(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】光学素子の傾斜
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20220126BHJP
G03F 1/84 20120101ALI20220126BHJP
G02B 7/182 20210101ALI20220126BHJP
G02B 7/198 20210101ALI20220126BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F1/84
G02B7/182
G02B7/198
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020114278
(22)【出願日】2020-07-01
(62)【分割の表示】P 2017506414の分割
【原出願日】2015-07-28
【審査請求日】2020-07-29
(31)【優先権主張番号】102014215452.9
(32)【優先日】2014-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【氏名又は名称】下地 健一
(72)【発明者】
【氏名】ボアズ ピニーニ-ミットラー
【審査官】冨士 健太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/060169(WO,A1)
【文献】特表2008-504579(JP,A)
【文献】特表2010-537415(JP,A)
【文献】特表2012-504321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/00
7/18-7/24
G03F 7/20-7/24
9/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファセットミラーユニットである光学ユニットであって、
光学素子(109;209)及び
支持装置(111)
を備え、前記光学素子(109;209)は、光学面(109.1;209.1)の主延在平面(PME)及び該主延在平面(PME)内の主延在方向を規定する該光学面(109.1;209.1)を有し、
前記支持装置(111)は、ベース要素(112.7;212.7)を有する支持ユニットを含み、
前記ベース要素(112.7;212.7)は、該ベース要素(112.7;212.7)の主延在平面を規定する、光学ユニットにおいて、
前記支持ユニット(112;212)は、少なくとも2つの弾性変形可能な支持要素(112.1~112.4;212.12)を含み、
前記支持要素(112.1~112.4;212.12)のそれぞれは、支持要素主延在面を規定し、
前記支持要素(112.1~112.4;212.12)は、前記支持要素主延在面が前記光学面(109.1;209.1)の傾斜軸(TA1、TA2)を規定する線で交差するように、相互に対して傾いて配置され、
前記光学面(109.1;209.1)の前記傾斜軸(TA1、TA2)は、該光学面(109.1;209.1)の前記主延在平面(PME)内に実質的にあり、前記ベース要素(112.7;212.7)の前記主延在平面に対して傾いていることを特徴とする光学ユニット。
【請求項2】
請求項
1に記載の光学ユニットにおいて、
前記支持ユニット(112;212)は、前記光学面(109.1;209.1)の前記傾斜軸(TA1、TA2)が前記光学面(109.1;209.1)の前記主延在方向と実質的に平行か、又は、前記光学面(109.1;209.1)の前記主延在方向と同一直線上に延びるように設計される光学ユニット。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の光学ユニットにおいて、
前記光学面(109.1;209.1)の前記傾斜軸(TA1、TA2)は、前記ベース要素(112.7;212.7)の前記主延在平面に対して1°~30°傾いている光学ユニット。
【請求項4】
請求項1
または2に記載の光学ユニットにおいて、
前記光学面(109.1;209.1)の前記傾斜軸(TA1、TA2)は、前記ベース要素(112.7;212.7)の前記主延在平面に対して5°~20°傾いている光学ユニット。
【請求項5】
請求項1
または2に記載の光学ユニットにおいて、
前記光学面(109.1;209.1)の前記傾斜軸(TA1、TA2)は、前記ベース要素(112.7;212.7)の前記主延在平面に対して8°~15°傾いている光学ユニット。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか1項に記載の光学ユニットにおいて、
前記光学面(109.1;209.1)の前記傾斜軸(TA1、TA2)は、少なくとも1つの傾斜軸点で、前記光学面(109.1;209.1)上に実質的にあり、又は、
前記光学面(109.1;209.1)の前記傾斜軸(TA1、TA2)は、少なくとも一つの傾斜軸点で、該傾斜軸点で規定された前記光学面(109.1;209.1)の接平面内にある光学ユニット。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか1項に記載の光学ユニットにおいて
、
前記支持ユニット(112;212)は、受動要素により前記傾斜軸(TA1、TA2)を専ら規定する受動装置として設計される光学ユニット。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか1項に記載の光学ユニットにおいて、
前記光学素子(109;209)の重量の少なくとも大部分が、少なくとも1つの動作状態で前記支持要素(112.1~112.4;212.12)により前記ベース要素(112.7;212.7)に導入される光学ユニット。
【請求項9】
請求項
8に記載の光学ユニットにおいて、
前記光学素子(109;209)の重量の少なくとも80%が前記支持要素(112.1~112.4;212.12)により前記ベース要素(112.7;212.7)に導入される光学ユニット。
【請求項10】
請求項
8に記載の光学ユニットにおいて、
前記光学素子(109;209)の重量の少なくとも90%が前記支持要素(112.1~112.4;212.12)により前記ベース要素(112.7;212.7)に導入される光学ユニット。
【請求項11】
請求項
8に記載の光学ユニットにおいて、
前記光学素子(109;209)の重量の95%~100%が前記支持要素(112.1~112.4;212.12)により前記ベース要素(112.7;212.7)に導入される光学ユニット。
【請求項12】
請求項1から
11のいずれか1項に記載の光学ユニットにおいて、
前記支持要素(112.1~112.4;212.12)のそれぞれは、板ばね状に設計される光学ユニット。
【請求項13】
請求項
12に記載の光学ユニットにおいて、
前記支持要素(112.1~112.4;212.12)のそれぞれが板ばね主延在平面を規定し、前記支持要素(112.1~112.4;212.12)は、前記板ばね主延在平面同士が前記傾斜軸(TA1、TA2)で交差するように相互に対して傾いて配置される光学ユニット。
【請求項14】
請求項
12又は13に記載の光学ユニットにおいて、
前記支持要素(112.1~112.4;212.12)の少なくとも1つは、前記光学素子(109;209)の重量の荷重のみを受ける状態で実質的に平面状であるよう構成された板ばねとして設計される光学ユニット。
【請求項15】
請求項
12から14のいずれか1項に記載の光学ユニットにおいて、
前記支持要素(112.1~112.4;212.12)の少なくとも1つは、長手方向軸に沿った長さ寸法と、板ばね主延在平面に対して垂直な最大厚さ寸法とを有する板ばねとして設計される光学ユニット。
【請求項16】
請求項
15に記載の光学ユニットにおいて、
前記最大厚さ寸法は、前記長さ寸法の4%未満である光学ユニット。
【請求項17】
請求項
15に記載の光学ユニットにおいて、
前記最大厚さ寸法は、前記長さ寸法の2%未満である光学ユニット。
【請求項18】
請求項
15に記載の光学ユニットにおいて、
前記最大厚さ寸法は、前記長さ寸法の0.2%~1%である光学ユニット。
【請求項19】
請求項
15から18のいずれか1項に記載の光学ユニットにおいて、
前記支持要素(112.1~112.4;212.12)のそれぞれが板ばね主延在平面を規定し、前記支持要素(112.1~112.4;212.12)の少なくとも1つは、その板ばね主延在平面において実質的に平行四辺形の外形輪郭を有し、該外形輪郭の少なくとも1対の辺が前記傾斜軸(TA1、TA2)と実質的に平行に延びる光学ユニット。
【請求項20】
請求項1から
19のいずれか1項に記載の光学ユニットにおいて、
前記傾斜軸(TA1)は前記光学面の第1傾斜軸であり、
前記支持ユニット(112;212)は、前記第1傾斜軸(TA1)に対して横方向に、又は、垂直に延びる前記光学面の第2傾斜軸(TA2)を規定するために構成される光学ユニット。
【請求項21】
請求項
20に記載の光学ユニットにおいて、
前記第2傾斜軸(TA2)は、前記光学面の前記主延在平面(PME)内に実質的にある光学ユニット。
【請求項22】
請求項
20又は21に記載の光学ユニットにおいて、
前記支持ユニット(112;212)は、受動要素により前記傾斜軸(TA2)を専ら規定する受動装置として設計される光学ユニット。
【請求項23】
請求項
20から22のいずれか1項に記載の光学ユニットにおいて、
前記支持ユニット(112;212)は、前記第2傾斜軸(TA2)を規定する少なくとも2つの部分的に弾性変形可能な支持要素(112.1~112.4;212.12)を含む光学ユニット。
【請求項24】
請求項
20から23のいずれか1項に記載の光学ユニットにおいて、
前記支持ユニット(112;212)は、少なくとも2つの弾性変形可能な支持要素(112.1~112.4;212.12)を含み、該支持要素(112.1~112.4;212.12)は、それぞれ前記第2傾斜軸(TA2)を規定する板ばね状に設計される光学ユニット。
【請求項25】
請求項
24に記載の光学ユニットにおいて、
該支持要素(112.1~112.4;212.12)のそれぞれが、板ばね主延在平面を規定し、
前記支持要素(112.1~112.4;212.12)は、前記板ばね主延在平面同士が前記第2傾斜軸(TA2)で交差するように相互に対して傾いて配置される光学ユニット。
【請求項26】
請求項
25に記載の光学ユニットにおいて、
前記支持要素(112.1~112.4;212.12)の少なくとも1つは、その板ばね主延在平面において実質的に平行四辺形の外形輪郭を有し、
該外形輪郭の少なくとも1対の辺が前記第2傾斜軸(TA2)と実質的に平行に延びる光学ユニット。
【請求項27】
請求項1から
26のいずれか1項に記載の光学ユニットにおいて、
前記光学面(109.1;209.1)は、前記主延在方向に細長くなるように設計される光学ユニット。
