(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-24
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】統合された保護層ツールを用いたリチウム堆積
(51)【国際特許分類】
H01M 4/134 20100101AFI20220125BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220125BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20220125BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20220125BHJP
H01M 4/1395 20100101ALI20220125BHJP
H01M 4/583 20100101ALI20220125BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/36 A
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/133
H01M4/1395
H01M4/583
(21)【出願番号】P 2018539037
(86)(22)【出願日】2017-01-16
(86)【国際出願番号】 US2017013648
(87)【国際公開番号】W WO2017131997
(87)【国際公開日】2017-08-03
【審査請求日】2020-01-16
(32)【優先日】2016-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ハール, ズブラマニヤ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ハース, ディーター
【審査官】近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-250968(JP,A)
【文献】特開2003-123740(JP,A)
【文献】特開2007-214109(JP,A)
【文献】特開2007-109423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/134
H01M 4/36
H01M 4/38
H01M 4/133
H01M 4/1395
H01M 4/583
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負電極であって、
シリコングラファイト又はグラファイトから構成されるアノードと、
前記アノード上に形成されたリチウム金属膜と、
前記リチウム金属膜上に形成された保護膜であって、リチウムイオン導電性材料又は間紙膜である、保護膜と
前記リチウム金属膜と前記保護膜との間に形成された界面膜と
を備え、前記界面膜は、LiF、Al
2O
3、LiAlO
2、LiAl
5O
8、ZrO
2、Li
2ZrO
3、Li
2O、Li
2S、及びこれらの混合物からなる群から選択される、負電極。
【請求項2】
負電極であって、
シリコングラファイト又はグラファイトから構成されるアノードと、
前
記アノード上に形成されたリチウム金属膜と、
前記リチウム金属膜上に形成された保護膜であって、リチウムイオン導電性材料又は間紙膜である、保護膜と
を備え、前記保護膜はリチウムイオン導電性材料であり、前記リチウムイオン導電性材料は、LiPON、ガーネットタイプのLi
7La
3Zr
2O
12の結晶相又はアモルファス相、0<x<1であるLi
2+2xZn
1-xGeO
4、0<x<3であるNa
1+xZr
2Si
xP
3-xO
12、水素化ホウ素リチウム(LiBH
4)、ドープされたアンチペロブスカイト組成物、及びxがCl、Br又はIであるLiPS
5Xからなる群から選択される、負電極。
【請求項3】
前記界面膜は、約0.1ミクロンから約5ミクロンの厚さを有する、請求項1に記載の負電極。
【請求項4】
前記界面膜は、ZrO
2、Li
2ZrO
3及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の負電極。
【請求項5】
前記界面膜は、ポリオレフィン、ポリフルオロカーボン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカプロラクトン、及びこれらの混合物及びコポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の負電極。
【請求項6】
前記リチウム金属膜は、約1ミクロンから約20ミクロンの厚みを有する、請求項1又は2に記載の負電極。
【請求項7】
前記保護膜はリチウムイオン導電性材料であり、前記リチウムイオン導電性材料は、LiPON、ガーネットタイプのLi
7La
3Zr
2O
12の結晶相又はアモルファス相、0<x<1であるLi
2+2xZn
1-xGeO
4、0<x<3であるNa
1+xZr
2Si
xP
3-xO
12、水素化ホウ素リチウム(LiBH
4)、ドープされたアンチペロブスカイト組成物、及びxがCl、Br又はIであるLiPS
5Xからなる群から選択される、請求項1に記載の負電極。
【請求項8】
前記間紙膜は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリエステル、ポリアミド、ポリアラミド、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリ(エステルカーボネート)、ポリベンゾイミダゾール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の負電極。
【請求項9】
前記間紙膜は、ポリプロピレンである、請求項1又は2に記載の負電極。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の負電極を組み込んだリチウムイオンバッテリ。
【請求項11】
負電極を形成する方法であって、
負電極上にリチウム金属膜を形成することと、
前記リチウム金属膜上に界面膜を形成することと、
前記界面膜上に保護膜を形成することと
を含み、前記界面膜は、剥離膜、金属フッ化物膜または金属酸化物膜のいずれかであり、前記界面膜は、LiF、Al
2O
3、LiAlO
2、LiAl
5O
8、ZrO
2、Li
2ZrO
3、Li
2O、及びこれらの混合物からなる群から選択される、方法。
【請求項12】
負電極を形成する方法であって、
負電極上にリチウム金属膜を形成することと、
前記リチウム金属膜上に界面膜を形成することと、
前記界面膜上に保護膜を形成することと
前記界面膜と前記保護膜とを前記リチウム金属膜から除去することと
を含み、前記界面膜は、剥離膜、金属フッ化物膜または金属酸化物膜のいずれかである、方法。
【請求項13】
前記界面膜は剥離膜であり、前記剥離膜は、ポリオレフィン、ポリフルオロカーボン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカプロラクトン、及びこれらの混合物及びコポリマーからなる群から選択される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記界面膜は、ZrO
2、Li
2ZrO
3、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項15】
前記界面膜と前記保護膜とを前記リチウム金属膜から除去することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記リチウム金属膜は、前記負電極上に積層される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項17】
リチウムでコーティングされた負電極を形成するための統合型処理ツールであって、
連続的な材料シート上にリチウム金属膜を堆積させるためのチャンバと、
前記リチウム金属膜の表面上に保護膜を堆積させるためのチャンバと
を通して、連続的な材料シートを移送するためのリールツーリールシステムを備え、
前記保護膜はリチウムイオン導電性材料であり、前記リチウムイオン導電性材料は、LiPON、ガーネットタイプのLi
7La
3Zr
2O
12の結晶相又はアモルファス相、0<x<1であるLi
2+2xZn
1-xGeO
4、0<x<3であるNa
1+xZr
2Si
xP
3-xO
12、水素化ホウ素リチウム(LiBH
4)、ドープされたアンチペロブスカイト組成物、及びxがCl、Br又はIであるLiPS
5Xからなる群から選択され、
前記リチウム金属膜を堆積させるための前記チャンバは、物理的気相堆積(PVD)システム、薄膜転写システム、積層システム、及びスロットダイ堆積システムからなる群から選択され、
