(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】バッテリーモニタリングシステム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20220125BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220125BHJP
G01R 31/389 20190101ALI20220125BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20220125BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H02J7/00 Q
G01R31/389
G01R31/367
(21)【出願番号】P 2020539062
(86)(22)【出願日】2019-11-19
(86)【国際出願番号】 KR2019015895
(87)【国際公開番号】W WO2020106043
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2020-07-17
(32)【優先日】2018-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ブッサー、ロバート デイル
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-103471(JP,A)
【文献】特開2012-013554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
G01R 31/36-31/396
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーセルと電気的に直列で接続される電流センサと、
前記バッテリーセルと電気的に並列で接続される電圧センサと、
1秒当りM回の第1更新頻度で前記電流センサから前記バッテリーセルに流れるセル電流のセル電流値を取得するマイクロコントローラと、を含み、
前記マイクロコントローラは、前記セル電流値の取得と並行して、1秒当りN回の第2更新頻度で、前記電圧センサから電気的接地に対する前記バッテリーセルのセル電圧値を取得し、ここでMはN以上であり、
前記マイクロコントローラは、1秒当りR回の第3更新頻度で、前記セル電流値のうち二つのセル電流値
に基づく下記の数式1を用いてセル電流の変化率を決定し、ここで、RはM未満であって、かつ、RはN未満であり、
前記マイクロコントローラは、前記セル電圧値のうち二つのセル電圧値
に基づく下記の数式2を用いてセル電圧の変化率を決定し、
di/dt = (I
j
- I
j-1
) / (t
j
- t
j-1
)
… 数式1
dv/dt = (V
j
- V
j-1
) / (t
j
- t
j-1
)
… 数式2
ここで、di/dtは時間に対するセル電流の1次微分に対応する前記セル電流の変化率であり、I
j
は前記第3更新頻度と関連する現在動作サイクルの実行以前に最後にサンプリングされた電流値であり、I
j-1
は前記第3更新頻度と関連する前記現在動作サイクル以前の動作サイクルの実行以前に最後にサンプリングされた電流値であり、
dv/dtは時間に対するセル電圧の1次微分の計算に対応する前記セル電圧の変化率であり、V
j
は前記第3更新頻度と関連する前記現在動作サイクルの実行以前に最後にサンプリングされたセル電圧値であり、V
j-1
は前記第3更新頻度と関連する前記現在動作サイクル以前の動作サイクルの実行以前に最後にサンプリングされたセル電圧値であり、
t
j
は、システムが起動した後、前記第3更新頻度と関連する前記現在動作サイクルの実行開始から記録された経過時間であり、t
j-1
は、前記システムが起動した後、前記第3更新頻度と関連する前記現在動作サイクル以前の動作サイクルの実行開始から記録された経過時間であり、
符号jは、前記第3更新頻度と関連する前記現在動作サイクルに対する参照値であり、
符号j-1は、前記第3更新頻度と関連する以前動作サイクルに対する参照値であり、
前記マイクロコントローラは、前記セル電圧の変化率の数値符号と前記セル電流の変化率の数値符号とが同一であり、前記セル電圧の変化率が許容可能なセル電圧変化率の上限値以下であり、前記セル電圧の変化率が許容可能なセル電圧変化率の下限値以上であれば、前記セル電圧の変化率、前記セル電流の変化率、及び予めフィルタリングされたオーム抵抗値に基づいてフィルタリングされたオーム抵抗値を決定する、バッテリーモニタリングシステム。
