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特許7014336中空糸脱気モジュール、インクジェットプリンタ、及び液体の脱気方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】中空糸脱気モジュール、インクジェットプリンタ、及び液体の脱気方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/02 20060101AFI20220125BHJP
   B01D 61/00 20060101ALI20220125BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20220125BHJP
   B41J 2/19 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
B01D63/02
B01D61/00
B01D63/00 510
B01D63/00 500
B41J2/19
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021527652
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(86)【国際出願番号】 JP2020024651
(87)【国際公開番号】W WO2020262398
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2019121277
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 成人
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 洋平
(72)【発明者】
【氏名】大井 和美
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-120489(JP,A)
【文献】特開平06-226061(JP,A)
【文献】特開平06-226057(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003840(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/003774(WO,A1)
【文献】特開2019-13921(JP,A)
【文献】特開2012-171191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-71/82
B01D 53/22
C02F 1/44
B41J 2/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中空糸膜が円筒状に束ねられた中空糸膜束と、
前記中空糸膜束を収容し、前記複数の中空糸膜の間の空間に連通された液体供給口及び液体排出口と、前記複数の中空糸膜のそれぞれの内部空間に連通された吸気口と、が形成されたハウジングと、
前記中空糸膜束と前記ハウジングとの間に配置され、複数の開口が形成された外側支持体と、
前記中空糸膜束の一方側膜束端部及び前記外側支持体の一方側支持体端部を前記ハウジングに固定する第一封止部と、
前記中空糸膜束の他方側膜束端部及び前記外側支持体の他方側支持体端部を前記ハウジングに固定する第二封止部と、を備え
前記第一封止部は、前記一方側膜束端部を通り前記ハウジングの軸線方向と直交する断面において、前記ハウジング内の、前記中空糸膜束の中空部以外の全域に充填されており、
前記第二封止部は、前記他方側膜束端部を通り前記ハウジングの軸線方向と直交する断面において、前記ハウジング内の、前記複数の中空糸膜のそれぞれの内部空間以外の全域に充填されている、
中空糸脱気モジュール。
【請求項2】
前記外側支持体は、円筒状である、
請求項1に記載の中空糸脱気モジュール。
【請求項3】
前記外側支持体は、網状である、
請求項1又は2に記載の中空糸脱気モジュール。
【請求項4】
前記外側支持体は、前記第一封止部の前記第二封止部とは反対側の端面と前記第二封止部の前記第一封止部とは反対側の端面との間に配置されている、
請求項1~3の何れか一項に記載の中空糸脱気モジュール。
【請求項5】
前記外側支持体の前記第二封止部側の先端は、前記第二封止部に埋設されている、
請求項1~4の何れか一項に記載の中空糸脱気モジュール。
【請求項6】
前記外側支持体の前記第一封止部側の先端は、前記第一封止部から露出している、
請求項1~5の何れか一項に記載の中空糸脱気モジュール。
【請求項7】
前記複数の中空糸膜が膨潤していない状態において、前記外側支持体は、前記中空糸膜束から離間している、
請求項1~の何れか一項に記載の中空糸脱気モジュール。
【請求項8】
前記外側支持体の前記複数の開口は、任意の第一開口と、前記第一開口と隣り合う第二開口と、を含み、
前記外側支持体には、前記外側支持体と前記外側支持体の外接円周面との間で前記第一開口と前記第二開口とを連通させる外側連通部が形成されている、
請求項1~の何れか一項に記載の中空糸脱気モジュール。
【請求項9】
前記外側支持体の前記複数の開口は、任意の第一開口と、前記第一開口と隣り合う第二開口と、を含み、
前記外側支持体には、前記外側支持体と前記外側支持体の内接円周面との間で前記第一開口と前記第二開口とを連通させる内側連通部が形成されている、
請求項1~の何れか一項に記載の中空糸脱気モジュール。
【請求項10】
前記液体は、炭化水素溶媒を含有する、
請求項1~の何れか一項に記載の中空糸脱気モジュール。
【請求項11】
前記液体が、グリコール類、グリコールモノアルキルエーテル類、グリコールジアルキルエーテル類、グリコールモノアセテート類、グリコールジアセテート類、アルコール類、ケトン類、酢酸エステル類、乳酸エステル類、飽和炭化水素類、不飽和炭化水素類、環状飽和炭化水素類、環状不飽和炭化水素類、芳香族炭化水素類、テルペン類、エーテル類、環状イミド、3-アルキル-2-オキサゾリジノン、N-アルキルピロリドン、ラクトンおよび含窒素溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である、
請求項1~の何れか一項に記載の中空糸脱気モジュール。
【請求項12】
前記液体が、UVインクまたはセラミックインクである、
請求項1~11の何れか一項に記載の中空糸脱気モジュール。
【請求項13】
前記中空糸膜束の内周面に当接される内側支持体を更に備える、
請求項1~12の何れか一項に記載の中空糸脱気モジュール。
【請求項14】
前記液体排出口は、前記ハウジングの前記第一封止部と前記第二封止部との間に形成されており、
前記外側支持体は、前記液体排出口に対応する位置に前記開口を有する、
請求項1~13の何れか一項に記載の中空糸脱気モジュール。
【請求項15】
インク貯留部に貯留されたインクがインク流路を通ってインクジェットヘッドに供給されるインクジェットプリンタであって、
請求項1~14の何れか一項に記載の中空糸脱気モジュールが前記インク流路に取り付けられている、
インクジェットプリンタ。
【請求項16】
請求項1~14の何れか一項に記載の中空糸脱気モジュールにおいて、前記液体供給口に液体を供給することで前記複数の中空糸膜の間の空間に液体を供給し、前記吸気口から吸気することで前記複数の中空糸膜の間の空間に供給された前記液体を脱気し、前記複数の中空糸膜の間の前記空間で脱気された前記液体を前記液体排出口から排出する、