前記リチウム金属膜の表面上に保護膜を堆積させるための前記チャンバは、間紙膜を堆積させるためのチャンバ、及び前記リチウム金属膜上にリチウムイオン導電性ポリマーを堆積させるためのチャンバからなる群から選択される、統合型処理ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本書に記載の実行形態は概して、リチウム金属の堆積と処理に関する。更に具体的には、本書に記載の実行形態は、エネルギーストレージデバイスにおいてリチウム金属を堆積させ、また処理する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]再充電可能な電気化学的ストレージシステムは現在、日々の生活の多くの分野においてさらに重要なものになりつつある。リチウムイオン(Li-ion)バッテリ等の大容量の電気化学的エネルギーストレージデバイスは、携帯用電子機器、医療用、物流用のグリッド接続された大エネルギーストレージ、再生可能エネルギーストレージ、無停電電源(UPS)を含む、ますます多くの用途において使用されている。従来の鉛/硫酸バッテリはしばしば容量が不足し、またこれらの増えつつある用途においてしばしばサイクル性が不十分である。リチウムイオンバッテリはしかしながら、最適品と考えられている。
【0003】
[0003]通常、リチウムバッテリは、安全性の理由で金属リチウムを全く含まず、代わりにグラファイト材料をアノードとして使用する。しかしながら、帯電状態のグラファイトを使用することで、最大リミット組成物LiC6まで帯電する可能性があり、この結果、金属リチウムを使用した場合に比べて容量がかなり低下する。現在工業界は、エネルギーセル密度を高めるためにグラファイトベースのアノードからシリコン混合グラファイトへと移行しつつある。しかしながら、シリコン混合グラファイトのアノードには、第1のサイクル容量損失の問題がある。したがって、シリコン混合グラファイトのアノードの第1のサイクル容量損失を補充するリチウム金属堆積が必要である。しかしながら、リチウム金属はいくつかのデバイスの統合の問題に直面している。
【0004】
[0004]リチウムは、アルカリ金属である。第1の主族の重元素同族体のように、リチウムは様々な物質との強い反応性によって特徴づけられる。リチウムは、水、アルコール及びプロトン性水素を含む他の物質と激しく反応し、その結果しばしば発火する。リチウムは空気中で不安定であり、酸素、窒素及び二酸化炭素と反応する。リチウムはふつう不活性ガス雰囲気(アルゴンなどの希ガス)下で取り扱われ、リチウムの強い反応性のために、他の処理工程も不活性ガス雰囲気内で実施される必要がある。その結果、リチウムは、処理、保管、及び輸送においていくつかの問題を生じさせる。
【0005】
[0005]リチウム金属のために保護用の表面処理が開発されている。リチウム金属の保護用の表面処理のある方法は、ワックス層、例えばポリエチレンワックスでリチウム金属をコーティングすることからなる。しかしながら、大量のコーティング剤を塗布しなければならず、後に続くリチウム金属層の処理が妨げられる。
【0006】
[0006]保護用の表面処理の別の方法は、連続的な炭酸コーティング、ポリマーコーティング、例えばポリウレタン、PTFE、PVC、ポリスチレン及びその他で安定化されたリチウム金属粉末(「SLMP」)を製造することを提案する。しかしながら、これらのポリマーコーティングにより、電極材料をプレリチウム化するときに問題が生じる。
【0007】
[0007]したがって、エネルギーストレージシステムのリチウム金属を堆積させ、また処理するための方法及びシステムが必要である。
【発明の概要】
【0008】
[0008]本書に記載の実行形態は概して、リチウム金属の堆積及び処理に関する。より具体的には、本書に記載の実行形態は、エネルギーストレージデバイスのリチウム金属を堆積させ、また処理するための方法及びシステムに関する。一実行形態では、負電極が配設される。負電極は、リチウム金属の薄膜でコーティングされる。リチウム金属の薄膜は、バッテリの第1のサイクル中のリチウム金属の不可逆的損失を補うのに十分な厚さのものであってよく、ある実行形態では、約1ミクロンから約20ミクロンの厚さのリチウム金属膜でありうる。リチウム金属膜は、リチウム金属のアノードとして使用されうる。さらに、リチウム金属膜は、周囲の酸化体からリチウム金属膜を保護するために、保護膜でコーティングされていてよい。ある実行形態では、保護膜は、最終的なバッテリセル内に組み込まれるイオン伝導性ポリマー材料を含む。別の実行形態では、保護膜は、周囲の酸化体からリチウム金属膜を保護する間紙膜を含む。間紙膜は通常、次の処理の前に除去される。いくつかの実行形態では、間紙膜はセパレータとして機能しうる。
【0009】
[0009]別の実行形態では、リチウムバッテリが提供される。リチウムバッテリは、リチウム金属の薄膜でコーティングされた正電極と負電極とを含む。リチウム金属の薄膜は、バッテリの第1のサイクル中のリチウム金属の不可逆的損失を補うのに十分な厚さのものであってよく、ある実行形態では、約1ミクロンから約20ミクロンの厚さのリチウム金属膜でありうる。さらに、リチウム金属膜は、周囲の酸化体からリチウム金属膜を保護するために、イオン伝導性ポリマーでコーティングされていてよい。
【0010】
[0010]また別の実行形態では、リチウムでコーティングされた負電極を形成するための統合型処理ツールが提供される。統合型処理ツールは、ウェブツール、PVD等のロールツーロールカバーリング真空及び非真空堆積技法、スロットダイ、グラビア印刷、溶射、積層、及びスクリーン印刷であってよい。統合型処理ツールは、連続的な材料シート上にリチウム金属の薄膜を堆積させるためのチャンバと、リチウム金属の薄膜の表面上に保護膜を堆積させるためのチャンバとを通して連続的な材料シートを移送するためのリールツーリールシステムを備えうる。ある実行形態では、リチウム金属の薄膜を堆積させるためのチャンバは、電子ビーム蒸発器等のPVDシステム、薄膜転写システム(グラビア印刷システム等の大面積パターン印刷システムを含む)、リチウム膜転写システム(例えばリチウムと負電極との間のオプションの剥離層とともにリチウムを負電極上に積層する)、またはスロットダイ堆積システムを含みうる。ある実行形態では、リチウム金属膜上に保護膜を堆積させるためのチャンバは、リチウム金属膜上に間紙膜を堆積させるためのチャンバまたはリチウムイオン伝導性ポリマーを堆積させるためのチャンバを含みうる。統合型処理ツールはさらに、次の処理の前に間紙膜を除去するためのチャンバを備えうる。ある実行形態では、統合型処理ツールはさらに、連続的な材料シート上に負電極材料を形成するためのチャンバを備える。ある実行形態では、連続的な材料シートはフレキシブル導電基板である。
【0011】
[0011]更に別の実行形態では、負電極を形成する方法が提供される。本方法は、負電極上にリチウム金属膜を形成することと、リチウム金属膜上に界面膜を形成することと、界面膜上に保護膜を形成することとを含み、界面膜は、剥離膜、金属フッ化物膜または金属酸化物膜のいずれかである。
【0012】
[0012]上述の本開示の特徴を詳細に理解しうるように、上記に簡単に要約された実行形態のより具体的な説明が、実行形態を参照することによって得られ、一部の実行形態は、付随する図面に例示されている。しかし、本開示は他の等しく有効な実行形態も許容しうることから、付随する図面はこの開示の典型的な実行形態のみを例示し、したがって、実行形態の範囲を限定すると見なすべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】本書に記載の実行形態により形成された電極構造の一実行形態を示す断面図である。
【
図1B】本書に記載の実行形態により形成された両面負電極構造を示す断面図である。
【
図2】本書に記載の実行形態に係る統合型処理ツールを示す概略図である。
【
図3】本書に記載の実行形態に係る電極構造を形成するための方法の一実行形態を要約したプロセスフロー図である。
【
図4A】本書に記載の実行形態に係る別の統合型処理ツールを示す概略図である。
【
図4B】本書に記載の実行形態に係る別の統合型処理ツールを示す概略図である。
【
図5】本書に記載の実行形態に係る、電極構造を形成するための方法の一実行形態を要約したプロセスフロー図である。
【
図6】本書に記載の実行形態に係る別の統合型処理ツールを示す概略図である。
【
図7】本書に記載の実行形態に係る更に別の統合型処理ツールを示す概略図である。
【0014】
[0022]理解しやすくするために、可能な場合は図面に共通の同一要素を記号表示するのに同一の参照番号が使われている。追加の記載なく他の実行形態に一実行形態の要素及び特徴を有益に組み込むことは可能であると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0023]以下の開示は、負電極と、高性能電気化学セル、及び前述した負電極を含むバッテリ、及び負電極と、高性能電気化学セル、及び前述した負電極を含むバッテリを製造するための方法を説明したものである。以下の説明及び
図1~7に記載される特定の詳細により、本開示の様々な実行形態を完全に理解することができるようになる。多くの場合電気化学セル及びバッテリに関連する周知の構造及びシステムを説明している他の詳細は、様々な実行形態の説明が無用に曖昧にならないように、以下の開示には記載されていない。
【0016】
[0024]図面に示す詳細、寸法、角度、及び他の特徴の多くは、特定の実行形態を説明しているにすぎない。したがって、本開示の精神又は範囲から逸脱しない限り、他の実行形態は、他の詳細、構成要素、寸法、角度、及び特徴を有することができる。加えて、本開示の更なる実行形態は、以下に記載の詳細のうちの幾つかが欠けた状態でも実施することができる。
