IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

<>
  • 特許-チャージポンプ回路 図1
  • 特許-チャージポンプ回路 図2
  • 特許-チャージポンプ回路 図3
  • 特許-チャージポンプ回路 図4
  • 特許-チャージポンプ回路 図5
  • 特許-チャージポンプ回路 図6
  • 特許-チャージポンプ回路 図7
  • 特許-チャージポンプ回路 図8
  • 特許-チャージポンプ回路 図9
  • 特許-チャージポンプ回路 図10
  • 特許-チャージポンプ回路 図11
  • 特許-チャージポンプ回路 図12
  • 特許-チャージポンプ回路 図13
  • 特許-チャージポンプ回路 図14
  • 特許-チャージポンプ回路 図15
  • 特許-チャージポンプ回路 図16
  • 特許-チャージポンプ回路 図17
  • 特許-チャージポンプ回路 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】チャージポンプ回路
(51)【国際特許分類】
   H03L 7/089 20060101AFI20220125BHJP
   H02M 3/07 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
H03L7/089 110
H02M3/07
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018049453
(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公開番号】P2019161592
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】谷 弘敦
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-325028(JP,A)
【文献】特開2010-252126(JP,A)
【文献】特開2010-074562(JP,A)
【文献】米国特許第05670869(US,A)
【文献】特開2000-165235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03L 1/00- 7/26
H02M 3/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧上昇を指示する第1指示信号を遅延させた第1遅延信号を出力する第1遅延回路と、
電圧下降を指示する第2指示信号を遅延させた第2遅延信号を出力する第2遅延回路と、
出力ノードに電流を供給する電流ソース回路と、
前記出力ノードから電流を吸収する電流シンク回路と、
前記第1指示信号または前記第1遅延信号に応じて、前記電流ソース回路と前記出力ノードの接続を切り替える複数の第1スイッチと、
前記第2指示信号または前記第2遅延信号に応じて、前記電流シンク回路と前記出力ノードの接続を切り替える複数の第2スイッチと、
を備え、
前記第1指示信号に対する前記第1遅延信号の遅延量は、前記出力ノードで発生するノイズであって寄生容量に起因するスパイク状のノイズの幅より大きく、かつ、前記第1指示信号の幅より小さくなるように設定され、
前記第2指示信号に対する前記第2遅延信号の遅延量は、前記ノイズの幅より大きく、かつ、前記第2指示信号の幅より小さくなるように設定される、
チャージポンプ回路。
【請求項2】
複数の電流ソース回路および複数の電流シンク回路が備えられ、
複数の前記第1スイッチのそれぞれは、複数の前記電流ソース回路のいずれかと前記出力ノードの接続を切り替え、
複数の前記第2スイッチのそれぞれは、複数の前記電流シンク回路のいずれかと前記出力ノードの接続を切り替える、
請求項1に記載のチャージポンプ回路。
【請求項3】
1つの電流ソース回路および1つの電流シンク回路が備えられ、
複数の前記第1スイッチのそれぞれは、前記電流ソース回路と前記出力ノードの接続を切り替え、
複数の前記第2スイッチのそれぞれは、前記電流シンク回路と前記出力ノードの接続を切り替える、
請求項1に記載のチャージポンプ回路。
【請求項4】
前記第1遅延回路および前記第2遅延回路は、偶数個の反転素子を含む、
請求項1に記載のチャージポンプ回路。
【請求項5】
前記第1遅延回路および前記第2遅延回路は、直列に接続された抵抗素子およびキャパシタを含む、
請求項1に記載のチャージポンプ回路。
