(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】透過度可変装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/167 20190101AFI20220125BHJP
G02F 1/1676 20190101ALI20220125BHJP
G02F 1/1685 20190101ALI20220125BHJP
【FI】
G02F1/167
G02F1/1676
G02F1/1685
(21)【出願番号】P 2020523974
(86)(22)【出願日】2018-11-02
(86)【国際出願番号】 KR2018013269
(87)【国際公開番号】W WO2019088768
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-05-01
(31)【優先権主張番号】10-2017-0145698
(32)【優先日】2017-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ユーン、ヨン シク
(72)【発明者】
【氏名】クォン、テ ギュン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ムン スー
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-035385(JP,A)
【文献】特表2016-511447(JP,A)
【文献】特開2008-256987(JP,A)
【文献】特表2016-540249(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0012707(US,A1)
【文献】特開2005-115066(JP,A)
【文献】特開2005-284234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/15-1/19
G09F 9/30
G09G 9/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極基板、電気泳動層および第2電極基板を順に含み、電圧の印加によって透過モードと遮断モードをスイッチングする透過度可変フィルムと;
遮断モードの具現時に時間の経過に伴って電圧の強度が減少するように電圧信号を印加する電力源と;
を
備え、
前記電気泳動層は、分散溶媒および荷電粒子を含み、
前記電力源は、前記遮断モードの具現時に、前記第1電極基板および前記第2電極基板の電極と前記荷電粒子との間に斥力を作用させて前記荷電粒子を前記分散溶媒中に分散させた後、時間の経過に伴って電圧の強度が減少するように電圧信号を印加する、
透過度可変装置。
【請求項2】
前記第1電極基板および第2電極基板のうちいずれか一方は、
パターン電極層を含み、
他方は、
全面電極層を含む、
請求項1に記載の透過度可変装置。
【請求項3】
前記荷電粒子は、カーボンブラック(carbon black)、酸化鉄(ferric oxides)、クロム銅(CrCu)およびアニリンブラック(aniline black)よりなる群から選ばれた一つ以上の粒子を含む、
請求項
1または2に記載の透過度可変装置。
【請求項4】
前記荷電粒子は、
遮断モードの具現時に分散して存在し、
透過モードの具現時にパターン電極に移動する、
請求項
3に記載の透過度可変装置。
【請求項5】
前記電力源は、四角波形の電圧信号を印加する、
請求項1から
4のいずれか1項に記載の透過度可変装置。
【請求項6】
前記電力源は、遮断モードの具現時に時間の経過に伴って電圧の強度が漸進的に減少するか、または段階的に減少するように電圧信号を印加する、
請求項1から
5のいずれか1項に記載の透過度可変装置。
【請求項7】
前記電力源は、遮断モードの具現時に時間の経過に伴って電圧の強度が-25Vから-5Vまで減少するように電圧信号を印加する、
請求項1から
6のいずれか1項に記載の透過度可変装置。
【請求項8】
前記電力源は、遮断モードの具現時に時間の経過に伴って電圧の強度が段階的に減少する複数の電圧信号を印加し、
前記複数の電圧信号は、それぞれ同じ時間および周波数を有する、
請求項
6に記載の透過度可変装置。
【請求項9】
前記電力源は、
遮断モードの具現時に
周波数が30Hz~100Hzであり、
印加時間が10秒以下である
電圧信号を印加する、
請求項
8に記載の透過度可変装置。
【請求項10】
前記電力源は、遮断モードの具現のための電圧信号の印加後に0Vを維持する、
請求項
8に記載の透過度可変装置。
【請求項11】
前記電力源は、遮断モードの具現時に最小電圧信号の印加後に反対電圧信号をさらに印加する、