【0017】
[0025]本書に記載の実行形態を、すべてカリフォルニア州サンタクララのアプライドマテリアルズ社から入手可能なTopMet(商品商標)、SmartWeb(商品商標)、TopBeam(商品商標)等のリールツーリールコーティングシステムを参照しながら以下に説明する。本書に記載の実行形態から利益を得るために、高速蒸発プロセスを実施することができる他のツールを適合させることもできる。更に、本書に記載の高速蒸発プロセスを可能にするいかなるシステムも有利に使用することができる。本書に記載の装置の説明は例示であり、本書に記載の実行形態の範囲を限定するものとして受け取ったり、あるいは解釈したりすべきではない。また当然ながら、リールツーリールプロセスとして説明されているが、本書に記載の実行形態を個々の基板に実施することも可能である。
【0018】
[0026]エネルギーストレージデバイス、例えばバッテリは通常、多孔性セパレータによって分離された正電極、負電極、及びイオン導電性マトリックスとして使用される電解質からなる。グラファイトアノードは現在の最先端技術であるが、工業界は、セルのエネルギー密度を高めるためにグラファイトベースのアノードからシリコン混合グラファイトのアノードへ移行しつつある。しかしながら、シリコン混合グラファイトのアノードはしばしば、第1のサイクル中に起きる不可逆的容量損失に悩まされる。したがって、この第1のサイクル容量損失を補充するための方法が必要である。
【0019】
[0027]リチウム金属の堆積は、このシリコン混合グラファイトのアノードの第1のサイクル容量損失を補充するための上記方法の1つである。リチウム金属の堆積には多数の方法(例:熱蒸発、積層、印刷等)があるが、特に量産環境において、デバイスを積み重ねる前にスプールに堆積されるリチウム金属の取扱いに対処する必要がある。ある実行形態では、リチウム金属膜上に間紙を形成するための方法及びシステムが提供されている。別の実行形態では、リチウムポリマー堆積のための方法及びシステムが提供されている。更に別の実行形態では、リチウム金属堆積及びイオン導電性ポリマー堆積の両方のための統合型ツールが提供されている。
【0020】
[0028]本書に記載の実行形態を使用すれば、リールを下流へ巻く又はほどく間、堆積されたリチウム金属の片面あるいは両面が保護されうる。リチウムイオン導電性ポリマー、イオン導電性セラミック、又はイオン導電性ガラスの薄膜を堆積させることは幾つかの点で助けとなる。まず、リチウム金属を含有する電極のリールを、リチウム金属を隣の電極と接触させずに巻く/ほどくことができる。2つ目に、良好なセル性能及びリチウム金属の高い電気化学的利用度のために安定した固体電解質界面(SEI)が確立される。加えて、保護膜の使用により、製造システムの複雑性が軽減し、現在の製造システムに適合する。
【0021】
[0029]
図1Aに、本開示の実行形態によって形成されたリチウム金属膜を有する例示のリチウムイオンエネルギーストレージデバイス100を示す。リチウムイオンエネルギーストレージデバイス100は、正電流コレクタ110、正電極120、セパレータ130、負電極140、リチウム金属膜145、オプションの保護膜170が形成されたオプションの界面膜147、及び負電流コレクタ150を有する。
図1において図示した電流コレクタはスタックを越えて延びているが、電流コレクタがスタックを越えて延びている必要はなく、スタックを越えて延びている部分はタブとして使用されうることに留意されたい。
【0022】
[0030]正電極120と負電極140の電流コレクタ110、150はそれぞれ、同一の、あるいは異なる電子伝導体であってよい。電流コレクタ110、150を構成しうる金属の例には、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、スズ(Sn)、シリコン(Si)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、それらの合金及びそれらの組合せが含まれる。一実行形態では、電流コレクタ110、150のうちの少なくとも1つが穿孔されている。更に、電流コレクタは任意の形状因子(例:金属箔、シート、又はプレート)、形状及びミクロ/マクロ構造のものであってよい。一般に、角型セルにおいては、タブは電流コレクタと同じ材料で形成され、スタックの製造中に形成されうる、あるいは後に追加されうる。電流コレクタ110、及び150以外のすべての構成要素は、リチウムイオン電解質を含有する。
【0023】
[0031]負電極140又はアノードは、正電極120に適合するいかなる材料であってもよい。負電極140は、372mAh/g、好ましくは≧700mAh/g、最も好ましくは≧1000mAh/g以上のエネルギー容量を有していてよい。負電極140は、グラファイト、シリコン含有グラファイト、リチウム金属、リチウム金属箔又はリチウム合金箔(例:リチウムアルミニウム合金)、又はリチウム金属及び/又はリチウム合金の混合物、及び炭素(例:コークス、グラファイト)、ニッケル、銅、スズ、インジウム、シリコン等の材料、それらの酸化物、又はそれらの組合せから構成されうる。負電極140は通常、リチウムを含有する層間化合物又はリチウムを含有する挿入化合物を含む。負電極140がリチウム金属を含むある実行形態では、リチウム金属は本書に記載の方法を使用して堆積されうる。
【0024】
[0032]ある実行形態では、リチウム金属膜145は、負電極140上に形成されている。リチウム金属膜145は、本書に記載の実行形態によって形成されうる。ある実行形態では、負電極140はシリコングラファイトのアノードであり、その上にリチウム金属膜145が形成されている。リチウム金属膜145は、負電極140の第1のサイクル容量損失からのリチウムの損失を補充する。リチウム金属膜は、薄いリチウム金属膜(例:20ミクロン未満、約1ミクロンから約20ミクロン、約2ミクロンから約10ミクロン)であってよい。リチウム金属膜145が負電極として機能するある実行形態では、リチウム金属膜145は負電極140の代わりとなる。リチウム金属膜145が負電極として機能するある実行形態では、リチウム金属膜145は電流コレクタ150上に形成される。
【0025】
[0033]ある実行形態では、保護膜170はリチウム金属膜145上に形成される。保護膜170は、イオン導電性ポリマーであってよい。保護膜170は、多孔性であってよい。ある実行形態では、保護膜170は、ナノポアを有する。一実行形態では、保護膜170は、約10ナノメートル未満(例:約1ナノメートルから約10ナノメートル;約3ナノメートルから約5ナノメートル)の平均ポアサイズ又は直径を有するようにサイズ設定された複数のナノポアを有する。別の実行形態では、保護膜170は、約5ナノメートル未満の平均ポアサイズ又は直径を有するようにサイズ設定された複数のナノポアを有する。一実行形態では、保護膜170は、約1ナノメートルから約20ナノメートル(例:約2ナノメートルから約15ナノメートル;又は約5ナノメートルから約10ナノメートル)の範囲の直径を有する複数のナノポアを有する。
【0026】
[0034]保護膜170は、コーティング層又は離散層であってよく、どちらも1ナノメートルから2000ナノメートルの範囲(例:10ナノメートルから600ナノメートルの範囲;50ナノメートルから200ナノメートルの範囲;100ナノメートルから150ナノメートルの範囲)の厚さを有する個別の膜であってよい。保護膜170は、5ミクロンから50ミクロンの範囲(例:6ミクロンから25ミクロンの範囲)の厚さを有する。保護膜170が間紙膜である幾つかの実行形態では、保護膜170はセパレータとして機能し、セパレータ130の代わりとなる。
【0027】
[0035]保護膜170を形成するのに使用されうるポリマーの例は、非限定的に、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イオン液体及びこれらの組合せを含む。理論に縛られるわけではないが、保護膜170は、デバイスの製造中にリチウム導電性電解質を取り込んでゲルを形成することができると考えられており、これは良好な固体電解質インターフェース(SEI)を形成するのに有益であり、抵抗も下がりやすくなる。保護膜170は、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、グラビアコーティング、又は印刷によって形成されうる。保護膜170は、メタコート(Metacoat)機器を使用して堆積させることも可能である。
【0028】
