(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】装飾部材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/08 20060101AFI20220125BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20220125BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20220125BHJP
【FI】
G02B5/08 Z
B32B15/04 Z
B32B7/023
(21)【出願番号】P 2019564169
(86)(22)【出願日】2018-06-27
(86)【国際出願番号】 KR2018007284
(87)【国際公開番号】W WO2019004725
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2019-11-27
(31)【優先権主張番号】10-2017-0081419
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0136828
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ション、ジョン ウー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ソン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン チャン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ジン スク
(72)【発明者】
【氏名】ジョ、ピルソン
(72)【発明者】
【氏名】キム、キ ファン
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-173273(JP,A)
【文献】特開2010-188713(JP,A)
【文献】国際公開第2011/077496(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/08 - 5/10
B32B 15/04 - 15/12
B32B 7/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射層と、前記光反射層上に備えられかつSiのみからなる光吸収層とを含み、
前記光吸収層は、400nmにおける消滅係数が0超過4以下であ
り、
前記光吸収層と前記光反射層との間には、両層による界面が形成される、
装飾部材。
【請求項2】
前記光反射層は、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ネオジム(Nd)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、金(Au)および銀(Ag)の中から選択される1種または2種以上の材料を含む、
請求項1に記載の装飾部材。
【請求項3】
前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面、前記光反射層と前記光吸収層との間、または前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面に備えられたカラーフィルムをさらに含む、請求項1
又は2に記載の装飾部材。
【請求項4】
前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面、または前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面に備えられた基材をさらに含む、請求項1
から3のいずれか1項に記載の装飾部材。
【請求項5】
前記光吸収層は、厚さが異なる2以上の地点を含むものである、請求項1から
4のいずれか一項に記載の装飾部材。
【請求項6】
前記光吸収層は、上面が傾斜角度0度超過90度以下の傾斜面を有する領域を1つ以上含み、前記光吸収層は、いずれか1つの傾斜面を有する領域における厚さと異なる厚さを有する領域を1つ以上含むものである、請求項1から
5のいずれか一項に記載の装飾部材。
【請求項7】
前記光吸収層は、△E
*ab>1の二色性を有するものである、請求項1から
6のいずれか一項に記載の装飾部材。
【請求項8】
前記光吸収層の上面は、コーン(cone)形態の突出部または溝部を有するパターン、最高点が線形態の突出部または最低点が線形態の溝部を有するパターン、またはコーン形態の上面が切り取られた構造の突出部または溝部を有するパターンを含むものである、請求項1から
7のいずれか一項に記載の装飾部材。
【請求項9】
前記コーン形態の突出部または溝部を有するパターンは、前記コーン形態のパターンを上面から観察した時、コーンの頂点を基準として360度回転時、同一の形態が2個以下存在するものである、請求項
8に記載の装飾部材。
【請求項10】
前記最高点が線形態の突出部または最低点が線形態の溝部を有するパターンは、上面から観察した時、重心点を基準として360度回転時、同一の形態が1個しか存在しないものである、請求項
8に記載の装飾部材。
【請求項11】
前記光吸収層は、400nmにおける屈折率が0~8である、請求項1から
10のいずれか一項に記載の装飾部材。
【請求項12】
前記装飾部材は、デコフィルムまたはモバイル機器のケースである、請求項1から11のうちのいずれか1項に記載の装飾部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年6月27日付の韓国特許庁に出願された韓国特許出願第10-2017-0081419号および2017年10月20日付の韓国特許庁に出願された韓国特許出願第10-2017-0136828号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、装飾部材およびその製造方法に関する。具体的には、本発明は、モバイル機器や電子製品への使用に適した装飾部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
