(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-25
(45)【発行日】2022-02-02
(54)【発明の名称】連続式重合による共役ジエン系重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 36/04 20060101AFI20220126BHJP
C08F 2/00 20060101ALI20220126BHJP
C08F 4/54 20060101ALI20220126BHJP
【FI】
C08F36/04
C08F2/00 Z
C08F4/54
(21)【出願番号】P 2020520024
(86)(22)【出願日】2017-12-26
(86)【国際出願番号】 KR2017015490
(87)【国際公開番号】W WO2019083092
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2020-04-07
(31)【優先権主張番号】10-2017-0140413
(32)【優先日】2017-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ソク-チュン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ソン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ス-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】アン、チョン-ホン
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/069494(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/080766(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 36/00- 36/22
C08F 2/00- 4/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2器以上の反応器で行われる連続製造方法であって、
第1反応器に共役ジエン系単量体を投入して共役ジエン系重合体を製造し、この際、反応混合物中の単量体に対する重合体の重量比が5.6以上となるように重合反応させ、第2反応器に前記反応混合物を移送するステップと、
前記第2反応器で、反応混合物中の単量体に対する重合体の重量比が49以下となるように重合反応させるステップと、を含み、
前記第1反応器および第2反応器での重合は、炭化水素溶媒中で、触媒組成物の存在下で行われ、
前記第2反応器での滞留時間が、第1反応器での滞留時間の75%以下
であり、
前記触媒組成物が、ランタン系希土類元素含有化合物を含み、
前記ランタン系希土類元素含有化合物が、下記化学式1で表されるネオジム化合物を含む共役ジエン系重合体の製造方法。
【化5】
(前記化学式1中、
Ra~Rcは、互いに独立して、水素、または炭素数1~12のアルキル基であり、
但し、Ra~Rcの全てが同時に水素であることはない。)
【請求項2】
前記第1反応器での重合は、反応混合物中の単量体に対する重合体の割合が9.0以上となるように行われる、請求項1に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項3】
前記第2反応器での重合は、反応混合物中の単量体に対する重合体の割合が24以下となるように行われる、請求項1または2に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項4】
前記第2反応器での滞留時間が、第1反応器での滞留時間の50%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項5】
前記共役ジエン系単量体が、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、および2,4-ヘキサジエンからなる群から選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項6】
前記第1反応器および第2反応器での重合反応は、-20℃以上200℃以下の温度で行う、請求項1~5のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項7】
前記ネオジム化合物は、
Nd(2-エチルヘキサノエート)
3
、Nd(2,2-ジエチルデカノエート)
3、Nd(2,2-ジプロピルデカノエート)
3、Nd(2,2-ジブチルデカノエート)
3、Nd(2,2-ジヘキシルデカノエート)
3、Nd(2,2-ジオクチルデカノエート)
3、Nd(2-エチル-2-プロピルデカノエート)
3、Nd(2-エチル-2-ブチルデカノエート)
3、Nd(2-エチル-2-ヘキシルデカノエート)
3、Nd(2-プロピル-2-ブチルデカノエート)
3、Nd(2-プロピル-2-ヘキシルデカノエート)
3、Nd(2-プロピル-2-イソプロピルデカノエート)
3、Nd(2-ブチル-2-ヘキシルデカノエート)
3、Nd(2-ヘキシル-2-オクチルデカノエート)
3、Nd(2,2-ジエチルオクタノエート)
3、Nd(2,2-ジプロピルオクタノエート)
3、Nd(2,2-ジブチルオクタノエート)
3、Nd(2,2-ジヘキシルオクタノエート)
3、Nd(2-エチル-2-プロピルオクタノエート)
3、Nd(2-エチル-2-ヘキシルオクタノエート)
3、Nd(2,2-ジエチルノナノエート)
3、Nd(2,2-ジプロピルノナノエート)
3、Nd(2,2-ジブチルノナノエート)
3、Nd(2,2-ジヘキシルノナノエート)
3、Nd(2-エチル-2-プロピルノナノエート)
3、およびNd(2-エチル-2-ヘキシルノナノエート)
3からなる群から選択される1つ以上である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項8】
前記触媒組成物は、アルキル化剤、ハロゲン化物、および共役ジエン系単量体の少なくとも1つを含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載の共役ジエン系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年11月13日付けの韓国特許出願第10-2017-0150511号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、反応器の汚染度を低減させることができるとともに、リニアリティが高く、シス-1,4結合の含量が高い共役ジエン系重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、自動車に対する低燃費化の要求に伴い、タイヤ用ゴム材料として、走行抵抗が少なく、耐磨耗性、引張特性に優れるとともに、ウェットスキッド抵抗で代表される調整安定性も兼備した共役ジエン系重合体が求められている。
【0004】
タイヤの走行抵抗を減少させるための方法としては、加硫ゴムのヒステリシス損を小さくする方法が挙げられ、かかる加硫ゴムの評価指標としては、50℃~80℃の反発弾性、tanδ、グッドリッチ発熱などが用いられている。すなわち、前記温度での反発弾性が大きいか、tanδまたはグッドリッチ発熱が小さいゴム材料が好ましい。
【0005】
ヒステリシス損の小さいゴム材料としては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、またはポリブタジエンゴムなどが知られているが、これらは、ウェットスキッド抵抗性が小さいという問題がある。そこで、近年、スチレン-ブタジエンゴム(以下、SBRという)またはブタジエンゴム(以下、BRという)などの共役ジエン系(共)重合体が乳化重合や溶液重合により製造され、タイヤ用ゴムとして用いられている。
【0006】
前記BRまたはSBRをタイヤ用ゴム材料として用いる場合は、タイヤに要求される物性を得るために、通常、シリカやカーボンブラックなどの充填剤をともにブレンドして使用している。しかし、前記BRまたはSBRと充填剤の親和性が良くないため、耐磨耗性、耐クラック性、または加工性などを含む物性が却って低下するという問題がある。
【0007】
そこで、SBRとシリカやカーボンブラックなどの充填剤の分散性を高めるための方法として、有機リチウムを用いたアニオン重合により得られる共役ジエン系重合体の重合活性部位を、充填剤との相互作用が可能な官能基に変性する方法が提案されている。例えば、共役ジエン系重合体の重合活性末端をスズ系化合物に変性したり、アミノ基を導入する方法、またはアルコキシシラン誘導体に変性する方法などが提案されている。
【0008】
また、BRとシリカやカーボンブラックなどの充填剤の分散性を高めるための方法として、ランタン系希土類元素化合物を含む触媒組成物を用いた配位重合により得られるリビング重合体において、リビング活性末端を特定のカップリング剤や変性剤によって変性する方法が開発されている。
【0009】
一方、SBRまたはBRは、回分式(batch)または連続式重合により製造される。回分式重合により製造される場合、製造された重合体の分子量分布が狭いため物性改善の点で利点があるが、生産性が低く、加工性がよくないという問題がある。回分式重合において加工性を改善するために、重合体鎖中に、分岐度を向上させるために、重合時に特定の転換率の時に単量体を分割して投入する方法を適用した例があるが、これもまた、回分式重合において生じる、生産性が低いという問題は依然として存在する。
【0010】
一方、連続式重合により製造される場合、重合が連続して行われるため、生産性に優れ、加工性が改善される点で利点があるが、分子量分布が広いため、物性が良くないという問題がある。また、連続式重合は、回分式重合に比べては生産性が高いが、反応器の汚染低減による連続運転時間の増大が持続的に求められている。
【0011】
