(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】ヘッド清掃装置及び液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
B41J2/165 307
(21)【出願番号】P 2018033011
(22)【出願日】2018-02-27
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(72)【発明者】
【氏名】谷奥雄一
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-108594(JP,A)
【文献】特開2017-052117(JP,A)
【文献】特開2017-154361(JP,A)
【文献】特開2018-001462(JP,A)
【文献】特開2017-056696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルをノズル面に有する液体吐出ヘッドと、
前記ノズル面を払拭する払拭部材と、
前記払拭部材を前記ノズル面に押し当てる、回転可能な押し当て部材と、
前記押し当て部材の回転を制御する制御手段と、
前記払拭部材を前記ノズル面に接触させ、かつ、前記液体吐出ヘッドと前記払拭部材を相対的に移動させる払拭動作を行う移動手段と、を有し、
前記押し当て部材は、表面の一部に前記ノズル面のノズル形成部に対応する凹部を備え
、
前記制御手段は、前記ノズル形成部の摩耗具合に応じて前記押し当て部材の角度を変更する、ことを特徴とするヘッド清掃装置。
【請求項2】
液体を吐出するノズルをノズル面に有する液体吐出ヘッドと、
前記ノズル面を払拭する払拭部材と、
前記払拭部材を前記ノズル面に押し当てる、回転可能な押し当て部材と、
前記押し当て部材の回転を制御する制御手段と、
前記払拭部材を前記ノズル面に接触させ、かつ、前記液体吐出ヘッドと前記払拭部材を相対的に移動させる払拭動作を行う移動手段と、を有し、
前記押し当て部材の周面の一部の硬度は、前記周面の他の一部の硬度よりも低
く、
前記制御手段は、前記ノズル面のノズル形成部の摩耗具合に応じて前記押し当て部材の角度を変更する、ことを特徴とするヘッド清掃装置。
【請求項3】
前記押し当て部材の前記凹部によって生じる、前記払拭部材から前記ノズル面に作用する圧力は、前記凹部以外の部分によって生じる、前記払拭部材から前記ノズル面に作用する圧力よりも小さい、ことを特徴とする請求項1に記載のヘッド清掃装置。
【請求項4】
前記押し当て部材の周面の一部には、前記周面の他の一部を構成する素材よりも小さい硬度を有する弾性部材が設けられている、ことを特徴とする請求項2に記載のヘッド清掃装置。
【請求項5】
前記払拭部材に洗浄液を塗布する洗浄液塗布機構が設けられる、又は、前記払拭部材が払拭ユニットにセットされる前に洗浄液が前記払拭部材に含浸させられる、ことを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載のヘッド清掃装置。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載のヘッド清掃装置を備えることを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッド清掃装置及び液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、一般的に、液体噴射ヘッドのノズルを囲うようにしてノズル形成面にキャップを当接させるキャッピング状態で、液体噴射ヘッドのノズルからキャップ内にインクを強制的に吸引して排出するクリーニング動作(吸引クリーニング)が実行可能である。吸引クリーニングを繰り返し行うと、次第にキャップ先端のニップ部がインクで汚れ、吸引クリーニング等のキャッピング時にキャップのニップ部に付着したインクがノズル面に転写する。そのインクは乾燥して増粘し、ノズル面のノズルを囲うように固着してしまう。ノズル面への固着インクの堆積が進むと、印刷時に被搬送物と擦れて画像不良が生じたり、キャッピング時にノズル面とキャップニップ部との間に隙間が生じてノズル面の保湿・吸引が正しく行えなかったりする。そのため、ノズル面払拭時に固着インクを十分に除去する必要がある。
【0003】
インクジェット記録装置の記録ヘッドのノズル面を払拭する方法として、装置本体側に設けられた、ノズル面のインクを拭き取る拭き取り部材である払拭シートを使用し、ノズル面のインクを除去する方法が知られている。
【0004】
特許文献1には、ノズル形成部の磨耗を抑制するために、払拭シートをノズル面に押し当てる払拭部材において、ノズル形成部と対向する部分を周囲より凹んだ形状とし、ノズル形成部に作用する圧力を周囲と比べて小さくすることが開示されている。
【0005】
しかし、この手段では払拭時に常に一定の払拭圧力がノズル面に作用するため、特に吐出に影響があるとされるノズル形成部の磨耗が進んだ場合には、正常なインク吐出が行えなくなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、正常な液体吐出を維持できるヘッド清掃装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、液体を吐出するノズルをノズル面に有する液体吐出ヘッドと、前記ノズル面を払拭する払拭部材と、前記払拭部材を前記ノズル面に押し当てる、回転可能な押し当て部材と、前記押し当て部材の回転を制御する制御手段と、前記払拭部材を前記ノズル面に接触させ、かつ、前記液体吐出ヘッドと前記払拭部材を相対的に移動させる払拭動作を行う移動手段と、を有し、前記押し当て部材は、表面の一部に前記ノズル面のノズル形成部に対応する凹部を備え、前記制御手段は、前記ノズル形成部の摩耗具合に応じて前記押し当て部材の角度を変更する、ことを特徴とするヘッド清掃装置により解決される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、正常な液体吐出を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】インクジェット記録装置600を前方側から見た斜視説明図である。
