(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-26
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】二次電池用バインダー組成物、これを含む電極スラリー組成物、電極及び二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20220127BHJP
C08F 236/06 20060101ALI20220127BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20220127BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20220127BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20220127BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20220127BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
C08F236/06
H01M4/02 Z
H01M4/04 A
H01M4/13
H01M4/139
(21)【出願番号】P 2019553003
(86)(22)【出願日】2018-11-29
(86)【国際出願番号】 KR2018014956
(87)【国際公開番号】W WO2019135496
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2019-09-26
(31)【優先権主張番号】10-2018-0001126
(32)【優先日】2018-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0150034
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・ス・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ヒ・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ア・カン
(72)【発明者】
【氏名】チョル・フン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ジョ・リュ
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/113940(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/62
C08F 236/06
H01M 4/02 - 4/04
H01M 4/13 - 4/1399
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単量体混合物100重量部に対して、(a1)
1,3-ブタジエン25から61重量部、(a2)
アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、又は前記いずれかの混合物3から5重量部、及び(a3)
スチレン35から70重量部を含む単量体混合物の重合体であるラテックス粒子(A);及び乳化剤(B)を含む二次電池用バインダー組成物であり、
前記乳化剤(B)は、
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム又はドデシル硫酸ナトリウムであり、前記ラテックス粒子100重量部に対して1500ppmから2000ppmで含まれる、二次電池用バインダー組成物。
【請求項2】
前記ラテックス粒子(A)を400メッシュ篩で濾過したとき、篩上に残る残余物がラテックス粒子の固形分100重量部に対して0.001から0.01重量部である、請求項
1に記載の二次電池用バインダー組成物。
【請求項3】
電極活物質、請求項1
又は2に記載の二次電池用バインダー組成物及び水系溶媒を含む、電極スラリー組成物。
【請求項4】
請求項
3に記載の電極スラリー組成物を用いて形成された活物質層を含む、電極。
【請求項5】
前記電極は、圧延前の接着力に比べて2000m長さで圧延した後の接着力の減少率が20%以下である、請求項
4に記載の電極。
【請求項6】
請求項
4又は
5に記載の電極を含む、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年1月4日に出願された韓国特許出願第10-2018-0001126号、及び2018年11月28日に出願された韓国特許出願第10-2018-0150034号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、二次電池用バインダー組成物、これを含む電極スラリー組成物、電極及び二次電池に関し、より詳しくは、圧延ロールの汚染を防止することができ、圧延長さによる接着力の減少が少ない二次電池用バインダー組成物と、これを含む電極スラリー組成物、電極及び二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、携帯用コンピュータ、携帯用電話機、カメラなどの携帯用機器に対する技術開発と需要が増加するに伴い、エネルギー源として二次電池の需要が急激に増加しており、そのような二次電池のうち高いエネルギー密度と作動電位を示し、サイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池に対して多くの研究が行われてきており、また常用化されて広く使用されている。
