(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】シリコンウェーハの熱処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/26 20060101AFI20220125BHJP
H01L 21/324 20060101ALI20220125BHJP
C30B 33/02 20060101ALI20220125BHJP
C30B 29/06 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
H01L21/26 F
H01L21/324 X
C30B33/02
C30B29/06 B
(21)【出願番号】P 2018194053
(22)【出願日】2018-10-15
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】312007423
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】潮田 彩
(72)【発明者】
【氏名】青木 竜彦
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-053521(JP,A)
【文献】特開2011-233556(JP,A)
【文献】特開2011-014645(JP,A)
【文献】国際公開第2003/003441(WO,A1)
【文献】特開2005-203575(JP,A)
【文献】特開2012-231050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/26
H01L 21/324
C30B 33/02
C30B 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内で回転可能に保持されたシリコンウェーハに対し不活性ガス雰囲気下で急速
昇降温熱処理するシリコンウェーハの熱処理方法であって、
前記チャンバ内における熱処理温度が900℃以上1100℃以下の温度帯において5sec以上30sec以下の時間保持するとともに、ウェーハ回転数を80rpm以上120rpm以下とし、
前記900℃以上1100℃以下の温度帯において、前記チャンバ内における不活性ガスの供給を、ガス置換率が90%以上となるよう制御することを特徴とするシリコンウェーハの熱処理方法。
【請求項2】
前記チャンバ内における熱処理温度が1300℃以上に到達する前に、900℃以上1100℃以下の温度帯において5sec以上30sec以下の時間保持するとともに、ウェーハ回転数を80rpm以上120rpm以下とする制御を行うことを特徴とする請求項1に記載されたシリコンウェーハの熱処理方法。
【請求項3】
900℃以上1100℃以下の温度帯において、前記チャンバ内の圧力は1kPa以下に制御されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたシリコンウェーハの熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハの熱処理方法に関し、特に不活性雰囲気下での熱処理において、シリコンウェーハ表面の自然酸化膜が溶解する際に生じるSiOガスの排気を効率的に行い、熱処理チャンバ内におけるSiOx固体の堆積を防止することのできるシリコンウェーハの熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの高集積化に伴い、シリコンウェーハ(単にウェーハともいう)等の半導体基板に対する高品質化が要求されている。特に、デバイスが形成される活性領域における結晶欠陥の低減は、必須事項である。例えばシリコンウェーハは、シリコン単結晶の育成と各種加工とにより製造されるが、単結晶の育成段階で発生する結晶欠陥が加工後のウェーハにおいて内在している。
【0003】
前記シリコンウェーハに内在する結晶欠陥を短時間の熱処理で低減する方法として、例えば特許文献1に開示されるようにRTP(Rapid Thermal Process)装置(急速昇降温熱処理装置)を用いる方法が知られている。特許文献1に開示される方法は、前記RTP装置において、シリコンウェーハをアルゴンガス雰囲気下で1300℃以上シリコン融点以下の温度範囲で加熱した後、400℃以上800℃以下の温度まで冷却し、次いで酸素雰囲気に切り替え、1250℃以上シリコン融点以下の温度で熱処理を行うものである。
【0004】
