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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20220126BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20220126BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20220126BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20220126BHJP
   H01L 21/76 20060101ALI20220126BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20220126BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20220126BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220126BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20220126BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20220126BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L21/20
H01L21/76 L
H01L29/78 652T
H01L29/78 656B
H01L29/78 658E
H01L27/088
H01L27/088 331C
H01L27/088 331A
C30B29/06 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017173834
(22)【出願日】2017-09-11
(65)【公開番号】P2019050291
(43)【公開日】2019-03-28
【審査請求日】2020-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100088487
【氏名又は名称】松山 允之
(72)【発明者】
【氏名】宮野 清孝
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/039587(WO,A1)
【文献】特開2011-101007(JP,A)
【文献】特開2011-035064(JP,A)
【文献】特表2013-518441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 21/338
H01L 27/12
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面方位が{100}である第1の面を有するシリコン基板と、
前記シリコン基板の第1の領域上に設けられた酸化シリコン層と、
前記酸化シリコン層上に設けられ面方位が{111}である第2の面を有し、アンドープである第1のシリコン層と、
六方晶の結晶構造を有し、前記第1のシリコン層上に設けられたワイドバンドギャップ化合物半導体層と、
前記シリコン基板の前記第1の領域と異なる第2の領域上に設けられた第2のシリコン層と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記ワイドバンドギャップ化合物半導体層の上に設けられた第1のソース電極と、
前記ワイドバンドギャップ化合物半導体層の上に設けられた第1のドレイン電極と、
前記第1のソース電極と前記第1のドレイン電極の間に設けられた第1のゲート電極と、
前記第2のシリコン層の上に設けられたn型のソース領域と、
前記第2のシリコン層の上に設けられたn型のドレイン領域と、
前記ソース領域の上に設けられ、前記第1のゲート電極に電気的に接続された第2のソース電極と、
前記ドレイン領域の上に設けられ、前記第1のソース電極に電気的に接続された第2のドレイン電極と、
前記第2のソース電極と前記第2のドレイン電極の間に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜の上に設けられた第2のゲート電極と、
をさらに備え、
前記第2のシリコン層はp型である、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