請求項1から1
0のいずれか1項に記載の透過度可変装置。
【請求項12】
前記反対電圧信号は、
電圧の強度が10V~20Vであり、
周波数が10Hz~50Hzであり、
印加時間が10秒以下である、
請求項1
1に記載の透過度可変装置。
【請求項13】
前記電力源は、透過モードの具現時に時間の経過に伴って電圧強度が一定の電圧信号を印加する、
請求項1に記載の透過度可変装置。
【請求項14】
前記透過モードの具現時の電圧の絶対値は、遮断モードの具現時の電圧の絶対値に比べて大きい、
請求項1
3に記載の透過度可変装置。
【請求項15】
前記電力源は、
透過モードの具現時に
電圧の強度が10V~50Vであり、
周波数が300Hz~700Hzであり、
印加時間が10秒~50秒である
電圧信号を印加する、
請求項1
4に記載の透過度可変装置。
【請求項16】
前記透過度可変フィルムは、下記一般式1を満たす、
請求項1から1
5のいずれか1項に記載の透過度可変装置:
[一般式1]
T
DAB-T
DBB<13%
前記一般式1で
T
DABは、駆動後に遮断モードでの透過率であり、
T
DBBは、駆動前に初期遮断モードでの透過率である。
【請求項17】
透過度可変フィルムは、
駆動後に、
遮断モードでの透過率が18%未満であり、
透過モードでの透過率が20%以上である、
請求項1から1
5のいずれか1項に記載の透過度可変装置。
【請求項18】
第1電極基板、電気泳動層および第2電極基板を順に含み、
電圧の印加によって透過モードと遮断モードをスイッチングする
透過度可変フィルムに
遮断モードの具現時に時間の経過に伴って電圧の強度が減少するように電圧信号を印加することを
備え、
前記電気泳動層は、分散溶媒および荷電粒子を含み、
前記遮断モードの具現時に、前記第1電極基板および前記第2電極基板の電極と前記荷電粒子との間に斥力を作用させて前記荷電粒子を前記分散溶媒中に分散させた後、時間の経過に伴って電圧の強度が減少するように電圧信号を印加する、 透過度可変装置の駆動方法。
【請求項19】
第1電極基板、電気泳動層および第2電極基板を順に含み、
電圧の印加によって透過モードと遮断モードをスイッチングする
透過度可変フィルムに
遮断モードの具現時に時間の経過に伴って電圧の強度が減少するように電圧信号を印加することを
備え、
前記電気泳動層は、分散溶媒および荷電粒子を含み、
前記遮断モードの具現時に、前記第1電極基板および前記第2電極基板の電極と前記荷電粒子との間に斥力を作用させて前記荷電粒子を前記分散溶媒中に分散させた後、時間の経過に伴って電圧の強度が減少するように電圧信号を印加する、
透過度可変装置の遮光率改善方法。
【請求項20】
請求項1から1
7のいずれか1項に記載の透過度可変装置
を含む
スマートウィンドウ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、透過度可変装置、その駆動方法、遮光率改善方法および用途に関する。
【0002】
本出願は、2017年11月03日付の韓国特許出願第10-2017-0145698に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
透過度可変フィルムは、全面電極層が形成された第1電極基板、電気泳動層およびパターン電極層が形成された第2電極基板を順に含むことができ、前記電気泳動層には、外部から加えられる外力により電気泳動(electrophoretic)現象を示すことができる粒子形態の荷電粒子を具備することができる。
【0004】
特許文献1(韓国特許登録第10-1241306号公報)には、負電荷を呈する物質を荷電粒子として利用して、外部から加えられる外力がない初期に前記荷電粒子が電気泳動層内に分散した状態に存在して、第2電極基板に形成されたパターン電極層のパターンの間に光を照射する場合、前記光を遮断する遮断モードを具現した。この際、第2電極基板に形成されたパターン電極層に正電圧を印加し、第1電極基板に形成された全面電極層に負電圧を印加して、前記荷電粒子がパターン電極層のパターン上に移動して、前記パターン電極層のパターンの間に光が透過できる透過モードを具現することができる。その後、前記パターン電極層に電圧を印加しないか、前記パターン電極層に反対電圧である負電圧を印加する場合、前記荷電粒子が再び分散して、遮断モードを具現することができる。
【0005】
