(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】積層白色ポリエステルフィルムおよび被記録材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20220125BHJP
G03G 7/00 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
B32B27/36
G03G7/00 B
G03G7/00 J
G03G7/00 M
(21)【出願番号】P 2018035504
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川浪 敬太
(72)【発明者】
【氏名】木村 秀孝
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-026089(JP,A)
【文献】特開2011-012268(JP,A)
【文献】特許第2876683(JP,B2)
【文献】特開平11-334200(JP,A)
【文献】特開2006-305759(JP,A)
【文献】特開2016-069571(JP,A)
【文献】特開平11-348415(JP,A)
【文献】特開2002-062680(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0285302(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0107879(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B 1/00 - 43/00
G03G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層を有するポリエステル基材フィルムを少なくとも備え、
当該表層は
、ポリエステルに非相溶なポリマーを1~25重量%
の範囲で含有し、平均粒径が0.05μm~0.50μmの
酸化チタン粒子を
1重量%以上30重量%以下の範囲で含有し、平均粒径が1.0μm~15μmの
シリカ粒子を0.005重量%以上5重量%以下の範囲で含有し、
当該表層の算術平均粗さ(Ra)が368nm以上900nm以下
であり、かつ、最大粗さ(Rt)が15μm以下であり、
当該表層に画像形成物質を定着させた際の表面の鉛筆硬度が5B以上であることを特徴とする積層白色ポリエステルフィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の積層白色ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、画像形成物質を有する積層白色ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記画像形成物質の上または積層白色ポリエステルフィルム上に樹脂層を有する請求項2に記載の積層白色ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記樹脂層が、積層白色ポリエステルフィルムと剥離可能に積層してなる請求項3に記載の積層白色ポリエステルフィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の積層白色ポリエステルフィルムを使用した被記録材。
【請求項6】
請求項1に記載のポリエステルフィルムであって、且つ、見掛け密度が0.7~1.3g/cm
3、厚みが10~1000μmであるポリエステルフィルムの片面に電子写真印刷により画像形成物質を定着させた後、樹脂層をその上に形成し、その後、前記樹脂層と共に画像形成物質を、前記ポリエステルフィルムから剥離除去することを特徴とする、画像形成物質の除去方法。
【請求項7】
前記樹脂層は、活性エネルギー線硬化性樹脂層であり、前記樹脂層に活性エネルギー線を照射して硬化させた後、前記樹脂層と共に前記画像形成物質を、前記ポリエステルフィルムから剥離除去する、請求項6に記載の画像形成物質の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層白色ポリエステルフィルムに関する。詳しくは、複写用紙などの紙に代わる情報印字媒体である被記録材として好適な積層白色ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、複写機や印字プリンター類の高性能化に伴い、これらの機器が書類の印刷や複写の他に、写真や画像の印刷、帳票や伝票類の発行などの様々な用途や形態の紙材の発行に用いられている。その結果、企業や家庭における複写用紙やプリンター用紙の消費量が増加している。
【0003】
複写用紙やプリンター用紙を含む紙の大量消費は森林伐採を抑制する観点から望ましくないため、使用済みの紙を回収し、製紙工場で再生パルプに離解してリサイクルした再生紙が利用されてきている。
再生紙は、その主な原料が回収した使用済みの用紙であるが、回収された使用済みの紙から再生紙を作るには、ある程度の量の新たな木材資源も必要であり、仮に再生紙の利用率が上がったとしても木材資源が消費されることに変わりはなく、再生紙の利用は森林環境を保護するための抜本的な解決策にはならない。また、リサイクルの工程にもエネルギーを要するため、省エネルギーの観点からも課題がある。
また、再生紙は、上質紙と比べて未だ品質が劣っており、再生紙からなる複写用紙を用いた場合には、紙の白色度が下がって色目がグレーがかるため、印刷したときの発色度合が落ちて画像品質が劣化する傾向にある。
さらに、再生紙は、製造コストがかかって上質紙よりも割高になりやすい。
これらの種々の問題があるため、上質紙に代わる用紙として利用は定着していないのが実状である。
【0004】
このような再生紙に代えて、複写機などの電子写真方式によって紙の表面に形成された画像を剥離除去することで、一旦使用した紙を再利用することができる用紙が提案されている。例えば、セルロース繊維を主体とする紙をベースとし、該ベースの画像を記録する面に、ポリビニルアルコール、でんぷん、カルボキシメチルセルロース、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂から選ばれるポリマーを含む層を設け、該ポリマーを含む層の上に、直鎖または分岐したアルキル基またはアルケニル基を有する化合物を含み撥トナー性を有する層を設けた再利用可能な被記録材が開示されている(例えば特許文献1参照)。
しかし、かかる被記録材は、ポリマー層のコストを抑えるためポリマー層の厚みを薄くし、あくまでもベースには紙を必要としている構成から、完全に木材資源を用いないわけでは無いため、森林環境を保護するための解決策にはなっていない。また、紙を用いている以上、記録された画像は紙の繊維内部に含浸するため、剥離除去性能は不十分となる。
【0005】
そこで、紙に完全に変わる材料として、プラスチック製の合成紙の検討もあり、例えば、日用品などにはポリプロピレン製の合成紙が利用されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-234162号公報
【文献】特開平10-204196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の合成紙は熱に弱く、比較的高温でトナーの定着を行う複写機やプリンターに使用すると、複写機内で合成紙が溶けてシワが発生し、紙詰まりを起こす不具合が発生するおそれがあった。
また、合成紙はトナーが十分に定着されないため、わずかな擦れなどによってトナーが剥がれ、指先などに付着するなどの支障をきたす問題があった。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、複写用紙などの紙に代わる情報印字媒体である被記録材として用いることができ、しかも繰り返し使用できるなどコスト的に極めて優れた積層白色ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は、表層を有するポリエステル基材フィルムを少なくとも備え、当該表層はポリエステルに非相溶なポリマーを1~25重量%と、平均粒径が0.05μm~0.50μmの金属化合物粒子と、平均粒径が1.0μm~15μmの前記金属化合物粒子以外の粒子とを含有し、当該表層の算術平均粗さ(Ra)が368nm以上900nm以下、かつ、最大粗さ(Rt)が15μm以下であり、当該表層に画像形成物質を定着させた際の表面の鉛筆硬度が5B以上であることを特徴とする積層白色ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層白色ポリエステルフィルムは、表層にポリエステルに非相溶なポリマーを1~25重量%含有し、かつ、当該表層の最大粗さ(Rt)が15μm以下であることにより、複写用紙などの紙に代わる情報印字媒体である被記録材として用いることができ、しかもコスト的に極めて優れたプラスチック製のフィルムである。さらに、本発明の積層白色ポリエステルフィルムは、トナー像を好適に転写することができる。すなわち、トナー像を被記録材に転写する電子写真方式や熱転写方式などの方式によって、トナー像を好適に転写することができる。また、被記録材として使用した後は、表面に形成されたトナーなどの画像形成物質による文字や画像を容易に剥離除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0012】
