び、前記光パワーモニタ(61)で求めた各光ファイバ(2a)の通信光の光強度のデータを送信する送信部(64)を有する通信光検出装置(6)と、前記通信光検出装置(6)から受信した各光ファイバ(2a)の通信光の光強度のデータを基に、異常発生の原因を推定する異常発生原因推定部(84)を有する監視装置(8)と、を備えた、光ケーブル監視システム(1)。
【0085】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0086】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1…光ケーブル監視システム
2…光ケーブル
2a 光ファイバ
2b…監視用光ファイバ
5…OTDR装置
6…通信光検出装置
61…光パワーモニタ
611…受光素子
612…増幅回路
614…演算部
614c…温度補正部
614d…温度補正マップ
615…温度センサ
62…異常判定部
63…アラート信号発生部
64…送信部
65…漏光部
7…コントロールユニット
8…監視装置
81…OTDR制御部
82…異常発生位置特定部
83…地図上位置特定部
84…異常発生原因推定部