(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】光変調器、及び光送信装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/03 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
G02F1/03 505
(21)【出願番号】P 2018003443
(22)【出願日】2018-01-12
【審査請求日】2020-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
(72)【発明者】
【氏名】菅又 徹
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-258363(JP,A)
【文献】特開2017-134131(JP,A)
【文献】特開2014-178383(JP,A)
【文献】特開2005-128440(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0269319(US,A1)
【文献】特開平11-176966(JP,A)
【文献】特開2017-198950(JP,A)
【文献】特開2009-86541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
1/21-7/00
H01S 5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上に構成された電気回路と電気的に接続される光変調器であって、
光変調素子を収容する筐体と、
前記光変調素子に変調動作を行わせるための電気信号を前記電気回路から入力する信号入力部と、
を備え、
前記筐体は、前記回路基板に対向することとなる底面の一部に、当該底面から突出する第1の突出部を有し、
前記信号入力部は、前記第1の突出部の上面に設けら
れ、
前記筐体は、前記第1の突出部の前記上面に少なくとも一つのネジ穴を備える、
光変調器。
【請求項2】
前記筐体の前記底面は、前記第1の突出部以外の部分に少なくとも一つのネジ穴を備える、
請求項
1に記載の光変調器。
【請求項3】
前記筐体は、前記底面の一部に当該底面から突出する第2の突出部を有し、
前記第1の突出部と前記第2の突出部とは、前記底面からの高さが略等しい、
請求項1
又は2に記載の光変調器。
【請求項4】
前記筐体は、前記第2の突出部の上面に少なくとも一つのネジ穴を備える、
請求項
3に記載の光変調器。
【請求項5】
請求項1ないし
4のいずれか一項に記載の光変調器と、
前記光変調器に前記変調動作を行わせるための電気信号を出力する前記回路基板と、
を備える、
光伝送装置。
【請求項6】
前記光変調器の前記底面と前記回路基板との間に配された、前記第1の突出部の前記底面からの高さに等しい高さの、少なくとも一つのスペーサを更に備える、
請求項
5に記載の光伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器、並びに光変調器を用いた光伝送装置及び光送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、長距離光通信において適用が開始されたデジタルコヒーレント伝送技術は、通信需要の更なる高まりから中距離、短距離などメトロ用光通信にも適用されつつある。このようなデジタルコヒーレント伝送においては、光変調器として、代表的にはLiNbO3(以下、LNという)基板を用いたDP-QPSK(Dual Polarization-Quadrature Phase Shift Keying)変調器が用いられる。以下、LiNbO
3
基板を用いた光変調器を、LN変調器という。
【0003】
このような光変調器は、例えば、当該光変調器に変調動作を行わせるための電気信号を出力するドライバ素子(または駆動回路)が接続され、光送信装置として用いられる。また一般的に当該光変調器やドライバ素子は回路基板上に配置される。
【0004】
特に、メトロ用光通信など短距離用途の光送信装置に関しては光変調器やドライバ回路等の設置空間の抑制に対する要請が高く、変調器等の小型化が望まれている。光変調器を小型化するため、LN光変調素子の小型化(例えば、LN基板上における光導波路配置面積の縮小)、LN基板上の光導波路からの出力光を出力光ファイバへ光結合するための空間光学系の小型化、LN変調器の高周波(RF)信号入力インタフェースの小型化(例えば、同軸コネクタからフレキシブルプリント板への変更)等の取り組みが従来から行われている。
【0005】
