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特許7015295感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20220126BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20220126BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20220126BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220126BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
G03F7/004 503A
G03F7/039 601
G03F7/038 601
G03F7/20 521
C09K3/00 K
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019505763
(86)(22)【出願日】2018-02-05
(86)【国際出願番号】 JP2018003737
(87)【国際公開番号】W WO2018168252
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2019-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2017047525
(32)【優先日】2017-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】小島 雅史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 研由
(72)【発明者】
【氏名】浅川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】崎田 享平
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/101339(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/116915(WO,A1)
【文献】特開平10-010715(JP,A)
【文献】特開2012-194292(JP,A)
【文献】国際公開第2011/030737(WO,A1)
【文献】特開2014-126767(JP,A)
【文献】特開2018-049177(JP,A)
【文献】国際公開第2018/116916(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
G03F 7/20
C09K 3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性光線又は放射線の照射により下記一般式(I)で表される酸を発生する化合物を含有する、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】

(I)
一般式(I)中、
は、水素原子、又は有機基を表す。
は、有機基を表す。
は、シアノ基又はニトロ基を表す。
は、-CO-O-、-CO-、-CO-S-、-CO-NR-、-SO-、-SO-、-O-、及び-S-から選択される2価の連結基を表す。Rは、水素原子又は炭化水素基を表す。
lは、0又は1を表す。
mは、1又は2を表す。
nは、1を表す。
但し、l+m+n=3であり、m+n=2又は3である。
なお、X、R、及びXが複数存在する場合、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい
【請求項2】
前記一般式(I)で表される酸が、下記一般式(II)で表される酸である、請求項1に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化2】

(II)
一般式(II)中、
、R、X、及びXは、前記一般式(I)中のR、R、X、及びXと同義である。
mは、1を表し、nは、1を表す。
【請求項3】
前記Rが、水素原子である、請求項1又は2に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
活性光線又は放射線の照射により下記一般式(I)で表される酸を発生する化合物を含有する、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化3】

(I)
一般式(I)中、
は、水素原子を表す。
は、有機基を表す。
は、シアノ基又はニトロ基を表す。
は、-CO-O-、-CO-、-CO-S-、-CO-NR-、-SO-、-SO-、-O-、及び-S-から選択される2価の連結基を表す。Rは、水素原子又は炭化水素基を表す。
lは、0又は1を表す。
mは、0~2の整数を表す。
nは、1又は2を表す。
但し、l+m+n=3であり、m+n=2又は3である。
なお、X、R、及びXが複数存在する場合、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい
【請求項5】
前記Xが、-CO-O-、又は-CO-である、請求項1~4のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項6】
前記Rが、脂肪族炭化水素基である、請求項1~5のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項7】
前記Rのうち少なくとも1つが、脂環構造を含有する脂肪族炭化水素基である、請求項6に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項8】
更に、酸の作用により分解して極性が増大する基を有する樹脂を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成されたレジスト膜。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いてレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
前記レジスト膜を露光する露光工程と、
露光された前記レジスト膜を、現像液を用いて現像する現像工程と、
を含む、パターン形成方法。
【請求項11】
請求項10に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IC(Integrated Circuit、集積回路)及びLSI(Large Scale Integrated circuit、大規模集積回路)等の半導体デバイスの製造プロセスにおいては、感放射線性樹脂組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。
例えば、特許文献1では、放射線の照射を受けて開裂するモノスルホン酸型の酸発生剤を含有する感放射線性組成物を開示している。酸発生剤の開裂により生じた酸は、組成物中の樹脂成分の脱保護反応を起こす、又は上記樹脂成分の架橋反応を生起させる機能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2011/030737号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、特許文献1に具体的に記載された酸発生剤を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物について検討したところ、形成されるパターンは、パターン線幅の揺らぎ(LWR(line width roughness))が必ずしも十分ではなく、更に改善する余地があることを明らかとした。
【0005】
そこで、本発明は、パターンを形成したときのパターン線幅の揺らぎ(LWR)が小さい感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたレジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が特定の構造を有する酸発生剤を含有することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記目的を達成できることを見出した。
【0007】
〔1〕 活性光線又は放射線の照射により後述する一般式(I)で表される酸を発生する化合物を含有する、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔2〕 上記一般式(I)で表される酸が、後述する一般式(II)で表される酸である、〔1〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔3〕 上記一般式(I)で表される酸が、後述する一般式(III)で表される酸である、〔1〕又は〔2〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔4〕 上記Rが、水素原子である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔5〕 上記Xが、-CO-O-、又は-CO-である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔6〕 上記Rが、脂肪族炭化水素基である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔7〕 上記Rのうち少なくとも1つが、脂環構造を含有する脂肪族炭化水素基である、〔6〕に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔8〕 更に、酸の作用により分解して極性が増大する基を有する樹脂を含有する、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔9〕 〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成されたレジスト膜。
〔10〕 〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いてレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
上記レジスト膜を露光する露光工程と、
露光された上記レジスト膜を、現像液を用いて現像する現像工程と、
を含む、パターン形成方法。
〔11〕 〔10〕に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パターンを形成したときのパターン線幅の揺らぎ(LWR)が小さい感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたレジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されない。
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光:Extreme Ultraviolet)、X線、及び電子線(EB:Electron Beam)等を意味する。本明細書中における「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。
本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、及びX線等による露光のみならず、電子線、及びイオンビーム等の粒子線による描画も含む。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0010】
本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表す。
本明細書において、樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分散度(分子量分布ともいう)(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー製HLC-8120GPC)によるGPC測定(溶媒:テトラヒドロフラン、流量(サンプル注入量):10μL、カラム:東ソー社製TSK gel Multipore HXL-M、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率検出器(Refractive Index Detector))によるポリスチレン換算値として定義される。
【0011】
本明細書中における基(原子団)の表記について、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さない基と共に置換基を有する基をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。また、本明細書中における「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
【0012】
また、本明細書において、「置換基を有していてもよい」というときの置換基の種類、置換基の位置、及び、置換基の数は特に限定されない。置換基の数は例えば、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上であってもよい。置換基の例としては水素原子を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、例えば、以下の置換基群Tから選択できる。
(置換基T)
置換基Tとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基及びtert-ブトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基及びp-トリルオキシ基等のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基及びフェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基及びベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基及びメトキサリル基等のアシル基;メチルスルファニル基及びtert-ブチルスルファニル基等のアルキルスルファニル基;フェニルスルファニル基及びp-トリルスルファニル基等のアリールスルファニル基;アルキル基;シクロアルキル基;アリール基;ヘテロアリール基;水酸基;カルボキシ基;ホルミル基;スルホ基;シアノ基;アルキルアミノカルボニル基;アリールアミノカルボニル基;スルホンアミド基;シリル基;アミノ基;モノアルキルアミノ基;ジアルキルアミノ基;アリールアミノ基;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0013】
〔感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物〕
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう。)は、活性光線又は放射線の照射により後述する一般式(I)で表される酸を発生する化合物(以下、単に「特定化合物」とも称する)を含有する。
後述する一般式(I)で表される酸を発生する化合物の特徴点は、発生する酸(つまり、一般式(I)で表される酸)の酸強度が強い点にある。
上記一般式(I)で表される酸は、スルホン酸イオンが置換する炭素原子上に、特定の電子求引性基であるX及び/又はXを有する。この構造的要因により、上記一般式(I)で表される酸は酸強度が高いものとなる。この結果として、上記特定化合物を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、露光により生じる酸分解性樹脂の脱保護反応の際の脱保護のムラが抑制され、形成されるパターンのLWRが優れるものと推測される。
また、本発明の他の特徴点として、上記一般式(I)で表される酸が、フッ素原子に代わる強い電子求引性基(X及び/又はX)を用いた分子設計により酸強度の向上を達成している点にある。つまり、上記一般式(I)で表される酸はフッ素原子を必ずしも含有する必要がない。この結果として、上記特定化合物を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、環境への負荷が小さい利点を有する。
【0014】
以下、本発明の組成物に含まれる成分について詳述する。なお、本発明の組成物は、いわゆるレジスト組成物であり、ポジ型のレジスト組成物であっても、ネガ型のレジスト組成物であってもよい。また、アルカリ現像用のレジスト組成物であっても、有機溶剤現像用のレジスト組成物であってもよい。
本発明の組成物は、典型的には、化学増幅型のレジスト組成物である。
【0015】
<活性光線又は放射線の照射により式(I)で表される酸を発生する化合物>
本発明の組成物は、活性光線又は放射線の照射により式(I)で表される酸を発生する化合物を含有する。
特定化合物は、低分子化合物の形態であってもよく、ポリマーの形態であってもよい。
特定化合物が、低分子化合物の形態である場合、分子量は3000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1000以下が更に好ましい。
特定化合物が、ポリマーの形態である場合、その構造は特に限定されず、例えば、後述する<樹脂(A)>の一部に組み込まれた構造が挙げられる。特定化合物が、ポリマーの形態である場合、その重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、好ましくは1,000~200,000であり、より好ましくは2,000~20,000である。
以下、一般式(I)で表される酸について詳述する。
(一般式(I)で表される酸)
【0016】