【請求項2】
前記マイクロコントローラは、
前記セル電圧の変化率の数値符号が前記セル電流の変化率の数値符号と異なるか、前記セル電圧の変化率が前記許容可能なセル電圧の変化率の上限値を超過するか、または、前記セル電圧の変化率が前記許容可能なセル電圧の変化率の下限値未満であれば、予め決められたオーム抵抗値を用いて前記フィルタリングされたオーム抵抗値を決定する、請求項1に記載のバッテリーモニタリングシステム。
【請求項3】
前記マイクロコントローラは、下記の数式3を用いて前記許容可能なセル電圧の変化率の上限値を決定し、
UpperThresholdV
RofC = (abs(di/dt) * FilteredR0
j-1) + x% * (abs(di/dt) * FilteredR0
j-1) … 数式3
ここで、UpperThresholdV
RofCは前記許容可能なセル電圧の変化率の上限値であり、abs(di/dt)は前記セル電流の変化率の絶対値であり、FilteredR0
j-1は前記第3更新頻度と関連する前記現在動作サイクル以前の動作サイクル中に計算されたセル抵抗値R0のフィルタリングされた値の結果であり、x%は(abs(di/dt)×FilteredR0
j-1)の校正可能な百分率であり、前記第3更新頻度と関連する前記現在動作サイクルに対してFilteredR0
jの計算に用いられるように選択できる許容可能なdv/dt値の上限値を定義する、請求項
1または2に記載のバッテリーモニタリングシステム。
【請求項4】
前記マイクロコントローラは、下記の数式4を用いて前記許容可能なセル電圧の変化率の下限値を決定し、
LowerThresholdV
RofC = (abs(di/dt) * FilteredR0
j-1) - y% * (abs(di/dt) * FilteredR0
j-1) … 数式4
ここで、LowerThresholdV
RofCは前記許容可能なセル電圧変化率の下限値であり、abs(di/dt)は前記セル電流の変化率の絶対値であり、FilteredR0
j-1は前記第3更新頻度と関連する前記現在動作サイクル以前の動作サイクル中に計算されたセル抵抗値R0のフィルタリングされた値の結果であり、y%は(abs(di/dt)×FilteredR0
j-1)の校正可能な百分率であり、前記第3更新頻度と関連する前記現在動作サイクルに対して前記FilteredR0
jの計算に用いられるように選択できる許容可能なdv/dt値の下限値を定義する、請求項
1から
3のいずれか一項に記載のバッテリーモニタリングシステム。
【請求項5】
前記マイクロコントローラは、
前記セル電圧の変化率の数値符号が前記セル電流の変化率の数値符号と同じであり、前記セル電圧の変化率が前記許容可能なセル電圧変化率の上限値以下であり、前記セル電圧の変化率が前記許容可能なセル電圧変化率の下限値以上であれば、下記の数式5を用いて
前記フィルタリングされたオーム抵抗値を決定し、
FilteredR0
j = smoothingFilterFunction(NewRawR0Estimate, FilteredR0
j-1) … 数式5
ここで、FilteredR0
jは前記フィルタリングされたオーム抵抗値であり、NewRawR0Estimateはdv/diであり、dv/diはセル電流に対するセル電圧の1次微分であって(V
j-V
j-1)計算を(I
j-I
j-1)計算で除した値と同じであり、V
jは前記第3更新頻度と関連する前記現在動作サイクルの実行以前に最後にサンプリングされたセル電圧値であり、V
j-1は前記第3更新頻度と関連する前記現在動作サイクル以前の動作サイクルの実行以前に最後にサンプリングされたセル電圧値であり、I
jは前記第3更新頻度と関連する前記現在動作サイクルの実行以前に最後にサンプリングされた電流値であり、I
j-1は前記第3更新頻度と関連する前記現在動作サイクル以前の動作サイクルの実行以前に最後にサンプリングされた電流値であり、smoothingFilterFunction()は再帰形平滑フィルタである、請求項
1から
4のいずれか一項に記載のバッテリーモニタリングシステム。
【請求項6】
前記再帰形平滑フィルタは、一次遅れフィルタ、単一指数平滑フィルタまたは二重指数平滑フィルタである、請求項
5に記載のバッテリーモニタリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーモニタリングシステムに関し、より詳しくは、バッテリーセルに対する正確なオーム抵抗を推定及び決定するバッテリーモニタリングシステムに関する。
