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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20220125BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220125BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H01B7/00 305
B60R16/02 620Z
H02G3/30
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018176319
(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公開番号】P2020047517
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】二ツ森 敬浩
【審査官】和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-091731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
B60R 16/02
H02G 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のケーブルと、
前記複数のケーブルを一括して被覆するシースと、
前記複数のケーブルが導出される前記シースの端部の外周を覆って前記シースを保持するシース保持部、及び前記シースから導出された前記複数のケーブルを保持するケーブル保持部を一体に有する樹脂部材と、
前記樹脂部材を保持する樹脂部材保持部、及び固定対象に固定される固定部を有する固定部材と、を備え、
前記複数のケーブルのうち少なくとも1本のケーブルは、前記ケーブル保持部の内部で屈曲されて他のケーブルとは異なる方向に向かって前記樹脂部材から導出されており、
前記樹脂部材保持部は、前記ケーブル保持部の少なくとも一部を保持している、
ワイヤハーネス。
【請求項2】
前記樹脂部材保持部は、前記少なくとも1本のケーブルが屈曲された部分の少なくとも一部における前記ケーブル保持部を保持している、
請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記樹脂部材保持部は、前記ケーブル保持部の少なくとも一部、及び前記シース保持部の少なくとも一部を跨いで保持している、
請求項1又は2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記樹脂部材保持部は、前記少なくとも1本のケーブルが屈曲された部分の少なくとも一部を囲むように巻き締められている巻き締め部である、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記樹脂部材は、前記少なくとも1本のケーブルを導出させる導出部が、前記巻き締め部が巻き締められた外周面から突出して設けられ、
前記固定部材の前記樹脂部材に対する位置ずれが前記導出部によって規制されている、
請求項4に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記樹脂部材は、前記巻き締め部が巻き締められた外周面から突出した係止突起が前記導出部から離間して設けられ、
前記巻き締め部は、前記係止突起と前記導出部との間に配置されている、
請求項5に記載のワイヤハーネス。
【請求項7】
前記固定部材は、一対の前記巻き締め部を有し、当該一対の前記巻き締め部の間に前記導出部が挟まれている、
請求項5に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車のABS(アンチロックブレーキシステム)用のセンサケーブルと、電動式のパーキングブレーキを動作させるパーキングブレーキ用ケーブルとを共通のシースで被覆して一体化したワイヤハーネスには、シースの端部を保持すると共に同端部から導出されたABS用のセンサケーブル及びパーキングブレーキ用ケーブルを保持し、両ケーブルを異なる方向にガイドする樹脂部材を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のワイヤハーネスは、ウレタン成形された樹脂部材としての成形部においてシースを保持する筒状の部分がブラケット取付部として形成され、このブラケット取付部の外周にブラケットが加締め固定されている。ブラケットには、貫通孔が形成されており、この貫通孔に挿通されるボルトによって成形部が車両側に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6213447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のワイヤハーネスのように、複数のケーブルが異なる方向にガイドされる場合には、シースから導出されたケーブルを保持するケーブル保持部が大きくなる。