液体の脱気方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を脱気する中空糸脱気モジュール、当該中空糸脱気モジュールを備えたインクジェットプリンタ、液体の脱気方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インクジェットプリンタのインク流路に中空糸膜を用いた中空糸脱気モジュールを取り付け、連続的にインクを脱気することが開示されている。特許文献1に記載された中空糸脱気モジュールは、外部灌流型の中空糸脱気モジュールであり、複数本の中空糸膜を束ねた中空糸膜束が筒体に収納されている。そして、中空糸膜の外側にインクを供給するとともに中空糸膜の内部空間を減圧することでインクを脱気し、筒体の側壁に形成された排出口から、脱気されたインクを排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2007/063720号
【文献】特開2016-120489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、特許文献2に開示されたように、膨潤した中空糸膜が中空糸膜束の中空部に入り込むことにより中空糸脱気モジュールの圧力損失が急激に上昇するとの知見を見出し、当該知見に基づいて中空糸膜束の内周面に支持体が当接された中空糸脱気モジュールを発明した。
【0005】
その後、本発明者らは、更に検討したところ、膨潤した中空糸膜が中空糸膜束の中空部に入り込むだけでなく、膨潤した中空糸膜が中空糸膜束を収容するハウジングの内周面に圧接されることによっても、中空糸脱気モジュールの圧力損失が急激に上昇する場合があるとの知見を見出した。例えば、膨潤した中空糸膜がハウジングの内周面に圧接されることで、ハウジングの液体排出口が中空糸膜により塞がれ、これにより中空糸脱気モジュールの圧力損失が急激に上昇することがある。また、膨潤した中空糸膜がハウジングの内周面に圧接されることで、中空糸膜束とハウジングとの間の隙間が無くなり、これにより中空糸脱気モジュールの圧力損失が急激に上昇することがある。
【0006】
そこで、本発明の一側面は、圧力損失の急激な上昇を抑制できる中空糸脱気モジュール、インクジェットプリンタ、及び液体の脱気方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る中空糸脱気モジュールは、複数本の中空糸膜が円筒状に束ねられた中空糸膜束と、中空糸膜束を収容し、複数の中空糸膜の間の空間に連通された液体供給口及び液体排出口と、複数の中空糸膜のそれぞれの内部空間に連通された吸気口と、が形成されたハウジングと、中空糸膜束とハウジングとの間に配置され、複数の開口が形成された外側支持体と、を備える。
【0008】
この中空糸脱気モジュールでは、中空糸膜束とハウジングとの間に配置される外側支持体を備えるため、膨潤した複数の中空糸膜が外側支持体により中空糸膜束の半径方向外側から支持される。このため、複数の中空糸膜が液体により膨潤しても、複数の中空糸膜がハウジングの内周面に圧接されるのを抑制することができる。これにより、例えば、ハウジングの液体排出口が複数の中空糸膜により塞がれることによる、中空糸脱気モジュールの圧力損失の急激な上昇を抑制することができる。また、中空糸膜束とハウジングとの間の隙間が無くなることによる、中空糸脱気モジュールの圧力損失の急激な上昇を抑制することができる。その結果、長期にわたって液体を脱気することができる。
【0009】
外側支持体は、円筒状であってもよい。このように、外側支持体が円筒状である場合は、中空糸膜束の半径方向外側から膨潤した複数の中空糸膜を適切に支持することができる。
【0010】
外側支持体は、網状であってもよい。このように、外側支持体が網状である場合は、膨潤した複数の中空糸膜を中空糸膜束の半径方向外側から支持しつつ、外側支持体を通過する液体の圧力損失が上昇するのを抑制することができる。これにより、中空糸脱気モジュールの初期圧が上昇するのを抑制することができる。
【0011】
中空糸膜束の一方側膜束端部及び外側支持体の一方側支持体端部をハウジングに固定する第一封止部と、中空糸膜束の他方側膜束端部及び外側支持体の他方側支持体端部をハウジングに固定する第二封止部と、を更に備え、第一封止部は、一方側膜束端部を通りハウジングの軸線方向と直交する断面において、ハウジング内の、中空糸膜束の中空部以外の全域に充填されており、第二封止部は、他方側膜束端部を通りハウジングの軸線方向と直交する断面において、ハウジング内の、複数の中空糸膜のそれぞれの内部空間以外の全域に充填されていてもよい。このように、第一封止部及び第二封止部が充填されている場合は、複数の中空糸膜により、ハウジング内の領域が、複数の中空糸膜の間の空間を含む第一領域と複数の中空糸膜のそれぞれの内部空間を含む第二領域とに分けられる。これにより、液体供給口から供給される液体を、中空糸膜束の中空部から複数の中空糸膜の間の空間に供給し、その後、液体排出口から排出することができる。また、吸気口から複数の中空糸膜のそれぞれの内部空間を吸気することができるとともに、液体供給口から供給される液体が吸気口に排出されるのを防止することができる。
【0012】
外側支持体は、第一封止部の第二封止部とは反対側の端面と第二封止部の第一封止部とは反対側の端面との間に配置されていてもよい。このように、外側支持体が第一封止部の第二封止部とは反対側の端面と第二封止部の第一封止部とは反対側の端面との間に配置されている場合は、中空糸脱気モジュールを作製しやすくなるため、中空糸脱気モジュールの製造コストを抑制することができる。
【0013】
外側支持体の第二封止部側の先端は、第二封止部に埋設されていてもよい。このように、外側支持体の第二封止部側の先端が第二封止部に埋設されている場合は、外側支持体と第二封止部との界面が、第二封止部の第一封止部とは反対側の端面に露出しなくなる。これにより、外側支持体と第二封止部との界面に液体が入り込んだとしても、当該液体が第二封止部から漏出するのを防止することができる。また、吸気口に吸引ポンプを接続した場合に、当該液体が吸気口から排出されることによる吸引ポンプの破損を防止することができる。
【0014】
外側支持体の第一封止部側の先端は、第一封止部から露出していてもよい。このように、外側支持体の第一封止部側の先端が第一封止部から露出している場合は、中空糸脱気モジュールを作製しやすくなるため、中空糸脱気モジュールの製造コストを抑制することができる。
【0015】
複数の中空糸膜が膨潤していない状態において、外側支持体は、中空糸膜束から離間していてもよい。このように、複数の中空糸膜が膨潤していない状態において外側支持体が中空糸膜束から離間している場合は、複数の中空糸膜の膨潤を許容しつつ、膨潤した複数の中空糸膜がハウジングの内周面に圧接されるのを抑制することができる。これにより、複数の中空糸膜が膨潤した際に切れるのを抑制することができる。
【0016】
