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特許7013967インク用白色顔料分散体、インク組成物、画像形成方法および画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】インク用白色顔料分散体、インク組成物、画像形成方法および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20220125BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220125BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20220125BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
C09D11/322
B41J2/01 501
B41M5/00 110
B41M5/00 120
C09D17/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018049129
(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公開番号】P2019157058
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】後藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】平出 智大
(72)【発明者】
【氏名】葉木 雅之
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 大輔
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-084251(JP,A)
【文献】特開2017-075302(JP,A)
【文献】特表2017-527462(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0133044(KR,A)
【文献】特開2017-119622(JP,A)
【文献】特開2011-001199(JP,A)
【文献】特開平07-165423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/322
B41J 2/01
B41M 5/00
C09D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤と、バインダーポリマーと、一個の粒子の長軸面が短軸方向に配向凝集した短冊状の粒子形態を有し、かつ平均粒子径D50が100nm~400nmであるルチル型酸化チタンと、酸基含有ポリマー分散剤と、分散媒とを含むことを特徴とするインク組成物
【請求項2】
前記ルチル型酸化チタンと、前記酸基含有ポリマー分散剤と、前記分散媒とを含む白色顔料分散体を含有することを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記ルチル型酸化チタンが、表面処理されてなることを特徴とする請求項1または2に記載のインク組成物
【請求項4】
前記ルチル型酸化チタンの比表面積が、10~100m/gであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のインク組成物
【請求項5】
前記バインダーポリマーが、アクリル樹脂またはウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項6】
前記バインダーポリマーの含有量が、0.5質量%以上20質量%以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項7】
前記有機溶剤が、下記一般式(I)で示されるアミド化合物、アルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項~6のいずれかに記載のインク組成物。
【化1】
【請求項8】
シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤から選択された少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする請求項~7のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項9】
非浸透系基材に画像形成されることを特徴とする請求項~8のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項10】
前記分散媒は水であることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のインク組成物。
【請求項11】
請求項10のいずれかに記載のインク組成物を刺激印加し、前記インク組成物を飛翔させて画像を記録するインク飛翔工程を少なくとも含むことを特徴とする画像形成方法。
【請求項12】
請求項10のいずれかに記載のインク組成物を刺激印加し、前記インク組成物を飛翔させて画像を記録するインク飛翔手段を少なくとも有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
一個の粒子の長軸面が短軸方向に配向凝集した短冊状の粒子形態を有し、かつ平均粒子径D50が100nm~400nmであるルチル型酸化チタンと、酸基含有ポリマー分散剤と、分散媒とを含むことを特徴とするインク用白色顔料分散体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色顔料分散体、インク組成物、画像形成方法および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターは、低騒音、低ランニングコスト、カラー印刷が容易などの利点を有するため、デジタル信号の出力機器として一般家庭に広く普及している。
近年では、家庭用のみならず、例えばディスプレイ、ポスター、掲示板など産業用途にも利用されている。しかし、産業用途の場合、記録媒体は紙に限定されず透明フィルムから着色フィルムまで幅広い。これらの記録媒体をカラーインクで着色する場合、カラーの発色を向上させるために記録媒体の色をインクで十分に隠蔽する必要がある。そこで透明記録媒体や着色記録媒体を白色にするため白色インクが用いられている。
【0003】
従来の白色インクには屈折率が高く白度が出やすい酸化チタンが着色剤として用いられている。また、下記特許文献1および2には、中空構造を有する樹脂粒子を含む白色インク組成物を含有するインクセットが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
酸化チタンは、表面がイオン性を帯びており、水と馴染みやすく、水溶性顔料分散剤の吸着を促しやすく、水性インクに用いると分散しやすい利点がある。しかし酸化チタンは水よりも比重が大きいため沈降しやすく、これを用いたインクジェットインクは粘度が小さいため沈降速度が速くなり数日で分離が進んでしまう。また白色度を出すためには顔料の粒径を大きくする必要があり、粒子質量に対する表面イオン性による電荷反発が少なく沈降しやすい。更に安定に分散した場合でも、電荷反発中心に分散するため、顔料粒子が最密充填で配列して沈降してしまう。顔料粒子の沈降が生じると、沈降物によってインクの流通が阻害されることで不吐出が生じたり、吐出されるインクの顔料濃度が低下することで記録される画像形成部の白色度が低下することがある。
【0005】
なお、特許文献1および2に記載されているような中空構造を有する樹脂粒子(以下、中空樹脂粒子ともいう。)を用いた場合には、保存時の顔料沈降問題が酸化チタンを用いた場合に比べて、極めて改善される。
しかし、中空樹脂粒子をインク組成物として用い画像形成した画像は、加熱乾燥時の乾燥熱および画像形成後に加わる外部からの圧力によって、中空樹脂粒子の空洞が潰れてしまうことがある。中空樹脂粒子は外殻と内部の空洞との屈折率差により白色を呈するものであるため、内部空洞が潰れると白色度が極端に低下することがある。
【0006】
本発明の目的は、保存安定性および吐出安定性を改善し、白色度および耐擦性に優れた画像を記録できる白色顔料分散体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は下記構成1)により解決される。
1)有機溶剤と、バインダーポリマーと、一個の粒子の長軸面が短軸方向に配向凝集した短冊状の粒子形態を有し、かつ平均粒子径D50が100nm~400nmであるルチル型酸化チタンと、酸基含有ポリマー分散剤と、分散媒とを含むことを特徴とするインク組成物
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、保存安定性および吐出安定性を改善し、白色度および耐擦性に優れた画像を記録できる白色顔料分散体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】インクカートリッジの一例を示す概略図である。
図2図1のインクカートリッジのケースも含めた概略図である。
図3】インクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。
図4】インクジェット記録装置の本体内の構成を示す図である。
図5】本発明におけるルチル型酸化チタンのSEM写真である。
図6図5の粒子形態を持たない従来のルチル型酸化チタンのSEM写真である。
図7】本発明のインク組成物で画像形成された画像の断面SEM写真である。
図8図5の粒子形態を持たない従来のルチル型酸化チタンを含むインク組成物で画像形成された画像の断面SEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
《白色顔料分散体》
<ルチル型酸化チタン>
本発明に使用されるルチル型酸化チタンは、一個の粒子の長軸面が短軸方向に配向凝集した短冊状の粒子形態を有し、かつ平均粒子径D50が100nm~400nmである(以下、短冊状粒子と言うことがある)。
