(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】ブルーライトカットフィルム、それを含む光学フィルタ、およびディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20220125BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20220125BHJP
C09B 47/00 20060101ALI20220125BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220125BHJP
C08K 5/3467 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
G02B5/22
C09B67/20 F
C09B47/00
C08L101/00
C08K5/3467
(21)【出願番号】P 2020538082
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 KR2019014569
(87)【国際公開番号】W WO2020091447
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2020-07-10
(31)【優先権主張番号】10-2018-0131916
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョー、ムン キュ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヨン クン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジュンヘン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドク ファン
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-057437(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0039300(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0101106(KR,A)
【文献】特開2002-086925(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2020-0018917(KR,A)
【文献】MATANO, Yoshihiro, et al.,Nickel(II) and Copper(II) Complexes of β-Unsubstituted 5,15-Diazaporphyrins and Pyridazine-Fused Diazacorrinoids:Metal-Template Syntheses and Peripheral Functionalizations,CHEM. EUR. J.,2012年03月30日,VOL.18, NO.20,p.6208-6216,DOI:10.1002/chem.201200463
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
C09B 67/20
C09B 47/00
C08L 101/00
C08K 5/3467
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式
2または化学式3のジアザポルフィリン系化合物を含み、
380nm~450nmの範囲内で吸収を有し、
560nm~600nmの範囲内で主吸収ピークを有し、
前記主吸収ピークの半値幅が30nm以下である、ブルーライトカットフィルム。
[化学式2]
【化1】
[化学式3]
【化2】
【請求項2】
前記ジアザポルフィリン系化合物は、380nm~450nmの範囲内で吸収を有し、
560nm~600nmの領域で主吸収ピークを有し、
前記主吸収ピークの半値幅が25nm以下である、請求項1に記載のブルーライトカットフィルム。
【請求項3】
前記化学式
2および前記化学式3のジアザポルフィリン系化合物を含む、請求項1に記載のブルーライトカットフィルム。
【請求項4】
テトラアザポルフィリン、シアニン、およびスクアレン系の染料からなる群から選択される少なくとも1つの染料をさらに含む、請求項1~
3の何れか一項に記載のブルーライトカットフィルム。
【請求項5】
前記テトラアザポルフィリン、シアニン、およびスクアレン系の染料からなる群から選択される少なくとも1つの染料の含量は、前記ジアザポルフィリン系化合物100重量部に対して0.005重量部~4重量部である、請求項