携帯電話、多様なモバイル機器、家電製品は、製品の機能のほか、製品のデザイン、例えば、色相、形態、パターンなどが、顧客にとっての製品の価値付与に大きな役割を果たす。デザインによって製品の選好度および価格も左右されている。
【0004】
一例として、携帯電話の場合、多様な色相と色感を多様な方法で実現して製品に適用している。携帯電話ケース素材自体に色を付与する方式と、色と形状を実現したデコフィルムをケース素材に付着させてデザインを付与する方式とがある。
【0005】
既存のデコフィルムにおいて、色相の発現は、印刷、蒸着などの方法により実現しようとした。異種の色相を単一面に表現する場合は2回以上印刷をしなければならず、立体パターンに色を多様に与えようとする際は実現が現実的に難しい。また、既存のデコフィルムは、見る角度によって色相が固定されており、やや変化があるとしても色感の差の程度に限る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、多様な色相を容易に実現することができ、必要に応じて立体パターンに多数の色相を実現することができ、見る角度によって色相変化を提供することができる装飾部材を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願の一実施態様は、光反射層と、前記光反射層上に備えられかつSiを含む光吸収層とを含む装飾部材を提供する。
【0008】
本出願のもう一つの実施態様によれば、前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面、前記光反射層と前記光吸収層との間、または前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面にカラーフィルムが備えられてもよい。
【0009】
本出願のもう一つの実施態様によれば、前記カラーフィルムは、前記カラーフィルムが備えられていない場合に比べて前記カラーフィルムが存在する場合、前記装飾部材の色座標CIE L*a*b*上におけるL*a*b*の空間での距離である色差△E*abが1を超えるようにする。
【0010】
本出願のもう一つの実施態様によれば、前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面、または前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面に基材が備えられる。前記基材が前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面に備えられ、前記カラーフィルムは、前記基材と前記光反射層との間、または前記基材の前記光反射層に対向する面の反対面に備えられてもよい。前記基材が前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面に備えられ、前記カラーフィルムは、前記基材と前記光吸収層との間、または前記基材の前記光吸収層に対向する面の反対面に備えられてもよい。
【0011】
本出願のもう一つの実施態様によれば、前記光吸収層は、厚さが異なる2以上の地点を含む。
【0012】
本出願のもう一つの実施態様によれば、前記光吸収層は、厚さが異なる2以上の領域を含む。
【0013】
本出願のもう一つの実施態様によれば、前記光吸収層は、上面が傾斜角度0度超過90度以下の傾斜面を有する領域を1つ以上含み、前記光吸収層は、いずれか1つの傾斜面を有する領域における厚さと異なる厚さを有する領域を1つ以上含む。
【0014】
本出願のもう一つの実施態様によれば、前記光吸収層は、厚さが漸進的に変化する領域を1つ以上含む。
【0015】
本出願のもう一つの実施態様によれば、前記光吸収層は、上面が傾斜角度0度超過90度以下の傾斜面を有する領域を1つ以上含み、少なくとも1つの傾斜面を有する領域は、光吸収層の厚さが漸進的に変化する構造を有する。
【0016】
本出願のもう一つの実施態様によれば、前記光吸収層は、400nmにおける消滅係数(k)値が0超過4以下、好ましくは0.01~4である。
【0017】
本出願のもう一つの実施態様によれば、前記装飾部材は、デコフィルム、またはモバイル機器のケースまたは家電製品ケース、またはカラー装飾が要求される生活用品である。
【発明の効果】
【0018】
本明細書に記載の実施態様によれば、外部光が装飾部材を通して入射時の入射経路と反射時の反射経路それぞれで光吸収が行われ、外部光は光吸収層の表面と光反射層の表面でそれぞれ反射が行われるので、光吸収層の表面における反射光と光反射層の表面における反射光との間に補強干渉および相殺干渉の現象が発生する。前記のような入射経路と反射経路における光吸収と補強干渉および相殺干渉の現象により特定色相が発現できる。したがって、光反射層の材料による反射率スペクトルと光吸収層の組成によって特定色相を実現することができる。また、発現する色相は、厚さ依存性を有するため、同一の物質構成を有する場合にも、厚さに応じて色相を変化させることができる。特に、光吸収層が単一物質のSiからなる場合、ターゲット物質とガス(gas)との相互作用で製造される複合物質とは異なり、単一物質に起因する組成の均一性を確保することができる。
【0019】
追加的に、カラーフィルムをさらに含む場合、前記光反射層と光吸収層の材料および厚さが決定されている場合にも、実現可能な色相の幅をさらに大きく増加させることができる。カラーフィルムの追加による色相変化幅は、カラーフィルムの適用前後のL*a*b*の差である色差(E*ab)で定義することができる。追加的に、同一面に光吸収層が厚さの異なる2以上の地点または領域を持たせることにより、複数の色相発現が可能であり、立体パターンに装飾部材を形成することにより、立体パターンに多様な色相を実現することができる。
【0020】