前記一個の粒子の平均長軸径は、例えば30nm~200nmであり、50nm~150nmがさらに好ましい。平均短軸径は、例えば3nm~10nmであり、4nm~8nmがさらに好ましい。平均長軸径および平均短軸径は、複数個の粒子の電子顕微鏡観察により測定することができる。
【0012】
(製造方法)
前記短冊状粒子の製造方法について詳細に説明する。
前記短冊状粒子は、酸可溶性チタン化合物に塩酸を添加してpHを1~3に調整し、10~30℃の温度で解膠処理を行った後、追加の塩酸を添加して例えば20~80℃の温度で加水分解を行うことにより得られる。加水分解条件は、原料である酸可溶性チタン化合物の酸溶解度により適宜調整する必要がある。例えば、酸可溶性チタン化合物として硫酸チタニル溶液又は四塩化チタン溶液をアルカリ中和して得られるオルソチタン酸を使用する場合は、オルソチタン酸に塩酸を添加してpH1~3に調整し、10~30℃の温度で解膠を行った後、塩酸をさらに添加して、TiOの濃度が50~140g/L、好ましくは60~120g/Lとなり、塩酸の濃度が60~120g/L、好ましくは70~100g/Lとなるように調整し、20~80℃、好ましくは25~60℃の温度で加水分解することにより得られる。 未反応のチタン化合物が残る場合には、反応を完結するために、加水分解後、さらに、95℃以上の温度で2~8時間熟成を行うことが好ましい。短冊状粒子は熟成時間が長くなると凝集が崩れて分散性が悪くなるため、熟成時間は8時間以内が適当である。
【0013】
前記酸可溶性チタン化合物は、塩酸に可溶なチタン化合物であればよいが、硫酸チタニルや四塩化チタンを低温でアルカリ中和して得られるオルソチタン酸が好ましい。また、メタチタン酸をアルカリで処理したチタン酸のアルカリ塩も使用できる。
【0014】
本発明で使用される短冊状粒子は、未処理のものを用いることもできるが、分散媒中での分散安定性及び耐久性の向上のため、前記短冊状粒子を表面処理することが好ましい。
前記表面処理は、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)等の無機物や、チタンカップリング剤、シランカップリング剤、シリコーンオイル等の有機物を用いた表面処理が挙げられる。
無機物での表面処理は、前記短冊状粒子を水に懸濁し、加温し、無機物の原材料をゆっくりと添加し、撹拌後pH調整し、ろ過、水洗後、乾燥することにより行うことができる。
また、有機物での表面処理は、前記短冊状粒子を水に懸濁し、加温し、有機物の原材料ゆっくりと添加し、ろ過、水洗後、乾燥することにより行うことができる。
本発明では、無機物による表面処理が好ましい。
【0015】
また、本発明で使用される短冊状粒子は、熱処理を行って結晶性を持つものとしてもよい。熱処理温度は、短冊状粒子の大きさにより左右されるが、300~700℃が好ましい。300℃よりも低いと結晶化が進まない。一方、700℃よりも高いと焼結が進んでしまい、形状が崩れてしまう。
【0016】
前記短冊状粒子の平均粒子径(D50)は、白色度の観点から100nm以上であり、好ましくは150nm以上であり、保存安定性の観点から、400nm以下であり、好ましくは350nm以下である。
なお、前記短冊状粒子の平均粒子径(D50)は、マイクロトラックUPA-EX150(Microtrac Inc.社)を使用して測定することができる。
【0017】
また、前記短冊状粒子の比表面積は、本発明の効果向上の観点から、例えば10~150m/gであり、20~100m/gがさらに好ましい。前記短冊状粒子の比表面積は、BET法により測定できる。
【0018】
前記短冊状粒子のSEM写真を図5に示す。図5に示すように、前記短冊状粒子は、一個の粒子の長軸面が短軸方向に配向凝集した短冊状の粒子形態を有しているため、該粒子形態を持たない従来のルチル型酸化チタン(図6に示す)と異なり、嵩密度が小さくなっているために白色顔料分散体およびインク組成物にした場合沈降し難い効果がある。
また、前記短冊状粒子を含む白色顔料分散体を用いたインク組成物で画像形成された画像は、前記短冊状粒子同士が密に揃い難いので、空隙が形成されて白色度が高くなり隠蔽性も高くなることが確認される。該画像の断面SEM写真を図7に示す。比較として、該粒子形態を持たない既存のルチル型酸化チタンを含む白色顔料分散体を用いたインク組成物で画像形成された画像では、前記効果を確認できない。該比較画像の断面SEM写真を図8に示す。図8から、既存のルチル型酸化チタンでは、粒子同士が密に揃ってしまい、白色度が低下し、隠蔽性も低下することが確認された。
【0019】
<酸基含有ポリマー分散剤>
前記短冊状粒子を分散させる酸基含有ポリマー分散剤は、前記短冊状粒子に吸着及び電荷反発、立体障害を利用して分散させ、分散安定性を保つものである。
酸基含有ポリマー分散剤としては、ガラス転移温度0~80℃、酸価100~300mgKOH/g、重量平均分子量5,000~50,000のアニオン性水溶性ポリマーを塩基性化合物で中和して得られるポリマー分散剤が好適に使用できる。前記アニオン性水溶性ポリマーとしては、酸基が、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸、無水シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル等のカルボキシル基含有不飽和単量体(開環してカルボキシル基を与える酸無水物基含有不飽和単量体を含む)の1種または2種以上と、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系単量体、ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート等のアラルキルメタクリレートまたはアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート等のアルキルメタクリレートまたはアクリレート(炭素原子数1~18のアルキルを有するメタクリレートまたはアクリレートが好ましい)等から選択される不飽和単量体の1種または2種以上を、上記のガラス転移温度0~80℃、酸価100~300mgKOH/gとなるように選択し、重量平均分子量が5,000~50,000となるように反応させて得られる共重合体が挙げられる。より好ましくは、スチレン系単量体等の芳香環を有する単量体成分が全単量体成分の0~50質量%となるように選択し、ガラス転移温度0~60℃、酸価130~240mgKOH/g、重量平均分子量が8,000~30,000となるように反応させて得られる共重合体である。
また、アクリル酸、メタクリル酸系モノマーに由来する構成単位とアルキル基を含有してなるメタクリレートに由来する構成単位をからなるブロックコポリマーが好ましい。
【0020】
なお、アニオン性水溶性ポリマーの酸価が、酸価100mgKOH/g未満の場合は水性媒体中への樹脂の溶解性が低下し、一方300mgKOH/gを超えるとメディアに印字した印字物の耐水性が低下する恐れがある。
また、アニオン性水溶性ポリマーのガラス転移温度が0℃未満の場合は、前記短冊状粒子同士の融着が発生しやすくなり、保存安定性と吐出安定性が低下し、一方80℃を超えると得られる画像の定着性が低下することがある。
【0021】
また、アニオン性水溶性ポリマーの重量平均分子量が5,000未満の場合は前記短冊状粒子の分散安定性が低下し、一方50,000を超えると水性媒体中への分散性が低下する。
【0022】
この共重合体の具体例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-マレイン酸-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-マレイン酸ハーフエステル共重合、スチレン-マレイン酸ハーフエステル-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸アルキルエステル-ベンジル(メタ)アクリレート共重合体等が挙げられる。
【0023】
前記塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン等の有機塩基性化合物を挙げることができる。 これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記酸基含有ポリマー分散剤の具体例としては、DISPERBYK-102、DISPERBYK-108、DISPERBYK-110、DISPERBYK-111、DISPERBYK-180、DISPERBYK-182、DISPERBYK-185、DISPERBYK-2015(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0025】
前記酸基含有ポリマー分散剤の使用量は、前記短冊状粒子100質量部に対して10~40質量部、好ましくは15~30質量部である。 酸基含有ポリマー分散剤の使用量が10質量部未満の場合は、分散媒への前記短冊状粒子の分散性が低下し、一方40質量部を超える場合は、粘度が高くなるため、後述するポリマーバインダーの配合量や後述する分散媒の配合量等が制限されるため吐出安定性が低下する恐れがある。
【0026】
<白色顔料分散体>
本発明における白色顔料分散体を調製する方法に特に制限はないが、再分散性の観点から前記短冊状粒子と、酸基含有ポリマー分散剤と、分散媒と、必要に応じて添加剤とを混合して得られる混合物を分散機で分散して調製することが好ましい。
前記混合物を一度の分散で調製してもよいが、均一な分散体を得る観点から、予備分散した後、本分散して調製することもできる。
分散機としては特に制限はなく、例えば、超音波分散機;アトライター、ボールミル、ガラスビーズやジルコニアビーズ等を使用したサンドミル等のメディア式分散機;ニーダー等の混練混合装置;コロイドミル等が使用できる。
分散時の温度は、白色顔料分散体の低粘度化の観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、更に好ましくは18℃以上であり、そして、好ましくは35℃以下、より好ましくは30℃以下である。