したがって、SBRまたはBRの製造時に、生産性および加工性に優れ、物性をともに改善させることができる方法が求められている状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、2器以上の反応器を利用した連続式重合を適用し、この際、各反応器で行われる重合反応を、重合体と単量体の割合を調節して制御することで、リニアリティおよびシス-1,4結合の含量が高い共役ジエン系重合体を提供することができるとともに、反応器の汚染度を著しく低減し、生産性を増大させることができる共役ジエン系重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明は、2器以上の反応器で行われる連続製造方法であって、第1反応器に共役ジエン系単量体を投入して共役ジエン系重合体を製造し、この際、反応混合物中の単量体に対する重合体の重量比が5.6以上となるように重合反応させ、第2反応器に前記反応混合物を移送するステップと、前記第2反応器で、反応混合物中の単量体に対する重合体の重量比が49以下となるように重合反応させるステップと、を含み、前記第1反応器および第2反応器での重合は、炭化水素溶媒中で、触媒組成物の存在下で行われる、共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る製造方法は、2器以上の反応器を利用した連続式重合を適用し、この際、各反応器で行われる重合反応を、重合体と単量体の割合を調節して制御することで、リニアリティおよびシス-1,4結合の含量が高い共役ジエン系重合体を提供することができるとともに、反応器の汚染度を著しく低減し、生産性を増大させることができる共役ジエン系重合体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明が容易に理解されるように、本発明をより詳細に説明する。
【0017】
本明細書および請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0018】
本発明において用いる用語「連続式重合」は、重合に関与する物質を反応器内に連続的に供給しながら、重合されて生成された生成物を連続的に排出する工程を意味し得る。
【0019】
本発明において用いる用語「反応物」は、重合が完了されて活性重合体または共役ジエン系重合体を得る前に、重合中の各反応器内で重合が行われている物質を意味し、例えば、触媒組成物、共役ジエン系単量体、および生成された重合体形態の中間体の少なくとも1つを含むものであってもよい。
【0020】
本発明は、2器以上の反応器で製造する共役ジエン系重合体の製造方法であって、第1反応器と第2反応器での重合反応を制御し、この際、制御要素として、各反応器での重合体と単量体の重量比を調節して制御することで、反応器の汚染度を低減させて生産性を著しく増大させながらも、リニアリティが高く、粘弾性特性が改善された共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【0021】
本発明の一実施形態に係る前記製造方法は、2器以上の反応器で行われる連続製造方法であって、第1反応器に共役ジエン系単量体を投入して共役ジエン系重合体を製造し、この際、反応混合物中の単量体に対する重合体の重量比が5.6以上となるように重合反応させ、第2反応器に前記反応混合物を移送するステップと、前記第2反応器で、反応混合物中の単量体に対する重合体の重量比が49.0以下となるように重合反応させるステップと、を含み、前記第1反応器および第2反応器での重合は、炭化水素溶媒中で、触媒組成物の存在下で行われることを特徴とする。
【0022】
前記共役ジエン系単量体は、特に制限されるものではないが、例えば、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、イソプレン、および2-フェニル-1,3-ブタジエンからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0023】
前記炭化水素溶媒は、特に制限されるものではないが、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、およびキシレンからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0024】
前記触媒組成物は、ランタン系希土類元素含有化合物を含んでもよい。
【0025】
前記触媒組成物は、共役ジエン系単量体の総100gを基準として、ランタン系希土類元素含有化合物が0.1mmol~0.5mmolとなるようにする量で用いてもよく、具体的には、共役ジエン系単量体の総100gを基準として、前記ランタン系希土類元素含有化合物が0.1mmol~0.4mmol、より具体的には0.1mmol~0.25mmolとなるようにする量で用いてもよい。
【0026】
前記ランタン系希土類元素含有化合物は、特に制限されるものではないが、例えば、ランタン、ネオジム、セリウム、ガドリニウム、またはプラセオジムなどのような、原子番号57~71の希土類金属の何れか1つまたは2つ以上の化合物であってもよく、より具体的には、ネオジム、ランタン、およびガドリニウムからなる群から選択される1つ以上を含む化合物であってもよい。
【0027】
また、前記ランタン系希土類元素含有化合物としては、上記の希土類元素含有カルボン酸塩(例えば、ネオジム酢酸塩、ネオジムアクリル酸塩、ネオジムメタクリル酸塩、ネオジムグルコン酸塩、ネオジムクエン酸塩、ネオジムフマル酸塩、ネオジム乳酸塩、ネオジムマレイン酸塩、ネオジムシュウ酸塩、ネオジム2-エチルヘキサノエート、ネオジムネオデカノエートなど);有機リン酸塩(例えば、ネオジムジブチルリン酸塩、ネオジムジペンチルリン酸塩、ネオジムジヘキシルリン酸塩、ネオジムジヘプチルリン酸塩、ネオジムジオクチルリン酸塩、ネオジムビス(1-メチルヘプチル)リン酸塩、ネオジムビス(2-エチルヘキシル)リン酸塩、またはネオジムジデシルリン酸塩など);有機ホスホン酸塩(例えば、ネオジムブチルホスホン酸塩、ネオジムペンチルホスホン酸塩、ネオジムヘキシルホスホン酸塩、ネオジムヘプチルホスホン酸塩、ネオジムオクチルホスホン酸塩、ネオジム(1-メチルヘプチル)ホスホン酸塩、ネオジム(2-エチルヘキシル)ホスホン酸塩、ネオジムデシルホスホン酸塩、ネオジムドデシルホスホン酸塩、またはネオジムオクタデシルホスホン酸塩など);有機ホスフィン酸塩(例えば、ネオジムブチルホスフィン酸塩、ネオジムペンチルホスフィン酸塩、ネオジムヘキシルホスフィン酸塩、ネオジムヘプチルホスフィン酸塩、ネオジムオクチルホスフィン酸塩、ネオジム(1-メチルヘプチル)ホスフィン酸塩、またはネオジム(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸塩など);カルバミン酸塩(例えば、ネオジムジメチルカルバミン酸塩、ネオジムジエチルカルバミン酸塩、ネオジムジイソプロピルカルバミン酸塩、ネオジムジブチルカルバミン酸塩、またはネオジムジベンジルカルバミン酸塩など);ジチオカルバミン酸塩(例えば、ネオジムジメチルジチオカルバミン酸塩、ネオジムジエチルジチオカルバミン酸塩、ネオジムジイソプロピルジチオカルバミン酸塩、またはネオジムジブチルジチオカルバミン酸塩など);キサントゲン酸塩(例えば、ネオジムメチルキサントゲン酸塩、ネオジムエチルキサントゲン酸塩、ネオジムイソプロピルキサントゲン酸塩、ネオジムブチルキサントゲン酸塩、またはネオジムベンジルキサントゲン酸塩など);β-ジケトネート(例えば、ネオジムアセチルアセトネート、ネオジムトリフルオロアセチルアセトネート、ネオジムヘキサフルオロアセチルアセトネート、またはネオジムベンゾイルアセトネートなど);アルコキシドまたはアリルオキシド(例えば、ネオジムメトキシド、ネオジムエトキシド、ネオジムイソプロポキシド、ネオジムフェノキシド、またはネオジムノニルフェノキシドなど);ハロゲン化物または擬似ハロゲン化物(ネオジムフッ化物、ネオジム塩化物、ネオジム臭化物、ネオジムヨウ化物、ネオジムシアン化物、ネオジムシアン酸塩、ネオジムチオシアン酸塩、またはネオジムアジドなど);オキシハライド(例えば、ネオジムオキシフルオリド、ネオジムオキシクロリド、またはネオジムオキシブロミドなど);または1以上の希土類元素-炭素結合を含む有機ランタン系希土類元素含有化合物(例えば、Cp3Ln、Cp2LnR、Cp2LnCl、CpLnCl2、CpLn(シクロオクタテトラエン)、(C5Me5)2LnR、LnR3、Ln(アリル)3、またはLn(アリル)2Clなど、前記式中、Lnは希土類金属元素であり、Rはヒドロカルビル基である)などが挙げられ、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物を含んでもよい。
【0028】
具体的に、前記ランタン系希土類元素含有化合物は、下記化学式1で表されるネオジム化合物を含んでもよい。
【0029】
【0030】
前記化学式1中、Ra~Rcは、互いに独立して、水素、または炭素数1~12のアルキル基であり、但し、Ra~Rcの全てが同時に水素であることはない。
【0031】
より具体的に、前記ネオジム化合物は、Nd(2,2-ジエチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルデカノエート)3、Nd(2,2-ジブチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルデカノエート)3、Nd(2,2-ジオクチルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-ブチルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-ブチルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-イソプロピルデカノエート)3、Nd(2-ブチル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-ヘキシル-2-オクチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジエチルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジブチルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルオクタノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルオクタノエート)3、Nd(2-エチル-2-ヘキシルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジエチルノナノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルノナノエート)3、Nd(2,2-ジブチルノナノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルノナノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルノナノエート)3、およびNd(2-エチル-2-ヘキシルノナノエート)3からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0032】
