(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】バッテリー管理装置、バッテリー管理方法及びバッテリーパック
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20220125BHJP
G01R 31/3828 20190101ALI20220125BHJP
G01R 31/387 20190101ALI20220125BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20220125BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220125BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/48 301
G01R31/3828
G01R31/387
G01R31/367
H02J7/00 B
H02J7/04 D
H02J7/04 L
H02J7/00 M
(21)【出願番号】P 2020564750
(86)(22)【出願日】2020-01-10
(86)【国際出願番号】 KR2020000480
(87)【国際公開番号】W WO2020153637
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2020-11-24
(31)【優先権主張番号】10-2019-0008921
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リム、ボ-ミ
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-529078(JP,A)
【文献】特開2017-122622(JP,A)
【文献】特開2008-10420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
G01R 31/3828
G01R 31/387
G01R 31/367
H02J 7/00
H02J 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーの電流、電圧及び温度を検出するように構成されたセンシング部と、
前記検出された電流を示す第1電流値、前記検出された電圧を示す第1電圧値及び前記検出された温度を示す第1温度値を含む第1データセットを生成するように構成された制御部と、を含み、
前記制御部は、
エラー発生機を用いて、前記第1データセットから第2電流値、第2電圧値及び第2温度値を含む第2データセットを生成するように構成され、
前記第1温度値
に基づいて、拡張カルマンフィルターの等価回路モデルの第1時定数を決定するように構成され、
前記第2温度値
に基づいて、前記等価回路モデルの第2時定数を決定するように構成され、
アンペアカウンティングを用いて、前記第1電流値に基づいて前記バッテリーの充電状態に対する第1候補値を決定するように構成され、
前記拡張カルマンフィルターを用いて、前記第1データセット、前記第1時定数及び補正値に基づいて、前記充電状態に対する第2候補値を決定するように構成され、
前記拡張カルマンフィルターを用いて、前記第2データセット、前記第2時定数及び前記補正値に基づいて、前記充電状態に対する第3候補値を決定するように構成され、
前記第1候補値と前記第2候補値との第1差値を決定するように構成され、
前記第1候補値と前記第3候補値との第2差値を決定するように構成され、
前記第2差値が前記第1差値よりも小さい場合、前記補正値をアップデートするように構成され、
前記アップデートされた補正値が所定の初期値よりも大きい、バッテリー管理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1温度値及び以前周期の充電状態に基づいて、前記拡張カルマンフィルターの等価回路モデルの前記第1時定数を決定し、
前記第2温度値及び前記以前周期の充電状態に基づいて、前記等価回路モデルの前記第2時定数を決定するように構成される、請求項1に記載のバッテリー管理装置。
【請求項3】
前記第1電流値と前記第2電流値の第1対、前記第1電圧値と前記第2電圧値の第2対及び前記第1温度値と前記第2温度値の第3対のうち少なくとも一つの対の各々に含まれた二つの値が相異なる、請求項1
または2に記載のバッテリー管理装置。
【請求項4】
前記アップデートされた補正値と前記初期値との差が、前記第1差値に比例する、請求項1
から3のいずれか一項に記載のバッテリー管理装置。
【請求項5】
前記アップデートされた補正値と前記初期値との差が、前記第1差値と前記第2差値との差に比例する、請求項1
から3のいずれか一項に記載のバッテリー管理装置。
【請求項6】
前記制御部は、
下記の数式を用
いて前記補正値をアップデートするように構成され、
【数11】
D
1は前記第1差値、D
2は前記第2差値、M
1は第1加重値、M
2は第2加重値、E
correctは前記アップデートされた補正値を示す、請求項1
から3のいずれか一項に記載のバッテリー管理装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記第2差値が前記第1差値以上である場合、前記補正値を前記初期値と同一にアップデートするように構成される、請求項1
から3のいずれか一項に記載のバッテリー管理装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記第1差値が臨界値よりも大きい場合、前記第1候補値を前記充電状態として決定するように構成される、請求項1
から7のいずれか一項に記載のバッテリー管理装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記第1差値が前記臨界値以下である場合、前記第2候補値を前記充電状態として決定するように構成される、請求項
8に記載のバッテリー管理装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記バッテリーの電流経路に設けられたスイッチを制御するための
スイッチング信号を選択的に出力し、
前記第2差値が前記第1差値よりも小さい場合、前記
スイッチング信号のデューティ比を基準デューティ比以下に制限するように構成される、請求項1
から9のいずれか一項に記載のバッテリー管理装置。
【請求項11】
請求項1から請求項
10のいずれか一項に記載のバッテリー管理装置を含む、バッテリーパック。
【請求項12】
バッテリーの電流、電圧及び温度を検出する段階と、
前記検出された電流を示す第1電流値、前記検出された電圧を示す第1電圧値及び前記検出された温度を示す第1温度値を含む第1データセットを生成する段階と、
エラー発生機を用いて、前記第1データセットから第2電流値、第2電圧値及び第2温度値を含む第2データセットを生成する段階と、
前記第1温度値
に基づいて、拡張カルマンフィルターの等価回路モデルの第1時定数を決定する段階と、
前記第2温度値
に基づいて、前記等価回路モデルの第2時定数を決定する段階と、
アンペアカウンティングを用いて、前記第1電流値に基づいて前記バッテリーの充電状態に対する第1候補値を決定する段階と、
前記拡張カルマンフィルターを用いて、前記第1データセット、前記第1時定数及び補正値に基づいて、前記充電状態に対する第2候補値を決定する段階と、
前記拡張カルマンフィルターを用いて、前記第2データセット、前記第
