(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】半導体デバイスの製造中に窒化ケイ素を選択的に除去するためのエッチング溶液
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20220126BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
H01L21/306 E
H01L21/304 647A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018107498
(22)【出願日】2018-06-05
【審査請求日】2018-11-01
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-21
(32)【優先日】2017-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】イ-チア リ
(72)【発明者】
【氏名】ウェン ダー リウ
【合議体】
【審判長】恩田 春香
【審判官】河本 充雄
【審判官】▲吉▼澤 雅博
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-515245(JP,A)
【文献】特開2012-099550(JP,A)
【文献】特開2012-033561(JP,A)
【文献】特開2012-18983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/304
H01L21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ電子デバイスから、酸化ケイ素に対して窒化ケイ素を選択的に除去するのに適したエッチング溶液であって、
水と、
前記エッチング溶液の全質量を基準として40質量%~99質量%のリン酸と、
ヒドロキシル基含有溶媒とを含
み、
酸化ケイ素に対する窒化ケイ素のエッチ選択性が約50~約500である、エッチング溶液、
(但し、以下の式(1)
【化1】
式中、R
1は炭素数8~24の脂肪族炭化水素基;R
2~R
4はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~24の脂肪族炭化水素基またはベンジル基;fは1~4の整数;X
f-はf価のアニオンを表す、
で表される化合物を含むエッチング溶液を除く)。
【請求項2】
前記ヒドロキシル基含有溶媒が、アルカンジオール又はポリオール、グリコール、アルコキシアルコール、飽和脂肪族一価アルコール、不飽和非芳香族一価アルコール、及び環構造を含有するアルコールからなる群より選択される、請求項1に記載のエッチング溶液。
【請求項3】
前記ヒドロキシル基含有溶媒がアルカンジオール又はポリオールであり、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、及びピナコールからなる群より選択される、請求項2に記載のエッチング溶液。
【請求項4】
前記ヒドロキシル基含有溶媒がグリコールであり、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、及びテトラエチレングリコールからなる群より選択される、請求項2に記載のエッチング溶液。
【請求項5】
前記ヒドロキシル基含有溶媒がアルコキシアルコールであり、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、1-メトキシ-2-ブタノール、及びグリコールモノエーテルからなる群より選択される、請求項2に記載のエッチング溶液。
【請求項6】
前記ヒドロキシル基含有溶媒が飽和脂肪族一価アルコールであり、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、2-ペンタノール、t-ペンチルアルコール、及び1-ヘキサノールからなる群より選択される、請求項2に記載のエッチング溶液。
【請求項7】
前記ヒドロキシル基含有溶媒が不飽和非芳香族一価アルコールであり、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、2-ブテニルアルコール、3-ブテニルアルコール、及び4-ペンテン-2-オールからなる群より選択される、請求項2に記載のエッチング溶液。
【請求項8】
前記ヒドロキシル基含有溶媒がグリコールモノエーテルであり、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-メトキシ-1-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、2-エトキシ-1-プロパノール、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、及びジエチレングリコールモノベンジルエーテルからなる群より選択される、請求項5に記載のエッチング溶液。
【請求項9】
前記ヒドロキシル基含有溶媒が環構造を含有するアルコールであり、アルファ-テルピネオール、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、及び1,3-シクロペンタンジオールからなる群より選択される、請求項2に記載のエッチング溶液。
【請求項10】
前記ヒドロキシル基含有溶媒が、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(DPGME)である、請求項1に記載のエッチング溶液。
【請求項11】
前記ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(DPGME)が、約1~約50wt%の量で存在している、請求項
10に記載のエッチング溶液。
【請求項12】
窒化ケイ素及び二酸化ケイ素を含む複合半導体デバイス上で、二酸化ケイ素に対する窒化ケイ素のエッチ速度を選択的に向上する方法であって、
窒化ケイ素及び二酸化ケイ素を含む複合半導体デバイスを、請求項1~
11のいずれか1項に記載のエッチング溶液に接触させる接触工程と、
窒化ケイ素が少なくとも部分的に除去された後に前記複合半導体デバイスをリンスする工程とを含
む、方法。
【請求項13】
前記複合半導体デバイスを乾燥する工程をさらに含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
酸化ケイ素に対する窒化ケイ素のエッチ選択性が約100~約500である、請求項
12に記載の方法。
【請求項15】
酸化ケイ素に対する窒化ケイ素のエッチ選択性が約125~約500である、請求項
12に記載の方法。
【請求項16】
前記接触工程が、約100~約200℃の温度で行われる、請求項
