(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】光変調器、及びそれを用いた光送信装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/03 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
G02F1/03 505
(21)【出願番号】P 2018003442
(22)【出願日】2018-01-12
【審査請求日】2020-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
(72)【発明者】
【氏名】菅又 徹
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-134131(JP,A)
【文献】特開2003-258363(JP,A)
【文献】特開2014-178383(JP,A)
【文献】特開2005-128440(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0269319(US,A1)
【文献】特開平11-176966(JP,A)
【文献】特開2017-198950(JP,A)
【文献】特開2009-86541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
1/21-7/00
H01S 5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上に構成された電気回路と電気的に接続される光変調器であって、
光変調素子を収容する筺体
と、
前記光変調素子に変調動作を行わせるための電気信号を前記電気回路から入力する信号入力部と、を備え、
前記筺体は、前記回路基板に対向する底面に、前記底面から突出する第1の突出体を複数有
し、
前記筺体は、前記底面から突出する第2の突出体を有し、
前記第1の突出体と前記第2の突出体とは、前記底面からの高さが等しく、
前記信号入力部は、前記第2の突出体の上面に設けられ、
前記第2の突出体の上面には、少なくとも一つのネジ穴が設けられる、
光変調器。
【請求項2】
複数の前記第1の突出体は、前記底面において、前記筺体の長手方向と平行な線に関して略対称となるように配置されている、
請求項
1に記載の光変調器。
【請求項3】
前記第1の突出体は、前記回路基板に前記筺体を固定する固定体である、
請求項
1又は2に記載の光変調器。
【請求項4】
前記筺体は、前記底面に、前記第1の突出体と同じ高さの第3の突出体を複数有する、
請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の光変調器に記載の光変調器。
【請求項5】
請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の光変調器と、
前記光変調器に変調動作を行わせるための電気信号を出力するドライバ素子と、を備える、
光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器、並びに光変調器を用いた光送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、長距離光通信において適用が開始されたデジタルコヒーレント伝送技術は、通信需要の更なる高まりから中距離、短距離などメトロ用光通信にも適用されつつある。このようなデジタルコヒーレント伝送においては、光変調器として、代表的にはLiNbO3(以下、LNという)基板を用いたDP-QPSK(Dual Polarization-Quadrature Phase Shift Keying)変調器が用いられる。以下、LiNbO3基板を用いた光変調器を、LN変調器という。
【0003】
このような光変調器は、例えば、当該光変調器に変調動作を行わせるための電気信号を出力するドライバ素子(または駆動回路)が接続され、光送信装置として用いられる。また一般的に当該光変調器やドライバ素子は回路基板上に配置される。
【0004】
特に、メトロ用光通信など短距離用途の光送信装置に関しては光変調器やドライバ回路等の設置空間の抑制に対する要請が高く、変調器等の小型化が望まれている。光変調器を小型化するため、LN光変調素子の小型化(例えば、LN基板上における光導波路配置面積の縮小)、LN基板上の光導波路からの出力光を出力光ファイバへ光結合するための空間光学系の小型化、LN変調器の高周波(RF)信号入力インタフェースの小型化(例えば、同軸コネクタからフレキシブルプリント板への変更)等の取り組みが従来から行われている。
【0005】
また、上記のような光変調器単体の小型化に加えて、光送信装置内の空間利用率を向上すべく、光変調器の筺体に切り欠きを設け、当該切り欠きにより確保される空間に上記ドライバ回路の電子部品を配することが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