2時定数及び前記補正値に基づいて、前記充電状態に対する第3候補値を決定する段階と、
前記第1候補値と前記第2候補値との第1差値を決定する段階と、
前記第1候補値と前記第3候補値との第2差値を決定する段階と、
前記第2差値が前記第1差値よりも小さい場合、前記補正値をアップデートする段階と、を含み、
前記アップデートされた補正値が、所定の初期値よりも大きい、バッテリー管理方法。
【請求項13】
前記アップデートされた補正値と前記初期値との差が、前記第1差値または前記第1差値と前記第2差値との差に比例する、請求項
12に記載のバッテリー管理方法。
【請求項14】
前記第1差値が臨界値よりも大きい場合、前記第1候補値を前記充電状態として決定する段階と、
前記第1差値が前記臨界値以下である場合、前記第2候補値を前記充電状態として決定する段階と、をさらに含む、請求項
12または13に記載のバッテリー管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーの充電状態を推定する技術に関する。
【0002】
本出願は、2019年1月23日出願の韓国特許出願第10-2019-0008921号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
最近、ノートブックPC、ビデオカメラ、携帯電話などのような携帯用電子製品の需要が急増し、電気自動車、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、衛星などの開発が本格化するにつれ、反復的な充放電の可能な高性能二次電池についての研究が活発に進行しつつある。
【0004】
現在、商用化したバッテリーとしては、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池、リチウムバッテリーなどがあり、このうち、リチウムバッテリーは、ニッケル系のバッテリーに比べてメモリ効果がほとんど起こらず、充放電が自由で、自己放電率が非常に低くてエネルギー密度が高いという長所から脚光を浴びている。
【0005】
バッテリーの充放電を制御するに際して重要なパラメーターの一つは、充電状態(SOC:state of charge)である。充電状態は、バッテリーが完全に充電されたときにバッテリーに貯蔵された電気エネルギーを示す最大容量(maximum capacity)に対する現在容量の相対的な割合を示すパラメーターであって、0~1または0%~100%で示し得る。例えば、バッテリーの最大容量が1000Ah(ampere-hour)であり、現在バッテリーに残っている容量が750Ahである場合、バッテリーの充電状態は0.75(または75%)となる。
【0006】
バッテリーの充電状態の推定においては、アンペアカウンティングと等価回路モデルが代表的に用いられている。アンペアカウンティングは、バッテリーを通して流れる電流を時間に対して累積した電流積算値に基づいてバッテリーの充電状態を推定する。しかし、電流センサーの測定誤差及び/または外部からのノイズによって、アンペアカウンティングによって推定された充電状態と実際の充電状態との差が発生し得るという問題がある。等価回路モデルは、バッテリーの電気化学的な動作特性に倣うように設計されたものである。但し、バッテリーは、動作状態に応じて非線形的な特性を有し、バッテリーの非線形的な特性に完璧に倣うように等価回路モデルを設計することは非常に難しい。
【0007】
前述したアンペアカウンティング及び等価回路モデルの各々の短所を解決するために、拡張カルマンフィルターを用いてバッテリーの充電状態を推定する技術が存在する。拡張カルマンフィルターは、アンペアカウンティングと等価回路モデルとを組み合わせることで、アンペアカウンティング及び等価回路モデルのいずれか一つを用いる場合よりも充電状態を正確に推定することができる。
【0008】
拡張カルマンフィルターを用いてバッテリーの充電状態を推定するためには、等価回路モデルに含まれたRCペアの時定数を決定すると共に、少なくとも一つの状態変数(例えば、充電状態、オーバーポテンシャル)の各々に関わる二つのプロセスノイズも設定することが要求される。
【0009】
しかし、従来には、時定数がバッテリーの充電状態及び温度の少なくとも一つのみに依存し、各プロセスノイズに固定された値が割り当てられるため、バッテリーの動作状態や使用環境に合わせてアンペアカウンティング及び等価回路モデルの各々の信頼度が適切に調節できなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、毎周期ごとにバッテリーの充電状態に対する複数の候補値を決定した後、複数の候補値間の関係に基づいてバッテリーの充電状態を決定することができるバッテリー管理装置、バッテリー管理方法及びバッテリーパックを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、複数の候補値間の関係に応じて、拡張カルマンフィルター内におけるアンペアカウンティング及び等価回路モデルの各々の信頼度を調節することができるバッテリー管理装置、バッテリー管理方法及びバッテリーパックを提供することを他の目的とする。
【0012】
本発明の他の目的及び長所は、下記する説明によって理解でき、本発明の実施例によってより明らかに分かるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段及びその組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一面によるバッテリー管理装置は、バッテリーの電流、電圧及び温度を検出するように構成されたセンシング部と、制御部と、を含む。前記制御部は、前記検出された電流を示す第1電流値、前記検出された電圧を示す第1電圧値及び前記検出された温度を示す第1温度値を含む第1データセットを生成するように構成される。前記制御部は、エラー発生機を用いて、前記第1データセットから第2電流値、第2電圧値及び第2温度値を含む第2データセットを生成するように構成される。前記制御部は、前記第1温度値及び以前周期の充電状態に基づいて、拡張カルマンフィルターの等価回路モデルの第1時定数を決定するように構成される。また、前記制御部は、前記第2温度値及び前記以前周期の充電状態基づいて、前記等価回路モデルの第2時定数を決定するように構成される。前記制御部は、アンペアカウンティングを用いて、前記第1電流値に基づいて前記バッテリーの充電状態に対する第1候補値を決定するように構成される。前記制御部は、前記拡張カルマンフィルターを用いて、前記第1データセット、前記第1時定数及び補正値に基づいて、前記充電状態に対する第2候補値を決定するように構成される。前記制御部は、前記拡張カルマンフィルターを用いて、前記第2データセット、前記第2時定数及び前記補正値に基づいて、前記充電状態に対する第3候補値を決定するように構成される。また、前記制御部は、前記第1候補値と前記第2候補値との第1差値を決定するように構成される。前記制御部は、前記第1候補値と前記第3候補値との第2差値を決定するように構成される。前記制御部は、前記第2差値が前記第1差値よりも小さい場合、前記補正値をアップデートするように構成される。前記アップデートされた補正値が所定の初期値よりも大きい。
【0014】
前記第1電流値と前記第2電流値の第1対、前記第1電圧値と前記第2電圧値の第2対及び前記第1温度値と前記第2温度値の第3対のうち少なくとも一つの対の各々に含まれた二つの値が相異なる。
【0015】