12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は、合衆国法典第35巻119条(e)項の下で、2017年6月5日に出願された米国仮特許出願第62/515,351号の優先権を主張し、その全体は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、半導体デバイスの製造で使用される水性リン酸エッチング溶液に関する。より具体的には、本発明は、窒化ケイ素-酸化ケイ素複合半導体デバイスにおいて二酸化ケイ素膜に対する窒化ケイ素膜の増加したエッチ選択性を示す、水性リン酸エッチング溶液を提供する。
【0003】
窒化ケイ素は、半導体デバイス中への汚染物質の拡散を防止するためのバリア層又は仕上げ層として、半導体産業で広く使用されている。それはまた、要求された領域で酸化を発生させてトランジスタ絶縁を提供するために、ケイ素の局所酸化(LOCOS)プロセスにおける選択的な酸化バリアとして使用される。窒化ケイ素は、本質的に不活性であり、高密度であり、エッチングするのが困難である。フッ化水素酸及び緩衝酸化物エッチング液を使用することができるが、エッチ速度は一般的に高温でさえ遅く、フォトレジストは過激なエッチング条件にしばしば悪影響を受ける。別の問題は、エッチング溶液中でリン酸を使用する場合、リン酸が二酸化ケイ素及び窒化ケイ素の両方をエッチングすることである。この共エッチングは、窒化ケイ素の選択的エッチングが要求される場合は望ましくない。米国特許第5,472,562号では、例えば、リン酸、フッ化水素酸及び硝酸のエッチング溶液に可溶性ケイ素化合物を追加することが、ケイ素及び二酸化ケイ素に対する窒化ケイ素エッチングの選択性に有用であることを教示している。しかしながら、追加のフッ化水素酸及び硝酸の存在は望ましくなく、多くの場合、半導体プロセスに有害である。当技術分野で開示される他のプロセスは、組成物のエッチング特性を改質するために加えられたケイ素を有する剥離組成物を提供する。典型的に、これは、シリコンウエハのような固体のケイ素含有材料を、加熱したリン酸溶液に加えることで達成することができる。このプロセスは、シリコンウエハを消化する(digest)のに時間を要し、かつ、エッチング溶液中で不溶な粒子が存在するため望ましくない。さらに、加熱プロセスは、それ自体の懸念事項、例えば、蒸気を収容する特殊な設備の必要性を伴う。したがって、当技術分野において、SiO2に対するSiNの高い選択性を有する改善したエッチング溶液についての必要性が未だ存在している。
【発明の概要】
【0004】
1つの態様において、本発明は、マイクロ電子デバイスから、酸化ケイ素に対して窒化ケイ素を選択的に除去するのに適したエッチング溶液であって、水と、リン酸溶液(水性)と、水混和性(又は水溶性)溶媒であることができるヒドロキシル基含有溶媒とを含むエッチング溶液を提供する。エッチング溶液は、任意選択で、界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤を含むことができる。
【0005】
別の態様において、本発明は、窒化ケイ素及び二酸化ケイ素を含む複合半導体デバイス上で、二酸化ケイ素に対する窒化ケイ素のエッチ速度を選択的に向上する方法であって、窒化ケイ素及び二酸化ケイ素を含む複合半導体デバイスを、リン酸及びヒドロキシル基含有溶媒を含む水性組成物と接触させる工程と、窒化ケイ素が少なくとも部分的に除去された後に複合半導体デバイスをリンスする工程とを含み、酸化ケイ素に対する窒化ケイ素のエッチ選択性が約50~約500以上、又は約200~約500である方法を提供する。
【0006】
本発明の実施形態は、単独で又は互いに組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】様々な種類の溶媒を含む組成物についてのSi
3N
4及びSiO
2のエッチ速度を図示したグラフである。
【
図2】
図1の組成物についてのエッチ選択性Si
3N
4/SiO
2を図示したグラフである。
【
図3】様々な種類の溶媒を含む組成物についてのSi
3N
4及びSiO
2のエッチ速度を図示したグラフである。
【
図4】
図3の組成物についてのエッチ選択性Si
3N
4/SiO
2を図示したグラフである。
【
図5】様々な種類の溶媒を含む組成物についてのSi
3N
4及びSiO
2のエッチ速度を図示したグラフである。
【
図6】
図5の組成物についてのエッチ選択性Si
3N
4/SiO
2を図示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で引用された刊行物、特許出願及び特許を含む全ての参考文献は、それぞれの参考文献が個別及び具体的に示されてその参照により組み込まれ、全体として本明細書に記載されているのと同じ程度に、その参照により本明細書に組み込まれる。
【0009】
本発明を説明する範囲の中での(特に以下の特許請求の範囲の中での)「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」という用語並びに同様の指示語の使用は、本明細書で別段の指摘がないか又は文脈によって明確に否定されない限り、単数及び複数の両方を包含すると解されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」という用語は、特に断りのない限り、制限のない用語(すなわち、「含むが、限定されない」ことを意味する)として解されるべきである。本明細書における値の範囲の記載は、本明細書で別段の指摘がない限り、単に範囲内に入っているそれぞれ独立した値を個々に言及することの省略方法として機能することを意図しており、それぞれの独立した値は、まるでそれが本明細書で個々に列挙されたかのように本明細書中に組み込まれる。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書で別段の指摘がないか又は文脈によって明確に否定されない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供される任意の及び全ての例又は例示的な語(例えば、「のような(such as)」)の使用は、単に本発明をより明らかにすることを意図しており、特許請求の範囲に別段の記載がない限り、本発明の範囲に関する限定をもたらすものではない。本明細書中の如何なる言語も、特許請求の範囲に記載されていない任意の要素を本発明の実施に必須であるものとして示すと解されるべきではない。本明細書及び特許請求の範囲における「含む(comprising)」という用語の使用は、より狭い語の「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」を含む。