【請求項6】
前記第1遅延回路は、設定された遅延量に従い前記第1指示信号を遅延させた前記第1遅延信号を出力し、
前記第2遅延回路は、設定された遅延量に従い前記第2指示信号を遅延させた前記第2遅延信号を出力する、
請求項1に記載のチャージポンプ回路。
【請求項7】
前記電流ソース回路および前記電流シンク回路は、トランジスタである、
請求項1に記載のチャージポンプ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャージポンプ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
位相同期回路(PLL:Phase Locked Loop)は、位相周波数比較器(PFD:Phase Frequency Detector)、チャージポンプ(CP:Charge Pump)回路、ローパスフィルタ(LPF:Low Pass Filter)などであるループフィルタ、および、電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)等によって構成され、基準クロック信号に同期した新たなクロック信号を生成する機能を持つ回路である。
【0003】
チャージポンプ回路は、動作時に、寄生容量に起因するスパイク状のノイズが出力端子で発生し、その結果、VCOによって出力される発振周波数が瞬間的に変化することで、ジッタが発生する場合がある。このようなノイズを小さくするために、主電流制御部とループフィルタとの間に過電流キャンセル部を設け、主制御電流からスパイク状の過電流部をキャンセルする技術が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような技術では、素子サイズを大きくする必要があるため、レイアウト面積の増大を招くと共に、寄生容量を増加させるという問題があった。また、過電流をキャンセルするためのキャンセル電流のために消費電流が増加するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、消費電流およびレイアウト面積を大きく増加させることなく、ノイズの影響を低減することができるチャージポンプ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、電圧上昇を指示する第1指示信号を遅延させた第1遅延信号を出力する第1遅延回路と、電圧下降を指示する第2指示信号を遅延させた第2遅延信号を出力する第2遅延回路と、出力ノードに電流を供給する電流ソース回路と、前記出力ノードから電流を吸収する電流シンク回路と、前記第1指示信号または前記第1遅延信号に応じて、前記電流ソース回路と前記出力ノードの接続を切り替える複数の第1スイッチと、前記第2指示信号または前記第2遅延信号に応じて、前記電流シンク回路と前記出力ノードの接続を切り替える複数の第2スイッチと、を備え、前記第1指示信号に対する前記第1遅延信号の遅延量は、前記出力ノードで発生するノイズであって寄生容量に起因するスパイク状のノイズの幅より大きく、かつ、前記第1指示信号の幅より小さくなるように設定され、前記第2指示信号に対する前記第2遅延信号の遅延量は、前記ノイズの幅より大きく、かつ、前記第2指示信号の幅より小さくなるように設定される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、消費電流およびレイアウト面積を大きく増加させることなく、ノイズの影響を低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の位相同期回路の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、比較例のチャージポンプ回路の構成例を示す図である。
図3図3は、出力ノードの端子電圧の例を示す図である。
図4図4は、寄生容量の例を説明するための図である。
図5図5は、出力ノードで発生するノイズの例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態のチャージポンプ回路の構成例を示す図である。
図7図7は、遅延量の設定例および出力ノードの端子電圧の例を示す図である。
図8図8は、遅延量の設定例および出力ノードの端子電圧の例を示す図である。
図9図9は、遅延量の設定例および出力ノードの端子電圧の例を示す図である。
図10図10は、遅延回路の構成例を示す図である。