前記アップデートされた補正値と前記初期値との差が、前記第1差値に比例し得る。
【0016】
前記アップデートされた補正値と前記初期値との差が、前記第1差値と前記第2差値との差に比例し得る。
【0017】
前記制御部は、下記の数式を用いて前記補正値をアップデートするように構成され得る。
【数10】
【0018】
D1は前記第1差値、D2は前記第2差値、M1は第1加重値、M2は第2加重値、Ecorrectは前記アップデートされた補正値を示し得る。
【0019】
前記制御部は、前記第2差値が前記第1差値以上である場合、前記補正値を前記初期値と同一にアップデートするように構成され得る。
【0020】
前記制御部は、前記第1差値が臨界値よりも大きい場合、前記第1候補値を前記充電状態として決定するように構成され得る。
【0021】
前記制御部は、前記第1差値が前記臨界値以下である場合、前記第2候補値を前記充電状態として決定するように構成され得る。
【0022】
前記制御部は、前記バッテリーの電流経路に設けられたスイッチを制御するためのスイッチング信号を選択的に出力するように構成され得る。前記制御部は、前記第2差値が前記第1差値よりも小さい場合、前記スイッチング信号のデューティ比を基準デューティ比以下に制限するように構成され得る。
【0023】
本発明の他面によるバッテリーパックは、前記バッテリー管理装置を含む。
【0024】
本発明のさらに他面によるバッテリー管理方法は、バッテリーの電流、電圧及び温度を検出する段階と、前記検出された電流を示す第1電流値、前記検出された電圧を示す第1電圧値及び前記検出された温度を示す第1温度値を含む第1データセットを生成する段階と、エラー発生機を用いて、前記第1データセットから第2電流値、第2電圧値及び第2温度値を含む第2データセットを生成する段階と、前記第1温度値及び以前周期の充電状態に基づいて、拡張カルマンフィルターの等価回路モデルの第1時定数を決定する段階と、前記第2温度値及び前記以前周期の充電状態に基づいて、前記等価回路モデルの第2時定数を決定する段階と、アンペアカウンティングを用いて、前記第1電流値に基づいて前記バッテリーの充電状態に対する第1候補値を決定する段階と、前記拡張カルマンフィルターを用いて、前記第1データセット、前記第1時定数及び補正値に基づいて、前記充電状態に対する第2候補値を決定する段階と、前記拡張カルマンフィルターを用いて、前記第2データセット、前記第1時定数及び前記補正値に基づいて、前記充電状態に対する第3候補値を決定する段階と、前記第1候補値と前記第2候補値との第1差値を決定する段階と、前記第1候補値と前記第3候補値との第2差値を決定する段階と、前記第2差値が前記第1差値よりも小さい場合、前記補正値をアップデートする段階と、を含む。前記アップデートされた補正値は、所定の初期値よりも大きい。
【0025】
前記アップデートされた補正値と前記初期値との差が、前記第1差値または前記第1差値と前記第2差値との差に比例し得る。
【0026】
前記バッテリー管理方法は、前記第1差値が臨界値よりも大きい場合、前記第1候補値を前記充電状態として決定する段階と、前記第1差値が前記臨界値以下である場合、前記第2候補値を前記充電状態として決定する段階と、をさらに含み得る。
【発明の効果】
【0027】
本発明の実施例の少なくとも一つによれば、毎周期ごとにバッテリーの充電状態に対する複数の候補値を決定した後、複数の候補値との関係に基づいてバッテリーの充電状態をより正確に決定することができる。
【0028】
また、本発明の実施例の少なくとも一つによれば、複数の候補値との関係によって、拡張カルマンフィルター内におけるアンペアカウンティング及び等価回路モデルの各々の信頼度を調節することができる。
【0029】
本発明の効果は以上で言及した効果に制限されず、言及されていない本発明の他の効果は請求範囲の記載から当業者により明らかに理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明によるバッテリーパックの構成を例示的に示した図である。
【
図2】バッテリーの等価回路モデルの回路構成を例示的に示す図である。
【
図3】バッテリーのOCV-SOCカーブを例示的に示す図である。
【
図4】本発明の第1実施例によるバッテリー管理方法を例示的に示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第1実施例によるバッテリー管理方法を例示的に示すフローチャートである。
【
図6】本発明の第2実施例によるバッテリー管理方法を例示的に示すフローチャートである。
【
図7】本発明の第2実施例によるバッテリー管理方法を例示的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0032】
したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0033】
第1、第2などのように序数を含む用語は、多様な構成要素のうちいずれか一つを残りと区別する目的として使用され、このような用語によって構成要素が限定されることではない。
【0034】
なお、明細書の全体にかけて、ある部分が、ある構成要素を「含む」とするとき、これは特に反する記載がない限り、他の構成要素を除くことではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。また、明細書に記載の「制御部」のような用語は、少なくとも一つの機能や動作を処理する単位を示し、これはハードウェアやソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアとの結合せにより具現され得る。
【0035】
さらに、明細書の全体に亘って、ある部分が他の部分と「連結(接続)」されているとするとき、これは、「直接的に連結(接続)」されている場合のみならず、その中間に他の素子を介して「間接的に連結(接続)」されている場合も含む。
【0036】
図1は、本発明の一実施例によるバッテリーパックの構成を例示的に示す図であり、
図2は、バッテリーの等価回路モデルの回路構成を例示的に示す図である。
図3は、バッテリーのOCV-SOCカーブを例示的に示す。
【0037】
図1を参照すれば、バッテリーパック10は、電気車両1などのような電力駆動装置に要求される電気エネルギーを提供するためのものであって、バッテリー20、スイッチ30及びバッテリー管理装置100を含む。
【0038】
バッテリー20は、少なくとも一つのバッテリーセルを含む。各バッテリーセルは、例えば、リチウムイオンセルであり得る。勿論、バッテリーセルの種類がリチウムイオンセルに限定されることではなく、反復的な充放電が可能なものであれば、特に制限されない。バッテリー20に含まれた各バッテリーセルは、他のバッテリーセルと直列または並列で電気的に接続する。
【0039】
スイッチ30は、バッテリー20の充放電のための電流経路に設けられる。スイッチ30の制御端子は、制御部120に電気的に接続可能に提供される。スイッチ30は、制御部120によって出力されるスイッチング信号SSが制御端子に印加されることに応じて、スイッチング信号SSのデューティ比によってオンオフ制御される。スイッチ30は、スイッチング信号SSがハイレベルである場合にターンオンされ、スイッチング信号SSがローレベルである場合にターンオフされ得る。
【0040】
バッテリー管理装置100は、バッテリー20の充電状態を周期的に決定するために、バッテリー20に電気的に接続可能に提供される。バッテリー管理装置100は、センシング部110、制御部120、メモリ部130及び通信部140を含む。