分散時間は、分散機にもよるが、前記短冊状粒子を十分に微細化する観点から、好ましくは1時間以上であり、そして、好ましくは100時間以下である。
【0027】
分散媒としては、とくに制限されないが、水が好ましい。また、1,3-プロパンジオールのようなグリコール類も使用できる。
白色顔料分散体における分散媒の含有量は、例えば30~90質量%であり、40~80質量%が好ましい。
【0028】
《インク組成物》
本発明のインク組成物は少なくとも前記白色顔料分散体、有機溶剤およびバインダーポリマーを含有する。
インク組成物中、前記短冊状粒子の含有量は、隠蔽性の観点から、好ましくは5.0質量%以上、更に好ましくは10.0質量%以上であり、そして、吐出性の観点から、好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0029】
<有機溶剤>
有機溶剤は、前記短冊状粒子の分散安定性および吐出安定性を確保する観点から必要な成分である。なお、有機溶剤としては、難浸透系基材、非浸透系基材に濡れやすいという観点から、下記一般式(I)で示されるアミド化合物、アルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0030】
【化1】
【0031】
前記一般式(I)で表されるアミド化合物は、沸点が216℃と高く、温度23℃、相対湿度80%RH環境中の平衡水分量も39.2質量%と高く、しかも液粘度が25℃環境で1.48mPa・sと非常に低い。更に、有機溶剤および水に非常に溶解し易いので、インク組成物の低粘度化を可能とし、インク組成物の有機溶剤としてとくに好ましい。
【0032】
また、本発明のインク組成物に用いられるアルカンジオールおよびグリコールエーテルは、前記短冊状粒子の分散安定性および吐出安定性を確保する観点から、沸点90℃以上250℃未満のアルカンジオールおよびグリコールエーテルを含有することが好ましい。
【0033】
(アルカンジオール)
前記アルカンジオールとしては、エチレングリコール(沸点197℃)、プロピレングリコール(沸点188℃)、1,2-ブタンジオール(沸点193℃)、1,2-ペンタンジオール(沸点206)、1,2-ヘキサンジオール(沸点223℃)等の1,2-アルカンジオール、ジエチレングリコール(沸点245℃)、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール(沸点232℃)、1,3-プロパンジオール(沸点210℃)、1,3-ブタンジオール(沸点208℃)、1,4-ブタンジオール(沸点230℃)、3-メチル-1,3-ブタンジオール(沸点203℃)、1,5-ペンタンジオール(沸点242℃)、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(沸点196℃)、1,2,6-ヘキサントリオール(沸点178℃)、1,2,4-ブタントリオール(沸点190℃)、1,2,3-ブタントリオール(沸点175℃)、ペトリオール(沸点216℃)等が挙げられる。
これらの中では、上記と同様の観点から、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-ヘキサンジオール等の炭素数2以上6以下のアルカンジオール、及び分子量500~1000のポリプロピレングリコールから選ばれる1種以上が好ましく、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等の炭素数3以上4以下の1,2-アルカンジオール、及び前記ポリプロピレングリコールから選ばれる1種以上がより好ましい。
【0034】
(グリコールエーテル)
グリコールエーテルの具体例としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられるが、上記と同様の観点から、アルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。アルキレングリコールモノアルキルエーテルのアルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上であり、そして、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。アルキレングリコールモノアルキルエーテルのアルキル基は、直鎖及び分岐鎖が挙げられる。
【0035】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルの具体例としては、エチレングリコールエチルエーテル(沸点136℃)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(沸点144℃)、エチレングリコールプロピルエーテル(沸点151℃)、エチレングリコールブチルエーテル(沸点171℃)、ジエチレングリコールメチルエーテル(沸点194℃)、ジエチレングリコールエチルエーテル(沸点202℃)、ジエチレングリコールイソプロピルエーテル(沸点207℃)、ジエチレングリコールイソブチルエーテル(沸点220℃)、ジエチレングリコールブチルエーテル(沸点230℃)、トリエチレングリコールメチルエーテル(沸点248℃)、ジプロピレングリコールブチルエーテル(沸点231℃)、ジプロピレングリコールメチルエーテル(沸点189℃)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(沸点243℃)等が挙げられる。
【0036】
これらの中では、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、及びジエチレングリコールブチルエーテルから選ばれる1種以上が好ましく、エチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルエーテル、及びジエチレングリコールイソブチルエーテルから選ばれる1種以上がより好ましい。
【0037】
(その他の有機溶剤)
本発明においては、前記の有機溶剤以外に、水系インクに通常配合されるその他のアルコール、該アルコールのアルキルエーテル、グリコールエーテル、N-メチル-2-ピロリドン等の含窒素複素環化合物、アミド、アミン、含硫黄化合物等を含有することができる。
例えば、1,6-ヘキサンジオール(沸点250℃)、トリエチレングリコール(沸点285℃)、トリプロピレングリコール(沸点273℃)、ポリプロピレングリコール(沸点250℃以上)、グリセリン(沸点290℃)等を沸点が250℃以上の化合物と組み合わせて用いることができる。
【0038】
インク組成物中の前記有機溶剤の含有量は、難浸透系基材、非浸透系基材に濡れやすく、かつ吐出安定性に優れるという観点から、好ましくは10質量%以上90質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上80質量%以下である。
また、難浸透系基材、非浸透系基材に濡れやすく、かつ吐出安定性に優れるという観点から、インク組成物中の有機溶剤全体に対し、前記一般式(I)で示されるアミド化合物の含有量は、好ましくは5質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上40質量%以下であり、アルカンジオールの含有量は、好ましくは5質量%以上90質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上80質量%以下であり、グリコールエーテルの含有量は、好ましくは5質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上40質量%以下である。
【0039】
<バインダーポリマー>
バインダーポリマーとしては、記録媒体への定着性の観点から、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン-アクリル樹脂、ウレタン系樹脂等が好ましく、アクリル樹脂またはウレタン樹脂がさらに好ましい。
【0040】
前記バインダーポリマーは、ホモポリマーとして使用されても、コポリマーを使用して複合系ポリマーとして用いてもよく、単相構造型、コアシェル型、パワーフィード型エマルジョンのいずれのものも使用できる。
【0041】
前記バインダーポリマーとしては、ポリマー自身が親水基を持ち自己分散性を持つもの、ポリマー自身は分散性を持たず界面活性剤や親水基をもつポリマーにて分散性を付与したものが使用できる。これらの中でも、不飽和単量体の乳化及び懸濁重合によって得られたポリマー粒子のエマルジョンが最適である。不飽和単量体の乳化重合の場合には、不飽和単量体、重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤、キレート剤、及びpH調整剤などを添加した水にて反応させポリマーエマルジョンを得るため、容易にバインダーポリマーを得ることができ、ポリマー構成を容易に替えやすいため目的の性質を作りやすい。
【0042】
(アクリル樹脂)
例えば、不飽和カルボン酸類、単官能又は多官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体類、(メタ)アクリル酸アミド単量体類、芳香族ビニル単量体類、ビニルシアノ化合物単量体類、ビニル単量体類、アリル化合物単量体類、オレフィン単量体類、ジエン単量体類、不飽和炭素を持つオリゴマー類などを単独及び複数組み合わせて用いることができる。これらの単量体を組み合わせることで柔軟に性質を改質することが可能であり、オリゴマー型重合開始剤を用いて重合反応、グラフト反応を行うことでポリマーの特性を改質することもできる。
【0043】
前記不飽和カルボン酸類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。
【0044】