しかしながら、アルゴンガス雰囲気下で熱処理を行うと、ウェーハ表面に形成されている自然酸化膜が溶解し、SiOガスとして脱離する。生じたSiOガスは、すべてが排気されず、高温でシリコン表面をガスエッチングし、温度の低いチャンバ内壁や他の部材表面にSiOx固体として堆積する。そして、前記SiOx固体は、熱処理中のウェーハに付着するパーティクルの原因となるという課題があった。
【0005】
また、一般的に枚葉式熱処理装置で処理中のシリコンウェーハは、非接触式の放射温度計等でウェーハ裏面の複数点を計測しながら処理温度を制御するが、前記したSiOx等の反応生成物が放射温度計上に堆積した場合には、正確な温度計測ができず、処理中のウェーハ温度が不均一となり、スリップ欠陥が発生するという課題があった。
【0006】
前述のSiOガスからの反応生成物による課題に対し、特許文献2には、シリコンウェーハと放射温度計との間の空間に気流を生じさせ、前記放射温度計上への反応生成物の堆積速度を低下させる方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、ウェーハ回転をある程度速い速度(例えば250~350rpm)で回転させることで、ウェーハ上に反応生成物を堆積させず、スリップ欠陥を抑制できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-29429号公報
【文献】特表2002-507250号公報
【文献】特開2011-233556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に開示された方法にあっては、放射温度計上への反応生成物の堆積量を低減することができても、堆積を完全に抑制できるものではなかった。
また、特許文献3に記載される方法にあっては、ウェーハ上への反応生成物の堆積の抑制には有効であるものの、自然酸化膜の脱離によって生じるSiOガスがチャンバ内から排出され難くなるため、連続的に処理を行うと、チャンバ内にSiOx等の反応生成物が堆積してしまうという課題があった。
【0010】
このような事情の下、本願発明者は、鋭意研究の結果、不活性ガス雰囲気下でシリコンウェーハを回転させながら熱処理する際、1300℃以上に到達する前に、ウェーハ表面からSiOガスが発生する温度帯(900℃以上1100℃以下)でのウェーハ回転数とガス置換率とを制御することにより、SiOガスの熱処理チャンバからの排気効率が向上し、チャンバ内におけるSiOx等の反応生成物の堆積を防止できることを知見し、本発明をするに至った。
【0011】
本発明の目的は、シリコンウェーハに内在する結晶欠陥を短時間で低減するための不活性ガス雰囲気下での熱処理において、シリコンウェーハ表面の自然酸化膜が溶解する際に生じるSiOガスの排気を効率的に行うことができ、熱処理チャンバ内への反応生成物の堆積を抑制し、スリップの悪化を防止することのできるシリコンウェーハの熱処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記した課題を解決するためになされた、本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法は、チャンバ内で回転可能に保持されたシリコンウェーハに対し不活性ガス雰囲気下で急速昇降温熱処理するシリコンウェーハの熱処理方法であって、前記チャンバ内における熱処理温度が900℃以上1100℃以下の温度帯において5sec以上の時間保持するとともに、ウェーハ回転数を80rpm以上120rpm以下とし、前記900℃以上1100℃以下の温度帯において、前記チャンバ内における不活性ガスの供給を、ガス置換率が90%以上となるよう制御することに特徴を有する。
尚、前記チャンバ内における熱処理温度が1300℃以上に到達する前に、900℃以上1100℃以下の温度帯において5sec以上30sec以下の時間保持するとともに、ウェーハ回転数を80rpm以上120rpm以下とする制御を行うことが望ましい。
また、900℃以上1100℃以下の温度帯において、前記チャンバ内の圧力は1kPa以下に制御されることが望ましい。
【0013】