[0036]保護膜170は、リチウムイオン導電性材料であってよい。リチウムイオン導電性材料は、リチウムイオン導電性セラミック又はリチウムイオン導電性ガラスであってよい。リチウムイオン導電性材料は、例えば、一または複数のLiPON、Li7La3Zr2O12の結晶相あるいはアモルファス相のいずれかのドープされた変異型、ドープされた抗ペロブスカイト組成物、Li2S-P2S5、Li10GeP2S12及びLi3PS4、リン酸リチウムガラス、(1-x)LiI-(x)Li4SnS4、xLiI-(1-x)Li4SnS4、混合硫化物及び酸化物電解質(結晶性LLZO、アモルファス(1-x)LiI-(x)Li4SnS4混合物、及びアモルファスxLiI-(1-x)Li4SnS4)からなるものであってよい。一実行形態では、xは0と1の間(例:0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、及び0.9)である。リチウムイオン導電性材料は、物理的気相堆積(PVD)、化学気相堆積(CVD)、スプレー、ドクターブレード、印刷又はいくつかのコーティング法のいずれかを使用することによってリチウムイオン金属膜に直接堆積されうる。ある実行形態に適切な方法はPVDである。ある実行形態では、保護膜170がイオン導電性でなくてもよいが、電解質(液体、ゲル、固体、組合せ等)で充填されると、多孔性基板と電解質との組合せによりイオン導電リチウムイオン導電性材料は、物理的気相堆積(PVD)、化学気相堆積(CVD)、スプレー、ドクターブレード、印刷又はいくつかのコーティング法のいずれかを使用することによってリチウムイオン金属膜に直接堆積されうる。
【0029】
[0037]一実行形態では、保護膜はリチウムイオン導電性材料であり、リチウムイオン導電性材料は、LiPON、ガーネットタイプのLi7La3Zr2O12の結晶相又はアモルファス相、LISICON(例:Li2+2xZn1-xGeO4、0<x<1)、NASICON(例:Na1+xZr2SixP3-xO12、0<x<3)、水素化ホウ素リチウム(LiBH4)、ドープされた抗ペロブスカイト組成物、リチウム含有硫化物(例:Li2S、Li2S-P2S5、Li10GeP2S12及びLi3PS4)、及びリチウムアルジロダイト(例:LiPS5X、xはCl、Br又はI)
からなる群から選択される。
【0030】
[0038]保護膜170は間紙膜であってよい。間紙膜は熱可塑性物質、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリエステル、ポリアミド、ポリアラミド、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリ(エステルカーボネート)、ポリベンゾイミダゾール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド等を含んでいてよい。いくつかの実行形態では、間紙膜は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリエステル、ポリアミド、ポリアラミド、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリ(エステルカーボネート)、ポリベンゾイミダゾール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0031】
[0039]ある実行形態では、界面膜147は、保護膜170とリチウム金属膜145との間に形成されている。ある実行形態では、界面膜147は、約0.1ミクロンから約5.0ミクロン(例:約1ミクロンから約4ミクロンの範囲、又は約2ミクロンから約3ミクロンの範囲)の厚さを有する。界面膜147は通常、イオン導電性になるのに十分に薄い厚さを有する。
【0032】
[0040]保護膜170が間紙膜である幾つかの実行形態では、界面膜147は、剥離剤を含む。剥離剤は、リチウム金属膜145からの保護膜170の除去を改善する助けとなる。剥離剤は、シリコン含有化合物、ポリオレフィン、ポリフルオロカーボン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカプロラクトン、及びこれらの混合物及びコポリマーであってよい。剥離剤を含む界面膜147は、ロールコーティング、スプレーコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング又はその他同様の手段によって形成されうる。ある実行形態では、界面膜147は、ポリオレフィン、ポリフルオロカーボン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカプロラクトン、及びこれらの混合物及びコポリマーで構成される群から選択される。ある実行形態では、剥離剤を含有する界面膜147は、リチウムイオンエネルギーストレージデバイス100の形成前に、保護膜170上に形成される。
【0033】
[0041]保護膜170がリチウムイオン導電膜である幾つかの実行形態では、界面膜147により、保護膜170に対するリチウム金属膜145の安定性が改善される。いくつかの実行形態では、界面膜147は金属酸化膜である。金属酸化膜は、Al2O3、LiAlO2、LiAl5O8、ZrO2、Li2ZrO3、Li2O、Li2S、及びこれらの混合物であってよい。ある実行形態では、界面膜147は、リチウム含有金属フッ化物膜(例:LiF)である。ある実行形態では、界面膜は、LiF、Al2O3、LiAlO2、LiAl5O8、ZrO2、Li2ZrO3、Li2O、及びこれらの混合物からなる群から選択される。金属酸化膜又はフッ化リチウム膜を含む界面膜147は、蒸発、ロールコーティング、スプレーコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング又はその他同様の手段によって形成されうる。ある実行形態では、金属酸化膜を含有する界面膜147は、リチウムイオンエネルギーストレージデバイス100の形成前に保護膜170上に形成される。
【0034】
[0042]正電極120またはカソードはアノードに適合するいずれかの材料であってよく、層間化合物、挿入化合物、または電気化学的に活性なポリマーを含みうる。適切な層間材料は、例えば、リチウム含有金属酸化物、MoS2、FeS2、MnO2、TiS2、NbSe3、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、V6O13及びV2O5を含む。適切なポリマーは、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオペンを含む。正電極120又はカソードは、リチウムコバルト酸化物等の層状酸化物、リン酸鉄リチウム等のオリビン、またはリチウムマンガン酸化物等のスピネルからできていてよい。例示のリチウム含有酸化物は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)等の層状、又はLiNixCo1-2xMnO2、LiNiMnCoO2(“NMC”)、LiNi0.5Mn1.5O4、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2、LiMn2O4等の混合金属酸化物、ドープされたリチウム豊富な層状材料であってよく、xはゼロか非ゼロの数字である。例示のリン酸は鉄オリビン(LiFePO4)であってよく、これは(例えばLiFe(1-x)MgxPO4等の)変異型、LiMoPO4、LiCoPO4、LiNiPO4、Li3V2(PO4)3、LiVOPO4、LiMP2O7、又はLiFe1.5P2O7であり、xはゼロか非ゼロの数字である。例示のフルオロリン酸は、LiVPO4F、LiAlPO4F、Li5V(PO4)2F2、Li5Cr(PO4)2F2、Li2CoPO4F、又はLi2NiPO4Fであってよい。例示のケイ酸塩は、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4、又はLi2VOSiO4であってよい。例示の非リチウム化合物はNa5V2(PO4)2F3である。
【0035】
[0043]本開示に係るリチウムイオンセルのある実行形態では、リチウムは、例えば負電極のカーボングラファイト(LiC6)或いは正電極のリチウムマンガン酸化物(LiMnO4)又はリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)の結晶構造の原子層に含まれており、ある実行形態では、負電極はシリコン、スズなどのリチウム吸収材料も含みうる。図示したセルは平面構造であるが、層のスタックを巻くことによって円筒状にすることもでき、更に他のセル構成(例:角形セル、ボタンセル)が形成可能である。
【0036】
[0044]セル構成要素120、130、140、147、145及び170に注入される電解質は、液体/ゲルまたは固体ポリマーから構成されていてよく、各々異なっていてよい。ある実行形態では、電解質は主に、塩及び媒体(例えば液体電解質の媒体は溶媒と称されうる、ゲル電解質の媒体はポリマーマトリックスでありうる)を含む。塩はリチウム塩であってよい。リチウム塩は例えば、LiPF6、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO3)3、LiBF6、及びLiClO4、BETTE電解質(ミネソタ州ミネアポリスの3M社から入手可能)、及びこれらの組合せを含みうる。溶媒は例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、EC/PC、2-MeTHF(2-メチルテトラヒドロフラン)/EC/PC、EC/DMC(ジメチルカーボネート)、EC/DME(ジメチルエタン)、EC/DEC(ジエチルカーボネート)、EC/EMC(エチルメチルカーボネート)、EC/EMC/DMC/DEC、EC/EMC/DMC/DEC/PE、PC/DME、及びDME/PCを含みうる。ポリマーマトリックスには、例えば、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、PVDF:THF(PVDF:テトラヒドロフラン)、PVDF:CTFE(PVDF:クロロトリフルオロエチレン)、PAN(ポリアクリロニトリル)、及びPEO(ポリエチレン酸化物)が含まれうる。