図11図11は、遅延回路の他の構成例を示す図である。
図12図12は、遅延信号および指示信号の対応を示す図である。
図13図13は、第2の本実施形態のチャージポンプ回路の構成例を示す図である。
図14図14は、遅延量の設定例および出力ノードの端子電圧の例を示す図である。
図15図15は、第3の本実施形態のチャージポンプ回路の構成例を示す図である。
図16図16は、第4の本実施形態のチャージポンプ回路の構成例を示す図である。
図17図17は、遅延量を設定可能な遅延回路の構成例を示す図である。
図18図18は、遅延量を設定可能な遅延回路の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるチャージポンプ回路の一実施形態を詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
第1の実施形態のチャージポンプ回路は、電圧上昇を指示する指示信号に応じて動作する制御スイッチ、および、電圧下降を指示する指示信号に応じて動作する制御スイッチをそれぞれ複数設け、各スイッチの制御タイミングをずらすことで、寄生容量に起因するスパイク状のノイズを分散させ、ピークを抑える。これにより、消費電流およびレイアウト面積を大きく増加させることなく、VCOに対するノイズの影響を低減することができる。すなわち、VCOによって出力される発振周波数のジッタを小さくすることが可能となる。
【0011】
図1は、本実施形態の位相同期回路の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、位相同期回路は、PFD10と、チャージポンプ回路であるCP20と、LPF30と、VCO40と、分周器50と、を含む。
【0012】
PFD10は、基準クロック信号と、帰還クロック信号とを比較し、CP20を制御する指示信号UPと指示信号DNを出力する。指示信号UPは、電圧上昇を指示する信号(第1指示信号)である。指示信号DNは、電圧下降を指示する信号(第2指示信号)である。
【0013】
CP20は、指示信号UPと指示信号DNに基づいて、流入方向または流出方向の電流を出力する。
【0014】
LPF30は、CP20から出力される流入方向または流出方向の電流に基づいて電圧を発生する。この電圧が、VCO40への入力電圧となる。
【0015】
VCO40は、入力される電圧に応じた周波数の出力クロック信号を出力する。VCO40に入力される電圧信号の起伏変化が小さいほど、その出力クロック信号のジッタがより小さくなる。
【0016】
分周器50は、出力クロック信号を分周し、分周した信号を帰還クロック信号としてPFD10に入力する。
【0017】
ここで、複数の制御スイッチを備えないチャージポンプ回路の構成例について説明する。図2は、複数の制御スイッチを備えない比較例のチャージポンプ回路であるCP20bの構成例を示す図である。図2に示すように比較例のCP20bは、反転素子21と、電流ソース回路Iupと、電流シンク回路Idnと、PチャネルトランジスタTpと、NチャネルトランジスタTnと、出力ノードCPOと、を備えている。なおLPF30は、例えば抵抗素子31と、キャパシタ32とを含む。
【0018】
反転素子21は、指示信号UPを反転してPチャネルトランジスタTpに出力する。電流ソース回路Iupは、出力ノードCPOに電流を供給する電流源である。電流シンク回路Idnは、出力ノードCPOから電流を吸収する電流源である。
【0019】
PチャネルトランジスタTpは、PFD10から供給される指示信号UPによってオンオフ動作する。NチャネルトランジスタTnは、指示信号DNに応じてオンオフ動作する。これらのオンオフ動作によって、電流ソース回路Iupからの電流の流出、および、電流シンク回路Idnへの電流の流入が制御され、LPF30に対する電流の流出および流入が制御される。
【0020】
通常は、電流ソース回路Iupからの電流と、電流シンク回路Idnへの電流と、は等しい電流値になるよう設計される。指示信号UPと指示信号DNが同じタイミングおよび同じパルス幅であるなら、理想的には電流ソース回路Iupからの電流は電流シンク回路Idnに流れ、出力ノードCPOの電位は変化しない。図3は、このような理想的な状態での出力ノードCPOの端子電圧の例を示す図である。
【0021】
上記のように、図2のようなCP20bでは、出力ノードCPOで、寄生容量に起因するスパイク状のノイズが発生する。図4は、図2のようなCP20bで発生する寄生容量の例を説明するための図である。図5は、出力ノードCPOで発生するノイズの例を示す図である。