前記単官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体類としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウム塩、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n-へキシルアクリレート、2-エチルへキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、グリシジルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロキシエチルトリメチルアンモニウム塩、などが挙げられる。
【0045】
前記多官能の(メタ)アクリル酸エステル単量体類としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリブチレングリコールジメタクリレート、2,2’-ビス(4-メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’-ビス(4-アクリロキシプロピロキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アクリロキシジエトキシフェニル)プロパントリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ジトリメチロールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、などが挙げられる。
【0046】
前記(メタ)アクリル酸アミド単量体類としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0047】
前記芳香族ビニル単量体類としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、4-t-ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0048】
前記ビニルシアノ化合物単量体類としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0049】
前記ビニル単量体類としては、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、塩化ビニル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルピロリドン、ビニルスルホン酸又はその塩、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0050】
前記アリル化合物単量体類としては、例えば、アリルスルホン酸その塩、アリルアミン、アリルクロライド、ジアリルアミン、ジアリルジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。前記オレフィン単量体類としては、例えば、エチレン、プロピレン等が挙げられる。前記ジエン単量体類としては、例えば、ブタジエン、クロロプレン等が挙げられる。
【0051】
前記不飽和炭素を持つオリゴマー類としては、例えば、メタクリロイル基を持つスチレンオリゴマー、メタクリロイル基を持つスチレン-アクリロニトリルオリゴマー、メタクリロイル基を持つメチルメタクリレートオリゴマー、メタクリロイル基を持つジメチルシロキサンオリゴマー、アクリロイル基を持つポリエステルオリゴマー等が挙げられる。
【0052】
アクリル樹脂の酸価は、好ましくは10~300であり、さらに好ましくは20~200である。 なお、酸価は、樹脂1gを中和させるのに必要なKOHのmg量である。また、アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1000~10万であり、より好ましくは2000~5万である。本明細書において、Mwは、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定する。
【0053】
アクリル樹脂の好ましい具体例としては、グランドールPP-1000EF、ボンコート40-418EF、ボンコートCE-6270、ボンコートCG-6150、ボンコートCG-8400、ボンコートCG-8680、ボンコートDV-961、ボンコートEM-401、ボンコートPE-200(DIC株式会社製)、ポリゾールAM-200、ポリゾールM-17N、ポリゾールAM-610(昭和電工株式会社製)、X-436、QE-1042、HE-1335、RE-1075、JE-1056、JE-1113、KE-1148、XP8812(星光PMC株式会社製)が挙げられる。
【0054】
(ポリウレタン樹脂)
ポリウレタン樹脂としては、特に制限はなく、ジイソシアネート化合物とジオール化合物とを反応して得られる水溶性または水分散性のポリウレタン樹脂を使用することができる。また、ポリウレタン樹脂は一種あるいは二種以上を用いることができる。
【0055】
ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物、トルイレンジイソシアネート、フェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、これらジイソシアネートの変性物(カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン含有変性物など)等が挙げられる。
【0056】
ジオール化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドやテトラヒドロフラン等の複素環式エーテルを(共)重合させて得られるジオール化合物が挙げられる。 かかるジオール化合物の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルジオール、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリ-3-メチルペンチルアジペート、ポリエチレン/ブチレンアジペート、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペート等のポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等のポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオールが挙げられる。 これらの中では、ポリエーテル系、ポリエステル系及びポリカーボネート系のうち1種以上が好ましい。
【0057】
また、上記の他、カルボン酸基、スルホン酸基などの酸性基を有するジオール化合物も使用でき、その具体例としては、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸などが挙げられる。 これらの中では、ジメチロールプロピオン酸が好ましい。 これらのジオール化合物は、2種以上を併用してもよい。
【0058】
ポリウレタン樹脂の合成に際しては、低分子量のポリヒドロキシ化合物を添加してもよい。低分子量のポリヒドロキシ化合物としては、ポリエステルジオールの原料として使用される、グリコール、アルキレンオキシド低モル付加物、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール及びそのアルキレンオキシド低モル付加物が挙げられる。また、このようにして得られたウレタンプレポリマーは、ジメチロールアルカン酸に由来する酸基を中和した後または中和しながら水延長またはジ(トリ)アミンで鎖延長することができる。 鎖延長の際に使用されるポリアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン等が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。
【0059】
ポリウレタン樹脂としては、望ましくは、ジオール化合物としてポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系のジオールを用いて得られるポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が挙げられる。ポリウレタン樹脂の形態も特に限定されない。代表的には、エマルジョンタイプ、例えば、自己乳化エマルジョンや、自己安定化タイプが挙げられる。特に、上記の化合物のうちカルボン酸基、スルホン酸基などの酸性基を有するジオールを用いたり、低分子量のポリヒドロキシ化合物を添加したり、酸性基を導入したウレタン樹脂、中でもカルボキシル基を有するものが望ましい。さらに、架橋処理により、これらカルボキシル基等の官能基を架橋させるのが、光沢向上、耐擦性向上等の点から望ましい。
【0060】
ポリウレタン樹脂は、中和したものを使用することもできる。中和に使用する塩基としては、例えば、ブチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、モルホリン、アンモニア、水酸化ナトリウム等の無機塩基などが挙げられる。
【0061】
ポリウレタン樹脂の酸価は、好ましくは10~300であり、さらに好ましくは20~100である。 なお、酸価は、樹脂1gを中和させるのに必要なKOHのmg量である。また、水溶性ポリウレタン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~20万であり、より好ましくは1000~5万である。 ポリウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg;JIS K6900に従い測定)は、好ましくは-50~200℃であり、さらに好ましくは-50~100℃である。
【0062】