【0010】
本発明を実施するために、発明者らが知っている最良の形態を含めて、本発明の好ましい実施形態が本明細書において記載される。それらの好ましい実施形態の変形態様は、前述の説明を読めば当業者には明らかになるであろう。発明者らは、当業者がそのような変形態様を適宜利用すると予期しており、発明者らは本明細書に具体的に記載したのと別の方法で、本発明が実施されることを意図している。したがって、本発明は、準拠法によって容認されているように、特許請求の範囲に記載される対象の全ての改良及びそれと同等なものを含む。さらに、それらの全ての可能な変形態様における上記の要素の任意の組み合わせは、本明細書で別段の指摘がないか又は文脈によって明確に否定されない限り、本発明によって包含される。
【0011】
本発明は、一般的に、マイクロ電子デバイスの製造中に、酸化ケイ素に対して窒化ケイ素を、その上にそのような1つ又は複数の材料を有するマイクロ電子デバイスから選択的に除去するのに有用な組成物に関する。
【0012】
参照を容易にするために、「マイクロ電子デバイス」は、半導体基材、フラットパネルディスプレイ、相変化メモリデバイス、ソーラーパネル、並びに他の製品、例えば、ソーラー基材、太陽光発電装置、及びマイクロ電子での使用のために製造される微小電気機械システム(MEMS)、集積回路、又はコンピュータチップの用途に対応する。ソーラー基材としては、限定されないが、シリコン、アモルファスシリコン、多結晶シリコン、単結晶シリコン、CdTe、セレン化銅インジウム、硫化銅インジウム、及びガリウム上のガリウムヒ素が挙げられる。ソーラー基材は、ドープされていることがあるか又はドープされていないことがある。「マイクロ電子デバイス」という用語は、任意の方法で限定されることを意図されず、最終的にマイクロ電子デバイス又はマイクロ電子アセンブリになる如何なる基材を含むことが理解されるべきである。
【0013】
本明細書で規定される場合、「低k誘電体材料」とは、層状マイクロ電子デバイスにおいて誘電体材料として使用される任意の材料であって、約3.5未満の誘電率を有する材料に対応する。好ましくは、低k誘電体材料としては、低気孔性材料、例えば、ケイ素含有有機ポリマー、ケイ素含有有機/無機ハイブリット材料、有機ケイ酸ガラス(OSG)、TEOS、フッ素化ケイ酸ガラス(FSG)、二酸化ケイ素、及び炭素ドープ酸化物(CDO)ガラスが挙げられる。低k材料は、様々な密度及び様々な多孔率を有することができることが理解されるべきである。
【0014】
本明細書で規定される場合、「バリア材料」という用語は、金属ライン、例えば銅相互接続を密閉して、前記金属、例えば銅が誘電体材料中に拡散するのを最小限にするために当技術分野で使用される任意の材料に対応する。好ましいバリア層材料としては、タンタル、チタン、ルテニウム、ハフニウム、及び他の反射性材料、並びにそれらの窒化物及びケイ化物が挙げられる。
【0015】
「実質的に含まない」は、本明細書において、0.001wt%未満として規定される。「実質的に含まない」はまた、0.000wt%を含む。「含まない」という用語は、0.000wt%を意味する。
【0016】
本明細書で使用される場合、「約」は、述べられた値の±5%に相当することが意図される。
【0017】
組成物の特定の成分がゼロの下限値を含む重量パーセントの範囲に関連して議論される全てのそのような組成物において、組成物の様々な特定の実施形態では、そのような成分は存在することができるか又は存在しないことができること、及び、例えば、そのような成分が存在する場合は、それらの成分が、そのような成分が用いられる組成物の全体重量に対して0.001wt%程度の濃度で存在することができることが理解される。
【0018】
この態様の広い実施において、本発明のエッチング溶液は、水と、リン酸と、ヒドロキシル基含有溶媒とを含むか、それらから本質的になるか、又はそれらからなる。
【0019】
幾つかの実施形態において、本明細書で開示されるエッチング溶液組成物は、以下の化学化合物:過酸化水素及び他の過酸化物、アンモニウムイオン、フッ素イオン、並びに研磨剤のうち少なくとも1つを実質的に含まないように配合される。
【0020】
他の実施形態において、本明細書で開示されるエッチング溶液組成物は、以下の化学化合物:過酸化水素及び他の過酸化物、アンモニウムイオン、フッ素イオン、並びに研磨剤のうち少なくとも1つを含まないように配合される。本発明の組成物は、以下の化学化合物:硫酸、フッ化水素酸、ヘキサフルオロケイ酸、フッ化アンモニウム、塩酸、硝酸のうち少なくとも1つを含まないことができる。本発明の幾つかの組成物において、組成物中に存在する唯一の無機アニオンがリンイオンである。
【0021】
水
本発明のエッチング組成物は水系であり、したがって、水を含む。本発明において、水は、様々な方法、例えば、組成物の1つ又は複数の成分を溶解するため、成分のキャリアとして、残留物の除去を助けるため、組成物の粘度改質剤として、及び希釈液として機能する。好ましくは、洗浄組成物中で用いられる水は脱イオン(DI)水である。
【0022】
多くの用途について、組成物中の水の重量パーセントは、以下の数字群:0.5、1、5、10、15、20、25、30、40及び60から選択される始点及び終点を持つ範囲で存在すると考えられる。組成物中で使用することができる水の範囲の例としては、例えば、約0.5~約60wt%、又は1~約60wt%の水;或いは、約0.5~約40wt%又は約1~約25wt%、又は約1~約20wt%、又は約1~約15wt%、又は約5~20wt%、又は5~約15wt%の水が挙げられる。本発明のまた別の好ましい実施形態では、他の成分の所望の重量パーセントを達成するための量で水を含むことができる。
【0023】
リン酸
本発明のエッチング組成物は、リン酸を含む。リン酸は、窒化ケイ素をエッチングするために主に機能する。商用グレードのリン酸を使用することができる。典型的に、商業的に利用可能なリン酸は、80~85%の水溶液として利用可能である。しかしながら、本明細書で説明され、かつ、特許請求の範囲で主張されるリン酸の量は原液の溶液に基づく。好ましい実施形態において、電子グレードのリン酸溶液を用いることができ、そのような電子グレードの溶液は、典型的に、100粒子/ml未満の粒子カウントを有し、その粒子のサイズは0.5ミクロン以下であり、金属イオンが、リットルあたり低い100万分の1~10億分の1レベルで酸中に存在する。フッ化水素酸、硝酸又はそれらの混合物のような他の酸は、本発明の溶液に加えられない。
【0024】
多くの用途において、リン酸の量は、組成物の約40~約99wt%、又は約50~約95wt%、又は約60~約90wt%、又は70~約90wt%、又は80~約90wt%を含むか、又は、組成物の全体重量に対して、40、50、60、70、80、90、95及び99から選択される始点及び終点を有する任意の他のwt%範囲を含むことが理解される。