<本積層白色ポリエステルフィルム>
本発明を実施するための形態の一例としての積層白色ポリエステルフィルム(以下、「本積層白色ポリエステルフィルム」と称する。)は、表層を有するポリエステル基材フィルムを少なくとも備えてなり、その表層はポリエステルと、該ポリエステルに非相溶なポリマーとを含有することを特徴としている。
ポリエステル基材フィルムの表層は、本積層白色ポリエステルフィルムの最外面にすることができる層であり、当該表層上に他の層、例えば、後述する機能層などを積層することもできる。
【0013】
<表層>
ポリエステル基材フィルムの表層は、少なくとも主成分樹脂としてのポリエステルと、ポリエステルに非相溶なポリマーとを含むのが好ましい。
ここで、「主成分樹脂」とは、表層を構成する樹脂成分のうち最も含有割合の多い樹脂の意味である。当該主成分樹脂は、表層を構成する樹脂成分のうち30重量%以上、中でも50重量%以上、その中でも80重量%以上(100重量%を含む)を占める場合を想定することができる。
【0014】
(ポリエステル)
ポリエステル基材フィルムを構成するポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものを指す。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0015】
代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート等が例示される。
【0016】
なお、ポリエステルは、共重合されないホモポリマーであってもよく、またジカルボン酸成分の20モル%以下が主成分以外のジカルボン酸成分であり、および/またはジオール成分の20モル%以下が主成分以外のジオール成分であるような共重合ポリエステルであってもよい。またそれらの混合物であってもよい。
【0017】
ポリエステルは、従来公知の方法で、例えばジカルボン酸とジオールの反応で直接ポリエステルを得る方法や、ジカルボン酸の低級アルキルエステルとジオールとを従来公知のエステル交換触媒で反応させた後、重合触媒の存在下で重合反応を行う方法で得ることが出来る。重合触媒としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物等公知の触媒を使用することができる。
【0018】
本積層白色ポリエステルフィルムは、ポリエステル基材フィルムを少なくとも備えてなり、ポリエステル基材フィルムに他の層を積層してもよい。ポリエステル基材フィルムの積層構成は本発明の要旨を超えない限り、2層、3層、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。中でも、両表層と中間層とからなる3層構成(表層/中間層/表層)が好ましい。
なお、積層構成が2層である場合とは、2つの表層によって構成されることを意味し、具体的には、各層を構成するポリエステルの種類や、含有する粒子等の配合が異なる組成の2層によって形成される場合等が挙げられる。
【0019】
(ポリエステルに非相溶なポリマー)
ポリエステル基材フィルムの表層に、ポリエステルに非相溶なポリマーを含有させることで、少なくとも一軸方向に延伸したポリエステルフィルムに無数の微細な空洞を含有させることができる。前記微細な空洞によって、積層白色ポリエステルフィルムは光を散乱させ、白色不透明をもたらすだけでなく、積層白色ポリエステルフィルムの見掛け密度を低減させる。
ポリエステルに非相溶なポリマーを含有する表層は、ポリエステル基材フィルムにおける両側であっても、一方の側のみであってもよいが、両側の表層に含有することが好ましい。
中でもポリエステル基材フィルムの表層にポリエステルに非相溶なポリマーを含有することによって、複写用紙やプリンター用紙の被記録材として用いた時、本積層白色ポリエステルフィルムの表面に印刷されたトナー等の熱可塑性樹脂を含有する画像形成物質を、容易に定着させ、かつ容易に剥離除去できる。すなわち、ポリエステル基材フィルムの表層に微細な空洞を有したり、表面が粗面化したりすることにより、画像形成物質が良好に定着するためのアンカー効果を発現することができる。また、ポリエステルに非相溶なポリマーを表層に含有することにより、画像形成物質の定着力を調節することが可能となるため、容易に剥離除去することも可能となる。なお、驚くべきことに、このような効果は、ポリエステル基材フィルムの表面に後述する機能層を設けた場合においても、同様に、或いはより一層顕著に発現することができる。
また、十分な隠蔽性および軽量化を確保するために、必要に応じてポリエステルに非相溶なポリマーを中間層に含有させてもよい。
【0020】
ポリエステルに非相溶なポリマーとしては、従来公知のポリマーを使用することができ、例えばポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリカーボネートなどが挙げられ、その中でもポリオレフィンやポリスチレンが好ましく、特にポリオレフィンがより好ましい。さらに、ポリオレフィンの中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ-4-メチルペンテン-1、非晶性ポリオレフィンなどが挙げられ、それらの中でも空洞の形成、製膜の容易性を考慮するとポリプロピレンがより好ましい。また、ポリエステルに非相溶なポリマーとして、ポリエステルフィルムを構成する主成分樹脂とは異なるポリエステルを用いることも出来る。なお、本発明において、後述する有機粒子は金属化合物粒子以外の粒子に該当する。
【0021】
上述のポリエステルに非相溶なポリマーを含有させ、シート状に押出成形し、次いで該シートを少なくとも一軸方向に延伸することにより、フィルムの内部に微細な独立空洞を含有させたものである。この際、空洞の微細化、隠蔽性、白色度を増すために、界面活性剤、不活性粒子、蛍光増白剤等を配合してもよい。
【0022】
本積層白色ポリエステルフィルムは、ポリエステルに非相溶なポリマーとしてポリプロピレンを使用する場合、ポリプロピレンポリマー中、プロピレン単位の含有量が、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上の範囲である。例えば、プロピレン単位以外の共重合単位の含有量を少なくし、上記範囲で使用することにより、微細空洞の生成を十分なものとすることができる。
【0023】
ポリエステルに非相溶なポリマーとしてポリプロピレンを使用する場合、温度230℃、荷重2.16kg(21.2N)の条件下でのポリプロピレンのメルトフローインデックスは、下限として通常0.5ml/10分以上、好ましくは1ml/10分以上、より好ましくは3ml/10分以上、さらに好ましくは5ml/10分以上の範囲である。上記範囲の場合、十分な空洞の大きさを生成でき、延伸時の破断を回避しやすいものとすることができる。
一方、上限としては、通常50ml/10分以下、好ましくは40ml/10分以下、より好ましくは30ml/10分以下、さらに好ましくは25ml/10分以下の範囲である。上記範囲の場合、横延伸時のクリップ外れの回避も可能となり、生産性を保持することが可能となる。
【0024】
表層におけるポリエステルに非相溶なポリマーの含有量の下限は、通常1重量%以上、好ましくは2重量%以上、より好ましくは3重量%以上、さらに好ましくは5重量%以上、特に好ましくは8重量%以上である。上記範囲で使用することにより、フィルムの微細空洞の生成量が十分なものとなり、フィルムの隠蔽性が向上し、かつ、見掛け密度の低減効果すなわち軽量化が十分なものとなる。また、フィルムの滑り性や鉛筆などの筆記性も向上し、印刷搬送性にも有利となる。さらに、フィルム表面においては、印刷された画像形成物質による文字や画像が定着しやすく、かつ剥離除去しやすくなり、フィルムを複写用紙やプリンター用紙の被記録材として繰り返し用いることが可能となる傾向がある。