また、他の例として、オリゴマー化の懸念なく、溶媒に対する優れた溶解度、触媒活性種への転換率、およびそれによる触媒活性の優れた改善効果を考慮すると、前記ランタン系希土類元素含有化合物は、より具体的に、前記化学式1中、Raが炭素数4~12のアルキル基であり、RbおよびRcは、それぞれ独立して、水素または炭素数2~8のアルキル基であって、但し、RbおよびRcが同時に水素であることはないネオジム系化合物であってもよい。
【0033】
より具体的な例として、前記化学式1中、前記Raは、炭素数6~8のアルキル基であり、RbおよびRcは、それぞれ独立して、水素、または炭素数2~6のアルキル基であって、この際、前記RbおよびRcが同時に水素であることはなく、その具体的な例としては、Nd(2,2-ジエチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルデカノエート)3、Nd(2,2-ジブチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルデカノエート)3、Nd(2,2-ジオクチルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-ブチルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-ブチルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-イソプロピルデカノエート)3、Nd(2-ブチル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-ヘキシル-2-オクチルデカノエート)3、Nd(2-t-ブチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジエチルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジブチルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルオクタノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルオクタノエート)3、Nd(2-エチル-2-ヘキシルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジエチルノナノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルノナノエート)3、Nd(2,2-ジブチルノナノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルノナノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルノナノエート)3、およびNd(2-エチル-2-ヘキシルノナノエート)3からなる群から選択される1種以上であってもよく、中でも、前記ネオジム系化合物は、Nd(2,2-ジエチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルデカノエート)3、Nd(2,2-ジブチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルデカノエート)3、およびNd(2,2-ジオクチルデカノエート)3からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0034】
さらに具体的に、前記化学式1中、前記Raは、炭素数6~8のアルキル基であり、RbおよびRcは、それぞれ独立して、炭素数2~6のアルキル基であってもよい。
【0035】
このように、前記化学式1で表されるネオジム系化合物は、α(アルファ)位に、炭素数2以上の様々な長さのアルキル基を置換基として含むカルボキシレートリガンドを含むことで、ネオジムの中心金属の周りに立体的な変化を誘導し、化合物同士の絡み合い現象を遮断することができ、これにより、オリゴマー化を抑えることができる効果がある。また、かかるネオジム系化合物は、溶媒に対する溶解度が高く、触媒活性種への転換が困難な中心部分に位置するネオジムの割合が減少されるため、触媒活性種への転換率が高いという効果がある。
【0036】
また、本発明の一実施形態に係る前記ランタン系希土類元素含有化合物の溶解度は、常温(25℃)で、炭化水素溶媒6g当たり約4g以上であってもよい。
【0037】
本発明において、ネオジム系化合物の溶解度は、濁っている現象なしにきれいに溶解される程度を意味する。このように高い溶解度を有することで、優れた触媒活性を示すことができる。
【0038】
また、本発明の一実施形態に係る前記ランタン系希土類元素含有化合物は、ルイス塩基との反応物の形態で用いられてもよい。この反応物は、ルイス塩基により、ランタン系希土類元素含有化合物の溶媒に対する溶解性を向上させ、長期間にわたって安定した状態で保存できる効果がある。前記ルイス塩基は、一例として、希土類元素1モル当たり30モル以下、または1~10モルの割合で用いられてもよい。前記ルイス塩基は、一例として、アセチルアセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン、N,N-ジメチルホルムアミド、チオフェン、ジフェニルエーテル、トリエチルアミン、有機リン化合物、または1価もしくは2価のアルコールなどであってもよい。
【0039】
一方、前記触媒組成物は、ランタン系希土類元素含有化合物とともに、アルキル化剤、ハロゲン化物、および共役ジエン系単量体の少なくとも1つをさらに含んでもよい。
【0040】
すなわち、本発明の一実施形態に係る触媒組成物は、ランタン系希土類元素含有化合物を含み、アルキル化剤、ハロゲン化物、および共役ジエン系単量体の少なくとも1つをさらに含んでもよい。
【0041】
以下、前記(a)アルキル化剤、(b)ハロゲン化物、および(c)共役ジエン系単量体を分けて具体的に説明する。
【0042】
(a)アルキル化剤
前記アルキル化剤は、ヒドロカルビル基を他の金属に伝達できる有機金属化合物であって、助触媒の役割を担うことができる。前記アルキル化剤としては、ジエン系重合体の製造時にアルキル化剤として通常用いられるものであれば特に制限されずに使用可能であり、例えば、有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、または有機リチウム化合物などのように、重合溶媒に可溶性であり、且つ金属-炭素の結合を含有する有機金属化合物であってもよい。
【0043】
具体的には、前記有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-t-ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)、ジ-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジ-p-トリルアルミニウムヒドリド、ジベンジルアルミニウムヒドリド、フェニルエチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、フェニルイソプロピルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、フェニルイソブチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、p-トリルエチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソプロピルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソブチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ベンジルエチルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソブチルアルミニウムヒドリド、またはベンジル-n-オクチルアルミニウムヒドリドなどのジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド;エチルアルミニウムジヒドリド、n-プロピルアルミニウムジヒドリド、イソプロピルアルミニウムジヒドリド、n-ブチルアルミニウムジヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド、またはn-オクチルアルミニウムジヒドリドなどのようなヒドロカルビルアルミニウムジヒドリドなどが挙げられる。前記有機マグネシウム化合物としては、ジエチルマグネシウム、ジ-n-プロピルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、またはジベンジルマグネシウムなどのようなアルキルマグネシウム化合物などが挙げられ、また、前記有機リチウム化合物としては、n-ブチルリチウムなどのようなアルキルリチウム化合物などが挙げられる。
【0044】
また、前記有機アルミニウム化合物はアルミノキサンであってもよい。
【0045】
前記アルミノキサンは、トリヒドロカルビルアルミニウム系化合物に水を反応させることで製造されるものであって、具体的には、下記化学式2aの直鎖状アルミノキサン、または下記化学式2bの環状アルミノキサンであってもよい。
【0046】
【0047】
【0048】
前記化学式2aおよび2b中、Rは、炭素原子を介してアルミニウム原子に結合する1価の有機基であって、ヒドロカルビル基であってもよく、xおよびyは、それぞれ独立して、1以上の整数、具体的には1~100、より具体的には2~50の整数であってもよい。
【0049】