【0025】
ヒドロキシル基含有溶媒
本発明のエッチング組成物は、ヒドロキシル基含有溶媒を含む。ヒドロキシル基含有溶媒は、窒化ケイ素が優先的にかつ選択的にエッチングされるように酸化ケイ素を保護するために主に機能する。本発明で使用される溶媒は水混和性であることができる。
【0026】
ヒドロキシル基含有溶媒の分類としては、限定されないが、アルカンジオール及びポリオール(例えば、限定されないが、アルキレングリコール)、グリコール、アルコキシアルコール(例えば、限定されないが、グリコールモノエーテル)、飽和脂肪族一価アルコール、不飽和非芳香族一価アルコール、及び環構造を含有する低分子量アルコールが挙げられる。
【0027】
水溶性アルカンジオール及びポリオール、例えば、(C2~C20)アルカンジオール及び(C3~C20)アルカントリオールとしては、限定されないが、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、及びピナコールが挙げられる。
【0028】
水溶性アルキレングリコールの例としては、限定されないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、及びテトラエチレングリコールが挙げられる。
【0029】
水溶性アルコキシアルコールの例としては、限定されないが、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、1-メトキシ-2-ブタノール、及び水溶性グリコールモノエーテルが挙げられる。
【0030】
水溶性グリコールモノエーテルの例としては、限定されないが、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-メトキシ-1-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、2-エトキシ-1-プロパノール、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル及びエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテルが挙げられる。
【0031】
水溶性飽和脂肪族一価アルコールの例としては、限定されないが、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、2-ペンタノール、t-ペンチルアルコール、及び1-ヘキサノールが挙げられる。
【0032】
水溶性不飽和非芳香族一価アルコールの例としては、限定されないが、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、2-ブテニルアルコール、3-ブテニルアルコール、及び4-ペンテン-2-オールが挙げられる。
【0033】
環構造を含有する水溶性の低分子量アルコールとしては、限定されないが、アルファ-テルピネオール、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、及び1,3-シクロペンタンジオールが挙げられる。
【0034】
多くの用途について、組成物中のヒドロキシル基含有溶媒の重量パーセントは、以下の重量パーセントのリスト:0.5、1、5、7、12、15、20、30、35、40、50、59.5から選択される始点及び終点を有する範囲であることができる。溶媒のそのような範囲の例としては、組成物の約0.5~約59.5wt%、又は約1~約50wt%、又は約1~約40wt%、又は約0.5~約30wt%、又は約1~約30wt%、又は約5~約30wt%、又は約5~約15wt%、又は約7~約12wt%が挙げられる。
【0035】
界面活性剤(任意)
本発明の組成物は、任意選択で、少なくとも1つの界面活性剤を含む。本明細書で説明される組成物中で使用するための界面活性剤としては、限定されないが、両性塩、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びそれらの組み合わせが挙げられ、限定されないが、ビス(2-エチルヘキシル)リン酸塩、ペルフルオロヘプタン酸、ペルフルオロデカン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ホスホノ酢酸、ドデセニルコハク酸、ジオクタデシルリン酸水素、オクタデシルリン酸二水素、ドデシルアミン、ドデセニルコハク酸モノジエタノールアミド、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ジュニペル酸、12ヒドロキシステアリン酸、ドデシルリン酸塩が挙げられる。
【0036】
考えられる非イオン性界面活性剤としては、限定されないが、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EmalminNL-100(Sanyo)、Brij30、Brij98、Brij35)、ドデセニルコハク酸モノジエタノールアミド(DSDA、Sanyo)、エチレンジアミンテトラキス(エトキシレート-ブロック-プロポキシレート)テトロール(Tetronic90R4)、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400)、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン又はポリプロピレングリコールエーテル、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドに基づくブロックコポリマー(Newpole PE-68(Sanyo)、PluronicL31、Pluronic31R1、PluronicL61、PluronicF-127)、ポリオキシプロピレンスクロースエーテル(SN008S,Sanyo)、t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(TritonX100)、10-エトキシ-9,9-ジメチルデカン-1-アミン(TRITON(登録商標)CF-32)、ポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル、分枝状(IGEPALCO-250)、ポリオキシエチレン(40)ノニルフェニルエーテル、分枝状(IGEPALCO-890)、ポリオキシエチレンソルビトールヘキサオレエート、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリエチレングリコールソルビタンモノオレエート(Tween80)、ソルビタンモノオレエート(Span80)、Tween80とSpan80との組み合わせ、アルコールアルコキシレート(例えば、PlurafacRA-20)、アルキル-ポリグルコシド、エチルペルフルオロブチレート、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチル-1,5-ビス[2-(5-ノルボルネン-2-イル)エチル]トリシロキサン、単量体オクタデシルシラン誘導体、例えば、SIS6952.0(Siliclad,Gelest)、シロキサン変性ポリシラザン、例えば、PP1-SG10Siliclad Glide10(Gelest)、シリコーン-ポリエーテルコポリマー、例えば、SilwetL-77(Setre Chemical Company)、Silwet ECO Spreader(Momentive)、及びエトキシ化フルオロ界面活性剤(ZONYL(登録商標)FSO-100、ZONYL(登録商標)FSN-100)が挙げられる。