【
図2】同装置の機構部の全体構成を説明する側面概略構成図である。
【
図4】同装置の制御部の概要を示すブロック説明図である。
【
図5】キャップ82からノズル面37への固着インクの堆積メカニズムを示す図である。
【
図6】キャップ82からノズル面37への固着インクの堆積メカニズムを示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る払拭ユニットを示す図である。
【
図8】払拭ユニット100の払拭動作を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る洗浄液塗布機構を示す図である。
【
図11】本発明の第1実施形態に係る押し当て部材を示す図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る押し当て部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る液体を吐出する装置としてのインクジェット記録装置600を前方側から見た斜視説明図である。
このインクジェット記録装置600は、装置本体1と、装置本体1に装着された被搬送物を装填するための供給トレイ2と、装置本体1に着脱自在に装着されて画像が記録(形成)された被搬送物をストックするための排出トレイ3とを備えている。さらに、装置本体1の前面の一端部側(給排出トレイ部の側方)には、インクカートリッジを装填するためのカートリッジ装填部4を有し、このカートリッジ装填部4の上面は操作ボタンや表示器などを設ける操作/表示部5としている。
【0011】
このカートリッジ装填部4には、色の異なる色材である記録液(インク)、例えば黒(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクをそれぞれ収容した複数の記録液カートリッジであるインクカートリッジ(メインタンク)10k、10c、10m、10y(色を区別しないときは「インクカートリッジ10」という。)を、装置本体1の前面側から後方側に向って挿入して装填可能とし、このカートリッジ装填部4の前面側には、インクカートリッジ10を着脱するときに開く前カバー(カートリッジカバー)6を開閉可能に設けている。また、インクカートリッジ10k、10c、10m、10yは縦置き状態で横方向に並べて装填する構成としている。
【0012】
また、操作/表示部5には、各色のインクカートリッジ10k、10c、10m、10yの装着位置(配置位置)に対応する配置位置で、各色のインクカートリッジ10k、10c、10m、10yの残量がニアーエンド及びエンドになったことを表示するための各色の残量表示部11k、11c、11m、11yを配置している。さらに、この操作/表示部5には、電源ボタン12、被搬送物送り/印刷再開ボタン13、キャンセルボタン14も配置している。
【0013】
次に、このインクジェット記録装置600の機構部について
図2及び
図3を参照して説明する。なお、
図2は同機構部の概要を示す側面模式的説明図、
図3は同じく要部平面説明図である。
フレーム21を構成する左右の側板21A、21Bに横架した主ガイド部材である主ガイドロッド31と従ガイドロッド32とでキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ500によってタイミングベルト502を介して
図3で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0014】
このキャリッジ33には、前述したようにイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個の液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド34を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向(被搬送物送り方向)に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。なお、各色の液体を吐出するノズル列を有する1又は複数のヘッド構成などを採用することもできる。
【0015】
記録ヘッド34を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液体を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0016】
また、キャリッジ33には、各記録ヘッド34に各色のインクを供給するための各色のヘッドタンク35を搭載している。この各色のヘッドタンク35には各色の可撓性を有する供給チューブ36を介して、前述したように、カートリッジ装填部4に装着された各色のインクカートリッジ10から各色のインクが補充供給される。このカートリッジ装填部4にはインクカートリッジ10内のインクを送液するための送液手段である供給ポンプユニット24が設けられている。