さらに具体的には、前記アルミノキサンは、メチルアルミノキサン(MAO)、変性メチルアルミノキサン(MMAO)、エチルアルミノキサン、n-プロピルアルミノキサン、イソプロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、n-ペンチルアルミノキサン、ネオペンチルアルミノキサン、n-ヘキシルアルミノキサン、n-オクチルアルミノキサン、2-エチルヘキシルアルミノキサン、シクロヘキシルアルミノキサン、1-メチルシクロペンチルアルミノキサン、フェニルアルミノキサン、または2,6-ジメチルフェニルアルミノキサンなどであってもよく、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。
【0050】
また、前記変性メチルアルミノキサンは、メチルアルミノキサンのメチル基を、修飾基(R)、具体的には、炭素数2~20の炭化水素基で置換したものであって、具体的には、下記化学式3で表される化合物であってもよい。
【0051】
【0052】
前記化学式3中、Rは、上述の定義のとおりであり、mおよびnは、それぞれ独立して、2以上の整数であってもよい。また、前記化学式3中、Meはメチル基(methyl group)を表す。
【0053】
具体的に、前記化学式3中、前記Rは、炭素数2~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基、炭素数7~20のアルキルアリール基、アリル基、または炭素数2~20のアルキニル基であってもよく、より具体的には、エチル基、イソブチル基、ヘキシル基、またはオクチル基などのような炭素数2~10のアルキル基であり、さらに具体的には、イソブチル基であってもよい。
【0054】
より具体的に、前記変性メチルアルミノキサンは、メチルアルミノキサンのメチル基の約50モル%~90モル%を、上記の炭化水素基で置換したものであってもよい。変性メチルアルミノキサン中の置換された炭化水素基の含量が前記範囲内である場合、アルキル化を促進させ、触媒活性を増加させることができる。
【0055】
かかる変性メチルアルミノキサンは、通常の方法により製造されることができ、具体的には、トリメチルアルミニウムとトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムを用いて製造されることができる。この際、前記アルキルアルミニウムは、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、またはトリオクチルアルミニウムなどであってもよく、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。
【0056】
また、本発明の一実施形態に係る前記触媒組成物は、前記ランタン系希土類元素含有化合物1モルに対して、前記アルキル化剤を1~200モル比、具体的には1~100モル比、より具体的には3~20モル比で含んでもよい。前記アルキル化剤を200モル比を超えて含む場合には、重合体の製造時に触媒反応の制御が容易ではなく、過量のアルキル化剤が副反応を起こす恐れがある。
【0057】
(b)ハロゲン化物
前記ハロゲン化物としては、特に制限されるものではないが、例えば、ハロゲン単体、ハロゲン間化合物(interhalogen compound)、ハロゲン化水素、有機ハライド、非金属ハライド、金属ハライド、または有機金属ハライドなどが挙げられ、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。中でも、触媒活性の向上、およびそれによる反応性の優れた改善効果を考慮すると、前記ハロゲン化物としては、有機ハライド、金属ハライド、および有機金属ハライドからなる群から選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。
【0058】
前記ハロゲン単体としては、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素が挙げられる。
【0059】
また、前記ハロゲン間化合物としては、ヨウ素モノクロリド、ヨウ素モノブロミド、ヨウ素トリクロリド、ヨウ素ペンタフルオリド、ヨウ素モノフルオリド、またはヨウ素トリフルオリドなどが挙げられる。
【0060】
また、前記ハロゲン化水素としては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、またはヨウ化水素が挙げられる。
【0061】
また、前記有機ハライドとしては、t-ブチルクロリド(t-BuCl)、t-ブチルブロミド、アリルクロリド、アリルブロミド、ベンジルクロリド、ベンジルブロミド、クロロ-ジ-フェニルメタン、ブロモ-ジ-フェニルメタン、トリフェニルメチルクロリド、トリフェニルメチルブロミド、ベンジリデンクロリド、ベンジリデンブロミド、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン(TMSCl)、ベンゾイルクロリド、ベンゾイルブロミド、プロピオニルクロリド、プロピオニルブロミド、メチルクロロホルメート、メチルブロモホルメート、ヨードメタン、ジヨードメタン、トリヨードメタン(「ヨードホルム」とも呼ばれる)、テトラヨードメタン、1-ヨードプロパン、2-ヨードプロパン、1,3-ジヨードプロパン、t-ブチルヨージド、2,2-ジメチル-1-ヨードプロパン(「ネオペンチルヨージド」とも呼ばれる)、アリルヨージド、ヨードベンゼン、ベンジルヨージド、ジフェニルメチルヨージド、トリフェニルメチルヨージド、ベンジリデンヨージド(「ベンザルヨージド」とも呼ばれる)、トリメチルシリルヨージド、トリエチルシリルヨージド、トリフェニルシリルヨージド、ジメチルジヨードシラン、ジエチルジヨードシラン、ジフェニルジヨードシラン、メチルトリヨードシラン、エチルトリヨードシラン、フェニルトリヨードシラン、ベンゾイルヨージド、プロピオニルヨージド、またはメチルヨードホルメートなどが挙げられる。
【0062】
また、前記非金属ハライドとしては、三塩化リン、三臭化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン、オキシ臭化リン、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、四フッ化ケイ素、四塩化ケイ素(SiCl4)、四臭化ケイ素、三塩化ヒ素、三臭化ヒ素、四塩化セレン、四臭化セレン、四塩化テルル、四臭化テルル、四ヨウ化ケイ素、三ヨウ化ヒ素、四ヨウ化テルル、三ヨウ化ホウ素、三ヨウ化リン、オキシヨウ化リン、または四ヨウ化セレンなどが挙げられる。
【0063】
また、前記金属ハライドとしては、四塩化スズ、四臭化スズ、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三臭化アンチモン、三フッ化アルミニウム、三塩化ガリウム、三臭化ガリウム、三フッ化ガリウム、三塩化インジウム、三臭化インジウム、三フッ化インジウム、四塩化チタン、四臭化チタン、二塩化亜鉛、二臭化亜鉛、二フッ化亜鉛、三ヨウ化アルミニウム、三ヨウ化ガリウム、三ヨウ化インジウム、四ヨウ化チタン、二ヨウ化亜鉛、四ヨウ化ゲルマニウム、四ヨウ化スズ、二ヨウ化スズ、三ヨウ化アンチモン、または二ヨウ化マグネシウムが挙げられる。
【0064】
また、前記有機金属ハライドとしては、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジエチルアルミニウムフルオリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムジブロミド、メチルアルミニウムジフルオリド、エチルアルミニウムジフルオリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)、イソブチルアルミニウムセスキクロリド、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、n-ブチルマグネシウムクロリド、n-ブチルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムクロリド、トリメチルスズクロリド、トリメチルスズブロミド、トリエチルスズクロリド、トリエチルスズブロミド、ジ-t-ブチルスズジクロリド、ジ-t-ブチルスズジブロミド、ジ-n-ブチルスズジクロリド、ジ-n-ブチルスズジブロミド、トリ-n-ブチルスズクロリド、トリ-n-ブチルスズブロミド、メチルマグネシウムヨージド、ジメチルアルミニウムヨージド、ジエチルアルミニウムヨージド、ジ-n-ブチルアルミニウムヨージド、ジイソブチルアルミニウムヨージド、ジ-n-オクチルアルミニウムヨージド、メチルアルミニウムジヨージド、エチルアルミニウムジヨージド、n-ブチルアルミニウムジヨージド、イソブチルアルミニウムジヨージド、メチルアルミニウムセスキヨージド、エチルアルミニウムセスキヨージド、イソブチルアルミニウムセスキヨージド、エチルマグネシウムヨージド、n-ブチルマグネシウムヨージド、イソブチルマグネシウムヨージド、フェニルマグネシウムヨージド、ベンジルマグネシウムヨージド、トリメチルスズヨージド、トリエチルスズヨージド、トリ-n-ブチルスズヨージド、ジ-n-ブチルスズジヨージド、またはジ-t-ブチルスズジヨージドなどが挙げられる。
【0065】
また、本発明の一実施形態に係る前記触媒組成物は、前記ランタン系希土類元素含有化合物1モルに対して、前記ハロゲン化物を1モル~20モル、より具体的には1モル~5モル、さらに具体的には2モル~3モルで含んでもよい。前記ハロゲン化物を20モル比を超えて含む場合には、触媒反応の除去が容易ではなく、過量のハロゲン化物が副反応を起こす恐れがある。
【0066】
また、本発明の一実施形態に係る触媒組成物は、前記ハロゲン化物の代わりに、または前記ハロゲン化物とともに、非配位性アニオン含有化合物、または非配位性アニオン前駆体化合物を含んでもよい。
【0067】
具体的に、前記非配位性アニオンを含む化合物において、非配位性アニオンは、立体障害によって触媒系の活性中心と配位結合を形成しない、立体的に体積が大きいアニオンであって、テトラアリールボレートアニオンまたはフッ化テトラアリールボレートアニオンなどであってもよい。また、前記非配位性アニオンを含む化合物は、上記の非配位性アニオンとともに、トリアリールカルボニウムカチオンなどのようなカルボニウムカチオン;N,N-ジアルキルアニリニウムカチオンなどのようなアンモニウムカチオン、またはホスホニウムカチオンなどの対カチオンを含むものであってもよい。より具体的に、前記非配位性アニオンを含む化合物は、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、またはN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートなどであってもよい。