ところが、本願発明の発明者の知見によれば、筺体に切り欠きを設けた従来の光変調器を光送信装置内の回路基板にネジ固定すると、当該ネジ固定後に、光変調器の光通過損失等の光学特性が劣化したり、当該光学特性が経時的に変動(劣化)したりしてしまう等の問題が発生し得る。
【0007】
また、上述のような光学特性の変化や劣化に加えて、光変調器の高周波特性についての変化や劣化といった問題も発生し得る。
【0008】
そして、これらの問題の発生要因は、光変調器の筺体に切り欠きを設けることに起因する加工歪の発生(例えば、筺体底面の平坦性を低下させるような加工変形部の発生)と、当該筺体をネジ固定する際に発生する当該加工歪への応力集中であると考えられる。
【0009】
即ち、特許文献1に記載の光変調器のように、電気部品配置のための空間を確保すべく光変調器の筺体の一部に切欠きを設ける構成とした場合、例えば、切欠き形成のための切削工程等において筺体に加工歪(筐体歪ともいう)が発生し得る。そして、このような加工歪の発生した筺体を回路基板にネジ固定した場合、上記加工歪の状態と当該ネジ固定の際の締結力の大きさ等とに依存して上記筺体に微小な変形が発生し得る。また、発熱を伴う高周波ドライバIC等を上記切り欠き部に配置すれば、筺体の直近に発熱体が配されることとなり、筺体歪が更に拡大することとなり得る。また、光送信装置の長期間動作に伴って当該筺体が高温状態のまま維持されれば、上記の筺体歪や微小な変形は経時的にも拡大していくこととなり得る。
【0010】
そして、筺体に発生した上記微小変形は、当該筺体の内部に収容されているLN基板の変形や、上記空間光学系を構成するレンズ等の光部品相互の位置関係の変化を招き、光変調器の光学特性が劣化する問題を引き起こす。また、これに加えて、上記筺体の微小変形は、例えば特許文献1に開示された光変調器のように高周波コネクタが当該筺体にリジッドに設けられる構成においては、当該高周波コネクタと、回路基板との間の接続状態をも変化させることとなり、光伝送特性の劣化を引き起こすこととなり得る。
【0011】
その一方、上述した光変調器筺体の加工歪の発生や、当該筺体を回路基板にネジ固定する際に発生する応力バランスの変化は、切欠き加工を行う際の加工条件や、光変調器を回路基板にネジ固定する際の組立工程における製造条件等の工夫(例えば、加工条件のばらつき低減)だけでは十分抑制する事は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記背景より、本発明の目的は、光送信装置内の空間利用率を向上しつつ、光変調器を光送信装置内に実装した場合の光学特性及び高周波特性の初期変化及び経年変化を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一の態様は、回路基板上に構成された電気回路と電気的に接続される光変調器であって、光変調素子を収容する筺体と、前記光変調素子に変調動作を行わせるための電気信号を前記電気回路から入力する信号入力部と、を備え、前記筺体は、前記回路基板に対向する底面に、前記底面から突出する第1の突出体を複数有し、前記筺体は、前記底面から突出する第2の突出体を有し、前記第1の突出体と前記第2の突出体とは、前記底面からの高さが等しく、前記信号入力部は、前記第2の突出体の上面に設けられ、前記第2の突出体の上面には、少なくとも一つのネジ穴が設けられる。
本発明の他の態様によると、複数の前記第1の突出体は、前記底面において、前記筺体の長手方向と平行な線に関して略対称となるように配置されている。
本発明の他の態様によると、前記第1の突出体は、前記回路基板に前記筺体を固定する固定体である。
本発明の他の態様によると、前記筺体は、前記底面に、前記第1の突出体と同じ高さの第3の突出体を複数有する。
本発明の他の態様は、いずれかの前記光変調器と、前記光変調器に変調動作を行わせるための電気信号を出力するドライバ素子と、を備える、光送信装置である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光変調器の平面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る光変調器の側面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る光変調器の底面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る光変調器が実装された光送信装置の平面図である。
【
図5】
図4に示す光送信装置のAA断面矢視図である。
【
図6】
図4に示す光送信装置のBB断面矢視図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る光変調器の平面図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る光変調器の側面図である。