【請求項28】
請求項1から
26のいずれか1項に記載の光学ユニットにおいて、
前記光学面(109.1;209.1)は、前記主延在方向に対して横方向に細くなるように設計される光学ユニット。
【請求項29】
請求項1から
26のいずれか1項に記載の光学ユニットにおいて、
前記光学面(109.1;209.1)は、前記主延在方向の第1最大寸法と、該第1最大寸法の10%未満である前記主延在方向に対して垂直な第2最大寸法とを有する光学ユニット。
【請求項30】
請求項1から
29のいずれか1項に記載の光学ユニットにおいて、
前記支持装置(111)は、アクチュエータユニット(113)を含み、
前記アクチュエータユニット(113)は、一動作状態において、前記光学素子(109:209)の前記主延在平面(PME)に対して傾いて働く第1の傾斜モーメント(M1)を前記光学素子(109;209)に専ら加えるよう構成される光学ユニット。
【請求項31】
請求項
30に記載の光学ユニットにおいて、
前記アクチュエータユニット(113)は、一動作状態において、前記光学面(109.1;209.1)の前記主延在平面(PME)に対して傾いて働く前記第1の傾斜モーメント(M1)に対して横方向に又は垂直に働く第2の傾斜モーメント(M2)を前記光学素子(109:209)に専ら加えるよう構成される光学ユニット。
【請求項32】
請求項1から
31のいずれか1項に記載の少なくとも1つの光学ユニットを備えた、光学モジュール。
【請求項33】
請求項
32に記載の光学モジュールであって、
前記光学モジュールはファセットミラーである光学モジュール。
【請求項34】
請求項
32又は33に記載の光学モジュールであって、
複数の光学素子の支持ユニット(112;212)が、共通のベース要素(112.7;212.7)を有する光学モジュール。
【請求項35】
請求項
32から34のいずれか1項に記載の光学モジュールであって、
前記光学素子(109;209)は、0.1mm
2~200mm
2の表面積を有する光学有効面(109.1;209.1)を有するファセット素子である光学モジュール。
【請求項36】
請求項
32から34のいずれか1項に記載の光学モジュールであって、
前記光学素子(109;209)は、0.5mm
2~100mm
2の表面積を有する光学有効面(109.1;209.1)を有するファセット素子である光学モジュール。
【請求項37】
請求項
32から34のいずれか1項に記載の光学モジュールであって、
前記光学素子(109;209)は、1.0mm
2~50mm
2の表面積を有する光学有効面(109.1;209.1)を有するファセット素子である光学モジュール。
【請求項38】
請求項
32から37のいずれか1項に記載の光学モジュールであって、
100個~100,000個のファセット素子(109;209)が設けられる光学モジュール。
【請求項39】
請求項
32から37のいずれか1項に記載の光学モジュールであって、
100個~10,000個のファセット素子(109;209)が設けられる光学モジュール。
【請求項40】
請求項
32から37のいずれか1項に記載の光学モジュールであって、
1,000個~10,000個のファセット素子(109;209)が設けられる光学モジュール。
【請求項41】
請求項
32又は33に記載の光学モジュールであって、
50個~10,000個のファセット素子(109;209)が設けられる光学モジュール。
【請求項42】
請求項
32又は33に記載の光学モジュールであって、
100個~7,500個のファセット素子(109;209)が設けられる光学モジュール。
【請求項43】
請求項
32又は33に記載の光学モジュールであって、
500個~5,000個のファセット素子(109;209)が設けられる光学モジュール。
【請求項44】
光学結像装置であって、
第1光学素子群(106)を有する照明装置(102)と、
物体(104.1)を収容する物体装置(104)と、
第2光学素子群(107)を有する投影装置(103)と、
像装置(105)と
を備え、前記照明装置(102)は前記物体(104.1)を照明するよう構成され、且つ
前記投影装置(103)は前記物体(104.1)の像を前記像装置(105)に投影するよう構成される光学結像装置において、
前記照明装置(102)及び/又は前記投影装置(103)は、請求項
32から43のいずれか1項に記載の光学モジュール(106.1;206.1)を備えることを特徴とする光学結像装置。
【請求項45】
請求項
44に記載の光学結像装置であって、
マイクロリソグラフィ用の光学結像装置。
【請求項46】
ファセットミラーのファセット素子である光学素子を支持装置(111)により支持する方法であって、前記光学素子(109;209)は、主延在平面(PME)及び該主延在平面(PME)内の主延在方向を規定する光学面(109.1;209.1)を有し、
傾斜モーメント(M1)が前記光学素子(109;209)に加わることで、前記光学素子(109;209)を前記支持装置(111)のベース要素(112.7;212.7)であって該ベース要素(112.7;212.7)の主延在平面を規定するベース要素(112.7;212.7)に対して傾斜させる方法において、
前記支持ユニット(112;212)は、少なくとも2つの弾性変形可能な支持要素(112.1~112.4;212.12)を含み、
前記支持要素(112.1~112.4;212.12)のそれぞれは、支持要素主延在面を規定し、
前記支持要素(112.1~112.4;212.12)は、前記支持要素主延在面が前記光学面(109.1;209.1)の傾斜軸(TA1、TA2)を規定する線で交差するように、相互に対して傾いて配置され、
前記光学面(109.1;209.1)の前記傾斜軸(TA1、TA2)は、該光学面(109.1;209.1)の前記主延在平面(PME)内に実質的にあり、前記ベース要素(112.7;212.7)の前記主延在平面に対して傾いていることを特徴とする方法。
【請求項47】
光学結像法であって、
第1光学素子群(106)を有する照明装置(102)により物体(104.1)を照明し、
第2光学素子群(107)を有する投影装置(103)により前記物体(104.1)の像を像装置(105)上に生成する光学結像法において、
請求項
46に記載の方法を前記照明装置(102)及び/又は前記投影装置(103)で用いる光学結像法。
【請求項48】
請求項
47に記載の光学結像方法であって、
マイクロリソグラフィ用の光学結像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ユニット及び光学素子を支持する方法に関する。本発明は、任意所望の
光学装置又は光学結像法と共に適用することができる。特に、本発明は、超小型電子回路
の製造又はマイクロリソグラフィシステムの測定システムの製造で用いられるマイクロリ
ソグラフィに関連して用いることができる。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、特に米国特許法第119条の下で、2014年8月5日付けで出願された独国
特許出願第10 2014 215 452.9号の優先権を主張する。この独国特許出
願の開示を本願に明示的に援用する。
【背景技術】
【0003】
特にマイクロリソグラフィの分野において、最大限の精度で構成されたコンポーネント
の使用のほかに、要件の中には、結像装置の光学モジュール、すなわちレンズ、ミラー、
又は回折格子等の光学素子を有するモジュールの、また用いられるマスク及び基板の位置
及び幾何学的形状を、動作中に所定の設定値に従って、できる限り正確に設定すること、
又はそれに対応して高い結像品質を達成するためにかかるコンポーネントを所定の位置又
は幾何学的形状で安定化することがある。
【0004】
マイクロリソグラフィの分野では、精度要件は、約数ナノメートル以下の微視的領域に
ある。これらの要件は、この場合は特に、製造する超小型電子回路の小型化を進めるため
に超小型電子回路の製造で用いられる光学系の分解能を高めることが常に要求される結果
として生じる。
【0005】
高い分解能と、概してそれに伴う使用光の短波長化とにより、使用コンポーネントの位
置及び向きの精度の要件は当然増加する。特にUV領域での(例えば193nmの領域の
)、特に5nm~20nmの(通常は13nmの領域の)動作波長のいわゆる極UV領域
(EUV)での、マイクロリソグラフィで用いられる短い動作波長では、これは当然なが
ら、関与するコンポーネントの位置決め及び/又は向きの精度に関する高い要件を維持す
るために費やさなければならない労力に影響を及ぼす。
【0006】
特に上記EUVシステムに関連して、結像に用いる光の強度分布に正確に影響を及ぼす
ことが重要性を増している。この目的で、概していわゆるファセットミラーが用いられ、
ファセットミラーでは、所定の基準に対しての光学有効面の位置及び/又は向きが正確に
規定された複数の非常に小さなファセット素子が、できる限り密集した格子状に配置され
る。この点で、(例えば照明設定の変更のために)ファセット素子の配列を変えること、
したがってその結果としてそれらの光学面を傾斜させることが望ましいか又は必要とされ
ることが多い。
【0007】
それぞれの開示を参照により本明細書に援用する特許文献1(Holderer他)及び特許文
献2(Dinger)から、EUVシステムのファセットミラーのファセット素子の規定の位置
決め及び向きに関連して、これらのファセット素子を個別に調整することが知られている
。この目的で、割り当てられたアクチュエータユニットがファセット素子に加えた対応す
る傾斜モーメントにより、支持構造が定めた傾斜軸に関してファセット素子を傾斜させる
。
【0008】
特許文献1から知られている回転対称ファセット素子のいくつかの場合、傾斜軸は、光
学面の主延在平面内にあり、アクチュエータユニットが加える傾斜モーメントが光学面の
主延在平面と平行に働くので、ファセット素子がファセット素子用に設けられた設置空間
から横方向に変位することなく光学面のみが傾斜する。
【0009】
傾斜時の横変位がないことにより、既知のファセット素子を原理上は特に相互の近くに
位置決めすることができ、したがってファセット素子間に大きなギャップを必要としない
。しかしながら、ここで問題なのは、回転対称の設計自体によって、表面積の利用率が比
較的低くなってしまうか、又はファセット素子間のギャップを比較的大きくなってしまい
、これにより光の損失が比較的大きくなり得ることである。
【0010】
ファセット素子間のギャップに起因した、又は特定の照明設定の結果としてのこのよう
な光の損失を回避するために、原理上は特定の配列または特定の切り換え状態でほぼ隙間
なく相互に当接する、多くの場合は細長い非回転対称ファセット素子が用いられる。この
ような構成は、例えば特許文献2から既知であり、これは、ファセット素子の支持構造の
平面と平行に延びる2つの直交傾斜軸を有するファセット素子用のカルダン支持体を記載