【0022】
図4に示すように、CP20bでは、以下のような寄生容量が存在する。
・電流ソーストランジスタのドレインノードの寄生容量Cp1
・PチャネルトランジスタTpのゲートと出力ノードCPOと間の寄生容量Cp2
・電流シンクトランジスタのドレインノードの寄生容量Cn1
・NチャネルトランジスタTnのゲートと出力ノードCPOと間の寄生容量Cn2
【0023】
なお、電流ソーストランジスタは、電流ソース回路Iupを構成するトランジスタを示す。図4では、バイアス電圧BIAS1が印加されるトランジスタが、電流ソーストランジスタである。また、電流シンクトランジスタは、電流シンク回路Idnを構成するトランジスタを示す。図4では、バイアス電圧BIAS2が印加されるトランジスタが、電流シンクトランジスタである。
【0024】
上記の寄生容量により、例えば以下のような影響が生じうる。
・寄生容量Cp1の影響:指示信号UPによって、PチャネルトランジスタTpがオンし、電流ソーストランジスタは上昇定電流を出力ノードCPOへ流出する。同時に、寄生容量Cp1に蓄積されていた電荷もスパイク状の放電電流として流れ、電圧変動が発生する。
・寄生容量Cp2の影響:指示信号UPの遷移に応じて、寄生容量Cp2によるカップリングが生じ、出力端子にスパイク状の電圧変動が発生する。
・寄生容量Cn1の影響:指示信号DNによって、NチャネルトランジスタTnがオンし、電流シンクトランジスタは下降定電流を出力ノードCPOから流入させる。このとき、寄生容量Cn1へも電荷がスパイク状の充電電流として蓄積される電圧変動が発生する。
・寄生容量Cn2の影響:指示信号DNの遷移に応じて、寄生容量Cp2によるカップリングが生じ、出力端子にスパイク状の電圧変動が発生する。
【0025】
これらのスパイク状の電圧変動は寄生容量の大きさに比例する。このため、各トランジスタ(PチャネルトランジスタTp、NチャネルトランジスタTn、電流ソーストランジスタ、および、電流シンクトランジスタ)それぞれのトランジスタサイズを小さくすることで、寄生容量を小さくし、ある程度、寄生容量に由来する電圧変動を小さくすることができる。
【0026】
しかし、例えば、電流ソーストランジスタのゲート幅を狭くするとことで寄生容量Cp1は小さくなるが、電流ソーストランジスタで必要となるドレイン-ソース間の電圧Vdsは大きくなる。従って、電流ソーストランジスタが所望の電流量を供給するためには、出力ノードCPOの電圧の上限が低くなるという問題が生じる。
【0027】
PチャネルトランジスタTpでも、ゲート幅を狭くすると寄生容量Cp2は小さくなるが、PチャネルトランジスタTpのオン抵抗が大きくなる。PチャネルトランジスタTpのオン抵抗が大きくなるということは、PチャネルトランジスタTpで発生する電圧降下が大きくなり、結果として、電流ソーストランジスタが所望の電流量を供給するための出力ノードCPO電圧の上限が低くなるという問題が生じる。
【0028】
電流シンクトランジスタ、および、NチャネルトランジスタTnに対しても同様の問題が生じうる。従って、各トランジスタ(PチャネルトランジスタTp、NチャネルトランジスタTn、電流ソーストランジスタ、および、電流シンクトランジスタ)のトランジスタサイズを小さくすることには限度がある。
【0029】
上記のように、スパイク状のノイズを小さくするために過電流キャンセル部を設ける技術が提案されている。寄生容量に起因するスパイク状のノイズを完全にキャンセルするには、主電流制御部と過電流キャンセル部を構成する素子の素子特性を同一にする必要がある。しかし製造ばらつきにより、素子特性を同一にすることは困難である。また、素子特性を同一にするためには素子サイズをより大きくする必要があるため、面積増大を招くと共に、寄生容量を増加させる。また、過電流キャンセル部においてキャンセル電流による消費電流増を招くことになる。
【0030】
これに対して本実施形態では、寄生容量に蓄積された電荷をキャンセルするのではなく、スパイク状のノイズの発生タイミングをずらすことで、ノイズの影響を低減する。本実施形態では、主に遅延回路を追加するだけで実現可能であり、消費電流およびレイアウト面積が大きく増加することがない。
【0031】