【0004】
一般的に、リチウム二次電池の電極は、一般的に正極活物質または負極活物質をバインダー、導電材などと混合して溶媒に分散させて電極スラリーを作製し、これを電極集電体の表面に塗布して乾燥した後、圧延して製造される。
【0005】
前記バインダーは、活物質と活物質との間、そして活物質と電極集電体との間の接着力または結着力を確保するために用いられるものであって、現在、常用化されている二次電池バインダー物質としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレン-ブタジエンゴム(styrenebutadiene rubber:SBR)/カルボキシメチルセルロース(carboxy methyl cellulose:CMC)などを挙げることができる。
【0006】
ところが、バインダーの分散性が落ちる場合、電極スラリーの粘度が急激に増加してコーティングが困難となるという問題点がある。このような問題点は、電極スラリーの溶媒が水系である場合にさらに強く現われる。したがって、水系スラリーに用いられるバインダーの安定性を向上させるために、バインダーの製造時に乳化剤を添加する方法が用いられている。乳化剤の含量が増加すると、バインダーの安定性が大きくなり、これによってスラリーの粘度の上昇を抑制することができる。
【0007】
しかし、乳化剤は、他の成分等に比べて低い分子量を有するため、乳化剤を過量に含有するバインダーを用いる場合、電極圧延工程で発生する摩擦熱により低分子量である乳化剤が表面へ容易に移動して圧延ロールを汚染させるという問題点がある。圧延ロールに付着された乳化剤は、圧延ロールが与える圧力により発生する引力によって、圧延ロール上に引き続き付着することとなり簡単に落ちない。一方、乳化剤は粘着性を有しているため、このような乳化剤が圧延ロールに引き続き付着されている場合、電極層の他の成分等まで圧延ロールに付着して汚染を深化させることとなる。このように汚染された圧延ロールを用いて圧延を行うようになれば、電極が均一に圧延されず、電極の表面が不均一に形成されるという問題点がある。
【0008】
また、最近、電極密度を向上させるために圧延工程を長く行うか、多段で行うなどの方法などが提案されている。しかし、従来に用いられる二次電池用バインダー等の場合、圧延工程が長くなると、バインダーの接着力が減少して電極物質の脱落及び/又は活物質層の剥離などが発生し得るという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記のような問題点を解決するためのものであって、圧延ロールの汚染を防止することができ、圧延長さによる接着力の減少が少ない二次電池用バインダー組成物、及びこれを含む二次電池を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一側面において、本発明は、(a1)共役ジエン系単量体、(a2)エチレン性不飽和カルボン酸単量体、及び(a3)芳香族ビニル系単量体を含む単量体混合物の重合体であるラテックス粒子(A);及び乳化剤(B)を含む二次電池用バインダー組成物であり、前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体が前記単量体混合物100重量部に対して3重量部以上で含まれ、前記乳化剤は前記ラテックス粒子100重量部に対して3000ppm未満で含まれる二次電池用バインダー組成物を提供する。
【0011】
他の側面において、本発明は、電極活物質、前記本発明に係る二次電池用バインダー組成物、及び溶媒を含む電極スラリー組成物を提供する。このとき、前記溶媒は、水のような水系溶媒であってよい。
【0012】
また他の側面において、本発明は、前記本発明に係る電極スラリー組成物を用いて形成された活物質層を含む電極を提供する。
【0013】
また他の側面において、本発明は、前記電極を含む二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る二次電池用バインダー組成物は、乳化剤含量及びラテックス粒子内のエチレン性不飽和カルボン酸の含量を特定範囲に調節することで、過量の乳化剤によって発生する圧延ロールの汚染を防止しながらも、スラリーの安定性を確保できるようにした。
【0015】
また、本発明に係る二次電池用バインダー組成物を用いて電極を製造する場合、圧延長さによる接着力の減少が画期的に改善された。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をより具体的に説明する。
【0017】
バインダー組成物
先ず、本発明に係るバインダー組成物に対して説明する。
【0018】