【0002】
本出願は、2018年11月23日出願の米国特許出願第16/198,955号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
図2は、
図1のバッテリーセルに関連するバッテリーセルの等価回路モデルの概略図である。
図3は、
図1のバッテリーセルが放電するとき、バッテリーセルに関連する例示的な電流曲線のグラフである。
図4は、
図1のバッテリーセルが放電するとき、バッテリーセルに関連する例示的な電圧曲線のグラフである。
【0004】
図2を参照すると、流れる電流に対するバッテリーセル12の電気的応答を示すのに用いられる等価回路モデル60が示されている。等価回路モデル60の主要要素のうち一つは、抵抗80のDC抵抗値R0(本明細書では「オーム抵抗値」とも称する)である。オームの法則(Ohm's Law)によれば、抵抗80を経た電圧降下は抵抗80を通過する電流と抵抗80の抵抗値とを乗じた関数である。このような電圧降下及び関連i
2R電力損失は、バッテリーセル70の意図されたアプリケーションに利用できない電力である。バッテリーセルの寿命初期(beginning of life)段階で、オーム抵抗値R0はそれぞれ最も小さい値である。しかし、カレンダーエイジ(calendar age)及び電流処理量(current throughput)によるバッテリーセルの老化は、R0値の増加をもたらす。R0値の増加は、電力伝達に関連するシステムの能力に重要な影響を及ぼすため、マイクロコントローラの役割のうち一つは、持続的にR0値の増加をモニタリング及び推定することである。
【0005】
R0の推定は、オームの法則「Vvoltage=Icurrent×Rresistance」に基づく。
【0006】
図3及び
図4を参照すると、例示的な電流曲線250及び例示的な電圧曲線260が示されている。時間t=0における電流値は0A(例えば、
図3及び
図4で0~25ms)であるため、抵抗80を通じた電圧降下0Vであり、+/-端子における開放回路電圧(Open Circuit Voltage)はバッテリーセル自体の電圧と同一である。t=1(例えば、
図3及び
図4でt=25ms)でバッテリーセル端子に負荷が接続し、それによるt=25msでの瞬間的な電流変化は端子でI
current×R
resistanceほどの電圧降下を引き起こし得る。この値は開放回路電圧(OCV)V
t=0と端子における新たな電圧V
t=1との差によって決定される。
【0007】
このような値、(Vt=1-Vt=0)または△Vのような抵抗80を経た電圧降下値、及び抵抗80に流れる電流値またはIt=1の電流値が分かれば、R0はR0=△V/It=1として決定される。
【0008】
オームの法則の数式は数学的に正確な関係である。しかし、リアルタイム組込みソフトウェアシステムに適用するには実質的な制限がある。「R0=△V/△I」は、電流変化直後のセル電圧を持続的に測定する場合にのみ理想的である。
【0009】
任意の時間△t>0(電流Iの値が変わった後)において、等価回路モデル(R1、R2、R3、C1、C2、C3)の動的な面は電流Iと端子で測定されたセル電圧との関係に影響を及ぼす。
【0010】
もし、△tが重要であれば、「R0=△V/△I」関係はもはや有効ではない。
【0011】
「R0=(Vt=(i)-Vt=(i-1))÷(It=(i)-It=(i-1))」の計算において実質的に困難な点は、ハードウェアとソフトウェアのプロセスにすべて0ではない時間が含まれるという事実である。ここで、It=(i-1)値の取得後Vt=(i-1)値の取得までの△t時間、及びIt=(i)値の取得後Vt=(i)値の取得までの△t時間がすべて0に近い。このような電圧と電流の実際アナログ値はハードウェアによって取得され、ハードウェアでアナログからデジタル形式に変換され、このような値のデジタル形式はコンピュータソフトウェアのドメインに入力され、R0推定値を計算するソフトウェアプロセスに伝達される。
【0012】
このような段階に含まれた0ではない時間だけでなく、段階自体は頻繁に異なる頻度で実行される。電流値の収集は、1秒当り200回(200Hz)のような一つの速度で行われ得る。セル電圧値の収集は、10Hzのような異なる速度で行われ得る。最後に、R0値推定の計算は、例えば5Hzのような、さらに異なる速度で行われ得る。
【0013】