これに加え、ブラケット取付部を形成するためにシースを保持する部分を長くすると、成形部の大きさが全体としてさらに大きくなり、車両への搭載性が低下してしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、樹脂部材によってシースから導出された複数のケーブルを異なる方向にガイドしながらも、樹脂部材に固定部材を取り付け可能で、かつ樹脂部材を小型化することが可能なワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数のケーブルと、前記複数のケーブルを一括して被覆するシースと、前記複数のケーブルが導出される前記シースの端部の外周を覆って前記シースを保持するシース保持部、及び前記シースから導出された前記複数のケーブルを保持するケーブル保持部を一体に有する樹脂部材と、前記樹脂部材を保持する樹脂部材保持部、及び固定対象に固定される固定部を有する固定部材と、を備え、前記複数のケーブルのうち少なくとも1本のケーブルは、前記ケーブル保持部の内部で屈曲されて他のケーブルとは異なる方向に向かって前記樹脂部材から導出されており、前記樹脂部材保持部は、前記ケーブル保持部の少なくとも一部を保持している、ワイヤハーネスを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るワイヤハーネスによれば、樹脂部材によってシースから導出された複数のケーブルを異なる方向にガイドしながらも、樹脂部材に固定部材を取り付け可能で、かつ樹脂部材を小型化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るワイヤハーネスを示す側面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3】(a)~(c)は、ワイヤハーネスの製造過程を示す斜視図である。
図4】(a)及び(b)は、ブラケットを樹脂部材に加締め固定する工程を示す説明図である。
図5】本発明の第2の実施の形態に係るワイヤハーネスを示す断面図である。
図6】(a)~(c)は、ワイヤハーネスの製造過程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るワイヤハーネスを示す側面図である。図2は、図1のA-A線断面図である。図3(a)~(c)は、ワイヤハーネスの製造過程を示す斜視図である。
【0011】
ワイヤハーネス1は、シース2と、シース2に収容された第1のケーブル3及び第2のケーブル4と、モールド成形された樹脂部材5と、固定部材としてのブラケット6とを有している。図3(a)は、シース2ならびに第1及び第2のケーブル3,4のみを示している。図3(b)は、樹脂部材5が成形された状態を示している。図3(c)は、樹脂部材5にブラケット6が取り付けられた状態を示している。なお、図1では、樹脂部材5の内部のシース2、第1のケーブル3、及び第2のケーブル4を破線で示している。
【0012】
このワイヤハーネス1は、車両に搭載され、ブラケット6の貫通孔620に挿通される図略のボルトやリベット等の固定具によってブラケット6が車体側に固定される。第1のケーブル3は、例えばABS(アンチロックブレーキシステム)用のセンサケーブルであり、第2のケーブル4は、例えば電動式のパーキングブレーキに動作電源を供給するためのパーキングブレーキ用ケーブルである。また、第1のケーブル3又は第2のケーブル4を、電子制御式のダンパを制御するためや電子制御式のダンパに動作電源を供給するためのダンパケーブルとしてもよい。あるいは、ダンパケーブルを第3のケーブルとして追加し、シース2に収容してもよい。
【0013】
シース2は、外形が断面円形状の筒状であり、第1及び第2のケーブル3,4を一括して被覆している。シース2の内部において、シース2の内面と第1及び第2のケーブル3,4との間には、繊維状の介在21が配置されている。シース2は、一方の端部が樹脂部材5に保持され、他方の端部は図略の制御装置のケースに保持されている。シース2は、本実施の形態において、ウレタンからなる。
【0014】
第1のケーブル3は、一対の絶縁電線31,31と、一対の絶縁電線31,31を覆うウレタンからなる外皮32とを有している。それぞれの絶縁電線31は、例えば銅からなる複数の素線を撚り合わせた導体線311、及び導体線311を被覆するポリエチレンからなる絶縁体312からなる。
【0015】
第2のケーブル4は、一対の絶縁電線41,41からなる。それぞれの絶縁電線41は、例えば銅からなる複数の素線を撚り合わせた導体線411、及び導体線411を被覆するポリエチレンからなる絶縁体412からなる。第2のケーブル4の絶縁電線41は、第1のケーブル3の絶縁電線31よりも太く形成されている。また、第2のケーブル4の絶縁電線41は、第1のケーブル3よりも細く形成されている。
【0016】