また、光吸収層の上面が少なくとも1つの傾斜面を持たせる場合、見る角度によって発現する色相の変化を実現できるだけでなく、簡単な工程で光吸収層が厚さの異なる2以上の領域を有するように製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施態様に係る装飾部材の積層構造を例示するものである。
【
図2】光反射層および光吸収層構造における色相発現の作用原理を説明するための模式図である。
【
図3】本発明の実施態様に係る装飾部材の積層構造を例示するものである。
【
図4】本発明の実施態様に係る装飾部材の積層構造を例示するものである。
【
図5】本発明の実施態様に係る装飾部材の積層構造を例示するものである。
【
図6】本発明の実施態様に係る装飾部材の積層構造を例示するものである。
【
図7】本出願の実施態様に係る装飾部材の光吸収層の上面構造を例示するものである。
【
図8】本出願の実施態様に係る装飾部材の光吸収層の上面構造を例示するものである。
【
図9】本出願の実施態様に係る装飾部材の光吸収層の上面構造を例示するものである。
【
図10】本出願の実施態様に係る装飾部材の光吸収層の上面構造を例示するものである。
【
図11】本発明の実施態様に係る装飾部材の積層構造を例示するものである。
【
図12】本発明の実施態様に係る装飾部材の積層構造を例示するものである。
【
図13】本発明の実施態様に係る装飾部材の積層構造を例示するものである。
【
図14】本発明の実施態様に係る装飾部材の積層構造を例示するものである。
【
図15】実施例で製造された装飾部材の色相を示すものである。
【
図16】比較例で製造された装飾部材の色相を示すものである。
【
図17】シリコンの屈折率(n)および消滅係数(k)を示すグラフである。
【
図18】シリコン酸化物の屈折率(n)および消滅係数(k)を示すグラフである。
【
図19】光吸収層および光反射層を区別する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
本明細書において、「地点」とは、面積を有しない1つの位置を意味するものである。本明細書では、光吸収層の厚さが互いに異なる地点が2以上存在することを表すために前記表現が使われる。
【0024】
本明細書において、「領域」とは、一定面積を有する部分を表現する。例えば、前記装飾部材を、光反射層が下部、前記光吸収層が上部に置かれるように地面に置き、前記傾斜面の両端部または厚さが同一の両端部を地面に対して垂直に区分した時、傾斜面を有する領域は、前記傾斜面の両端部に区分された面積を意味し、厚さが同一の領域は、前記厚さが同一の両端部に区分された面積を意味する。
【0025】
本明細書において、「面」または「領域」は、平面であってもよいが、これに限定されず、全部または一部が曲面であってもよい。例えば、垂直断面の形態が円や楕円の弧の一部、波構造、ジグザグなどの構造が含まれる。
【0026】
本明細書において、「傾斜面」とは、前記装飾部材を、光反射層が下部、前記光吸収層が上部に置かれるように地面に置いた時、地面を基準として上面のなす角度が0度超過90度以下の面を意味する。
【0027】
本明細書において、ある層の「厚さ」とは、当該層の下面から上面までの最短距離を意味する。
【0028】
本明細書において、「または」とは、別の定義がない限り、挙げられたものを選択的にまたはすべて含む場合、すなわち、「および/または」の意味を表す。
【0029】
本明細書において、「層」とは、当該層が存在する面積を70%以上覆っているものを意味する。好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上覆っているものを意味する。本出願の一実施態様に係る装飾部材は、光反射層と、前記光反射層上に備えられかつSiを含む光吸収層とを含むことを特徴とする。
図1に光反射層201および光吸収層301を含む装飾部材の構造を例示した。ここで、光吸収層301は、Siを含む。前記光吸収層301は、Siの酸化物または窒化物ではない、Si自体を含むことを特徴とする。
【0030】
図19により、光吸収層と光反射層について説明する。
図19の装飾部材には、各層(layer)が光の入る方向を基準としてL
i-1層、L
i層およびL
i+1層の順に積層されており、L
i-1層とL
i層との間に界面(interface)I
iが位置し、L
i層とL
i+1層との間に界面I
i+1が位置する。
【0031】
薄膜干渉が起こらないように各層に垂直な方向に特定の波長を有する光を照射した時、界面I
iでの反射率を下記数式1で表現することができる。
[数式1]
【数1】
【0032】
前記数式1において、ni(λ)は、i番目の層の波長(λ)による屈折率を意味し、ki(λ)は、i番目の層の波長(λ)による消滅係数(extinction coefficient)を意味する。消滅係数は、特定の波長で対象物質が光をどれだけ強く吸収するかを定義できる尺度であって、定義は上述した通りである。
【0033】
前記数式1を適用して、各波長で計算された界面I
iにおける波長別反射率の合計をR
iとする時、R
iは、下記数式2の通りである。
[数式2]
【数2】
【0034】
一例によれば、前記Siを含む光吸収層は、Siのみからなるものであってもよい。
【0035】
一例によれば、前記光吸収層は、Siのみからなるか、Siと金属との合金からなるものであってもよい。
【0036】
もう一つの例によれば、前記Siを含む光吸収層は、Siのほか、Siと金属との合金層から構成されてもよい。合金に使用可能な金属は、Al、Cu、Ti、Moなどであってもよいが、これらにのみ限定されるものではない。
【0037】
前記Siを含む光吸収層は、蒸着法で形成することができる。蒸着法には、スパッタリング(sputtering)、蒸発(evaporation)、プレーティング(plating)、原子層蒸着(ALD、atomic layer deposition)、エアロゾル噴射法などが含まれる。
【0038】
前記Siを含む光吸収層は、400nm、好ましくは380~780nmにおける消滅係数(k)を有し、例えば、消滅係数が0.01~4であり、0.01~3.5であってもよいし、0.01~3であってもよく、0.01~1であってもよい。