このような電流及びセル電圧タイミング同期化問題の外にも、それぞれの信号値はそれぞれのセルに対する電流及びセル電圧のサンプルを取得するために用いるハードウェアセンサ固有の電気的ノイズによる誤謬成分を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
バッテリーモニタリングシステムは、バッテリーパックに備えられたそれぞれのバッテリーセルのオーム抵抗値R0を正確に理解しなければならない。本発明者は、このような知見を得るため、バッテリーモニタリングシステムがそれぞれのバッテリーセルのR0値の推定値を周期的に計算し、推定値に含まれた多様な類型のノイズ関連誤謬が基本的にガウシアンであるとの仮定の下(例えば、R0値を不正確に過小評価するより不正確に推定され得る)、このような誤謬の影響を減らすか又は無くすため平滑フィルタ(smoothing filter)またはスルーレート・リミッタ(slew rate limiter)を用いて推定値の結果を平滑化することを認識した。また、本発明者は、フィルタリングされたオーム抵抗値を得るため、R0推定計算に用いるための良好な候補電流及びセル電圧の対を識別及び選択し、識別可能な同期化及び電気的ノイズ関連誤謬の電流及びセル電圧対をフィルタリングするバッテリーモニタリングシステムを考案した。
【0015】
本発明の他の目的及び長所は、下記する説明によって理解でき、本発明の実施形態によってより明らかに分かるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段及びその組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一実施形態によるバッテリーモニタリングシステムが提供される。バッテリーモニタリングシステムは、バッテリーセルと電気的に直列で接続された電流センサを含む。バッテリーモニタリングシステムは、バッテリーセルと電気的に並列で接続された電圧センサをさらに含む。バッテリーモニタリングシステムは、1秒当りM回の第1更新頻度で電流センサからバッテリーセルに流れるセル電流のセル電流値を取得するマイクロコントローラをさらに含む。マイクロコントローラは、セル電流値の取得と並行して、電気的接地に対して1秒当りN回の第2更新頻度で電圧センサからバッテリーセルのセル電圧値を取得する。ここで、M≧Nである。マイクロコントローラは、1秒当りR回の第3更新頻度で、セル電流値のうち二つのセル電流値を用いてセル電流の変化率を決定する。ここで、R<Mであり、R<Nである。また、マイクロコントローラは、第3更新頻度で、セル電圧値のうち二つのセル電圧値を用いてセル電圧の変化率を決定する。また、セル電圧の変化率の数値符号とセル電流の変化率の数値符号とが同一であり、セル電圧の変化率が許容可能なセル電圧の変化率の上限値以下であり、セル電圧の変化率が許容可能なセル電圧の変化率の下限値以上であれば、マイクロコントローラは、第3更新頻度で、フィルタリングされたセル電圧の変化率、セル電流の変化率、及び予めフィルタリングされたオーム抵抗値に基づいてフィルタリングされたオーム抵抗値を決定する。
【発明の効果】
【0017】
本明細書に記載のバッテリーモニタリングシステムは、他のシステムに比べて実質的な利点を提供する。特に、バッテリーモニタリングシステムは、バッテリーセルのフィルタリングされたオーム抵抗値を取得するため、R0推定値の計算に用いるための電流及びセル電圧対の良好な候補を識別及び選択し、識別可能なタイミング同期化及び電気的ノイズ関連誤謬が含まれた電流及びセル電圧対をフィルタリングすることができるという技術的効果を提供する。
【0018】
本明細書に添付される次の図面は、後述する発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態によるバッテリーセルのためのバッテリーモニタリングシステムの概略図である。
【
図2】
図1のバッテリーセルに関連するバッテリーセルの等価回路モデルの概略図である。
【
図3】
図1のバッテリーセルが放電するとき、バッテリーセルに関連する例示的な電流曲線のグラフである。
【
図4】
図1のバッテリーセルが放電するとき、バッテリーセルに関連する例示的な電圧曲線のグラフである。
【
図5】第1更新頻度で取得した電流値、第2更新頻度で取得した電圧値、及び第3更新周期で決定されるオーム抵抗値計算のグラフであり、ここで、第1電流値の対I1、I2及び第1電圧値の対V1、V2はオーム抵抗値の計算に有効な値である。
【