【化1】

(I)
【0017】
上記一般式(I)中、
は、水素原子、又は有機基を表す。
は、有機基を表す。
は、シアノ基又はニトロ基を表す。
は、-CO-O-、-CO-、-CO-S-、-CO-NR-、-SO-、-SO-、-O-、及び-S-から選択される2価の連結基を表す。Rは、水素原子又は炭化水素基を表す。
lは、0又は1を表す。
m、及びnは、それぞれ独立に、0~2の整数を表す。
但し、l+m+n=3であり、m+n=2又は3である。
なお、X、R、及びXが複数存在する場合、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
【0018】
上記一般式(I)中、上記Rで表される有機基としては、特に限定されず、例えば、炭化水素基が挙げられる。上記炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基のいずれであってもよい。
上記脂肪族炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、例えば、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、及びアダマンチル基等が挙げられる。
また、上記芳香族炭化水素基としては、例えば、炭素数6~20の芳香族炭化水素基等が挙げられ、具体的には、フェニル基等が挙げられる。
これらの基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、上述した置換基群Tから選択できる。
【0019】
なかでも、上記Rとしては、LWR性能により優れる点で、水素原子が好ましい。
【0020】
上記一般式(I)中、上記Rで表される有機基としては、特に限定されず、例えば、炭化水素基が挙げられる。上記炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基のいずれであってもよい。上記Rとしては、なかでも、LWR性能により優れる点で、脂肪族炭化水素基が好ましく、脂環構造を含有する脂肪族炭化水素基(例えば、炭素数1~20の環状アルキル基)がより好ましい。
上記脂肪族炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、例えば、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
上記炭素数1~20の脂肪族炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、及び、下記一般式(IA)で表される基が挙げられる。
【0021】
*-L-L (IA)
【0022】
上記一般式(IA)中、Lは、炭素数1~5の直鎖状アルキレン基を表し、Lは、炭素数3~12の環状アルキル基を表し、*は、結合位置を表す。
上記Lとしては、炭素数1~3の直鎖状アルキレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
上記Lとしては、炭素数6~12の環状アルキル基が好ましく、炭素数8~10の環状アルキル基(例えば、アダマンチル基)がより好ましい。
【0023】
また、上記芳香族炭化水素基としては、例えば、炭素数6~20の芳香族炭化水素基等が挙げられ、具体的には、フェニル基等が挙げられる。
【0024】
上記脂肪族炭化水素基及び上記芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、上述した置換基群Tから選択できる。
【0025】
上記一般式(I)中、Xは、シアノ基又はニトロ基を表し、なかでも、LWR性能により優れる点で、シアノ基が好ましい。
【0026】
上記一般式(I)中、Xは、-CO-O-、-CO-、-CO-S-、-CO-NR-、-SO-、-SO-、-O-、及び-S-から選択される2価の連結基を表す。なお、本明細書において表記される2価の連結基(例えば、-CO-O-)の結合方向は特に制限されず、例えば、上記一般式(I)中のXが-CO-O-である場合、炭素原子側に結合している位置を*1、R側に結合している位置を*2とすると、Xは*1-CO-O-*2であってもよく、*1-O-CO-*2であってもよい。
上記Xは、なかでも、LWR性能により優れる点で、-CO-O-、又は-CO-が好ましい。
また、上記Rは、水素原子又は炭化水素基を表す。上記炭化水素基としては、例えば、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素数1~3のアルキル基が更に好ましい。
【0027】
上記一般式(I)中、lは、0又は1を表し、LWR性能により優れる点で、1が好ましい。
上記一般式(I)中、m、及びnは、それぞれ独立に、0~2の整数を表す。mとしては、LWR性能により優れる点で、1又は2が好ましく、2がより好ましい。nとしては、LWR性能により優れる点で、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
上記一般式(I)中、l+m+n=3であり、m+n=2又は3である。なかでも、LWR性能により優れる点で、m+n=2が好ましい。
【0028】
上記一般式(I)で表される酸は、LWR性能により優れる点で、一般式(II)で表される酸であることが好ましい。
【0029】
(一般式(II)で表される酸)
【化2】

(II)
【0030】
上記一般式(II)中、R、R、X、及びXは、上記一般式(I)中のR、R、X、及びXと同義であり、好適態様も同じである。
なお、X、R、及びXが複数存在する場合、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
上記一般式(II)中、m、及びnは、それぞれ独立に、0~2の整数を表し、m+n=2である。mとしては、LWR性能により優れる点で、1又は2が好ましく、2がより好ましい。nとしては、LWR性能により優れる点で、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0031】
上記一般式(I)で表される酸は、LWR性能により優れる点で、一般式(III)で表される酸であることが好ましい。
【0032】
(一般式(III)で表される酸)
【化3】

(III)
上記一般式(III)中、R、R、及びXは、上記一般式(I)中のR、R、及びXと同義である。
一般式(III)中、複数存在するR同士、及び複数存在するX同士は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。なかでも、LWR性能により優れる点で、複数存在するRのうち少なくとも1つが、脂環構造を含有する脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数1~20の環状アルキル基、又は上記一般式(IA)で表される基であることがより好ましい。
【0033】
以下、式(I)で表される酸の具体例を示すが、これに限定されない。
【0034】
【化4】
【0035】
【化5】
【0036】
【化6】
【0037】
活性光線又は放射線の照射により式(I)で表される酸を発生する化合物としては、その構造は特に限定されず、スルホニウム塩及びヨードニウム塩といったオニウム塩等のイオン性構造を有する化合物、又は、オキシムエステル及びイミドエステル等の非イオン性化合物構造を有する化合物が好ましい。オニウム塩としては、スルホニウム塩がより好ましい。
【0038】
・イオン性構造を有する化合物
活性光線又は放射線の照射により一般式(I)で表される酸を発生する化合物としては、下記一般式(IX)で表される化合物が好ましい。
【0039】
【化7】

(IX)
【0040】
上記一般式(IX)中、R、R、X、X、l、m、及びnは、それぞれ上述した一般式(I)中のR、R、X、X、l、m、及びnと同義であり、Mは、1価のカチオンを表す。
【0041】
上記式(IX)中、Mで表される1価のカチオンとしては、例えば、下記式(ZI)及び(ZII)で表されるカチオンが挙げられる。
【0042】
【化8】
【0043】
上記一般式(ZI)において、
201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1~30であり、1~20が好ましい。
また、R201~R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、又は、カルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)及び-CH-CH-O-CH-CH-が挙げられる。
【0044】
なお、特定化合物は、一般式(ZI)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR201~R203の少なくとも1つが、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR201~R203の少なくとも1つと、単結合又は連結基を介して結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0045】
201、R202及びR203の有機基としては、アリール基(炭素数6~15が好ましい)、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基(炭素数1~10が好ましい)、及びシクロアルキル基(炭素数3~15が好ましい)等が挙げられる。
201、R202及びR203のうち、少なくとも1つがアリール基であることが好ましく、3つ全てがアリール基であることがより好ましい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等の他に、インドール残基、及びピロール残基等のヘテロアリール基も挙げられる。
【0046】
201、R202及びR203としてのこれらアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基は更に置換基を有していてもよい。その置換基としては、ニトロ基、フッ素原子等のハロゲン原子、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~15)、アリール基(好ましくは炭素数6~14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~7)、アシル基(好ましくは炭素数2~12)、及びアルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2~7)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
また、R201、R202及びR203から選ばれる2つが、単結合又は連結基を介して結合していてもよい。連結基としてはアルキレン基(炭素数1~3が好ましい)、-O-、-S-、-CO-、及び、-SO-等が挙げられるが、これらに限定されない。
201、R202及びR203のうち少なくとも1つがアリール基でない場合の好ましい構造としては、特開2004-233661号公報の段落0046~0047、特開2003-35948号公報の段落0040~0046、米国特許出願公開第2003/0224288A1号明細書に一般式(I-1)~(I-70)として例示されている化合物、並びに米国特許出願公開第2003/0077540A1号明細書に一般式(IA-1)~(IA-54)、及び一般式(IB-1)~(IB-24)として例示されている化合物等のカチオン構造が挙げられる。
【0048】
一般式(ZI)で表されるカチオンの好ましい例として、以下に説明する一般式(ZI-3)又は(ZI-4)で表されるカチオンが挙げられる。先ず、一般式(ZI-3)で表されるカチオンについて説明する。
【0049】
【化9】
【0050】
上記一般式(ZI-3)中、
は、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又はアルケニル基を表し、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、RとRが互いに連結して環を形成してもよく、
とRは、互いに連結して環を形成してもよく、
及びRは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、又は、アルコキシカルボニルシクロアルキル基を表し、RとRが互いに連結して環を形成してもよく、この環構造は酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケトン基、エーテル結合、エステル結合、又は、アミド結合を含んでいてもよい。
【0051】
としてのアルキル基は、好ましくは炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、アルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を有していてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、及び、n-オクタデシル基等の直鎖状アルキル基、並びに、イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、及び、2-エチルヘキシル基等の分岐鎖状アルキル基が挙げられる。Rのアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基を有するアルキル基としては、シアノメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、メトキシカルボニルメチル基、及びエトキシカルボニルメチル基等が挙げられる。
【0052】
としてのシクロアルキル基は、好ましくは炭素数3~20のシクロアルキル基であり、環内に酸素原子又は硫黄原子を有していてもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、及びアダマンチル基等が挙げられる。Rのシクロアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基の例としては、アルキル基、及びアルコキシ基が挙げられる。
【0053】
としてのアルコキシ基は、好ましくは炭素数1~20のアルコキシ基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、t-ブチルオキシ基、t-アミルオキシ基、及びn-ブチルオキシ基等が挙げられる。Rのアルコキシ基は置換基を有していてもよく、置換基の例としては、アルキル基、及びシクロアルキル基が挙げられる。
【0054】
としてのシクロアルコキシ基は、好ましくは炭素数3~20のシクロアルコキシ基であり、シクロヘキシルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、及びアダマンチルオキシ基等が挙げられる。Rのシクロアルコキシ基は置換基を有していてもよく、置換基の例としては、アルキル基、及びシクロアルキル基が挙げられる。
【0055】
としてのアリール基は、好ましくは炭素数6~14のアリール基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びビフェニル基等が挙げられる。Rのアリール基は置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、及びアリールチオ基が挙げられる。置換基がアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はシクロアルコキシ基の場合、上述したRとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基及びシクロアルコキシ基と同様のものが挙げられる。
【0056】
としてのアルケニル基は、ビニル基、及びアリル基が挙げられる。
【0057】
及びRは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表し、RとRが互いに連結して環を形成してもよい。なお、R及びRのうち少なくとも1つは、アルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基を表すことが好ましい。R及びRで表されるアルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基の具体例及び好ましい例としては、Rについて前述した具体例及び好ましい例と同様のものが挙げられる。RとRが互いに連結して環を形成する場合、R及びRに含まれる環の形成に寄与する炭素原子の数の合計は、4~7であることが好ましく、4又は5であることがより好ましい。
【0058】
とRは、互いに連結して環を形成してもよい。RとRが互いに連結して環を形成する場合、Rがアリール基(好ましくは置換基を有してもよいフェニル基又はナフチル基)であり、Rが炭素数1~4のアルキレン基(好ましくはメチレン基又はエチレン基)であることが好ましく、好ましい置換基としては、上述したRとしてのアリール基が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。RとRが互いに連結して環を形成する場合における他の形態として、Rがビニル基であり、Rが炭素数1~4のアルキレン基であることも好ましい。
【0059】
及びRにより表されるアルキル基は、好ましくは炭素数1~15のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、及びエイコシル基等が挙げられる。
【0060】
及びRにより表されるシクロアルキル基は、好ましくは炭素数3~20のシクロアルキル基であり、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、及びアダマンチル基等が挙げられる。
【0061】