このような熱処理方法により、シリコンウェーハを不活性ガス雰囲気下で熱処理する場合に、ウェーハ回転数とチャンバ内のガス置換率を制御することによって、ウェーハ表面の自然酸化膜が溶解する際に生じるSiOガスの排気を効率的に行うことができる。その結果、熱処理チャンバ内への反応生成物の堆積を抑制し、スリップの悪化を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シリコンウェーハの不活性ガス雰囲気下での熱処理において、シリコンウェーハ表面の自然酸化膜が溶解する際に生じるSiOガスの排気を効率的に行うことができ、熱処理チャンバ内への反応生成物の堆積を抑制し、スリップの悪化を防止することのできるシリコンウェーハの熱処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法が適用されるRTP装置の断面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法のシーケンスを示すグラフである。
【
図3】
図3は、本発明に係る実施例の結果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、本発明に係る実施例の結果を示す他のグラフである。
【
図5】
図5は、本発明に係る実施例の結果を示す他のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明のシリコンウェーハの熱処理方法に用いられるRTP装置の一例の概要を示す断面図である。
本発明のシリコンウェーハの熱処理方法に用いられるRTP装置10は、
図1に示すように、雰囲気ガス導入口20a及び雰囲気ガス排出口20bを備えたチャンバ(反応管)20と、チャンバ20の上部に離間して配置された複数のランプ30と、チャンバ20内の反応空間25にウェーハWを支持するウェーハ支持部40とを備える。また、図示しないが、ウェーハWをその中心軸周りに所定速度で回転させる回転手段を備えている。
【0017】
ウェーハ支持部40は、ウェーハWの外周部を支持する環状のサセプタ40aと、サセプタ40aを支持するステージ40bとを備える。チャンバ20は、例えば、石英で構成されている。ランプ30は、例えば、ハロゲンランプで構成されている。サセプタ40aは、例えば、シリコンで構成されている。ステージ40bは、例えば、石英で構成されている。
【0018】
図1に示すRTP装置10を用いてウェーハWに対しRTPを行う場合は、チャンバ20に設けられた図示しないウェーハ導入口より、ウェーハWを反応空間25内に導入し、ウェーハ支持部40のサセプタ40a上にウェーハWを支持する。そして、雰囲気ガス導入口20aから後述する雰囲気ガスを導入すると共に、図示しない回転手段によりウェーハWを回転させながら、ランプ30によりウェーハW表面に対してランプ照射をすることで行う。
【0019】
尚、このRTP装置10における反応空間25内の温度制御は、ウェーハ支持部40のステージ40bに埋め込まれた複数の放射温度計50によってウェーハWの下部のウェーハ径方向におけるウェーハ面内多点(例えば、9点)の平均温度を測定し、その測定された温度に基づいて複数のハロゲンランプ30の制御(各ランプの個別のON-OFF制御や、発光する光の発光強度の制御等)を行う。
【0020】
次に、本発明に係わるシリコンウェーハの熱処理方法について図面を参照して説明する。
本発明に係わるシリコンウェーハの熱処理方法は、チョクラルスキー法により育成したシリコン単結晶インゴットからスライスされたシリコンウェーハに対して、所定の製造条件によりRTPを行う。
【0021】
チョクラルスキー法によるシリコン単結晶インゴットの育成は周知の方法にて行う。
すなわち、石英ルツボに充填した多結晶シリコンを加熱してシリコン融液とし、このシリコン融液の液面上方から種結晶を接触させて、種結晶と石英ルツボを回転させながら引上げ、所望の直径まで拡径して直胴部を育成することでシリコン単結晶インゴットを製造する。
【0022】
こうして得られたシリコン単結晶インゴットは、周知の方法によりシリコンウェーハに加工される。
すなわち、シリコン単結晶インゴットを内周刃又はワイヤソー等によりウェーハ状にスライスした後、外周部の面取り、ラッピング、エッチング、研磨等の加工工程を経て、シリコンウェーハを製造する。なお、ここで記載された加工工程は例示的なものであり、本発明は、この加工工程のみに限定されるものではない。
【0023】
次に、製造されたシリコンウェーハに対して、所定の製造条件によりRTPを行う。
図2は、本発明に係わるシリコンウェーハの熱処理方法に適用されるRTPの熱処理シーケンスを示す概念図である。
【0024】
本発明に係わるシリコンウェーハの熱処理方法に適用されるRTPにおける熱処理シーケンスは、
図1に示すようなRTP装置10において、所望の温度T0(例えば、500℃)で保持されたチャンバ20内に前記製造したシリコンウェーハを設置する。