している。
【0011】
このような細長い非回転対称ファセット素子のための同様の支持体が、特許文献3(La
tzel他)からも既知であり、その開示を参照により本明細書に援用する。ここでは、支持
構造上の各ファセット素子の支持が、三桿支持体により玉継手状に実現され、ファセット
素子の光学面は支持構造の平面と平行に延びる。玉継手状の支持体は、この場合、各ファ
セット素子に関して無限数の傾斜軸を規定するので、実際の傾斜軸が作動機構により予め
規定されなければならない。ここでも、作動機構はファセット素子の支持構造の平面と平
行に作用するので、ファセット素子に加わる傾斜モーメントは光学面内にある。したがっ
て、ここでも、作動機構は、結果としてファセット素子の支持構造の平面と平行に延びる
傾斜軸を提供する。
【0012】
しかしながら、特定の設定では、ファセット素子の一部(場合によっては全部)の光学
面の主延在平面がそれらの支持構造の基本要素の主延在平面に対して傾いて延びる必要が
ある。特に設置空間に関する既存の制約の結果として、これは多くの場合、作動機構が(
その支持構造のベース要素の領域で)もたらした傾斜モーメントが光学面の主延在平面に
対して傾いて働くことを意味する。
【0013】
主延在平面に対する傾斜モーメントのこの傾きには、主延在平面と平行な所望の成分(
光学面の傾斜をもたらす)のほかに、傾斜モーメントが主延在平面に対して垂直な寄生成
分も有し、これが主延在平面における光学面の望ましくない回転を伴うという欠点がある
。特に長く細いファセット素子の場合、主延在平面における光学面のこの回転は、ファセ
ット素子の自由端の多少の横変位につながり、これに対応して(最小限の光の損失の側面
から)望ましくない隙間をファセット素子間に設ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】独国特許出願公開第102 05 425号明細書
【文献】独国特許出願公開第10 2008 009 600号明細書
【文献】独国特許出願公開第10 2012 223 034号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明は、上記欠点がないか又は上記欠点が少なくともより少なく、特に
、光学面の傾斜の可能性があるにも関わらずファセット素子の表面積の特に高い利用率又
は特に高密度の実装を容易に確保する、光学ユニット及び光学素子を支持する方法を提供
するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、支持ユニットが、アクチュエータユニットの傾斜モーメントによる光学面の
傾斜時に光学面の主延在平面内に実質的にある光学面の傾斜軸を予め規定するよう構成さ
れている場合、傾斜の可能性があるにも関わらず、ファセット素子の表面積の特に高い利
用率又は特に高密度の実装を容易に達成できるという概念に基づく。
【0017】
傾斜モーメントの位置合わせに関して記載した悪条件下でも、(従来の設計の場合に、
例えば特許文献3からの設計の場合に必要とされるような)作動機構の細密な変更を行わ
ずに、光学面の主延在平面内に実質的にある光学面の傾斜軸を支持装置の領域において単
純で純粋に受動的な措置により予め規定することが可能であり、したがってこうした状況
でも光学面の傾斜時に光学素子の一部の横変位を防止することが可能であることが分かっ
ている。したがってそれにより、(例えば照明設定の変更時の)能動的な調整性にも関わ
らず光をほとんど損失せずに光学素子の特に高密度の実装を実現することも可能である。
【0018】
したがって、第1態様によれば、本発明は、光学ユニット、特にファセットミラーユニ
ットであって、光学素子及び支持装置を備え、光学素子は、主延在平面及び主延在平面内
の主延在方向を規定する光学面、特に細長い光学面を有し、支持装置は、支持ユニット及
びアクチュエータユニットを含む光学ユニットに関する。アクチュエータユニットは、主
延在平面に対して傾いて働く傾斜モーメントを光学素子に加えることで光学面を傾斜させ
るよう構成される。支持ユニットは、アクチュエータユニットの傾斜モーメントによる光
学面の傾斜時に光学面の主延在平面内に実質的にある光学面の傾斜軸を予め規定するよう
構成される。
【0019】
傾斜軸は、原理上は主延在平面内でほぼ任意所望の方法で方向付けることができる。し
かしながら、光学面の傾斜軸が主延在方向と実質的に平行に、特に実質的に同一直線上に
延びるように支持要素が設計されれば、光学素子の特に高密度の実装又は密接した配置が
可能である。
【0020】
本発明は、原理上、主延長平面に対する傾斜モーメントの任意所望の傾きを有する任意
所望の配置構成の場合に用いることができる。傾斜モーメントが光学面の主延在平面及び
/又は主延在方向に対して1°~30°、好ましくは5°~20°、より好ましくは8°
~15°傾いている場合、特に好ましい結果を得ることができる。こうした場合、主延在
平面に対して傾いた傾斜モーメント又は(寄生的な横回転運動をもたらす)主延在平面に
対して垂直なその寄生成分を、特に単純な受動的手段により効果的に補償することができ
る。
【0021】
傾斜軸は、原理上は光学面から特定の距離に延び得る。しかしながら、光学面の傾斜軸
が光学面上の少なくとも1つの傾斜軸点に実質的にある場合、特に好ましい運動学的条件
を得ることができる。この点で、光学面の傾斜軸が傾斜軸点に規定された光学面の接平面
にあれば特に好ましい。
【0022】
原理上、能動又は半能動コンポーネントを用いて、主延在平面に対して垂直な傾斜モー
メントの寄生成分を補償することができる。本発明の特に有利な変形形態の場合、支持ユ
ニットは、受動要素により傾斜軸を規定する受動装置として設計される。
【0023】
支持ユニットは、原理上は光学素子を支持するよう任意所望の適当な方法で設計するこ
とができる。支持ユニットは、少なくとも2つの支持要素、特に少なくとも3つの支持要
素とベース要素とを備え、光学素子の重量の少なくとも大部分が、少なくとも1つの動作
状態で支持要素によりベース要素に導入され、光学素子の重量の特に少なくとも80%、
好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%~100%がベース要素に導入され
ることが好ましい。これにより、傾斜モーメントの寄生成分の受動的補償の容易な組込み
も可能にする特に単純な構成の設計を達成することが可能となる。
【0024】
特に単純な設計の本発明の変形形態の場合、支持ユニットは、傾斜軸を規定する少なく
とも2つの少なくとも部分的に弾性変形可能な支持要素を含む。この点で、例えば、対応
する弾性変形可能部分を形成する板ばね状等に設計された要素を用いることが可能である
。
【0025】
さらに、支持ユニットは少なくとも1つの案内ユニットを含み、これは、光学素子に接
続され且つ傾斜軸の規定のために光学素子の少なくとも2つの運動自由度、特に3つの運
動自由度を制限する。
【0026】
ここで、光学面の主延在平面に対して垂直な回転自由度を制限して、傾斜モーメントの
寄生成分の補償を達成することが特に好ましい。したがって、支持ユニットは、光学素子
に接続され且つ傾斜軸の規定のために光学面の主延在平面に対して垂直に作用する傾斜モ
ーメントの成分を吸収するように設計された、少なくとも1つの案内ユニットを含むこと
が好ましい。
【0027】
特に単純な設計の本発明の変形形態の場合、支持ユニットは、傾斜軸を規定する板ばね
状に設計された少なくとも2つの弾性変形可能な支持要素を含む。支持要素のそれぞれが
、この場合は板ばね主延在平面を規定し、支持要素は、板ばね主延在平面同士が傾斜軸で
交差するよう相互に対して傾いて配置される。傾斜モーメントの寄生成分の所望の向き又
はその所望の補償を、それにより特に容易に達成することができる。
【0028】
支持要素の幾何学的形状は、原理上は傾斜軸を所望の位置で規定するよう任意所望の適
当な方法で選択することができる。支持要素の少なくとも1つは、光学素子の重量の荷重
のみを受ける状態で実質的に平面状であるよう構成された板ばねとして設計されることが
好ましい。これは、特に容易に製造できる堅牢な構成をもたらす。
【0029】
支持要素の少なくとも1つが、長手方向軸に沿った長さ寸法と、長さ寸法の特に4%未
満、好ましくは2%未満、より好ましくは0.2%~1%である板ばね主延在平面に対し
て垂直な最大厚さ寸法とを有する薄い板ばねとして設計される場合、動的側面で有利な変
形形態が得られる。
【0030】
板ばね要素は、その板ばね主延在平面同士が傾斜軸で交差する限り、原理上は任意所望
の外形輪郭を有することができる。支持要素のそれぞれが板ばね主延在平面を規定し、支
持要素の少なくとも1つがその板ばね主延在平面において実質的に平行四辺形の外形輪郭
を有し、外形輪郭の少なくとも1対の辺が傾斜軸と実質的に平行に延びる場合、特に容易
に製造できる堅牢な構成が得られる。
【0031】
容易に実現できるという理由で好ましい本発明のさらに他の変形形態の場合、支持ユニ
ットは、傾斜軸を規定する弾性支柱状に設計された少なくとも3つの弾性変形可能な支持
要素を含む。この目的で、例えば棒ばね状の単純な設計の弾性支柱を用いることができる
。原理上、弾性支柱の配置は、この場合は任意所望の方法で選択することができるが、支
持要素が三脚状に配置されることが好ましい。
【0032】
本発明の好ましい変形形態の場合、支持要素のそれぞれが支柱長手方向軸を規定し、支
持要素は、支柱長手方向軸同士が傾斜軸点で交差するように相互に対して傾いて配置され
る。これが最終的に、玉継手状に設計された光学素子の取り付けの実現を可能にする。こ
れは、対応する案内ユニットにより特に容易に補うことができ、これにより、傾斜軸の所
望の向き又は傾斜モーメントの寄生成分の所望の補償を達成できる。
【0033】
支持要素がそれぞれ支柱長手方向軸を規定し、その支柱長手方向軸に沿って実質的に同
じ長さ寸法を有することが好ましい。これにより、特に容易に実現できる設計が得られる
。
【0034】
弾性支柱はさらに、原理上は任意所望の方法で設計することができ、特に任意所望の一
部湾曲し且つ/又は一部多角形の形状を有することができる。支持要素の少なくとも1つ
は、光学素子の重量の荷重のみを受ける状態で実質的に直線状であるよう構成された棒ば
ねとして設計されることが好ましい。
【0035】
支持要素の少なくとも1つは、長手方向軸に沿った長さ寸法と、長さ寸法の特に4%未
満、好ましくは2%未満、より好ましくは0.3%~1.8%である長手方向軸に対して
垂直な最大横寸法とを有する細い棒ばねとして設計されることが好ましい。これにより、
動的側面で特に有利な設計を達成することができる。
【0036】
傾斜軸の所望の向きは、任意所望の方法で定めることができる。支持ユニットが、ベー
ス要素と傾斜軸の規定のための少なくとも1つの案内要素とを備え、支持要素がベース要
素上に支持され、案内ユニットがベース要素と光学素子との間で支持要素と運動学的に平