外側支持体の複数の開口は、任意の第一開口と、第一開口と隣り合う第二開口と、を含み、外側支持体には、外側支持体と外側支持体の外接円周面との間で第一開口と第二開口とを連通させる外側連通部が形成されていてもよい。このように、外側支持体に外側連通部が形成されている場合は、仮に、複数の中空糸膜が膨潤すること等により外側支持体が伸び、これにより外側支持体がハウジングの内周面に圧接されたとしても、外側支持体とハウジングの内周面との間に液体が流通する流路を残すことができる。これにより、中空糸脱気モジュールの圧力損失の急激な上昇を抑制することができる。
【0017】
外側支持体の複数の開口は、任意の第一開口と、第一開口と隣り合う第二開口と、を含み、外側支持体には、外側支持体と外側支持体の内接円周面との間で第一開口と第二開口とを連通させる内側連通部が形成されていてもよい。このように、外側支持体に内側連通部が形成されている場合は、仮に、複数の中空糸膜が膨潤すること等により外側支持体が伸び、これにより外側支持体がハウジングの内周面に圧接されたとしても、複数の中空糸膜と外側支持体との間に液体が流通する流路を残すことができる。これにより、中空糸脱気モジュールの圧力損失の急激な上昇を抑制することができる。
【0018】
液体は、炭化水素溶媒を含有してもよい。このように、液体が炭化水素溶媒を含有する場合は、複数の中空糸膜が膨潤しやすくなるが、外側支持体を備えることで、中空糸脱気モジュールの圧力損失の急激な上昇を抑制することができる。
【0019】
液体が、グリコール類、グリコールモノアルキルエーテル類、グリコールジアルキルエーテル類、グリコールモノアセテート類、グリコールジアセテート類、アルコール類、ケトン類、酢酸エステル類、乳酸エステル類、飽和炭化水素類、不飽和炭化水素類、環状飽和炭化水素類、環状不飽和炭化水素類、芳香族炭化水素類、テルペン類、エーテル類、環状イミド、3-アルキル-2-オキサゾリジノン、N-アルキルピロリドン、ラクトンおよび含窒素溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1種であってもよい。このように、液体が上述したものである場合は、複数の中空糸膜が膨潤しやすくなるが、外側支持体を備えることで、中空糸脱気モジュールの圧力損失の急激な上昇を抑制することができる。
【0020】
液体が、UVインクまたはセラミックインクであってもよい。このように、液体がUVインクまたはセラミックインクである場合は、複数の中空糸膜が膨潤しやすくなるが、外側支持体を備えることで、中空糸脱気モジュールの圧力損失の急激な上昇を抑制することができる。
【0021】
本発明の一側面に係るインクジェットプリンタは、インク貯留部に貯留されたインクがインク流路を通ってインクジェットヘッドに供給されるインクジェットプリンタであって、上述した何れかの中空糸脱気モジュールがインク流路に取り付けられている。このインクジェットプリンタでは、上述した何れかの中空糸脱気モジュールがインク流路に取り付けられているため、中空糸膜がインクにより膨潤することによる、インク流路における圧力損失の急激な上昇を抑えることができる。その結果、長期にわたってインクを脱気することができる。
【0022】
本発明の一側面に係る液体の脱気方法は、上述した何れかの中空糸脱気モジュールにおいて、液体供給口に液体を供給することで複数の中空糸膜の間の空間に液体を供給し、吸気口から吸気することで複数の中空糸膜の間の空間に供給された液体を脱気し、複数の中空糸膜の間の空間で脱気された液体を液体排出口から排出する。この液体の脱気方法では、上述した何れかの中空糸脱気モジュールを用いて液体を脱気するため、中空糸膜が液体により膨潤することによる、中空糸脱気モジュールの圧力損失の急激な上昇を抑制することができる。その結果、長期にわたって液体を脱気することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、圧力損失の急激な上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。
図2】実施形態に係る中空糸脱気モジュールの概略断面図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、図2に示す中空糸膜束の一部を模式化した図である。
図4図2に示すIV-IV線における断面図である。
図5】外側支持体の例の斜視図である。
図6】外側支持体の例の斜視図である。
図7】外側支持体の例の一部拡大図である。
図8図7に示すVIII-VIII線における断面図である。
図9図7に示すIX-IX線における断面図である。
図10】実施形態の中空糸膜の状態を模式化した図である。
図11】比較例の中空糸膜の状態を模式化した図である。
図12】試験回路の概略構成図である。
図13】実施例1及び比較例1の圧力損失を示すグラフである。
図14】実施例1の経過時間と圧力損失との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、実施形態の中空糸脱気モジュール、インクジェットプリンタ、液の脱気方法について詳細に説明する。本実施形態の中空糸脱気モジュールは、本発明の中空糸脱気モジュールを、インクを脱気する中空糸脱気モジュールに適用したものである。なお、全図中、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0026】
図1は、実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。図1に示すように、実施形態に係るインクジェットプリンタ101は、主に、インクを貯留するインクタンク等のインク貯留部102と、微滴化したインクを被印字媒体に対して直接吹き付けるインクジェットヘッド103と、インク貯留部102からインクが供給される第一インク供給管104と、インクジェットヘッド103にインクを供給する第二インク供給管105と、第一インク供給管104及び第二インク供給管105に取り付けられてインクを脱気する実施形態に係る中空糸脱気モジュール1と、真空吸引する吸引ポンプ106と、吸引ポンプ106及び中空糸脱気モジュール1を接続する吸気管107と、を備える。なお、第一インク供給管104及び第二インク供給管105は、インク貯留部102からインクジェットヘッド103に至るインク流路である。インクジェットプリンタ101で用いられるインクとしては、特に限定されるものではなく、例えば、水性インク、UVインク、溶媒インク及びセラミックインクが挙げられる。
【0027】
図2は、実施形態に係る中空糸脱気モジュールの概略断面図である。図3(a)及び図3(b)は、図2に示す中空糸膜束の一部拡大図である。図4は、図2に示すIV-IV線における断面図である。図1図4に示すように、中空糸脱気モジュール1は、複数本の中空糸膜2が円筒状に束ねられた中空糸膜束3と、中空糸膜束3を収容する円筒状のハウジング4と、中空糸膜束3の内周面3aに当接される内側支持体10と、中空糸膜束3とハウジング4との間に配置された外側支持体20と、を備えている。中空糸脱気モジュール1は、複数の中空糸膜2により、ハウジング4内が、複数の中空糸膜2の間の空間を含む第一領域と、複数の中空糸膜2のそれぞれの内部空間を含む第二領域と、に分けられている。第一領域は、インクが供給される領域であり、第二領域は吸気される領域である。そして、中空糸脱気モジュール1は、中空糸膜束3の中空部3bから複数の中空糸膜2の間の空間(第一領域)にインクが供給されるとともに、複数の中空糸膜2のそれぞれの内部領域(第二領域)から吸気されることで、インクを脱気する。中空部3bは、中空糸膜束3の半径方向における中心部に位置する中空の部分である。