ポリウレタン樹脂組成物の好ましい具体例としては、NeoRezR-960、NeoRez R-989、NeoRez R-9320、NeoRad NR-440(楠本化成株式会社製)、ハイドランAP-30、ハイドランAPX-601、ハイドランSP-510、ハイドランSP-97(大日本インキ工業株式会社製)、スーパーフレックス130、スーパーフレックス150、スーパーフレックス150HS、スーパーフレックス170、スーパーフレックス210、スーパーフレックス300、スーパーフレックス420、スーパーフレックス420HS、スーパーフレックス470、スーパーフレックス740、スーパーフレックス820、スーパーフレックス830HS、スーパーフレックス860、スーパーフレックス870、(第一工業製薬株式会社製)、ユーコートUX-310、ユーコートUX-320、ユーコートUX-300、ユーコートUR-700、ユーコートUX-8100、ユーコートUX-2510、ユーコートUX-340、ユーコートUWS-145、パーマリンUA-150、パーマリンUA-200、パーマリンUA-350、パーマリンUA-368T、パーマリンUA-3945(三洋化成株式会社製)、タケラック W-5030、タケラック W-6010、タケラック W-6020、タケラック W-6061、タケラック W-605、タケラック W-5661、タケラック W-6110(三井化学株式会社製)が挙げられる。
【0063】
前記バインダーポリマーの平均粒子径(D50)は、分散液の粘度と関係しており、組成が同じものでは粒子径が小さくなるほど同一固形分での粘度が大きくなる。インク化したときに過剰な高粘度にならないためにもバインダーポリマーの平均粒子径(D50)は50nm以上が好ましい。また、粒径が数十μmになるとインクジェットヘッドのノズル口より大きくなるため使用できない。ノズル口より小さくとも粒子径の大きな粒子がインク中に存在すると吐出性を悪化させる。そこで、インク吐出性を阻害させないために平均粒子径(D50)は200nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましい。
なお、平均粒子径(D50)は、マイクロトラックUPA-EX150(Microtrac Inc.社)を使用して測定することができる。
【0064】
インク組成物に添加されるバインダーポリマーは、白色顔料分散体の固形分含有量の0.1倍以上3倍以下の添加が好ましい。具体的には、インク組成物中、バインダーポリマーの含有量は、記録媒体への定着性の観点から、バインダーポリマー固形分量で0.5質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上15質量%以下がさらに好ましい。
【0065】
<界面活性剤>
本発明のインク組成物は、界面活性剤を含有することができ、難浸透系基材、非浸透系基材に濡れ易くなるという観点から、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤から選択された少なくとも1種類が好ましい。
【0066】
シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が特に好ましい。該界面活性剤は、上記の効果に加え、インク組成物の粘度の上昇を抑制する;インクヘッドのノズルプレートの撥インク層に濡れ難いインクとなり、インクのノズル付着による吐出不良を防ぎ、吐出安定性が向上する;前記短冊状粒子の分散安定性を高める;動的表面張力が低く、浸透性、レベリング性が良い;という効果を奏する。
【0067】
(ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤)
前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤の具体例としては、71ADDITIVE、74ADDITIVE、57ADDITIVE、8029ADDITIVE、8054ADDITIVE、8211ADDITIVE、8019ADDITIVE、8526ADDITIVE、FZ-2123、FZ-2191(TORAY ダウ・コーニング株式会社製);TSF4440、TSF4441、TSF4445、TSF4446、TSF4450、TSF4452、TSF4460(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製);シルフェイスSAG002、シルフェイスSAG003、シルフェイスSAG005、シルフェイスSAG503A、シルフェイスSAG008、シルフェイスSJM003(日信化学工業株式会社製);TEGO WetKL245、TEGO Wet 250、TEGO Wet 260、TEGO Wet 265、TEGO Wet 270、TEGO Wet 280(エボニック社製);BYK-345,BYK-347,BYK-348,BYK-375,BYK-377(ビックケミー・ジャパン社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、TEGO Wet 270(エボニック社製)、シルフェイスSAG503A(日信化学工業株式会社製)が好ましい。
【0068】
(アセチレングリコール系界面活性剤)
アセチレングリコール系界面活性剤は、アセチレン結合を持つ界面活性剤であり、分子構造として非常に安定したグリコールであり、分子量も小さく、表面張力を大きく下げる効果がある。また、シリコーン系界面活性剤の項に記載した効果を奏することができる。
前記アセチレングリコール系界面活性剤の具体例としては、サーフィノール104、サーフィノール104E、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノールSE、サーフィノールSEF、サーフィノールDF110D、サーフィノールDF37、サーフィノールDF58、サーフィノールDF75、サーフィノールCT136、サーフィノール61、オルフィンPD-002W、オルフィンE1004、オルフィンE1010(日信化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0069】
(フッ素系界面活性剤)
フッ素系界面活性剤は、分子内にフッ素含有基を持つ構造をしているので、表面張力を大きく下げる効果がある。また、シリコーン系界面活性剤の項に記載した効果を奏することができる。
フッ素系界面活性剤の具体例としては、フタージェント100、フタージェント150、フタージェント212M、フタージェント400SW、フタージェント251(株式会社ネオス製)、キャプストンFS-3100、キャプストンFS-10、キャプストンFS-30、キャプストンFS-60、キャプストンFS-65(ケマーズ株式会社製)、ユニダインNS-9013、ユニダインDNS-403N(ダイキン化学工業株式会社製)、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(DIC株式会社製)、ポリフォックスPF-151N(オムノバ社製)等が挙げられる。
【0070】
前記界面活性剤の含有量は、インク組成物全量に対して、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.5質量%以上3質量%以下がより好ましい。
【0071】
(その他の界面活性剤)
本発明においては、前記シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤以外の、その他の界面活性剤を併用することができる。それらの中では、インクの適用性の観点から、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0072】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、(1)炭素数8~22の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖の高級アルコール、多価アルコール、又は芳香族アルコールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシド(以下総称して、「アルキレンオキシド」という)を付加したポリオキシアルキレンのアルキルエーテル、アルケニルエーテル、アルキニルエーテル又はアリールエーテル、(2)炭素数8~22の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を有する高級アルコールと多価脂肪酸とのエステル、(3)炭素数8~20の直鎖又は分岐鎖の、アルキル基又はアルケニル基を有する、ポリオキシアルキレン脂肪族アミン、(4)炭素数8~22の高級脂肪酸と、多価アルコールのエステル化合物又はそれにアルキレンオキシドを付加した化合物等が挙げられる。
【0073】
(その他の成分)
本発明のインク組成物は、必要に応じて、水、湿潤剤、浸透剤、分散剤、粘度調整剤、消泡剤、防黴剤、防錆剤、紫外線吸収剤等の公知の各種添加剤を添加することができる。
【0074】
本発明のインク組成物は、前記構成成分を有機溶剤中に溶解または混合分散し、さらに必要に応じて攪拌混合して作製する。攪拌混合は、例えば通常の攪拌羽を用いた攪拌機、マグネチックスターラー、液流を用いたスタティックミキサー、超音波ホモミキサー、高速回転のミキサー型分散機等を用いて行なうことができる。
【0075】
《インク物性》
インク組成物の25℃における粘度は、吐出安定性の観点から、好ましくは4.0mPa・s以上20mPa・s以下であり、さらに好ましくは5.0mPa・s以上15mPa・s以下である。
なお、25℃におけるインク組成物の粘度は、実施例に記載の方法により測定される。
インク組成物のpHは、吐出安定性、インク流路部材耐性および皮膚刺激性の観点から、好ましくは6.0以上11.0以下であり、さらに好ましくは6.5以上10.5である。
【0076】
《画像形成方法》
本発明の画像形成方法は、本発明のインク組成物を刺激印加し、前記インク組成物を飛翔させて画像を記録するインク飛翔工程を少なくとも含む。
インク組成物を刺激印加し、前記インク組成物を飛翔させる方法(インク吐出方法)としては、インク組成物を熱、圧力、振動及び光から選択される少なくとも1種の刺激で印加し、前記インク組成物を飛翔させる方法が挙げられ、サーマル式又はピエゾ式の記録ヘッドを用いてインクを吐出する方法が好ましく、本発明においては、インク組成物を充填した容器を、インクジェット記録装置に装着し、ピエゾ式の記録ヘッドを用いてインクを吐出して記録媒体に記録する方法がより好ましい。