しかしながら、このような電気泳動現象を利用した透過度可変フィルムは、駆動後にパルス信号の反復によって、遮断モードの具現時に荷電粒子の分散性が低下して、初期遮断モードに比べて遮光率が顕著に減少する問題が発生した。したがって、このような問題点を解決するための透過度可変装置が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願の課題は、透過度可変フィルムの駆動後に遮断モードの具現時に時間の経過に伴って電圧の強度が減少するように電圧信号を印加することによって、優れた遮光率を示すことができる透過度可変装置、その駆動方法、遮光率改善方法および用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願は、透過度可変装置に関する。例示的な本出願の透過度可変装置によれば、透過度可変フィルムの駆動後に遮断モードの具現時に時間の経過に伴って電圧の強度が減少するように電圧信号を印加することによって、優れた遮光率を示すことができる。本明細書で用語「電圧信号」は、電圧の強度、印加時間および周波数が一つの特定値を有する電圧を意味する。
【0008】
以下、添付の図面を参照して本出願の透過度可変装置を説明し、添付の図面は、例示的なものであって、本出願の透過度可変装置が添付の図面に制限されるものではない。
【0009】
図1は、本出願の一実施例による透過度可変装置を例示的に示す。
図1に示されたように、前記透過度可変装置は、透過度可変フィルム100および電力源200を含む。前記透過度可変フィルム100は、第1電極基板110、電気泳動層120および第2電極基板130を順に含む。
【0010】
前記第1電極基板110および第2電極基板130は、透過度可変フィルム内荷電粒子の電気泳動現象を具現するために、前記電力源200から電圧が印加される部分である。一例として、前記第1電極基板110および第2電極基板130のうちいずれか一方は、パターン電極層112を含み、他方は、全面電極層132を含むことができる。具体的に、前記第1電極基板110は、第1基材フィルム111上に形成されたパターン電極層112を含むことができ、第2電極基板130は、第2基材フィルム131上に形成された全面電極層132を含むことができる。
【0011】
本明細書で前記パターン電極層は、電極がパターン形状に形成されたことを意味し、前記パターン形状は、本出願の目的を考慮して適宜選択することができる。例えば、前記パターン形状は、マッシュ形状、ストライプ形状または、ボロノイ(Voronoi)形状であってもよい。
【0012】
また、本明細書で前記全面電極層は、基材フィルムの一表面の全体に形成されたことを意味する。
【0013】
前記第1および第2基材フィルム111、131としては、光学的透明性を有するものを使用することができる。例えば、前記第1および第2基材フィルム111、131としては、光学的に透明なプラスチックフィルムまたはシートを使用するか、あるいは、ガラスを使用することができる。具体的に、前記プラスチックフィルムまたはシートとしては、DAC(diacetyl cellulose)またはTAC(triacetyl cellulose)フィルムまたはシートのようなセルロースフィルムまたはシート;ノルボルネン誘導体樹脂フィルムまたはシート等のCOP(cyclo olefin copolymer)フィルムまたはシート;PMMA(poly(methyl methacrylate)フィルムまたはシート等のアクリルフィルムまたはシート;PC(polycarbonate)フィルムまたはシート;PE(polyethylene)またはPP(polypropylene)フィルムまたはシート等のようなオレフィンフィルムまたはシート;PVA(polyvinyl alcohol)フィルムまたはシート;PES(poly ether sulfone)フィルムまたはシート;PEEK(polyetheretherketone)フィルムまたはシート;PEI(polyetherimide)フィルムまたはシート;PEN(polyethylenenaphthatlate)フィルムまたはシート;PET(polyethyleneterephtalate)フィルムまたはシート等のようなポリエステルフィルムまたはシート;PI(polyimide)フィルムまたはシート;PSF(polysulfone)フィルムまたはシート;PAR(polyarylate)フィルムまたはシートあるいはフルオル樹脂フィルムまたはシート等を例示することができ、一般的には、セルロースフィルムまたはシート、ポリエステルフィルムまたはシートあるいはアクリルフィルムまたはシート等を使用することができ、好ましくはTACフィルムまたはシートを使用することができるが、本出願の目的を考慮して適宜選択することができる。
【0014】
前記パターン電極層112および全面電極層132としては、透明導電性層を使用することができる。例えば、前記パターン電極層112および全面電極層132としては、導電性高分子、導電性金属、導電性ナノワイヤーまたはITO(Indium Tin Oxide)等の金属酸化物などを蒸着して形成したものを使用することができる。具体的に、前記パターン電極層112としては、アルミニウム(Al)を使用することができ、前記全面電極層132としては、インジウムスズ酸化物(ITO)を使用することができる。