【0017】
一方、供給トレイ2の被搬送物積載部(圧板)41上に積載した被搬送物42を供給するための供給部として、被搬送物積載部41から被搬送物42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(供給コロ)43及び供給コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は供給コロ43側に付勢されている。
【0018】
そして、この供給部から供給された被搬送物42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、被搬送物42を案内するガイド45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された被搬送物42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0019】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。さらに、搬送ベルト51の裏側には、記録ヘッド34による印写領域に対応してガイド部材57を配置している。
【0020】
この搬送ベルト51は、副走査モータ504によってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって
図3のベルト搬送方向に周回移動する。
【0021】
さらに、記録ヘッド34で記録された被搬送物42を排出するための排出部として、搬送ベルト51から被搬送物42を分離するための分離爪61と、排出ローラ62及び排出コロ63とを備え、排出ローラ62の下方に排出トレイ3を備えている。
【0022】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される被搬送物42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に供給する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0023】
さらに、
図3に示すように、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む維持回復機構81を配置している。
【0024】
この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a~82d(区別しないときは「キャップ82」という。)と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、吸引ポンプ508などを備えている。ここでは、キャップ82aを吸引及び保湿用キャップとし、他のキャップ82b~82dは保湿用キャップとしている。
【0025】
そして、この維持回復機構81による維持回復動作で生じる記録液の廃液、キャップ82に排出されたインク、空吐出受け94に空吐出されたインクは廃液タンク506に排出されて収容される。
【0026】
インクジェット記録装置600は、キャリッジ33の走査方向において、維持回復機構81と搬送ベルト51との間に、払拭ユニット100を有する。払拭ユニット100は、布状の払拭シート101を記録ヘッド34のノズル面37に接触させてノズル面37を払拭して清掃する。払拭ユニット100は、記録ヘッド34のノズル面37を払拭するときに、副走査方向に移動する。
【0027】
また、
図3に示すように、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0028】
このように構成したインクジェット記録装置600においては、供給トレイ2から被搬送物42が1枚ずつ分離供給され、略鉛直上方に供給された被搬送物42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド部材47で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0029】
このとき、装置に設けられた制御部のACバイアス供給部から帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に被搬送物42が給送されると、被搬送物42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって被搬送物42が副走査方向に搬送される。
【0030】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している被搬送物42にインク滴を吐出して1行分を記録し、被搬送物42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は被搬送物42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、被搬送物42を排出トレイ3に排出する。
【0031】
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ33は維持回復機構81側に移動されて、キャップ82で記録ヘッド34がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ82で記録ヘッド34をキャッピングした状態で吸引ポンプ508によってノズルから記録液を吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という。)し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、記録ヘッド34の安定した吐出性能を維持する。