記録ヘッドのノズル中での凝集又は沈降を抑制し、良好な記録物を得るために、再分散手段を用いることができる。再分散手段としては、機械力により顔料を分散媒中で分散する手段でよく、インク充填容器内のインク撹拌する機構、振とう機構、振動付与機構およびインクを循環させる機構が挙げられる。
【0077】
本発明の画像形成方法は、白色度の観点から下地等のベタ印刷に適用することが好ましい。
記録媒体に特に制限はないが、段ボール紙、板紙、カラーキャストコート紙、樹脂フィルム等が挙げられ、好ましくはカラーキャストコート紙および樹脂フィルムが挙げられる。中でも本発明の画像形成方法は、非浸透系基材を用いた場合にその効果を良好に享受することができる。前記非浸透系基材とは、水透過性、吸収性が低い表面を有する基材であり、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である基材をいう。
【0078】
カラーキャストコート紙としては、カラーグロリア黒<275g/m2>、カラーグロリア黒<310g/m2>、カラーグロリア ブラックA<326g/m2>(五条製紙株式会社製);エスプリカラーブルー<320g/m2>、エスプリカラーグリーン<320g/m2>(日本製紙株式会社製);ルミナカラーブラック<270g/m2>、ルミナカラーブラック<310g/m2>、ルミナカードブラック<330g/m2>(王子エフテックス株式会社製);LKカラーブラック<350g/m2>、LKカラーブラック<430g/m2>、LKカラーブルー<350g/m2>、LKカラーブルー<430g/m2>(三菱製紙株式会社製)等が挙げられる。
【0079】
また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルム等が挙げられる。これらのフィルムは、二軸延伸フィルム、一軸延伸フィルム、無延伸フィルムであってもよい。樹脂フィルムは、より好ましくはポリエステルフィルム及び延伸ポリプロピレンフィルムから選ばれる1種以上、更に好ましくはコロナ放電処理等の表面処理を行ったポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムである。
透明合成樹脂フィルムの市販品としては、ルミラーT60(東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレート)、FE2001(フタムラ化学株式会社製、コロナ処理ポリエチレンテレフタレート)、FOS#60(フタムラ化学株式会社製、コロナ処理二軸延伸ポリプロピレンフィルム)、PVC80B P(リンテック株式会社製、ポリ塩化ビニル)、カイナスKEE70CA(リンテック株式会社製、ポリエチレン)、ユポSG90 PAT1(リンテック株式会社製、ポリプロピレン)、ボニールRX(興人フィルム&ケミカルズ株式会社製、ナイロン)等が挙げられる。
【0080】
<インクカートリッジ>
本発明に使用できるインクカートリッジは、本発明のインク組成物を容器中に収容し、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材等を有する。
前記容器としては特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋を少なくとも有するもの、などが好適である。
インクカートリッジについて、図1及び図2を参照して説明する。 図1は、インクカートリッジの一例を示す概略図であり、図2は、図1のインクカートリッジのケースも含めた概略図である。
インクはインク注入口242からインク袋241内に充填し、排気した後、該インク注入口242を融着により閉じる。使用時には、ゴム部材からなるインク排出口243に装置本体の針を刺して装置にインクを供給する。インク袋241は、透気性の無いアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。このインク袋241は、図2に示すように、通常、プラスチック製のカートリッジケース244内に収容され、インクカートリッジ201として、各種画像形成装置に着脱可能に装着して用いられるようになっている。このインクカートリッジは、インクを収容し、後述する画像形成」装置に着脱可能に装着して用いるのが特に好ましい。
【0081】
《画像形成装置》
本発明の画像形成装置は、前記本発明の画像形成方法を適用でき、本発明のインク組成物を刺激印加し、前記インク組成物を飛翔させて画像を記録するインク飛翔手段を少なくとも含む。
本発明の画像形成装置としては、例えばインクジェット記録方式による各種画像形成装置、例えば、インクジェット記録用プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機などが挙げられる。
以下、実施例でも用いた画像形成装置について概要を説明する。
図3に示すインクジェット記録装置は、装置本体(101)と、装置本体(101)に装着した用紙を装填するための給紙トレイ(102)と、装置本体(101)に装着され画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ(103)と、インクカートリッジ装填部(104)とを有する。インクカートリッジ装填部(104)の上面には操作キーや表示器などの操作部(105)が配置されている。インクカートリッジ装填部(104)は、インクカートリッジ(200)の脱着を行うための開閉可能な前カバー(115)を有している。(111)は上カバー、(112)は前カバーの前面である。
【0082】
装置本体(101)内には、図4に示すように、左右の側板(不図示)に横架したガイド部材であるガイドロッド(131)とステー(132)とで、キャリッジ(133)を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ(不図示)によって移動走査する。
キャリッジ(133)には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個のインクジェット記録用ヘッドからなる記録ヘッド(134)の複数のインク吐出口を、主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0083】
記録ヘッド(134)を構成するインクジェット記録用ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、インクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどが使用できる。
また、キャリッジ(133)には、記録ヘッド(134)に各色のインクを供給するための各色のサブタンク(135)を搭載している。サブタンク(135)には、インク供給チューブ(不図示)を介して、インクカートリッジ装填部(104)に装填されたインクカートリッジ(200)から、インクが供給されて補充される。
【0084】
一方、給紙トレイ(102)の用紙積載部(圧板)(141)上に積載した用紙(142)を給紙するための給紙部として、用紙積載部(141)から用紙(142)を1枚づつ分離給送する半月コロ〔給紙コロ(143)〕、及び給紙コロ(143)に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド(144)を備え、この分離パッド(144)は給紙コロ(143)側に付勢されている。
この給紙部から給紙された用紙(142)を記録ヘッド(134)の下方側で搬送するための搬送部として、用紙(142)を静電吸着して搬送するための搬送ベルト(151)と、給紙部からガイド(145)を介して送られる用紙(142)を搬送ベルト(151)との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ(152)と、略鉛直上方に送られる用紙(142)を略90°方向転換させて搬送ベルト(151)上に倣わせるための搬送ガイド(153)と、押さえ部材(154)で搬送ベルト(151)側に付勢された先端加圧コロ(155)とが備えられ、また、搬送ベルト(151)表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ(156)が備えられている。
【0085】
搬送ベルト(151)は無端状ベルトであり、搬送ローラ(157)とテンションローラ(158)との間に張架されて、ベルト搬送方向に周回可能である。この搬送ベルト(151)は、例えば、抵抗制御を行っていない厚さ40μm程度の樹脂材、例えば、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE)で形成した用紙吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(中抵抗層、アース層)とを有している。搬送ベルト(151)の裏側には、記録ヘッド(134)による印写領域に対応してガイド部材(161)が配置されている。なお、記録ヘッド(134)で記録された用紙(142)を排紙するための排紙部として、搬送ベルト(151)から用紙(142)を分離するための分離爪(171)と、排紙ローラ(172)及び排紙コロ(173)とが備えられており、排紙ローラ(172)の下方に排紙トレイ(103)が配されている。
装置本体(101)の背面部には、両面給紙ユニット(181)が着脱自在に装着されている。両面給紙ユニット(181)は、搬送ベルト(151)の逆方向回転で戻される用紙(142)を取り込んで反転させて再度、カウンタローラ(152)と搬送ベルト(151)との間に給紙する。なお、両面給紙ユニット(181)の上面には手差し給紙部(182)が設けられている。
【0086】