【0068】
また、前記非配位性アニオン前駆体としては、反応条件下で非配位性アニオンが形成可能な化合物であって、トリアリールホウ素化合物(BE3、この際、Eは、ペンタフルオロフェニル基または3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル基などのような、強い電子吸引性のアリール基である)が挙げられる。
【0069】
(c)共役ジエン系単量体
また、前記触媒組成物は、共役ジエン系単量体をさらに含んでもよい。重合反応に用いられる共役ジエン系単量体の一部を触媒組成物と予め混合して前(pre)重合した、予備重合(preforming)または予備混合(premix)触媒組成物の形態で用いることで、触媒組成物の活性を向上させるとともに、製造される共役ジエン系重合体を安定化させることができる。
【0070】
本発明において、前記「予備重合(preforming)」とは、ランタン系希土類元素含有化合物、アルキル化剤、およびハロゲン化物を含む触媒組成物、すなわち、触媒系においてジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)などを含む場合、これとともに様々な触媒組成物活性種の生成可能性を低減するために、1,3-ブタジエンなどの共役ジエン系単量体を少量添加することとなるが、1,3-ブタジエンの添加とともに触媒組成物系中で前(pre)重合がなされることを意味する。また、「予備混合(premix)」とは、触媒組成物系で重合がなされず、各化合物が均一に混合されている状態を意味する。
【0071】
この際、前記触媒組成物の製造に用いられる共役ジエン系単量体は、前記重合反応に用いられる共役ジエン系単量体の総使用量の範囲内で一部の量で用いられ、例えば、前記ランタン系希土類元素含有化合物1モルに対して1モル~100モル、具体的には10モル~50モル、または20モル~50モルで用いられてもよい。
【0072】
本発明の一実施形態に係る前記触媒組成物は、有機溶媒中で、上述のランタン系希土類元素含有化合物およびアルキル化剤、ハロゲン化物および共役ジエン系単量体の少なくとも1つ、具体的には、ランタン系希土類元素含有化合物、アルキル化剤、ハロゲン化物、および選択的に共役ジエン系単量体を順に混合することで製造されることができる。この際、前記有機溶媒は、上記の触媒組成物の構成成分と反応性を有しない炭化水素溶媒であってもよい。具体的に、前記炭化水素溶媒は、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、イソペンタン、イソヘキサン、イソオクタン、2,2-ジメチルブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、またはメチルシクロヘキサンなどのような、直鎖状、分岐状、または環状の炭素数5~20の脂肪族炭化水素;石油エーテル(petroleum ether)または石油スピリッツ(petroleum spirits)、またはケロシン(kerosene)などのような炭素数5~20の脂肪族炭化水素の混合溶媒;またはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどのような芳香族炭化水素系溶媒などであってもよく、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。より具体的に、前記炭化水素溶媒は、上記の直鎖状、分岐状、または環状の炭素数5~20の脂肪族炭化水素または脂肪族炭化水素の混合溶媒であってもよく、さらに具体的には、n-ヘキサン、シクロヘキサン、またはこれらの混合物であってもよい。
【0073】
また、前記有機溶媒は、触媒組成物を構成する構成物質、特に、アルキル化剤の種類によって適宜選択されてよい。
【0074】
具体的に、アルキル化剤としてのメチルアルミノキサン(MAO)またはエチルアルミノキサンなどのアルキルアルミノキサンの場合、脂肪族炭化水素系溶媒に溶解されにくいため、芳香族炭化水素系溶媒が好適に用いられることができる。
【0075】
また、アルキル化剤として変性メチルアルミノキサンが用いられる場合、脂肪族炭化水素系溶媒が好適に用いられることができる。この場合、重合溶媒として主に用いられるヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒とともに単一溶媒系の実現が可能であるため、重合反応にさらに有利である。また、脂肪族炭化水素系溶媒は、触媒活性を促進させることができ、かかる触媒活性により、反応性をさらに向上させることができる。
【0076】
一方、前記有機溶媒は、ランタン系希土類元素含有化合物1モルに対して20モル~20,000モル、より具体的には100モル~1,000モルで用いられてもよい。
【0077】
本発明に係る共役ジエン系重合体の製造方法において、重合は、少なくとも2器の反応器を含む重合反応器で、連続式重合により行われることができる。
【0078】
具体的に、前記重合は、少なくとも2器の反応器を含む重合反応器で、連続式重合により行われることができ、この際、前記反応器の総数は、反応条件および環境によって弾力的に調節可能である。
【0079】
また、前記重合は、少なくとも2器の反応器を含む重合反応器で連続式重合により行われ、この際、第1反応器と第2反応器での重合反応が、各反応器内の反応混合物中の単量体に対する重合体の割合を調節することで制御されることを特徴とする。
【0080】
ここで、本発明に係る連続式重合において、反応器が2器を超えて3器以上になる場合、前記単量体に対する重合体の重量比は、第1器および第2器での割合である。
【0081】
具体的に、前記第1反応器での重合反応は、反応混合物中の単量体に対する重合体の割合、すなわち、重合体の総重量を単量体の総重量で除した値が5.6以上であり、好ましくは9.0以上であってもよい。また、第2反応器での重合反応は、反応混合物中の単量体に対する重合体の重量比が最大49.0となるまで、好ましくは24.0となるまで行われてもよい。
【0082】
また、前記第1反応器と第2反応器での滞留時間も調節されることが好ましく、第2反応器での滞留時間は、第1反応器での滞留時間に対して約75%以下、好ましくは50%以下であってもよい。
【0083】
共役ジエン系重合体の連続製造方法では、最終重合体の物性および反応器の汚染度を制御することが重要であるが、上記の製造方法を適用する場合、第1反応器での重合体と単量体の重量比を5.6以上に制御することで、反応器の汚染度を著しく低減させることができ、連続工程を持続できる時間が増大することができる。これにより、共役ジエン系重合体の生産性を大幅に向上させることができる。また、第1反応器で重合体と単量体の重量比を調節するとともに、第2反応器での滞留時間を制御する必要がある。これは結局、第2反応器での重合体と単量体の重量比にも関連する。すなわち、第2反応器での重合体と単量体の重量比が49.0を超えるまで重合反応を持続させる場合には、最終共役ジエン系重合体の物性が低下する恐れがあるため、これは、滞留時間の調節とともに複合的に制御される必要がある。
【0084】
換言すれば、第1反応器の重合体/単量体の重量比を5.6以上に調節することで、未反応の単量体が生じることを最小化し、反応器の汚染を低減するとともに、第2反応器の重合体/単量体の重量比を49.0以下に調節し、第2反応器での滞留時間を第1反応器での滞留時間に対して約75%以下のレベルに調節することで、過重合による重合体の物性の低下を防止する。このように、第1反応器と第2反応器での重合反応を、重合体/単量体の重量比および滞留時間を調節して制御することで、生産性が増大するとともに、物性に優れた、特に、シス-1,4結合の含量およびリニアリティが高い共役ジエン系重合体を提供することができる。
【0085】
本発明に係る共役ジエン系重合体の製造方法は、上述のように、少なくとも2器の反応器を含む重合反応器で連続式重合により行うことで、生産性および加工性に優れ、物性に優れた共役ジエン系重合体を製造することができる。
【0086】
また、本発明の一実施形態に係る前記製造方法は、少なくとも2器の反応器を含む重合反応器で連続式重合により行われ、この際、第1反応器での重合体と単量体の重量比を満たすように調節しながら行い、第2反応器での重合体と単量体の重量比および滞留時間を制御することで、過重合を防止し、リニアリティを高めて重合体の分子量分布を狭く調節することができる。その結果、粘弾性特性などの物性が改善された共役ジエン系重合体を製造することができる。
【0087】
ここで、前記第1反応器および第2反応器での重合体と単量体の重量比は、重合転換率にも関連する。
【0088】
重合転換率は、例えば、重合時に、重合体を含む重合体溶液中の固体濃度を測定することで決定されることができ、具体的には、前記重合体溶液を確保するために、各重合反応器の出口にシリンダ型容器を取り付けて一定量の重合体溶液をシリンダ型容器に満たした後、前記シリンダ型容器を反応器から取り外し、重合体溶液が満たされているシリンダの重量(A)を測定し、シリンダ型容器に満たされている重合体溶液を、アルミニウム容器(例えば、アルミニウム皿)に移し、重合体溶液が除去されたシリンダ型容器の重量(B)を測定し、重合体溶液が入ったアルミニウム容器を140℃のオーブンで30分間乾燥させ、乾燥された重合体の重量(C)を測定した後、下記数学式1により計算したものであってもよい。
【0089】
【0090】
すなわち、上記の方法により実測された重合転換率と、本発明に係る各反応器での重合体と単量体の重量比が、正確に一致しないこともあり得るが、例えば、第1反応器で重合体と単量体の重量比が5.6以上であるということは、単量体が1重量部存在する場合に、重合体は5.6重量部存在するということであるため、この際の転換率を単純換算して計算してみると、約84.8%(=5.6/6.6)以上の転換率、好ましくは90%以上の転換率を有するといえる。同様に、第2反応器での転換率を計算してみると、約98%以下の転換率、好ましくは96%以下の転換率を有するといえる。
【0091】