面方位が{111}である第1の面を有するシリコン基板と、
前記シリコン基板の第1の領域上に設けられた酸化シリコン層と、
前記酸化シリコン層上に設けられ面方位が{100}である第2の面を有し、アンドープである第1のシリコン層と、
六方晶の結晶構造を有し、前記シリコン基板の前記第1の領域と異なる第2の領域上に設けられたワイドバンドギャップ化合物半導体層と、
を備える半導体装置。
【請求項4】
前記ワイドバンドギャップ化合物半導体層の上に設けられた第1のソース電極と、
前記ワイドバンドギャップ化合物半導体層の上に設けられた第1のドレイン電極と、
前記第1のソース電極と前記第1のドレイン電極の間に設けられた第1のゲート電極と、
前記第1のシリコン層の上に設けられたn型のソース領域と、
前記第1のシリコン層の上に設けられたn型のドレイン領域と、
前記ソース領域の上に設けられ、前記第1のゲート電極に電気的に接続された第2のソース電極と、
前記ドレイン領域の上に設けられ、前記第1のソース電極に電気的に接続された第2のドレイン電極と、
前記第2のソース電極と前記第2のドレイン電極の間に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜の上に設けられた第2のゲート電極と、
をさらに備える、
請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ワイドバンドギャップ化合物半導体層は窒化物半導体層である、
請求項1ないし請求項いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項6】
面方位が{100}の第1の面を有するシリコン基板の第1の領域上に設けられた酸化シリコン層上に設けられ面方位が{111}の第2の面を有しアンドープである第1のシリコン層の上に、六方晶の結晶構造を有するワイドバンドギャップ化合物半導体層を形成し、
前記シリコン基板の前記第1の領域と異なる第2の領域上に第2のシリコン層を形成する、
半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記ワイドバンドギャップ化合物半導体層の上に第1のソース電極を形成し、
前記ワイドバンドギャップ化合物半導体層の上に第1のドレイン電極を形成し、
前記第1のソース電極と前記第1のドレイン電極の間に第1のゲート電極を形成し、
前記第2のシリコン層の上にn型のソース領域を形成し、
前記第2のシリコン層の上にn型のドレイン領域を形成し、
前記ソース領域の上に第2のソース電極を形成し、
前記ドレイン領域の上に第2のドレイン電極を形成し、
前記第2のソース電極と前記第2のドレイン電極の間にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜の上に第2のゲート電極を形成し、
前記第1のゲート電極と前記第2のソース電極を電気的に接続し、
前記第1のソース電極と前記第2のドレイン電極を電気的に接続し、
前記第2のシリコン層はp型である、
請求項6記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイドバンドギャップ化合物半導体を用いたパワーデバイスの適用範囲は、近年急速に拡大している。これらのパワーデバイスは、多くの場合、シリコン(Si)を用いたデバイスと組み合わせることで用いられる。
【0003】
これまで、ワイドバンドギャップ化合物半導体を用い、各チップを組み合わせて一個のモジュールとしてパッケージされていた。
【0004】
しかし、このような形成方法では、各チップを個別に形成することが必要になるため煩雑であり、またモジュールの小型化に限界がある。このため、1チップ上に化合物半導体デバイスとシリコンデバイスを混載可能とする技術が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-179242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ワイドバンドギャップ化合物半導体デバイスとシリコンデバイスを混載可能な半導体装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の半導体装置は、面方位が{100}である第1の面を有するシリコン基板と、シリコン基板の第1の領域上に設けられた酸化シリコン層と、酸化シリコン層上に設けられ面方位が{111}である第2の面を有し、アンドープである第1のシリコン層と、六方晶の結晶構造を有し、第1のシリコン層上に設けられたワイドバンドギャップ化合物半導体層と、シリコン基板の第1の領域と異なる第2の領域上に設けられた第2のシリコン層と、を備える。