チャンバ20内は、雰囲気ガス導入口20aから雰囲気ガス(例えばアルゴンガス)を導入し、不活性ガス雰囲気とする。
【0025】
そして、ハロゲンランプ30によりチャンバ20内を加熱し、
図2のグラフに示す900℃以上1100℃以下の温度帯T1に達するまでは所定の昇温速度で急速昇温する。
ここで前記温度帯T1は、所定時間tp1(望ましくは5sec以上30sec以下)の間、その温度範囲が維持されるよう制御する。前記温度帯T1を越えるまでの昇温パターンは、例えば
図2に示すようにパターン1、2、3が主に採用し得る。
また、熱処理空間からのSiOガスの排出を促進するため、前記温度帯T1におけるチャンバ内の気圧を、1kPa以下となるように制御する。
【0026】
温度帯T1が900℃以上1100℃以下である理由は、温度帯T1が1100℃より高いと、ウェーハ表面の自然酸化膜は除去できるが、保持温度が高すぎ、発生したSiOガスがシリコン表面を瞬時にエッチングする現象が発生するためである。また、温度帯T1が900℃より低いと、自然酸化膜を十分に分解するための温度に達せず、ウェーハ表面の自然酸化膜を十分に除去できないためである。
【0027】
また、前記温度帯T1を保持する時間tp1を5sec以上30sec以下とする理由は、ウェーハW表面に形成される自然酸化膜厚には個体差があるが、保持時間tp1が5sec以上で十分な効果を得ることができるためである。また、保持時間tp1を30sec以下とすることにより、ウェーハW表面にパーティクルが付着する確率を低く抑えることができるためである。
【0028】
また、前記温度帯T1でのウェーハWの回転速度は、80rpm以上120rpm以下に制御する。
さらに、不活性ガスの導入量が不足した場合にSiOガスを十分に排出できない虞があるため、1分間でチャンバ内を90%以上、ガス置換できる流量(30L/min以上100L/min以下)にて不活性ガスを導入する。
これにより、自然酸化膜溶解によってウェーハWの表面からSiOガスが発生した際、SiOガスの排出効率を向上することができる。
【0029】
尚、ウェーハWの回転数を80rpmより低くした場合、ウェーハWの面内温度の不均一が生じ、処理中のウェーハWが反って、サセプタ40aから外れる等の不具合が生じる。
一方、ウェーハWの回転数を120rpmより大きくすると、SiOガスの排気効率が低下し、ウェーハの直上直下にSiOガスが停滞し易く、1100℃を超える高温まで残留した場合に瞬時にシリコン表面をエッチングするため、処理チャンバ内に反応生成物が堆積するといった不具合が生じる。
【0030】
前記所定時間tp1が経過し、チャンバ20内の温度が前記温度帯T1を越えると、更に所定の昇温速度でT2(望ましくは1300℃)まで急速昇温し、例えば30sec保持する。
次いで、所定の降温速度で、T3(例えば600℃)まで降温した後、チャンバ内を酸化性雰囲気に切り替える。
【0031】
チャンバ内が酸化性雰囲気に切り替えられると、所定の昇温速度でT4(例えば1250℃)まで昇温し、30sec保持した後、所定の降温速度でT5まで降温し、RTPを終了する。
【0032】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、シリコンウェーハを不活性ガス雰囲気下で熱処理する場合に、ウェーハ回転数とチャンバ内のガス置換率を制御することによって、ウェーハ表面の自然酸化膜が溶解する際に生じるSiOガスの排気を効率的に行うことができる。その結果、熱処理チャンバ内への反応生成物の堆積を抑制し、スリップの悪化を防止することができる。
【0033】
尚、前記実施の形態においては、不活性ガスとしてアルゴンガスを例に説明したが、その他の不活性ガスをチャンバ内に導入した場合にも本発明を適用することができる。
【実施例】
【0034】
本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法について、実施例に基づきさらに説明する。本実施例では、前記実施の形態に基づき以下の実験を行った。
【0035】
本実施例では、チャンバ内に水平に保持したウェーハを、その表面側からランプ加熱し、ウェーハ温度を裏面側から放射温度計で測定しながら制御する枚葉方式のRTP装置を用いた。このRTP装置において、直径300mmの単結晶シリコン両面研磨ウェーハ1000~1500枚に対し熱処理を行い、処理ウェーハの酸化膜厚の推移とスリップ長(X線トポグラフィにより測定)の推移を評価した。
【0036】