図6】第1更新頻度で取得した電流値、第2更新頻度で取得した電圧値のグラフであり、ここで、第1電流値の対I3、I4及び第1電圧値の対V3、V4はオーム抵抗値の計算に有効ではない値である。
【
図7】第1更新頻度で取得した電流値、第2更新頻度で取得した電圧値のグラフであり、ここで、第1電流値の対I5、I6及び第1電圧値の対V5、V6はオーム抵抗値の計算に有効ではない値である。
【
図8】バッテリーセルのフィルタリングされたオーム抵抗値を決定する方法を示したフロー図である。
【
図9】バッテリーセルのフィルタリングされたオーム抵抗値を決定する方法を示したフロー図である。
【
図10】バッテリーセルのフィルタリングされたオーム抵抗値を決定する方法を示したフロー図である。
【
図11】バッテリーセルのフィルタリングされたオーム抵抗値を決定する方法を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0021】
したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0022】
また、本発明の説明において、関連公知構成または機能についての具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にし得ると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【0023】
第1、第2などのように序数を含む用語は、多様な構成要素のうちある一つをその他の要素と区別するために使われたものであり、これら用語によって構成要素が限定されることはない。
【0024】
明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは特に言及されない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0025】
さらに、明細書の全体において、ある部分が他の部分と「連結(接続)」されるとするとき、これは「直接的な連結(接続)」だけではなく、他の素子を介在した「間接的な連結(接続)」も含む。
【0026】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施形態を詳しく説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態によるバッテリーセルのためのバッテリーモニタリングシステムの概略図である。
【0028】
図1を参照すると、一実施形態によるバッテリーセル12をモニタリングするバッテリーモニタリングシステム10が提供される。システム10は、バッテリーセル12、電流センサ32、負荷34、電圧センサ36、マイクロコントローラ42及び外部コンピュータ43を含む。バッテリーモニタリングシステム10の長所は、システム10がバッテリーセル12のフィルタリングされたオーム抵抗値を得るため、R0推定計算に用いるための良好な候補電流及びセル電圧の対を識別及び選択し、識別可能なタイミング同期化及び電気的ノイズ関連誤謬を有する電流及びセル電圧の対をフィルタリングすることである。
【0029】
図1及び
図2を参照すると、バッテリーセル12は、正極端子(+)及び負極端子(-)を含む。一実施形態において、バッテリーセル12は、パウチ型リチウムイオンバッテリーセルであり得る。勿論、代案的な実施形態として、他の形態のバッテリーセルが用いられ得る。バッテリーセル12は、電圧源70、抵抗80、81、82、83、キャパシタ91、92、93及び電気ノード100、102、104、106を有するバッテリーセルの等価回路モデル60を用いて数学的にモデリングされる。
【0030】
抵抗80は、電圧源70と電気ノード100との間に接続される。抵抗81及びキャパシタ91は、電気ノード100と電気ノード102との間に電気的に並列で接続される。抵抗82及びキャパシタ92は、電気ノード102と電気ノード104との間に電気的に並列で接続される。抵抗83及びキャパシタ93は、電気ノード104と電気ノード106との間に電気的に並列で接続される。電気ノード106は電圧源70にさらに接続される。
【0031】