4に記載のブルーライトカットフィルム。
【請求項6】
ベンゾトリアゾール、トリス-レゾルシノール-トリアジン、ヒドロキシ-ベンゾトリアゾール、およびヒドロキシフェニル-ベンゾトリアゾール系の染料からなる群から選択される少なくとも1つの染料をさらに含む、請求項1~
5の何れか一項に記載のブルーライトカットフィルム。
【請求項7】
前記ベンゾトリアゾール、トリス-レゾルシノール-トリアジン、ヒドロキシ-ベンゾトリアゾール、およびヒドロキシフェニル-ベンゾトリアゾール系の染料からなる群から選択される少なくとも1つの染料の含量は、前記ジアザポルフィリン系化合物100重量部に対して0.001重量部~4重量部である、請求項
6に記載のブルーライトカットフィルム。
【請求項8】
粘着剤をさらに含み、
前記ブルーライトカットフィルムの厚さが15μm~25μmである、請求項1~
7の何れか一項に記載のブルーライトカットフィルム。
【請求項9】
高分子樹脂をさらに含み、
前記ブルーライトカットフィルムの厚さが1μm~50μmである、請求項1~
7の何れか一項に記載のブルーライトカットフィルム。
【請求項10】
請求項1~
9の何れか一項に記載のブルーライトカットフィルムを含む光学フィルタ。
【請求項11】
請求項
10に記載の光学フィルタを含むディスプレイ装置。
【請求項12】
液晶ディスプレイ装置または有機電界発光ディスプレイ装置である、請求項
11に記載のディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ブルーライトカットフィルム、それを含む光学フィルタ、およびディスプレイ装置に関する。
【0002】
本出願は、2018年10月31日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10‐2018‐0131916号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、ディスプレイおよび照明装置において、ブルーライトカット機能の重要性に対する認識が増大している。スマートウォッチ、タブレットPC、スマートグラスなどのディスプレイ装置は、外部での使用が増加する傾向にあるため、UVカット材料とともにその重要性が大きくなっている。
【0004】
ブルーライトは、可視光線の中で、波長が380nm~495nmの範囲内にある青色光であり、ヒトの目で見られる可視光線の中でも、最も波長が短く、紫外線に近い強いエネルギーを持っている。したがって、長期間にわたって持続的に暴露されると、ディスプレイおよび照明などに用いられる材料の性能が低下し、ディスプレイもしくは照明素子の製品寿命が短縮される。特に、OLEDディスプレイもしくはOLED照明素子に用いられる発光物質は、ブルーライトに対する安定性が低いと知られているため、ブルーライトカット機能が非常に重要である。
【0005】
また、明るい空間でディスプレイを用いる際に、光の反射によって画面の鮮明度が低下するため、反射防止機能が必要である。特に、ディスプレイにおける原色に近い表現能力を得るために、色再現力(Color Gamut)の向上も求められている。照明素子では、高い演色性の実現が必要である。
【0006】
かかるブルーライトカット、反射防止、および色再現力の向上を何れも実現するために、それぞれの機能を有する材料を組み合わせまたは多層フィルム化して用いている。しかし、これにより、製品の厚さが厚くなり、コストが上昇するという問題があるため、素子の構造を単純化するための研究が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書は、ブルーライトカットフィルム、それを含む光学フィルタ、およびディスプレイ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書の一実施態様は、下記化学式1のジアザポルフィリン系化合物を含み、380nm~450nmの範囲内で吸収を有し、560nm~600nmの範囲内で主吸収ピークを有し、前記主吸収ピークの半値幅が30nm以下である、ブルーライトカットフィルムを提供する。
[化学式1]
【化1】
【0009】
前記化学式1中、
R1~R14は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素;ハロゲン基;ニトロ基;シアノ基;アミノ基;カルボキシル基;ヒドロキシル基;置換されているかまたは置換されていないアリール基;置換されているかまたは置換されていないヘテロアリール基;置換されているかまたは置換されていないアルキル基;または置換されているかまたは置換されていないアルコキシ基であり、
Mは、Cu;Ni;Pd;Mn;VO;またはPbである。
【0010】