【0041】
センシング部110は、バッテリー20の電圧、電流及び温度を検出するように構成される。センシング部110は、電流センサー111、電圧センサー112及び温度センサー113を含む。
【0042】
電流センサー111は、バッテリー20の充放電経路に電気的に接続可能に提供される。電流センサー111は、バッテリー20を通して流れる電流を検出し、検出された電流を示す信号SIを制御部120に出力するように構成される。
【0043】
電圧センサー112は、バッテリー20の正極端子及び負極端子に電気的に接続可能に提供される。電圧センサー112は、バッテリー20の正極端子と負極端子との間にかかる電圧を検出し、検出された電圧を示す信号SVを制御部120に出力するように構成される。
【0044】
温度センサー113は、バッテリー20から所定の距離内における領域の温度を検出し、検出された温度を示す信号STを制御部120に出力するように構成される。
【0045】
制御部120は、センシング部110、メモリ部130、通信部140及びスイッチ30に動作可能に結合する。制御部120は、ハードウェア的に、ASICs(application specific integrated circuits)、DSPs(digital signal processors)、DSPDs(digital signal processing devices)、PLDs(programmable logic devices)、FPGAs(field programmable gate arrays)、マイクロプロセッサー(microprocessors)、その他の機能の遂行のための電気的ユニットの少なくとも一つを用いて具現され得る。
【0046】
制御部120は、センシング部110によって出力される信号SI、信号SV及び信号STを周期的に受信するように構成される。制御部120は、制御部120に含まれたADC(analog-to-digital converter)を用いて、信号SI、信号SV及び信号STの各々から第1電流値、第1電圧値及び第1温度値を決定した後、第1電流値、第1電圧値及び第1温度値を含む第1データセットをメモリ部130に保存するように構成される。
【0047】
メモリ部130は、制御部120に動作可能に結合する。メモリ部130には、後述する段階を行うのに必要なプログラム及び各種データが保存され得る。メモリ部130は、例えば、 例えば、フラッシュメモリタイプ(flash(登録商標) memory type)、ハードディスクタイプ(hard disk type)、SSDタイプ(Solid State Disk type,ソリッドステートディスクタイプ)、SDDタイプ(Silicon Disk Drive type,シリコンディスクドライブタイプ)、マルチメディアカードマイクロタイプ(multimedia card micro type)、RAM(random access memory,ランダムアクセスメモリ)、SRAM(static random access memory,スタティックランダムアクセスメモリ)、ROM(read‐only memory,リードオンリメモリ)、EEPROM(electrically erasable programmable read‐only memory,エレクトリカリーイレーサブルリードオンリメモリ)、PROM(programmable read-only memory,プログラマブルリードオンリメモリ)の少なくとも一つのタイプの保存媒体を含み得る。
【0048】
通信部140は、電気車両1のECU(Electronic Control Unit)のような外部デバイス2と通信可能に結合し得る。通信部140は、外部デバイス2からの命令メッセージを受信し、受信された命令メッセージを制御部120に提供し得る。命令メッセージは、バッテリー管理装置100の特定機能(例えば、充電状態の推定、スイッチ30に対するオンオフ制御)の活性化を要求するメッセージであり得る。通信部140は、制御部120からの通知メッセージを外部デバイス2に伝達し得る。通知メッセージは、制御部120によって実行された機能の結果(例えば、推定充電状態)を外部デバイス2に知らせるためのメッセージであり得る。例えば、通信部140は、外部デバイス2とLAN(local area network,ローカルエリア・ネットワーク)、CAN(controller area network,コントローラー・エリア・ネットワーク)、デージチェーンのような有線ネットワーク及び/またはブルートゥース(登録商標)、ジグビー、Wi-Fiなどの近距離無線ネットワークを介して通信し得る。
【0049】
制御部120は、バッテリー20のSOH(state of health)または最大容量を決定するように構成される。最大容量は、バッテリー20に現在最大に保存可能な電荷量を示す用語であって、「完全充電容量」とも称し得る。即ち、最大容量は、充電状態が1(=100%)であるバッテリー20を充電状態が0(=0%)になるまで放電させる間に流れる電流の積算値と同じである。一例で、制御部120は、バッテリー20の内部抵抗(internal resistance)を演算した後、演算された内部抵抗と基準抵抗との差に基づいてバッテリー20のSOHまたは最大容量を決定し得る。他の例で、制御部120は、次の数式1を用いて、バッテリー20が充放電される相異なる二つの時点の各々における充電状態及び二つの時点間の期間に積算された電流積算値に基づいてバッテリー20のSOHまたは最大容量を決定し得る。二つの時点のうち前の時点をt1、後の時点をt2とする。
【0050】
【0051】
数式1において、Qrefは基準容量、SOC1は時点t1で推定された充電状態、SOC2は時点t2で推定された充電状態、ΔSOCはSOC1とSOC2との差、itは時点t1と時点t2との間の時点tで検出された電流を示す電流値、ΔCは時点t1から時点t2までの期間に積算された電流積算値、Qestは時点 t2における最大容量の推定値、SOHnewは時点t2におけるSOHの推定値を示す。Qrefは、バッテリー20のSOHが1であったときの最大容量を示す予め決められた値であって、メモリ部130に予め保存され得る。
【0052】
数式1に関り、ΔSOCが小さすぎる場合、Qestが実際とは大きい差を示し得る。したがって、制御部120は、ΔSOCが所定値(例えば、0.5)以上である場合に限って、数式1を用いてバッテリー20のSOHまたは最大容量を決定するように構成され得る。
【0053】
以下、制御部120によって実行される、バッテリー20のSOCを推定するための動作をより詳しく説明する。
【0054】
制御部120は、アンペアカウンティングを用いて、第1電流値に基づいて第1候補値を決定する。第1候補値は、現周期のバッテリー20の充電状態の推定値を示す。第1候補値を決定するには、下記の数式2を用いることができる。
【0055】
【0056】
数式2に用いられた記号について説明すれば、次のようである。Δtは周期当たり時間の長さを示す。kはΔtの時間が経過する度に1ずつ増加する時間インデックスであって、所定のイベントが発生した時点から現在まで経過した周期の数を示す。イベントは、例えば、バッテリー20の電圧が安定化した状態でバッテリー20の充放電が始まるイベントであり得る。バッテリー20の電圧が安定化した状態とは、バッテリー20を通して電流が流れることなくバッテリー20の電圧が一定に維持される無負荷状態であり得る。この場合、SOCe[0]は、イベントが発生した時点におけるバッテリー20の開放電圧をインデックスとして用いて、バッテリー20の開放電圧(OCV:open circuit voltage)と充電状態との対応関係を規定するOCV-SOCカーブから決定され得る。OCV-SOCカーブは、メモリ部130に保存されている。