【0015】
前記電気泳動層120は、荷電粒子により光透過度を可変する部分である。具体的に、前記電気泳動層120の上下部に存在するパターン電極層112および前面電極層132に電圧の印加によって荷電粒子が回転するか、極性が異なる電極の近くに移動する電気泳動方式で光透過度を調節して、所望の色を表現することができる。
【0016】
一例として、前記電気泳動層120は、分散溶媒および荷電粒子を含むことができる。前記荷電粒子としては、正(+)または負(-)の電荷を呈する粒子を使用することができ、例えば、カーボンブラック(carbon black)、酸化鉄(ferric oxides)、クロム銅(CrCu)およびアニリンブラック(aniline black)よりなる群から選ばれた一つ以上の荷電粒子を使用することができ、好ましくはカーボンブラック粒子を使用することができる。また、前記荷電粒子を分散させるための分散溶媒としては、炭化水素系溶媒のように公知の溶媒を制限なしに使用することができる。例えば、前記炭化水素系溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、これらの異性体または混合物のような一般的なアルカン溶媒を使用することができる。また、前記分散溶媒としては、炭素数6~13のアルカン混合物質であるイソパラフィン系溶媒などを使用することができる。例えば、前記イソパラフィン系溶媒としては、Isopar C、Isopar G、Isopar E(Exxon)、ISOL-C(SK Chem)またはISOL-G(Exxon)等を使用することができる。
【0017】
前記電気泳動層内で前記荷電粒子の含量は、0.5重量%~5重量%であってもよい。前記荷電粒子の含量が前記範囲内である場合、透過度可変特性に優れた透過度可変装置を提供するという側面から有利になり得る。
【0018】
前記荷電粒子は、遮断モードの具現時に分散して存在し、透過モードの具現時にパターン電極112に移動することができる。例えば、
図2に示されたように、前記透過度可変フィルム100は、前記電気泳動層120の上下部に存在する前記
全面電極132およびパターン電極112に電圧が印加されていない初期状態で前記電気泳動層120内に前記荷電粒子121が分散して存在することによって、遮断モードで具現され得る。また、
図3に示されたように、前記荷電粒子121が負電荷を呈し、電気泳動層120の上下部に存在するパターン電極層112および
全面電極層132に負電圧を印加する場合、前記透過度可変フィルム100は、前記荷電粒子121が前記パターン電極層112および
全面電極層132と斥力が作用して、前記電気泳動層120内に粒子状態に分散して、遮断モードで具現され得る。この際、
図4に示されたように、前記透過度佳篇フィルム100は、前記パターン電極層112に正電圧を印加する場合、前記荷電粒子121が前記
全面電極層132と斥力が作用し、前記荷電粒子121が前記パターン電極層112と引力が作用して、前記荷電粒子121がパターン電極層112に移動することによって、透過モードで具現され得る。
【0019】
前記透過度可変フィルム100は、前述したように、電圧の印加によって透過モードと遮断モードをスイッチングする。
【0020】
前記電力源200は、透過度可変フィルム100に透過度を可変するために印加される電圧を供給する装置である。前記電力源200は、遮断モードの具現時に時間の経過に伴って電圧の強度が減少するように電圧信号を印加することができる。
【0021】
前記電力源200は、四角波形の電圧信号を印加することができる。具体的に、前記電力源200は、透過度可変フィルム100の透過モードまたは遮断モードを維持するために直流電圧を一定時間の間印加し、また、前記透過モードと遮断モードをスイッチングする時に交流電圧を印加することによって、前記電圧信号の波形が四角形を示すことができる。
【0022】
前記電力源200は、遮断モードの具現時に時間の経過に伴って電圧の強度が漸進的に減少するか、または段階的に減少するように電圧信号を印加することができる。本明細書で用語「漸進的(gradient)」は、時間の経過に伴って連続的な傾きを有することを意味する。本明細書で用語「段階的(step)」は、時間の経過に伴って互いに異なる2以上の区間が階段形状のような傾きを有することを意味する。前記透過度可変フィルム100は、電力源200から時間の経過に伴って電圧の強度が漸進的に減少するか、または段階的に減少するように電圧信号を印加することによって、駆動後に遮断モードで優れた遮光率を示すことができる。