樹脂部材5は、第1及び第2のケーブル3,4が導出されるシース2の端部の外周を覆ってシース2を保持するシース保持部51、及びシース2から導出された第1及び第2のケーブル3,4を保持するケーブル保持部52を一体に有している。樹脂部材5及びシース2は、同種の樹脂材料からなり、樹脂部材5のモールド成形時の熱によりシース2の表面が樹脂部材5と溶け合うことにより、保持強度及び防水性が高められている。この樹脂材料としては、例えばウレタンを好適に用いることができる。また、上述の通り、第1のケーブル3の外皮32は、ウレタンからなるため、樹脂部材5のモールド成形時の熱により外皮32の表面が樹脂部材5と溶け合う。これにより、外皮32と樹脂部材5との間から水が浸入することが抑制され、外皮32と樹脂部材5との間における防水性を高めることが可能である。
【0017】
ブラケット6は、例えばアルミニウム等の板状の金属からなる固定部材(固定金具)である。ブラケット6は、樹脂部材5の外周面5aに巻き締められた巻き締め部61、及び車体側の固定対象に固定される固定部62を一体に有している。固定部62には、貫通孔620が板厚方向に貫通して形成されている。巻き締め部61は、樹脂部材5を保持する樹脂部材保持部として機能する。
【0018】
シース2は、樹脂部材5の内部において直線状にシース保持部51に保持されている。第1のケーブル3は、シース保持部51に保持されたシース2と平行かつ直線状にケーブル保持部52に保持されている。第2のケーブル4は、ケーブル保持部52の内部で屈曲されて第1のケーブル3とは異なる方向(側面視において第1のケーブル3と交差する方向)に向かって樹脂部材5から導出されている。以下、シース保持部51に保持されたシース2の中心軸の方向を軸方向といい、この軸方向に対して垂直な方向を径方向という。なお、本実施の形態においては、複数のケーブルのうち、第1のケーブル3よりも細い(第2のケーブル4の)絶縁電線41がケーブル保持部52の内部で屈曲されているため、屈曲される方のケーブルの曲げ半径を小さくすることができる。これにより、樹脂部材5の(特に、ワイヤーネス1の長手方向における)小型化が可能となる。
【0019】
樹脂部材5は、図1に示すように径方向から見た場合に、シース2の外周側にあたる部分がシース保持部51として、またシース2の開口端部2aから先の部分がケーブル保持部52として、それぞれ形成されている。シース保持部51は、円筒状の本体部510と、本体部510から径方向に突出した環状のフランジ部511とを有している。フランジ部511は、ブラケット6の巻き締め部61が巻き締められた樹脂部材5の外周面5aから径方向外方に突出して設けられている。
【0020】
ケーブル保持部52は、シース保持部51の本体部510と同径の円筒状の本体部520と、第1のケーブル3を導出させる第1の導出部521と、第2のケーブル4を導出させる第2の導出部522とを有している。第1の導出部521は、本体部520の軸方向端面520bから軸方向に突出している。第2の導出部522は、本体部520の外周面520aから径方向に突出している。第1の導出部521及び第2の導出部522は、本体部520よりも小径の円筒状であり、第1及び第2のケーブル3,4がそれぞれの先端面から導出されている。
【0021】
ブラケット6の巻き締め部61は、ケーブル保持部52の少なくとも一部、及びシース保持部51の少なくとも一部を跨いで保持している。つまり、ブラケット6の巻き締め部61が巻き締められた樹脂部材5の外周面5aは、シース保持部51の本体部510の外周面510a及びケーブル保持部52の本体部520の外周面520aに跨っている。すなわち、巻き締め部61は、一部がケーブル保持部52の本体部520の外周面520aに接触して巻き締められ、残部がシース保持部51の本体部510の外周面510aに接触して巻き締められている。なお、巻き締め部61の全体がケーブル保持部52の本体部520の外周面520aに巻き締められていてもよい。つまり、巻き締め部61は、ケーブル保持部52の少なくとも一部の外周面に巻き締められていればよい。
【0022】
また、本実施の形態では、ブラケット6の巻き締め部61は、第2のケーブル4が屈曲された屈曲部4aの少なくとも一部におけるケーブル保持部52を保持している。ブラケット6の巻き締め部61が、第2のケーブル4が屈曲された屈曲部4aの少なくとも一部を囲むように巻き締められている。換言すれば、第2のケーブル4は、巻き締め部61が巻き締められた部分の内側で屈曲されている。
【0023】
第2の導出部522は、ワイヤハーネス1の長手方向においてシース保持部51の本体部510から離間した位置に、巻き締め部61が巻き締められた樹脂部材5の外周面5aから径方向外方に突出して設けられている。巻き締め部61は、第2の導出部522とシース保持部51のフランジ部511との間に配置されている。ブラケット6の樹脂部材5に対する軸方向の位置ずれは、第2の導出部522及びフランジ部511によって規制されている。フランジ部511は、第2の導出部522から軸方向に離間して設けられており、巻き締め部61を係止する係止突起として機能する。ブラケット6の樹脂部材5に対する軸方向の位置ずれをより抑制するという観点からいえば、巻き締め部61は、図1に示すように、第2の導出部522及びフランジ部511と接触していることが好ましい。