及びRにより表されるアルケニル基は、好ましくは炭素数2~30のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、及びスチリル基が挙げられる。
【0062】
及びRにより表されるアリール基としては、例えば、炭素数6~20のアリール基が好ましく、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アズレニル基、アセナフチレニル基、フェナンスレニル基、ペナレニル基、フェナントラセニル基、フルオレニル基、アントラセニル基、ピレニル基、及びベンゾピレニル基等が挙げられる。なかでも、フェニル基、又はナフチル基がより好ましく、フェニル基が更に好ましい。
【0063】
及びRにより表される2-オキソアルキル基及びアルコキシカルボニルアルキル基のアルキル基部分としては、例えば、先にR及びRとして列挙したものが挙げられる。
【0064】
及びRにより表される2-オキソシクロアルキル基及びアルコキシカルボニルシクロアルキル基のシクロアルキル基部分としては、例えば、先にR及びRとして列挙したものが挙げられる。
【0065】
一般式(ZI-3)で表されるカチオンは、好ましくは、以下の一般式(ZI-3a)及び(ZI-3b)で表されるカチオンである。
【0066】
【化10】
【0067】
一般式(ZI-3a)及び(ZI-3b)において、R、R及びRは、上記一般式(ZI-3)で定義した通りである。
【0068】
Yは、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表し、酸素原子又は窒素原子が好ましい。m、n、p及びqは整数を意味し、0~3が好ましく、1~2がより好ましく、1が更に好ましい。SとYを連結するアルキレン基は置換基を有してもよく、好ましい置換基としてはアルキル基が挙げられる。
【0069】
は、Yが窒素原子である場合には1価の有機基を表し、Yが酸素原子又は硫黄原子である場合には存在しない。Rは、電子求引性基を含む基であることが好ましく、下記一般式(ZI-3a-1)~(ZI-3a-4)で表される基であることが特に好ましい。
【0070】
【化11】
【0071】
上記一般式(ZI-3a-1)~(ZI-3a-3)において、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、好ましくはアルキル基である。Rについてのアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基の具体例及び好ましい例としては、上記一般式(ZI-3)におけるRについて前述した具体例及び好ましい例と同様のものが挙げられる。
上記一般式(ZI-3a-1)~(ZI-3a-4)において、*は一般式(ZI-3a)で表される化合物中のYとしての窒素原子に接続する結合手を表す。
【0072】
Yが窒素原子である場合、Rは、-SO-Rで表される基であることが好ましい。Rは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、アルキル基が好ましい。Rについてのアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基の具体例及び好ましい例としては、Rについて前述した具体例及び好ましい例と同様のものが挙げられる。
【0073】
一般式(ZI-3)で表されるカチオンは、特に好ましくは、以下の一般式(ZI-3a’)及び(ZI-3b’)で表されるカチオンである。
【0074】
【化12】
【0075】
一般式(ZI-3a’)及び(ZI-3b’)において、R、R、R、Y及びRは、上記一般式(ZI-3a)及び(ZI-3b)で定義した通りである。
【0076】
次に、一般式(ZI-4)で表されるカチオンについて説明する。
【0077】
【化13】
【0078】
一般式(ZI-4)中、
13は、水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
14は複数存在する場合は各々独立して、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
15は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。2個のR15が互いに結合して環を形成してもよく、環を構成する原子として、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子等のヘテロ原子を含んでもよい。これらの基は置換基を有してもよい。
lは0~2の整数を表す。
rは0~8の整数を表す。
【0079】
一般式(ZI-4)において、R13、R14及びR15のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状であり、炭素数1~10のものが好ましい。
13、R14及びR15のシクロアルキル基としては、単環又は多環のシクロアルキル基が挙げられる。
13及びR14のアルコキシ基としては、直鎖状又は分岐鎖状であり、炭素数1~10のものが好ましい。
13及びR14のアルコキシカルボニル基としては、直鎖状又は分岐鎖状であり、炭素数2~11のものが好ましい。
13及びR14のシクロアルキル基を有する基としては、単環又は多環のシクロアルキル基を有する基が挙げられる。これらの基は、置換基を更に有していてもよい。
14のアルキルカルボニル基のアルキル基としては、上述したR13~R15としてのアルキル基と同様の具体例が挙げられる。
14のアルキルスルホニル基及びシクロアルキルスルホニル基としては、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよく、炭素数1~10のものが好ましい。
【0080】
上記各基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、及びアルコキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0081】
2個のR15が互いに結合して形成してもよい環構造としては、2個のR15が一般式(ZI-4)中の硫黄原子と共に形成する5員又は6員の環が挙げられ、より好ましくは5員の環(即ち、テトラヒドロチオフェン環又は2,5-ジヒドロチオフェン環)が挙げられる。上記環は、アリール基又はシクロアルキル基と縮環していてもよい。この2個のR15は置換基を有してもよく、置換基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、及びアルコキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。上記環構造に対する置換基は、複数個存在してもよく、また、それらが互いに結合して環を形成してもよい。
【0082】
一般式(ZI-4)におけるR15としては、メチル基、エチル基、アリール基、及び2個のR15が互いに結合して硫黄原子と共にテトラヒドロチオフェン環構造を形成する2価の基等が好ましく、2個のR15が互いに結合して硫黄原子と共にテトラヒドロチオフェン環構造を形成する2価の基がより好ましい。
【0083】
13及びR14が有し得る置換基としては、水酸基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又はハロゲン原子(特に、フッ素原子)が好ましい。
lとしては、0又は1が好ましく、1がより好ましい。
rとしては、0~2が好ましい。
【0084】
以上説明した一般式(ZI-3)又は(ZI-4)で表されるカチオン構造の具体例としては、上述した、特開2004-233661号公報、特開2003-35948号公報、米国特許出願公開第2003/0224288A1号明細書、及び米国特許出願公開第2003/0077540A1号明細書に例示されている化合物等のカチオン構造、特開2011-53360号公報の段落0046、0047、0072~0077、及び0107~0110に例示されている化学構造等におけるカチオン構造、並びに、特開2011-53430号公報の段落0135~0137、0151、及び0196~0199に例示されている化学構造等におけるカチオン構造等が挙げられる。
【0085】
次に、一般式(ZII)について説明する。
一般式(ZII)中、R204、R205は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
204及びR205のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基としては、前述の化合物(ZI)におけるR201~R203のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基と同様である。
【0086】
なかでも、R204及びR205のアリール基としては、フェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。R204及びR205のアリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造を有するアリール基の骨格としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、及びベンゾチオフェン等が挙げられる。
【0087】
また、R204及びR205のアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基)、及び、炭素数3~10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びノルボルニル基)が挙げられる。
【0088】
204、R205のアリール基、アルキル基、及び、シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。R204、R205のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、前述の化合物(ZI)におけるR201~R203のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基が有していてもよいものが挙げられ、例えば、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~15)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、及びフェニルチオ基等が挙げられる。
一般式(ZII)で表されるカチオンの具体例を示す。
【0089】
【化14】
【0090】
一般式(ZI)で表されるカチオンの好ましい例としては、以下に説明する一般式(7)で表されるカチオンも挙げられる。
【0091】
【化15】
【0092】
式中、Aは硫黄原子を表す。
mは1又は2を表し、nは1又は2を表す。但し、m+n=3である。
Rは、アリール基を表す。
は、プロトンアクセプター性官能基で置換されたアリール基を表す。
プロトンアクセプター性官能基とは、プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基であって、例えば、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基、又は、π共役に寄与しない非共有電子対をもった窒素原子を有する官能基を意味する。π共役に寄与しない非共有電子対を有する窒素原子とは、例えば、下記式に示す部分構造を有する窒素原子である。
【0093】
【化16】
【0094】
プロトンアクセプター性官能基の好ましい部分構造として、例えば、クラウンエーテル構造、アザクラウンエーテル構造、1~3級アミン構造、ピリジン構造、イミダゾール構造、及びピラジン構造等が挙げられる。
【0095】
プロトンアクセプター性官能基を有する化合物(PA)は、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する。ここで、プロトンアクセプター性の低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性への変化とは、プロトンアクセプター性官能基にプロトンが付加することに起因するプロトンアクセプター性の変化であり、具体的には、プロトンアクセプター性官能基を有する化合物(PA)とプロトンからプロトン付加体が生成する時、その化学平衡に於ける平衡定数が減少することを意味する。
プロトンアクセプター性は、pH測定を行うことによって確認できる。
一般式(7)で表されるカチオンの具体例を示す。なお、下記式においてEtはエチル基を表す。
【0096】
【化17】
【0097】
・非イオン性化合物構造を有する化合物
活性光線又は放射線の照射により一般式(I)で表される酸を発生する化合物としては、非イオン性化合物構造を有するものであってもよく、例えば、下記一般式(ZV)又は(ZVI)で表される化合物が挙げられる。
【0098】
【化18】
【0099】
一般式(ZV)及び(ZVI)中、
209及びR210は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、シアノ基又はアリール基を表す。R209、R210のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基としては、前述の化合物(ZI)におけるR201~R203のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基として説明した各基と同様である。R209、R210のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としても、前述の化合物(ZI)におけるR201~R203のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0100】
A’は、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
A’としてのアルキレン基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1~8であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、及びオクチレン基等が挙げられる。
A’としてのアルケニレン基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数2~6であり、例えば、エテニレン基、プロペニレン基、及びブテニレン基等が挙げられる。
A’としてのアリーレン基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数6~15であり、例えば、フェニレン基、トリレン基、及びナフチレン基等が挙げられる。
【0101】
A’が有してもよい置換基としては、例えば、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、水酸基、及びカルボキシ基等の活性水素を有するもの、更に、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び沃素原子)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、及びブトキシ基等)、チオエーテル基、アシル基(アセチル基、プロパノイル基、及びベンゾイル基等)、アシロキシ基(アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、及びベンゾイルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、及びプロポキシカルボニル基等)、シアノ基、及びニトロ基等が挙げられる。また、アリーレン基については更にアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等)が挙げられる。
【0102】
Rzは、一般式(I)で表される酸のHが解離した構造を表し、下記一般式(IY)で表される。
【0103】
【化19】

(IY)
【0104】
一般式(IY)中、R、R、X、X、l、m、及びnは、それぞれ上述した一般式(I)中のR、R、X、X、l、m、及びnと同義である。*は、一般式(ZV)又は(ZVI)で表される化合物残基との結合部を表す。
【0105】
一般式(ZV)又は(ZVI)で表される化合物中のRz以外の残基の具体例を以下に示す。具体例中の*は、上記一般式(IY)の*との結合部を表す。また、Meはメチル基を表す。
【0106】
【化20】
【0107】
【化21】
【0108】
以下、活性光線又は放射線の照射により一般式(I)で表される酸を発生する化合物の具体例を挙げる。なお、活性光線又は放射線の照射により一般式(I)で表される酸を発生する化合物は、下記具体例に限定されない。
【0109】
【化22】
【0110】
【化23】
【0111】
活性光線又は放射線の照射により一般式(I)で表される酸を発生する化合物は、公知の合成方法によって合成できる。
【0112】
上述した活性光線又は放射線の照射により一般式(I)で表される酸を発生する化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、活性光線又は放射線の照射により一般式(I)で表される酸を発生する化合物以外の公知の酸発生剤を組み合わせて用いてもよい。
公知の酸発生剤を用いる場合、例えば、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、及び、マイクロレジスト等に用いられている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物を適宜に選択して用いることができる。
【0113】
本発明の組成物中、特定化合物を含む酸発生剤の合計含有量は、組成物の全固形分を基準として、0.1~20質量%が好ましく、0.5~20質量%がより好ましく、5~20質量%が更に好ましい。