【0037】
考えられるカチオン性界面活性剤としては、限定されないが、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、ヘプタデカンフルオロオクタンスルホン酸、テトラエチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(Econol TMS-28、Sanyo)、4-(4-ジエチルアミノフェニルアゾ)-1-(4-ニトロベンジル)臭化ピリジウム、塩化セチルピリジニウム一水和物、塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、塩化ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、p-トルエンスルホン酸ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化ジドデシルジメチルアンモニウム、塩化ジ(水素化タロー)ジメチルアンモニウム、臭化テトラヘプチルアンモニウム、臭化テトラキス(デシル)アンモニウム、Aliquat(登録商標)336及び臭化オキシフェノニウム、塩酸グアニジン(C(NH2)3Cl)又はトリフレート塩、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム、塩化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、臭化ジメチルジヘキサデシルアンモニウム、並びに塩化ジ(水素化タロー)ジメチルアンモニウム(例えば、Arquad 2HT-75、Akzo Nobel)が挙げられる。
【0038】
考えられるアニオン性界面活性剤としては、限定されないが、ポリアクリル酸アンモニウム(例えば、DARVAN 821A)、変性水中ポリアクリル酸(例えば、SOKALAN CP10S)、ホスフェートポリエーテルエステル(例えば、TRITON H-55)、デシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸(DDPA)、テトラデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリ(アクリル酸ナトリウム塩)、ナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテル、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジシクロヘキシルスルホコハク酸ナトリウム塩、7-エチル-2-メチル-4-ウンデシル硫酸ナトリウム(Tergitol4)、SODOSIL RM02、及びホスフェートフルオロ界面活性剤、例えば、Zonyl FSJ及びZONYL(登録商標)URが挙げられる。
【0039】
両性イオン性界面活性剤としては、限定されないが、アセチレンジオール又は変性アセチレンジオール(例えば、SURFONYL(登録商標)504)、コカミドプロピルベタイン、エチレンオキシドアルキルアミン(AOA-8、Sanyo)、N,N-ジメチルドデシルアミンN-オキシド、コカミドプロピオン酸ナトリウム(LebonApl-D、Sanyo)、3-(N,N-ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホネート、及び(3-(4-ヘプチル)フェニル-3-ヒドロキシプロピル)ジメチルアンモニオプロパンスルホネートが挙げられる。好ましくは、少なくとも1つの界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルホスホン酸、ドデシルホスホネート、TRITON X-100、SOKALAN CP10S、PEG400、及びPLURONIC F-127を含む。
【0040】
存在する場合、界面活性剤の量は、濃縮物の全体重量に対して、約0.001~約1wt%、好ましくは約0.1~約1wt%の範囲であることができる。代替的に、幾つかの用途について、存在する場合は、1つ又は複数の界面活性剤が、組成物の約0.1~約15wt%、又は組成物の約0.1~約10wt%、又は約0.5~約5wt%、又は約0.1~約1wt%、約0.5~5wt%を含むと考えられる。代替的な実施形態において、組成物の全体重量に対する組成物中の界面活性剤の重量パーセントは、以下:0.1、0.5、1、5、10及び15から選択される始点及び終点を有する任意の範囲内であることができる。
【0041】
幾つかの実施形態において、本発明の組成物は、上で挙げた界面活性剤のいずれか又は全てを含まないか又は実質的に含まない。
【0042】
腐食防止剤(任意)
本発明の組成物は、任意選択で、少なくとも1つの腐食防止剤を含む。腐食防止剤は、エッチングされる基材表面上にさらされた任意の金属、特に銅、又は非金属と反応して、表面を不動態化し、洗浄中の過剰なエッチングを防止する働きをする。
【0043】
同様の用途のために、当技術分野において公知の如何なる腐食防止剤を使用することができる。腐食防止剤の例としては、芳香族ヒドロキシル化合物、アセチレンアルコール、カルボキシル基含有有機化合物及びその無水物、並びにトリアゾール化合物が挙げられる。
【0044】
例示の芳香族ヒドロキシル化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、1,2,4-ベンゼントリオール、サリチルアルコール、p-ヒドロキシベンジルアルコール、o-ヒドロキシベンジルアルコール、p-ヒドロキシフェニルアルコール、p-アミノフェノール、m-アミノフェノール、ジアミノフェノール、アミノレゾルシノール、p-ヒドロキシ安息香酸、o-ヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、及び3,5-ジヒドロキシ安息香酸が挙げられる。