【
図9】本発明の第3の実施形態に係る光変調器の平面図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態に係る光変調器の側面図である。
【
図11】本発明の第3の実施形態に係る光変調器の底面図である。
【
図12】本発明の第4の実施形態に係る光変調器の平面図である。
【
図13】本発明の第4の実施形態に係る光変調器の側面図である。
【
図14】本発明の第4の実施形態に係る光変調器の底面図である。
【
図15】本発明の第4の実施形態に係る光変調器が実装された光送信装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態に係る光変調器について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光変調器100の構成を示す平面図、
図2は、光変調器100の側面図、
図3は、光変調器100の底面図である。この光変調器100は、例えば、光変調器100に変調を行わせるための電気回路が構成された外部の回路基板(例えば、後述の
図4に示す回路基板404)上に実装され、当該電気回路と電気的に接続されて使用される。
【0017】
本光変調器100は、光変調素子102と、光変調素子102を収容する筺体104と、光変調素子102に光を入射するための光ファイバ108と、光変調素子102から出力される光を筺体104の外部へ導く光ファイバ110と、を備える。
【0018】
光変調素子102は、例えばLN基板上に設けられた4つのマッハツェンダ型光導波路と、当該マッハツェンダ型光導波路上にそれぞれ設けられて光導波路内を伝搬する光波を変調する4つの高周波電極(RF電極)と、を備えたDP―QPSK光変調器等に用いられる光変調素子である。光変調素子102から出力される2つの光は、例えば筺体104内に収容されたレンズ光学系(不図示)により偏波合成され、光ファイバ110を介して筺体104の外部へ導かれる。
【0019】
本実施形態の光変調器100では、筺体104のうち、光変調器100が実装される回路基板に対向することとなる底面106の一部であって、突出体130が設けられていない領域に、底面106から突出する第1の突出体である突出体150a、150b、150c、150dが設けられている。突出体150a、150b、150c、150dは、筺体104の長手方向と平行に延びる中心線160(線)に関して略対称となるように、底面106の四隅のそれぞれに設けられる。なお、突出体150a、150b、150c、150dは、底面106の四隅のそれぞれに設けられることが固定応力のバランス上好適であるが、回路基板上の電子部品配置に応じて、必ずしも対称に配置しなくても良い。
突出体150aにはネジ穴140aが形成され、突出体150bにはネジ穴150bが形成され、突出体150cにはネジ穴140cが形成され、突出体150dにはネジ穴140dが形成される。
【0020】
また、筺体104は、光変調素子102が備える4つのRF電極(不図示)のそれぞれに接続された4つのソケット電極120、122、124、126を備える。ソケット電極120、122、124、126は、雌型の高周波コネクタ(RFコネクタ)を構成し、外部の回路基板上に設けられた対応する4つの信号ピンが挿入されることにより、当該外部の回路基板上に構成された電気回路からの電気信号(高周波信号)が入力される。
【0021】
すなわち、ソケット電極120、122、124、126は、光変調素子102に変調動作を行わせるための電気信号を外部の回路基板上に構成された電気回路から入力するための、信号入力部に相当する。
尚、本実施形態では、信号入力部を雌型のソケットタイプの電極で説明しているが、雄型のものであっても良いし、筐体104より信号ピンが延伸するものであっても良い。
【0022】
また、筺体104の底面106には、突出体150a、150b、150c、150dが設けられていない領域に、底面106から突出する第2の突出体である突出体130を有する(
図2、
図3)。そして、信号入力部であるソケット電極120、122、124、126が、突出体130の上面(頂上面)132に設けられている。
【0023】
本実施形態では、突出体150a、150b、150c、150dのそれぞれの底面106からの高さ150hが、突出体130の底面106からの高さ130hと等しい。
【0024】
次に、外部の回路基板への、光変調器100の実装例について説明する。
図4は、光変調器100が実装された光送信装置400の平面図である。また、
図5及び
図6は、それぞれ、
図4に示す光送信装置のAA断面矢視図及びBB断面矢視図である。
【0025】
光送信装置400は、筺体402内に固定された回路基板404を備え、当該回路基板404に光変調器100が実装されている。なお、光変調器100及び回路基板404は筺体402内に収容されているため、筺体402の外部から光変調器100及び回路基板404を視認することはできないが、