【0039】
一実施態様によれば、前記光吸収層は、単一層であってもよく、2層以上の多層であってもよい。
【0040】
前記実施態様によれば、光吸収層では、光の入射経路および反射経路で光吸収が行われ、また、光は光吸収層の表面と光吸収層と光反射層との界面でそれぞれ反射して、2つの反射光が補強または相殺干渉をする。本明細書において、光吸収層の表面で反射する光は表面反射光、光吸収層と光反射層との界面で反射する光は界面反射光で表現される。
図2にこのような作用原理の模式図を示した。
図2には基材101が光反射層201側に備えられた構造が例示されたが、この構造に限定されず、基材101の位置は、後述する説明の通り、これらは別の位置に配置されてもよい。
【0041】
本出願のもう一つの実施態様によれば、前記光吸収層がパターンを含む場合、前記パターンは、対称構造、非対称構造またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0042】
一例によれば、前記光吸収層は、対称構造のパターンを含むことができる。対称構造としては、プリズム構造、レンチキュラーレンズ構造などが含まれる。
【0043】
本出願のもう一つの実施態様によれば、前記光吸収層が非対称構造のパターンを含むことができる。
【0044】
本明細書において、非対称構造とは、上面、側面または断面から観察した時、少なくとも1つの面で非対称構造を有することを意味する。このように非対称構造を有する場合、前記装飾部材は、二色性を発現することができる。二色性とは、見る角度によって異なる色相が観測されることを意味する。
【0045】
二色性は、前述した色差に関連する
【数3】
で表現することができ、見る角度による色差が△E
*ab>1の場合、二色性があると定義することができる。
【0046】
一例によれば、前記光吸収層は、△E*ab>1の二色性を有するものであってもよい。
【0047】
一例によれば、前記光吸収層の上面は、コーン(cone)形態の突出部または溝部を有するパターン、最高点が線形態の突出部または最低点が線形態の溝部を有するパターン、またはコーン形態の上面が切り取られた構造の突出部または溝部を有するパターンを含むことができる。
【0048】
一例によれば、前記光吸収層は、上面がコーン(cone)形態の突出部または溝部を有するパターンを含む。コーン形態は、円錐、楕円錐、または多角錐の形態を含む。ここで、多角錐の底面の形態は、三角形、四角形、突出点が5個以上の星状などがある。前記コーン形態は、光吸収層の上面に形成された突出部の形態であってもよく、光吸収層の上面に形成された溝部の形態であってもよい。前記突出部は、断面が三角形であり、前記溝部は、断面が逆三角形形態になる。光吸収層の下面も、光吸収層の上面と同一の形態を有することができる。
【0049】
一例によれば、前記コーン形態のパターンは、非対称構造を有することができる。例えば、前記コーン形態のパターンを上面から観察した時、コーンの頂点を基準として360度回転時、同一の形態が3個以上存在する場合、前記パターンから二色性が発現しにくい。しかし、前記コーン形態のパターンを上面から観察した時、コーンの頂点を基準として360度回転時、同一の形態が2個以下存在する場合、二色性が発現できる。
図7は、コーン形態の上面を示すもので、(a)は、すべて対称構造のコーン形態を示すものであり、(b)は、非対称構造のコーン形態を例示するものである。
【0050】
対称構造のコーン形態は、コーン形態の底面が円であるか各辺の長さが同一の正多角形であり、コーンの頂点が底面の重心点の垂直線上に存在する構造である。しかし、非対称構造のコーン形態は、これを上面から観察した時、コーンの頂点の位置を底面の重心点でない点の垂直線上に存在する構造であるか、底面が非対称構造の多角形または楕円の構造である。底面が非対称構造の多角形の場合は、多角形の辺または角の少なくとも1つを残りと異なって設計することができる。
【0051】
例えば、
図8のように、コーンの頂点の位置を変更することができる。具体的には、
図8の1番目の図のように、上面から観察時、コーンの頂点を底面の重心点01の垂直線上に位置するように設計する場合、コーンの頂点を基準として360度回転時、4つの同一の構造を得ることができる(4 fold symmetry)。しかし、コーンの頂点を底面の重心点01でない位置02に設計することにより、対称構造が破れる。底面の一辺の長さをx、コーンの頂点の移動距離をaおよびb、コーンの頂点01または02から底面まで垂直に連結した線の長さであるコーン形態の高さをh、底面とコーンの側面とのなす角度をθnとすれば、
図8の面1、面2、面3および面4に対して、下記のようなコサイン値が得られる。
【数4】
【0052】
この時、θ1とθ2は同一であるので、二色性がない。しかし、θ3とθ4は異なり、|θ3-θ4|は2色間の色差(E*ab)を意味するので、二色性を示すことができる。ここで、|θ3-θ4|>0である。このように、コーンの底面と側面とのなす角度を利用して、対称構造がどれだけ破れているか、すなわち非対称の程度を定量的に示すことができ、このような非対称の程度を示す数値は、二色性の色差に比例する。
【0053】
もう一つの例によれば、前記光吸収層は、最高点が線形態の突出部または最低点が線形態の溝部を有するパターンを含む。前記線形態は、直線形態であってもよく、曲線形態であってもよいし、曲線と直線をすべて含んでもよい。線形態の突出部または溝部を有するパターンを上面から観察した時、上面の重心点を基準として360度回転時、同一の形態が2個以上存在する場合、二色性を発現しにくい。しかし、線形態の突出部または溝部を有するパターンを上面から観察した時、上面の重心点を基準として360度回転時、同一の形態が1個しか存在しない場合、二色性を発現することができる。
図9は、線形態の突出部を有するパターンの上面を示すもので、(a)は、二色性を発現しない線形態の突出部を有するパターンを例示するものであり、(b)は、二色性を発現する線形態の突出部を有するパターンを例示するものである。