一方、表層におけるポリエステルに非相溶なポリマーの含有量の上限は、通常25重量%以下、好ましくは22重量%以下、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは18重量%以下、特に好ましくは15重量%以下である。当該範囲で使用することにより、生成する空洞の量が多すぎず、延伸時の破断を抑えやすい傾向がある。
【0025】
また、ポリエステル基材フィルムの表層以外の他の層、例えば中間層におけるポリエステルに非相溶なポリマーの含有量の下限は、通常1重量%以上、好ましくは2重量%以上、より好ましくは3重量%以上、さらに好ましくは5重量%以上、特に好ましくは8重量%以上である。上記範囲で使用することにより、十分な隠蔽性を有し、かつ、見掛け密度の低減効果すなわち軽量化が十分なものとすることができる。
一方、ポリエステル基材フィルムの表層以外の他の層、例えば中間層におけるポリエステルに非相溶なポリマーの含有量の上限は、通常70重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは35重量%以下、特に好ましくは30重量%以下、最も好ましくは25重量%以下である。当該範囲で使用することにより、生成する空洞の量が多すぎず、延伸時の破断を抑えやすい傾向がある。
【0026】
ポリエステル基材フィルムが3層以上の構成である場合、中間層はフィルム製造時に発生する余剰部分、例えば端部(耳部)、マスターロール端部(耳部)およびマスターロール余り部(下巻き部)などの再生品を本発明の主旨を損なわない範囲で配合してもよい。再生品が含まれることによって、コストダウンおよび環境負荷低減対応の効果を有する。中間層における再生品の含有量は、色調規制の他に、固有粘度低下による製膜安定性の面から、中間層に対して95重量%以下とすることが好ましく、より好ましくは85重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下、特に好ましくは60重量%以下、最も好ましくは40重量%以下の範囲である。中間層における再生品の含有量の下限は限定されず、0重量%でもよいが、コストダウンの観点からは、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、更に好ましくは5重量%以上である。
【0027】
(金属化合物粒子)
ポリエステル基材フィルムの表層に、さらなる隠蔽性や白色度の向上を目的として、金属化合物粒子を含有させることも可能である。上記ポリエステルフィルムが2層以上である場合は、金属化合物粒子も上記ポリエステル樹脂層中に含有させることが好ましい。
本積層白色ポリエステルフィルムを3層以上の構成とした場合は、表層であっても、中間層であっても構わないが、隠蔽性や白色度の向上を効果的なものとするためには、表層に含有することが好ましい。
【0028】
本積層白色ポリエステルフィルムで使用する金属化合物粒子は、非相溶なポリマーを配合することによる微細な空洞によって発生する光散乱効果による白色不透明性を補う傾向があるため、より高い隠蔽度および白色度を得られる傾向にある。用いる金属化合物粒子としては、公知の酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等が挙げられるが、隠蔽性や白色度向上の観点から、これらの中でも酸化チタンが適している。
【0029】
用いる金属化合物粒子の平均粒径は、下限は通常0.05μm以上、好ましくは0.10μm以上、より好ましくは0.20μm以上、さらに好ましくは0.25μm以上であり、上限は通常0.50μm以下、好ましくは0.45μm以下、より好ましくは0.40μm以下である。上記範囲の平均粒径をもつ金属化合物粒子を使用することにより、フィルムとした際の隠蔽度が十分なものとなり、均一な白色度が得られ、特にフィルム両面に全面印刷した際の裏写りが改善される傾向にあり、複写用紙やプリンター用紙の被記録材として好適である。
上記金属化合物粒子の形状は、特に限定されず、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれであってもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これらの粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0030】
さらに、金属化合物粒子の含有量は、金属化合物粒子を含有する本積層白色ポリエステルフィルムの表層全体に対して、下限は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、さらに好ましくは3重量%以上であり、上限は、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは13重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。金属化合物粒子の含有量を上記範囲にすることで、十分な隠蔽度を付与することができ、さらにコスト的にも有利で、紙を材料とする用紙に代えて複写用紙やプリンター用紙の被記録材として用いることが最適なものとなる傾向にある。
【0031】
(金属化合物粒子以外の粒子)
本積層白色ポリエステルフィルムの取り扱い性、易滑性を向上させるために、特にポリエステル基材フィルムの表層に、易滑性付与のために前記で例示した金属化合物粒子以外の粒子が含まれていてもよい。
金属化合物粒子以外の粒子としては、具体的にはシリカ粒子、有機粒子が挙げられる。有機粒子としては、具体的にアクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。中でも十分な鉛筆硬度が確保できる点で、シリカ粒子が好ましい。
【0032】
前記で例示した金属化合物粒子以外の粒子(シリカ粒子もしくは有機粒子)の平均粒径は0.50μmを超えることが好ましく、より好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上、特に好ましくは2.0μm以上である。金属化合物粒子以外の粒子の平均粒径を上記範囲とすることで、十分な易滑性を付与することが可能となる傾向にある。また、当該粒子の平均粒径の上限は、通常15.0μm以下、好ましくは12.0μm以下、より好ましくは10.0μm以下、さらに好ましくは8.0μm以下の範囲である。上記範囲とすることで、フィルム表面が粗くなり過ぎず、また、フィルム表面に印刷された画像形成物質の文字や画像を剥離除去しやすく、かつ、フィルムを複写用紙やプリンター用紙の被記録材として繰り返し用いることが可能となる傾向にある。さらに、粒子脱落の面から表層の厚みを極端に厚くする必要もなく、厚みの最適な範囲も広いため好ましい形態となる。
【0033】
前記で例示した金属化合物粒子以外の粒子(シリカ粒子もしくは有機粒子)の形状も特に限定されず、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これらの粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0034】
前記で例示した金属化合物粒子以外の粒子(シリカ粒子もしくは有機粒子)の含有量は、平均粒径にも依存するので一概にはいえないが、シリカ粒子もしくは有機粒子を含有する層全体に対して、通常5重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下の範囲であり、好ましい範囲の下限は、0.005重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上である。上記範囲で使用することで、フィルムの表面粗さを適度なものとすることが可能となり、目的とする易滑性付与が達成できる傾向にある。また、易滑性付与ばかりでなく、フィルム表面に印刷された画像形成物質の文字や画像を剥離除去しやすくもなり、フィルムを複写用紙やプリンター用紙の被記録材として繰り返し用いることができる傾向にある。さらに、シリカ粒子、有機粒子の役割として、鉛筆、シャープペンシルやボールペンなどの筆記性をさらに向上する傾向にある。
【0035】
(その他の成分)
なお、ポリエステル基材フィルムの各層には、上述の粒子、ポリエステルに非相溶なポリマー以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、帯電防止剤、染料、顔料等を添加することができる。また用途によっては、紫外線吸収剤、特にベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤等を含有させてもよい。