但し、上述のように、換算された転換率は単純換算によるものであるため、場合によっては、一般に転換率を測定する方法により導出された転換率とは、その値が異なり得る。
【0092】
また、前記重合時に、第1反応器での反応物の滞留時間は、好ましくは10分以上120分以下であってもよく、具体的には、15分以上100分以下、または20分以上80分以下であってもよい。前記滞留時間が上述の範囲内である場合、重合転換率の調節が容易であるが、これに限定されるものではなく、第2反応器での反応物の滞留時間との割合が、より重要な因子として作用する。この割合が適切に制御される場合、共役ジエン系重合体の物性確保の点で有利である。
【0093】
本発明の一実施形態に係る製造方法は、連続運転の可能時間が著しく増大することができ、上記のように、反応工程の連続運転時間は、共役ジエン系重合体の生産性と直結する問題である。連続運転時間が短い場合には、反応器の洗浄に要するコストと時間、反応器の中断回数の増大に伴うコストと時間がかなり上昇し得る。しかし、本発明に係る製造方法は、重合体/単量体の重量比、および第2反応器での滞留時間を調節しない場合に比べて、最大5倍まで工程時間を増大させることができ、これにより、コストと時間がかなり低減されることができて、生産性の増大において大きい効果を奏することができる。
【0094】
また、前記重合は、昇温重合、等温重合、または定温重合(断熱重合)であってもよい。
【0095】
ここで、定温重合は、触媒組成物を投入した後に任意に熱を加えず、その自体の反応熱で重合させるステップを含む重合方法を意味し、前記昇温重合は、触媒組成物を投入した後に任意に熱を加えて温度を増加させる重合方法を意味し、前記等温重合は、触媒組成物を投入した後に熱を加えて熱を増加させたり、熱を奪うことで、重合物の温度を一定に維持する重合方法を意味する。
【0096】
また、前記重合は、配位アニオン重合を用いて行ってもよく、ラジカル重合により行ってもよい。具体的には、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、または乳化重合が可能であり、より具体的には溶液重合であってもよい。
【0097】
前記重合は、好ましくは-20℃~200℃の温度範囲で行ってもよく、具体的には、20℃~150℃、より具体的には10℃~120℃または60℃~90℃の温度範囲で、15分~3時間行ってもよい。前記重合時の温度が200℃を超える場合には、重合反応を十分に制御しにくく、生成された共役ジエン系重合体のシス-1,4結合の含量が低くなる恐れがあり、温度が-20℃未満である場合には、重合反応の速度および効率が低下する恐れがある。
【0098】
また、本発明の一実施形態に係る前記共役ジエン系重合体の製造方法は、前記活性重合体を製造した後、ポリオキシエチレングリコールホスフェートなどのような重合反応を完了させるための反応停止剤;または2,6-ジ-t-ブチルパラクレゾールなどのような酸化防止剤などの添加剤をさらに用いて重合を終結させるステップを含んでもよい。その他にも、反応停止剤とともに、溶液重合を容易にする添加剤、例えば、キレート剤、分散剤、pH調節剤、脱酸素剤、または酸素捕捉剤(oxygen scavenger)などのような添加剤を選択的にさらに用いてもよい。
【0099】
一方、本発明の一実施形態に係る前記共役ジエン系重合体の製造方法は、前記活性重合体の少なくとも一末端を変性させるための変性反応ステップを含んでもよい。
【0100】
具体的に、前記製造方法は、重合後に、活性重合体の少なくとも一末端を変性させるために、前記活性重合体と変性剤を反応またはカップリングさせる変性反応ステップを含んでもよい。
【0101】
この際、前記変性剤としては、活性重合体の少なくとも一末端に官能基を付与するか、またはカップリングにより分子量を上昇させることができる化合物が使用可能であり、例えば、アザシクロプロパン基、ケトン基、カルボキシル基、チオカルボキシル基、炭酸塩、カルボン酸無水物、カルボン酸金属塩、酸ハロゲン化物、尿素基、チオ尿素基、アミド基、チオアミド基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、ハロゲン化イソシアノ基、エポキシ基、チオエポキシ基、イミン基、およびM-Z結合(但し、ここで、Mは、Sn、Si、Ge、およびPから選択され、Zはハロゲン原子である)から選択される1種以上の官能基を含み、活性プロトンおよびオニウム塩を含まない化合物であってもよい。
【0102】
前記変性剤は、触媒組成物中のランタン系希土類元素含有化合物1モルに対して、0.5モル~20モルで用いてもよい。具体的には、前記変性剤は、触媒組成物中のランタン系希土類元素含有化合物1モルに対して、1モル~10モルで用いてもよい。
【0103】
また、前記変性反応は、0℃~90℃で、1分~5時間反応を行ってもよい。
【0104】
上記の変性反応の終了後、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液などを重合反応系に添加して重合反応を停止させることができる。その後、水蒸気を供給することで溶剤の分圧を低めるスチームストリッピングなどの脱溶媒処理や真空乾燥処理を経て変性共役ジエン系重合体が得られる。また、上記の変性反応の結果として得られる反応生成物中には、上記の変性共役ジエン重合体とともに、変性されていない活性重合体が含まれていることがある。
【0105】
また、本発明は、上記の製造方法により製造された共役ジエン系重合体を提供する。
【0106】
前記共役ジエン系重合体は、数平均分子量(Mn)が100,000g/mol以上500,000g/mol以下、具体的には200,000g/mol以上300,000g/mol以下であってもよい。
【0107】
また、前記共役ジエン系重合体は、重量平均分子量(Mw)が500,000g/mol以上1,000,000g/mol以下、具体的には600,000g/mol以上900,000g/mol以下であってもよい。
【0108】
また、前記共役ジエン系重合体は、分子量分布(MWD、Mw/Mn)が1.5以上4.0以下であってもよい。これにより、それをゴム組成物に適用した時に、引張特性および粘弾性特性が改善されることができる。
【0109】
尚、本発明の一実施形態に係る前記共役ジエン系重合体は、ゴム組成物に適用した際に、ゴム組成物の機械的物性、弾性率、および加工性のバランスの良い改善効果を考慮して、上記のような分子量分布の範囲を有し、且つ重量平均分子量および数平均分子量がともに上述の範囲の条件に満たす。
【0110】
具体的には、前記変性共役ジエン系重合体は、分子量分布が4.0以下であり、重量平均分子量が500,000g/mol以上1,000,000g/mol以下であり、数平均分子量が100,000g/mol以上500,000g/mol以下であってもよい。
【0111】
ここで、前記重量平均分子量および数平均分子量はそれぞれ、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により分析されるポリスチレン換算の分子量である。分子量分布(Mw/Mn)は、多分散性(polydispersity)とも呼ばれ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で計算した。また、前記数平均分子量は、n個の重合体分子の分子量を測定し、それらの分子量の総和を求めてnで除して計算した個別重合体の分子量の共通平均(common average)であり、重量平均分子量は、重合体の分子量分布を示すものである。
【0112】
また、本発明の一実施形態に係る前記変性共役ジエン系重合体は、上述のように、0.155以上、具体的に0.160以上のβ値を有することで、ゴム組成物に適用した際に、優れた抵抗特性および燃費特性を有することができる。
【0113】
ここで、前記β値は、同量の変形(strain)に対するfrequencyの変化による、粘弾性係数の変化を示すものであって、重合体のリニアリティを示す指標である。通常、β値が低いほど、重合体のリニアリティが低いことを意味し、リニアリティが低いほど、ゴム組成物に適用した際における転がり抵抗または回転抵抗が増加することになる。前記β値は、Rubber Process Analyzer(RPA2000、AlphaTechnologies社)を用いて、各重合体に対して、100℃、Strain 7%の条件で周波数掃引(Frequency sweep)を行い、Log(1/tan delta)vs Log(Freq.)のslopeを得て、それから計算して得た。この際、Frequencyは、2、5、10、20、50、100、200、500、1,000、2,000cpmに設定した。
【0114】
また、前記共役ジエン系重合体は、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)により測定した共役ジエン部のシス-1,4結合の含量が95%以上、より具体的には96%以上であってもよい。これにより、ゴム組成物に適用した際に、ゴム組成物の耐磨耗性、耐クラック性、および耐オゾン性が向上することができる。
【0115】
ここで、前記シス-1,4結合の含量は、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)により測定された値であって、同一セルの二硫化炭素をブランクとし、5mg/mLの濃度で調製した共役ジエン系重合体の、二硫化炭素溶液のFT-IR透過率スペクトルを測定した後、測定スペクトルの1130cm-1付近の最大ピーク値(a、ベースライン)、トランス-1,4結合を示す967cm-1付近の最小ピーク値(b)、ビニル結合を示す911cm-1付近の最小ピーク値(c)、そしてシス-1,4結合を示す736cm-1付近の最小ピーク値(d)を用いてそれぞれの含量を求めたものである。
【0116】
また、前記変性共役ジエン系重合体は、フーリエ変換赤外分光法により測定した共役ジエン部のビニル含量が5%以下、より具体的には2%以下であってもよい。重合体中のビニルの含量が5%を超える場合には、それを含むゴム組成物の耐磨耗性、耐クラック性、耐オゾン性が劣化する恐れがある。
【0117】
一方、本発明の一実施形態によると、前記製造方法が変性反応ステップを含む場合、前記製造方法により製造された共役ジエン系重合体は、少なくとも一末端に変性剤由来の官能基が導入されている変性共役ジエン系重合体であってもよい。
【0118】
さらに、本発明は、前記共役ジエン系重合体を含むゴム組成物、および前記ゴム組成物から製造された成形品を提供する。