図9(a)のX-X'断面は、二等辺三角形または正三角形であり、
図9(b)のY-Y'断面は、側辺の長さが互いに異なる三角形である。
【0054】
もう一つの例によれば、前記光吸収層は、上面がコーン形態の上面が切り取られた構造の突出部または溝部を有するパターンを含む。このようなパターンの断面は、台形または逆台形形態であってもよい。この場合にも、上面、側面または断面が非対称構造を有するように設計することにより、二色性を発現することができる。
【0055】
前記例示した構造以外にも、
図10のような多様な突出部または溝部パターンを実現することができる。
【0056】
本出願のもう一つの実施態様によれば、前記光吸収層は、厚さが異なる2以上の領域を含むことができる。
【0057】
前記実施態様に係る構造の例示を
図3および
図4に示した。
図3および
図4は、光反射層201および光吸収層301が積層された構造を例示するものである。基材101は、光反射層201側に備えられるか、光吸収層301側に備えられてもよい。
図3および
図4によれば、前記光吸収層301は、互いに異なる厚さを有する2以上の地点を有する。
図3によれば、A地点とB地点における光吸収層301の厚さが異なる。
図4によれば、C領域とD領域における光吸収層301の厚さが異なる。
【0058】
本出願のもう一つの実施態様によれば、前記光吸収層は、上面が傾斜角度0度超過90度以下の傾斜面を有する領域を1つ以上含み、前記光吸収層は、いずれか1つの傾斜面を有する領域における厚さと異なる厚さを有する領域を1つ以上含む。
【0059】
前記光反射層の上面の傾斜度のような表面特性は、前記光吸収層の上面と同一であってもよい。例えば、光吸収層の形成時に蒸着方法を利用することにより、光吸収層の上面は、光反射層の上面と同一の傾斜度を有することができる。
【0060】
図5に上面が傾斜面を有する光吸収層を有する装飾部材の構造を例示した。基材101、光反射層201および光吸収層301が積層された構造であって、光吸収層301のE領域における厚さt1とF領域における厚さt2とは異なる。
【0061】
図5は、互いに対向する傾斜面、すなわち断面が三角形の構造を有する光吸収層に関する。
図5のように、互いに対向する傾斜面を有するパターンの構造では、同じ条件で蒸着を進行させても三角形構造の2つの面で光吸収層の厚さが異なる。これによって、1回の工程だけで厚さが異なる2以上の領域を有する光吸収層を形成することができる。これによって、光吸収層の厚さに応じて発現色相が異なる。この時、光反射層の厚さは、一定以上であれば、色相変化に影響を及ぼさない。
【0062】
図5は、基材101が光反射層201側に備えられた構造が例示されたが、この構造に限定されず、基材101の位置は、前述した説明の通り、これらは別の位置に配置されてもよい。また、
図5の基材101は、光反射層201と接する面が平坦面であるが、基材101の光反射層201と接する面は、光反射層201の上面と同じ傾きを有するパターンを有することができる。この場合、基材のパターンの傾きの差のため、光吸収層の厚さも差が発生しうる。しかし、これに限定されず、他の蒸着方法を利用して基材と光吸収層が異なる傾きを有するようにするとしても、パターンの両側に光吸収層の厚さを異ならせることで前述した二色性を示すことができる。
【0063】
本出願のもう一つの実施態様によれば、前記光吸収層は、厚さが漸進的に変化する領域を1つ以上含む。
図3によれば、光吸収層の厚さが漸進的に変化する構造を例示した。
【0064】
本出願のもう一つの実施態様によれば、前記光吸収層は、上面が傾斜角度0度超過90度以下の傾斜面を有する領域を1つ以上含み、少なくとも1つの傾斜面を有する領域は、光吸収層の厚さが漸進的に変化する構造を有する。
図6に上面が傾斜面を有する領域を含む光吸収層の構造を例示した。
図6のG領域とH領域とも、光吸収層の上面が傾斜面を有し、光吸収層の厚さが漸進的に変化する構造を有する。
【0065】
一例によれば、前記光吸収層は、傾斜角度が1度~90度の範囲内である第1傾斜面を有する第1領域を含み、上面が前記第1傾斜面と傾斜方向が異なるか、傾斜角度が異なる傾斜面を有するか、上面が水平である第2領域をさらに含んでもよい。この時、前記第1領域と前記第2領域における光吸収層の厚さが互いに異なっていてもよい。
【0066】
もう一つの例によれば、前記光吸収層は、傾斜角度が1度~90度の範囲内である第1傾斜面を有する第1領域を含み、上面が前記第1傾斜面と傾斜方向が異なるか、傾斜角度が異なる傾斜面を有するか、上面が水平である2つ以上の領域をさらに含んでもよい。この時、前記第1領域および前記2つ以上の領域における光吸収層の厚さは、すべて互いに異なっていてもよい。
【0067】
本出願のもう一つの実施態様によれば、前記装飾部材は、前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面、前記光反射層と前記光吸収層との間、または前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面に備えられたカラーフィルムを含む。
【0068】
前記カラーフィルムは、前記カラーフィルムが備えられていない場合に比べて前記カラーフィルムが存在する場合、前記装飾部材の色座標CIE L*a*b*上におけるL*a*b*の空間での距離である色差△E*abが1を超えるようにするものであれば特に限定されない。
【0069】
色の表現はCIE L*a*b*で表現が可能であり、色差はL*a*b*空間での距離(△E
*ab)を用いて定義される。具体的には、
【数5】
であり、0<△E
*ab<1の範囲内では観察者が色差を認知することができない[参考文献:Machine Graphics and Vision20(4):383-411]。したがって、本明細書では、カラーフィルムの追加による色差を△E
*ab>1で定義することができる。
【0070】
図11は、カラーフィルムを含む色変換層を示すものであって、
図11(a)に光反射層201、光吸収層301およびカラーフィルム401が順次に積層された構造、