【0028】
中空糸膜2は、気体は透過するが液体は透過しない中空糸状の膜である。中空糸膜2は、インク等の液体により膨潤する性質を有する。中空糸膜2の素材、膜形状、膜形態等は、特に制限されない。中空糸膜2の素材としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリジメチルシロキサンその共重合体などのシリコン系樹脂、PTFE、フッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂、が挙げられる。中空糸膜2の膜形状(側壁の形状)としては、例えば、多孔質膜、微多孔膜、多孔質を有さない均質膜(非多孔膜)、が挙げられる。中空糸膜2の膜形態としては、例えば、膜全体の化学的あるいは物理的構造が均質な対称膜(均質膜)、膜の化学的あるいは物理的構造が膜の部分によって異なる非対称膜(不均質膜)、が挙げられる。非対称膜(不均質膜)は、非多孔質の緻密層と多孔質とを有する膜である。この場合、緻密層は、膜の表層部分又は多孔質膜内部等、膜中のどこに形成されていてもよい。不均質膜には、化学構造の異なる複合膜、3層構造のような多層構造膜も含まれる。特にポリ4-メチルペンテン-1樹脂を用いた不均質膜は、液体を遮断する緻密層を有するため、水以外の液体、例えばインクの脱気に特に好ましい。また、外部灌流型に用いる中空糸の場合は、緻密層が中空糸外表面に形成されていることが好ましい。
【0029】
中空糸膜束3は、例えば、複数の中空糸膜2が簾状に織られた中空糸膜シート(不図示)により形成することができる。この場合、例えば、1インチ当たり10~40本の中空糸膜2で構成される中空糸膜シートにより中空糸膜束3を形成することができる。中空糸膜束3の半径方向内側には、インクの流路となる中空部3bが形成されている。中空部3bは、中空糸膜束3の内周面3aにより画成される。
【0030】
ハウジング4は、筒体5と、第一蓋部6と、第二蓋部7と、を備えている。
【0031】
筒体5は、中空糸膜束3が収容される部位である。筒体5は、軸線方向Lに延びる円筒状に形成されており、筒体5の両端部は、開口している。筒体5の一方側の開口端部である一方側開口端部5aに、第一蓋部6が取り付けられており、筒体5の他方側の開口端部である他方側開口端部5bに、第二蓋部7が取り付けられている。筒体5に対する第一蓋部6及び第二蓋部7の取り付けは、例えば、螺合、嵌合、接着等により行うことができる。
【0032】
第一蓋部6は、筒体5から離れるに従い小径化するテーパ状に形成されている。第一蓋部6の先端部には、液体供給口6aが形成されている。第一蓋部6の内側には、液体供給口6aに連通された内部空間が形成されている。液体供給口6aは、複数の中空糸膜2の間にインクを供給するために、第一蓋部6に形成された開口である。液体供給口6aは、例えば、円形である。液体供給口6aは、筒体5の中心軸線L1上に形成されている。液体供給口6aからは、第一インク供給管104を脱着可能に接続するための接続部6bが、軸線方向Lに沿って延びている。接続部6bは、円筒状に形成されており、接続部6bの内周面には、第一インク供給管104がねじ込まれる雌ネジ6cが形成されている。なお、接続部6bと第一インク供給管104との接続は、螺合に限定されるものではなく、例えば、嵌合により行ってもよい。
【0033】
第二蓋部7は、筒体5から離れるに従い小径化するテーパ状に形成されている。第二蓋部7の先端部には、吸気口7aが形成されている。第二蓋部7の内側には、吸気口7aに連通された内部空間が形成されている。吸気口7aは、複数の中空糸膜2のそれぞれの内部空間から吸気するために、第二蓋部7に形成された開口である。吸気口7aは、例えば、円形である。吸気口7aは、筒体5の中心軸線L1上に形成されている。吸気口7aからは、吸気管107を脱着可能に接続するための接続部7bが、軸線方向Lに沿って延びている。接続部7bは、円筒状に形成されており、接続部7bの内周面には、吸気管107がねじ込まれる雌ネジ7cが形成されている。なお、接続部7bと吸気管107との接続は、螺合に限定されるものではなく、例えば、嵌合により行ってもよい。
【0034】
筒体5の側壁5cには、液体排出口5dが形成されている。液体排出口5dは、複数の中空糸膜2の間からインクを排出するために、筒体5に形成された開口である。液体排出口5dは、例えば、円形である。液体排出口5dは、筒体5の軸線方向Lにおける中央よりも他方側開口端部5b側に形成されている。液体排出口5dからは、第二インク供給管105を脱着可能に接続するための接続部5eが、軸線方向Lと直交する方向に沿って延びている。接続部5eは、円筒状に形成されており、接続部5eの内周面には、第二インク供給管105がねじ込まれる雌ネジ5fが形成されている。なお、液体排出口5dと第二インク供給管105との連結は、螺合に限定されるものではなく、例えば、嵌合により行ってもよい。
【0035】
筒体5、第一蓋部6及び第二蓋部7は、製造容易性の観点から、樹脂製であることが好ましい。この場合、筒体5、第一蓋部6及び第二蓋部7を、射出成型により製造することができる。また、筒体5、第一蓋部6及び第二蓋部7は、インクとしてUVインクを使用する場合を考慮して、紫外線を透過しない色、例えば黒色であることが好ましい。
【0036】
そして、中空糸膜束3の一方側膜束端部3eが、第一封止部8により筒体5の一方側開口端部5aに固定されており、中空糸膜束3の他方側膜束端部3fが、第二封止部9により筒体5の他方側開口端部5bに固定されている。
【0037】
第一封止部8は、樹脂により形成されている。第一封止部8に用いる樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、紫外線硬化型樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂が挙げられる。第一封止部8は、中空糸膜束3の一方側膜束端部3eを通り筒体5の軸線方向Lと直交する断面において、中空部3b以外の全域に充填されている。つまり、第一封止部8は、中空糸膜2間と、複数の中空糸膜2のそれぞれの内部空間と、中空糸膜束3と筒体5の内壁との間と、に第一封止部8が充填されている(図3(a)参照)。複数の中空糸膜2は、第一封止部8の第二封止部9とは反対側の端面8bから露出している。第一封止部8には、中空部3bを開放して、中空部3bと液体供給口6aとを連通させる連通口8aが形成されている。このため、液体供給口6aから第一蓋部6の内部空間に供給されたインクは、連通口8aからのみ筒体5内に供給される。つまり、液体供給口6aからハウジング4内に供給されたインクは、連通口8aからのみ中空糸膜束3の中空部3bに供給され、中空部3bから複数の中空糸膜2の間に供給される。
【0038】
第二封止部9は、第一封止部8と同様の樹脂により形成されている。第二封止部9は、中空糸膜束3の他方側膜束端部3fを通り筒体5の軸線方向Lと直交する断面において、複数の中空糸膜2のそれぞれの内部空間以外の全域に充填されている。つまり、第二封止部9は、複数の中空糸膜2のそれぞれの内部空間には充填されておらず、複数の中空糸膜2の間、中空糸膜束3と筒体5の内壁との間、中空部3b、に充填されている(図3(b)参照)。複数の中空糸膜2は、第二封止部9の第一封止部8とは反対側の端面9bから露出している。第二封止部9には、複数の中空糸膜2のそれぞれの内部空間を開放して、複数の中空糸膜2のそれぞれの内部空間と吸気口7aとを連通させる連通孔9aが形成されている。このため、連通口8aから中空部3bに供給されたインクは、第二封止部9を超えて第二蓋部7側に流れ込まずに、複数の中空糸膜2の間の空間を通って液体排出口5dから排出される。また、複数の中空糸膜2のそれぞれの内部空間が吸気口7aと連通されているため、吸引ポンプ106により吸気口7aから吸気することで、複数の中空糸膜2のそれぞれの内部空間が減圧される。