【0036】
(積層構成)
本積層白色ポリエステルフィルムは、上記のように、表層を有するポリエステル基材フィルムを少なくとも備えた積層フィルムであり、そのうちの少なくとも表層はポリエステルに非相溶なポリマーを1~25重量%含有し、かつ、当該表層表面の最大粗さ(Rt)が15μm以下であることを特徴とする積層白色ポリエステルフィルムである。
表層が、上記のように、ポリエステル、及び、該ポリエステルに非相溶なポリマーを含有すれば、延伸によって微細な空洞を設けることができるから、軽量化、隠蔽性及び白色化を実現することができ、さらに表面粗さを調整することができるから、筆記性を高めることができる。
【0037】
当該表層が、さらに金属化合物粒子を含有すれば、隠蔽性や白色度をさらに高めることができ、さらに金属化合物粒子以外の粒子を含有することにより、易滑性を向上させることができる。
【0038】
上記表層以外の層、例えば中間層等は、上記ポリエステルを含有していれば、該ポリエステルに非相溶なポリマー、金属化合物粒子及び金属化合物粒子以外の粒子は、必要に応じて含有してもよい。金属化合物粒子及び金属化合物粒子以外の粒子の含有量をできるだけ少量とし、また、再生品としてのポリエステルを配合して使用することがコストダウンおよび環境負荷低減対応の観点で好ましい。
再生品に金属化合物粒子や金属化合物粒子以外の粒子が含まれる場合は、新たな使用をできるだけ少量とするため、再生品を表層に配合させることが好ましい。また中間層に再生品を配合する場合は、コストダウンの観点から、共押出法を用いて積層構造にすることが好ましい。
【0039】
(厚み)
本積層白色ポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10μm~1000μm、好ましくは20μm~500μm、より好ましくは30μm~400μm、特に好ましくは38μm~350μmの範囲である。上記範囲で使用することで、フィルムの硬さ(コシ)や取り扱い性を十分なものとすることが可能となる。
【0040】
本積層白色ポリエステルフィルムは、各層の厚さは1μm~50μmであるのが好ましく、中でも2μm以上40μm以下、その中でも3μm以上30μm以下、その中でも4μm以上25μm以下であるのがさらに好ましい。上記範囲で使用することで、上記した金属化合物粒子、金属化合物粒子以外の粒子による性能を十分に発揮することが可能となり、かつ製造コストも安価に抑えられる。
【0041】
(見掛け密度)
本積層白色ポリエステルフィルムの見掛け密度は、下限が通常0.7g/cm3以上であり、好ましくは0.75g/cm3以上、より好ましくは0.8g/cm3以上である。見掛け密度の下限を上記範囲とすることで、フィルムの強度を保持でき、情報印字媒体である複写用紙やプリンター用紙の紙に代わる被記録材として用いる際の、複写機内の搬送工程におけるフィルムの詰まりを低減することができ、最適な印刷をすることが可能となる。
一方、上限としては、通常1.3g/cm3以下、好ましくは1.2g/cm3以下、より好ましくは1.1g/cm3以下である。見掛け密度の上限を上記範囲とすることで、大量の印刷物を持ち運びする際の作業負担が軽減され、さらにはフィルム(シート)の輸送過程で発生するCO2削減による環境負荷低減やコストダウン対応が可能となる。
ポリエステルフィルムの見掛け密度は、主成分樹脂であるポリエステルよりも比重の軽い非相溶なポリマーを配合し、少なくとも一軸方向に延伸することにより、調整することができる。但し、これらの方法に限定するものではない。
【0042】
<物性>
本積層白色ポリエステルフィルムの表面すなわち表層の最大粗さ(Rt)は、15μm以下であるのが好ましく、中でも13.5μm以下、その中でも12μm以下であるのがさらに好ましい。さらに、表層の算術平均粗さ(Ra)は900nm以下、または、二乗平均平方根粗さ(Rq)は1500nm以下であるのが好ましい。算術平均粗さ(Ra)の上限は、中でも700nm以下、その中でも550nm以下であるのがさらに好ましい。また、二乗平均平方根粗さ(Rq)の上限は、中でも1200nm以下、その中でも850nm以下であるのがさらに好ましい。
【0043】
最大粗さ(Rt)、さらに、算術平均粗さ(Ra)、または二乗平均平方根粗さ(Rq)を、上記範囲で使用することで、印刷によりフィルム表面に形成された熱可塑性樹脂を含有する画像形成物質の文字や画像が定着しやすく、かつ容易に剥離除去することができ、フィルムを複写用紙やプリンター用紙の被記録材として繰り返し用いることができる傾向にある。
一方、最大粗さ(Rt)の下限は、8μm以上であるのが好ましく、中でも9μm以上、その中でも10μm以上、その中でも11μm以上であるのがさらに好ましい。
また、算術平均粗さ(Ra)の下限は、185nm以上であるのが好ましく、中でも300nm以上、その中でも400nm以上、その中でも500nm以上であるのがさらに好ましい。
二乗平均平方根粗さ(Rq)の下限は、270nm以上であるのが好ましく、中でも500nm以上、その中でも600nm以上、その中でも700nm以上であるのがさらに好ましい。
最大粗さ(Rt)、算術平均粗さ(Ra)、二乗平均平方根粗さ(Rq)を上記範囲とすることで、隠蔽性や搬送性を十分なものとすることが可能となり、複写用紙やプリンター用紙の被記録材として用いるのに最適なフィルムとすることが可能となる。さらに、十分な筆記性を有することができる傾向にある。
なお、本発明における最大粗さ(Rt)、算術平均粗さ(Ra)、二乗平均平方根粗さ(Rq)は、JIS B0601に準拠し、後述する実施例で用いた測定方法に基づくものとする。
【0044】
ポリエステル基材フィルムに画像形成物質を定着させた時の表面の鉛筆硬度は、5B以上であり、中でも3B以上、その中でもB以上であるのが好ましい。鉛筆硬度の上限は、特に限定はされないが、9H以下であるのが好ましい。
前記鉛筆硬度を、上記範囲にすることにより、フィルム表面に印刷した画像形成物質の定着性を良好にすることができる。鉛筆硬度は、前記金属化合物粒子以外の粒子、例えば、シリカ粒子を適切な割合で表層に含有させるなどして調整することができる。更には、後述する機能層を最適化することによって調整することもできる。
なお、本発明における鉛筆硬度は、フィルム表面に画像形成物質等が定着した状態で測定したものである。後述する実施例で用いた測定方法に基づくものとする。
上記した表層の最大粗さ(Rt)、算術平均粗さ(Ra)、二乗平均平方根粗さ(Rq)及び鉛筆硬度は、ポリエステル基材フィルムの表層が本積層白色ポリエステルフィルムの最表層を形成している場合は、当該ポリエステル基材フィルムの表層を指す。一方、本積層白色ポリエステルフィルムが、ポリエステル基材フィルムの表面に後述する機能層等を有する場合には、上記のポリエステル基材フィルムの表層を意味するとともに、機能層の表面をも意味する。
【0045】
本積層白色ポリエステルフィルムの黄味を表す指標であるb値(反射法)は、通常0.00以下、好ましくは-0.20以下、より好ましくは-0.40以下、さらに好ましくは-0.50以下、特に好ましくは-0.60以下であり、下限は特に限定されないが、-5.0以上が好ましい。b値が上記範囲とすることで、黄味が抑えられ白色度を良好なものとすることができる。さらに、カラー印刷用の被記録材として用いる際は、得られる画像品質を優れたものとすることができる傾向にある。
【0046】
本積層白色ポリエステルフィルムは、150℃、30分におけるフィルム長手方向(MD)およびフィルム幅方向(TD)の加熱収縮率は、絶対値として通常2.8%以下、好ましくは2.3%以下、より好ましくは2.0%以下である。
本積層白色ポリエステルフィルムの加熱収縮率が上記範囲とすることで、電子写真方式や熱転写方式などの方式により被記録材に印刷する際に、熱による影響でフィルムの寸法安定性が損なわれることを防ぐことができる。特にフィルム(シート)の縁の部分、すなわち、しわが発生しやすい部分においても、ポリエステルフィルムのしわの発生を抑えることができ、文字や画像に歪みやムラなどが発生して画像品質が低下する現象を抑えることが可能となる。また、しわは、一度発生してしまうと消すことができず、複写用紙やプリンター用紙の被記録材として繰り返し使用することができなくなるため、極力発生しないようにすることが好ましい。
【0047】