図11(b)に光反射層201、カラーフィルム401および光吸収層301が順次に積層された構造、および
図11(c)にカラーフィルム401、光反射層201および光吸収層301が順次に積層された構造を例示した。
【0071】
前記カラーフィルムは、基材の役割を果たすこともできる。例えば、基材として使用可能なものに染料または顔料を添加することにより、カラーフィルムとして使用できる。
【0072】
前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面(
図12(a));または前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面(
図12(b))に基材が備えられてもよい。
【0073】
例えば、前記基材が前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面に備えられ、前記カラーフィルムが前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面に位置する場合、前記カラーフィルムは、前記基材と前記光反射層との間;または前記基材の前記光反射層に対向する面の反対面に備えられてもよい。もう一つの例として、前記基材が前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面に備えられ、前記カラーフィルムが前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面に位置する場合、前記カラーフィルムは、前記基材と前記光吸収層との間;または前記基材の前記光吸収層に対向する面の反対面に備えられてもよい。
【0074】
本出願の一実施態様によれば、前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面に基材が備えられ、カラーフィルムが追加的に備えられる。
図13(a)にはカラーフィルム401が光吸収層301の光反射層201側の反対面に備えられた構造、
図13(b)にはカラーフィルム401が光吸収層301と光反射層201との間に備えられた構造、
図13(c)にはカラーフィルム401が光反射層201と基材101との間に備えられた構造、
図13(d)にはカラーフィルム401が基材101の光反射層201側の反対面に備えられた構造を示すものである。
図13(e)には、カラーフィルム401a、401b、401c、401dがそれぞれ、光吸収層301の光反射層201側の反対面、光吸収層301と光反射層201との間、光反射層201と基材101との間、および基材101の光反射層201側の反対面に備えられた構造を例示するものであり、これにのみ限定されるものではなく、カラーフィルム401a、401b、401c、401dのうちの1~3個は省略されてもよい。
【0075】
本出願のもう一つの実施態様によれば、前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面に基材が備えられ、カラーフィルムが追加的に備えられる。
図14(a)にはカラーフィルム401が基材101の光吸収層301側の反対面に備えられた構造、
図14(b)にはカラーフィルム401が基材101と光吸収層301との間に備えられた構造、
図14(c)にはカラーフィルム401が光吸収層301と光反射層201との間に備えられた構造、
図14(d)にはカラーフィルム401が光反射層201の光吸収層301側の反対面に備えられた構造を示すものである。
図14(e)には、カラーフィルム401a、401b、401c、401dがそれぞれ、基材101の光吸収層301側の反対面、基材101と光吸収層301との間、光吸収層301と光反射層201との間、および光反射層201の光吸収層301側の反対面に備えられた構造を例示するものであり、これにのみ限定されるものではなく、カラーフィルム401a、401b、401c、401dのうちの1~3個は省略されてもよい。
【0076】
図13(b)と
図14(c)のような構造は、カラーフィルムの可視光透過率が0%超過であれば、光反射層でカラーフィルムを通過して入射した光を反射できるため、光吸収層と光反射層との積層による色相実現が可能である。
【0077】
図13(c)、
図13(d)および
図14(d)のような構造では、カラーフィルムの追加による色差変化を認識できるように、光反射層201のカラーフィルムから発現する色相の光透過率が1%以上、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上であることが好ましい。このような可視光線透過率範囲で透過された光が、カラーフィルムによる色相と混合できるからである。
【0078】
前記カラーフィルムは、1枚または、同種または異種が2枚以上積層された状態で備えられてもよい。
【0079】
前記カラーフィルムは、前述した光反射層および光吸収層の積層構造から発現する色相と共に組み合わされて所望の色相を発現できるものを使用することができる。例えば、顔料および染料のうちの1種または2種以上がマトリックス樹脂内に分散して色相を示すカラーフィルムが使用できる。前記のようなカラーフィルムは、カラーフィルムが備えられる位置に直接カラーフィルム形成用組成物をコーティングして形成してもよく、別途の基材にカラーフィルム形成用組成物をコーティングするか、キャスティング、押出などの公知の成形方法を利用してカラーフィルムを製造した後、カラーフィルムが備えられる位置にカラーフィルムを配置または付着させる方法が利用可能である。コーティング方法は、ウェットコーティングまたはドライコーティングが使用できる。
【0080】