図4においては、説明のため、筺体402の内部に収容されている部分についても、回路基板404のうち光変調器100の筺体104により隠れている部分を除き、実線を用いて示している。
【0026】
回路基板404上には、DSP(Digital Signal Processor)410、DRV(Driver)420、LD(Laser Diode)430、及び、PD(Photo Diode)440、その他電子部品(不図示)が搭載される。DSP410は、デジタル信号の処理を実行するための演算処理装置である。ドライバ素子であるDRV420は、光変調器100を駆動するための電気回路である。LD430は、光ファイバ108を介して光変調器100にレーザー光を入射する。PD440は、デジタルコヒーレント光信号受信用に設置される。なお、回路基板404上に搭載される電気部品は一例であって、上記以外に他の電気部品が搭載されてもよい。
【0027】
DRV420の出力は、回路基板404に設けられた電極ピン450、452、454、456から出力される。電極ピン450、452、454、456は、回路基板404上に搭載されたDRV420の信号出力用の導体パターンから、
図5に示す如く、回路基板404の部品実装面(図示上側の面)から図示上方へ立ち上がって延在するように、回路基板404に設けられている。光変調器100は、突出体130に設けられたソケット電極120、122、124、126が、回路基板404に設けられたこれらの電極ピン450、452、454、456と嵌合することにより、DRV420と電気的に接続される。
【0028】
また、光変調器100は、突出体150a、150b、150c、150dのネジ穴140a、140b、140c、140dに、回路基板404に挿通されたネジ462a、462b、462c、462dと締結されることにより、回路基板404に固定される。すなわち、突出体150a、150b、150c、150dは、筺体104を回路基板404に固定する固定体に相当する。
【0029】
このように、突出体150a、150b、150c、150dにより、光変調器100の底面106と回路基板404との間に、DSP410やDRV420等の電気部品の実装スペースが確保される。これにより、光送信装置400の筺体402内の空間利用率が向上する。
【0030】
特に、本実施形態に係る光変調器100の筺体140の底面106には、従来技術のような切り欠きが設けられておらず、その一部に突出体150a、150b、150c、150dが設けられている。このため、光変調器100では、筺体104の底面106のほとんどの領域を、一様な平面として構成することができる。ここで、突出体150a、150b、150c、150dは、光変調器100の回路基板404に固定するために必要最低限の面積領域に限定して、底面106に設けることができるため、突出体150a、150b、150c、150dによる底面106の一様性の乱れは最小限となり得る。
【0031】
その結果、光変調器100では、筺体104の加工歪の発生を最小限として、光変調器100を光送信装置400の回路基板404上に固定した場合における、筺体104の微小な変形の発生を抑制し、光変調器100の光学特性の初期変化及び変形応力の経年変化による光学特性の経年変化を抑制することができる。
【0032】
また、光変調器100では、光変調器100に光変調動作を行わせる電気信号(高周波信号)が入力される信号入力部であるソケット電極120、122、124、126が、筺体104の底面106から突出する突出体130の上面(頂上面)132に設けられている。このため、光変調器100では、回路基板404上に構成された駆動回路の信号出力用の導体パターンから立ち上がる電極ピン450、452、454、456は、それぞれ、対応する上記導体パターンの直近において、光変調器100のソケット電極120、122、124、126と接触して電気的に接続されることとなる。
【0033】
すなわち、光変調器100では、回路基板404上に構成された駆動回路の信号出力用の導体パターンと、光変調器100の信号入力部(ソケット電極120等)との間の距離(従って、上記駆動回路から出力される高周波信号の伝搬距離)を、従来の光変調器(例えば、特許文献1に記載の光変調器)に比べて大幅に小さくすることができる。このため、筐体固定時の変形も上記導体パターンと上記信号入力部との間で小さくする事が出来、高周波特性の乱れを低減して、当該高周波特性の初期変化及び経年変化も抑制することができる。
【0034】