本発明の組成物が2種以上の酸発生剤を含有する場合は、酸発生剤の総含有量が上記範囲内であることが好ましい。
また、上述のとおり活性光線又は放射線の照射により一般式(I)で表される酸を発生する化合物と他の酸発生剤とを併用する場合、上述した活性光線又は放射線の照射により一般式(I)で表される酸を発生する化合物の含有量は、使用する酸発生剤の全質量に対して、25質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、85質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が特に好ましく、95質量%以上が最も好ましい。
【0114】
<樹脂(A)>
本発明の組成物は、酸の作用により分解して極性が増大する基(以下、「酸分解性基」とも言う)を有する樹脂(以下、「酸分解性樹脂」又は「樹脂(A)」ともいう)を含有することが好ましい。
この場合、本発明のパターン形成方法において、典型的には、現像液としてアルカリ現像液を採用した場合には、ポジ型パターンが好適に形成され、現像液として有機系現像液を採用した場合には、ネガ型パターンが好適に形成される。
【0115】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
【0116】
樹脂(A)としては、公知の樹脂を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落<0055>~<0191>、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落<0035>~<0085>、及び米国特許出願公開2016/0147150A1号明細書の段落<0045>~<0090>に開示された公知の樹脂を樹脂(A)として好適に使用できる。
【0117】
酸分解性基は、極性基が酸の作用により分解して脱離する基(脱離基)で保護された構造を有することが好ましい。
極性基としては、カルボキシ基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及びトリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基(2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中で解離する基)、並びにアルコール性水酸基等が挙げられる。
【0118】
なお、アルコール性水酸基とは、炭化水素基に結合した水酸基であって、芳香環上に直接結合した水酸基(フェノール性水酸基)以外の水酸基をいい、水酸基としてα位がフッ素原子等の電子求引性基で置換された脂肪族アルコール(例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール基等)は除く。アルコール性水酸基としては、pKa(酸解離定数)が12以上20以下の水酸基であることが好ましい。
【0119】
好ましい極性基としては、カルボキシ基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、及びスルホン酸基が挙げられる。
【0120】
酸分解性基として好ましい基は、これらの基の水素原子を酸の作用により脱離する基(脱離基)で置換した基である。
酸の作用により脱離する基(脱離基)としては、例えば、-C(R36)(R37)(R38)、-C(R36)(R37)(OR39)、及び-C(R01)(R02)(OR39)等が挙げられる。
式中、R36~R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
01及びR02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
【0121】
36~R39、R01及びR02のアルキル基は、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、へキシル基、及びオクチル基等が挙げられる。
36~R39、R01及びR02のシクロアルキル基は、単環でも、多環でもよい。単環のシクロアルキル基としては、炭素数3~8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。多環のシクロアルキル基としては、炭素数6~20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α-ピネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、及びアンドロスタニル基等が挙げられる。なお、シクロアルキル基中の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
36~R39、R01及びR02のアリール基は、炭素数6~10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等が挙げられる。
36~R39、R01及びR02のアラルキル基は、炭素数7~12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、及びナフチルメチル基等が挙げられる。
36~R39、R01及びR02のアルケニル基は、炭素数2~8のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、及びシクロへキセニル基等が挙げられる。
36とR37とが互いに結合して形成される環としては、シクロアルキル基(単環又は多環)であることが好ましい。シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又はノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
【0122】
酸分解性基として、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、又は第3級のアルキルエステル基等が好ましく、アセタール基、又は第3級アルキルエステル基がより好ましい。
【0123】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位として、下記一般式(AI)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0124】
【化24】
【0125】
一般式(AI)において、
Xaは、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基を表す。
Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
Rx~Rxは、それぞれ独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Rx~Rxのいずれか2つが結合して環構造を形成してもよく、形成しなくてもよい。
【0126】
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、-COO-Rt-、及び-O-Rt-等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基、シクロアルキレン基又はアリーレン基を表す。なお、-COO-は、-CO-O-と同義である。
Tは、単結合又は-COO-Rt-が好ましい。Rtは、炭素数1~5の鎖状アルキレン基が好ましく、-CH-、-(CH-、又は-(CH-がより好ましい。Tは、単結合であることがさらに好ましい。
【0127】
Xaは、水素原子又はアルキル基であることが好ましい。
Xaのアルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、水酸基、及びハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)が挙げられる。
Xaのアルキル基は、炭素数1~4が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基及びトリフルオロメチル基等が挙げられる。Xaのアルキル基は、メチル基であることが好ましい。
【0128】
Rx、Rx及びRxのアルキル基としては、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、又はt-ブチル基等が好ましい。アルキル基の炭素数としては、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。Rx、Rx及びRxのアルキル基は、炭素間結合の一部が二重結合であってもよい。
Rx、Rx及びRxのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又はノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
【0129】
Rx、Rx及びRxの2つが結合して形成する環構造としては、シクロペンチル環、シクロヘキシル環、シクロヘプチル環、及びシクロオクタン環等の単環のシクロアルカン環、又はノルボルナン環、テトラシクロデカン環、テトラシクロドデカン環、及びアダマンタン環等の多環のシクロアルキル環が好ましい。なかでも、シクロペンチル環、シクロヘキシル環、又はアダマンタン環がより好ましい。Rx、Rx及びRxの2つが結合して形成する環構造としては、下記に示す構造も好ましい。
【0130】
【化25】
【0131】
以下に一般式(AI)で表される繰り返し単位に相当するモノマーの具体例を挙げるが、本発明は、これらの具体例に限定されない。下記の具体例は、一般式(AI)におけるXaがメチル基である場合に相当するが、Xaは、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基に任意に置換できる。
【0132】
【化26】
【0133】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位として、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0336>~<0369>に記載の繰り返し単位を有することも好ましい。
【0134】
また、樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位として、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0363>~<0364>に記載された酸の作用により分解してアルコール性水酸基を生じる基を含む繰り返し単位を有していてもよい。
【0135】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位を、1種単独で含んでもよく、2種以上を併用して含んでもよい。
【0136】
樹脂(A)に含まれる酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量(酸分解性基を有する繰り返し単位が複数存在する場合はその合計)は、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、10~90モル%が好ましく、20~80モル%がより好ましく、30~70モル%が更に好ましい。
【0137】
樹脂(A)は、ラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
【0138】
ラクトン構造又はスルトン構造としては、ラクトン構造又はスルトン構造を有していればよく、5~7員環ラクトン構造又は5~7員環スルトン構造が好ましい。なかでも、ビシクロ構造若しくはスピロ構造を形成する形で5~7員環ラクトン構造に他の環構造が縮環しているもの、又は、ビシクロ構造若しくはスピロ構造を形成する形で5~7員環スルトン構造に他の環構造が縮環しているもの、がより好ましい。
樹脂(A)は、下記一般式(LC1-1)~(LC1-21)のいずれかで表されるラクトン構造、又は、下記一般式(SL1-1)~(SL1-3)のいずれかで表されるスルトン構造を有する繰り返し単位を有することが更に好ましい。また、ラクトン構造又はスルトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。好ましい構造としては、一般式(LC1-1)、一般式(LC1-4)、一般式(LC1-5)、一般式(LC1-8)、一般式(LC1-16)、若しくは一般式(LC1-21)で表されるラクトン構造、又は、一般式(SL1-1)で表されるスルトン構造が挙げられる。
【0139】
【化27】
【0140】
ラクトン構造部分又はスルトン構造部分は、置換基(Rb)を有していても、有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb)としては、炭素数1~8のアルキル基、炭素数4~7のシクロアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数2~8のアルコキシカルボニル基、カルボキシ基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、及び酸分解性基等が挙げられ、炭素数1~4のアルキル基、シアノ基、又は酸分解性基が好ましい。nは、0~4の整数を表す。nが2以上の時、複数存在する置換基(Rb)は、同一でも異なっていてもよい。また、複数存在する置換基(Rb)同士が結合して環を形成してもよい。
【0141】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(III)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0142】
【化28】
【0143】
上記一般式(III)中、
Aは、エステル結合(-COO-で表される基)又はアミド結合(-CONH-で表される基)を表す。
nは、-R-Z-で表される構造の繰り返し数であり、0~5の整数を表し、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。nが0である場合、-R-Z-は存在せず、単結合となる。
は、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はその組み合わせを表す。Rが複数個ある場合、Rは、各々独立に、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はその組み合わせを表す。
Zは、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表す。Zが複数個ある場合には、Zは、各々独立に、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表す。
は、ラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基を表す。
は、水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基(好ましくはメチル基)を表す。
【0144】
のアルキレン基又はシクロアルキレン基は置換基を有してもよい。
Zとしては、エーテル結合、又はエステル結合が好ましく、エステル結合がより好ましい。
【0145】
樹脂(A)は、カーボネート構造を有する繰り返し単位を有していてもよい。カーボネート構造は、環状炭酸エステル構造であることが好ましい。
環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位は、下記一般式(A-1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0146】
【化29】
【0147】
一般式(A-1)中、R は、水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基(好ましくはメチル基)を表す。
nは0以上の整数を表す。
は、置換基を表す。nが2以上の場合、R は、各々独立して、置換基を表す。
Aは、単結合、又は2価の連結基を表す。
Zは、式中の-O-C(=O)-O-で表される基と共に単環構造又は多環構造を形成する原子団を表す。
【0148】
樹脂(A)は、ラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位として、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0370>~<0414>に記載の繰り返し単位を有することも好ましい。
【0149】
樹脂(A)は、ラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位を、1種単独で有していてよく、2種以上を併用して有していてもよい。
【0150】
以下に一般式(III)で表される繰り返し単位に相当するモノマーの具体例、及び一般式(A-1)で表される繰り返し単位に相当するモノマーの具体例を挙げるが、本発明は、これらの具体例に限定されない。下記の具体例は、一般式(III)におけるR及び一般式(A-1)におけるR がメチル基である場合に相当するが、R及びR は、水素原子、ハロゲン原子、又は1価の有機基に任意に置換できる。
【0151】
【化30】
【0152】
上記モノマーの他に、下記に示すモノマーも樹脂(A)の原料として好適に用いられる。
【0153】
【化31】
【0154】
樹脂(A)に含まれるラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位の含有量(ラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位が複数存在する場合はその合計)は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、5~70モル%が好ましく、10~65モル%がより好ましく、20~60モル%が更に好ましい。