上記態様の半導体装置において、ワイドバンドギャップ化合物半導体層の上に設けられた第1のソース電極と、ワイドバンドギャップ化合物半導体層の上に設けられた第1のドレイン電極と、第1のソース電極と第1のドレイン電極の間に設けられた第1のゲート電極と、第2のシリコン層の上に設けられたn型のソース領域と、第2のシリコン層の上に設けられたn型のドレイン領域と、ソース領域の上に設けられ、第1のゲート電極に電気的に接続された第2のソース電極と、ドレイン領域の上に設けられ、第1のソース電極に電気的に接続された第2のドレイン電極と、第2のソース電極と第2のドレイン電極の間に設けられたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜の上に設けられた第2のゲート電極と、をさらに備え、第2のシリコン層はp型であることが好ましい。
【0008】
また、本発明の一態様の半導体装置は、面方位が{111}である第1の面を有するシリコン基板と、シリコン基板の第1の領域上に設けられた酸化シリコン層と、酸化シリコン層上に設けられ面方位が{100}である第2の面を有し、アンドープである第1のシリコン層と、六方晶の結晶構造を有し、シリコン基板の第1の領域と異なる第2の領域上に設けられたワイドバンドギャップ化合物半導体層と、を備える。
【0009】
上記態様の半導体装置において、前記ワイドバンドギャップ化合物半導体層の上に設けられた第1のソース電極と、前記ワイドバンドギャップ化合物半導体層の上に設けられた第1のドレイン電極と、前記第1のソース電極と前記第1のドレイン電極の間に設けられた第1のゲート電極と、前記第1のシリコン層の上に設けられたn型のソース領域と、前記第1のシリコン層の上に設けられたn型のドレイン領域と、前記ソース領域の上に設けられ、前記第1のゲート電極に電気的に接続された第2のソース電極と、前記ドレイン領域の上に設けられ、前記第1のソース電極に電気的に接続された第2のドレイン電極と、前記第2のソース電極と前記第2のドレイン電極の間に設けられたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜の上に設けられた第2のゲート電極と、をさらに備えることが好ましい。
【0010】
上記態様の半導体装置において、ワイドバンドギャップ化合物半導体層は窒化物半導体層であることが好ましい。
【0011】
本発明の一態様の半導体装置の製造方法は、面方位が{100}の第1の面を有するシリコン基板の第1の領域上に設けられた酸化シリコン層上に設けられ面方位が{111}の第2の面を有しアンドープである第1のシリコン層の上に、六方晶の結晶構造を有するワイドバンドギャップ化合物半導体層を形成し、シリコン基板の第1の領域と異なる第2の領域上に第2のシリコン層を形成する。
上記態様の半導体装置の製造方法において、ワイドバンドギャップ化合物半導体層の上に第1のソース電極を形成し、ワイドバンドギャップ化合物半導体層の上に第1のドレイン電極を形成し、第1のソース電極と第1のドレイン電極の間に第1のゲート電極を形成し、第2のシリコン層の上にn型のソース領域を形成し、第2のシリコン層の上にn型のドレイン領域を形成し、ソース領域の上に第2のソース電極を形成し、ドレイン領域の上に第2のドレイン電極を形成し、第2のソース電極と第2のドレイン電極の間にゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜の上に第2のゲート電極を形成し、第1のゲート電極と第2のソース電極を電気的に接続し、第1のソース電極と第2のドレイン電極を電気的に接続し、第2のシリコン層はp型であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、ワイドバンドギャップ化合物半導体デバイスとシリコンデバイスを混載可能な半導体装置及びその製造方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態の半導体装置の模式断面図である。
図2】第1の実施形態の回路の模式図である。
図3】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の模式断面図である。
図4】第2の実施形態の半導体装置の模式断面図である。
図5】第2の実施形態の半導体装置の製造方法の模式断面図である。
図6】第3の実施形態の半導体装置の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0015】