また、上記のような光変調器単体の小型化に加えて、光伝送装置内の空間利用率を向上すべく、光変調器の筐体に切り欠きを設け、当該切り欠きにより確保される空間に上記ドライバ回路の電子部品を配することが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
ところが、本願発明の発明者の知見によれば、筐体に切り欠きを設けた従来の光変調器を光伝送装置内の回路基板にネジ固定すると、当該ネジ固定後に、光変調器の光通過損失等の光学特性が劣化したり、当該光学特性が経時的に変動(劣化)してしまう等の問題が発生し得る。
【0007】
また、上述のような光学特性の変化や劣化に加えて、光変調器の高周波特性についての変化や劣化といった問題も発生し得る。
【0008】
そして、これらの問題の発生要因は、光変調器の筐体に切り欠きを設けることに起因する加工歪の発生(例えば、筐体底面の平坦性を低下させるような加工変形部の発生)と加工歪の偏在、当該筐体をネジ固定する際に発生する固定応力の影響であると考えられる。
【0009】
即ち、特許文献1に記載の光変調器のように、電気部品配置のための空間を確保すべく光変調器の筐体の一部に切欠きを設ける構成とした場合、例えば、切欠き形成のための切削工程等において筐体に加工歪(筐体歪ともいう)や加工歪の偏在が発生し得る。そして、このような加工歪の発生した筐体を回路基板にネジ固定した場合、上記加工歪の状態と当該ネジ固定の際の締結力の大きさ、応力の大きさ等とに依存して上記筐体に微小な変形が発生し得る。また、発熱を伴う高周波ドライバIC等を上記切り欠き部に配置すれば、筐体の直近に発熱体が配されることとなり、筐体歪が発熱体の温度上昇によって更に拡大することとなり得る。また、光伝送装置の長期間動作に伴って当該筐体が高温状態のまま維持されれば、上記の筐体歪や微小な変形は経時的にも変化/拡大していくこととなり得る。
【0010】
そして、筐体に発生した上記微小変形は、当該筐体の内部に収容されているLN基板の変形や、上記空間光学系を構成するレンズ等の光部品相互の位置関係の変化を招き、光変調器の光学特性が劣化する問題を引き起こす。また、これに加えて、上記筐体の微小変形は、例えば特許文献1に開示された光変調器のように高周波コネクタが当該筐体にリジッドに設けられる構成において、当該高周波コネクタと、回路基板との間の接続状態をも変化させることとなり、光伝送特性の劣化を引き起こすこととなり得る。
【0011】
その一方、上述した光変調器筐体の加工歪の発生や、当該筐体を回路基板にネジ固定する際に発生する応力バランスの変化は、切欠き加工を行う際の加工条件や、光変調器を回路基板にネジ固定する際の組立工程における製造条件等の工夫(例えば、加工条件のばらつき低減)だけでは十分抑制する事は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記背景より、本発明の目的は、光伝送装置内の空間利用率を向上しつつ、光変調器を光伝送装置内に実装した場合の光学特性及び高周波特性の初期変化及び経年変化を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一の態様は、回路基板上に構成された電気回路と電気的に接続される光変調器であって、光変調素子を収容する筐体と、前記光変調素子に変調動作を行わせるための電気信号を前記電気回路から入力する信号入力部と、を備え、前記筐体は、前記回路基板に対向することとなる底面の一部に、当該底面から突出する第1の突出部を有し、前記信号入力部は、前記第1の突出部の上面に設けられ、前記筐体は、前記第1の突出部の前記上面に少なくとも一つのネジ穴を備える。
本発明の他の態様によると、前記筐体の前記底面は、前記第1の突出部以外の部分に少なくとも一つのネジ穴を備える。
本発明の他の態様によると、前記筐体は、前記底面の一部に当該底面から突出する第2の突出部を有し、前記第1の突出部と前記第2の突出部とは、前記底面からの高さが略等しい。
本発明の他の態様によると、前記筐体は、前記第2の突出部の上面に少なくとも一つのネジ穴を備える。
本発明の他の態様は、いずれかの前記光変調器と、前記光変調器に前記変調動作を行わせるための電気信号を出力する前記回路基板と、を備える、光伝送装置である。
本発明の他の態様によると、前記光伝送装置は、前記光変調器の前記底面と前記回路基板との間に配された、前記第1の突出部の前記底面からの高さに等しい高さの、少なくとも一つのスペーサを更に備える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光変調器の平面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る光変調器の正面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る光変調器の底面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る光変調器が実装された光伝送装置の平面図である。