前記カラーフィルムに含まれる顔料および染料としては、最終装飾部材料から所望の色相を達成できるものであって、当技術分野で知られているものの中から選択されてもよいし、赤色系、黄色系、紫色系、青色系、ピンク色系などの顔料および染料のうちの1種または2種以上が使用できる。具体的には、ペリノン(perinone)系赤色染料、アントラキノン系赤色染料、メチン系黄色染料、アントラキノン系黄色染料、アントラキノン系紫色染料、フタロシアニン系青色染料、チオインジゴ(thioindigo)系ピンク色染料、イソキシンジゴ(isoxindigo)系ピンク色染料などの染料が単独または組み合わせで使用できる。カーボンブラック、銅フタロシアニン(C.I.Pigment Blue15:3)、C.I.Pigment Red112、Pigment blue、Isoindoline yellowなどの顔料が単独または組み合わせで使用されてもよい。前記のような染料または顔料は、市販のものを用いることができ、例えば、Ciba ORACET社、Chokwang Paint(株)などの材料を使用することができる。前記染料または顔料の種類およびこれらの色相は例示に過ぎず、公知の染料または顔料が多様に使用可能であり、これによってさらに多様な色相を実現することができる。
【0081】
前記カラーフィルムに含まれるマトリックス樹脂は、透明フィルム、プライマー層、接着層、コーティング層などの材料として公知の材料が使用可能であり、特にその材料に限定されない。例えば、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ウレタン系樹脂、線状オレフィン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、トリアセチルセルロース系樹脂など多様な材料が選択されてもよいし、前記例示された材料の共重合体または混合物も使用できる。
【0082】
前記カラーフィルムが前記光反射層または前記光吸収層より装飾部材を観察する位置にさらに近く配置された場合、例えば、
図13(a)、(b)、
図14(a)、(b)、(c)のような構造では、前記カラーフィルムが光反射層、光吸収層または光反射層と光吸収層との積層構造から発現する色相の光透過率が1%以上、好ましくは2%以上、より好ましくは3%以上であることが好ましい。これによって、カラーフィルムから発現する色相と、光反射層、光吸収層またはこれらの積層構造から発現する色相とが共に組み合わされて所望の色相を達成することができる。
【0083】
前記カラーフィルムの厚さは特に限定されず、所望の色相を示すことができれば、当技術分野における通常の知識を有する者が厚さを選択して設定することができる。例えば、カラーフィルムの厚さは、500nm~1mmであってもよい。
【0084】
前記光吸収層は、屈折率(n)、消滅係数(k)および厚さ(t)に応じて多様な色相実現が可能である。また、光吸収層の厚さと上面の傾斜角を調整することにより多様な色相を実現できることが分かる。これに加えて、カラーフィルムを備えることによってより多様な色相を実現することができる。
【0085】
前記光反射層は、光を反射できる材料であれば特に限定されないが、光反射率は、材料によって決定可能であり、例えば、50%以上で色相実現が容易である。光反射率は、ellipsometerを用いて測定することができる。
【0086】
前記光吸収層は、400nmにおける屈折率(n)が0~8であることが好ましく、0~7であってもよく、0.01~3であってもよく、2~2.5であってもよい。屈折率(n)は、sinθ1/sinθ2(θ1は、光吸収層の表面で入射する光の角であり、θ2は、光吸収層の内部における光の屈折角である)で計算される。
【0087】
前記光吸収層は、380~780nmにおける屈折率(n)が0~8であることが好ましく、0~7であってもよく、0.01~3であってもよく、2~2.5であってもよい。
【0088】
前記光吸収層は、400nmにおける消滅係数(k)が0超過4以下であり、0.01~4であることが好ましく、0.01~3.5であってもよく、0.01~3であってもよいし、0.1~1であってもよい。消滅係数(k)は、-λ/4πI(dI/dx)(ここで、光吸収層内における経路単位長(dx)、例えば、1mあたりの光の強度の減少分率dI/Iにλ/4πを乗算した値であり、ここで、λは、光の波長である。
【0089】
前記光吸収層は、380~780nmにおける消滅係数(k)が0超過4以下であり、0.01~4であることが好ましく、0.01~3.5であってもよく、0.01~3であってもよいし、0.1~1であってもよい。
【0090】
400nm、好ましくは380~780nmの可視光線全体波長領域における消滅係数(k)が前記範囲であるので、可視光線全体に対して光吸収層の役割を果たすことができる。
【0091】
シリコン(Si)自体の消滅係数(k)および屈折率(n)は
図7に示した。380~780nmにおける屈折率は0~8であり、消滅係数は0.1~1、具体的には0.4~0.8である。
【0092】
例えば、樹脂中に染料を添加して光を吸収する方式を利用するものと、前述のような消滅係数を有する材料を使用する場合とでは、光を吸収するスペクトルが異なる。樹脂中に染料を添加して光を吸収する場合、吸収波長帯が固定され、コーティング厚さの変化に応じて吸収量が変化する現象のみ発生する。また、所望の光吸収量を得るために、光吸収量を調節するために最小数マイクロメートル以上の厚さ変化が必要である。反面、消滅係数を有する材料では、厚さが数または数十ナノメートル規模に変化しても吸収する光の波長帯が変化する。
【0093】
一実施態様によれば、前記光反射層は、金属層、金属酸化物層、金属窒化物層、金属酸窒化物層、炭素または炭素複合体層または無機物層であってもよい。前記光反射層は、単一層で構成されてもよく、2層以上の多層で構成されてもよい。
【0094】