この画像形成装置においては、給紙部から用紙(142)が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙(142)は、ガイド(145)で案内され、搬送ベルト(151)とカウンタローラ(152)との間に挟まれて搬送される。 更に先端を搬送ガイド(153)で案内されて先端加圧コロ(155)で搬送ベルト(151)に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、帯電ローラ(156)によって搬送ベルト(157)が帯電されており、用紙(142)は、搬送ベルト(151)に静電吸着されて搬送される。そこで、キャリッジ(133)を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド(134)を駆動することにより、停止している用紙(142)にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙(142)を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙(142)の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙(142)を排紙トレイ(103)に排紙する。
【0087】
そして、サブタンク(135)内のインクの残量ニアーエンドが検知されると、インクカートリッジ(200)から所要量のインクがサブタンク(135)に補給される。
このインクジェット記録装置においては、インクカートリッジ(200)中のインクを使い切ったときには、インクカートリッジ(200)における筐体を分解して内部のインク袋だけを交換することができる。また、インクカートリッジ(200)は、縦置きで前面装填構成としても、安定したインクの供給を行うことができる。 したがって、装置本体(101)の上方が塞がって設置されているような場合、例えば、ラック内に収納したり、あるいは装置本体(101)の上面に物が置かれているような場合でも、インクカートリッジ(200)の交換を容易に行うことができる。
なお、ここでは、キャリッジが走査するシリアル型(シャトル型)画像形成装置に適用した例で説明したが、ライン型ヘッドを備えたライン型画像形成装置にも同様に適用することができる。
【実施例
【0088】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。 なお、例中の「部」及び「%」は特に断りのない限り「質量部」及び「質量%」である。
【0089】
[実施例1]
「短冊状粒子の合成-1」
160g/Lの炭酸ナトリウム溶液中に、TiOとして100g/Lの硫酸チタニルを含有する溶液を投入し、液温を25℃とし、白色沈殿をろ過し、十分洗浄した。洗浄したオルソチタン酸ケーキを200g/Lの希塩酸を用いてリパルプした後、同じ希塩酸によりpHを2に調整して10℃で3時間解膠を行った。引き続き液温が30℃を超えないように400g/Lの濃塩酸を添加してTiO濃度100g/L、塩酸濃度80g/Lに調整した。次に、この溶液を撹拌しながら加温し液温を30℃に合わせて1時間加水分解を行った後、更に95℃で3時間熟成を行い、ルチル型酸化チタンを合成した。得られたルチル型酸化チタンの形状および粒子径を透過型電子顕微鏡で観察したところ、一個の粒子の長軸面が短軸方向に束状に配向凝集した短冊状の粒子形態を有していた。得られた短冊状粒子の見掛け平均長軸長は250nm、見掛け平均短軸長は60nm、見掛け平均軸比は4.2、比表面積は75m/gであった。ここで「見掛け」とは、透過型電子顕微鏡観察で測定された短冊状粒子の測定値であることを示す。
【0090】
表面処理:前記熟成後に得られた短冊状粒子含有水懸濁液を加温して70℃に調整した。次いで、短冊状粒子に対しAl換算で10質量%のアルミン酸ナトリウムを撹拌しながらゆっくりと添加し、1時間撹拌を行った後、100g/Lの希硫酸を添加してpHを8.0に調整した。次に、短冊状粒子に対して5質量%のステアリン酸ナトリウムを添加し、1時間撹拌を行った後、希硫酸によりpHを6.5に調整した。ろ過、水洗後、乾燥機にて110℃で12時間乾燥して、表面処理された短冊状粒子-1を得た。
【0091】
「白色顔料分散体-1」
300mlのトールビーカーに、酸基含有ポリマー分散剤DISPERBYK-2015(ビックケミー・ジャパン株式会社製)30.0gとイオン交換水90.0gを投入し、混合溶解させた。次いで、表面処理された短冊状粒子-1を80.0g投入し、マグネチックスターラーでプレ分散を30分間行った。
プレ分散後、超音波ホモジナイザーUS-300T チップφ7 (日本精機製作所製)を用いて120μAで1時間分散後、400メッシュのナイロンメッシュで粗大粒子を除去し、短冊状粒子-1の平均粒子径D50が252nmである白色顔料分散体-1(固形分濃度40質量%)を得た。
【0092】
「インク組成物-1」
200mlビーカーに、プロピレングリコール15.0g、3-メトキシ-3-メチルブタノール2.5g、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール1.5g、エンバイロジェムAD01(日信化学工業株式会社製)0.5gおよびシルフェイスSAG503A(日信化学工業株式会社製)1.5gを投入し、マグネチックスターラーで10分間混合溶解した。次いで、バインダーポリマーとして、タケラック W-6110(三井化学株式会社製)7.5g、前記で得られた白色顔料分散体-1(固形分濃度40質量%)42.5gおよびトータル100.0gとなるようにイオン交換水を投入し、マグネチックスターラーで20分間混合撹拌した。得られた混合液を1.2μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径2.5cm、富士フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジで濾過し、粗大粒子を除去することによりインク組成物-1を得た。
【0093】
[実施例2]
「短冊状粒子の合成-2」
実施例1と同様にして得られたオルソチタン酸の白色沈殿をろ過し、十分洗浄した。 洗浄したオルソチタン酸ケーキを200g/Lの希塩酸を用いてリパルプした後、同じ希塩酸でpHを1に調整して10℃で3時間解膠を行った。 引き続き、液温が30℃を超えないように400g/Lの濃塩酸を添加してTiO濃度80g/L、塩酸濃度110g/Lに調整した。次に、この溶液を撹拌しながら加温し液温を45℃に合わせて3時間加水分解を行った後、更に95℃で3時間熟成を行い、ルチル型酸化チタンを合成した。得られたルチル型酸化チタンの形状および粒子径を透過型電子顕微鏡で観察したところ、一個の粒子の長軸面が短軸方向に束状に配向凝集した短冊状の粒子形態を有していた。得られた短冊状粒子の見掛け平均長軸長は300nm、見掛け平均短軸長は80nm、見掛け平均軸比は3.8、比表面積は88m/gであった。
表面処理:実施例1と同様な表面処理により表面処理された短冊状粒子-2を得た。
【0094】
「白色顔料分散体-2」
300mlのトールビーカーに、酸基含有ポリマー分散剤DISPERBYK-180(ビックケミー・ジャパン株式会社製)30.0gと1,3-プロパンジオール90.0gを投入し、混合溶解させた。次いで、表面処理された短冊状粒子-2を80.0g投入し、マグネチックスターラーでプレ分散を30分間行った。
プレ分散後、超音波ホモジナイザーUS-300T チップφ7 (日本精機製作所製)を用いて120μAで2時間分散後、400メッシュのナイロンメッシュで粗大粒子を除去し、短冊状粒子-2の平均粒子径D50が278nmである白色顔料分散体-2(固形分濃度40質量%)を得た。
【0095】
「インク組成物-2」
200mlビーカーに、前記一般式(I)で示されるアミド化合物30.0g、3-メトキシ-3-メチルブタノール10.0g、2-エチルー1,3-ヘキサンジオール2.0g、BYK-333(ビックケミー・ジャパン株式会社)1.5gを投入し、マグネチックスターラーで10分間混合溶解した。次いで、バインダーポリマーとして、XP8812(星光PMC株式会社製)9.76g、前記で得られた白色顔料分散体-2(固形分濃度40質量%)42.5gおよびトータル100.0gとなるようにプロピレングリコールを投入し、マグネチックスターラーで20分間混合撹拌した。得られた混合液を1.2μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径2.5cm、富士フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジで濾過し、粗大粒子を除去することによりインク組成物-2を得た。
【0096】
[実施例3]
「短冊状粒子の合成-3」
実施例1で得た短冊状粒子含有水懸濁液を撹拌しながら400g/Lの苛性ソーダ溶液を添加し、pH6.0に中和した。 ろ過、水洗後、乾燥機にて110℃で12時間乾燥した粉末試料を大気中で550℃にて1時間熱処理した。得られたこの粒子は見掛け平均長軸長170nm、見掛け平均短軸長40nm、見掛け平均軸比4.3、比表面積が27m/gである、一個の粒子の長軸面が短軸方向に束状に配向凝集した短冊状の粒子形態を有し、結晶性を有する短冊状粒子であった。
【0097】
表面処理:得られた短冊状粒子をリパルプし、加温して70℃に調整した。次いで、短冊状粒子に対ししAl換算で2質量%のアルミン酸ナトリウムを撹拌しながらゆっくりと添加し、1時間撹拌を行った後、100g/Lの希硫酸を添加してpHを8.0に調整した。次に、酸化チタンに対して2質量%のステアリン酸ナトリウムを添加し、1時間撹拌を行った後、希硫酸によりpHを6.5に調整した。ろ過、水洗後、乾燥機にて110℃で12時間乾燥して、表面処理された短冊状粒子-3を得た。
【0098】
「白色顔料分散体-3」
300mlのトールビーカーに、酸基含有ポリマー分散剤DISPERBYK-180(ビックケミー・ジャパン株式会社製)30.0gとイオン交換水90.0gを投入し、混合溶解させた。次いで、表面処理された短冊状粒子-3を80.0g投入し、マグネチックスターラーでプレ分散を30分間行った。
プレ分散後、超音波ホモジナイザーUS-300T チップφ7 (日本精機製作所製)を用いて120μAで1時間分散後、400メッシュのナイロンメッシュで粗大粒子を除去し、短冊状粒子-3の平均粒子径D50が268nmである白色顔料分散体-3(固形分濃度40質量%)を得た。
【0099】
「インク組成物-3」