本明細書の他の一実施態様は、上述のブルーライトカットフィルムを含む光学フィルタを提供する。
【0011】
本明細書の他の一実施態様は、上述の光学フィルタを含むディスプレイ装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本明細書の一実施態様に系るディスプレイ装置は、ブルーライトを遮断するとともに、色再現率を向上させ、外光反射度を低下させる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本明細書の一実施態様に係るディスプレイの構造を例示した図である。
【
図2】本明細書の一実施態様に係る偏光板を含まないディスプレイの構造を例示した図である。
【
図3】本明細書の実施例1の吸収スペクトルである。
【
図4】本明細書の実施例2の吸収スペクトルである。
【
図5】本明細書の実施例3の吸収スペクトルである。
【
図6】本明細書の比較例1の吸収スペクトルである。
【
図7】本明細書の比較例2の吸収スペクトルである。
【
図8】本明細書の比較例3の吸収スペクトルである。
【
図9】本明細書の比較例4の吸収スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本明細書について詳細に説明する。
【0015】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時に、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0016】
本明細書において「主吸収ピーク」は、色再現率および外光反射率の改善において直接的な役割をするものであって、500nm以上の可視光領域で最も強度が高いピーク(最も高い吸収度)を意味する。
【0017】
本明細書において、「半値幅」は、吸収スペクトルにおいてピークの幅を表し、ピーク最大値の半分になる値でのピークの幅を意味する。
【0018】
本明細書の一実施態様は、ブルーライトカットフィルムであって、ジアザポルフィリン系化合物を含み、380nm~450nmの範囲内で吸収を有し、560nm~600nmの範囲内で主吸収ピークを有し、前記主吸収ピークの半値幅が30nm以下であることを特徴とする。
【0019】
前記380nm~450nmの範囲内で吸収を有するとは、380nm~450nmの範囲内の全ての領域または一部の領域で吸収を有することを意味する。
【0020】
本明細書に系るブルーライトカットフィルムは、380nm~450nmの範囲内で最大吸収を有するピークの吸光係数(α)が105cm-1以上の値を有するべきであり、380nm~450nmの範囲内の全ての波長で、吸光係数(α)が103cm-1以上の値を有することが好ましい。380nm~450nmの範囲での吸光係数(α)に上限はないが、例えば、108cm-1以下であってもよい。
【0021】
本明細書において、吸光係数(α)は吸収スペクトルの測定により分析可能であり、この際、吸収スペクトルのY軸が吸光度(A)を表す。したがって、下記の式により吸光係数(α)を計算することができる。
【数1】
【数2】
(A:吸光度、α:吸光係数、b:長さ(または厚さ)、c:染料の濃度、T:透過度)
【0022】
現在使用されている大部分のカラーフィルタは、ブルーライトカット機能を有しておらず、約420nm以下の領域でも吸収が高くないことが一般的である。これに対し、本発明のジアザポルフィリン系化合物を含むブルーライトカットフィルムは、カラーフィルタのみを使用した際には実現することが困難であった高い色再現率を実現するとともに、パネルの低い反射率、ブルーライトカット機能を同時に実現することができる。換言すれば、1つの物質、本発明のジアザポルフィリン系化合物のみを用いて多機能の実現が可能である。
【0023】
本明細書の一実施態様において、前記ジアザポルフィリン系化合物は、下記化学式1で表される。
[化学式1]
【化2】
【0024】
前記化学式1中、R1~R14は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素;ハロゲン基;ニトロ基;シアノ基;アミノ基;カルボキシル基;ヒドロキシル基;置換されているかまたは置換されていないアリール基;置換されているかまたは置換されていないヘテロアリール基;置換されているかまたは置換されていないアルキル基;または置換されているかまたは置換されていないアルコキシ基であり、
Mは、Cu;Ni;Pd;Mn;VO;またはPbである。
【0025】
本発明に係るジアザポルフィリン系化合物は、meso-C位にフェニル基が置換された構造を有することで、ジアザポルフィリン系化合物の耐光安定性を改善させる効果がある。
【0026】