【0037】
[0045]
図1Bに、正電極セルと組み合わされてリチウムイオンエネルギーストレージデバイスを形成する負電極セル160の例を示す。負電極セル160はリチウム金属膜145a、145bを有し、この上に本開示の実行形態に係る保護膜170a、170bが形成されている。ある実行形態では、リチウム金属膜145a、145bと保護膜170a、170bとの間に界面膜147a、147bが形成されている。リチウム金属膜145a、145bは、薄い(例えば20ミクロン未満、約1ミクロンから約20ミクロン、約2ミクロンから約10ミクロン)リチウム金属膜であってよい。保護膜170a、170bは、本書に記載の間紙膜またはイオン導電性ポリマー膜であってよい。界面膜147a、147bは、本書に前述したように、剥離剤または金属酸化物を含みうる。保護膜170a、170bが間紙膜である幾つかの実行形態では、間紙膜は通常、負電極セル160を正電極セルと組み合わせてリチウムイオンストレージデバイスを形成する前に除去される。保護膜170a、170bがイオン導電性ポリマー膜であるいくつかの実行形態では、イオン導電性ポリマー膜は最終的なバッテリ構造内に組み込まれる。
【0038】
[0046]負電極セル160は、負電流コレクタ150と、負電流コレクタ150上に形成された負電極140a、140bと、負電極140a、140b上に形成されたリチウム金属膜145a、145bと、リチウム金属膜145a、145b上に形成された保護膜170a、170bとを有する。図示した負電極セル160は両面セルであるが、本書に記載の実行形態は、片面セルにも適用されることを理解すべきである。
【0039】
[0047]負電極セルは、本書に記載したように、本開示のツールを使用して製造することができる。ある実行形態によれば、リチウムでコーティングされた負電極を形成するためのウェブツールは、電流コレクタに負電極を堆積させるためのチャンバ、負電極上にリチウムの薄膜を堆積させるためのチャンバ、及びリチウムの薄膜に保護膜を堆積させるためのチャンバを通して、基板又は電流コレクタを移送するためのリールツーリールシステムを備えうる。リチウムの薄膜を堆積させるためのチャンバは、電子ビーム蒸発器、熱蒸発器等の蒸発システム、又は薄膜転写システム(例えばグラビア印刷システム等の大面積パターン印刷システムを含む)を含みうる。
【0040】
[0048]ある実行形態では、ツールはさらに、リチウムの薄膜及び保護膜の堆積前に、連続的な材料シートの表面変形のための、例えばプラズマ前処理チャンバ等のチャンバを備えうる。更に、ある実行形態では、ツールはさらに、液体電解質又はリチウムイオン導電性誘電体材料に溶けやすいバインダを堆積させるためのチャンバを備えうる。
【0041】
[0049]ある実行形態によれば、
図1Bの負電極セル160は、以下のプロセス及び機器を用いて製造されうる。本開示に係る負電極セル160を製造するためのウェブツールのいくつかの構成を概略的に
図2、
図4A、
図4B、
図6及び
図7に示す。これらの図面は概略的な提示であることに留意すべきであり、当然ながら、ウェブシステム及びチャンバの構成は、異なる製造プロセスを制御するために、必要に応じて変更することが可能である。
【0042】
[0050]
図2は、本書に記載の実行形態に係る、統合型処理ツール200を示す概略図である。幾つかの実行形態では、統合型処理ツール200は、各々が連続的な材料シート210に1つの処理工程を実施するように構成された、一直線に配置された複数の処理モジュール又は処理チャンバ220及び230を備える。一実行形態では、処理チャンバ220及び230は、各モジュラー処理チャンバが他のモジュラー処理チャンバから構造的に分離している独立型のモジュラー処理チャンバである。したがって、各独立型のモジュラー処理チャンバは、互いに影響を与えることなく独立して配置、再配置、交換又は維持されうる。幾つかの実行形態では、処理チャンバ220及び230は、連続的な材料シート210の両面を処理するように構成される。統合型処理ツール200は垂直に配向された連続的な材料シート210を処理するように構成されるが、統合型処理ツール200を、他の配向に位置づけされた基板、例えば水平に配向された連続的な材料シート210を処理するように構成することが可能である。幾つかの実行形態では、連続的な材料シート210はフレキシブル導電基板である。
【0043】
[0051]幾つかの実行形態では、統合型処理ツール200は、移動機構205を備える。移動機構205は、処理チャンバ220及び230の処理領域を通して連続的な材料シート210を移動させることができるいずれかの移動機構を備えうる。移動機構205は、共通の移送アーキテクチャを備えうる。共通の移送アーキテクチャは、システムに共通の巻き取りリール214と供給リール212とを有するリールツーリールシステムを備えうる。巻き取りリール214と供給リール212は個別に加熱されうる。巻き取りリール214と供給リール212は、各リール内に位置づけされた内部の熱源、あるいは外部の熱源を使用して個別に加熱されうる。共通の移送アーキテクチャはさらに、巻き取りリール214と供給リール212との間に位置づけされた一または複数の中間移動リール(213a&213b、216a&216b、218a&218b)を備えうる。図示した統合型処理ツール200は単一の処理領域を有するが、幾つかの実行形態では、各プロセスステップに対して別々の又は個別の処理領域、モジュール、又はチャンバを有することが有益でありうる。個別の処理領域、モジュール、又はチャンバを有する実行形態においては、共通の移送アーキテクチャは、各チャンバ又は処理領域が個々の巻き取りリールと、供給リールと、巻き取りリールと供給リールとの間に位置づけされた一または複数のオプションの中間移動リールとを有するリールツーリールシステムであってよい。共通の移送アーキテクチャは、軌道システムを備えうる。軌道システムは、処理領域又は個別の処理領域を通って延在する。軌道システムは、ウェブ基板又は個別の基板のいずれかを移送するように構成される。
【0044】
[0052]統合型処理ツール200は、異なる処理チャンバ:リチウム金属膜の堆積のための第1の処理チャンバ200及びリチウム金属膜を周囲の酸化物から保護するためにリチウム金属膜の上に保護コーティングを形成するための第2の処理チャンバ230を通して連続的な材料シート210を動かすための供給リール212と巻き取りリール214とを備えうる。ある実行形態では、完成した負電極は図に示すように巻き取りリール214に回収されず、バッテリセルを形成するためにセパレータ及び正電極等と直接統合されうる。
【0045】
[0053]第1の処理チャンバ220は、連続的な材料シート210にリチウム金属の薄膜を堆積させるように構成される。リチウム金属の薄膜を堆積させるために、リチウム金属の薄膜を堆積させるためのいずれかの適切なリチウム堆積プロセスが使用されうる。リチウム金属の薄膜の堆積は、例えば蒸発等のPVDプロセス、スロットダイプロセス、転写プロセス、積層プロセス、又は三次元リチウム印刷プロセスによるものであってよい。リチウム金属の薄膜を堆積させるためのチャンバは、例えば電子ビーム蒸発器等のPVDシステム、薄膜転写システム(例えばグラビア印刷システム等の大面積パターン印刷システムを含む)、積層システム、又はスロットダイ堆積システムを含みうる。
【0046】
[0054]一実行形態では、第1の処理チャンバ220は蒸発チャンバである。蒸発チャンバは、図示したように、例えば真空環境内の熱蒸発器又は電子ビーム蒸発器(低温)であってよい、るつぼ内に置くことができる蒸発源244a、244b(まとめて244)を備える、処理領域242を有する。
【0047】
[0055]第2の処理チャンバ230は、リチウム金属膜上に保護膜を形成するように構成される。保護膜は、本書に記載のイオン導電性材料であってよい。保護膜は、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、グラビアコーティング、積層、又は印刷によって形成されうる。
【0048】
[0056]一実行形態では、第2の処理チャンバ230は、三次元印刷チャンバである。印刷チャンバは、図示したように、ポリマーインクを印刷するための印刷源254a、254b(まとめて254)を備える処理領域252を有する。
【0049】
[0057]一実行形態では、処理領域242と処理領域252は、処理中は真空下及び/又は大気未満の圧力に維持される。ある実行形態では、処理領域242の真空レベルが、処理領域252の真空レベルと一致するように調節されうる。一実行形態では、処理領域242と処理領域252は、処理中は大気圧に維持される。一実行形態では、処理領域242と処理領域252は、処理中は不活性ガス雰囲気下に維持される。一実行形態では、不活性ガス雰囲気はアルゴンガス雰囲気である。一実行形態では、不活性ガス雰囲気は窒素ガス(N2)雰囲気である。