本明細書中、「窒化物半導体」とは、GaN(窒化ガリウム)、AlN(窒化アルミニウム)、InN(窒化インジウム)及びそれらの中間組成を備える半導体の総称である。
【0016】
本明細書中、部品等の位置関係を示すために、図面の上方向を「上」、図面の下方向を「下」と記述する。本明細書中、「上」、「下」の概念は、必ずしも重力の向きとの関係を示す用語ではない。
【0017】
(第1の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、第1の面方位の第1の面を有するシリコン基板と、シリコン基板の第1の領域上に設けられた酸化シリコン層と、酸化シリコン層上に設けられ第1の面方位と異なる第2の面方位の第2の面を有する第1のシリコン層と、六方晶の結晶構造を有するワイドバンドギャップ化合物半導体層と、を備える。
【0018】
そして、シリコン基板の第1の領域と異なる第2の領域上に設けられた第2のシリコン層をさらに備え、ワイドバンドギャップ化合物半導体層は、第1のシリコン層上に設けられ、第1の面方位は{100}であり、第2の面方位は{111}である。
【0019】
本実施形態の半導体装置100の製造方法は、面方位が{100}の第1の面を有するシリコン基板の第1の領域上に設けられた酸化シリコン層上に設けられ面方位が{111}の第2の面を有する第1のシリコン層の上に、六方晶の結晶構造を有するワイドバンドギャップ化合物半導体層を形成し、シリコン基板の第2の領域上に第2のシリコン層を形成する。
【0020】
図1は、本実施形態の半導体装置100の模式断面図である。
【0021】
シリコン基板2上の第1の面2aの面方位は{100}面であるが、{100}面から10度以下のオフ角で傾斜していてもよい。
【0022】
そして、酸化シリコン層4は、シリコン基板2の第1の面2aの第1の領域2b上に設けられている。酸化シリコン層4は、いわゆるBOX(Buried Oxide)層である。
【0023】
第1のシリコン層6は、酸化シリコン層4上に設けられている。第1のシリコン層6は、いわゆるSOI(Silicon On Insulator)層である。第1のシリコン層6上の第2の面6aの面方位は、第1の面2aの面方位と異なり{111}面であるが、{111}面から10度以下のオフ角で傾斜していてもよい。これらシリコン基板2、酸化シリコン層4、第1のシリコン層6はSOI基板で構成されてもよい。
【0024】
そして、ワイドバンドギャップ化合物半導体層10は、第1のシリコン層6の第2の面6a上に設けられている。ワイドバンドギャップ化合物半導体層10のワイドバンドギャップ化合物には、例えば窒化物半導体が用いられる。
【0025】
ワイドバンドギャップ化合物半導体層10は、バッファ層12と、バッファ層12上に設けられた第1の窒化物半導体層14と、第1の窒化物半導体層14上に設けられバンドギャップが第1の窒化物半導体層14より大きい第2の窒化物半導体層16と、を有する。窒化物半導体の結晶構造は、六方晶である。
【0026】
第1の窒化物半導体層14は、例えば、アンドープのAlGa1-XN(0≦X<1)である。より具体的には、例えば、アンドープのGaNである。第2の窒化物半導体層16は、例えば、アンドープのAlGa1-YN(0<Y≦1、X<Y)である。より具体的には、例えば、アンドープのAl0.2Ga0.8Nである。
【0027】
バッファ層12は、第1のシリコン層6と第1の窒化物半導体層14の間の格子不整合を緩和する機能を備える。バッファ層12は、例えば窒化アルミニウムガリウム(AlGa1-WN(0<W<1))の多層構造を有する。
【0028】
第2の窒化物半導体層16上には、第1のソース電極18と、第1のゲート電極20と、第1のドレイン電極22が設けられている。第1のゲート電極20は、第1のソース電極18と第1のドレイン電極22の間に設けられている。
【0029】
第1のソース電極18と第1のゲート電極20と第1のドレイン電極22は、例えば、金属電極である。第1のソース電極18及び第1のドレイン電極22と、第2の窒化物半導体層16は、オーミック接合されていることが好ましい。
【0030】
第1の窒化物半導体層14と、第2の窒化物半導体層16と、第1のソース電極18と、第1のゲート電極20と、第1のドレイン電極22は、ノーマリーオンの高耐圧のHEMT(High Electron Mobility Transistor)30を構成する。
【0031】