本積層白色ポリエステルフィルムの隠蔽性(OD)は、マクベス濃度計によりフィルム単枚を測定して、通常0.30以上、好ましくは0.35以上、より好ましくは0.40以上、さらに好ましくは0.45以上である。上記範囲で用いることで、フィルム両面に、全面印刷した際の裏写りが軽減され、品質の良い文字や画像を得ることができる。一方、隠蔽性(OD)の上限は特に限定しないが、他の物性のバランスを考慮すると、1.0以下が好ましく、0.9以下がより好ましい。
【0048】
本積層白色ポリエステルフィルムの白色度は、測色計によりフィルム単枚の時のハンター白色度(Wb)を測定して、下限は通常80.0%以上、好ましくは81.0%以上、より好ましくは82.0%以上、さらに好ましくは83.0%以上、特に好ましくは83.5%以上である。白色度を上記範囲とすることで、紙に代わる情報印字媒体である複写用紙やプリンター用紙の被記録材として用いた際、特にカラー印刷を行った際などにおいて、文字や画像が高精細なものとなり、品質的に好ましいものとなる傾向にある。また、使用する用途にも依存するため、高級感を出すためには高い方が好ましく、特に上限は限定されるものではない。一方、光沢を気にする用途に用いる場合には、好ましい範囲の上限は95.0%以下である。
【0049】
<機能層>
本積層白色ポリエステルフィルムの少なくとも片面に機能層を設けてもよい。
前記機能層は、帯電防止性能、離型性能を有することが好ましい。
本積層白色ポリエステルフィルムには、見掛け密度の低減と、コストをかけることなく白色化を行うことと、印刷された熱可塑性樹脂を含有する画像形成物質の文字および画像を容易に剥離除去できるようにするため、ポリエステルと、ポリエステルに非相溶なポリマーとを含むポリエステル樹脂層を表層として備える。しかしながら、機能層を設けた場合、表層に有する画像形成物質の文字や画像を容易に剥離除去できるようにする性能を発現することが難しくなる場合があるため、機能層には離型性能も含有することが好ましい。
【0050】
本積層白色ポリエステルフィルムは、トナー像を被記録材に転写する電子写真方式や熱転写方式などの方式によってトナー像を好適に転写できる複写用紙やプリンター用紙の被記録材として用いる際、複写機・複合機の用紙搬送における重送防止、用紙取扱い時の用紙同士の貼り付き防止等の目的を達するため、さらには、塵埃の付着を防止し、品質の良いフィルムや画像品質の良いフィルム印刷物とするため、帯電防止剤を含有する機能層を少なくとも片面に有するのが好ましい。
【0051】
また、前記機能層には、印刷を行った後に、フィルム表面に形成された熱可塑性樹脂を含有する画像形成物質を好適に剥離除去することができる離型性能を設けるために離型剤を含有することが好ましい。
【0052】
また、前記機能層には、画像形成物質の形成のしやすさと画像形成物質の定着性の向上、また、機能層をコーティングにより設ける際の基材フィルムへの濡れ性向上のために、機能層にはポリマー(上述した帯電防止剤、離型剤以外のポリマー)を含有することが好ましい。
【0053】
機能層に帯電防止剤、離型剤、ポリマーを含有させて適度な離型性能を付与することにより、画像形成物質をフィルム表面に定着する機能と、画像形成物質を剥離除去する機能とを、より適切に行うことができる。すなわち、定着および剥離という相反する特性を、1つの機能層で、より高度に行うことができる。この技術は、一般的な定着性能を有する機能層では剥離性能が実現できず、一方、一般的な剥離性能を有する機能層では定着性能が実現できないことを考えると非常に効果の高い技術といえる。また、定着性能を有する機能層と剥離性能を有する機能層とを積層したとしても、いずれの性能も発現させることはできず、最外層にあたる機能層の性能だけが反映される。
【0054】
なお、本積層白色ポリエステルフィルムが前記機能層を有する場合においても、本積層白色ポリエステルフィルムのb値、加熱収縮率、隠蔽性(OD)、白色度、鉛筆硬度の好ましい範囲については、前記した数値範囲と同様である。
【0055】
<製造方法>
以下、本積層白色ポリエステルフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
【0056】
まず、公知の手法により乾燥した、または未乾燥の各層毎に配合した原料を各溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融混練する。次いで、各層の溶融ポリマーを、通常マルチマニホールドまたはフィードブロックを経てダイへ導き積層する。
次にダイから押出された溶融シートを、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0057】
上述のようにして得られたシートを延伸してフィルム化する。ポリエステルフィルムに含有する微細な独立空洞は、かかる延伸によって生成される。
【0058】
延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを、好ましくは長手方向(縦方向)に70~150℃で2.5~5倍に延伸し、縦一軸延伸フィルムとした後、幅方向(横方向)に70~160℃で3~5倍延伸を行い、通常200~250℃、好ましくは210~240℃、より好ましくは215~240℃の範囲で、通常5~600秒間、好ましくは8~300秒間の熱処理を行うことが好ましい。
【0059】
上記熱処理工程の諸条件は、フィルムの加熱収縮率だけでなく、フィルムの表層の最大粗さ(Rt)、算術平均粗さ(Ra)、二乗平均平方根粗さ(Rq)にも影響を与える。すなわち、上記範囲の高温とすることで、表層の表面に存在するポリエステルに非相溶なポリマーが形成した微細な空洞を溶解させる。表面粗さを適度に低減させることで、印刷によりフィルム表面に形成された熱可塑性樹脂を含有する画像形成物質の文字や画像を容易に定着させ、かつ容易に剥離除去することが可能となる。それにより、フィルムを複写用紙やプリンター用紙の被記録材として繰り返し用いることが可能となる。
【0060】
熱処理工程後は、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に2~20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。
【0061】
本積層白色ポリエステルフィルムに機能層を形成させる方法について以下に説明する。機能層は、コーティング法、共押出法、転写法等、公知の種々の方法により設けることが可能である。それら中でも、効率的な製造および性能付与の観点からコーティングによるものが好ましい。
【0062】
上記コーティングの手法としては、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよい。より好ましくはインラインコーティングにより形成されるものである。
【0063】
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押出ししてから延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融、急冷して得られる未延伸シート、延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルム、熱固定後で巻上前のフィルムの何れかにコーティングする。以下に限定するものではないが、例えば逐次二軸延伸においては、特に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルムにコーティングした後に横方向に延伸する方法が優れている。かかる方法によれば、製膜と機能層形成を同時に行うことができるため製造コスト上のメリットがあり、また、コーティング後に延伸を行うために、機能層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。また、延伸前にフィルム上に機能層を設けることにより、機能層を基材フィルムと共に延伸することができ、それにより機能層を基材フィルムに強固に密着させることができる。さらに、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造において、クリップ等によりフィルム端部を把持しつつ延伸することで、フィルムを縦および横方向に拘束することができ、熱固定工程において、しわ等が入らず平面性を維持したまま高温をかけることができる。それゆえ、塗布後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温とすることができるために、機能層の造膜性が向上し、機能層と基材フィルムをより強固に密着させることができ、さらには、強固な機能層とすることができ、機能層の脱落を防ぎ、帯電防止性能や離型性能を向上させることができる。
【0064】