【
図5】
図5に示す光伝送装置のAA断面矢視図である。
【
図6】
図5に示す光伝送装置のBB断面矢視図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る光変調器の平面図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る光変調器の正面図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る光変調器の底面図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態に係る光変調器の平面図である。
【
図11】本発明の第3の実施形態に係る光変調器の正面図である。
【
図12】本発明の第3の実施形態に係る光変調器の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1の実施形態に係る光変調器について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光変調器100の構成を示す平面図、
図2は、光変調器100の正面図、
図3は、光変調器100の底面図である。この光変調器100は、例えば、光変調器100に変調を行わせるための電気回路が構成された外部の回路基板(例えば、後述の
図4に示す回路基板404)上に実装され、当該電気回路と電気的に接続されて使用される。
【0017】
本光変調器100は、光変調素子102と、光変調素子102を収容する筐体104と、光変調素子102に光を入射するための光ファイバ108と、光変調素子102から出力される光を筐体104の外部へ導く光ファイバ110と、を備える。
【0018】
光変調素子102は、例えばLN基板上に設けられた4つのマッハツェンダ型光導波路と、当該マッハツェンダ型光導波路上にそれぞれ設けられて光導波路内を伝搬する光波を変調する4つの高周波電極(RF電極)と、を備えたDP―QPSK光変調器等に用いられる光変調素子である。光変調素子102から出力される2つの光は、例えば筐体104内に収容されたレンズ光学系(不図示)により偏波合成され、光ファイバ110を介して筐体104の外部へ導かれる。
【0019】
筐体104は、光変調素子102が備える4つのRF電極(不図示)のそれぞれに接続された4つのソケット電極120、122、124、126を備える。ソケット電極120、122、124、126は、雌型の高周波コネクタ(RFコネクタ)を構成し、外部の回路基板上に設けられた対応する4つの信号ピンが挿入されることにより、当該外部の回路基板上に構成された電気回路からの電気信号(高周波信号)が入力される。
【0020】
すなわち、ソケット電極120、122、124、126は、光変調素子102に変調動作を行わせるための電気信号を外部の回路基板上に構成された電気回路から入力するための、信号入力部に相当する。尚、本実施形態では、信号入力部を雌型のソケットタイプの電極で説明しているが、雄型のものであっても良いし、筐体104より信号ピンが延伸するものであっても良い。また、通常の光変調器には高周波信号が入力されるRF部だけで無くバイアス制御等に使用するdc信号入力部を有するが、本実施例等では特に図示していない。
【0021】
また、本実施形態の光変調器100では、筐体104のうち、光変調器100が実装される回路基板に対向することとなる底面106の一部に、当該底面106から突出する第1の突出部である突出部130を有する(
図2、
図3)。そして、信号入力部であるソケット電極120、122、124、126が、突出部130の上面(頂上面)132に設けられている。
【0022】
また、筐体104の底面106には、突出部130が設けられていない領域に、ネジ穴140a、140b、140c、140dが設けられている。
【0023】
次に、外部の回路基板への、光変調器100の実装例について説明する。
図4は、光変調器100が実装された光伝送装置400の平面図である。また、
図5及び
図6は、それぞれ、
図4に示す光伝送装置のAA断面矢視図及びBB断面矢視図である。
【0024】