本発明に係るバインダー組成物は、(a1)共役ジエン系単量体、(a2)エチレン性不飽和カルボン酸単量体、及び(a3)芳香族ビニル系単量体を含む単量体混合物の重合体であるラテックス粒子(A)及び乳化剤(B)を含む。
【0019】
(A)ラテックス粒子
前記ラテックス粒子は、(a1)共役ジエン系単量体、(a2)エチレン性不飽和カルボン酸単量体、及び(a3)芳香族ビニル系単量体を含む単量体混合物の重合体である。
【0020】
前記(a1)共役ジエン系単量体としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ピペリレン(pyperylene)からなる群から選択される1種以上が単独または混合して用いられてよいが、これらに限定されるものではない。
【0021】
前記(a1)共役ジエン系単量体は、前記単量体混合物100重量部に対して10から96重量部、例えば、10から70重量部、または10から50重量部で含まれてよい。共役ジエン系単量体の含量が前記範囲を満たすとき、優れた接着力を得ることができる。
【0022】
次に、前記(a2)エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、無水マレイン酸、フマル酸、及びイタコン酸からなる群から選択された1種以上が単独または混合して用いられてよく、これに限定されるものではない。
【0023】
前記(a2)エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、前記単量体混合物100重量部に対して3重量部以上、例えば、3から89重量部、3から30重量部、または3から10重量部で含まれてよい。(a2)エチレン性不飽和カルボン酸単量体の含量が3重量部未満の場合には、水系電極スラリー組成物で十分な分散性を確保することができず、圧延長さによる接着力の減少及び圧延ロールの汚染防止効果が僅かであった。
【0024】
次に、前記(a3)芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン及びビニルトルエンからなる群から選択された1種以上が単独または混合して用いられてよいが、これらに限定されるものではない。
【0025】
前記(a3)芳香族ビニル系単量体は、前記単量体混合物100重量部に対して1から80重量部、例えば、1から80重量部、1から70重量部、30から70重量部または1から50重量部で含まれてよい。(a3)芳香族ビニル系単量体の含量が前記範囲を満たすとき、強度及び電解液親和性に優れるという長所がある。
【0026】
一方、前記単量体混合物は、前記(a1)から(a3)成分以外に共単量体をさらに含んでよい。
【0027】
前記共単量体としては、ビニルシアン系単量体、(メタ)アクリレート系単量体、及び(メタ)アクリルアミド系単量体からなる群から選択された1種以上が用いられてよい。
【0028】
前記ビニルシアン系単量体の具体的な例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及びシアン官能基を有する単量体などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0029】
前記(メタ)アクリレート系単量体の具体的な例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、n-エチルヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、及びヒドロキシプロピルメタクリレートなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0030】
前記(メタ)アクリルアミド系単量体の具体的な例としては、アクリルアミド、n-メチロールアクリルアミド、n-ブトキシメチルアクリルアミド、n-メチロールメタクリルアミド、n-ブトキシメチルメタクリルアミドなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0031】
一具体例によれば、前記単量体混合物は、前記単量体混合物100重量部に対して、前記(a1)共役ジエン系単量体または共役ジエン系重合体10から96重量部、前記(a2)エチレン性不飽和カルボン酸単量体3から30重量部、及び前記(a3)芳香族ビニル系単量体1から80重量部を含むものであってよい。
【0032】
他の具体例によれば、前記単量体混合物は、前記単量体混合物100重量部に対して、前記(a1)共役ジエン系単量体または共役ジエン系重合体10から70重量部、前記(a2)エチレン性不飽和カルボン酸単量体3から10重量部、及び前記(a3)芳香族ビニル系単量体30から70重量部を含むものであってよい。
【0033】
前記ラテックス粒子(A)は、前記のような成分等を含む単量体混合物を当該技術分野に知られた通常の重合方法を用いて重合することにより製造されてよい。例えば、前記ラテックス粒子(A)は、前記単量体混合物に乳化剤を添加して乳化重合させる方法にて製造されてよい。
【0034】
重合温度及び重合時間は、重合方法、重合開始剤の種類などによって適宜決定してよく、例えば、重合温度は50℃から200℃であってよく、重合時間は1から20時間であってよい。