【0050】
[0058]
図3に、本書に記載の実行形態に係る、電極構造を形成するための方法300の一実行形態を要約した処理フロー図を示す。工程310において、基板が提供される。基板は、連続的な材料シート210であってよい。基板は、その上に形成された負電極材料を有しうる。負電極材料は、負電極140であってよい。工程320において、リチウム金属膜が形成される。リチウム金属膜は、リチウム金属膜145であってよい。負電極材料が存在する場合、リチウム金属膜は負電極上に形成される。負電極140が存在しない場合、リチウム金属膜は基板に直接形成されうる。リチウム金属膜は、第1の処理チャンバ220内で形成されうる。オプションとして、工程325において、リチウム金属膜上145に界面膜147が形成される。工程330において、保護膜はリチウム金属膜145上又は界面膜147上のいずれかに形成される。保護膜は、保護膜170であってよい。保護膜は、イオン導電性ポリマーであってよい。保護膜は、第2の処理チャンバ230内で形成されうる。工程340において、リチウム金属膜と保護膜を有しうる基板はオプションとして保管される、別のツールに移動される、あるいはこの両方が行われる。工程350において、リチウム金属膜と保護膜が形成された基板に付加処理が施される。
【0051】
[0059]
図4は、本書に記載の実行形態に係る、別の統合型処理ツール400を示す概略図である。統合型処理ツール400は、リチウム金属膜上に間紙膜430を堆積させるように構成されている以外は、統合型処理ツール200と同様のものである。幾つかの実行形態では、統合型処理ツール400は、連続的な材料シート210に処理工程を実施するように構成された第1の処理チャンバ420を備える。第1の処理チャンバ420は、連続的な材料シート210にリチウム金属の薄膜を堆積させるように構成される。第1の処理チャンバ420はさらに、リチウム金属膜を周囲の酸化体から保護するために、リチウム金属膜上に間紙膜430a、430b(まとめて430)を堆積させるように構成される。第1の処理チャンバ420はリチウム金属膜堆積装置及び間紙膜の両方を収容するが、当然ながら、リチウム金属膜と間紙膜は、別々の独立型モジュラー処理チャンバ内で堆積されうる。
【0052】
[0060]幾つかの実行形態では、第1の処理チャンバ420は連続的な材料シート210の両面を処理するように構成される。統合型処理ツール400は垂直に配向された連続的な材料シート210を処理するように構成されるが、統合型処理ツール400を、他の配向に位置づけされた基板、例えば水平に配向された連続的な材料シート210を処理するように構成することが可能である。幾つかの実行形態では、連続的な材料シート210はフレキシブル導電基板である。
【0053】
[0061]幾つかの実行形態では、統合型処理ツール400は移動機構205を備える。移動機構205は、第1の処理チャンバ420の処理領域を通して連続的な材料シート210を動かすことができるいずれかの移動機構を備えうる。移動機構205は、共通の移送アーキテクチャを備えうる。共通の移送アーキテクチャは、システムに共通の巻き取りリール214と供給リール212を有するリールツーリールシステムを備えうる。巻き取りリール214と供給リール212は個々に加熱されうる。巻き取りリール214と供給リール212は、各リール内に位置づけされた内部の熱源、あるいは外部の熱源を使用して個々に加熱されうる。移動機構205はさらに、巻き取りリール214と供給リール212との間に位置づけされた一または複数の中間移動リール(413a&413b、416a&416b、418a&418b)を備えうる。ある実行形態では、中間移動リール418a、418bは、間紙膜をリチウム金属膜上に圧縮する。ある実行形態では、中間移動リール418a、418bは、間紙膜をリチウム金属膜上に積層する。ある実行形態では、中間移動リール418a、418bは加熱される。
【0054】
[0062]図示した統合型処理ツール400は単一の処理領域を有するが、幾つかの実行形態では、各処理工程において分離した、あるいは個別の処理領域、モジュール、又はチャンバを有することが有利でありうる。個別の処理領域、モジュール、又はチャンバを有する実行形態において、共通の移送アーキテクチャは、各チャンバ又は処理領域が個々の巻き取りリールと、供給リールと、巻き取りリールと供給リールとの間に位置づけされた一または複数のオプションの中間移動リールを有するリールツーリールシステムであってよい。共通の移送アーキテクチャは、軌道システムを備えうる。軌道システムは、処理領域又は個々の処理領域を通って延在する。軌道システムは、ウェブ基板又は個別の基板のいずれかを移送するように構成される。
【0055】
[0063]第1の処理チャンバ420は、連続的な材料シート210にリチウム金属の薄膜を堆積させるように構成される。リチウム金属の薄膜を堆積させるために、リチウム金属の薄膜を堆積させるためのいずれかの適切なリチウム堆積プロセスが使用されうる。リチウム金属の薄膜の堆積は、例えば蒸発等のPVDプロセス、スロットダイプロセス、転写プロセス、又は三次元リチウム印刷プロセスによるものであってよい。リチウム金属の薄膜を堆積させるためのチャンバは、例えば電子ビーム蒸発器等のPVDシステム、薄膜転写システム(例えばグラビア印刷システム等の大面積パターン印刷システムを含む)、又はスロットダイ堆積システムを含みうる。
【0056】
[0064]一実行形態では、第1の処理チャンバ420は蒸発チャンバである。蒸発チャンバは、図示したように、例えば真空環境内の熱蒸発器又は電子ビーム蒸発器(低温)であってよい、るつぼ内に置くことができる蒸発源444a、444b(まとめて444)を備える、処理領域442を有する。
【0057】
[0065]第1の処理チャンバ420はさらに、リチウム金属膜上に間紙膜430を堆積させるように構成される。
【0058】
[0066]一実行形態では、処理領域442は、処理中は真空下及び/又は大気未満の圧力に維持される。一実行形態では、処理領域442は、処理中は不活性ガス雰囲気下に維持される。一実行形態では、不活性ガス雰囲気はアルゴンガス雰囲気である。一実行形態では、不活性ガス雰囲気は窒素ガス(N2)雰囲気である。
【0059】
[0067]
図4Bは、本書に記載の実行形態に係る、別の統合型処理ツール450を示す概略図である。幾つかの実行形態では、統合型処理ツール450は、各々が連続的な材料シート210に1つの処理工程を実施するように構成された、一直線に配置された複数の処理モジュール又は処理チャンバ460及び470を備える。一実行形態では、処理チャンバ460及び470は、各モジュラー処理チャンバが他のモジュラー処理チャンバから構造的に分離している独立型のモジュラー処理チャンバである。したがって、各独立型のモジュラー処理チャンバは、互いに影響を与えることなく独立して配置、再配置、交換又は維持されうる。幾つかの実行形態では、処理チャンバ460及び470は、連続的な材料シート210の両面を処理するように構成される。統合型処理ツール450は垂直に配向された連続的な材料シート210を処理するように構成されるが、統合型処理ツール450を、異なる配向に位置づけされた基板、例えば水平に配向された連続的な材料シート210を処理するように構成することが可能である。幾つかの実行形態では、連続的な材料シート210はフレキシブル導電基板である。
【0060】
[0068]幾つかの実行形態では、統合型処理ツール450は移動機構205を備える。移動機構205は、処理チャンバ460及び470の処理領域を通して連続的な材料シート210を移動させることができるいずれかの移動機構を備えうる。移動機構205は、共通の移送アーキテクチャを備えうる。共通の移送アーキテクチャは、システムに共通の巻き取りリール214と供給リール212を有するリールツーリールシステムを備えうる。巻き取りリール214と供給リール212は個々に加熱されうる。巻き取りリール214と供給リール212は、各リール内に位置づけされた内部の熱源、あるいは外部の熱源を使用して個々に加熱されうる。共通の移送アーキテクチャはさらに、巻き取りリール214と供給リール212との間に位置づけされた一または複数の中間移動リール(473a&473b、476a&476b、478a&478b)を備えうる。
【0061】
[0069]図示した統合型処理ツール200は2つの別々の処理領域を有するが、幾つかの実行形態では、共通の処理領域を有することが有利でありうる。個別の処理領域、モジュール又はチャンバを有する実行形態においては、共通の移送アーキテクチャは、各チャンバ又は処理領域が独立した巻き取りリールと供給リールと、巻き取りリールと供給リールとの間に位置づけされた一または複数のオプションの中間移動リールを有するリールツーリールシステムであってよい。共通の移送アーキテクチャは、軌道システムを備えうる。軌道システムは、処理領域又は個別の処理領域を通って延在する。軌道システムは、ウェブ基板又は個別の基板のいずれかを移送するように構成される。
【0062】