行に配置されることが好ましい。
【0037】
傾斜モーメントの寄生成分の所望の補償を達成するために、案内ユニットが光学素子の
少なくとも2つの運動自由度、特に3つの運動自由度を制限することが好ましい。光学面
の主延在平面に対して垂直な回転自由度は、当然ながら、ここでは傾斜モーメントの対応
する寄生成分を補償するよう制限されることが好ましい。したがって、案内ユニットは、
特に光学面の主延在平面に対して垂直に作用する傾斜モーメントの成分を吸収するように
設計されることが好ましい。
【0038】
光学面の主延在平面に対して垂直に作用する傾斜モーメントの寄生成分を部分的にしか
補償しないことも可能である。傾斜モーメントによる光学面の傾斜時に、光学面の主延在
平面に対して垂直に作用する傾斜モーメントの成分の少なくとも一部、特に少なくとも7
5%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは90%~100%を補償する対抗モ
ーメントが光学素子に加わるように、案内ユニットが設計されることが好ましい。
【0039】
傾斜モーメントの寄生成分の所望の少なくとも部分的な補償が達成される限り、案内ユ
ニットは、原理上は任意所望の方法で設計することができる。本発明の有利な変形形態の
場合、案内ユニットは、光学素子及びベース要素に関節式に接続されて傾斜モーメントの
寄生成分の少なくとも部分的な補償をもたらす少なくとも1つの案内要素を有する。
【0040】
特に堅牢であるが単純に設計される本発明の変形形態の場合、案内ユニットは、光学素
子及びベース要素に関節式に接続された少なくとも2つの案内要素を有し、案内要素は、
特に、主延在平面内にあり主延在方向に対して垂直に延びる光学素子の横方向で、光学素
子の両側に配置される。
【0041】
案内ユニットは、原理上は傾斜モーメントの寄生成分の補償を達成するよう任意所望の
方法で設計することができる。したがって、1つ又は複数の単純な棒要素等を用いて、所
望の対抗モーメントを光学素子に導入することができる。単純で堅牢な変形形態の場合、
案内ユニットは、板ばね状に設計された少なくとも1つの案内要素を有する。
【0042】
光学素子とベース要素との間の接続は、原理上は傾斜モーメントの寄生成分の補償を達
成するよう任意所望の方法で設計することができる。少なくとも1つの案内要素が、光学
素子上の第1関節点及びベース要素上の第2関節点を規定し、第1関節点と第2関節点と
の間の接続線が、主延在平面に対して垂直且つ傾斜モーメントと平行に延びる平面内で、
特に1°~30°、好ましくは5°~20°、より好ましくは8°~15°の第1傾斜角
だけ傾斜モーメントに対して傾いて延びることが好ましい。付加的又は代替的に、第1関
節点と第2関節点との間の接続線は、主延在平面に対して垂直且つ傾斜モーメントと平行
に延びる平面内で、特に-10°~10°、好ましくは-5°~5°、より好ましくは0
°~2°の第2傾斜角だけ主延在平面に対して傾いて延びることができる。これにより、
傾斜モーメントの寄生成分の少なくとも部分的な補償をいずれの場合も特に容易に達成す
ることができる。この場合の接続線は、主延在平面と同じ回転方向で傾斜モーメントに対
して傾斜させることが好ましい。
【0043】
傾斜モーメントの寄生成分の容易で効果的な補償を伴う特に好ましい設計の変形形態の
場合、支持要素が特に主延在平面内にある回転点を規定する一方で、第1関節点は、特に
光学素子の横方向で、回転点から回転点距離だけ離れている。第1関節点と第2関節点と
の間の関節点距離及び/又は第1回転点距離及び/又は第1傾斜角及び/又は第2傾斜角
は、このとき、アクチュエータユニットの傾斜モーメントによる光学素子の傾斜時に、光
学面の主延在平面内に実質的にある傾斜角が光学面に関して予め規定されるように選択さ
れる。
【0044】
言うまでもなく、達成すべき結像の要件に応じて、又は達成すべき設定の数及び/又は
タイプに応じて、上述した傾斜軸は、光学面に関して予め規定された唯一の傾斜軸であり
得る。したがって、傾斜モーメントは、動作中に予め規定されるか又は発生する唯一の傾
斜モーメントであり得る。
【0045】
しかしながら、本発明の好ましい変形形態の場合、複数の傾斜軸周りで光学素子の複数
の傾斜運動がもたらされる。したがって、こうした場合、上述した傾斜軸は光学面の第1
傾斜軸であり、関連する傾斜モーメントは第1傾斜モーメントである。こうした場合、支
持ユニットは、第1傾斜モーメントに対して横方向に、特に垂直に働く第2傾斜モーメン
トの影響下で、第1傾斜軸に対して横方向に、特に垂直に延びる光学面の第2傾斜軸を規
定する目的で構成される。第2傾斜軸が、この場合も光学面の主延在平面内に実質的にあ
ることが好ましい。
【0046】
原理上、上述した(第1)傾斜軸と同じ措置を第2傾斜軸又はその規定に用いることが
できる。したがって、これにも関連して、支持ユニットが受動要素により第2傾斜軸を規
定する受動装置として設計されることが好ましい。支持ユニットはさらに、少なくとも1
つの案内ユニットを含み、これは、光学素子に接続され且つ第2傾斜軸の規定のために光
学素子の少なくとも2つの運動自由度、特に3つの運動自由度を制限する。
【0047】
支持ユニットは、第2傾斜軸を規定する少なくとも2つの少なくとも部分的に弾性変形
可能な支持要素を含み、これらはさらに、板ばね状に設計された支持要素であることが好
ましい。特に、支持ユニットは、第2傾斜軸を規定する板ばね状に、特に薄い板ばねとし
て設計された少なくとも2つの弾性変形可能な支持要素を含み得る。ここで、支持要素の
それぞれが板ばね主延在平面を規定し、支持要素が、板ばね主延在平面同士が第2傾斜軸
で交差するように相互に対して傾いて配置されるものとすることができる。さらに、支持
要素の少なくとも1つがその板ばね主延在平面において実質的に平行四辺形の外形輪郭を
有し、外形輪郭の少なくとも1対の辺が第2傾斜軸と実質的に平行に延びるものとするこ
とができる。
【0048】
本発明は、原理上、光学面の傾斜時に作動機構の傾斜モーメントが光学面の主延在平面
で光学素子の望ましくない横回転をもたらす寄生成分を発生させる全ての構成に用いるこ
とができる。
【0049】
利点が特によく現れるのは、細い又は細長い光学素子に関連する場合だが、その理由は
、(このような場合に見られる)光学素子の自由端から傾斜軸までの大きな距離に起因し
て、このような寄生的な横回転がこれらの自由端での比較的大きな寄生的撓みにつながる
からである。通常であれば、これらの寄生的撓みのために光学素子間に対応する隙間を設
ける必要があるが、それに対応して光の大きな損失を伴う。
【0050】
したがって、本発明の使用の特に有利な変形形態の場合、光学面は、主延在方向に細長
く且つ/又は主延在方向に対して横方向に細くなるように設計される。特に好ましい配置
構成が得られるのは、光学面が主延在方向の第1最大寸法と、第1最大寸法の10%未満
、好ましくは5%未満、より好ましくは0.2%~2%、より好ましくは0.5%~1%
である主延在方向に対して垂直な第2最大寸法とを有する場合である。
【0051】
アクチュエータユニットは、原理上は任意の適当な所望の方法で設計することができ、
関係する傾斜モーメントを発生させる任意所望の適当なアクチュエータを場合によっては
含むことができる。特に単純に設計されるという理由で好ましい変形形態の場合、アクチ
ュエータユニットは、一動作状態において、主延在平面に対して傾いて働く傾斜モーメン
トを光学素子に専ら加えるよう構成される。付加的又は代替的に、アクチュエータユニッ
トは、一動作状態において、主延在平面に対して傾いて働く傾斜モーメントに対して横方
向に、特に垂直に働く傾斜モーメントを光学素子に専ら加えるよう構成することができる
。
【0052】
本発明は、本発明による少なくとも1つの光学ユニットを有する光学モジュール、特に
ファセットミラーにも関する。これにより、本発明による光学ユニットに関連して上述し
た変形形態及び利点を同程度に実現することが可能となるので、この点で上記説明を参照
されたい。
【0053】
本発明による光学モジュールの場合、光学ユニットは、原理上は適当な方法で相互に接
続された別個のユニットとして設計することができる。しかしながら、好ましい変形形態
の場合、複数の光学ユニットを共有するコンポーネントが設けられる。したがって、複数
の光学ユニットの支持ユニットが共通のベース要素を有するものとすることができる。
【0054】
原理上、任意所望の(反射及び/又は屈折及び/又は回折)光学素子が光学素子として
考慮される。光学素子が、0.1mm2~200mm2、好ましくは0.5mm2~10
0mm2、より好ましくは1.0mm2~50mm2の表面積を特に有する光学有効面を
有するファセット素子であることが好ましい。
【0055】
光学モジュールは、原理上は任意所望の数の光学素子を備えることができる。100個
~100000個、好ましくは100個~10000個、より好ましくは1000個~1
0000個のファセット素子が設けられることが好ましい。本発明のさらに他の変形形態
の場合、50個~10000個、好ましくは100個~7500個、より好ましくは50
0個~5000個のファセット素子を設けることができる。
【0056】
本発明は、特にマイクロリソグラフィ用の光学結像装置であって、第1光学素子群を有
する照明装置(102)と、物体を収容する物体装置と、第2光学素子群を有する投影装
置と、像装置とを備え、照明装置は物体を照明するよう構成され、投影装置は物体の像を
像装置に投影するよう構成される光学結像装置にも関する。照明装置及び/又は投影装置
は、本発明による光学モジュール又は本発明による少なくとも1つの光学ユニットをそれ
ぞれ備える。これにより、本発明による光学ユニットに関連して上述した変形形態及び利
点を同程度に実現することが可能となるので、この点で上記説明を参照されたい。
【0057】
さらに別の態様によれば、本発明は、光学素子、特にファセットミラーのファセット素
子を支持装置により支持する方法であって、光学素子は、主延在平面及び主延在平面内の
主延在方向を規定する光学面、特に細長い光学面を有する方法に関する。この方法では、
傾斜モーメントが光学素子に加わることで、光学素子は傾斜している。傾斜モーメントは
、この場合は主延在平面に対して傾いて働き、支持ユニットが、傾斜モーメントによる光
学面の傾斜時に光学面の主延在平面内に実質的にある光学面の傾斜軸を予め規定する。こ
れによっても、本発明による光学ユニットに関連して上述した変形形態及び利点を同程度
に実現することが可能となるので、この点で上記説明を参照されたい。
【0058】
支持ユニットが、主延在方向と実質的に平行に、特に実質的に同一直線上に延びる光学
面の傾斜軸を予め規定することが好ましい。傾斜軸の規定のために、光学素子の少なくと
も2つの運動自由度、特に3つの運動自由度を制限することも好ましい。
【0059】