次に、本実施形態のチャージポンプ回路の構成例について説明する。図6は、本実施形態のチャージポンプ回路であるCP20の構成例を示す図である。図6に示すように、本実施形態のCP20は、複数の遅延回路(DELAY)101、102、103、104と、複数の電流ソース回路Iup1、Iup2、Iup3と、複数の電流シンク回路Idn1、Idn2、Idn3と、複数の制御スイッチSWp1、SWp2、SWp3と、複数の制御スイッチSWn1、SWn2、SWn3と、出力ノードCPOと、を備えている。
【0032】
なお、図6では、電流ソース回路および電流シンク回路をそれぞれ3個備え、遅延回路を4個備える例を記載しているが、各部の個数はこれに限られるものではない。
【0033】
CP20には、PFD10から、指示信号UP1および指示信号DN1が入力される。指示信号UP1は、電圧上昇を指示する信号(第1指示信号)である。指示信号DN1は、電圧下降を指示する信号(第2指示信号)である。
【0034】
遅延回路101は、指示信号UP1を遅延させた遅延信号UP2(第1遅延信号の一例)を出力する。遅延回路102は、遅延信号UP2をさらに遅延させた遅延信号UP3(第1遅延信号の一例)を出力する。遅延回路101、102は、電圧上昇を指示する指示信号(第1指示信号)を遅延させた遅延信号(第1遅延信号)を出力する遅延回路(第1遅延回路)に相当する。
【0035】
遅延回路103は、指示信号DN1を遅延させた遅延信号DN2(第2遅延信号の一例)を出力する。遅延回路104は、遅延信号DN2をさらに遅延させた遅延信号DN3(第2遅延信号の一例)を出力する。遅延回路103、104は、電圧下降を指示する指示信号(第2指示信号)を遅延させた遅延信号(第2遅延信号)を出力する遅延回路(第2遅延回路)に相当する。
【0036】
複数の電流ソース回路Iup1、Iup2、Iup3は、それぞれ制御スイッチSWp1、SWp2、SWp3に接続され、対応する制御スイッチのオンオフ動作に従い、出力ノードCPOに電流を供給する。
【0037】
複数の電流シンク回路Idn1、Idn2、Idn3は、それぞれ制御スイッチSWn1、SWn2、SWn3に接続され、対応する制御スイッチのオンオフ動作に従い、出力ノードCPOから電流を吸収する。
【0038】
制御スイッチSWp1は、指示信号UP1に従いオンオフ動作し、電流ソース回路Iup1と出力ノードCPOの接続を切り替える。制御スイッチSWp2は、遅延信号UP2に従いオンオフ動作し、電流ソース回路Iup2と出力ノードCPOの接続を切り替える。制御スイッチSWp3は、遅延信号UP3に従いオンオフ動作し、電流ソース回路Iup3と出力ノードCPOの接続を切り替える。
【0039】
制御スイッチSWp1、SWp2、SWp3は、指示信号(第1指示信号)または遅延信号(第1遅延信号)に応じて、電流ソース回路Iup1、Iup2、Iup3と出力ノードCPOの接続を切り替えるスイッチ(第1スイッチ)に相当する。
【0040】
制御スイッチSWn1は、指示信号DN1に従いオンオフ動作し、電流シンク回路Idn1と出力ノードCPOの接続を切り替える。制御スイッチSWn2は、遅延信号DN2に従いオンオフ動作し、電流シンク回路Idn2と出力ノードCPOの接続を切り替える。制御スイッチSWn3は、遅延信号DN3に従いオンオフ動作し、電流シンク回路Idn3と出力ノードCPOの接続を切り替える。
【0041】
制御スイッチSWn1、SWn2、SWn3は、指示信号(第2指示信号)または遅延信号(第2遅延信号)に応じて、電流シンク回路Idn1、Idn2、Idn3と出力ノードCPOの接続を切り替えるスイッチ(第2スイッチ)に相当する。
【0042】
このようにして指示信号UP1または指示信号DN1から遅延させた遅延信号UP2、DN2、UP3、および、DN3を用いることにより、遅延時間ごとにタイミングをずらして、それぞれに対応する制御スイッチをオンオフ動作させることができる。
【0043】
図6に示すCP20では、電流ソース回路Iup1、Iup2、Iup3、および、電流シンク回路Idn1、Idn2、Idn3それぞれは、例えば、単体で構成した場合(例えば図2の電流ソース回路Iup、電流シンク回路Idn)の1/3倍の電流能力(すなわちサイズが1/3)とすることができる。また、制御スイッチSWp1、SWp2、SWp3、SWn1、SWn2、SWn3それぞれは、例えば、単体で構成した場合(例えば図2のPチャネルトランジスタTp、NチャネルトランジスタTn)の3倍のオン抵抗(すなわちサイズが1/3)とすることができる。
【0044】