【0057】
数式2において、i[k+1]は現周期で検出された電流、SOCe[k]はアンペアカウンティングまたは拡張カルマンフィルターによって以前周期で決定された充電状態を示す。SOC[k+1]は第1候補値であって、数式2を用いて決定された充電状態である。数式2において、i[k+1]はi[k]に代替され得る。
【0058】
制御部120は、拡張カルマンフィルターを用いて、第2候補値及び第3候補値をさらに決定する。第2候補値は、現周期のバッテリー20の充電状態の推定値を示す。第2候補値及び第3候補値について説明する前、拡張カルマンフィルターについて説明する。
【0059】
拡張カルマンフィルターとは、数式2で表されるアンペアカウンティングと共に、バッテリー20の等価回路モデル200を追加的に活用して、バッテリー20の充電状態を周期的に更新するためのアルゴリズムである。
【0060】
図2を参照すれば、等価回路モデル200は、開放電圧源210、オーム抵抗R
1及びRCペア220を含む。
【0061】
開放電圧源210は、電気化学的に長時間の間に安定化したバッテリー20の正極と負極と間の電圧である開放電圧に倣うものである。開放電圧源210によって出力される開放電圧は、バッテリー20の充電状態と非線形的な関数関係を有する。即ち、OCV=f
1(SOC)でり、SOC=f
2(OCV)であって、f
1及びf
2は相互の逆関数である。例えば、
図3を参照すれば、3.3V=f
1(0.5)であり、0.7=f
2(3.47V)である。
【0062】
開放電圧源210によって出力される開放電圧OCVは、事前実験によって多様な充電状態と温度ごとに予め決められていてもよい。
【0063】
オーム抵抗R1は、バッテリー20のIRドロップV1に関わる。IRドロップとは、バッテリー20が無負荷状態から充放電状態への転換時または充放電状態から無負荷状態への転換時に、バッテリー20の両端にかかる電圧の瞬間的な変化を指す。例えば、無負荷状態のバッテリー20に対する充電が開始される時点で測定されるバッテリー20の電圧は開放電圧よりも大きい。他の例で、無負荷状態のバッテリー20に対する放電が開始される時点で測定されるバッテリー20の電圧は開放電圧よりも小さい。オーム抵抗R1の抵抗値も、事前実験によって多様な充電状態と温度ごとに予め決められていてもよい。
【0064】
RCペア220は、バッテリー20の電気二重層(electric double layer)などによって誘導されるオーバーポテンシャルV2(「分極電圧」と称することもある。)を出力するものであって、相互に並列接続した抵抗R2とキャパシタC2を含む。オーバーポテンシャルV2は「分極電圧」とも称することがある。RCペア220の時定数(time constant)は、抵抗R2の抵抗値とキャパシタC2のキャパシタンスとの積であり、事前実験によって多様な充電状態及び温度ごとに予め決められていてもよい。
【0065】
Vecmは、等価回路モデル200の出力電圧であって、開放電圧源210による開放電圧OCV、オーム抵抗R1によるIRドロップV1及びRCペア220によるオーバーポテンシャルV2の和と同一である。
【0066】
RCペア220の時定数が小さいほど、バッテリー20を通して流れる電流による等価回路モデル200の電流敏感度は大きい。逆に、RCペア220の時定数が大きいほど、バッテリー20を通して流れる電流による等価回路モデル200の電流敏感度は小さい。同じ条件において、等価回路モデル200の電流敏感度が大きいほど、Vecmは速く変化する。一方、等価回路モデル200の電流敏感度が小さいほど、Vecmは遅く変化する。
【0067】
等価回路モデル200において、現周期のオーバーポテンシャルは、下記の数式3のように定義できる。
【0068】
【0069】
数式3において、R2[k+1]は現周期の抵抗R2の抵抗値、τ[k+1]は現周期のRCペア220の時定数、V2[k]は以前周期のオーバーポテンシャル、V2[k+1]は現周期のオーバーポテンシャルを示す。数式3において、 i[k+1]はi[k]に代替し得る。イベントが発生した時点におけるオーバーポテンシャルV2[0]は、0V(volt)であり得る。
【0070】
下記の数式4は、拡張カルマンフィルターの時間アップデート過程に関わる第1状態方程式であって、数式2と数式3の組合せから誘導される。
【0071】
【0072】
数式4及び下記の数式5~8から、上付き文字で表された記号「^」は、時間アップデートによって予測された値であることを示す記号である。また、上付き文字で表された記号「-」は、後述する測定アップデートによって補正される前の値であることを示す記号である。
【0073】
下記の数式5は、拡張カルマンフィルターの時間アップデート過程に関わる第2状態方程式である。
【0074】
【0075】
数式5において、Pkは以前周期で補正された誤差共分散行列(error covariance matrix)、Qkは以前周期におけるプロセスノイズ共分散行列(process noise covariance matrix)、Tは転置行列演算子、P-
k+1は現周期の誤差共分散行列を示す。k=0であり、P0=[ 1 0 ; 0 1 ]であり得る。W1kは、以前周期で設定された第1プロセスノイズであって、アンペアカウンティングの信頼度に関わる。即ち、W1kは、アンペアカウンティングを用いて演算された電流積算値の不正確度を示す正数である。W2kは、以前周期で設定された第2プロセスノイズであって、等価回路モデル200の信頼度に関わる。即ち、W2kは、等価回路モデル200に関わるパラメーターの不正確度を示す正数である。したがって、制御部120は、アンペアカウンティングの不正確度が高くなるほど、第1プロセスノイズを増加させ得る。制御部120は、等価回路モデル200の不正確度が高くなるほど、第2プロセスノイズを増加させ得る。
【0076】
制御部120は、数式4及び数式5を用いた時間アップデート過程が完了すると、測定アップデート過程を行う。
【0077】
以下の数式6は、拡張カルマンフィルターの測定アップデート過程に関わる第1観測方程式である。
【0078】
【0079】
数式6において、Kk+1は現周期のカルマンゲインを示す。また、Rは測定ノイズ共分散行列(measurement noise covariance matrix)であり、予め決められた成分を有する。Hk+1はシステム行列であって、バッテリー20の充電状態を推定するとき、OCV-SOCカーブによるバッテリー20の開放電圧の変化推移を反映するためのものである。nは、予め決められた正の整数(例えば、1)である。
【0080】
以下の数式7は、拡張カルマンフィルターの測定アップデート過程に関わる第2観測方程式である。
【0081】
【0082】
数式7において、z
k+1は、現周期で測定されたバッテリー20の電圧であり、V
ecm[k+1]は現周期における等価回路モデル200の出力電圧を示す。f
1(SOC[k+1])は、現周期の開放電圧を示す(
図2についての説明参照)。V
1[k+1]は、現周期でオーム抵抗R
1にかかる電圧を示すものであって、i[k+1]及びi[k]のいずれか一つとR
1[k+1]との積と同一であり得る。R
1[k+1]は、現周期のオーム抵抗R