光伝送装置400は、筐体402内に固定された回路基板404を備え、当該回路基板404に光変調器100が実装されている。なお、光変調器100及び回路基板404は筐体402内に収容されているため、筐体402の外部から光変調器100及び回路基板404を視認することはできないが、
図4においては、説明のため、筐体402の内部に収容されている部分についても、回路基板404のうち光変調器100の筐体104により隠れている部分を除き、実線を用いて示している。
【0025】
回路基板404上には、DSP(Digital Signal Processor)410、DRV(Driver)420、LD(Laser Diode)430、及び、PD(Photo Diode)440、その他電子部品(不図示)が搭載される。DSP410は、デジタル信号の処理を実行するための演算処理装置である。DRV420は、光変調器100を駆動するための電気回路である。LD430は、光ファイバ108を介して光変調器100にレーザー光を入射する。PD440は、デジタルコヒーレント光信号受信用に設置される。なお、回路基板404上に搭載される電気部品は一例であって、上記以外に他の電気部品が搭載されてもよい。
【0026】
DRV420の出力は、回路基板404に設けられた電極ピン450、452、454、456から出力される。電極ピン450、452、454、456は、回路基板404上に搭載されたDRV420の信号出力用の導体パターンから、
図5に示す如く、回路基板404の部品実装面(図示上側の面)から図示上方へ立ち上がって延在するように、回路基板404に設けられている。光変調器100は、突出部130に設けられたソケット電極120、122、124、126が、回路基板404に設けられたこれらの電極ピン450、452、454、456と嵌合することにより、DRV420と電気的に接続される。
【0027】
また、光変調器100は、筐体104のネジ穴140a、140b、140c、140dが、これらのネジ穴のそれぞれの位置に配されたパイプ状のスペーサ460a、460b、460c、460dを介して、回路基板404に挿通されたネジ462a、462b、462c、462dと締結されることにより、回路基板404に固定される。
【0028】
スペーサ460a、460b、460c、460dの高さは、光変調器100の筐体104の底面106(回路基板404に対向する面)から測った突出部130の高さと同じか又は当該高さより高く、当該突出部130と、これらのスペーサ460a、460b、460c、460dとにより、光変調器100の底面106と回路基板404との間に、DSP410やDRV420等の電気部品の実装スペースが確保される。これにより、光伝送装置400の筐体402内の空間利用率が向上する。
【0029】
特に、本実施形態に係る光変調器100の筐体140の底面106には、従来技術のような切り欠きが設けられておらず、その一部に突出部130が設けられる。このため、光変調器100では、筐体104の底面106のほとんどの領域を、一様な平面として構成することができる。ここで、突出部130は、信号入力部であるソケット電極120、122、124、126を収容するのに必要な最低限の面積領域に限定して設けることができ、加工歪の発生や偏在を最小限に抑制できるため、突出部130による底面106の一様性の乱れは最小限となり得る。
【0030】
その結果、光変調器100では、筐体104の加工歪の発生を最小限として、光変調器100を光伝送装置400の回路基板404上に固定した場合における、筐体104の微小な変形の発生を抑制し、光変調器100の光学特性の初期変化及び変形応力の経年変化による光学特性の経年変化を抑制することができる。
【0031】
また、光変調器100では、光変調器100に光変調動作を行わせる電気信号(高周波信号)が入力される信号入力部であるソケット電極120、122、124、126が、筐体104の底面106から突出する突出部130の上面(頂上面)132に設けられている。このため、光変調器100では、回路基板404上に構成された駆動回路の信号出力用の導体パターンから立ち上がる電極ピン450、452、454、456は、それぞれ、対応する上記導体パターンの直近において、光変調器100のソケット電極120、122、124、126と接触して電気的に接続されることとなる。
【0032】
すなわち、光変調器100では、回路基板404上に構成された駆動回路の信号出力用の導体パターンと、光変調器100の信号入力部(ソケット電極120等)との間の距離(従って、上記駆動回路から出力される高周波信号の伝搬距離)を、従来の光変調器(例えば、特許文献1に記載の光変調器)に比べて大幅に小さくすることができる。このため、筐体固定時の変形も上記導体パターンと上記信号入力部との間で小さくする事ができ、高周波特性の乱れを低減して、当該高周波特性の初期変化及び経年変化も抑制することができる。