【0032】
次に、この液体を吐出する装置の制御部の概要について
図4を参照して説明する。なお、同図は同制御部の全体ブロック説明図である。
この制御部は、この液体を吐出する装置全体の制御を司る、本発明に係る制御を行うための手段を兼ねたマイクロコンピュータで構成した制御手段としての主制御部301及び印刷制御を司るマイクロコンピュータで構成した印刷制御部302とを備えている。
【0033】
そして、主制御部301は、通信回路300から入力される印刷処理の情報に基づいて被搬送物42に画像を形成するために、キャリッジ33を主走査方向に移動させる主走査モータ500を主走査モータ駆動回路303を介して、被搬送物42を送る副走査モータ504を副走査モータ駆動回路304を介して駆動制御するとともに、印刷制御部302に対して印刷用データを送出するなどの制御を行う。
【0034】
また、主制御部301には、キャリッジ33の位置を検出するキャリッジ位置検出回路305からの検出信号が入力され、主制御部301はこの検出信号に基づいてキャリッジ33の移動位置及び移動速度を制御する。また、主制御部301は後述する払拭ユニット100の移動位置及び移動速度、巻き取りローラ103の回転量、押し当て部材104の回転固定位置などを制御する。また、主制御部301は
図9に示す洗浄液塗布機構400の弁403の開閉を制御する。キャリッジ位置検出回路305は、例えばキャリッジ33の走査方向に配置されたエンコーダシート512のスリット数を、キャリッジ33に搭載されたフォトセンサ510で読み取って計数することで、キャリッジ33の位置を検出する。主走査モータ駆動回路303は、主制御部301から入力されるキャリッジ移動量に応じて主走査モータ500を回転駆動させて、キャリッジ33を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0035】
また、主制御部301には搬送ベルト51の移動量を検出する搬送量検出回路306からの検出信号が入力され、主制御部301はこの検出信号に基づいて搬送ベルト51の移動量及び移動速度を制御する。搬送量検出回路306は、例えば搬送ローラ52の回転軸に取り付けられた回転エンコーダシート516のスリット数を、フォトセンサ518で読み取って計数することで搬送量を検出する。副走査モータ駆動回路304は、主制御部301から入力される搬送量に応じて副走査モータ504を回転駆動させて、搬送ローラ52を回転駆動して搬送ベルト51を所定の位置に所定の速度で移動させる。
【0036】
主制御部301は、給紙コロ駆動回路307に給紙コロ駆動指令を与えることによって供給コロ43を一回転させる。主制御部301は、維持回復機構駆動用モータ駆動回路308を介して維持回復機構81のモータを回転駆動することにより、前述したようにキャップ82の昇降、吸引ポンプ508の駆動などを行わせる。
【0037】
主制御部301は、供給ポンプ用駆動回路311を介して供給ポンプユニット24のポンプを駆動するための駆動モータ(供給モータ)514を駆動制御し、カートリッジ装填部4に装填されたインクカートリッジ10からヘッドタンク35に対してインクを補充供給する(充填する。)。このとき、主制御部301は、ヘッドタンク35が満タン状態にあることを検知するヘッドタンク満タンセンサ312からの検知信号に基づいて補充供給(充填動作)を制御する。この場合、ヘッドタンク35の大気開放機構を開状態にして充填を行う大気開放充填、大気開放機構を閉じたまま充填を行う通常充填がある。
【0038】
また、主制御部301は、カートリッジ通信回路314を通じて、カートリッジ装填部4に装着された各インクカートリッジ10に設けられる記憶手段である不揮発性メモリ316に記憶されている情報を取り込んで、所要の処理を行って、本体記憶手段である不揮発性メモリ(例えばEEPROM)315に格納保持する。
【0039】
また、主制御部301には、環境温度、環境湿度を検知する環境センサ313からの検知信号が入力される。
【0040】
印刷制御部302は、主制御部301からの信号とキャリッジ位置検出回路305及び搬送量検出回路306などからのキャリッジ位置や搬送量に基づいて、記録ヘッド34の液滴を吐出させるための圧力発生手段を駆動するためのデータを生成する。また、印刷制御部302は、上述した画像データをシリアルデータでヘッド駆動回路310に転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、滴制御信号(マスク信号)などをヘッド駆動回路310に出力する。また、印刷制御部302は、ROMに格納されている駆動信号のパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動波形生成部及びヘッドドライバに与える駆動波形選択手段を含む。そして印刷制御部302は、1の駆動パルス(駆動信号)或いは複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形を生成してヘッド駆動回路310に対して出力する。
【0041】