【0039】
第一封止部8は、例えば、中空糸膜束3の一方側膜束端部3eの中心軸線L2と筒体5の中心軸線L1とが同じ位置となるように、中空糸膜束3の一方側膜束端部3eを筒体5に固定している。また、第二封止部9は、例えば、中空糸膜束3の他方側膜束端部3fの中心軸線L3と筒体5の中心軸線L1とが同じ位置となるように、中空糸膜束3の他方側膜束端部3fを筒体5に固定している。なお、第二封止部9は、例えば、中空糸膜束3の他方側膜束端部3fの中心軸線L3が筒体5の中心軸線L1に対して液体排出口5dの反対側に偏芯した位置となるように、中空糸膜束3の他方側膜束端部3fを筒体5に固定してもよい。また、第二封止部9は、例えば、筒体5の中心軸線L1に対して中空糸膜束3が傾斜して中空糸膜束3が液体排出口5dから離れるように、中空糸膜束3の他方側膜束端部3fを筒体5に固定してもよい。
【0040】
なお、筒体5の内径と、中空糸膜束3の軸線方向Lにおける長さと比は、例えば、1:1~1:6とすることができる。
【0041】
内側支持体10は、複数の中空糸膜2(中空糸膜束3)を中空糸膜束3の半径方向内側から支持するための部材である。内側支持体10は、円筒状(パイプ状)に形成されている。内側支持体10の外径は、中空糸膜束3の内径と略同じ寸法となっている。内側支持体10の厚みは、例えば、膨潤した複数の中空糸膜2を支持できる範囲で、適宜設定することができる。内側支持体10の厚みとしては、例えば、0.5mm以上5mm以下とすることができる。また、内側支持体10には、複数の開口11が形成されている。内側支持体10は、例えば、網状に形成されている。内側支持体10が網状に形成されている場合、その複数の網目が、複数の開口11となる。
【0042】
そして、軸線方向Lにおける内側支持体10の一方端部である一方側支持体端部10cが、第一封止部8により筒体5(ハウジング4)に固定されており、軸線方向Lにおける内側支持体10の他方端部である他方側支持体端部10dが、第二封止部9により筒体5(ハウジング4)に固定されている。第一封止部8及び第二封止部9は、中空糸膜束3と内側支持体10との間、及び内側支持体10の複数の開口11にも、充填されている。
【0043】
内側支持体10は、第一封止部8の端面8bと第二封止部9の端面9bとの間に配置されている。つまり、内側支持体10は、第一封止部8の端面8b及び第二封止部9の端面9bから突出していない。内側支持体10は、軸線方向Lにおいて、中空糸膜束3と同じ長さであってもよく、中空糸膜束3よりも短くてもよい。ここで、軸線方向Lにおける内側支持体10の両端のうち、第一封止部8側の先端を先端10aとし、第二封止部9側の先端を先端10bとする。この場合、内側支持体10は、先端10aが第一封止部8の端面8bから露出し、先端10bが第二封止部9に埋設されていてもよい。また、内側支持体10は、先端10aが第一封止部8に埋設され、先端10bが第二封止部9の端面9bから露出していてもよい。また、内側支持体10は、先端10aが第一封止部8に埋設され、先端10bが第二封止部9に埋設されていてもよい。なお、図2及び図3では、一例として、軸線方向Lにおいて内側支持体10が中空糸膜束3よりも短くなっており、内側支持体10の先端10aが第一封止部8の端面8bから露出し、内側支持体10の先端10bが第二封止部9に埋設されていている場合を示している。
【0044】
図5及び図6は、外側支持体の例の斜視図である。図2図6に示すように、外側支持体20は、膨潤した複数の中空糸膜2(中空糸膜束3)を中空糸膜束3の半径方向外側から支持するための部材である。外側支持体20は、円筒状(パイプ状)に形成されている。外側支持体20の外径は、中空糸膜束3の外径以上、筒体5の内径以下となっている。外側支持体20は、中空糸膜束3の外周面3gに当接されていてもよく、筒体5の内周面5gに当接されていてもよく、中空糸膜束3の外周面3g及び筒体5の内周面5gから離間していてもよい。図面では、一例として、外側支持体20が中空糸膜束3の外周面3g及び筒体5の内周面5gから離間している場合を示している。外側支持体20の厚みは、例えば、膨潤した複数の中空糸膜2を支持できる範囲で適宜設定することができる。外側支持体20の厚みとしては、例えば、0.5mm以上5mm以下とすることができる。
【0045】
外側支持体20には、複数の開口21が形成されている。外側支持体20は、例えば、網状に形成されている。外側支持体20が網状に形成されている場合、その複数の網目が、複数の開口21となる。網状とは、異なる方向に延びる複数の線状部22が接続されるとともに、複数の線状部22により複数の開口21が形成された形状をいう。開口21の形状としては、例えば、正方形、矩形、五角形、六角形、円形、楕円形等が挙げられる。外側支持体20の開口率は、例えば、10%以上の範囲とすることができ、20%以上80%以下の範囲とすることが好ましく、30%以上60%以下の範囲とすることが更に好ましい。なお、外側支持体20の開口率とは、外側支持体20を切断して平板状にした際の、全ての開口21を含む外側支持体20の投影面積に対する全ての開口21の開口面積の総和の割合をいう。なお、内側支持体10及び外側支持体20の双方が網状に形成されている場合、内側支持体10と外側支持体20とは、同じ網状に形成されていてもよく、異なる網状に形成されていてもよい。
【0046】
図5に示す外側支持体20は、外側支持体20の軸線方向と平行な方向に延びて円状に配列される複数の第一線状部22aと、外側支持体20の軸線を中心とした円状に延びて各第一線状部22aと接続された複数の第二線状部22bと、により構成されている。図5に示す外側支持体20の開口21の形状は、正方形となっている。図6に示す外側支持体20は、外側支持体20の軸線方向に対して所定角度だけ傾斜した方向に延びる複数の第一線状部22aと、外側支持体20の軸線方向に対して第一線状部22aとは反対方向に所定角度だけ傾斜した方向に延びて各第一線状部22aと接続された複数の第二線状部22bと、により構成されている。図6に示す外側支持体20の開口21の形状は、菱形となっている。
【0047】
線状部22の断面形状としては、例えば、多角形断面、円形断面等とすることができる。また、線状部22の線径は、例えば、膨潤した複数の中空糸膜2を支持できる程度に適宜設定することができる。外側支持体20は、例えば、製造容易性の観点から樹脂製であることが好ましい。外側支持体20に用いられる樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、好ましくは超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレンが挙げられる。
【0048】