抵抗80は、バッテリーセル12の内部オーム抵抗値に対応する抵抗値R0を有する。抵抗81は、バッテリーセル12の第1時変(time-varying)抵抗値に対応する抵抗値R1を有する。抵抗82は、バッテリーセル12の第2時変抵抗値に対応する抵抗値R2を有する。抵抗83は、バッテリーセル12の第3時変抵抗値に対応する抵抗値R3を有する。キャパシタ91は、バッテリーセル12の第1時変キャパシタンスに対応するキャパシタンス値C1を有する。キャパシタ92は、バッテリーセル12の第2時変キャパシタンスに対応するキャパシタンス値C2を有する。キャパシタ93は、バッテリーセル12の第3時変キャパシタンスに対応するキャパシタンス値C3を有する。バッテリーセル等価回路モデル60の総正常状態抵抗はR0+R1+R2+R3である。
【0032】
図1を参照すると、電流センサ32は、バッテリーセル12の正極端子と負荷34との間に電気的に直列で接続される。電流センサ32は、バッテリーセル12に流れる電流レベル(例えば、電流の大きさ(magnitude))をそれぞれ示す電流値を出力し、出力されたそれぞれの電流値はマイクロコントローラ42によって受信される。
【0033】
負荷34は、電流センサ32とバッテリーセル12の負極端子との間に電気的に接続される。一実施形態において、負荷34は、電気モータであり得、外部コンピュータ43によって電気モータの動作(例えば、速度、トルクなど)が制御される。
【0034】
電圧センサ36は、負荷34と電気的に並列で接続される。電圧センサ36は、バッテリーセル12の電圧(例えば、電圧の大きさ)をそれぞれ示す電圧値を出力し、出力された電圧値はマイクロコントローラ42によって受信される。
【0035】
マイクロコントローラ42は、電流センサ32及び電圧センサ36と電気的に接続される。マイクロコントローラ42は、通信バス44を介して外部コンピュータ43と動作可能に通信する。マイクロコントローラ42は、データ、テーブル、及び後述する方法の少なくとも一部を実行するためのソフトウェア命令を記録するためのメモリデバイス130を含む。
【0036】
以下、オーム抵抗値R0を正確に判断するための電流値対及び電圧値対が時間的に許容可能であるか否かを判断するための基本方法論について簡単に説明する。
【0037】
図5は、第1更新頻度で取得した電流値、及び第2更新頻度で取得した電圧値、及び第3更新周期で決定されるオーム抵抗値計算のグラフであり、ここで、第1電流値の対I1、I2及び第1電圧値の対V1、V2はオーム抵抗値の計算のために有効な値である。
【0038】
図5を参照すると、オーム抵抗値R0を正確に判断するために有効な電流値の対及び電圧値の対を示したグラフ270が示されている。特に、グラフ270は、第1更新頻度で取得した複数の電流値(例えば、5ms毎に取得した電流値)及び第2更新頻度で取得した複数の電圧値(例えば、100ms毎に取得した電圧値)を有する。また、R0のためのオーム抵抗値の計算は第3更新頻度で行われる(例えば、100ms以上毎にオーム抵抗値が計算される)。電流値I1は電圧値V1よりも比較的にわずかな時間だけ先行し、電流値I2は電圧値V2よりも比較的にわずかな時間だけ先行し、このような電流値I1、I2及び電圧値V1、V2はR0のためのオーム抵抗値の計算に時間的に有効な値である。
したがって、図5において、電流値I1、I2及び電圧値V1、V2に基づいて、オーム抵抗値R0を「R0=(V2-V1)÷(I2-I1)」の数式によって算出することができる。
【0039】
図6は、第1更新頻度で取得した電流値、第2更新頻度で取得した電圧値のグラフであり、ここで、第1電流値の対I3、I4及び第1電圧値の対V3、V4はオーム抵抗値の計算に有効ではない値である。
【0040】
図6を参照すると、有効ではなくて正確なオーム抵抗値R0を導出できない電流値の対及び電圧値の対を示したグラフ280が示されている。特に、グラフ280は、第1更新頻度で取得した複数の電流値(例えば、5ms毎に取得した電流値)及び第2更新頻度で取得した複数の電圧値(例えば、100ms毎に取得した電圧値)を有する。電流値I3は、電圧値V3よりも比較的にわずかな時間だけ先行するため許容可能である。しかし、電流値I4は電圧値V4の後に取得されるため、電流値I3、I4及び電圧値V3、V4に基づいては正確なオーム抵抗値R0が計算できないこともある。
したがって、図6において、オーム抵抗値R0は△V及び△Iに基づいては算出できないこともある。ここで、△Vは「V4-V3」であり、△Iは「I4-I3」であり得る。すなわち、図6において、オーム抵抗値R0は「R0=(V4-V3)÷(I4-I3)」の数式によっては算出できないこともある。
【0041】
図7は、第1更新頻度で取得した電流値、第2更新頻度で取得した電圧値のグラフであり、ここで、第1電流値の対I5、I6及び第1電圧値の対V5、V6はオーム抵抗値の計算に有効ではない値である。