ヘッド駆動回路310は、シリアルに入力される記録ヘッド34の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部302から与えられる駆動波形を構成する駆動信号を選択的に記録ヘッド34の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば前述したような圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド34を駆動する。このとき、駆動波形を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴(大ドット)、中滴(中ドット)、小滴(小ドット)など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0042】
次に、本実施形態の一例について詳細に説明する。
まず、
図5,6を参照して、キャップ82からノズル面37への固着インクの堆積メカニズムについて説明する。
図5ではキャップ82が記録ヘッド34に対して移動する前提で説明するが、実際に動くのはキャップ82と記録ヘッド34うちのどちらであってもよい。また、キャップ82の下には、記録ヘッド34のノズル38からインクを吸引するための吸引ポンプ508が配置されている。
【0043】
記録ヘッドの維持回復動作(メンテナンス)の際、記録ヘッド34のノズル面37から離れたキャップ82が上昇してノズル面37に接触してキャッピングした後(
図5(a))、吸引ポンプ508によりノズル38からインク90が吸引される(
図5(b))。次いで、キャップ82がノズル面37から離れた位置に下方へ移動し、ノズル面37を払拭シート101で払拭した後、キャップ内のインク90が排出される(
図5(c))。インク90の排出後も、ノズル面37と当接するキャップ82の部分であるニップ部83にインク90が付着してしまう。この状態でキャッピングを行うと、ノズル面37にインク90が再度接触し(
図5(d))、キャップ82がノズル面37から離れた後もインク90がノズル面37に転写されてしまう(
図5(e))。
【0044】
以上のような堆積メカニズムにより、ノズル面37にはノズル38を囲うようにインク90が付着することになる(
図6)。
図6は、記録ヘッド34の底面図であって、インク90が長方形にノズル面37に堆積していることが見て取れる。これは、キャップ82のニップ部83がノズル38を取り囲むために長方形の形状を有することに起因する。しかしながら、ニップ部83は長方形の形状に限られず、他の形状を有していてもよい。
【0045】
次に、
図7を参照して本発明の実施形態に係る払拭ユニットについて説明する。
払拭ユニット(ワイピングユニット)100は、記録ヘッド34のノズル面37に付着したインク90や異物などをメンテナンス時に払拭シート101によって拭き取るものである。
【0046】
払拭ユニット100は、記録ヘッド34のノズル面37を払拭する面状かつロール状の払拭部材である払拭シート101、払拭シート101を供給する供給ローラ102、払拭シート101をノズル面37に押し当てる押し当て部材104、供給された払拭シート101を巻き取る巻き取り部材である巻き取りローラ103、押し当て部材104を押圧するための圧縮バネ106、圧縮バネを固定するための台座105などを有している。払拭方向と直交方向の払拭シート101の幅は、記録ヘッド34のノズル面37を一度に払拭できるように設定されている。押し当て部材104は、記録ヘッド34のノズル面37に一定圧力で押し当たるように、台座105に圧縮バネ106によって連結されている。記録ヘッド34と払拭ユニット100は互いに相対移動可能である。なお、インクジェット記録装置600は、液滴であるインクを吐出するノズル38を有した記録ヘッド34と、ノズル38を囲むように記録ヘッド34に当接可能なニップ部83を有するキャップ82と、払拭ユニット100とを備えている。
【0047】
押し当て部材104の表面には、記録ヘッド34のノズル面37を傷つけないようにゴムなどの弾性部材が設けられていると好ましい。また、押し当て部材104は、回転可能なローラ部材である。
【0048】
インクジェット記録装置600は、払拭ユニット100を副走査方向へ移動する移動手段としての移動部530を有する。移動部530は、払拭ユニット100の接続部532と接続され、ローラ526に掛け回されたベルト520と、ローラ526を駆動するモータ524を有する。モータ524を駆動してローラ526を回転駆動することによって、ベルト520及びベルト520に接続された払拭ユニット100を副走査方向に移動する。
【0049】
払拭ユニット100は、カム534と係合部536を介して接触する。カム534を回転駆動することによって、払拭ユニット100を上下方向に移動することができる。
【0050】
巻き取りローラ103にはロータリーエンコーダ109が取り付けられており、ロータリーエンコーダ109のフォトセンサ107により払拭シート101の巻き取り距離を計測することができる。払拭ユニット100は、巻き取りローラ103を回転駆動する駆動モータ108を有し、主制御部301により駆動モータ108の回転速度が制御される。
【0051】
図7において、本発明の実施形態に係るヘッド清掃装置は、液体を吐出するノズル38をノズル面37に有する液体吐出ヘッドとしての記録ヘッド34と、ノズル面37を払拭する払拭部材としての払拭シート101と、払拭シート101をノズル面37に押し当てる、回転可能な押し当て部材104と、押し当て部材104を回転させ、任意の位置で固定させる制御手段としての主制御部301と、払拭シート101をノズル面37に接触させ、かつ、記録ヘッド34と払拭シート101を相対的に移動させる払拭動作を行う移動手段としての移動部530と、を有する。また、後述するように、押し当て部材104は、表面の一部にノズル面37のノズル形成部に対応する凹部115を備えるか、又は押し当て部材104の周面の一部の硬度は、周面の他の一部の硬度よりも低い。