なお、第1のシリコン層6の抵抗値が低い場合は、HEMT30を高周波動作させると誘電的・誘導的にシリコン基板2とカップリングして損失を生じてしまうことがある。これを抑制するため、第1のシリコン層6はアンドープで高抵抗とすることが望ましい。
【0032】
p型の第2のシリコン層40は、シリコン基板2の第1の領域2bと異なる第2の領域2c上に、シリコン基板2に接して設けられている。第2のシリコン層40は、例えばエピタキシャル成長法により形成されている。p型不純物としては、例えばホウ素(B)が好ましく用いられる。第2のシリコン層40上の第3の面40aの面方位は、例えば{100}面であるが、10度以下のオフ角で傾斜していてもよい。
【0033】
そして、第2のシリコン層40上には、n型のソース領域44及びn型のドレイン領域52が設けられている。n型不純物としては、例えばヒ素(As)、燐(P)が好ましく用いられる。ソース領域44及びドレイン領域52の間の第2のシリコン層40は、チャネル領域42となる。
【0034】
ソース領域44上に第2のソース電極46が設けられている。ドレイン領域52上に第2のドレイン電極50が設けられている。チャネル領域42上の、第2のソース電極46と第2のドレイン電極50の間に、ゲート絶縁膜54が設けられている。ゲート絶縁膜54上に、第2のゲート電極48が設けられている。
【0035】
第2のソース電極46、第2のドレイン電極50は、例えば金属電極である。第2のゲート電極48は、例えばポリシリコン電極である。ゲート絶縁膜54は、例えば酸化シリコンで形成される。
【0036】
ソース領域44と、チャネル領域42と、ドレイン領域52と、ゲート絶縁膜54と、第2のソース電極46と、第2のドレイン電極50と、第2のゲート電極48は、n型のSi-MOSFET60を構成する。Si-MOSFET60は、例えば低耐圧のSi-MOSFETである。
【0037】
シリコン基板2上の、酸化シリコン層4、第1のシリコン層6及びワイドバンドギャップ化合物半導体層10と、第2のシリコン層40の間に、素子分離層70が設けられている。素子分離層70は、例えば酸化シリコンで形成され、HEMT30とSi-MOSFET60を電気的に絶縁している。
【0038】
図2は、本実施形態の回路500の模式図である。回路500は、HEMT30とSi-MOSFET60をカスコード接続した回路である。具体的には、HEMT30のゲート電極とSi-MOSFET60のソース電極が、またHEMT30のソース電極とSi-MOSFET60のドレイン電極が、それぞれ電気的に接続されている。
【0039】
HEMT30とSi-MOSFET60をカスコード接続することにより、ノーマリーオンのHEMT30を、ノーマリーオフとして用いることが出来る。
【0040】
なお、Si-MOSFETがHEMTのゲートドライバ回路を構成するMOSFETであってもかまわない。
【0041】
次に、本実施形態の半導体装置100の製造方法を記載する。
【0042】
図3は、本実施形態の半導体装置の製造方法の模式断面図である。
【0043】
まず、{100}面の第1の面2aを有するシリコン基板2の上の酸化シリコン層4の上に設けられ{111}の第2の面6aを有する第1のシリコン層6を有する、SOI基板を準備する。各シリコン基板の面方位は、10度以下のオフ角で傾斜していてもよい。
【0044】
次に、第1のシリコン層6上の一部にマスク材Mを形成する。次に、マスク材Mが形成されていない第1のシリコン層6の上に、バッファ層12、バッファ層12上の第1の窒化物半導体層14、及び第1の窒化物半導体層14上の第2の窒化物半導体層16からなるワイドバンドギャップ化合物半導体層10をエピタキシャル成長により形成する(図3(a))。
【0045】
次に、マスク材Mを第2の窒化物半導体層16上に形成し、マスク材Mが形成されている部分の酸化シリコン層4の一部と第1のシリコン層6の一部とマスク材Mを除去する(図3(b))。
【0046】
次に、シリコン基板2の第1の面2a上に、シリコン基板2の第1の面2aと接する第2のシリコン層40をエピタキシャル成長により形成する。
【0047】
次に、酸化シリコン層4、第1のシリコン層6及びワイドバンドギャップ化合物半導体層10と、第2のシリコン層40の間にトレンチを形成し、形成されたトレンチ内に素子分離層70を形成する。
【0048】
次に、第2のシリコン層40上に、ソース領域44、ドレイン領域52、チャネル領域42、第2のソース電極46、第2のドレイン電極50、ゲート絶縁膜54及び第2のゲート電極48を形成する。次に、第2の窒化物半導体層16上に第1のソース電極18、第1のゲート電極20、第1のドレイン電極22を形成し、本実施形態の半導体装置100を得る(図3(c))。