傾斜軸の規定のために、光学面の主延在平面に対して垂直に作用する傾斜モーメントの
成分が、支持ユニットの少なくとも1つの案内ユニットにより吸収されることが好ましい
。有利な変形形態の場合、案内ユニットは、光学面の傾斜時に、光学面の主延在平面に対
して垂直に作用する傾斜モーメントの成分の少なくとも一部、特に少なくとも75%、好
ましくは少なくとも85%、より好ましくは90%~100%を補償する対抗モーメント
を光学素子に加える。
【0060】
好ましくは、ここでも、傾斜軸は光学面の第1傾斜軸であり、傾斜モーメントは第1傾
斜モーメントであり、支持ユニットはこのとき、第1傾斜モーメントに対して横方向に、
特に垂直に働く第2傾斜モーメントの影響下で、第1傾斜軸に対して横方向に、特に垂直
に延びる光学面の第2傾斜軸を規定する。ここでも、第2傾斜軸が光学面の主延在平面内
に実質的にあることが好ましい。この場合も、一動作状態において、主延在平面に対して
傾いて働く傾斜モーメントのみが光学素子に加わることが好ましい。付加的又は代替的に
、一動作状態において、主延在平面に対して傾いて働く傾斜モーメントに対して横方向に
、特に垂直に作用する傾斜モーメントのみを、光学素子に加えることができる。
【0061】
最後に、本発明は、特にマイクロリソグラフィ用の光学結像法であって、第1光学素子
群を有する照明装置により物体を照明し、第2光学素子群を有する投影装置により物体の
像を像装置上に生成し、本発明による方法を照明装置及び/又は投影装置の光学素子の支
持に用いる光学結像法に関する。これによっても、本発明による光学ユニットに関連して
上述した変形形態及び利点を同程度に実現することが可能となるので、この点で上記説明
を参照されたい。
【0062】
本発明のさらに他の好ましい実施形態は、従属請求項と、添付図面を参照する以下の好
ましい例示的な実施形態の説明とから明らかとなる。ここで、特許請求の範囲での言及に
関係なく、開示された特徴のいかなる組み合わせも本発明の主題の一部である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】本発明による方法の好ましい実施形態を光学素子の支持に用いる、本発明による光学ユニットの好ましい実施形態を有する本発明による光学モジュールの好ましい実施形態を備えた、本発明による光学結像装置の好ましい実施形態の概略図である。
【
図2】
図1からの本発明による光学モジュールの概略斜視図である。
【
図3】
図2からの本発明による光学ユニットの概略斜視図である。
【
図4】(
図3からの線IV-IVに沿った)
図3からの光学ユニットの一部の概略断面図である。
【
図5】本発明による光学ユニットのさらに別の好ましい変形形態の概略斜視図である。
【
図6】
図5からの光学ユニットの概略側面図である。
【
図7】
図5からの光学ユニットの概略平面図である。
【
図8】本発明による光学ユニットのさらに別の好ましい変形形態の概略側面図である。
【
図9】
図8からの光学ユニットの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
第1実施形態
本発明による光学結像装置101の第1実施形態を、
図1~
図4を参照して以下で説明
する。以下の説明の理解を容易にするために、z方向が重力の方向と一致する直交xyz
座標系を添付図面に導入した。しかしながら、言うまでもなく、このxyz座標系又は空
間内の光学結像装置のコンポーネントの任意所望の他の配置も、本発明の他の変形形態で
選択することができる。
【0065】
図1は、超小型電子回路の製造に用いられるマイクロリソグラフィ装置101の形態の
光学結像装置の、一定の縮尺でない概略図である。結像装置101は、照明装置102及
び光学投影装置103を備え、光学投影装置103は、結像過程でマスク装置104のマ
スク4.1に形成された投影パターンの像を基板装置105の基板105.1に投影する
よう構成される。この目的で、照明装置102は、マスク104.1を照明光ビーム(こ
れ以上具体的には図示せず)で照明する。投影装置103は、続いてマスク104.1か
らの投影光(
図1に線101.1で示す)を受け取り、マスク104.1の投影パターン
の像を基板105.1に、例えばいわゆるウェーハ等に投影する。
【0066】
照明装置102は、特に本発明による光学モジュール106.1を含む光学素子系10
6(
図1には非常に概略的な形態でしか示さない)を備える。以下でより詳細に説明する
ように、光学モジュール106.1はファセットミラーとして設計される。光学投影装置
103は、複数の光学モジュール107.1を含むさらに別の光学素子系107を備える
。光学系106及び107の光学モジュールは、この場合は結像装置101の折り返し光
軸101.1に沿って配置される。
【0067】
図示の例では、結像装置101は、5nm~20nmの波長、より具体的には約13n
mの波長のEUV領域の光で作動する。結果として、照明装置102及び投影装置103
の光学素子は、専ら反射光学素子として設計される。しかしながら、言うまでもなく、異
なる波長で作動する本発明の他の変形形態で、任意所望のタイプの光学素子(例えば、屈
折、反射、又は回折光学素子)を個別に又は任意所望の組み合わせで用いることもできる
。さらに、投影装置103は、本発明によるさらに別の光学モジュールを、例えばさらに
別のファセットミラーの形態で含むこともできる。
【0068】
特に
図2~
図5から分かるように、ファセットミラー106.1は、ベース構造108
の形態の支持構造を含み、ベース構造108はファセット素子109の形態の複数の光学
素子を支持し、ファセット素子109は、それぞれが本発明による光学ユニット110(
図3及び
図4には単一の光学素子110のみを示す)の構成部品である。以下でより詳細
に説明するように、各光学ユニット110は、ファセット素子109が照明設定の変更の
ために能動的に調整可能であるよう設計される。
【0069】
さらに、本例では、ファセット素子109は、ファセット素子群106.2に分割され
、各ファセット素子群106.2のファセット素子109の光学面109.1は、全てが
支持構造108の主延在平面(xy平面)に対して比較的粗く位置合わせされている。図
2から分かるように、ファセット素子群106.2は、この粗い位置合わせに関してそれ
ぞれが異なる。
【0070】
図2には、全体的な明確化のために、ファセット素子群106.2のファセット素子1
09を11個だけ明示的に示してある。しかしながら、言うまでもなく、ファセットミラ
ー106.1は、実際にははるかに多くのファセット素子109を含むこともできる。同
じく言うまでもなく、本発明の他の変形形態の場合、任意所望の数の(任意所望の)光学
素子を対応する支持構造上で支持することができる。
【0071】
ファセット装置の場合、できる限り多くのファセット素子109を設けてできる限り広
範な光の均質化を達成することが好ましいことに留意されたい。特にEUV領域でのリソ
グラフィで用いられるファセット装置の場合、100~100000個、好ましくは10
0個~10000個、より好ましくは1000個~10000個のファット素子が設けら
れることが好ましい。しかしながら、特に検査目的での、例えばマスク検査での使用の場
合、用いられるファセット素子がより少なくてもよい。このような装置では、50個~1
00000個、好ましくは100個~7500個、より好ましくは500個~5000個
のファセット素子が設けられることが好ましい。
【0072】
図示の例では、最小限の放射パワー損失を達成するために、ファセット素子109は、
最大幅が約0.200mm~0.300mm(すなわち約200μm~300μm)の狭
いギャップGが間に残るように各ファセット素子群106.2に配置される。しかしなが
ら、言うまでもなく、本発明の他の変形形態の場合、結像装置の光学的要件に応じて、支
持構造により支持された光学素子の任意所望の他の配置を実現することもできる。
【0073】
特に、それらの設計に応じて、特に光学有効面109.1の設計タイプに応じて、ファ
セット素子109同士をより接近して設定することもできる。したがって、ファセット素
子109間の最大ギャップGは、結果として0.2mm未満でもあり得る。
【0074】
特に
図2、
図3、及び
図4から分かるように、ファセット素子109は、反射面、した
がって光学有効面109.1(以下では光学面109.1とも称する)を有する。反射面
109.1は、ファセット素子109のファセット本体109.2のうちベース構造10
8に面しておらず照明光ビームに面した前側に形成される。
【0075】
ファセット素子109の光学有効面109.1の表面積は、好ましくは0.1mm2~
200mm2、好ましくは0.5mm2~100mm2、より好ましくは1.0mm2~
50mm2である。本例では、光学有効面109.1の表面積は約70mm2である。
【0076】
図示の例では、光学有効面109.1は、実質的に平面状であるようにも構成される。
この場合、光学面109.1は、細長く略弓形の外形輪郭を有する。本例では、光学面1
09.1は、主延在方向DMEに第1最大寸法を有する一方で、主延在方向DMEに対し
て垂直な方向に、本例では第1最大寸法の約6%である第2最大寸法を有する。しかしな
がら、言うまでもなく、他の変形形態の場合には異なる比を選択することもできる。第2
最大寸法が第1最大寸法の10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは0.2%~
2%、より好ましくは0.5%~1%である場合、特に好ましい配置構成が得られる。
【0077】
光学面109.1の外形輪郭は、主延在方向DME及び主延在平面PMEも画定し、主
延在平面PMEは、本例ではいずれの場合もベース構造108の主延在平面108.1に
対して傾いて延びる(本例での傾斜角は約12°である)。主延在方向DMEは、この場
合、主延在平面PMEにおいて光学面109.1が最大寸法を有する方向を示す。しかし
ながら、言うまでもなく、他の変形形態の場合には任意所望の他の、少なくとも部分的に
多角形の且つ/又は少なくとも部分的に湾曲した外形輪郭を設けることができる。
【0078】
図3及び
図4から分かるように、ファセット素子109のほかに、光学ユニット110
は支持装置111を備え、支持装置111によりファセット素子109がベース構造10
8上で支持される。支持装置111は、この場合、ベース構造108上に取り付けられて
ファセット素子109の全重量をベース構造108に導入する受動支持ユニット112を
含み、ファセット素子109及び結果として光学面109.1を傾斜させるよう構成され
たアクチュエータユニット113も含む。
【0079】
この目的で、支持ユニット112は、板ばね112.1~112.4の形態の一連の支
持要素を含み、支持要素はそれぞれが支持ユニット112の弾性変形可能部分を形成し、
それらの機能方法は以下でより詳細に説明する。これらの支持要素112.1~112.