【0155】
樹脂(A)は、極性基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
極性基としては、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、及びフッ素化アルコール基等が挙げられる。
極性基を有する繰り返し単位としては、極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位が好ましい。また、極性基を有する繰り返し単位は、酸分解性基を有さないことが好ましい。極性基で置換された脂環炭化水素構造における、脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、又はノルボルナン基が好ましい。
【0156】
以下に極性基を有する繰り返し単位に相当するモノマーの具体例を挙げるが、本発明は、これらの具体例に限定されない。
【0157】
【化32】

【0158】
この他にも、極性基を有する繰り返し単位の具体例としては、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0415>~<0433>に開示された繰り返し単位が挙げられる。
樹脂(A)は、極性基を有する繰り返し単位を、1種単独で有していてよく、2種以上を併用して有していてもよい。
極性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、5~40モル%が好ましく、5~30モル%がより好ましく、10~25モル%が更に好ましい。
【0159】
樹脂(A)は、更に、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位を有していてもよい。酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位は、脂環炭化水素構造を有することが好ましい。酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位としては、例えば、米国特許出願公開2016/0026083A1号明細書の段落<0236>~<0237>に記載された繰り返し単位が挙げられる。酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位に相当するモノマーの好ましい例を以下に示す。
【0160】
【化33】
【0161】
この他にも、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位の具体例としては、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0433>に開示された繰り返し単位が挙げられる。
樹脂(A)は、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位を、1種単独で有していてもよく、2種以上を併用して有していてもよい。
酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、5~40モル%が好ましく、5~30モル%がより好ましく、5~25モル%が更に好ましい。
【0162】
樹脂(A)は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性、標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、又は、更にレジストの一般的な必要な特性である解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を有していてもよい。
このような繰り返し構造単位としては、所定の単量体に相当する繰り返し構造単位を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0163】
所定の単量体としては、例えばアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、及びビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等が挙げられる。
その他にも、上記種々の繰り返し構造単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物を用いてもよい。
樹脂(A)において、各繰り返し構造単位の含有モル比は、種々の性能を調節するために適宜設定される。
【0164】
本発明の組成物がArF露光用であるとき、ArF光の透過性の観点から、樹脂(A)は実質的には芳香族基を有さないことが好ましい。より具体的には、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、芳香族基を有する繰り返し単位が5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、理想的には0モル%、すなわち芳香族基を有する繰り返し単位を有さないことが更に好ましい。また、樹脂(A)は単環又は多環の脂環炭化水素構造を有することが好ましい。
【0165】
樹脂(A)は、繰り返し単位のすべてが(メタ)アクリレート系繰り返し単位で構成されることが好ましい。この場合、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位のすべてがアクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位とアクリレート系繰り返し単位とによるもののいずれのものでも用いることができるが、アクリレート系繰り返し単位が樹脂(A)の全繰り返し単位に対して50モル%以下であることが好ましい。
【0166】
本発明の組成物がKrF露光用、EB露光用又はEUV露光用であるとき、樹脂(A)は芳香族炭化水素環基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。樹脂(A)がフェノール性水酸基を含む繰り返し単位を有することがより好ましい。フェノール性水酸基を含む繰り返し単位としては、ヒドロキシスチレン繰り返し単位、又は、ヒドロキシスチレン(メタ)アクリレート繰り返し単位が挙げられる。
本発明の組成物がKrF露光用、EB露光用又はEUV露光用であるとき、樹脂(A)は、フェノール性水酸基の水素原子が酸の作用により分解して脱離する基(脱離基)で保護された構造を有することが好ましい。
樹脂(A)に含まれる芳香族炭化水素環基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して、30~100モル%が好ましく、40~100モル%がより好ましく、50~100モル%が更に好ましい。
【0167】
樹脂(A)の重量平均分子量は、1,000~200,000が好ましく、2,000~20,000がより好ましく、3,000~15,000が更に好ましく、3,000~11,000が特に好ましい。分散度(Mw/Mn)は、通常1.0~3.0であり、1.0~2.6が好ましく、1.0~2.0がより好ましく、1.1~2.0が更に好ましい。
【0168】
樹脂(A)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物中、樹脂(A)の含有量は、全固形分中に対して、一般的に20質量%以上の場合が多く、40質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましく、80質量%以上が特に好ましい。上限は特に制限されず、99.5質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく、97質量%以下が更に好ましい。
【0169】
<樹脂(B)>
本発明の組成物が後述する架橋剤(G)を含む場合、本発明の組成物はフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂(B)(以下、「樹脂(B)」ともいう)を含むことが好ましい。樹脂(B)は、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
この場合、典型的には、ネガ型パターンが好適に形成される。
架橋剤(G)は、樹脂(B)に担持された形態であってもよい。
樹脂(B)は、前述した酸分解性基を有していてもよい。
【0170】
樹脂(B)が有するフェノール性水酸基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(II)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0171】
【化34】
【0172】
一般式(II)中、
は、水素原子、アルキル基(好ましくはメチル基)、又はハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)を表す。
B’は、単結合又は2価の連結基を表す。
Ar’は、芳香環基を表す。
mは1以上の整数を表す。
樹脂(B)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物の全固形分中の樹脂(B)の含有量は、一般的に30質量%以上である場合が多く、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。上限は特に制限されず、99質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。
樹脂(B)としては、米国特許出願公開2016/0282720A1号明細書の段落<0142>~<0347>に開示された樹脂を好適に挙げられる。
【0173】
本発明の組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)の両方を含んでいてもよい。
【0174】
<酸拡散制御剤(D)>
本発明の組成物は、酸拡散制御剤(D)を含むことが好ましい。酸拡散制御剤(D)は、露光時に酸発生剤等から発生する酸をトラップし、余分な発生酸による、未露光部における酸分解性樹脂の反応を抑制するクエンチャーとして作用する。例えば、塩基性化合物(DA)、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)、酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(DD)、又はカチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)等を酸拡散制御剤として使用できる。本発明の組成物においては、公知の酸拡散制御剤を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0627>~<0664>、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落<0095>~<0187>、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落<0403>~<0423>、及び、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落<0259>~<0328>に開示された公知の化合物を酸拡散制御剤(D)として好適に使用できる。
【0175】
塩基性化合物(DA)としては、下記式(A)~(E)で示される構造を有する化合物が好ましい。
【0176】
【化35】
【0177】
一般式(A)及び(E)中、
200、R201及びR202は、同一でも異なってもよく、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)又はアリール基(炭素数6~20)を表す。R201とR202は、互いに結合して環を形成してもよい。
203、R204、R205及びR206は、同一でも異なってもよく、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基を表す。
【0178】
一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、置換基を有していても無置換であってもよい。
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1~20のアミノアルキル基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1~20のシアノアルキル基が好ましい。
一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0179】
塩基性化合物(DA)としては、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、又はピペリジン等が好ましく、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造若しくはピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、又は、水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアニリン誘導体等がより好ましい。
【0180】
活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)(以下、「化合物(DB)」ともいう。)は、プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、活性光線又は放射線の照射により分解して、プロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化する化合物である。
【0181】
プロトンアクセプター性官能基とは、プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基であって、例えば、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基、又は、π共役に寄与しない非共有電子対をもった窒素原子を有する官能基を意味する。π共役に寄与しない非共有電子対を有する窒素原子とは、例えば、下記式に示す部分構造を有する窒素原子である。
【0182】
【化36】
【0183】
プロトンアクセプター性官能基の好ましい部分構造として、例えば、クラウンエーテル構造、アザクラウンエーテル構造、1~3級アミン構造、ピリジン構造、イミダゾール構造、及びピラジン構造等が挙げられる。
【0184】
化合物(DB)は、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下若しくは消失し、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する。ここでプロトンアクセプター性の低下若しくは消失、又はプロトンアクセプター性から酸性への変化とは、プロトンアクセプター性官能基にプロトンが付加することに起因するプロトンアクセプター性の変化であり、具体的には、プロトンアクセプター性官能基を有する化合物(DB)とプロトンとからプロトン付加体が生成するとき、その化学平衡における平衡定数が減少することを意味する。
プロトンアクセプター性は、pH測定を行うことによって確認できる。
【0185】
活性光線又は放射線の照射により化合物(DB)が分解して発生する化合物の酸解離定数pKaは、pKa<-1を満たすことが好ましく、-13<pKa<-1を満たすことがより好ましく、-13<pKa<-3を満たすことが更に好ましい。
【0186】
酸解離定数pKaとは、水溶液中での酸解離定数pKaのことを表し、例えば、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に定義される。酸解離定数pKaの値が低いほど酸強度が大きいことを示す。水溶液中での酸解離定数pKaは、具体的には、無限希釈水溶液を用い、25℃での酸解離定数を測定することにより実測できる。あるいは、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求めることもできる。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示す。
【0187】
ソフトウェアパッケージ1: Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs)。
【0188】
本発明の組成物では、酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)を酸拡散制御剤として使用できる。
酸発生剤と、酸発生剤から生じた酸に対して相対的に弱酸である酸を発生するオニウム塩とを混合して用いた場合、活性光線性又は放射線の照射により酸発生剤から生じた酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると、塩交換により弱酸を放出して強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため、見かけ上、酸が失活して酸拡散の制御を行うことができる。
【0189】
酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩としては、下記一般式(d1-1)~(d1-3)で表される化合物が好ましい。
【0190】
【化37】
【0191】
式中、R51は置換基を有していてもよい炭化水素基であり、Z2cは置換基を有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基(ただし、Sに隣接する炭素にはフッ素原子は置換されていないものとする)であり、R52は有機基であり、Yは直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基又はアリーレン基であり、Rfはフッ素原子を含む炭化水素基であり、Mは各々独立に、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。