図7は、外側支持体の例の一部拡大図である。図8は、図7に示すVIII-VIII線における断面図である。図9は、図7に示すIX-IX線における断面図である。図7図9に示すように、外側支持体20の複数の開口21のうち、任意の開口21を第一開口21aとし、この第一開口21aと隣り合う開口21を第二開口21bとする。また、外側支持体20に外接する仮想円周面を外接円周面VF1とし、外側支持体20に内接する仮想円周面を内接円周面VF2とする。
【0049】
この場合、外側支持体20には、外側支持体20と外接円周面VF1との間で第一開口21aと第二開口21bとを連通させる外側連通部23が形成されている。外側連通部23は、外側支持体20の、外接円周面VF1から窪んだ部分である。外側連通部23は、互いに隣り合う全ての開口21の間に形成されていてもよく、互いに隣り合う一部の開口21の間にのみ形成されていてもよい。
【0050】
また、外側支持体20には、外側支持体20と内接円周面VF2との間で第一開口21aと第二開口21bとを連通させる内側連通部24が形成されている。内側連通部24は、外側支持体20の、内接円周面VF2から窪んだ部分である。内側連通部24は、互いに隣り合う全ての開口21の間に形成されていてもよく、互いに隣り合う一部の開口21の間にのみ形成されていてもよい。
【0051】
そして、図2及び図3に示すように、軸線方向Lにおける外側支持体20の一方端部である一方側支持体端部20cが、第一封止部8により筒体5(ハウジング4)に固定されており、軸線方向Lにおける外側支持体20の他方端部である他方側支持体端部20dが、第一封止部8により筒体5(ハウジング4)に固定されている。第一封止部8及び第二封止部9は、中空糸膜束3と外側支持体20との間、及び外側支持体20の複数の開口21にも、充填されている。
【0052】
外側支持体20は、第一封止部8の端面8bと第二封止部9の端面9bとの間に配置されている。つまり、外側支持体20は、第一封止部8の端面8b及び第二封止部9の端面9bから突出していない。外側支持体20は、軸線方向Lにおいて、中空糸膜束3と同じ長さであってもよく、中空糸膜束3よりも短くてもよい。ここで、軸線方向Lにおける外側支持体20の両端のうち、第一封止部8側の先端を先端20aとし、第二封止部9側の先端を先端20bとする。この場合、外側支持体20は、先端20aが第一封止部8の端面8bから露出し、先端20bが第二封止部9に埋設されていてもよい。また、外側支持体20は、先端20aが第一封止部8に埋設され、先端20bが第二封止部9の端面9bから露出していてもよい。また、外側支持体20は、先端20aが第一封止部8に埋設され、先端20bが第二封止部9に埋設されていてもよい。なお、図2及び図3では、一例として、軸線方向Lにおいて外側支持体20が中空糸膜束3よりも短くなっており、外側支持体20の先端20aが第一封止部8の端面8bから露出し、外側支持体20の先端20bが第二封止部9に埋設されていている場合を示している。
【0053】
次に、中空糸脱気モジュール1によるインクの脱気方法について説明する。
【0054】
インク貯留部102から第一インク供給管104にインクを供給する。すると、インクは、液体供給口6aから第一蓋部6の内部空間に供給される。第一蓋部6の内部空間に供給されたインクは、連通口8aを通って中空部3bに供給される。中空部3bに供給されたインクは、内側支持体10の複数の開口11を通って、複数の中空糸膜2の間の空間に供給され、当該空間を通って筒体5(中空糸膜束3)の半径方向外側に流れていく。つまり、中空部3bに供給されたインクは、筒体5内において、複数の中空糸膜2のそれぞれの外側に供給される。このとき、吸引ポンプ106により吸気口7aからハウジング4内を吸気することで、複数の中空糸膜2のそれぞれの内部空間が減圧される。すると、インクが複数の中空糸膜2の間の空間を通過する際に、インクの溶存気体及び気泡が複数の中空糸膜2のそれぞれの内部空間に引き込まれる。これにより、インクの脱気が行われる。そして、脱気されたインクは、外側支持体20の複数の開口21を通って、中空糸膜束3と筒体5の内周面5gとの間の隙間に供給され、当該隙間を通って液体排出口5dから第二インク供給管105に排出される。第二インク供給管105に排出されたインクは、第二インク供給管105を通ってインクジェットヘッド103に供給される。
【0055】
このとき、複数の中空糸膜2は、経時的にインクにより膨潤していく。なお、中空糸膜2が膨潤する速度及び程度は、中空糸膜2の素材、膜形状、膜形態等によって変わり、また、インクの種類によっても変わる。例えば、中空糸膜2の素材として、ポリ-4メチルペンテン-1等のポリオレフィン系樹脂を用い、インクとして、セラミック粉末が炭化水素溶媒等の溶媒に分散されたセラミックインクを用いた場合は、特に中空糸膜2の膨潤速度及び膨潤程度が大きくなる。そして、複数の中空糸膜2は、膨潤していくことで、中空糸膜束3の半径方向内側及び半径方向外側に捩れながら膨らんでいく。つまり、膨潤した複数の中空糸膜2は、中空糸膜束3の半径方向内側に膨らむことで、中空部3bに入り込もうとし、中空糸膜束3の半径方向外側に膨らむことで、筒体5の内周面5gに圧接されるとともに、液体排出口5dに入り込もうとする。
【0056】
セラミックインクに用いられる溶媒としては、本発明の効果を損ねるものでなければ特に限定されることなく、公知のものであってよいが、具体的に例示するならば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類、3-メトキシ-3-メチルブタノール、3-メトキシブタノール等のグリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールジアルキルエーテル類、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールモノアセテート類、グリコールジアセテート類、エタノール、 n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル-n-アミルケトン、メチルイソアミルケトン、ジエチルケトン、エチル-n-プロピルケトン、エチルイソプロピルケトン、エチル-n-ブチルケトン、エチルイソブチルケトン、ジ-n-プロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ヘキシル、酢酸オクチル、酢酸-2-メチルプロピル、酢酸-3-メチルブチル等の酢酸エステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等の乳酸エステル類、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ノナン、イソノナン、ドデカン、イソドデカン等の飽和炭化水素類、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等の不飽和炭化水素類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、デカリン等の環状飽和炭化水素類、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、1,1,3,5,7-シクロオクタテトラエン、シクロドデセン等の環状不飽和炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、テルペン類、エーテル類、環状イミド、3-メチル-2-オキサゾリジノン、3-エチル-2-オキサゾリジノン等の3-アルキル-2-オキサゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン等のN-アルキルピロリドン、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン等のラクトン、β-アルコキシプロピオンアミド等の含窒素溶剤が挙げられる。