【0035】
また、前記重合時に必要に応じて、重合開始剤、活性化剤、架橋剤、分子量調節剤などがさらに添加されてよい。
【0036】
前記重合開始剤としては、無機または有機過酸化物が用いられてよく、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどを含む水溶性開始剤と、クメンヒドロペルオキシド 、ベンゾイルペルオキシドなどを含む油溶性開始剤を用いてよい。
【0037】
また、前記重合開始剤とともに過酸化物の開始反応を促進させるために活性化剤をさらに含んでよく、前記活性化剤は、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、硫酸第一鉄及びデキストロースからなる群から1種以上選択されるものであってよい。
【0038】
前記架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールメタントリアクリレート、アリールメタクリレート(AMA)などが用いられ、グラフティング剤はアリールメタクリレート(AMA)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルアミン(TAA)、ジアリルアミン(DAA)などが用いられてよい。
【0039】
前記分子量調節剤としては、例えば、メルカプタン類またはテルピノレン、ジペンテン、t-テルピネンなどのテルペン類やクロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素などを用いてよい。
【0040】
一方、前記ラテックス粒子(A)は、400メッシュ篩で濾過したとき、篩上に残る残余物がラテックス粒子の固形分100重量部に対して0.01重量部以下、具体的には0.001から0.01重量部であってよい。ラテックス粒子の濾過残余物が前記範囲を満たす場合、集電体の塗布時に均一性及び集電体との結着力がさらに向上し得る。
【0041】
ラテックス粒子の濾過残余物の含量が前記範囲を満たすラテックス粒子は、例えば、重合時に原料物質である単量体等を初期に全て投入せず、連続的に添加する方法を採択するか、またはラテックス粒子の重合後に珪藻土を濾過調剤として用いた濾過処理を行うことにより製造されてよいが、これに限定されるものではない。
【0042】
(B)乳化剤
前記乳化剤は、前記ラテックス粒子(A)の乳化重合反応のために添加されるものであって、親水性(hydrophilic)基と疎水性(hydrophobic)基を同時に有している物質であればよく、その種類が特に限定されるものではない。
【0043】
例えば、前記乳化剤としては、オレイン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、混合脂肪酸のナトリウムまたはカリウム塩などで代表される脂肪酸塩系統や、スルフェート、スルホネート、ホスフェート及びスルホサクシネートなどの一般的な陰イオン性乳化剤などが用いられてよい。
【0044】
本発明者等の研究によれば、バインダー組成物内の乳化剤の含量が特定範囲を満たす場合、圧延ロールの汚染を防止できるだけでなく、圧延長さによる接着性の低下を防止する効果があるものと現われた。
【0045】
具体的には、本発明に係るバインダー組成物は、前記乳化剤をラテックス粒子100重量部に対して3000ppm未満、好ましくは500ppmから2500ppmで含む。乳化剤の含量が3000ppm以上の場合には、圧延ロールの汚染が発生しており、圧延長さが増加する場合、接着力が顕著に低下されるという問題点がある。
【0046】
一方、本発明のバインダー組成物は、バインダーの物性向上のために、前記成分等以外に添加剤成分をさらに含んでよい。前記添加剤としては、例えば、酸化防止剤、防腐剤などを挙げることができる。特に、電池作動過程で軟化、ゲル化などによってラテックス粒子が劣化することを防止するため、酸化防止剤が好ましく用いられてよい。
【0047】
前記添加剤は、バインダー組成物の物性を阻害しない範囲で適切な含量で含まれてよく、例えば、バインダー組成物100重量部に対して0.5重量部以下、好ましくは0.01から0.2重量部で含まれてよい。
【0048】
電極スラリー組成物
次に、本発明の電極スラリー組成物に対して説明する。
【0049】
本発明に係る電極スラリー組成物は、電極活物質、バインダー組成物及び溶媒を含み、必要に応じて導電材がさらに含まれてよい。
【0050】
前記電極活物質は、正極活物質または負極活物質であってよい。
【0051】
前記正極活物質及び負極活物質としては、当該技術分野で用いられる多様な正極活物質及び負極活物質等が用いられてよく、その種類が特に限定されない。
【0052】