1の抵抗値である。制御部120は、第1温度値及び以前周期で決定された充電状態に基づいてR
1[k+1]を決定し得る。このために、メモリ部130には、充電状態、温度値及びオーム抵抗R
1の抵抗値の対応関係が定義された第1ルックアップテーブルが記録されている。制御部120は、特定の温度値(例えば、第1温度値)及び特定の充電状態をインデックスとして用いて、第1ルックアップテーブルから特定の温度値及び特定の充電状態にマッピングされた抵抗値を獲得し得る。数式4から得たSOC[k+1]及びV
2[k+1]は、数式7によって各々補正される。
【0083】
下記の数式8は、拡張カルマンフィルターの測定アップデート過程に関わる第3観測方程式である。
【0084】
【0085】
数式8において、Eは単位行列を示す。数式5から得たP-
k+1は、数式8によってPk+1に補正される。
【0086】
制御部120は、時間インデックスkが1ずつ増加する度に、数式4~8による各演算段階を少なくとも一回ずつ行うことで、現周期のバッテリー20の充電状態を周期的に更新する。
【0087】
以下、前述した拡張カルマンフィルターについての説明を参照し、第2候補値及び第3候補値を決定する動作について説明する。
【0088】
制御部120は、第1データセットに基づいて第2候補値を決定する。第1データセットは、第1電流値、第1電圧値及び第1温度値を含むということは前述した。制御部120は、第1温度値及び以前周期で決められた充電状態に基づいて、数式4のR2[k+1]及びτ[k+1]を決定する。
【0089】
このために、メモリ部130には、充電状態、温度値及び抵抗R2の抵抗値との対応関係が定義された第2ルックアップテーブルが記録され得る。制御部120は、第1温度値及び以前周期で決められた充電状態をインデックスとして用いて、第2ルックアップテーブルから、第1温度値及び以前周期で決められた充電状態にマッピングされた抵抗値を数式4のR2[k+1]として獲得し得る。また、メモリ部130には、充電状態と温度値と時定数との対応関係が定義された第3ルックアップテーブルが記録され得る。制御部120は、第1温度値及び以前周期で決められた充電状態をインデックスとして用いて、第3ルックアップテーブルから、第1温度値及び以前周期で決められた充電状態にマッピングされた時定数を第1時定数として獲得し得る。制御部120は、第1時定数に以前周期で決定された補正値を足した値を数式4のτ[k+1]として設定し得る。k=0である場合、所定の初期値(例えば、0)が補正値として用いられ得る。補正値の決定については後述する。
【0090】
制御部120は、数式4のi[k+1](またはi[k])を第1電流値と同一に設定し、数式7のzk+1を第1電圧値と同一に設定する。これによって、制御部120は、数式7によって補正されたSOC[k+1]を第2候補値として決定し得る。
【0091】
制御部120は、第1データセットを第2データセットに変換した後、第2データセットに基づいて第3候補値を決定する。具体的に、制御部120は、エラー発生機を用いて、第1データセットから第2データセットを生成し得る。エラー発生機は、外部からのノイズやセンシング部110の検出正確度などを考慮して第1データセットに含まれた第1電流値、第1電圧値及び第1温度値の少なくとも一つを強制に変化させるために、制御部120によって実行される。第2データセットは、第2電流値、第2電圧値及び第2温度値を含む。即ち、エラー発生機は、第1電流値から第2電流値への変化、第1電圧値から第2電圧値への変化及び第1温度値から第2温度値への変化のうち少なくとも一つを選択的に行うようにコーディングされた所定の関数であり得る。例えば、第2電流値=(第1電流値×X1)+X2であり、第2電圧値=(第1電圧値×X3)+X4であり、第2温度値=(第1温度値×X5)+X6であり得る。X1~X6は、相互に同一であるか、または相違に予め決められた定数であり得る。
【0092】
第1電流値と第2電流値の第1対、第1電圧値と第2電圧値の第2対及び第1温度値と第2温度値の第3対のうち少なくとも一つの対の各々に含まれた二つの値は相異なる。例えば、第1電流値と第2電流値は相互に同一である一方、第1電圧値と第2電圧値は相異なり、第1温度値と第2温度値も相異なり得る。他の例で、第1電流値と第2電流値は相異なり、第1電圧値と第2電圧値は相異なり、第1温度値と第2温度値も相異なり得る。
【0093】
第2データセットが生成されると、制御部120は、第2温度値及び以前周期で決定された充電状態に基づき、数式4のR2[k+1]及びτ[k+1]を決定し得る。
【0094】
具体的に、制御部120は、第2ルックアップテーブルから、第2温度値及び以前周期で決定された充電状態にマッピングされた抵抗値を数式4のR2[k+1]として獲得し得る。制御部120は、第3ルックアップテーブルから、第2温度値及び以前周期で決定された充電状態にマッピングされた第2時定数を獲得し得る。制御部120は、第2時定数に補正値を足した値を数式4のτ[k+1]に設定し得る。
【0095】
制御部120は、数式4のi[k+1](またはi[k])を第1電流値の代わりに第2電流値と同一に設定する。また、制御部120は、数式7のzk+1を第1電圧値の代わりに第2電圧値と同一に設定する。これによって、制御部120は、数式7によって補正されたSOC[k+1]を第3候補値として決定し得る。
【0096】
現周期でバッテリー20の充電状態に対する第1候補値、第2候補値及び第3候補値の決定が完了すると、制御部120は以下に説明する過程を経て、第1候補値及び第2候補値のいずれか一つを選択し、選択された候補値を現周期の充電状態として決定するように構成される。
【0097】
制御部120は、第1候補値と第2候補値との差の絶対値である第1差値を決定する。例えば、第1候補値が0.51であり、第2候補値が0.52である場合、第1差値は0.01となる。他の例で、第1候補値が0.77であり、第2候補値が0.75である場合、第1差値は0.02となる。
【0098】
制御部120は、第1候補値と第3候補値との差の絶対値である第2差値を決定する。例えば、第1候補値が0.61であり、第3候補値が0.64である場合、第2差値は0.03となる。他の例で、第1候補値が0.38であり、第2候補値が0.36である場合、第2差値は0.02となる。
【0099】
制御部120は、第1差値を所定の臨界値と比較し得る。臨界値は、メモリ部130に保存されたものであって、例えば、0.03であり得る。
【0100】
制御部120は、第1差値が臨界値よりも大きい場合、第1候補値をバッテリー20の充電状態として決定し得る。
【0101】
制御部120は、第1差値が臨界値以下である場合、第1候補値の代わりに第2候補値をバッテリー20の充電状態として決定する。
【0102】
制御部120は、第1差値と第2差値とを比較し得る。制御部120は、第2差値が第1差値以上である場合、第1プロセスノイズに対する第2プロセスノイズの割合を所定の基準割合(例えば、0.1)と同一に設定し得る。例えば、第1プロセスノイズは、所定の第1基準値(例えば、0.1)と同一に設定され、第2プロセスノイズは、所定の第2基準値(例えば、0.01)と同一に設定され得る。即ち、基準割合は、第2基準値を第1基準値で割った値と同一であり得る。
【0103】
制御部120は、第2差値が第1差値以上である場合、補正値を初期値と同一に設定し得る。制御部120は、初期値と同一に設定された補正値をメモリ部130に保存し得る。
【0104】