【0045】
例示のアセチレンアルコールとしては、2-ブチン-1,4-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、及び2,5-ジメチル-3-ヘキシン2,5-ジオールが挙げられる。
【0046】
例示のカルボキシル基含有有機化合物及びその無水物としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、フタル酸、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、グリコール酸、乳酸、マレイン酸、無水酢酸、及びサリチル酸が挙げられる。
【0047】
例示のトリアゾール化合物としては、ベンゾトリアゾール、o-トリルトリアゾール、m-トリルトリアゾール、p-トリルトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール、及びジヒドロキシプロピルベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0048】
例示の実施形態において、腐食防止剤は、ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、アミノベンゾトリアゾール、D-フルクトース、t-ブチルカテコール、L-アスコルビン酸、バニリン、サリチル酸、ジエチルヒドロキシアミン、及びポリ(エチレンイミン)の1つ又は複数を含む。
【0049】
他の実施形態において、腐食防止剤はトリアゾールであり、ベンゾトリアゾール、o-トリルトリアゾール、m-トリルトリアゾール、及びp-トリルトリアゾールの少なくとも1つである。
【0050】
多くの用途について、存在する場合は、腐食防止剤は、組成物の約0.1~約15wt%を含み、好ましくは、腐食防止剤は、組成物の約0.1~約10wt%、好ましくは約0.5~約5wt%、最も好ましくは約0.1~約1wt%、又は約0.5~約5wt%を含むと考えられる。
【0051】
幾つかの実施形態において、本発明の組成物は、上で挙げた腐食防止剤のいずれか又は全てを含まないか又は実質的に含まない。
【0052】
他の任意の成分
本発明のエッチング組成物はまた、以下の添加剤:キレート剤、化学改質剤、染料、殺生物剤、及び他の添加剤のうち1つ又は複数を含むことができる。1つ又は複数の添加剤は、それらが組成物の性能に悪影響を与えない程度で加えることができる。
【0053】
エッチング組成物中で使用することができる他の任意の成分は、金属キレート剤である。それは、溶液中で金属を保持し、金属残留物の溶解を促進する組成物の能力を向上させるために機能することができる。この目的のために有用なキレート剤の典型的な例は、以下の有機酸:エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ブチレンジアミンテトラ酢酸、(1,2-シクロへキシレンジアミン)テトラ酢酸(CyDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DETPA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、(ヒドロキシエチル)エチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)、N,N,N’,N’-エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン)酸(EDTMP)、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸(TTHA)、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン-N,N,N’,N’-テトラ酢酸(DHPTA)、メチルイミノジ酢酸、プロピレンジアミンテトラ酢酸、ニトロトリ酢酸(NTA)、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、糖酸、グリセリン酸、シュウ酸、フタル酸、マレイン酸、マンデル酸、マロン酸、乳酸、サリチル酸、没食子酸プロピル、ピロガロール、8-ヒドロキシキノリン、及びシステインである。好ましいキレート剤は、アミノカルボン酸、例えば、EDTA、CyDTA及びアミノホスホン酸、例えば、EDTMP、並びにそれらの異性体及び塩である。
【0054】
存在する場合、キレート剤は、組成物の約0.1~約10wt%の量、好ましくは約0.5~約5wt%の量で、組成物中に存在すると考えられる。
【0055】
幾つかの実施形態において、本発明の組成物は、組成物に加えられる上で挙げたキレート剤のいずれか又は全てを含まないか又は実質的に含まない。
【0056】
染料、殺生物剤などのような他の一般的に公知の成分は、従来の量で、例えば、全体で組成物の約5wt%の量で、洗浄組成物中に含ませることができる。
【0057】
染料、殺生物剤などのような他の一般的に公知の成分は、従来の量で、例えば、全体で組成物の約5wt%の量で、洗浄組成物中に含ませることができる。
【0058】
本発明のエッチング溶液組成物は、典型的に、室温において、全ての固形物が水系媒体中で溶解するまで、ベッセル中で成分を混合することで調製される。
【0059】
方法
別の態様において、リン酸及びヒドロキシル基含有溶媒を含むか、それらから本質的になるか又はそれらからなる組成物中で、窒化ケイ素及び二酸化ケイ素を含む複合半導体デバイスをエッチングすることで、複合半導体デバイスにおいて二酸化ケイ素に対する窒化ケイ素のエッチ速度を選択的に向上するための方法が提供される。方法は、窒化ケイ素及び二酸化ケイ素を含む複合半導体デバイスを、リン酸及びヒドロキシル基含有溶媒を含むか、それらから本質的になるか又はそれらからなる組成物と接触させる工程と、窒化ケイ素が少なくとも部分的に除去された後に複合半導体デバイスをリンスする工程とを含む。追加の乾燥工程をまた、方法に含めることができる。「少なくとも部分的に除去された」とは、材料の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%が除去されたことを意味する。最も好ましくは、本発明の組成物を使用して少なくとも80%が除去される。
【0060】
接触工程は、任意の適切な手段、例えば浸漬、噴霧、又は単一ウエハプロセスにより行うことができる。接触工程中の組成物の温度は、好ましくは約100~200℃、より好ましくは約150~180℃である。
【0061】
好ましい実施形態において、本発明の組成物を用いて観測されるエッチ選択性は、約50~500以上、より好ましくは約100~500、最も好ましくは約125~500である。
【0062】