【0023】
一例として、前記電力源200は、遮断モードの具現時に時間の経過に伴って電圧の強度が-25Vから-5Vまで減少するように電圧信号を印加することができる。具体的に、前記電力源200は、透過度可変フィルム100が遮断モードで具現されるとき、時間の経過に伴って電圧強度が-24Vから-6V、-23Vから-7V、-22Vから-8V、-21Vから-9Vまたは-20Vから-10Vに減少するように電圧信号が印加され得る。前記電力源200で透過度可変フィルム100が遮断モードで具現されるとき、印加される電圧強度の絶対値が過度に大きい場合、荷電粒子が過度に移動して、遮断特性が低下する問題が発生し得る。
【0024】
一具現例において、前記電力源200は、遮断モードの具現時に時間の経過に伴って電圧の強度が段階的に減少する複数の電圧信号を印加し、前記複数の電圧信号は、それぞれ同じ時間および周波数を有することができる。具体的に、前記遮断モードの具現時に電力源200から印加される電圧信号の電圧強度が時間の経過に伴って段階的に減少するように、電圧の強度が互いに異なる2以上の複数の電圧信号を印加するとき、前記2以上の複数の電圧信号は、同じ時間および周波数で印加され得る。
【0025】
一例として、前記電力源200は、遮断モードの具現時に印加する電圧信号の周波数が30Hz~100Hzであってもよく、具体的に、前記周波数の上限が80Hz以下または60Hz以下であってもよく、前記周波数の下限が35Hz以上、40Hz以上または45Hz以上であってもよい。前記電力源200は、遮断モードの具現時に、前述した範囲内の周波数を有する電圧信号を時間の経過に伴って電圧の強度が段階的に減少するように印加することによって、低い周波数を通じてパルス電圧信号を印加することができるので、荷電粒子の分散特性を最大化することができる。また、前記電力源200は、遮断モードの具現時に印加する電圧信号の印加時間が10秒以下であってもよく、具体的に、8秒以下、6秒以下または4秒以下であってもよく、前記印加時間の下限が前述した範囲内で2秒以上であってもよい。前記電力源200は、遮断モードの具現時に、時間の経過に伴って電圧の強度が段階的に減少するように、前述した範囲内の印加時間を有する電圧信号を印加することによって、駆動後に遮光モードで優れた遮光率を示すことができる。
【0026】
前記電力源200は、遮断モードの具現のための電圧信号の印加後に0Vを維持することができる。具体的に、前記電力源200から遮断モードの具現のための電圧信号を0V、すなわち、電圧信号を印加しない状態で0.5秒~20秒間維持することによって、遮断モードの具現時に分散した荷電粒子の状態を安定化させることができる。
【0027】
また、前記電力源200は、遮断モードの具現時に最小電圧信号の印加後に反対電圧信号をさらに印加することができる。例えば、前記遮断モードの具現時に電力源200から時間の経過に伴って電圧の強度が減少するように負の電圧信号を印加するとき、0Vに最も近接した最小電圧信号を印加した後、前記負の電圧信号に反対電圧信号である正の電圧信号をさらに印加することができる。前記電力源200は、遮断モードの具現時に最小電圧信号の印加後に反対電圧信号をさらに印加することによって、負の電圧信号を長時間印加することによって生成され得る残留電圧を解消することができる。
【0028】
一例として、前記反対電圧信号は、電圧の強度が10V~20Vであり、周波数が10Hz~50Hzであり、印加時間が10秒以下であってもよい。前記反対電圧信号は、前述した範囲内の電圧の強度、周波数および時間で印加されることによって、負の電圧信号を長時間印加して生成され得る残留電圧を解消して、遮断モードでの遮光率をより一層改善することができる。
【0029】
具体的に、前記反対電圧信号は、前述した範囲内で本出願の目的を考慮して適切に選択することができる。例えば、前記反対電圧信号は、電圧の強度の上限が前述した範囲内で20V以下、18V以下であってもよく、前記電圧強度の下限が前述した範囲内で10V以上であってもよい。また、前記反対電圧信号は、周波数の上限が前述した範囲内で45Hz以下、40Hz以下または35Hz以下であってもよく、前記周波数の下限が前述した範囲内で15Hz以上、20Hz以上または25Hz以上であってもよい。具体的に、前記反対電圧信号の周波数は、25Hz~35Hz、27Hz~33Hzまたは29Hz~31Hzであってもよく、例えば、30Hzであってもよい。また、前記反対電圧信号は、印加時間の上限が前述した範囲内で8秒以下、6秒以下または4秒以下であってもよく、前記印加時間の下限が前述した範囲内で2秒以上であってもよい。
【0030】