【0119】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、共役ジエン系重合体を0.1重量%以上100重量%以下、具体的には10重量%~100重量%、より具体的には20重量%~90重量%で含んでもよい。前記共役ジエン系重合体の含量が0.1重量%未満である場合には、結果的に、前記ゴム組成物を用いて製造された成形品、例えば、タイヤの耐磨耗性および耐クラック性などの改善効果が微少であり得る。
【0120】
また、前記ゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体以外に、必要に応じて、他のゴム成分をさらに含んでもよく、この際、前記ゴム成分は、ゴム組成物の総重量に対して90重量%以下の含量で含まれてもよい。具体的には、前記変性共役ジエン系共重合体100重量部に対して、1重量部~900重量部で含まれてもよい。
【0121】
前記ゴム成分は、天然ゴムまたは合成ゴムであってもよく、例えば、前記ゴム成分としては、シス-1,4-ポリイソプレンを含む天然ゴム(NR);前記一般的な天然ゴムを変性または精製した、エポキシ化天然ゴム(ENR)、脱蛋白天然ゴム(DPNR)、水素化天然ゴムなどの変性天然ゴム;スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン共重合体、ポリイソブチレン-コ-イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン-コ-プロピレン)、ポリ(スチレン-コ-ブタジエン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(エチレン-コ-プロピレン-コ-ジエン)、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴムなどのような合成ゴムであってもよく、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が使用可能である。
【0122】
また、前記ゴム組成物は、共役ジエン系重合体100重量部に対して、0.1重量部~150重量部の充填剤を含んでもよい。前記充填剤は、シリカ系、カーボンブラック、またはこれらの組み合わせであってもよい。具体的には、前記充填剤は、カーボンブラックであってもよい。
【0123】
前記カーボンブラック系充填剤は、特に制限されるものではないが、例えば、窒素吸着比表面積(N2SA、JIS K 6217-2:2001に準じて測定)が20m2/g~250m2/gであってもよい。また、前記カーボンブラックは、ジブチルフタレート吸油量(DBP)が80cc/100g~200cc/100gであってもよい。前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が250m2/gを超えると、ゴム組成物の加工性が低下する恐れがあり、20m2/g未満であると、カーボンブラックによる補強性能が微少であり得る。また、前記カーボンブラックのDBP吸油量が200cc/100gを超えると、ゴム組成物の加工性が低下する恐れがあり、80cc/100g未満であると、カーボンブラックによる補強性能が微少であり得る。
【0124】
また、前記シリカは、特に制限されるものではないが、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、またはコロイドシリカなどであってもよい。具体的には、前記シリカは、破壊特性の改良効果およびウェットグリップ性(wet grip)の両立効果が最も顕著な湿式シリカであってもよい。また、前記シリカは、窒素吸着比表面積(nitrogen surface area per gram、N2SA)が120m2/g~180m2/gであり、CTAB(cetyl trimethyl ammonium bromide)吸着比表面積が100m2/g~200m2/gであってもよい。前記シリカの窒素吸着比表面積が120m2/g未満であると、シリカによる補強性能が低下する恐れがあり、180m2/gを超えると、ゴム組成物の加工性が低下する恐れがある。また、前記シリカのCTAB吸着比表面積が100m2/g未満であると、充填剤であるシリカによる補強性能が低下する恐れがあり、200m2/gを超えると、ゴム組成物の加工性が低下する恐れがある。
【0125】
一方、前記充填剤としてシリカが用いられる場合、補強性および低発熱性を改善するために、シランカップリング剤がともに用いられてもよい。
【0126】
前記シランカップリング剤としては、具体的に、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、またはジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドなどが挙げられ、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が使用可能である。より具体的には、補強性の改善効果を考慮すると、前記シランカップリング剤は、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドまたは3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドであってもよい。
【0127】
また、本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、硫黄架橋性であってもよく、これによって、加硫剤をさらに含んでもよい。
【0128】
前記加硫剤は、具体的に、硫黄粉末であってもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~10重量部で含まれてもよい。前記含量範囲で含まれる場合、加硫ゴム組成物が必要とする弾性率および強度を確保するとともに、低燃費性が得られる。
【0129】
また、本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、上記の成分の他に、ゴム工業界で通常用いられる各種添加剤、具体的には、加硫促進剤、プロセス油、可塑剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華(zinc white)、ステアリン酸、熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂などをさらに含んでもよい。
【0130】
前記加硫促進剤としては、特に限定されないが、具体的には、M(2-メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)などのチアゾール系化合物、もしくはDPG(ジフェニルグアニジン)などのグアニジン系化合物が使用可能である。前記加硫促進剤は、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~5重量部で含まれてもよい。
【0131】
また、前記プロセス油は、ゴム組成物中で軟化剤として作用するものであって、具体的には、パラフィン系、ナフテン系、または芳香族系化合物であってもよく、より具体的には、引張強度および耐磨耗性を考慮すると芳香族系プロセス油が、ヒステリシス損および低温特性を考慮するとナフテン系またはパラフィン系プロセス油が使用できる。前記プロセス油は、ゴム成分100重量部に対して100重量部以下の含量で含まれてもよく、前記含量で含まれる場合、加硫ゴムの引張強度、低発熱性(低燃費性)の低下を防止することができる。
【0132】
また、前記老化防止剤としては、具体的に、N-イソプロピル-N´-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N´-フェニル-p-フェニレンジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、またはジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物などが挙げられる。前記老化防止剤は、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~6重量部で用いられてもよい。
【0133】
本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、前記配合処方に応じて、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサーなどの混練機を用いて混練することで得られ、また、成形加工後、加硫工程により、低発熱性および耐磨耗性に優れたゴム組成物が得られる。
【0134】
これにより、前記ゴム組成物は、タイヤトレッド、アンダトレッド、サイドウォール、カーカスコーティングゴム、ベルトコーティングゴム、ビードフィラー、チェーファー、またはビードコーティングゴムなどのタイヤの各部材や、防塵ゴム、ベルトコンベア、ホースなどの各種工業用ゴム製品の製造において有用である。
【0135】
前記ゴム組成物を用いて製造された成形品は、タイヤまたはタイヤトレッドを含んでもよい。
【0136】
実施例
以下、実施例および実験例によって本発明をより詳細に説明する。しかし、下記実施例および実験例は、本発明を例示するためのものであって、これらのみによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0137】
[実施例1]
1)触媒組成物の製造
2器のステンレス反応器が直列に連結された触媒反応器を用いて、触媒組成物を製造した。
【0138】
第1の反応器に、Nd(2-エチルヘキサノエート)3、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、1,3-ブタジエンを投入して混合した後、第2のステンレス反応器に連続的に移送させ、これに、ジエチルアルミニウムクロリドを投入して混合してから重合に使用した。
【0139】
2)共役ジエン重合体の製造
撹拌器およびジャケットを備えた2器の80Lのステンレス反応器が直列に連結された重合反応器を用いて、共役ジエン重合体を製造した。各反応器の内部は、70℃および0~3barに維持した。
【0140】