前述した通り、本実施形態において、突出体150a、150b、150c、150dの高さ150hは、突出体130の高さ130hと等しい。これにより、光変調器100は、突出体150a、150b、150c、150dのそれぞれの上面(頂上面)と突出体130の上面132とを同一平面として形成することができる。そのため、ネジ462a、462b、462c、462dの締結時に、突出体150a、150b、150c、150d及び突出体130による筺体104への応力の発生を抑制でき、光変調器100の光学特性と光変調器100内における高周波特性との初期変化及び経年変化を抑制することができる。また、ネジ462a、462b、462c、462dの締結時に、突出体130が傾いたり歪んだりすることなく突出体130を安定して回路基板404と光変調器100との間に設けることができ、突出体130の高周波特性の初期変化及び経年変化も抑制することができる。
【0035】
また、突出体150a、150b、150c、150dは、筺体1004の長手方向と平行に延びる中心線160(線)に関して略対称となるように、底面106の四隅のそれぞれに設けられる。これにより、筺体104を回路基板404に安定に固定でき、光変調器100を回路基板404上に固定する際の、当該光変調器100の筺体104における微小な変形の発生を更に抑制できる。このため、光変調器100では、回路基板404への実装時の光学特性及び光変調器100における高周波特性の初期変化及び経年変化を更に抑制することができる。
【0036】
本実施形態では、底面106のうち突出体130が設けられた部分以外の部分である当該底面106の四隅に突出体150a、150b、150c、150dを設けるものとしたが、これには限られない。底面106のうち突出体130が設けられた部分以外の部分に設ける突出体150a、150b、150c、150dの数及び配置は、底面106と回路基板404との間に電気部品の実装空間を確保し、光変調器100を光送信装置400の筺体402内に実装した場合の光学特性及び高周波特性の初期変化及び経年変化を抑制し得る限りにおいて、複数の任意の数及び任意の配置とすることができる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る光変調器について説明する。
図7、及び
図8は、それぞれ、本発明の第2の実施形態に係る光変調器700の構成を示す平面図、及び側面図であり、第1の実施形態に係る光変調器100の構成を示す
図1、及び
図2にそれぞれ対応する。なお、
図7、及び
図8において、それぞれ
図1、及び
図2に示す光変調器100と同じ構成要素については、上述した
図1、及び
図2についての説明を援用するものとする。
【0038】
第2の実施形態に係る光変調器700は、第1の実施形態に係る光変調器100と同様の構成を有するが、筺体104に代えて、筺体704を有する点が異なる。筺体704は、筺体104と同様の構成を有するが、突出体150a、150b、150c、150dの高さ150hが、突出体130の高さ130hより高い点が異なる。なお、突出体150a、150b、150c、150dのそれぞれの高さ150hは、同じ高さである。
【0039】
これにより、光変調器700では、ネジ462a、462b、462c、462dの締結時に、突出体130と回路基板404とが接することがないため筺体104への不均一な応力や付加的な応力の発生が防止できる。そのため、光変調器100の光学特性と光変調器100内における高周波特性との初期変化及び経年変化を抑制することができる。また、ネジ462a、462b、462c、462dの締結時に、突出体130が傾いたり歪んだりすることがなく突出体130を安定して回路基板404と光変調器100との間に設けることができ、突出体130の高周波特性の初期変化及び経年変化も抑制することができる。
【0040】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る光変調器について説明する。
図9、
図10、及び
図11は、それぞれ、本発明の第3実施形態に係る光変調器900の構成を示す平面図、側面図、及び底面図であり、第1の実施形態に係る光変調器100の構成を示す
図1、
図2、及び
図3にそれぞれ対応する。
【0041】
【0042】
第3実施形態に係る光変調器900は、第1実施形態に係る光変調器100と同様の構成を有するが、筺体104に代えて、筺体904を有する点が異なる。筺体904は、筺体104と同様の構成を有するが、突出体130、及び突出体150a、150b、150c、150dに加えて、第1の突出体である突出体150e、150fを更に備える点が異なる。また、筺体904は、第3の突出体である突出体930a、930b、930cを更に備える点が異なる。
【0043】
突出体150e、150fは、第1の突出体である突出体150a、150b、150c、150dと同様に筺体904の底面906の一部から突出するように構成された第1の突出体である。突出体150e、150fは、底面906からの高さが突出体150a、150b、150c、150dの高さ150hと等しい。
【0044】