従って、寄生容量Cp11~Cp13、Cp21~Cp23、Cn11~Cn13、Cn21~Cn23の値は、それぞれ、単体で構成した場合(例えば図2の寄生容量Cp1、Cp2、Cn1、Cn2)の1/3になる。制御スイッチを3回に分けてタイミングをずらして制御することで、寄生容量に由来する電圧変動のピークを1/3に抑えることができる。
【0045】
なお、上記例は、Nを2以上の整数として、電流ソース回路および電流シンク回路のサイズを1/Nとし、制御スイッチのサイズを1/Nとし、制御スイッチの制御タイミングをN回に分割する構成に一般化することができる。各部のサイズを厳密に1/Nにする、または、制御タイミングを厳密にN回に分割する必要はなく、寄生容量に由来する電圧変動のピークを抑制することができれば、どのような比率でサイズまたはタイミングを決定してもよい。
【0046】
図7および図8は、遅延量の設定例および出力ノードの端子電圧の例を示す図である。図7に示すように、遅延量(遅延時間)は、指示信号UP1の幅よりも短くてもよい。図8に示すように、遅延量は、指示信号UP1の幅より長くてもよい。
【0047】
ただし、遅延量がノイズの幅よりも小さい場合は、ノイズを分散させることができないため、ピークが十分に抑制できない。図9は、このような場合の遅延量の設定例および出力ノードの端子電圧の例を示す図である。従って、遅延量はノイズの幅よりも大きく設定することが望ましい。
【0048】
次に、遅延回路101~104の構成例について説明する。以下では、遅延回路101を例に説明するが、他の遅延回路102~104も同様の構成とすることができる。図10は、遅延回路101の構成例を示す図である。図10に示すように、遅延回路101は、2個の反転素子1001、1002を直列に接続する構成とすることができる。この構成により、指示信号UP1に対して遅延を発生させた遅延信号UP2を出力することができる。なお、反転素子の数は2個に限られるものではなく、2以外の偶数個の反転素子を用いてもよい。
【0049】
図11は、遅延回路101の他の構成例を示す図である。図11に示すように、遅延回路101は、反転素子1201、1204と、直列に接続された抵抗素子1202およびキャパシタ1203と、を含むように構成することができる。抵抗素子1202の抵抗値Rと、キャパシタ1203の容量Cとにより定まる時定数RCに基づいて、指示信号UP1に対して遅延を発生させた遅延信号UP2を出力することができる。
【0050】
図12は、図10または図11の遅延回路101により遅延される遅延信号UP2および指示信号UP1の対応を示す図である。
【0051】
遅延回路101、102、103、104の構成は、図10および図11に示す構成に限られるものではなく、どのような構成であってもよい。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態のチャージポンプ回路を含む位相同期回路について説明する。第2の実施形態の位相同期回路の全体構成は、図1と同様であるため説明を省略する。本実施形態のチャージポンプ回路は、電流ソース回路および電流シンク回路をそれぞれ1つずつ備えている。
【0053】
図13は、第2の本実施形態のチャージポンプ回路であるCP20-2の構成例を示す図である。図13に示すように、本実施形態のCP20-2は、複数の遅延回路101、102、103、104と、1つの電流ソース回路Iupと、1つの電流シンク回路Idnと、複数の制御スイッチSWp1-2、SWp2-2、SWp3-2と、複数の制御スイッチSWn1-2、SWn2-2、SWn3-2と、出力ノードCPOと、を備えている。
【0054】
本実施形態では、電流ソース回路Iupおよび電流シンク回路Idnの個数が1であること、制御スイッチSWp1-2、SWp2-2、SWp3-2が電流ソース回路Iupに接続されること、および、制御スイッチSWn1-2、SWn2-2、SWn3-2が電流シンク回路Idnに接続されることが、第1の実施形態と異なっている。その他の構成は第1の実施形態のチャージポンプ回路CP20を示す図6と同様であるため、同一の符号を付し説明を省略する。
【0055】
電流ソース回路Iupは、制御スイッチSWp1-2、SWp2-2、SWp3-2に接続され、対応する制御スイッチのオンオフ動作に従い、出力ノードCPOに電流を供給する。
【0056】
電流シンク回路Idnは、制御スイッチSWn1-2、SWn2-2、SWn3-2に接続され、対応する制御スイッチのオンオフ動作に従い、出力ノードCPOから電流を吸収する。
【0057】