第1反応器の上部を介して、上記で製造された触媒組成物、ノルマルヘキサン、1,3-ブタジエンを投入した。1,3-ブタジエンは5,000gを投入し、ノルマルヘキサンは、転換率が100%である場合、TSC(total solid contents)が15%となるように投入した。第1反応器で、単量体に対する重合体の割合が9.0となるように触媒の投入量を調整した。第1反応器での所定の滞留時間になる反応器レベルにレベルを制御し、ギアポンプを用いて第2反応器へ移送させた。第2反応器でのモノマーに対する重合体の割合が24.0となるように、第2反応器での滞留時間をレベル変更して調整した。第2反応器での滞留時間は、第1反応器での滞留時間の50%である。第2反応器で、単量体に対する重合体の割合が24.0に達したセメントをギアポンプを用いて回収ステップに移送させ、重合停止剤と酸化防止剤を添加して重合を終結させた。その後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、ホットロール(Hot Roll)を用いて乾燥することで、共役ジエン重合体を製造した。
【0141】
[実施例2]
共役ジエン系重合体の製造時に、第1反応器で、単量体に対する重合体の割合を5.6とし、第2反応器で、単量体に対する重合体の割合を49.0とし、第2反応器での滞留時間を第1反応器での滞留時間の75%にしたことを除き、実施例1と同様の方法により共役ジエン重合体を製造した。
【0142】
[実施例3]
共役ジエン系重合体の製造時に、第1反応器で、単量体に対する重合体の割合を5.6とし、第2反応器で、単量体に対する重合体の割合を24.0とし、第2反応器での滞留時間を第1反応器での滞留時間の60%にしたことを除き、実施例1と同様の方法により共役ジエン重合体を製造した。
【0143】
[実施例4]
共役ジエン系重合体の製造時に、第1反応器で、単量体に対する重合体の割合を9.0とし、第2反応器で、単量体に対する重合体の割合を49.0とし、第2反応器での滞留時間を第1反応器での滞留時間の60%にしたことを除き、実施例1と同様の方法により共役ジエン重合体を製造した。
【0144】
[比較例1]
共役ジエン系重合体の製造時に、第1反応器で、単量体に対する重合体の割合を3.0とし、第2反応器で、単量体に対する重合体の割合を19.0とし、第2反応器での滞留時間を第1反応器での滞留時間の100%にしたことを除き、実施例1と同様の方法により共役ジエン重合体を製造した。
【0145】
[比較例2]
共役ジエン系重合体の製造時に、第1反応器で、単量体に対する重合体の割合を4.0とし、第2反応器で、単量体に対する重合体の割合を65.7とし、第2反応器での滞留時間を第1反応器での滞留時間の100%にしたことを除き、実施例1と同様の方法により共役ジエン重合体を製造した。
【0146】
[比較例3]
共役ジエン系重合体の製造時に、第1反応器で、単量体に対する重合体の割合を5.6とし、第2反応器で、単量体に対する重合体の割合を199.0とし、第2反応器での滞留時間を第1反応器での滞留時間の100%にしたことを除き、実施例1と同様の方法により共役ジエン重合体を製造した。
【0147】
<実験例1>
前記実施例および比較例の共役ジエン重合体に対して、下記のような方法によりそれぞれの物性を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0148】
1)ムーニー粘度(RP、Raw polymer)および-S/R値
各重合体に対して、Monsanto社のMV2000Eにより、Large Rotorを用いて、100℃、Rotor Speed 2±0.02rpmの条件でムーニー粘度(ML1+4、@100℃)(MU)を測定した。この際、使用された試料は、室温(23±3℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(Platen)を作動させてトルクを印加しながらムーニー粘度を測定した。また、ムーニー粘度の測定後、トルクが解放されながら現れるムーニー粘度の変化を1分間観察し、その勾配値から-S/R値を決定した。
【0149】
2)シス結合量の測定
Varian VNMRS 500 Mhz NMRを用いて、各重合体中のシス結合量を測定した。溶媒としては、1,1,2,2-テトラクロロエタンD2(Cambridge Isotope社)を使用した。
【0150】
3)beta(β)値の測定
Rubber Process Analyzer(RPA2000、AlphaTechnologies社)を用いて、各重合体のリニアリティを測定した。
【0151】
具体的に、各重合体を、100℃、Strain 7%の条件で周波数掃引(Frequency sweep)を行った。この際、Frequencyは、2、5、10、20、50、100、200、500、1,000、2,000cpmに設定し、Log(1/tan delta) vs Log(Freq.)のslopeを計算してβ値を得た。ここで、β値の数値が高いほど、重合体のリニアリティが高いことを意味する。
【0152】
4)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分子量分布(MWD)
各重合体を、40℃の条件下でテトラヒドロフラン(THF)に30分間溶かした後、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC:gel permeation chromatography)に載せて流した。この際、カラムとしては、ポリマー・ラボラトリー社(Polymer Laboratories)の商品名PLgel Olexisカラム2本とPLgel mixed-Cカラム1本を組み合わせて使用した。また、新たに交替したカラムは、何れも混床(mixed bed)タイプのカラムを使用し、ゲル浸透クロマトグラフィの標準物質(GPC Standard material)としてはポリスチレン(Polystyrene)を使用した。
【0153】
5)連続運転時間
反応器の汚染は、第1反応器の下部、および第1反応器から第2反応器へ移送される配管ラインで主に発生するが、汚染物の蓄積によって第1反応器の出口および配管が詰まり、移送が不可能となると、正常な連続重合が不可能となる。連続運転時間は、第1反応器で重合が開始された時点から、汚染により反応器の出口および配管が詰まって移送が不可能となる時点までの時間を測定して示した。
【0154】
【0155】
前記表1を参照すると、本発明の製造方法に係る実施例は、第1反応器と第2反応器で、重合体と単量体の割合をそれぞれ5.6以上および49.0以下に制御し、第2反応器での滞留時間を制御した結果、この割合を制御していない比較例に比べて、シス結合の含量が大きく、リニアリティに優れた共役ジエン系重合体が製造されることを確認することができる。さらに、反応器の汚染度が著しく低減し、連続運転時間が大幅に増加していることも確認することができる。
【0156】
具体的に、第2反応器での重合体と単量体の重量比の条件は満たしているが、第1反応器での重合体と単量体の重量比を過度に小さくした比較例1は、リニアリティやシス結合の含量が大きく示されたものの、反応器の汚染度が激しくて連続運転を30時間しか行うことができず、実施例1に比べて生産性が5倍程度低下することを確認することができる。
【0157】
また、比較例2では、第1反応器での重合体と単量体の割合は比較例1と類似に4.0とし、第2反応器での重合体と単量体の割合を大きく高めてみたが、比較例1に比べて反応器の汚染度が一部改善され、連続運転時間が小幅に向上できたが、依然として実施例に比べて生産性が著しく低い水準であり、リニアリティが低下したことを確認することができる。
【0158】
また、比較例3は、第1反応器での重合体と単量体の割合を満たしているが、第2反応器での割合の調節に失敗したため、反応器の汚染度の点ではある程度を満たしたが、リニアリティおよびシス結合の含量のような物性の点での損害がかなり大きいことを確認することができる。
【0159】
このことから、共役ジエン系重合体の連続製造方法では、第1反応器および第2反応器のそれぞれで重合体と単量体の割合を調節して重合反応を制御することで、反応器の汚染度を著しく低減し、生産性を大幅に向上させることができるとともに、重合体のリニアリティを増加させ、シス結合の含量が高い重合体を提供することができるということが分かる。
【0160】
<実験例2>
前記実施例および比較例で製造した共役ジエン系重合体を用いてゴム組成物およびゴム試験片を製造した後、下記のような方法により、300%モジュラス、および粘弾性特性(回転抵抗性)をそれぞれ測定した。その結果を下記表2に示した。
【0161】
具体的に、前記ゴム組成物は、前記各重合体100重量部に、カーボンブラック70重量部、プロセス油(process oil)22.5重量部、老化防止剤(TMDQ)2重量部、酸化亜鉛(ZnO)3重量部、およびステアリン酸(stearic acid)2重量部を配合してそれぞれのゴム組成物を製造した。その後、前記各ゴム組成物に、硫黄2重量部、加硫促進剤(CZ)2重量部、および加硫促進剤(DPG)0.5重量部を添加し、50℃で1.5分間、50rpmで弱く混合した後、50℃のロールを用いてシート状の加硫配合物を得た。得られた加硫配合物を160℃で25分間加硫してゴム試験片を製造した。
【0162】
1)300%モジュラス(300%modulus、kg・f/cm2)
前記各ゴム組成物を150℃でt90分加硫した後、ASTM D412に準じて加硫物の300%伸び時のモジュラス(M-300%)を測定した。
【0163】
2)転がり抵抗指数(LRR、Tanδ@60℃)
低燃費特性において最も重要なTanδ物性は、ドイツGabo社のDMTS 500Nを用いて、周波数10Hz、Prestrain 3%、Dynamic Strain 3%で、60℃での粘弾性係数(Tanδ)を測定した。この際、60℃でのTanδ値が低いほど、ヒステリシス損が少なく、回転抵抗性特性に優れることを意味し、つまり、燃費性に優れることを意味する。
【0164】
【0165】
前記表2に示されたように、比較例1と2は、物性のレベルが実施例と類似であるが、上述のように、反応器の汚染が激しいため、、実際に量産に適用することは困難であることが分かる。これに対し、比較例3は、連続運転時間は比較例1および2に比べて長いが、物性の悪化が激しいことが分かる。このことから、反応器の汚染度と最終配合物性を考慮すると、実施例のように第1反応器および第2反応器の重合体と単量体の割合を調節し、且つ滞留時間の割合を制御することが必要であるということが分かる。