【0192】
として表されるスルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンの好ましい例としては、一般式(ZI)で例示したスルホニウムカチオン及び一般式(ZII)で例示したヨードニウムカチオンが挙げられる。
【0193】
酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)は、カチオン部位とアニオン部位を同一分子内に有し、かつ、カチオン部位とアニオン部位が共有結合により連結している化合物(以下、「化合物(DCA)」ともいう。)であってもよい。
化合物(DCA)としては、下記一般式(C-1)~(C-3)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0194】
【化38】
【0195】
一般式(C-1)~(C-3)中、
、R、及びRは、各々独立に炭素数1以上の置換基を表す。
は、カチオン部位とアニオン部位とを連結する2価の連結基又は単結合を表す。
-Xは、-COO、-SO 、-SO 、及び-N-Rから選択されるアニオン部位を表す。Rは、隣接するN原子との連結部位に、カルボニル基(-C(=O)-)、スルホニル基(-S(=O)-)、及びスルフィニル基(-S(=O)-)のうち少なくとも1つを有する1価の置換基を表す。
、R、R、R、及びLは、互いに結合して環構造を形成してもよい。また、一般式(C-3)において、R~Rのうち2つを合わせて1つの2価の置換基を表し、N原子と2重結合により結合していてもよい。
【0196】
~Rにおける炭素数1以上の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基、及びアリールアミノカルボニル基等が挙げられる。好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基である。
【0197】
2価の連結基としてのLは、直鎖若しくは分岐鎖状アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、及びこれらの2種以上を組み合わせてなる基等が挙げられる。Lは、好ましくは、アルキレン基、アリーレン基、エーテル結合、エステル結合、又はこれらの2種以上を組み合わせてなる基である。
【0198】
窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(DD)(以下、「化合物(DD)」ともいう。)は、酸の作用により脱離する基を窒素原子上に有するアミン誘導体であることが好ましい。
酸の作用により脱離する基としては、アセタール基、カルボネート基、カルバメート基、3級エステル基、3級水酸基、又はヘミアミナールエーテル基が好ましく、カルバメート基、又はヘミアミナールエーテル基がより好ましい。
化合物(DD)の分子量は、100~1000が好ましく、100~700がより好ましく、100~500が更に好ましい。
化合物(DD)は、窒素原子上に保護基を有するカルバメート基を有してもよい。カルバメート基を構成する保護基としては、下記一般式(d-1)で表される。
【0199】
【化39】
【0200】
一般式(d-1)において、
は、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~30)、アリール基(好ましくは炭素数3~30)、アラルキル基(好ましくは炭素数1~10)、又はアルコキシアルキル基(好ましくは炭素数1~10)を表す。Rは相互に連結して環を形成していてもよい。
が示すアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、各々独立に水酸基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基、アルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい。Rが示すアルコキシアルキル基についても同様である。
【0201】
としては、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基が好ましく、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はシクロアルキル基がより好ましい。
2つのRが相互に連結して形成する環としては、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環式炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。
一般式(d-1)で表される基の具体的な構造としては、米国特許公報US2012/0135348A1号明細書の段落<0466>に開示された構造が挙げられるが、これに限定されない。
【0202】
化合物(DD)は、下記一般式(6)で表される構造を有することが好ましい。
【0203】
【化40】
【0204】
一般式(6)において、
lは0~2の整数を表し、mは1~3の整数を表し、l+m=3を満たす。
は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。lが2のとき、2つのRは同じでも異なっていてもよく、2つのRは相互に連結して式中の窒素原子と共に複素環を形成していてもよい。この複素環には式中の窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。
は、上記一般式(d-1)におけるRと同義であり、好ましい例も同様である。
一般式(6)において、Rとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、各々独立にRとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基が置換されていてもよい基として前述した基と同様な基で置換されていてもよい。
【0205】
上記Rのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基(これらの基は、上記基で置換されていてもよい)の具体例としては、Rについて前述した具体例と同様な基が挙げられる。
本発明における特に好ましい化合物(DD)の具体例としては、米国特許出願公開2012/0135348A1号明細書の段落<0475>に開示された化合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0206】
カチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)(以下、「化合物(DE)」ともいう。)は、カチオン部に窒素原子を含む塩基性部位を有する化合物であることが好ましい。塩基性部位は、アミノ基であることが好ましく、脂肪族アミノ基であることがより好ましい。塩基性部位中の窒素原子に隣接する原子の全てが、水素原子又は炭素原子であることが更に好ましい。また、塩基性向上の観点から、窒素原子に対して、電子求引性の官能基(カルボニル基、スルホニル基、シアノ基、及びハロゲン原子等)が直結していないことが好ましい。
化合物(DE)の好ましい具体例としては、米国特許出願公開2015/0309408A1号明細書の段落<0203>に開示された化合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0207】
酸拡散制御剤(D)の好ましい例を以下に示す。
【0208】
【化41】
【0209】
【化42】
【0210】
【化43】
【0211】
本発明の組成物において、酸拡散制御剤(D)は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
組成物中、酸拡散制御剤(D)の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分を基準として、0.1~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましい。
【0212】
<疎水性樹脂(E)>
本発明の組成物は、疎水性樹脂(E)を含んでいてもよい。なお、疎水性樹脂(E)は、樹脂(A)及び樹脂(B)とは異なる樹脂であることが好ましい。
本発明の組成物が、疎水性樹脂(E)を含むことにより、感活性光線性又は感放射線性膜の表面における静的/動的な接触角を制御できる。これにより、現像特性の改善、アウトガスの抑制、液浸露光における液浸液追随性の向上、及び液浸欠陥の低減等が可能となる。
疎水性樹脂(E)は、レジスト膜の表面に偏在するように設計されることが好ましいが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性/非極性物質を均一に混合することに寄与しなくてもよい。
【0213】
疎水性樹脂(E)は、膜表層への偏在化の観点から、“フッ素原子”、“ケイ素原子”、及び“樹脂の側鎖部分に含有されたCH部分構造”からなる群から選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位を有する樹脂であることが好ましい。
疎水性樹脂(E)が、フッ素原子及び/又はケイ素原子を含む場合、疎水性樹脂(E)における上記フッ素原子及び/又はケイ素原子は、樹脂の主鎖中に含まれていてもよく、側鎖中に含まれていてもよい。
【0214】
疎水性樹脂(E)がフッ素原子を含む場合、フッ素原子を有する部分構造として、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又はフッ素原子を有するアリール基を有する樹脂であることが好ましい。
【0215】
疎水性樹脂(E)は、下記(x)~(z)の群から選ばれる基を少なくとも1つを有することが好ましい。
(x)酸基
(y)アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基(以下、極性変換基ともいう)
(z)酸の作用により分解する基
【0216】
酸基(x)としては、フェノール性水酸基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及びトリス(アルキルスルホニル)メチレン基等が挙げられる。
酸基としては、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホンイミド基、又はビス(アルキルカルボニル)メチレン基が好ましい。
【0217】
アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基(y)としては、例えば、ラクトン基、カルボン酸エステル基(-COO-)、酸無水物基(-C(O)OC(O)-)、酸イミド基(-NHCONH-)、カルボン酸チオエステル基(-COS-)、炭酸エステル基(-OC(O)O-)、硫酸エステル基(-OSOO-)、及びスルホン酸エステル基(-SOO-)等が挙げられ、ラクトン基又はカルボン酸エステル基(-COO-)が好ましい。
これらの基を含んだ繰り返し単位としては、例えば、樹脂の主鎖にこれらの基が直接結合している繰り返し単位であり、例えば、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルによる繰り返し単位等が挙げられる。この繰り返し単位は、これらの基が連結基を介して樹脂の主鎖に結合していてもよい。又は、この繰り返し単位は、これらの基を有する重合開始剤又は連鎖移動剤を重合時に用いて、樹脂の末端に導入されていてもよい。
ラクトン基を有する繰り返し単位としては、例えば、先に樹脂(A)の項で説明したラクトン構造を有する繰り返し単位と同様のものが挙げられる。
【0218】
アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基(y)を有する繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂(E)中の全繰り返し単位に対して、1~100モル%が好ましく、3~98モル%がより好ましく、5~95モル%が更に好ましい。
【0219】
疎水性樹脂(E)における、酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位は、樹脂(A)で挙げた酸分解性基を有する繰り返し単位と同様のものが挙げられる。酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位は、フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有していてもよい。酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂(E)中の全繰り返し単位に対して、1~80モル%が好ましく、10~80モル%がより好ましく、20~60モル%が更に好ましい。
疎水性樹脂(E)は、更に、上述した繰り返し単位とは別の繰り返し単位を有していてもよい。
【0220】
フッ素原子を含む繰り返し単位は、疎水性樹脂(E)中の全繰り返し単位に対して、10~100モル%が好ましく、30~100モル%がより好ましい。また、ケイ素原子を含む繰り返し単位は、疎水性樹脂(E)中の全繰り返し単位に対して、10~100モル%が好ましく、20~100モル%がより好ましい。
【0221】
一方、特に疎水性樹脂(E)が側鎖部分にCH部分構造を含む場合においては、疎水性樹脂(E)が、フッ素原子及びケイ素原子を実質的に含まない形態も好ましい。また、疎水性樹脂(E)は、炭素原子、酸素原子、水素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる原子のみによって構成された繰り返し単位のみで実質的に構成されることが好ましい。
【0222】
疎水性樹脂(E)の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、1,000~100,000が好ましく、1,000~50,000がより好ましい。
【0223】
疎水性樹脂(E)に含まれる残存モノマー及び/又はオリゴマー成分の合計含有量は、0.01~5質量%が好ましく、0.01~3質量%がより好ましい。また、分散度(Mw/Mn)は、1~5の範囲が好ましく、より好ましくは1~3の範囲である。
【0224】
疎水性樹脂(E)としては、公知の樹脂を、単独又はそれらの混合物として適宜に選択して使用できる。例えば、米国特許出願公開2015/0168830A1号明細書の段落<0451>~<0704>、及び、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落<0340>~<0356>に開示された公知の樹脂を疎水性樹脂(E)として好適に使用できる。また、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落<0177>~<0258>に開示された繰り返し単位も、疎水性樹脂(E)を構成する繰り返し単位として好ましい。
【0225】
疎水性樹脂(E)を構成する繰り返し単位に相当するモノマーの好ましい例を以下に示す。
【0226】
【化44】
【0227】
【化45】
【0228】
疎水性樹脂(E)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
表面エネルギーが異なる2種以上の疎水性樹脂(E)を混合して使用することが、液浸露光における液浸液追随性と現像特性の両立の観点から好ましい。
組成物中、疎水性樹脂(E)の含有量は、組成物中の全固形分に対し、0.01~10質量%が好ましく、0.05~8質量%がより好ましく、0.1~5質量%が更に好ましい。
【0229】
<溶剤(F)>
本発明の組成物は、溶剤を含んでいてもよい。
本発明の組成物においては、公知のレジスト溶剤を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0665>~<0670>、米国特許出願公開2015/0004544A1号明細書の段落<0210>~<0235>、米国特許出願公開2016/0237190A1号明細書の段落<0424>~<0426>、及び、米国特許出願公開2016/0274458A1号明細書の段落<0357>~<0366>に開示された公知の溶剤を好適に使用できる。
組成物を調製する際に使用できる溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4~10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4~10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及びピルビン酸アルキル等の有機溶剤が挙げられる。
【0230】
有機溶剤として、構造中に水酸基を有する溶剤と、水酸基を有さない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を有する溶剤、及び水酸基を有さない溶剤としては、前述の例示化合物を適宜選択できるが、水酸基を含む溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、又は乳酸アルキル等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、又は乳酸エチルがより好ましい。また、水酸基を有さない溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルキルアルコキシプロピオネート、環を有していてもよいモノケトン化合物、環状ラクトン、又は酢酸アルキル等が好ましく、これらのなかでも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルエトキシプロピオネート、2-ヘプタノン、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は酢酸ブチルがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、エチルエトキシプロピオネート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は2-ヘプタノンが更に好ましい。水酸基を有さない溶剤としては、プロピレンカーボネートも好ましい。