【0042】
図7を参照すると、有効ではなくて正確なオーム抵抗値R0を導出できない電流値の対及び電圧値の対を示したグラフ290が示されている。特に、グラフ290は、第1更新頻度で取得した複数の電流値(例えば、5ms毎に取得した電流値)及び第2更新頻度で取得した複数の電圧値(例えば、100ms毎に取得した電圧値)を有する。電流値I5は、電圧値V5よりも比較的にわずかな時間だけ先行するため許容可能である。しかし、電流値I6は、電圧値V6よりも比較的に長い時間(例えば、4.99ms)先立って取得されるため、電流値I5、I6及び電圧値V5、V6に基づいては正確なオーム抵抗値R0が計算できないこともある。
したがって、図7において、オーム抵抗値R0は△V及び△Iに基づいては算出できないこともある。ここで、△Vは「V6-V5」であり、△Iは「I6-I5」であり得る。すなわち、図7において、オーム抵抗値R0は「R0=(V6-V5)÷(I6-I5)」の数式によっては算出できないこともある。
【0043】
図1及び
図8~
図11を参照してバッテリーセル12のフィルタリングされたオーム抵抗値を決定する方法を説明する。
【0044】
図8~
図11は、バッテリーセルのフィルタリングされたオーム抵抗値を決定する方法を示したフロー図である。
【0045】
段階700において、マイクロコントローラ42は、電流センサ32からバッテリーセル12に流れる電流のセル電流値を1秒当りM回の第1更新頻度で取得する。
【0046】
段階702において、セル電流値の取得と時間的に並列して、マイクロコントローラ42は、電圧センサ36から接地に対するバッテリーセル12の電圧値を1秒当りN回の第2更新頻度で取得する。ここで、M≧Nである。
【0047】
段階704において、1秒当りR回の第3更新頻度で以下のサブ段階が順次に行われる。ここで、R<Mであり、R<Nであり、jは第3更新頻度と関連する現在動作サイクルに対する参照値であり、j-1は第3更新頻度と関連する以前動作サイクルに対する参照値である。
【0048】
サブ段階706において、マイクロコントローラ42は、下記の数式1を用いてセル電流の変化率(di/dt)を決定する。
【0049】
di/dt = (Ij - Ij-1) / (tj - tj-1) … 数式1
【0050】
ここで、di/dtは、時間に対するセル電流の1次微分の計算である。Ijは、第3更新頻度と関連する現在動作サイクルの実行以前に最後にサンプリングされたセル電流値である。Ij-1は、第3更新頻度と関連する現在動作サイクル以前の動作サイクルの実行以前に最後にサンプリングされたセル電流値である。tjは、システムが起動した後、第3更新頻度と関連する現在動作サイクルの実行開始から記録された経過時間である。tj-1は、システムが起動した後、第3更新頻度と関連する現在動作サイクル以前の動作サイクルの実行開始から記録された経過時間である。
【0051】
サブ段階708において、マイクロコントローラ42は、下記の数式2を用いてセル電圧の変化率(dv/dt)を決定する。
【0052】
dv/dt = (Vj - Vj-1) / (tj - tj-1) … 数式2
【0053】
ここで、dv/dtは、時間に対するセル電圧の1次微分の計算である。Vjは、第3更新頻度と関連する動作サイクルの実行以前に最後にサンプリングされたセル電圧値である。Vj-1は、第3更新頻度と関連する現在動作サイクル以前の動作サイクルの実行以前に最後にサンプリングされたセル電圧値である。tjは、システムが起動した後、第3更新頻度と関連する現在動作サイクルの実行開始から記録された経過時間である。tj-1は、システムが起動した後、第3更新頻度と関連する現在動作サイクル以前の動作サイクルの実行開始から記録された経過時間である。
【0054】
サブ段階710において、マイクロコントローラ42は、下記の数式3を用いて許容可能なセル電圧変化率の上限値を決定する。
【0055】
UpperThresholdVRofC = (abs(di/dt) * FilteredR0j-1) + x% * (abs(di/dt) * FilteredR0j-1) … 数式3
【0056】
ここで、UpperThresholdVRofCは、許容可能なセル電圧変化率の上限値である。abs(di/dt)は、セル電流の変化率(di/dt)の絶対値である。FileredR0j-1は、第3更新頻度と関連する現在動作サイクル以前の動作サイクル中に計算されたセル抵抗値R0のフィルタリングされた値の結果である。x%は、(abs(di/dt)×FilteredR0j-1)の校正可能な百分率であり、第3更新頻度と関連する現在動作サイクルに対してFilteredR0jの計算に用いられるように選択できる許容可能なdv/dt値の上限値を定義する。