<画像形成物質>
本積層白色ポリエステルフィルムの表層の機能層が設けられていない面上または機能層が設けられている面上には、トナーなどの画像形成物質の熱可塑性樹脂を含有する文字,画像を設けることが可能である。
文字,画像は、従来公知の手法で設けることが可能であり、複写機やプリンターなどで印刷することで得ることが可能である。また、画像形成物質の熱可塑性樹脂についても、従来公知の材料を使用することができる。
【0065】
<樹脂層>
本積層白色ポリエステルフィルムは、さらに、画像形成物質等の熱可塑性樹脂を含有する文字,画像上に、樹脂層を設けることが可能である。
当該樹脂層は、積層白色ポリエステルフィルムを再利用する等のために、文字,画像を、樹脂層と共にフィルムから剥離除去させるために設ける主旨であってもよい。
【0066】
樹脂層としては、従来公知の材料を使用することができ、硬化性の樹脂層であるのが好ましい。
硬化性の樹脂層としては、熱硬化性樹脂層、活性エネルギー線硬化性樹脂層が挙げられる。文字,画像を残らず剥離除去しやすいという観点において、活性エネルギー線硬化性樹脂層が好ましい。
【0067】
活性エネルギー線硬化性樹脂層としては、紫外線硬化性樹脂層、電子線硬化性樹脂層、可視光線硬化性樹脂層等が挙げられるが、取扱の容易性や、硬化性の性能を考慮すると紫外線硬化性樹脂層であることが好ましい。活性エネルギー線硬化性樹脂層の一例としては、例えば、ハードコート層が挙げられる。
【0068】
活性エネルギー線硬化性樹脂層に使用される材料としては、特に限定されないが、例えば、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、テトラエトキシシラン等の反応性珪素化合物等の硬化物が挙げられる。これらのうち生産性及び硬度の両立の観点より、活性エネルギー線硬化性の(メタ)アクリレートを含む組成物の重合硬化物であることが特に好ましい。
【0069】
活性エネルギー線硬化性の(メタ)アクリレートを含む組成物は特に限定されるものでない。例えば、公知の活性エネルギー線硬化性の単官能(メタ)アクリレート、二官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートを一種類以上混合したもの、活性エネルギー線硬化性ハードコート用樹脂材として市販されているもの、あるいはこれら以外に本実施形態の目的を損なわない範囲において、その他の成分をさらに添加したものを用いることができる。
【0070】
活性エネルギー線硬化性の単官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではない。例えば、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、ジアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリール(メタ)アクリレート、フェニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート等のエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0071】
活性エネルギー線硬化性の二官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではない。例えば1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール変性ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0072】
活性エネルギー線硬化性の多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではない。例えばジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等のウレタンアクリレート等が挙げられる。
【0073】
これらの中でも、ヒドロキシアルキル系(メタ)アクリレート、芳香族系(メタ)アクリレート、およびアルキルグリコール系(メタ)アクリレートからなる群より1つ以上の(メタ)アクリレートが好ましい。
(メタ)アクリレートにヒドロキシアルキル系、芳香族系、アルキルグリコール系を含むことにより、画像形成物質との密着性が良好となり、剥離除去しやすくなるだけでなく、被記録材として用いた本積層白色ポリエステルフィルムへの損傷が抑制され、リサイクル使用が可能となる。一方、(メタ)アクリレートに上記成分が含まれていないと、画像形成物質との密着性が低下し、画像形成物質をうまく除去できないことがある。
ヒドロキシアルキル系(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また芳香族系(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、アルキルグリコール系(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0074】
活性エネルギー線硬化性の(メタ)アクリレートを含む組成物に含まれるその他の成分は特に限定されるものではない。例えば、無機又は有機の微粒子、重合開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤及びレベリング剤等が挙げられる。また、ウェットコーティング法において成膜後乾燥させる場合には、任意の量の溶媒を添加することができる。
【0075】
オフィスなどの屋内での使用には、溶媒を含有しないことが好ましい。樹脂層を形成するための樹脂(樹脂液)として、溶剤の含有量は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下、特に好ましくは1重量%以下の範囲であり、最も好ましくは溶剤を含有しない(意図的に含有しない)ことである。
【0076】
樹脂層の形成方法は、ロールコート法、ダイコート法等の一般的なウェットコート法、押出法等が挙げられる。形成された樹脂層には必要に応じて加熱や紫外線、電子線等の活性エネルギー線照射を施し、硬化反応を行うことができる。
【0077】
<語句の説明など>
本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、本発明における各種の物性およびその測定方法、定義は下記のとおりである。
【0079】
<測定方法>
(1)ポリエステルの固有粘度
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0080】
(2)メルトフローインデックス(MFI)
JIS K7210-1995に従って、230℃、21.2Nで測定した。この値が高いほど、ポリマーの溶融粘性が低いことを示す。
【0081】
(3)最大粗さ(Rt)、算術平均粗さ(Ra)、二乗平均平方根粗さ(Rq)
JIS B0601に準拠して、積層白色ポリエステルフィルム表面を、株式会社菱化システム製、非接触表面・層断面形状計測システムVertScan(登録商標)R550GMLを使用して、CCDカメラ:SONY HR-50 1/3’、対物レンズ:20倍、鏡筒:1X Body、ズームレンズ:No Relay、波長フィルター:530 white、測定モード:Waveにて、640μm×480μmの領域を測定し、4次の多項式補正による出力を用い、最大粗さ(Rt)値を12点測定し、最大値と最小値を除いた10点を平均して求めた。
また同様の条件で、算術平均粗さ(Ra)、二乗平均平方根粗さ(Rq)を求めた。
【0082】
(4)粒子の平均粒径
株式会社島津製作所社製遠心沈降式粒度分布測定装置SA-CP3型を用いてストークスの抵抗則に基づく沈降法によって粒子の大きさを測定した。測定により得られた粒子の等価球形分布における積算(体積基準)50%の値を用いて平均粒径とした。
【0083】
(5)加熱収縮率
試料を無張力状態で150℃に保ったオーブン中、30分間処理し、その前後の試料の長さを測定して次式にて加熱収縮率を算出した。
加熱収縮率(%)={(L0-L1)/L0}×100
(上記式中、L0は加熱処理前のサンプル長、L1は加熱処理後のサンプル長)
フィルム長手方向(MD)と幅方向(TD)に5点ずつ測定し、それぞれの方向の平均値を求めた。
【0084】
(6)ハンター白色度
日本電色工業株式会社製測色計NDH-1001DP(C光源、2°視野)を用い、JIS P8123-1961の方法に準じて、フィルム単枚の時のハンター白色度(Wb)を測定した。なお、フィルム背面は黒色板で押さえた。
【0085】
(7)隠蔽度(OD)