水酸基を有する溶剤と水酸基を有さない溶剤との混合比(質量比)は、1/99~99/1が好ましく、10/90~90/10がより好ましく、20/80~60/40がさらに好ましい。水酸基を有さない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が、塗布均一性の点で好ましい。
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含むことが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート単独溶剤でもよいし、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する2種類以上の混合溶剤でもよい。
【0231】
<架橋剤(G)>
本発明の組成物は、酸の作用により樹脂を架橋する化合物(以下、架橋剤(G)ともいう)を含んでいてもよい。架橋剤(G)としては、公知の化合物を適宜に使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0147154A1号明細書の段落<0379>~<0431>、及び、米国特許出願公開2016/0282720A1号明細書の段落<0064>~<0141>に開示された公知の化合物を架橋剤(G)として好適に使用できる。
架橋剤(G)は、樹脂を架橋しうる架橋性基を有している化合物であり、架橋性基としては、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、アシルオキシメチル基、アルコキシメチルエーテル基、オキシラン環、及びオキセタン環等が挙げられる。
架橋性基は、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、オキシラン環又はオキセタン環であることが好ましい。
架橋剤(G)は、架橋性基を2個以上有する化合物(樹脂も含む)であることが好ましい。
架橋剤(G)は、ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を有する、フェノール誘導体、ウレア系化合物(ウレア構造を有する化合物)又はメラミン系化合物(メラミン構造を有する化合物)であることがより好ましい。
架橋剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
架橋剤(G)の含有量は、レジスト組成物の全固形分に対して、1~50質量%が好ましく、3~40質量%が好ましく、5~30質量%が更に好ましい。
【0232】
<界面活性剤(H)>
本発明の組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤を含む場合、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(具体的には、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、又はフッ素原子とケイ素原子との両方を有する界面活性剤)が好ましい。
【0233】
本発明の組成物が界面活性剤を含むことにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源を使用した場合に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないパターンを得ることができる。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤として、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落<0276>に記載の界面活性剤が挙げられる。
また、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落<0280>に記載の、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用することもできる。
【0234】
これらの界面活性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.0001~2質量%が好ましく、0.0005~1質量%がより好ましい。
一方、界面活性剤の含有量が、組成物の全固形分に対して10ppm以上とすることにより、疎水性樹脂(E)の表面偏在性が上がる。それにより、感活性光線性又は感放射線性膜の表面をより疎水的にすることができ、液浸露光時の水追随性が向上する。
【0235】
(その他の添加剤)
本発明の組成物は、更に、酸増殖剤、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、アルカリ可溶性樹脂、溶解阻止剤、又は溶解促進剤等を含んでいてもよい。
【0236】
<調製方法>
本発明の組成物の固形分濃度は、1.0~10質量%が好ましく、2.0~5.7質量%がより好ましく、2.0~5.3質量%が更に好ましい。固形分濃度とは、組成物の総質量に対する、溶剤を除く他のレジスト成分の質量の質量百分率である。
【0237】
なお、本発明の組成物からなる感活性光線性又は感放射線性膜の膜厚は、解像力向上の観点から、90nm以下が好ましく、85nm以下がより好ましい。組成物中の固形分濃度を適切な範囲に設定して適度な粘度をもたせ、塗布性又は製膜性を向上させることにより、このような膜厚とすることができる。
【0238】
本発明の組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤、好ましくは上記混合溶剤に溶解し、これをフィルター濾過した後、所定の支持体(基板)上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは0.1μm以下が好ましく、0.05μm以下がより好ましく、0.03μm以下が更に好ましい。このフィルターは、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、又はナイロン製のものが好ましい。フィルター濾過においては、例えば日本国特許出願公開第2002-62667号明細書(特開2002-62667号公報)に開示されるように、循環的な濾過を行ってもよく、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して濾過を行ってもよい。また、組成物を複数回濾過してもよい。更に、フィルター濾過の前後で、組成物に対して脱気処理等を行ってもよい。
【0239】
<用途>
本発明の組成物は、活性光線又は放射線の照射により反応して性質が変化する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、本発明の組成物は、IC(Integrated Circuit)等の半導体製造工程、液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造、インプリント用モールド構造体の作製、その他のフォトファブリケーション工程、又は平版印刷版、若しくは酸硬化性組成物の製造に使用される感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。本発明において形成されるパターンは、エッチング工程、イオンインプランテーション工程、バンプ電極形成工程、再配線形成工程、及びMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等において使用できる。
【0240】
〔パターン形成方法〕
本発明は上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたパターン形成方法にも関する。以下、本発明のパターン形成方法について説明する。また、パターン形成方法の説明と併せて、本発明の感活性光線性又は感放射線性膜についても説明する。
【0241】
本発明のパターン形成方法は、
(i)上述した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によってレジスト膜(感活性光線性又は感放射線性膜)を支持体上に形成する工程(レジスト膜形成工程)、
(ii)上記レジスト膜を露光する(活性光線又は放射線を照射する)工程(露光工程)、及び、
(iii)上記露光されたレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程(現像工程)、
を有する。
【0242】
本発明のパターン形成方法は、上記(i)~(iii)の工程を含んでいれば特に限定されず、更に下記の工程を有していてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程における露光方法が、液浸露光であってもよい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程の前に、(iv)前加熱(PB:PreBake)工程を含むことが好ましい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程の後、かつ、(iii)現像工程の前に、(v)露光後加熱(PEB:Post Exposure Bake)工程を含むことが好ましい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程を、複数回含んでいてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(iv)前加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(v)露光後加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
【0243】
本発明のパターン形成方法において、上述した(i)成膜工程、(ii)露光工程、及び(iii)現像工程は、一般的に知られている方法により行うことができる。
また、必要に応じて、レジスト膜と支持体との間にレジスト下層膜(例えば、SOG(Spin On Glass)、SOC(Spin On Carbon)、及び、反射防止膜)を形成してもよい。レジスト下層膜を構成する材料としては、公知の有機系又は無機系の材料を適宜用いることができる。
レジスト膜の上層に、保護膜(トップコート)を形成してもよい。保護膜としては、公知の材料を適宜用いることができる。例えば、米国特許出願公開第2007/0178407号明細書、米国特許出願公開第2008/0085466号明細書、米国特許出願公開第2007/0275326号明細書、米国特許出願公開第2016/0299432号明細書、米国特許出願公開第2013/0244438号明細書、国際特許出願公開第2016/157988A号明細書に開示された保護膜形成用組成物を好適に使用できる。保護膜形成用組成物としては、上述した酸拡散制御剤を含むものが好ましい。
上述した疎水性樹脂を含有するレジスト膜の上層に保護膜を形成してもよい。
【0244】
支持体は、特に限定されず、IC等の半導体の製造工程、又は液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造工程のほか、その他のフォトファブリケーションのリソグラフィー工程等で一般的に用いられる基板を用いることができる。支持体の具体例としては、シリコン、SiO、及びSiN等の無機基板等が挙げられる。
【0245】
加熱温度は、(iv)前加熱工程及び(v)露光後加熱工程のいずれにおいても、70~130℃が好ましく、80~120℃がより好ましい。
加熱時間は、(iv)前加熱工程及び(v)露光後加熱工程のいずれにおいても、30~300秒が好ましく、30~180秒がより好ましく、30~90秒が更に好ましい。
加熱は、露光装置及び現像装置に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
【0246】
露光工程に用いられる光源波長に制限はなく、例えば、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極紫外光(EUV)、X線、及び電子線等が挙げられる。これらのなかでも遠紫外光が好ましい。その波長は250nm以下が好ましく、220nm以下がより好ましく、1~200nmが更に好ましい。具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fエキシマレーザー(157nm)、X線、EUV(13nm)、又は電子線等であり、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV又は電子線が好ましい。
【0247】
(iii)現像工程においては、アルカリ現像液であっても、有機溶剤を含む現像液(以下、有機系現像液ともいう)であってもよい。
【0248】
アルカリ現像液としては、通常、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドに代表される4級アンモニウム塩が用いられるが、これ以外にも無機アルカリ、1~3級アミン、アルコールアミン、及び環状アミン等のアルカリ水溶液も使用可能である。
更に、上記アルカリ現像液は、アルコール類、及び/又は界面活性剤を適当量含んでいてもよい。アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1~20質量%である。アルカリ現像液のpHは、通常10~15である。
アルカリ現像液を用いて現像を行う時間は、通常10~300秒である。
アルカリ現像液のアルカリ濃度、pH、及び現像時間は、形成するパターンに応じて、適宜調整できる。
【0249】
有機系現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び炭化水素系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含む現像液であるのが好ましい。
【0250】
ケトン系溶剤としては、例えば、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、2-ヘプタノン(メチルアミルケトン)、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、及びプロピレンカーボネート等が挙げられる。
【0251】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、ブタン酸ブチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、酢酸イソアミル、イソ酪酸イソブチル、及びプロピオン酸ブチル等が挙げられる。
【0252】
アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び炭化水素系溶剤としては、米国特許出願公開2016/0070167A1号明細書の段落<0715>~<0718>に開示された溶剤を使用できる。
【0253】
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤又は水と混合してもよい。現像液全体としての含水率は、50質量%未満が好ましく、20質量%未満がより好ましく、10質量%未満が更に好ましく、実質的に水分を含まないことが特に好ましい。
有機系現像液に対する有機溶剤の含有量は、現像液の全量に対して、50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましく、90~100質量%が更に好ましく、95~100質量%が特に好ましい。
【0254】
有機系現像液は、必要に応じて公知の界面活性剤を適当量含んでいてもよい。
【0255】
界面活性剤の含有量は現像液の全量に対して、通常0.001~5質量%であり、0.005~2質量%が好ましく、0.01~0.5質量%がより好ましい。
【0256】
有機系現像液は、上述した酸拡散制御剤を含んでいてもよい。
【0257】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、又は一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0258】
アルカリ水溶液を用いて現像を行う工程(アルカリ現像工程)、及び有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程(有機溶剤現像工程)を組み合わせてもよい。これにより、中間的な露光強度の領域のみを溶解させずにパターン形成が行えるので、より微細なパターンを形成できる。
【0259】
(iii)現像工程の後に、リンス液を用いて洗浄する工程(リンス工程)を含むことが好ましい。
【0260】
アルカリ現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液は、例えば純水を使用できる。純水は、界面活性剤を適当量含んでいてもよい。この場合、現像工程又はリンス工程の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を追加してもよい。更に、リンス処理又は超臨界流体による処理の後、パターン中に残存する水分を除去するために加熱処理を行ってもよい。
【0261】