【0057】
ここで、図11に示すように、内側支持体及び外側支持体を備えない比較例の中空脱気モジュールでは、膨潤した複数の中空糸膜2が筒体5の内周面5gに圧接される。これにより、膨潤した複数の中空糸膜2が液体排出口5dに入り込んで液体排出口5dを塞ぎ、また、中空糸膜束3と筒体5との間の隙間が無くなる。その結果、インクの流路が狭められ又は閉塞されて、インクの圧力損失が急激に上昇する。
【0058】
これに対し、図10に示すように、本実施形態の中空糸脱気モジュールでは、中空糸膜束3と筒体5との間に外側支持体20が配置されているため、膨潤した複数の中空糸膜2が筒体5の内周面5gに圧接され難くなる。これにより、膨潤した複数の中空糸膜2が液体排出口5dに入り込んで液体排出口5dを塞ぐのを抑制でき、また、中空糸膜束3と筒体5との間の隙間が無くなるのを抑制できる。その結果、インクの流路が狭められ又は閉塞されるのを抑制できるため、インクの圧力損失が急激に上昇するのを抑制できる。
【0059】
また、中空部3bを画成する中空糸膜束3の内周面3aには、内側支持体10が当接されているため、膨潤した複数の中空糸膜2が中空部3bに入り込むのを抑制できる。その結果、中空糸脱気モジュール1では、複数の中空糸膜2が膨潤しても、インクの流路が狭められ又は閉塞されるのを抑制できるため、インクの圧力損失が急激に上昇するのを抑制できる。
【0060】
このように、本実施形態に係る中空糸脱気モジュール1では、中空糸膜束3と筒体5との間に配置される外側支持体20を備えるため、膨潤した複数の中空糸膜2が外側支持体20により中空糸膜束3の半径方向外側から支持される。このため、複数の中空糸膜2がインクにより膨潤しても、複数の中空糸膜2が筒体5の内周面5gに圧接されるのを抑制することができる。これにより、筒体5の液体排出口5dが複数の中空糸膜2により塞がれることによる、中空糸脱気モジュール1の圧力損失の急激な上昇を抑制することができる。また、中空糸膜束3と筒体5との間の隙間が無くなることによる、中空糸脱気モジュール1の圧力損失の急激な上昇を抑制することができる。その結果、長期にわたってインクを脱気することができる。
【0061】
また、外側支持体20が円筒状である場合は、中空糸膜束3の半径方向外側から膨潤した複数の中空糸膜2を適切に支持することができる。
【0062】
また、外側支持体20が網状である場合は、膨潤した複数の中空糸膜2を中空糸膜束3の半径方向外側から支持しつつ、外側支持体20を通過するインクの圧力損失が上昇するのを抑制することができる。これにより、中空糸脱気モジュール1の初期圧が上昇するのを抑制することができる。
【0063】
また、上述したように第一封止部8及び第二封止部9が充填されている場合は、複数の中空糸膜2により、ハウジング4内の領域が、複数の中空糸膜2の間の空間を含む第一領域と複数の中空糸膜2のそれぞれの内部空間を含む第二領域とに分けられる。これにより、液体供給口6aから供給されるインクを、中空糸膜束3の中空部3bから複数の中空糸膜2の間の空間に供給し、その後、液体排出口5dから排出することができる。また、吸気口7aから複数の中空糸膜2のそれぞれの内部空間を吸気することができるとともに、液体供給口6aから供給されるインクが吸気口7aに排出されるのを防止することができる。
【0064】
また、外側支持体20が第一封止部8の端面8bと第二封止部9の端面9bとの間に配置されている場合は、中空糸脱気モジュール1を作製しやすくなるため、中空糸脱気モジュール1の製造コストを抑制することができる。
【0065】
また、外側支持体20の第二封止部9側の先端20bが第二封止部9に埋設されている場合は、外側支持体20と第二封止部9との界面が、第二封止部9の端面9bに露出しなくなる。これにより、外側支持体20と第二封止部9との界面にインクが入り込んだとしても、当該インクが第二封止部9から漏出するのを防止することができる。また、吸気口7aに吸引ポンプ106を接続した場合に、当該インクが吸気口7aから排出されることによる吸引ポンプ106の破損を防止することができる。
【0066】
また、外側支持体20の先端20aが第一封止部8から露出している場合は、中空糸脱気モジュール1を作製しやすくなるため、中空糸脱気モジュール1の製造コストを抑制することができる。
【0067】
また、複数の中空糸膜2が膨潤していない状態において外側支持体20が中空糸膜束3から離間している場合は、複数の中空糸膜2の膨潤を許容しつつ、膨潤した複数の中空糸膜2が筒体5の内周面5gに圧接されるのを抑制することができる。これにより、複数の中空糸膜2が膨潤した際に切れるのを抑制することができる。
【0068】
また、外側支持体20に外側連通部23が形成されている場合は、仮に、複数の中空糸膜2が膨潤すること等により外側支持体20が伸び、これにより筒体5の内周面5gに圧接されたとしても、外側支持体20と筒体5の内周面5gとの間にインクが流通する流路を残すことができる。これにより、中空糸脱気モジュール1の圧力損失の急激な上昇を抑制することができる。
【0069】
また、外側支持体20に内側連通部24が形成されている場合は、仮に、複数の中空糸膜2が膨潤すること等により外側支持体20が伸び、これにより筒体5の内周面5gに圧接されたとしても、複数の中空糸膜2と外側支持体20との間にインクが流通する流路を残すことができる。これにより、中空糸脱気モジュール1の圧力損失の急激な上昇を抑制することができる。
【0070】
また、インクが上述したものである場合は、複数の中空糸膜2が膨潤しやすくなるが、外側支持体20を備えることで、中空糸脱気モジュール1の圧力損失の急激な上昇を抑制することができる。
【0071】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、内側支持体を備えるものとして説明したが、内側支持体を備えないものであってもよい。内側支持体を備えなくても、複数の中空糸膜がハウジングの内周面に圧接されることによる中空糸脱気モジュールの圧力損失の急激な上昇を抑制することができる。また、上記実施形態では、外側支持体が円筒状であるものとして説明したが、膨潤した複数の中空糸膜を中空糸膜束の半径方向外側から支持することができれば、外側支持体は如何なる形状であってもよい。また、上記実施形態では、脱気する液体としてインクを例示して説明したが、脱気する液体はインク以外の液体であってもよい。つまり、複数の中空糸膜は、インク以外の液体であっても膨潤する場合があるため、このような液体を用いたとしても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また、上記実施形態では、中空糸脱気モジュールの一例を具体的に説明したが、液体供給口及び液体排出口と複数の中空糸膜の間の空間とが連通されるともに、吸気口と複数の中空糸膜のそれぞれの内部空間とが連通されており、液体供給口から液体を供給して吸気口から吸気することで、液体供給口から供給された液体を脱気して液体排出口から排出することができれば、中空糸脱気モジュールは如何なる構成であってもよい。また、上記実施形態では、ハウジングを構成する筒体と第一蓋部及び第二蓋部とが別体であるものとして説明したが、これらが一体で構成されていてもよい。