【0049】
次に、本実施形態の半導体装置100の作用効果を記載する。
【0050】
ワイドバンドギャップ化合物半導体を用いたデバイスは、通常Si-MOSFET等の、他のデバイスと組み合わせて動作させる。
【0051】
窒化物半導体の結晶構造は六方晶である。そのため、通常窒化物半導体は、エピタキシャル成長が容易なシリコンの{111}面上に形成される。
【0052】
一方、Si-MOSFETは、PMOS/NMOSの移動度のバランスが良い事や、得られるゲート酸化膜の信頼性が高いため、シリコンの{100}面上に形成されることが好ましい。
【0053】
このため、ワイドバンドギャップ化合物半導体を用いたデバイスとシリコンを用いたデバイスは別個の基板上に作製され、モジュール化の段階で一体のパッケージとしていた。
【0054】
本実施形態の半導体装置100では、シリコン基板2の{100}面2a上にSi-MOSFET60を設ける。そして、HEMT30は、シリコン基板2上の酸化シリコン層4上に設けられた、シリコン層6の{111}面6a上に設ける。これにより、ワイドバンドギャップ化合物半導体を用いたデバイスとシリコンを用いたデバイスを、1チップ上に混載出来る。
【0055】
また、半導体装置100が形成する回路500は、HEMT30とSi-MOSFET60がカスコード接続された回路である。窒化物半導体を用いたHEMTは多くの場合ノーマリーオンであるため、ゲートバイアスがゼロであるときでも通電してしまう。本実施形態の回路500により、ノーマリーオフとしてHEMTが動作する回路を、1チップ上に混載出来る。
【0056】
さらに、HEMT30とシリコン基板2の間に酸化シリコン層4が設けられているため、HEMT30の耐圧を増加させることが出来る。
【0057】
また、シリコン基板2の抵抗値が低い場合は、HEMT30を高周波動作させると誘電的・誘導的にシリコン基板2とカップリングして損失を生じてしまうことがある。しかし、本実施形態の半導体装置100のように、HEMT30とシリコン基板2の間に酸化シリコン層4を設けると、酸化シリコン層4は抵抗が高いため、誘電的・誘導的なカップリングによる損失の抑制が可能となる。
【0058】
ワイドバンドギャップ化合物半導体層10を形成するときには、シリコンを用いたデバイスよりも長時間高温で基板を維持するプロセスが求められる。例えば、窒化物半導体層を用いたプロセスの場合は、1000℃程度で数時間維持するプロセスが求められる。しかし、シリコンを用いたデバイスはこのような温度に耐えることが困難である。
【0059】
本実施形態の半導体装置100の製造方法では、ワイドバンドギャップ化合物半導体層10を形成した後に、Si-MOSFET60を形成する。これにより、シリコンを用いたデバイスに高温を加えないようにして、半導体装置100を作製することが出来る。
【0060】
本実施形態の半導体装置によれば、ワイドバンドギャップ化合物半導体デバイスとシリコンデバイスを混載可能な半導体装置の提供が可能となる。
【0061】
(第2の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、ワイドバンドギャップ化合物半導体層はシリコン基板の第2の領域上に設けられ、第1の面方位は{111}面であり、第2の面方位は{100}面である点で、第1の実施形態と異なっている。なお、各シリコン基板の面方位は、10度以下のオフ角で傾斜していてもよい。ここで、第1の実施形態と重複する内容については、記載を省略する。
【0062】
図4は、本実施形態の半導体装置200の模式断面図である。
【0063】
シリコン基板2は、{111}面の第1の面2aを有する。シリコン基板2上に酸化シリコン層4が設けられている。
【0064】
酸化シリコン層4上に第1のシリコン層6が設けられている。第1のシリコン層6は、{111}面の第2の面6aを有する。そして、第1のシリコン層6上にSi-MOSFET60が設けられている。
【0065】
また、ワイドバンドギャップ化合物半導体層10は、シリコン基板2の第2の領域2c上に、シリコン基板2に接して設けられている。そして、ワイドバンドギャップ化合物半導体層10上にHEMT30が設けられている。
【0066】
図5は、本実施形態の半導体装置の製造方法の模式断面図である。
【0067】