4により、ファセット本体109.2はベース構造108に接続される。この目的で、フ
ァセット本体109.2は、最初に支持ユニット112のヘッド要素112.5に接続さ
れる。ヘッド要素112.5と中間要素112.6との間に、2つの第1板ばね112.
1及び112.2が(支持方向で)相互に運動学的に平行に配置される。中間要素112
.6とベース要素112.7との間には、2つの第2板ばね112.3及び112.4が
(支持方向で)相互に運動学的に平行に配置される。最後に、ベース要素112.7は、
任意所望の適当な方法でベース構造108に実質的に剛接続される。
【0080】
本例では、支持ユニット112は、適当な材料のモノリシックユニットとして設計され
る。しかしながら、言うまでもなく、本発明の他の変形形態の場合、支持ユニットの少な
くとも一部が適当な方法で相互に接続された別個のコンポーネントからなることもできる
、異なる構成タイプを選択することができる。
【0081】
アクチュエータユニット113は、(非常に概略的にしか図示しない)アクチュエータ
113.1及び棒形の調整要素113.2を含む。本例では、アクチュエータ113.1
は、ベース構造108のうちファセット素子109に面しない側に固定され、調整要素1
13.2と相互作用できるようになっている。調整要素113.2(
図3にはその長手方
向軸113.3のみで示す)は、ベース構造108及び支持構造112の対応する凹部を
貫通し、ファセット本体109.2に実質的に剛接続される。
【0082】
光学素子109.1を傾斜させるために、本例では、アクチュエータ113.1が、結
像装置101の第1動作状態で第1力F1(x軸と平行に働く)を、結像装置101の第
2動作状態で第2力F2(y軸と平行に働く)を調整要素113.2の自由端に加える。
本例では、2つの力F1及びF2は、相互に実質的に直交し、ベース構造108の主延在
平面108.1と実質的に平行に延びる平面内にある。
【0083】
同じく
図3及び
図4から分かるように、第1力F1は、調整要素113.2により光学
面109.1の領域で第1傾斜モーメントM1を発生させ、第2力F2は、調整要素11
3.2により光学面109.1の領域で第2傾斜モーメントM2を発生させる。2つの傾
斜モーメントM1及びM2は、この場合はベース構造108の主延在平面108.1と実
質的に平行に延びる平面内にある。
【0084】
第2傾斜モーメントM2は、この場合は光学面109.1の主延在平面PME内にある
が、第1傾斜モーメントM1は、光学面109.1の主延在平面PMEに対して傾斜角A
Iだけ傾いて働き、傾斜角AIは本例ではAI=12°である。
【0085】
主延在平面PMEに対する第1傾斜モーメントM1のこの傾きの結果として、光学面1
09.1の傾斜時に、主延在平面PME内にある第1傾斜モーメントM1の傾斜成分MT
1のほかに、主延在平面PMEに対して垂直な寄生成分MP1がある。
【0086】
支持構造の平面と平行に延びる2つの直交傾斜軸を有するカルダン支持体を通常は提供
する、支持装置の従来の設計の場合、
図3に点線輪郭114(全体的な明確化のために誇
張する)で示すように、光学素子の望ましくない寄生的な横回転運動が主延在平面PME
で発生する。
【0087】
従来の設計の場合、ファセット素子114のこの寄生的な横回転運動の影響として、光
学面の所望の傾斜運動を実現できるように相互に対して対応して大きな隙間又はギャップ
を伴ってしかファセット素子を配置できない。ファセット素子114間のこれらの大きな
ギャップにはさらに、照明光の損失の割合が比較的大きいという結果が伴う。
【0088】
ファセット素子がファセットミラー106.1と同様に配置された従来のファセットミ
ラーの場合、約450μmのギャップ幅が通常は設けられる。こうした従来の設計の場合
、光出力の損失(透過損失とも称する)は約11%である。
【0089】
この透過損失を低減するために、本例では、支持ユニット112が、アクチュエータユ
ニット113の傾斜モーメントM1による光学面109.1の傾斜時に光学面109.1
の主延在平面PME内に実質的にある光学素子109.1の第1傾斜軸TA1を予め規定
するよう構成される。
【0090】
第1傾斜軸TA1は、原理上は主延在平面PME内でほぼ任意所望の向きにすることが
できる。しかしながら、本例では、支持ユニット112が光学面109.1の主延在方向
DMEと実質的に平行に延びる第1傾斜軸TA1を規定することにより、ファセット素子
109の特に高密度の実装又は密接した配置が達成される。結果として、第1傾斜モーメ
ントM1による傾斜時にファセット素子109の特に小さな寄生運動が達成されることが
有利である。
【0091】
言うまでもなく、光学面又はファセット素子の設計に応じて、傾斜時に、ファセット素
子間に対応するギャップを設けることを必要とする何らかの寄生運動が不可避である可能
性がある。これは特に、光学面が直線形態から大きく外れている、すなわち例えば顕著な
弓形設計を有するファセット素子の場合に当てはまる。光学面の形態が直線状であるほど
、本発明により寄生運動を低減することができる。第1傾斜軸TA1が光学面の主延在方
向DMEと同一直線上に延びる場合に、特に好ましい設計が得られる。
【0092】
光学面109.1の平面設計により、本例では、第1傾斜軸TA1は光学面109.1
上に実質的にある。結果として、第1傾斜モーメントM1による傾斜時に特に小さな寄生
運動が得られる。
【0093】
しかしながら、言うまでもなく、湾曲した光学面の場合にはこのような配置構成を実現
することができず、こうした場合、このような寄生運動を最小化するために、第1傾斜軸
が少なくとも1つの傾斜軸点で光学面と交差するか又は光学面に対する接線を形成するこ
とが好ましい。後者の場合、光学面の第1傾斜軸は、光学面が傾斜軸点で規定するその接
平面内にある。結果として、このような場合、寄生運動が最小限である特に好ましい運動
学的条件も得られる。
【0094】
同じく言うまでもなく、他の変形形態の場合、傾斜軸は、原理上は光学面から特定の距
離に延びることもできる。これにより寄生運動が生じるが、特に隣接するファセット素子
同士の同期した寄生運動に従うことを可能にする場合は常に適切であり得るので、寄生運
動にも関わらずファセット素子の高密度の実装が可能である。
【0095】
第1傾斜軸TA1を規定するために、本例では、2つの第1板ばね112.1及び11
2.2が薄く(ファセット素子109の重量から生じる荷重下で)実質的に平面状のばね
要素として設計され、これらは、その主延在平面112.8及び112.9が第1傾斜軸
TA1で交差することにより第1傾斜軸TA2を規定するように相互に対して傾いて配置
される。なお、これに関連して、相互に対して傾いた2つの板ばねがその主延在平面の交
線でこのような傾斜軸を規定することは、十分によく知られているで、この点については
これ以上詳細には論じない。
【0096】
第1傾斜軸TA1がこうして規定されるほかに、第1板ばね112.1及び112.2
の上記配置には、第1板ばね112.1及び112.2が傾斜モーメントM1の寄生成分
MP1により各自の主延在平面112.8又は112.9で剪断荷重を主に受けるという
利点がある。2つの第1板ばね112.1及び112.2は、当然ながら高い剪断抵抗を
有するので、板ばね112.1、112.2の対は、板ばね112.1及び112.2の
大きな変形を伴わずに寄生成分MP1を吸収してそれを対応する対抗弾性モーメントによ
り補償する。
【0097】
換言すれば、板ばね112.1及び112.2は、特に光学面109.1の主延在平面
PMEに対して垂直な回転自由度を制限し、それにより傾斜モーメントM1の寄生成分M
P1の補償を達成することが有利である。
【0098】
同様のことが、2つの第2板ばね112.3及び112.4を含む第2板ばね対にも当
てはまり、これらも同じく、傾斜モーメントM1の寄生成分MP1により各自の主延在平
面112.10又は112.11で剪断荷重を主に受ける。
【0099】
結果として、この設計には、主延在平面PMEに対して傾いているにも関わらず、傾斜
モーメントM1が第1傾斜軸に関する光学面109.1の傾斜のみをほぼ招く一方で、寄
生成分MP1が引き起こした寄生運動は、板ばね112.1~112.4の高い剪断抵抗
によりほぼ完全に防止されるという効果がある。
【0100】
第2傾斜軸TA2も規定するために、本例では、2つの第2板ばね112.3及び11
2.4が同様に薄く実質的に平面状のばね要素として設計され、これらは、主延在平面1
12.10及び112.11が第2傾斜軸TA2で交差することにより第2傾斜軸TA2
を規定するように相互に対して傾いて配置される。
【0101】
本例では、第2傾斜モーメントM2は、光学面109.1の主延在平面PMEにあるの
で、主延在平面PMEに対して垂直な寄生成分を有しない。しかしながら、言うまでもな
く、他の変形形態の場合には主延在平面PMEに対して第2傾斜モーメントM2が傾くこ
ともあり得る。こうした場合、第2傾斜モーメントM2による光学面109.1の傾斜時
に第2傾斜モーメントM2のこのような寄生成分MP2を吸収及び補償し、それにより対
応する寄生運動を回避するために、第1板ばね112.1及び112.2のものと類似の
設計を第2板ばね112.3及び112.4の場合にも選択することができる。
【0102】
傾斜モーメントM1の位置合わせに関する悪条件下でも、結果として本例の場合では、
アクチュエータユニット113、特にアクチュエータ113.1の細密な変更を行わずに
、光学面109.1の主延在平面PME内に実質的にある光学面109.1の傾斜軸TA
1を支持装置111の領域における単純で純粋に受動的な措置により予め規定することが
可能である。したがって、こうした状況下でも、光学面109.1の傾斜時にファセット
素子109の一部の横変位を防止することが可能であることが有利である。
【0103】
したがって、これにより、(例えば照明設定の変更時の)光学面109.1の能動的な