前記正極活物質としては、例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などの層状化合物や、1またはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+yMn2-yO4(ここで、yは0~0.33である)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(Li2CuO2);LiV3O8、LiFe3O4、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-yMyO2(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaであり、y=0.01~0.3である)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-yMyO2(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、y=0.01~0.1である)またはLi2Mn3MO8(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMn2O4;ジスルフィド化合物;Fe2(MoO4)3などが用いられてよいが、これらだけに限定されるものではない。
【0053】
前記負極活物質としては、例えば、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LixFe2O3(0≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)、SnxMe1-xMe’yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;錫系合金;SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4、Bi2O5などの金属酸化物;Li-Co-Ni系材料などが用いられてよいが、これらだけに限定されるものではない。
【0054】
前記溶媒は、バインダーの種類によって選択的に用いられてよく、例えば、イソプロピルアルコール、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトンなどの有機溶媒、水などの水系溶媒、及びこれらの混合物が用いられてよい。本発明のバインダー組成物は、水などの水系溶媒を用いる電極スラリーに特に有用に用いられてよい。
【0055】
前記導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられてよい。
【0056】
また、前記電極スラリーには、必要に応じて粘度調節剤及び充填剤などが選択的に追加されてよい。前記粘度調節剤は、電極合剤の混合工程とそれの集電体上の塗布工程が容易に行われるよう電極合剤の粘度を調節する成分であって、このような粘度調節剤の例としては、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸などがあるが、これらだけに限定されるものではない。前記充填剤は、当該電池に化学的変化を誘発することなく繊維状材料であれば、特に制限されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合剤;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質などが用いられてよい。
【0057】
電極及び二次電池
次に、本発明に係る電極及び二次電池に対して説明する。
【0058】
本発明に係る電極は、正極または負極であってよく、前述した本発明の電極スラリー組成物を用いる点を除き、一般的な電極の製造方法と同様の方法で製造され得る。
【0059】
具体的には、本発明に係る電極は、電極スラリー組成物を電極集電体上に塗布し、乾燥させた後、圧延する方法、または前記電極スラリー組成物を別の基材上に塗布し、乾燥させた後、プレッシングまたはラミネーションなどの方法を介して電極集電体と接合させた後、圧延する方法などを介して製造され得る。
【0060】
前記電極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであればよく、その種類が特に制限されるものではない。前記電極集電体としては、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが用いられてよい。好ましくは、前記電極集電体は、金属ホイルであってよく、アルミニウム(Al)ホイルまたは銅(Cu)ホイルであってよい。具体的に、正極集電体はアルミニウムを含む金属集電体であってよく、負極集電体は銅を含む金属集電体であってよい。
【0061】
一方、前記電極スラリーの塗布方法は、特に制限されず、当該技術分野で用いられる多様な塗布方法、例えば、リバースロール法、コンマバー法、グラビヤ法、エアーナイフ法等の任意のコータヘッドを用いて行われてよい。具体的には、前記電極スラリーをコータヘッドを通過させて定められたパターン及び厚さで電極集電体上に塗布してよい。
【0062】
一方、前記乾燥は、電極スラリー内の溶媒及び水分を除去する過程であって、例えば、放置乾燥、送風乾燥器、温風乾燥器、赤外線加熱器、遠赤外線加熱器などを用いて行われてよい。前記乾燥温度は、例えば、50℃から200℃程度であってよい。
【0063】