【0052】
次に、
図8を参照して払拭ユニット100の払拭動作について説明する。
ここではまず、
図8を用いてニップ部83からの転写によりノズル面37のノズル38を囲うようにノズル面37に固着インクが堆積した場合の払拭動作について説明する。なお、
図8(a)の上図は記録ヘッド34の底面図であり、その下方には記録ヘッド34の側面図と払拭ユニット100が示されている。
【0053】
払拭動作が要求された後、主制御部301の制御により(
図4)、押し当て部材104の上端が払拭対象である記録ヘッド34のノズル面37より上部に位置するまで、払拭ユニット100を上昇させる(
図8(a))。このときの押し当て部材104の上端の高さ位置と記録ヘッド34のノズル面の高さ位置との鉛直方向距離Aが、ノズル面払拭時の押し当て部材104と台座105とを連結する圧縮バネ106の縮み量に等しくなる。そのため、鉛直方向距離Aは、所望の押し当て圧力が得られるだけの上昇量とする必要がある。また、圧縮バネ106のバネ定数又は自然長を変更することで、任意の押し当て荷重により払拭シート101で記録ヘッド34のノズル面37を払拭することが可能である。このとき、巻き取りローラ103を固定した状態で記録ヘッド34と払拭ユニット100を相対移動させることで記録ヘッド34のノズル面37を払拭する。
【0054】
具体的には、払拭シート101が記録ヘッド34のノズル面37に接触して押圧された状態で、払拭ユニット100を副走査方向に移動することにより、ノズル面37を払拭シート101で払拭する(
図8(b))。この時点で、ノズル38を囲む固着インク90のうち払拭方向と直交方向の短辺位置Bが既に拭き取られている。
【0055】
その後、しばらく巻き取りローラ103を固定した状態で払拭動作及び相対移動を継続し(
図8(c))、ノズル面37に付着した長方形の固着インク90のうち、2列あるノズル38の両脇に付着した長辺方向の2辺の固着インクが、払拭シート101により払拭される。
【0056】
更に、巻き取りローラ103を固定した状態で払拭動作及び相対移動を継続し(
図8(d))、ノズル面37に付着した長方形の固着インク90のうち、2列あるノズル38の両脇に付着した長辺方向の2辺の固着インク、及び、払拭方向と直交方向の短辺位置Dが、払拭シート101により払拭される。
【0057】
この時点で、ノズル38を囲む固着インクの全体が既に拭き取られている。最後に、払拭ユニット100を下降させ、記録ヘッド34と払拭ユニット100の相対位置を元の位置に戻すことで払拭動作が終了する。
【0058】
次に、
図9を参照して本発明の実施形態に係る洗浄液塗布機構について説明する。
本実施形態に係るヘッド清掃装置は、払拭ユニット100に加えて、供給された払拭シート101に洗浄液401を塗布する洗浄液塗布機構400を有する。この洗浄液塗布機構400は、貯留タンク402に入れられた洗浄液401と、貯留タンク402から押し当て部材104の上方まで延在するノズル404と、ノズル404に設けられた弁403などを有する。洗浄液401は、主制御部301(
図4)による必要に応じた弁403の開閉により、ノズル404を介して払拭シート101に滴下される。ノズル404の先端は、払拭シート101に接触しない上方位置に位置決めされている。
【0059】
洗浄液401には揮発性の高い溶剤が使用され、溶剤によって記録ヘッド34のノズル面37に付着したインク90や異物などを効率的に除去することができる。洗浄液401は、インクを溶解させる作用を持つものも好ましい。揮発性の高い洗浄液401が大気に触れないように、洗浄液401がカバーなどで覆われて密閉されていると望ましい。カバーなどで覆われることで洗浄液401が揮発しにくい状態が維持されるのであれば、インクジェット記録装置600又は払拭ユニット100内に洗浄液塗布機構400を設ける必要なく、払拭シート101が払拭ユニット100内にセットされる前に洗浄液401を払拭シート101に含浸させてもよい。
【0060】
洗浄液塗布機構400により、又は予め洗浄液401を払拭シート101に含浸させることにより、ノズル面37を払拭シート101で洗浄液401を用いてウェットワイピングすることができる。よって、払拭シート101に洗浄液を塗布した状態でノズル面37を払拭することにより、より効率的にノズル面37に付着した固着インク90を除去することができる。
【0061】
図9に示すように洗浄液塗布機構400をヘッド清掃装置又はインクジェット記録装置600に設ける場合は、払拭ユニット100の上方における払拭ユニット100の移動を妨げない位置に洗浄液塗布機構400を固定し、ノズル404から、払拭シート101に洗浄液401を滴り落とすことで払拭シート101に洗浄液401を塗布する構成が好ましい。洗浄液401を払拭シート101へ塗布するタイミングは、払拭ユニット100が払拭動作を行う直前が好ましい。また洗浄液401を払拭シート101に塗布する範囲は、後続の払拭動作で使用予定となる払拭シート101の領域全体であることが好ましい。そのために、払拭ユニット100と洗浄液塗布機構400の相対位置を固定する場合、洗浄液401の払拭シート101への塗布工程において、続く払拭動作で使用予定である領域全体に洗浄液401が濡れ広がるだけの量を塗布する必要がある。または、払拭シート101へ洗浄液401を塗布中に払拭ユニット100と洗浄液塗布機構400を相対移動させることで、続く払拭動作で使用予定である領域全体に洗浄液を塗布してもよい。また、払拭シート101に塗布する洗浄液量を制御する手段としては、前述したように主制御部301(