接触工程の後は、任意のリンス工程である。リンス工程は、任意の適切な手段、例えば、浸漬又は噴霧技術によって脱イオン水で基材をリンスすることにより行うことができる。好ましい実施形態において、リンス工程は、脱イオン水と、例えばイソプロピルアルコールのような有機溶媒との混合物を用いて行うことができる。
【0063】
接触工程及び任意のリンス工程の後は、任意の乾燥工程であり、それは任意の適切な手段、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)蒸気乾燥、加熱又は求心力により行うことができる。
【0064】
特徴及び利点は、以下に記載される例示の例によってより十分に示される。
【実施例】
【0065】
洗浄組成物を調製する一般的な手順
本例の対象である全ての組成物を、1”テフロン(登録商標)コーティング撹拌棒を用いて、250mLビーカー中で成分を混合することで調製した。典型的に、ビーカーに最初に加えた材料は、脱イオン(DI)水であった。次に、典型的に、リン酸を加えて、その後ヒドロキシル基含有溶媒を加えた。
【0066】
基材の組成
本例で用いられる各20mm×20mm試験クーポンは、シリコン基材上に窒化ケイ素Si3N4の層を含んでいた。比較例は、シリコン基材上に酸化ケイ素SiO2の層を含んでいた。
【0067】
処理条件
エッチング試験を、400rpmに設置された1/2”径のテフロン(登録商標)撹拌棒を用いて、250mlビーカー中で100gのエッチング組成物を使用して行った。エッチング組成物を、ホットプレート上で約160℃の温度に加熱した。試験クーポンを、撹拌しながら約20分間の間、組成物中に浸漬した。
【0068】
次いで、断片を、DI水浴又は噴霧で3分間リンスして、次にろ過窒素を使用して乾燥した。窒化ケイ素及び酸化ケイ素のエッチ速度を、エッチングの前後の厚さの変化から評価し、分光偏光解析法(MG-1000、Nano-View Co.,Ltd.,South Korea)で測定した。典型的な初期層厚さは、Si3N4については4395Å、SiO2については229Åであった。
【0069】
例セット1
それぞれが、60wt%のリン酸と、それぞれ30容量%の(1)DMSO(33wt%)、(2)スルホラン(37.8wt%)、(3)プロピレングリコール(PG)(31.2wt%)、及び(4)ジプロピレングリコールメチルエーテル(PGME)(28.5wt%)とを含む、4つの水性エッチング組成物を調製した。組成物の残部は水であった。1つの組成物を上で説明したように作ったが、溶媒は含まなかった(「n.a」)。その組成物は、85wt%のリン酸を含み、残部は水であった。
【0070】
図1及び
図2を参照すると、DMSOを追加したことにより、選択性の変化なく、Si
3N
4及びSiO
2両方のエッチ速度が低減された。スルホランの追加により、SiO
2のエッチ速度が低減され、選択性が54に増加した。それぞれが-OH基を含むPG及びDPGMEの追加により、SiO
2のエッチング速度が大きく抑制され、それぞれ選択性が104及び137に大きく増加した。しかしながら、PG及びDPGMEを加えた場合は、エッチング液が加熱後に粘性を有していた。
【0071】
例セット2
この例セットにおいては、溶媒の量を変更した。それぞれが60wt%(30容積%)の溶媒と、76.5wt%(10容積%)のリン酸と、それぞれ10容積%又は30容積%の(1)プロピレングリコール(PG)(11wt%(10容積%)、33wt%(30容積%))及び(2)ジプロピレングリコールメチルエーテル(PGME)(9.5wt%(10容積%)、28.5wt%(30容積%))とを含む、4つの水性エッチング組成物を調製した。組成物の残部は水であった。1つの組成物を上で説明したように作ったが、溶媒は含まなかった(「n.a」)。
【0072】
図3及び
図4を参照すると、SiO
2のエッチングの減少が、30容積%を追加したものに比べ、10容積%の追加したものの方が少なかった。Si
3N
4のエッチングは有意に影響を受けなかったため、エッチ選択性は、ただの85wt%リン酸よりは高いが、30容量%のPG及びDPGMEを追加したものより極めて低かった。組成物中で使用する溶媒の量を10容積%に低減したが、エッチング溶液は、それでも加熱後に粘性を有していた。
【0073】
例セット3
別の点の比較として、PGは、10容積%(10.4wt%)でのより低いSiO2のエッチング速度に対して、DPGMEに比べて効果的だったため、HFを加えて、PGの存在下でエッチ速度が増加するかを確かめた。
【0074】
図5及び
図6を参照すると、HF含有組成物のエッチ選択性は、PGの存在下で15.4から19.7に増加したが、これはそれほど効果的ではなかった。しかしながら、全体として、PG/H
3PO
4エッチング組成物にHFを追加したことで、HFが組成物の10容積%(10.4wt%)で存在していた場合には56から19まで、組成物の30容積%(31.2wt%)で存在していた場合には104から20まで、選択性が大きく低減された。
【0075】
前述の説明は、主に例示することを目的としている。本発明は、その例示の実施形態に関連して示されそして説明されてきたが、当業者は、形態及びその細部における前述及び様々な他の変更、省略及び追加を、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明において行うことができることが理解されるべきである。
【0076】
本発明の具体的な態様が以下に示される。
1.マイクロ電子デバイスから、酸化ケイ素に対して窒化ケイ素を選択的に除去するのに適したエッチング溶液であって、
水と、
リン酸溶液(水性)と、
ヒドロキシル基含有溶媒とを含むエッチング溶液。
2.前記ヒドロキシル基含有溶媒が、アルカンジオール又はポリオール、グリコール、アルコキシアルコール、飽和脂肪族一価アルコール、不飽和非芳香族一価アルコール、及び環構造を含有するアルコールからなる群より選択される、態様1に記載のエッチング溶液。
3.前記ヒドロキシル基含有溶媒がアルカンジオール又はポリオールであり、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、及びピナコールからなる群より選択される、態様1又は2に記載のエッチング溶液。
4.前記ヒドロキシル基含有溶媒がグリコールであり、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、及びテトラエチレングリコールからなる群より選択される、態様1~3のいずれか1つに記載のエッチング溶液。
5.前記ヒドロキシル基含有溶媒がアルコキシアルコールであり、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、1-メトキシ-2-ブタノール、及びグリコールモノエーテルからなる群より選択される、態様1~4のいずれか1つに記載のエッチング溶液。