【0024】
図4(a)及び(b)は、ブラケット6を樹脂部材5に加締め固定する工程を示す説明図である。ブラケット6は、平板状に形成された固定部62を作業台71の上面71aに載置し、上方から作業台71に向かって移動する加締め治具72によって巻き締め部61が加締められる。
【0025】
図4(a)は、巻き締め部61が加締められる前の状態を示している。この状態では、固定部62に対し、巻き締め部61となる平板状の板部60が直角に形成されている。加締め治具72は、その下面72aが円弧状に湾曲しており、板部60が下面72aに沿って湾曲して加締められて巻き締め部61となる。図4(b)は、加締め後の状態を示している。巻き締め部61は、軸方向視において、樹脂部材5の外周面5aを半周以上にわたって囲っている。
【0026】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
以上説明した本実施の形態によれば、ブラケット6の巻き締め部61が樹脂部材5のケーブル保持部52の少なくとも一部の外周面に巻き締められているので、巻き締め部61をシース保持部51の外周面のみに巻き締める場合に比較して、樹脂部材5を小型化しながらもブラケット6を樹脂部材5に取り付けることができる。つまり、本実施の形態では、第2のケーブル4が樹脂部材5の内部で屈曲されているので、仮に第1及び第2のケーブル3,4が共にシース2と平行な直線状である場合に比較して、少なくとも屈曲部4aの軸方向長さだけ、樹脂部材5におけるケーブル保持部52の軸方向の必要長さが長くなる。そして、このケーブル保持部52の少なくとも一部の外周面に巻き締め部61を巻き締めることで巻き締め部61の幅を確保することができ、樹脂部材5の大型化を抑制しながら、ブラケット6を適切な強度をもって取り付けることが可能となる。
【0027】
また、本実施の形態では、ブラケット6の巻き締め部61が、第2のケーブル4が屈曲された屈曲部4aの少なくとも一部を囲むように巻き締められているので、屈曲部4aによって必要長さが長くなるケーブル保持部52の軸長を有効に利用することができ、樹脂部材5の小型化に寄与することができる。
【0028】
また、本実施の形態では、シース保持部51の本体部510の外周面510a及びケーブル保持部52の本体部520の外周面520aに跨ってブラケット6の巻き締め部61が巻き締められているので、巻き締め部61の幅を十分に確保することが可能となる。
【0029】
またさらに、本実施の形態では、第2の導出部522及びフランジ部511によってブラケット6の軸方向の位置ずれが規制されているので、例えば車両の走行に伴う振動をワイヤハーネス1が受けても、樹脂部材5がブラケット6から脱落してしまうことを防ぐことができる。
【0030】
なお、複数のケーブルが異なる方向にガイドされる場合には、ケーブル保持部が大きくなる。この場合、シース保持部にのみブラケットを設けワイヤハーネスを車体に固定すると、車両の振動等に伴い、ケーブル保持部がシース保持部に対して振動し、ケーブル保持部とシース保持部との境目において亀裂が発生する等の損傷が生じる可能性がある。しかし、本実施の形態では、ブラケット6の巻き締め部61が樹脂部材5のケーブル保持部52の少なくとも一部を保持しているので、シース保持部51に対するケーブル保持部52の振動を抑制し、上記損傷を抑制することが可能となる。
【0031】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、図5及び図6を参照して説明する。
【0032】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係るワイヤハーネス1Aを示す断面図である。図6(a)~(c)は、ワイヤハーネス1Aの製造過程を示す斜視図である。図5及び図6において、第1の実施の形態において説明したものと共通する構成要素については、第1の実施の形態で用いた符号と同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0033】
本実施の形態に係るワイヤハーネス1Aは、第1の実施の形態に係るワイヤハーネス1と同様、シース2と、シース2に収容された第1のケーブル3及び第2のケーブル4と、モールド成形された樹脂部材5と、固定部材としてのブラケット6とを有しているが、樹脂部材5の第2の導出部522の位置、及びブラケット6が一対の巻き締め部611,612を有している構成が第1の実施の形態とは異なる。
【0034】