本実施形態の半導体装置200の製造方法は、{111}面の第1の面を有するシリコン基板の上の酸化シリコン層の上の{100}面の第2の面を有する第1のシリコン層の、酸化シリコン層の一部と第1のシリコン層の一部を除去してシリコン基板の一部を露出させ、露出したシリコン基板の一部の上に六方晶の結晶構造を有するワイドバンドギャップ化合物半導体層を形成する。
【0068】
まず、{111}面の第1の面を有するシリコン基板2の上の酸化シリコン層4の上に設けられた{100}面の第2の面を有する第1のシリコン層6を有する、SOI基板を準備する(図5(a))。
【0069】
次に、酸化シリコン層4の一部及び第1のシリコン層6の一部を除去する(図5(b))。
【0070】
次に、露出したシリコン基板2の第1の面2a上に、バッファ層12、第1の窒化物半導体層14、及び第2の窒化物半導体層16を順に形成する。
【0071】
次に、バッファ層12、第1の窒化物半導体層14、及び第2の窒化物半導体層16と、酸化シリコン層4及び第1のシリコン層6の間にトレンチを形成し、形成されたトレンチ内に素子分離層70を形成する。
【0072】
次に、第1のシリコン層6上に、ソース領域44、ドレイン領域52、チャネル領域42、第2のソース電極46、第2のドレイン電極50、ゲート絶縁膜54、第2のゲート電極48を形成する。次に、第2の窒化物半導体層16上に第1のソース電極18、第1のゲート電極20、第1のドレイン電極22を形成し、本実施形態の半導体装置200を得る(図5(c))。
【0073】
本実施形態の半導体装置200では、第1の窒化物半導体層14及び第2の窒化物半導体層16の膜厚を厚くすることが出来るため、HEMT30の耐圧を増加させることが出来る。
【0074】
また、第1の実施形態の半導体装置100と比較すると、第2のシリコン層40を備えないため、エピタキシャル成長の回数を1回減らすことが出来る。
【0075】
本実施形態の半導体装置によれば、ワイドバンドギャップ化合物半導体デバイスとシリコンデバイスを混載可能な半導体装置の提供が可能となる。
【0076】
(第3の実施形態)
本実施形態の半導体装置300は、ワイドバンドギャップ化合物半導体層10として炭化珪素(SiC)を用いる点で、第1及び第2の実施形態と異なっている。ここで、第1の実施形態と重複する内容については、記載を省略する。
【0077】
図6は、本実施形態の半導体装置300の模式図である。
【0078】
半導体装置300のワイドバンドギャップ化合物半導体層10は、p型の4H-SiC又は6H-SiCの炭化珪素層である。4H-SiC及び6H-SiCの結晶構造は、六方晶である。
【0079】
半導体装置300は、SiC-MOSFET90を備える。ワイドバンドギャップ化合物半導体層10内には、n型のソース領域74とn型のドレイン領域76が設けられている。ソース領域74とドレイン領域76の間にはチャネル領域72が設けられている。
【0080】
ソース電極78はソース領域74上に、ドレイン電極80はドレイン領域76上に、それぞれ設けられている。
【0081】
チャネル領域72上にはゲート絶縁膜84が設けられている。そして、ゲート絶縁膜84上にゲート電極82が設けられている。
【0082】
本実施形態の半導体装置においても、ワイドバンドギャップ化合物半導体デバイスとシリコンデバイスを混載可能な半導体装置の提供が可能となる。
【0083】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。上記の実施形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、各実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもかまわない。
【0084】
実施形態では、装置構成や製造方法等、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や製造方法等を適宜選択して用いることが出来る。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての検査方法は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物の範囲によって定義されるものである。
【符号の説明】
【0085】
2 シリコン基板
2a 第1の面
2b 第1の領域
2c 第2の領域
4 酸化シリコン層
6 第1のシリコン層
6a 第2の面
10 ワイドバンドギャップ化合物半導体層
40 第2のシリコン層
100 半導体装置
200 半導体装置
300 半導体装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6