6.前記ヒドロキシル基含有溶媒が飽和脂肪族一価アルコールであり、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、2-ペンタノール、t-ペンチルアルコール、及び1-ヘキサノールからなる群より選択される、態様1~5のいずれか1つに記載のエッチング溶液。
7.前記ヒドロキシル基含有溶媒が不飽和非芳香族一価アルコールであり、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、2-ブテニルアルコール、3-ブテニルアルコール、及び4-ペンテン-2-オールからなる群より選択される、態様1~6のいずれか1つに記載のエッチング溶液。
8.前記ヒドロキシル基含有溶媒がグリコールモノエーテルであり、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-メトキシ-1-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、2-エトキシ-1-プロパノール、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、及びジエチレングリコールモノベンジルエーテルからなる群より選択される、態様1~7のいずれか1つに記載のエッチング溶液。
9.前記ヒドロキシル基含有溶媒が環構造を含有するアルコールであり、アルファ-テルピネオール、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、及び1,3-シクロペンタンジオールからなる群より選択される、態様1~8のいずれか1つに記載のエッチング溶液。
10.前記ヒドロキシル基含有溶媒が、前記組成物の約0.5~約59.5wt%の量で存在している、態様1~9のいずれか1つに記載のエッチング溶液。
11.前記ヒドロキシル基含有溶媒が、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(DPGME)である、態様1~10のいずれか1つに記載のエッチング溶液。
12.前記ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(DPGME)が、約1~約50wt%の量で存在している、態様11に記載のエッチング溶液。
13.窒化ケイ素及び二酸化ケイ素を含む複合半導体デバイス上で、二酸化ケイ素に対する窒化ケイ素のエッチ速度を選択的に向上する方法であって、
窒化ケイ素及び二酸化ケイ素を含む複合半導体デバイスを、リン酸及びヒドロキシル基含有溶媒を含む水性組成物に接触させる接触工程と、
窒化ケイ素が少なくとも部分的に除去された後に前記複合半導体デバイスをリンスする工程とを含み、酸化ケイ素に対する窒化ケイ素のエッチ選択性が約50~約500である、方法。
14.前記半導体デバイスを乾燥する工程をさらに含む、態様13に記載の方法。
15.酸化ケイ素に対する窒化ケイ素のエッチ選択性が約100~約500である、態様13又は14に記載の方法。
16.酸化ケイ素に対する窒化ケイ素のエッチ選択性が約125~約500である、態様13~15のいずれか1つに記載の方法。
17.前記接触工程が、約100~約200℃の温度で行われる、態様13~16のいずれか1つに記載の方法。
18.前記ヒドロキシル基含有溶媒が、アルカンジオール又はポリオール、グリコール、アルコキシアルコール、飽和脂肪族一価アルコール、不飽和非芳香族一価アルコール、及び環構造を含有するアルコールからなる群より選択される、態様13~17のいずれか1つに記載の方法。
19.前記ヒドロキシル基含有溶媒がアルカンジオール又はポリオールであり、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、及びピナコールからなる群より選択される、態様18に記載の方法。
20.前記ヒドロキシル基含有溶媒がグリコールであり、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、及びテトラエチレングリコールからなる群より選択される、態様18に記載の方法。
21.前記ヒドロキシル基含有溶媒がアルコキシアルコールであり、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、1-メトキシ-2-ブタノール、及びグリコールモノエーテルからなる群より選択される、態様18に記載の方法。
22.前記ヒドロキシル基含有溶媒が飽和脂肪族一価アルコールであり、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、2-ペンタノール、t-ペンチルアルコール、及び1-ヘキサノールからなる群より選択される、態様18に記載の方法。
23.前記ヒドロキシル基含有溶媒が不飽和非芳香族一価アルコールであり、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、2-ブテニルアルコール、3-ブテニルアルコール、及び4-ペンテン-2-オールからなる群より選択される、態様18に記載の方法。
24.前記ヒドロキシル基含有溶媒がグリコールモノエーテルであり、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-メトキシ-1-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、2-エトキシ-1-プロパノール、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、及びジエチレングリコールモノベンジルエーテルからなる群より選択される、態様13~23のいずれか1つに記載の方法。
25.前記ヒドロキシル基含有溶媒が環構造を含有するアルコールであり、アルファ-テルピネオール、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、及び1,3-シクロペンタンジオールからなる群より選択される、態様18~24のいずれか1つに記載の方法。
26.前記ヒドロキシル基含有溶媒が、前記組成物の約0.5~約59.5wt%の量で存在している、態様13~25のいずれか1つに記載の方法。
27.前記ヒドロキシル基含有溶媒が、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(DPGME)である、態様13~26のいずれか1つに記載の方法。
28.前記ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(DPGME)が、約1~約50wt%の量で存在している、態様13~27のいずれか1つに記載の方法。