【実施例
【0072】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0073】
実施例1の中空糸脱気モジュールと、比較例1の中空糸脱気モジュールと、を作製し、図12に示す試験回路において、インクを循環させることによる圧力損失の上昇について計測した。
【0074】
(試験回路)
図12に示すように、試験回路は、インクが貯留されているインクタンク111に挿入された第一インク供給管112を、中空糸脱気モジュール1の供給口に接続し、第一インク供給管112に、第一インク供給管112内のインクを中空糸脱気モジュール1側に送液するポンプ113と、第一インク供給管112内のインクの圧力を計測する入口圧力計114と、を取り付けた。また、試験回路は、インクタンク111に挿入された第二インク供給管115を、中空糸脱気モジュール1の排出口に接続し、第二インク供給管115に、第二インク供給管115内のインクの圧力を計測する出口圧力計116を取り付けた。
【0075】
(実施例1)
実施例1の中空糸脱気モジュールは、次の通り作製した。
【0076】
実施例1では、ベースモジュールとして、DIC株式会社製のSEPAREL EF-G5-B15の中空糸脱気モジュールを用いた。そして、このベースモジュールにおいて、中空糸膜束の内周面に、大日本プラスチック株式会社製のダイプラネトロンシート(網目の大きさ:3mm×3mm、厚み:1.4mm)を、パイプ径φが14mmとなるように円筒状に巻いた内側支持体を当接させた。また、このベースモジュールにおいて、中空糸膜束とハウジングとの間で、中空糸膜束及びハウジングから離間するように、大日本プラスチック株式会社製のダイプラネトロンシート(網目の大きさ:3mm×3mm、厚み:1.4mm)を、パイプ径φが39mmとなるように円筒状に巻いた外側支持体を配置した。これを実施例1の中空糸膜モジュールとした。
【0077】
具体的に説明すると、ポリ-4メチルペンテン-1を素材とした不均質構造の側壁(膜)を有する内径100μm、外径180μmの中空糸膜を作製した。次に、同列に並ぶ多数の中空糸膜を経糸により簾状に織り、所定長さの中空糸膜シートを作製した。次に、円筒状の内側支持体に中空糸膜シートを巻き付けて、円筒状の中空糸膜束を作製した。次に、中空糸膜束及び円筒状の外側支持体をハウジングの筒体に挿入し、中空糸膜束の一方側膜束端部及び外側支持体の一方端部を、第一封止部により筒体の一方側開口端部に固定するとともに、中空糸膜束の他方側膜束端部及び外側支持体の他方端部を、第二封止部により筒体の他方側開口端部に固定した。そして、筒体の一方側開口端部に第一蓋部を取り付けるとともに、筒体の他方側開口端部に第二蓋部を取り付けることで、実施例1の中空糸脱気モジュールを作製した。実施例1の中空糸脱気モジュールの主な条件を表1に示す。
【0078】
(比較例1)
外側支持体を用いず、また、第一封止部及び第二封止部の樹脂が硬化した後に中空糸膜束から内側支持体を抜いた他は、実施例1と同様にして、比較例1の中空糸脱気モジュールを作製した。つまり、比較例1の中空糸脱気モジュールとして、DIC株式会社製のSEPAREL EF-G5-B15の中空糸脱気モジュールを用いた。比較例1の中空糸脱気モジュールの主な条件を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
(実験)
実験では、脱気する液体として、炭化水素溶媒(エクソンモービル株式会社製「Exxsol(登録商標) D130」(Hydrocarbones, C14-C18, n-alkanes, iso-alkanes, cyclics, aromatics等))を含有するセラミックインクを使用した。
【0081】
そして、インクの設定温度を50℃に設定するとともに、インクの設定流量を1200g/minに設定して、インクを循環させた。また、入口圧力計114で計測した入口圧力と出口圧力計116で計測した出口圧力との差を圧力損失として算出した。実施例1及び比較例1の、インクを30分循環させたときの圧力損失を図13に示す。実施例1の、インクを120時間循環させたときの、経過時間と圧力損失との関係を図14に示す。
【0082】
(評価)
図13に示すように、比較例1では、インクを30分循環させた段階で、圧力損失が24kPaを越えたが、実施例1では、インクを30分循環させた段階で、12kPa程度に抑えられていた。この結果から、内側支持体及び外側支持体を備えることで、圧力損失の上昇を抑制できることが分かった。
【0083】
図14に示すように、実施例1では、インクを120時間循環させても、圧力損失の急激な上昇は見られなかった。この結果から、内側支持体及び外側支持体を備えることで、圧力損失の急激な上昇を抑制できることが分かった。
【0084】
そして、比較例1においてインクを30分循環させた後の、中心軸線と直交する断面及び中心軸線を通る断面と、実施例1においてインクを30分循環させた後の、中心軸線と直交する断面及び中心軸線を通る断面と、を観察した。その結果、比較例1では、インクを30分循環させた段階で、膨潤した複数の中空糸膜が筒体の内周面に圧接され、また、膨潤した複数の中空糸膜が液体排出口に入り込んで液体排出口を塞いでいた。これに対し、実施例1では、インクを1週間循環させた後でも、外側支持体により、膨潤した複数の中空糸膜が筒体の内周面から離間し、また、膨潤した複数の中空糸膜が液体排出口に入り込んでいなかった。この結果から、外側支持体を備えることで、圧力損失の急激な上昇を抑制できることが分かった。また、外側支持体の厚みが1.4mm程度あれば、膨潤した複数の中空糸膜を支持できることが分かった。
【符号の説明】
【0085】
1…中空糸脱気モジュール、2…中空糸膜、3…中空糸膜束、3a…内周面、3b…中空部、3e…一方側膜束端部、3f…他方側膜束端部、3g…外周面、4…ハウジング、5…筒体、5a…一方側開口端部、5b…他方側開口端部、5c…側壁、5d…液体排出口、5e…接続部、5f…雌ネジ、5g…内周面、6…第一蓋部、6a…液体供給口、6b…接続部、6c…雌ネジ、7…第二蓋部、7a…吸気口、7b…接続部、7c…雌ネジ、8…第一封止部、8a…連通口、8b…端面、9…第二封止部、9a…連通孔、9b…端面、10…内側支持体、10a…先端、10b…先端、10c…一方側支持体端部、10d…他方側支持体端部、11…開口、20…外側支持体、20a…先端、20b…先端、20c…一方側支持体端部、20d…他方側支持体端部、21…開口、21a…第一開口、21b…第二開口、22…線状部、22a…第一線状部、22b…第二線状部、23…外側連通部、24…内側連通部、101…インクジェットプリンタ、102…インク貯留部、103…インクジェットヘッド、104…第一インク供給管(インク流路)、105…第二インク供給管(インク流路)、106…吸引ポンプ、107…吸気管、111…インクタンク、112…第一インク供給管、113…ポンプ、114…入口圧力計、115…第二インク供給管、116…出口圧力計、L…軸線方向、VF1…外接円周面、VF2…内接円周面。
図1
図2
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