本明細書の一実施態様において、前記化学式1は、下記化学式1-1で表されてもよい。
[化学式1-1]
【化3】
【0027】
前記化学式1-1中、各置換基の定義は、前記化学式1における定義のとおりである。
【0028】
前記化学式1-1の化合物のように、ジアザポルフィリン構造のmeso-C位にメシチル(mesityl)基を必須に有することとなり、ジアザポルフィリン構造の光安定性を向上させることができる。
【0029】
本明細書の一実施態様に系るジアザポルフィリン系化合物は金属錯化合物であって、前記Mと錯化合物を成した時に蛍光発現が観察されない。一般に、蛍光は一重項遷移により起こるが、金属錯化合物の場合、重原子効果により、一重項から三重項へ項間交差が起こる。この際、三重項から一重項への遷移は、燐光または非発光消滅で現れる。前記ジアザポルフィリン系化合物の金属錯化合物は、非発光消滅で現れることとなり、蛍光が消光される。これに対し、従来の有機物のみからなるブルーライトカット機能の材料は、殆どの場合、蛍光発現特性を有しており、蛍光は、偏光板の使用時に偏光度を低下させる恐れがあり、偏光板を適用しないとしても、ディスプレイの色純度を低下させる恐れがある。
【0030】
ジアザポルフィリン系化合物の代わりにテトラアザポルフィリン系化合物を用いる場合、380nm以上の領域で吸収が殆どなく、meso-Nが全く含まれていないポルフィリン系化合物は、ブルー吸収領域でシャープ(sharp)な吸収を有するため、一部のブルー領域またはUVA波長領域では吸収を有することができない欠点がある。
【0031】
本明細書の一実施態様に系るブルーライトカットフィルムは、380nm~450nmの範囲内で、吸収により外部光からブルーライトを遮断することができ、560nm~600nmの範囲内で主吸収ピークを有することにより、色再現率を向上させ、外部光に対する反射度を低減させる。
【0032】
本明細書の一実施態様において、前記ブルーライトカットフィルムの主吸収ピークの半値幅は30nm以下であり、好ましくは25nm以下であり、より好ましくは20nm以下である。主吸収ピークの半値幅は小さいほど好ましく、例えば、5nm以上である。
【0033】
本明細書の一実施態様において、前記主吸収ピークおよび半値幅は、UV-VIS Spectrometer(島津製作所、UV-3600 Plus)を用いて測定可能である。
【0034】
本明細書の一実施態様において、前記ジアザポルフィリン系化合物は、380nm~450nmの範囲内で吸収を有し、560nm~600nmの範囲内で主吸収ピークを有し、前記主吸収ピークの半値幅は25nm以下である。
【0035】
本明細書の一実施態様において、前記ジアザポルフィリン系化合物の主吸収ピークの半値幅は25nm以下であり、好ましくは22nm以下であり、より好ましくは20nm以下である。主吸収ピークの半値幅は小さいほど好ましく、例えば、5nm以上である。
【0036】
本明細書の一実施態様において、前記ジアザポルフィリン系化合物は、380nm~450nmの範囲内の光吸収によりブルーライトカット機能を有しており、560nm~600nmの範囲内で主吸収ピークを有することで、色再現率を向上させ、外部光に対する反射度を低減させる役割をする。また、金属錯化合物の構造により、高い耐熱および耐光信頼性を提供する。
【0037】
本明細書において、置換基の例示は以下で説明するが、これに限定されるものではない。
【0038】
前記「置換」という用語は、化合物の炭素原子に結合された水素原子が、他の置換基に変わることを意味し、置換される位置は、水素原子が置換される位置、すなわち、置換基が置換可能な位置であれば限定されず、2つ以上置換される場合、2つ以上の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0039】
本明細書において、「置換されているかまたは置換されていない」という用語は、重水素;ハロゲン基;アリール基;アルキル基;およびアルコキシ基からなる群から選択される1つまたは2つ以上の置換基で置換されているか、前記例示された置換基のうち2つ以上の置換基が連結された置換基で置換されているか、または如何なる置換基も有しないことを意味する。
【0040】
前記置換基の例示は以下で説明するが、これに限定されるものではない。
【0041】
本明細書において、ハロゲン基の例としては、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素が挙げられる。
【0042】
本明細書において、アリール基は特に限定されないが、炭素数6~60であることが好ましく、単環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。一実施態様によると、前記アリール基の炭素数は6~30である。