次に、前記圧延は、電極の容量密度を高め、集電体と活物質との間の接着性を増加させるためのものであって、高温で加熱された2つの圧延ロールの間に電極を通過させて所望の厚さで圧縮する方法で行われてよい。圧延時の圧延厚さ、圧延温度、圧延時間などは最終的に所望の電極の物性によって適宜調節されてよい。一方、必須ではないが、前記圧延工程前に圧延効率を増加させるために、電極を予熱する過程をさらに行ってよい。
【0064】
前記のように本発明のバインダー組成物を用いて製造された電極は、従来の電極に比べて圧延前・後の接着力の減少率が低い。具体的には、前記電極は、圧延前の接着力に対する2000m長さで圧延した後の接着力の減少率が20%以下、好ましくは15%以下、さらに好ましくは12%以下である。
【0065】
また、本発明のバインダー組成物を用いると、従来に比べて圧延ロールの汚染が減少される。具体的には、本発明のバインダー組成物を用いて電極を製造する場合、圧延前に測定した圧延ロールのL値に対する2000m長さで圧延した後の圧延ロールのL値の減少率が25%以下、好ましくは23%以下、さらに好ましくは20%以下である。
【0066】
二次電池
本発明に係る二次電池は、前述した本発明に係る電極を含むものであって、具体的には、正極、負極、前記正極及び負極の間に介在される分離膜及び電解質を含むものであってよい。このとき、前記正極及び/又は負極は前述した本発明の電極、すなわち、本発明に係るバインダー組成物を含む電極スラリー組成物によって形成された電極であってよい。
【0067】
好ましくは、前記二次電池はリチウム二次電池であってよく、例えば、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、またはリチウムイオンポリマー二次電池であってよい。
【0068】
前記分離膜は、負極と正極を分離してリチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常、二次電池で分離膜として用いられるものであれば特別な制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながらも電解液含湿能力に優れたものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルム、またはこれらの2層以上の積層構造体が用いられてよい。また、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が用いられてもよい。また、耐熱性または機械的強度の確保のために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされた分離膜が用いられてよく、選択的に単層または多層構造で用いられてよい。
【0069】
また、前記電解質としては、二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが用いられてよく、その種類が特に限定されない。
【0070】
例えば、前記電解質は、非水系有機溶媒と金属塩を含むものであってよく、このとき、前記非水系有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(franc)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が用いられてよい。
【0071】
また、前記金属塩としては、リチウム塩を用いてよく、具体的には、陰イオンとしてF-、Cl-、I-、NO3
-、N(CN)2
-、BF4
-、ClO4
-、PF6
-、(CF3)2PF4
-、(CF3)3PF3
-、(CF3)4PF2
-、(CF3)5PF-、(CF3)6P-、CF3SO3
-、CF3CF2SO3
-、(CF3SO2)2N-、(FSO2)2N-、CF3CF2(CF3)2CO-、(CF3SO2)2CH-、(SF5)3C-、(CF3SO2)3C-、CF3(CF2)7SO3
-、CF3CO2
-、CH3CO2
-、SCN-及び(CF3CF2SO2)2N-からなる群から選択される1種以上を含むリチウム塩が用いられてよいが、これらに限定されるものではない。
【0072】
前記電解質には、前記電解質構成成分等の他にも電池の寿命特性の向上、電池容量の減少の抑制、電池の放電容量の向上などを目的として、添加剤等がさらに含まれてよい。例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N, N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれてもよい。
【0073】
前記のような本発明の二次電池は、単位セルとして電池モジュール及び/又は電池パックに有用に適用され得、前記電池モジュール及び/又は電池パックは、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車及び電力貯蔵用システムからなる群から選択される中大型デバイスの電源として用いられ得る。
【実施例】
【0074】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、前記実施例は本記載を例示するものであるだけで、本記載の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは当業者において明白なことであり、このような変形及び修正が特許請求の範囲に属するのは当然なことである。