マクベス濃度計TD-904型を使用し、白色光による透過濃度を測定した。測定は5点行い、その平均値をOD値とした。この値が大きい程光線透過率が低いことを示す。
【0086】
(8)見掛け密度(g/cm3)
フィルムの任意の部分から10cm×10cmの正方形のサンプルを切出し、マイクロメーターで均等に9ヶ所の厚みを測定した。その平均値とフィルムの重量から、単位体積当りの重量を算出し、見掛け密度とした。測定数は5点とし、その平均値を用いた。
【0087】
(9)積層白色ポリエステルフィルムの厚み
フィルム小片をエポキシ樹脂にて固定成形した後、ミクロトームで切断し、フィルムの断面を透過型電子顕微鏡写真にて観察した。その断面のうちフィルム表面とほぼ平行に2本、明暗によって界面が観察される。その2本の界面とフィルム表面までの距離を10枚の写真から測定し、平均値を積層白色ポリエステルフィルムの厚みとした。
【0088】
(10)電子写真印刷による画像品質適正
リコー株式会社製複合機:imagioMPC5001itに、A4サイズにカットしたフィルム(シート)を給紙して、写真プリントによる画像形成物質が載せられたフルカラーのテスト画像を得た。画像品質を次の通り評価した。
(評価基準)
A:フィルムにしわなどが発生することなく、高精細、高品質な画質
B:画質の一部が若干不鮮明であるが実用上問題ない
C:フィルムにしわなどが発生し、画質も不鮮明で全体的に劣る
【0089】
(11)文字・画像(トナー像)剥離除去適正
(10)で得られた画像形成物質が定着したフィルム表面に、紫外線硬化性樹脂(ポリエチレングリコール#200ジアクリレート)が99重量部、光重合開始剤(ジメチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)が1重量部からなる混合物を均一塗布し、当該混合物上にガラス板を置いて、その上から紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂層を形成した。その後、ガラス板とフィルムを剥離させた。この時、形成した紫外線硬化性樹脂層はガラス板側に接着し、フィルム表面に形成された画像形成物質による文字や画像を転写、保持することができる。この時のフィルム表面上の文字,画像剥離除去状態について、以下の評価を行った。
(評価基準)
A:フィルム表面上の画像形成物質を完全に除去することができ、複写用紙として繰り返し使用できる。
B:フィルム表面上に一部、僅かに画像形成物質が残っているが、複写用紙として繰り返し使用でき、実用上問題ない。
C:フィルム表面上に画像形成物質がほとんど残っており、複写用紙として繰り返し使用できない。
【0090】
(12)鉛筆硬度試験
JIS K5600-5-4に準拠して、(10)で得られた黒塗りの画像形成物質が定着したフィルム表面の鉛筆硬度を測定した。
【0091】
(13)画像定着性
前記鉛筆硬度の測定結果より、画像定着性を以下の通り評価した。
(評価基準)
A:鉛筆硬度が3B以上
B:鉛筆硬度が4B以下5B以上
C:鉛筆硬度が6B以下
【0092】
以下に示すとおり、実施例1~7及び比較例1~4の積層白色ポリエステルフィルムを作製し、画像品質適正、文字・画像剥離除去適正、画像定着性の評価を行った。
【0093】
[実施例1]
下記表1に示すとおり、中間層として、固有粘度が0.67dl/gのポリエチレンテレフタレートを83.5重量部、メルトフローインデックスが7.5ml/10分の結晶性ポリプロピレンホモポリマー(日本ポリプロ製「FL0007」;以下「ポリプロピレンA」という。)を15重量部、酸化チタン粒子を1.5重量部の割合で混合した混合原料を280℃に設定したメインのベント付き二軸押出機に送り込んだ。
また表層として、固有粘度が0.66dl/gのポリエチレンテレフタレートを78.15重量部、ポリプロピレンAを20重量部、平均粒径が0.32μmの酸化チタン粒子を1.5重量部、平均粒径が4.1μmのシリカ粒子を0.35重量部の割合で混合した混合原料を280℃に設定したサブのベント付き二軸押出機に送り込んだ。
【0094】
ギヤポンプ、フィルターを介して、メイン押出機からのポリマーが中間層、サブ押出機からのポリマーが表層となるように2種3層(表層/中間層/表層)の層構成で共押出して口金から押出し、静電印加密着法を用いて表面温度を30℃に設定した冷却ロール上で急冷固化させ、未延伸シートを得た。
得られた未延伸シートは、縦方向に92℃で3.0倍延伸した後、テンターに導き、次いで横方向に120℃で4.0倍に延伸した後、240℃で10秒間熱処理を施し、横方向に10%弛緩し7.5μm(表層)/60μm(中間層)/7.5μm(表層)の厚み構成で全厚みが75μmの二軸配向積層白色ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層白色ポリエステルフィルムを評価したところ、画像品質適正、文字・画像剥離除去適正および画像定着性はいずれも良好なものであった。このフィルムの特性を下記表2に示す。
【0095】
[実施例2]
下記表1に示すとおり、表層として、固有粘度が0.66dl/gのポリエチレンテレフタレートを83.15重量部、ポリプロピレンAを15重量部、平均粒径が0.32μmの酸化チタン粒子を1.5重量部、平均粒径が4.1μmのシリカ粒子を0.35重量部の割合で混合した混合原料を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み75μmの二軸配向積層白色ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、7.5μm/60μm/7.5μmであった。
得られた積層白色ポリエステルフィルムを評価したところ、画像品質適正、文字・画像剥離除去適正および画像定着性はいずれも良好なものであった。このフィルムの特性を下記表2に示す。
【0096】
[実施例3]
下記表1に示すとおり、表層として、固有粘度が0.66dl/gのポリエチレンテレフタレートを79.65重量部、ポリプロピレンAを15重量部、平均粒径が0.32μmの酸化チタン粒子を5重量部、平均粒径が4.1μmのシリカ粒子を0.35重量部の割合で混合した混合原料を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み75μmの二軸配向積層白色ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、7.5μm/60μm/7.5μmであった。
得られた積層白色ポリエステルフィルムを評価したところ、文字・画像剥離除去適正および筆記性はいずれも良好なものであった。このフィルムの特性を下記表2に示す。
【0097】
[実施例4]
下記表1に示すとおり、表層として、固有粘度が0.66dl/gのポリエチレンテレフタレートを72.15重量部、ポリプロピレンAを15重量部、平均粒径が0.32μmの酸化チタン粒子を12.5重量部、平均粒径が4.1μmのシリカ粒子を0.35重量部の割合で混合した混合原料を用い、横方向に120℃で4.1倍に延伸したこと以外は実施例1と同様にして、厚み75μmの二軸配向積層白色ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、7.5μm/60μm/7.5μmであった。
得られた積層白色ポリエステルフィルムを評価したところ、文字・画像剥離除去適正および画像定着性はいずれも良好なものであった。このフィルムの特性を下記表2に示す。
【0098】
[比較例A]
下記表1に示すとおり、中間層として、固有粘度が0.67dl/gのポリエチレンテレフタレートを80.0重量部、ポリプロピレンAを20重量部の割合で混合した混合原料を280℃に設定したメインのベント付き二軸押出機に送り込んだ。
また表層として、固有粘度が0.66dl/gのポリエチレンテレフタレートを87.15重量部、メルトフローインデックスが7.5ml/10分の結晶性ポリプロピレンホモポリマー(住友化学製「FLX80E4」;以下「ポリプロピレンB」という。)を5重量部、平均粒径が0.32μmの酸化チタン粒子を7.5重量部、平均粒径が4.1μmのシリカ粒子を0.35重量部の割合で混合した混合原料を280℃に設定したサブのベント付き二軸押出機に送り込んだ。
【0099】
ギヤポンプ、フィルターを介して、メイン押出機からのポリマーが中間層、サブ押出機からのポリマーが表層となるように2種3層(表層/中間層/表層)の層構成で共押出して口金から押出し、静電印加密着法を用いて表面温度を30℃に設定した冷却ロール上で急冷固化させ、未延伸シートを得た。