突出体150eにはネジ穴140eが形成され、突出体150fにはネジ穴140fが形成される。そして、光変調器900が回路基板上に実装される際、ネジ穴140a、140b、140c、140dと同じように、ネジ穴140e、140fには、ネジが締結される。これにより、筺体904は、回路基板に固定される。したがって、突出体150e、150fも固定体に相当する。
【0045】
突出体150e、150fは、突出体150a、150b、150c、150fのいずれより、底面906の中央寄りに設けられる。これにより、光変調器900を回路基板上に固定する際の、筺体904の微小な変形の発生を更に抑制することができる。このため、光変調器900では、回路基板への実装時の光学特性及び又は高周波特性の初期変化、及びこれらの経年変化を抑制することができる。
【0046】
突出体930a、930b、930cは、第1の突出体である突出体150a、150b、150c、150fと同様に筺体904の底面906の一部から突出するように構成された第3の突出体である。突出体930a、930b、930cの底面906からの高さ930hは、少なくとも突出体150a、150b、150c、150fの高さ150hと等しい。これにより、光変調器900では、第3の突出体である突出体930a、930b、930cがあることにより、光変調器900と回路基板との対向面積(例えば、接触面積)を拡大して、光変調器900をより安定に回路基板に実装することができる。
【0047】
特に、本実施形態では、
図11に示す如く、突出体930aは筺体904の長手方向に延びる中心線960(線)に関して第2の突出体である突出体130と対称な位置に設けられる。また、突出体930bは、当該中心線960に関して第1の突出体である突出体150fと略対称な位置に設けられる。また、突出体930cは、当該中心線960に関して第1の突出体である突出体150eと略対称な位置に設けられる。このように、筺体904が対称構造を有することで、筺体904の加工時に発生する当該筺体904の加工歪の偏在が、筺体104、704の場合よりも更に低減される。その結果、光変調器900を回路基板上に固定する際の、当該光変調器900の筺体904における加工歪の偏在に起因した微小変形の発生を更に抑制することができる。このため、光変調器900では、回路基板への実装時の光学特性及び又は高周波特性の初期変化、及びこれらの経年変化を抑制することができる。
【0048】
また、一般に、光変調器100、700、又は900の構成が適用され得る光変調器の一例であるDP-QPSK変調器では、光変調素子102からの2つの出力光が、筺体104、704、904の長手方向に平行な中心線160、960に沿って、且つ当該中心線160、960に関して対称な配置で伝搬するよう構成される。そして、上記2つの出力光を合波して光ファイバ108へ導くためのレンズ等の光学素子も、上記筺体904の長手方向に平行な中心線960に関して対称に配置されることが多い。
【0049】
このため、本実施形態のように筺体104、704、904を対称構造として、当該筺体に発生し得る形状変化が中心線160、960に関して対称な変化となるようにすれば、これら筺体が非対称構造であるときに比べて、光変調器100、700、900における光学特性の経年変化や温度変動を、更に効果的に抑制することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、突出体130の上面132及び突出体930の上面932にはネジ穴を設けない構成としたが、これには限られない。例えば、上面132及び又は932に、少なくとも一つのネジ穴を設けて、突出体130及び又は突出体930が回路基板にネジ締結されるものとしてもよい。これにより、回路基板上に構成された駆動回路の信号出力用の導体パターンと、光変調器900の信号入力部(ソケット電極120等)との間の距離を更に安定に維持して、光変調器900の高周波特性の経年変化を更に良好に抑制することができる。
【0051】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る光変調器について説明する。
図12、
図13、及び
図14は、それぞれ、本発明の第4実施形態に係る光変調器1200の構成を示す平面図、側面図、及び底面図であり、第1の実施形態に係る光変調器100の構成を示す
図1、
図2、及び
図3にそれぞれ対応する。
【0052】
【0053】
第4実施形態に係る光変調器1200は、第1実施形態に係る光変調器100と同様の構成を有するが、筺体104に代えて、筺体1204を有する点が異なる。筺体1204は、筺体104と同様の構成を有するが、底面1206に第2の突出体である突出体130を備えず、突出体130の代わりに側面1208にフレキシブルプリント基板1210が接続する点が異なる。
【0054】