【0075】
実施例1
1,3-ブタジエン61重量部、スチレン35重量部、アクリル酸4重量部、重合開始剤(過硫酸ナトリウム)1重量部、乳化剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム)2000ppmを蒸留水に投入して80℃で5時間の間重合し、ラテックス粒子を含むバインダー組成物を製造した。
【0076】
実施例2
1,3-ブタジエン46重量部、スチレン50重量部、アクリル酸3重量部、メタクリル酸1重量部、重合開始剤(過硫酸カリウム)1重量部、乳化剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム)1500ppmを蒸留水に投入して70℃で6時間の間重合し、ラテックス粒子を含むバインダー組成物を製造した。
【0077】
実施例3
1,3-ブタジエン25重量部、スチレン70重量部、イタコン酸3重量部、メタクリル酸2重量部、重合開始剤(過硫酸アンモニウム)1重量部、乳化剤(ドデシル硫酸ナトリウム)2000ppmを蒸留水に投入して60℃で7時間の間重合し、ラテックス粒子を含むバインダー組成物を製造した。
【0078】
比較例1
1,3-ブタジエン64重量部、スチレン35重量部、アクリル酸1重量部、重合開始剤(過硫酸ナトリウム)1重量部、乳化剤(ドデシル硫酸ナトリウム)4000ppmを蒸留水に投入して80℃で5時間の間重合し、ラテックス粒子を含むバインダー組成物を製造した。
【0079】
比較例2
1,3-ブタジエン48重量部、スチレン50重量部、アクリル酸1重量部、メタクリル酸1重量部、重合開始剤(過硫酸カリウム)1重量部、乳化剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムスルフェート)3000ppmを蒸留水に投入して70℃で6時間の間重合し、ラテックス粒子を含むバインダー組成物を製造した。
【0080】
比較例3
1,3-ブタジエン28重量部、スチレン70重量部、イタコン酸1重量部、メタクリル酸1重量部、重合開始剤(過硫酸アンモニウム)1重量部、乳化剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム)4000ppmを蒸留水に投入して60℃で7時間の間重合し、ラテックス粒子を含むバインダー組成物を製造した。
【0081】
比較例4
1,3-ブタジエン61重量部、スチレン35重量部、アクリル酸4重量部、重合開始剤(過硫酸ナトリウム)1重量部、乳化剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム)5000ppmを蒸留水に投入して60℃で7時間の間重合し、ラテックス粒子を含むバインダー組成物を製造した。
【0082】
比較例5
1,3-ブタジエン47重量部、スチレン50重量部、イタコン酸1重量部、メタクリル酸2重量部、重合開始剤(過硫酸カリウム)1重量部、乳化剤(ドデシル硫酸ナトリウム)4000ppmを蒸留水に投入して80℃で5時間の間重合し、ラテックス粒子を含むバインダー組成物を製造した。
【0083】
比較例6
1,3-ブタジエン26重量部、スチレン70重量部、アクリル酸2重量部、イタコン酸2重量部、重合開始剤(過硫酸アンモニウム)1重量部、乳化剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム)3000ppmを蒸留水に投入して70℃で6時間の間重合し、ラテックス粒子を含むバインダー組成物を製造した。
【0084】
実験例
実施例1~3及び比較例1~6によって製造されたバインダー組成物、負極活物質(天然黒鉛)及び導電材(カーボンブラック)、粘度調節剤を重量比3:95:1:1で溶媒である蒸留水に添加混合して負極スラリーを製造した。
【0085】
製造された負極スラリーを銅金属薄膜上に塗布した後、乾燥させ、圧延して負極を製造しながら、下記測定方法によって圧延長さによる色差計数値L値及び接着力を測定した。
【0086】
(1)色差計数値L値
圧延工程で測定しようとする当該圧延長さで圧延ロールを停止させた後、色差計を圧延ロールの表面に直角となるように密着させた後、発光して白色程度を示すL値を測定した。測定部位が全部白色の場合、L値は0又は100を有し、白色以外の色が存在するほど、L値は100から0まで徐々に低くなる。すなわち、色差計L値が小さいほど、圧延ロールの汚染が強いということを意味する。測定は、ロールの表面を左右に三等分して各部位毎に一回ずつ測定しており、3つの値の平均値を測定値とした。
【0087】
(2)接着力
実施例及び比較例で製造された負極を一定の大きさで切ってスライドガラスに固定させた後、集電体を引き剥がして180゜引き剥がし強度を測定した。一つの負極に対して5つの引き剥がし強度を測定した後、その平均値を接着力として測定した。
【0088】
測定結果は、下記[表1]に示した。
【0089】
【0090】
前記表1を介して、本発明のバインダー組成物を用いた実施例1~3の場合、圧延長さによる色差計L値及び接着力の減少が、比較例1~6に比べて顕著に少ないことが確認できる。