200mlビーカーに、プロピレングリコール15.0g、一般式(I)で示されるアミド化合物10.0g、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール1.5g、エンバイロジェムAD01(日信化学工業株式会社製)0.5gおよびサーフィノール104E(日信化学工業株式会社製)1.5gを投入し、マグネチックスターラーで10分間混合溶解した。次いで、バインダーポリマーとして、パーマリンUA-3945(三洋化成株式会社製)15.8g、前記で得られた白色顔料分散体-3(固形分濃度40質量%)42.5gおよびトータル100.0gとなるようにイオン交換水を投入し、マグネチックスターラーで20分間混合撹拌した。得られた混合液を1.2μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径2.5cm、富士フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジで濾過し、粗大粒子を除去することによりインク組成物-3を得た。
【0100】
[実施例4]
「インク組成物-4」
実施例1において、界面活性剤シルフェイスSAG503A(日信化学工業株式会社製)の代わりに、ユニダインDNS-403N(ダイキン化学工業株式会社製)を用いたこと以外は実施例1を繰り返し、インク組成物-4を得た。
【0101】
[比較例1]
「白色顔料分散体-4」
300mlのトールビーカーに、酸基含有ポリマー分散剤DISPERBYK-2015(ビックケミー・ジャパン株式会社製)30.0gとイオン交換水90.0gを投入し、混合溶解させた。次いで、表面処理されたルチル型酸化チタンJR-806(平均粒子径D50:250nm、テイカ株式会社製)投入し、マグネチックスターラーでプレ分散を30分間行った。
プレ分散後、超音波ホモジナイザーUS-300T チップφ7 (日本精機製作所製)を用いて120μAで2時間分散後、400メッシュのナイロンメッシュで粗大粒子を除去し、表面処理されたルチル型酸化チタンJR-806の平均粒子径D50が265nmである白色顔料分散体-4(固形分濃度40質量%)を得た。なお、表面処理されたルチル型酸化チタンJR-806は、一個の粒子の長軸面が短軸方向に配向凝集した短冊状の粒子形態を持たない。
【0102】
「インク組成物-4」
実施例1において、白色顔料分散体-1の代わりに、前記白色顔料分散体-4を用いたこと以外は実施例1を繰り返し、インク組成物-4を得た。
【0103】
[比較例2]
「インク組成物-5」
実施例1において、白色顔料分散体-1の代わりに、ULTRA-E(樹脂中空粒子、ダウケミカル社製)を用いたこと以外は実施例1を繰り返し、インク組成物-5を得た。ULTRA-Eの平均粒子径D50は、424nmであった。
【0104】
実施例1~4及び比較例1~2の各インク組成物について、以下のようにして特性を評価した。 結果を纏めて表1に示す。
【0105】
「インク物性測定」
<インク粘度測定>
インクの粘度は、粘度計(RE-85L、東機産業株式会社製)を使用して、25℃で測定した。
<インクpH測定>
インクのpHは、pHメーター計(HM-30R型、TOA-DKK株式会社製)を使用して、25℃で測定した。
<インク動的表面張力測定>
インクの動的表面張力は、最大泡圧法による表面寿命15ms時の動的表面張力を、SITA_DynoTester(SITA社製)を使用して、25℃で測定した。
【0106】
インク評価方法について、説明する。
「インクの沈降性評価」
タービスキャンMA2000(英弘精機社製)により、インクの白色顔料の沈降性を調べた。
即ち、各インクを超音波分散処理(100W、40分)し均一な状態にしてから、ピペットを用いて装置専用のガラスセルに5.5mL入れた。セル内のインクの液面が安定した30分後に測定を行い、この時間を沈降性評価開始とした。その後、23℃で静置し、120時間後まで測定を行い、沈降性評価開始を基準とした偏差表示により、沈降性を確認した。沈降性を確認は、主に、上澄みの生成による後方散乱光の変化を、ピークの積算(相対値モード)で行い、次の基準で評価した。
〔評価基準〕
A:評価開始120時間後の相対変化が5%未満
B:評価開始120時間後の相対変化が5%以上、10%未満
C:評価開始120時間後の相対変化が10%以上
【0107】
「沈降したインクの再分散性評価」
各インクを室温でガラス製の30mLサンプル瓶に15g入れて密栓し1ヶ月静置したところ、顔料が沈降したため、再分散性の評価を、次の基準で評価した。
〔評価基準〕
A:サンプル瓶を手で30秒振ると顔料の沈降が解消し、静置前の粒径に戻る。
B:超音波ホモジナイザーUS-300T(チップφ7)を用いて120μAで1分間照射すると、顔料の粒径が静置前の粒径に戻る。
C:超音波ホモジナイザーUS-300T(チップφ7)を用いて120μAで1分以上照射しても、顔料の沈降が解消しない。
【0108】
「沈降したインクの保存安定性評価」
各インクをガラス製の30mLサンプル瓶に15g入れて密栓し60℃で1ヶ月静置し、インク溶剤による樹脂の膨潤や分散破壊の有無を確認した。 保存後のインクを超音波ホモジナイザーUS-300T(チップφ7)を用いて120μAで1分間照射し、再分散後の粒径により、次の基準で評価した。
〔評価基準〕
A:粒径の変化率の絶対値が、5%未満
B:粒径の変化率の絶対値が、5%以上、15%未満
C:粒径の変化率の絶対値が、15%以上
【0109】
「印字画像の白色度評価」
<印字条件>
マルチ手差しフィーダーを取り付けたインクジェットプリンター(IPSiO GXe-5500、株式会社リコー製)の印字ヘッドを含めたインク供給経路に純水を通液して洗浄し、洗浄液が着色しなくなるまで十分に通液した後、液を装置から抜ききって評価用画像形成装置とした。また各インクを5~10Paの減圧条件で30分間攪拌することによりインク中の気体を脱気し、インクカートリッジに充填して評価用インクカートリッジとした。充填動作を行い、全ノズルにインクが充填され異常画像が出ないことを確認し、プリンタ添付のドライバで光沢紙きれいモードを選択した後、ユーザー設定でカラーマッチングoffを印字モードとした。 このモードで、ベタ画像のメディア上へのインク付着量が10.4±0.2g/mとなるようにヘッドの駆動電圧を変更して吐出量を調整した。
次いで、Microsoft Word2003により作成した60mm×180mmのベタ画像を各記録媒体上に印字した。印字後、記録媒体を内部温度が100℃に設定した自然対流型乾燥機に入れ、2分間乾燥後1晩室温放置を行い、印字した部分を分光測色濃度計X-Rite eXactを用いてLab値を測定しハンター白色度を下記式(1)に基づき算出し、次の基準で評価した。なお、透明なフィルムを記録媒体に用いた場合のみフィルムの下にルミナカラーブラック<310g/m2>(王子エフテックス株式会社製)を敷いた状態で評価を行った。
なお、実施例1、4、比較例1、2における記録媒体はFOS#60(フタムラ化学株式会社製、コロナ処理二軸延伸ポリプロピレンフィルム)であり、実施例2における記録媒体はPVC80B P(リンテック株式会社製、ポリ塩化ビニル)であり、実施例3における記録媒体はルミナカードブラック<330g/m2>(王子エフテックス株式会社製)である。
〔評価基準〕
A:ハンター白色度75以上
B:ハンター白色度70以上、75未満
C:ハンター白色度70未満
【0110】
【数1】
【0111】
「吐出安定性評価」
Microsoft Word2003にて作成したA4サイズ用紙の面積5%をベタ画像にて塗りつぶすチャートを連続200枚、MyPaper(株式会社リコー製)に打ち出した。打ち出し後の各ノズルの状態を観察するため、プリンタ添付のドライバでメンテナンス ノズルチェックをルミナカラーブラック<310g/m2>(王子エフテックス株式会社製)上に出力し、吐出乱れを下記基準で評価した。なお、ベタ画像はプリンタ添付のドライバで光沢紙きれいモードを選択した後、ユーザー設定でカラーマッチングoffを印字モードとした。
[評価基準]
A:吐出乱れなし
B:若干吐出乱れあり
C:吐出乱れあり、又は吐出しない部分あり
【0112】
「擦過性評価」
「印字画像の白色度評価」で印字したベタ画像を摩擦試験機(商品名:クロックメーター、株式会社東洋精機製作所製)にセッティングし、綿布で10往復擦り、擦られた画像部擦過状態を目視で観察し、下記評価基準により判定した。
[評価基準]
A:擦過痕なし
B:極僅かに擦過痕あり
C:僅かに擦過痕あり
D:激しく擦過痕あり
【0113】
【表1】
【0114】
表1の結果から、一個の粒子の長軸面が短軸方向に配向凝集した短冊状の粒子形態を有し、かつ平均粒子径D50が100nm~400nmであるルチル型酸化チタンと、酸基含有ポリマー分散剤と、分散媒とを含む白色顔料分散体を使用した各実施例のインク組成物は、比較例に比べて、保存安定性、吐出安定性、白色度、耐擦性が共に優れた結果となった。
【符号の説明】
【0115】
101 装置本体
102 給紙トレイ
103 排紙トレイ
104 インクカートリッジ装填部
105 操作部
111 上カバー
112 前カバーの前面
115 前カバー
131 ガイドロッド
132 ステー
133 キャリッジ
134 記録ヘッド
135 サブタンク
141 用紙載置部
142 用紙
143 給紙コロ
144 分離パッド
145 ガイド
151 搬送ベルト
152 カウンタローラ
153 搬送ガイド
154 押さえ部材
155 加圧コロ
156 帯電ローラ
157 搬送ローラ
158 テンションローラ
161 ガイド部材
171 分離爪
172 排紙ローラ
173 排紙コロ
181 両面給紙ユニット
182 手差し給紙部
200 インクカートリッジ
201 インクカートリッジ
241 インク袋
242 インク注入口
243 インク排出口
244 カートリッジケース
【先行技術文献】
【特許文献】
【0116】
【文献】特開2012-25884号公報
【文献】特開2012-25886号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8