調整性にも関わらず透過損失をほとんど伴わずにファセット素子109の特に高密度の実
装を実現することが可能である。本例の場合、ファット素子109間で依然として必要な
ギャップGにおける透過損失は約4.5%である。結果として、上述した従来の設計(透
過損失約11%)と比べて、約60%の透過損失の低減をファセット素子109の高密度
の実装により達成することができる。
【0104】
支持要素の幾何学的形状は、原理上、各傾斜軸TA1又はTA2を所望の位置に規定す
るよう任意所望の適当な方法で選択することができる。板ばね112.1~112.4が
、長手方向軸に沿った長さ寸法と、長さ寸法の4%未満、好ましくは2%未満、より好ま
しくは0.2%~1%である主延在平面112.8~112.11に対して垂直な最大厚
さ寸法とを有する薄く細長い板ばねとして設計される場合、動的側面で有利な変形形態が
得られる。本例では、板ばね112.1~112.4の最大厚さ寸法は、いずれの場合も
長さ寸法の約5%である。
【0105】
この時点で、板ばね対内で板ばね主延在平面112.8~112.11が各傾斜軸TA
1又はTA2で交差する限り、板ばね112.1~112.4が原理上は任意所望の外形
輪郭を有し得ることが言及されるべきである。本例では、(各板ばね対の)2つの板ばね
112.1、112.2又は112.3、112.4がその板ばね主延在平面において実
質的に平行四辺形の外形輪郭を有し、外形輪郭の一対の辺が傾斜軸と実質的に平行に延び
るという点で、特に製造し易い構成が選択される。
【0106】
特に
図4から分かるように、この場合、これが当てはまるのは、一方ではヘッド要素1
12.5及び中間要素112.6に隣接する板ばね112.1及び112.2の辺を含む
各対、また他方では中間要素112.6及びベース要素112.7に隣接する板ばね11
2.3及び112.4の辺を含む各対である。
【0107】
本例では、主延在平面PMEに対する第1傾斜モーメントM1の傾斜角は、言及したよ
うにAI=12°である。しかしながら、言うまでもなく、本発明は、原理上は主延在平
面PMEに対する傾斜モーメントM1の任意所望の傾きを用いることもできる。この点で
、傾斜モーメントM1の寄生成分MP1は、傾斜角AIが大きいほど大きくなることに留
意されたい。傾斜モーメントが光学面の主延在平面及び/又は主延在方向に対して1°~
30°、好ましくは5°~20°、より好ましくは8°~15°傾いている場合、寄生運
動が比較的小さな特に好ましい結果を通常は達成できる。
【0108】
本発明による方法の場合、本発明による結像プロセスの過程で用いられる光学素子を結
像装置101において支持するために、光学ユニット110を上述した構成でベース構造
108に固定することで、最初に取付けステップにおいて第1ファセット素子109をベ
ース構造108に取り付ける。続いて設定ステップにおいて、調整すべきファセット素子
109の光学面109.1の所望の傾斜が起こる。傾斜は、この場合は結像と同時に且つ
/又は結像時まで起こり得る。
【0109】
この時点で、本発明の特定の変形形態の場合、ファセット素子109の傾斜が2つの傾
斜軸の一方TA1又はTA1に関する傾斜のみに制限され得ることに留意されたい。した
がって、結果として、アクチュエータ113.1は、第1力F1又は第2力F2を発生さ
せることができるよう設計することができる。同様に、当然ながら、アクチュエータ11
3.1が第1力F1のみを発生させることができるようにしてもよい。いくつかの変形形
態の場合、当然ながら、アクチュエータ113.1が力F1及びF2を同時に発生させる
ことができるようにしてもよい。
【0110】
力F1及びF2毎に別個のアクチュエータユニットが設けられる場合、特に単純な構成
のアクチュエータ機構が得られる。これらは単純なリニアアクチュエータであり得る。し
かしながら、言うまでもなく、本発明の他の変形形態の場合には任意所望の他のアクチュ
エータを用いることもできる。特に、対応するモーメントを直接発生させるアクチュエー
タを用いることができる。
【0111】
第2実施形態
本発明による光学ユニット210のさらに別の好ましい実施形態を有する本発明による
光学モジュール206.1のさらに別の好ましい実施形態を、
図1、
図2、及び
図5~図
7を参照して以下で説明する。光学モジュール206.1は、結像装置101において光
学モジュール106.1の代わりに用いることができ(これを、破線で示すファセット素
子209で
図2に示す)、その基本設計及び機能方法が
図3及び
図4からの光学モジュー
ルに対応するので、相違点のみをここで論じる。特に、同一のコンポーネントには同一の
参照符号を設け、同様のコンポーネントには値100を足した参照符号を設ける。以下で
別段の記載のない限り、それらのコンポーネントの特徴、機能、及び利点に関して例示的
な第1実施形態に関連した上記記載を参照されたい。
【0112】
図3及び
図4からの光学モジュール106.1からの相違点は、ファセット素子の設計
にある。特に
図5~
図7から分かるように、ファセット素子209は、実質的に平面状の
反射光学面209.1を有するが、その表面積はこの場合も約70mm
2である。この場
合、光学面109.1は、細長く実質的に矩形の外形輪郭を有し、これはこの場合も主延
在方向DME及び主延在平面PMEも画定し、主延在平面PMEは、本例ではいずれの場
合もベース構造108の主延在平面108.1に対して傾いて延びる(傾斜角は、本例で
も約12%である)。この例でも、光学面は細長い外形輪郭を有し、その第2最大寸法は
さらに第1最大寸法の約6%である。
【0113】
図3及び
図4からの光学モジュール106.1と比べたさらに別の相違点は、支持装置
211、特に支持ユニット212の設計にある。
図5~
図7から分かるように、本例では
、2対の板ばねの代わりに3つの支持要素212.12が設けられ、これらは、ファセッ
ト素子209のファセット本体209.2とベース構造108に取り付け固定されたベー
ス要素209.7との間で三脚状に相互に対して運動学的に平行に配置される。支持ユニ
ット212は、傾斜軸TA1及びTA2の規定のための案内ユニット215も有し、案内
ユニットは、ベース要素212.7とファセット素子209との間で支持要素212.1
2と運動学的に平行に配置される。
【0114】
本例では、支持要素212.12は、単純な細い直線状の棒ばねにより形成された弾性
変形可能な支柱であり、各自の支柱長手方向軸212.13に沿って実質的に同じ長さを
有する。本例では、支柱212.12は、ファセット素子209の重量の荷重のみを受け
る状態でファセット素子209の重量の約98%を吸収してそれをベース要素212.7
に導入するよう設計される。これにより、傾斜モーメントの寄生成分の受動的補償の容易
な組込みも可能にする特に単純な構成の設計を達成することが可能となる。
【0115】
本例での細い支柱212.12の最大横寸法は、その長さ寸法の約KLMN%であり、
それにより動的側面から有利である軽量且つ剛性の設計が得られる。しかしながら、本発
明の他の変形形態の場合、異なる細長度(degree of slenderness)を与えることもでき
る。好ましくは、最大横寸法は、長さ寸法の4%未満、好ましくは2%未満、より好まし
くは0.3%~1.8%である。これが、動的側面から特に有利な設計の達成を可能にす
る。
【0116】
ここでは言うまでもなく、支柱212はさらに、他の変形形態の場合に異なる設計であ
ってもよく、特に任意所望の部分的に湾曲し且つ/又は部分的に多角形の形状を有するこ
とができる。
【0117】
本例では、支柱212.12の支柱長手方向軸212.13は、光学面209.1上に
ある第1傾斜軸TA1の点RPで交差するように相互に対して傾いている。したがって、
玉継手状に設計されたファセット素子209の取付けが、ベース要素212.7上で、し
たがってベース構造108上で、支柱212.12により(十分によく知られた方法で)
実現される。
【0118】
傾斜軸TA1及びTA2の所望の向き及び第1傾斜モーメントM1の寄生成分MP1の
所望の補償をそれぞれ達成するために、運動学的に平行に配置された案内ユニット215
は、支柱212.12により実現されるこの玉継手状の取り付けを補う。
【0119】
この目的で、案内ユニット215は2つの案内要素215.1を有し、これらは、傾斜
モーメントM1の寄生成分MP1を吸収して補償する対応する対抗モーメントを発生させ
るために、ファセット素子209及びベース要素212.7に関節式に接続され、ファセ
ット素子209の横方向TDでファセット素子209の両側に配置される。横方向TDは
、この場合は主延在平面PME内にあり、主延在方向DMEに対して垂直に延びる。
【0120】
ファセット素子209への各案内要素215.1の接続は、ファセット素子209に実
質的に剛接続されて横方向TDに延びる横支柱215.2の自由端によりいずれの場合も
行われる。ベース要素212.7への取り付けは、ベース要素212.7に実質的に剛接
続されてベース構造108の主延在平面108.1に対して実質的に垂直且つ調整要素1
13.2と実質的に平行に延びる柱要素215.3の自由端によりいずれの場合も行われ
る。
【0121】
本例では、案内要素215.1はそれぞれ板ばね状に形成される。しかしながら、言う
までもなく、本発明の他の変形形態の場合、傾斜モーメントM1の寄生成分MP1に関す
る所望の対抗モーメントが案内要素215.1により加えられる限り、任意所望の他の設
計の案内要素215.1を設けることもできる。したがって、他の変形形態の場合、案内
要素215.1は、関節式に取り付られた単純な棒要素として設計することができる。
【0122】
各案内要素215.1は、この場合、ファセット素子209上の第1関節点215.4
及びベース要素212.7上の(より正確には柱要素215.3上の)第2関節点215
.5を規定する。第1関節点215.4と第2関節点215.5との間の接続線215.