[0070]統合型処理ツール200は、異なる処理チャンバ:負電極から間紙膜を除去するための第1の処理チャンバ460、負電極の付加処理のための第2の処理チャンバ470を通して連続的な材料シート210を移動させるための供給リール212と巻き取りリール214とを備えうる。一実行形態では、中間移動リール473a&473bは、連続的な材料シート210から間紙膜を除去するように構成される。ある実行形態では、図示したように、完成した負電極は巻き取りリール214に回収されず、セパレータ及び正電極等と直接統合されてバッテリセルを形成しうる。
【0063】
[0071]第1の処理チャンバ460は、連続的な材料シート210から間紙膜430を除去するように構成される。第1の処理チャンバは、処理領域462と、付加処理の前に間紙膜を除去するための中間移動リール(473a、473b)の少なくとも1セットとを含む。
【0064】
[0072]第2の処理チャンバ470は、連続的な材料シート210の付加処理を行うように構成される。第2の処理チャンバは、処理領域472を含む。
【0065】
[0073]一実行形態では、処理領域462と処理領域472は、処理中は真空下及び/又は大気未満の圧力に維持される。処理領域462の真空レベルは、処理領域472の真空レベルと一致するように調節されうる。一実行形態では、処理領域462及び処理領域472は、処理中は大気圧に維持される。一実行形態では、処理領域462及び処理領域472は、処理中は不活性ガス雰囲気下に維持される。一実行形態では、不活性ガス雰囲気はアルゴンガス雰囲気である。一実行形態では、不活性ガス雰囲気は窒素ガス(N2)雰囲気である。一実行形態では、処理領域462と処理領域472のうちの少なくとも1つは、処理中は真空下及び/又は大気未満の圧力に維持されるが、他の処理領域は大気圧、あるいは不活性ガス雰囲気下のいずれかに維持される。
【0066】
[0074]
図5に、本書に記載の実行形態に係る、電極構造を形成するための方法の一実行形態を要約したプロセスフロー図を示す。工程510において、基板が提供される。基板は連続的な材料シート210であってよい。基板は、その上に形成された負電極材料を有しうる。負電極材料は負電極140であってよい。工程520において、リチウム金属膜が形成される。負電極材料が存在する場合、負電極材料にリチウム金属膜が形成される。負電極材料が存在しない場合、リチウム金属膜は基板に直接形成されうる。リチウム金属膜は、第1の処理チャンバ420内で形成されうる。リチウム金属膜は、リチウム金属膜145であってよい。負電極材料が存在する場合、負電極上にリチウム金属膜が形成される。工程530において、リチウム金属膜上に間紙膜が形成される。間紙膜は、第1の処理チャンバ420内でリチウム金属膜上に形成されうる。ある実行形態では、別々の処理チャンバ内でリチウム金属膜上に間紙膜が形成されうる。工程540において、リチウム金属膜と間紙膜とを有する基板がオプションとして保管され、別のツールに移動されうる、あるいはこの両方が行われうる。工程550において、間紙膜が除去される。工程560において、リチウム金属膜を有する基板に付加処理が施される。
【0067】
[0075]
図6は、本書に記載の実行形態に係る、別の統合型処理ツール600を示す概略図である。統合型処理ツール600を使用して、例えばリチウムイオンエネルギーストレージデバイス100又は負電極セル160を形成することができる。統合型処理ツール600は、積層プロセスを介してリチウム金属膜を堆積させるように構成されている以外は、統合型処理ツール200と同様のものである。統合型処理ツール200の第1の処理チャンバ220は、積層処理チャンバ620によって置き換えられる。積層処理チャンバ620は、間紙膜上に形成されたリチウム金属の薄膜を堆積させるように構成される。一実行形態では、本書に記載のリチウム金属膜と間紙膜との間に界面膜(例:剥離膜)が形成される。加えて、積層処理チャンバ620は、リチウム金属膜を連続的な材料シート210上に積層した後に、積層された金属膜から間紙膜を除去するように構成される。剥離膜が存在する場合、剥離膜は通常、リチウム金属膜から間紙膜を除去する助けとなり、間紙膜とともに除去されうる。負電極がパターン形成される場合、連続的な積層がセグメント化された半連続的な形で移動して、パターン形成された電極の積層を適応させる。
【0068】
[0076]幾つかの実行形態では、積層処理チャンバ620は、連続的な材料シート210の両面を処理するように構成される。統合型処理ツール600は垂直に配向された連続的な材料シート210を処理するように構成され、異なる配向に位置づけされた基板、例えば水平に配向された連続的な材料シート210を処理するように構成されうる。幾つかの実行形態では、連続的な材料シート210はフレキシブル導電基板である。
【0069】
[0077]幾つかの実行形態では、統合型処理ツール600は移送機構205を備える。移送機構205は、積層処理チャンバ620の処理領域を通して連続的な材料シート210を移動させることができるいずれかの移動機構を備えうる。移動機構205は、共通の移送アーキテクチャを備えうる。共通の移送アーキテクチャは、システムに共通の巻き取りリール214と供給リール212とを有するリールツーリールシステムを備えうる。巻き取りリール214と供給リール212は、別々に加熱されうる。巻き取りリール214と供給リール212は、各リール内に位置付けされた内部の熱源、あるいは外部の熱源を使用して別々に加熱されうる。移動機構205は更に、巻き取りリール214と供給リール212との間に位置づけされた一または複数の中間移動リール(613a&613b、616a&616b、618a&618b)を備えうる。
【0070】
[0078]図示した統合型処理ツール600は独立した処理領域を有するが、幾つかの実行形態では、共通の処理領域を有することが有益でありうる。個別の処理領域、モジュール、又はチャンバを有する実行形態においては、共通の移送アーキテクチャは、各チャンバ又は処理領域が、個々の巻き取りリールと、供給リールと、巻き取りリールと供給リールとの間に位置づけされた一または複数のオプションの中間移動リールとを有するリールツーリールシステムであってよい。共通の移送アーキテクチャは、軌道システムを備えうる。軌道システムは、処理領域又は個々の処理領域を通って延在する。軌道システムは、ウェブ基板又は個別の基板のいずれかを移送するように構成される。
【0071】
[0079]積層処理チャンバ620は、積層プロセスを介して連続的な材料シート210にリチウム金属の薄膜を堆積させるように構成される。積層処理チャンバ620は、リチウム金属膜/間紙膜632a、632bを連続的な材料シート210に供給するためのリチウム金属膜/間紙膜供給ロール630a、630bを含む。積層処理チャンバ620は更に、除去された間紙膜634a、634bを回収するための間紙巻き取りリール640a、640bを含む。ある実行形態では、積層処理チャンバ620はさらに、リチウム金属膜/間紙膜632a、632bに圧力を加えて、連続的な材料シート210にリチウム金属膜を積層するためのオプションの圧縮ローラ650a、650bを含む。ある実行形態では、リチウム金属膜/間紙膜632a、632bはさらに、本書に記載したように、それらの間に形成された剥離膜を含む。ある実行形態では、圧縮ローラ650a、650bは加熱される。圧縮ローラ650a、650bが存在しないある実行形態では、中間移動リール616a、616bがリチウム金属膜/間紙膜632a、632bを連続的な材料シート210上に圧縮する。ある実行形態では、中間移動リール616a、616bは連続的な材料シート210上にリチウム金属膜/間紙膜632a、632bを積層する。ある実行形態では、中間移動リール616a、616bは加熱される。
【0072】
[0080]一実行形態では、積層処理チャンバ620は処理領域642を有する。ある実行形態では、処理領域642は、処理中は真空下及び/又は大気未満の圧力に維持される。一実行形態では、処理領域642は、処理中は不活性ガス雰囲気下に維持される。一実行形態では、不活性ガス雰囲気はアルゴンガス雰囲気である。一実行形態では、不活性ガス雰囲気は窒素ガス(N2)雰囲気である。
【0073】
[0081]工程において、連続的な材料シート210が供給リール212と巻き取りリール214との間を移動すると、リチウム金属膜/間紙膜供給ロール630a、630bが連続的な材料シート210上にリチウム金属膜/間紙膜632a、632bを供給する。リチウム金属膜/間紙膜供給ロール630a、630bは、リチウム金属膜が連続的な材料シート210と接触するように、リチウム金属膜/間紙膜632a、632b、そして存在する場合は剥離膜を供給する。次に、圧縮ローラ650a、650bによってリチウム金属膜が圧縮されて、リチウム金属膜が連続的な材料シート210に積層される。積層後、移動リール616a、616bによって積層されたリチウム金属膜の表面から間紙膜634a、634bが除去される。除去された間紙膜634a、634bは間紙巻き取りリール640a、640bによって回収される。
【0074】
[0082]リチウム金属膜が連続的な材料シート210に積層された後、連続的な材料シート210はオプションの付加処理のために第2の処理チャンバ230へ移動する。
【0075】
[0083]