得られた未延伸シートは、縦方向に92℃で3.0倍延伸した後、テンターに導き、次いで横方向に120℃で3.9倍に延伸した後、240℃で10秒間熱処理を施し、横方向に10%弛緩し7.5μm(表層)/60μm(中間層)/7.5μm(表層)の厚み構成で全厚みが75μmの二軸配向積層白色ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層白色ポリエステルフィルムを評価したところ、画像品質適正、文字・画像剥離除去適正および画像定着性はいずれも良好なものであった。このフィルムの特性を下記表2に示す。
【0100】
[比較例B]
下記表1に示すとおり、表層として、固有粘度が0.66dl/gのポリエチレンテレフタレートを82.15重量部、ポリプロピレンBを10重量部、平均粒径が0.32μmの酸化チタン粒子を7.5重量部、平均粒径が4.1μmのシリカ粒子を0.35重量部の割合で混合した混合原料を用い、横方向に120℃で4.0倍に延伸したこと以外は実施例5と同様にして、厚み75μmの二軸配向積層白色ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、7.5μm/60μm/7.5μmであった。
得られた積層白色ポリエステルフィルムを評価したところ、文字・画像剥離除去適正および筆記性はいずれも良好なものであった。このフィルムの特性を下記表2に示す。
【0101】
[実施例5]
下記表1に示すとおり、表層として、固有粘度が0.66dl/gのポリエチレンテレフタレートを77.15重量部、ポリプロピレンBを15重量部、平均粒径が0.32μmの酸化チタン粒子を7.5重量部、平均粒径が4.1μmのシリカ粒子を0.35重量部の割合で混合した混合原料を用いたこと以外は実施例6と同様にして、厚み75μmの二軸配向積層白色ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、7.5μm/60μm/7.5μmであった。
得られた積層白色ポリエステルフィルムを評価したところ、画像品質適正、文字・画像剥離除去適正および画像定着性はいずれも良好なものであった。このフィルムの特性を下記表2に示す。
【0102】
[比較例1]
下記表1に示すとおり、表層として、固有粘度が0.66dl/gのポリエチレンテレフタレートを68.15重量部、ポリプロピレンAを30重量部、平均粒径が0.32μmの酸化チタン粒子を1.5重量部、平均粒径が4.1μmのシリカ粒子を0.35重量部の割合で混合した混合原料を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚み75μmの二軸配向積層白色ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、7.5μm/60μm/7.5μmであった。
得られた積層白色ポリエステルフィルムは下記表2に示すとおり、文字・画像剥離除去適正が悪いものであった。
【0103】
[比較例2]
下記表1に示すとおり、表層として、固有粘度が0.66dl/gのポリエチレンテレフタレートを72.15重量部、ポリプロピレンAを15重量部、平均粒径が0.32μmの酸化チタン粒子を12.5重量部、平均粒径が4.1μmのシリカ粒子を0.35重量部の割合で混合した混合原料を用い、横方向に120℃で4.5倍に延伸した後、200℃で10秒間熱処理を施したこと以外は実施例1と同様にして、厚み75μmの二軸配向積層白色ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、7.5μm/60μm/7.5μmであった。
得られた積層白色ポリエステルフィルムは下記表2に示すとおり、画像品質適正及び文字・画像剥離除去適正が悪いものであった。
【0104】
[比較例3]
下記表1に示すとおり、中間層として、固有粘度が0.67dl/gのポリエチレンテレフタレートを85.0重量部、ポリプロピレンAを15重量部の割合で混合した混合原料を280℃に設定したメインのベント付き二軸押出機に送り込んだ。
また表層として、固有粘度が0.66dl/gのポリエチレンテレフタレートを81.50重量部、ポリプロピレンBを10重量部、平均粒径が0.32μmの酸化チタン粒子を7.5重量部、有機粒子(メタクリル酸アルキル-スチレン共重合体、平均粒径:4.5μm)を1.0重量部の割合で混合した混合原料を280℃に設定したサブのベント付き二軸押出機に送り込んだ。
ギヤポンプ、フィルターを介して、メイン押出機からのポリマーが中間層、サブ押出機からのポリマーが表層となるように2種3層(表層/中間層/表層)の層構成で共押出して口金から押出し、静電印加密着法を用いて表面温度を30℃に設定した冷却ロール上で急冷固化させ、未延伸シートを得た。
【0105】
得られた未延伸シートは、縦方向に92℃で3.0倍延伸した後、テンターに導き、次いで横方向に120℃で4.0倍に延伸した後、240℃で10秒間熱処理を施し、横方向に10%弛緩し9.0μm(表層)/72μm(中間層)/9.0μm(表層)の厚み構成で全厚みが90μmの二軸配向積層白色ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層白色ポリエステルフィルムは下記表2に示すとおり、画像定着性が悪いものであった。
【0106】
[比較例4]
下記表1に示すとおり、中間層として、固有粘度が0.67dl/gのポリエチレンテレフタレート100重量%を原料とし、280℃に設定したメインのベント付き二軸押出機に送り込んだ。
また表層として、固有粘度が0.66dl/gのポリエチレンテレフタレートを92.15重量部、平均粒径が0.32μmの酸化チタン粒子を7.5重量部の割合で混合した混合原料を280℃に設定したサブのベント付き二軸押出機に送り込んだ。
ギヤポンプ、フィルターを介して、メイン押出機からのポリマーが中間層、サブ押出機からのポリマーが表層となるように2種3層(表層/中間層/表層)の層構成で共押出して口金から押出し、静電印加密着法を用いて表面温度を30℃に設定した冷却ロール上で急冷固化させ、未延伸シートを得た。
【0107】
得られた未延伸シートは、縦方向に92℃で3.0倍延伸した後、テンターに導き、次いで横方向に120℃で4.5倍に延伸した後、240℃で10秒間熱処理を施し、横方向に10%弛緩し7.5μm(表層)/60μm(中間層)/7.5μm(表層)の厚み構成で全厚みが75μmの二軸配向積層白色ポリエステルフィルムを得た。
得られた積層白色ポリエステルフィルムは下記表2に示すとおり、文字・画像剥離除去適正が悪いものであった。
【0108】
【0109】
【0110】
(検討)
実施例1~5の積層白色ポリエステルフィルムは、画像品質適正、文字・画像剥離除去適正、画像定着性のいずれもがB以上の判断であり、被記録材として好適に用いることができるものであった。
【0111】
比較例1の積層白色ポリエステルフィルムは、文字・画像剥離除去適正が不良であった。これは表層のポリプロピレンの含有量が多く、最大粗さ(Rt)が大きくなったためであると思料される。
【0112】
比較例2の積層白色ポリエステルフィルムは、画像品質適正、文字・画像剥離除去適正が不良であった。これは金属化合物粒子の含有量が多く、熱処理温度を低くしたことにより、最大粗さ(Rt)、算術平均粗さ(Ra)、二乗平均平方根粗さ(Rq)のいずれもが大きくなったためであると思料される。
【0113】
比較例3の積層白色ポリエステルフィルムは、画像定着性が不良であった。これはシリカ粒子に代えて表層に含有させた有機粒子により、表面表層が平滑で、鉛筆硬度が悪くなったためであると思料される。
【0114】
比較例4の積層白色ポリエステルフィルムは、表層にポリプロピレンを含有させなかったため、文字・画像剥離除去適正が不良となったと思料される。
【0115】
これらより、表層にポリプロピレン(ポリエステルに非相溶なポリマー)が多く含まれると、比較例1に示されるとおり、最大粗さ(Rt)が大きくなり(Rt>15μm)、文字・画像剥離除去適正が悪くなる。逆に、表層にポリプロピレンが含まれないと、比較例4に示されるとおり、文字・画像剥離除去適正が悪くなることが確認された。
【0116】
表層に有機粒子(金属化合物粒子以外の粒子)が含まれると、比較例3に示されるとおり、表面が平滑になる傾向があり、鉛筆硬度が低く(6B未満)なり、画像定着性が悪くなることが確認された。
熱処理温度を低くすると、比較例2に示されるとおり、最大粗さ(Rt)、算術平均粗さ(Ra)、二乗平均平方根粗さ(Rq)のいずれもが大きくなり(Rt>15μm,Ra>900nm、Rq>1500nm)、画像品質適正、文字・画像剥離除去適正が悪くなることが確認された。