6は、この場合は主延在平面PMEに対して垂直且つ第1傾斜モーメントM1と平行に延
びる平面内に延びる。接続線215.6は、この場合は第1傾斜モーメントM1に対して
第1傾斜角AI1=9°だけ傾いて延びる一方で、主延在平面PMEに対して第2傾斜角
AI2=3°だけ傾いて延び、接続線215.6は、主延在平面PMEが第1傾斜モーメ
ントM1に対して傾くのと同じ回転方向に傾く。
【0123】
さらに、第1関節点215.4は、横方向TDに回転点RPからいずれの場合も回転点
距離RPDだけ離れているが、第1関節点215.4及び第2関節点215.5は、関節
点距離APDだけ相互に離れている。
【0124】
第1傾斜軸TA1に関する光学面209.1の傾斜時に得られる補償効果又は補償運動
は、傾斜角AI1又はAI2、関節点距離APD、及び回転点距離RPDにより設定する
ことができる。本例では、設定は、傾斜軸TA1が主延在平面PME内で主延在方向DM
Eと同一直線上にあるよう行われる。特にこの点で、傾斜角AI1又はAI2を各柱要素
215.3とベース要素212.7との間の間隔要素215.7により設定することがで
きるものとする。
【0125】
しかしながら、言うまでもなく、本発明の他の変形形態の場合、光学面209.1の傾
斜時に寄生運動を最小化するか又はそれらを所望の形状に適合させるために、特にファセ
ット素子209の幾何学的形状及び/又は位置合わせに適合させた第1傾斜軸TA1の異
なる位置合わせを行うことができる。
【0126】
ここで、第1傾斜角が好ましくは1°~30°、好ましくは5°~20°、より好まし
くは8°~15°であると同時に、又は代替的に、第2傾斜角は-10°~10°、好ま
しくは-5°~5°、より好ましくは0°~2°であり得る。これにより、傾斜モーメン
トM1の寄生成分MP1の少なくとも部分的な補償をいずれの場合も特に容易に達成する
ことができる。
【0127】
本例では、案内ユニット215は、3つの運動自由度を制限し、具体的には(x方向及
びy方向の)2つの並進自由度及び(z軸に関する)1つの回転自由度、したがってその
結果として、光学面209.1の主延在平面PMEに対して垂直な回転自由度も制限する
ことで、傾斜モーメントM1の対応する寄生成分MP1を補償するようにする。
【0128】
ここでは言うまでもなく、言及したように、特定の変形形態の場合、傾斜モーメントM
1の寄生成分MP1を部分的に補償できるだけである可能性があり、したがって場合によ
っては他の隣接するファセット素子209の寄生運動に従うために特定の寄生運動が許さ
れる可能性もある。案内ユニット215は、その場合、傾斜モーメントM1による光学面
209.1の傾斜時に第1傾斜モーメントM1の寄生成分MP1の少なくとも一部、特に
少なくとも75%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは90%~100%を補
償する対抗モーメントCMがファセット素子209に加わるように設計されることが好ま
しい。
【0129】
同じく
図5~
図7から分かるように、第2力F2はさらに、光学面109.1の領域で
調整要素113.2により第2傾斜モーメントM2を発生させ、第2モーメントM2又は
第2傾斜軸TA2は、案内ユニット215による取り付けの結果として主延在平面PME
と実質的に平行に延びるが、回転点RPと2つの第1関節点215.4により規定された
軸との間にある。これにより、支柱212.12が特定の荷重を受ける結果となるので、
本例は、傾斜が少なくとも主に、好ましくは専ら第1傾斜軸TA1に関して起こる用途に
用いられることが好ましい。
【0130】
第3実施形態
本発明による光学ユニット310のさらに別の好ましい実施形態を有する本発明による
光学モジュール306.1のさらに別の好ましい実施形態を、
図1、
図2、
図6、及び図
9を参照して以下で説明する。光学モジュール306.1は、結像装置101において光
学モジュール106.1の代わりに用いることができ、その基本設計及び機能方法が
図5
~
図7からの光学モジュールに対応するので、相違点のみをここで論じる。特に、同一の
コンポーネントには同一の参照符号を設け、同様のコンポーネントには値100を足した
参照符号を設ける。以下で別段の記載のない限り、それらのコンポーネントの特徴、機能
、及び利点に関して例示的な第1及び第2実施形態に関連した上記記載を参照されたい。
【0131】
図5~
図7からの光学モジュール206.1と比べた唯一の相違点は、案内ユニット3
15にある。
図8及び
図9から分かるように、2つの柱要素の代わりに、案内ユニット3
15の場合、ヒンジ継手として設計されたフレクシャ315.8によりベース要素212
.7上に関節接合された単一の実質的に板形の柱要素315.3が設けられる。
【0132】
これにより、傾斜軸TA1及びTA2の規定のために、本例では、案内ユニット315
が2つの運動自由度のみ、具体的には(x方向の)1つの並進自由度及び(z軸に関する
)1つの回転自由度、したがってその結果として、光学面209.1の主延在平面PME
に対して垂直な回転自由度も制限することで、傾斜モーメントM1の対応する寄生成分M
P1を補償するようにするという効果が得られる。
【0133】
図8及び
図9から分かるように、それに加えて、これにより、第2力F2が光学面10
9.1の領域で調整要素113.2により第2傾斜モーメントM2を発生させ、第2モー
メントM2又は第2傾斜軸TA2は、その場合、案内ユニット315による取り付けの結
果として実質的に主延在平面PME内に、正確には回転点RPを通って延びるので、第2
傾斜モーメントM2による傾斜時に寄生運動も大幅に排除される。
【0134】
本発明は、専らファセットミラーに基づいて上述した。しかしながら、言うまでもなく
、本発明を任意所望の他の光学モジュール又は光学素子に関連して用いることもできる。
【0135】
本発明は、専らマイクロリソグラフィの分野からの例にも基づいて上述した。しかしな
がら、言うまでもなく、本発明を任意所望の他の光学的用途、特に他の波長での結像法に
関連して用いることもできる。
【0136】
したがって、本発明は、物体の検査、例えば、マイクロリソグラフィ用のマスクの完全
性等を検査するいわゆるマスク検査に関連して用いることができる。
図1では、(さらな
る加工のために)マスク104.1の投影パターンの結像を感知するセンサユニットが、
続いて基板105.1の代わりとなる。このマスク検査は、その場合、その後のマイクロ
リソグラフィプロセスで用いられるのと実質的に同じ波長で行うことができる。しかしな
がら、そこから外れた任意所望の波長を検査に用いることも同様に可能である。
【0137】
最後に、本発明は、添付の特許請求の範囲に記載される特徴の特定の組み合わせを示す
特定の例示的な実施形態に基づいて上述した。この時点で、本発明の主題がこれらの特徴
の組み合わせに制限されるのではなく、本発明の主題が、添付の特許請求の範囲から明ら
かとなるような他の全ての特徴の組み合わせも含むことに明らかに留意されたい。