【0043】
本明細書において、ヘテロアリール基は、ヘテロ原子としてS、O、Se、N、またはSiを含み、炭素数2~60の単環または多環を含み、他の置換基でさらに置換されていてもよい。一実施態様によると、ヘテロアリール基の炭素数は2~60である。
【0044】
本明細書において、アルキル基は、直鎖状または分岐状であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1~60であることが好ましい。一実施態様によると、前記アルキル基の炭素数は1~30である。
【0045】
本明細書において、アルコキシ基は、直鎖状、分岐状、または環状であってもよい。アルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~20であることが好ましい。
【0046】
本明細書の一実施態様において、R1~R4は同一であり、水素;炭素数1~10のアルキル基;炭素数1~10のアルコキシ基;および炭素数6~20のアリール基からなる群から選択される何れか1つである。
【0047】
本明細書の一実施態様において、R1~R4は同一であり、水素;ハロゲン基;メチル基;エチル基;メトキシ;およびフェニル基からなる群から選択される何れか1つである。
【0048】
本明細書の一実施態様によると、R6;R8;R11;およびR13は水素である。
【0049】
本明細書の一実施態様によると、R5;R7;R9;R10;R12;およびR14は、それぞれ炭素数1~10のアルキル基である。
【0050】
本明細書の他の一実施態様によると、R5;R7;R9;R10;R12;およびR14はメチル基である。
【0051】
本明細書の一実施態様において、MはCuまたはNiである。
【0052】
本明細書の一実施態様において、前記ブルーライトカットフィルムは、互いに異なる前記化学式1のジアザポルフィリン系化合物を2種以上含んでもよい。2種以上のジアザポルフィリン系化合物を組み合わせて用いる場合、ブルーライトカット領域(380nm~450nm)および色再現率改善領域(560nm~600nm)を最適化させることができる。ブルーライトカット領域および色再現率改善領域が異なるジアザポルフィリン化合物を組み合わせることで、ディスプレイで用いられたブルー発現波長を考慮し、ディスプレイの輝度低下を最小化させるとともに、ブルーライトカット機能を効果的に果たすことができる。
【0053】
例えば、前記化学式1で表されるジアザポルフィリン系化合物において、R1~R4が水素で置換されたジアザポルフィリン系化合物を1群、ハロゲン基で置換されたジアザポルフィリン系化合物を2群に分類し、2種のジアザポルフィリン系化合物を組み合わせることで、色再現率の向上を誘導することができる。この際、2種のジアザポルフィリン系化合物の組み合わせの割合は7:3~3:7であってもよく、具体的に6:4~4:6であってもよい。
【0054】
本明細書の一実施態様において、前記ブルーライトカットフィルムは、テトラアザポルフィリン、シアニン、およびスクアレン系の染料からなる群から選択される少なくとも1つの染料をさらに含む。上述の染料は、560nm~600nmの範囲内で主吸収ピークを有する染料であって、前記ブルーライトカットフィルムにさらに備えられる場合、色再現率の向上を極大化することができる。
【0055】
前記テトラアザポルフィリン、シアニン、およびスクアレン系の染料からなる群から選択される少なくとも1つの染料の含量は、前記ジアザポルフィリン系化合物100重量部に対して0.005重量部~4重量部であってもよい。
【0056】
本明細書の一実施態様において、前記ブルーライトカットフィルムは、ベンゾトリアゾール、トリス-レゾルシノール-トリアジン、ヒドロキシ-ベンゾトリアゾール、およびヒドロキシフェニル-ベンゾトリアゾール系の染料からなる群から選択される少なくとも1つの染料をさらに含んでもよい。上述の染料は、380nm~450nmの範囲内で主吸収ピークを有する染料であって、前記ブルーライトカットフィルムにさらに備えられる場合、ブルーライトカット機能を増進させる。
【0057】
前記ベンゾトリアゾール、トリス-レゾルシノール-トリアジン、ヒドロキシ-ベンゾトリアゾール、およびヒドロキシフェニル-ベンゾトリアゾール系の染料からなる群から選択される少なくとも1つの染料の含量は、前記ジアザポルフィリン系化合物100重量部に対して0.001重量部~4重量部であってもよい。
【0058】
本明細書の一実施態様において、前記ブルーライトカットフィルムは粘着剤をさらに含んでもよい。粘着剤を含むブルーライトカットフィルムの厚さは15μm~25μmであり、好ましくは17μm~22μmであってもよい。厚さが上記の範囲である場合、粘着性に影響を与えることなくブルーライトカット機能を果たすことができる。前記粘着剤の種類は制限されず、例えば、アクリル系粘着剤が挙げられる。