【0057】
サブ段階712において、マイクロコントローラ42は、下記の数式4を用いて許容可能なセル電圧変化率の下限値を決定する。
【0058】
LowerThresholdVRofC = (abs(di/dt) * FilteredR0j-1) - y% * (abs(di/dt) * FilteredR0j-1) … 数式4
【0059】
ここで、LowerThresholdVRofCは、許容可能なセル電圧変化率の下限値である。abs(di/dt)は、サブ段階706のセル電流変化率(di/dt)の絶対値である。FilteredR0j-1は、第3更新頻度と関連する現在動作サイクル以前の動作サイクル中に計算されたセル抵抗値R0のフィルタリングされた値の結果である。y%は、(abs(di/dt)×FilteredR0j-1)の校正可能な百分率であり、第3更新頻度と関連する現在動作サイクルに対してFilteredR0jの計算に用いられるように選択できる許容可能なdv/dt値の下限値を定義する。
【0060】
サブ段階714において、マイクロコントローラ42は、(sign(dv/dt)=sign(di/dt))であって、(LowerThresholdVRofC≦dv/dt≦UpperThresholdVRofC)であるか否かを決定する。
【0061】
もし、サブ段階714の値が「はい」であれば、マイクロコントローラ42は、下記の数式5を用いてフィルタリングされたオーム抵抗値FilteredR0jを決定する。
【0062】
FilteredR0j = smoothingFilterFunction(NewRawR0Estimate, FilteredR0j-1) … 数式5
【0063】
ここで、NewRawR0Estimate=dv/diである。dv/diは、セル電流に対するセル電圧の1次微分であって、(Vj-Vj-1)計算を(Ij-Ij-1)計算で除した値と同じである。smoothingFilterFunction()は、一次遅れフィルタ、若しくは、単一または二重指数平滑フィルタのような再帰形平滑フィルタ(recursive smoothing filter)であって、新たな最小R0推定値を入力として用いて、すべての以前R0推定値の履歴はFilteredR0j-1で表される同じフィルタ関数を通じて実行される。
【0064】
一方、サブ段階714の値が「いいえ」であれば、マイクロコントローラ42は、下記の数式6を用いてフィルタリングされたオーム抵抗値FilteredR0jを決定する。
【0065】
FilteredR0j = FilteredR0j-1 … 数式6
【0066】
上述した方法は、上記方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令語を含む一つ以上のメモリ装置またはコンピュータ可読の媒体の形態として少なくとも部分的に具現される。メモリ装置は、一つ以上のハードドライブ、RAMメモリ、フラッシュメモリ、及び当業者に知られた他のコンピュータ可読媒体を含む。ここで、コンピュータ実行可能命令語が一つ以上のマイクロコントローラまたはコンピュータにローディングされて実行されるとき、上記一つ以上のマイクロコントローラまたはコンピュータは上記方法の段階を実行するようにプログラミングされた装置になる。
【0067】
本明細書に記載のバッテリーモニタリングシステムは、他のシステムに比べて実質的な利点を提供する。特に、バッテリーモニタリングシステムは、バッテリーセルのフィルタリングされたオーム抵抗値を取得するため、R0推定値の計算に用いるための電流及びセル電圧対の良好な候補を識別及び選択し、識別可能なタイミング同期化及び電気的ノイズ関連誤謬が含まれた電流及びセル電圧対をフィルタリングすることができるという技術的効果を提供する。
【0068】
以上、本発明を単に制限された数の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、本発明の精神と範囲から逸脱しない範囲内の変形例、代案例、代替例または等価例が可能であることは言うまでのない。また、多様な実施形態が上述されたが、本発明はこれら実施形態の一部のみを含むこともあり得ることを理解せねばならない。したがって、本発明の特許請求の範囲は上述した説明によって制限されるものではない。