有機溶剤を含む現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液は、パターンを溶解しないものであれば特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用できる。リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含むリンス液を用いることが好ましい。
炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及びエーテル系溶剤の具体例としては、有機溶剤を含む現像液において説明したものと同様のものが挙げられる。
この場合のリンス工程に用いるリンス液としては、1価アルコールを含むリンス液がより好ましい。
【0262】
リンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐鎖状、又は環状の1価アルコールが挙げられる。具体的には、1-ブタノール、2-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、tert―ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、2-ヘキサノール、シクロペンタノール、2-ヘプタノール、2-オクタノール、3-ヘキサノール、3-ヘプタノール、3-オクタノール、4-オクタノール、及びメチルイソブチルカルビノールが挙げられる。炭素数5以上の1価アルコールとしては、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、及びメチルイソブチルカルビノール等が挙げられる。
【0263】
各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合して使用してもよい。
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。含水率を10質量%以下とすることで、良好な現像特性が得られる。
【0264】
リンス液は、界面活性剤を適当量含んでいてもよい。
リンス工程においては、有機系現像液を用いる現像を行った基板を、有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されず、例えば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、又は基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。なかでも、回転塗布法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2,000~4,000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。また、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含むことも好ましい。この加熱工程によりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。リンス工程の後の加熱工程において、加熱温度は通常40~160℃であり、70~95℃が好ましく、加熱時間は通常10秒~3分であり、30秒~90秒が好ましい。
【0265】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及び、本発明のパターン形成方法において使用される各種材料(例えば、レジスト溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、又はトップコート形成用組成物等)は、金属成分、異性体、及び残存モノマー等の不純物を含まないことが好ましい。上記の各種材料に含まれるこれらの不純物の含有量としては、1ppm以下が好ましく、100ppt以下がより好ましく、10ppt以下が更に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が特に好ましい。
【0266】
上記各種材料から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルターを用いた濾過が挙げられる。フィルター孔径としては、ポアサイズ10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下が更に好ましい。フィルターの材質としては、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、又はナイロン製のフィルターが好ましい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルター濾過工程では、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種類のフィルターを使用する場合は、孔径及び/又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。また、各種材料を複数回濾過してもよく、複数回濾過する工程が循環濾過工程であってもよい。フィルターとしては、日本国特許出願公開第2016-201426号明細書(特開2016-201426号公報)に開示されるような溶出物が低減されたものが好ましい。
フィルター濾過のほか、吸着材による不純物の除去を行ってもよく、フィルター濾過と吸着材を組み合わせて使用してもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができ、例えば、シリカゲル若しくはゼオライト等の無機系吸着材、又は活性炭等の有機系吸着材を使用できる。金属吸着剤としては、例えば、日本国特許出願公開第2016-206500号明細書(特開2016-206500号公報)に開示されるものが挙げられる。
また、上記各種材料に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、各種材料を構成する原料に対してフィルター濾過を行う、又は装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法が挙げられる。各種材料を構成する原料に対して行うフィルター濾過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
【0267】
上記の各種材料は、不純物の混入を防止するために、米国特許出願公開第2015/0227049号明細書、日本国特許出願公開第2015-123351号明細書(特開2015-123351号公報)等に記載された容器に保存されることが好ましい。
【0268】
本発明のパターン形成方法により形成されるパターンに、パターンの表面荒れを改善する方法を適用してもよい。パターンの表面荒れを改善する方法としては、例えば、米国特許出願公開第2015/0104957号明細書に開示された、水素を含むガスのプラズマによってパターンを処理する方法が挙げられる。その他にも、日本国特許出願公開第2004-235468号明細書(特開2004-235468号公報)、米国特許出願公開第2010/0020297号明細書、Proc. of SPIE Vol.8328 83280N-1“EUV Resist Curing Technique for LWR Reduction and Etch Selectivity Enhancement”に記載されるような公知の方法を適用してもよい。
また、上記の方法によって形成されたパターンは、例えば日本国特許出願公開第1991-270227号明細書(特開平3-270227号公報)及び米国特許出願公開第2013/0209941号明細書に開示されたスペーサープロセスの芯材(Core)として使用できる。
【0269】
〔電子デバイスの製造方法〕
また、本発明は、上記したパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法にも関する。本発明の電子デバイスの製造方法により製造された電子デバイスは、電気電子機器(例えば、家電、OA(Office Automation)関連機器、メディア関連機器、光学用機器、及び通信機器等)に、好適に搭載される。
【実施例
【0270】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されない。
【0271】
〔感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の調製〕
以下に、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に含まれる各種成分を示す。
<樹脂>
第1表に示される樹脂(polymer(1)~polymer(7))の構造を以下に示す。
なお、polymer(1)~polymer(7)の重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)はGPC(キャリア:テトラヒドロフラン(THF))により測定した(ポリスチレン換算値である)。また、樹脂の組成比(モル%比)は、13C-NMR(nuclear magnetic resonance)により測定した。
【0272】
【化46】
【0273】
<活性光線又は放射線の照射により一般式(I)で表される酸を発生する化合物>
第1表に示される、活性光線又は放射線の照射により一般式(I)で表される酸を発生する化合物(「酸発生剤」ともいう。PAG-1~PAG-8)の構造を以下に示す。また、併せて、PAG-1の合成例を一例として示す。
なお、第1表に示されるPAG-9~PAG-11は、一般式(I)で表される酸を発生する化合物には該当しない。
【0274】
【化47】
【0275】
(PAG-1の合成)
【0276】
【化48】
【0277】
アダマンタンメタノール15.74g(95mmol)、及びトリエチルアミン11.1g(110mmol)をジクロロメタン250mLに溶解した。得られた溶液を0℃に冷却した後、この溶液にエチルマロニルクロリド15g(100mmol)を滴下した。滴下後、反応液を室温まで昇温し、更に2時間攪拌した。得られた反応液に水250gを加え、分液ロートに移した。水層をジクロロメタン100mLで2回抽出後、有機層を飽和食塩水100mLで2回洗浄した。ジクロロメタンを減圧下で留去した後、粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製することにより、化合物(1-1)25.3gを無色油状生成物として得た(収率:95%)。
1H NMR(CDCl3,300MHz): δ = 1.27(t, J=5.37Hz, 3H), 1.54(m, 6H), 1.69(m, 6H), 1.99(m, 3H), 3.38(s, 2H), 3.75(s, 2H), 4.21(q, J=5.37Hz, 2H).
【0278】
【化49】
【0279】
化合物(1-1)6.0g(21mmol)をジクロロメタン21mLに溶解した。得られた溶液を0℃まで冷却した後、この溶液にクロロスルホン酸2.5g(21mmol)を滴下した。滴下後、反応液を40℃まで昇温し、更に3時間還流させた後、反応液を冷却した飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mLにゆっくりと加えた。分液ロートに移して有機層を分離した後、水層を酢酸エチル50mLで3回抽出した。溶媒を減圧下で留去した後、粗生成物をジイソプロピルエーテルでリスラリーすることにより、化合物(1-2)7.2gを白色固体として得た(収率:90%)。
1H NMR(CDCl3,300MHz): δ = 1.36(t, J=5.37Hz, 3H), 1.54(m, 6H), 1.69(m, 6H), 1.99(m, 3H), 3.91(d, J=2.82Hz, 2H), 4.38(q, J=5.37Hz, 2H), 5.02(s, 1H).
【0280】
【化50】
【0281】
化合物(1-2)3.2g(8.4mmol)、及びトリフェニルスルホニウムブロミド2.9g(8.4mmol)をクロロホルム100mLに溶解し、更に、水100mLを加えることにより反応液を得た。得られた反応液を1時間激しく攪拌した後、撹拌後の反応液を分液ロートに移し、有機層を水100mLで3回洗浄した。溶媒を減圧下で留去することにより、PAG-1を5g得た(収率:95%)。
1H NMR(CDCl3,300MHz): δ = 1.27(t, J=5.34Hz, 3H), 1.54(m, 6H), 1.65(m, 6H), 1.93(m, 3H), 3.72(s, 2H), 4.15-4.27(m, 2H), 4.90(s, 1H), 7.63-7.73(m, 9H), 7.83-7.86(m, 6H).
【0282】
<塩基性化合物>
第1表に示される塩基性化合物(N-1~N-6)の構造を以下に示す。
【0283】
【化51】
【0284】
<疎水性樹脂>
第1表に示される疎水性樹脂(1b及び2b)の構造を以下に示す。なお、疎水性樹脂1b及び2bの重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)はGPC(キャリア:THF)により測定した(ポリスチレン換算値である)。また、樹脂の組成比(モル%比)は、13C-NMRにより測定した。
【0285】
【化52】
【0286】
<溶剤>
第1表に示される溶剤については以下のとおりである。
【0287】
SL-1: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
SL-2: プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
SL-3: シクロヘキサノン
SL-4: γ-ブチロラクトン
【0288】
<界面活性剤>
第1表に示される界面活性剤については以下のとおりである。
W-1: PolyFox PF-6320(OMNOVA Solutions Inc.製;フッ素系)
W-2: メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製;フッ素系)
【0289】
<感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の調製>
第1表に示した各成分を固形分濃度が4質量%となるように混合した。次いで、得られた混合液を、最初に孔径50nmのポリエチレン製フィルター、次に孔径10nmのナイロン製フィルター、最後に孔径5nmのポリエチレン製フィルターの順番で濾過することにより、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以下、樹脂組成物ともいう)を調製した。なお、樹脂組成物において、固形分とは、溶剤以外の全ての成分を意味する。得られた樹脂組成物を、下記の方法により評価した。結果を第1表に示す。
【0290】
〔評価〕
<レジストパターンの形成方法>
シリコンウエハ上に有機反射防止膜形成用組成物ARC29SR(Brewer Science社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークして、膜厚98nmの反射防止膜を形成した。その上に、第1表に示す樹脂組成物を塗布し、100℃で60秒間ベークして、膜厚90nmの感活性光線性又は感放射線性膜を形成した。
感活性光線性又は感放射線性膜に対して、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製;XT1700i、NA1.20、C-Quad、アウターシグマ0.730、インナーシグマ0.630、XY偏向)を用いて、線幅75nmの1:1ラインアンドスペースパターンの6%ハーフトーンマスクを介して露光した。液浸液は、超純水を使用した。
露光後の感活性光線性又は感放射線性膜を120℃で60秒間ベークした後、酢酸n-ブチルで30秒間現像し、次いで4-メチル-2-ペンタノールで30秒間リンスした。その後、これをスピン乾燥してネガ型のパターンを得た。
【0291】
<ラインウィズスラフネス(LWR)の評価>
最適露光量にて解像した75nm(1:1)のラインアンドスペースのレジストパターンに対して、測長走査型電子顕微鏡(SEM((株)日立製作所S-9380II))を使用してパターン上部から観察する際、線幅を任意のポイントで観測し、その測定ばらつきを3σで評価した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
結果を第1表に示す。
【0292】
第1表において、酸発生剤欄及び塩基性化合物欄における括弧内の数値は、含有量(g)を表す。
第1表において、溶剤欄における括弧内の数値は、質量比を表す。
第1表において、樹脂、疎水性樹脂、及び界面活性剤の含有量は、それぞれ表中の各欄に記載した通り(単位:g)である。
【0293】
【表1】
【0294】
第1表の結果から、実施例の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によれば、形成されるパターンのLWRに優れることが分かる。一方、比較例の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によれば、形成されるパターンのLWRが所望のレベルを達成することができない。
実施例1及び5の対比により、一般式(I)で表される酸が、一般式(III)で表される酸である場合には、LWRがより優れることが確認された。
実施例1~3及び6の対比により、一般式(I)で表される酸が、一般式(III)で表される酸であり、Xが-CO-O-又は-CO-である場合には、LWRがより優れることが確認された。
実施例1~3及び4の対比により、一般式(I)で表される酸が、一般式(III)で表される酸であり、Rのうち少なくとも1つが脂環構造を含有する脂肪族炭化水素基である場合には、LWRがより優れることが確認された。