一方、アンペアカウンティングに関わる数式2を参照すれば、第1候補値は、バッテリー20の電流、電圧及び温度のうち電流のみに依存する。一方、拡張カルマンフィルターに関する数式3~8を参照すれば、第2候補値は、バッテリー20の電流は勿論、バッテリー20の電圧及び温度にも依存する。このような点を考慮するとき、等価回路モデル200の不正確度が高くなるほど、第2差値が第1差値よりも小くなる可能性が高くなることが分かる。
【0105】
したがって、制御部120は、第2差値が第1差値よりも小さい場合、第1プロセスノイズに対する第2プロセスノイズの割合を基準割合よりも増加させることができる。例えば、第1プロセスノイズは、第1基準値よりも小さい値(例えば、0.07)に設定され、第2プロセスノイズは、第2基準値と同一に設定され得る。他の例で、第1プロセスノイズは、第1基準値と同一に設定され、第2プロセスノイズは第2基準値よりも大きい値(例えば、0.02)に設定され得る。さらに他の例で、第1プロセスノイズは第1基準値よりも小さい値に設定され、第2プロセスノイズは第2基準値よりも大きい値に設定され得る。
【0106】
制御部120は、第2差値が第1差値よりも小さい場合、第1差値に比例するように第1プロセスノイズに対する第2プロセスノイズの割合を決定し得る。一例で、第1差値が0.01である場合、第1プロセスノイズに対する第2プロセスノイズの割合を0.11に決定し、第1差値が0.013である場合、第1プロセスノイズに対する第2プロセスノイズの割合を0.112に決定し、第1差値が0.008である場合、第1プロセスノイズに対する第2プロセスノイズの割合を0.103に決定し得る。
【0107】
または、制御部120は、第2差値が第1差値よりも小さい場合、第1差値と第2差値との差の絶対値に比例するように第1プロセスノイズに対する第2プロセスノイズの割合を決定し得る。
【0108】
前述したように設定された第1プロセスノイズ及び第2プロセスノイズは、次の周期の充電状態を推定する過程で数式5のW1k及びW2kに各々割り当てられ得る。これによって、次の周期で拡張カルマンフィルターが実行される場合、等価回路モデル200に対する信頼度(即ち、影響度)が一時的に低くなり、アンペアカウンティングに対する信頼度は一時的に高くなる効果がある。
【0109】
制御部120は、第2差値が第1差値よりも小さい場合、補正値を初期値よりも大きい値にアップデートし得る。制御部120は、アップデートされた補正値をメモリ部130に保存し得る。
【0110】
制御部120は、第2差値が第1差値よりも小さい場合、アップデートされた補正値と初期値との差が第1差値に比例するように、アップデートされた補正値を決定し得る。一例で、第1差値が0.01である場合、アップデートされた補正値は初期値よりも5だけ大きく決定され、第1差値が0.013である場合、アップデートされた補正値は初期値よりも6だけ大きく決定され得る。
【0111】
または、制御部120は、第2差値が第1差値よりも小さい場合、アップデートされた補正値と初期値との差が第1差値と第2差値との差に比例するように、アップデートされた補正値を決定し得る。一例で、第1差値が第2差値よりも0.01だけ大きい場合、アップデートされた補正値は初期値よりも4だけ大きく決定され、第1差値が第2差値よりも0.013だけ大きい場合、アップデートされた補正値は初期値よりも4.5だけ大きく決定され得る。
【0112】
または、制御部120は、第2差値が第1差値よりも小さい場合、下記の数式9を用いて、補正値をアップデートし得る。
【0113】
【0114】
数式9において、D1は第1差値、D2は第2差値、M1は第1加重値、M2は第2加重値、Ecorrectはアップデートされた補正値を示す。M1及びM2各々は、予め決められた正数であり、相互に同一であるか、または相異なり得る。
【0115】
前述したようにアップデートされた補正値は、メモリ部130に保存され、次の周期の充電状態を推定する過程で次の周期で獲得される第1時定数及び第2時定数の各々に足され得る。
【0116】
具体的に、次の周期で第1データセットに基づいて第2候補値を決定する過程で、アップデートされた補正値と次の周期における第1時定数との和が、数式4のτ[k+1]に割り当てられ得る。また、次の周期で第2データセットに基づいて第3候補値を決定する過程で、アップデートされた補正値と次の周期における第2時定数との和が、数式4のτ[k+1]に割り当てられ得る。
【0117】
前述したように、RCペア220の時定数が大きいほど、等価回路モデル200の電流敏感度が低い。次の周期で拡張カルマンフィルターが実行される場合、アップデートされた補正値と初期値との差分だけ数式4のτ[k+1]も大きくなるので、等価回路モデル200の信頼度(即ち、影響度)が一時的に低くなり、アンペアカウンティングの信頼度は相対的に高くなるという効果がある。
【0118】
制御部120は、スイッチ30を制御するために、スイッチング信号SSを選択的に出力し得る。制御部120は、第2差値が第1差値よりも小さい場合、スイッチング信号SSのデューティ比を所定の基準デューティ比(例えば、0.2)以下に制限し得る。スイッチング信号SSのデューティ比が基準デューティ比以下に制限される場合、バッテリー20を通して流れ得る電流の最大値が減少することによって、バッテリー20の電圧と温度の急激な変化が抑制できる。
【0119】
図4及び
図5は、本発明の第1実施例によるバッテリー管理方法を例示的に示すフローチャートである。
図4及び
図5の方法は、イベントが発生した時点から周期的に実行され得る。
図4及び
図5の方法は、バッテリー20の充放電が中断される場合に終了され得る。
【0120】
図1~
図5を参照すれば、段階S400で、制御部120は、バッテリー20の最大容量(またはSOH)を決定する(数式1参照)。
【0121】
段階S405で、制御部120は、センシング部110を用いて、バッテリー20の電流、電圧及び温度を検出する。センシング部110は、検出された電流を示す信号SI、検出された電圧を示す信号SV及び検出された温度を示す信号STを制御部120に出力する。
【0122】
段階S410で、制御部120は、信号SI、信号SV及び信号STを受信し、バッテリー20の電流を示す第1電流値、バッテリー20の電圧を示す第1電圧値及びバッテリー20の温度を示す第1温度値を含む第1データセットを生成する。
【0123】
段階S412で、制御部120は、エラー発生機を用いて、第1データセットから第2データセットを生成する。第2データセットは、第2電流値、第2電圧値及び第2温度値を含む。
【0124】
段階S420で、制御部120は、アンペアカウンティングを用いて、第1電流値に基づいてバッテリー20の充電状態に対する第1候補値を決定する(数式2参照)。
【0125】
段階S430で、制御部120は、拡張カルマンフィルターを用いて、第1データセットに基づいてバッテリー20の充電状態に対する第2候補値を決定する(数式3~8参照)。
【0126】
段階S440で、制御部120は、拡張カルマンフィルターを用いて、第2データセットに基づいてバッテリー20の充電状態に対する第3候補値を決定する(数式3~8参照)。
図4に示したこととは異なり、段階S420、段階S430及び段階S440のうちいずれか二つまたは全ては、同時に実行され得る。段階S420、段階S430及び段階S440の先後関係は、必要に応じて変更可能である。
【0127】
段階S450で、制御部120は、第1候補値と第2候補値との第1差値を決定する。
【0128】