筺体1204の側面1208には、電極ピン1220、1222、1224、1226が側面1208から突出して設けられている。電極ピン1220、1222、1224、1226は、外部の回路基板上に設けられた対応する4つの信号ピンとフレキシブルプリント基板1210を介して電気的に接続されることにより、当該外部の回路基板上に構成された電気回路からの電気信号(高周波信号)が入力される。フレキシブルプリント基板1210は、少なくとも電極ピン1220、1222、1224、1226のそれぞれに対応した信号線1230、1232、1234、1236が配されている。そして、フレキシブルプリント基板1210の信号線1230、1232、1234、1236のそれぞれは、所定の接続手段により、対応する電極ピン1220、1222、1224、1226と接続する。
【0055】
次に、外部の回路基板への、本実施形態の光変調器1200の実装例について説明する。
図15は、光変調器1200が実装された光送信装置1500の平面図である。また、
図16は、
図15に示す光送信装置1500のCC断面矢視図である。
【0056】
なお、
図15、及び
図16において、それぞれ
図4、及び
図6に示す光送信装置400と同じ構成要素については、上述した
図4、及び
図6についての説明を援用するものとする。
【0057】
光送信装置1500は、筺体1502内に固定された回路基板404を備え、当該回路基板404に光変調器1200が実装されている。なお、光変調器1200及び回路基板404は筺体1502内に収容されているため、筺体1502の外部から光変調器1200及び回路基板404を視認することはできないが、
図15においては、説明のため、筺体1502の内部に収容されている部分についても、回路基板404のうち光変調器1200の筺体1204により隠れている部分を除き、実線を用いて示している。
【0058】
回路基板404上には、DSP410、DRV420、LD430、及び、PD440、その他電子部品(不図示)が搭載される。
【0059】
上記DRV420の出力は、回路基板404に設けられた電極ピン450、452、454、456から出力される。光変調器1200は、フレキシブルプリント基板1210が湾曲して筺体1204の底面1206と回路基板404との間に入り込み、フレキシブルプリント基板1210の信号線1230、1232、1234、1236が対応する電極ピン450、452、454、456と所定の接続手段で接続することにより、上記DRV420と電気的に接続される。
【0060】
このように、光変調器1200に光変調動作を行わせる電気信号(高周波信号)を筺体1204の側面1208から入力される構成でも、突出体150a、150b、150c、150dにより、光変調器1200の底面1206と回路基板404との間に、DSP410やDRV420等の電気部品の実装スペースが確保される。これにより、光送信装置1500の筺体1502内の空間利用率が向上する。特に、本実施形態は、筺体1204の底面1206に第2の突出体である突出体130を備えていないため、突出体130による底面1206の一様性の乱れをより最小限とすることができる。
【0061】
その結果、光変調器1200では、筺体1204の加工歪の発生を最小限として、光変調器1200を光送信装置1500の回路基板404上に固定した場合における、筺体1204の微小な変形の発生をより抑制し、光変調器1200の光学特性の初期変化及び経年変化をより抑制することができる。
【0062】
なお、上述した各実施形態において、筺体104、704、904、1204の加工歪を低減し且つDSP410やDRV420等の電気部品の実装スペースが確保する観点によれば、第1の突出体の総面積は、底面106、706、906、1206の面積に対して50%を下回ることが好ましく、より好ましくは25%以下である。
【0063】
なお、上述した各実施形態では、LNを基板として用いた4つのRF電極を持つ光変調素子を備える光変調器を示したが、本発明は、これに限らず、4つ以外の数のRF電極を持つ光変調器、及び又はLN以外の材料を基板として用いる光変調器にも、同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
100、700、900、1200…光変調器、102…光変調素子、104、704、904、1204…筺体、106、706、906、1206…底面、108、110…光ファイバ、120、122、124、126…ソケット電極、130、150a、150b、150c、150d、150e、150f、930a、930b、930c…突出体、132、932…上面、140a、140b、140c、140d、140e、140f…ネジ穴、400、1500…光送信装置、402、1502…筺体、404…回路基板、450、452、454、456、1220、1222、1224、1226…電極ピン、462a、462b、462c、462d…ネジ、160、960…中心線、1210…フレキシブルプリント基板、1230、1232、1234、1236…信号線。