図4)により洗浄液塗布機構400に設けた開閉可能な弁403の開放時間を制御する形式が好ましい。あるいは、洗浄液401の塗布に電動ポンプ等を用いる場合は、その印加電圧を制御してもよい。
【0062】
次に、
図10、
図11及び
図12を用いて、ノズル面の払拭時にノズル面に作用する圧力を選択的に変更する方法について説明する。
図10(a)は従来の押し当て部材の概略斜視図、
図10(b)は同概略側面図である。
図11(a)は、本発明の第1実施形態に係る押し当て部材の概略斜視図、
図11(b)は同概略側面図である。
図12(a)は、本発明の第2実施形態に係る押し当て部材の概略斜視図、
図12(b)は同概略側面図である。
第1の方法は、
図10、
図11に示すように押し当て部材104の形状を変更するものである。前述したように、
図11に示す押し当て部材104により払拭シート101がノズル面37に押し当てられ、ノズル面37に付着したインク90が除去される。
【0063】
図10(a),(b)に示すように、従来の押し当て部材104では、ノズル面のノズル形成部に対向する位置の押し当て部材の径が、ノズル形成部の外側の非ノズル形成部より小さくなっており、これにより、ノズル面の払拭時に、払拭シートからノズル形成部に作用する圧力が低減される。そのため、ノズル形成部に付着したインクが他の部分と比べて除去しづらい。
【0064】
一方
図11に示すように、第1実施形態によれば、押し当て部材104は、表面の一部にノズル面37のノズル形成部の幅に対応する凹部115を備える。言い換えれば、ノズル面37のノズル形成部に対向する位置にある、押し当て部材104の表面が局所的に(周方向の一部だけ)凹状に形成されている。ノズル面37においては、ノズル面37に形成された2列のノズル38はノズル形成部の範囲内に位置し、非ノズル形成部はノズル38の外側に位置する。押し当て部材104の、凹部115以外の周方向の部分は、凸部117として形成されている。本例では、押し当て部材104は円柱状の形状を有するため、凸部117の形状は円柱の側面の形状に対応する。したがって、凸部117により払拭シート101をノズル面37に押し当てるときに生じる圧力は、凹部115により払拭シート101をノズル面37に押し当てるときに生じる圧力よりも大きい。なお、押し当て部材104の素材としては樹脂や、ゴムなどの弾性部材が使用できる。
【0065】
また、押し当て部材104は回転可能に構成されており、押し当て部材104は主制御部301により制御される駆動モータ108からの動力伝達によって回転され、任意の位置で固定される。押し当て部材104は、軸121により移動部530に対して支持されている。よって、押し当て部材104の回転固定位置を変更することで、払拭シート101からノズル面37に作用する圧力を選択的に変更することができる。例えば、ノズル形成部の磨耗が進んで撥水性が低下した場合には、押し当て部材104の回転固定位置を変更して押し当て部材104の凸部117を使って払拭シート101をノズル面37に押し当てて払拭することで、ノズル面37のノズル形成部及び非ノズル形成部に付着したインクを十分に除去することができる。また、ノズル形成部の磨耗が進んでいない場合(例えば、記録ヘッド34が新品の状態)には、押し当て部材104の回転固定位置を変更して押し当て部材104の凹部115を使って払拭シート101をノズル面37に押し当てて払拭することで、弱めの圧力を用いてノズル面37のノズル形成部に付着したインクを除去することができる。ノズル形成部の摩耗具合は、主制御部301によって、例えば記録ヘッド34の払拭回数や記録ヘッド34の交換後の経過時間などから判断すればよい。このようにして、主制御部301により、ノズル形成部の摩耗具合に応じて押し当て部材104の回転固定位置を変更する。
【0066】
なお、凹部115を使った場合でも、ノズル面37の非ノズル形成部は凸部117によって払拭されることになる。さらには、主制御部301により、例えば凹部115を用いた数回の払拭動作の後に、凸部117を用いた払拭動作を1回実行してもよく、これにより、ノズル面37を過度に摩耗させることなくノズル面の正常な吐出を維持できる。
【0067】
以上のように、押し当て部材104はその表面に局所的な凹部115及び凸部117を有し、任意の位置まで回転し、固定できるため、回転によってノズル面37と対向する押し当て部材104の箇所を変更することで、ノズル面37に作用する圧力を選択的に変更することができる。ゆえに、ノズル形成部に作用する払拭圧力を選択的に変更して、適切な圧力で払拭することで、正常なインク吐出を維持することができる。ノズル形成部に付着したインクを十分に除去したい場合には、押し当て部材104を回転させて凸部117を使用し、ノズル形成部に作用する圧力を一時的に高くすることで、ノズル形成部のインク残渣を抑制することができる。
【0068】
押し当て部材104の凹部115によって生じる、払拭シート101からノズル面37に作用する圧力は、凹部115以外の凸部117によって生じる、払拭シート101からノズル面37に作用する圧力よりも小さい。これにより、払拭シート101での払拭によるノズル形成面の劣化を抑制することができ、正常なインク吐出を維持することができる。
【0069】
また、
図11に示す第1実施形態では、押し当て部材104の表面の周方向の一部(1箇所)のみに凹部115を形成しているが、凹部115を押し当て部材104の周方向及び幅方向に複数設けることで、押し当て部材104の回転固定位置を変更してノズル面37に作用する圧力を多段階に調節してもよい。例えば、押し当て部材104の周方向の3箇所に深さの異なる凹部115を形成し、これら凹部115を用いることで、3つの異なる圧力をノズル面37に作用させることができる。ここで、凹部の深さとは、押し当て部材104の側面(凸部117)から凹部の底部までの高さに対応する。