図7は、本書に記載の実行形態に係る、さらに別の統合型処理ツール700を示す概略図である。統合型処理ツール700は、例えばリチウムイオンエネルギーストレージデバイス100又は負電極セル160を形成するのに使用されうる。統合型処理ツール700は、閉ループ積層処理プロセスを介してリチウム金属膜を堆積させるように構成される以外は、統合型処理ツール600と同様のものである。統合型処理ツール600の積層処理チャンバ620は、閉ループ積層処理チャンバ720によって置き換えられる。閉ループ積層処理チャンバ720は、間紙膜734a、734bの連続ループにリチウム金属の薄膜を形成し、その後リチウム金属膜/間紙膜732a、732bの組合せを形成するように構成される。間紙膜の連続ループには、その上に形成された剥離膜も含まれうる。加えて、リチウム金属膜を連続的な材料シート210上に積層した後に、閉ループ積層処理チャンバ720は、積層された金属膜から間紙膜734a、734bを除去するように構成される。
【0076】
[0084]幾つかの実行形態では、閉ループ積層処理チャンバ720は、連続的な材料シート210の両面を処理するように構成される。統合型処理ツール700は、垂直に配向された連続的な材料シート210を処理するように構成されるが、統合型処理ツール700は、例えば水平に配向された連続的な材料シート210等の異なる配向に位置づけされた基板を処理するように構成されうる。幾つかの実行形態では、連続的な材料シート210はフレキシブル導電基板である。
【0077】
[0085]幾つかの実行形態では、統合型処理ツール700は移動機構205を備える。移動機構205は、閉ループ積層処理チャンバ720の処理領域を通して連続的な材料シート210を移動させることができるいずれかの移動機構を備えうる。移動機構205は、共通の移送アーキテクチャを備えうる。共通の移送アーキテクチャは、システムに共通の巻き取りリール214及び供給リール212を有するリールツーリールシステムを備えうる。巻き取りリール214と供給リール212は別々に加熱されうる。巻き取りリール214と供給リール212は、各リール内に位置づけされた内部の熱源、あるいは外部の熱源を使用して別々に加熱されうる。移動機構205はさらに、巻き取りリール214と供給リール212との間に位置づけされた一または複数の中間移動リール(713a&713b、714a&714b、715a&715b、716a&716b、718a&718b)を備えうる。移動リール713a&713b、714a&714b、715a&715b、716a&716bは、間紙膜734a、734bがそれに沿って移動する閉ループを形成する。
【0078】
[0086]閉ループ積層処理チャンバ720は更に、リチウム金属膜/間紙膜732a、732bに圧力を加えて、リチウム金属膜を連続的な材料シート210に積層するためのオプションの圧縮ローラ750a、750bを含む。ある実行形態では、圧縮ローラ750a、750bは加熱される。圧縮ローラ750a、750bが存在しないある実行形態では、中間移動リール716a、716bがリチウム金属膜/間紙膜732a、732bを連続的な材料シート210上に圧縮する。ある実行形態では、中間移動リール716a、716bがリチウム金属膜/間紙膜732a、732bを連続的な材料シート210上に積層する。ある実行形態では、中間移動リール716a、716bは加熱される。
【0079】
[0087]一実行形態では、閉ループ積層処理チャンバ720は、処理領域742を画定する。ある実行形態では、処理領域742は、処理中は真空下及び/又は大気未満の圧力に維持される。一実行形態では、処理領域742は、処理中は不活性ガス雰囲気下に維持される。一実行形態では、不活性ガス雰囲気はアルゴンガス雰囲気である。一実行形態では、不活性ガス雰囲気は窒素ガス(N2)雰囲気である。
【0080】
[0088]閉ループ積層処理チャンバ720はさらに、連続的な材料シート210にリチウム金属の薄膜を堆積させるように構成される。リチウム金属の薄膜を堆積させるために、リチウム金属の薄膜を堆積させるためのいずれかの適切なリチウム堆積プロセスを使用することができる。リチウム金属の薄膜の堆積は、蒸発等のPVDプロセス、スロットダイプロセス、転写プロセス、積層プロセス又は三次元リチウム印刷プロセスによるものであってよい。リチウム金属の薄膜を堆積させるためのチャンバは、電子ビーム蒸発器等のPVDシステム、薄膜転写システム(グラビア印刷システム等の大面積パターン印刷システムを含む)、積層システム、又はスロットダイ堆積システムを含みうる。
【0081】
[0089]一実行形態では、閉ループ積層処理チャンバ720は、例えば、真空環境内の熱蒸発器又は電子ビーム蒸発器(低温)であってよいるつぼ内に置かれうる蒸発源744a、744b(まとめて744)を含む。蒸発源744は、間紙膜734a、734bにリチウム金属膜を堆積させて、リチウム金属膜/間紙膜732a、732bを形成する。
【0082】
[0090]工程において、移動リール713a&713b、714a&714b、715a&715b、716a&716bによって形成された閉ループに沿って間紙膜734a、734bが移動すると、間紙膜734a、734bにリチウム金属膜が堆積されてリチウム金属膜/間紙膜732a、732bが形成される。連続的な材料シート210が供給リール212と巻き取りリール214との間を移動すると、リチウム金属膜/間紙膜732a、732bは連続的な材料シート210に接触する。次に、リチウム金属膜は圧縮ローラ750a、750bによって圧縮され、連続的な材料シート210にリチウム金属膜が積層される。積層後、間紙膜734a、734bは積層されたリチウム金属膜の表面から離れて、閉ループに沿って移動を続ける。間紙膜734a、734bは閉ループに沿って継続し、間紙膜734a、734bにはさらにリチウム金属膜が形成される。
【0083】
[0091]リチウム金属膜を連続的な材料シート210に積層した後に、連続的な材料シートは付加処理のために第2の処理チャンバ230内へ移動する。
【0084】
[0092]統合型処理ツール200、統合型処理ツール400、統合型処理ツール600、又は統合型処理ツール700には追加のチャンバが含まれうる。ある実行形態では、追加のチャンバはセパレータ、電解質溶性バインダの堆積を行うことができる、またはある実行形態では、追加のチャンバは正電極の形成を行うことができる。ある実行形態では、追加のチャンバは負電極の切断を行うことができる。負電極を切断した後で間紙を除去することができる。
【0085】
[0093]本開示の実行形態を特にグラファイト負電極を有するリチウムイオンバッテリを参照しながら説明してきたが、本開示の教示及び原理をLi-polymer、Li-S、Li-FeS2、リチウム金属ベースのバッテリ等の他のリチウムベースのバッテリに適用可能でありうる。Li-S及びLi-FeS2等のリチウム金属ベースのバッテリにおいては厚いリチウム金属電極が必要である場合があり、リチウム金属の厚さは正電極のローディングによって変化する。ある実行形態では、リチウム金属電極はLi-Sについては3~30ミクロンの厚さであり、Li-FeS2についてはおおよそ190~200ミクロンの厚さであり、Cu又はステンレス鋼の金属箔等の適合性のある基板の片面あるいは両面に堆積させることができ、本書に記載の方法及びツールを使用してリチウム金属電極等を製造することが可能である。
【0086】
[0094]要約すれば、本開示の利点のいくつかは、リチウム金属堆積を現在利用可能な処理システムに効率的に統合することを含む。現在、リチウム金属堆積は、乾燥室あるいはアルゴンガス雰囲気中で実施される。リチウム金属の揮発性のために、後続の処理ステップもアルゴンガス雰囲気中で実施される必要がある。アルゴンガス雰囲気中で後続の処理ステップを実施するためには、現在の製造ツールを改造しなければならない。後続処理の前にリチウム金属を保護膜でコーティングすることで、後続処理を真空下あるいは大気中で実施することが可能であることが本発明者らによって発見されている。保護膜により、付加処理工程を不活性ガス雰囲気中で実施する必要がなくなり、ツールの複雑さが軽減する。保護膜により、リチウム金属膜が形成された負電極の移送、保管、あるいはこの両方も可能になる。加えて、保護膜がイオン導電膜である実行形態では、イオン導電膜を最終的なバッテリ構造内に組み込むことができ、バッテリ形成プロセスの複雑さが軽減する。これにより、ツールの複雑さが軽減し、それに続いて所有コストが軽減する。
【0087】
[0095]本開示の要素又はその例示的態様又は一または複数の実行形態を紹介する場合、冠詞「a」、「an」、「the」、及び「said」は、1つ以上の要素が存在することを意味することが意図されている。
【0088】
[0096]「備える(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という表現は、包括的であるように意図されており、列挙された要素以外にも追加の要素があり得ることを意味する。
【0089】
[0097]以上の記述は本開示の実行形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲から逸脱することなく本開示の他の実行形態及び更なる実行形態が考案されてよく、本開示の範囲は、下記の特許請求の範囲によって決定される。