段階S460で、制御部120は、第1候補値と第3候補値との第2差値を決定する。
図4に示したこととは異なり、段階S450及び段階S460は、同時に行われ得る。段階S450及び段階S460の先後関係は、必要に応じて変更可能である。
【0129】
段階S500で、制御部120は、第1差値が臨界値よりも大きいか否かを判定する。段階S500の値が「はい」である場合、段階S510へ進む。段階S500の値が「いいえ」である場合、段階S520へ進む。
【0130】
段階S510で、制御部120は、第1候補値をバッテリー20の充電状態として決定する。
【0131】
段階S520で、制御部120は、第2候補値をバッテリー20の充電状態として決定する。
【0132】
段階S530で、制御部120は、第2差値が第1差値よりも小さいか否かを判定する。段階S530の値が「いいえ」である場合、段階S540へ進む。段階S530の値が「はい」である場合、段階S550及び段階S560の少なくとも一つの段階へ進む。
【0133】
段階S540で、制御部120は、第1プロセスノイズに対する第2プロセスノイズの割合を基準割合と同一に設定する。例えば、第1プロセスノイズは、第1基準値と同一に設定され、第2プロセスノイズを第2基準値と同一に設定され得る。基準割合は、第2基準値を第1基準値で割った値である。
【0134】
段階S550で、制御部120は、第1プロセスノイズに対する第2プロセスノイズの割合を基準割合よりも増加させる。
【0135】
段階S560で、制御部120は、スイッチ30に出力されるスイッチング信号SSのデューティ比を基準デューティ比以下に制限する。制限されたデューティ比と基準デューティ比との差は、第1差値と第2差値との差に比例し得る。
【0136】
図6及び
図7は、本発明の第2実施例によるバッテリー管理方法を例示的に示すフローチャートである。
図6及び
図7の方法は、イベントが発生した時点から周期的に行われ得る。
図6及び
図7の方法は、バッテリー20の充放電が中断される場合に終了され得る。
【0137】
図1~
図3、
図6及び
図7を参照すれば、段階S600で、制御部120は、バッテリー20の最大容量(またはSOH)を決定する(数式1参照)。
【0138】
段階S605で、制御部120は、センシング部110を用いて、バッテリー20の電流、電圧及び温度を検出する。センシング部110は、検出された電流を示す信号SI、検出された電圧を示す信号SV及び検出された温度を示す信号STを制御部120に出力する。
【0139】
段階S610で、制御部120は、信号SI、信号SV及び信号STを受信し、バッテリー20の電流を示す第1電流値、バッテリー20の電圧を示す第1電圧値及びバッテリー20の温度を示す第1温度値を含む第1データセットを生成する。
【0140】
段階S612で、制御部120は、エラー発生機を用いて、第1データセットから第2データセットを生成する。第2データセットは、第2電流値、第2電圧値及び第2温度値を含む。
【0141】
段階S614で、制御部120は、第1温度値及び以前周期の充電状態に基づいて等価回路モデル200の第1時定数を決定する。
【0142】
段階S616で、制御部120は、第2温度値及び以前周期の充電状態に基づいて等価回路モデル200の第2時定数を決定する。段階S614の第1時定数及び段階S616の第2時定数の各々は、第3ルックアップテーブルから獲得できることは前述した。
図6に示したこととは異なり、段階S614及び段階S616は同時に行われるか、または段階S616が段階S614よりも先に行われ得る。
【0143】
段階S620で、制御部120は、アンペアカウンティングを用いて、第1電流値に基づいてバッテリー20の充電状態に対する第1候補値を決定する(数式2参照)。
【0144】
段階S630で、制御部120は、拡張カルマンフィルターを用いて、第1データセット、第1時定数及び補正値に基づいてバッテリー20の充電状態に対する第2候補値を決定する(数式3~数式8参照)。
【0145】
段階S640で、制御部120は、拡張カルマンフィルターを用いて、第2データセット、第2時定数及び補正値に基づいてバッテリー20の充電状態に対する第3候補値を決定する(数式3~数式8参照)。
図6に示したこととは異なり、段階S620、段階S630及び段階S640のいずれか二つまたは全ては、同時に行われ得る。段階S620、段階S630及び段階S640の先後関係は、必要に応じて変更してもよい。
【0146】
段階S650で、制御部120は、第1候補値と第2候補値との第1差値を決定する。
【0147】
段階S660で、制御部120は、第1候補値と第3候補値との第2差値を決定する。
図6に示したこととは異なり、段階S650及び段階S660は、同時に行われるか、または段階S660が段階S650よりも先に行われ得る。
【0148】
段階S700で、制御部120は、第1差値が臨界値よりも大きいか否かを判定する。段階S700の値が「はい」である場合、段階S710へ進む。段階S700の値が「いいえ」である場合、段階S720へ進む。
【0149】
段階S710で、制御部120は、第1候補値をバッテリー20の充電状態として決定する。
【0150】
段階S720で、制御部120は、第2候補値をバッテリー20の充電状態として決定する。
【0151】
段階S730で、制御部120は、第2差値が第1差値よりも小さいか否かを判定する。段階S730の値が「いいえ」である場合、段階S740へ進む。段階S730の値が「はい」である場合、段階S750及び段階S760の少なくとも一つへ進む。
【0152】
段階S740で、制御部120は、補正値を初期値と同一に設定する。
【0153】
段階S750で、制御部120は、補正値を初期値よりも大きい値にアップデートする(数式9参照)。段階S750でアップデートされた補正値は、次の周期の段階S630及び段階S640が行われる場合、第2候補値と第3候補値を決定するのに用いられる。
【0154】
段階S760で、制御部120は、スイッチ30に出力されるスイッチング信号SSのデューティ比を基準デューティ比以下に制限する。制限されたデューティ比と基準デューティ比との差は、第1差値と第2差値との差に比例し得る。
【0155】
図4及び
図5のバッテリー管理方法と
図6及び
図7のバッテリー管理方法とを区分して説明したが、二つのバッテリー管理方法のいずれか一つの特定段階が行われる場合、他のバッテリー管理方法の特定段階が共に行われ得る。一例で、段階S740が行われるときに段階S540が共に行われ得る。他の例で、段階S750が行われるときに段階S550が共に行われ得る。
【0156】
以上で説明した本発明の実施例は、必ずしも装置及び方法を通じて具現されることではなく、本発明の実施例の構成に対応する機能を実現するプログラムまたはそのプログラムが記録された記録媒体を通じて具現され得、このような具現は、本発明が属する技術分野における専門家であれば、前述した実施例の記載から容易に具現できるはずである。
【0157】
以上、本発明を限定された実施例と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【0158】
また、上述の本発明は、本発明が属する技術分野における通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想から脱しない範囲内で多様な置換、変形及び変更が可能であるため、上述の実施例及び添付された図面によって限定されず、多様な変形が行われるように各実施例の全部または一部を選択的に組み合わせて構成可能である。