前記電力源200は、透過モードの具現時に時間の経過に伴って一定の電圧信号を印加することができる。具体的に、前記電力源200は、透過度可変フィルム100が透過モードを具現する間に、一定時間の間に一つの電圧強度を有する直流電圧を印加して、前記透過モードを維持することができる。
【0031】
一例として、透過モードの具現時の電圧の絶対値は、遮断モードの具現時の電圧の絶対値に比べて大きくてもよい。例えば、透過モードの具現時の電圧の絶対値と駆動後に遮断モードの具現時の電圧の絶対値との差は、5V~45Vであってもよく、具体的に、6V~40V、7V~35V、8V~30V、9V~25Vまたは10V~20Vであってもよい。前記透過モードの具現時の電圧の絶対値と駆動後に遮断モードの具現時の電圧の絶対値との差が過度に大きくなれば、荷電粒子の急な移動により遮断特性が低下する問題が発生し得る。
【0032】
前記電力源200は、透過モードの具現時に電圧の強度が10V~50Vであり、周波数が300Hz~700Hzであり、印加時間が10秒~50秒である電圧信号を印加することができるが、本出願の目的を考慮して前述した範囲内で適宜選択することができる。例えば、透過モードの具現時に印加される電圧信号は、電圧の強度が前述した範囲内で、15V~45V、20V~40Vまたは25V~35Vであってもよい。前記透過モードの具現時に印加される電圧信号が過度に低い場合、前記透過モードが具現されない問題が発生し得、前記透過モードの具現時に印加される電圧信号が過度に高い場合、荷電粒子の損傷または電気泳動層が損傷する問題が発生し得る。また、前記透過モードの具現時に印加される電圧信号は、周波数が前述した範囲内で450Hz~650Hz、400Hz~600Hzまたは350Hz~550Hzであってもよい。前記透過モードの具現時に印加される電圧信号の周波数は、前述した範囲内で高ければ高いほど透過モードの駆動特性が向上することができる。また、前記透過モードの具現時に印加される電圧信号は、印加時間が前述した範囲内で15秒~45秒、20秒~40秒または25秒~35秒であってもよいが、前記電圧信号の印加時間は、目的とする透過モードの時間を維持するために適宜選択することができる。
【0033】
前記透過度可変フィルム100は、下記一般式1を満たすことができる。
【0034】
[一般式1]
TDAB-TDBB<13%
【0035】
前記一般式1でTDABは、駆動後に遮断モードでの透過率であり、TDBBは、駆動前に初期遮断モードでの透過率である。
【0036】
具体的に、前記透過度可変フィルム100は、駆動後に遮断モードでの透過率と駆動前に初期遮断モードでの透過率との差が、上限が12%以下であってもよく、下限が0%超過であってもよく、1%以上または3%以上であってもよい。前記透過度可変フィルム100は、駆動後に遮断モードでの透過率と駆動前に初期遮断モードでの透過率との差が前記一般式1を満たすことによって、駆動後に遮断モードでの透過率が、駆動前に初期遮断モードでの透過率と類似した数値を示す優れた遮光率を有する遮断モードで具現され得る。
【0037】
具体的に、前記透過度可変フィルム100は、初期遮断モードでの透過率が20%以下、15%以下10%以下または5%以下であってもよい。前記透過度可変フィルム100は、前述した範囲内の透過率を有することによって、例えば、95%以上の遮光率を有する遮断モードで具現され得る。
【0038】
また、前記透過度可変フィルムは、駆動後に遮断モードでの透過率が18%未満であってもよい。具体的に、前記透過度可変フィルム100の駆動後に遮断モードでの透過率は、17%以下であってもよい。前記透過率の下限は、例えば、5%超過、7%以上、9%以上または10%以上であってもよい。前記透過度可変フィルム100は、前述した範囲内の透過率を有することによって、例えば駆動後に82%超過の優れた遮光率を有する遮断モードで具現され得る。
【0039】
また、透過度可変フィルム100は、前述したように、電力源200から電圧信号を印加して、駆動後に透過モードでの透過率が20%以上であってもよい。具体的に、前記透過度可変フィルム100の駆動後に透過モードでの透過率は、30%以上または40%以上であってもよい。前記透過率の上限は、例えば80%以下、70%以下または60%以下であってもよい。前記透過度可変フィルム100は、前述した範囲内の透過率を有することによって、駆動後に遮断モードから再び透過モードにスイッチングされ得る。
【0040】
また、本出願は、透過度可変装置の駆動方法に関する。例えば、前記透過度可変装置の駆動方法は、前述した透過度可変装置を用いて前記透過度可変装置を駆動する方法に関する。したがって、後述する透過度可変装置の駆動方法に関する具体的な事項は、前記透過度可変装置で記述した内容が同一に適用され得る。
【0041】