【0033】
なお、スペーサ460a、460b、460c、460dの高さは、ネジ462a、462b、462c、462dの締結時に突出部130に応力が加わらないように、例えば、突出部130の高さに対してマイナス公差がゼロである高さとしたり、又は突出部130の高さに対し所定の寸法だけ高い高さとすることができる。
【0034】
また、本実施形態では、4つのネジ穴140a、140b、140c、140dの全てに対応して4つのスペーサ460a、460b、460c、460dを用いるものとしたが、これには限られない。例えば、4つのネジ穴140a、140b、140c、140dの少なくとも一つにスペーサ(460a等)を用いるものとしてもよい。このように構成しても、当該スペーサと突出部130とにより、底面106と回路基板404との間に電気部品の実装空間を確保することができる。
【0035】
また、本実施形態では、底面106のうち突出部130が設けられた部分以外の部分である当該底面106の四隅に4つのネジ穴140a、140b、140c、140dを設けるものとしたが、これには限られない。底面106のうち突出部130が設けられた部分以外の部分に設けるネジ穴の数及び配置は、当該ネジ穴の部分にスペーサ460a等を用いることで底面106と回路基板との間に電気部品の実装空間を確保し得る限りにおいて、1以上の任意の数及び任意の配置とすることができる。
【0036】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る光変調器について説明する。
図7、
図8、及び
図9は、それぞれ、本発明の第2の実施形態に係る光変調器700の構成を示す平面図、正面図、及び底面図であり、第1の実施形態に係る光変調器100の構成を示す
図1、
図2、及び
図3にそれぞれ対応する。なお、
図7、
図8、及び
図9において、それぞれ
図1、
図2、及び
図3に示す光変調器100と同じ構成要素については、上述した
図1、
図2、
図3についての説明を援用するものとする。
【0037】
第2の実施形態に係る光変調器700は、第1の実施形態に係る光変調器100と同様の構成を有するが、筐体104に代えて、筐体704を有する点が異なる。筐体704は、筐体104と同様の構成を有するが、第1の突出部として、突出部130に代えて突出部730を備える点が異なる。突出部730は、突出部130と同様に、光変調器700が実装される回路基板に対向することとなる筐体704の底面706の一部から突出し、その上面(頂上面)732に、信号入力部であるソケット電極120、122、124、126を備える(
図8、
図9)。
【0038】
ただし、突出部730は、突出部130と異なり、その上面732に更にネジ穴740a及び740bを備える。本実施形態では、ネジ穴740a、740bは、上面732上に一列に配された4つのソケット電極120、122、124、126を、その配列方向において両端部から挟む位置に設けられている。
【0039】
これにより、光変調器700では、ソケット電極120、122、124、126を介して外部の回路基板上に構成された駆動回路(電気回路)と電気的な接続を行う際に、高周波コネクタ部の極近い位置でネジ穴740a、740bを用いて突出部730を当該回路基板にそれぞれの間隔を含め安定に固定することができる。その結果、回路基板上に構成された駆動回路の信号出力用の導体パターンと、光変調器700の信号入力部(ソケット電極120等)との間の距離(従って、上記駆動回路から出力される高周波信号の伝搬距離)を、第1の実施形態に係る光変調器100の場合よりも更に安定に設置/維持することができ、光変調器700の高周波特性の経年変化を更に良好に抑制することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、突出部730の上面732には2つのネジ穴740a、740bが、ソケット電極120、122、124、126を、その配列方向において両端部から挟む位置に設けられているものとしたが、これには限られない。例えば、上面732に設けるネジ穴の数は、一つ以上の任意の数とすることができるし、上面732におけるそれらネジ穴の配置も任意とすることができる。
【0041】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態に係る光変調器について説明する。
図10、
図11、及び
図12は、それぞれ、本発明の第3の実施形態に係る光変調器1000の構成を示す平面図、正面図、及び底面図であり、第1の実施形態に係る光変調器100の構成を示す