制御スイッチSWp1-2は、指示信号UP1に従いオンオフ動作し、電流ソース回路Iupと出力ノードCPOの接続を切り替える。制御スイッチSWp2-2は、遅延信号UP2に従いオンオフ動作し、電流ソース回路Iupと出力ノードCPOの接続を切り替える。制御スイッチSWp3-2は、遅延信号UP3に従いオンオフ動作し、電流ソース回路Iupと出力ノードCPOの接続を切り替える。
【0058】
制御スイッチSWn1-2は、指示信号DN1に従いオンオフ動作し、電流シンク回路Idnと出力ノードCPOの接続を切り替える。制御スイッチSWn2-2は、遅延信号DN2に従いオンオフ動作し、電流シンク回路Idnと出力ノードCPOの接続を切り替える。制御スイッチSWn3-2は、遅延信号DN3に従いオンオフ動作し、電流シンク回路Idnと出力ノードCPOの接続を切り替える。
【0059】
図13のような構成であっても、指示信号UP1または指示信号DN1から遅延させた遅延信号UP2、DN2、UP3、および、DN3を用いることにより、遅延時間ごとにタイミングをずらして、それぞれに対応する制御スイッチをオンオフ動作させることができる。
【0060】
図13に示すCP20-2では、電流ソース回路Iup、および、電流シンク回路Idnそれぞれは、単体で構成した場合(例えば図2の電流ソース回路Iup、電流シンク回路Idn)と電流能力は変わらない。一方、制御スイッチSWp1-2、SWp2-2、SWp3-2、SWn1-2、SWn2-2、SWn3-2それぞれは、例えば、単体で構成した場合(例えば図2のPチャネルトランジスタTp、NチャネルトランジスタTn)の3倍のオン抵抗(すなわちサイズが1/3)とすることができる。
【0061】
従って、寄生容量Cp21~Cp23、Cn21~Cn23の値は、それぞれ、単体で構成した場合(例えば図2の寄生容量Cp1、Cp2、Cn1、Cn2)の1/3になる。制御スイッチを3回に分けてタイミングをずらして制御することで、寄生容量に由来する電圧変動のピークを1/3に抑えることができる。ただし、電流ソース回路Iupおよび電流シンク回路Idnは分割していなため、指示信号UP1および指示信号DN1に遷移したときに、寄生容量Cp1およびCn1に由来するノイズは分割されずに発生する。
【0062】
図14は、遅延量の設定例および出力ノードの端子電圧の例を示す図である。図7など(第1の実施形態)と比較すると、指示信号UP1および指示信号DN1に対応するノイズは十分に抑制されないが、スパイク状のノイズを分散させてピークを抑えることは実現可能である。
【0063】
第1の実施形態と同様に、上記例は、Nを2以上の整数として、電流ソース回路および電流シンク回路のサイズを1/Nとし、制御スイッチのサイズを1/Nとし、制御スイッチの制御タイミングをN回に分割する構成に一般化することができる。各部のサイズを厳密に1/Nにする、または、制御タイミングを厳密にN回に分割する必要はなく、寄生容量に由来する電圧変動のピークを抑制することができれば、どのような比率でサイズまたはタイミングを決定してもよい。
【0064】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態のチャージポンプ回路を含む位相同期回路について説明する。第3の実施形態の位相同期回路の全体構成は、図1と同様であるため説明を省略する。本実施形態のチャージポンプ回路は、電流ソース回路、電流シンク回路、および、制御スイッチをトランジスタで実現する。
【0065】
図15は、第3の本実施形態のチャージポンプ回路であるCP20-3の構成例を示す図である。図15に示すように、本実施形態のCP20-3は、複数の遅延回路101、102、103、104と、トランジスタTso1、Tso2、Tso3と、トランジスタTsi1、Tsi2、Tsi3と、トランジスタTp1、Tp2、Tp3、Tn1、Tn2、Tn3と、出力ノードCPOと、を備えている。遅延回路101、102、103、104は、第1の実施形態と同様であるため、同一の符号を付し説明を省略する。
【0066】
トランジスタTso1、Tso2、Tso3は、電流ソース回路に相当するトランジスタである。トランジスタTsi1、Tsi2、Tsi3は、電流シンク回路に相当するトランジスタである。各トランジスタに対するバイアス電圧BIAS1、BIAS2は、例えば、基準電流を用いてカレントミラー回路によって生成できる。
【0067】
トランジスタTp1、Tp2、Tp3、Tn1、Tn2、Tn3は、制御スイッチに相当するトランジスタである。トランジスタTp1、Tp2、Tp3、Tn1、Tn2、Tn3は、例えば図6のCP20では、それぞれ制御スイッチSWp1、SWp2、SWp3、SWn1、SWn2、SWn3に対応する。