【0059】
本明細書の一実施態様において、前記ブルーライトカットフィルムは、高分子樹脂をさらに含んでもよい。前記高分子樹脂は、熱可塑性高分子または熱硬化性高分子であることが好ましい。具体的に、前記樹脂の材料としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのようなポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート(PC)系樹脂、ポリスチレン(PS)系樹脂、ポリアリーレン(PAR)系樹脂、ポリウレタン(TPU)系樹脂、スチレン-アクリロニトリル(SAN)系樹脂、ポリシロキサン(Polysiloxane)系樹脂、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)系樹脂、および改質されたポリビニリデンフルオライド(modified-PVDF)系樹脂などが用いられてもよい。前記高分子樹脂を含むブルーライトカットフィルムの厚さは1μm~50μmであり、より具体的には3μm~50μm、好ましくは5μm~45μmである。
【0060】
本明細書の一実施態様において、前記ブルーライトカットフィルムは、イソシアネート系架橋剤、シラン系カップリング剤のうち1種以上をさらに含む。
【0061】
本明細書の一実施態様において、光学フィルタは前記ブルーライトカットフィルムを含む。前記光学フィルタは、上述のブルーライトカットフィルムを含むことを除き、当技術分野において公知の光学フィルタの構成を有することができる。例えば、前記光学フィルタは、カラーフィルタ、偏光板、および保護フィルムを含んでもよい。
【0062】
本明細書の一実施態様において、ディスプレイ装置は前記光学フィルタを含む。
【0063】
図1は、本明細書の一実施態様に系るディスプレイ100の構造を例示した図である。具体的に、
図1には、光源10、カラーフィルタ20、ブルーライトカットフィルム30、偏光板40、および保護フィルム50を含むディスプレイの構造を例示している。
【0064】
本明細書の一実施態様において、ディスプレイ装置は偏光板を含まなくてもよい。
【0065】
図2は、本明細書の一実施態様に系る偏光板を含まないディスプレイ110の構造を例示した図である。
【0066】
本明細書の一実施態様において、前記ディスプレイ装置は、液晶ディスプレイ装置または有機電界発光ディスプレイ装置である。
【0067】
本明細書の一実施態様において、前記ディスプレイ装置は、例えば、TV、コンピュータのモニタ、ノート型パソコン、携帯電話などに含まれてもよい。
【実施例】
【0068】
以下、本明細書を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本明細書に系る実施例は様々な他の形態に変形可能であり、本出願の範囲が以下で詳述する実施例に限定されると解釈されない。本出願の実施例は、当業界において平均的な知識を有する者に、本明細書をより完全に説明するために提供されるものである。
【0069】
実施例1.
アクリル系粘着剤としてブチルアクリレート(BA)/ヒドロキシエチルメタアクリレート(HEMA)共重合体溶液100重量部(固形分15.3重量部)、下記化合物1 0.05重量部、イソシアネート系架橋剤(T-39)0.05重量部、およびシラン系カップリング剤としてT-789J 0.07重量部をメチルエチルケトン(MEK)45重量部に添加して混合した後、コーティング液を製造した。これを基材フィルム(PET)に20μmの厚さでコーティングし、ブルーライトカットフィルムを製造した。
[化合物1]
【化4】
【0070】
実施例2.
前記実施例1において、化合物1の代わりに下記化合物2を使用したことを除き、実施例1と同様にブルーライトカットフィルムを製造した。
[化合物2]
【化5】
【0071】
実施例3.
前記実施例1において、化合物1の代わりに下記化合物3を使用したことを除き、実施例1と同様にブルーライトカットフィルムを製造した。
[化合物3]
【化6】
【0072】
比較例1.
前記実施例1において、化合物1の代わりに下記化合物4を使用したことを除き、実施例1と同様にブルーライトカットフィルムを製造した。
[化合物4]
【化7】
【0073】
比較例2.
前記実施例1において、化合物1の代わりに下記化合物5を使用したことを除き、実施例1と同様にブルーライトカットフィルムを製造した。
[化合物5]
【化8】
【0074】
比較例3.
前記実施例1において、化合物1の代わりに下記化合物6を使用したことを除き、実施例1と同様にブルーライトカットフィルムを製造した。
[化合物6]
【化9】
【0075】
比較例4.