共通の熱処理条件として、チャンバ内をアルゴン雰囲気とし、1300℃まで急速昇温して30sec保持した後、600℃まで降温し、チャンバからウェーハを取り出すことなく、酸化性雰囲気に切り替えた後、1250℃に急速昇温し30sec保持した。
さらに以下の条件を実施例、及び比較例ごとに設定した。尚、以下の条件で示す温度帯T1(℃)とは、
図2のグラフにおける温度帯T1に対応するタイミングでの温度範囲である。
(a)温度帯T1(℃)
(b)温度帯T1におけるウェーハ回転数(rpm)
(c)温度帯T1における保持時間/昇温時間(sec)
(d)温度帯T1におけるガス置換率(%)
(e)温度帯T1における圧力(kPa)
【0037】
表1、表2に示すように、前記(a)~(e)の条件により実施例1~13、及び比較例1~6を設定し評価した。
表1の判定欄において、○は連続処理での酸化膜厚の増加が確認されず、チャンバ内のSiOx反応生成物の顕著な堆積が見られなかったことを示す。△はチャンバ内のSiOx反応生成物の顕著な堆積は見られなかったが、熱処理中にウェーハがサセプタから外れる等の不具合が確認されたことを示す。×はウェーハの処理枚数の増加に伴い、酸化膜厚の増加、及びスリップの発生が確認されたことを示す。
【0038】
また、表2においてはチャンバ内の圧力(kPa)が、ガス置換率90%以上となるまでの時間に与える影響について評価した。
【0039】
【0040】
【0041】
表1の実施例10に示すように、温度帯T1における保持時間が長くなると(45sec)、ウェーハ表面にパーティクルが付着する確率が高くなり、顕著ではないがチャンバ内のSiOx反応生成物の堆積が見られた(判定△)。そのため、温度帯T1における保持時間は30sec以下が望ましいことを確認した。
【0042】
また、表1の比較例3に示すように、保持温度が高いと(1150℃)、ウェーハ表面の自然酸化膜は除去できるが、保持温度が高すぎるため、発生したSiOガスがシリコン表面を瞬時にエッチングする現象が発生した(判定×)。そのため、保持温度は1100℃以下が望ましいことを確認した。
【0043】
また、表1の比較例4に示すように、保持温度が低いと(850℃)、ウェーハ表面の自然酸化膜を十分に除去できなかった(判定×)。これは、自然酸化膜を十分に溶解するための温度に達しなかったためと考えられた。そのため、保持温度は900℃以上が望ましいことを確認した。
【0044】
上記結果を鑑み、表1から、チャンバ内の温度900℃以上1100℃以下において、ウェーハ回転数を0rpm以上120rpm以下(好ましくは80rpm以上120rpm以下)とし、そのときの保持時間を5sec以上30sec以下とし、さらにガス置換率を90%以上とすることが望ましいことを確認した。
【0045】
また、表2に示すようにガス置換率を90%とする場合に、チャンバ内圧力を1kPa以下とすることで、5sec以内にガス置換率を90%とすることができ、より効率的に本発明の目的を達成することができることを確認した。
【0046】
また、表1に示した実施例1、比較例1、比較例2について、処理枚数に対する60nmより大きい付着パーティクル数(個/ウェーハ)、合計スリップ長(mm)、酸化膜厚増加率(%)の変化をそれぞれ
図3、
図4、
図5のグラフに示す。
【0047】
図3のグラフにおいて、横軸は処理枚数、縦軸は付着パーティクル数(個/ウェーハ)である。このグラフに示されるように、比較例1、2では処理枚数が増加すると付着パーティクル数が増加したが、実施例1では処理枚数に拘わらず付着パーティクル数が低く抑えられた。
【0048】
また、
図4のグラフにおいて、横軸は処理枚数、縦軸は合計スリップ長(mm)である。このグラフに示されるように比較例1、2ではスリップの発生が顕著であったが、実施例1ではスリップは全く発生しなかった。
【0049】
また、
図5のグラフにおいて、横軸は処理枚数、縦軸は酸化膜厚増加率(%)である。このグラフに示されるように比較例1、2では処理枚数の増加とともに酸化膜厚が大きくなったが、実施例1では酸化膜厚の増加率は低く抑制された。
【0050】
以上のように本発明によれば、シリコンウェーハ表面の自然酸化膜が溶解する際に生じるSiOガスの排気を効率的に行うことができ、熱処理チャンバ内への反応生成物の堆積を抑制し、スリップの悪化を防止することができると確認した。
【符号の説明】
【0051】
10 RTP装置
20 チャンバ
20a 雰囲気ガス導入口
20b 雰囲気ガス排出口
25 反応空間
30 ランプ
40 ウェーハ支持部