【0068】
例えばトランジスタTp1は、指示信号UP1に従いオンオフ動作し、電流ソース回路Iup1に対応するトランジスタTso1と出力ノードCPOの接続を切り替える。他のトランジスタTp2、Tp3、Tn1、Tn2、Tn3も同様に、それぞれ対応する制御スイッチSWp2、SWp3、SWn1、SWn2、SWn3と同様に接続を切り替える機能を有する。
【0069】
なお、電流ソース回路、電流シンク回路、および、制御スイッチをトランジスタで実現する構成は、他の実施形態に対しても適用できる。
【0070】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態のチャージポンプ回路を含む位相同期回路について説明する。第4の実施形態の位相同期回路の全体構成は、図1と同様であるため説明を省略する。本実施形態のチャージポンプ回路は、遅延量を設定可能な遅延回路を用いる。
【0071】
図16は、第4の本実施形態のチャージポンプ回路であるCP20-4の構成例を示す図である。図16に示すように、本実施形態のCP20-3は、複数の遅延回路101-4、102-4、103-4、104-4と、複数の電流ソース回路Iup1、Iup2、Iup3と、複数の電流シンク回路Idn1、Idn2、Idn3と、複数の制御スイッチSWp1、SWp2、SWp3と、複数の制御スイッチSWn1、SWn2、SWn3と、出力ノードCPOと、を備えている。遅延回路101-4、102-4、103-4、104-4以外の構成は、第1の実施形態と同様であるため、同一の符号を付し説明を省略する。
【0072】
遅延回路101-4は、設定された遅延量に従い、指示信号UP1を遅延させた遅延信号UP2(第1遅延信号の一例)を出力する。遅延回路102-4は、設定された遅延量に従い、遅延信号UP2をさらに遅延させた遅延信号UP3(第1遅延信号の一例)を出力する。
【0073】
遅延回路103-4は、設定された遅延量に従い、指示信号DN1を遅延させた遅延信号DN2(第2遅延信号の一例)を出力する。遅延回路104-4は、設定された遅延量に従い、遅延信号DN2をさらに遅延させた遅延信号DN3(第2遅延信号の一例)を出力する。
【0074】
上記のように、遅延量がノイズの幅よりも小さい場合、ノイズを分散させることができないため、ピークを抑制できない。そのため遅延量は、ノイズの幅よりも大きくする必要がある。本実施形態では、遅延量を設定可能とすることで、遅延量がスパイク幅以上になるように設定することができる。
【0075】
図17は、遅延量を設定可能な遅延回路の構成例を示す図である。図17の例では、遅延回路は、遅延を発生させる反転素子の個数が相互に異なる複数の経路のいずれかを選択するセレクタ1801を含む。いずれの遅延量とするかを示す情報SELをセレクタ1801に入力することにより、所望の遅延量を設定可能となる。図17では、3つの遅延量のいずれかを選択する例が示されているが、選択可能な遅延量の個数は3に限られるものではない。
【0076】
図18は、遅延量を設定可能な遅延回路の他の構成例を示す図である。図18の例では、遅延回路は、反転素子1901、1904と、可変抵抗1902と、可変キャパシタ1903と、を含む。可変抵抗1902の抵抗値Rと、可変キャパシタ1903の容量Cとにより定まる時定数RCを可変にすることで、所望の遅延量を設定することができる。
【0077】
遅延量は、複数の遅延回路101-4、102-4、103-4、104-4に対して共通の値を設定してもよいし、一部または全部に対して個別の値を設定できるように構成してもよい。なお、遅延回路の遅延量を設定可能とする構成は、第1の実施形態以外の実施形態に対しても適用できる。
【符号の説明】
【0078】
10 位相周波数比較器(PFD)
20、20-2、20-3、20-4 チャージポンプ回路(CP)
30 ローパスフィルタ(LPF)
40 電圧制御発振器(VCO)
50 分周器
101~104、101-4~104-4 遅延回路
Iup1、Iup2、Iup3 電流ソース回路
Idn1、Idn2、Idn3 電流シンク回路
SWp1、SWp2、SWp3、SWn1、SWn2、SWn3 制御スイッチ
CPO 出力ノード
【先行技術文献】
【特許文献】
【0079】
【文献】特開平09-266443号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18