図1、
図2、及び
図3にそれぞれ対応する。また、
図13は、
図11に示す光変調器1000の正面図に対する、当該光変調器1000の左側面図である。
【0042】
【0043】
第3の実施形態に係る光変調器1000は、第1の実施形態に係る光変調器100と同様の構成を有するが、筐体104に代えて、筐体1004を有する点が異なる。筐体1004は、筐体104と同様の構成を有するが、突出部130に加えて、突出部1030を更に備える点が異なる。
【0044】
突出部1030は、第1の突出部である突出部130と同様に筐体1004の底面1006の一部から突出するように構成された第2の突出部であり、底面1006からの高さが突出部130の高さと等しい。これにより、光変調器1000では、第2の突出部である突出部1030があることにより、光変調器1000と回路基板との対向面積(例えば、接触面積)を拡大して、光変調器1000をより安定に回路基板に実装することができる。
【0045】
なお、本実施形態では、
図12に示す如く、第2の突出部である突出部1030は、筐体1004の長さ方向に延びる当該筐体1004の幅方向の中心線1200に関して、第1の突出部である突出部130と対称な位置に設けられているが、これには限られない。突出部1030を、突出部130の配置とは無関係な任意の位置に配するものとしても、回路基板に対してより安定に光変調器1000の実装を実現することができる。
【0046】
更に、
図12のように、突出部1030と突出部130とを略対称に配置すれば、筐体1004は対称構造を有するものとなり、筐体1004の加工時に発生する当該筐体1004の加工歪の偏在が、筐体104の場合よりも更に低減され、また残存する加工応力も対称化が図られる。その結果、光変調器1000を回路基板上に固定する際の、当該光変調器1000の筐体1004における加工歪の偏在に起因する微小な変形の発生を、より抑制することができ、より好適な実施例となる。このため、光変調器1000では、回路基板への実装時の光学特性及び又は高周波特性の初期変化、及びこれらの経年変化をより抑制することができる。
【0047】
また、一般に、光変調器100、700、又は1000の構成が適用され得る光変調器の一例であるDP-QPSK変調器では、光変調素子102からの2つの出力光が、筐体104、704、1004の幅方向中心線1200に沿って、且つ当該中心線1200に関して対称な配置で伝搬するよう構成される。そして、上記2つの出力光を合波して光ファイバ108へ導くためのレンズ等の光学素子も、上記幅方向中心線1200に関して対称に配置されることが多い。
【0048】
このため、本実施形態のように筐体104、704、1004を対称構造として、当該筐体に発生し得る形状変化が中心線1200に関して対称な変化となるようにすれば、これら筐体が非対称構造であるときに比べて、光変調器100、700、1000における光学特性の経年変化や温度変動を、より更に効果的に抑制することができる。
【0049】
なお、本実施形態では、突出部130の上面132及び突出部1030の上面1032にはネジ穴を設けない構成としたが、これには限られない。例えば、上面132及び又は1032に、少なくとも一つのネジ穴を設けて、突出部130及び又は突出部1030が回路基板にネジ締結されるものとしてもよい。これにより、第2の実施形態における光変調器700と同様に、回路基板上に構成された駆動回路の信号出力用の導体パターンと、光変調器1000の信号入力部(ソケット電極120等)との間の距離を更に安定に維持して、光変調器1000の高周波特性の経年変化を更に良好に抑制することができる。
【0050】
なお、上述した各実施形態では、LNを基板として用いた4つのRF電極を持つ光変調素子を備える光変調器を示したが、本発明は、これに限らず、4つ以外の数のRF電極を持つ光変調器、及び又はLN以外の材料を基板として用いる光変調器にも、同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
100、700、1000…光変調器、102…光変調素子、104、704、1004…筐体、106、706、1006…底面、108、110…光ファイバ、120、122、124、126…ソケット電極、130、730、1030…突出部、132、732…上面、140a、140b、140c、140d、740a、740b…ネジ穴、400…光伝送装置、402…筐体、404…回路基板、450、452、454、456…電極ピン、460a、460b、460c、460d…スペーサ、462a、462b、462c、462d…ネジ、1200…幅方向中心線。