【0070】
第2の方法は、
図12に示すように押し当て部材104の硬度(弾性)を変更するものである。
図12に示す第2実施形態に係る押し当て部材104では、押し当て部材104の周面の一部の硬度は、周面の他の一部の硬度よりも低く構成されている。言い換えれば、ノズル面37のノズル形成部に対向する位置にある、押し当て部材104の材料を局所的に(周方向の一部だけ)硬度のより小さい材料で構成している。具体的には、押し当て部材104の素材としては樹脂や、ゴムなどの弾性部材が使用され、押し当て部材104の周方向及び幅方向の一部には、押し当て部材104を構成する素材よりも小さい硬度を有するゴムなどの弾性部材119が設けられている。弾性部材119は、例えば、押し当て部材104の表面の周方向の一部に形成された凹部115(
図11)に設置されてもよい。弾性部材119の表面は、円柱の形状を有する押し当て部材104の側面(凸部117)の形状に一致し、押し当て部材104に段差無く滑らかに接続するように形成されている。
【0071】
払拭シート101を押し当て部材104によりノズル面37に押し当てる場合、硬度の小さい材料の方が、硬度が高い材料と比べてノズル面に作用する圧力は小さくなる。これにより、押し当て部材104の回転固定位置を変更することで、払拭シート101からノズル面37に作用する圧力を選択的に変更することができる。よって、例えば、ノズル形成部の磨耗が進んで撥水性が低下した場合には、押し当て部材104の回転固定位置を変更して押し当て部材104の凸部117を使って払拭シート101をノズル面37に押し当てて払拭することで、ノズル面37のノズル形成部及び非ノズル形成部に付着したインクを十分に除去することができる。一方、ノズル形成部の磨耗が進んでいない場合(例えば、記録ヘッド34が新品の状態)には、押し当て部材104の回転固定位置を変更して押し当て部材104の弾性部材119を使って払拭シート101をノズル面37に押し当てて払拭することで、弱めの圧力を用いてノズル面37のノズル形成部に付着したインクを除去することができる。
【0072】
なお、
図12に示す押し当て部材104の場合、押し当て部材104の表面に局所的な凹部が無いため、ここにインク等が入り込み、乾燥することで、弱めの圧力を生じるという機能が失われる恐れは無い。
【0073】
プリンタ、ファクシミリ、複写機、プロッタ、これらの機能を併せ持つ複合機等の画像形成装置として、例えばインク滴(液滴)を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置(インクジェット記録装置)が知られている。このようなインクジェット記録装置は、記録ヘッドのノズルからインク滴を被搬送物に吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義であり、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与する行為(単に液滴を媒体に着弾させる液滴吐出ないし液体吐出と称されるもの)を含み、2次元画像だけでなく、3次元画像(立体画像)を対象とする)を行うものである。また、記録ヘッドとして用いられる液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)は、ノズルから液体を吐出・噴射する機能部品であり、圧電アクチュエータ等により振動板を変位させ液室内の体積を変化させて圧力を高め、液滴を吐出させる圧電型ヘッドや、通電によって発熱する発熱体を液室内に設けて、発熱体により生じる気泡によって液室内の圧力を高め、液滴を吐出するサーマル型ヘッドが知られている。
【0074】
なお、本願において、「被搬送物」の材質は紙に限定されず、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等も含み、液滴が付着されるものであれば、記録媒体、用紙、記録紙等と称されるものを含む総称として「被搬送物」なる用語を用いている。また液体吐出ヘッドから吐出される「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下になるものであることが好ましい。より具体的には、「液体」は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、等を含む溶液、懸濁液、乳濁液等であり、これらは例えばインクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに他の機能部品、機構が一体化した液体吐出に関連する部品の集合体であり、例えばキャリッジ、ヘッドタンク、液体供給機構、維持回復機構の少なくとも一つを含んで構成される。また「液体を吐出する装置」は液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれ、画像形成装置のほかに立体造形装置、処理液塗布装置、噴射造粒装置等がある。
【符号の説明】
【0075】
34 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
37 ノズル面
38 ノズル
101 払拭シート(払拭部材)
104 押し当て部材
115 凹部
301 主制御部(制御手段)
530 移動部(移動手段)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】