前記実施例1において、化合物1の代わりに下記化合物7を使用したことを除き、実施例1と同様にブルーライトカットフィルムを製造した。
[化合物7]
【化10】
【0076】
前記化合物1~3は、Chem.Eur.J.2012,18,6208-6216およびChem.Rev.2017,3138-3191の文献に記載の合成方法を参考して合成し、前記化合物4は、Dyes and Pigments 2007,73,245-250の文献に記載の方法により合成し、前記化合物5は、US2010/0298573A1を参照して合成した。また、前記化合物6は、J.Phys.Chem.1997,71,7478に記載の方法により合成し、前記化合物7は、Phys.Chem.Chem.Phys.,2014,16,11209の文献に記載の方法により合成した。
【0077】
実験例1.吸収スペクトルの測定
前記実施例および比較例で製造されたブルーライトカットフィルムの吸収スペクトルの測定結果を添付の
図3~9に示し、主吸収ピーク、半値幅、および蛍光発現の有/無を下記表1に示した。
【0078】
前記吸収スペクトルは、UV-VIS Spectrometer(島津製作所、UV-3600 Plus)を用いて測定し、蛍光発現の有/無およびスペクトル最大発光波長はCMD2600D測定装備を用いて測定した。
【0079】
【0080】
前記表1中、λmaxは500nm以上の可視光領域で最大吸収を示す波長であり、FWHMは吸収スペクトルの500nm以上の主吸収ピークでの半値幅であり、Fluorescent Wavelengthは発現された蛍光の最大発光波長である。
【0081】
実験例2.光特性分析
前記実施例および比較例で製造されたブルーライトカットフィルムの光特性分析のために、有機電界発光ディスプレイパネルに付着してその特性を比較した。
【0082】
前記測定に用いられたパネルとしては、有機電界発光素子が含まれた発光部および色フィルタ(R、G、Bのそれぞれのx、y色が(0.678,0.319)、(0.279,0.587)、(0.138,0.083))を含む有機電界発光ディスプレイパネルに、前記実施例および比較例で製造されたブルーライトカットフィルムを付着して白色発光特性を測定した。測定された色座標に基づいて、CIE 1976 Color Chromaticity CoordinatesのDCI領域で色再現率を計算した。色座標はSR-UL2を用いて測定し、光反射率はOcean Optics社のSpectrometer(HR400)を用いて測定した。
【0083】
【0084】
実験例3.光安定性の分析
前記実施例と比較例で製造されたブルーライトカットフィルムを偏光板に付着し、Hgランプ(400W)を用いて500時間露出させた後、染料の吸収変化を観察(実験例3-1)した。また、偏光板を付着していないフィルムを、Hgランプ(400W)を用いて48時間露出させた後、染料の吸収変化を観察(実験例3-2)した。
【0085】
【0086】
前記表1~3から、実施例1~3は、蛍光が発現されておらず、380nm-450nmの領域での光吸収によりブルーライトカット機能を有し、500nm-630nmの領域での半値幅が30nm以下である光吸収と色再現率の測定により色再現率が改善され、外部光に対する反射度が低減していることを確認することができる。また、光による染料の吸収変化が殆どないため、光安定性に優れることが分かる。
【0087】
これに対し、比較例1は、テトラアザポルフィリン系化合物を使用したものであって、蛍光発現の問題がなく、光に対して安定するが、500nm-630nmの領域でのみ光吸収を有するため、ブルーライトカット機能がないことが分かる。比較例2は、380-450nmの領域でのみ光吸収を有するためブルーライトカット機能は有するが、色再現率および外光反射率の改善効果がなく、光安定性が低く、蛍光発現の問題があることを確認した。蛍光発現の問題は、偏光板の使用時に偏光度を低下させる恐れがあり、偏光板を適用しないとしても、ディスプレイの色純度を低下させる恐れがある。比較例3は、ジアザポルフィリン構造において、meso-C位にメシチル基がない構造であって、蛍光発現がなく、380-440nmの領域の吸収を有するためブルーライトカット機能を有し、500-630nmの領域の吸収を有するため色再現率の向上に寄与することができるが、UV光による光安定性が低下し、効果的なブルーライトカット機能を有するフィルムとして適用しにくい。このことから、meso-C位にメシチルを導入する場合、ジアザポルフィリン構造の光安定性の向上に寄与することが分かる。比較例4は、meso-Nを含まないポルフィリン化合物であって、この場合、可視光領域のうち500-600nmの領域の吸光度が著しく減少するため、色再現率の向上に寄与することができず、390nm以下の領域で吸収が観察されないため、UVA波長の光を効果的に遮断しにくいことが分かる。
【符号の説明】
【0088】
10 光源
20 カラーフィルタ
30 ブルーライトカットフィルム
40 偏光板
50 保護フィルム
100 ディスプレイ
110 偏光板を含まないディスプレイ