例示的な本出願の透過度可変装置の駆動方法は、第1電極基板、電気泳動層および第2電極基板を順に含み、電圧の印加によって透過モードと遮断モードをスイッチングする透過度可変フィルムに遮断モードの具現時に時間の経過に伴って電圧の強度が減少するように電圧信号を印加することを含む。前記透過度可変フィルムおよび電圧信号の印加に関する具体的な内容は、前記透過度可変装置で記述したものと同一なので、省略することとする。前記透過度可変装置は、前記方法を用いて駆動されることによって、優れた遮光率を有する透過度可変フィルムの遮断モードを具現することができる。
【0042】
また、本出願は、透過度可変装置の遮光率改善方法に関する。例えば、前記透過度可変装置の改善方法は、前述した透過度可変装置を用いて前記透過度可変装置の遮光率を改善する方法に関する。したがって、後述する透過度可変装置の遮光率改善方法に関する具体的な事項は、前記透過度可変装置で記述した内容が同一に適用され得る。
【0043】
例示的な本出願の透過度可変装置の遮光率改善方法は、第1電極基板、電気泳動層および第2電極基板を順に含み、電圧の印加によって透過モードと遮断モードをスイッチングする透過度可変フィルムに遮断モードの具現時に時間の経過に伴って電圧の強度が減少するように電圧信号を印加することを含む。前記透過度可変フィルムおよび電圧信号の印加に関する具体的な内容は、前記透過度可変装置で記述したものと同一なので、省略することとする。前記透過度可変装置は、前記方法を用いて遮光率を改善することによって、駆動後に優れた遮光率を有する透過度可変フィルムの遮断モードで具現され得る。
【0044】
また、本出願は、前記透過度可変装置の用途に関する。本出願の透過度可変装置は、電圧の印加によって透過モードと遮断モードをスイッチングすることができ、駆動後に遮断モードで優れた遮光率を有することができる。このような透過度可変装置は、例えば、スマートウィンドウに適用され得る。本明細書で「スマートウィンドウ(Smart Window)」は、入射光、例えば太陽光の透過率を調節できる機能を有するウィンドウを意味するものであって、いわゆるスマートブラインド、電子カーテン、透過度可変ガラスまたは照光ガラス等と呼ばれる機能性素子を包括する概念である。前記のようなスマートウィンドウを構成する方式は、特に制限されず、前記透過度可変装置を含む限り、通常の方式が適用され得る。
【発明の効果】
【0045】
本出願の透過度可変装置は、駆動後に遮断モードの具現時に優れた遮光率を示すことができ、このような透過度可変装置は、スマートウィンドウに有用に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本出願の一実施例による透過度可変装置を例示的に示す図である。
【
図2】本出願の一実施例によって初期遮断モードを具現した透過度可変装置を例示的に示す図である。
【
図3】本出願の一実施例によって駆動後に遮断モードを具現した透過度可変装置を例示的に示す図である。
【
図4】本出願の一実施例によって駆動後透過モードを具現した透過度可変装置を例示的に示す図である。
【
図5】本出願の実施例1で製造された透過度可変装置に印加される電圧信号を示すグラフである。
【
図6】本出願の実施例2で製造された透過度可変装置に印加される電圧信号を示すグラフである。
【
図7】本出願の比較例1で製造された透過度可変装置に印加される電圧信号を示すグラフである。
【
図8】本出願の実施例1で製造された透過度可変装置における電圧信号の印加による透過率を示すグラフである。
【
図9】本出願の実施例2で製造された透過度可変装置における電圧信号の印加による透過率を示すグラフである。
【
図10】本出願の比較例1で製造された透過度可変装置における電圧信号の印加による透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、実施例により本出願を具体的に説明するが、本出願の範囲が下記実施例により制限されるものではない。
【0048】
実施例1
【0049】
電気泳動層用組成物の製造
非極性の炭化水素溶媒(Isopar G、EXXONMOBIL CHEMICAL社)に200nmの粒径を有するカーボンブラック(carbon black)を3.5wt%で分散させて、電気泳動層用組成物を製造した。
【0050】
第1電極基板の製造
ポリエチレンテレフタレートフィルム(横×縦=100mm×100mm)上にリバースオフセット印刷(reverse offset printing)を用いてAlメタルメッシュ(metal mesh)を3μmの範囲の線幅、50μmの平均ピッチおよび145nmの厚さで形成して、第1電極基板を製造した。
【0051】
第2電極基板の製造