すなわち、第1の実施の形態では、第2の導出部522がケーブル保持部52におけるシース保持部51とは反対側の端部に設けられていたが、本実施の形態では、第1の実施の形態よりもケーブル保持部52に寄った位置に第2の導出部522が設けられている。第2の導出部522は、ブラケット6の一対の巻き締め部611,612の間に挟まれている。そして、この構成により、ブラケット6の樹脂部材5に対する軸方向の位置ずれが規制されている。ブラケット6の樹脂部材5に対する軸方向の位置ずれをより抑制するという観点からいえば、一対の巻き締め部611,612は、図5に示すように、第2の導出部522と接触していることが好ましい。この構成により、本実施の形態においては、第1の実施の形態におけるフランジ部511を省略することが可能である。
【0035】
また、一対の巻き締め部611,612のうち、シース保持部51側の一方の巻き締め部611は、第2のケーブル4が屈曲された屈曲部4aの少なくとも一部を囲むようにケーブル保持部52の外周面520aに接触して巻き絞められている。
【0036】
この第2の実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の作用及び効果が得られる。また、シース保持部51にフランジ部511を設ける必要がないので、さらに樹脂部材5を小型化することができる。
【0037】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0038】
[1]複数のケーブル(第1及び第2のケーブル3,4)と、前記複数のケーブル(3,4)を一括して被覆するシース(2)と、前記複数のケーブル(3,4)が導出される前記シース(2)の端部の外周を覆って前記シース(2)を保持するシース保持部(51)、及び前記シース(2)から導出された前記複数のケーブル(3,4)を保持するケーブル保持部(52)を一体に有する樹脂部材(5)と、前記樹脂部材(5)を保持する樹脂部材保持部(巻き締め部61/611,612)、及び固定対象に固定される固定部(62)を有する固定部材(ブラケット6)と、を備え、前記複数のケーブル(3,4)のうち少なくとも1本のケーブル(第2のケーブル4)は、前記ケーブル保持部(52)の内部で屈曲されて他のケーブル(第1のケーブル3)とは異なる方向に向かって前記樹脂部材(5)から導出されており、前記樹脂部材保持部(61/611,612)は、前記ケーブル保持部(52)の少なくとも一部を保持している、ワイヤハーネス(1/1A)。
【0039】
[2]前記樹脂部材保持部(61/611)は、前記少なくとも1本のケーブル(4)が屈曲された部分の少なくとも一部における前記ケーブル保持部(52)を保持している、ワイヤハーネス(1/1A)。
【0040】
[3]前記樹脂部材保持部(61)は、前記ケーブル保持部(52)の少なくとも一部、及び前記シース保持部(51)の少なくとも一部を跨いで保持している、上記[1]又は[2]に記載のワイヤハーネス(1)。
【0041】
[4]前記樹脂部材保持部(61/611)は、前記少なくとも1本のケーブル(4)が屈曲された部分の少なくとも一部を囲むように巻き締められている巻き締め部である、上記[1]乃至[3]の何れか1つに記載のワイヤハーネス(1/1A)。
【0042】
[5]前記樹脂部材(5)は、前記少なくとも1本のケーブル(4)を導出させる導出部(第2の導出部522)が、前記巻き締め部(61/611,612)が巻き締められた外周面から突出して設けられ、前記固定部材(6)の前記樹脂部材(5)に対する位置ずれが前記導出部(522)によって規制されている、上記[4]に記載のワイヤハーネス(1/1A)。
【0043】
[6]前記樹脂部材(5)は、前記巻き締め部(61)が巻き締められた外周面(5a)から突出した係止突起(フランジ部511)が前記導出部(522)から離間して設けられ、前記巻き締め部(61)は、前記係止突起(511)と前記導出部(522)との間に配置されている、上記[5]に記載のワイヤハーネス(1)。
【0044】
[7]前記固定部材(6)は、一対の前記巻き締め部(611,612)を有し、当該一対の前記巻き締め部(611,612)の間に前記導出部(522)が挟まれている、上記[5]に記載のワイヤハーネス(1)。
【0045】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0046】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、第1のケーブル3が直線状にケーブル保持部52に保持された場合について説明したが、第1のケーブル3がケーブル保持部52内で第2のケーブル4と異なる方向に屈曲されていてもよい。また、ワイヤハーネス1,1Aの用途についても特に限定はない。
【符号の説明】
【0047】
1,1A…ワイヤハーネス
2…シース
3…第1のケーブル
4…第2のケーブル
5…樹脂部材
51…シース保持部
511…フランジ部(係止突起)
52…ケーブル保持部
522…第2の導出部
5a…外周面
6…ブラケット(固定部材)
61…巻き締め部(樹脂部材保持部)
62…固定部
611,612…巻き締め部(樹脂部材保持部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6