一例として、前記光反射層は、インジウム(In)、スズ(Sn)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ネオジム(Nb)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、金(Au)および銀(Ag)の中から選択される1種または2種以上の材料、その酸化物、窒化物または酸窒化物、炭素および炭素複合体のうちの1種または2種以上の材料を含む単一層または多層であってもよい。例えば、前記光反射層は、前記材料の中から選択される2つ以上の合金、その酸化物、窒化物または酸窒化物を含むことができる。より具体的には、モリブデン、アルミニウムまたは銅を含むことができる。もう一つの例によれば、前記光反射層は、炭素または炭素複合体を含むインクを用いて製造されることにより、高抵抗の反射層を実現することができる。炭素または炭素複合体としては、カーボンブラック、CNTなどがある。前記炭素または炭素複合体を含むインクは、前述した材料またはその酸化物、窒化物または酸窒化物を含むことができ、例えば、インジウム(In)、チタン(Ti)、スズ(Sn)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ネオジム(Nb)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、金(Au)および銀(Ag)の中から選択される1種または2種以上の酸化物が含まれる。前記炭素または炭素複合体を含むインクを印刷した後、硬化工程が追加的に行われてもよい。
【0095】
前記光反射層は、2種以上の材料を含む場合、2種以上の材料を1つの工程、例えば、蒸着または印刷の方法を利用して形成してもよいが、1種以上の材料で先に層を形成した後、追加的に1種以上の材料でその上に層を形成する方法が利用可能である。例えば、インジウムやスズを蒸着して層を形成した後、炭素を含むインクを印刷した後、硬化させて光反射層を形成することができる。前記インクは、チタン酸化物、シリコン酸化物のような酸化物が追加的に含まれてもよい。
【0096】
一実施態様によれば、前記光反射層の厚さは、最終構造において所望の色相によって決定可能であり、例えば、1nm以上、好ましくは25nm以上、例えば、50nm以上、好ましくは70nm以上である。
【0097】
一実施態様によれば、前記光吸収層の厚さは、5~500nm、例えば、30~500nmであってもよい。
【0098】
一実施態様によれば、前記光吸収層の領域別厚さの差は、2~200nmであり、所望の色相差によって決定可能である。
【0099】
一実施態様によれば、前記光反射層の下面または前記光吸収層の上面に備えられた基材をさらに含んでもよい。前記基材の上面の傾斜度のような表面特性は、前記光反射層および光吸収層の上面と同一であってもよい。これは、光反射層と光吸収層が蒸着方法によって形成されることにより、基材、光反射層および光吸収層が同一の角度の傾斜面を有することができる。例えば、前記のような構造は、基材の上面に傾斜面または立体構造を形成し、その上に光反射層および光吸収層を順に蒸着するか、光吸収層および光反射層を順に蒸着することにより実現できる。
【0100】
一例によれば、前記基材の表面に傾斜面または立体構造を形成することは、紫外線硬化型樹脂にパターンを形成し、紫外線を用いて硬化することにより製造するか、レーザで加工する方法で行うことができる。
【0101】
一実施態様によれば、前記装飾部材は、デコフィルムまたはモバイル機器のケースであってもよい。前記装飾部材は、必要に応じて粘着層をさらに含んでもよい。
【0102】
前記基材の材料は特に限定されず、前記のような方法で傾斜面または立体構造を形成する場合、当技術分野で公知の紫外線硬化型樹脂が使用できる。
【0103】
前記光吸収層上には、追加的に保護層が備えられてもよい。
【0104】
一例によれば、前記光吸収層または光反射層が備えられた基材の反対面には、追加的に接着剤層が備えられてもよい。この接着剤層は、OCA(optically clear adhesive)層であってもよい。前記接着剤層上には、必要に応じて保護のための剥離層(release liner)が追加的に備えられてもよい。
【0105】
本明細書では、光反射層および光吸収層を形成する方法の例示としてスパッタリング方式のような蒸着を言及したが、本明細書に記載の実施態様に係る構成および特性を有することができれば、薄膜を作製する多様な方式の適用が可能である。例えば、蒸発蒸着法、CVD(chemical vapor deposition)、ウェットコーティング(wet coating)などが使用できる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。以下の実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するためのものではない。
【0107】
実施例1
PET基材上にAlをスパッタリング方式で蒸着して光反射層(Al、厚さ120nm)を形成した後、その上にスパッタリング方法によってSiからなる光吸収層を形成した。光吸収層の厚さは、10nmから100nmまで10nmの間隔で10種類の厚さを有するようにした。前記光吸収層上にガラスを配置した。この構造において、Siのn、k値を用い、Siの厚さ変化による色相変化のシミュレーション結果を
図15に示した。
図15により、実施例1の場合は、k値を有するSiの影響で10~100nmの範囲で多様な色相を示すことを確認することができる。
図17は、シリコンの屈折率(n)および消滅係数(k)を示すグラフである。
【0108】
実施例2
光吸収層の厚さを120nmから20nmずつ増加して300nmまで増加させたことを除けば、実施例1と同様に実施した。この構造において、Siの厚さ変化による色相変化のシミュレーション結果を
図15に示した。
図15により、実施例2の場合は、k値を有するSiの影響で120~300nmの範囲で多様な色相を示すことを確認することができる。
【0109】
比較例1および2
Siのみで光吸収層を形成する代わりにシリコン酸化物からなる光吸収層を形成したことを除けば、実施例1および2と同様に実施した。この構造において、シリコン酸化物のn、k値を用い、シリコン酸化物の厚さ変化による色相変化のシミュレーション結果を
図16に示した。
図16により、比較例1、2の場合、k値を有しないシリコン酸化物(
図16にはOxideで表現されている)の影響によって色相変化が屈折率に起因する現象だけなので、類似する色相の変化としてのみ現れることを確認することができる。
図18は、シリコン酸化物の屈折率(n)および消滅係数(k)を示すグラフである。