ポリエチレンテレフタレートフィルム(横×縦=100mm×100mm)上の全体にITO電極をスパッタリング方法を利用して100nmの厚さで形成して、第2電極基板を製造した。
【0052】
透過度可変フィルムの製造
前記第1電極基板のAlメタルメッシュ上に電気泳動層用組成物を塗布した後、前記第2電極基板のITO電極が前記電気泳動層用組成物と接するように第2電極基板をラミネートして、透過度可変フィルムを製造した。
【0053】
透過度可変装置の製造
前記で製造された透過度可変フィルムの第1電極基板に形成された第1電極に(+)電圧が、第2電極基板に形成された第2電極に(-)電圧が印加されるように、電力源としてNF programmable AC/DC power source EC1000S(NFCorporation)を連結して、透過度可変装置を製造した。この際、
図5に示されたように、前記透過度可変フィルムを遮断モードで具現するために、前記電気泳動層に-20V、-15Vおよび-10Vの強度の順に電圧信号をそれぞれ50Hzの周波数で2秒間印加した。その後、前記透過度可変フィルムを遮断モードに維持するために、電圧の非印加(0V)状態で、20秒間維持した。また、前記透過度可変フィルムを遮断モードから透過モードに具現するために、前記電気泳動層に30Vの電圧を500Hzの周波数で30秒間印加した。
【0054】
実施例2
図6に示されたように、透過度可変フィルムを遮断モードで具現するために、前記電気泳動層に-20V、-15Vおよび-10Vの強度の順に電圧信号をそれぞれ50Hzの周波数で2秒間印加した後、18Vの電圧を30Hzの周波数で2秒間さらに印加したことを除いて、実施例1と同じ方法で透過度可変装置を製造した。
【0055】
実施例3
透過度可変フィルムを遮断モードで具現するために、前記電気泳動層に-20V、-15Vおよび-10Vの強度の順にそれぞれ印加される電圧信号の周波数を全部100Hzに変更し、10秒間印加したことを除いて、前記実施例1と同じ方法で透過度可変装置を製造した。
【0056】
比較例1
図7に示されたように、透過度可変フィルムを遮断モードで具現するために、前記電気泳動層に印加される電圧信号を段階的に形成せず、-10Vだけを印加し、前記電圧信号の周波数を100Hzに変更し、10秒間印加したことを除いて、前記実施例1と同じ方法で透過度可変装置を製造した。
【0057】
比較例2
透過度可変フィルムを遮断モードで具現するために、前記電気泳動層に印加される電圧信号を段階的に形成せず、-10Vだけを印加したことを除いて、前記実施例1と同じ方法で透過度可変装置を製造した。
【0058】
評価例:電圧信号による透過率の評価
前記実施例および比較例の透過度可変装置を用いて、透過モードおよび遮断モードのスイッチング時に具現される透過度可変フィルムの透過率を電気光学装備(LCMS-200、SESIM光電子技術)を利用して、可視光に対する電圧印加の前と後の透過率の変化を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0059】
【0060】
前記表1に示されたように、実施例1~3の透過度可変装置のように、透過度可変フィルムを透過モードから遮断モードに具現するとき、電気泳動層に時間の経過に伴って電圧の強度が減少するように電圧信号を印加する場合、初期、すなわち、電圧の非印加時に(0V)遮断モードでの透過率と類似した数値の透過率を示すことを確認することができる。特に、実施例1の透過度可変装置の場合、
図8に示されたように、駆動後に遮断モードでの透過率が15%、すなわち、遮光率が85%を示すことを確認することができる。また、実施例2の透過度可変装置の場合、
図9に示されたように、駆動後に遮断モードでの反対電圧信号の印加によって、透過率が10%、すなわち、遮光率が90%を示すことを確認することができる。
【0061】
他方で、比較例1および2の透過度可変装置のように、透過度可変フィルムを透過モードから遮断モードに具現するとき、電気泳動層に印加される電圧を段階的に印加せず、単一電圧信号を印加する場合、初期遮断モードでの透過率と大きな差異があることを確認することができる。特に、比較例1の透過度可変装置の場合、
図10に示されたように、駆動後遮断モードでの透過率が25%、すなわち、遮光率が75%を示すことを確認することができる。
【0062】
したがって、実施例1~3の透過度可変装置を使用する場合、比較例1および2の透過度可変装置に比べて、駆動後に遮断モードでの遮光率に優れていることを確認した。
【符号の説明】
【0063】
100 透過度可変フィルム
110 第1電極基板
111 第1基材フィルム
112 パターン電極層
120 電気泳動層
121 荷電粒子
130 第2電極基板
131 第2基材フィルム
132 全面電極層
200 電力源